説明

ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法

【課題】ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法において、従来よりも気泡径の大きい、発泡倍率が高くても、気泡径の均一性が向上した発泡粒子を得ることができる、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(A)と、次式(I)で表される硫酸塩無水物(B)とを押出機内で溶融混練してポリオレフィン系樹脂溶融物とし、該樹脂溶融物を造粒してポリオレフィン系樹脂粒子を得、該樹脂粒子を密閉容器内において水性分散媒に分散させるとともに、加熱下で該樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とした後、該発泡性樹脂粒子を水性分散媒と共に密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させて、発泡粒子とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
III(SO・・・・・(I)
上記式(I)中、Mは1価の陽イオン、MIIIは3価の金属イオンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子を相互に融着させてなる発泡粒子成形体を得るための型内成形用等に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は機械的強度、耐熱性、耐薬品性、加工性、価格等のバランスに優れ、焼却性、リサイクル性にも優れている。このようなポリオレフィン系樹脂からなる発泡粒子を成形して得られる発泡粒子成形体は、上記のようなポリオレフィン系樹脂の優れた性質を有すると共に、靭性、圧縮歪回復性等に優れているため、包装材料、建築材料や衝撃吸収材料などに広く利用されている。近年は、その用途の拡大から、さらに高い発泡倍率の成形体や物性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造する際に、気泡調整剤としてホウ酸亜鉛等のホウ酸金属塩を配合してなる樹脂粒子を用いることが開示されている。この方法によると、気泡径の均一なポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造することが可能であると記載されている。
【0004】
特許文献2には結晶水含有無機化合物を配合してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法が開示されている。該方法によると気泡膜厚ばらつきが小さく、未発泡粒子が混在することがない、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができると記載されている。
【0005】
特許文献3には発泡核形成作用のない吸水性物質と気泡核剤を配合してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法が開示されている。これらの吸水性物質と気泡核剤とを併用することにより、発泡倍率と気泡径をコントロールし易くなり、気泡の不均一性や気泡の微細化が抑制された発泡粒子が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開1998/025996号
【特許文献2】特開2009−215485号公報
【特許文献3】特開2009−167236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、さらに高い発泡倍率の発泡粒子を得るためにはホウ酸金属塩の添加量を多くする必要があり、この場合には、得られる発泡粒子の気泡径が微細化してしまうという問題があった。
また、特許文献2の製造方法においては、得られる発泡粒子に巨大な気泡が発生する場合があり、工業的に安定して発泡粒子を得ることに関しては課題を残すものであった。
さらに、特許文献3の製造方法においては、高い発泡倍率の発泡粒子を得るためには、前記吸水性物質を多量に添加しなければならず、ポリプロピレン系樹脂と前記吸水性物質とを溶融混練する際に押出安定性が低下して安定して樹脂粒子を得ることが困難となったり、吸水性物質の分散性が低いことから一部に微細な気泡が発生し易くなったり、前記吸水物質を多量に使用することにより製造コストが増加するなど、工業的に安定して発泡粒子を得ることに関しては課題を残すものであった。
【0008】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法において、発泡倍率が高く、気泡径の均一性が向上し、従来より気泡径の大きい発泡粒子を製造することが可能な、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂に所定の硫酸塩無水物を配合したポリオレフィン系樹脂粒子を使用してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)から(4)に記載する発明を要旨とする。
(1)ポリオレフィン系樹脂(A)と、次式(I)で表される硫酸塩無水物(B)とを押出機内で溶融混練してポリオレフィン系樹脂溶融物とし、該樹脂溶融物を造粒してポリオレフィン系樹脂粒子を得、該樹脂粒子を密閉容器内において水性分散媒に分散させるとともに、加熱下で該樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とした後、該発泡性樹脂粒子を水性分散媒と共に密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させて、発泡粒子とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
III(SO・・・・・(I)
上記式中、Mは1価の陽イオン、MIIIは3価の金属イオンである。
(2)前記硫酸塩無水物(B)の、20℃における水への溶解度が20(g/100g水)以下であり、80℃における水への溶解度が30(g/100g水)以上である前記(1)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(3)前記硫酸塩無水物(B)の3価の金属イオンがアルミニウムイオンである前記(1)または(2)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(4)前記硫酸塩無水物(B)の配合量がポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して0.01〜2質量部である前記(1)から(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法によれば、ポリオレフィン系樹脂(A)に硫酸塩無水物(B)を配合し、押出機内で溶融混練してなる樹脂溶融物から樹脂粒子を形成することにより、安定して樹脂溶融物を造粒し、樹脂粒子を製造することが可能となる。
さらに、前記樹脂粒子を用いて発泡粒子を得る場合には、前記樹脂粒子を密閉容器内にて水性分散媒に分散させ、前記樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる際に、加熱下で前記硫酸塩無水物(B)が水性分散媒の水を、前記樹脂粒子中に取り込むことができる。また、物理発泡剤を含浸した発泡性樹脂粒子を低圧下に放出して発泡させる際には、該硫酸塩無水物(B)に取り込まれた水が発泡剤として作用することにより、従来よりも発泡倍率が高く、気泡径の均一性が向上し、気泡径の大きい発泡粒子を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例、及び比較例における、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目のDSC曲線の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、次式(I)で表される硫酸塩無水物(B)とを押出機内で溶融混練してポリオレフィン系樹脂溶融物とし、該樹脂溶融物を造粒してポリオレフィン系樹脂粒子を得る樹脂粒子製造工程と、該ポリオレフィン系樹脂粒子を密閉容器内にて水性分散媒に分散させるとともに、加熱下で該樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とした後、該発泡性樹脂粒子を水性分散媒と共に密閉容器内よりも低圧下に放出して発泡させて発泡粒子を得る発泡粒子製造工程とを含むものである。
III(SO・・・・・(I)
上記式中、Mは1価の陽イオン、MIIIは3価の金属イオンである。
【0013】
(1)ポリオレフィン系樹脂粒子
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法に使用するポリオレフィン系樹脂粒子には、ポリオレフィン系樹脂(A)に、少なくとも、前記硫酸塩無水物(B)が配合される。
前記ポリオレフィン系樹脂粒子を構成するポリオレフィン系樹脂(A)としては、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン系樹脂が挙げられ、具体的にはポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂、更にはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
尚、上記「主成分」とは、オレフィン成分単位がポリオレフィン系樹脂中に50質量%以上含有されていることを意味し、その含有量は75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0014】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えばエチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また、上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、更に二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。
尚、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他のオレフィンは、25質量%以下の割合で含有されていることが好ましく、更には15質量%以下の割合で含有されていることがより好ましい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は単独または2種以上を混合して用いることが出来る。
【0015】
一方、ポリエチレン系樹脂としてはエチレン成分単位を50質量%以上含有する樹脂が挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等、更にそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
尚、上記したポリオレフィン系樹脂(A)の中でも、機械的強度と耐熱性とのバランスに特に優れることからポリプロピレン系樹脂が好ましい。
また、前記ポリオレフィン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、他の熱可塑性樹脂成分やエラストマー成分を含有させることができる。他の熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−アクリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等が例示される。
【0017】
本発明における硫酸塩無水物(B)は、次式(I)で表される化合物をいう。
III(SO・・・・・(I)
(上記式中、Mは1価の陽イオン、MIIIは3価の金属イオンである)
具体的には、3価の金属イオンとしては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、イリジウム等が例示され、1価の陽イオンとしては、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、アンモニウム、タリウム等が例示される。これらの中でも、3価の金属イオンとしては、アルミニウム、鉄であることが好ましく、1価の陽イオンとしては、カリウム、ナトリウム、アンモニウムであることが好ましい。さらに、上記(I)式で表される硫酸塩無水物(B)としては、硫酸カリウムアルミニウム無水物、及び硫酸アルミニウムアンモニウム無水物が、食品添加物にも使用されている安全性の高い物質であり、かつ均一で大きな気泡径を有する発泡粒子が得られる点からより好ましい。
【0018】
上記式(I)で表される化合物は、無水物であることが必要である。式(I)で表される化合物が水和物である場合には、樹脂粒子製造工程における押出機中の高温状態で化合物中の水が脱離することが多く、押出機内での溶融混練時に脱離した水によって、押出安定性が低下したり、分散性が低下したりするおそれがある。また、樹脂粒子中に結晶水が気化した際の気泡が残存するおそれがある。特に、樹脂粒子に気泡が存在する場合には、発泡粒子製造工程において、樹脂粒子中の気泡が核となって過大な気泡が発泡粒子中に生成してしまい、均一な気泡径を有する発泡粒子が得られなくなるおそれがある。
【0019】
また、前記硫酸塩無水物(B)の20℃での水への溶解度(無水物g/100g水)は、20以下であることが好ましい。前記溶解度が20以下である場合には、前記硫酸塩無水物(B)が、常温で著しい潮解性や吸湿性を示すことが少なく、樹脂粒子製造工程においてポリオレフィン系樹脂溶融物に水が混入することがさらに防止されることから、押出安定性がより一層向上し、さらには、前記硫酸塩無水物が(B)が均一に分散し易くなることから均一な気泡径を有する発泡粒子が得られる。上記観点からは、前記硫酸塩無水物(B)の20℃での水への溶解度は、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0020】
さらに、発泡粒子製造工程において、より発泡倍率が高く、気泡径の大きい発泡粒子が得られやすくなるという観点からは、前記硫酸塩無水物(B)の80℃での水への溶解度(無水物g/100g水)は、30以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。上記範囲内であれば、均一で、大きな気泡径を有する、高い発泡倍率の発泡粒子がさらに得られ易くなる。
【0021】
上記硫酸塩無水物(B)は、水への溶解度(無水物g/100g水)の温度依存性が高い化合物(例えば、20℃での水への溶解度と、80℃での水への溶解度とが大きく変化し、高温ほど溶解度が高くなる化合物)が好ましい。具体的には、硫酸カリウムアルミニウム無水物、硫酸アルミニウムアンモニウム無水物が特に好ましい。
硫酸カリウムアルミニウム無水物又は硫酸アルミニウムアンモニウム無水物は、常温での水への溶解度は低く、一方、高温になるほど水への溶解度が非常に高くなるという特性を有する。例えば、硫酸カリウムアルミニウム無水物は、20℃での水への溶解度6(無水物g/100g水)、80℃での溶解度70(無水物g/100g水)である。また、硫酸アルミニウムアンモニウム無水物は、20℃での水への溶解度6(無水物g/100g水)、80℃での溶解度75(g/100g水)である。
なお、本発明において、溶解度とは、一定温度(20℃または80℃)の水100g中に溶け得る前記硫酸塩無水物(B)の最大量を意味し、グラム数で表される。
【0022】
前記硫酸塩無水物(B)が水への溶解度の温度依存性が高い特性を有する場合には、押出安定性の観点から水の混入が問題となる樹脂粒子製造工程においては、前記硫酸塩無水物(B)が結晶水を有さないことから、ポリオレフィン系樹脂溶融物への水の混入がさらに防止される。すなわち、硫酸塩無水物(B)は結晶水を有さず、さらに水への溶解度が低いことから潮解性や吸湿性により水を含有することも少なくなる。従って、前記ポリオレフィン系樹脂溶融物を安定して押出し、造粒して、樹脂粒子を得ることが可能となる。さらに、得られる樹脂粒子には、樹脂溶融物に水が混入した際に生じ易い、水に起因する気泡が生成することも防止される。
一方で、発泡粒子製造時の加熱下においては、前記硫酸塩無水物(B)の高温での溶解度が高いことから、前記硫酸塩無水物(B)がポリオレフィン系樹脂に水性媒体を効果的に引き込んで、樹脂粒子中又は発泡性樹脂粒子中の含水率を増加させることが可能となる。さらに、物理発泡剤を含浸した発泡性樹脂粒子が低圧下に放出された際には、発泡性樹脂粒子を構成する樹脂中の、前記硫酸塩無水物(B)により取り込まれた水分が発泡剤として作用することにより、均一で、大きな気泡径を有する、高い発泡倍率の発泡粒子が得られ易くなるという効果を奏すると考えられる。
【0023】
前記硫酸塩無水物(B)が水への溶解度の温度依存性が高い特性を有するという観点からは、前記硫酸塩無水物(B)の溶解度が下式(II)の関係を満足することが好ましい。
[20℃での溶解度]×5 <[80℃での溶解度]・・・(II)
【0024】
配合する硫酸塩無水物(B)の平均粒子径の上限は、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。一方、平均粒子径の下限は1μmであることが好ましい。上記範囲内であれば、樹脂粒子製造工程において、ポリオレフィン系樹脂への前記硫酸塩無水物(B)の分散性が良好となり、より均一な気泡径を有する発泡粒子が得られやすくなる。なお、前記硫酸塩無水物(B)の平均粒子径は、遠心沈降式粒度測定法により測定することができる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂粒子への硫酸塩無水物(B)の配合量の上限は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して2質量部であることが好ましく、1質量部であることがより好ましく、0.5質量部であることが更に好ましい。一方、硫酸塩無水物(B)の配合量の下限は、0.01質量部であることが好ましく、0.02質量部であることがより好ましく、0.04質量部であることが更に好ましい。上記範囲内であれば、発泡粒子製造工程において、発泡直後に発泡粒子内の水蒸気が凝結して、発泡粒子内が減圧状態になり過ぎて、発泡粒子が収縮し易くなることなく、良好な発泡粒子が得られる。
【0026】
前記ポリオレフィン系樹脂溶融物には、気泡核剤(C)を配合することが好ましい。前記気泡核剤(C)は、ポリオレフィン系樹脂粒子に均一に分散して、発泡粒子の気泡数を調整し、より均一な気泡を生成させる目的で添加するものであり、気泡核となる作用を有する物質であれば特に制限されない。
本発明で使用する気泡核剤(C)としては、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、カオリン、マイカ、シリカ、カーボンブラック、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ケイソウ土等の無機物粉末が例示できる。また、リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機系粉末が挙げられる。
良好な分散性を有するという観点からは、疎水性を有し、表面自由エネルギーが低く、凝集し難いポリテトラフルオロエチレンを気泡核剤として使用することが特に好ましい。さらに、気泡核剤の分散性が良好であることから、得られる発泡粒子の見掛け密度の均一性もさらに向上する。
【0027】
前記気泡核剤(C)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して0.005〜5質量部が好ましく、0.005〜4質量部がより好ましく、0.005〜3質量部が更に好ましい。また、前記気泡核剤(C)の平均粒子径は0.01〜50μm、好ましくは0.1〜50μmであることが好ましい。尚、上記平均粒子径は、遠心沈降粒度測定法により測定することができる。
【0028】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない限り、顔料、スリップ剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を配合することができる。このような添加剤を用いる場合には、その配合量はポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲にすることが好ましい。
【0029】
特に、ポリオレフィン系樹脂粒子に着色剤を配合した場合には、気泡が微細化すると、発泡粒子や発泡粒子成形体の着色が薄くなったり、得られる発泡粒子や発泡粒子成形体に色ムラが発生したりする傾向がある。本発明の製造方法によれば、発泡倍率を高くしても気泡径が微細化することがなく、気泡膜厚を厚く維持できることから、着色剤の添加量を減らしても、発色度合が良好な、濃い色の発泡粒子が得られる。また、均一な気泡径を有する発泡粒子が得られることから、発色の程度も均一であり、色ムラのない発泡粒子成形体が得られる。
【0030】
(1)ポリオレフィン系樹脂粒子製造工程
本発明において、ポリオレフィン系樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂(A)に前記硫酸塩無水物(B)と、さらに必要に応じて気泡核剤(C)や他の添加剤を配合し、ポリオレフィン系樹脂(A)が溶融する温度条件下に押出機で混練して樹脂溶融物とした後、該樹脂溶融物を造粒することにより、製造することができる。このとき、均一な混練を行うために、硫酸塩無水物(B)、さらに必要に応じて気泡核剤(C)とその他添加剤等をマスターバッチ化することや、予め前記ポリオレフィン系樹脂と硫酸塩無水物(B)、さらに必要に応じて気泡核剤(C)、その他添加剤等を、例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー、レディーゲミキサーなどの混合機を用いて混合することができる。
また、ポリオレフィン系樹脂(A)中に、硫酸塩無水物(B)、さらに必要に応じて気泡核剤(C)や、その他の添加剤等をより均一に分散させるためには、例えばダルメージタイプ、マドックタイプ、ミニメルトタイプ等の高分散タイプのスクリュや2軸押出機を用いて、溶融混練することができる。
【0031】
前記樹脂溶融物を造粒して樹脂粒子を得る方法としては、前記樹脂溶融物をストランド状やシート状などに押し出し、それを所望のサイズに切断や破砕するなどして造粒し、樹脂粒子を製造する従来公知の方法が採用できる。また、ポリオレフィン系樹脂(A)と硫酸塩無水物(B)、さらに必要に応じて気泡核剤(C)やその他の添加剤とを押出機内で溶融混練して得られる樹脂溶融物を、ストランドカット方式、ホットカット方式、又は水中カット方式等によりペレタイズすることにより造粒して、樹脂粒子を得ることができる。
【0032】
本発明の樹脂粒子としては、樹脂を押出機内で溶融混練して得られた樹脂溶融物を、ストランド状に押出し、押出したストランドを切断する際には、押出直後のストランドを急冷することによって得られたものが好ましい。押出直後のストランドの急冷は、そのストランドを押出し直後に、好ましくは50℃以下に調節された水中に、より好ましくは40℃以下に調節された水中に、最も好ましくは30℃以下に調節された水中に入れることにより行なうことができる。そして充分に冷却されたストランドは水中から引き上げられ、適宜長さに切断することにより、所望の大きさの樹脂粒子となる。
【0033】
また、前記樹脂粒子の粒子径は、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.3〜1.5mmであることがより好ましい。さらに、通常、前記樹脂粒子の長さ/直径比が0.5〜2.0となるように調整されることが好ましく、0.8〜1.3となるように調節されることがより好ましい。また、1個当たりの平均質量(無作為に選んだ200個の質量を同時に測定した1個当たりの平均値)は、0.1〜20mgとなるように調整されることが好ましく、更には0.2〜10mgとなるように調節されることがより好ましい。
なお、押出機を用いて樹脂粒子を得る際には、樹脂粒子の粒子径、長さ/直径比や平均質量の調整は、例えば押出機先端に取り付けられた微細な多数の孔を有するダイからポリオレフィン系樹脂溶融物を押出し、押出速度、カッタースピードなど、ストランドカット法の場合は引き取り速度を適宜変えて所定の大きさに切断することにより行うことができる。
特に、本発明の製造方法によれば、発泡粒子の1個当りの平均質量が1.5mg以下と特に小さく、表面積が小さくまた冷え易いことから微細気泡となりやすい場合であっても、前記硫酸塩無水物(B)がポリオレフィン系樹脂に水性媒体を効果的に引き込んで樹脂粒子中の含水率を増加させ、発泡性樹脂粒子が低圧下に放出された際に樹脂中の水分が発泡剤として作用することにより、大きな気泡径を有する発泡粒子を得られやすくすることができる。
【0034】
(2)ポリオレフィン系樹脂粒子の発泡工程
得られたポリオレフィン系樹脂粒子は、該樹脂粒子を密閉容器内にて水性分散媒に分散させるとともに、加熱下で、該樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とした後、該物理発泡剤を含浸した発泡性樹脂粒子を水性分散媒と共に密閉容器内よりも低圧下に放出し、発泡させることにより発泡粒子を得る。
【0035】
前記樹脂粒子を発泡させるための物理発泡剤としては、無機系物理発泡剤と有機系物理発泡剤があげられる。
無機系物理発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、水等が挙げられる。また、有機系物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,1−ジフロロメタン、1−クロロ−1,1−ジクロロエタン、1,2,2,2−テトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0036】
上記物理発泡剤は、単独で用いても、或いは二種以上を混合して用いてもよい。また、無機系物理発泡剤と有機系物理発泡剤とを混合して用いることもできる。しかし、有機系物理発泡剤として使用されている化合物には可燃性を有するものや、オゾン層破壊の問題等を引き起こすものが多く、またこのような問題を生じにくい有機系物理発泡剤は高価で実用的でないため、これらを考慮すれば無機系物理発泡剤を用いるのが好しく、更に無機系物理発泡剤の中でも二酸化炭素、空気、窒素、水を用いるのがより好ましい。なお、前記無機系物理発泡剤を使用する場合には、特に、発泡粒子の気泡径が微細化し易くなる傾向があることから、本発明における前記硫酸塩無水物(B)を配合することにより、高発泡倍率の発泡粒子を得る際に気泡径の微細化を防止する効果が顕著に発揮される。
【0037】
上記物理発泡剤の添加量は、目的とする発泡倍率によって適宜決められるものであるが、例えば見掛け密度20〜200kg/mの発泡粒子を二段発泡工程を経ずに一段階で得るには、発泡開始直前の密閉容器内の平衡蒸気圧が0.5〜6.0MPa(G)((G)はゲージ圧を表す)、好ましくは1.0〜5.0MPa(G)、さらに好ましくは2.5〜4.0MPa(G)となるように物理発泡剤を添加することが望ましい。また、物理発泡剤として二酸化炭素(ドライアイス)を用いる場合には樹脂粒子100質量部に対して4〜30質量部となるように添加することもできる。なお、本発明の製造方法によれば、発泡粒子製造工程において、水性媒体中、加熱下で、ポリオレフィン系樹脂に配合された前記硫酸塩無水物(B)が水性媒体を効果的にポリオレフィン樹脂に引き込んで、ポリオレフィン樹脂粒子中の含水率を増加させ、発泡性樹脂粒子が低圧下に放出された際にポリオレフィン樹脂中の水分が発泡剤として作用すると考えられる。さらに、従来よりも発泡倍率を高めるために密閉容器内の平衡蒸気圧を上げて、気泡核が増加して微細気泡が生成しやすい条件としても、前記硫酸塩無水物(B)に由来する水分の発泡剤としての作用により、気泡径の大きな発泡粒子が得られやすくなると考えられる。
【0038】
本発明の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法としては、樹脂粒子を密閉容器内の水性分散媒中に分散させ、加圧、加熱しながら、樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる方法が好ましく用いられる。
【0039】
密閉容器内でポリオレフィン系樹脂粒子(又は発泡性樹脂粒子)を分散させるための分散媒としては水性分散媒を使用することが必要である。本発明において水性分散媒とは、水を主成分とする分散媒である。水性分散媒における水の割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
水性分散媒中の水以外の分散媒としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
上記硫酸塩無水物(B)は、発泡粒子製造工程における加熱時のような高温領域での溶解度が高いという特性を有するため、水性分散媒に分散させた樹脂粒子を加熱して、物理発泡剤を含浸させる際に、水性分散媒から前記硫酸塩無水物(B)がポリオレフィン系樹脂粒子内に効率よく水を引き込み、ポリオレフィン系樹脂粒子中の水分量を増加させることが可能となる。このようにして樹脂粒子中に取り込まれた水分は、発泡性樹脂粒子を低圧下に放出する際に水蒸気となって発泡剤としての作用も発揮する。このために、発泡倍率の高い発泡粒子を得る場合であっても、気泡が微細化されることなく、発泡倍率と気泡径の均一性が向上した発泡粒子を得ることが可能になると考えられる。
【0040】
前記樹脂粒子、発泡性樹脂粒子を水性分散媒中に分散させる際に、分散時の加熱やその後の発泡工程における加熱によって樹脂粒子相互が融着するのを防止するために、融着防止剤を水性分散媒中に添加することができる。融着防止剤としては、水性分散媒に溶解せず、加熱により溶融しないものであれば有機系、無機系を問わずいずれも使用できるが、一般的には無機系の融着防止剤が使用される。無機系の融着防止剤としてはマイカ、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉末が好適である。なお、融着防止剤は、平均粒径が0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜30μmであることがより好ましい。融着防止剤を使用した場合、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。融着防止剤は、樹脂粒子100質量部当たり、0.01〜2質量部程度添加し、分散助剤は樹脂粒子100質量部当たり、0.001〜1質量部程度添加することが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法においては、密閉容器内で水性分散媒中に分散している発泡性樹脂粒子を、密閉容器の一端を開放して水性分散媒と共に密閉容器内よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出することによって、発泡性樹脂粒子に含浸している物理発泡剤を発泡させると共に、硫酸塩無水物(B)により引き込まれた樹脂粒子中の水分が水蒸気となることで発泡させて、発泡粒子を得ることができる。通常、このときの密閉容器内圧は少なくとも0.5MPa(G)以上であることが好ましい。また、容器内の発泡時の温度は、[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を構成するポリオレフィン系樹脂の融点(MP)−10℃]以上の温度とすることが好ましく、[該ポリオレフィン系樹脂の融点]〜「該融点+20℃以下」とすることがより好ましい。
より具体的には、例えば特公昭49−2183号公報、特公昭56−1344号公報、特公昭62−61227号公報等に記載の公知の発泡方法を採用することができる。
また、発泡粒子を得るために密閉容器内の内容物を密閉容器から低圧域に放出する際には、使用した発泡剤あるいは窒素、空気等の無機ガスで密閉容器内に背圧をかけて該容器内の圧力が急激に低下しないようにして、内容物を放出すること好ましい。この場合には、得られる発泡粒子の見掛け密度をより均一にすることができる。
【0042】
なお、前記ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K7121−1999に準拠し、次のようにして求められる。すなわち、示差走査熱量計によってサンプル(樹脂粒子)約6mgを10℃/分の昇温速度で220℃まで加熱し、該220℃の温度到達後直ちに10℃/分の冷却速度で220℃から30℃まで冷却した後、再度10℃/分の加熱速度で30℃から220℃まで加熱したときに得られるDSC曲線におけるポリオレフィン系樹脂の結晶の溶解に由来する吸熱ピークの頂点の温度をポリオレフィン系樹脂の融点として求める。尚、ポリオレフィン系樹脂に由来する吸熱ピークが2以上観察される場合には、最も大きな吸熱ピークの頂点の温度をポリオレフィン系樹脂の融点とする。
【0043】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法によれば、前記硫酸塩無水物(B)がポリオレフィン系樹脂粒子内に水を効果的に引き込み、引き込まれた水が発泡剤として作用するために、従来よりも高発泡倍率の発泡粒子を容易に得ることが可能となると共に、発泡粒子の気泡が微細化されることが防止される。また、前記流酸塩無水物(B)は樹脂粒子中に均一に分散され易いことから、発泡倍率が高く気泡径の均一性が向上した発泡粒子を得ることが可能になる。
さらに、樹脂粒子中に前記気泡核剤(C)を用いる場合には、さらに気泡核が均一に形成され、気泡径の均一性に優れ、見掛け密度の均一性が高く、発泡倍率のばらつきが少ない発泡粒子を製造することが容易となる。
【0044】
尚、上記した本発明の方法によって得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、その後大気圧下で熟成した後、加圧空気下で加圧処理して内圧を付与することができ、更に、水蒸気や熱風を用いて加熱する二段発泡工程によって、更に低い見掛け密度の発泡粒子とすることもできる。
【0045】
(見掛け密度)
本発明により得られるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、15〜200g/Lであることが好ましい。見掛け密度が前記範囲内であると、発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体は機械的強度に優れたものとなる。かかる観点から、発泡粒子の見掛け密度は、20〜150g/Lであることがより好ましく、22〜100g/Lであることが更に好ましく、25〜90g/Lであることが特に好ましい。
尚、本発明における見掛け密度とは、質量を予め測定した発泡粒子群をメスシリンダー中の水中に金網などを使用して沈め、その水位上昇分から求められる発泡粒子群の体積を発泡粒子群の質量で除して、[g/L]に単位換算することにより求められる値である。
【0046】
(平均気泡径)
本発明により得られるポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、その平均気泡径が10〜300μmであることが好ましい。気泡径が前記範囲内である場合には、加熱成形時に二次発泡が充分になされ、粒子間の融着が良好となるため、外観や機械的物性が良好な発泡粒子成形体を得ることが可能になる。かかる観点から、発泡粒子の平均気泡径は、より好ましくは20〜250μm、さらには25〜200μmであることが好ましい。
【0047】
また、本発明により得られるポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、気泡径のばらつきが少なく、特に上記平均気泡径よりも小さい微細な気泡が少ないものであることが好ましく、特に、平均気泡径の1/3よりも小さな微細気泡が少ないことが望ましい。前記発泡粒子に微細気泡が多数存在する場合には、微細な気泡の気泡膜が薄いために連泡化し易く、成形性を悪化させるおそれがある。また、着色品においは、平均気泡径の1/3よりも小さな微細気泡が存在する場合には、気泡径のばらつきに起因して、発泡粒子の色の濃淡のばらつきが顕著になるおそれがある。
本発明により得られるポリオレフィン系樹脂発泡粒子においては、樹脂粒子製造工程において樹脂粒子中に前記硫酸塩無水物(B)が均一に分散させることができ、前記硫酸塩無水物(B)が偏在することが少ないことから、微細な気泡が生成し難くなると考えられる。
【0048】
上記見掛け密度は、硫酸塩無水物(B)の種類や含有量、発泡剤の種類と添加量、発泡温度、発泡時の保持時間などと相関するものであり、これらの要因を適宜調整することにより、目的の見掛け密度を有する発泡粒子を得ることができる。
【0049】
なお、本発明の製造方法は、得られる発泡粒子の見掛け密度が25〜90g/L、特に一段発泡で見掛け密度が30〜75g/Lという、比較的高発泡倍率の発泡粒子を得る場合、前記発泡粒子の平均気泡径が100μm以上で、気泡径が均一な発泡粒子を製造することが特に容易となるものである。
【0050】
本発明により得られる発泡粒子は、熱流束示差走査熱量測定(以下、単に「DSC測定」ともいう)により得られるDSC曲線において、結晶性であるポリオレフィン系樹脂固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)の頂点よりも高温側に、1つ以上の吸熱曲線ピーク(高温ピーク)の頂点が存在することが好ましい。かかる発泡粒子は、独立気泡率が高く、型内成形性が良好である。前記高温ピーク熱量は、発泡粒子を構成する樹脂の種類や添加剤の量の変更でも異なるので、一概には言えないが、1〜50J/gであることが好ましく、さらには2〜30J/gであることが好ましい。
【0051】
前記発泡粒子の高温ピーク熱量は、発泡粒子1〜3mgを、DSC測定によって室温(10〜40℃)から220℃まで10℃/分で昇温した時に得られる図1に示す第1回目のDSC曲線に認められる発泡粒子を構成する樹脂固有の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)aが現れる温度よりも高温側に現れる吸熱曲線ピーク(高温ピーク)bの熱量で、この高温ピークbの面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。尚、図1は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする場合の発泡粒子の一例である。
まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。次に上記の固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をδとする。高温ピークbの面積は、DSC曲線の高温ピークb部分の曲線と、線分(δ−β)と、線分(γ−δ)とによって囲まれる部分(図1において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークbの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
また、高温ピークの熱量と固有ピークの熱量の総和(発泡粒子全体の融解熱量)は、前記直線(α−β)とDSC曲線とで囲まれる部分の面積に相当する。
尚、この高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回目のDSC曲線には認められるが、第1回目のDSC曲線を得た後、220℃から10℃/分で一旦40℃付近(40〜50℃)まで降温し、再び10℃/分で220℃まで昇温した時に得られる第2回のDSC曲線には認められない。測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント社製DSCQ1000などを使用することができる。
【0052】
DSC曲線における高温ピークを有する発泡粒子を得るためには、発泡粒子製造工程において、加熱時にポリオレフィン系樹脂の融解終了温度(Te)以上に昇温することなく、ポリオレフィン系樹脂の融点(Tm)より20℃低い温度以上、融解終了温度(Te)未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めてその温度(Ta)で十分な時間、好ましくは10〜60分程度保持し、その後、融点(Tm)より15℃低い温度から融解終了温度(Te)+10℃の範囲の任意の温度(Tb)に調節し、その温度で止め、必要により当該温度でさらに十分な時間、好ましくは10〜60分程度、保持してから発泡性樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させる方法により得ることができる。
尚、上記融点(Tm)とは、樹脂粒子2〜10mgを試料として用いて前述の発泡粒子のDSC曲線を得るのと同様の方法で本樹脂粒子に対して示差走査熱量測定を行い、これによって得られた2回目のDSC曲線に認められるポリオレフィン系樹脂固有の吸熱曲線ピークaの頂点の温度であり、融解終了温度(Te)とは、該ポリオレフィン系樹脂の吸熱曲線ピークaの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースライン(BL)との交点(β)を言う。
【実施例】
【0053】
以下に本発明を実施例等により具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例と比較例で使用した原料を以下に記載する。
【0054】
(1)ポリオレフィン系樹脂(A)
ポリオレフィン系樹脂として、エチレン−プロピレンランダム共重合体(エチレン単位含有量:2.8質量%、融点:143℃、メルトフローレイト:5g/10分(なお、メルトフローレイトはISO1133−1997に準拠し、230℃、荷重2.16kgfの条件で測定したものである))を使用した。
【0055】
(2)硫酸塩無水物(B)
実施例において使用した硫酸塩無水物(B)、比較例において使用した無機化合物、吸水性物質をまとめて表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(3)気泡核剤(C)
使用した気泡核剤を表2にまとめて示す。(尚、表2、3、及び5中、ポリテトラフルオロエチレンをPTFEと略記する。)
なお、前記気泡核剤(C)は、下記のようにマスターバッチとして添加した。ポリオレフィン系樹脂(A)90質量%と、表2に示す気泡核剤10質量%とを内径30mmの二軸押出機に供給して220℃で溶融混練してストランド状に押出し、このストランドを水冷した後、ペレタイザーでカットして気泡核剤含有マスターバッチを作製した。得られたマスターバッチを、表3〜5に記載の配合量となるように、樹脂粒子製造時に添加した。
【0058】
【表2】

【0059】
(4)添加剤(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック(カーボンブラックを表5中、CBと記載する)を用いた。
なお、上記の着色剤は、ポリオレフィン系樹脂にカーボンブラック35質量%を配合したマスターバッチを用いて、表3〜5に記載の配合量となるように、樹脂粒子製造時に添加した。
【0060】
(5)ポリオレフィン系樹脂粒子の製造
ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、硫酸塩無水物(B)、必要に応じて気泡核剤(C)、及び添加剤を表3〜5に示す配合量となるように、内径40mmの単軸押出機に供給して、押出機設定温度230℃で溶融混練して樹脂溶融物を得、該樹脂溶融物を円柱状のストランド状に押出し、このストランドを水冷した後、ペレタイザーにて樹脂粒子質量が1mgになるようにカットしてポリオレフィン系樹脂粒子を製造した。
【0061】
(6)ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造
上記方法で得られた樹脂粒子1000g、水性分散媒として水3000ml、分散剤としてカオリン3g、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04g、発泡剤として二酸化炭素(ドライアイス)60gとを、攪拌機を備えた内容積5リットル(L)のオートクレーブ内に仕込み、表3〜5に示す平衡蒸気圧とし、攪拌しながら表3〜5に示す発泡温度よりも5℃低い温度まで加熱昇温し(平均昇温速度3℃/分)、その温度で15分間保持した。次いで、表3〜5に示す発泡温度まで昇温し、その温度で15分間保持した後、オートクレーブ中の内容物を大気圧下に放出し、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を水洗し遠心分離機にかけたのち、養生した後、発泡粒子の物性等を測定した。その結果を表3〜5に示した。
【0062】
[実施例1〜12]
上記発泡粒子の製造方法により、表3〜5に示す樹脂粒子、発泡条件で発泡粒子を作製した。
得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子について、平均気泡径、気泡径の均一性、見掛け密度の均一性の評価を行った。
実施例1〜12で使用した樹脂粒子の原料と発泡条件、及び発泡粒子の評価結果を表3〜5にまとめて示す。
【0063】
[比較例1]
比較例1は、硫酸塩無水物(B)を配合せず、気泡核剤としてPTFEを用いた例である。それ以外は、実施例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0064】
[比較例2]
比較例2では、実施例1における硫酸カリウムアルミニウム無水物の代わりに硫酸カリウムアルミニウム・12水和物(化合物(d))を使用した。それ以外は、実施例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0065】
[比較例3]
比較例3では、実施例1における硫酸カリウムアルミニウム無水物の代わりに、吸水性物質であるポリエチレングリコール(以下、PEGということがある。化合物(e))を1質量部使用した。それ以外は実施例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0066】
[比較例4]
比較例4では、実施例1における硫酸カリウムアルミニウム無水物の代わりにポリビニールアルコール(以下、PVAということがある。化合物(f))を1質量部使用した。それ以外は、実施例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0067】
[比較例5]
比較例5では、実施例1における硫酸カリウムアルミニウム無水物の代わりにポリアクリル酸ナトリウム(化合物(g))を1質量部使用した。それ以外は、実施例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0068】
[比較例6]
比較例6では、実施例1における硫酸カリウムアルミニウム無水物の代わりにポリオレフィン/ポリエーテルブロック共重合体(化合物(h))を1質量部使用した。それ以外は、実施例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0069】
[比較例7]
比較例7は、硫酸塩無水物を配合せず、ホウ酸亜鉛を表4の添加量とした。それ以外は比較例1と同様にして発泡粒子を製造した。
【0070】
[比較例8]
比較例8は、硫酸塩無水物を配合しない以外は実施例11と同様にして発泡粒子を製造した。
【0071】
[比較例9]
比較例9は、硫酸塩無水物を配合せず、気泡核剤としてPTFEを使用した。それ以外は実施例11と同様にして発泡粒子を製造した。
【0072】
以上、実施例、比較例で使用した樹脂粒子の原料と発泡条件、及び発泡粒子の評価結果を表3〜5に、まとめて示す。
【0073】
本実施例と比較例における評価方法について以下に記載する。
一般に、発泡倍率と平均気泡径には相関があるため、比較のためには製造条件を合わせる必要がある。本実施例、比較例においては、硫酸塩無水物(B)や気泡核剤(C)、着色剤の種類や配合量以外の条件、即ち、発泡剤の種類や、平衡蒸気圧、発泡温度などのその他の発泡条件を同じとして発泡させた場合の、発泡粒子の物性を表3〜5に記載している。
【0074】
(見掛け密度)
本発明の製造方法により得られた発泡粒子の見掛け密度は、温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日放置した約500mlの発泡粒子(発泡粒子群の質量W1)を金網などの道具を使用して沈め、金網などの道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1(L)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1(g)を割り算(W1/V1)することにより求めた。
【0075】
なお、一般的に発泡倍率(発泡粒子の見掛け密度)を調整するためには発泡剤量を調整し、目的とする発泡倍率の発泡粒子を作製する。その際には発泡剤量が多い(即ち平衡蒸気圧が高い)ほど発泡倍率を向上させることができる。
このため、実施例、比較例においては、樹脂粒子に配合した硫酸塩無水物(B)や気泡核剤(C)による効果を比較するために、硫酸塩無水物(B)や気泡核剤(C)の種類や配合量以外の、発泡剤、発泡剤量、発泡温度や平衡蒸気圧などのその他の発泡条件を一定として、発泡粒子を得ている。従って、得られた発泡粒子の見掛け密度を比較すると、その他の発泡条件は一定であることから、硫酸塩無水物(B)、さらには気泡核剤(C)の種類や配合量により、得られる発泡粒子の見掛け密度が変化しているといえる。従って、表3〜5の発泡条件が同じであれば、見掛け密度が低いほど、硫酸塩無水物(B)、更には気泡核剤(C)の効果により、より容易に発泡倍率の高い発泡粒子が得られるといえる。即ち、発泡粒子を得る効率(以下、発泡効率ということがある)が高いといえる。
発泡効率が高ければ、発泡剤使用量を削減できることからコスト削減や省エネルギー化による環境負荷低減が見込める。また、発泡剤使用量の削減により平衡蒸気圧が低くなることから高耐圧の生産設備が不要となり、コスト削減が見込める。
【0076】
(平均気泡径)
発泡粒子の平均気泡径は以下の方法にて測定された値である。まず、得られた発泡粒子群から任意に10個の発泡粒子を選択し、これらの発泡粒子について、発泡粒子を略2等分に切断し、発泡粒子断面を得、該断面を顕微鏡にて拡大投影する。この拡大投影図において、発泡粒子の表面から他方の表面に亘り、かつ気泡断面の中心部を通過する直線を略等角度間隔に4本引く。続いて、前記4本の長さの総和(Lμm)を気泡の数の総和(N個)にて除して[L/N]を求められた値を発泡粒子の平均気泡径(μm)とする。
なお、得られた発泡粒子の平均気泡径を比較すると、その他の発泡条件は一定であることから、硫酸塩無水物(B)、さらには気泡核剤(C)の種類や配合量により、得られる発泡粒子の平均気泡径が変化しているといえる。従って、得られた発泡粒子の見掛け密度がほぼ同じであれば、平均気泡径が大きいほど、硫酸塩無水物(B)さらには気泡核剤(C)による平均気泡径の拡大の効果が得られるといえる。
【0077】
(微細気泡の数)
微細気泡の数は以下の基準により評価した。上記の平均気泡径の測定と同様に任意に10個の発泡粒子を選択し、これらの発泡粒子について、発泡粒子を略2等分に切断し、発泡粒子断面を得、該断面を顕微鏡にて拡大投影する。この拡大投影図において、発泡粒子の表面から他方の表面に亘り、かつ気泡断面の中心部を通過する直線を4本引き、上記で求めた平均気泡径の1/3より小さい気泡径を有する、線上の気泡の数を求めた。同様の操作を選択した10個の発泡粒子について行った。該微細気泡の数が多いほど、気泡径の均一性が低いといえる。
【0078】
(見掛け密度の均一性)
発泡粒子の見掛け密度の均一性を以下の基準により評価した。
直径200mm、高さ50mmのJIS篩(目開き1.18、1.40、1.70、2.00、2.36、2.80、3.35mmの段を構成したもの)の最上段(3.35mm)に約200ミリリットル(mL)の発泡粒子を投入し、これをロータップ型振とう機にて10分間振とう後、各段に残った発泡粒子の質量を測定し、粒子径の標準偏差(mm)を算出した。該標準偏差が大きいほど、見掛け密度の均一性が低いといえる。尚、発泡粒子の見掛け密度のばらつき度合いは発泡粒子の気泡径の均一性と相関があり、気泡が不均一であると見掛け密度のばらつき度合いが大きくなる傾向にある。上記観点から、前記標準偏差(見掛け密度の均一性)は、0.3以下であることが好ましい。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(A)と、次式(I)で表される硫酸塩無水物(B)とを押出機内で溶融混練してポリオレフィン系樹脂溶融物とし、該樹脂溶融物を造粒してポリオレフィン系樹脂粒子を得、該樹脂粒子を密閉容器内において水性分散媒に分散させるとともに、加熱下で該樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とした後、該発泡性樹脂粒子を水性分散媒と共に密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させて、発泡粒子とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
III(SO・・・・・(I)
上記式(I)中、Mは1価の陽イオン、MIIIは3価の金属イオンである。
【請求項2】
前記硫酸塩無水物(B)の、20℃における水への溶解度が20(g/100g水)以下であり、80℃における水への溶解度が30(g/100g水)以上である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記硫酸塩無水物(B)の3価の金属イオンがアルミニウムイオンである請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記硫酸塩無水物(B)の配合量がポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して0.01〜2質量部である請求項1から3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−224786(P2012−224786A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95082(P2011−95082)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】