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ポリカルバゾール誘導体含有組成物及び該組成物からなる透明導電体
説明

ポリカルバゾール誘導体含有組成物及び該組成物からなる透明導電体

【課題】良好な導電性を有する透明導電体を容易に製造することができるカルバゾール誘導体含有組成物、及び該組成物からなる透明導電体を提供する。
【解決手段】ポリカルバゾール誘導体を溶解させた溶媒に、金属塩を添加した組成物から形成する。前記金属塩がハロゲン化金属であり、前記ハロゲン化金属が塩化スズ(II)、塩化ナトリウム、塩化鉄(I)、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化リチウム、及び塩化バリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカルバゾール誘導体を含有する組成物及び該組成物からなる透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜などの透明導電体は液晶ディスプレイ、電界発光ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイなどの画像表示装置の表示パネルや太陽電池のパネルに利用され、電圧印加や電荷注入のための電極として利用されている。また二次元情報入力装置であるタッチパネルなどにも広く用いられてきている。さらに、静電気発生を抑えかつ包装材が透け内包物の確認をしやすくした、透明性を有する導電性または帯電防止プラスティックス包装材への用途も検討されている。
【0003】
従来、透明導電体の材料として、金属酸化物である酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)の薄膜をガラス基板あるいはプラスチックシート状に堆積したパネルが用いられてきた。特に、上記金属酸化物に用いられるインジウムは近い将来資源が枯渇し、需給が逼迫する懸念がある。これら金属酸化物は材料の成膜のコストが高く、例えば有機電界発光素子や有機太陽電池のかなりのコストが金属酸化物膜に費やされてしまうといった問題がある。さらに金属酸化物は、有機物質との電子的又は化学的な相互作用が乏しく、例えば有機EL素子の電荷輸送層への電荷注入効率に問題が生じてしまっている。
【0004】
このような観点から、導電性微粒子を透明ポリマー中に分散させた材料を用いて、導電体膜を形成しようとする試みが、例えば下記特許文献1〜3に記載されている。また、近年、ポリチオフェン系の溶媒可溶性導電性ポリマー薄膜を基板上にコーティングするという試みがある(特許文献4参照)。
【0005】
しかしながら、導電性微粒子を用いる方法では、導電性微粒子同士の相互作用が強く、透明ポリマー中に均一に分散させるのが困難である。さらに、得られるポリマー溶液を基板上に塗布する工程において、塗布の剪断力によって導電性ポリマー同士が会合してしまうという問題点がある。また、導電性ポリマーを用いる方法では、完全な無色透明化を実現することは困難であり、僅かであるが着色している。そのため、厚膜にすると着色が顕著になってしまうという問題点もある。
【0006】
本発明者らは、このような不都合を解消すべく、ポリカルバゾール誘導体を電解重合や化学重合により合成し、膜状態で金属を蒸着接触させることにより透明な膜を製造する方法や、ポリカルバゾール誘導体を溶媒に溶解させてそこに金属粒を加えることで金属表面と接触させ、そのインクからスピンコート膜を作製することにより、透明な導電膜を製造する方法を見出している(特許文献5、6参照)。これらの方法によると、電解重合により製造する場合には導電膜を電極基板上に形成させることからスケールアップが難しく、また溶媒に溶かして金属粒表面と反応させる場合には反応量の制御が難しく、また反応時間に1日以上を要するなど、実用化に向けて更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−219697号公報
【特許文献2】特開2000−123658号公報
【特許文献3】特開平3−167590号公報
【特許文献4】特開2002−60736号公報
【特許文献5】特開2007−165199号公報
【特許文献6】特開2010−257797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、良好な導電性を有する透明導電体を容易に製造することができるカルバゾール誘導体含有組成物、及び該組成物からなる透明導電体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題について本発明者は検討を行ったところ、ポリカルバゾール誘導体を溶媒に溶解させ金属塩を加えることで得られた組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は以下のとおりである。
(1)ポリカルバゾール誘導体、金属塩および溶媒を含有する組成物。
(2)前記金属塩がハロゲン化金属である(1)に記載の組成物。
(3)前記ハロゲン化金属が塩化スズ(II)、塩化ナトリウム、塩化鉄(I)、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化リチウム、及び塩化バリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、(2)に記載の組成物。
(4)前記ポリカルバゾール誘導体が下記一般式(A)で表される少なくとも1種のN−アルキルカルバゾールを重合させて得られる、(1)から(3)のいずれかに記載の組成物。
【化1】

(式中、RはCn2n+1(nは1以上)で表されるアルキルで、アルキルの少なくとも1つの水素は、ヒドロキシ、カルボキシル、スルホ及びアミノからなる群から選択される少なくとも1種の基で置き換えられていてもよい。)
(5)前記ポリカルバゾール誘導体の重合度が2から100である、(1)から(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)前記溶媒がγ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、アセトン、及びアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、(1)から(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)組成物の全重量に対して、ポリカルバゾール誘導体の含有量が0.05重量%以上20重量%以下であり、金属塩の含有量が0.01重量%以上10重量%以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)前記組成物は、2000倍希釈濃度で測定した波長380nmから780nmの範囲内の紫外可視吸収スペクトルにおける吸光度が0.5以下である(1)から(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)(1)から(8)のいずれかに記載の組成物から溶媒を除去することによって得られる透明導電体。
(10)表面抵抗が1×101Ω/□以上、1×1010Ω/□以下であり、全光線透過率が85%以上であり、ヘイズ値が7%以下である(9)に記載の透明導電体。
(11)2000倍希釈濃度で測定した波長380nmから780nmの範囲内の紫外可視吸収スペクトルにおける吸光度が0.1以下である、(9)又は(10)に記載の透明
導電体。
(12)基板上に(9)から(11)のいずれかに記載の透明導電体を積層させてなるデバイス素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、良好な透明性と導電性を有する透明導電体を、短時間で製造することができるポリカルバゾール誘導体含有組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】合成したN−(2−エチルヘキシル)カルバゾールのNMRチャートである。
【図2】合成したポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)のNMRチャートである。
【図3】実施例1で製造した組成物1において、塩化スズの量を変化させたときのスペクトルを表す図である。
【図4】実施例1で製造した膜において、塩化スズの量を変化させたときのスペクトルを表す図である。モノマーに対する塩化スズの添加量が増えると、吸光度が下がり、より透明な膜となる。
【図5】実施例1で製造した膜において、塩化スズの量を変化させたときのスペクトルを表す図である。53mgの塩化スズを添加した膜は、吸光度がより低い。
【図6】実施例2で製造した膜のスペクトルを表す図である。塩化スズを添加しない場合と比較して、塩化スズを添加した膜は、吸光度がより低い。
【図7】実施例3で製造した膜のスペクトルを表す図である。塩化ナトリウムを8.8mg添加した膜は、吸光度がより低い。
【図8】実施例4で製造した膜のスペクトルを表す図である。炭酸カルシウムを21.0mg添加した膜は、吸光度がより低い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の組成物は、ポリカルバゾール誘導体、金属塩、及び溶媒を含有する。本発明の組成物を用いて、スピンコートなどの手法により形成された膜は、透明かつ良好な導電性を有することから、電子デバイス素子などに好適に用いることができる。本発明者らは特許文献6に示すように、ポリカルバゾール誘導体を用いた化学重合による透明な導電体を開発している。しかしながら、透明化の工程の時間短縮や、透明導電体の導電性など、改善すべき点も存在した。本発明者は、導電体の透明化のために金属塩を用いることで、透明導電体の改善に想到したものである。
【0013】
<ポリカルバゾール誘導体>
本発明の組成物に含有されるポリカルバゾール誘導体は、カルバゾール誘導体を重合させて得られる重合体である。カルバゾール誘導体としては特段限定されないが、以下に示すN−アルキルカルバゾールであることが好ましい。
【化2】

【0014】
上記式中、nは1以上の整数であり、アルキル(Cn2n+1)は、1つ又は複数の水素がヒドロキシ、カルボキシル、スルホ及びアミノから選択される少なくとも1種の基で置
き換えられていてもよい。カルバゾールのN位と結合している炭素は、1級炭素又は2級炭素であることが好ましい。商業的に入手容易という観点から、炭素数22以下(上記式において、nが22以下を示す。)のアルキルであることが好ましい。また、溶媒への溶解性の観点から、炭素数2以上(上記式において、nが2以上を示す。)のアルキルであることが好ましい。炭素数が7〜22(上記式において、nが7〜22を示す。)のアルキルであることが更に好ましい。
【0015】
本発明で用いられるポリカルバゾール誘導体は、1種類のカルバゾール誘導体を重合させて得られるホモポリマーであっても、2種類以上のカルバゾール誘導体を共重合させて得られるコポリマーであってもよい。また、ポリカルバゾール誘導体としては、1種類のポリカルバゾール誘導体のみであっても、誘導体部分が異なる2種類以上のポリカルバゾール誘導体を混合して用いてもよい。
ポリカルバゾール誘導体は、着色しており、透明性が低いために、透明とするための手段が必要となるが、本発明では、ポリカルバゾール誘導体を溶媒に溶解させ、金属塩を加えた組成物から成膜することで、透明導電体とすることができる。
よって、本発明の別の態様は、透明導電体を製造する方法であって、ポリカルバゾール誘導体を溶解した溶媒に金属塩を加える工程、及び前記工程により得られた溶液を成形し、透明導電体を得る工程、を含む透明導電体の製造方法である。
透明導電体は、組成物を基板に塗布し、溶媒を除去することによって得られる。基板への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、ディスペンス法およびインクジェット法等の一般的な方法を用いることができる。膜厚の均一性および生産性の観点から、スピンコート法とスリットコート法が好ましい。溶媒の除去は、室温乾燥、加熱乾燥または減圧乾燥のいずれを用いてもよいし、また、併用することもできる。基板としては、堅くてもよく、曲がり易くてもよい。基板の材料としては、たとえばガラス、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリロイル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルが挙げられる。基板材料は、高い光線透過率と低いヘイズ値を有することが好ましい。
【0016】
ポリカルバゾール誘導体としては、下記式に示したとおり、例えばポリ(N−アルキルカルバゾール)の4量体、2量体を例示する。
下記式において、nは上記式と同じである。また、ポリカルバゾール誘導体の重合度は、透明度及び強度の観点から2〜100であることがより好ましく、2〜22が特に好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
<金属塩>
本発明の組成物は、ポリカルバゾール誘導体と金属塩とを反応させることで、成形した導電体を透明にすることができる。反応させる金属塩は特段制限されないが、ハロゲン化金属がより好ましい。このようなハロゲン化金属塩の具体例は、塩化スズ(II)、塩化ナトリウム、塩化鉄(I)、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化銀、塩化銅、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化リチウム、塩化バリウム、塩化カリウムが挙げられる。この中でも特に、塩化スズ、塩化ナトリウム、塩化亜鉛が好ましく用いられる。
【0019】
本発明の組成物中におけるポリカルバゾール誘導体と金属塩の反応は、特許文献6に開示するような、単なる金属からポリカルバゾールへの電子の移動により発色に起因するカチオンラジカル又はジカチオンを消滅させる反応ではなく、ポリカルバゾール誘導体と金属イオンにより錯体を形成する反応であると本発明者は推測している。よって、本発明の組成物中には、ポリカルバゾール誘導体金属錯体が存在し、このような錯体は新規な化合物であると考えられる。ポリカルバゾール誘導体において単に電子の授受が行われるのみならず、錯体を形成していると考える理由としては、i)組成物中に金属塩を添加した際に、電子授受による色の変化と比較してはるかに短い時間で着色の変化が生じること、ii)成形した透明導電体の導電性が、大きく改善されていること、が挙げられる。
よって本発明の別の態様としては、ポリカルバゾール誘導体を溶解させた溶媒に金属塩を添加してなるポリカルバゾール誘導体金属錯体である。
【0020】
本発明の組成物中におけるポリカルバゾール誘導体の含有量は、組成物全重量に対して0.05重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。また、本発明の組成物中における金属塩の含有量は、0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましい。また、本発明の組成物中におけるポリカルバゾール誘導体(モノマー換算)と金属塩との含有モル比は、1:10〜100:1であることが好ましく、1:1〜10:1であることが、より透明性を安定させる観点からより好ましい。
【0021】
<溶媒>
本発明の組成物に用いる溶媒は、ポリカルバゾール誘導体を溶解することができる限り特段限定されない。具体的には、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド等のホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール等のアルコール、γ−ブチロラクトン等のラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン、プロピレンカーボネート等のカーボネート、アセトン等のケトン等を用いることができる。これらの溶媒のうち1種のみ用いてもよく、2種以上混合して用いることもできる。金属塩の溶解性の点から、極性溶媒が好ましく、ポリ(N−アルキルカルバゾール)の溶解性から、有機溶媒が好ましい。このうち、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、アセトン、アセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの溶媒はスピンコートなどにより成膜した後、風乾、ホットプレートまたは真空乾燥による加熱で除去することができる。
【0022】
<本発明の組成物>
ポリカルバゾール誘導体、金属塩及び溶媒を含有する本発明の組成物は、透明導電体形成用インクとして用いることができる。このインクはスピンコート、スクリーン印刷、インクジェット等の成膜手段により、必要とする大きさの透明導電体を簡易に作製することができることから、透明導電体を作製した後に加工する手間を省くことができる。
また、特許文献6に開示される、本発明者らによる金属と接触させることにより作成したインクと比較して、本発明の組成物では色の消失スピードが著しく早い。これは、金属と接触させることによる色の消滅のメカニズムが、金属の仕事関数とポリアルキルカルバゾールのイオン化ポテンシャルの差を駆動力とするのに対し、本発明の組成物では、ポリカルバゾール誘導体と金属塩が反応して錯体を形成すると考えられるため、反応速度が著しく早くなると推測している。
【0023】
また、本発明の組成物は、透明導電体の透明度の観点から波長380nmから780nmの範囲内の規格化吸収スペクトル(紫外可視吸収スペクトル)の値が0.5以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。組成物の規格化吸収スペクトルは、例えば溶媒を含む組成物を2000倍に希釈することにより溶液状態で測定することができる。
【0024】
上記成膜手段により得られた本発明の透明導電体は、透明でありかつ高い電気導電性を有する。本発明の透明導電体は、透過スペクトル測定において、450〜700nmの波長での透過率が70%以上であり、非常に透明度が高い。また、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。ポリカルバゾール誘導体は、金属塩との反応により、成膜した導電体の透過スペクトルの透過率が増加する。これによりポリカルバゾール誘導体が金属塩と反応したと判断できる。
また、本発明の透明導電体は、透明度の観点から波長380nmから780nmの範囲内の光の規格化吸収スペクトルの値が0.5以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。規格化吸収スペクトルは、例えば溶媒を含む組成物を2000倍に希釈することにより溶液状態で測定することができる。
また、本発明の透明導電体は、導電性を良好にする観点から、表面抵抗が1.0×10
1Ω/□以上であることが好ましく、1.0×104Ω/□以上であることがより好ましい。また、1.0×1011Ω/□以下であることが好ましく、1.0×1010Ω/□以下であることがより好ましい。
また、本発明の透明導電体は、透明度の観点からヘイズ値が7%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
【0025】
また、本発明における透明導電体は、その形状は特段限定されないが、一般的に塗布により製造する場合には、膜状及び板状となる。膜状である場合にはその厚みはおおよそ10nm〜0.1mm程度であり、板状の場合には0.1mmを超える場合もある。
【0026】
また、本発明における透明導電膜は、ガラスや透明プラスチックなどの透明基板上に積層させることで、導電性を有するデバイス素子として使用することができ、様々な分野に応用することができる。以下、本発明のポリカルバゾール誘導体の製造方法について説明する。
【0027】
<カルバゾール誘導体の合成>
本発明の組成物中に含有されるポリカルバゾール誘導体について、ポリ(N−アルキルカルバゾール)を例に挙げて説明する。カルバゾールのN位にアルキルが結合したN−アルキルカルバゾールは、水素化ナトリウム等の強塩基性のアルカリ金属化合物存在下で、カルバゾールとアルキル化剤であるハロゲン化アルキルとの脱ハロゲン化水素反応により合成することができる。または、カルバゾールカリウム塩とハロゲン化アルキルの脱ハロゲン化カリウム反応で合成することができる。なお、酸化剤を用いる化学重合で、ポリ(N−アルキルカルバゾール)を合成する場合には、カルバゾールのN位に結合するアルキルは、一級炭素または二級炭素であることが好ましい。カルバゾールのN位に結合するアルキルが三級炭素の場合には、重合時にアルキルが脱離する傾向にあり、所望のポリ(N−アルキルカルバゾール)が得難い場合がある。
【0028】
<ハロゲン化アルキル>
上記アルキル化剤であるハロゲン化アルキルは、試薬メーカーより入手することができる。実験室で取り扱うには、反応性、アルキルの種類の豊富さから、アルキルモノ臭化物が扱いやすい。入手できるアルキルモノ臭化物は、具体的に、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ブロモ−3−メチル−ブタン、1−ブロモヘキサン、2−ブロモヘキサン、3−ブロモヘキサン、1−ブロモメチルペンタン、1−ブロモヘプタン、3−ブロモヘプタン、4−ブロモヘプタン、1−ブロモ−5−メチルヘキサン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、1−ブロモオクタン、2−ブロモオクタン、1−ブロモノナン、2−ブロモノナン、1−ブロモデカン、1−ブロモウンデカン、1−ブロモドデカン、2−ブロモドデカン、1−ブロモトリデカン、1−ブロモテトラデカン、2−ブロモテトラデカン、1−ブロモペンタデカン、1−ブロモヘプタデカン、1−ブロモ−2−メチルヘキサデカン、1−ブロモオクタデカン、1−ブロモエイコサン、1−ブロモドコサンがあり、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)、ランカスター社等から入手できる。
【0029】
<ハロゲン化アルキルの合成>
上記ハロゲン化アルキルは、アルキルモノハロゲン化物以外に、アルケンのハロゲン水素付加反応により得ることができる。この反応は、アルケン溶液にハロゲン化水素を添加することで容易に進行する。アルケンのハロゲン化水素付加反応でハロゲン化アルキルを得るには、JOHN WILEY & SON,INC.出版のOrganic Syntheses IV 543−544頁(1962年発行)記載の方法に従ってアルキルモノヨウ化物をアルケンのヨウ化水素付加反応により、合成することが都合がよい。
【0030】
入手できる上記アルケンには、3,3−ジメチル−1−ブテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−2−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−2−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、5−メチル−2−ヘプテン、5−メチル−3−ヘプテン、2−オクテン、trans−3−オクテン、trans−4−オクテン、2−ノネン、4−ノネン、3,3,5−トリメチル−1−ヘキセン、cis−2−デセン、cis−4−デセン、cis−5−デセン、5−ドデセン、7−テトラデセン、cis−9−トリコセンがあり、東京化成工業(株)等より入手できる。
【0031】
上記、アルケンのヨウ化水素付加反応により、2−ヨード−3,3−ブタン、3−ヨードヘキサン、4−ブロモヘキサン、2−ヨード−4−メチルペンタン、3−ヨード−4−メチルペンタン、2−ヨード−3,3−ジメチルペンタン、2−ヨード−4,4−ジメチルペンタン、3−ヨード−ヘプタン、4−ヨードヘプタン、2−ヨード−3−メチルヘキサン、2−ヨード−4−メチルヘキサン、3−ヨード−4−メチルヘキサン、2−ヨード−5−メチルヘキサン、3−ヨード−5−メチルヘキサン、2−ヨード−ジメチルヘキサン、2−ヨード−3,4−ジメチルヘキサン、2−ヨード−4,4−ヘキサン、3−ヨード−5−メチルヘプタン、4−ヨード−5−メチルヘプタン、3−ヨード−オクタン、4−ヨードオクタン、5−ヨードオクタン、3−ヨードノナン、5−ヨードノナン、2−ヨード−3,3,5−ヘキサン、3−ヨードデカン、4−ヨードデカン、6−ヨードデカン、6−ヨード−ドデセン、8−テトラデセン、10−ヨードトリコサンを得ることができる。
【0032】
<ポリ(N−アルキルカルバゾール)の形成>
ポリ(N−アルキルカルバゾール)を形成する工程について説明する。ポリ(N−アルキルカルバゾール)は、N−アルキルカルバゾールを含む溶媒に酸化剤を加えて重合を行うことで得られる。
上記の重合では、比較的高い誘電率の溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレンカーボネート、ピリジン、ジオキサン、酢酸、水およびこれらの混合物を用いることができる。重合時のモノマー濃度は、上記の溶媒の重量を100重量部とした場合、0.01重量部以上300重量部以下とすることが好ましく、0.1重量部以上50重量部以下であることがより好ましい。0.01重量部以上とすることで生成物であるポリ(N−アルキルカルバゾール)の生産性を上げることができ、0.1重量部以上とすることでこの効果がより顕著となる。また300重量部以下とすることで反応収率を上げることができ、50重量部以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0033】
また酸化剤としては、例えば第二鉄塩、第二銅塩、セリウム塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸アンモニウム、三フッ化ホウ素、臭素酸塩、過酸化水素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、なかでも、第二鉄塩が好ましい。第二鉄塩としては、例えば、過塩素酸鉄(III)が例示できる。この過塩素酸鉄(III)を使用することで重合度を上げることができる。酸化剤の濃度としては、適宜調整が可能であり限定されるわけではないが、溶媒の重量を100重量部とした場合、0.01重量部以上500重量部以下とすることが好ましく、0.1重量部以上100重量部以下であることがより好ましい。0.01重量部以上とすることで原料であるN−アルキルカルバゾールと同等以上の濃度となるために効率的に重合反応を進めることができ、0.1重量部以上とすることでこの効果がより顕著となる。また500重量部以下とすることで溶液の粘度上昇を抑制し、やはり効率的に重合反応を進めることができ、100重量部以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0034】
重合において、反応温度は酸化剤やN−アルキルカルバゾールの濃度等により適宜調整が可能であり、特に限定されないが、−100℃以上100℃以下であることが好ましく、−80℃以上90℃以下であることがより好ましい。−80℃以上とすることで生成物であるポリ(N−アルキルカルバゾール)の電気伝導度を高めることができるという利点がある。また100℃以下とすることでポリ(N−アルキルカルバゾール)の架橋反応や過酸化反応を抑止することができ、電気伝導度の低下を防ぐことができるという利点がある。また反応時間についても、反応温度と同様に適宜調整が可能であり、特に限定されないが、例えば上記好ましい温度範囲において1秒以上1週間以下であることが好ましく、より好ましくは1秒以上48時間以下である。
【0035】
化学重合による反応後の溶液を濾過、洗浄、乾燥させることにより、粉末状のポリ(N−アルキルカルバゾール)を得ることができる。これらの吸引濾過、洗浄、乾燥工程は公知の方法により適宜行えばよい。
【0036】
本発明のポリアルキルカルバゾール誘導体は、先に述べたとおり金属塩との間で錯体を形成すると考えられるが、そうでない場合であっても金属塩との間で複合化している。金属塩との複合化については、粉末状のポリ(N−アルキルカルバゾール)をγ−ブチロラクトンなどの溶媒に溶解し、そこに金属塩を適宜加えて室温で攪拌すれば、溶液の色が緑色から褐色に変化する。緑色が消失したところで反応は終了する。高沸点溶媒の場合は透明導電体を得るために、スピンコートなどの成膜プロセスの後に真空乾燥やホットプレート上で加熱するなど、溶媒を除去する必要がある。低沸点溶媒はスピンコートなどの成膜プロセスの後、風乾することにより溶媒は除去できる。
【実施例】
【0037】
上記実施形態に基づき実際に透明導電体及び透明導電体形成用インクの作製を行い本発明の効果の確認を行った。以下、実施例を用いて説明を行うが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、膜厚の測定方法は、段差計XP−Plus((株)テックサイエンス)、表面抵抗の測定には抵抗率計Hiresta−GP((株)三菱化学アナリテック)、ヘイズおよび全光線透過率の測定にはヘーズメーターNDH5000(日本電色工業(株))、紫外可視吸収スペクトル測定は紫外可視分光器V−660(日本分光(株))、NMRスペクトル測定にはVARIAN 500MHz NMR(VARIAN)を用いた。
【0038】
<アルキル化剤の合成>
N−アルキルカルバゾールの製造に用いるアルキル化剤は、アルキルモノ臭素化物を東京化成工業(株)、シグマ−アルドリッチ社及びランカスター社より購入した。
<N−アルキルカルバゾールの合成>
テトラヒドロフランとN,N−ジメチルホルムアミドの3対1(体積比)の混合溶媒にカルバゾールを溶解し、上記で得たアルキル剤(アルキル臭化物又はアルキルヨウ化物)をカルバゾール1当量に対して1当量加え、撹拌しながら水素化ナトリウム1.5当量に相当する60重量%の水素化ナトリウム鉱物油分散物(関東化学(株)製、商品名「水素化ナトリウム」)を徐々に加え、室温で1時間撹拌した。そこに、反応を停止させるためにメタノールを気泡が出なくなるまで加えた後、溶媒を減圧下で蒸発除去した。残渣にジクロロメタンを加え、3N塩酸と水とで洗浄した。無水硫酸マグネシウムを加え乾燥し、濾過した。得られた濾液に含まれる溶媒を真空除去し、ヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製した。
【0039】
<N−(2−エチルヘキシル)カルバゾールの合成>
ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)の重合に用いるモノマー(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)を例に具体的な合成法を説明する。
テトラヒドロフラン(30mL)とN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)の混合溶液にカルバゾール(東京化成工業(株)製、6.0g、0.036mol)を溶かし、2−エチルヘキシルブロミド(アルドリッチ社製、3.95g、0.036mol)を加え、さらに室温(約20℃)で60重量%水素化ナトリウム鉱物油分散物((関東化学(株)製、商品名「水素化ナトリウム」、2.16g、0.054mol)を徐々に添加し、1時間攪拌し反応を完了させた。
反応完了後、得られた反応液に、メタノールを気泡が出なくなるまで注ぎ、反応を停止させた。エバポレーターで反応液中の溶媒を除去後、濃縮物を塩化メチレンで抽出し、有機層を3N塩酸、水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液中の塩化メチレンをエバポレーターで除去し、ヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。エバポレーターでヘキサンを除去し、透明液体(8g、収率80%)を得た。H−NMRにより、N−(2−エチルヘキシル)カルバゾールであることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって純度が99.5%であることを確認した。図1にNMRチャートを示す。
【0040】
<ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)の製造>
アセトニトリル(10mL)にモノマーであるN−(2−エチルヘキシル)カルバゾール(0.14g、0.05mol)と酸化剤である過塩素酸鉄(III)(0.33g、0.1mol)を溶解し、窒素雰囲気下、室温(約20℃)で24時間攪拌し、化学重合を行った。反応液を濾過し、濾過物をメタノールで洗浄し、40℃で1時間乾燥して、目的とするポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)の緑色粉末(0.21g)を得た。図2にNMRチャートを示す。
【0041】
<実施例1>
上記ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)0.1gをγ−ブチロラクトン2mLに溶解し、塩化スズ29mgを加えて攪拌した。塩化スズは数秒程度ですぐに溶解し、溶液色が濃緑色から褐色に変化し、本発明の組成物1を得た。
組成物1
ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール) 4.2重量%
塩化スズ 1.2重量%
γ−ブチロラクトン 94.6重量%
組成物1において、塩化スズの量を変えたときの組成物を、2000倍に希釈した溶液のスペクトルを図3に示す。塩化スズの量を変化させて組成物を作成した場合であっても、可視光領域の吸光度は低いものであった。なお、図3の1/8eq.は塩化スズを5mg加えたときのものである。
【0042】
スライドガラス上にスピンコーター((株)エイブル製 AS−300)を使い、上記組成物1を1,000rpmでスピンコートし、それを真空乾燥器で60℃ 0.3kPaで乾燥した。このスライドガラス上のポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)膜の透過スペクトルを図4に示す。スペクトルから明白なように、この膜は無色透明であった。膜厚は70nmであった。この膜の二重リング法による表面抵抗は、5.74×107Ω/□、電気伝導度は2.51×10-3S/cm-1であった。このときのヘイズは1.4%、全光線透過率は90%であった。図5には、塩化スズの添加量を53mgとした場合と、115mgとした場合の組成物を成膜し、乾燥後の膜のスペクトルを示す。いずれの膜も無色透明であった。
【0043】
<実施例2>
ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)と同様の手順で得たポリ(N−オクチルカルバゾール)0.1gをγ−ブチロラクトン2mLに溶解し、塩化スズ29mgを加えて攪拌した。塩化スズは数秒程度ですぐに溶解し、溶液色が濃緑色から褐色に変化し、本発明の組成物2を得た。
組成物2
ポリ(N−オクチルカルバゾール) 4.2重量%
塩化スズ 1.2重量%
γ−ブチロラクトン 94.6重量%
【0044】
スライドガラス上にスピンコーター((株)エイブル製 AS−300)を使い、上記組成物2を1,000rpmでスピンコートし、それを真空乾燥器で60℃ 0.3kPaで乾燥した。このスライドガラス上のスズと複合化したポリ(N−オクチルカルバゾール)膜の透過スペクトルを図6に示す。スペクトルから明白のように、この膜は無色透明であった。膜厚は10nmであった。この膜の二重リング法による表面抵抗は4.74×109Ω/□、電気伝導度は、2.1 × 10-4 S・cm-1であった。このときのヘイズは3.1%、全光線透過率は91%であった。また、図6には塩化スズの添加量を116mgとした場合の組成物を成膜し、乾燥後の膜のスペクトルも示す。
実施例1、2より、塩化スズの添加によって溶液色は緑色から褐色に変化し、加える塩化スズの量によって透明特性を制御できることがわかる。
【0045】
<実施例3>
上記ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)0.1gをγ−ブチロラクトン2mLに溶解し、塩化ナトリウム8.8mgを加えて攪拌した。溶液色が濃緑色から暗褐色に変化し、本発明の組成物3を得た。
組成物3
ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール) 4.2重量%
塩化ナトリウム 0.4重量%
γ−ブチロラクトン 95.4重量%
【0046】
スライドガラス上にスピンコーター((株)エイブル製 AS−300)を使い、上記組成物3を1,000rpmでスピンコートし、それを真空乾燥器で60℃ 0.3kPaで乾燥した。膜厚は200nmであった。この膜の二重リング法による表面抵抗は1.01×1011Ω/□、電気伝導度は、4.95 × 10-7 S・cm-1であった。ヘイズは2.3%、全光線透過率は89%であった。実施例3では、塩化ナトリウムの添加によって溶液色は濃緑色から暗褐色に変化した。膜のスペクトルを図7に示す。400nmと800nmに吸収が無いことから、緑色が退色したものとわかる。また、図7には塩化ナトリウムの添加量を4.4mgとした場合の組成物を成膜し、乾燥後の膜のスペクトルも示す。
【0047】
<実施例4>
上記ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)0.1gをγ−ブチロラクトン2mLに溶解し、炭酸カリウム21mgを加えて攪拌した。溶液色が濃緑色から暗褐色に変化し、本発明の組成物4を得た。
組成物4
ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール) 4.2重量%
炭酸カリウム 0.9重量%
γ−ブチロラクトン 94.9重量%
【0048】
スライドガラス上にスピンコーター((株)エイブル製 AS−300)を使い、上記
組成物4を1,000rpmでスピンコートし、それを真空乾燥器で60℃ 0.3kPaで乾燥した。膜厚は75nmであった。この膜の二重リング法による表面抵抗は4.13×1012Ω/□、電気伝導度は3.22×10-5S/cmであった。ヘイズは6.9%、全光線透過率は91%であった。実施例4では、炭酸カリウムの添加によって溶液色は緑色から暗褐色に変化した。膜のスペクトルを図8に示す。400nmと800nmに吸収が無いことから、緑色が退色したものとわかる。また、図8には炭酸カリウムの添加量を10.5mgとした場合の組成物を成膜し、乾燥後の膜のスペクトルも示す。
【0049】
<実施例5>
上記ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)0.1gをN−メチルピロリドン4mLに溶解し、塩化スズ29mgを加えて攪拌した。溶液色が濃緑色から暗褐色に変化し、本発明の組成物5を得た。
組成物5
ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール) 4.6重量%
塩化スズ 1.3重量%
N−メチルピロリドン 94.1重量%
【0050】
スライドガラス上にスピンコーター((株)エイブル製 AS−300)を使い、上記組成物5を1,000rpmでスピンコートし、それを真空乾燥器で60℃ 0.3kPaで乾燥した。膜厚は30nmであった。この膜の二重リング法による表面抵抗は3.02×108Ω/□、電気伝導度は、1.10×10-3 S・cm-1であった。ヘイズは2.8%、全光線透過率は90%であった。実施例5により、γ−ブチロラクトン以外の溶媒でも、本発明の組成物から透明導電膜を成膜することができる。
【0051】
<比較例1>
特許文献6に記載のとおり、ポリ(N−(2−エチルヘキシル)カルバゾール)0.1gをクロロホルム4mLに溶解し、そこに粒状の亜鉛0.2gを加え、比較組成物を作製した。加えた錫は一部溶解した。残った錫の粒は濾過で取り除いた。緑色であった溶液は、灰黒色に変化した。溶液色の変化には48時間以上かかった。
【0052】
スライドガラス上にスピンコーター((株)エイブル製 AS−300)を使い、上記比較組成物を1,000rpmでスピンコートし、それを真空乾燥器で60℃ 0.3kPaで乾燥した。膜厚は200nmであった。この膜の二重リング法による表面抵抗は4.44×1011 Ω/□、電気伝導度は1.13×10-7S/cmであった。
【0053】
特許文献6では、金属塩ではなく金属を用いて透明導電体用の組成物を製造しているが、溶液色の変化に数時間以上を要した。本発明の組成物では、数秒で溶液色の変化が起こり、生産効率が非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルバゾール誘導体、金属塩および溶媒を含有する組成物。
【請求項2】
前記金属塩がハロゲン化金属である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化金属が塩化スズ(II)、塩化ナトリウム、塩化鉄(I)、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化リチウム、及び塩化バリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリカルバゾール誘導体が下記一般式(A)で表される少なくとも1種のN−アルキルカルバゾールを重合させて得られる、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【化1】

(式中、RはCn2n+1(nは1以上)で表されるアルキルで、アルキルの少なくとも1つの水素は、ヒドロキシ、カルボキシル、スルホ及びアミノからなる群から選択される少なくとも1種の基で置き換えられていてもよい。)
【請求項5】
前記ポリカルバゾール誘導体の重合度が2から100である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒がγ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、アセトン、及びアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に対して、ポリカルバゾール誘導体の含有量が0.05重量%以上20重量%以下であり、金属塩の含有量が0.01重量%以上10重量%以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、2000倍希釈濃度で測定した波長380nmから780nmの範囲内の紫外可視吸収スペクトルにおける吸光度が0.5以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物から溶媒を除去することによって得られる透明導電体。
【請求項10】
表面抵抗が1×101Ω/□以上、1×1011Ω/□以下であり、全光線透過率が85%以上であり、ヘイズ値が7%以下である請求項9に記載の透明導電体。
【請求項11】
2000倍希釈濃度で測定した波長380nmから780nmの範囲内の紫外可視吸収スペクトルにおける吸光度が0.1以下である、請求項9又は10に記載の透明導電体。
【請求項12】
基板上に請求項9から11のいずれか1項に記載の透明導電体を積層させてなるデバイス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115000(P2013−115000A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262442(P2011−262442)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】