説明

ポリカーボネート−シロキサンコポリマー及びブレンド用のスジのない黒色配合物

本発明は、ポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂と着色剤の組合せとを含んでなる黒色樹脂組成物に関する。このコポリマーはポリカーボネート単位とポリオルガノシロキサン単位とを含んでおり、シロキサンドメインのメジアン径は100nmを超える。また、着色剤の組合せは1種以上の有機着色剤と1種以上の無機着色剤とを含んでおり、有機と無機の着色剤を組合せた結果、L値が約29未満、C値が約1.5未満(鏡面反射成分含有)であるか、又はL値が8未満、C値が約3未満(鏡面反射成分除外)である黒色成形品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート−シロキサン樹脂及びポリカーボネート−シロキサン樹脂含有ブレンド用のスジのない黒色配合物に関する。本発明はさらに、スジのない黒色配合物を含有する樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート−シロキサンコポリマー及びブレンドは非混和性の2相を含有する。シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えると、マトリックスは部材の厚さに応じて半透明又は不透明にもなり、着色性に問題を生じる。ドメインが不規則形状である場合には、径はドメインの最大寸法に相当する。
【0003】
ドメイン径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡のような顕微鏡技術を用いて特徴付けられる。通例、メジアン径はSEM又はTEM技術で測定したドメイン径の分布によって求められる。かかるコポリマー及びブレンド中のシロキサンドメインは可視光波長に比べて無視できない大きさであり、こうしたドメインの屈折率はポリカーボネート相と大きく異なるので、かなりの量の光散乱が起こる。
【0004】
その結果、高彩度の色の白色「乳状」外観を与え、非常に低彩度の色及び色の深みを得るのが極めて難しい。さらに、成形品のシロキサンドメインの粒径分布における局部的な差により、スジ(streaking)、フローライン又はニットラインと呼ばれる視認し得る欠陥をもつ外観を生ずる。また、着色剤は他のドメインよりもあるドメインに高い親和性を有するので、こうした系の不均質性によって、着色剤が偏析する機会もある。
【0005】
上述の要因の結果、シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー又はブレンド組成物から得られる成形品では、審美的に魅力的な漆黒色は未だに得られていない。
【0006】
当業者には周知のように、漆黒着色樹脂は普通カーボンブラックの添加によって得られる。ポリカーボネート及びポリカーボネートブレンドを含む市販の漆黒色配合物は通例0.2〜0.5%のカーボンブラックを含んでいる。しかし、かかる配合物はシロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー及びブレンドに配合することはできない。着色樹脂から製造された完成品にスジ(ニットライン又はフローラインともいわれる)が現れるからである。
【特許文献1】米国特許第4217438号明細書
【特許文献2】米国特許第5530083号明細書
【非特許文献1】“Coloring Plastics”, ed. Webber, Thomas G., Chapter 2, “Pigments for Plastics”, Wiley Interscience,NY(1979),p.38〜39
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるコポリマー及びブレンドにおいて低い明度及び非常に低い彩度のポリカーボネート−ポリシロキサンを与える着色剤組成物を提供できれば望ましい。さらに、シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超える漆黒のポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー及びブレンドを与える着色剤組成物を提供できれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様では、本発明は、黒色樹脂組成物であって、
ポリカーボネート単位とポリオルガノシロキサン単位とを含むポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂で、シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂、及び
1種以上の有機着色剤と1種以上の無機着色剤とを含んでなる着色剤の組合せで、約29未満のL値と約1.5未満のC値(鏡面反射成分含有)又は8未満のL値と約3未満のC値(鏡面反射成分除外)を有する黒色成形品を生じる有機着色剤と無機着色剤の組合せを含んでなる組成物に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを含む着色組成物のニットラインの視認性を低減する方法であって、約29未満のL値と約1.5未満のC値(鏡面反射成分含有)又は8未満のL値と約3未満のC値(鏡面反射成分除外)を有する黒色成形品が得られるように1種以上の有機着色剤と1種以上の着色無機着色剤とを含む着色剤の組合せをポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーに配合することを含んでなる方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示す通り、GE Plastics(USA)のLEXAN 141R−701などの市販の漆黒ポリカーボネート組成物のように、市販の漆黒ポリカーボネート配合物は0.2〜0.5%のカーボンブラックを含んでいる。プラスチックの着色に用いられる黒色顔料は、例えば「Coloring Plastics」、Thomas G.Webber編、Wiley Interscience、NY(1979)、第38〜39頁に記載されている。色の暗いニットライン、すなわち「スジ」が、スジでの異なるシロキサンドメイン径分布の結果としてみられる。ニットライン領域での平均シロキサンドメイン径は小さく、そのため光散乱が少なく、色の深みが深くなる。その結果、スジは暗くみえる。
【0011】
図2に示す通り、ドメインメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー及びブレンドに本発明の配合物を用いると、成形品は視認し得るニットライン(スジ)のない漆黒色を示す。
【0012】
以下の本発明の好ましい実施形態の説明及び実施例を参照することによって、本発明の理解をさらに深めることができよう。本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語に言及するが、以下の意味をもつものと定義される。
【0013】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0014】
「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起きた場合と起こらない場合とを包含する。
【0015】
「鏡面反射成分」という用語はASTM E284に規定された鏡面反射に相当する。
【0016】
色は、明度、彩度及び色相という3つの属性で定義される。漆黒物品の場合、明度と彩度が極めて低いので、色相はあまり関係がない。漆黒色は作り出すことができるほぼ最低の彩度と最低の明度の色である。黒色は格段に広い定義を有しており、高いL値とC値を許容し得る。漆黒色は黒色のうち最低の明度と彩度に対応する。
【0017】
シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超える黒色のポリカーボネート−シロキサンコポリマー又はブレンドを得るのに通常の着色剤配合物を使用すると、成形品は視認し得るニットライン(スジ又はフローラインともいわれる)を呈する。通常の着色剤配合物では漆黒色を特徴付ける低い明度と低い彩度の組合せはほとんど得られないので、漆黒色を得るのは困難な課題である。しかし、本発明では、シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー又はポリカーボネート−シロキサンコポリマー含有ブレンドに本発明の着色剤の組合せを使用すると、漆黒色が得られ、ニットライン、スジ又はフローラインがみられなくなるという予想外の知見が得られた。一つの態様では、本発明はLが約29未満で、Cが約1.5未満の漆黒配合物に関する。Cは、ある色が同じ明度の灰色からのずれの程度を表すために用いられる色の属性としてASTM E284に規定されている彩度の尺度に対応する。
【0018】
本発明の着色剤の組合せは、暗い色を生ずる1種以上の有機着色剤と暗い色を生ずる1種以上の着色無機顔料とを含有する。この着色無機顔料は樹脂マトリックス全体に分散して暗い色を生ずるが、漆黒といえるほどには暗くない。ある一定の全着色無機顔料配合量を超えるとニットラインが消失する。
【0019】
一実施形態では、着色無機顔料は、樹脂の重量を基準にして0.5重量%以上、好ましくは樹脂の重量を基準にして約0.75重量%以上、さらに好ましくは樹脂の重量を基準にして約1重量%以上存在する。
【0020】
着色剤の組合せに存在する有機着色剤は色の外観をさらに改善して最終の漆黒色を与える。一実施形態では、最低0.3%のカーボンブラック及び/又は着色無機顔料に加えて黒色を付与する有機物質の組合せを有する本発明の色配合物で漆黒色の外観を得ることができる。
【0021】
適当な有機着色剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック(例えばピグメントブラック7)、アゾ染料、メチン染料、クマリン、ピラゾロン、キノフタロン、キナクリドン、ペリノン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリレン誘導体、アントラセン誘導体、インジゴイド及びチオインジゴイド誘導体、イミダゾール誘導体、ナフタリミド誘導体、キサンテン、チオキサンテン、アジン染料、ローダミン、並びにこれらの誘導体のような有機染料及び顔料がある。
【0022】
適当な着色無機顔料としては、特に限定されないが、金属酸化物、混合金属酸化物、チタネート、アルミネート、カーボネート、酸化鉄、酸化クロム、ウルトラマリン及び金属硫化物(希土類硫化物を含む)がある。本発明のさらに好ましい実施形態では、着色有機顔料として、Pigment Black 28又はPigment Black 30のような低い明度と低い彩度を有する顔料がある。かかる顔料は、例えばShepherd Color Company(Cleveland、OH、USA)から「Black 1」、「Black 376」、「Black 462」、及び「Black 411」という商品名で入手可能である。
【0023】
本発明では、樹脂の重量を基準にした無機顔料の全量は約0.5%以上であり、有機着色剤の全量は約0.3%以上である。好ましい実施形態では、樹脂の重量を基準にして、着色無機顔料の全配合量は約0.75%以上であり、有機着色剤の全配合量は約0.5%以上である。最も好ましい実施形態では、樹脂の重量を基準にして、着色無機顔料の全配合量は約1%以上であり、有機着色剤の全配合量は約0.8%以上である。
【0024】
本発明の一実施形態では、着色剤の組合せはカーボンブラックと1種以上の無機着色剤からなる。本発明の別の実施形態では、着色剤の組合せはカーボンブラック、追加の有機着色剤及び1種以上の無機着色剤からなる。本発明のさらに別の実施形態では、着色剤の組合せはカーボンブラック、黒色を生じる2種以上の有機着色剤、及び1種以上の無機着色剤からなる。黒色を生じる有機着色剤の例としては、特に限定されないが、Color Indexに規定するSolvent Green 3及びSolvent Red 135又はSolvent Green 3、Solvent Violet 13、及びPigment Blue 15:4の混合物がある。
【0025】
本発明の別の実施形態では、着色剤の組合せは樹脂の重量を基準にして最低約0.2〜約0.3重量%のカーボンブラックを含む。別の実施形態では、着色剤の組合せは樹脂の重量を基準にして最低約0.5重量%の2種の有機着色剤の組合せを含む。本発明に開示された色配合物は普通ポリカーボネート−シロキサンコポリマー又はブレンドとコンパウンディングされる。
【0026】
本明細書中で用いる「ポリカーボネート」という用語は、次の式(I)の構造単位を有する組成物を包含する。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、R基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、その残部は脂肪族、脂環式又は芳香族基である。好ましくは、Rは芳香族有機基であり、さらに好ましくは次の式(II)の基である。
【0029】
【化2】

【0030】
式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAを0、1又は2個の原子で隔てる橋かけ基である。例示的な実施形態では、AとAは1個の原子で隔てられる。この種の基の非限定的な具体例には、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなどがある。別の実施形態では、AとAとを隔てる原子は存在せず、その具体例はビフェノール(OH−ベンゼン−ベンゼン−OH)である。橋かけ基Yは、メチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデンのような炭化水素基又は飽和炭化水素基でよい。
【0031】
ポリカーボネートは、AとAが1原子のみで隔てられたジヒドロキシ化合物の反応によって製造できる。本明細書中で用いる「ジヒドロキシ化合物」という用語には、例えば、次の一般式(III)を有するビスフェノール化合物が包含される。
【0032】
【化3】

【0033】
式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは以下の式(IV)の基のいずれかを表す。
【0034】
【化4】

【0035】
式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0036】
適当な好ましいジヒドロキシ化合物の非限定的な具体例としては、米国特許第4217438号に名称又は式(総称若しくは個々の名称又は一般式若しくは個々の式)が開示されている二価フェノール及びジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。式(III)で表すことのできる種類のビスフェノール化合物の具体例の非排他的なリストには、以下のものが包含される。1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」又は「BPA」という。)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4′−ビフェノール、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン、並びにこれらのビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せ。
【0037】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーの使用が望まれる場合には、2種以上の二価フェノールの重合で得られるポリカーボネート、或いは二価フェノールとグリコール、ヒドロキシ末端若しくは酸末端ポリエステル、二塩基酸、ヒドロキシ酸又は脂肪族二酸との共重合体を使用することもできる。一般に、有用な脂肪族二酸は炭素原子数約2〜約40のものである。好ましい脂肪族二酸はドデカン二酸である。
【0038】
シロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマーはその低温延性及び難燃性が認められており、また発光性顔料の配合用マトリックスとしても利用できる。かかるブロックコポリマーは界面反応条件下でBPAのような二価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの混合物にホスゲンを導入することによって製造できる。これらの反応体の重合は第三アミン触媒の使用によって促進できる。
【0039】
使用し得るヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンとしては、次の式(V)のフェノール−シロキサンがある。
【0040】
【化5】

【0041】
式中、各Rは同一でも異なるものでもよく、水素、ハロゲン、C(1−8)アルコキシ、C(1−8)アルキル及びC(6−13)アリールからなる基の群から選択され、RはC(2−8)二価脂肪族基であり、Rは同一又は異なるC(1−13)一価有機基から選択され、nは1以上、好ましくは約10以上、さらに好ましくは約25以上、最も好ましくは約40以上の整数である。また、nは1000以下であるのが好ましく、好ましくは100以下、さらに好ましくは約75以下、最も好ましくは約60以下の整数である。一実施形態ではnは50以下である。特に好ましいヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンは、Rがメチルであり、Rが水素又はメトキシであってフェノール性置換基に対してオルト位に位置しており、Rがプロピルであってフェノール性置換基に対してオルト又はパラに位置しているものである。
【0042】
上記式(V)のRに包含される幾つかの基は水素、ブロモ及びクロロのようなハロゲン基、メチル、エチル及びプロピルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基、フェニル、クロロフェニル及びトリルのようなアリール基である。Rに包含される基は、例えば、ジメチレン、トリメチレン及びテトラメチレンである。Rに包含される基は、例えばC(1−13)アルキル基、トリフルオロプロピルのようなハロアルキル基、及びシアノアルキル基、フェニル、クロロフェニル及びトリルのようなアリール基である。Rはメチル、又はメチルとトリフルオロプロピルの混合物、又はメチルとフェニルの混合物であるのが好ましい。
【0043】
シロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマーは、約10000以上、好ましくは約20000以上の重量平均分子量(Mw、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー、超遠心分離又は光散乱で測定される)を有する。また、重量平均分子量は約200000以下であるのが好ましく、好ましくは約100000以下である。一般に、ポリオルガノシロキサン単位がシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの全重量の約0.5〜約80wt%であるのが望ましい。シロキサンブロックの鎖長は約10〜約100個の化学結合オルガノシロキサン単位に相当する。これらは例えば米国特許第5530083号に記載の通り製造することができ、その回に内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0044】
本発明の組成物は、さらに、当技術分野で公知のように酸化防止剤、離型剤、難燃剤、又は昼光下で所望の美的外観を達成するための着色剤の任意の組合せ及びUV安定剤のような添加剤を含んでいてもよい(例えば、組成物全体の約3wt%未満)。
【0045】
適宜、成形用組成物に所望の加工及び物理的特性を付与するために粒子状無機充填材を約15wt%以下、好ましくは10wt%以下添加してもよい。かかる充填材としては、特に限定されないが、ガラス繊維、ガラス微小球、ウォラストナイト、粉砕石英などの粒子状無機充填材がある。かかる特性としては、熱安定性、密度増加、剛性、クリープ低下、及びテクスチャーがある。これらの粒子の最大寸法の範囲は、約50μm以下であればよいが、約15μm以下が好ましく、約10μm以下がさらに好ましい。また、最低寸法は約0.1μm以上が好ましく、約1μm以上がさらに好ましく、約2μm以上が特に望ましい。
【0046】
本発明で開示した色組成物から製造される樹脂は、熱可塑性樹脂を含む組成物の製造業者に公知のあらゆる方法に従って製造することができる。組成物は、所要の成分を溶融混合した後押出し、押出物をペレット化することによって製造するのが好ましい。ある成形機で樹脂組成物全体の十分な混合が可能であることを条件として、本発明の色組成物をマスターバッチ形態で用いて、成形機でポリカーボネート−シロキサンコポリマー又はブレンドを直接着色することも好ましくはないが可能である。
【0047】
ポリカーボネート−シロキサンブロックコポリマーは、他のポリマー、例えばポリカーボネートホモポリマーと混合して樹脂を形成してもよい。ブレンドは当技術分野で周知の混合技術で製造することができる。一般に、ブレンドの各種成分を機械的にドライ混合し(ブレンダー/高速ミキサー)、押出機に供給して各種樹脂を溶融させ、ブレンドの各種相を分散させる。着色剤は、樹脂成分と共にドライ混合物として添加してもよいし、別途ドライ混合物として添加してもよく、又は別途下流で押出機に添加してもよい。また、着色剤は、成形プロセスでマスターバッチ/コンセントレートの形態で添加することもできる。
【0048】
本発明の組成物から得られる樹脂配合物は、例えば、事務機器、コンピューター及び周辺機器、家庭用電化製品、通信機器(携帯電話、PDA、無線装置、筐体)、自動車産業(ノブ、ダッシュボード及び内/外装品)、医療機器及び安全ヘルメットのような用途にに使用できる物品の製造に適している。
【0049】
本発明の効果は特に特許請求の範囲に記載の要素及び組合せによって実現され達成される。以上の本発明の説明及び以下の実施例は例示であり説明のためのみのものであって、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0050】
従来技術の配合物と本発明の典型的な配合物とを比較するために幾つかの樹脂組成物(バッチA〜E)を調製した。ドメインメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマーをマトリックスとして使用した。着色剤無添加のマトリックスの混合及び成形後の自然の外観は3mmの厚さで殆ど不透明な白色であった。
【0051】
バッチ(A)〜(C)は、現在市販されている多くのポリカーボネート及びポリカーボネートブレンドに使用されている従来技術の漆黒色用配合物を表す。表1に示す通り、配合物(A)〜(C)はそれぞれ0.2、0.35及び0.5wt%のカーボンブラック(Monarch製のPigment Black 7)を含有する。配合物(D)は(C)に似ているが、従来技術でMaruvadaらに開示されているようにスジを避けるために0.8wt%の二酸化チタン(Dupont GE01)も含有する。バッチ(E)は本発明で記載した色配合物を用いて調製した。表1に示す通り、バッチ(E)は、合計で約0.63%の有機着色剤(0.5%のピグメントブラック7及び0.13%のピグメントブルー15:4)及び0.85%の着色無機顔料(0.25%のピグメントレッド265及び0.60%のピグメントグリーン50)を含む本発明の典型的な配合物を示す。
【0052】
測色はすべてD65光源を用いて10度で観察するMacBeth ColorEye 7000A積分球分光光度計を利用して行った。色のデータはCIE1976 LCh色空間を用いて示す。成形品がテクスチャー表面を有する場合、鏡面反射成分を除いて行う測色が好ましい方法である。
【0053】
分子量は、Mw10〜20000に対して直列にした2つの混合床カラムStyragel HR−2を備えたWaters Corporation(Milford、MA、USA)製のWATERS「Millenium」ゲルパーミエーションクロマトグラフィーシステムを用いて測定した。なお、Mwが20000を超えるときは2つのHR−2カラムにStyragel HR−3カラムを追加した。
【0054】
色配合物(A)〜(F)を、Prism二軸式押出機を用いてポリカーボネート−シロキサンコポリマーマトリックスと混合した後ペレット化した。次いで、ペレットを、部材中の切れ目、リブ、厚さ/テクスチャーの変化及びその他の複雑な幾何学の存在に起因する外観の欠陥の視認性を高める特性をもつ特別な装置で射出成形した。また、色分析用に、厚さ2.54mmの平坦な非テクスチャーカラーチップも成形した。測色はすべて、鏡面反射成分含有モードと鏡面反射成分除外モードの両方でD65光源を用いて10度で観察するMacBeth ColorEye 7000A積分球分光光度計を利用して行った。色のデータはCIE1976 LCh色空間を用いて表す。
【0055】
実施例に対する色のデータの概要を表IIIに示す。配合物(E)〜(F)は、約29未満のL値及び約1.5未満のC値(鏡面反射成分含有)又は8未満のL値及び約3未満のC値(鏡面反射成分除外)で立証される漆黒色を示した。配合物(A)は漆黒の外観ではなくややミルク様の灰色がかった黒色外観を示した。配合物(B)は(A)より多少改善されたが漆黒とはいうことができない。配合物(D)は、色配合物中の二酸化チタンの存在のために漆黒色ではなく灰色がかった黒色外観を示したが、スジはさほど認められなかった。配合物(C)は見かけ上色データによっても示されているように漆黒色に極めて近い。配合物(A)〜(C)は、全体の色よりも暗くみえるスジ(ニットライン/フローライン)を示した。配合物(E)では視認し得るスジ、ニットライン又はフローラインは認められず、本発明で開示した配合物の効果が立証された。さらに、配合物(E)は、L値28.46及びC値1.3(鏡面反射成分含有)又はL値6.13及びC値2.12(鏡面反射成分除外)で示されるように真の漆黒色を有する。
【0056】
表1のバッチ(F)は改善された漆黒色をもちニットライン、スジ又はフローラインのない本発明の色配合物の別の例を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来技術で0.2〜0.5%のカーボンブラック(Pigment Black7)で着色した平らなポリカーボネート部材の概略断面図。
【図2】本発明に従って着色した平らなポリカーボネート部材の概略断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色樹脂組成物であって、
ポリカーボネート単位とポリオルガノシロキサン単位とを含むポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂で、シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂、及び
1種以上の有機着色剤と1種以上の無機着色剤とを含んでなる着色剤の組合せで、約29未満のL値と約1.5未満のC値(鏡面反射成分含有)又は8未満のL値と約3未満のC値(鏡面反射成分除外)を有する黒色成形品を生じる有機着色剤と無機着色剤の組合せ
を含んでなる組成物。
【請求項2】
当該樹脂組成物が漆黒の外観を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
上記着色無機顔料が、金属酸化物、チタネート、アルミネート、カーボネート、酸化鉄、酸化クロム、ウルトラマリン、金属硫化物及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
有機着色剤の全配合量が当該組成物の重量を基準にして約0.3%超であり、着色無機顔料の全配合量が当該組成物の重量を基準にして約0.5%超である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
有機着色剤の全配合量が当該組成物の重量を基準にして約0.8%超である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
着色無機顔料の全配合量が当該組成物の重量を基準にして約0.75%超である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
ポリオルガノシロキサン単位が当該組成物の全重量の約1.5〜約15重量%をなす、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
ポリオルガノシロキサン単位が当該組成物の全重量の約3〜約5重量%をなす、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
当該組成物が0.8重量%未満の二酸化チタンを含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを含む着色組成物のニットラインの視認性を低減する方法であって、約29未満のL値と約1.5未満のC値(鏡面反射成分含有)又は8未満のL値と約3未満のC値(鏡面反射成分除外)を有する黒色成形品が得られるように選択される1種以上の有機着色剤と1種以上の着色無機着色剤とを含む着色剤の組合せをポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーに配合することを含んでなる方法。
【請求項11】
前記組成物が漆黒である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
視認し得るスジのない成形プラスチック部材であって、当該プラスチック部材が漆黒色で、
ポリカーボネート単位とポリオルガノシロキサン単位とを含むポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂で、シロキサンドメインのメジアン径が100nmを超えるポリカーボネート−シロキサンコポリマー樹脂、及び
1種以上の有機着色剤と1種以上の無機着色剤とを含んでなる着色剤の組合せで、約29未満のL値と約1.5未満のC値(鏡面反射成分含有)又は8未満のL値と約3未満のC値(鏡面反射成分除外)を有する黒色成形品を生じる有機着色剤と無機着色剤の組合せ
を含む組成物を含む成形プラスチック部材。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−507393(P2006−507393A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555341(P2004−555341)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033827
【国際公開番号】WO2004/048460
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】