説明

ポリカーボネート樹脂製光拡散板

【課題】 大型液晶ディスプレイ用直下型バックライトに適したポリカーボネート樹脂製光拡散板を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂に対する粒子状樹脂の添加量と拡散度(D50)との間に一定の関係がある場合に、光拡散性を始めとする光学特性を最適に調整したポリカーボネート樹脂製光拡散板を安定して生産できることを見出した。
即ち、本発明は、粒子状樹脂を添加したポリカーボネート樹脂から成る光拡散板であって、該光拡散板が該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して粒子状樹脂を1重量部添加した際の拡散度(D50)が25〜35である粒子状樹脂とポリカーボネート樹脂とから成り、該粒子状樹脂が該粒子状樹脂の添加量(重量部)に対する拡散度(D50)の比が8〜35であるような添加量で添加されたことを特徴とするポリカーボネート樹脂製光拡散板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内照明式看板、誘導灯、ディスプレイ、照明器具あるいは液晶表示装置に用いる面光源装置の照光面に適したポリカーボネート樹脂製光拡散板に関し、より詳細には、液晶ディスプレイ用直下型バックライト用のポリカーボネート樹脂製光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
光源を内蔵する面光源装置は、内照式看板、液晶ディスプレイ、照明器具等に広く利用されている。このような装置として、ボックスの底面に反射層を備え、蛍光灯や冷陰極管などの光源を内蔵しかつ正面に拡散板を配置したものが一般的に使用されている。
大型液晶ディスプレイ用直下型バックライト方式用の光拡散板については、透明微粒子を分散させたアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂が用いられているが、液晶ディスプレイの大型化が進むにつれて、寸法安定性や耐熱性に優れ、反りの少ないポリカーボネート樹脂製の光拡散板が用いられるようになってきている。
このような光拡散板には、アクリル樹脂等から成る透明微粒子を分散させたポリカーボネートが用いられているが、ディスプレイが大型であるため輝度や拡散度を画面全体にわたって均一にすることが極めて困難である。
また、大型ディスプレイ等の装置の奥行が充分に大きいときはあまり問題にならないものの、奥行を小さくして薄型にすると光源である蛍光灯や冷陰極管などのイメージが目視され全体として均一な光量を有する照明器具は得られ難い。
このような問題を解決するために様々な工夫がなされている(特許文献1〜5等)。
【0003】
【特許文献1】特開2004-29091
【特許文献2】特開2004-163575
【特許文献3】特開2003-90906
【特許文献4】特表2002-529569
【特許文献5】特開平9-279000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題を解決するためには、拡散板の拡散性能を向上させることが考えられるが、拡散性能のみを向上させたのでは必然的に光の透過率が低下してしまい、面全体が暗くなる憾みがある。一方、ポリカーボネート樹脂に粒子状樹脂を配合した拡散板を生産する観点からは、光拡散板としての最適な性能を発揮するようにベース樹脂と粒子状樹脂を調整し、かつ粒子状樹脂の添加量を少なくすることが求められ、更に大量に製造する場合には光学特性を安定化させることが極めて重要な課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題を解消すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に対する粒子状樹脂の添加量と拡散度(D50)との間に一定の関係がある場合に、光拡散性を始めとする光学特性を最適に調整したポリカーボネート樹脂製光拡散板を安定して生産できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、粒子状樹脂を添加したポリカーボネート樹脂から成る光拡散板であって、該光拡散板が該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して粒子状樹脂を1重量部添加した際の拡散度(D50)が25〜35である粒子状樹脂とポリカーボネート樹脂とから成り、該粒子状樹脂が該粒子状樹脂の添加量(重量部)に対する拡散度(D50)の比が8〜35であるような添加量で添加されたことを特徴とするポリカーボネート樹脂製光拡散板である。
このポリカーボネート樹脂100重量部に対する前記粒子状樹脂の添加量は0.3〜10重量部が好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光拡散板を大型液晶表示装置に用いると、従来のポリカーボネート樹脂製拡散板と比較して、透過性や拡散性等の光学特性と衝撃強度等の機械強度のバランスが著しく改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体をいう。ジヒドロキシジアリール化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられるが、ビスフェノールAが代表的である。これらは単独又は2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
また、ジヒドロキシアリール化合物のほかに3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は通常10000〜100000、好ましくは13000〜35000、更に好ましくは15000〜29000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0008】
本発明にて使用される粒子状樹脂として、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂等、好ましくはアクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂はアクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類の重合体であり、少なくとも部分的に架橋されていることが好ましく、その架橋程度はポリカーボネート樹脂の加工過程において実質的に変形しない程度であることが好ましい。またアクリル樹脂として、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン等の非アクリル酸系単量体を用いて改質されたものでもよい。アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。このような樹脂として、例えば、部分架橋したメタクリル酸メチルをベースとしたポリマー微粒子ポリ(ブチルアクリレート)のコア/ポリ(メチルメタクリレート)のシェルを有するポリマー、ゴム状ビニルポリマーのコアとシェルを含んだコア/シェルモノホルジーを有するポリマー〔ローム・アンド・ハーズ・カンパニー製商品名パラロイドEXL−5136〕、架橋シロキサン結合を有するシリコーン樹脂〔東芝シリコーン(株)製トスパール120〕を用いてもよい。
この粒子状樹脂の平均粒径は、コールカウンター法で測定した重量平均粒径として、約1〜30μm、好ましくは1〜10μm程度である。
【0009】
ポリカーボネート樹脂100重量部に対する粒子状樹脂の割合(添加量)は好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。粒子状樹脂の配合量が少ない場合は十分な拡散性能を得ることが出来ない場合があり、また粒子状樹脂の配合量が多い場合は全光線透過率が低くなるため面光源装置として十分な明るさを得ることができない場合がある。
【0010】
ポリカーボネート樹脂100重量部に対して粒子状樹脂を1重量部添加した場合の、ポリカーボネート樹脂の拡散度(D50)は好ましくは25〜35、より好ましくは27〜34である。
ここで拡散度(D50)とは、5cm×5cmに裁断した光拡散板(厚さ2mm)を用いてゴニオフォトメーターにて測定し、直線透過光の光量を100%として、光量の50%を検出する角度(単位:度、被検板に垂直な方向からの角度をいう。)をいう。
この値が35以上であると透過率が下がってくることにもなり好ましくない。また、拡散度が25未満では拡散性が不十分となり好ましくない。
【0011】
粒子状樹脂の添加量(重量部)に対する拡散度(D50)の比は8〜35、好ましくは10〜33、より好ましくは12〜21である。この添加量はポリカーボネート樹脂100重量部に対する添加量(重量部)である。この比は粒子状樹脂の添加量により異なるが、本発明の光拡散板においては、この比を与えるようにポリカーボネート樹脂に粒子状樹脂が添加される。この比が大きいと拡散度の添加量依存性が高くなり、少しの添加量の変化で拡散性能が変わってしまうことがあり、製造の観点から好ましくない。また、拡散度の変化量が小さいと粒子状樹脂を大量に添加することを要することとなり機械強度が低下する傾向があり好ましくない。
【0012】
また、本発明の光拡散板の厚さは好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜3mmである。1mm未満の厚さの場合、充分な拡散性能を得ることが出来ない場合があり、また5mmを超えると充分な全光線透過率が得られない場合がある。
【0013】
本発明のポリカーボネート樹脂には本発明の効果を損なわない範囲で適宜必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤等の各種の添加剤を配合してもよい。特に、本発明の大型液晶ディスプレイ用直下型バックライト用光拡散板の場合には、難燃剤を添加することが好ましい。難燃剤は、ポリカーボネート樹脂に一般的に使用されるものであれば特に限定するものではないが、テトラブロモビスフェノールAカーボネイトオリゴマー、N、N−ビス〔(4−メチルフェニル)スルフォニウム〕アミン・カリウム塩、ジパラトルエンスルホンアミド、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)オリゴマー、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、ジフェニルサルフォン−3−スルホン酸カリウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、トルエンスルホン酸ソーダ、芳香族縮合リン酸エステル、等が挙げられる。より好ましくは、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩であり、その最適な添加量はポリカーボネート樹脂100重量部あたり0.01〜0.2重量部である。0.01重量部未満では充分な難燃性が得られない場合があり、0.2重量部を超えるとシート加工時の熱安定性が悪くなる場合がある。
【0014】
ポリカーボネート樹脂、粒子状樹脂、及び任意成分である難燃剤等の添加剤の混合方法には、特に制限はなく公知の混合機、例えばタンブラー、リボン・ブレンダー、高速ミキサー等で混合し、溶融混練する方法が挙げられる。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0015】
本実施例で使用した原料は、以下のとおりである。
・ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略記):住友ダウ社製 カリバー200−10(屈折率:1.59)
・粒子状樹脂(以下、B−1と略記):日本触媒社製 EPOSTAR MA1001(架橋アクリル、平均粒径1μm、屈折率:1.49)
・粒子状樹脂(以下、B−2と略記):日本触媒社製 EPOSTAR MA1002(架橋アクリル、平均粒径2μm、屈折率:1.49)
・粒子状樹脂(以下、B−3と略記):ローム・アンド・ハース社製 PARALOID EXL5136(アクリルコポリマー、平均粒径5μm、屈折率:1.46)
・粒子状樹脂(以下、B−4と略記):積水化成品工業社製 テクポリマー MB30X−5(架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒径5μm、屈折率:1.49)
・粒子状樹脂(以下、B−5と略記):積水化成品工業社製 テクポリマー MBXR−8N(架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒径8μm、屈折率:1.49)
・粒子状樹脂(以下、B−6と略記):KOLON社製 Diasphere MPB−X10(アクリル樹脂、平均粒径10μm、屈折率:1.49)
・粒子状樹脂(以下、B−7と略記):積水化成品工業社製 テクポリマー MBX−20(架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒径20μm、屈折率:1.49)
【0016】
表1の配合比率のPCと粒子状樹脂ならびにByowet(Bayer社製難燃剤)0.05重量部をタンブラーで予備混合した。次いで、溶融温度260℃の条件にてスクリュー径40mmの単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製VS40−32)を用いて溶融混合し、各種の光拡散性樹脂組成物ペレットを得た。
得られた光拡散性樹脂組成物のペレットを120℃で4時間乾燥した後、日本製鋼所製J100SAII射出成形機を用いて、バレル温度310℃、金型温度100℃の条件下において150mm×90mm×厚さ2mmの試験片を作成して各種の試験に供した。
【0017】
得られた光拡散板の試料を5cm×5cmに裁断し、その試験片を用いて全光線透過率(τT(%))及び拡散度(D50)を求めた。全光線透過率測定にはヘーズメーターHM−150(村上色彩研究所製)、拡散度の測定にはゴニオフォトメーターGP−1R(村上色彩研究所製)をそれぞれ使用した。ゴニオフォトメーターにて測定した直線透過光を100%とし、その光量の50%を検出する角度(試験片の垂直方向からの角度)を拡散度(D50、単位:度)とした。
【0018】
光学性能の安定性評価は、配合、予備混合、溶融紺練、射出成形及び光学測定から成る工程を3回繰り返して行い、拡散度のバラツキを評価した。評価は以下の基準で行った。◎:3回の実験においても同じ(即ち、誤差範囲内の)拡散度を示すもの; ○:3回の実験において拡散度が±1の範囲のもの; △:3回の実験において拡散度が±2の範囲のもの; ×:3回の実験において拡散度が±3以上のもの。
【0019】
衝撃強度試験はASTM規格D−256に従い、得られた光拡散板の試料を12.7mm×64mmに裁断し、中央にノッチ部分の切削加工を行った後、インパクトテスター(東洋精機社製)を用いて行った。得られた衝撃強度を基に以下の基準で評価を行った。○:80kg-cm/cm以上;△:50〜80kg-cm/cm;×:50kg-cm/cm未満
【0020】
ランプ間輝度の評価は、得られた光拡散板の試料を5cm×9cmに裁断し、茶谷産業製バックライトの冷陰極管2本の上20mmの位置に固定し、その冷陰極管の中央部となるサンプルの直上35cmに設置したトプコン社製の輝度計(BM−7)にて輝度(ランプ間輝度)を測定した。得られた輝度を基に以下の基準で評価を行った。○:2500Cd/m以上;△:2300〜2500Cd/m;×:2300Cd/m未満
【0021】
結果を表1に示す。
【表1】

【0022】
表1から明らかなように、粒子状樹脂の添加量が1重量部の場合の拡散度(B)が25〜35、特に27〜34であって、比(B/A)が8〜35、特に10〜33、より特に12〜21であるものは全ての評価項目において良好な結果(評価が◎又は○)を与える。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状樹脂を添加したポリカーボネート樹脂から成る光拡散板であって、該光拡散板が該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して粒子状樹脂を1重量部添加した際の拡散度(D50)が25〜35である粒子状樹脂とポリカーボネート樹脂とから成り、該粒子状樹脂が該粒子状樹脂の添加量(重量部)に対する拡散度(D50)の比が8〜35であるような添加量で添加されたことを特徴とするポリカーボネート樹脂製光拡散板。
【請求項2】
前記比が10〜33である請求項1に記載の光拡散板。
【請求項3】
前記比が12〜21である請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項4】
更に難燃剤が添加された請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項5】
液晶ディスプレイ用直下型バックライト用である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散板。

【公開番号】特開2006−30839(P2006−30839A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212692(P2004−212692)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】