説明

ポリカーボネート系樹脂シートおよびそれを用いた太陽電池

【課題】耐湿熱性や難燃性、他の部材との密着性、光学特性(光反射性、白色性など)の全てに優れるポリカーボネート系樹脂シートを提供すること。
【解決手段】ポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とし、無機粒子(B)の含有率W1bが1質量%以上20質量%以下で、かつ、酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが0.04質量%以上3質量%以下であり、無機粒子(B)の含有率W1bと酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが下記式(a)を満たす層(P1層)からなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂シートである。
2≦W1b/W1c≦25 ・・・(a)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池バックシートのような、耐湿熱性や難燃性、他の部材との密着性、反射性や白色性といった光学特性が要求される用途で好適に使用することができるポリカーボネート系樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂は機械特性、熱特性、耐湿熱性、耐熱性、透明性、成形性に優れることから、カーポート、看板などの屋外材料、光ディスク、成形材料、などに幅広く使用されている樹脂である。近年、半永久的で無公害の次世代のエネルギー源としてクリーンエネルギーである太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の急速な普及を背景に、ポリカーボネート系樹脂を用いた太陽電池バックシートの検討がされている(特許文献1)。
【0003】
しかしながらポリカーボネート系樹脂を、太陽電池バックシートのような、特に屋外で用いられる用途に適用するためには、光反射性、白色性といった光学特性を付与した上で、高い耐湿熱性、紫外線に対する耐性(強伸度劣化の抑制、色調変化の抑制、以下これらを称して耐紫外線性とする)を両立することが求められ、従来これらの特性を付与するために、例えばポリカーボネート系樹脂に無機粒子を添加(特許文献2)する技術が検討されているが、無機粒子の添加によってポリカーボネート系樹脂の分子量低下が促進され、シートの耐湿熱性が低下するといった問題があった。
【0004】
一方で、無機粒子によるポリカーボネート系樹脂の加水分解を抑えるため、例えば、不飽和変性ポリオレフィンの添加(特許文献3)やゴム質重合体の添加(特許文献4)等の検討がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―324556号公報
【特許文献2】特開2007−191499号公報
【特許文献3】特開昭58−17153号公報
【特許文献4】特開2001―302899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3、4記載のポリカーボネート系樹脂シートでは、加水分解の抑制はされるものの、太陽電池バックシートに要求される、耐湿熱性や難燃性、他の部材との密着性、光学特性(光反射性、白色性など)の全てを両立することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明の課題は太陽電池バックシートにも適用可能な、耐湿熱性や難燃性、他の部材との密着性、光学特性(光反射性、白色性など)の全てに優れるポリカーボネート系樹脂シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成をとる。すなわち、
ポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とし、無機粒子(B)の含有率W1bが1質量%以上20質量%以下で、かつ、酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが0.04質量%以上3質量%以下であり、無機粒子(B)の含有率W1bと酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが下記式(a)を満たす層(P1層)からなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂シートである。
2≦W1b/W1c≦25 ・・・(a)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のポリカーボネート系樹脂シートと比べて耐湿熱性、難燃性、他の部材との密着性、光学特性(光反射性、白色性など)に優れるポリカーボネート系樹脂シートを提供することができる。かかるポリカーボネート系樹脂シートは、太陽電池用バックシートの他、液晶ディスプレイ用反射板、自動車用材料、建築材料をはじめとした、耐湿熱性、難燃性、他の部材との密着性、光学特性が重視されるような用途に好適に使用することができる。特に、かかるポリカーボネート系樹脂シートを用いることで、高い耐久性を有した太陽電池バックシートおよびそれを用いた太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のポリカーボネート系樹脂シートを用いた太陽電池の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂シートは、ポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とし、無機粒子(B)の含有率W1bが1質量%以上20質量%以下で、かつ、酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが0.04質量%以上3質量%以下であり、無機粒子(B)の含有率W1bと酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが下記式(a)を満たす層(P1層)からなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂シートである。
2≦W1b/W1c≦25 ・・・(a)
上記要件を全て満たすことによって、長期に渡る耐湿熱性、難燃性、他の部材との密着性(以下、密着性と称する)、光学特性(光反射性、白色性など)の全てを高いレベルで満足するポリカーボネート系樹脂からなるシートを提供することができる。
【0012】
通常、ポリカーボネート系樹脂を高機能化するために、ポリカーボネート系樹脂に無機粒子を添加したりするが、その際には、一旦、無機粒子を高濃度に含むマスターペレットを作製した後に希釈する手法が用いられる。しかし、マスターペレットの作製の際に熱履歴をうけるため、ポリカーボネート系樹脂の劣化がおこる。また、無機粒子は元来吸着水を有するため、無機粒子を含有するポリカーボネート系樹脂は加水分解反応が促進される。この二つの現象が組み合わされる結果、耐湿熱性が著しく低下する。
【0013】
一方、本発明の樹脂シートでは、無機粒子(B)と酸変性された熱可塑性樹脂(C)(以下、酸変性樹脂(C)と称することもある)を併用し、尚且つ無機粒子(B)と酸変性樹脂(C)の含有比率をある一定範囲で含有させることで、シートに非常に優れた耐湿熱性や光学特性だけでなく、高い難燃性と密着性の全てを併せ持たせることが可能となる。
【0014】
以下、本発明について、具体例を挙げつつ詳細に説明する。
【0015】
本発明の樹脂シートにおいて樹脂層(以下、P1層と称する)の主たる構成成分はポリカーボネート系樹脂(A1)である。尚、ここでいう主たる構成成分とは層を構成する樹脂成分のうち60質量%以上がポリカーボネート系樹脂(A1)であることを示し、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0016】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる、ポリカーボネート系樹脂(A1)とはジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンや、ジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させて得られる重合体であり、ジヒドロキシジアリール化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン系化合物、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン系化合物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル系化合物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド系化合物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド系化合物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン系化合物、などが例としてあげられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0017】
また、本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられるポリカーボネート系樹脂(A1)には上述のジヒドロキシジアリール化合物に加えてフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を使用しても良い。その例としてフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス[4,4−(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0018】
ここで、本発明の樹脂シートにおいてP1層の主たる構成成分であるポリカーボネート系樹脂(A1)は、ジヒドロキシジアリール化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)が主たる成分であるポリカーボネート系樹脂であるのが、耐熱性、耐湿熱性の点から好ましい。なお、ここでいう主たる成分とは、ポリカーボネート系樹脂(A1)に用いられる全ジヒドロキシジアリール化合物が、80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。さらには、主たる成分であるポリカーボネート系樹脂(A1)は、ジヒドロキシジアリール化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)が主たる成分であるポリカーボネート系樹脂であるのが、耐熱性、耐湿熱性をより高められるという点でより好ましい。
【0019】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる無機粒子(B)はその目的に応じて必要な機能をフィルムに付与するために用いられる。本発明に好適に用いうる無機粒子(B)としては紫外線吸収能のある粒子やポリカーボネート系樹脂(A1)や後述する樹脂層(P2層)の主たる構成成分であるアクリル系樹脂(A2)との屈折率差が大きな粒子、高比重の粒子、導電性を持つ粒子、顔料といったものが例示され、これにより耐紫外線性、光学特性、難燃性、帯電防止性、色調などを改善することができる。なお、無機粒子(B)とは投影した等価換算円の直径による一次粒径として5nm以上のものをいう。なお、特に断らない限り、本発明において粒径は一次粒径を意味し、粒子は一次粒子を意味する。
【0020】
さらに詳細に無機粒子(B)について説明すると、無機粒子(B)としては、前記特性を与えるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム 等の金属酸化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを挙げることができる。
【0021】
本発明においては、例えば本発明の樹脂シートを太陽電池バックシートに用いた場合、高い難燃性や光学特性、耐紫外線性を付与できる点で無機粒子(B)として酸化チタンを用いるのが好ましく、耐紫外線性がより高いという点でルチル型二酸化チタンを用いるのがより好ましい。
【0022】
また、本発明の樹脂シートにおいてP1層は前記の無機粒子(B)と酸変性樹脂(C)を含有する。本発明における酸変性樹脂(C)は、無機粒子(B)によるポリカーボネート系樹脂(A1)の加水分解を抑制するために用いられる。
【0023】
本発明の樹脂シートのP1層に好適に用いうる酸変性樹脂(C)としては、カルボン酸エステル基や無水マレイン酸基等の酸性置換基を有する変性剤により一部あるいは全部が変性された、ポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマー、アクリルゴム系コポリマーなどの熱可塑性樹脂が例示される。
さらに詳細に酸変性樹脂(C)について説明すると、熱可塑性樹脂として例示されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメチルペンテンなどの脂肪族ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィンコポリマーなど環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられ、この中でも加工が容易で比較的安価であるポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー等が好ましく例示される。
【0024】
また、スチレン系エラストマーとしては、少なくとも1個のビニル芳香族化合物の重合体を含むブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物の重合体を含むブロックを有する共重合体が好ましく例示される。スチレン系エラストマーの構成単位であるビニル芳香族化合物としては、芳香族部が単環でも多環でもよく、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等から1種またはそれ以上選択でき、これらの中でもスチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。また、スチレン系エラストマーのもうひとつの構成単位である共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(通称、イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等のうちから1種又はそれ以上が選択でき、これらの中でも1,3−ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0025】
前記のスチレン系エラストマーにおけるビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとの結合形態は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの二つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、これらの中でも直鎖状の結合形態が好ましい。スチレン系エラストマーの形態例としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックをXで、共役ジエン化合物重合体ブロックをYで表したときに、X(YX)m、(XY)n又はY(XY)p(ここでm、n及びpは1以上の整数)で示される結合形態を有するブロック共重合体を挙げることができる。その中でも、2個以上のビニル芳香族化合物重合体ブロックXと1個以上の共役ジエン化合物重合体ブロックYが直鎖状に結合したブロック共重合体、特にX−Y−X型のトリブロック共重合体が好ましく用いられる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等が挙げられる。さらに、耐熱性向上、耐紫外線性低下防止の観点から、共役ジエン化合物に基づく残留不飽和結合の少なくとも一部が水素添加処理(水素化処理)されているスチレン系エラストマーが好適に使用できる。具体的には、例えば部分水素化・スチレン−ブタジエンブロック共重合体、部分水素化・スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化・スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体)、水素化・スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、水素化・スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)等が挙げられ、これらの中でもSEBSやSEPS等の直鎖状のX−Y−X型結合形態のブロック共重合体が好ましく用いられる。
【0026】
また、アクリルゴム系コポリマーとしては、アルキルアクリレート単量体および共重合可能な少なくとも一種の他の単量体を共重合させて得られるエラストマー状共重合体である。アルキルアクリレート単量体としては、例えばアルキルアクリレート、アルコキシアルキルアクリレート、アルキルチオアルキルアクリレート、シアノアルキルアクリレートなどが挙げられ、共重合させ得る他の単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、けい皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、スチレン、αーメチルスチレン、ハロゲン化スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、Nーメチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フルフリルアクリレートなどのモノビニル系または、モノビニリデン系不飽和化合物、更にはジビニルベンゼン、アリールアクリレート、アリールメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート、アルキレングリコールジメタアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。
【0027】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる酸変性樹脂(C)の酸価は3KOHmg/g以上60KOHmg/g以下とするのが好ましく、より好ましくは5KOHmg/g以上50KOHmg/g以下である。尚、本発明において酸価とはJIS−K0070−1992にて規定される酸価をいう。本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる酸変性樹脂(C)の酸価が3KOHmg/g未満の場合、その効果が十分に発揮されず、本発明の樹脂シートの耐湿熱性が低下することがある。また、本発明に用いられる酸変性樹脂(C)の酸価が60KOHmg/gよりも大きい場合、酸変性樹脂(C)の耐熱性が低下して、溶融押出時に、押出機内で酸変性樹脂(C)が分解し、分解物が樹脂シートの欠点や変色の原因となることがある。本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる酸変性樹脂(C)の酸価を上記の範囲とすることで、本発明の樹脂シートの加水分解抑制効果がより顕著に得られ、欠点や変色のない、品質に優れた樹脂シートとすることができるため好ましい。
【0028】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に無機粒子(B)と酸変性樹脂(C)を含有させることで、ポリカーボネート系樹脂(A1)と無機粒子(B)のマスターペレット作製の際に、樹脂(A1)と粒子(B)の接触面積を低下させることで、本発明の樹脂シートの加水分解を抑制できると考えられる。
【0029】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる酸変性樹脂(C)はポリカーボネート系樹脂(A1)に非相溶であることが好ましい。尚、ここでいうポリカーボネート系樹脂(A1)に非相溶とは、酸変性樹脂(C)とポリカーボネート系樹脂(A1)を混合し溶融押出した時、ポリカーボネート系樹脂(A1)と酸変性樹脂(C)が相分離構造となることをいう。本発明の樹脂シートにおいて、P1層に用いられる酸変性樹脂(C)にポリカーボネート系樹脂(A1)に非相溶であるものを用いることで、酸変性樹脂(C)による本発明の樹脂シートの加水分解抑制効果をより顕著なものとできるため好ましい。
【0030】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる無機粒子(B)の含有率W1bは1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは5質量%以上17質量%以下、より好ましくは10質量%以上15質量%以下である。本発明の樹脂シートにおいてP1層に含まれる無機粒子(B)の含有率W1bが1質量%未満の場合、無機粒子(B)による効果が十分に発揮されず、光学特性の低下や、紫外線吸収能をもつ粒子の場合には耐紫外線性が不十分となり、紫外線に晒されるような環境下での長期使用時において、本発明の樹脂シートの機械的強度が低下しやすい。また、含有率W1bが20質量%より多い場合、本発明の樹脂シートにおいて、無機粒子(B)によるポリカーボネート系樹脂(A1)の加水分解が促進されることにより、本発明の樹脂シートの耐湿熱性の低下や、密着性、機械的強度が低下することがある。
【0031】
また、本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる酸変性樹脂(C)の含有率W1cは0.04質量%以上3質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上2.7質量%以下、より好ましくは1質量%以上2.5質量%以下である。本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる酸変性樹脂(C)の含有率W1cが0.04質量%未満の場合、酸変性樹脂(C)による効果が十分に発揮されず、シートの耐湿熱性が低下しやすい。また、含有率W1cが3質量%より多い場合、酸変性樹脂(C)の量が多くなり過ぎて、本発明の樹脂シートの密着性や難燃性が低下することがある。
【0032】
また、本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる無機粒子(B)の含有率W1bと酸変性樹脂(C)含有率W1cは下記式(a)を満たすものである。
2≦W1b/W1c≦25 ・・・(a)
より好ましくは、下記式(a´)を満たすことが好ましい。
3≦W1b/W1c≦15 ・・・(a´)
本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる無機粒子(B)の含有率W1b、酸変性樹脂(C)の含有率W1cとした時にW1b/W1cが25より大きい場合、本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる無機粒子(B)の量が酸変性樹脂(C)に対して多くなりすぎて、本発明の樹脂シートの耐湿熱性が低下する。また、W1b/W1cが2未満の場合、本発明の樹脂シートにおいて、P1層に含まれる無機粒子(B)の量が酸変性樹脂(C)に対して少なくなりすぎて、酸変性樹脂(C)による難燃性の低下を抑制できなくなり、本発明の樹脂シートの難燃性が低下しやすい。
【0033】
本発明のシートにおいて、ポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とし、無機粒子(B)の含有率W1bを1質量%以上20質量%以下、かつ、酸変性樹脂(C)の含有率W1cを0.04質量%以上3質量%以下として、無機粒子(B)の含有率W1bと酸変性樹脂(C)含有率W1cが上記式(a)を満たす層をP1層とすることで、耐湿熱性と難燃性、密着性、光学特性の全てに優れるシートを提供することができる。
【0034】
本発明の樹脂シートは、前記のP1層に無機粒子(B)を含むアクリル系樹脂(A2)またはポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とする樹脂層(以下、P2層と略す)が積層された構成であることが好ましい。本発明の樹脂シートを前記のような積層構成とすることで、本発明の樹脂シートに紫外線による色調変化の抑制効果を付与することができる。本発明の樹脂シートをかかる積層構成とすることで、例えば、太陽電池バックシートのような、紫外線に晒されるような環境下で長期使用される用途に本発明の樹脂シートを用いた場合、紫外線による色調変化の小さいシートとすることができる。
【0035】
本発明の樹脂シートを前記のような積層構成とした場合、3層以上の積層構成の場合、その少なくとも片側の表層側にP2層を設けた構成とするのが好ましい。なかでも、積層シートの少なくとも一方の最外層がP2層である構成が好ましい。さらには、もう一方の最外層はP1層であるのが好ましい(つまり、P2層/・・/P1層)。本発明の樹脂シートを本構成とすることによって、例えば太陽電池バックシートのような、紫外線に晒されるような環境下での長期使用される用途に本発明の樹脂シートを用いた場合、密着性や光学特性に優れるP1層を太陽電池の発電セルに密着する面側に設け、耐紫外線性に優れるP2層を発電セル側と反対側の層とすることによって、発電セルとの密着性や太陽電池の発電効率を高め、かつ紫外線による色調変化の小さい太陽電池バックシートとすることができる。
【0036】
また、本発明の樹脂シートを前記のような積層構成とする場合、本発明の樹脂シートに紫外線による色調変化の抑制効果を付与させる観点からは、P2層はアクリル系樹脂(A2)を主たる構成成分とすることがより好ましい。
【0037】
本発明の樹脂シートにおいて、P2層に用いられるアクリル系樹脂(A2)とは、アクリロイル基、メタクリロイル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基を併せて(メタ)アクリロイル基と称する。(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート等についても同様の表現とする)を有する化合物を重合することによって得ることができる重合体である。
【0038】
本発明において、アクリル系樹脂(A2)に用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例としては、単官能化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、
2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、n−ブチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシ)イソシアヌレートジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸グリセリンモノメタクリレート等のヒドロキシル基を有するアクリレート類、
2−(メタ)アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸基を有するアクリレート類、
フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、
その他1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する化合物などが例としてあげられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0039】
また、本発明の樹脂シートにおいて、P2層に用いられるアクリル系樹脂(A2)には前記の(メタ)アクリロイル基を有する単官能化合物に加えて、二官能以上の化合物を用いてもよい。その例として、トリス(2−ヒドロキシ)イソシアヌレートジアクリレート、3−アクリロイロキシグリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイロキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネート、アジピン酸ジビニル等、1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する化合物、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアネート等、1分子中に(メタ)アクリル基を3個有する化合物、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等、1分子中に(メタ)アクリル基を4個有する化合物、
ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等、1分子中に(メタ)アクリル基を5個有する化合物
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、1分子中に(メタ)アクリル基を6個の有する化合物、が挙げられる。ここで、本発明の樹脂シートにおいて、P2層の主たる構成成分であるアクリル系樹脂(A2)は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としてメチルメタクリレートが主たる成分であるアクリル系樹脂(A2)であるのが、耐熱性や押出性の点から好ましい。なお、ここでいう主たる成分とは、アクリル系樹脂(A2)に用いられる全(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。
【0040】
本発明の樹脂シートにおいて、P2層に用いられるポリカーボネート系樹脂(A1)及び無機粒子(B)はP1層に用いられているものを好適に使用することができる。
【0041】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層とP2層の積層比は、特に限定されず、用途により適宜積層比を選択することができるものであるが、一般的にはP1層の厚みの和をH1、P2層の厚みの和をH2とした時、P1層とP2層の積層比H1/H2が2以上20以下であることが好ましく、より好ましくは3以上15以下、更に好ましくは4以上10以下である。本発明の樹脂シートにおいて、P1層とP2層の積層比H1/H2が20を超えると、P2層を設けることによって得られる耐紫外線性(色調変化)が低下する場合がある。また、本発明の樹脂シートにおいて、P1層とP2層の積層比H1/H2が2に満たない場合、耐湿熱性、難燃性、光学特性が低下する場合がある。本発明の樹脂シートにおいて、P1層とP2層の積層比H1/H2を2以上20以下の範囲とすることで、優れた耐湿熱性と難燃性、光学特性、耐紫外線性(色調変化)を全て満たすシートとすることができる。
【0042】
本発明の樹脂シートの厚みは、特に限定されず、用途により適宜厚みを選択することができるものであるが、例えば、本発明の樹脂シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、本発明の樹脂シートの厚みは50μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上400μmである。本発明の樹脂シートの厚みが50μm未満の場合、バックシートの平坦性を確保することが困難となる場合がある。一方、500μmより厚い場合、太陽電池に搭載した場合、太陽電池全体の厚みが大きくなりすぎることがある。
【0043】
本発明の樹脂シートのP1層、P2層において、本発明の効果が損なわれない範囲であれば必要に応じ、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、帯電防止剤、易滑剤、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等の添加剤や、気泡等を配合することによって、本発明の樹脂シートに各種機能を付与することができる。
【0044】
本発明の樹脂シートは、温度125℃、湿度100%RHの雰囲気下で72時間処理した後の伸度保持率が20%以上であることが好ましい。より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上である。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1997)に基づいて測定されたものであって、処理前のシートの破断伸度E0、前記処理後の破断伸度をEとした時に、下記(b)式により求められる値である。
伸度保持率(%)=(E/E0)×100 (b)式
なお、測定にあたっては、試料を測定片の形状に切り出した後、処理を実施し、処理後のサンプルを測定した値である。本発明の樹脂シートにおいて、温度125℃、湿度100%RHの雰囲気下で72時間処理した後の伸度保持率を20%以上とすることでシートの耐湿熱性はより一層良好なものとなり、本発明の樹脂シートを用いた太陽電池の耐久性を高めることができる。
【0045】
また、本発明の樹脂シートにおいて、厚み300μmにおける燃焼速度が200mm/分以下であることが好ましい。より好ましくは150mm/分以下であり、更に好ましくは120mm/分以下である。ここでいう厚み300μmにおける燃焼速度とは、UL94HB試験に基づいて、厚み300μmのシートを13mm×125mmの大きさに切り出し、端から25.4mmのところに第一標線、101.6mmのところに第二標線を引き、水平に保持して燃焼試験を行った時の第一標線から第二標線までの燃焼速度である。なお、測定はシートの幅方向及び長手方向についてそれぞれN=3で行いその平均値を燃焼速度とする。本発明の樹脂シートにおいて、厚み300μmにおける燃焼速度が200mm/分を超えると、本発明の樹脂シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、回路の漏電などの場合、シートの難燃性が不足し、好ましくない場合がある。本発明の樹脂シートにおいて、厚み300μmにおける燃焼速度を200mm/分以下とすることで、太陽電池バックシートのような、難燃性が要求される用途で好適に使用することができる。
【0046】
また、本発明の樹脂シートをエチレン−ビニルアセテート共重合体樹脂シート(以下、EVAシートと称する)に熱圧着させた時の剥離強度は10N/cm以上が好ましい。より好ましくは20N/cm以上、更に好ましくは40N/cm以上である。ここでいう、EVAシートとの剥離強度とは、厚さ0.3mmの半強化ガラス上に、サンビック(株)製の500μm厚のEVAシート“ファーストキュア”、および本発明シートを重ね、市販のガラスラミネーターを用いて真空引き後に135℃加熱条件下、29.4N/cmの圧力で15分プレス処理した後、常温まで冷却させたものを用いて、JIS K 6854(1994)に基づき測定した値である。本発明の樹脂シートにおいて、EVAシートとの剥離強度が10N/cmよりも小さいと、本発明の樹脂シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、太陽電池の発電素子をEVAシートで封止した発電セルとバックシートの密着性が不足し、加工工程中や太陽電池に衝撃が加わった時にバックシートが剥離してしまう可能性がある。本発明の樹脂シートにおいて、EVAシートとの剥離強度を10N/cm以上とすることで、太陽電池の発電セルとの密着性に優れたバックシートとすることでできる。
【0047】
また、本発明の樹脂シートにおいて、波長560nmの相対反射率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは94%以上である。ここでいう波長560nmの相対反射率とは、シートを分光光度計U−3410(日立製作所(株)製)を用いて、波長560nmの反射率を測定した値である。本発明の樹脂シートにおいて、相対反射率が80%に満たない場合、本発明の樹脂シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、発電セルに太陽光が当たった時、バックシートの反射性が劣り反射光による発電効率が低下する場合がある。本発明の樹脂シートにおいて、波長560nmの相対反射率を80%以上とすることで、優れた反射性を有するシートとすることができ、本発明の樹脂シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、搭載する太陽電池の発電効率を高めることができる。
【0048】
また、本発明の樹脂シートにおいて、温度60℃、湿度50%RHの雰囲気下、強度100mW/cmのメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を96時間照射した後の色調変化(Δb値)が5以下であることが好ましい。ここでいう、色調変化(Δb)は、JIS−Z−8722(2000)に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて反射法によりシートの色調(b値)を紫外線照射前後で測定し、その差を色調変化(Δb)である。より好ましくは色調変化(Δb値)が2以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。尚、本発明の樹脂シートのP2層がP1層の片側にのみ設けられている場合、紫外線照射はP2層が設けられている側の面に行うものとする。本発明の樹脂シートにおいて、温度60℃、湿度50%RHの雰囲気下、強度100mW/cmのメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を96時間照射した後の色調変化(Δb値)が5を超えると、例えば、本発明の樹脂シートを、太陽電池バックシートのような紫外線に長期間曝されるような用途で使用した際、劣化によってシートが変色し外観を損ねてしまう場合がある。本発明の樹脂シートにおいて温度60℃、湿度50%RHの雰囲気下、強度100mW/cmのメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を96時間照射後の色調変化を5以下とすることで、紫外線による色調変化の小さい、太陽電池バックシートのような紫外線に長期間曝されるような用途で好適に使用することができる。
【0049】
また、本発明の樹脂シートは、他のシート等と積層することができる。該他のシートの例として、水蒸気バリア性を高めるためのオレフィン層、機械的強度を高めるためのポリエステル層、帯電防止層、耐紫外線性をさらに向上させるための耐紫外線層、耐衝撃性や耐擦過性を高めるためのハードコート層など、用途に応じて、任意に選択することができる。その具体例として、本発明の樹脂シートを太陽電池バックシートとして用いる場合は、水蒸気バリア性を高めるためのオレフィン層、耐紫外線層の他、絶縁性の指標である部分放電現象の発生を抑える導電層を形成させることなどが挙げられる。
【0050】
次に、本発明の樹脂シートの製造方法について例を挙げて説明する。
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂(A1)はジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンや、ジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを公知の方法で反応させて得ることができる。また、出光興産(株)製“タフロン” (登録商標)や、帝人化成(株)製“バンライト” (登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製 “ノバレックス” (登録商標)、住友ダウ(株)製“カリバー” (登録商標)など市販のポリカーボネート系樹脂も好適に用いることができる。
【0051】
本発明に用いられる酸変性樹脂(C)は、前記で例示した熱可塑性樹脂にカルボン酸エステル基や無水マレイン酸基等の酸性置換基を有する変性剤を用いて、不飽和カルボン酸をグラフト重合させることによって得ることができる。例えば、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト重合させるには、ポリオレフィン樹脂を有機溶剤中に溶解させるか、懸濁させるかした後、不飽和カルボン酸を加え、ラジカル発生剤の分解温度(一般に50℃以上150℃以下)まで昇温させ、ラジカル発生剤を少量ずつ添加してグラフト反応させる方法や、ポリオレフィン樹脂とグラフトモノマーである不飽和カルボン酸をラジカル発生剤と共に押出機中で必要に応じて熱(例えば150℃以上260℃以下)をかけグラフト重合させる方法を用いることができる。また、三洋化成工業(株)製“ユーメックス” (登録商標)や、旭化成ケミカルズ(株)製“タフテック” (登録商標)、三井化学(株)製“アドマー” (登録商標) など市販の酸変性樹脂も好適に用いることができる。
【0052】
本発明に用いられるアクリル系樹脂(A2)はアクリロイル基、メタクリロイル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基を併せて(メタ)アクリロイル基と称する。(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート等についても同様の表現とする)を有する化合物を公知の方法で重合することによって得ることができる。また、クラレ(株)製“パラペット” (登録商標)や、三菱レイヨン(株)製“アクリペット” (登録商標)など市販のアクリル系樹脂も好適に用いることができる。
【0053】
本発明の樹脂シートに無機粒子(B)を添加する方法は、予め樹脂と無機粒子(B)をベント式二軸混練押出機やタンデム型押出機を用いて、溶融混練してマスターペレットを作製する方法が耐湿熱性の観点から好ましい。このとき、マスターペレットの濃度は好ましくは20質量%以上80質量%以下が好ましく、更に好ましくは25質量%以上70質量%以下、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下60質量%以下である。20質量%に満たない場合、添加するマスターペレットの量が多くなり、劣化した樹脂の量が多くなって耐湿熱性が低下する場合がある。また80質量%を越える場合は、マスターペレットの作製が困難となる場合がある。
【0054】
本発明の樹脂シートを作製する方法としては、主たる構成成分であるポリカーボネート系樹脂(A1)と無機粒子(B)を含有するマスターペレット、酸変性樹脂(C)をそれぞれ必要に応じて乾燥させた後、混合した樹脂組成物を窒素気流下あるいは減圧下で、押出機に供給し溶融させて、Tダイからキャスティングドラムに押出することにより得ることができる。このとき、キャスティングドラムの温度は50℃以上、ポリカーボネート系樹脂(A1)のガラス転移温度−50℃以下とするのが、得られたシートの平面性の点から好ましい。また、この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させさせることが好ましい。
【0055】
本発明の樹脂シートにおいて、P1層とP2層を積層する方法としては、例えば、P1層用原料とP2層用原料をそれぞれ二台の押出機にそれぞれ供給し溶融させて、マルチマニホールドダイやフィードブロック、スタティックミキサー、ピノール等を用いてP1層とP2層を合流させて積層する方法(溶融共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、各シートをそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、その他、溶媒に溶解させたものを塗布・乾燥する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等を使用することができる。これらのうち、製造工程が短く、かつ層間の接着性が良好であるという点で、溶融共押出法が好ましい。
【0056】
本発明の樹脂シートは前記の方法によって製造することができる。得られたシートは従来のポリカーボネート系樹脂シートと比べて耐湿熱性、難燃性、密着性、光学特性(光反射性、白色性など)に優れる。かかるシートは、太陽電池用バックシートの他、液晶ディスプレイ用反射板、自動車用材料、建築材料をはじめとした、耐湿熱性、難燃性、他の部材との密着性、光反射性などが重視されるような用途に好適に使用することができる。特には、かかるシートを用いることで、高い耐久性を有した太陽電池バックシート、およびそれを用いることにより、高い耐久性を有した太陽電池を提供することができる。
【0057】
本発明の太陽電池は、本発明の樹脂シートをバックシートとして用いることを特徴とする。本発明の樹脂シートを用いることで、従来の太陽電池と比べて耐久性を高めたり、薄くすることが可能となる。その構成の例を図1に示す。電気を取り出すリード線(図1には示していない)を接続した発電素子をEVAシートなどの透明な封止材層2で封止したものに、ガラスなどの透明基板4と、本発明の樹脂シートを太陽電池バックシート1として貼り合わせて構成されるが、これに限定されず、任意の構成に用いることができる。なお、図1では本発明の樹脂シート単体での例を示したが、その他必要とされる要求特性に応じて、本発明の樹脂シートと他のシートとの複合シートとして用いることも可能である。
【0058】
ここで、本発明の太陽電池において、上述の太陽電池用バックシート1は発電素子を封止した封止材層2の背面に設置される。ここで、本発明の樹脂シートがP2層を有する場合は、少なくとも封止材層2と反対側(図1の5)に本発明の樹脂シートのP2層が位置するように配置されているのが好ましい。この構成とすることによって、地面からの照り返しの紫外線などに対する耐性を高めることが可能となり、高耐久の太陽電池としたり、厚さを薄くすることができる。また、本発明の樹脂シートが非対称の構成であって、もう一方の片側表面がP1層からなる場合においては、P1層は封止材層2側に位置するように配置されるのが、封止材との密着性をより高くすることができるという点で好ましい。
【0059】
発電素子3は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、結晶シリコン系、多結晶シリコン系、微結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、銅インジウムセレナイド系、化合物半導体系、色素増感系など、目的に応じて任意の素子を、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続して使用することができる。
【0060】
透光性を有する透明基板4は太陽電池の最表層に位置するため、高透過率のほかに、高耐候性、高耐汚染性、高機械強度特性を有する透明材料が使用される。本発明の太陽電池において、透光性を有する透明基板4は上記特性と満たせばいずれの材質を用いることができ、その例としてはガラス、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく挙げられる。ガラスの場合、強化されているものを用いるのがより好ましい。また樹脂製の透光基材を用いる場合は、機械的強度の観点から、上記樹脂を一軸または二軸に延伸したものも好ましく用いられる。
【0061】
また、これら基材には発電素子の封止材料であるEVA系樹脂などとの接着性を付与するために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、易接着処理を施すことも好ましく行われる。
【0062】
発電素子を封止するための封止材料2は、発電素子の表面の凹凸を樹脂で被覆し固定し、外部環境から発電素子保護し、電気絶縁の目的の他、透光性を有する基材やバックシートと発電素子に接着するため、高透明性、高耐候性、高接着性、高耐熱性を有する材料が使用される。その例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。
【0063】
以上のように、本発明の樹脂シートに用いた太陽電池バックシートを太陽電池システムに組み込むことにより、従来の太陽電池と比べて、高耐久および/または薄型の太陽電池システムとすることが可能となる。本発明の太陽電池は、太陽光発電システム、小型電子部品の電源など、屋外用途、屋内用途に限定されず各種用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
[特性の評価方法]
(1)破断伸度
ASTM−D882(1999)に基づいて、シートを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間1cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、サンプル数はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値として求めた。
(2)湿熱処理後の伸度保持率
温度125℃、湿度100%RHの雰囲気下で72時間処理したシートの破断伸度E、処理前のシートの破断伸度E0を前記(1)項に従って測定し、ASTM−D882(1997)に基づいて下記(b)式により求めた。
伸度保持率(%)=(E/E0)×100 (b)式
得られた伸度保持率について以下のように判定を行った。
湿熱処理後の伸度保持率が50%以上の場合:A
湿熱処理後の伸度保持率が30%以上50%未満の場合:B
湿熱処理後の伸度保持率が20%以上30%未満の場合:C
湿熱処理後の伸度保持率が10%以上20%未満の場合:D
湿熱処理後の伸度保持率が10%未満の場合:E
耐湿熱性はA〜Dが良好であり、その中で最もAが優れている。
(3)難燃性試験
UL94HB試験に基づいて、シートを13mm×125mmの大きさに切り出し、切り出した長手方向の端から25.4mmのところに第一標線、101.6mmのところに第二標線を引き、水平に保持して燃焼試験を行った時の第一標線から第二標線までの燃焼速度で、シートの幅方向及び長手方向についてそれぞれN=3で行いその平均値とした。得られた燃焼速度について以下のように判定を行った。
燃焼速度が100mm/分未満の場合:A
燃焼速度が100mm/分以上110mm/分未満の場合:B
燃焼速度が110mm/分以上130mm/分未満の場合:C
燃焼速度が130mm/分以上150mm/分未満の場合:D
燃焼速度が150mm/分以上の場合:E
難燃性はA〜Dが良好であり、その中でAが最も優れている。
(4)EVA剥離強度
厚さ0.3mmの半強化ガラス上に、サンビック(株)製の500μm厚のEVAシート“ファーストキュア”、および評価を行うシートを重ね、市販のガラスラミネーターを用いて真空引き後に135℃加熱条件下、29.4N/cmの圧力で15分プレス処理した後、常温まで冷却したものを用いて、JIS K 6854(1994)に基づき測定し、得られた剥離強度で、シートの幅方向及び長手方向についてそれぞれN=3で行いその平均値とした。尚、シートがP1層とP2層からなる非対称の積層構成である場合には、積層シートのP1層側の剥離強度を測定した。得られた剥離強度について以下のように判定を行った。
剥離強度が40N/cm以上の場合:A
剥離強度が30N/cm以上40N/cm未満の場合:B
剥離強度が20N/cm以上30N/cm未満の場合:C
剥離強度が10N/cm以上20N/cm未満の場合:D
剥離強度が10N/cm未満の場合:E
密着性はA〜Dが良好であり、その中でAが最も優れている。
(5)相対反射率
分光光度計U−3410(日立製作所(株)製)を用いて、波長560nmの反射率を測定し、相対反射率とした。サンプル数はN=5とし、それぞれの相対反射率を測定して、その平均値を算出した。測定ユニットはφ60mmの積分球(型番130−0632)を使用し、10°傾斜スペーサーを取り付けた。また、標準白色板には酸化アルミニウム(型番210−0740)を使用した。尚、シートがP1層とP2層からなる非対称の積層構成である場合には、積層シートのP1層側から測定した。得られた反射率について以下のように判定を行った。
反射率が90%以上の場合:A
反射率が86%以上90%未満の場合:B
反射率が83%以上86%未満の場合:C
反射率が80%以上83%未満の場合:D
反射率が80%未満の場合:E
光学特性はA〜Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(6)色調(b値)
JIS−Z−8722(2000)に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて反射法により測定されたシートの色調(b値)とした。サンプル数はN=5とし、それぞれの色調(b値)を測定して、その平均値を算出した。
(7)紫外線照射後の色調変化(Δb)
シートを岩崎電気(株)製アイスーパー紫外線テスターS−W131にて、温度60℃、湿度60%RH、照度100mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)の条件下で96時間照射した後のb値と試験前のb値を前記(6)項に従って測定し、試験前後の差を紫外線照射後の色調変化(Δb)とした。尚、シートがP1層とP2層からなる非対称の積層構成である場合には、積層シートのP2層側に紫外線照射を行った。得られた色調変化(Δb)について以下のように判定を行った。
色調変化(Δb)が5未満の場合:A
色調変化(Δb)が5以上10未満の場合:B
色調変化(Δb)が10以上の場合:C
耐紫外線性(色調変化)はA、Bが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0065】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定して解釈されるものではない。
(原料)
ポリカーボネート系樹脂(A1)
(PC)
出光興産(株)製“タフロン”(登録商標)A2200を用いた。尚、このポリカーボネート系樹脂は、ジヒドロキシジアリール化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)が主たる構成成分であるポリカーボネート系樹脂である。
アクリル系樹脂(A2)
(PMMA)
住友化学(株)製“スミペックス”(登録商標)HT50Yを用いた。尚、このアクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としてメチルメタクリレートを主たる構成成分とするアクリル樹脂であり、弾性成分を30質量%含有するアクリル系樹脂である。
酸変性樹脂(C)
(mSEBS)
旭化成ケミカルズ(株)製“タフテック”(登録商標)M1913を用いた。尚、この樹脂は、スチレンとエチレン・プロピレンの共重合比が質量比として30/70で、酸価が10KOHmg/gの酸変性されたSEBS樹脂である。
(mPP)
三洋化成工業(株)製“ユーメックス”(登録商標)1001を用いた。尚、この樹脂は、酸価が26KOHmg/gの酸変性されたPP樹脂である。
(SEBS)
クラレ(株)製“セプトン”(登録商標)8007を用いた。尚、この樹脂は、スチレンとエチレン・プロピレンの共重合比が質量比として30/70で、酸変性されていないSEBS樹脂である。
(PP)
(株)プライムポリマー製“プライムポリプロ” (登録商標)F−704NPを用いた。尚、この樹脂は酸変性されていないPP樹脂である。
【0066】
(参考例1)
ポリカーボネート系樹脂(出光興産(株)製“タフロン” (登録商標)A2200)50質量部と、平均粒子径210nmのルチル型二酸化チタン粒子50質量部を、ベントした260℃の二軸混練押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出した。温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして酸化チタン濃度50質量%のマスターペレット(MB1)を作製した。
(参考例2)
ポリカーボネート系樹脂(出光興産(株)製“タフロン” (登録商標)A2200)50質量部と、平均粒子径600nmの酸化亜鉛粒子50質量部を、ベントした260℃の二軸混練押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出した。温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして酸化亜鉛濃度50質量%のマスターペレット(MB2)を作製した。
【0067】
(参考例3)
アクリル系樹脂(住友化学(株)製“スミペックス” (登録商標)HT50Y)50質量部と、平均粒子径210nmのルチル型二酸化チタン粒子50質量部を、ベントした220℃の二軸混練押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出した。温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして酸化チタン濃度50質量%のマスターペレット(MB3)を作製した。
(実施例1)
押出機(単軸押出機)にポリカーボネート系樹脂(出光興産(株)製“タフロン” (登録商標)A2200)と、参考例で得られた酸化チタンマスターペレット(MB1)を、それぞれ110℃の温度で6時間熱風乾燥した後、無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cが表1に示した組成となるように、酸変性されたSEBS樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製“タフテック” (登録商標)M1913)と混合したものを押出機に供給し、押出機内で280℃の温度で溶融混練後、80μmカットフィルターにより濾過を行った後、Tダイ口金内より溶融押出を行い、表面温度70℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着固化させ、その後室温まで冷却して厚み300μmの樹脂シートを得た。
【0068】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた耐湿熱性、難燃性、密着性、光学特性を有することがわかった。
【0069】
(実施例2〜4)
無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cを、表1に示した組成とした以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0070】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例1と同様に非常に優れた耐湿熱性、難燃性、密着性、光学特性を有することがわかった。
【0071】
(実施例5〜12)
無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cを、表1に示した組成とした以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0072】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例1〜4に比べると特性のバランスは劣るものの、W1b/W1cが小さくなるほど耐湿熱性に優れ、W1b/W1cが大きくなるほど難燃性に優れ、無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cが小さくなるほど密着性に優れ、無機粒子(B)の含有率W1bが大きくなるほど光学特性に優れることがわかった。
(実施例13〜17)
無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cを、が表1に示した組成とした以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0073】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cが大きくなるほど密着性が劣り、無機粒子(B)の含有率W1bが小さくなるほど光学特性が劣り、W1b/W1cが大きくなるほど耐湿熱性が劣り、W1b/W1cが小さくなるほど難燃性が劣ることがわかったが、問題ない範囲であった。
【0074】
(実施例18)
主押出機と副押出機を用い、主押出機にポリカーボネート系樹脂(出光興産(株)製“タフロン” (登録商標)A2200)と、参考例1で得られた酸化チタンマスターペレット(MB1)を、110℃の温度で6時間熱風乾燥した後、無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cが表1に示した組成となるように、酸変性されたSEBS樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製“タフテック” (登録商標)M1913)と混合したものを供給し、280℃の温度で溶融押出後80μmカットフィルターにより濾過を行った。一方、副押出機には、ポリカーボネート系樹脂(出光興産(株)製“タフロン” (登録商標)A2200)と、参考例1で得られた酸化チタンマスターペレット(MB1)を、無機粒子(B)の含有率W2bが表1に示したP2層の組成となるように混合したものを、110℃の温度で6時間熱風乾燥した後、供給し、280℃の温度で溶融押出した。次いで主押出機から供給されるP1層の片側に、副押出機から供給されたP2層を、厚み比率がP1層/P2層=6/1となるよう合流させ、Tダイ口金内より、溶融2層積層共押出を行って積層樹脂シートとし、表面温度70℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着固化させ、その後室温まで冷却して厚み300μmの積層樹脂シートを得た。
【0075】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた耐湿熱性、難燃性、密着性、光学特性を有すことがわかった。
【0076】
また、得られた樹脂シートについて紫外線照射後の色調変化の評価を行ったところ、優れた耐紫外線性(色調変化)を有することがわかった。
【0077】
(実施例19)
P2層の無機粒子(B)の含有率W2bを表1に示した組成とし、P1層の両側に、P2層を厚み比率がP2層/P1層/P2層=1/8/1となるように、溶融3層積層共押出を行って積層樹脂シートを得た以外は、実施例18と同様に樹脂シートを得た。
【0078】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた耐湿熱性、難燃性、密着性、光学特性を有すことがわかった。
(実施例20)
副押出機にアクリル系樹脂(住友化学(株)製“スミペックス” (登録商標)HT50Y)と、参考例3で得られた酸化チタンマスターペレット(MB3)を、無機粒子(B)の含有率W2bを表1に示したP2層の組成となるように混合したものを、85℃の温度で6時間熱風乾燥した後、供給した以外は、実施例18と同様に樹脂シートを得た。
【0079】
得られた樹脂シートについて湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例18と同様に非常に優れた耐湿熱性、難燃性、密着性、光学特性を有することがわかった。
【0080】
また、得られた樹脂シートについて紫外線照射後の色調変化の評価を行ったところ、非常に優れた耐紫外線性(色調変化)を有することがわかった。
【0081】
(実施例21)
参考例2で得られた、酸化亜鉛マスターペレット(MB2)を表1に示した組成となるように用いた以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0082】
得られた樹脂シートについて、湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例4に比べて光学特性がやや劣ることがわかった。
【0083】
(実施例22)
酸変性樹脂(C)として酸変性PP樹脂(三洋化成工業(株)製“ユーメックス” (登録商標)1001)を表1に示した組成となるように用いた以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0084】
得られた樹脂シートについて、湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例4に比べて密着性が少し劣ることがわかった。
【0085】
(比較例1〜9)
無機粒子(B)の含有率W1b及び酸変性樹脂(C)の含有率W1cを、表1に示した組成とした以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0086】
得られた樹脂シートについて、湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、比較例1は光学特性に不足し、比較例2、3は難燃性に不足し、比較例4〜7は密着性に不足し、比較例8、9は耐湿熱性に不足することがわかった。
【0087】
(比較例10)
酸変性樹脂(C)の代わりに、酸変性されていないSEBS樹脂(クラレ(株)製“セプトン” (登録商標)8007)を表1に示した組成となるように用いた以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0088】
得られた樹脂シートについて、湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、耐湿熱性に不足することがわかった。
(比較例11)
酸変性樹脂(C)の代わりに、PP樹脂((株)プライムポリマー製“プライムポリプロ” (登録商標)F−704NP)を表1に示した組成となるように用いた以外は、実施例1と同様に樹脂シートを得た。
【0089】
得られた樹脂シートについて、湿熱処理後の伸度保持率、難燃性試験、EVA剥離強度、相対反射率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、耐湿熱性に不足することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂シートは、優れた耐湿熱性、難燃性、他の部材との密着性、光学特性(光反射性、白色性など)の全てを両立するポリカーボネート系樹脂シートを提供することができる。かかるポリカーボネート系樹脂シートは、太陽電池用バックシートの他、液晶ディスプレイ用反射板、自動車用材料、建築材料をはじめとした、耐湿熱性、紫外線に対する耐性、光反射性が重視されるような用途に好適に使用することができる。特には、かかるポリカーボネート系樹脂シートを用いることで、高い耐久性を有した太陽電池バックシートおよびそれを用いた太陽電池を提供することができる。
【0091】
【表1−1】

【0092】
【表1−2】

【符号の説明】
【0093】
1:太陽電池用バックシート
2:封止材層
3:発電素子
4:透明基板
5:太陽電池バックシートの封止剤層2と反対側の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とし、無機粒子(B)の含有率W1bが1質量%以上20質量%以下で、かつ、酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが0.04質量%以上3質量%以下であり、無機粒子(B)の含有率W1bと酸変性された熱可塑性樹脂(C)の含有率W1cが下記式(a)を満たす層(P1層)からなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂シート。
2≦W1b/W1c≦25 ・・・(a)
【請求項2】
上記P1層に、アクリル系樹脂(A2)またはポリカーボネート系樹脂(A1)を主たる構成成分とし、無機粒子(B)を含む層(P2層)を積層した請求項1記載のポリカーボネート系樹脂シート。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂シートを用いた太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−219200(P2012−219200A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86965(P2011−86965)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】