説明

ポリクロロプレン系水性組成物

本発明は、ポリクロロプレンと酸化亜鉛とを主成分とする水性組成物、それらの製造方法、およびそれらの接着剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含水組成物に関し、特に、ポリクロロプレン系水性ポリマー分散体、それらの製造方法、および特にコーティングの製造のため、特に接着性コーティングの製造のためのそれらの使用、ならびにこれらの組成物を使用した基材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレン(CR)系のコンタクト接着剤は、主として溶媒を含有する接着剤であり、接合すべき基材に適用して乾燥させる。圧力を加えて基材を結合させると、この結合過程直後には高い初期強度を有する接合された構造が得られる。この後の架橋によって、最終的に硬化する。
【0003】
環境的な理由で、対応する水性CR接着剤配合物を形成するように加工できる好適な水性CR接着剤分散体がますます必要とされている。これらは、たとえば「噴霧混合」法において使用され、この場合、水性接着剤配合物と凝固剤とが、別々にスプレーガンを介して送り出され、最終的にスプレージェット中で混合され、その後、CR接着剤が基材上で凝固する。この方法の概要は、たとえば、(非特許文献1)、(非特許文献2)、(非特許文献3)に記載されている。
【0004】
必要な貯蔵安定性、および使用における信頼性を得るため、あるいは接着剤層を老化または変色から保護するために、安定剤などの添加剤を水性CR分散体または配合物に加える必要がある場合が多い。
【0005】
後者の目的のために、酸化亜鉛を水性配合物に加えると好都合であり、その理由は、ポリクロロプレン分散体に基づく配合物が使用される場合、CRポリマーからのHClの開裂による接合の継目の急速な老化、および接合した基材の変色を酸化亜鉛が抑制するからである。
【0006】
しかしこれまで知られている種類の酸化亜鉛は沈殿物を形成する傾向にあり、周知の酸化亜鉛分散体は相分離(いわゆる「フェージング」)が起こる傾向にある。特に、このような接着剤配合物が「噴霧混合」法において使用される場合、結果としてノズルが詰まるため、この沈降または相分離は許容できない。ノズルの洗浄は非常に時間を消費し、費用面および経済的な面で不満が生じる。
【0007】
酸化亜鉛の沈降の問題を解決するため、安定であり沈降しない酸化亜鉛分散体を製造するための種々の方法が開示されている。
【0008】
(特許文献1)には、市販の酸化亜鉛を湿潤剤で処理して水性酸化亜鉛ペーストを形成することによる酸化亜鉛ペーストの製造が記載されている。このペーストは、水性接着剤分散体中に使用する場合に多数の欠点を有する。一方、このペーストは非常に粘稠で揺変性であり、そのため加工が困難である。また、市販の酸化亜鉛中の酸化亜鉛粒子は非常に凝集した形態で存在し、この凝集体は記載の方法によって十分に分散しないため、このペーストを水性接着剤分散体に混入した後の沈降に対する抵抗性が低下する。また、この凝集の結果、反応性表面領域が部分的にしか利用できず、そのため、HCl吸収の必要な効果を得るのに比較的多い出発量の酸化亜鉛を使用する必要がある。
【0009】
(特許文献2)には、コロイド状酸化亜鉛、および従来の高度に凝集した酸化亜鉛をポリアクリル酸の存在下で粉砕することによってコロイド溶液を製造する方法が記載されており、結果として得られるコロイド溶液は<100nmの凝集体を含有する。この方法は、<100nmの凝集体寸法を有する安定な分散体を得るため、凝集した粒子の強い相互作用に打ち勝つために非常に強い粉砕工程が必要となるという欠点を有する。したがって、この方法は、非常に高度な技術的労力と、非常に多くのエネルギーが必要となり、処理量は非常にわずかとなり、したがって工業的な製品量を経済的に製造するのには適していない。また、凝集のため、反応性表面領域が一部しか利用されず、したがってHCl吸収の必要な効果を得るのに比較的多い出発量の酸化亜鉛を使用する必要がある。
【0010】
従来技術には、多数の用途でのナノ酸化亜鉛分散体の使用が記載されている。用語「ナノ粒子」は約100nm未満の直径を有する粒子を一般に意味する。
【0011】
広い反応性粒子表面領域を有するため、ナノ粒子状酸化亜鉛は触媒として使用するのに適している。(特許文献3)などに記載されているように、これは架橋性ポリマー用、特にゴム用の特に重要な活性剤である。活性表面領域が小さい従来の酸化亜鉛と比較すると、はるかに少ない量のナノ粒子状酸化亜鉛で同等のポリマー架橋が得られる。
【0012】
約30nm未満の粒度を有する酸化亜鉛ナノ粒子は、透明な有機/無機複合材料、プラスチック、ラッカー、および非接着剤コーティングにおけるUV吸収剤として使用しても好適である。さらに、これらはUV感受性の有機染料および顔料を保護するために使用することもできる。
【0013】
約30nmを超える粒子または凝集体では散乱光効果が生じ、そのため可視光範囲における透明性の望ましくない低下が起こる。
【特許文献1】独国特許出願公開第19 703 582号明細書
【特許文献2】国際公開第95/24359号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/083797号パンフレット
【非特許文献1】「接着剤ハンドブック」(Handbook of Adhesives)、アービング・スキースト(Irving Skeist)、チャップマン・ホール(Chapman Hall)、ニューヨーク(New York)、第3版1990年、パート15、301頁
【非特許文献2】R.ムッシュ(Musch)ら、Adhesives Age,January 2001年、17頁
【非特許文献3】「フォームを接合させるためのディスパコール(登録商標)C系噴霧混合接着剤」(Spray−Mixing Klebstoffe auf Basis Dispercoll(登録商標)C fuer die Schaumstoff−Klebung)、バイエルAGの技術カタログ(Technical Brochure from Bayer AG)、No.KA−KR−0001d/01/05.96
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の基礎となる問題は、接合すべき基材に適用した後、および結合した後に、ポリマーからのHClの開裂(脱離)に対する高い抵抗性を有し、ノズル中に閉塞物が全く形成されず「噴霧混合」法などの噴霧方法での使用に好適な、水性でフェージング抵抗性の接着剤組成物を提供することであった。
【0015】
ポリクロロプレン分散体を特定の水性ナノZnO分散体と組み合わせることによって、沈殿物が形成されず、非常に薄い被膜を形成するように処理される場合でさえ斑点が全く見られない接着剤配合物を得ることができることが分かった。これらは、HClの開裂(脱離)に対して高い抵抗性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
a)ポリクロロプレン粒子と、
b)平均粒度が150nm未満である酸化亜鉛粒子と、
c)水と
を含有する組成物に関する。
【0017】
本発明の組成物は、特に、水性分散体の形態で存在する。
【0018】
本発明によるポリクロロプレン粒子は、ポリクロロプレン(ポリ(2−クロロ−1,3−ブタジエン)およびクロロプレン含有コポリマーの粒子であると理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ポリクロロプレン(ポリ(2−クロロ−1,3−ブタジエン)粒子は、水性分散体の形態の本発明による組成物に適切に加えられる。このようなポリクロロプレン分散体の製造は、それ自体周知であり、これらはたとえば、クロロプレンと、場合により、クロロプレンと共重合可能なエチレン系不飽和モノマーとのアルカリ性媒体中のエマルジョン重合によって製造され、たとえば、国際公開第02/24835号パンフレット(3頁26行から7頁4行の部分を参照)、独国特許出願公開第3,002,734号明細書(8頁23行から12頁9行の部分を参照)、または米国特許第5 773 544号明細書(第2欄9行から第4欄45行の部分を参照)に記載されている。ポリクロロプレン分散体は、たとえば国際公開第02/24825号パンフレットの実施例2、および独国特許出願公開第3 002 734号明細書の実施例6に記載されるような連続重合によって製造されることが特に好ましく、0.01重量%〜0.3重量%の間で改質剤含有率を変動させることができる。
【0020】
本発明の好ましい変形においては、ポリクロロプレン粒子は220nm未満の平均一次粒子直径を有する。用語「一次粒子」とは、DIN 53206;1992−08と同様に、好適な物理的方法によって個別の粒子として区別可能な粒子を意味する。用語「直径」は、ポリクロロプレン粒子について言及する場合に使用することができ、なぜならこれらがほぼ球形であるからである。
【0021】
本発明によると、ポリクロロプレン粒子の平均一次粒子直径は好ましくは超遠心機を使用して決定される;H.G.ミュラー(Mueller)、Progr.Colloid Polym.Sci.107、180−188(1997年)を参照されたい。これらの値は重量平均である。
【0022】
水蒸気蒸留によってポリクロロプレン分散体から残留する2−クロロ−1,3−ブタジエンモノマーを除去する場合に、望ましくない沈降が起こるため、220nmを超える平均一次粒子直径は不都合となる。
【0023】
本発明のさらに別の好ましい変形においては、ポリクロロプレン粒子が60nmを超える平均一次粒子直径を有する。
【0024】
60nm未満の平均一次粒子直径は、ポリマー分散体を>55重量%の固形分まで濃縮することが非常に困難となりうるので、不都合となる。
【0025】
ポリクロロプレン粒子は、好ましくは約60〜約220nm、より好ましくは約70〜約160nmの平均一次粒子直径を有する。上記平均一次粒子直径のポリクロロプレン粒子は、本発明による組成物の製造に使用される水性分散体中、および本発明により得られる組成物中の両方に存在する。
【0026】
本発明による組成物は、平均粒度が150nm未満、好ましくは100nm未満、さらにより好ましくは50nm未満である酸化亜鉛粒子も含有する。酸化亜鉛粒子は球形ではないので、平均粒子直径とは対照的に平均粒度で参照される。
【0027】
酸化亜鉛粒子は、いわゆる一次粒子の形態、および凝集体の形態の両方で、本発明による組成物中に存在することができる。本発明によると、用語「ZnO粒子の平均粒度」は、超遠心法によって測定される平均粒度を意味し、一次粒子の寸法、および場合により存在する凝集体の寸法を含んでいる(参照:H.G.ミュラー(Mueller)、Prog.Colloid Polym.Sci.107、180−188(1997年)。これらの値は重量平均である。
【0028】
超遠心法によって測定される重量平均の平均粒度は、最大150nm、好ましくは最大100nm、特に好ましくは最大50nmであり、全粒子の少なくとも90重量%が、好ましくは200nm未満であり、好ましくは150nm未満、および特に好ましくは100nm未満である。
【0029】
150nmを超える平均粒度は、沈降の危険性が生じ生成物の反応性が低くなるため、不都合となる。国際公開第00/50503号パンフレットによる計数および統計分析により、TEM写真(透過型電子顕微鏡写真)によってZnO一次粒子の数平均粒度を測定することも可能である。前述したように、用語「一次粒子」は、DIN 53206;1992−08に準拠して、好適な物理的方法によって個別の粒子として区別可能な粒子を意味する。
【0030】
これらの一次粒子の平均粒度は、最大100nm、好ましくは最大50nm、より好ましくは最大30nm、さらにより好ましくは最大15nmである。
【0031】
酸化亜鉛粒子は、<150nmの平均粒度を有する水性ZnO分散体の形態で本発明による組成物に適切に加えられる。これらの水性分散体は、有機溶媒および/または表面改質化合物をさらに含有することができる。ZnO粒子は、寸法が前述のものであってよい、凝集していないZnO一次粒子、またはZnO凝集体、または分散したZnO一次粒子とZnO凝集体との混合物のいずれかからなることができる。
【0032】
本発明の別の好ましい変形においては、水性ZnO分散体が、30nm未満、好ましくは15nm未満の平均一次粒度を有する酸化亜鉛ゾルである。このゾルは、トリエタノールアミンまたはエチレングリコールなどの高沸点溶媒と場合により混合された水を含有する。使用される水性ZnO分散体の粒度は、本発明による組成物中の粒度に対応しており、すなわちこれらの粒度は、本発明による組成物中に混入しても実質的に変化しない。
【0033】
本発明の好ましい変形においては、本発明による組成物が、特に二酸化ケイ素粒子などの別の添加剤を含有する。酸化亜鉛と併用することによって、二酸化ケイ素粒子は接着剤分散体の粘度を増加させる。
【0034】
好ましくは、超遠心法(前述の通り)によって測定される平均二酸化ケイ素粒度、または二酸化ケイ素粒子の平均直径(この粒子はほぼ球状である)は、1〜400nmの範囲であり、より好ましくは5〜100nmの範囲であり、特に好ましくは8〜50nmの範囲である。この平均二酸化ケイ素粒子直径は、一次粒子の粒子直径、および場合により存在する凝集体の粒子直径を含んでいる。好ましくは二酸化ケイ素粒子は、1〜400nm、好ましくは5〜100nm、特に好ましくは8〜50nmのSiO粒子の平均粒度を有する水性二酸化ケイ素分散体の形態で、本発明による組成物に加えられる。
【0035】
特に好ましくは、前述の水性二酸化ケイ素分散体は、含水シリカゾルの形態で本発明による組成物に加えられる。使用されるシリカゾルの粒度は、本発明による組成物に混入しても実質的に変化しない。
【0036】
本発明のさらに別の好ましい変形においては、本発明による組成物は、前述のZnO粒子とは異なる少なくとも1種類の老化防止剤を含有し、これらの老化防止剤は好ましくは、オリゴ官能性第2級芳香族アミンおよび/またはオリゴ官能性置換フェノール系のものである。
【0037】
本発明による組成物を製造するために本発明において好ましくは使用される<150nmの平均粒度を有する酸化亜鉛の水性分散体は、種々の方法によって製造することができる。しかし、亜鉛塩溶液からアルカリで沈殿させ、続いてさらに処理して分散体を形成することによって酸化亜鉛粒子が製造される方法が特に好適である。実施可能な例は以下の通りである:
I)国際公開第00/50503号パンフレットなどに記載され、15nmの平均一次粒度を有する酸化亜鉛ゲルを再分散させることによって製造される酸化亜鉛ゾル。好適な溶媒は、水、または水/エチレングリコール混合物であり、場合により表面改質化合物が加えられる。
あるいは
II)国際公開第02/083797号パンフレットに記載の方法などによって製造される、国際公開第02/083797号パンフレットに記載されるものなどの、<30nmの平均一次粒度および<100nmの平均凝集体寸法を有する酸化亜鉛ゾル。
【0038】
独国特許出願公開第10 163 256号明細書に記載される方法の1つなどによって製造される、この特許に記載されるもののような表面改質された酸化亜鉛を使用して製造されるZnO分散体も、本発明による組成物の製造に好適である。
【0039】
本発明による組成物を製造するために使用することができる二酸化ケイ素の水性分散体は、以前より知られている。これらは、使用される製造工程に依存して異なる構造を有する。
【0040】
本発明において好適な二酸化ケイ素分散体は、シリカゾル、シリカゲル、熱分解法シリカ、または沈降シリカ、またはそれらの混合物に基づいて得ることができ、これらは独国特許第10224898.2号明細書に記載されている。
【0041】
熱分解法または沈降シリカなどの分離した固体の形態で存在するSiO原材料が本発明による組成物の製造に使用される場合、これらは分散させることによって水性SiO分散体に変換される。
【0042】
従来技術の分散装置、および好ましくは高剪断速度を得るために好適な分散装置、たとえばウルトラトラックス(Ultratorrax)または溶解機ディスク(dissolver disc)などが、二酸化ケイ素分散体を製造するために使用される。
【0043】
好ましくは、このような水性二酸化ケイ素分散体は、そのSiO粒子が1〜400nm、好ましくは5〜100nm、特に好ましくは8〜50nmの平均粒子直径を有するものが使用される。沈降シリカが使用される場合、それらの粒子はグラインディングによって粉砕される。
【0044】
本発明による好ましいポリマー分散体は、二酸化ケイ素分散体d1)のSiO粒子が、分離した架橋していない一次粒子として存在するポリマー分散体である。
【0045】
粒子表面上にヒドロキシル基を有するSiO粒子も好ましい。
【0046】
水性二酸化ケイ素分散体として水性シリカゾルを使用することが特に好ましい。
【0047】
老化防止剤d2)は、酸化亜鉛粒子b)ではないが、好ましくは、オリゴ官能性第2級芳香族アミンまたはオリゴ官能性置換フェノール、たとえば6PPD、DTPD、DDA、BPH、またはBHTの種類などの製品にもとづくもので、たとえば、「ゴム産業マニュアル」(Handbuch fuer die Gummiindustrie)、1992年版、バイエルAG(Bayer AG)、レバークーゼン(Leverkusen)、第4章バルカノックス(登録商標)(Chapter 4 Vulkanox(登録商標))、423頁に記載されている。ジフェニルアミン誘導体であるバルカノックス(Vulkanox)(登録商標)DDAが特に有効である。
【0048】
本発明による組成物を製造するために、成分a)、b)、およびd1)の水性分散体を次の比率で適宜混合する:
ポリクロロプレン分散体(a)50〜99.99重量%、
酸化亜鉛分散体(b)0.01〜10重量%、
二酸化ケイ素分散体(d1)0〜40重量%、
ここで、各場合の重量%は、組成物の固形分を意味し、合計100%となる(他に明記しない限り、以下の重量%も固形分を意味する)。固形分は、不揮発性成分の重量、たとえば特にポリクロロプレン、ZnO、およびSiOなどの重量を意味する。揮発性成分としては、特に、最高250°/15mmHgにおいて留去可能な高沸点溶媒が挙げられる。固形分は合計で100重量%となる。さらに、老化防止剤(d2)を、組成物の固形分を基準にして好ましくは0〜10重量%、好ましくは0〜3重量%の量で加えることができる。
【0049】
フェージング抵抗性混合物を製造するために、本発明によるポリマー分散体は、好ましくは、90〜99.9重量%のポリクロロプレン分散体(a)および10〜0.1重量%の酸化亜鉛分散体(b)を有し、これらの%は組成物の固形分と関連している。
【0050】
HClの開裂に対する最適な抵抗性を有する接着剤を製造するために、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜3重量%の別の老化防止剤(d2)、好ましくはオリゴ官能性第2級芳香族アミンまたはオリゴ官能性置換フェノール(d2)を、単独で、あるいは2重量%〜30重量%シリカゾル分散体(d1)と併用して加えることもできる。
【0051】
さらに、本発明による組成物は、0〜79.99重量%の他の従来の接着助剤および添加剤を含有することができる。
【0052】
この様な物としては、たとえば他のポリマー、たとえばポリアクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、および/またはスチレン/ブタジエンゴムなどが挙げられ、これらは好ましくは、組成物の固形分を基準にして最大30重量%の量の水性分散体の形態で加えることができる。このようなポリマーは、接着剤組成物の特性スペクトルを修正するために使用することができる。
【0053】
接着助剤および添加剤のさらなる例は、たとえば充填剤、たとえば石英粉末、ケイ砂、バライト、炭酸カルシウム、チョーク、ドロマイト、またはタルクであり、場合により、たとえばポリホスフェート、たとえばヘキサメタリン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩またはナトリウム塩などの湿潤剤と併用され、これらの充填剤は、好ましくは最大75重量%、より好ましくは10〜60重量%、さらにより好ましくは20〜50重量%の量で加えられ、湿潤剤は0.2〜0.6重量%の量で加えられ、すべての%は組成物の固形量を基準としている。
【0054】
加えられる充填剤の量は、特に、本発明による組成物が接着剤として使用されるのか、シーリング剤として使用されるのかに左右される。本発明の組成物が接着剤として使用される場合は、組成物の固形量を基準として最大約30〜40重量%の充填剤含有率が好ましい。40重量%を超えるポリクロロプレン粒子含有率が好ましい。
【0055】
本発明の組成物がシーリング剤として使用される場合は、組成物の固形量を基準として最大約60〜75重量%の充填剤含有率が好ましい。40重量%未満のポリクロロプレン粒子含有率が好ましい。
【0056】
別の好適な助剤は、たとえば、固形分を基準にして約0.01〜1重量%の量で使用される有機増粘剤、たとえば、セルロース誘導体、アルギネート、デンプン、デンプン誘導体、ポリウレタン増粘剤、またはポリアクリル酸など、あるいは固形分を基準にして0.05〜5重量%の量で使用される無機増粘剤、たとえばベントナイトなどである。
【0057】
本発明による接着剤組成物を保存するために、これに殺真菌剤を加えることもできる。これらはたとえば、不揮発性成分を基準にして0.02〜1重量%の量で使用される。好適な殺真菌剤はたとえば、フェノールおよびクレゾール誘導体、または有機スズ化合物である。
【0058】
粘着付与樹脂、たとえば改質されたまたは改質されていない天然樹脂、たとえばロジンエステル、炭化水素樹脂、または合成樹脂、たとえば分散した形態の本発明によるポリマー分散体のフタレート樹脂などの粘着付与樹脂を加えることもできる(たとえばR.ジョーダン(Jordan)およびR.ヒンターヴァルドナー(Hinterwaldner)の、「接着性樹脂」(Klebharze)、75〜115頁、ヒンターヴァルドナー・フェアラーク・ミュンヘン(Hinterwaldner Verlag Munich)、1994を参照されたい)。70℃を超える、特に好ましくは110℃を超える軟化点を有するアルキルフェノール樹脂およびテルペンフェノール樹脂の分散体が好ましい。
【0059】
さらに、アジペート、フタレート、またはホスフェートを主成分とするものなどの可塑剤を、たとえば固形分を基準にして0.5〜10重量%の量で加えることができる。
【0060】
組成物の全重量を基準にすると、本発明による組成物の固形分は、好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約60重量%、さらにより好ましくは70重量%を超え、好ましくは約50重量%未満、より好ましくは約40重量%未満、さらにより好ましくは約30重量%未満の本発明による組成物中の揮発性成分の含有率と対応している。
【0061】
本発明による組成物の揮発性成分の全重量を基準にした含水率は、好ましくは最大50〜100重量%である。
【0062】
トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン、トリエタノールアミン、エチレングリコール、またはそれらの混合物などの有機溶媒を、本発明による組成物中に含有させることができる。これらの有機溶媒は、揮発性成分の全量を基準にして最大約50重量%の少量で、本発明による含水組成物に加えることができる。これらは、たとえば、接合が困難な基材への接着性を改善するために使用される。
【0063】
本発明は、含水ポリクロロプレン分散体(a)が、含水酸化亜鉛分散体(b)、および場合により二酸化ケイ素分散体(d2)および/または老化防止剤(c1)と混合され、場合により従来の接着助剤および添加剤が加えられることを特徴とする、本発明による組成物の製造方法にも関する。
【0064】
本発明による組成物の好ましい製造方法は、含水ポリクロロプレン分散体(a)が最初に含水酸化亜鉛分散体(b)と混合され、混合中または混合後に、老化防止剤(d1)が接着助剤および添加剤ならびにシリカゾル(d2)とともに加えられることを特徴とする。
【0065】
本発明の接着剤配合物は、たとえばはけ塗り、流し込み、ナイフコーティング、吹き付け、ロール塗り、または浸漬などの周知の方法によって適用することができる。接着剤被膜の乾燥は、室温、または最高220℃の高温で実施することができる。
【0066】
好ましくは適用は、欧州特許第0 624 634号明細書に記載されるような吹き付け法によって行われる。
【0067】
本発明による組成物は、接着剤として、またはシーリング剤として使用することができる。これらは好ましくは接着剤として使用される。
【0068】
DIN 16920によると、接着剤は、表面接着および内部強度(凝集力)によって結合すべき部品を接合することができる非金属物質である。
【0069】
本発明による接着剤は、木材、紙、プラスチック、布、皮革、ゴム、または無機材料、たとえばセラミックス、石器、ガラス繊維、またはセメントなどの同種または異種のあらゆる所望の複数の基材を接合するために使用されるが、織物および紙の含浸、コーティング、および積層のために、繊維のバインダーとして、またはシューキャップの補強のため、および絶縁材料としても使用される。
【0070】
[実施例]
A.使用した物質
【0071】
【表1】

【0072】
このポリクロロプレン粒子の平均粒子直径は95nmであった。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
本発明により使用されるナノ酸化亜鉛分散体Aの製造
ナノ酸化亜鉛分散体Aは、国際公開第00/50503号パンフレットに記載される実施例1により製造される(酢酸亜鉛二水和物からメタノール中で酸化亜鉛ゲルが製造される)。酸化亜鉛ゲルからの酸化亜鉛ゾルの製造は、この特許の実施例7により実施され、酸化亜鉛ゲルは水およびトリエタノールアミンとのみ混合され、およびメタノール分は減圧下で除去され、これによってトリエタノール/水中のナノ酸化亜鉛分散体が得られる。この平均一次粒度は10.5nm(数平均)であり、酸化亜鉛含有率は20%である。
【0077】
C.試験方法
C1 噴霧特性の測定
使用した装置:クラウツベルガーGmbH(Krautzberger GmbH)(65333 エルトビル(Eltville))の噴霧混合ユニット。
1.1.85リットルの型名22 A0 012967;
2.10リットルの型名22 A0 012968、
の容積を有する2つの加圧容器、ならびにスプレーガンおよび排気ユニット。
【0078】
1.85リットルの加圧容器は2.5バールの最大圧力で操作する必要があり、10リットルの加圧容器は6バールの最大圧力で操作する必要がある。
【0079】
噴霧混合ガンは、接着剤配合物、凝固剤、および噴霧用空気を定量供給するための3つの供給ラインを有する。
【0080】
測定方法:大きい方の容器中に分散体を満たし、凝固剤溶液を小さい方の容器に満たす。スプレージェットおよび適用される接着剤は、噴霧用空気の量によって調整する。
【0081】
この試験では2.5%塩化カルシウム水溶液を凝固剤として使用する。吹きつけの際の接着剤配合物と凝固剤との間の体積比は10:1である。
【0082】
C2 沈降特性の測定
本発明によるポリクロロプレン分散体を主成分とする接着剤の製造
配合物を製造するために、最初にポリクロロプレン分散体をガラスビーカー中に入れる。撹拌しながら、安定剤、老化防止剤、樹脂、および分散体を着色するための、レバニル(Levanyl)(登録商標)ブルーを加える。これによって、酸化亜鉛の沈殿物がより見やすくなる。
【0083】
評価:
接着剤混合物の相分離を毎日観察し、以下の凡例に従って評価する:
0=変化なし
1=底部にわずかに沈殿物が形成
2=底部に多量の沈殿物が形成
3=底部に固体沈殿
【0084】
C3.熱安定性(HCl抵抗性)の測定
DIN 53381の方法Bに準拠して、乾燥させた接着剤試料の試験を行う。
【0085】
測定方法:
測定装置:メトローム(Metrohm)(9101 ヘリザウ(Herisau)、スイス国)の763 PVC−サーモマット(Thermomat)
試料(厚さ0.1〜1mm)を約2〜3mmの辺の長さに切断し、0.2gを試験管中に量り取り、キャリアガスとして空気を使用して180℃において測定を行う。生成したHClガスが再溶解する水の電気抵抗を測定する。参照されるHCl抵抗性は、電気抵抗が50μS/cmの値に到達する時点である。この値が大きいほど、試験した試料のHClの開裂(脱離)に対する抵抗性が高い。
【0086】
D 結果:
D1:噴霧特性の測定
【0087】
【表5】

【0088】
噴霧特性:
【0089】
【表6】

【0090】
試験1から分かるように、容器中およびパイプ中で残りの相中に酸化亜鉛が沈降し、そのため、2日目および3日目には問題なく試験を開始することができない。本発明によるナノ酸化亜鉛を使用すると、長期間装置を停止させた後でさえも、まったく問題なく分散体を噴霧することができる。
【0091】
D2:沈降特性の測定
【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
本発明によるナノ酸化亜鉛(混合物4)を使用すると相分離は起こらないが、標準配合物3ではわずか1日後に酸化亜鉛の沈殿が形成され、数日後には凝縮して固体析出物となる。
【0095】
D3:熱安定性の測定
D3.1 ナノ二酸化ケイ素の存在下でのポリクロロプレン配合物の熱安定性
【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
図から明らかなように、本発明によるナノ酸化亜鉛分散体(試験5〜14)は、対応する標準的ZnO分散体と比較すると、HClの開裂(脱離)に対するポリクロロプレンの抵抗性が顕著に改善されている。
【0100】
D3.1:ナノ二酸化ケイ素分散体を全く含有しないポリクロロプレン配合物の熱安定性
【0101】
【表12】

【0102】
この表から、ZnOを含有しない配合物である番号20は、HClの開裂に対する抵抗性がわずかしかなく、従来のZnO分散体(番号21および22)はHClの開裂に対する抵抗性を改善するが、本発明による同じ量の酸化亜鉛(番号23および24)は、抵抗性を顕著に増加させることが分かる。
【0103】
試験6、7、および25の比較から、酸化亜鉛の含有率が低い分散体にナノ二酸化ケイ素を加えると、HClの開裂に対する抵抗性がさらに増すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリクロロプレン粒子と、
b)平均粒度が150nm未満である酸化亜鉛粒子と、
c)水と、
を含有する組成物。
【請求項2】
使用される前記ポリクロロプレン粒子が220nm未満の平均一次粒子直径を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
d1)二酸化ケイ素粒子、および/または
d2)成分b)とは異なる少なくとも1種類の老化防止剤、
をさらに含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1〜400nmの範囲の平均粒子直径を有する二酸化ケイ素粒子を含有する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
含水シリカゾルを使用して得られた請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
酸化亜鉛粒子が酸化亜鉛粒子凝集体の形態で存在する請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸化亜鉛粒子の平均一次粒度が100nm未満である請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
含水酸化亜鉛ゾルを使用して得られた請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
30nm未満の平均一次粒度を有する酸化亜鉛粒子を含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種類の界面活性剤をさらに含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
− 20〜99.99重量%のポリクロロプレン粒子と、
− 0.01〜10重量%の酸化亜鉛粒子と、
− 0〜40重量%の二酸化ケイ素粒子と、
− 酸化亜鉛とは異なる0〜10重量%の少なくとも1種類の老化防止剤と、
− 0〜79.99重量%の他の従来の接着助剤および添加剤と、
− 水とを含み、
前記重量%は前記組成物の固形分に対するものであり、合計で100%となる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
50重量%を超えるポリクロロプレン粒子を含有する請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
平均粒度が100nm未満である酸化亜鉛粒子の、接着剤中の老化防止剤としての使用。
【請求項14】
ポリクロロプレン含有接着剤を製造するための、平均粒度が100nm未満である酸化亜鉛粒子の使用。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、含水ポリクロロプレン分散体が、含水酸化亜鉛分散体、および場合により含水二酸化ケイ素分散体と混合され、場合により従来の接着助剤および添加剤が加えられる製造方法。
【請求項16】
接着剤またはシーリング剤としての、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1種類の組成物を、少なくとも1つの基材の少なくとも1つの表面に適用するステップと、続いて、被覆された基材を、少なくとも1つの別の、場合により被覆された基材と接合させるステップとを含む、接合基材の製造方法。
【請求項18】
請求項17により得られた接合された基材。

【公表番号】特表2007−506851(P2007−506851A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529946(P2006−529946)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005797
【国際公開番号】WO2004/106422
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】