説明

ポリシロキサン加水分解物の中和方法

ポリシロキサン加水分解物は、残留酸性成分を含有するポリシロキサン加水分解物を炭素で処理し、次に該炭素を処理済み中和ポリシロキサン加水分解物から除去することにより中和される。処理し得るポリシロキサン加水分解物のいくつかの例は、ヒドリド官能性ポリシロキサン加水分解物、及びポリジエチルシロキサン加水分解物である。特に好ましい炭素中和剤は、歴青炭由来の炭素である。炭素は、プレート&フレームフィルタープレス、ポリッシングフィルター及びポストフィルター等の固体・液体分離装置に処理済み中和ポリシロキサン加水分解物を通過させて微粒子を除去することにより、加水分解物から除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
本発明は、一般に、ポリシロキサン加水分解物、並びにポリシロキサン加水分解物を中和及び/又は精製する既存の方法の改良に関する。より詳細には、直鎖状、分枝状及び/又は環状のヒドリド官能性ポリシロキサン(≡Si−H)加水分解物、並びにポリジメチルシロキサン(PDMS)加水分解物のような直鎖状、分枝状及び/又は環状のポリジアルキルシロキサン加水分解物は、本発明に従ってより効率的に中和及び精製される。
【背景技術】
【0002】
クロロシランの加水分解は当該技術分野にて既知であり、米国特許第4,382,145号(1983年5月3日)、及び"クロロシランの加水分解(Hydrolysis of Chlorosilanes)"と題された、2004年10月5日出願の最先端技術を用いた係属中の米国特許出願第10/958,768号を参照することができる。’145号特許及び係属中の出願は、クロロシランからポリシロキサン加水分解物を製造する一般的な方法に関するものである。米国特許第5,075,479号(1991年12月24日)は、PDMS加水分解物を製造する加水分解プロセスを記載しており、一方、米国特許第5,493,040号(1996年2月20日)は、ヒドリド官能性ポリシロキサン加水分解物を製造する加水分解プロセスに関する。
【0003】
典型的に、環状及び直鎖状のヒドリド官能性ポリシロキサンを含有する加水分解物は、CHSiHCl及び(CHSiClを加水分解することにより得られる。加水分解物は、重炭酸ナトリウムで中和されて、微量の塩素ベースの化学種、特に塩酸形態(HCl)の塩化物イオンが除去された後、高分子量のヒドリド官能性ポリシロキサン重合体の製造に使用される。環状及び直鎖状PDMSを含有する加水分解物は、(CHSiClを、(CHSiCl、若しくは(CHSiO[(CHSiO]0〜10等の末端封鎖オリゴマーのいずれかを用いて、又は用いずに加水分解することにより得られる。加水分解物は、重炭酸ナトリウムで典型的に中和されて、微量の塩素ベースの化学種(例えば、HCl)が除去された後、高分子量のポリジメチルシロキサン重合体の製造に使用される。米国特許第5,276,173号(1994年1月4日)には、シロキサンを分子篩材料と接触させることによって、水酸基末端シロキサン化合物から塩化物イオンを除去することが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全く予想外なことに、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムの代わりに炭素を使用してポリシロキサン加水分解物を中和及び精製することは、これら加水分解物の中和及び精製に通常要するサイクル時間を減少させる点で有益であることが分かった。PDMS加水分解物の場合、得られるPDMS重合体の粘性変化も低減されることが見出された。このことは、炭素の製造業者がこの目的に炭素は適当ではないという意見を有することから、特に驚くべきことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[発明の概要]
本発明は、残留酸性成分を含有するポリシロキサン加水分解物を炭素で処理すること、及び前記処理済み中和ポリシロキサン加水分解物から前記炭素を分離することを含む、ポリシロキサン加水分解物の中和する方法に関する。
【0006】
ポリシロキサン加水分解物は、例えば、ヒドリド官能性ポリシロキサン加水分解物、又はポリジメチルシロキサン加水分解物のようなポリジアルキルシロキサン加水分解物である。任意の適切な炭素中和剤を使用することができる。炭素中和剤は、例えば、コークス、木炭、活性炭、歴青炭由来の炭素、無煙炭由来の炭素、亜炭由来の炭素、木材由来の炭素、泥炭由来の炭素、及びヤシ殻由来の炭素の、任意の一つ以上を含み、及び好ましくはそれらから成り得る。歴青炭由来の炭素が好ましい。
【0007】
炭素と加水分解物とを混合槽内で混合する等の任意の適切な手段によって、炭素中和剤を加水分解物と接触させた後、従来型の任意の固体・液体分離装置に処理済み中和ポリシロキサン加水分解物を通過させることにより、処理済中和ポリシロキサン加水分解物から炭素を除去し得る。好ましい固体・液体分離装置は、プレート&フレームフィルタープレス(plate and frame filter press)であり、次に微粒子(特に炭素)を、加水分解物に要求される仕様に適合するレベルまで除去する任意の適切な手段、例えば、通称ポリッシングフィルターで濾過した流出物を処理する。プレート&フレームフィルタープレス及びポリッシングフィルター以外の装置も使用し得る。例えば、ポリシロキサン加水分解物は、適切な所定の滞留時間を用いて、炭素中和剤の固定床を通過し得る。そこから加水分解物がポストフィルター(post filter)を通過して、流出物から炭素微粒子が除去される。他の代替的なプロセスは、一種以上の炭素含浸フィルターを使用して、加水分解物を濾過することを含み得る。本発明のこれら及び他の特徴は、詳細な説明の考察より明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[発明の詳細な説明]
一般に、加水分解プロセスのクロロシラン供給物は、式RSiClのクロロシランを含有する。ここで各Rは、同一でも異なっていてもよいが、通常同一であり、例えば、水素、又は1〜20個の炭素原子を含有する、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基若しくはアラルキル基のような炭化水素基等の任意の適切な基であり得る。炭化水素基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルピル、n−ブチル、イソブチルチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、ベンジル及びβ−フェニルエチル等の基であり得る。適切なクロロシランのいくつかの例としては、ジメチルジクロロシラン(CHSiCl、ジエチルジクロロシラン(CSiCl、ジ−n−プロピルジクロロシラン(n−CSiCl、ジ−i−プロピルジクロロシラン(i−CSiCl、ジ−n−ブチルジクロロシラン(n−CSiCl、ジ−i−ブチルジクロロシラン(i−CSiCl、ジ−t−ブチルジクロロシラン(t−CSiCl、n−ブチルメチルジクロロシランCH(n−C)SiCl、オクタデシルメチルジクロロシランCH(C1837)SiCl、ジフェニルジクロロシラン(CSiCl、フェニルメチルジクロロシランCH(C)SiCl、ジシクロヘキシルジクロロシラン(C11SiCl、及びメチルジクロロシランCHSiHCl等の化合物が挙げられる。好ましいクロロシランは、ジメチルジクロロシラン及びメチルジクロロシランCHHSiClである。トリアルキルクロロシランRSiClも使用することができ、ここでRは、上記に定義したものと同一である。好ましいトリアルキルクロロシランは、例えば、トリメチルクロロシラン(CHSiClである。
【0009】
殆どの加水分解プロセスが、加水分解物のHCl含有量の低下を模索しており、生成物の安定性を確実にするためには、典型的に、中和によってHClのような塩素ベースの化学種の含有量を更に低下させる必要がある。これは、殆どの粗加水分解生成物中の加水分解可能なレベルのHClの存在が、更なる重合を阻止し、且つ加水分解物中の直鎖状オリゴマーの粘度を増大させる(即ち、粘性変化を生じさせる)のに必要なレベルを超過するためである。本発明に従った中和剤として炭素を選択することにより、この中和は、より効率的に行われ得る。例えば、炭素を使用した中和のサイクル時間、並びに中和及び濾過のサイクル時間は、重炭酸ナトリウムを使用した場合と比較して、39%及び27%以上それぞれ低下した。
【0010】
本発明の中和及び精製プロセスに使用する炭素は、任意の都合のよい形態と、任意の適切な粒径とを有する炭素であり得る。例としては、コークス、木炭、活性炭、歴青炭由来の炭素、無煙炭由来の炭素、亜炭(褐炭)由来の炭素、木材由来の炭素、泥炭由来の炭素、又はヤシ殻由来の炭素が挙げられる。本発明では、歴青炭由来の炭素が好ましく、これは容易に購入でき、また比較的安価なためである。本発明の第一の実施形態において、炭素は、ポリシロキサン加水分解物に添加され、混合された後、分離され得る。第二の実施形態において、ポリシロキサン加水分解物は、炭素の固定床を通過し、次にそこから炭素微粒子が除去され得る。
【0011】
本発明のプロセスに使用し得る炭素種の一つは、ペンシルベニア州ピッツバーグのカルゴン・カーボン・コーポレイション(Calgon Carbon Corporation, Pittsburgh, Pennsylvania)から商標BPL(登録商標)80X270として販売されている、粒状の歴青炭ベースの活性炭である。この材料は、80メッシュの篩を通過するが、270メッシュの篩上に保持される粒径の炭素粒子から構成されている。平均粒径は、53ミクロン(μm)超過180(μm)未満である。
【0012】
代替的な適切な炭素種は、カルゴン・カーボン・コーポレイションから商標BPL(登録商標)12X30として販売されている、粒状の歴青炭ベースの活性炭である。この材料は、12メッシュの篩を通過するが、30メッシュの篩上に保持される粒径の炭素粒子から構成されている。平均粒径は、550ミクロン(μm)超過1410(μm)未満である。BPL(登録商標)12X30は、約2〜10%の水分レベルを有していた。
【0013】
本発明による方法の第1の実施形態を示す図を参照すると、残留レベルの、HClのような塩素含有種を含有する粗加水分解物生成物は、上記にて引用した米国特許第4,382,145号、米国特許出願第10/958,768号、米国特許第5,075,479号、及び米国特許第5,493,040号に一般に示される加水分解プロセスの一部を構成する加水分解反応器から得られる。加水分解物は貯蔵槽内にポンプで供給され、該加水分解物はそこから、適切な容積を有する一つ以上の混合槽へと供給される。各混合槽は、約1,000〜2,000ガロン(4.546〜9.092m)の容積を有する。中和剤及び精製剤、即ち活性炭を各混合槽内に供給し、ここで粗加水分解物中に完全に分散させて、残留する塩素含有種、特にHClを許容可能なレベルに中和する。
【0014】
混合槽からの中和された加水分解物は、適切なフィルターエイドをプレコートした濾布で被覆される濾板を積み重ねたものを備えたプレート&フレームフィルタープレス内へと通される。中和加水分解物中に存在し得る活性炭、及び他の微粒子不純物が除去され、コートされた濾布上に保持される。中和及び濾過された加水分解物は、加圧下で、適切なフィルターを介してポンプで供給されて、濾過される生成物の必要条件に応じて要求されるレベルにまで微粒子が除去される。以前に指摘したように、他の装置を使用することもできる。例えば、ポリシロキサン加水分解物は、炭素中和材料を含む固定床を通してもよく、その後、適切な微粒子フィルターを用いて、中和された加水分解物から炭素微粒子が除去され得る。
【実施例】
【0015】
本発明をより詳細に説明するために、以下の実施例を提供する。
【0016】
[実施例1]
ヒドリド官能性ポリシロキサン加水分解物の処理
この実施例では、一般に図1に示す設備を使用して、一連の5回の連続工程(a series of five(5) runs)を実施した。各連続工程において、17,500ポンド(7938kg)の加水分解物のバッチを、周囲温度で処理した。各連続工程のために、約20ポンド(10.872kg)の活性炭を各混合槽に供給した。混合槽を大気圧で維持した。活性炭は、上記したカルゴン・カーボン・コーポレイションから販売されている粒状の歴青炭ベースの活性炭(BPL(登録商標)80X270)であった。加水分解物と活性炭のスラリーを約4時間撹拌した。生成物を分析して、その酸価をHCl中和の目安として測定した。分析は、ASTM試験法D664及びD974に記載されているものと一般に等価な技術を用いた。この方法は、有機化合物、又は有機ケイ素化合物中の酸性成分の濃度測定用に指定されている。ブロモクレゾールパープル(BCP)等の指示薬、又は電位差計による測定を用いて、終点を決定する。サンプルを滴定容器内で旋回させ、必要に応じて標準的な水酸化カリウム(KOH)を用いて滴定して、溶液を中性色に戻す。結果を、生成物1グラム当たりのKOHのミリグラムとして表した酸価として報告する。これら連続工程の結果を、表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表1から明らかなように、活性炭を用いた加水分解物の中和は、重炭酸ナトリウムによる中和と比較して、著しく効果的であった。別個の測定において、各中和サイクルの完了に要する時間は、重炭酸ナトリウムを使用した場合に平均で約7.75時間であり、活性炭を使用した場合に約4.75時間であることが見出され、サイクル時間は、活性炭により約39%低下した。各中和及び濾過サイクルの完了に要する時間は、重炭酸ナトリウムを使用した場合に平均で約11時間、活性炭を使用した場合に約8時間であり、サイクル時間は、活性炭により約27%低下した。
【0019】
[実施例2]
各固体中和剤/吸収剤20グラムを、粘度30mm/sの非中和トリメチルシロキシ末端メチル水素シロキサン40グラムに加えた。得られた混合物をオービタルシェーカー上で15分間振とうした後、30分間沈降させ、次にGlass Fibre Acrodisc Gelinan No. 4253 1μmを含有するプレフィルターに通過させた後、(i)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワットマン(Whatman) lμmのTF疎水性フィルター、又は(ii)ポリスルホン(PS)ワットマン lμmのAS親水性フィルターのいずれかを使用して濾過した。得られた中和及び濾過されたトリメチルシロキシ末端メチル水素シロキサンのサンプルを、イオンクロマトグラフィーで分析して、残留塩酸の存在を測定した。この実施例で使用した炭素は、前の実施例で使用したカルゴン・カーボン・コーポレイションにより販売されている粒状の歴青炭ベースの活性炭BPL(登録商標)80X270であった。異なる固体中和剤の効果における変化を示す結果を、表2で比較する。
【0020】
【表2】

【0021】
中和剤/吸収剤として炭素及びPTFEフィルターを使用した表2に示す結果から、他の中和剤/吸収剤を使用した結果と比較して顕著に良好なことが明らかであろう。
【0022】
[実施例3]
炭素が最良の中和剤/吸収剤であることを裏付けるために、実施例1に記載した試験方法を用いて同様の試験を実施した。この場合では、結果をHClのppmで示した。各固体中和剤/吸収剤20グラムを、30mm/sの粘度を有する非中和トリメチルシロキシ末端メチル水素シロキサン60グラムに加えた。得られた混合物をオービタルシェーカー上で2分間振とうした後、10分間沈降させ、次にGlass Fibre Acrodisc Gelinan No. 4253 1μm親水性フィルター(GF)に通過させた後、及び/又は続いて(i)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワットマン 1μmのTF疎水性フィルターを用いて濾過した。得られた中和及び濾過したトリメチルシロキシ末端メチル水素シロキサンのサンプルを、BCP指示薬により分析して、滴定終点を決定した。異なる固体中和剤の効果における変化を示す結果を、表3にて比較する。
【0023】
【表3】

【0024】
炭酸ナトリウムは、使用する炭素と同様の効果を有すると思われるが、これらの結果から明らかでない負の結果もいくつか有する。例えば、炭酸ナトリウムの中和効果は化学反応によって作用し、シロキサン中で塩化カルシウム汚染物質(contaminant)が形成される。炭素は、吸収によって実質的に作用するため、混合プロセスが完了した後、ろ過によってシロキサンから容易に分離され、従って汚染のレベルが最小となると考えられている。
【0025】
以下の実施例は、HClの含有量を低下させ、PDMS中に典型的に存在する水分含有量を最小にする、PDMS加水分解物の炭素処理に関する。例えば、HClの存在を原因とする濃縮反応は、水の形成に繋がり、これは時間が経過するにつれPDMSの粘度の増大、即ち、通称、粘性変化(viscosity drifting)を生じることが知られている。PDMSに含まれるHClは、この望ましくない濃縮反応の原因であると考えられる。
【0026】
[実施例4]
この実施例では、水含有PDMSからHClを百万分の一(ppm)の低いレベルで除去した。炭素で処理した後、より少量の加水分解性HClが観察され、この現象は予想外であった。この実施例で使用した中和剤は、ペンシルベニア州ピッツバーグのカルゴン・カーボン・コーポレイションから商標BPL(登録商標)12X30で販売されている粒状の歴青炭ベースの活性炭であった。この材料は、12メッシュの篩を通過するが、30メッシュの篩上に保持される粒径の炭素粒子から構成されている。平均粒経は、550ミクロン(μm)超過1410(μm)未満である。BPL(登録商標)12X30は、約2〜10%の水分レベルを有していた。炭素10グラムを、PDMS300グラムに加えた。このスラリーを2時間ボトルロール(bottle rolled)し、沈降させ、PDMSをスラリーからデカントした。乾燥炭素10グラムを用いて、この手順を繰り返した。非乾燥炭素及び乾燥炭素の両方が、加水分解可能なHClを0.23ppm〜0.03ppm除去することが測定された。
【0027】
結果は、水性サンプル中の陰イオンと陽イオンとの分離に典型的に使用されるイオンクロマトグラフィー法により分析され、検出に関しては電導度検出器を用いて、及び定量分析に関しては、外部基準による較正を用いて測定した。バックグラウンド電導度の抑制又は非抑制下のいずれかの作動モードを、電導度検出により特定し得る。結果を、重量/重量に基づき百万分の一(ppm)又は十億分の一(ppb)として報告する。
【0028】
[実施例5]
実施例4を繰り返したが、本実施例では、同一の炭素中和剤30ミリリットルを充填した床にPDMSを通過させ、滞留時間を6分とした。供給PDMSのHCl含有量は、0.28ppmであった。3時間後、床に存在する処理済みPDMSは、平均0.05ppmのHClを含有していた。この手順を、40分間の滞留時間を用いて繰り返したところ、PDMSの平均HCl含有量は、9時間後に0.15ppmから0.03ppmに低下した。
【0029】
[実施例6]
実施例5の手順を用いて、数種の異なる媒体を、15分の滞留時間を用いて評価し、PDMSを各媒体に通過させながら、6時間に亘るHClの平均低下量を計算した。これら評価の結果を、下の表4に示す。表4から、炭素がより有効であることが理解され得る。ペンシルベニア州フィラデルフィアのローム&ハース・カンパニー(Rohm & Haas Company, Philadelphia, Pennsylvania)から入手可能なAmberlyst(登録商標)A26は、第四級アンモニウム官能基を有し、孔径400〜700×10−10mの強塩基性のマクロレティキュラー型陰イオン樹脂である。Amberlyst(登録商標)A21は、アミノ官能基を有し、平均孔径900〜1300×10−10mの弱塩基性のマクロレティキュラー型陰イオン樹脂である。モレキュラーシーブ(Molecular Sieve)X13は、ほぼNa86[(AlO86(SiO106]XHOに相当する式を有する。これは、600〜700kgm−3の嵩密度、10×10−10の公称孔径を有し、米国イリノイ州デプレーンズのUOP LLCから入手可能な製品である。
【0030】
【表4】

【0031】
実施例6及び表4は、Amberlyst(登録商標)A21が炭素と比較して僅かに多量のHClを除去したことを示しているが、本発明にとって炭素がより適切であることには理由が存在する。例えば、炭素は、初期単価がより低く、その使用において汚染物質が追加されず、またPDMS流から硫黄等の他の不純物を除去することが可能である。一方、Amberlyst(登録商標)A21は、その最初の使用に際して僅かな臭気を有し、これが加水分解物を汚染する。
【0032】
本発明の本質的な特徴から逸脱することなく、本明細書に記載した化合物、組成物、及び方法に、他の変更を為し得る。本明細書で詳細に記載した本発明の実施形態は、単なる例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に定義されるもの以外、それらの範囲に関して本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】設備の様々な部分を通過する材料のフローパターンを示す、本発明による方法の簡易化した機能上の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留酸性成分を含有するポリシロキサン加水分解物を、コークス、木炭、歴青炭由来の炭素、無煙炭由来の炭素、亜炭由来の炭素、木材由来の炭素、泥炭由来の炭素、及びヤシ殻由来の炭素から成る群より選択される炭素で処理すること、並びに前記処理済み中和ポリシロキサン加水分解物から前記炭素を分離することを含む、ポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項2】
前記ポリシロキサン加水分解物が、ヒドリド官能性ポリシロキサン加水分解物、又はポリジアルキルシロキサン加水分解物である、請求項11に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項3】
前記ポリジアルキルシロキサン加水分解物が、ポリジメチルシロキサン加水分解物である、請求項12に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項4】
前記炭素が歴青炭由来の炭素である、請求項11に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項5】
前記炭素が、80メッシュの篩を通過するが、270メッシュの篩上に保持される粒径の炭素粒子を含有する粒状の歴青炭ベースの活性炭であるか、又は12メッシュの篩を通過するが、30メッシュの篩上に保持される粒径の炭素粒子を含有する粒状の歴青炭ベースの活性炭である、請求項14に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項6】
前記炭素の平均粒径が53μm超過180μm未満であるか、又は前記平均粒径が550μm超過1410μm未満である、請求項15に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項7】
前記炭素は、前記処理済み中和ポリシロキサン加水分解物をプレート&フレームフィルタープレスに通過させることによって加水分解物から除去され、次に前記濾過された加水分解物をポリッシングフィルターに通過させて微粒子を除去する、請求項11に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項8】
前記ポリシロキサン加水分解物は、炭素の固定床を通過し、前記中和されたポリシロキサン加水分解物は、濾過されて炭素微粒子を除去する、請求項11に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。
【請求項9】
前記ポリシロキサン加水分解物は、一種以上の炭素含浸フィルターを通過する、請求項11に記載のポリシロキサン加水分解物の中和方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−527141(P2008−527141A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551272(P2007−551272)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/046320
【国際公開番号】WO2006/076137
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】