説明

ポリジエン製造用の方法および触媒システム

ポリジエンを製造する方法で、該方法は共役ジエンモノマーをビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランの存在下ランタニド系触媒システムを用いて重合する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、2009年8月24日付け出願の米国仮特許出願番号第61/236,168号の利益を請求し、ここに参照して援用する。
【0002】
本発明の一つ以上の実施態様は、ポリジエン類を製造する方法およびポリジエン製造方法に有用なランタニド系触媒システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ランタニド化合物を含む触媒システムは、共役ジエン類を重合するのに有用であることが知られている。これらの触媒システムは、立体特異的であり、ある程度特異的な触媒システムに依存してシス-1,4-ポリジエン類またはトランス-1,4-ポリジエン類を選択的に製造することができる。例えば、ランタニド含有化合物、アルキル化剤およびハロゲン含有化合物を含む触媒システムは、種々の共役ジエンモノマーからシス-1,4-ポリジエン類を製造するのに有用であり得る。これら触媒システムはまた、異なる種類の共役ジエンモノマー類を共重合して立体規則性のシス-1,4-コポリジエン類を付与することもできる。
【0004】
ランタニド系触媒システムにより製造したシス-1,4-ポリジエン類は、線状主鎖構造を有し、良好な生強度および優れた粘弾特性を示す。線状主鎖構造は、引張特性、耐摩耗性および耐疲労性を改善し、ゴムコンパウンドのヒステリシスロスを低減すると考えられている。従って、これらポリジエン類は、サイドウォールおよびトレッドのようなタイヤ部品での使用に特に適する。しかしながら、技術進歩にも関わらず、改良したポリジエン類を製造する触媒システムが依然として望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様は、ポリジエンを製造する方法を提供するもので、該方法はビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランの存在下ランタニド系触媒システムを用いて共役ジエンモノマーを重合する工程を備える。
【0006】
本発明の別の実施態様は、ポリジエンを製造する方法を提供するもので、該方法は(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ハロゲン供給源、ならびに(d) ビニルシラン、アリルシランおよびアリルビニルシランからなる群より選択したシランの組み合わせまたは反応生成物を含む触媒システムを用いて共役ジエンモノマーを重合する工程を備える。
【0007】
本発明のさらに別の実施態様は、ポリジエンを製造する方法を提供するもので、該方法は(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ハロゲン供給源、(d) ビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシラン、および(e)共役ジエンモノマーを導入する工程を備える。
【0008】
本発明の更に別の実施態様は、(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ハロゲン供給源、(d) ビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランおよび任意により(e)共役ジエンモノマーの組み合わせまたは反応生成物を含む触媒システムを提供する。
【0009】
本発明の更に別の実施態様は、(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ハロゲン供給源および(d) ビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランの組み合わせまたは反応生成物を含むランタニド系触媒システムを用いて共役ジエンモノマーを重合する工程を備える方法により製造したシス-1,4-ポリジエンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】シラン化合物の不在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【図2】シラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)(すなわち、図1で描いたもの)と比較した本発明の一つ以上の実施態様に係るテトラビニルシランの存在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【図3】シラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)(すなわち、図1で描いたもの)と比較した本発明の一つ以上の実施態様に係るトリビニルメチルシランの存在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【図4】シラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)(すなわち、図1で描いたもの)と比較した本発明の一つ以上の実施態様に係るジビニルジメチルシランの存在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【図5】シラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)(すなわち、図1で描いたもの)と比較した本発明の一つ以上の実施態様に係るテトラアリルシランの存在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【図6】シラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)(すなわち、図1で描いたもの)と比較した本発明の一つ以上の実施態様に係る1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサンの存在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【図7】シラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)(すなわち、図1で描いたもの)と比較した本発明の一つ以上の実施態様に係る1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの存在下で作製したシス-1,4-ポリブタジエンポリマーのシス-1,4-結合含量対ムーニー粘度(100℃でのML1+4)のプロットグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一つ以上の実施態様によると、ビニルシラン、アリルシランおよび/またはアリルビニルシランの存在下でランタニド系触媒システムを用いて共役ジエンモノマーを重合することによりポリジエン類を製造する。ビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランの存在は、生成したポリジエンのシス-1,4-結合含量を、ビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランの不在下で製造したポリジエン類と比較して有利に増加することを見出した。
【0012】
本発明の実施は、いずれか特定のランタニド系触媒システムの選択によって必ずしも限定されるものではない。一つ以上の実施態様において、本発明の触媒システムは(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤、(c)ハロゲン供給源および(d) ビニルシラン、アリルシランおよび/またはアリルビニルシランを含む。別の実施態様においては、非配位アニオンまたは非配位アニオン前駆体を含有する化合物をハロゲン供給源の代わりに用いることができる。これら実施態様または他の実施態様においては、他の有機金属化合物、ルイス塩基および/または触媒調節剤を、上述した成分または構成要素に加えて用いることができる。例えば、一実施態様において、米国特許第6699813号明細書に開示されているように、ニッケル含有化合物を分子量調整剤として用いることができ、ここにその全体を参照して援用する。
【0013】
上述したように、本発明の触媒システムは、少なくとも1種のランタニド含有化合物を含むことができる。本発明で有用なランタニド含有化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムおよびジジムの少なくとも1原子を含む化合物である。一実施態様において、これらの化合物はネオジム、ランタン、サマリウムまたはジジムを含むことができる。本明細書で用いる用語「ジジム」は、モナズ砂から得た希土類元素の市販の混合物を表すものとする。加えて、本発明で有用なランタニド含有化合物は、元素状ランタニドの形態とすることもできる。
【0014】
ランタニド含有化合物のランタニド原子は、種々の酸化状態とすることができ、限定しないが0、+2、+3および+4の酸化状態が挙げられる。一実施態様において、ランタニド原子が+3の酸化状態である三価のランタニド含有化合物を用いることができる。適当なランタニド含有化合物としては、限定しないが。ランタニドカルボキシレート、ランタニドオルガノホスフェート、ランタニドオルガノホスホネート、ランタニドオルガノホスフィネート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンタート、ランタニドβ−ジケトネート、ランタニドアルコキシド、ランタニドアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド偽ハライド、ランタニドオキシハライドおよび有機ランタニド化合物が挙げられる。
【0015】
一つ以上の実施態様において、ランタニド含有化合物は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素のような炭化水素溶媒に可溶性とすることができる。しかしながら、重合媒体中に懸濁して触媒的に活性な種を形成し得る場合、炭化水素不溶性のランタニド含有化合物も本発明に有用であり得る。
【0016】
説明を簡単にするために、有用なランタニド含有化合物の更なる議論はネオジム化合物に焦点を絞るが、当業者は他のランタニド金属を基にした類似の化合物を選択することができるであろう。
【0017】
適当なネオジムカルボキシレートとしては、限定しないが、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレート、ネオジムオキサレート、ネオジム2−エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(別名ネオジムバーサテート)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエートおよびネオジムピコリネートが挙げられる。
【0018】
適当なネオジムオルガノホスフェートとしては、限定しないが、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフェートおよびネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられる。
【0019】
適当なネオジムオルガノホスホネートとしては、限定しないが、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホネートおよびネオジム(p−ノニルフェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられる。
【0020】
適当なネオジムオルガノホスフィネートとしては、限定しないが、ネオジムブチルホスフィネート、ネオジムペンチルホスフィネート、ネオジムヘキシルホスフィネート、ネオジムヘプチルホスフィネート、ネオジムオクチルホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムデシルホスフィネート、ネオジムドデシルホスフィネート、ネオジムオクタデシルホスフィネート、ネオジムオレイルホスフィネート、ネオジムフェニルホスフィネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムジブチルホスフィネート、ネオジムジペンチルホスフィネート、ネオジムジヘキシルホスフィネート、ネオジムジヘプチルホスフィネート、ネオジムジクチルホスフィネート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムジデシルホスフィネート、ネオジムジドデシルホスフィネート、ネオジムジオクタデシルホスフィネート、ネオジムジオレイルホスフィネート、ネオジムジフェニルホスフィネート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィネートおよびネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられる。
【0021】
適当なネオジムカルバメートとしては、限定しないが、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソピロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメートおよびネオジムジベンジルカルバメートが挙げられる。
【0022】
適当なネオジムジチオカルバメートとしては、限定しないが、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメートおよびネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられる。
【0023】
適当なネオジムキサンタートとしては、限定しないが、ネオジムメチルキサンタート、ネオジムエチルキサンタート、ネオジムイソプロピルキサンタート、ネオジムブチルキサンタートおよびネオジムベンジルキサンタートが挙げられる。
【0024】
適当なネオジムβ−ジケトネートとしては、限定しないが、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネートおよびネオジム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが挙げられる。
【0025】
適当なネオジムアルコキシドまたはネオジムアリールオキシドとしては、限定しないが、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2−エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシドおよびネオジムナフトキシドが挙げられる。
【0026】
適当なネオジムハライドとしては、限定しないが、ネオジムフルオリド、ネオジムクロリド、ネオジムブロミドおよびネオジムヨージドが挙げられる。適当なネオジム偽ハライドとしては、限定しないが、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジドおよびネオジムフェロシアニドが挙げられる。適当なネオジムオキシハライドとしては、限定しないが、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリドおよびネオジムオキシブロミドが挙げられる。この部類のネオジム化合物を不活性有機溶媒へ可溶化するための助剤として、テトラヒドロフラン(「THF」)のようなルイス塩基を用いることができる。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライドまたはハロゲン原子を含有する他のランタニド含有化合物を用いる場合は、ランタニド含有化合物が上述した触媒システムにおけるハロゲン供給源の全部または一部として機能することもできる。
【0027】
本明細書で用いる用語「有機ランタニド化合物」は、少なくとも1個のランタニド-炭素結合を含有するあらゆるランタニド化合物を指す。これら化合物は、主にシクロペンタジエニル(「Cp」)配位子、置換シクロペンタジエニル配位子、アリル配位子または置換アリル配位子を含有するものであるが、それらに限らない。適当な有機ランタニド化合物としては、限定しないが、CpLn、CpLnR、CpLnCl、CpLnCl、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(CMe)LnR、LnR、Ln(アリル)およびLn(アリル)Clが挙げられ、ここでLnはランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基を表す。本明細書で用いる用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素から水素原子を除去して形成された一価の基を表すものとする。一つ以上の実施態様において、本発明に有用なヒドロカルビル基は、例えば窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子およびリン原子のようなヘテロ原子を含むことができる。
【0028】
上述したように、本発明の触媒システムは、1種以上のアルキル化剤を含むことができる。一つ以上の実施態様において、ヒドロカルビル化剤とも称し得るアルキル化剤は、1個以上のヒドロカルビル基を他の金属へ移すことができる有機金属化合物を含む。典型的には、かかるアルキル化剤は1族金属、2族金属および3族金属(IA族金属、IIA族金属およびIIIA族金属)のような陽性金属の有機金属化合物を含む。本発明に有用なアルキル化剤としては、限定しないが、有機アルミニウム化合物および有機マグネシウム化合物が挙げられる。本明細書で用いる用語「有機アルミニウム化合物」は、少なくとも1個のアルミニウム-炭素結合を含有するあらゆるアルミニウム化合物を指す。一つ以上の実施態様において、炭化水素溶媒に可溶な有機アルミニウム化合物を用いることができる。本明細書で用いる用語「有機マグネシウム化合物」は、少なくとも1個のマグネシウム-炭素結合を含有するあらゆるマグネシウム化合物を指す。一つ以上の実施態様において、炭化水素に可溶な有機マグネシウム化合物を用いることができる。以下でより詳細に記載するように、適当なアルキル化剤のいくつかの種は、ハロゲン化物の形態をとることができる。アルキル化剤がハロゲン原子を含む場合、アルキル化剤が上述した触媒システムにおけるハロゲン供給源の全部または一部として機能することもできる。
【0029】
一つ以上の実施態様において、使用し得る有機アルミニウム化合物としては、一般式AlR3−nによって表されるものが挙げられ、ここで各Rは独立して炭素原子を介してアルミニウムと結合した一価の有機基とすることができ、各Xは独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基とすることができ、nは1〜3の整数とすることができる。一つ以上の実施態様において、各Rは独立して、例えばアルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アリル基およびアルキニル基のようなヒドロカルビル基とすることができ、各基は1個の炭素原子、すなわち基を形成するのに適切な最低数の炭素原子から約20個の炭素原子を含有する。これらヒドロカルビル基は、限定しないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子およびリン原子を含むヘテロ原子を含有することができる。
【0030】
一般式AlR3−nによって表される有機アルミニウム化合物の種類としては、限定しないが、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、水素化ジヒドロカルビルアルミニウム化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート化合物、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート) 化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド化合物、ハロゲン化ジヒドロカルビルアルミニウム化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド化合物およびヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられる。一実施態様において、アルキル化剤はトリヒドロカルビルアルミニウム化合物、水素化ジヒドロカルビルアルミニウム化合物および/またはヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物を含むことができる。一実施態様において、アルキル化剤が水素化有機アルミニウム化合物を含む場合、上述したハロゲン供給源はここに全体を参照して援用する米国特許第7,008,899号明細書に開示されたようなハロゲン化スズによって得ることができる。
【0031】
適当なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、限定しないが、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウムおよびエチルジベンジルアルミニウムが挙げられる。
【0032】
適当な水素化ジヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、限定しないが、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジイソプロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジ−n−オクチルアルミニウム、水素化ジフェニルアルミニウム、水素化ジ−p−トリルアルミニウム、水素化ジベンジルアルミニウム、水素化フェニルエチルアルミニウム、水素化フェニル−n−プロピルアルミニウム、水素化フェニルイソプロピルアルミニウム、水素化フェニル−n−ブチルアルミニウム、水素化フェニルイソブチルアルミニウム、水素化フェニル−n−オクチルアルミニウム、水素化p−トリルエチルアルミニウム、水素化p−トリル−n−プロピルアルミニウム、水素化p−トリルイソプロピルアルミニウム、水素化p−トリル−n−ブチルアルミニウム、水素化p−トリルイソブチルアルミニウム、水素化p−トリル−n−オクチルアルミニウム、水素化ベンジルエチルアルミニウム、水素化ベンジル−n−プロピルアルミニウム、水素化ベンジルイソプロピルアルミニウム、水素化ベンジル−n−ブチルアルミニウム、水素化ベンジルイソブチルアルミニウムおよび水素化ベンジル−n−オクチルアルミニウムが挙げられる。
【0033】
適当なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドとしては、限定しないが、エチルアルミニウムジヒドリド、n−プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n−ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリドおよびn−オクチルアルミニウムジヒドリドが挙げられる。
【0034】
適当なハロゲン化ジヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、限定しないが、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ−p−トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロリド、p−トリルエチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロリド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリドおよびベンジル−n−オクチルアルミニウムクロリドが挙げられる。
【0035】
適当なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物としては、限定しないが、エチルアルミニウムジクロリド、n−プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n−ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリドおよびn−オクチルアルミニウムジクロリドが挙げられる。
【0036】
一般式AlR3−nによって表し得るアルキル化剤として有用な他の有機アルミニウム化合物としては、限定しないが、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトテート、ジイソブチルアルミニウム2−エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシドおよびイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられる。
【0037】
本発明においてアルキル化剤としての使用に適した別の部類の有機アルミニウム化合物は、アルミノキサン類である。アルミノキサン類は、下記一般式
【化1】


によって表すことができるオリゴマー状の直鎖アルミノキサン類および下記一般式
【化2】

によって表すことができるオリゴマー状の環式アルミノキサン類を含むことができ、ここでxは1〜約100の整数か、または約10〜約50とすることができ;yは2〜約100の整数か、または約3〜約20とすることができ;各Rは独立して炭素原子を介してアルミニウム原子に結合した一価の有機基とすることができる。一実施態様において、各Rは独立してヒドロカルビル基とすることができ、限定しないがアルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アリル基およびアルキニル基が挙げられ、各基は1個の炭素原子、すなわち基を形成するのに適する最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含有する。これらヒドロカルビル基は、限定しないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子およびリン原子を含むヘテロ原子を含有することもできる。注意すべきは、本発明で使用するアルミノキサンのモル数は、オリゴマー状のアルミノキサン分子のモル数よりもむしろアルミニウム原子のモル数を指すということである。この決まりごとは、アルミノキサンを利用している触媒システムの分野で通常用いている。
【0038】
アルミノキサン類は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって調製することができる。この反応は、例えば、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解し、次いで水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含まれる結晶水または無機化合物もしくは有機化合物に吸着した水と反応させる方法、(3)重合すべきモノマーもしくはモノマー溶液の存在下でトリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させる方法のような既知の方法に従って行うことができる。
【0039】
適当なアルミノキサン化合物としては、限定しないが、メチルアルミノキサン(「MAO」)、変性メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサンおよび2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられる。変性メチルアルミノキサンは、当業者に既知の技術を使用してメチルアルミノキサンのメチル基の約20〜80パーセントをC〜C12ヒドロカルビル基、好ましくはイソブチル基で置換することによって形成することができる。
【0040】
アルミノキサン類は、単独でまたは他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。一実施態様において、メチルアルミノキサンと、水素化ジイソブチルアルミニウムのような少なくとも1種の他の有機アルミニウム化合物(例えば、AlR3−n)とを組み合わせて用いることができる。ここに全体を参照して援用する米国特許出願公開第2008/0182954号明細書は、アルミノキサンと有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いることができる他の例を提供する。
【0041】
上述したように、本発明に有用なアルキル化剤は有機マグネシウム化合物を含むことができる。一つ以上の実施態様において、利用し得る有機マグネシウム化合物は、一般式MgRによって表されるものを含み、ここで各Rは独立して炭素原子を介してマグネシウム原子に結合した一価の有機基とすることができる。一つ以上の実施態様において、各Rは独立してヒドロカルビル基とすることができ、限定しないがアルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基およびアルキニル基が挙げられ、各基は1個の炭素原子、すなわち基を形成するのに適する最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含有する。これらヒドロカルビル基は、限定しないが窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子およびリン原子を含むヘテロ原子を含有することもできる。
【0042】
一般式MgRによって表し得る適当な有機マグネシウム化合物としては、限定しないが、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウムおよびジベンジルマグネシウムが挙げられる。
【0043】
アルキル化剤として利用し得る別の部類の有機マグネシウム化合物は、一般式RMgXによって表わすことができ、ここでRは炭素原子を介してマグネシウム原子に結合した一価の有機基とすることができ、Xは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基とすることができる。アルキル化剤がハロゲン原子を含む有機マグネシウム化合物である場合、該有機マグネシウム化合物は本発明の触媒システムにおけるアルキル化剤と、ハロゲン供給源の少なくとも一部との双方として機能することができる。一つ以上の実施態様において、Rはヒドロカルビル基とすることができ、限定しないがアルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基およびアルキニル基が挙げられ、各基は1個の炭素原子、すなわち基を形成するのに適する最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含有する。これらヒドロカルビル基は、限定しないが窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子およびリン原子を含むヘテロ原子を含有することもできる。一実施態様において、Xはカルボキシレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基とすることができ、各基は1個〜約20個の炭素原子を含有する。
【0044】
一般式RMgXによって表し得る種類の有機マグネシウム化合物としては、限定しないが、水素化ヒドロカルビルマグネシウム、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウム、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシドおよびヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられる。
【0045】
一般式RMgXによって表し得る適当な有機マグネシウム化合物としては、限定しないが、水素化メチルマグネシウム、水素化エチルマグネシウム、水素化ブチルマグネシウム、水素化ヘキシルマグネシウム、水素化フェニルマグネシウム、水素化ベンジルマグネシウム、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシドおよびベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられる。
【0046】
上述したように、本発明の触媒システムはハロゲン供給源を含むことができる、本明細書で用いる用語「ハロゲン供給源」は、少なくとも1個のハロゲン原子を含むあらゆる物質を指す。一つ以上の実施態様において、ハロゲン供給源の少なくとも一部を上記ランタニド含有化合物および/または上記アルキル化剤および/またはこれら化合物が少なくとも1個のハロゲン原子を含有する場合は以下に記載するようにビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランのいずれかによって得ることができる。言い換えると、ランタニド含有化合物はランタニド含有化合物と、ハロゲン供給源の少なくとも一部との双方として機能することができる。同様に、アルキル化剤はアルキル化剤と、ハロゲン供給源の少なくとも一部との双方として機能することができる。同様に、ビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランはそれぞれのシランと、ハロゲン供給源の少なくとも一部との双方として機能することができる。
【0047】
別の実施態様において、ハロゲン供給源の少なくとも一部は触媒システムに単独の明確なハロゲン含有化合物の形態で存在することができる。1個以上のハロゲン原子を含有する種々の化合物またはそれらの混合物をハロゲン供給源として用いることができる。ハロゲン原子の例としては、限定しないが、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。2個以上のハロゲン原子の組み合わせも利用することができる。炭化水素溶媒に可溶なハロゲン含有化合物が、本発明での使用に適する。しかし、炭化水素に不溶なハロゲン含有化合物を重合システムに懸濁して触媒的に活性な種を形成することができるので、これもまた有用である。
【0048】
用い得る有用な種類のハロゲン含有化合物としては、限定しないが、元素状ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハロゲン化物、無機ハロゲン化物、金属ハロゲン化物および有機金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0049】
本発明での使用に適した元素状ハロゲンとしては、限定しないが、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。適当な混合ハロゲンの幾つかの具体例としては、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素および五フッ化ヨウ素が挙げられる。
【0050】
ハロゲン化水素としては、限定しないが、フッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素が挙げられる。
【0051】
有機ハロゲン化物としては、限定しないが、t−ブチルクロリド、t−ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロジフェニルメタン、ブロモジフェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメートおよびメチルブロモホルメートが挙げられる。
【0052】
無機ハロゲン化物としては、限定しないが、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、三ヨウ化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルルおよび四ヨウ化テルルが挙げられる。
【0053】
金属ハロゲン化物としては、限定しないが、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛および二フッ化亜鉛が挙げられる。
【0054】
有機金属ハロゲン化物としては、限定しないが、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、フッ化ジメチルアルミニウム、フッ化ジエチルアルミニウム、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルニミウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、塩化メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、メチルマグネシウムヨージド、塩化エチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、塩化ブチルマグネシウム、臭化ブチルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、塩化トリメチルスズ、臭化トリメチルスズ、塩化トリエチルスズ、臭化トリエチルスズ、ジ−t−ブチルスズジクロリド、ジ−t−ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、塩化トリブチルスズおよび臭化トリブチルスズが挙げられる。
【0055】
一つ以上の実施態様において、上記触媒システムは非配位アニオンまたは非配位アニオン前駆体を含有する化合物を含むことができる。一つ以上の実施態様において、非配位アニオンまたは非配位アニオン前駆体を含有する化合物を上記ハロゲン供給源の代わりに用いることができる。非配位アニオンは、例えば立体障害のため触媒システムの活性中心と配位結合を形成しない立体的に嵩高なアニオンである。本発明に有用な非配位アニオンとしては、限定しないが、テトラアリールボレートアニオンおよびフッ素化テトラアリールボレートアニオンが挙げられる。非配位アニオンを含有する化合物はまた、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンのような対カチオンを含有することができる。例示的な対カチオンとしては、限定しないが、トリアリールカルボニウムカチオンおよびN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられる。非配位アニオンおよび対カチオンを含有する化合物の例としては、限定しないが、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートおよびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが挙げられる。
【0056】
非配位アニオン前駆体を本実施態様で使用することもできる。非配位アニオン前駆体は、反応条件下で非配位アニオンを形成することができる化合物である。有用な非配位アニオン前駆体としては、限定しないが、トリアリールホウ素化合物BRが挙げられ、ここでRはペンタフルオロフェニル基または3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基のような強い電子求引性アリール基である。
【0057】
上述したように、本発明の触媒システムはビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランを含むことができる。本明細書では、これら化合物を単にシラン化合物と呼ぶ場合がある。ビニルシランはケイ素原子に結合した少なくとも1個のビニル基を含有するあらゆるシラン化合物を含み、アリルシランはケイ素原子に結合した少なくとも1個のアリル基を含有するあらゆるシラン化合物を含み、アリルビニルシランはケイ素原子に結合した少なくとも1個のアリル基およびケイ素原子に結合した少なくとも1個のビニル基を含有するあらゆるシラン化合物を含む。本明細書では、用語「ビニルシラン」、「アリルシラン」および「アリルビニルシラン」は、ビニル基またはアリル基を置換した、すなわち親ビニル基(すなわち−CH=CH)または親アリル基(すなわち−CHCH=CH)の水素原子を一価の有機基またはハロゲン原子のような置換基で置き換えたシラン化合物も含む。一つ以上の実施態様において、シラン化合物はモノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、オリゴマーまたはポリマーとすることができる。これらの実施態様または他の実施態様において、シラン化合物は環式構造または非環式構造を有することができる。2種以上のシランの組み合わせを用いることができる。以下により詳細に説明するように、適当なシラン化合物の幾つかの種はハロゲン原子を含むことができるので、シラン化合物がハロゲン原子を含む場合には、該シラン化合物が上記触媒システムにおいてハロゲン供給源の全てまたは一部として機能することもできる。
【0058】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物を式Siωθ4−xにより定義することができ、ここで各ωは独立してビニル基、置換ビニル基、アリル基または置換アリル基であり、各θ基は独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である。本明細書では、多価の有機基は二価、三価または四価の有機基のような2以上の原子価を有する有機基を指す。一つ以上の実施態様において、2個以上のθ基が一緒になって形成されるシラン化合物を、単環式、二環式、三環式または多環式とすることができる。
【0059】
一つ以上の実施態様において、ビニルシランを式Si(Cθ=Cθ)θ4−xによって定期ずることができ、ここで各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である。特定の実施態様においては、ビニルシランを式Si(CH=CH)θ4−xによって定義することができ、ここで各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である。
【0060】
他の実施態様において、アリルシランを式Si(CθCθ=Cθ)θ4−xによって定義することができ、ここで各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である。特定の実施態様においては、アリルシランを式Si(CHCH=CH)θ4−xによって定義することができ、ここで各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である。
【0061】
これらの実施態様または他の実施態様において、アリルビニルシランを式Si(CθCθ=Cθ)(Cθ=Cθ)θによって定義することができ、ここで各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x、y、zの合計が4である。特定の実施態様においては、アリルビニルシランを式Si(CHCH=CH)(CH=CH)θによって定義することができ、ここで各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価有機基を形成することができ、xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x、y、zの合計が4である。
【0062】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物の一価の有機基を、ヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基とすることができ、限定しないがアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、アルカリール基またはアルキニル基が挙げられる。置換ヒドロカルビル基は、1個以上の水素原子がヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基またはシロキシ基のような置換基によって置換されたヒドロカルビル基を含む。一つ以上の実施態様において、これらの基は1個、すなわち基を形成するのに適切な最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含むことができる。これらの基はまた、限定しないが窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子およびリン原子のようなヘテロ原子を含有することもできる。
【0063】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物の一価の有機基は、限定しないがアルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アリルオキシ基、アラルキルオキシ基、アルカリールオキシ基もしくはアルキニルオキシ基のようなヒドロカルビルオキシ基または置換ヒドロカルビルオキシ基とすることができる。置換ヒドロカルビルオキシ基は、1個以上の水素原子をヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基またはシロキシ基のような置換基によって置換されたヒドロカルビルオキシ基を含む。一つ以上の実施態様において、これらの基は1個、すなわち基を形成するのに適切な最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含むことができる。これらの基はまた、限定しないが窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子およびリン原子のようなヘテロ原子を含有することもできる。
【0064】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物の一価の有機基を、限定しないがアルカンカルボキシレート基、シクロアルカンカルボキシレート基、アルケンカルボキシレート基、シクロアルケンカルボキシレート基、アレーンカルボキシレート基、アルキンカルボキシレート基およびシクロアルキンカルボキシレート基のようなカルボキシレート基または置換カルボキシレート基とすることができる。置換カルボキシレート基は、1個以上の水素原子をヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基またはシロキシ基のような置換基によって置換されたカルボキシレート基を含む。一つ以上の実施態様において、これらの基は1個、すなわち基を形成するのに適切な最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含むことができる。これらの基はまた、限定しないが窒素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子およびリン原子のようなヘテロ原子を含有することもできる。
【0065】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物の一価の有機基をシリル基または置換シリル基とすることができ、限定しないが、例えばトリヒドロカルビルシリル基、トリシリルオキシシリル基、トリヒドロカルビルオキシシリル基、トリシリルシリル基、ジヒドロカルビルヒドロシリル基、ジヒドロカルビル(シリルオキシ)シリル基、ジヒロドカルビル(シリル)シリル基、ジヒドロカルビル(ヒドロカルビルオキシ)シリル基、ヒドロカルビルジヒドロシリル基、ヒドロカルビル(ジシリルオキシ)シリル基、ヒドロカルビル(ジシリル)シリル基およびヒドロカルビル(ジヒドロカルビルオキシ)シリル基が挙げられる。例えば、シリル基の種類としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルヒドロシリル基、ジアルキル(シリルオキシ)シリル基、ジアルキル(シリル)シリル基、トリシクロアルキルシリル基、ジシクロアルキルヒドロシリル基、ジシクロアルキル(シリルオキシ)シリル基、ジシクロアルキル(シリル)シリル基、トリアルケニルシリル基、ジアルケニルヒドロシリル基、ジアルケニル(シリルオキシ)シリル基、ジアルケニル(シリル)シリル基、トリシクロアルケニルシリル基、ジシクロアルケニルヒドロシリル基、ジシクロアルケニル(シリルオキシ)シリル基、ジシクロアルケニル(シリル)シリル基、トリアリールシリル基、ジアリールヒドロシリル基、ジアリール(シリルオキシ)シリル基、ジアリール(シリル)シリル基、トリアリルシリル基、ジアリルヒドロシリル基、ジアリル(シリルオキシ)シリル基、ジアリル(シリル)シリル基、トリアラルキルシリル基、ジアラルキルヒドロシリル基、ジアラルキル(シリルオキシ)シリル基、ジアラルキル(シリル)シリル基、トリアルカリールシリル基、ジアルカリールヒドロシリル基、ジアルカリール(シリルオキシ)シリル基、ジアルカリール(シリル)シリル基、トリアルキニルシリル基、ジアルキニルヒドロシリル基、ジアルキニル(シリルオキシ)シリル基、ジアルキニル(シリル)シリル基、トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリル基、トリス(トリアリールシリルオキシ)シリル基、トリス(トリシクロアルキルシリルオキシ)シリル基、トリス(トリアルコキシシリルオキシ)シリル基、トリス(トリアリールオキシシリルオキシ)シリル基またはトリス(トリシクロアルキルオキシシリルオキシ)シリル基を挙げることができる。置換シリル基は、1個以上の水素原子をヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基またはシロキシ基のような置換基によって置換されたシリル基を含む。一つ以上の実施態様において、これらの基は1個、すなわち基を形成するのに適切な最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含むことができる。これらの基はまた、限定しないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子およびリン原子のようなヘテロ原子を含有することもできる。
【0066】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物の一価の有機基はシリルオキシ基または置換シリルオキシ基とすることができ、限定しないが、例えばトリヒドロカルビルシリルオキシ基、トリヒドロカルビルオキシシリルオキシ基、トリシリルオキシリルオキシ基、トリシリルシリルオキシ基、ジヒドロカルビルヒドロシリルオキシ基、ジヒドロカルビル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジヒドロカルビル(シリル)シリルオキシ基、ジヒドロカルビル(ヒドロカルビルオキシ)シリルオキシ基、ヒドロカルビルジヒドロシリルオキシ基、ヒドロカルビル(ジシリルオキシ)シリルオキシ基、ヒドロカルビル(ジシリル)シリルオキシ基およびヒドロカルビル(ジヒドロカルビルオキシ)シリルオキシ基が挙げられる。例えば、シリルオキシ基の種類としては、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキルヒドロシリルオキシ基、ジアルキル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアルキル(シリル)シリルオキシ基、トリシクロアルキルシリルオキシ基、ジシクロアルキルヒドロシリルオキシ基、ジシクロアルキル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジシクロアルキル(シリル)シリルオキシ基、トリアルケニルシリルオキシ基、ジアルケニルヒドロシリルオキシ基、ジアルケニル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアルケニル(シリル)シリルオキシ基、トリシクロアルケニルシリルオキシ基、ジシクロアルケニルヒドロシリルオキシ基、ジシクロアルケニル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジシクロアルケニル(シリル)シリルオキシ基、トリアリールシリルオキシ基、ジアリールヒドロシリルオキシ基、ジアリール(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアリール(シリル)シリルオキシ基、トリアリルシリルオキシ基、ジアリルヒドロシリルオキシ基、ジアリル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアリル(シリル)シリルオキシ基、トリアラルキルシリルオキシ基、ジアラルキルヒドロシリルオキシ基、ジアラルキル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアラルキル(シリル)シリルオキシ基、トリアルカリールシリルオキシ基、ジアルカリールヒドロシリルオキシ基、ジアルカリール(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアルカリール(シリル)シリルオキシ基、トリアルキニルシリルオキシ基、ジアルキニルヒドロシリルオキシ基、ジアルキニル(シリルオキシ)シリルオキシ基、ジアルキニル(シリル)シリルオキシ基、トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリルオキシ基、トリス(トリアリールシリルオキシ)シリルオキシ基、トリス(トリシクロアルキルシリルオキシ)シリルオキシ基、トリス(トリアルコキシシリルオキシ)シリルオキシ基、トリス(トリアリールオキシシリルオキシ)シリルオキシ基またはトリス(トリシクロアルキルオキシシリルオキシ)シリルオキシ基を挙げることができる。置換シリルオキシ基は、1個以上の水素原子をヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基またはシロキシ基のような置換基によって置換されたシリルオキシ基を含む。一つ以上の実施態様において、これらの基は1個、すなわち基を形成するのに適切な最低数の炭素原子から約20個までの炭素原子を含むことができる。これらの基はまた、限定しないが窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子およびリン原子のようなヘテロ原子を含有することもできる。
【0067】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物の一価の有機基を保護アミノ基とすることができ、親アミノ基(すなわち、−NH)の2個の水素原子をヒドロカルビル基またはシリル基などの他の置換基で置換することによって形成または誘導したアミノ基を含む。保護アミノ基の例示的な種類としては、限定しないが、ビス(トリヒドロカルビルシリル)アミノ基、ビス(ジヒドロカルビルヒドロシリル)アミノ基、1−アザ−ジシラ−1−シクロヒドロカルビル基、(トリヒドロカルビルシリル)(ヒドロカルビル)アミノ基、(ジヒドロカルビルヒドロシリル)(ヒドロカルビル)アミノ基、1−アザ−2−シラ−1−シクロヒドロカルビル基、ジヒドロカルビルアミノ基および1−アザ−1−シクロヒドロカルビル基が挙げられる。
【0068】
適当なビニルシランの代表例としては、限定しないが、ビニルジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルトリフェニルシラン、ビニル−t−ブチルジメチルシラン、ビニル−ジ−n−オクチルメチルシラン、ビニルフェニルメチルシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、ジビニルジメチルシラン、トリビニルシラン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、トリス(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ビニルジメチルシロキシ)フェニルシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジフェニルクロロシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、トリビニルクロロシラン、ビニル(クロロメチル)ジメチルシラン、ビニル(ブロモメチル)ジメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロペンオキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、ビニルシラトラン、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、2−プロペニルトリメチルシラン、1−ブロモビニルトリメチルシラン、2−ブロモビニルトリメチルシラン、(1−メトキシビニル)トリメチルシラン、ビニルメチルシラシクロペンタン、ビニルテトラメチルジシロキサン、ビニルペンタメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、1,3−ジビニルテトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、1−ビニル−3−(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,2−ジビニルテトラメチルジシラン、1,4−ジビニルテトラメチルジシリルエタン、1,4−ビス(ビニルジメチルシリル)ベンゼン、トリス(ビニルジメチルシリル)ボレート、1,5−ジビニルヘキサメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−3−フェニルペンタメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタビニル−T8−シルセスキオキサンが挙げられる。
【0069】
適当なアリルシランの代表例としては、限定しないが、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン、アリルトリフェニルシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジフェニルシラン、トリアリルメチルシラン、テトラアリルシラン、アリル(クロロメチル)ジメチルシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、アリル(クロロプロピル)ジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、(2−クロロメチルアリル)トリクロロシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリフェノキシシラン、アリルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(2−クロロメチルアリル)トリメトキシシラン、アリルジメチル(ジイソプロピルアミノ)シラン、1,1−ビス(トリメチルシリルメチル)エチレン、1,1−ビス(トリクロロシリルメチル)エチレン、1,1−ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレン、メタリルトリメチルシラン、1−アリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリルテトラメチルジシロキサンおよび1,3−ジアリルテトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンが挙げられる。
【0070】
適当なアリルビニルシランの代表例としては、限定しないが、アリルビニルメチルシラン、アリルビニルフェニルシラン、アリルビニルジメチルシラン、アリルビニルジフェニルシラン、アリルトリビニルシラン、ジアリルジビニルシラン、トリアリルビニルシラン、アリルビニルクロロシラン、アリルビニルジクロロシラン、アリルビニルジフルオロシラン、アリルビニルジメトキシシラン、アリルビニルジエトキシシラン、アリルビニルジフェノキシシラン、アリルビニルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルビニルジアセトキシシランおよびアリルビニルビス(ジメチルアミノ)シランが挙げられる。
【0071】
本発明の触媒組成物は、上述の触媒成分を組み合わせるか、または混合することによって形成することができる。1種以上の活性触媒種が触媒成分の組み合わせに由来すると考えられるが、種々の触媒成分の間の相互作用または反応の程度は高い確度で知られていない。ランタニド化合物、アルキル化剤、ハロゲン供給源およびシラン化合物の組み合わせまたは反応生成物を、触媒システムまたは触媒組成物と称することができる。本明細書で使用するシラン化合物を、該システムの構成要素またはシステムに対する調節剤と称することができる。この点で、触媒成分への言及は、ランタニド化合物、アルキル化剤、ハロゲン供給源およびシラン化合物を指す。変性触媒組成物または変性触媒システムという用語は、成分の単純な混合物、物理的もしくは化学的な引力によって生じる種々の成分の錯体、成分の化学反応生成物、またはこれらの組み合わせを包含するよう用いることができる。
【0072】
本発明の触媒組成物は、有利なことに、幅広い範囲の触媒濃度および触媒成分比にわたって、共役ジエンをポリジエンに重合するための技術的に有用な触媒活性を有する。いくつかの要因が、いずれか1つの触媒成分の最適濃度に影響を与える場合がある。例えば、触媒成分が相互作用して活性種を形成する場合があるため、いずれか1つの触媒成分の最適濃度は他の触媒成分の濃度に依存する場合がある。
【0073】
一つ以上の実施態様において、アルキル化剤とランタニド化合物とのモル比(アルキル化剤/Ln)を約1:1〜約1,000:1、他の実施態様では約2:1〜約500:1、また別の実施態様では約5:1〜約200:1とすることができる。
【0074】
アルミノキサンと、少なくとも1種の他の有機アルミニウム剤との双方をアルキル化剤として用いる実施態様において、アルミノキサンとランタニド化合物とのモル比(アルミノキサン/Ln)を5:1〜約1,000:1、他の実施態様では約10:1〜約700:1、また別の実施態様では約20:1〜約500:1とすることができ、また少なくとも1種の他の有機アルミニウム化合物とランタニド化合物とのモル比(Al/Ln)を約1:1〜約200:1、他の実施態様では約2:1〜約150:1、また別の実施態様では約5:1〜約100:1とすることができる。
【0075】
ハロゲン供給源とランタニド化合物とのモル比は、ハロゲン供給源のハロゲン原子のモル数とランタニド化合物のランタニド原子のモル数との比(ハロゲン/Ln)で最も良く示される。一つ以上の実施態様において、ハロゲン/Lnのモル比を約0.5:1〜約20:1、他の実施態様では約1:1〜約10:1、また別の実施態様では約2:1〜約6:1とすることができる。
【0076】
関連する実施態様において、非配位アニオンまたは非配位アニオン前駆体とランタニド化合物とのモル比(An/Ln)を約0.5:1〜約20:1、他の実施態様では約0.75:1〜約10:1、また別の実施態様では約1:1〜約6:1とすることができる。
【0077】
一つ以上の実施態様において、シラン化合物とランタニド化合物とのモル比(シラン/Ln)を0.5:1〜約1,000:1、他の実施態様では約1:1〜約700:1、また別の実施態様では約5:1〜約500:1とすることができる。
【0078】
本発明の触媒システムは、幾つかの手法を用いることによって形成することができる。例えば、触媒構成要素を重合すべきモノマーに直接添加することによって触媒システムを形成することができる。この点において、シラン化合物を含む触媒構成要素を逐次的または同時的な様式で加えることができる。一実施態様において、触媒成分を逐次的様式で加える場合、先ずシラン化合物、続いてアルキル化剤、続いてランタニド化合物、最後にハロゲン供給源を加えることができる。重合すべきモノマーへの触媒構成要素の直接且つ別々の添加を、触媒システムの現場形成と呼ぶ場合がある。
【0079】
他の実施態様において、触媒を予備形成することができる。つまり、シラン化合物を含む触媒成分を、重合すべきモノマーと別に導入して予備混合することができる。特定の実施態様において、触媒の予備形成は、あらゆるモノマーの不在下または少量の少なくとも1種の共役ジエンモノマーの存在下で、一般に約−20℃〜約80℃であるところの適切な温度で生起することができる。共役ジエンモノマーの混合物を使用することもできる。触媒を予備形成するのに使用し得る共役ジエンモノマーの量は、ランタニド化合物1モルあたり約1モル〜約500モル、他の実施態様では約5モル〜約250モル、また別の実施態様では約10モル〜約100モルとすることができる。生成した予備形成触媒組成物を、必要に応じて、重合すべきモノマーに加える前に熟成させることができる。
【0080】
他の実施態様において、二段階処理を使用することにより触媒を形成することができる。第一段階は、ランタニド化合物をアルキル化剤とあらゆるモノマーの不在下または少量の少なくとも1種の共役ジエンモノマーの存在下適切な温度(例えば、−20℃〜約80℃)で混合することを含むことができる。この第一段階混合物を調製するのに用いるモノマーの量は、上述した触媒の予備形成のものと同様とすることができる。第二段階においては、第一段階で調製した混合物と、シラン化合物と、ハロゲン供給源とを重合すべきモノマーに逐次的または同時的な様式で加えることができる。一実施態様において、先ずシラン化合物、続いて第一段階で調製した混合物、そして続いてハロゲン供給源を加えることができる。
【0081】
一つ以上の実施態様において、触媒または触媒成分の重合システムへの送達を容易にするために、溶媒を担体として用いて触媒または触媒成分を溶解または懸濁させることができる。他の実施態様において、共役ジエンモノマーを触媒担体として使用することができる。更に他の実施態様において、触媒成分をあらゆる溶媒なしにそれらだけの状態で使用することができる。
【0082】
一つ以上の実施態様において、適当な溶媒は、触媒の存在下でモノマーの重合中に成長ポリマー鎖への重合または組み込みを受けない有機化合物を含む。一つ以上の実施態様において、これら有機種は、周囲温度及び周囲圧力にて液体である。一つ以上の実施態様において、これら有機溶媒は触媒に対し不活性である。典型的な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素のような低いまたは比較的低い沸点を有する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンおよびメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、灯油および石油スピリットが挙げられる。そして、脂環式炭化水素の非限定例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。上記炭化水素の混合物を使用することもできる。当業界で既知なように、環境上の理由のために脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素を用いるのか望ましい場合がある。低沸点炭化水素溶媒は、通常重合の完了時点でポリマーから分離される。
【0083】
有機溶媒の他の例としては、パラフィン系オイル、芳香族オイルまたは油展ポリマーに通常使用する他の炭化水素オイルなどの高分子量の高沸点炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は不揮発性であるから、通常分離を必要とせず、ポリマーに組み込まれたままである。
【0084】
本発明に係るポリジエンの製造は、触媒として有効量の上記触媒組成物の存在下で共役ジエンモノマーを重合することによって達成することができる。触媒組成物、共役ジエンモノマー、および用いる場合の任意の溶媒の導入が、ポリマー生成物を形成する重合混合物を形成する。重合混合物に使用すべき総触媒濃度は、成分の純度、重合温度、所望の重合速度および転化率、所望の分子量、ならびに多数の他の要因のような種々の要因の相互作用に依存する場合がある。従って、触媒として有効量のそれぞれの触媒成分を使用することができると言うだけで、具体的な総触媒濃度を明記することができない。一つ以上の実施態様において、使用するランタニド化合物の量は、共役ジエンモノマー100gあたり約0.01mmol〜約2mmol、他の実施態様では約0.02mmol〜約1mmol、また他の実施態様では約0.05mmol〜約0.5mmolとすることができる。
【0085】
一つ以上の実施態様において、本発明に係る共役ジエンの重合を、相当量の溶媒を含む重合システムで実施することができる。一実施態様において、重合すべきモノマーと生成したポリマーの双方が溶媒に可溶である溶液重合システムを用いることができる。別の実施態様において、生成したポリマーが不溶である溶媒を選択することにより沈殿重合システムを用いることができる。両方の事例において、触媒を調製するのに使用し得る量の溶媒に加えて、通常ある量の溶媒を重合システムに加える。この付加的な溶媒は、触媒を調製するの用いた溶媒と同一または異なるものとすることができる。典型的な溶媒は上述してある。一つ以上の実施態様において、重合混合物の溶媒含量は、重合混合物の総重量を基にして20重量%を超え、他の実施態様では50重量%を超え、更に別の実施態様では80%を超えるとすることができる。
【0086】
他の実施態様において、使用する重合システムは実質的に溶媒を含まないまたは最少量の溶媒を含むバルク重合システムを一般に考慮することができる。当業者であればバルク重合プロセス(すなわち、モノマーが溶媒として働く方法)の利益を理解することができ、従って該重合システムはバルク重合を行うことによって得ようとする利益に有害な影響を与えるものよりも少ない溶媒を含む。一つ以上の実施態様において、重合混合物の溶媒含量は、重合混合物の総重量を基にして約20重量%未満、他の実施態様では約10重量%未満、更に別の実施態様では約5重量%未満とすることができる。更に別の実施態様において、重合混合物は実質的に溶媒を欠き、これはさもなくば重合プロセスに明らかな影響を有する量の溶媒が存在しないことを指す。実質的に溶媒を欠く重合システムを、実質的に溶媒を含まないと呼ぶ場合がある。特定の実施態様において、重合混合物は溶媒を欠く。
【0087】
重合は、当業界で既知のあらゆる従来の重合容器内で行うことができる。一つ以上の実施態様において、溶液重合を従来の攪拌槽型反応器内で行うことができる。他の実施態様において、特にモノマー転換率が約60%未満の場合、バルク重合を従来の攪拌槽型反応器内で行うことができる。更に他の実施態様において、特にバルク重合法でのモノマー転換率が高粘性セメントを通常もたらす約60%より高い場合、バルク重合を重合下の粘性セメントがピストンによってまたは実質的にピストンによって移動される細長い反応器内で行うことができる。例えば、セメントを自己洗浄式の1軸または2軸攪拌機によって押し進める押出機がこの目的に対して適切である。有用なバルク重合法の例は米国特許第7,351,776号明細書に開示されており、その内容をここに参照して援用する。
【0088】
一つ以上の実施態様において、重合のために用いる全ての成分を単一容器(例えば従来の攪拌槽反応器)内で混合することができ、また重合プロセスの全ての工程をこの容器内で行うことができる。他の実施態様において、2つ以上の成分を、一つの容器内で予備混合し、次いでモノマー(またはモノマーの少なくとも大部分)の重合を行うことができる別の容器に移すことができる。
【0089】
重合は、バッチ法、連続法または半連続法として実施することができる。半連続法では、モノマーを必要に応じて断続的に投入して、すでに重合したモノマーと置き換える。一つ以上の実施態様において、重合が進行する条件を制御して、ポリマー混合物の温度を約−10℃〜約200℃、他の実施態様では約0℃〜約150℃、また別の実施態様では約20℃〜約100℃の範囲内に維持することができる。一つ以上の実施態様において、重合の熱を熱制御した反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続した還流冷却器の使用によるモノマーの蒸発および凝縮による内部冷却、またはこれら2つの方法の組み合わせによって除去することができる。また、条件を制御して、重合を約0.1気圧〜約50気圧、他の実施態様では約0.5気圧〜約20気圧、また別の実施態様では約1気圧〜約10気圧の圧力下で行うことができる。一つ以上の実施態様において、重合を実施できる圧力は、大部分のモノマーが液相であることを確実にするものを含む。これらの実施態様または他の実施態様において、重合混合物を嫌気性条件下に維持することができる。
【0090】
本発明の重合法によって製造したポリジエン類は、これらポリマーにおけるポリマー鎖の幾つかが反応性鎖末端を有するような偽リビング特性を有することができる。いったん所望のモノマー転化率を達成すると、官能化剤を重合混合物に任意に導入して、官能化ポリマーを与えるようにあらゆる反応性ポリマー鎖と反応させることができる。一つ以上の実施態様において、重合混合物を反応停止剤と接触させる前に、官能化剤を導入する。他の実施態様では、重合混合物を反応停止剤で部分的に反応停止させた後に、官能化剤を導入することができる。
【0091】
一つ以上の実施態様において、官能化剤は、本発明によって製造した反応性ポリマーと反応することにより官能化剤と反応しなかった成長鎖と明らかに異なる官能基を有するポリマーを提供することができる化合物または試薬を含む。かかる官能基は、他のポリマー鎖(成長性および/または非成長性)またはポリマーと混合し得る補強充填剤(例えば、カーボンブラック)のような他の構成物質と反応性または相互作用性とすることができる。一つ以上の実施態様において、官能化剤と反応性ポリマーとの反応は、付加反応または置換反応によって進行する。
【0092】
有用な官能化剤は、2個以上のポリマー鎖をともに結合することなくポリマー鎖の末端に官能基を単に提供する化合物並びに2個以上のポリマー鎖を官能結合によって連結または結合して単一巨大分子を形成することができる化合物を含む。後者の種類の官能化剤をカップリング剤と称することもできる。
【0093】
一つ以上の実施態様において、官能化剤は、ポリマー鎖にヘテロ原子を加えるかまたは与える化合物を含む。特定の実施態様では、官能化剤は、ポリマー鎖に官能基を与えて、官能化ポリマーを形成し、非官能化ポリマーから調製した同様のカーボンブラック充填加硫物と比べて官能化ポリマーから調製したカーボンブラック充填加硫物の50℃ヒステリシスロスを低減する化合物を含む。一つ以上の実施態様において、このヒステリシスロスの低減は少なくとも5%、他の実施態様では少なくとも10%、また別の実施態様では少なくとも15%である。
【0094】
一つ以上の実施態様において、適当な官能化剤は、偽リビングポリマー(例えば、本発明に従って製造したもの)と反応し得る基を含有する化合物を含む。典型的な官能化剤としては、ケトン、キノン、アルデヒド、アミド、エステル、イソシアナート、イソチオシアナート、エポキシド、イミン、アミノケトン、アミノチオケトンおよび酸アルデヒドが挙げられる。これらの化合物の例は、米国特許第4,906,706号、第4,990,573号、第5,064,910号、第5,567,784号、第5,844,050号、第6,838,526号、第6,977,281号および第6,992,147号明細書;米国特許出願公開第2006/0004131 A1号、第2006/0025539 A1号、第2006/0030677 A1号および第2004/0147694 A1号明細書;特開平05−0514006号明細書、特開平05−059103号明細書、特開平10−306113号明細書、特開平11−035633号明細書に開示されており、これらの内容をここに参照して援用する。官能化剤の他の例としては、米国特許出願公開第2007/0149717号明細書に記載されたアジン化合物、米国特許出願公開第2007/0276122号明細書に開示されたヒドロベンズアミド化合物、米国特許出願番号第2008/0051552号明細書に開示されたニトロ化合物および米国特許出願公開第2008/0146745号明細書に開示された保護オキシム化合物が挙げられ、これらの内容全てをここに参照して援用する。
【0095】
特定の実施態様において、使用する官能化剤はカップリング剤とすることができ、限定しないが、四塩化スズのような金属ハロゲン化物、四塩化ケイ素のような非金属ハロゲン化物、ジオクチルスズビス(オクチルマレアート)のような金属エステル-カルボキシラート化合物、テトラエチルオルトシリカートのようなアルコキシシラン、およびテトラエトキシスズのようなアルコキシスタンナンが挙げられる。カップリング剤は、単独または他の官能化剤と組み合わせて用いることができる。官能化剤の組み合わせを任意のモル比で使用することができる。
【0096】
重合混合物に導入する官能化剤の量は、重合を開始するのに用いる触媒の種類および量、官能化剤の種類、所望の官能性レベルならびに他の多くの要因を含む種々の要因に依存する場合がある。一つ以上の実施態様において、官能化剤の量は、1モルのランタニド化合物あたり約1モル〜約200モル、他の実施態様では約5モル〜約150モル、また他の実施態様では約10モル〜約100モルの範囲とすることができる。
【0097】
反応性ポリマー鎖は高温でゆっくりと自己終結する場合があるため、一実施態様ではピーク重合温度を観察した時点で、官能化剤を重合混合物に加えることができる。他の実施態様では、ピーク重合温度に達した後約25分〜35分以内に官能化剤を加えることができる。
【0098】
一つ以上の実施態様において、所望のモノマー転化率に達した後であるがプロトン性水素原子を含有する反応停止剤を加える前に、官能化剤を重合混合物に導入することができる。一つ以上の実施態様において、モノマー転化率が少なくとも5%、他の実施態様では少なくとも10%、別の実施態様では少なくとも20%、さらに他の実施態様では少なくとも50%、また他の実施態様では少なくとも80%となった後に、官能化剤を重合混合物に加える。これらの実施態様または他の実施態様において、モノマー転化率が90%となる前、他の実施態様ではモノマー転化率が70%となる前、別の実施態様ではモノマー転化率が50%となる前、さらに他の実施態様ではモノマー転化率が20%となる前、また他の実施態様では15%となる前に、官能化剤を重合混合物に加える。一つ以上の実施態様において、モノマー転化が完了または実質的に完了した後、官能化剤を加える。特定の実施態様では、ここに参照して援用した米国特許出願公開第2009/0043046号明細書に開示されたようなルイス塩基の導入の前、導入と一緒、または導入の後に、官能化剤を重合混合物に導入する。
【0099】
一つ以上の実施態様において、官能化剤を重合(またはその少なくとも一部)を行った場所(例えば、容器内)で重合混合物に導入することができる。他の実施態様において、官能化剤を重合(またはその少なくとも一部)を行った場所と明らかに異なる場所で重合混合物に導入することができる。例えば、官能化剤を下流反応器または下流槽、インライン反応器若しくはミキサー、押出機またはデボラチライザーを含む下流の容器内で重合混合物に導入することができる。
【0100】
官能化剤を重合混合物に導入し、所望の反応時間を付与した時点で、あらゆる残存する反応性ポリマー鎖および触媒または触媒構成要素を不活性化するために、反応停止剤を重合混合物に加えることができる。反応停止剤はプロトン性化合物とすることができ、限定しないが、アルコール、カルボン酸、無機酸、水またはそれらの混合物が挙げられる。特定の実施態様において、反応停止剤としては、ここに参照して援用した米国特許出願公開第2009/0043055号明細書に開示されたポリヒドロキシ化合物が挙げられる。反応停止剤の添加と共に、または添加前もしくは後に、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの酸化防止剤を加えることができる。酸化防止剤の使用量は、ポリマー生成物の約0.2重量%〜約1重量%の範囲とすることができる。反応停止剤および酸化防止剤を、重合混合物に加える前にそれら材料だけとして加えるか、または必要に応じて炭化水素溶媒または共役ジエンモノマーに溶解することができる。
【0101】
ポリマー混合物を反応停止させた時点で、重合混合物の種々の構成物質を回収することができる。一つ以上の実施態様において、未反応モノマーを重合混合物から回収することができる。例えば、モノマーを重合混合物から当業界で既知の技術を使用することにより留去することができる。一つ以上の実施態様において、デボラチラザーを用いて、重合混合物からモノマーを取り出すことができる。モノマーを重合混合物から取り出せば、該モノマーを精製し、保存しおよび/または再利用して重合プロセスに戻すことができる。
【0102】
ポリマー生成物を重合混合物から当業界で既知の技術を使用することにより回収することができる。一つ以上の実施態様において、脱溶媒および乾燥技術を使用することができる。例えば、適切な温度(例えば、約100℃〜約170℃)で大気圧下または低大気圧下での蒸発によって揮発性物質を取り除く脱溶媒押出機のような加熱スクリュー装置に重合混合物を通すことによって、ポリマーを回収することができる。この処理は、未反応モノマー並びに低沸点溶媒を取り除くのに役立つ。あるいはまた、重合混合物に蒸気脱溶媒を行い、次に生成したポリマーくずを熱風トンネルで乾燥することによって、ポリマーを回収することができる。ドラム乾燥器上でポリマー混合物を直接乾燥することによって、ポリマーを回収することもできる。
【0103】
シス-1,4-ポリジエン(例えば、シス-1,4-ポリブタジエン)を本発明の方法の一つ以上の実施態様によって製造する場合、シス-1,4-ポリジエンは有利なことに96%を超える、他の実施態様では97%を超える、別の実施態様では98%を超える、また他の実施態様では99%を超えるシス-1,4結合含量を有することができる。有利なことに、これらポリマーは、優れた粘弾特性を示し、限定しないがタイヤトレッド、サイドウォール、サブトレッドおよびビードフィラーを含む種々のタイヤ部品の製造に特に有用である。シス-1,4-ポリジエンをタイヤストックのエラストマー部品の全部または一部として使用することができる。シス-1,4-ポリジエンを他のゴムと併用してタイヤストックのエラストマー部品を形成する場合、これら他のゴムを天然ゴム、合成ゴムまたはこれらの混合物とすることができる。合成ゴムの例としては、ポリイソプレン、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、低シス-1,4結合含量を有するポリブタジエン、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン-コ-イソプレン)およびこれらの混合物が挙げられる。シス-1,4-ポリジエンをホース、ベルト、靴底、ウインドウシール、他のシール、振動減衰ゴムおよび他の工業製品の製造に使用することもできる。
【0104】
本発明の実施を実証するために、次の実施例を準備して試験した。しかしながら、実施例を本発明の範囲の限定とみなすべきでない。特許請求の範囲が本発明を規定するのに役立つであろう。
【実施例】
【0105】
次の実施例において、ポリマーのムーニー粘度(ML1+4)を大ローターを有するアルファテクノロジーズムーニー粘度計を予熱時間1分、実行時間4分で使用して100℃にて求めた。ポリマーサンプルの数平均分子量(M)、重量平均分子量(M)および分子量分布(M/M)を、ポリスチレン標準物質および問題となっているポリマーについてのマルク-ホウインク定数で較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めた。ポリマーサンプルのシス-1,4-結合含量、トランス-1,4-結合含量および1,2-結合含量を赤外線分光法によって求めた。
【0106】
[例1〜7(対照)]
例1〜7では、1,3−ブタジエンの重合をシラン化合物の不在下で行った。
【0107】
4.32Mメチルアルミノキサンのトルエン溶液7.50mL、22wt%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2.41mL、0.537Mネオジムバーサタートのシクロヘキサン溶液0.60mL、1.0Mジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液6.80mLおよび1.0Mジエチルアルミニウムクロリドのヘキサン溶液1.30mLを混合することにより予備形成触媒を調製した。この触媒を、室温で15分間熟成し、次いでトルエン24.6mLで希釈した。生成した触媒はネオジム金属濃度が0.0075Mであり、これを重合のために以下で使用した。
【0108】
例1では、オーブン乾燥した800mLガラス瓶に、セルフシールゴムライナーおよび穴あき金属キャップをかぶせた。この瓶を乾燥窒素流で完全にパージした後、ヘキサン106g、22重量%の1,3−ブタジエンを含む1,3−ブタジエン/ヘキサンブレンド227gを投入し、続いて上記で調製した予備形成触媒溶液4.00mLを加えた。この瓶を、65℃に維持した水浴中で45分間回転させた。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.30gを含むイソプロパノール3mLの添加によって、重合を停止した。生成したポリマーセメントを、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを含むイソプロパノール3Lで凝固させた。ポリマーの収量は47.8g(95.6%)であった。
【0109】
例2〜7では、予備形成触媒の量および重合時間を変えたことを除いて、上述した例1の重合手順を繰り返した。
【0110】
例1〜7の重合条件および生成したポリマーの特性を表1にまとめる。
【0111】
【表1】

【0112】
図1において、シラン化合物の不在下で製造したポリマーのシス-14-結合含量をポリマーのムーニー粘度に対してプロットした。
【0113】
[例8〜12]
例8〜12においては、1,3−ブタジエンの重合をテトラビニルシラン(TVS)の存在下で行った。手順は、予備形成触媒の添加前に一定量のTVSをモノマー溶液に加えたことを除いて、例1で記載したものと同様であった。重合条件および生成したポリマーの特性を表2にまとめる。
【0114】
【表2】

【0115】
図2は、TVSの存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例8〜12)とシラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例1〜7)との比較を与える。例8〜12における触媒構成要素としてのTVSの添加は、生成したシス-1,4-ポリブタジエンのシス-1,4-結合含量を増加することが明らかである。
【0116】
[例13〜17]
例13〜17においては、1,3−ブタジエンの重合をトリビニルメチルシラン(TVMS)の存在下で行った。手順は、予備形成触媒の添加前に一定量のTVMSをモノマー溶液に加えたことを除いて、例1で記載したものと同様であった。重合条件および生成したポリマーの特性を表3にまとめる。
【0117】
【表3】

【0118】
図3は、TVMSの存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例13〜17)とシラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例1〜7)との比較を与える。例13〜17における触媒構成要素としてのTVMSの添加は、生成したシス-1,4-ポリブタジエンのシス-1,4-結合含量を増加することが明らかである。
【0119】
[例18〜21]
例18〜21においては、1,3−ブタジエンの重合をジビニルジメチルシラン(DVDMS)の存在下で行った。手順は、予備形成触媒の添加前に一定量のDVDMSをモノマー溶液に加えたことを除いて、例1で記載したものと同様であった。重合条件および生成したポリマーの特性を表4にまとめる。
【0120】
【表4】

【0121】
図4は、DVDMSの存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例18〜21)とシラン化合物の非存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例1〜7)との比較を与える。例18〜21における触媒構成要素としてのDVDMSの添加は、生成したシス-1,4-ポリブタジエンのシス-1,4-結合含量を増加することが明らかである。
【0122】
[例22〜24]
例22〜24においては、1,3−ブタジエンの重合をテトラアリルシラン(TAS)の存在下で行った。手順は、予備形成触媒の添加前に一定量のTASをモノマー溶液に加えたことを除いて、例1で記載したものと同様であった。重合条件および生成したポリマーの特性を表5にまとめる。
【0123】
【表5】

【0124】
図5は、TASの存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例22〜24)とシラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例1〜7)との比較を与える。例22〜24における触媒構成要素としてのTASの添加は、生成したシス-1,4-ポリブタジエンのシス-1,4-結合含量を増加することが明らかである。
【0125】
[例25および26]
例25および26においては、1,3−ブタジエンの重合を1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサン(TVDMDSO)の存在下で行った。手順は、予備形成触媒の添加前に一定量のTVDMDSOをモノマー溶液に加えたことを除いて、例1で記載したものと同様であった。重合条件および生成したポリマーの特性を表6にまとめる。
【0126】
【表6】

【0127】
図6は、TVDMDSOの存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例25および26)とシラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例1〜7)との比較を与える。例25および26における触媒構成要素としてのTVDMDSOの添加は、生成したシス-1,4-ポリブタジエンのシス-1,4-結合含量を増加することが明らかである。
【0128】
[例27および28]
例27および28においては、1,3−ブタジエンの重合を1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(DVTMDSO)の存在下で行った。手順は、予備形成触媒の添加前に一定量のDVTMDSOをモノマー溶液に加えたことを除いて、例1で記載したものと同様であった。重合条件および生成したポリマーの特性を表7にまとめる。
【0129】
【表7】

【0130】
図7は、DVTMDSOの存在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例27および28)とシラン化合物の不在下で作製したポリマーのシス-1,4-結合含量(例1〜7)との比較を与える。例27および28における触媒構成要素としてのDVTMDSOの添加は、生成したシス-1,4-ポリブタジエンのシス-1,4-結合含量を増加することが明らかである。
【0131】
本発明の範囲および精神から離れない種々の変形および代替が当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した説明に役立つ実施態様に正式に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンモノマーをビニルシラン、アリルシランまたはアリルビニルシランの存在下ランタニド系触媒システムを用いて重合する工程を備えたことを特徴とするポリジエンを製造する方法。
【請求項2】
前記共役ジエンモノマーを重合する工程を、ビニルジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルトリフェニルシラン、ビニル−t−ブチルジメチルシラン、ビニル−ジ−n−オクチルメチルシラン、ビニルフェニルメチルシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、ジビニルジメチルシラン、トリビニルシラン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、トリス(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ビニルジメチルシロキシ)フェニルシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジフェニルクロロシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、トリビニルクロロシラン、ビニル(クロロメチル)ジメチルシラン、ビニル(ブロモメチル)ジメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロペンオキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、ビニルシラトラン、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、2−プロペニルトリメチルシラン、1−ブロモビニルトリメチルシラン、2−ブロモビニルトリメチルシラン、(1−メトキシビニル)トリメチルシラン、ビニルメチルシラシクロペンタン、ビニルテトラメチルジシロキサン、ビニルペンタメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、1,3−ジビニルテトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、1−ビニル−3−(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,2−ジビニルテトラメチルジシラン、1,4−ジビニルテトラメチルジシリルエタン、1,4−ビス(ビニルジメチルシリル)ベンゼン、トリス(ビニルジメチルシリル)ボレート、1,5−ジビニルヘキサメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−3−フェニルペンタメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタビニル−T8−シルセスキオキサンからなる群より選択したビニルシランの存在下で行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共役ジエンモノマーを重合する工程を、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン、アリルトリフェニルシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジフェニルシラン、トリアリルメチルシラン、テトラアリルシラン、アリル(クロロメチル)ジメチルシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、アリル(クロロプロピル)ジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、(2−クロロメチルアリル)トリクロロシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリフェノキシシラン、アリルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(2−クロロメチルアリル)トリメトキシシラン、アリルジメチル(ジイソプロピルアミノ)シラン、1,1−ビス(トリメチルシリルメチル)エチレン、1,1−ビス(トリクロロシリルメチル)エチレン、1,1−ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレン、メタリルトリメチルシラン、1−アリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリルテトラメチルジシロキサンおよび1,3−ジアリルテトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンからなる群より選択したアリルシランの存在下で行う請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記共役ジエンモノマーを重合する工程を、アリルビニルメチルシラン、アリルビニルフェニルシラン、アリルビニルジメチルシラン、アリルビニルジフェニルシラン、アリルトリビニルシラン、ジアリルジビニルシラン、トリアリルビニルシラン、アリルビニルクロロシラン、アリルビニルジクロロシラン、アリルビニルジフルオロシラン、アリルビニルジメトキシシラン、アリルビニルジエトキシシラン、アリルビニルジフェノキシシラン、アリルビニルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルビニルジアセトキシシランおよびアリルビニルビス(ジメチルアミノ)シランからなる群より選択したアリルビニルシランの存在下で行う請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ランタニド系触媒システムが、(a)ランタニド化合物、(b)アルキル化剤および(c)ハロゲン供給源の組み合わせまたは反応生成物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シランが下記式:
Siωθ4−x
(式中の各ωは独立してビニル基、置換ビニル基、アリル基または置換アリル基であり、各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である)によって規定した化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記シラン化合物が下記式:
Si(Cθ=Cθ)θ4−x
(式中の各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である)によって規定したビニルシランである請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ビニルシランが下記式:
Si(CH=CH)θ4−x
(式中の各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である)によって規定される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シラン化合物が下記式:
Si(CθCθ=Cθ)θ4−x
(式中の各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である)によって規定したアリルシランである請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記アリルシランが下記式:
Si(CHCH=CH)θ4−x
(式中の各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜4の整数である)によって規定される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シラン化合物が下記式:
Si(CθCθ=Cθ)(Cθ=Cθ)θ
(式中の各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価の有機基を形成することができ、xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x、y、zの合計が4である)によって規定したアリルビニルシランである請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記アリルビニルシランが下記式:
Si(CHCH=CH)(CH=CH)θ
(式中の各θは独立して水素原子、ハロゲン原子もしくは一価の有機基であるか、または2個以上のθ基が結合して多価有機基を形成することができ、xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x、y、zの合計が4である)によって規定される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記θが、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、置換ヒドロカルビルオキシ基、カルボキシレート基、置換カルボキシレート基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基および保護アミノ基からなる群より選択される請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル化剤が、(i)式AIR3−n(式中の各Rは独立して炭素原子を介してアルミニウム原子と結合した一価の有機基であり、各Xは独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基であり、nは1〜3の範囲の整数である)によって規定した有機アルミニウム化合物と、(ii)アルミノキサンとを含む請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記シラン化合物と前記ランタニド化合物とのモル比が約1:1〜約700:1である請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−502508(P2013−502508A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526913(P2012−526913)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046482
【国際公開番号】WO2011/028523
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】