説明

ポリスチレン系樹脂発泡シート、容器、及びポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法

【課題】 本発明の課題は、高い耐熱性を有しつつ、臭気が抑制されたポリスチレン系樹脂発泡シートを提供することにある。
【解決手段】 本発明は、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が含有され且つ前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の合計量100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含有されてなるポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
連続気泡率が18%以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート、該ポリスチレン系樹脂発泡シートが成形されて得られる容器、及びポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂発泡シートは、食品用容器(食品用トレー、カップ等)等の材料として広く用いられている。しかし、ポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系樹脂発泡シートで形成された食品用容器は、耐熱性が十分に高いものではないため、電子レンジ等によって加熱されると変形してしまう等の問題を有する。これに対して、耐熱性を高めるべく、ポリスチレン系樹脂とともにポリフェニレンエーテル系樹脂を発泡剤により発泡させて形成されたポリスチレン系樹脂発泡シート(単に「発泡シート」ともいう。)が提案されている。
【0003】
しかるに、斯かるポリスチレン系樹脂発泡シートは、ポリフェニレンエーテル系樹脂が含有されることによって特有の臭気が生じるため、そのままでは食品用容器等の形成材料として利用し難いという問題がある。
【0004】
斯かる観点から、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び消臭剤としての疎水性ゼオライトが所定量含有されてなるポリスチレン系樹脂発泡シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−94919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで、消臭剤を添加して臭気を抑制することが検討されているもののそのような対策以外に発泡シートの臭気を抑制する方法については殆ど検討がされていない。
そのため高い耐熱性を有しつつ、臭気が抑制されたポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることが困難となっている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、高い耐熱性を有しつつ、臭気が抑制されたポリスチレン系樹脂発泡シートを提供し、ひいては、臭気の抑制された容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が含有され且つ前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の合計量100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含有されてなるポリスチレン系樹脂発泡シートであって、連続気泡率が18%以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートを提供する。
【0009】
斯かるポリスチレン系樹脂発泡シートは、連続気泡率が18%以下であることにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートの気泡内に存在する臭気成分が、ポリスチレン系樹脂発泡シートの断面等から漏洩し難くなり、臭気が抑制されるという利点を有する。
【0010】
また、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、好ましくは、臭気強度が3.0未満である。
【0011】
斯かるポリスチレン系樹脂発泡シートは、臭気強度が3.0未満であることにより、該ポリスチレン系樹脂発泡シートの臭気がより一層抑制され、利用者に容易に臭気を感じさせることのない容器を形成させ得る。
【0012】
また、本発明は、上記課題を解決するために、ポリスチレン系樹脂発泡シートを成形して容器を得る容器の製造方法であって、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートとして、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを用いることを特徴とする容器の製造方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が含有され且つ前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の合計量100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含有されてなるポリスチレン系樹脂発泡シートを形成するポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、前記ポリスチレン系樹脂、及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂を押出機内で溶融混合させた溶融物を該押出機から押出発泡させて連続気泡率が18%以下となるポリスチレン系樹脂発泡シートを作製することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
【0014】
なお、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法は、好ましくは、前記押出機における最高到達温度が290℃以下となるように前記溶融物の押出発泡を実施する。
【0015】
斯かる方法によって得られたポリスチレン系樹脂発泡シートは、前記押出機における前記溶融物の最高到達温度が290℃以下であることにより、臭気成分であるスチレン、トルエン、及びエチルベンゼンの含有量が低減され、臭気がより一層抑制されるという利点を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い耐熱性を有しつつ、臭気が抑制されたポリスチレン系樹脂発泡シート及び容器を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を用いて形成されてなる。
【0019】
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、連続気泡率が、18%以下であり、3〜18%であることが好ましい。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、連続気泡率を18%以下とすることにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートの気泡内に存在する臭気成分が、ポリスチレン系樹脂発泡シートの断面等から漏れ難くなり、臭気が抑制されるという利点を有する。
【0020】
なお、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、食品包装用容器等の形成に用いられる場合であれば、好ましくは1.5〜3.0mmの厚みとされ、好ましくは、0.075〜0.18g/cm3 の密度とされる。
【0021】
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、平均気泡径を80〜450μmとすることが好ましい。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、平均気泡径を80μm以上とした場合には、気泡の膜が厚くなりやすくなり、連続気泡率が低くなりやすい(連続気泡率が18%以下になりやすい)。また、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、平均気泡径を80μm以上とした場合には、強度が高くなる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、平均気泡径が450μm以下とした場合には、気泡径が大きすぎず、外観が良好となり、また、平滑性や光沢性にも優れ、さらに、割れ難くなる。
【0022】
さらに、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、6段階臭気強度において「容易に臭いが感知される状態」として規定されている「3.0」の値未満の臭気強度となるように形成されていることが好ましい。
即ち、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの臭気強度を3.0未満とすることで、当該ポリスチレン系樹脂発泡シートから得られる容器も容易に臭気を感じさせない状態とし得る。
なお、この臭気強度については、実施例に記載されているように臭気鑑定士によって判定することができる。
【0023】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの形成に用いられるポリスチレン系樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性の観点から、スチレン単独重合体などのポリスチレン樹脂が好適である。
なお、本実施形態においては、ポリスチレン系樹脂発泡シートや該ポリスチレン系樹脂発泡シートから形成される容器に対する臭気の抑制を図る上においてポリスチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率に上記のような規定を設けている。
従って、本実施形態においては、該ポリスチレン系樹脂とともに用いるポリフェニレンエーテル系樹脂の種類や配合割合などにもよるがメルトマスフローレイト、溶融張力、溶融粘度といった溶融特性に着目して用いるポリスチレン系樹脂を選択することが好ましい。
即ち、過度に溶融張力や溶融粘度の高い樹脂では高い発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡シートが得られにくくなるおそれを有するものの、通常、溶融張力や溶融粘度の高い樹脂を選択することで独立気泡の割合を増大させることができ、連続気泡率を低下させることができるためこれらの特性にある程度以上の値を示すポリスチレン系樹脂を採用することが好ましい。
また、ポリスチレン系樹脂の種類によらず、後述する発泡剤の種類や量、気泡調整剤の種類や量、押出条件等によっても連続気泡率の調整が可能なものであり、前記ポリスチレン系樹脂とともに用いるポリフェニレンエーテル系樹脂の種類や配合割合などによっても連続気泡率の調整が可能なものである。
【0024】
該ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、通常、次の一般式で表されるものを採用することができる。
【0025】
【化1】

【0026】
ここでR1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、nは、重合度を表す正の整数である。
例示すれば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等が本実施形態において用いられ得る。
また、重合度nは、通常10〜5000の範囲内である。
【0027】
該ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリスチレン系樹脂発泡シートや該ポリスチレン系樹脂発泡シートによって形成される容器に対して耐熱性を付与するのに有効なものであり、本実施形態においては前記ポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有される。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量に上記のような範囲が設定されているのは、ポリフェニレンエーテル系樹脂が上記範囲未満の含有量では、当該ポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が十分に発揮されないおそれを有し、逆に上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させても、それ以上にポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が発揮されないおそれを有するためである。
また、一般的にはポリスチレン系樹脂に比べて高価であるために上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させると材料コストの観点においても問題を生じさせるおそれを有する。
【0028】
通常、ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度(JIS K7206−1991、B法、50℃/h)は、102℃程度であるが、上記のようなポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させることにより、ビカット軟化温度を110〜155℃の範囲に向上させることができ、該ポリフェニレンエーテル系樹脂及び前記ポリスチレン系樹脂を使用することで、得られるポリスチレン系樹脂発泡シートや該ポリスチレン系樹脂発泡シートを2次加工した製品などの耐熱性向上を図り得る。
【0029】
一般にポリスチレン系樹脂が用いられてなる製品に耐熱性が求められる場合には、スチレンホモポリマーよりもビカット軟化温度の高いスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などのコポリマーをその形成材料に採用することが行われている。
一方で、上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドする方法は、単に製品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる点においても優れている。
【0030】
したがって、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びポリスチレン系樹脂を使用して発泡トレーなどの容器を形成させることにより、急激な変形が加えられても割れたりすることのない発泡トレーを形成させ得る。
【0031】
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートは、前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂を所定の割合で含有する配合物を押出機内で溶融混合させ、該押出機で溶融混合させた溶融物を該押出機から押出発泡させて形成されるものであるが、この押出発泡させる前記配合物には、前記ポリスチレン系樹脂や前記ポリフェニレンエーテル系樹脂以外に、発泡剤や気泡調整剤といった発泡のための成分の他に、一般的なポリスチレン系樹脂発泡シートの原材料として利用されている各種添加剤を含有させることができる。
【0032】
前記発泡剤としては、揮発性発泡剤、無機ガス系発泡剤、分解型発泡剤等を、それぞれ単独で又は2以上組み合わせて用いられる。揮発性発泡剤としては、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素類等が挙げられる。無機ガス系発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気等の不活性ガスが用いられる。また、分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。しかしながら、ポリスチレン系樹脂発泡シートの熱成形に先立つ加熱時の二次発泡性向上の観点からは、揮発性発泡剤を主たる発泡剤として使用することが望ましい。発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、基材樹脂、目的とする発泡倍率等によって異なるため、発泡剤の種類、基材樹脂の種類に応じて目的とする発泡倍率が得られるように選択すればよい。
前記発泡剤とともに併用される気泡調整剤としては、タルク、シリカ等の無機粉末や、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム或いは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。気泡調整剤の添加量は、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル樹脂との合計100質量部に対して0.5〜5質量部であることが好ましい。
なお、前記添加剤としては、消臭剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等があげられる。
【0033】
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法では、ポリスチレン系樹脂発泡シートの臭気を抑制する上において連続気泡率が18%以下となるようにポリスチレン系樹脂発泡シートを作製することが重要である。
本実施形態に係るポリスチレン系樹脂発泡シートを形成させるためには、一般的に押出発泡に用いられている設備を利用することができ、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法では、前記のような配合物を第1押出機及び第2押出機を備えるタンデム式押出機を用いて押出発泡させて、ポリスチレン系樹脂発泡シートを形成させることができる。
【0034】
以下に揮発性発泡剤を用いる場合の具体的な手順を説明すると、まず、前記配合物の内、発泡剤を除く全ての材料を第1押出機に供給し、該第1押出機内での温度が好ましくは290℃以下となるように加熱し、これらを溶融混練して溶融物を作製する。
【0035】
そして、該第1押出機では、その途中に設けた注入口から発泡剤を該第1押出機内部に導入し該発泡剤を前記溶融物とともに溶融混合して発泡剤含有溶融物を作製する。
次いで、該発泡剤含有溶融物を第1押出機から第2押出機に供給し、前記発泡剤含有溶融物を冷却して前記第2押出機から押し出される発泡剤含有溶融物の温度(「樹脂温度」ともいう。)を、好ましくは、得られる発泡シートのガラス転移温度+30℃から該ガラス転移温度+70℃までの範囲内にし、サーキュラーダイを用いて前記発泡剤含有溶融物を押出し発泡させ筒状の発泡体を形成させる。
さらに、該発泡体の内外に設置した空冷リングで押出直後の該発泡体にエアーを吹き付けて冷却し、得られた筒状の発泡体を押出方向に沿って切断し、ポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡シート)を作製する。
【0036】
なお、第1押出機において上記のような温度条件を採用することが好ましいのは、該第1押出機内での前記溶融物の最高到達温度を290℃以下に抑制させることで得られるポリスチレン系樹脂発泡シートの臭気をさらに抑制させ得るためである。
その機構については明確に把握されているわけではないが、該第1押出機内での温度が290℃以下となるように加熱した場合には、ポリスチレンの熱による分解が抑制されて臭気成分が生成され難くなるからであると考えられる。
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法では、前記のように第2押出機での樹脂温度を前記発泡シートのガラス転移温度+30℃以上にすることにより、前記発泡剤含有溶融物の粘度が高くなりすぎず、該発泡剤含有溶融物を押出機から押出しやすくなって押出条件が安定するという利点がある。また、得られる発泡シートの外観が良好なものとなるため、歩留まりが良くなり、生産性が向上するという利点がある。
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法では、前記樹脂温度を前記発泡シートのガラス転移温度+70℃以下にすることにより、前記発泡剤含有溶融物の粘度が低くなりすぎず、得られる発泡シートの連続気泡率を低くしやすくなる(該連続気泡率を18%以下にしやすくなる)。
【0037】
本発明の容器は、例えば、上記のような製造方法によって得られたポリスチレン系樹脂発泡シートに熱成形や折り曲げ成形といった成形を施して作製され得る。本発明の容器は、臭気成分の含有量が低いポリスチレン系樹脂発泡シートが用いられることにより、当該容器としても臭気が抑制されたものとなる。
【0038】
なお、前記熱成形する方法としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形等の方法が挙げられる。
また、前記折り曲げ成形としては、ポリスチレン系樹脂発泡シートにV溝加工を施し、該V溝を介して折り曲げて折箱容器とする方法などが挙げられる。
【0039】
尚、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シート、容器、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、及び容器の製造方法は、上記構成により、上記利点を有するものであるが、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート、容器、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、及び容器の製造方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【実施例】
【0040】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0041】
実施例および比較例のポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡シート)の各特性値の測定は、以下のように実施した。
【0042】
<坪量>
坪量は、発泡シートを押出方向に20cmの幅で押出方向と直交方向に切取り、その切片の重量W(g)と面積S(cm2 )から下記式にて求めた。
坪量(g/m2)=W/S×10000
【0043】
<連続気泡率>
連続気泡率は、空気比較式比重計(東京サイエンス(株)社製)を用いて測定される、発泡シートの試験体の体積Vから、下記式より算出した。
連続気泡率(%)=(V0 −V)/V0 ×100
尚、上記式において、Vは上記した方法で測定される試験体の体積(cm3 )、V0 は測定に使用した試験体の外形寸法から計算される試験体の見掛けの体積(cm3 )である。
【0044】
<平均気泡径>
前記発泡シートの平均気泡径は、ASTM D2842−69に記載されている方法に準拠して測定した。即ち、試験用の発泡シート試料を、押出方向に直交する平面に沿って切断し、また、押出方向及び厚み方向に広がる平面に沿って切断し、それぞれの切断面厚み方向の両外側1/10の部分を除いた部分につき、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−3000N」)を用いて17〜20倍、必要に応じて最大200倍に拡大して撮影した。撮影した4つの画像をそれぞれA4用紙上に印刷して、MD方向(押出方向)、TD方向(押出方向に直交し且つシート面に沿った方向)、VD方向(厚み方向)の各方向に沿った平行な線分(長さ60mm)を各A4用紙につき6ヶ所引いた。斯かる線分に重なる気泡の数から、各方向における気泡の平均弦長(t)を下記式(1)により算出した。ただし、線分は、できる限り気泡が接点でのみ接しないように引き、接してしまった場合は、気泡数に含めることとした。
平均弦長(t)=60/(気泡数×写真の倍率)・・・(1)
そして、下記式(2)により、各方向における気泡径を算出した。
D=t/0.616・・・(2)
更に、上記の如くして測定した各気泡径(DMD、DTD、DVD)に基づいて、平均気泡径を下記式(3)により算出した。
平均気泡径(mm)=(DMD+DTD+DVD)/3・・・(3)
なお、試験用の発泡シート試料の厚みが薄く、VD方向に60mm長さ分の線分を引くことができない場合は、30mm又は20mm長さの線分に重なる気泡数を数えて、60mm長さ線分における気泡数に換算した。
【0045】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は、JIS K7121 9.3(1)に基づき、「中間点ガラス転移温度(Tmg)」を測定することによって求めた。
具体的には、発泡シートから6.5±0.5mg程度のサンプルを採取し、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、示差走査熱量計装置、型名「DSC6220」に前記サンプルをセットしてJIS K7121に基づく示差走査熱量分析を実施して求めた。
【0046】
<スチレン、トルエン、及びエチルベンゼンの含有量(単位試料重量当たりの発生重量)>
パージアンドトラップ(P&T)法によるガスクロマトグラフ質量分析を実施して、発泡シートを250℃の温度で加熱した際に発生する揮発性有機化合物(スチレン、トルエン、及びエチルベンゼン)についての評価を行った。
まず、発泡シートを薄くスライスした後で、試料約5mgを精秤し、アルミホイルに包んでガラスライニングステンレスチューブ(GLT管)にセットした。
この状態でGLT管を250℃の温度で5分間加熱し、発生ガスをクライオフォーカス部にコールドトラップし、その後、熱脱着して揮発成分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)に導入させて測定を行った。
なお、測定には、日本電子データム社製のGC/MS(型名「JMS−Q1000GC」)に、液クロサイエンス社製のP&Tオートサンプラー(型名「TD−4J」)を組み合わせ、Phenomenex社製のカラム(ZB−1(10μm×0.25mmφ×60m))を用いて測定した。
また、P&T条件は以下の通りとした。
PurgeTime(10s),InjectionTime(20s),DesorbTime(300s),DelayStartTime(10s),DesorbHeater(250℃),CryoTempHeating(200℃),CryoTempCooling(−40℃)
さらに、測定条件は以下の通りとした。
・カラム温度:
40℃で3分間保持、15℃/分で200℃まで昇温、25℃/分で250℃まで昇温、250℃で6.33分間保持
・キャリアガス:ヘリウム(流量:1mL/分)
・注入口温度:250℃
・インターフェイス温度:250℃
・検出器電圧:−1146V
・スプリット比:1/10
・イオン源温度:250℃
・イオン化電流:300μA
・イオン化エネルギー:70eV
【0047】
<臭気測定評価>
実施例及び比較例の発泡シート(30mm×30mm、重量40g)それぞれをテドラーバッグ(10L)に入れ、活性炭を通した空気10Lを該テドラーバッグに充填し、常温にて24時間放置した。なお、発泡シート中のブタンガス臭の影響を少なくするために、実施例及び比較例の発泡シートは、押出後30日経過後のものをテトラーバックに入れた。
(1)臭気判定士による6段階臭気強度の測定
臭気判定士および臭気判定士試験の合格者の計5人によって、以下に示す6段階臭気強度表示法により、上記テドラーバッグ内の臭気強度を測定し、5人の6段階臭気強度の算術平均値を求めた。
・6段階臭気強度表示法
0:無臭 1:やっと感知できる臭い 2:何の臭いかがわかる弱い臭い
3:楽に感知できる臭い 4:強い臭い 5:強烈な臭い
(2)臭気センサーによる数値の測定
コスモス電機社製ポータブルニオイセンサXP−329III R(高感度酸化インジウム系熱線型焼結半導体センサ)(測定範囲:0〜2000)(数値が大きいほうが、臭気が強いことを示す。)を上記テドラーバッグに挿入して、数値を測定した。
【0048】
<実施例1>
まず、ポリスチレン系樹脂(DIC社製、製品名:「XC−515」)70質量部と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン系樹脂(PS)の混合樹脂(SABIC社製、製品名:「ノリルEFN4230」、(PPE/PS=70質量部/30質量部)30質量部とからなる樹脂組成物100質量部に対し、気泡調整剤(タルクが練り込まれたポリスチレン、タルクの含有量:40質量%)(東洋スチレン社製、製品名「DSM1401A」)1質量部と、消臭剤「ケスモンNS−100」(シリカ)(東亞合成社製)0.5質量部と、消臭剤「ケスモンNS−70」(ハイドロタルサイト焼成物)(東亞合成社製)0.5質量部とを添加した。そして、これらを第1押出機(φ115mm)に投入し、該第1押出機における最高到達温度が250℃となるように加熱しこれらを溶融混練して溶融物を得た。
次いで、該第1押出機の途中に設けた注入口から、前記樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤としてのブタンガス(イソブタン及びノルマルブタンを組成とするもの)3.0質量部を前記第1押出機に圧入し、溶融物と、前記ブタンガスとを混合して発泡剤含有溶融物を得た。
そして、該発泡剤含有溶融物を第1押出機から第2押出機(直径150mm)に供給し、前記発泡剤含有溶融物を冷却して前記第2押出機から押し出される発泡剤含有溶融物の温度(「樹脂温度」ともいう。)を176℃にし、サーキュラーダイを用いて前記発泡剤含有溶融物を押出し発泡させ発泡体を得た。次に、該発泡体の内外に設置した空冷リングで押出直後の該発泡体にエアーを吹き付けて冷却し、筒状体を得た。得られた筒状体を押出方向に沿って切断し、坪量220g/m2 、厚み2.05mm、幅1050mmのポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡シート)を得た。
実施例1の発泡シートを上記試験に供した。
【0049】
得られた実施例1の発泡シートに関し、連続気泡率は11.5%、内部気泡径は253μm、ガラス転移温度は120.5℃であった。
また、スチレンの含有量は480ppm、トルエンの含有量は69ppm、エチルベンゼンの含有量は50ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.8であり、臭気センサーの数値は521であった。
【0050】
<実施例2>
樹脂温度を152℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに関し、連続気泡率は8.5%、内部気泡径は240μm、ガラス転移温度は120.2℃であった。
また、スチレンの含有量は400ppm、トルエンの含有量は51ppm、エチルベンゼンの含有量は45ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.4であり、臭気センサーの数値は498であった。
【0051】
<実施例3>
樹脂温度を188℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに関し、連続気泡率は17.2%、内部気泡径は440μm、ガラス転移温度は120.5℃であった。
また、スチレンの含有量は577ppm、トルエンの含有量は71ppm、エチルベンゼンの含有量は68ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.8であり、臭気センサーの数値は599であった。
【0052】
<実施例4>
第1押出機における最高到達温度を214℃に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに関し、連続気泡率は10.7%、内部気泡径は256μm、ガラス転移温度は120.3℃であった。
また、スチレンの含有量は398ppm、トルエンの含有量は56ppm、エチルベンゼンの含有量は53ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.4であり、臭気センサーの数値は502であった。
【0053】
<実施例5>
第1押出機における最高到達温度を285℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに関し、連続気泡率は10.5%、内部気泡径は255μm、ガラス転移温度は120.3℃であった。
また、スチレンの含有量は588ppm、トルエンの含有量は72ppm、エチルベンゼンの含有量は68ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.8であり、臭気センサーの数値は590であった。
【0054】
<実施例6>
消臭剤として、「ケスモンNS−100」の代わりに、「ケスモンNS−241」(東亞合成社製)を用いたこと、樹脂組成物100質量部に対して「ケスモンNS−241」を0.3質量部用いたこと、及び樹脂組成物100質量部に対して「ケスモンNS−70」を0.3質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
なお、連続気泡率は、8.8%であった。
得られた発泡シートに関し、スチレンの含有量は410ppm、トルエンの含有量は50ppm、エチルベンゼンの含有量は39ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.4であり、臭気センサーの数値は485であった。
【0055】
<実施例7>
消臭剤として、「ケスモンNS−70」の代わりに、「ケスモンNS−80」(東亞合成社製)を用いたこと、及び第1押出機における最高到達温度を280℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
なお、連続気泡率は、10.2%であった。
得られた発泡シートに関し、スチレンの含有量は580ppm、トルエンの含有量は60ppm、エチルベンゼンの含有量は62ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.8であり、臭気センサーの数値は588であった。
【0056】
<実施例8>
第1押出機における最高到達温度を300℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
得られた比較例1の発泡シートに関し、連続気泡率は11.7%、内部気泡径は255μm、ガラス転移温度は120.0℃であった。
また、スチレンの含有量は720ppm、トルエンの含有量は84ppm、エチルベンゼンの含有量は77ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は3.4であり、臭気センサーの数値は653であった。
【0057】
<比較例1>
樹脂温度を192℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに関し、連続気泡率は19.0%、内部気泡径は283μm、ガラス転移温度は120.0℃であった。
また、スチレンの含有量は520ppm、トルエンの含有量は70ppm、エチルベンゼンの含有量は55ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は3.4であり、臭気センサーの数値は650であった。
【0058】
<比較例2>
樹脂組成物100質量部に対して気泡調整剤を3.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに関し、連続気泡率は22.6%、内部気泡径は78μm、ガラス転移温度は119.6℃であった。
また、スチレンの含有量は550ppm、トルエンの含有量は66ppm、エチルベンゼンの含有量は52ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は3.8であり、臭気センサーの数値は720であった。
【0059】
<比較例3>
樹脂温度を193℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
なお、得られた発泡シートの連続気泡率は19.0%であった。
得られた発泡シートに関し、スチレンの含有量は408ppm、トルエンの含有量は55ppm、エチルベンゼンの含有量は55ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は2.8であり、臭気センサーの数値は597であった。
【0060】
<比較例4>
樹脂温度を194℃に変更したこと以外は、実施例7と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
なお、得られた発泡シートの連続気泡率は19.5%であった。
得られた発泡シートに関し、スチレンの含有量は621ppm、トルエンの含有量は61ppm、エチルベンゼンの含有量は48ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は3.6であり、臭気センサーの数値は670であった。
【0061】
<比較例5>
樹脂温度を194℃に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
なお、得られた発泡シートの連続気泡率は19.8%であった。
得られた発泡シートに関し、スチレンの含有量は783ppm、トルエンの含有量は91ppm、エチルベンゼンの含有量は84ppmであった。
さらに、6段階臭気強度の算術平均値は4.2であり、臭気センサーの数値は715であった。
【0062】
実施例及び比較例の第1押出機における最高到達温度(表では、単に「最高到達温度」と記載。)、連続気泡率、スチレン、トルエン及びエチルベンゼンの含有量、6段階臭気強度の算術平均値(表では、単に「臭気強度」と記載。)、並びに臭気センサーの数値(表では、単に「数値」と記載)を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示すように、実施例の発泡シートは、連続気泡率が19%以上である比較例と比較すると、第1押出機における最高到達温度が同程度でスチレン、トルエン及びエチルベンゼンの含有量が同程度となっているものの6段階臭気強度の算術平均値及び臭気センサーの数値が低い値を示した。
以上のことからも、本発明によれば、臭気が低減されたポリスチレン系樹脂発泡シートが得られることがわかる。
【0065】
また、第1押出機における最高到達温度が300℃となると、6段階臭気強度の算術平均値及び臭気センサーの数値が高くなることが上の表からもわかる。
以上のことからも、第1押出機における最高到達温度を290℃以下にすることが好ましいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が含有され且つ前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の合計量100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含有されてなるポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
連続気泡率が18%以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
臭気強度が3.0未満である請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートが成形されて得られることを特徴とする容器。
【請求項4】
ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が含有され且つ前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の合計量100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含有されてなるポリスチレン系樹脂発泡シートを作製するポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂、及び前記ポリフェニレンエーテル系樹脂を押出機内で溶融混合させた溶融物を該押出機から押出発泡させて連続気泡率が18%以下となるポリスチレン系樹脂発泡シートを作製することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項5】
前記押出機における最高到達温度が290℃以下となるように前記溶融物の押出発泡を実施する請求項4記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−197374(P2012−197374A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62857(P2011−62857)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】