説明

ポリテトラヒドロフランまたはTHFコポリマーを連続的に製造する際に所定の平均分子量Mnを変化させる方法

本発明の対象は、テトラヒドロフランをテロゲンおよび/またはコモノマーの存在で酸性触媒で重合させることによってポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを連続的に製造する際に所定の平均分子量Mnを変化させる方法であり、この場合には:a)テロゲンとテトラヒドロフランとのモル比またはテロゲンとテトラヒドロフランおよびコモノマーとのモル比を変化させ、b)次に、少なくとも1つの試料の平均分子量を測定し、c)こうして測定された平均分子量が変化により達成すべき平均分子量Mnからずれる場合には、既に形成されたポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを酸性触媒で少なくとも部分的に解重合し、d)解重合によって回収されたテトラヒドロフランを少なくとも部分的に重合に返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、テトラヒドロフランをテロゲンおよび/またはコモノマーの存在で酸性触媒で重合させることによってポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマーを連続的に製造する際に所定の平均分子量Mnを変化させる方法であって、テロゲンとテトラヒドロフランとのモル比を変化させ、次に重合中に少なくとも1つの試料の平均分子量を測定し、既に形成されたポリマーを酸性触媒で少なくとも部分的に解重合し、解重合によって回収されたテトラヒドロフランを少なくとも部分的に重合に返送する、上記した、所定の平均分子量Mnを変化させる方法である。
【0002】
ポリテトラヒドロフラン(以下、"PTHF")、ポリオキシブチレングリコールとも呼称される、は、プラスチック工業および合成繊維工業において、多方面に亘る中間生成物であり、特にポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーおよびポリアミドエラストマーを製造するためのジオール成分として使用される。それと共に、前記ポリテトラヒドロフランならびに多数のその誘導体は、多くの用途の場合に、例えば分散剤としてまたは古紙の脱色("脱インキ")の際の価値の高い助剤である。
【0003】
PTHFは、工業的に通常、テトラヒドロフラン(以下、"THF"と呼称する)を適当な触媒で試薬の存在で重合することによって製造され、この試薬の添加は、重合鎖の鎖長の制御ならびに平均分子量の調節を可能にする(連鎖停止試薬または"テロゲン")。この場合、制御は、テロゲンの種類および量を選択することによって行なわれる。適当なテロゲンを選択することにより、付加的な官能基は、重合体鎖の一端または両端に導入されてよい。
【0004】
即ち、例えばカルボン酸またはカルボン酸無水物をテロゲンとして使用することにより、PTHFのモノエステルまたはジエステル(以下、"PTHFエステル"と呼称する)を製造することができる。引き続く、鹸化またはエステル交換によって初めて、PTHFそれ自体が生じる。従って、この製造は、2工程のPTHF法と呼称される。
【0005】
PTHFは、1工程でテロゲンとしての水、1,4−ブタンジオールまたは低分子量PTHFを用いて酸性触媒でTHF重合することによって製造されてもよい。
【0006】
別のテロゲンは、連鎖停止試薬として作用するだけでなく、PTHFの成長する重合体鎖中にも組み入れられる。前記のPTHFは、テロゲンの機能を有するだけでなく、同時にコモノマーの機能も有し、したがって同じ権限でテロゲンとも呼称されるし、コモノマーとも呼称される。このようなコモノマーの例は、2個のヒドロキシ基を有するテロゲン、例えばジアルコールである。これは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは低分子量PTHFであることができる。
【0007】
更に、コモノマーとして、環状エーテル、有利に3員環、4員環または5員環、例えば1,2−アルキレンオキシド、例えば酸化エチレンまたは酸化プロピレン、オキセタン、置換オキセタン、例えば3,3−ジメチルオキセタン、ならびにTHF誘導体、例えば2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、3,3−ジメチルテトラヒドロフランまたは3,4−ジメチルテトラヒドロフランが適している。
【0008】
このようなコモノマーまたはテロゲンの使用は、水、1,4−ブタンジオールおよび低分子量PTHFを除外してテトラヒドロフランコポリマー、以下、THFコポリマーと呼称される、の製造を導き、こうしてPTHFの化学的な変性を可能にする。
【0009】
主に、上記の2工程法は、大工業的に連続的に実施され、この場合THFまたはTHFおよびコモノマーは、例えば一般に不均質、即ち十分に溶解されていない触媒の存在で、最初にポリテトラヒドロフランエステルに重合され、引続きPTHFに加水分解される。通常、THF重合の前記形で1工程法より高いTHF変換率が達成される。
【0010】
PTHF、PTHFエステルならびにTHFコポリマーのエステルは、後加工工業の使用に応じて異なるモル質量が必要とされる。しかし、市場によって需要とされるそれぞれのモル質量にとって大工業的な製造装置を準備したままにしておくことは、不経済である。これは、製造を連続的に行なわなければならない場合に言えることである。従って、種々のモル質量の生産は、一般に1つの装置中で行なわれるが、しかし、この装置は、望ましくない混合産物を回避させるために、モル質量が変化した際に費用を掛けて空にしなければならず、洗浄しなければならず、さらに改めて処方を変えて再び運転しなければならない。この方法は、時間がかかるだけでなく、財源も必要とする。その上、固体の重合触媒を使用する場合には、それぞれ運転開始および運転終了の際に触媒の損傷を心配しなければならない。
【0011】
前記の公知技術水準から出発して、本発明は、異なる平均モル質量Mnを有するポリテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランコポリマーおよびそのエステルを順次に経済的に製造装置中で製造することができ、その際前記欠点を生じない、連続的に運転することができる方法を提供するという課題を基礎とした。
【0012】
ところで、
a)テロゲンとテトラヒドロフランとのモル比またはテロゲンとテトラヒドロフランおよびコモノマーとのモル比を変化させ、
b)次に、少なくとも1つの試料の平均分子量を測定し、
c)こうして測定された平均分子量が変化により達成すべき平均分子量Mnからずれる場合には、既に形成されたポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを酸性触媒で少なくとも部分的に解重合し、
d)解重合によって回収されたテトラヒドロフランを少なくとも部分的に重合に返送することを特徴とする、(製造装置中で)テトラヒドロフランをテロゲンおよび/またはコモノマーの存在で酸性触媒で重合させることによってポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを連続的に製造する際に所定の平均分子量Mnを変化させる方法が見い出された。
【0013】
定常的な状態が再び達成されるまで、即ち新たな所定の分子量Mn*が安定した状態に調節されるまで、生じるPTHF、生じるTHFコポリマーまたはその生じるエステルは、解重合され、および返送される。この方法は、殆んど損失のないTHFならびにコモノマーを重合に返送し、こうして物質費を少なく維持することができる。この新規方法は、前記ポリマーの製造の際に特に経済的な分子量の転換を可能にする。
【0014】
重合は、自体公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第1226560号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19755415号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第2916653号明細書中に記載されている。この重合は、一般に0〜100℃、特に20℃〜70℃の温度で実施され、この場合反応温度は、重混合物のそれぞれの温度に対応するものとする。
【0015】
使用される圧力は、一般に重合の結果にとって重要ではなく、それ故に、一般に大気圧または重合系の固有圧力下で作業される。このことを除外して、THFと易揮発性の1,2−アルキレンオキシドとの共重合が形成され、この共重合は、好ましくは圧力下で実施される。通常、圧力は、0.1〜10バール、有利に0.9〜3バールである。
【0016】
本発明による方法は、PTHFおよびTHFコポリマーならびにそのエステルを所定の平均分子量ではあるが、変更可能な平均分子量およびテロゲンの高い変換率で一定の製品品質で製造装置中で取得することを可能にする。テロゲンおよび/またはコモノマーの改善された利用は、原料の経済的な利用に貢献し、経済的な方法を生じる。
【0017】
PTHFおよびTHFコポリマーのための本発明による方法の場合には、第1の工程で、THFを有利に無水酢酸および場合によってはコモノマーの存在で有利に不均一な酸性触媒で重合させることにより、PTHFのモノエステルおよび/またはジエステル、またはTHFコポリマーが製造される。
【0018】
適当な触媒は、例えば漂白土を基礎とする触媒であり、この漂白土は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第1226560号明細書中に記載されている。漂白土、殊に活性化されたモンモリロン石は、成形体として固定床中または懸濁液中で使用されてよい。
【0019】
更に、THFの重合のためには、殊に元素の周期律表の第3族、第4族、第13族および第14族の混合された金属酸化物を基礎とする触媒が公知である。即ち、特開平04−306228号公報には、THFを無水カルボン酸の存在で、整数のxおよびyが1〜3の範囲内にある式Mxyで示される金属酸化物からなる混合された金属酸化物で重合させることが記載されている。例として、Al23−SiO2、SiO2−TiO2、SiO2−ZrO2およびTiO2−ZrO2が挙げられる。ヘテロポリ酸、殊にH3PW1240およびH3PMo1240は、担体上で触媒として使用されてよいが、しかし、有利には、担体なしに触媒として使用されてもよい。
【0020】
米国特許第5208385号明細書には、無定形の珪素/アルミニウム混合酸化物を基礎とする触媒が開示されている。また、SnO2/SiO2、Ga23/SiO2、Fe23/SiO2、In23/SiO2、Ta25/SiO2およびHfO2/SiO2を基礎とする混合酸化物は、公知である。前記触媒は、有利に共沈/ゾルゲル法により製造される。担持触媒は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4433606号明細書中に開示されており、この場合酸化タングステンまたは酸化モリブデンは、例えばZrCO2、TiO2、HfO2、Y23、Fe23、Al23、SnO2、SiO2またはZnO上に施こされている。更に、担体が5000ppm未満のアルカリ金属濃度を有するようなZrO2/SiO2触媒が推奨される。
【0021】
酸性イオン交換体を基礎とする触媒は、無水酢酸の存在でのTHF、殊にα−フルオロスルホン酸を含有するポリマー(例えば、Nation(登録商標))の重合に関連して米国特許第4120903号明細書中に記載されている。更に、金属およびペルフルオロアルキルスルホン酸陰イオンを含有する触媒は、THF重合に適している。
【0022】
それと共に、重合触媒として、なおさらに、例えばWO 94/05719、WO 96/23833、WO 98/51729、WO 99/12992およびドイツ連邦共和国特許出願公開第19513493号明細書中に開示された、場合によっては活性化された粘土鉱物は、公知である。また、ゼオライトは、触媒として適当であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第4316138号明細書中に記載されている。最後に、なお硫酸塩処理された酸化ジルコニウム、硫酸塩処理された酸化アルミニウム、担持されたヘテロポリ酸および担持されたフッ化水素アンモニウム(NH4F*HF)または五弗化アンチモンは、適当な重合触媒として公知である。好ましくは、本発明による方法は、活性化された漂白土を用いて実施される。
【0023】
触媒の前処理として、例えば80〜200℃、有利に100〜180℃に加熱されたガス、例えば空気または窒素での乾燥がこれに該当する。
【0024】
均質な重合触媒としての使用には、ヘテロポリ酸が適している。触媒としてのヘテロポリ酸の存在でのTHFの重合または共重合は、例えば欧州特許出願公開第126471号明細書中に記載されているような公知の方法で行なわれる。本発明により使用されるヘテロポリ酸は、イソポリ酸とは異なり少なくとも2個の種々の中心原子を有する無機ポリ酸である。ヘテロポリ酸は、部分的混合された無水物としての、金属、例えばクロム、モリブデン、バナジウムおよびタングステンならびに非金属、例えば砒素、沃素、燐、セレン、珪素、硼素およびテルルの多塩基性の弱酸素酸から生成される。例として、ドデカタングステン燐酸H3(PW1240)またはドデカモリブドリン酸H3(PMo1240)が挙げられる。ヘテロポリ酸は、アクチノイドまたはランタノイドを第2の中心原子として含有することができる(Z. Chemie 17 (1977), 第353〜357頁または19 (1979), 第308頁参照)。このヘテロポリ酸は、一般に式H8-n(Yn1940)により記載することができ、その際、n=元素Y(例えば硼素、珪素、亜鉛)の原子価である(Heteropoly- und Isopoly-oxomtalates, Berlin; Springer 1983参照)。本発明による方法には、触媒として燐酸タングステン酸、燐モリブデン酸、珪素モリブデン酸および珪素タングステン酸が特に好適である。ドデカウォルフラマト燐酸および/またはデカモリブダト燐酸は、好ましい。更に、均質な重合触媒は、例えばフルオロスルホン酸またはペルクロロ酸である。
【0025】
エーテル過酸化物の形成を阻止するために、重合は、有利に不活性ガス雰囲気下で実施される。不活性ガスとしては、例えば窒素、二酸化炭素または希ガスを使用することができ、好ましくは窒素が使用される。
【0026】
本方法は、経済的な理由から連続的に運転される。
【0027】
テロゲンは、連鎖停止を生じるので、使用されるテロゲン量により製造すべきポリマーの平均分子量は、制御することができる。テロゲンとして、C2〜C20−カルボン酸無水物および/またはプロトン酸とC2〜C12−カルボン酸無水物との混合物は、適している。プロトン酸は、有利に反応系中で可溶性である有機酸または無機酸である。例は、C2〜C12−カルボン酸、例えば酢酸またはスルホン酸、硫酸、塩酸、燐酸である。
【0028】
好ましくは、無水酢酸および/または酢酸が使用される。従って、第1の工程、重合、において、PTHFのモノエステルおよびジエステルまたはTHFコポリマーが形成される。
【0029】
重合反応器に供給されるエダクト混合物(供給原料)中のテロゲンとして使用される無水酢酸の濃度は、使用されるTHFに対して0.03〜30モル%、有利に0.05〜20モル%、特に有利に0.1〜10モル%である。付加的に酢酸を使用する場合には、進行する重合の供給原料中でのモル比は、通常、使用される無水酢酸に対して1:20〜1:20000である。
【0030】
本発明による方法で一定の平均分子量Mnを使用する場合には、流入量中の無水酢酸のモル分数は、次の式Iによって算出される。
【0031】
【数1】

【0032】
上記式中、
XACは、流入量中の無水酢酸のモル分数であり、
UTHFは、THFの変換率であり、
UACは、無水酢酸の変換率であり、
MPTHFは、PTHFの目的分子量[g/mol]である。
【0033】
例えば、50%のTHF変換率および90%の無水酢酸変換率の場合に2000g/molのモル質量を有するポリマーを得る場合には、式(I)による重合流入量中での無水酢酸のモル分数は、0.020でなければならない。
【0034】
無水酢酸、THFおよび少なくとも1つのコモノマーとの共重合のためには、式(I)は、相応する式を設定することができる。
【0035】
モル分数に対して他の選択可能な方法によれば、XAc/(1−XAc)により算出することができる、無水酢酸とTHFとのモル比が使用されてもよい。
【0036】
THFコポリマーのモノエステルおよびジエステルは、開環重合させることができるコモノマーとしての環状エーテル、有利に3員環、4員環および5員環、例えば1,2−アルキレンオキシド、例えば酸化エチレンまたは酸化プロピレン、オキセタン、置換オキセタン、例えば3,3−ジメチルオキセタン、THF誘導体2−メチルテトラヒドロフランまたは3−メチルテトラヒドロフランの付加的な使用によって製造することができ、この場合には、メチルテトラヒドロフランまたは3−メチルテトラヒドロフランは、特に有利である。同様に、C2〜C12−ジオールをコモノマーとして使用することは、可能である。これは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは低分子量PTHFであることができる。
【0037】
本発明による固定床運転形式において、重合反応器は、塔底運転形式で運転することができ、即ち反応混合物は、下方から上方へ反応器に導通されるか、または細流運転形式では、即ち反応混合物は、上方から下方へ反応器に導通される。THFとテロゲンおよび/またはコモノマーとからなるエダクト混合物(供給原料)は、重合反応器に連続的に供給され、この場合触媒負荷量は、0.01〜2.0kg THF/(1*h)、有利に0.02〜1.0kg THF/(1*h)、特に有利に0.04〜0.5kg THF/(1*h)である。
【0038】
更に、重合反応器は、真っ直ぐの通路で、即ち生成物の返送なしに運転されることができるか、または循環路内で、即ち反応器を離れる重合混合物の一部分は、循環路内に導かれ、運転されることができる。循環路運転形式の場合、循環流と供給流との比は、150:1より小さいかまたは150:1に等しく、有利に100:1より小さく、有利に60:1より小さい。
【0039】
重合工程からのTHF含有搬出流は、濾過され、重合触媒の痕跡は、引き留められ、蒸留によるTHF分離に引き続いて供給される。しかし、最初に未反応のTHFは、分離されてもよく、次に残留するPTHFのモノエステルまたはジエステルは、触媒残留物から濾過によって取り除かれてもよい。濾過装置として、例えば普通の工業用積層フィルターが使用される。未反応のTHFは、重合に返送される。
【0040】
こうして得られたポリマー中のエステル基は、第2の工程で転移されなければならない。通常の方法は、アルカリ金属触媒によって開始される、低級アルコールとの反応である。アルカリ金属触媒を用いてのエステル交換は、公知技術水準から公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10120801号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第19742342号明細書に記載されている。好ましくは、メタノールが低級アルコールとして使用され、ナトリウムメチラートは、有効なエステル交換触媒として使用される。
【0041】
この方法では、重合混合物のテロゲン含量に応じて、250〜10000ダルトンの平均分子量を有するPTHFのモノエステルおよび/またはジエステルまたはTHFのモノエステルおよび/またはジエステルを意図的に製造することができ、特に本発明による方法では、500〜5000ダルトン、特に有利に650〜4000ダルトンの平均分子量を有する当該PTHFエステルが製造される。
【0042】
"平均分子量"または"平均モル質量"の表現は、本明細書中においては、ポリマーの分子量の数平均Mnであり、その測定は、例えばDIN 53240による湿式化学的OH数測定によって行なわれるかまたは本明細書中に記載された方法に相応して行なわれる。試料採取および平均分子量の測定は、進行する重合中に行なわれ、直接に重合反応器から行なうことができる。しかし、エステル基の分離(エステル交換)後に平均分子量を測定することも可能である。
【0043】
試料の平均分子量の測定により、モル質量の変化によって達成すべき平均分子量がなお達成されていないことが判明する場合には、既に形成されたポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルは、解重合される。ポリマーの再分解(解重合)には、酸性触媒、有利に重合に適する前記触媒が使用される。好ましくは、特殊な反応器中で実施される解重合は、重合にも使用される触媒で実施される。これは、固定配置された触媒の場合には、固定床反応器中または組み込まれた固定触媒を備えた塔中で行なうことができる。しかし、固体触媒の場合には、例えば載置された塔を備えた攪拌型反応器中でこの固体触媒を懸濁して使用することが好ましい。均質で可溶性の触媒を使用する場合には、完全混合反応器(durchmischter Reaktor)が同様に好ましい。
【0044】
ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルの解重合は、一般に0.1〜10バール(絶対)、有利に0.7〜3バールおよび60〜300℃、有利に100〜250℃、特に有利に130〜220℃の温度で実施される。解重合は、ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマーのエステルが解重合される場合には、ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマーのエステルに対して有利に水0.0001〜10質量%、特に有利に0.0001〜1質量%の存在で実施される。
【0045】
解重合の反応搬出物、テトラヒドロフラン、は、THFコポリマーまたはそのエステルコモノマーの解重合の際に一般に蒸留により取得され、全部または部分的に、有利に少なくとも80質量%の質量分が重合に返送されてよい。THFコポリマーおよびそのエステルを製造する場合には、特に留意に解重合の際に同様に生じるコモノマーは、全部または部分的に、有利に少なくとも80質量%がTHFと一緒に重合に返送される。
【0046】
THFは、有利に重合への返送前に場合によっては存在する低沸点物、例えば2,3−ジヒドロフラン、アクロレインおよびブタジエンが取り除かれる。この場合、解重合によって回収されるTHFは、有利に同じ蒸留に導入されてよく、その際に重合処理で未反応の返送されたHTFは、蒸留される。
【0047】
本発明による方法により得られたポリマーは、有機イソシアネートとの反応によって、自体公知の方法でポリウレタンおよびポリウレタン尿素の製造、殊に熱可塑性ウレタン、スパンデックス、熱可塑性エーテルエステルまたはコポリエーテルアミドの製造に使用されることができる。従って、さらに、本発明の対象は、例えば弾性繊維、また、前記のスパンデックスまたはエラスタン(Elastha)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはポリウレタン注型エラストマー(Cast elastomers)の製造に必要とされるようなポリウレタンポリマーまたはポリウレタン尿素ポリマーを製造するための、本発明による方法により製造されたポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマーの使用である。
【0048】
この場合、自体公知の方法でPTHFまたはTHFコポリマーは、例えば特開平07−278246号公報中に記載されているように、最初に有機ジイソシアネートと過剰量で反応され、次に有機ジアミンと反応される。
【0049】
次の実施例は、本発明を詳説するが、しかし、これに限定されるものではない。
【0050】
実施例
分子量測定
全部のPTHF分子の質量をモル量によって除することにより定義された、数平均分子量の形での平均分子量Mnは、ポリテトラヒドロフラン中のヒドロキシル価の測定によって測定される。ヒドロキシル価は、1gの物質のアセチル化の際に結合された酢酸量と等価であるmgでの水酸化カリウム量である。このヒドロキシル価は、過剰量の無水酢酸での存在するヒドロキシル基のエステル化により決定される。
H−[O(CH2)4]n−OH + (CH3CO)2 → CH3CO−[O(CH2)4]n−O−COCH3 + H2
反応後、過剰量の無水酢酸は、次の反応式により水で加水分解され、
(CH3CO)2O + H2O→2CH3COOH
酢酸として苛性ソーダ液で再滴定される。
【0051】
実施例1
THF/無水酢酸混合物を、1対0.024のモル比で連続的にSuedchemie AG社、Muenchen在のベントナイト K触媒K 306で、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2916653号明細書の実施例1bの記載と同様に40℃および1050ミリバール(絶対)で不活性ガスとしての窒素雰囲気下で5時間の滞留時間で反応させた。反応搬出物を蒸留により1.5バール/130℃の塔底温度で、主にPTHFジアセテートからなる高沸点部分と主にTHFからなる低沸点部分とに分離した。
【0052】
得られたPTHFジアセテートをメタノール中で(全バッチ量に対して約0.1質量%)ナトリウムメチラートでメチルアセテートおよびPTHFにエステル交換した。酸性イオン交換体(Lanxess社のLewatit)を用いてのナトリウムイオンの分離後、PTHFから温度/圧力蒸留により酢酸メチルおよび過剰のメタノールを取り除いた。得られたPTHFの平均分子量は、2000であった。重合の際に未反応のTHFから蒸留ユニット中で無水酢酸および酢酸を取り除き、このTHFを再び蒸留処理に導入した。
【0053】
4週間の反応器の運転後、THFと無水酢酸とのモル比は、1対0.065に変化した。試料採取および平均分子量の測定を繰り返すことにより、3日間で生じるPTHFの平均モル質量は、連続的に1000に減少し、さらに、4週間に亘る後運転で一定に保たれた。しかしながら、3日間で捕集されたPTHFを攪拌型反応器中で常圧および180〜200℃の温度で既に重合に使用されたベントナイト(Suedchemie AG社、Muenchen在のK触媒 K 306)で粉末形で反応させ、この場合PTHFは、反応器の塔底部中に連続的に導入され、生じるTHFは、載置された塔を経て留出された。この場合には、約1kg PTHF/0.1kg 触媒×hが反応された。THFの収量は、実際に定量的であった。こうして得られたYHFを完全に重合に返送し、この場合には、引続き、望ましくない性質の変化が製造されたPTHFに示されることはなかった。重合触媒の活性が低下することもなかった。
【0054】
2000〜1000の望ましくないモル質量の前記の再分解で、THFに対するPTHF収率は、99%を上廻った。望ましくないモル質量の再分解なしでは、95%未満の収率が達成され、このことは、大工業的プロセスにとって言うに値する向上された物質費を意味するであろう。
【0055】
実施例2
THFの重合を実施例1と同様に実施し、モル質量の変化の際に生じるPTHFの再分解を、粉末状の酸性酸化アルミニウムを用いて190〜210℃で実施し、実施例1と同じ結果を得た。2000〜1000の望ましくないモル質量の前記の再分解で、THFに対するPTHF収率は、99%を上廻った。
【0056】
実施例3
THFの重合を実施例1と同様に実施し、モル質量の変化の際に生じるPTHFの再分解を、酸性の二酸化珪素粉末で190〜210℃で実施し、実施例1と同じ結果を得た。2000〜1000の望ましくないモル質量の前記の再分解で、THFに対するPTHF収率は、99%を上廻った。
【0057】
実施例4
THFの重合を実施例1と同様に実施し、モル質量の変化の際に生じるPTHFの再分解を、Rohm und Haas社の酸性のイオン交換体Amberlyst XN 1010で130℃で実施し、実施例1と同じ結果を得た。2000〜1000の望ましくないモル質量の前記の再分解で、THFに対するPTHF収率は、99%を上廻った。
【0058】
実施例5
THFの重合を実施例1と同様に実施し、モル質量の変化の際に生じるPTHFの再分解を、ウォルフラマト燐酸を用いて150〜160℃で1000kg PTHF/1kg 触媒×hの触媒負荷量で実施し、実施例1と同じ結果を得た。2000〜1000の望ましくないモル質量の前記の再分解で、THFに対するPTHF収率は、99%を上廻った。
【0059】
実施例6
実施例1と同様に、PTHFジアセテートを製造し、実施例1に記載された条件下で蒸留により低沸点物を取り除いた。1:0.024から1:0.065へのTHF対無水酢酸のモル比の変化後に生じるジアセテートを、3日間で捕集し、常圧および180〜200℃の温度でSuedchemie AG社、Muenchen在のベントナイト K触媒K 306で粉末の形で反応させ、この場合PTHFジアセテートは、反応器の塔底部中に導入され、生じるHTFは、載置された塔を経て留出された。この場合には、約1kg PTHFジアセテート/0.1kg 触媒×hが反応された。THFの収量は、殆んど定量的であった。高沸点物、例えば酢酸およびブタンジオールジアセテートの蒸留による分離後、THFを重合に返送した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラヒドロフランをテロゲンおよび/またはコモノマーの存在で酸性触媒で重合させることによってポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを連続的に製造する際に平均分子量Mnを変化させる方法において、
a)テロゲンとテトラヒドロフランとのモル比またはテロゲンとテトラヒドロフランおよびコモノマーとのモル比を変化させ、
b)次に、少なくとも1つの試料の平均分子量を測定し、
c)こうして測定された平均分子量が変化により達成すべき平均分子量Mnからずれる場合には、既に形成されたポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを酸性触媒で少なくとも部分的に解重合し、
d)解重合によって回収されたテトラヒドロフランを少なくとも部分的に重合に返送することを特徴とする、ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルを連続的に製造する際に平均分子量Mnを変化させる方法。
【請求項2】
解重合によって回収されるテトラヒドロフランから返送前に低沸点物および/または高沸点物を取り除く、請求項1記載の方法。
【請求項3】
重合および解重合に同じ触媒を使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
触媒を、漂白土、元素の周期律表の第3族、第4族、第13族および第14族の混合された金属酸化物、担持された酸化タングステンまたは酸化モリブデン、酸性のイオン交換体、ゼオライトおよび/または硫酸塩処理された酸化ジルコニウムから選択する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマー、ポリテトラヒドロフランのモノエステルまたはジエステル、またはテトラヒドロフランコポリマーのモノエステルまたはジエステルの解重合を0.1〜10バールおよび60〜300℃の温度で実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ポリテトラヒドロフランのジエステルまたはテトラヒドロフランコポリマーのジエステルの解重合を水の存在で実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
テロゲンとして無水酢酸を使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリウレタン尿素ポリマーを製造するための、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により製造された、ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマーの使用。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項の記載により製造されたポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランコポリマーを、熱可塑性ポリウレタン、スパンデックス、熱可塑性エーテルエステルまたはコポリエーテルアミドの製造に使用する、請求項10記載の使用。

【公表番号】特表2010−516822(P2010−516822A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545841(P2009−545841)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063571
【国際公開番号】WO2008/086919
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】