説明

ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法、該方法で製造されるポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料、およびそれを用いた着色組成物

【課題】カラー液晶表示装置および固体撮像素子に用いられるカラーフィルターに使用すると、表示品位の優れた特に高い明度を有するカラーフィルターを得ることのできるポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料とその製造方法を提供する。
【解決手段】純度96%以上の粗製銅フタロシアニンを原料として用いることを特徴とするポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法。さらには、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料中のポリハロゲン化銅フタロシアニン1分子中の臭素原子の平均個数が11から15個、塩素原子の平均個数が1から4個であることを特徴とする上記ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法に関し、更に詳細には、分散性が極めて良好で優れた粘度特性を有し、カラー液晶表示装置および固体撮像素子に用いられるカラーフィルターに使用すると、表示品位の優れた、特に高い明度を有するカラーフィルターを提供することのできる上記顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銅フタロシアニン系顔料は、ハロゲン基数により色相が青色から緑色までの色相を有し、特に、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、緑色顔料として塗料、印刷インキ、プラスチック用着色剤として使用されてきた。また、近年は、液晶ディスプレイ用のカラーフィルター用着色剤やインクジェットインク記録用インキ着色剤などにも使用されている。ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料であるC.I.Pigment Green 7、同36は、カラーフィルターの着色画素部のうち、緑色画素部を形成するための緑色顔料として使用されており、調色のために必要に応じて、黄色顔料が併用されている。
【0003】
そして、液晶ディスプレイがモニター用途から大型カラーテレビ用途に拡大するに従って、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターの高いコントラスト比や高明度化が求められるようになっている。その結果、カラーフィルターの高いコントラスト比を実現するために顔料は印刷インキ、グラビアインキ、着色剤で通常使用されているレベルよりさらに微細化、整粒化が行われている。しかし、顔料の微細化、整粒化のみでは、カラーフィルターの高明度化は実現することは不可能である。
【0004】
ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法は、粗製銅フタロシアニンのハロゲン化による粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンの製造と、これを鮮明で着色力の大きい顔料にする顔料化からなる。粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンの製造方法としては、塩化アルミニウム及び塩化ナトリウムの共融塩中に粗製銅フタロシアニンを溶解させてハロゲン化する方法(下記、特許文献1を参照)があげられる。また、他の方法としては、四塩化チタン溶媒中で粗製銅フタロシアニンと塩化アルミニウムの付加物を生成させてハロゲン化する方法(下記、特許文献2を参照)や、クロルスルホン酸中に粗製銅フタロシアニンを溶解させてハロゲン化する方法(下記、特許文献3を参照)などがあげられる。
【特許文献1】特開昭52−155625号公報
【特許文献2】特開平1−279975号公報
【特許文献3】米国特許明細書第2662085号 一般に、合成直後の粗製銅フタロシアニンには、未反応原料や原材料中に含まれた、あるいは合成時に副成されたフタル酸誘導体類(例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタルアミド酸、フタルイミド、イソインドリノンなど)や尿素系化合物(尿素あるいはその重合物)を中心とする化合物や銅化合物、あるいは遊離銅や残塩類(アンモニウム塩類、その他)などが既知物質として挙げられるものの、その他にも数多く不明物質が含まれている。これらの反応不純物は、酸処理、アルカリ処理などの方法により粗製銅フタロシアニンの段階である程度まで精製される。しかし、粗製銅フタロシアニンをハロゲン化する場合、主にフタル酸誘導体類が不純物として残っているとこれらも同時にポリハロゲン化され、さらに不純物の種類や顔料中の不純物の割合が増加することとなる。
【0005】
例えば、特開2004−331922号公報には、ハロゲン化銅フタロシアニン中の遊離銅を精製によって取り除く方法が記載されている。しかしながら、ハロゲン化銅フタロシアニン中の遊離銅を減らすだけでは、カラーフィルターの高明度化を達成するような顔料を得ることは不可能であった。
【特許文献4】特開2004−331922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラー液晶表示装置および固体撮像素子に用いられるカラーフィルターに使用すると、表示品位の優れた特に高い明度を有するカラーフィルターを得ることのできるポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の目的を達成すべく鋭意研究の結果、純度の高い銅フタロシアニンをポリハロゲン化し顔料化することで、ポリハロゲン化の後での精製では得ることの出来ない高明度の着色皮膜が得られる本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、純度96%以上の銅フタロシアニンを原料として用いることを特徴とするポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法に関する。
【0009】
さらに本発明は、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料中のポリハロゲン化銅フタロシアニン1分子中の臭素原子の平均個数が11から15個、塩素原子の平均個数が1から4個であることを特徴とする上記顔料に関する。
【0010】
さらに本発明は、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の平均一次粒子径が10から100nmである上記顔料に関する。
【0011】
さらに本発明は、上記顔料と顔料担体とを含むことを特徴とする着色組成物に関する。
さらに本発明は、上記顔料と黄色顔料とを含むことを特徴とする着色組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明で得られた、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の顔料担体とともに分散体としたものは、塗工に適する低い粘度特性を有し、得られた皮膜は、高い明度、鮮明性及び高透過率を有する。
【0013】
本発明で得られたポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、カラー液晶表示装置や固体撮像素子に用いられるカラーフィルターに使用されるのに好ましい吸収波長特性を有しており、カラーフィルターに使用した場合、その特性として重要な特に明度の高い着色皮膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に発明の実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
本発明で使用する粗製銅フタロシアニンは、純度が96%以上、好ましくは97%以上の銅フタロシアニンである。粗製銅フタロシアニンの製造方法は、従来公知の方法から選択でき、特に限定されない。また、粗製銅フタロシアニンのポリハロゲン化方法は、従来公知の方法から選択でき、特に限定されない。
【0015】
例えば、純度が96%以上の粗製銅フタロシアニンは、尿素法(ワイラー法)を加圧下で行う方法、ニトリル法で合成した銅フタロシアニンを、脱溶剤後、水中に分散させて酸またはアルカリの存在下加熱処理し、濾別後水洗または湯洗して純度を96%以上に調整する方法、反応条件に拘らずに合成した銅フタロシアニンを従来公知の精製方法、例えば、脱溶剤後有機溶剤に分散させ、必要により酸またはアルカリの存在下に加熱処理し、目的の純度になるまでこの工程を繰り返す方法、あるいは脱溶剤後、硫酸等の強酸中に溶解させるか半溶解させ、水などの貧溶媒中に析出させ再結晶させる方法などによって製造することができる。工業的には、尿素法(ワイラー法)を加圧下で行い、合成した銅フタロシアニンを洗浄する方法が有利である。加圧下で合成した銅フタロシアニンは、常圧下で合成した銅フタロシアニンに比べて、銅フタロシアニン結晶内部への反応不純物の取り込み量が少なく、通常の洗浄方法により容易に高純度化できる利点がある。
【0016】
粗製銅フタロシアニンのポリハロゲン化方法は、公知慣用の製造方法、例えば、塩化アルミニウム法、四塩化チタン法、クロルスルホン酸法等によって製造することができる。いずれの製造方法においても、反応終了後、得られた反応混合物を水、あるいは塩酸等の酸性水溶液中に投入すると、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンが沈殿する。そしてこれを濾過後、水、あるいは硫酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、もしくは水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で洗浄し、必要に応じて、アセトン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤洗浄後、乾燥して粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを得ることができる。
【0017】
さらに、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを、必要に応じて、アトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等の粉砕機で乾式粉砕し、次いで、湿式粉砕することで顔料化を行う。
【0018】
本発明の湿式粉砕は、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを磨砕剤である水溶性無機塩類と湿潤剤である有機溶剤と共に粘長な液状組成物として粉砕する工程である。
【0019】
本発明において用いられる磨砕剤である水溶性無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0020】
水溶性無機塩の使用量は、多い方が顔料の摩砕効果は高いが、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンに対して1〜50倍重量であることが好ましく、生産性の点で1〜20倍重量であることがより好ましい。さらに、水溶性無機塩に含まれる水分は1%以下であることが好ましい。
【0021】
また、水溶性有機溶剤の使用量は、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンに対して0.5〜3倍重量であることが好ましく、1〜2倍重量であることがより好ましい。
【0022】
本発明において用いられる湿潤剤としては、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンと接触させることで、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンが湿潤して摩砕効果が増大し微細化が促進するものであれば特に制限はないが、水溶性有機溶剤が好ましい。
【0023】
水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテール、ジエチレングリコールモノエチルエーテール、ジエチレングリコールモノブチルエーテール、プロピレングリコール、プロピレンゴリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。これらは、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0024】
また、水溶性有機溶剤の使用量は、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンに対して0.1〜10倍重量であることが好ましく、1〜4倍重量であることがより好ましい。
【0025】
湿式粉砕には、少量用いることで粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンに吸着して廃水中に流失しないならば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘササン、ハロゲン化炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を上記水溶性有機溶剤と併用しても良い。これらは、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0026】
本発明において使用する湿式粉砕装置については特に制限はないが、トリミックス(井上製作所製)、スーパーミックス(新栄機械製)や摩砕効果が高いニーダー(井上製作所製)等の装置を用いることができる。
【0027】
本発明における湿式粉砕装置の運転条件については特に制限はないが、粉砕メディアによる磨砕を効果的に進行させるため、装置がニーダーの場合は、以下の運転条件が好ましい。すなわち、装置内のブレードの回転数は10〜200rpmが好ましく、2軸の回転比が相対的に大きいほうが、摩砕効果が大きく好ましい。また、運転時間は1〜24時間が好ましく、装置の内温は50〜150℃が好ましい。また、粉砕メディアである水溶性無機塩は、粉砕粒度が5〜50μmで、粒子径の分布がシャープで、かつ球形が好ましい。
【0028】
本発明においては、湿式粉砕時に必要に応じて樹脂、界面活性剤、高級脂肪酸を添加してもよい。
【0029】
使用可能な樹脂としては特に制限はないが、ロジン、ロジン誘導体、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ゴム誘導体、タンパク誘導体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレン樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアマイド樹脂、ポリイミド樹脂、アルキッド樹脂、ゴム系樹脂、セルロース類、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂を挙げることができる。また、界面活性剤としても特に制限はなく、アニオン性、中性、カチオン性のいずれの界面活性剤を用いても良い。
【0030】
高級脂肪酸としては、炭素数が多い酸でグリセリンとの反応で油脂を構成し、広く動物脂肪や植物油の成分として含まれる、親油性の強い水に難溶の酸であり、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸等がある。高級脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸が好ましく、さらに20℃〜30℃で液体である不飽和高級脂肪酸が好ましい。これに対して、炭素数の少ない脂肪酸には酢酸、吉草酸、ラク酸があり、遊離酸の状態になり親水性である。顔料を湿潤させて摩砕効果を増大させ、微細化を促進する脂肪酸としては、親油性の強い高級脂肪酸が適している。また、湿式粉砕で使用する水溶性無機塩類および水溶性有機溶剤は、水で洗浄することにより顔料から分離するが、炭素数の少ない親水性の脂肪酸は水中に溶解してしまい、BOD、CODの増加の要因になるので好ましくない。高級脂肪酸は、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0031】
本発明においては、湿式粉砕前に必要に応じて粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを溶剤処理してもよい。
【0032】
本発明における溶剤処理は、結晶化溶剤と粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを接触させる工程である。加熱下に粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンと溶剤を接触させることが好ましい。具体的には、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンの水ペーストもしくは水中に懸濁して分散させた後、結晶化溶剤を投入し、所定の時間処理することによって微細粒子の凝集体であるポリハロゲン化直後の粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを結晶成長させる方法である。この溶剤処理により、微細な凝集体であり無定型の粒子は、結晶化が進むとともに粒子成長して粒子径が大きくなる。
【0033】
本発明の溶剤処理で使用する結晶化溶剤としては、ポリハロゲン化銅フタロシアニンが結晶成長する溶剤であれば、特に限定はないが、特に芳香族溶剤が好ましく、より好ましくは、p−クロロトルエン、o−ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン、o−ニトロトルエン、トルエンなどの芳香族溶剤が使用される。処理に供する結晶化溶剤の量が少ないと顔料化に長時間要するかあるいは顔料化できないが、一定量を超えると顔料化速度が飽和してしまう。
【0034】
結晶化溶剤の使用量としては、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニン100重量部に対して好ましくは10重量部〜500重量部、より好ましくは50重量部〜350重量部、さらに好ましくは、100重量部〜300重量部である。結晶化溶剤の種類によって結晶化速度が異なるので、制御しやすい量と種類、経済的でかつ安全性の高い種類の溶剤が選択される。水中で油相の粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニン懸濁物の生成を助長するため、アニオン系、カチオン系またはノニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。特に、アニオン系活性剤が好ましい。また、結晶化溶剤の使用量が多い場合は界面活性剤の助けを必要とせず油相に移行するため、界面活性剤を使用せず顔料化してもよい。
【0035】
溶剤処理では攪拌装置を使用することが好ましい。撹拌装置は特に限定はなく、低粘度のスラリーでは通常攪拌槽と攪拌機、高粘度のペースト状の場合はニーダー、コニーダーを用いるなど処理すべき対象の粘性に合わせて種類の装置を用いることができる。溶剤処理の加熱温度は50℃以上であり、好ましくは結晶化溶剤と水との共沸点である。50℃以下では顔料化速度が遅くなってしまうため不利である。場合によっては加圧による共沸点以上の処理も可能である。加熱時間は、結晶化溶剤の種類と組成、処理温度によって異なり、経済性を考慮した場合に応じ決定される。所要時間加熱攪拌した後は、使用した結晶化溶剤を水蒸気蒸留等で除去し顔料を再び水相に戻すことが好ましい。以後、ろ過、水洗、乾燥を経て粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを取り出す。
本発明における粗製銅フタロシアニンの純度は、特許第3787287号公報記載の以下の方法で測定した値である。
(粗製銅フタロシアニンの純度測定法)

【0036】
粗製銅フタロシアニン5.0gを98重量%硫酸50mlに加熱溶解(90〜100℃、40分)させ、この溶液に15重量%硫酸を150ml加えて再結晶させる。放置冷却後、250mlの水を加えて再結晶を完了させ、濾過および充分に水洗した後、400mlの水に解膠し、28重量%アンモニア水10mlを加えて加熱(90〜100℃、30分)する。濾過し、十分に水洗した後、105〜110℃で2時間乾燥する。
【0037】
本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料1分子中の臭素原子の平均個数は11から15個、塩素原子の平均個数は1から4個である。更に、黄色顔料と混色で使用する場合、特定の色相を得るためには、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の色相が青味である方が黄味である場合と比較して、黄色顔料の割合が多くなり、カラーフィルターに使用される場合、より明度の高い着色皮膜が得られる。そのため、より好ましい顔料1分子中の臭素原子の平均個数は12から14個、塩素原子の平均個数は1から2個である。
【0038】
本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料1分子中の臭素原子個数、塩素原子個数は、元素分析でポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の臭素含有量、塩素含有量を求めることで計算できる。
【0039】
本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の平均一次粒子径は、10から100nmであるが、より高いコントラストが要求されるカラーフィルターに使用される場合は、顔料の平均一次粒子径は、10から70nmがより好ましい。本発明における平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製「電子顕微鏡H−7650」)で視野内の粒子を撮影し、一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。
【0040】
本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、顔料担体中にすることにより、オフセット用印刷インキ、グラビア用印刷インキ、水無しオフセット印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト剤等の着色組成物とすることができる。
【0041】
本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を均一に顔料担体中に分散させてなる着色組成物は、安定した粘度特性を示し、該着色組成物を用いることにより、高い明度、鮮明性及び高透過率を有するカラーフィルターを製造することができる。
【0042】
顔料担体は、樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物から構成される。樹脂には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂があり、樹脂の前駆体には、活性エネルギー線照射により硬化して樹脂と同様の塗膜を形成するモノマー、オリゴマー等があり、これらを単独で、または2種類以上混合して用いることができる。顔料担体は、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料100重量部に対して、好ましくは50〜700重量部、より好ましくは100〜400重量部の量で用いることができる。
【0043】
樹脂は、着色組成物を用いてカラーフィルターを製造する場合には、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が80%以上、好ましくは95%以上の透明樹脂であることが好ましい。また、カラーフィルターの製造における後の工程において高温加熱の処理が行われるため、耐熱性のよい樹脂を用いることが必要である。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0045】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等の光架橋性基を導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化した重合物も用いられる。
【0046】
樹脂の前駆体モノマー、オリゴマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー等が挙げられる。
【0047】
着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化するときには、光重合開始剤等が添加される。光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料100重量部に対して、5〜150重量部の量で用いることができる。
【0048】
上記光重合開始剤は、単独で、あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜150重量部の量で用いることができる。
【0049】
着色組成物には、顔料を顔料担体中に充分に分散させ、基材に均一に塗布するために、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独で、もしくは混合して用いる。溶剤は、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料100重量部に対して、500〜4000重量部の量で用いることができる。
【0050】
本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の顔料担体中への分散には、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー等の各種分散手段を使用できる。また、これらの分散を良好とするために適宜、各種界面活性剤、色素誘導体等の分散助剤を添加できる。分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きい。これらの印刷インキ、着色レジスト剤等の着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子、および混入した塵を除去することが好ましい。
【0051】
本発明の着色組成物は、所望の色度に調色するため、必要に応じて、黄色顔料を併用することができる。これらの黄色顔料は、色特性を損なわない範囲で添加することが好ましい。また、これらの黄色顔料は、必要に応じて、公知慣用の顔料誘導体、分散剤、界面活性剤および樹脂等の表面処理剤によって顔料粒子の表面が被覆された表面処理顔料を使用してもよい。更に、本発明のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料と同一粒子径に調整した黄色顔料あるいはその処理黄色顔料が好ましい。
【0052】
本発明で併用できる黄色顔料は、カラーフィルターに使用される場合、分光透過スペクトルの透過率が最大となる波長(Tmax)がバックライト光源の望ましい輝線を拾うために使用することができる。
【0053】
本発明で併用できる調色用黄色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 83、同128、同138、同139、同150、同154、同180、同185等の黄色顔料が挙げられる。
【0054】
これらの黄色顔料は、1種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。上記黄色顔料のなかでも、C.I.PigmentYellow 138、同139、同150が色純度と透明性に優れる点でより好ましい。
【0055】
黄色顔料の混合比率は、用途に応じて適宜選択することができるが、一般にカラーフィターに使用する場合は、質量基準で、本発明の緑色顔料組成物と黄色顔料の合計量に対して、10〜60%の範囲とするのが好ましく、なかでも、30〜50%の範囲とするのがより好ましい。
【0056】
[実施例]
次に本発明を、実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例中、「部」及び「%」は特に断らないかぎり重量によるものである。
[銅フタロシアニン製造例1]
無水フタル酸148部、尿素296部、モリブデン酸アンモニウム1部、塩化第一銅24.8部、t-ペンチルベンゼン266部を反応機に仕込み、190℃で5時間反応させた。反応終了後、溶剤を減圧蒸留で除去し、2%硫酸水溶液3000部を仕込み、90℃で30分加熱攪拌し、濾過、水洗し、このウェットケーキを乾燥機で80℃、24時間熱処理を行い、水分1%未満になるまで乾燥し、粗製銅フタロシアニンを得た。
[銅フタロシアニン製造例2]
耐圧性の反応機で2〜3Kg/cmの加圧化で行った以外は、粗製銅フタロシアニン製造例1と同様の方法で合成を行った。
[銅フタロシアニン製造例3]
粗製銅フタロシアニン製造例2の方法で合成を行い、2%硫酸水溶液で精製後、最後に2%苛性溶液3000部を用い、同様の精製を行った。
【0057】
[実施例1]
無水塩化アルミニウム429部、塩化ナトリウム96部、銅フタロシアニン製造例2で合成した純度97.1%の粗製銅フタロシアニン69部、臭素15部を反応機に仕込み、昇温を開始した。130℃になったところで攪拌を開始し、さらに昇温して160℃になったところで臭素の添加を開始し、12時間ハロゲン化を行った。このハロゲン化は160℃で行い、12時間で臭素360部を添加した。その後、この系に塩素を導入し、さらに2時間ハロゲン化を実施した。このハロゲン化は165℃で行い、2時間で塩素60部を導入した。ハロゲン化終了後、反応液を5000部の水にゆっくりと注ぎ込み、濾過、水洗した。その後、15%塩酸溶液5000部で30分攪拌、濾過、水洗し、さらに2%苛性溶液5000部で30分攪拌、濾過、水洗した。このウェットケーキを乾燥機で80℃、24時間熱処理を行い、水分1%未満になるまで乾燥し、粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニンを得た。
【0058】
上記粗製ポリハロゲン化銅フタロシアニン150部を平均粒子径20μmの粉砕、乾燥した塩化ナトリウム1500部と共にニーダーに加えた。熱媒を120℃にコントロールして、ジエチレングリコール190部を加え、良好なドウ状態を形成後、6時間湿式粉砕を行った。湿式粉砕後、内容物の10倍の水中に加えて攪拌し、塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを溶解させた後、濾過、精製を行って顔料と分離した。このウェットケーキを、乾燥機で80℃、24時間熱処理を行い、水分1%未満になるまで乾燥した後、ハンマーミル型粉砕機で粉砕し、5mmのスクリーンを通して、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を得た。透過型電子顕微鏡を用いて、この顔料の平均一次粒子径を測定したところ、平均一次粒子径は、55nmであった。
【0059】
また、この一部を98%硫酸に溶解し、該溶液を多量の水に投入し、濾過、水洗、上記方法で乾燥し、元素分析を行い、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料中の臭素と塩素の含有量を求め、ポリハロゲン化銅フタロシアニン1分子中の臭素原子と塩素原子の平均個数を求めた。臭素含有量64.15%、塩素含有量3.34%、臭素個数13.8個、塩素個数1.6個であった。
【0060】
[実施例2]
銅フタロシアニン製造例3で合成した純度98.2%の粗製銅フタロシアニンを用い、実施例1と同様の方法でハロゲン化、顔料化を行った。顔料の平均一次粒子径は、49nmで、臭素含有量62.24%、塩素含有量3.44%、臭素個数13.9個、塩素個数1.7個であった。
[実施例3]
無水塩化アルミニウム429部、塩化ナトリウム96部、銅フタロシアニン製造例3で合成した純度98.0%の粗製銅フタロシアニン69部、臭素15部を反応機に仕込み、昇温を開始した。130℃になったところで攪拌を開始し、さらに昇温して160℃になったところで臭素の添加を開始し、14時間ハロゲン化を行った。このハロゲン化は160℃で行い、14時間で臭素420部を添加した。ハロゲン化終了後、反応液を5000部の水にゆっくりと注ぎ込み、濾過、水洗した。その後、実施例1と同様に精製、顔料化を行った。顔料の平均一次粒子径は、58nmで、臭素含有量63.17%、塩素含有量3.34%、臭素個数13.3個、塩素個数1.6個であった。
【0061】
[比較例1]
銅フタロシアニン製造例1で合成した純度94.2%の粗製銅フタロシアニンを用い、実施例1と同様の方法でハロゲン化、顔料化を行った。顔料の平均一次粒子径は、48nmで、臭素含有量62.58%、塩素含有量4.25%、臭素個数13.2個、塩素個数2.0個であった。
(実施例、比較例で得た顔料のカラーフィルター特性評価)
実施例、比較例で得た顔料について、色度、明度を測定した。これらの評価は、感光性着色組成物を作製し、感光性着色組成物をスピンコーターを用いてガラス基板に塗布し、露光、加熱後の塗布基板について、色度、明度を測定した。以下、評価方法について詳細に記述する。
【0062】
(アクリル樹脂溶液の調製)
反応容器にシクロヘキサノン800重量部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃に加熱して、同温度で下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。
スチレン 60.0重量部
メタクリル酸 60.0重量部
メタクリル酸メチル 65.0重量部
メタクリル酸ブチル 65.0重量部
アゾビスイソブチロニトリル 10.0重量部
滴下後さらに100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2.0重量部をシクロヘキサノン50重量部で溶解させたものを添加し、さらに100℃で1時間反応を続けて、重量平均分子量が約40000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%となるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。
【0063】
(感光性着色組成物の作製)
下記組成の混合物を均一に分散撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して感光性着色組成物を作製した。
ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料 4.5重量部
(実施例1〜3および比較例1)
アクリル樹脂溶液 24.0重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5.4重量部
(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)
光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」) 0.3重量部
増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」) 0.2重量部
シクロヘキサノン 65.1重量部
【0064】
実施例1〜3および比較例1で得られた顔料を用いて作製した感光性着色組成物を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて500rpm、1000rpm、2000rpmの回転数で塗布し、膜厚が異なる3種の塗布基板を得た。次に、70℃で20分乾燥後、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量150mJで紫外線露光を行った。塗布基板を230℃で1時間加熱後、放冷し着色膜を作製した。そして、得られた着色膜の分光を分光光度計(日立製作所製「U―3500」)で測定し、C光源でのそれぞれの色度(Y,x,y)を算出し、y=0.618の時のそれぞれのY,xをさらに算出した。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
粘度はEL型粘度計(東機産業製TV−20 単位はmPa・s)で測定した。25℃、100rpmの時の値を測定した。
【0067】
表1の実施例1、2と比較例1を比較すると、純度の高い粗製銅フタロシアニンを原料として用いたポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を用いることで、明度(Y)の高い着色皮膜を得る事が可能となった。実施例3については、色相が他の例と比較すると青味であるため、他の例と直接の比較を行うことはできない。そのため、黄色顔料を用いた感光性着色組成物を用いて、色相を合わせて評価を行った。
【0068】
調色するために、ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料と黄色顔料(C.I. Pigment Yellow 150 )を併用して、緑色の感光性着色組成物を作製した。
【0069】
下記組成の混合物を均一に分散撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して感光性着色組成物を作製した。
ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料 3.6部
(実施例1〜3および比較例1)
黄色顔料(PY150) 0.9部
アクリル樹脂溶液 24.0部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5.4部
(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)
光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」) 0.3部
増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」) 0.2部
シクロヘキサノン 65.1部
【0070】
上記に記載したポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を単独で分散して得られた感光性着色組成物と黄色顔料(PY150)とポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を共分散して得られた感光性着色組成物を混合し、調色して色度を合わせた感光性着色組成物を作製した。
【0071】
上記の調色して色度を合わせた感光性着色組成物を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて500rpm、1000rpm、2000rpmの回転数で塗布し、膜厚が異なる3種の塗布基板を得た。次に、70℃で20分乾燥後、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量150mJで紫外線露光を行った。塗布基板を230℃で1時間加熱後、放冷し着色膜を作製した。そして、得られた着色膜の分光を分光光度計(日立製作所製「U―3500」)で測定し、C光源でのそれぞれの色度(Y,x,y)を算出し、y=0.618の時のそれぞれのY,xをさらに算出した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2の実施例3は、黄色顔料で調色し色相を合わせる事によって、比較例1よりも明度(Y)が向上している。実施例1、2、3と比較例1を比較すると、黄色顔料と調色しても、純度の高い粗製銅フタロシアニンを原料として用いたポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を用いることで、明度(Y)の高い着色皮膜を得る事が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度96%以上の粗製銅フタロシアニンを原料として用いることを特徴とするポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法。
【請求項2】
ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料中のポリハロゲン化銅フタロシアニン1分子中の臭素原子の平均個数が11から15個、塩素原子の平均個数が1から4個であることを特徴とする請求項1記載のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法。
【請求項3】
ポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の平均一次粒子径が10から100nmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の製造方法によって得られたポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料と顔料担体とを含むことを特徴とする着色組成物。
【請求項5】
更に黄色顔料を含有することを特徴とする請求項4記載の着色組成物。


























【公開番号】特開2009−197075(P2009−197075A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38143(P2008−38143)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】