説明

ポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する新規微生物、ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素、およびこれをコードする遺伝子

【課題】PHA生成能を有する新規微生物、PHA重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、PHA重合酵素活性を有するポリペプチド、PHA重合酵素の製造方法、およびPHAの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエート生成能を有し、特定な塩基配列と99%以上の相同性を示す16rRNA遺伝子を有する微生物であって、活動温度範囲の最適温度が少なくとも45℃であり、pH6〜10で生育可能であり、好気性かつグラム陰性で極鞭毛を有する桿菌状細菌であって、一定の資化性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する新規微生物、ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド、ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素の製造方法、およびポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な高分子化合物のうち、例えば、石油等の化石燃料由来の化学合成プラスチック等は自然環境下で分解されないため、自然界において半永久的に蓄積してしまい、環境問題の要因となっている。近年、環境問題への意識が高まり、化石燃料由来ではない再生可能な資源からの高分子化合物の開発が行われている。
【0003】
このような背景の下、糖や油脂等の再生可能な生物有機資源(バイオマス)から発酵法により生成されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、熱可塑性を有し、かつ優れた生分解性と生体適合性とを有することから、環境に負荷を与えない高分子化合物である生分解性プラスチック(グリーンプラ)として注目され、実用化に向けての開発が行われている。また、生体機能材料(バイオマテリアル)として、生物・医学領域への新たな展開も期待されている。
【0004】
PHAは、現在までに数多くの微生物において菌体内に蓄積されるポリエステル型有機分子ポリマーであることが知られており、例えば、特開2006−320256号公報には、ポリヒドロキシブチレート(PHB)を菌体内に蓄積可能なメチロシスティス(Methylocystis)属のPHB生成能を有する細菌が開示されている(特許文献1)。
【0005】
一方、微生物により生成されて菌体内に蓄積されるPHAポリマー中においては、90種類以上のモノマー構造が確認されている(非特許文献1)。また、PHAを構成するモノマーユニットはその物性に大きな影響を与えるものであり、例えば、微生物によって生成される代表的なPHAとして、3−ヒドロキシブチレート(3HB)を主要構成モノマーユニットとしたPHAが挙げられるが、3HBを主要構成モノマーユニットとしたPHAは結晶性が高く、柔軟性が低いという性質を有しており、その利用範囲は限定されている。
【0006】
3HB以外のモノマーユニットからなるPHAを得るためには、PHAを生成する微生物の種類や培地組成、培養条件等の変更を行い、微生物を単離し、あるいは遺伝子組換え技術を用いて形質転換した形質転換体を用いる等の必要がある。例えば、特開2001−178484号公報には、酢酸またはその塩を単一炭素源として含む培地中で培養したPseudomonas cichorii YN2により、炭素数6(以下、「C6」のように示す。)、C8、C10、C12、C14のモノマーユニットを少なくとも一種類含むPHAを製造する方法が開示されている(特許文献2)。また、特開2004−321167号公報には、所定の形質転換体を、C6からC10を炭素源として含む培地で培養することにより、C6からC10のモノマーユニットから構成されたPHAを生成する方法が開示されている(特許文献3)。
【0007】
PHAを構成するモノマーユニットの比は、PHA重合酵素の基質特異性と宿主におけるモノマー合成経路とによって変化する。PHA重合酵素遺伝子はこれまでに複数クローニングされており、その一次構造と基質特異性とからI〜IIIの3つのグループに分類されている。タイプIとタイプIIIとは、C3〜6程度の短鎖長のヒドロキシアシルCoAに、タイプIIは、C6〜12程度の中鎖長のヒドロキシアシルCoAに基質特異性を示す。PHAの物性はそのモノマー組成に依存しており、様々な物性のPHAを製造するためには、幅広い基質特性を有するPHA重合酵素が必要となる。
【0008】
また、特開2002−335966号公報には、中温付近(40℃〜50℃)でポリ−3−ヒドロキシブチレートを生成するBacillus sp. に属する菌株、PHA重合酵素、およびこれをコードする遺伝子等が開示されている(特許文献4)。当該菌株を培養することや、得られたPHA重合酵素を用いることにより、中温付近でも安定して、熱安定性の高いPHAの製造を行うことができる。
【0009】
【特許文献1】特開2006−320256号公報
【特許文献2】特開2001−178484号公報
【特許文献3】特開2004−321167号公報
【特許文献4】特開2002−335966号公報
【非特許文献1】FEMS Microbiol. Lett., 1995, 128219-228
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜4には、3HBを主要構成モノマーユニットとしないPHAを、中温付近で生成することができる微生物やPHA重合酵素については開示されていない。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、PHA生成能を有する新規微生物、PHA重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、PHA重合酵素活性を有するポリペプチド、PHA重合酵素の製造方法、およびPHAの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る新規微生物は、ポリヒドロキシアルカノエート生成能を有し、配列番号1に記載の塩基配列と99%以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子(16S rDNA)を有する微生物であって、以下の(a)、(b)、(c)、および(d)の特性を有する:
(a)活動温度範囲の最適温度が少なくとも45℃であり、
(b)pH6〜10で生育可能であり、
(c)好気性かつグラム陰性で極鞭毛を有する桿菌状細菌であって、カタラーゼ、オキシダーゼ、アルギニンジヒドロラーゼ、37℃の4%NaCl、および50℃の4%NaClに耐性であり、
(d)クエン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ベタイン、L−リジン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、L−アラニン、L−イソロイシン、L−プロリン、ドデカン、トリデカン、ヘキサデカン、ノナデカン、エイコサン、パルミチン酸、オクタナール、1−オクタノール、ラウリルアルコール、Tween80、および安息香酸ナトリウムに資化性を有する。
【0013】
本発明に係る新規微生物は、Pseudomonas sp. SG4502(NITE P-578)であってもよい。
【0014】
本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子は、以下の(a)、(b)、または(c)のポリペプチドをコードする:
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
【0015】
また、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子は、以下の(a)、(b)、(c)、または(d)の塩基配列を含む:
(a)配列番号2に示される塩基配列;
(b)塩基配列(a)またはこれに相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)塩基配列(a)において1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなり、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)塩基配列(a)と少なくとも80%以上の塩基配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【0016】
本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子は、以下の(a)、(b)、または(c)のポリペプチドをコードする:
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
【0017】
また、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子は、以下の(a)、(b)、(c)、または(d)の塩基配列を含む:
(a)配列番号4に示される塩基配列;
(b)塩基配列(a)またはこれに相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)塩基配列(a)において1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなり、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)塩基配列(a)と少なくとも80%以上の塩基配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【0018】
次に、本発明に係る遺伝子発現カセットは、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子、および以下の(a)、(b)、または(c)のポリペプチドをコードするポリヒドロキシアルカノエート分解酵素遺伝子からなる群から選択される1または2以上の遺伝子を含む:
(a)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート分解酵素活性を有するポリペプチド。
【0019】
また、本発明に係る遺伝子発現カセットは、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子、および以下の(a)、(b)、(c)、または(d)の塩基配列を含むポリヒドロキシアルカノエート分解酵素遺伝子からなる群から選択される1または2以上の遺伝子を含む:
(a)配列番号6に示される塩基配列;
(b)塩基配列(a)またはこれに相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)塩基配列(a)において1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなり、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)塩基配列(a)と少なくとも80%以上の塩基配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【0020】
さらに、本発明に係るベクターは、本発明の遺伝子発現カセットを含んでいてもよく、組換えプラスミドであるpC1ZC2_SG4502(受託番号:NITE P-579)であってもよい。
【0021】
また、本発明に係る形質転換体は、本発明に係るベクターを含んでおり、前記形質転換体は大腸菌(Escheichia coli)であってもよい。
【0022】
次に、本発明に係るポリペプチドは、以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)である。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
(d)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(e)アミノ酸配列(d)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(f)アミノ酸配列(d)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
【0023】
次に、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素の製造方法は、本発明に係る新規微生物または本発明に係る形質転換体を培養し、得られた培養物からポリヒドロキシアルカノエート重合酵素を採取する方法である。
【0024】
また、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、本発明に係る新規微生物または本発明に係る形質転換体を培養し、得られた培養物からポリヒドロキシアルカノエートを採取する方法、すなわちin vivoにおける製造方法である。
【0025】
一方、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法の異なる態様は、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエート重合酵素の製造方法により得られたポリヒドロキシアルカノエート重合酵素を用いて、ポリヒドロキシアルカノエートを生成する方法、すなわちin vitroにおける製造方法である。
【0026】
本発明において、α−不飽和脂肪酸を基質としてポリ3−ヒドロキシアルカノエートを生成することができる。また、α−不飽和脂肪酸のうち2−ヘキセン酸を基質として選択した場合にはポリ3−ヒドロキシヘキサノエートを生成することができ、α−不飽和脂肪酸であるクロトン酸を基質として選択した場合には3−ヒドロキシブチレートを生成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、PHA生成能を有する新規微生物、この新規微生物由来のPHA重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、およびPHA重合酵素活性を有するポリペプチドを提供することができ、この新規微生物由来のPHA重合酵素、およびこの酵素を用いたPHAを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において生成されるPHAは、下記式[1]で表されるヒドロキシアルカノエート(HA)をモノマーユニットとして少なくとも含むものが例示される。
【化1】

(式中のRは炭素数0または1以上の炭化水素を示し、式中のnは0または1以上の整数を示す)
【0029】
本発明において生成されるPHAのモノマーユニットとして含まれるHAとしては、例えば、乳酸(2−ヒドロキシプロピオネート;LA)、グリコール酸、3−ヒドロキシプロピオネート(3HP)、3−ヒドロキシブチレート(3HB)、3−ヒドロキシバレレート(3HV)、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HHx)、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエート、3−ヒドロキシドデセノエート、3−ヒドロキシテトラデカノエート、3−ヒドロキシヘキサデカノエート、3−ヒドロキシオクタデカノエート、4−ヒドロキシブチレート(4HB)、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、6−ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシラウリレート等を挙げることができる。
【0030】
本発明に係る新規微生物(新菌株)は、PHA生成能を有し、配列番号1に記載の塩基配列と99%以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子を有する微生物であって、活動温度範囲の最適温度が少なくとも45℃であり、pH6〜10で生育可能であり、好気性かつグラム陰性で極鞭毛を有する桿菌状細菌であって、カタラーゼ、オキシダーゼ、アルギニンジヒドロラーゼ、37℃の4%NaCl、および50℃の4%NaClに耐性であり、クエン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ベタイン、L−リジン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、L−アラニン、L−イソロイシン、L−プロリン、ドデカン、トリデカン、ヘキサデカン、ノナデカン、エイコサン、パルミチン酸、オクタナール、1−オクタノール、ラウリルアルコール、Tween80、および安息香酸ナトリウムに資化性を有するものであればいずれの微生物も包含されるが、例えば、Pseudomonas属やThiobacillus属、Vibrio属、Xanthomonas属、Acidovorax属、Comamonas属、Gluconobacter属、Rhizobium属、Zoogloea属等に属する微生物を挙げることができる。
【0031】
なお、本発明において「微生物」は、「菌」、「菌株」、「微生物株」あるいは「細菌」と交換可能に用いられる。従って「新規微生物」は、例えば「新規菌株」としても表すことができる。
【0032】
また、本発明に係る新規微生物は、活動温度範囲の最適温度が少なくとも45℃であるが、本発明における「活動温度範囲」とは、生育可能な範囲であるとともに菌体内でPHAが生成される範囲をいう。
【0033】
後述の実施例に示すように、PHAを生成する能力を有し、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する公知の種に含まれない新規微生物が発見された。その新規微生物は、Pseudomonas sp. SG4502株(以下、「本菌株」または「SG4502」と略すことがある。)と命名され、平成20年6月2日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号NITE P-578が与えられているため、この機関より入手することができる。
【0034】
本発明に係る新規微生物は、バイオディーゼル燃料(BDF)製造装置周辺から単離されている。また本願においては、本発明に係る新規微生物の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列が開示されている(配列番号1)。従ってもっとも簡易には、当業者であれば、この配列情報を基にして、本発明に係る新規微生物の16S rRNA遺伝子を標的とするプローブやプライマーを合成し、BDFやBDF副産物(BDFB)に目的の菌が存在するかを検出し、それを単離することもできる。特にその16S rRNA遺伝子をPCR法により特異的に増幅し、定量することもできる。
【0035】
さらに、例えば、保存性の高いrRNA領域を増幅して得られる核酸混合物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)により分離して、分離した核酸の配列を決定し濃度を測定することにより、その試料中の、同一試料中に存在する同種ないし近縁の微生物群における各種微生物の存在比を示す菌相構造を知ることも可能である。すなわち、本発明において「16S rRNA遺伝子を標的とする検出」に言及する場合は、16S rRNA遺伝子のプローブを用いた検出のほか、16S rRNA遺伝子を鋳型としたPCR等、当該遺伝子の存在を知るためのあらゆる検出法が含まれる。
【0036】
また、本発明に係る微生物には、SG4502のほか、自然にもしくは人工的手段によって変異させて得られる変異株および子孫であっても、SG4502を有するものはすべて本発明に係る微生物に包含される。
【0037】
一方、本発明に係る微生物は、配列番号1に記載の部分塩基配列と99%以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子(16S rDNA)を有している。一般に、比較対象の微生物が有する16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の500bp程度の部分塩基配列との相同性が99%以上であれば同じ属に属する可能性が高いとされる。
【0038】
ここで、微生物の種は系統的にほぼ70%またはそれ以上のDNA−DNA相同性を示す菌株であると定義されている(国際細菌分類命名委員会特別委員会報告、L. G. Wayne, D. J. Brenner, R. R. Colwell, P. A. D. Grimont, O. Kandler, M. I. Krichevsky, L. H. Moore, W. E. C. Moor, R. G. E. Murray, E. Stackebrandt, M. P. Starr and H. G. Truper: Report of the adhoc committee on reconciliation of approaches to bacterial systematics. International Systematic Bacteriology, 37, 463-464, 1987)。E. Stackerbrandt等は、上記定義におけるDNA−DNA相同性と16S rDNA全長の相同性との関係について、DNA−DNA相同性と16S rDNA全長の相同性との比較からDNA−DNA相同性70%以上のものと16S rDNA全長の相同性97%以上のものとは対応するとし、16S rDNA全長の相同性97%以上のものを同一の種とみなされると述べている(Stackebrandt, E. and Goebel, B. M. :Taxonomic note: a place for DNA-DNA reassociation and 16S rRNA sequence analysis in the present species definition in bacteriology. Int. J. Syst. Bacteriol., 44, 846-849, 1994)。
【0039】
すなわち、上記の16S rDNAの相同性と種との関係から鑑みれば、16S rDNA全長の塩基配列が同定された場合においては、SG4502菌株またはSG4502菌株と16S rDNA全長との相同性において97%以上の菌株は、これら菌株と同一種とみなされ、本発明に包含される。
【0040】
次に、本発明において、「1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列」という場合の、置換、挿入、および/または付加されるアミノ酸の個数は、そのアミノ酸配列を有する蛋白質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の個数を挙げることができる。なお、同一あるいは性質の似たアミノ酸配列をコードするのであれば、さらに多くのアミノ酸が置換、挿入、および/または付加されてもよい。
【0041】
また、本発明においては、配列番号3または配列番号5に記載のアミノ酸配列の全部または少なくともシグナル配列を除いた部分を含む一部と高い同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつPHA重合酵素活性を有する蛋白質をコードする遺伝子が含まれる。ここにいう「高い同一性」とは、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。
【0042】
本発明において、「1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列」および「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、アミノ酸配列を整列させ、最大のパーセントアミノ酸配列同一性(相同性という場合もある)が得られるように間隙を導入してもよく、保存的置換を配列同一性の一部と考えないとした、PHA重合酵素I遺伝子またはPHA重合酵素II遺伝子がコードするアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性に関する検索や解析は、当業者に周知のアルゴリズムまたはプログラム、例えば、DNASIS、BLAST、BLAST−2、ALIGN、JALVIEW、あるいはDNASTARソフトウエア等により可能である。なお、当業者であれば、必要な任意のアルゴリズムを含む配列を測定するために、適切なパラメータを決定することができる。
【0043】
次に、本発明における「ストリンジェントな条件」とは、特別な場合を除き、6M尿素,0.4%SDS,0.5×SSCの条件、またはこれと同等のハイブリダイゼーション条件を指し、さらに必要に応じて、よりストリンジェンシーの高い条件を適用してもよく、例えば、6M尿素,0.4% SDS,0.1×SSC、またはこれと同等のハイブリダイゼーション条件を挙げることができる。それぞれの条件において、温度は約40℃以上とすることができ、よりストリンジェンシーの高い条件が必要であれば、例えば、約50℃乃至65℃としてもよい。なお、ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第二版等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0044】
また、本発明において、「1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列」という場合の、置換、挿入、および/または付加される塩基配列(ヌクレオチド)の個数は、その塩基配列(ポリヌクレオチド)がコードする蛋白質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の個数を挙げることができる。なお、同一あるいは性質の似たアミノ酸配列をコードするのであれば、さらに多くのアミノ酸が置換、挿入、および/または付加されてもよい。
【0045】
また、本発明においては、配列番号2または配列番号4に記載の塩基配列と高い同一性を有する塩基配列からなり、かつPHA重合酵素活性を有する蛋白質をコードする塩基配列が含まれる。ここにいう「高い同一性」とは、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。
【0046】
本発明において、「1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列」および「パーセント(%)塩基配列同一性」は、塩基配列を整列させ、最大のパーセント塩基配列同一性(相同性という場合もある)が得られるように間隙を導入してもよく、PHA重合酵素I遺伝子またはPHA重合酵素II遺伝子に含まれる塩基配列と同一である候補配列中の塩基配列のパーセントとして定義される。パーセント塩基配列同一性に関する検索や解析は、当業者に周知のアルゴリズムまたはプログラム、例えば、DNASIS、BLAST、BLAST−2、ALIGN、JALVIEW、あるいはDNASTARソフトウエア等により可能である。なお、当業者であれば、必要な任意のアルゴリズムを含む配列を測定するために、適切なパラメータを決定することができる。
【0047】
本発明において、遺伝子のクローニングは、公知の手法を用いて行うことができる。例えば、Current Protocols in Molecular Biologyユニット2・4やDNA Cloning 1: Core Techniques, A PracticalApproach, Second Edition, Oxford University Press(1995)等に記載の方法に従って、あるいは市販のキット、例えば、DNeasy Blood & Tissue Kit(キアゲン)、The illustra bacteria genomicPrep Mini Spin Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス)やPrepMan Ultra Reagent{アプライド・バイオシステムズ(ABI)}を用いて染色体DNAを調製することができる。
【0048】
目的遺伝子は得られた染色体DNAを鋳型としてPCRにより増幅・入手することでできる。またその遺伝子を常法により適当なベクターへとクローニングすることも可能である。
【0049】
本発明において用いられる宿主細胞としては、動物細胞や真菌、酵母、大腸菌、グラム陽性菌であるActinoplanes属、Alicyclobacillus属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Lactobacillus属、Mycobacterium属、Mycoplasma属、Bacillus属、Clostridium属、Deinococcus属、Streptomyces属、Staphylococcu属、Enterococcus属、Streptococcus属、グラム陰性菌であるEscherichia属、Salmonella属、Agrobacterium属、Azotobacter属、Methylobacterium属、Pseudomonas属、Rhodopseudomonas属、Zymomonas属、Chloropseudomonas属、Flavobacterium属、Myxococcus属、Nannocystis属、Borrelia属、Ralstonia属、Alcaligenes属、Aeromonas属、光合成グラム陰性細菌であるChromatium属、Rhodospirillum属、古細菌であるArchaeoglobus属、Methanobacterium属、Methanococcus属、Pyrococcus属、Cardarella属、Halobacterium属、Sulfolobus属、藍藻であるAnabaena属、Anacystis属、Phormidium属、Synecoccus属、Synecocystis属、緑藻であるChlorella属、Scenedesmun属等に属するものを挙げることができる。
【0050】
また、本発明において用いられるクローニングベクターとしては特に限定されないが、大腸菌中で自律複製できるものが好適であり、例えば、ファージベクターやプラスミドベクター等を使用することができる。具体的には、ZAP Express(ストラタジーン)、pBluescript II SK(+)(Nucleic Acids Research)、Lambda ZAP II(ストラタジーン)、λgt10、λgt11(DNA Cloning, A Practical Approach)、λTriplEx(クローンテック)、λExCell(ファルマシア)、pT7T318U(ファルマシア)、pTrc99A(ファルマシア)、pKK223-3(ファルマシア)、pcD2(H.Okayama and P.Berg)、pMW218(和光純薬)、pUC118および119(宝酒造)、pUC18および19(宝酒造)、pSTV28および29(宝酒造)、pEG400(J. Bac.)、pQE−30(キアゲン)、pQE80(キアゲン)、pTA2(TOYOBO)、pGEM-T(プロメガ)、pGEM-T eazy(プロメガ)等を挙げることができる。さらに、大腸菌やシュードモナス属菌等の2種以上の宿主微生物で自律的増殖が可能なベクターのほか、各種シャトルベクターを用いることも可能である。この場合、上記制限酵素で切断し、その断片を得ることができる。
【0051】
DNA断片とベクター断片とを連結させるには、公知のDNAリガーゼを用いる。そして、DNA断片とベクター断片とをアニーリングさせた後連結させ、組換えベクターを作製する。
【0052】
宿主微生物に組換えベクターを導入するには、公知の方法により行うことができる。例えば、宿主微生物が大腸菌の場合は塩化カルシウム法{Current Protocols in Molecular Biologyユニット1・4、Lederberg, E. M. et al., J. Bacteriol. 119, 1072(1974)}やエレクトロポレーション法(Current Protocols in Molecular Biology, 1巻,1.8.4 頁, 1994年)、プロトプラスト法(特開昭63-2483942号公報)、Gene, 17,107(1982)、Molecular & General Genetics, 168, 111(1979)に記載の方法等を採用することができ、宿主微生物がファージDNAの場合はインビトロ・パッケージング法(Current Protocols in Molecular Biology, 1巻,5.7.1 頁, 1994年)等を採用することができる。また、宝酒造、TOYOBO、ニッポンジーン、インビトジェンン、ストラタジーン等より市販のコンピセントセルを購入し使用することも可能である。本発明では、インビトロ・パッケージング用キット(例えばGigapack III Gold;ストラタジーン)を用いてもよい。
【0053】
また、得られた形質転換体より、目的とするDNAを含有したプラスミドを取得する方法としては、常法、例えば、モレキュラー・クローニング第二版、Current Protocols in Molecular Biology, DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press(1995)等に記載された方法により取得することができる。
【0054】
ところで、PHA重合酵素のアミノ酸配列については、既に何種類かのものが知られている{Gabriel J. McCool and Maura C. Cannon, J. Bacteriol., 181, 585(1999); Liebergesell, M. and Steinbuchel, Eur. J. Biochem., 209, 135(1992);Kaneko, T., et al., DNA Res., 3, 109(1996); Liebergesell, M. and Steinbuchel, Appl. Microbiol. Biotechnol., 38, 493(1993)ほか}。そこで、これらのアミノ酸配列のうち、よく保存されている領域を選択し、それをコードする塩基配列を推定してオリゴヌクレオチドを設計する。
【0055】
次に、DNA断片の塩基配列の決定は、公知方法、例えばサンガー法(Molecular Cloning, 2巻, 13.3頁, 1989年)等によって行うことができ、塩基配列自動分析装置、例えば種々の合成DNAをプライマーとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ABI)、ダイエナミック・ET・ターミナル・サイクル・シークエンシング・キット(アマシャム・ファルマシア)およびDNAシーケンサー(ABI)を用いて、常法に従って行うことができる。
【0056】
なお、本発明に係る遺伝子は、化学合成により、染色体DNAを鋳型としたPCR法により、あるいはこの塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより得ることができる。
【0057】
次に、本発明に係る遺伝子発現カセットは、プロモーターと、PHA重合酵素活性およびPHA分解酵素活性を有する遺伝子、例えば、PHA重合酵素I遺伝子、PHA重合酵素II遺伝子、およびPHA分解酵素遺伝子からなる群から選択される1または2以上のDNAを含み、上記プロモーターに対応するターミネーターを含むもので、これらが5’末端方向から3’末端方向に連結されたものである。この遺伝子発現カセットを1または2以上の組換えベクターに組み込み、宿主に導入することで、本発明に係る形質転換体を得ることができ、さらには、この形質転換体において発現を調節することができる。
【0058】
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る遺伝子発現カセットによる組換えベクターを宿主中に形質転換および形質導入することにより得られる。宿主としては、目的とする遺伝子を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、Alcaligenes属に属する微生物、Pseudomonas属に属する微生物、Bacillus属に属する微生物、大腸菌等の細菌、Saccharomyces属、Candida属等の酵母、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞等を挙げることができる。
【0059】
大腸菌等を宿主として用いる場合は、本発明の組換え体DNAが上記宿主中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、本発明のDNA、転写終結配列を含む構成であることが好ましい。発現ベクターとしては、広範囲の宿主において複製・保持されるRK2複製起点を有するpLA2917(ATCC 37355)やRSF1010複製起点を有するpJRD215(ATCC 37533)、pBBR122(MoBiTec GmbH)、pBHR1(MoBiTec GmbH)等を挙げることができる。
【0060】
プロモーターとしては、宿主中で発現できるものであれば特に限定されないが、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、trcプロモーター、Pプロモーター、Pプロモーター、PSEプロモーター、T5プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPOプロモーター、SPOプロモーター、penPプロモーター等を挙げることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、letIプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。細菌への組換え体DNAの導入方法としては、例えばカルシウムイオンを用いる方法(Current Protocols in Molecular Biology, 1巻, 1.8.1頁,1994年)やエレクトロポレーション法(Current Protocols in Molecular Biology, 1巻,1.8.4頁,1994年)等を挙げることができる。
【0061】
酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして、例えばYEp13、YCp50等を挙げることができる。プロモーターとしては、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター等が挙げられる。酵母への組換え体DNAの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法{Methods Enzymol., 194, 182-187(1990)}、スフェロプラスト法{Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 1929-1933(1978)}、酢酸リチウム法{J. Bacteriol., 153, 163-168(1983)}等を挙げることができる。
【0062】
動物細胞を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして例えばpcDNAI、pcDNAI/Amp(インビトロジェン)等を用いることができる。動物細胞への組換え体DNAの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等を挙げることができる。
【0063】
次に、本発明のPHA重合酵素は、本発明の細菌または変異体を培養し、培養物(培養菌体または培養上清)中に本発明のPHA重合酵素を生成蓄積させ、この培養物からPHA重合酵素を採取することにより行われる。本発明の細菌および変異体を培養する方法は、通常の方法に従って行われる。
【0064】
さらに、PHAの製造は、本発明の細菌または変異体を培養し、培養物または培養菌体中に本発明のPHAを生成蓄積させ、この培養菌体または培養物からPHAを採取することにより行われる。本発明の細菌および変異体を培養する方法は、通常の方法に従って行われる。
【0065】
細菌および変異体を培養する培地としては、完全培地または合成培地、例えばLB培地、M9培地等が挙げられる。また、pH7〜9、培養温度は30〜50℃の範囲で好気的に4〜24時間培養することによりPHA重合酵素およびPHAを菌体内に蓄積させ、回収する。
【0066】
PHA重合酵素の精製は、培養終了後、この培養物から採取手段を用いて得ることができる。例えば、常法により菌体を超音波破砕処理等で等で破砕するか、または、リゾチーム等の溶菌酵素を用いて菌体を溶菌して酵素を抽出する。そして、得られる粗酵素をイオン交換クロマトグラフィーやゲル濾過による各種クロマトグラフィーを用いて精製する。
【0067】
菌体および変異体から得られたPHAの精製は、例えば、以下のように行うことができる。培養液から遠心分離によって菌体および変異体を集め、蒸留水で洗浄した後、乾燥させる。その後、クロロホルムに乾燥した菌体および変異体を懸濁し、加熱することによってPHAを抽出する。なお、残渣は濾過によって取り除く。このクロロホルム溶液にメタノールを加えてPHAを沈殿させる。濾過や遠心分離によって上澄み液を除去した後、乾燥して精製PHAを得る。
【0068】
次に、本発明に係る新規微生物は、脂肪酸のうち、α−不飽和脂肪酸を基質としてポリ3−ヒドロキシアルカノエート{P(3HA)}を生成する能力を有し、特に、2−ヘキセン酸を基質とする場合はポリ3−ヒドロキシヘキサノエート{P(3HHx)}を、クロトン酸を基質とする場合はポリ3−ヒドロキシブチレート{P(3HB)}を生成する特性を有している。本発明におけるα−不飽和脂肪酸としては、例えば、2−ヘキセン酸やクロトン酸、アクリル酸、2−ペンテン酸、2−オクテン酸、2−デセン酸、2−ヘプテン酸、2−ノネン酸等を挙げることができる。
【0069】
以下、PHA生成能を有する新規微生物、PHA重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、PHA重合酵素活性を有するポリペプチド、PHA重合酵素の製造方法、およびPHAの製造方法の実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例1】
【0070】
本発明者等はBDF製造装置周辺から以下の方法にてPHA合成細菌を単離し、本菌株を同定した。
【0071】
<PHA合成細菌の単離>
具体的には、BDF製造装置周辺部(床や廃水口、廃水貯蔵タンクの側面等)の汚れを、薬さじを用いて採取したサンプルを滅菌水10mLに入れ、常温下で1000×gにて3分間遠心することにより上清を得、この上清100μLを、水酸化ナトリウムでBDFBを中和して得たBDFB(中和BDFB)を1重量%含むMS培地50mLに植菌して、45℃で3日間集積培養した。この培養液100μLを、新しい中和BDFBを1重量%含むMS培地50mLに添加し、45℃にて培養した。その後、培養液をNR寒天平板培地に画線し、45℃にて3日間培養した後、この平板培養培地に形成されたコロニーから釣菌した。さらにその釣菌した菌株をNR培地2mLに植菌し、45℃にて一晩浸振盪培養して凍結保存した。
【0072】
次に、この培養液5mLを、MS培地100mLを含む500mL羽根付き三角フラスコ(イワキ)に加え、45℃,160rpmで48時間培養した。培養開始時と24時間経過時とに中和BDFBを1%(wt/vol)になるように加えた。この培養液を遠心分離後、蒸留水、100%メタノール、蒸留水の順に用いて洗菌し、凍結乾燥した。さらにこの凍結乾燥菌体をメタノリシス処理し、ガスクロマトグラフ法にてポリマー蓄積を検出した。このポリマー蓄積の確認された菌株を、中和BDFBを炭素源としてPHAを生成する菌株として選択した。
【0073】
なお、本実施例で用いているNR培地およびMS培地の組成は、以下のとおりである{J. Bacteriol. V179, p4821-4830(1997),Appl. Microbiol. Biotechnol. V45, p363-370(1996)}。
【0074】
(NR培地の組成)培地1L中
バクトイーストエクストラクト 3g
バクトペプトン 10g
エルリッヒカツオエキス 10g
【0075】
(MS培地)培地1L中
リン酸水素二ナトリウム 3.6g
リン酸二水素カリウム 1.5g
塩化アンモニウム 0.5g
硫酸マグネシウム七水和物 0.0104g
トレースエレメント水溶液 0.05mL
【0076】
<Pseudomonas sp. SG4502の同定>
(1)菌学的性状試験
単離した菌株について、財団法人食品分析センターにおいて菌学的性状試験を行った。その結果は次のとおりである。
1)形態学的性状
一般寒天培地上、45℃
形態的性質
1.細胞形態 桿状
2.運動性 あり
3.グラム染色 陰性
2)生理学的性状
1.カタラーゼ +
2.オキシダーゼ +
3.硝酸塩の還元 −
4.硝酸塩存在下での嫌気下生育 −
5.脱窒反応 −
6.ウレアーゼ −
7.アルギニンジヒドロラーゼ +
8.極鞭毛 +
9.加水分解
9−1.エスクリン −
9−2.ゼラチン −
9−3.スターチ −
9−4.スキムミルク −
9−5.Tween 20 +
9−6.Tween 80 +
10.3%NaCl存在下での生育 +
11.4%NaCl存在下での生育(37℃) +
12.4%NaCl存在下での生育(50℃) +
13.pH5での生育 −
14.pH6での生育 +
15.pH10での生育 +
16.pH11での生育 −
17.46℃での生育 +
18.50℃での生育 +
19.資化性試験
19−1.フルクトース −
19−2.D−マンノース −
19−3.D−トレハロース −
19−4.D−セロビオース −
19−5.L−アラビノース −
19−6.D−グルコース −
19−7.L−ソルボース −
19−8.D−スクロース −
19−9.D−キシロース −
19−10.D−マルトース −
19−11.グルコン酸カリウム −
19−12.酢酸フェニル −
19−13.クエン酸ナトリウム +
19−14.アジピン酸ナトリウム −
19−15.D−マンニトール −
19−16.グリセロール −
19−17.ピルビン酸ナトリウム +
19−18.コハク酸ナトリウム +
19−19.酢酸ナトリウム +
19−20.プロピオン酸ナトリウム +
19−21.カプロン酸ナトリウム +
19−22.リンゴ酸ナトリウム +
19−23.ベタイン +
19−24.L−リジン +
19−25.グリシン −
19−26.L−システイン −
19−27.L−フェニルアラニン −
19−28.L−ヒスチジン −
19−29.L−アスパラギン +
19−30.L−アルギニン −
19−31.L−セリン +
19−32.L−グルタミン +
19−33.L−アラニン +
19−34.L−イソロイシン +
19−35.L−プロリン +
19−36.N−アセチルグルコサミン −
19−37.デカン −
19−38.ドデカン +
19−39.トリデカン +
19−40.ヘキサデカン +
19−41.ノナデカン +
19−42.エイコサン +
19−43.パルミチン酸 +
19−44.オクタン酸 −
19−45.オクタナール +
19−46.1−オクタノール +
19−47.ラウリルアルコール +
19−48.Tween 80 +
19−49.SDS −
19−50.安息香酸ナトリウム +
19−51.サリチル酸ナトリウム −
19−52.ナフタレン −
19−53.アントラセン −
19−54.フェナントレン −
【0077】
本菌株は、本実施例(1)の菌学的性質に基づいて、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2002)53, pp. 2203-2209を参照することにより、Pseudomonas sp. であることが確認された。
【0078】
(2)塩基配列解析
次に、単離した本菌株について、16S rRNA遺伝子の部分塩基配列を決定した。まず、MicroSeq 500 16S rDNA RNA Kit(ABI)を用いて16S rRNA遺伝子のPCR増幅を行い、この増幅遺伝子の塩基配列をMicroSeq 500 16S rDNA Sequencing Kit(ABI)を用いて解析した。その塩基配列を配列番号1に示す。
【0079】
(3)分類学的考察
次に、本実施例(2)の部分塩基配列(配列番号1)をBLAST検索(Altschul, S. F. etal., Basic local alignment search tool. J. Mol. Biol. 215, 403-410)を利用した遺伝子データベース上の既知遺伝子と比較したところ、次のようにPseudomonas thermotoleran strain CM3Tの配列が見つかった。
【0080】
Pseudomonas thermotolerans strain CM3Tの16S rRNA遺伝子の部分塩基配列は、配列番号1の塩基配列と99%の相同性を示した。しかしながら、この微生物はPHAを生成する菌株であるかどうかは不明である。さらに、4%塩化ナトリウム存在下での生育(37℃)結果と、クエン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、L−リジン、L−アルギニン、オクタン酸、およびSDSの資化性試験の結果とがPseudomonas thermotolerans strain CM3Tのものと異なっていた。以上の結果から本菌株は新規微生物であり、Pseudomonas sp. SG4502と命名し、平成20年6月2日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-578として寄託した。
【実施例2】
【0081】
<Pseudomonas sp. SG4502によるPHA生成>
上記実施例1にて単離・同定したSG4502を用いてPHAを生成した。この際、培養培地に添加する炭素源を変えてPHAの生成を試みることにより、炭素源の違いによるPHA生成量、生成PHAの分子構造、分子量および組成(モノマー構成比)について比較検討した。
【0082】
具体的には、まず、フリーズストックされているSG4502をNR培地2mLに植菌し、45℃で8時間培養した後、その培養液を新しいNR培地100mLに植菌し一晩浸振盪培養した。この培養液60mLを、MS培地1.2Lを含む3L三角フラスコ(イワキ)に添加して、45℃,37℃,および30℃で振盪培養した。培養開始時と12、24、36時間経過時に炭素源を1%(wt/vol)ずつ加えた。炭素源として、45℃での培養にはドデカン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、中和BDFBを各々用いた。37℃および30℃での各々の培養には、炭素源として中和BDFBを用いた。各々48時間培養後、4℃、8000×gにて15分間遠心して菌体を回収し、20%エタノール水溶液、100%エタノール水溶液、蒸留水の順に用いてこの菌体を洗浄後、凍結乾燥して乾燥菌体を得た。各乾燥菌体量を図1に示す。
【0083】
(1)PHAの抽出
上記にて得られた各乾燥菌体を、クロロホルムを溶媒としてソックスレー抽出機(柴田)を用いてPHAを抽出した後、エバポレーターにて溶媒を除去し、減圧乾燥させて生成物(PHA)を得た。得られた各生成物(PHA)の生成量を図1に示す。
【0084】
図1に示すように、中和BDFBを炭素源とした場合には、酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、およびドデカン酸ナトリウムを各々炭素源とした場合と比較して、同程度以上のPHAを生成することができた。
【0085】
(2)分子構造解析
上記にて得られた各生成物(PHA)の分子構造を核磁気共鳴法(NMR)を用いたH−NMRによって確認した。NMR測定は、MSL400分光器(Bruker)を用い、Hに対し周波数400MHzにて25℃で行った。ドデカン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および中和BDFBを各々炭素源として得られた各生成物のH−NMRスペクトルを、各々図3〜図6に示す。
【0086】
その結果、図3〜図6に示すように、全ての生成物がPHAであることを確認することができた。また、図3〜図5に示すように、酢酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、およびドデカン酸ナトリウムを各々炭素源として生成されたPHAは、不飽和結合を有しないポリマーであることが明らかとなった。これに対し、図6に示すように、中和BDFBを炭素源として生成されたPHAは、不飽和結合を有しないモノマーユニットと不飽和結合を有するモノマーユニットとで構成されるコポリマーであることが明らかとなった。
【0087】
(3)分子量測定
つづいて、上記にて得られた各PHAの分子量をゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC測定方法は、TSKgel SuperHZM-Hカラム(6.0nmI.D.×150mm;東ソー)を2本直列に接続し、移動相としてクロロホルムを用い、40℃、流速0.3mL/分にて測定した。純正のポリスチレンを用いて検量線を作成し、各数平均分子量(Mn)、各重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mn/Mw)を算出した。その結果を図1に示す。
【0088】
図1に示すように、中和BDFBを炭素源として生成されたPHAは、ドデカン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムを各々炭素源として生成されたPHAと比較して、低分子量化していることが示された。これは、中和BDFBに含有されているグリセリン等による影響ではないかと発明者等は推測している。
【0089】
(4)組成分析
さらに、上記にて得られた各PHAの組成をガスクロマトグラフ法によって分析した。測定方法と条件とを以下に示す。まず、各PHAを15重量%濃度の硫酸メタノール溶液2mLとクロロホルム2mLとの混合液に溶解し、100℃で140分間処理しアルコリシスした。冷却後、超純水を1mL加えよく混合し静置し2層に分離させ、この下層を回収しフィルター濾過により不溶物を除去した。このうち0.5mLと、0.1vol%カプリル酸メチルを含むクロロホルム溶液0.5mLとを混合し、FIDを備えたキャピラリーガスクロマトグラフGC−2010(島津製作所)にて昇温分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。カラムは、ヒューズド・シリカ・キャピラリーカラムDB−5(カラム内径0.25mm、液層膜厚0.25μm、カラム長30m;島津製作所)を使用した。初発温度90℃で5分、昇温速度5℃/分、および最終温度250℃で2分の分析条件にて行った。その結果を図2に示す。
【0090】
その結果、図2に示すように、炭素源の違いにより生成PHAの組成が異なることが明らかとなった。H−NMRの結果、中和BDFBを炭素源として生成されたPHAは不飽和結合を有するモノマーユニットを構成モノマーとして含むという解析結果を得ているが、その含有量が非常に少ないためガスクロマトグラフ法では検出されなかったと発明者等は考えている。
【0091】
以上、上記(2)〜(4)における結果から、SG4502は、多種類の炭素源を利用して多種類のPHAを生成可能な菌株であるといえる。つまり、SG4502を用いたPHAの生成では、炭素源を適宜選択することによって所望の物性を有するPHAを選択的に生成することが可能となる。
【実施例3】
【0092】
<Pseudomonas sp. SG4502のPHA重合酵素遺伝子のクローニング>
SG4502のPHA重合酵素を以下の方法にてクローニングした。
【0093】
(1)Pseudomonas sp. SG4502の染色体DNAの調製
まず、SG4502を2mLの滅菌したNR培養液において45℃で一晩培養した。培養液100μLを2mLの新しいNR培地に入れ、培養液の濁度(吸光度600nm)が0.7になるまで45℃で振盪培養した。培養終了後、培養液から7000rpmで10分間の遠心分離処理により菌体を分離し、DNeasy Blood & Tissue Kit(キアゲン)にて染色体DNAを100μL(DNA濃度120ng/μL)調製した。
【0094】
(2)PHA重合酵素遺伝子を含むDNA断片の取得
次に、公知である数種のPHA重合酵素遺伝子の保存領域を2つ選択し、これらをコードするDNA塩基配列を推定して、FEMS Micobiology Letters(2001)198, pp. 165-170を参考としながら2種類のオリゴヌクレオチドを合成した。その配列は、
5’−ccatgacagc ggcctgttca cctg−3’(配列番号8)
5’−tcgacgatca ggtgcaggaa cagcc−3’(配列番号9)
で表される。
【0095】
上記配列番号8および配列番号9のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCRを以下の条件で行った。
−反応試薬−
TaKaRa LA Taq with GC Buffer(宝酒造)の付属のマニュアルに従って反応液を調製した。反応には2×GC緩衝液Iを用い、染色体DNAとしては本実施例(1)で得たものを1μL用いた。
−反応条件−
94℃で1分、94℃で30秒、70℃で5分の各反応を1サイクルとして10サイクル行い、その後、94℃で30秒、68℃で5分の各反応を1サイクルとして20サイクル行い、さらに68℃で10分の反応を行った。
その結果、約5.2kbpのDNA断片の増幅が確認された。
【0096】
次いで、この増幅されたDNA断片をTOPO TA Cloning kit with TOP 10 cells(Invitrogen)用いて、プラスミドベクターpCR2.1-TOPOにTAクローニングした。操作は付属のマニュアルに従って行った。形質転換液を、アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB寒天培地に塗布し、37℃で24時間静置培養した。生じたコロニーをLB培地2mLに植菌し、37℃で一晩培養した後にプラスミドDNAを調製した。この得られたプラスミドをpC1ZC2_SG4502と命名し、平成20年6月2日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-579として寄託した。
【0097】
(3)PHA重合酵素遺伝子の塩基配列解析及びPHA重合酵素遺伝子の検索
つづいて、プラスミドpC1ZC2_SG4502をテンプレートとして、各々のDNA断片の塩基配列を決定した。塩基配列の決定は種々の合成DNAをプライマーとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ABI)およびDNAシーケンサー(ABI)を用いて、常法に従って行った。TAクローニングされた挿入DNAを、種々の合成DNAをプライマーとして用いて、ジデオキシ法により約5.2kbpの塩基配列を決定した。
【0098】
さらに、この塩基配列について遺伝子領域を予測するORF Finder (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/gorf/)とBLASTとを用いた相同性解析の結果、3つのオープンリーディングフレームが確認された。オープンリーディングフレーム1(ORF1)は1680塩基で構成されるとともにPseudomonas stutzeri由来PHA重合酵素Iをコードする遺伝子{FEMS Microbiol. Lett. 234(2), 231-237(2004)、Accession No. AY278219}とアミノ酸配列レベルで約89%の相同性を有することが、オープンリーディングフレーム2(ORF2)は906塩基で構成されるとともにPseudomonas stutzeri由来PHA分解酵素をコードする遺伝子(同前)とアミノ酸配列レベルで約95%の相同性を有することが、オープンリーディングフレーム3(ORF3)は1692塩基で構成されるとともにPseudomonas stutzeri由来PHA重合酵素IIをコードする遺伝子(同前)とアミノ酸配列レベルで約90%の相同性有することが、各々確認された。
【0099】
得られた塩基配列を基にして、pC1ZC2_SG4502にクローニングされたSG4502由来の約5.2kbのDNA断片の制限酵素地図を作成した。この制限酵素地図を図7に示す。
【0100】
そして、ORF1の塩基配列を配列番号2に、ORF1によりコードされるアミノ酸配列を配列番号3に、ORF3の塩基配列を配列番号4に、ORF3によりコードされるアミノ酸配列を配列番号5に、ORF2の塩基配列を配列番号6に、および塩基配列から翻訳されるポリペプチドのアミノ酸一次配列を配列番号7に、各々示した。また、ORF1の塩基配列をPHA重合酵素I遺伝子とし、ORF3の塩基配列をPHA重合酵素II遺伝子とした。
【実施例4】
【0101】
<Pseudomonas sp. SG4502由来のPHA重合酵素によるPHAのin vitro合成>
SG4502由来のPHA重合酵素IおよびPHA重合酵素IIを、以下の方法にて単離・調製し、これを用いてPHAのin vitro合成を試みた。
【0102】
(1)PHA重合酵素IおよびPHA重合酵素IIの単離・調製
1)PHA重合酵素I
上記実施例3(4)のpC1ZC2_SG4502をテンプレートとして、下記条件にてPCR法によりPHA重合酵素I遺伝子を増幅し、約1.7kbpのBamHIサイトとKpnIサイトとを有するPHA重合酵素Iの遺伝子断片を得た。この遺伝子断片をBamHIとKpnIで処理したベクターpQE80(キアゲン)にライゲーションし、反応液を用いて大腸菌JM109を形質転換した。得られた形質転換体からPHA重合酵素I遺伝子を有するプラスミドpQC1SGを得た。このプラスミドを大腸菌BL21に導入し、PHA重合酵素I調製用の大腸菌を作製した。
【0103】
PCR条件:
センスプライマーcgggatccaacaagatcgccgaagacctacag(配列番号10)
アンチセンスプライマーggggtacctcatcgttcgtgcacgtaggttcc(配列番号11)
Pyrobest DNA Polymerase(宝酒造)を用い、付属のマニュアルに従って反応液を調製した。98℃で20秒、55℃で20秒、72℃で1分40秒の各反応を1サイクルとして30サイクル行った。
【0104】
2)PHA重合酵素II
pC1ZC2_SG4502をテンプレートとして、下記条件にてPCR法によりPHA重合酵素II遺伝子を増幅し、約1.7kbpのBglIIサイトとKpnIサイトを有するPHA重合酵素IIの遺伝子断片を得た。この遺伝子断片をBamHIとKpnIで処理したベクターpQE80(キアゲン)にライゲーションし、反応液を用いて大腸菌JM109を形質転換した。得られた形質転換体からPHA重合酵素II遺伝子を有するプラスミドpQC2SGを得た。このプラスミドを大腸菌BL21に導入し、PHA重合酵素II調製用の大腸菌を作製した。
【0105】
PHA重合酵素II遺伝子についてのPCR条件:
センスプライマーgaagatctcccacgcgccatcaacccgctgtc(配列番号12)
アンチセンスプライマーggggtacctcagcgcaccagcacgtaggtgccc(配列番号13)
Pyrobest DNA Polymerase(宝酒造)を用い、マニュアルに従って反応液を調製した。98℃で20秒、65℃で20秒、72℃で1分40秒の各反応を1サイクルとして30サイクル行った。
【0106】
本実施例(1)1)および2)で得られたPHA重合酵素調製用の大腸菌を、各々アンピシリンを含む1000mLのLB培地中において20℃で8時間培養した後、IPTGを終濃度0.25mMになるように添加して、さらに16時間培養し、菌体内にPHA重合酵素を蓄積させた。この菌体を超音波破砕によって破壊した後、菌体内の可溶性タンパク質を回収した。この回収したタンパク質をNi−NTAアガロースゲルカラム(キアゲン)に供し、(6×His)−PHA重合酵素Iまたは(6×His)−PHA重合酵素IIをワンステップで精製した。
【0107】
(2)PHA生成試験
次に、本実施例(1)で得られたPHA重合酵素IおよびPHA重合酵素IIを用いて、図8(a)または(b)に示す反応経路によりPHAの生成を試みた。この際、複数の基質を用いてPHA生成量および生成PHAの性質について比較した。
【0108】
1)基質が2−ヘキセン酸の場合
具体的には、水相反応溶液として、100mMTris-HClバッファー(pH8.0)と、1.0mMCoAと、100mM2−ヘキセン酸と、1.0mgアシルCoAシンセターゼと、30mMATPと、10mMMgCl2と、0.2mg/mlBSAと、0.4Uピロフォスファターゼと、ヒドラターゼとを含む溶液5mLを調製した。最後に1.0mgのPHA重合酵素IまたはPHA重合酵素IIを水相に添加し、30℃で72時間反応させた。この反応経路を図8(a)に示す。
【0109】
反応終了後、各反応液にクロロホルムを5mL加え、70℃で3時間、生成物の抽出を行った。各抽出液をフィルター(0.2μmPTFEメンブラン;アドバンテック)にてろ過し、50mLのメタノールを加えて4℃で一晩放置した後、生成した沈殿物をフィルター(同前)を用いてろ過し回収した。生成物を真空乾燥させて収量を測定したところ、PHA重合酵素Iにおいて1.8mgの生成量、PHA重合酵素IIにおいて2.4mgの生成量であった。
【0110】
次に、得られた各生成物の分子構造解析をNMRにより行った。測定条件は、上記実施例2(2)と同様である。PHA重合酵素Iを用いて得られた生成物のH−NMRスペクトルを図9に、PHA重合酵素IIを用いて得られた生成物のH−NMRスペクトルを図10に示す。その結果、図9および図10に示すように、どちらの生成物もポリ3−ヒドロシキヘキサノエート{P(3HHx)}であることが確認できた。
【0111】
つづいて、得られた各PHAの分子量測定をGPCにより行った。測定条件は、上記実施例2(3)と同様である。その結果、PHA重合酵素Iを用いて得られたPHAは、Mn=33.8×10,Mw=72.6×10,Mn/Mw=1.7であった。一方、PHA重合酵素IIを用いて得られたPHAは、Mn=17.1×10,Mw=19.1×10,Mn/Mw=2.1であった。これらの結果から、PHA重合酵素IまたはPHA重合酵素IIを用いることによって、高分子量のPHAが生成できることが明らかとなった。
【0112】
2)基質がクロトン酸の場合
上記(1)の2−ヘキセン酸に変えてクロトン酸を用いて同様の操作を行った。この反応経路を図8(b)に示す。その結果、PHA重合酵素IまたはPHA重合酵素IIのどちらを用いた場合でも生成物を確認することができた。PHA重合酵素IIにおいては、0.3mgの生成量であり、生成物のH−NMRスペクトル(図11)から、生成物がポリ3−ヒドロキシブチレート{P(3HB)}であることが確認できた。
【実施例5】
【0113】
<Pseudomonas sp. SG4502由来のPHA重合酵素遺伝子を用いたPHAのin vivo合成>
次に、SG4502由来のPHA重合酵素遺伝子を導入してPHA生成能を有する形質転換体を作製し、これを用いてPHA生成を試みた。
【0114】
(1)形質転換体の作製
まず、上記実施例3(1)で得たSG4502の染色体DNAをテンプレートとして、KOD FX(TOYOBO)の付属のマニュアルに従って反応液を調製し、下記条件のPCR法によりPHA重合酵素I遺伝子およびPHA重合酵素II遺伝子を各々増幅した。
【0115】
PCR条件:
−PHA重合酵素I遺伝子−
センスプライマーgccatgggca acaagatcgc cgaagaccta cagc(配列番号14)
アンチセンスプライマーtctagattca tcgttcgtgc acgtaggttc(配列番号15)
−PHA重合酵素II遺伝子−
センスプライマーccatgggtcc cacgcgccat caacccgctg tcaac (配列番号16)
アンチセンスプライマーtgctctagat tcagcgcacc agcacgtagg(配列番号17)
94℃で2分を1サイクル行った後、94℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分45秒の各反応を1サイクルとして30サイクル行った。
【0116】
この各増幅産物をTArget Clone-Plus-(TOYOBO)を用いてTAクローニングし、得られた各プラスミドを各々pTA-phaC1sg,pTA-phaC2sgとした。これをテンプレートとして、上記実施例3(3)の方法によりPHA重合酵素I遺伝子およびPHA重合酵素II遺伝子の塩基配列を確認した。その後、各プラスミドを制限酵素NcoIとXbaIとで処理し、PHA重合酵素I遺伝子およびPHA重合酵素II遺伝子を得た。
【0117】
次に、Ralstonia eutropha H16由来の合成酵素遺伝子を含むプラスミドpTI305(J. Biosci. Bioeng., v94, pp. 343-350, 2002)をテンプレートとして、KOD-plus-(TOYOBO)の付属のマニュアルに従って反応液を調製し、下記条件にてPCR法によりPHA合成酵素の遺伝子発現プロモーター領域を増幅した。これにより、HindiIIIサイトを有する遺伝子発現プロモーター領域の遺伝子断片を得た。
【0118】
PCR条件:
センスプライマーaaaccaagct tcccgggcaa gtaccttg(配列番号18)
アンチセンスプライマーaaccaagctt ccatggtttg attgtctctc tgc(配列番号19)
94℃で2分を行った後、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で1分の各反応を1サイクルとして30サイクル行った。
【0119】
この遺伝子断片を制限酵素HindiIIIで処理したクローニングベクターpUC18(宝酒造)にライゲーションし、pUC18のlacプロモーターに対して逆方向にこの遺伝子断片を挿入したプラスミドをpUC-Preとした。
【0120】
プラスミドpUC-Preを制限酵素NcoIとXbaIとで処理し、上記にて得られたNcoIサイトとXbaIサイトとを有するPHA重合酵素I遺伝子およびPHA重合酵素II遺伝子を挿入して、各々、pUC-PrephaC1sgとpUC-PrephaC2sgとを得た。
【0121】
これらpUC-PrephaC1sg、pUC-PrephaC2sg、およびpUC-Preを用いて、Ralstonia eutropha H16由来のモノマー合成関連遺伝子(β−ケトチオラーゼ遺伝子およびNADP依存性アセトアセチルCoAレダクターゼ遺伝子)を含むプラスミドpSRAB(J. Biosci. Bioeng., v94, pp. 343-350, 2002)を有する大腸菌BL21を常法にて、各々形質転換した。これにより、pUC-PrephaC1sg形質転換体と、pUC-PrephaC2sg形質転換体と、pUC-Pre形質転換体とを作製した。
【0122】
(2)PHA生成試験
つづいて、本実施例(1)にて作製されたpUC-PrephaC1sg形質転換体と、pUC-PrephaC2sg形質転換体と、pUC-Pre形質転換体とを用いてPHA生成を試みた。
【0123】
まず、各形質転換体を、各々100μg/mLアンピシリンと30μg/mLクロラムフェニコールとを含むLB培地2mLに植菌し、37℃で一晩振盪培養した。この培養液の全量を、1%グルコースと100μg/mLアンピシリンと30μg/mLクロラムフェニコールとを含むLB培地100mLの入った500mLの羽根付き三角フラスコ(イワキ)に添加して、37℃、160rpmにて培養した。培養8時間後にIPTGを最終濃度が0.5mMになるように添加して、さらに40時間培養した。培養終了後、菌体を遠心分離して回収し、蒸留水にて2回洗浄し凍結乾燥した。乾燥菌体約50mgを常法によりメタノリシス処理し、上記実施例2(4)と同様、ガスクロマトグラフ法による解析を行った。その結果を図12(a)〜(c)に示す。(a)はpUC-Pre形質転換体を、(b)はpUC-PrephaC1sg形質転換体を、(c)はpUC-PrephaC2sg形質転換体を用いたPHA生成試験の解析結果である。
【0124】
その結果、図12(b)および(c)に示すように、pUC-PrephaC1sg形質転換体と、pUC-PrephaC2sg形質転換体とを用いた生成試験において、PHA、特にP(3HB)に由来するピークが検出された。一方、図12(a)に示すように、pUC-Pre形質転換体を用いた場合においてはPHAに由来するピークが検出されなかった。これらの結果から、pUC-PrephaC1sg形質転換体はPHA重合酵素Iを、pUC-PrephaC2sg形質転換体はPHA重合酵素IIを発現し、これによりP(3HB)を重合することができることが確認された。
【0125】
以上のような本実施形態によれば、PHA生成能を有する新規微生物、PHA重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、PHA重合酵素活性を有するポリペプチド、PHA重合酵素の製造方法、およびPHAの製造方法を提供することができる。
【0126】
なお、本発明に係るPHA生成能を有する新規微生物、PHA重合酵素遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターにより形質転換された形質転換体、PHA重合酵素活性を有するポリペプチド、PHA重合酵素の製造方法、およびPHAの製造方法は、前述した実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】実施例2における、SG4502により生成されたPHA生成量と分子量とを示す図表である。
【図2】実施例2における、SG4502により生成されたPHA組成を示す図表である。
【図3】実施例2(2)における、ドデカン酸ナトリウムを炭素源としてSG4502により生成された化合物のH−NMRスペクトルを示す図ある。
【図4】実施例2(2)における、オクタン酸ナトリウムを炭素源としてSG4502により生成された化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例2(2)における、酢酸ナトリウムを炭素源としてSG4502により生成された化合物のH−NMRスペクトルを示す図ある。
【図6】実施例2(2)における、中和BDFBを炭素源としてSG4502により生成された化合物の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図7】Pseudomonas sp. SG4502株由来の約5.2kbのDNA断片の制限酵素地図である。
【図8】実施例4における、PHAのin vitro合成反応経路を示す図である。(a)は2−ヘキセン酸を、(b)はクロトン酸を基質とする反応経路を示す。
【図9】実施例4(2)における、2−ヘキセン酸を基質としてPHA重合酵素Iを用いて生成された化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例4(2)における、2−ヘキセン酸を基質としてPHA重合酵素IIを用いて生成された化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図11】実施例4(2)における、クロトン酸を基質としてPHA重合酵素IIを用いて生成された化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図12】実施例5(2)における、生成された化合物のガスクロマトグラフィーチャートを示す図である。(a)はpUC-Pre形質転換体を、(b)はpUC-PrephaC1sg形質転換体を、(c)はpUC-PrephaC2sg形質転換体を用いて生成された化合物のガスクロマトグラフィーチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート生成能を有し、配列番号1に記載の塩基配列と99%以上の相同性を示す16S rRNA遺伝子(16S rDNA)を有する微生物であって、以下の(a)、(b)、(c)、および(d)の特性を有する新規微生物:
(a)活動温度範囲の最適温度が少なくとも45℃であり、
(b)pH6〜10で生育可能であり、
(c)好気性かつグラム陰性で極鞭毛を有する桿菌状細菌であって、カタラーゼ、オキシダーゼ、アルギニンジヒドロラーゼ、37℃の4%NaCl、および50℃の4%NaClに耐性であり、
(d)クエン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ベタイン、L−リジン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、L−アラニン、L−イソロイシン、L−プロリン、ドデカン、トリデカン、ヘキサデカン、ノナデカン、エイコサン、パルミチン酸、オクタナール、1−オクタノール、ラウリルアルコール、Tween80、および安息香酸ナトリウムに資化性を有する。
【請求項2】
Pseudomonas sp. SG4502(受託番号:NITE P−578)であるポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する新規微生物。
【請求項3】
以下の(a)、(b)、または(c)のポリペプチドをコードするポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子:
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
【請求項4】
以下の(a)、(b)、(c)、または(d)の塩基配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子:
(a)配列番号2に示される塩基配列;
(b)塩基配列(a)またはこれに相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)塩基配列(a)において1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなり、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)塩基配列(a)と少なくとも80%以上の塩基配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【請求項5】
以下の(a)、(b)、または(c)のポリペプチドをコードするポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子:
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
【請求項6】
以下の(a)、(b)、(c)、または(d)の塩基配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子:
(a)配列番号4に示される塩基配列;
(b)塩基配列(a)またはこれに相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)塩基配列(a)において1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなり、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)塩基配列(a)と少なくとも80%以上の塩基配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【請求項7】
請求項3または請求項4に記載のポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子、請求項5または請求項6に記載のポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子、および以下の(a)、(b)、または(c)のポリペプチドをコードするポリヒドロキシアルカノエート分解酵素遺伝子からなる群から選択される1または2以上の遺伝子を含む、遺伝子発現カセット:
(a)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート分解酵素活性を有するポリペプチド。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載のポリヒドロキシアルカノエート重合酵素I遺伝子、請求項5または請求項6に記載のポリヒドロキシアルカノエート重合酵素II遺伝子、および以下の(a)、(b)、(c)、または(d)の塩基配列を含むポリヒドロキシアルカノエート分解酵素遺伝子からなる群から選択される1または2以上の遺伝子を含む、遺伝子発現カセット:
(a)配列番号6に示される塩基配列;
(b)塩基配列(a)またはこれに相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)塩基配列(a)において1または2以上の塩基配列が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなり、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)塩基配列(a)と少なくとも80%以上の塩基配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の遺伝子発現カセットを含むベクター。
【請求項10】
組換えプラスミド pC1ZC2_SG4502(受託番号:NITE P−579)であるベクター。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のベクターにより形質転換された形質転換体。
【請求項12】
請求項11において、大腸菌(Escheichia coli)である形質転換体。
【請求項13】
以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、または(f)のポリペプチド
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)アミノ酸配列(a)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(c)アミノ酸配列(a)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
(d)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(e)アミノ酸配列(d)において1または2以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド;
(f)アミノ酸配列(d)と少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつポリヒドロキシアルカノエート重合酵素活性を有するポリペプチド。
【請求項14】
請求項1または請求項2に記載の新規微生物、もしくは請求項11または請求項12に記載の形質転換体を培養し、得られた培養物からポリヒドロキシアルカノエート重合酵素を採取するポリヒドロキシアルカノエート重合酵素の製造方法。
【請求項15】
請求項1または請求項2に記載の新規微生物、もしくは請求項11または請求項12に記載の形質転換体を培養し、得られた培養物からポリヒドロキシアルカノエートを採取するポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法により得られたポリヒドロキシアルカノエート重合酵素を用いて、ポリヒドロキシアルカノエートを生成するポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項17】
請求項16において、α−不飽和脂肪酸を基質としてポリ3−ヒドロキシアルカノエートを生成するポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項18】
請求項17において、前記α−不飽和脂肪酸と前記ポリ3−ヒドロキシアルカノエートとが、2−ヘキセン酸とポリ3−ヒドロキシヘキサノエート、および/またはクロトン酸とポリ3−ヒドロキシブチレートであるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−17124(P2010−17124A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180132(P2008−180132)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506156665)株式会社アグリバイオインダストリ (16)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】