説明

ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素をクロロヒドリンに転化させる方法

本発明は、(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させて、クロロヒドリン、クロロヒドリンのエステルおよび水を含有する混合物を得る工程と、(b)工程(a)において得た混合物の少なくとも一部分に、蒸留処理および/またはストリッピング処理を施して、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分を得る工程と、(c)工程(b)で得た画分の少なくとも一部分に、少なくとも1つの添加物の存在下で分離操作を施して、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮されており、かつ40重量%未満の水を含有する画分を得る工程による、クロロヒドリンを調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いずれも2005年5月20日出願の特許出願FR05.05120および特許出願EP05104321.4、ならびにいずれも2005年11月8日出願の米国仮特許出願60/734659、60/734627、60/734657、60/734658、60/734635、60/734634、60/734637および60/734636の利益を主張するものであり、これらすべての内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、クロロヒドリンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロロヒドリンは、エポキシドの調製における反応中間体である。例えば、ジクロロプロパノールは、エピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂の調製における反応中間体である(「Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、Forth Edition、1992、Vol.2、156頁、John Wiley & Sons,Inc.)。
【0004】
既知の方法によれば、特に塩化アリルをハイポクロル化することによって、アリルアルコールを塩素化することによっておよびグリセリンを塩酸化することによってジクロロプロパノールを得ることが可能である。この後者の方法は、ジクロロプロパノールが化石原料からまたは再生可能な原料から出発して得ることができ、また化石材料は、例えば石油、天然ガスまたは石炭などの天然の石油化学資源から得られるが、これらは地球上での入手可能性に限りがあることが知られているという点で利点を有する。
【0005】
SOLVAY SAのWO2005/054167出願は、グリセリンを塩化水素とアジピン酸などの触媒の存在下で反応させることによるジクロロプロパノールの調製方法を記載している。この方法においては、水およびジクロロプロパノールの混合物が共沸蒸留によって分取され、続いてこれからジクロロプロパノールがデカンテーションによって分離される。このジクロロプロパノールは大量の水を含有しており、これの除去は余分な費用を生じ、それがこの方法の経済性を成り立たせないおそれがある。
【特許文献1】特許出願FR05.05120
【特許文献2】特許出願EP05104321.4
【特許文献3】米国仮特許出願60/734659
【特許文献4】米国仮特許出願60/734627
【特許文献5】米国仮特許出願60/734657
【特許文献6】米国仮特許出願60/734658
【特許文献7】米国仮特許出願60/734635
【特許文献8】米国仮特許出願60/734634
【特許文献9】米国仮特許出願60/734637
【特許文献10】米国仮特許出願60/734636
【特許文献11】WO2005/054167
【特許文献12】FR2752242
【特許文献13】FR2869612
【特許文献14】FR2869613
【特許文献15】本出願と同日に出願された標題「Process for preparing chlorohydrin by converting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbons」の特許出願
【特許文献16】本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin by reacting a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon with a chlorinating agent」の特許出願
【特許文献17】本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin in corrosion-resistant apparatus」の特許出願
【特許文献18】本出願と同日に出願された標題「Continuous Process for Preparing Chlorohydrins」の出願
【特許文献19】本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin in a liquid phase」の出願
【特許文献20】本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin starting from a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願
【特許文献21】本発明と同日に出願された標題「Process for preparing an epoxide starting from a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon and chlorinating agent」の出願
【特許文献22】本出願と同日に出願された標題「Process for preparing an epoxide starting from a chlorohydrin」の出願
【非特許文献1】「Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、Forth Edition、1992、Vol.2、156頁、John Wiley & Sons,Inc.
【非特許文献2】「Industrial Bioproducts:Today and Tomorrow」、Energetics,Incorporated for the U.S.Department of Energy,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,Office of the Biomass Program、July 2003、49、52〜56頁
【非特許文献3】G.P. Gibson、The preparations, properties, and uses of glycerol derivatives、Part III、The chlorohydrins、970〜975頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの難点を現さないクロロヒドリンを調製する方法を提供することである。
【0007】
したがって、本発明は以下の工程を含むクロロヒドリンを調製する方法を提供する:
(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させて、クロロヒドリン、クロロヒドリンエステルおよび水を含有する混合物を得る工程、
(b)工程(a)において得た混合物の少なくとも一部分に、蒸留処理および/またはストリッピング処理を施して、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分を得る工程、
(c)工程(b)で得た画分の少なくとも一部分に、少なくとも1つの添加物の存在下で分離操作を施して、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮されており、かつ40重量%未満の水を含有する画分を得る工程。
【0008】
この工程(c)の分離操作は、好ましくはデカンテーションである。
【0009】
本発明による方法の工程(c)において少なくとも1つの添加物を使用することによって、添加物を存在させずに工程(c)の分離操作を行う場合よりも、工程(b)で得た濃縮された画分の迅速な分液を得ること、迅速なデカンテーションを得ること、およびクロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮され、より少ない水を含有する画分を迅速に取り出すことが可能であることが見出された。
【0010】
意外にも、工程(c)で得たクロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中における添加物の存在は、クロロヒドリンを調製する方法の下流の調製方法、例えばクロロヒドリンを脱塩化水素化することによってエポキシドを調製する方法、などを妨害しないことも見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
「ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素」という用語は、2つの異なる飽和炭素原子に結合している少なくとも2つのヒドロキシ基を含有する炭化水素のことを言うものである。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、2〜60個の炭素原子を含むことができるが、この範囲だけには限定されない。
【0012】
ヒドロキシ官能基(OH)を有するポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のそれぞれの炭素は、2つ以上のOH基を有することはできず、sp3混成を有していなければならない。OH基を有する炭素原子は、第一級、第二級または第三級であってよい。本発明において使用されるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、1つのOH基をもつsp3混成炭素原子を少なくとも2つ有していなければならない。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、隣接ジオール(1,2-ジオール)または近接トリオール(1,2,3-トリオール)を、これらの反復単位のより大きな数字で表される隣接または近接順序のものを含めて、含有する任意の炭化水素を含む。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素の定義は、例えば、1,3-、1,4-、1,5-および1,6-ジオール官能基の1つまたは複数をも含む。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、ポリビニルアルコールなどのポリマーであってもよい。例えば、ジェミナルジオールは、この種類のポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素からは除外される。
【0013】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、芳香族部分または、例えば、ハロゲン、イオウ、リン、窒素、酸素、ケイ素およびホウ素型のヘテロ原子を含むヘテロ原子、およびこれらを混合して含有してもよい。
【0014】
本発明において使用することができるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、例えば、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1-クロロ-2,3-プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、2-クロロ-1,3-プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2,3-プロパントリオール(「グリセロール」または「グリセリン」としても知られている)、およびこれらの混合物を含む。好ましくは、本発明において使用するポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、クロロプロパンジオールおよび1,2,3-プロパントリオール、ならびにこれらの2つ以上の混合物を含む。より好ましくは、本発明において使用するポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、クロロプロパンジオールおよび1,2,3-プロパントリオール、ならびにこれらの2つ以上の混合物を含む。1,2,3-プロパントリオール、すなわちグリセリンが最も好ましい。
【0015】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルは、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素中に存在してもよくおよび/またはクロロヒドリンを調製する方法の中で生成されてもよくおよび/またはクロロヒドリンを調製する方法の前に調製されてもよい。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルの例は、エチレングリコールモノ酢酸エステル、プロパンジオールモノ酢酸エステル、グリセリンモノ酢酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジ酢酸エステルおよびこれらの混合物を含む。
【0016】
「クロロヒドリン」という用語は、本明細書では、別々の飽和炭素原子に結合している少なくとも1つのヒドロキシ基および少なくとも1つの塩素原子を含有する化合物を記載するために使用する。少なくとも2つのヒドロキシ基を含有するクロロヒドリンもポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素である。したがって、出発原料および反応生成物がそれぞれクロロヒドリンであることもある。その場合は、「製品」クロロヒドリンは、出発クロロヒドリンよりも多く塩素化されており、すなわち出発クロロヒドリンより多くの塩素原子およびより少ないヒドロキシ基を有する。好ましいクロロヒドリンは、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノールおよびこれらの少なくとも2つの混合物である。ジクロロプロパノールが特に好ましい。より特に好ましいクロロヒドリンは、2-クロロエタノール、1-クロロプロパン-2-オール、2-クロロプロパン-1-オール、1-クロロプロパン-2,3-ジオール、2-クロロプロパン-1,3-ジオール、1,3-ジクロロプロパン-2-オール、2,3-ジクロロプロパン-1-オールおよびこれらの少なくとも2つの混合物である。
【0017】
「エポキシド」という用語は、本明細書において、炭素-炭素結合上に架橋されている少なくとも1つの酸素を含む化合物を記載するために使用される。一般的に言えば、炭素-炭素結合の炭素原子は隣接しており、化合物は水素原子およびハロゲンなどの炭素原子および酸素原子以外の原子を含有してもよい。好ましいエポキシドはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、エピクロロヒドリン、およびこれらの少なくとも2つの混合物である。
【0018】
本発明による方法におけるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物は、化石原料から出発してまたは再生可能な原料から出発して、好ましくは再生可能な原料から出発して得ることができる。
【0019】
化石原料とは、例えば石油、天然ガスおよび石炭などの天然の石油化学資源の加工から得た材料を意味する。これらの材料の中でも2個および3個の炭素原子を含有する有機化合物が好ましい。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンである場合は、アリルクロリド、アリルアルコールおよび「合成」グリセリンが特に好ましい。「合成」グリセリンは、一般的に石油化学資源から得たグリセリンを意味する。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がエチレングリコールである場合は、エチレンおよび「合成」エチレングリコールが特に好ましい。「合成」エチレングリコールは、一般的に石油化学資源から得たエチレングリコールを意味する。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がプロピレングリコールである場合は、プロピレンおよび「合成」プロピレングリコールが特に好ましい。「合成」プロピレングルコールとは、一般的に石油化学資源から得たプロピレングリコールを意味する。
【0020】
再生可能な材料とは、再生可能な天然資源の加工から得た材料を意味する。これらの材料の中でも「天然」エチレングリコール、「天然」プロピレングリコールおよび「天然」グリセリンが好ましい。「天然」のエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンは、例えば糖類の熱化学的方法による転化によって得られ、これらの糖類はバイオマスから出発して「Industrial Bioproducts:Today and Tomorrow」、Energetics,Incorporated for the U.S.Department of Energy,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,Office of the Biomass Program、July 2003、49、52〜56頁に記載されているように得ることができる。これらの方法の1つは、例えば、グルコースの熱化学的転化によって得たソルビトールの接触水素化分解である。別の方法は、例えば、キシロースの水素化によって得たキシリトールの接触水素化分解である。このキシロースは、例えば、トウモロコシ繊維中に存在するヘミセルロースの加水分解によって得ることができる。「天然グリセリン」または「再生可能な原料から得たグリセリン」は、特にバイオディーゼル燃料の製造時に得たグリセリンあるいは一般的な動物または植物の油もしくは脂肪のケン化反応、エステル交換反応または加水分解反応などの転化時に得たグリセリンを意味する。
【0021】
天然グリセロールを調製するのに使用することができる油の中では、パーム油、パーム核油、コプラ油、ババス油、以前のまたは新しい(低エルカ酸)コルザ油、ヒマワリ油、コーン油、ヒマシ油、綿実油、ピーナッツ油、大豆油、アマニ油およびクランベ油などのすべての一般的な油ならびに、例えば、遺伝子組み換えまたは交雑によって得たヒマワリ植物またはコルザ植物から得たすべての油を挙げることができる。
【0022】
使用済みのフライ用油、様々な動物油、例えば魚油、タロウ、ラードおよびスクエアリンググリスさえも使用することができる。
【0023】
使用される油の中では、例えば重合またはオリゴマー化などの手段によって部分的に改質された油、例えばアマニ油およびヒマワリ油の「スタンド油」、ならびに吹込み植物油なども挙げることができる。
【0024】
特に適切なグリセリンは、動物脂肪の転化の間に得ることができる。もう1つの特に適切なグリセリンは、バイオディーゼル燃料の製造の間に得ることができる。第3の非常に適切なグリセリンは、動物または植物の油もしくは脂肪の、文献FR2752242、FR2869612およびFR2869613に記載されている不均一触媒の存在下での、エステル交換により得ることができる。より具体的には、不均一触媒は、アルミニウムと亜鉛の混合酸化物、亜鉛とチタンの混合酸化物、亜鉛とチタンとアルミニウムの混合酸化物およびビスマスとアルミニウムの混合酸化物から選択され、また不均一触媒は固定床の形態で使用される。この後者の方法は、バイオディーゼル燃料製造のための方法になることができる。
【0025】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された「Process for preparing chlorohydrin by converting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbons」の特許出願に記載されているとおりでよく、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0026】
元素の形態で表した全金属含有量が0.1μg/kg以上かつ1000mg/kg以下である、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させる、クロロヒドリンを調製する方法が特に挙げられる。
【0027】
本発明による方法においては、再生可能な原料から出発して得られたグリセリンを使用することが好ましい。
【0028】
本発明による方法においては、デカンテーション操作の結果として少なくとも2つの濃縮された相が得られ、これらの相は好ましくは液体である。クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮され、かつ40重量%未満の水を含む画分は、好ましくは液相である。
【0029】
本発明による方法においては、デカンテーション操作で、特に好ましくは2つの液相が得られることになる。クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分に相当する相は、有機相と呼ぶことにする。もう一方の画分に相当する相は、水相と呼ぶことにする。
【0030】
デカンテーションされた2相の重量比は、使用した塩素化剤の性質、および水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中の塩素化剤の量に応じて変化する。有機相および水相の合計質量中の有機相の質量のパーセンテージは、一般的には1以上、しばしば10以上、頻繁には20以上、特には40以上である。このパーセンテージは、一般的には99以下、しばしば90以下、頻繁には80以下、特に60以下である。
【0031】
工程(c)において存在する添加物は、酸、塩またはこれら2つの混合物でよい。酸および塩は、有機物でも無機物でもよい。無機の塩または酸の使用が好ましい。
【0032】
本発明による方法の第1の実施形態においては、無機酸を使用する。後者は、ハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸、硫化水素酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、炭酸、ホウ酸およびこれらの混合物から選択してよい。ハロゲン化水素、特に塩化水素の使用が好ましい。酸が塩化水素である場合は、気体形態、液体形態または水溶液もしくは有機物溶液の形態で使用することができる。塩化水素を気体形態または水溶液の形態で使用することが好ましい。
【0033】
工程(b)において分離され、デカンテーション操作を施されて濃縮された画分中の部分の酸の量は、一般的には0.01g/kg以上、しばしば0.3g/kg以上、頻繁には3g/kg以上、特には25g/kg以上である。この量は、一般的には110g/kg以下、頻繁には80g/kg以下、特に65g/kg以下である。
【0034】
工程(c)において分離された水相および有機相中の酸の量は、クロロヒドリン/水/酸の混合物の三成分系組成図から簡単に推定することができる。1,3-ジクロロプロパノール/水/塩化水素の混合物についてのこの種の三成分図は、G.P. Gibson、The preparations, properties, and uses of glycerol derivatives、Part III、The chlorohydrins、970〜975頁、に見ることができる。
【0035】
工程(c)において分離された水相中の酸の量は、一般的には30g/kg以上、しばしば50g/kg以上、頻繁には75g/kg以上、特に100g/kg以上である。この量は、一般的には170g/kg以下、頻繁には150g/kg以下、特に130g/kg以下である。
【0036】
本発明による方法の第1の実施形態の第1の変形形態においては、酸は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中に存在する。
【0037】
本発明による方法の第1の実施形態の第2の変形形態においては、酸は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中には存在せず、この濃縮された画分に工程(c)のデカンテーション操作を施す前に加える。
【0038】
本発明による方法の第1の実施形態の第3の変形形態においては、酸は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中に存在し、かつこれの追加量をこの濃縮された画分に、工程(c)のデカンテーション操作を施す前に加える。
【0039】
本発明による方法の第2の実施形態においては、無機塩、好ましくは金属塩を使用する。後者は、金属のハロゲン化物、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫化物、硫化水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、亜リン酸塩、亜リン酸水素塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過炭酸塩、ホウ酸塩および過ホウ酸塩ならびにこれらの混合物から選択することができる。アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の使用が好ましい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、特に塩化ナトリウムが好ましい。塩は固体形態または水溶液もしくは有機物溶液で使用してもよい。これらを水溶液の形態で使用することが好ましい。
【0040】
第2の実施形態の第1の変形形態においては、すでに形成されている塩を、本発明による方法の工程(c)において加える。
【0041】
第2の実施形態の第2の変形形態においては、工程(b)において得た画分の部分中に存在する酸を、塩基性化合物と反応させることによってその場で塩を生成させてもよい。塩基性化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはこれらの少なくとも2つの混合物でよい。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩、ならびにこれらの混合物が好ましい。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中では、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムが好ましい。この第2の変形形態の利点は、酸の中和と、相分離に必要な塩の供給とを結合させることである。
【0042】
工程(c)においてデカンテーションされた水相中の塩の量は、一般的には0.4g/kg以上、しばしば5g/kg以上、頻繁には30g/kg以上、特に65g/kg以上である。この量は、一般的には450g/kg以下、しばしば350g/kg以下、頻繁には200g/kg以下、特に100g/kg以下である。
【0043】
本発明による方法のこの第2の実施形態においては、塩は、工程(b)において分取された水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中には存在せず、これは、この画分が工程(c)のデカンテーション操作をうける前に添加される。
【0044】
本発明による方法の第3の実施形態においては、先に上で記載したとおりの無機塩および無機酸の混合物を使用する。同じアニオンを有する酸および塩が好ましい。これらのアニオンの中では、ハロゲンイオン(ハライド)が特に好ましく、塩素イオン(クロライド)が大いに特に好ましい。
【0045】
本発明による方法のこの第3の実施形態の第1の変形形態においては、塩および酸は、工程(b)において分取された水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中には存在せず、これらは、この濃縮された画分に工程(c)のデカンテーション操作を施す前に添加する。
【0046】
本発明による方法のこの第3の実施形態の第2の変形形態においては、塩は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中には存在せず、これは、この濃縮された画分に工程(c)のデカンテーション操作を施す前に添加し、酸は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンが濃縮された画分中に存在する。
【0047】
本発明による方法のこの第3の実施形態の第2の変形形態においては、塩は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中には存在せず、これは、この濃縮された画分に工程(c)のデカンテーション操作を施す前に添加し、酸は、工程(b)において分取された、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中に存在し、この濃縮された画分に工程(c)のデカンテーション操作を施す前に、酸の追加量を添加する。
【0048】
クロロヒドリンエステルのモル数と、クロロヒドリンエステルのモル数およびクロロヒドリンのモル数の合計との間の比は、一般的には0.2以上、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.01以下である。
【0049】
本発明による方法においては、デカンテーション操作は、重力の作用下または遠心力の作用下で行うことができる。この操作は、重力の作用下で行うことが好ましい。
【0050】
本発明による方法においては、デカンテーション操作は100℃以下、しばしば80℃以下、頻繁には70℃以下、特に50℃以下の温度で行う。この温度は、一般的には4℃以上、しばしば10℃以上である。
【0051】
本発明による方法においては、デカンテーション時間は、一般的には120分間以下、好ましくは90分間以下、特に優先的には60分間以下である。この時間は、相分離器に供給される液体の容積流量に対する相分離器の容積として規定される。
【0052】
クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分中の水の量は、クロロヒドリン/水/酸 混合物の三成分系組成図から簡単に推定することができる。1,3-ジクロロプロパノール/水/塩化水素 混合物についてのこの種の三成分図は、G.P. Gibson、The preparations, properties, and uses of glycerol derivatives、Part III、The chlorohydrins、970〜975頁、に見ることができる。
【0053】
工程(c)で得た、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分の部分中の水の量は、好ましくは20重量%以下、しばしば10重量%以下、頻繁には5重量%以下、特に1.5重量%以下、大いに特に1重量%以下である。
【0054】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願2頁8行目から4頁2行目に具体的に開示されているものなどの粗生成物または精製品でよい。
【0055】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、SOLVAY S.A.の名義で本出願と同じ日に出願され、その内容を参照により本明細書に組み込む、標題「Process for preparing a chlorohydrin by chlorinating a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されているとおり、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、そのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量が5g/kg以下であるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物でよい。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択することができ、アルカリ土類金属はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選択することができる。
【0056】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量は、5g/kg以下、しばしば1g/kg以下、より特には0.5g/kg以下、ある種の事例では0.01g/kg以下である。グリセリンのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量は、一般的に0.1μg/kg以上である。
【0057】
本発明による方法においては、アルカリ金属は一般的にはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムであり、しばしばナトリウムおよびカリウム、頻繁にはナトリウムである。
【0058】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のリチウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0059】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のナトリウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0060】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のカリウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0061】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のルビジウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0062】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のセシウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0063】
本発明による方法においては、アルカリ土類金属元素は一般的にはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムであり、しばしばマグネシウムおよびカルシウム、頻繁にはカルシウムである。
【0064】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のマグネシウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0065】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のカルシウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0066】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のストロンチウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0067】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のバリウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、より特には2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0068】
本発明による方法においては、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、一般的に塩の形態、しばしば塩化物、硫酸塩およびこれらの混合物の形態で存在する。最もしばしば遭遇するのは塩化ナトリウムである。
【0069】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、塩素化剤は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願4頁25行目から6頁2行目に記載されているとおりでよい。
【0070】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、塩素化剤は、SOLVAY S.A.のWO2005/054167出願4頁30行目から6頁2行目に記載されているとおり塩化水素でよい。
【0071】
塩酸水溶液または好ましくは無水である塩化水素である塩素化剤が特に挙げられる。塩化水素は、例えば、塩化ビニルの製造などの有機塩素化合物を熱分解する方法、4,4-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)もしくはトルエンジイソシアネート(TDI)の製造、金属の酸洗法または硫酸もしくはリン酸などの無機酸と塩化ナトリウム、塩化カリウム、もしくは塩化カルシウムなどの金属塩化物との反応などに由来してもよい。
【0072】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法の好都合な一実施形態においては、塩素化剤は、気体塩化水素または塩化水素の水溶液、あるいはこれら2つの組合せである。
【0073】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、塩化水素は、塩化アリル製造プラントおよび/またはクロロメタン製造プラントおよび/または塩素化分解プラントおよび/または塩素化合物の高温酸化プラントから得た塩化水素の水溶液、または好ましくは無水の塩化水素でよく、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin by reacting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbons with a chlorinating agent」の特許出願に記載されているとおりであり、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0074】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物と、塩素化剤とから、クロロヒドリンを調製する方法であって、塩素化剤が、以下の化合物:窒素、酸素、水素、塩素、有機炭化水素化合物、有機ハロゲン化合物、有機酸素化合物、および金属、のうち少なくとも1つを含む方法が特に挙げられる。
【0075】
飽和および不飽和の脂肪族および芳香族炭化水素およびこれらの混合物から選択される有機炭化水素化合物が特に挙げられる。
【0076】
アセチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、プロパジエン、メチルアセチレンおよびこれらの混合物から選択される不飽和脂肪族炭化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよびこれらの混合物から選択される飽和脂肪族炭化水素、ならびにベンゼンである芳香族炭化水素が特に挙げられる。
【0077】
クロロメタン、クロロエタン、クロロプロパン、クロロブタン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノクロロプロペン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロブタジエン、クロロベンゼンおよびこれらの混合物から選択される有機塩素化合物である有機ハロゲン化合物が特に挙げられる。
【0078】
フルオロメタン、フルオロエタン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンおよびこれらの混合物から選択される有機フッ素化合物である有機ハロゲン化合物が特に挙げられる。
【0079】
アルコール、クロロアルコール、クロロエーテルおよびこれらの混合物である有機酸素化合物が特に挙げられる。
【0080】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、銅、鉛、ヒ素、コバルト、チタン、カドミウム、アンチモン、水銀、亜鉛、セレン、アルミニウム、ビスマスおよびこれらの混合物から選択される金属が特に挙げられる。
【0081】
塩化アリルを調製する方法および/またはクロロメタンを調製する方法および/または塩素化分解法および/または塩素化合物を800℃以上の温度で酸化する方法から塩素化剤を少なくとも部分的に得る方法が、より特に挙げられる。
【0082】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法の特に好都合な一実施形態においては、塩化水素は、塩化水素の水溶液であり、気体塩化水素を含有しない。
【0083】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤との反応は、SOLVAY S.A.のWO2005/054167出願の6頁3〜23行目に記載されているとおりの反応器中で行うことができる。
【0084】
反応条件下で塩素化剤、特に塩化水素に対して耐性のある材料で製作または被覆されたプラントが特に挙げられる。より特には、ガラスライニングされた鋼またはタンタルで製作されたプラントが挙げられる。
【0085】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤との反応は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin in corrosion-resistant apparatus」の特許出願に記載されているとおりの、塩素化剤に対して耐性のある材料で製作または被覆された装置中で行うことができ、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0086】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物に、塩化水素を含む塩素化剤との反応を受けさせ、かつ、塩素化剤に対して耐性のある材料で製作または被覆された装置中で行う少なくとも1つの他の工程を、この工程が実現される条件下で受けさせる工程を含む、クロロヒドリンの調製方法が特に挙げられる。より詳細には、ガラスライニングされた鋼、金およびタンタルなどの金属材料、および高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカンおよびポリ(パーフルオロプロピルビニルエーテル)、ポリスルホンおよびポリスルフィド、ならびに非含浸および含浸グラファイトなどの非金属材料が挙げられる。
【0087】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤との反応は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Continuous Process for Preparing Chlorohydrins」の出願に記載されているとおりの反応媒体中で行うことができ、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0088】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、塩素化剤および有機酸と、液状反応媒体中で反応させる連続法であって、この液状反応媒体の定常状態組成が、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルを含み、それらの量の合計が、ポリヒドロキシル化脂肪族炭化水素のモル数で表して、液体反応媒体の有機部分を基準にして1.1モル%を上回りかつ30モル%以下である、クロロヒドリンを製造するための連続法が特に挙げられる。
【0089】
液体反応媒体の有機部分は、液体反応媒体の有機化合物、すなわちその分子が少なくとも1個の炭素原子を含む化合物のすべてのものからなる。
【0090】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤の反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の6頁28行目〜8頁5行目に記載されているとおりの触媒の存在下で行うことができる。
【0091】
200℃以上の大気圧における沸点を有するカルボン酸またはカルボン酸誘導体、特にアジピン酸またはアジピン酸の誘導体に基づく触媒が特に挙げられる。
【0092】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤の反応は、SOLVAY S.A.のWO2005/054167出願の8頁6行目〜10頁10行目に記載されているとおりの触媒濃度、温度および圧力において、この出願に記載されているとおりの滞留時間で行うことができる。
【0093】
20℃以上かつ160℃以下の温度、0.3bar以上かつ100bar以下の圧力および1h以上かつ50h以下の滞留時間が特に挙げられる。
【0094】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤の反応は、SOLVAY S.A.のWO2005/054167出願の11頁12行目〜36行目に記載されているとおりの溶媒の存在下で行うことができる。
【0095】
有機溶媒、例えば、塩素化された有機溶媒、アルコール、ケトン、エステルまたはエーテル、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と混和性の非水性溶媒、例えばクロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、ジオキサン、フェノール、クレゾールおよびクロロプロパンジオールとジクロロプロパノールの混合物など、または反応の重質生成物、例えば、少なくとも部分的に塩素化および/またはエステル化された、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のオリゴマーが特に挙げられる。
【0096】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物の塩素化剤との反応は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素以外の重質化合物を含む液相の存在下で行うことができ、これはSOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin in a liquid phase」の出願に記載されているとおりであり、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0097】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素以外の重質化合物を含み且つ1barの絶対圧力下において、1barの絶対圧力におけるクロロヒドリンの沸点よりも少なくとも15℃高い沸点を有する液相の存在下において、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物を、塩素化剤と反応させるクロロヒドリンの調製方法が特に挙げられる。
【0098】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤との反応は、好ましくは液体反応媒体中で行う。この液体反応媒体は、単一相媒体でも複数相媒体でもよい。
【0099】
液体反応媒体は、反応温度において、溶解または分散している固体化合物、溶解または分散している液体化合物、および溶解または分散している気体化合物のすべてから構成されている。
【0100】
反応媒体は、反応物質;触媒;溶媒;反応物質中、溶媒中および触媒中に存在する不純物;反応中間体;反応の生成物;および反応の副生成物、を含む。
【0101】
反応物質とは、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルおよび塩素化剤を意味する。
【0102】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素中に存在する不純物の中では、カルボン酸、カルボン酸塩、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と脂肪酸のエステル、エステル交換で使用されたアルコールと脂肪酸のエステル、ならびにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫酸塩および塩化物などの無機塩が挙げられる。
【0103】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンである場合は、挙げることができるグリセリン中の不純物には、カルボン酸、カルボン酸塩、モノ、ジおよびトリグリセリドなどの脂肪酸エステル、エステル交換で使用されアルコールと脂肪酸のエステルならびにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫酸塩および塩化物などの無機塩などが含まれる。
【0104】
反応中間体の中では、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモノクロロヒドリンおよびそれらのエステルおよび/またはポリエステル、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルおよび/またはポリエステル、ならびにポリクロロヒドリンのエステルを挙げることができる。
【0105】
クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合は、挙げることができる反応中間体には、グリセリンモノクロロヒドリンおよびそのエステルおよび/またはポリエステル、グリセリンのエステルおよび/またはポリエステル、ならびにジクロロプロパノールのエステルなどが含まれる。
【0106】
したがって、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルは、それぞれの事例において、反応物質、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素の不純物、または反応中間体であり得る。
【0107】
反応の副生成物は、クロロヒドリンおよび水を意味する。水は塩素化反応で形成された水および/または例えばポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素および/または塩素化剤によって工程に導入された水であり得、SOLVAY SAの出願WO2005/054167の2頁22〜28行目から3頁20〜25行目、5頁7〜31行目および12頁14〜19行目に記載されているとおりである。
【0108】
副生成物の中では、例えば部分的に塩素化および/またはエステル化された、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のオリゴマーを挙げることができる。
【0109】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンである場合は、挙げることができる副生成物には、例えば、部分的に塩素化および/またはエステル化された、グリセリンのオリゴマーが含まれる。
【0110】
反応中間体および副生成物は、本方法の様々な工程、例えば、クロロヒドリンを調製する工程中およびクロロヒドリンを分離する工程中などで形成されうる。
【0111】
したがって、液体反応混合物は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素;溶液または気泡形態の分散体の塩素化剤;触媒;溶媒;反応物質中、溶媒中、および触媒中に存在する不純物、例えば、溶解している塩または固体の塩など;反応中間体;反応生成物;および反応の副生成物、を含有しうる。
【0112】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法の工程(a)、(b)および(c)は、独立にバッチ方式または連続方式で行うことができる。これら3つの工程に対する連続方式が特に好ましい。
【0113】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化する反応は、有機酸の存在下で行うことができる。有機酸は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を調製する方法に由来する生成物であっても、この方法に由来しない生成物であってもよい。この後者の場合は、問題の生成物は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と塩素化剤の反応を触媒するために使用された有機酸であり得る。有機酸は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を調製する方法に由来する有機酸およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を調製する方法に由来しない有機酸の混合物であってもよい。
【0114】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルは、塩素化剤との反応の前、反応中または塩素化剤との反応に続く工程中での、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と有機酸との反応に由来してもよい。有機酸は上記定義のとおりである。
【0115】
本発明による方法においては、反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の分離は、SOLVAY S.A.のWO2005/054167出願の12頁1行目〜16頁35行目および18頁6行目〜13行目に記載されているとおりの方法によって行うことができる。これらの他の化合物は、上記で挙げたものであり、消費されなかった反応物質、反応物質中に存在する不純物、触媒、溶媒、反応中間体、水および反応の副生成物を含む。
【0116】
塩素化剤の損失を最小限に抑える条件下での、水/クロロヒドリン/塩素化剤混合物の共沸蒸留と、それに続くデカンテーションによるクロロヒドリンの単離による分離が特に挙げられる。
【0117】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の単離は、SOLVAY S.A.の名義で2005年5月20日に出願された欧州特許05104321.4出願に記載されている種類の方法によって行うことができ、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。液相から塩を除去することを目的とした少なくとも1つの分離操作を含む分離方法が特に挙げられる。
【0118】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させることによってクロロヒドリンを調製する方法であって、使用されるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物が少なくとも1つの固体のまたは溶解している金属塩を含み、本方法が金属塩の部分を除去することを目的とした分離操作を含む方法が特に挙げられる。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させることによってクロロヒドリンを調製する方法であって、使用されるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物が、少なくとも1つの塩化物および/または硫酸ナトリウムおよび/または硫酸カリウムを含み、金属塩の部分を除去することを目的とした分離操作がろ過操作である方法がより特に挙げられる。クロロヒドリンの調製法であって、(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を反応混合物中で塩素化剤と反応させ、(b)連続的または周期的に、反応混合物の少なくとも水およびクロロヒドリンを含む画分を取り出し、(c)工程(b)において得られた画分の少なくとも一部分を蒸留工程に導入し、(d)蒸留工程の還流比を前記蒸留工程に水を供給することによって制御する方法も特に挙げられる。クロロヒドリンの調製法であって、(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を反応混合物中で塩化水素と反応させ、(b)連続的または周期的に、反応混合物の少なくとも水およびクロロヒドリンを含む画分を取り出し、(c)工程(b)にで得られた画分の少なくとも一部分を蒸留工程に導入し、ここで蒸留工程へ導入される画分中の塩化水素濃度と水の濃度との間の比が、蒸留の温度および圧力における塩化水素/水2成分共沸組成物中の塩化水素/水濃度比よりも小さい、クロロヒドリンを調製する方法が非常に特に挙げられる。
【0119】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物の塩素化から得られる反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin」の出願に記載されているとおりの方法によって行うことができ、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0120】
以下の工程を含むクロロヒドリンを調製する方法が特に挙げられる:(a) クロロヒドリンとクロロヒドリンのエステルとを含む混合物をもたらすように、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物を、塩素化剤および有機酸と反応させ、(b)(a)で得られた混合物の少なくとも一部分に、工程(a)に続く1つまたは複数の処理を行い、さらに(c) 20℃以上の温度でクロロヒドリンのエステルと反応させて、少なくとも部分的に、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルを形成させるために、工程(a)に続く工程の少なくとも1つで、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を添加する。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンであり、かつクロロヒドリンがジクロロプロパノールである方法がより特に挙げられる。
【0121】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物の塩素化から得た反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin starting from a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されているとおりの方法によって行うことができ、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0122】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、反応器中で塩素化剤と反応させることによるクロロヒドリンの調製法であって、この反応器には、反応器に導入される液体流の全体の重量に対して50重量%未満の、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物、を含有する1つまたは複数の液体流が供給される方法が特に挙げられる。以下の工程を含む方法が特に挙げられる: (a) クロロヒドリン、水および塩素化剤を含有する少なくとも1つの混合物を与えるように、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させ、(b)工程(a)で形成された混合物の少なくとも一部分を取り出し、かつ(c)工程(b)で取り出した部分に蒸留および/またはストリッピングの操作を施し、その際、工程(b)で取り出した部分から、水およびクロロヒドリンを含有し且つ工程(b)から取り出した前記部分と比較して低下した塩素化剤含有量を示す混合物を分離させるために、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を加える。
【0123】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、反応混合物の他の化合物の分離および処理は、SOLVAY S.A.の名義で本出願と同じ日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin by chlorinating a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されている方法によって行うことができる。好ましい処理は、反応副生成物の一部分に高温酸化反応を受けさせることである。
【0124】
以下の工程を含むクロロヒドリンを調製する方法が特に挙げられる:(a)アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量が5g/kg以下である、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と、塩素化剤および有機酸とを反応させて、少なくともクロロヒドリンおよび副生成物を含む混合物を得る、(b)工程(a)で得た混合物の少なくとも一部分に、工程(a)に続く1つまたは複数の処理を施す、および(c)工程(a)に続く工程の少なくとも1つは800℃以上の温度での酸化である。前記の後に続く工程において、工程(a)で得た混合物の一部分を取り出して、この部分に抜き出しの過程で800℃以上の温度での酸化を受けさせる方法が、より特に挙げられる。工程(b)の処理が、相分離、ろ過、遠心分離、抽出、洗浄、蒸発、ストリッピング、蒸留、および吸着の操作またはこれらの操作の少なくとも2つの組合せから選択される方法も特に挙げられる。
【0125】
本発明による方法において、クロロヒドリンがクロロプロパノールである場合には、これは一般的に異性体の1-クロロプロパン-2-オールおよび2-クロロプロパン-1-オールを含む化合物の混合物の形態で使用される。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特には50%超える2つの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、より特に90重量%未満の2つの異性体を含む。混合物の他の成分は、クロロプロパノールを調製する方法に由来する化合物、例えば、残留反応物質、反応副生成物、溶媒、および、特に水であり得る。
【0126】
異性体である1-クロロプロパン-2-オールおよび2-クロロプロパン-1-オールの質量比は、通常は0.01以上、好ましくは0.4以上である。この比は、通常99以下、好ましくは25以下である。
【0127】
本発明による方法において、クロロヒドリンがクロロエタノールである場合には、これは2-クロロエタノール異性体を含む化合物の混合物の形態で使用される。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特には50%超えるこの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、より特には90重量%未満のこの異性体を含有する。混合物の他の成分は、クロロエタノール調製方法に由来する化合物、例えば、残留反応物質、反応副生成物、溶媒、および、特に水であり得る。
【0128】
本発明による方法において、クロロヒドリンがクロロプロパンジオールである場合は、これは一般的には、異性体の1-クロロプロパン-2,3-ジオールおよび2-クロロプロパン-1,3-ジオールを含む化合物の混合物の形態で使用される。この混合物は、一般的に2つの異性体を1重量%以上、好ましくは5重量%以上、特には50%を超えて含有する。この混合物は、普通は2つの異性体を99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、より特には90重量%未満で含有する。この混合物の他の成分は、クロロプロパンジオールを調製する方法に由来する化合物、例えば、残留反応物質、反応副生成物、溶媒、および、特に水であり得る。
【0129】
異性体である1-クロロプロパン-2,3-ジオールおよび2-クロロプロパン-1,3-ジオールの間の質量比は、0.01以上、好ましくは0.4以上である。この比は、一般的に99以下、好ましくは25以下である。
【0130】
本発明による方法において、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、これは一般的に異性体の1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む化合物の混合物の形態で使用される。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特には50%超える2つの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、より特には90重量%未満の2つの異性体を含有する。混合物の他の成分は、ジクロロプロパノール調製方法に由来する化合物、例えば、残留反応物質、反応副生成物、溶媒、および、特に水であり得る。
【0131】
1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オール異性体の間の質量比は、0.01以上、しばしば0.4以上、頻繁には1.5以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは7.0以上、非常に特に好ましくは20.0以上である。この比は、一般的に99以下、好ましくは25以下である。
【0132】
本発明による方法で得られるクロロヒドリンは、増大した量のハロゲン化されたケトン、特にクロロアセトンを含むことがあり、これは本出願人の名義で2005年5月20日出願のFR05.05120に記載されているとおりであり、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。ハロゲン化ケトンの含有量は、本発明による方法で得たクロロヒドリンを、水の存在下で共沸蒸留することによって、またはクロロヒドリンをこの出願の4頁1行目〜6頁35行目に記載されているとおり脱塩化水素処理することによって低下させることができる。
【0133】
ハロゲン化ケトンが副生成物として形成され、かつ形成されたハロゲン化ケトンの少なくとも一部分を除去する少なくとも1つの処理を含む、エポキシドを調製する方法が特に挙げられる。クロロヒドリンを脱塩化水素化することによってエポキシドを調製する方法であって、クロロヒドリンの少なくとも一部分が、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化する工程、脱塩化水素の処理、および形成されたハロゲン化ケトンの少なくとも一部分を除去することを目的とする水/ハロゲン化ケトン混合物の共沸蒸留による処理によって調製される方法、ならびに形成されたハロゲン化ケトンがクロロアセトンである、エピクロロヒドリンの調製方法が、さらに特に挙げられる。
【0134】
本発明による方法で得られたクロロヒドリンは、エポキシドを製造するために、いずれもSOLVAY S.A.の名義で出願されたWO2005/054167およびFR05.05120の特許出願に記載されているように、脱塩化水素反応をさせることができる。
【0135】
クロロヒドリンの脱塩化水素化は、本出願と同日にSOLVAY S.A.の名義で出願された標題「Process for preparing an epoxide starting from a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon and chlorinating agent」の出願に記載されているように行うことができ、この出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0136】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物と塩素化剤との間の反応から得られる反応混合物(この反応混合物は、1kg当たりに少なくとも10gのクロロヒドリンを含有する)に、中間の処理をすることなく、続いて化学反応をさせるエポキシドの調製方法が特に挙げられる。
【0137】
以下の工程を含むエポキシドの調製も挙げられる:
(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤および有機酸と反応させて、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、水、塩素化剤、および有機酸を含有する反応混合物中に、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルを形成させ、反応混合物は反応混合物1kg当たり少なくとも10gのクロロヒドリンを含む。
(b)工程(a)で得られた反応混合物の少なくとも一部分(この部分は工程(a)で得られた反応混合物と同じ組成を有する)に、工程(a)に続く工程で1つまたは複数の処理を施す。
(c)クロロヒドリン、クロロヒドリンエステル、塩素化剤および有機酸と少なくとも部分的に反応させてエポキシドおよび塩を形成させるために、工程(a)に続く工程の少なくとも1つに塩基性化合物を添加する。
【0138】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法は、SOLVAY S.A.の名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing an epoxide starting from a chlorohydrin」の出願に記載されているように、エポキシドの調製の全体的計画の中に統合することができ、この出願を参照により本明細書に組み込む。
【0139】
形成されたエポキシドの少なくとも1つの精製工程を含むエポキシドの調製方法であって、エポキシドはクロロヒドリンを脱塩化水素化する工程によって少なくとも部分的に調製され、クロロヒドリンはポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化する方法によって少なくとも部分的に調製されたものである、エポキシドの調製方法が特に挙げられる。
【0140】
エポキシドがエピクロロヒドリンである場合は、エポキシドの調製は、エポキシ樹脂を調製する方法の中に統合することができる。
【0141】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は好ましくはグリセリンであり、クロロヒドリンは好ましくはジクロロプロパノールである。
【0142】
クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合は、本発明による方法には、ジクロロプロパノールの脱塩化水素化によるエピクロロヒドリンの調製が続き、かつエピクロロヒドリンはエポキシ樹脂の調製に用いることができる。
【0143】
本発明による方法の工程(b)および(c)は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と塩素化剤との反応以外の反応、例えば、エチレン、プロピレンもしくはアリルクロリドなどのオレフィンの次亜塩素化(ハイポクロリネーション)または、例えば、アリルアルコールなどのアルコールの塩素化によって得た、クロロヒドリン、クロロヒドリンエステルおよび水を含有する混合物にも適用される。
【0144】
図1には、本発明の調製方法を実施するために用いることができるプラントの概略図を示す。
反応器(4)には、連続方式でまたはバッチ方式で、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物が管路(1)によって、また触媒が管路(2)によって供給され;塩素化剤は、連続方式でまたはバッチ方式で、管路(3)によって供給され;蒸留塔(6)には管路(5)によって反応器(4)で生成した蒸気が供給され;1つの流は塔(6)から管路(7)によって取り出されてコンデンサー(8)に導入され;コンデンサーから得た流は管路(9)によって相分離器(10)に導入され、ここで水相と有機層が分離される。添加物は、管路(31)によって管路(7)からの流中におよび/または管路(32)によって管路(9)からの流中に導入することができる。分離された水相の一部分は場合により管路(11)によって還流を維持するために塔頂へリサイクルされる。水を管路(12)によって管路(11)へ導入する。クロロヒドリンの生成物は管路(14)によって取り出される有機相と管路(13)によって取り出される水相の間で分配される。塔(6)からの残渣は管路(15)によって反応器(4)へリサイクルすることができる。重質生成物の画分は反応器(4)から抜き出し路(16)によって取り出すかまたは管路(17)によって蒸発器(18)に導入し、ここで、例えば加熱によってまたは窒素または水蒸気でのガス掃気によって部分的な蒸発操作を行い;流(17)の塩素化剤の大部分を含有する気相は管路(19)によって塔(6)へまたは管路(20)によって反応器(4)へリサイクルされ;蒸留またはストリッピング塔(22)にはストリッピング装置(18)から来る液相が管路(21)によって供給され:クロロヒドリンの大部分は塔(22)の頂上で管路(23)によって取り出される。
【0145】
カラム(22)から得た重質副生成物は、管路(24)によってろ過カラム(25)へ送られ、その中で液相と固相が分離され、液相の一部分は管路(26)によって反応器(4)へリサイクルされる。固体は、固体または溶液の形態でろ過装置(25)から管路(27)によって取り出すことができる。溶媒は、固体の洗浄および/または溶解のために管路(28)および(29)によってろ過装置(25)に加えることができ、管路(27)によって取り出すことができる。場合によっては、抜き出し路(16)から1つの流を取り出して管路(30)によってろ過カラム(25)に導入する。その場合は、ストリッピング装置(18)および蒸留塔(22)は短絡される。
【0146】
以下の実施例は本発明を例示することを意図するものではあるが、本発明にいかなる限定をも課するものではない。
【0147】
(実施例1〜18)
(本発明による)
下部が目盛り付きの円筒形の管からなる分液ロート中で、それぞれ表1〜4に示した濃度で、水、1,3-ジクロロプロパノール、および塩化水素(実施例1〜5)の、過塩素酸(実施例6〜10)の、塩化ナトリウム(実施例11〜16)の、または塩化カルシウム(実施例17および18)の水溶液を、25℃で15分間はげしく混合する。撹拌を止め、次いで混合物を相分離させた。相間の界面の高さを経時的に測定した。時間ゼロは撹拌の停止に対応する。以後界面の高さが一定〜±1mmとなる時間が相分離操作の継続時間となる。
【0148】
有機相中においては、塩化水素および過塩素酸の量は酸-塩基滴定によって、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムの量は、それぞれ塩濃度が高いか低いかに応じて、銀滴定またはプラズマ誘起と結合された原子放出分光法(ICP-AES)によって、および水の含有量はカールフィッシャー法によって測定される。ジクロロプロパノール含有量は差によって計算される。水相においては、塩化水素および過塩素酸の量は酸-塩基滴定によって、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムの量は銀滴定によって、およびジクロロプロパノール含有量は気相クロマトグラフィーによって測定される。水の含有量は差によって計算される。相分離時間ならびに水相および有機相の組成は表1〜4に示す。
【0149】
(実施例19〜22)
(本発明による)
表5および6に示した濃度で、2,3-ジクロロプロパン-1-オールならびに過塩素酸および塩化ナトリウムの水溶液を使用して、先の実施例の手順を繰り返した。相分離時間ならびに水相および有機相の組成は表5および6に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
【表3】

【0153】
【表4】

【0154】
【表5】

【0155】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明による調製方法を実施するために使用することができるプラントの詳細図である。
【符号の説明】
【0157】
1・・・管路、2・・・管路、3・・・管路、4・・・反応器、5・・・管路、6・・・蒸留塔、7・・・管路、8・・・コンデンサー、9・・・管路、10・・・相分離器、11・・・管路、12・・・管路、13・・・管路、14・・・管路、15・・・管路、16・・・抜き出し路、17・・・管路(または流)、18・・・蒸発器(ストリッピング装置)、19・・・管路、20・・・管路、22・・・ストリッピング塔(または蒸留塔)、21・・・管路、23・・・管路、24・・・管路、25・・・ろ過カラム(ろ過装置)、26・・・管路、27・・・管路、28・・・管路、29・・・管路、30・・・管路、31・・・管路、32・・・管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を塩素化剤と反応させて、クロロヒドリン、クロロヒドリンエステルおよび水を含有する混合物を得る工程と、
(b)工程(a)において得た混合物の少なくとも一部分に、蒸留処理および/またはストリッピング処理を施して、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分を得る工程と、
(c)工程(b)で得た画分の少なくとも一部分に、少なくとも1つの添加物の存在下で分離操作を施して、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮されており、かつ40重量%未満の水を含有する画分を得る工程と
を含む、クロロヒドリンを調製する方法。
【請求項2】
工程(c)のクロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された画分が、15重量%未満の水を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分離操作がデカンテーションである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
デカンテーションが、重力の作用下で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において存在する添加物が、無機酸、無機塩またはこれら2つの混合物を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、ハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸、硫化水素、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、炭酸、およびホウ酸、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
無機酸が塩化水素であり、工程(b)において得た濃縮された画分中の無機酸の量が、0.3g/kg以上かつ170g/kg以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
無機塩が、金属のハロゲン化物、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫化物、硫化水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、亜リン酸塩、亜リン酸水素塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過炭酸塩、ホウ酸塩、および過ホウ酸塩、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
無機塩が塩化ナトリウムであり、工程(b)において得た前記濃縮された画分中の塩の量が、0.4g/kg以上かつ280g/kg以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分離が、10℃以上かつ100℃以下の温度で行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)で得た濃縮された画分中の水の量が、5重量%以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物を、再生可能な原料から出発して得る、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
塩素化剤が塩化水素を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
塩化水素が、気体塩化水素と塩化水素の水溶液との組合せ、または塩化水素の水溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
添加物が、工程(a)で得た混合物中に存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素が、エチレングリコール、プロピレングリコール、クロロプロパンジオール、グリセリン、およびこれらの少なくとも2つの混合物から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
クロロヒドリンが、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、およびこれらの少なくとも2つの混合物から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンであり、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ジクロロプロパノールの脱塩化水素化によってエピクロロヒドリンの調製を続いて行う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
エピクロロヒドリンが、エポキシ樹脂の製造に使用される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540615(P2008−540615A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511727(P2008−511727)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062462
【国際公開番号】WO2006/100320
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】