説明

ポリピリジン誘導体

【課題】優れた金属捕捉能を有するポリピリジン誘導体。
【解決手段】
下記一般式(1);
【化1】


(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、およびシアノ基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基である。なお、RおよびRが一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される構造単位を3個以上有する、ポリピリジン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリピリジン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピリジンは、一般的に、電気的特性、光学的特性の点で優れている。従ってポリピリジンは、導電材料、光電変換材料、発光材料、非線形光学材料、電池用材料、電子部品材料、自動車用材料などの先端機能材料として期待されている。
【0003】
このようなポリピリジンとしては、ジブロモピリジンをニッケル触媒存在下、重縮合して得られる2,5−ピリジン骨格と3,5−ピリジン骨格とからなる非置換のポリピリジンが知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Applied Surface Science 189, (2002) 319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリピリジンとして、金属捕捉能に優れるものは得られていなかった。
【0006】
本発明の目的は、優れた金属捕捉能を有するポリピリジン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、およびシアノ基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基である。なお、RおよびRが一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される構造単位を3個以上有する、ポリピリジン誘導体。
[2]下記一般式(2);
【化2】

(式中、R、RおよびRは前記一般式(1)で定義されたとおりである。nは3以上の整数である。)
で表されるブロック単位を有する、[1]に記載のポリピリジン誘導体。
[3]下記一般式(3);
【化3】

(式中、R10は前記一般式(1)で定義されたR8と同義であり、R11は前記一般式(1)で定義されたR9と同義である。ただし、R10およびR11の少なくとも1個が水素原子以外の置換基である。nは前記一般式(2)で定義されたnと同義である。)
で表されるブロック単位を有する、[2]に記載のポリピリジン誘導体。
[4]ポリスチレン換算の数平均分子量が5×10〜10である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリピリジン誘導体。
[5]分子量分布が1.0〜1.8の範囲である、[4]に記載のポリピリジン誘導体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリピリジン誘導体は優れた金属捕捉能を有している。よって、本発明のポリピリジン誘導体は、金属原子、金属イオン、および金属錯体の捕集といった用途に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリピリジン誘導体は、上記一般式(1)で表される構造単位を3個以上含む化合物である。
【0010】
上記一般式(1)において、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、およびシアノ基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基であり、RおよびRが一緒になって環を形成してもよい。
【0011】
ここで、「置換されていてもよい」とは、換言すると「置換基を有してもよい」との意味である。例えば「置換基を有する炭化水素基」とは、炭化水素基中の水素原子の一部または全部を、他の置換基で置換した炭化水素基のことをいい、具体的には、該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基や、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基などで置換されていてもよい炭化水素基のことをいう。
【0012】
「置換されていてもよい炭化水素基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基などの炭素数1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基などの炭素数3〜50の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基などの炭素数2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基などの炭素数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェネチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基などの炭素数7〜50のアラルキル基が挙げられる。「置換されていてもよい炭化水素基」としては、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基である。
【0013】
「置換されていてもよい炭化水素オキシ基」、「置換されていてもよい炭化水素メルカプト基」、「置換されていてもよい炭化水素カルボニル基」、「置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基」、「置換されていてもよい炭化水素スルホニル基」とは、それぞれオキシ基、メルカプト基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基に前記「置換されていてもよい炭化水素基」1個が結合した基である。なお、「置換されていてもよい炭化水素オキシ基」は、その繰り返し単位からなる基であってもよい。置換されていてもよい炭化水素オキシ基としては、−O(CHCHO)CH基(ただし、mは1〜20の整数である)、−CHO(CHCHO)CH基(ただし、nは1〜20の整数である)などが挙げられる。
【0014】
置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基および1価の複素環基から選ばれる1個または2個の基で置換されたアミノ基が挙げられ、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基または1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換アミノ基の炭素数は、置換基の炭素数を含めないで通常1〜60であり、好ましくは2〜48である。置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基などが例示される。
【0015】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。1価の複素環基の炭素数は、通常4〜60であり、4〜20が好ましい。なお、1価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。また、複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する原子が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。1価の複素環基としては、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが挙げられ、中でも、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基およびC1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0016】
置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基および1価の複素環基から選ばれる1個、2個または3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。置換シリル基の炭素数は通常1〜60であり、好ましくは3〜48である。なお、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基または1価の複素環基は置換基を有していてもよい。
【0017】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0018】
アシル基の炭素数は、通常2〜20であり、好ましくは2〜18である。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられる。
【0019】
アシルオキシ基の炭素数は、通常2〜20であり、好ましくは2〜18である。アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基などが挙げられる。
【0020】
アミド基の炭素数は、通常2〜20であり、好ましくは2〜18である。アミド基としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基などが挙げられる。
【0021】
イミン残基とは、イミン化合物(分子内に式:−N=C−で示される基を持つ有機化合物のことをいい、アルジミン、ケチミンおよびこれらの窒素原子(N)上の水素原子がアルキル基などで置換された化合物が挙げられる)から水素原子1個を除いた残基である。イミン残基の炭素数は、通常2〜20であり、2〜18が好ましい。イミン残基としては、以下の基が挙げられる。
【0022】
【化4】

【0023】
酸イミド基とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基である。酸イミド基の炭素数は、通常4〜20であり、4〜18が好ましい。酸イミド基としては、以下の基が挙げられる。
【0024】
【化5】

【0025】
置換カルボキシル基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基または1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられる。置換カルボキシル基の炭素数は、通常2〜60であり、好ましくは炭素数2〜48である。置換カルボキシル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基などが挙げられる。なお、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基または1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素数には置換基の炭素数は含まない。
【0026】
合成の容易さ、および有機溶媒への溶解度向上の観点から、本発明のポリピリジン誘導体は、上記一般式(1)において、R、RおよびRがそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、置換カルボキシル基、およびシアノ基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基であり、RおよびRが一緒になって環を形成してもよく;より好ましくは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、カルボキシル基、置換カルボキシル基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基であり、RおよびRが一緒になって環を形成し、さらに好ましくは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基であり、RおよびRが一緒になって環を形成し、特に好ましくは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基で表される置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基であり、RおよびRが一緒になって環を形成している。
【0027】
本発明のポリピリジン誘導体は、金属捕捉性をより向上させる観点から、上記一般式(1)におけるRが水素原子であることが好ましく、上記一般式(1)におけるRおよびRが水素原子であることがより好ましい。
【0028】
上記一般式(1)で表されるポリピリジン誘導体を構成する構造単位としては、以下の式(A−1)〜(A−7)で表される単位が好ましい。式中、pは0〜50の整数であり、qおよびrは、それぞれ独立に0〜20の整数である。
【0029】
【化6】

【0030】
本発明のポリピリジン誘導体の一実施形態としては、上記一般式(1)で表される構造単位が複数個連結して1個のブロック単位を構成しており、このブロック単位を有する形態が挙げられる。
【0031】
本発明のポリピリジン誘導体を構成するブロック単位は、金属捕捉性をより向上させる観点から、上記一般式(2)におけるnが3以上であるブロック単位を含むことが好ましく、nは5以上であることがより好ましく、7以上であることが特に好ましい。このnの上限は、好ましくは10000である。
また、本発明のポリピリジン誘導体としては、上記一般式(2)で表されるブロック単位を有するポリピリジン誘導体が好ましく、上記一般式(3)で表されるブロック単位を有するポリピリジン誘導体がより好ましい。
【0032】
本発明のポリピリジン誘導体のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×10〜1×10が好ましく、1×10〜1×10がより好ましく、2×10〜1×10がさらに好ましい。ポリピリジン誘導体の(ポリスチレン換算の重量平均分子量)/(ポリスチレン換算の数平均分子量)で規定される分子量分布は1.0〜1.8が好ましく、1.0〜1.7がより好ましく、1.0〜1.6がさらに好ましい。
【0033】
本発明のポリピリジン誘導体は、下記一般式(4)で示されるピリジン化合物を必要に応じて有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒を適宜用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させる重合方法などで合成することができる。
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、R、RおよびRは前記一般式(1)での定義と同じである。Xはハロゲン原子、ニトロ基または−SOQで表される基(ここで、Qは置換されていてもよい炭化水素基を表す。)を表す。Mは水素原子、ハロゲン原子、−B(OQ)、−Si(Q)、−Sn(Q3)3または−Z(Z)を表す(ここで、Qは水素原子または炭化水素基を表し、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、2個のQが一緒になって環を形成していてもよい。Qは炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qは炭化水素基を表し、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Zは金属原子または金属イオンを表し、Zはカウンターイオンを表し、mは0以上の整数である。)
【0036】
重合方法としては、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Macromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第102巻,1359頁(2002年)、特開2007-246887号公報などに記載の公知の方法が挙げられる。
【0037】
重合方法としては、Suzukiカップリング反応により重合する方法、有機マグネシウム試薬と反応させてホスフィン化合物を含むニッケル錯体の存在下で重合する方法、Ni(O)錯体により重合する方法、FeClなどの酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法が好ましく、Suzukiカップリング反応により重合する方法、有機マグネシウム試薬と反応させてホスフィン化合物を含むニッケル錯体の存在下で重合する方法、Ni(O)錯体により重合する方法がより好ましく、Suzukiカップリング反応により重合する方法、有機マグネシウム試薬と反応させてホスフィン化合物を含むニッケル錯体の存在下で重合する方法が特に好ましい。
【0038】
前記有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、副反応を抑制するために十分に脱酸素処理を施したものを用いることが好ましく、ポリピリジン誘導体を製造する際には、このような有機溶媒を用いて不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、前記有機溶媒には、前記脱酸素処理と同様に脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応などの水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0039】
また、このような有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの不飽和炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化不飽和炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジンなどのアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシドなどのアミド類が例示される。これらの有機溶媒は1種を単独で、または2種以上を併用してもよい。また、このような有機溶媒の中でも、エーテル類がより好ましく、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルが更に好ましい。
【0040】
また、前記ポリピリジン誘導体を製造する際には、原料化合物を反応させるために適宜アルカリや適切な触媒を添加することが好ましい。このようなアルカリまたは触媒は、採用する重合方法などに応じて選択すればよい。このようなアルカリまたは触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。また、前記アルカリまたは触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリまたは触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリまたは触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0041】
前記一般式(4)において、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0042】
前記一般式(4)において、−SOQで表される基中のQで表される炭化水素基としては、前記R、RおよびRの説明で示した、炭化水素基の例および好ましい例が挙げられる。このQで表される炭化水素基は、置換されていてもよく、その置換基としては、フッ素原子が挙げられる。
【0043】
前記一般式(4)において、−SOQで表される基の好ましい例としては、メタンスルフォネート基、ベンゼンスルフォネート基、p−トルエンスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基が挙げられる。
【0044】
Xは、好ましくはハロゲン原子、−SOQで表される基であり、より好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−SOQで表される基であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォネート基であり、特に好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0045】
−B(OQ)におけるQは水素原子または炭化水素基であり、2個のQは同じであっても異なっていてもよく、環を形成していてもよい。Qにおける炭化水素基としては、上記の炭化水素基と同様の基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。環を形成する場合には、2個のQからなる二官能性の炭化水素基として、1,2−エチレン基、1,1,2,2−テトラメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン基が好ましい。
【0046】
−Si(Q)におけるQは炭化水素基であり、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qにおける炭化水素基としては、上記の炭化水素基と同様の基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。
【0047】
−Sn(Q)におけるQは炭化水素基であり、3個のQは同じであっても異なっていてもよい。Qにおける炭化水素基としては、上記の炭化水素基と同様の基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。
【0048】
(Z)におけるZは金属原子または金属イオンであり、Zはカウンターアニオンであり、mは0以上の整数である。Zとしては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Pb、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Cd、La、Ce、Sm、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgなどの原子およびイオンを挙げることができる。Zは、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Pb、Sc、Ti、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、Hgの原子およびイオンであり、より好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、In、Tl、Pb、Cu、Zn、Zr、Ag、Hgの原子およびイオンであり、さらに好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Znの原子およびイオンである。
【0049】
としては、通常、ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、その例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオンなどが挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンであり、より好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンであり、さらに好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンである。
【0050】
Mとしては、ハロゲン原子、−B(OQ)、−Si(Q)、−Sn(Q)、−Z(Z)が好ましく、ハロゲン原子、−B(OQ)、−Z(Z)がより好ましい。
【0051】
本発明のポリピリジン誘導体は、高分子量とすることができ、また置換基の導入により優れた溶解性を持たせることができる。
【0052】
本発明のポリピリジン誘導体は、金属原子、金属イオン、金属錯体を捕捉することができるため、金属捕集材料、触媒、分子認識材料、超分子材料などの先端機能材料またはその成分として特に有用である。
【0053】
本発明において、「金属捕捉能」とは、ポリピリジン誘導体自体が、金属原子、金属イオンを吸着または捕獲する機能を意味し、その結果として、金属イオンまたは金属原子を中心として周囲に配位子が結合した構造を持つ化合物を吸着または捕獲する機能も意味する。捕捉とは、共有結合、イオン結合などの化学結合による捕捉および物理吸着による捕捉を意味する。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0055】
ここで、実施例で合成した化合物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した、ポリスチレンに対する相対分子量、即ち、ポリスチレン換算の分子量である。なお、数平均分子量を「Mn」と表し、重量平均分子量を「Mw」と表す。
また、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパンを「dppp」と略す。
【0056】
<実施例1>
フラスコに無水塩化リチウム0.0221g(0.521mmol)を加え、ヒートガンを用いてフラスコを加熱しながら減圧乾燥し、アルゴン置換した後に室温に戻した。これに5−ブロモ−2−(2−メトキシ−2−エトキシエトキシ)−3−ヨードピリジン0.2098g(0.522mmol)および内部標準物質としてナフタレン0.0131g(0.102mmol)を加えて、再度アルゴン置換した。乾燥THF2.6mLを加え、イソプロピルマグネシウムクロライドTHF溶液(2.0mol/l)を0.26mL(0.52mmol)加えて0℃で30分間攪拌し、5−ブロモ−2−(2−メトキシ−2−エトキシエトキシ)−3−ヨードピリジンをグリニャール化した。その後、THF2.6mLに懸濁させたNi(dppp)Clを0.0050g(9.22μmol、1.77mol%を加えて、室温で30分間攪拌した。反応終了後、5M HClを加えてから10重量%水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にした後にクロロホルムで抽出し、有機層を水で洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、次式で表される複素環を含む芳香族高分子(Mn=8000、Mw/Mn=1.28)を得た。
【0057】
【化8】

(nは、重合度を表す。)
【0058】
<参考例1>
上記一般式(1)におけるRがメトキシ基であり、RおよびRが水素原子であり、かかる構造単位を3個連続に有するモデル化合物に対応する下記式(1−a):
【0059】
【化9】

で表されるピリジン化合物モデルに、下記式(5):
【0060】
【化10】

で表される錯体化合物の銅原子を上記式(1−a)における(α)で表される窒素原子に結合させたピリジン錯体モデルにつき、富士通株式会社製WinMOPAC3.9により半経験的分子軌道計算AM1法で構造最適化した後の生成熱は134.4kcalであった。
【0061】
<比較例1>
下記式(6)で表される、原子数および組成式が上記式(1−a)で表されるピリジンモデル化合物と同じである比較用ピリジン化合物モデルに、上記式(5)で表される錯体化合物の銅原子を、下記式(6)における(α)で表される窒素原子に結合させた比較用ピリジン錯体モデルにつき、富士通株式会社製WinMOPAC3.9により半経験的分子軌道計算AM1法で構造最適化した後の生成熱は137.3kcalであった。
式(6):
【0062】
【化11】

【0063】
<比較例2>
下記式(7)で表される、原子数および組成式が上記式(1−a)で表されるピリジンモデル化合物と同じである比較用ピリジン化合物モデルに、上記式(5)で表される錯体化合物の銅原子を、下記式(7)における(α)で表される窒素原子に結合させた比較用ピリジン錯体モデルにつき、富士通株式会社製WinMOPAC3.9により半経験的分子軌道計算AM1法で構造最適化した後の生成熱は139.2kcalであった。
式(7):
【0064】
【化12】

【0065】
参考例1、比較例1および比較例2から明らかなように、参考例1に示した本発明のポリピリジン誘導体にかかるピリジン錯体モデルは、錯体化合物の銅原子と結合してこれを捕捉した状態の生成熱が、比較例1および比較例2に示した比較用ピリジン錯体モデルが錯体化合物の銅原子と結合してこれを捕捉した状態の生成熱よりも小さい。よって、本発明のポリピリジン誘導体は、比較例1および比較例2に示された比較用ピリジン錯体モデルに対応するポリピリジン誘導体よりも金属(錯体)を捕捉した際の構造がより安定であるといえる。従って、本発明のポリピリジン誘導体は、比較例1および比較例2に示したような他の異なる構造のポリピリジン誘導体と比較して、金属捕捉能に優れていると認められる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明にかかるポリピリジン誘導体は、優れた金属捕捉能を有しているため、金属捕集材料、触媒、分子認識材料、超分子材料などの先端機能材料またはその成分として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、およびシアノ基から選ばれる置換基であり、R、RおよびRの少なくとも1個が水素原子以外の置換基である。なお、RおよびRが一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される構造単位を3個以上有する、ポリピリジン誘導体。
【請求項2】
下記一般式(2);
【化2】

(式中、R、RおよびRは前記一般式(1)で定義されたとおりである。nは3以上の整数である。)
で表されるブロック単位を有する、請求項1に記載のポリピリジン誘導体。
【請求項3】
下記一般式(3);
【化3】

(式中、R10は前記一般式(1)で定義されたR8と同義であり、R11は前記一般式(1)で定義されたR9と同義である。ただし、R10およびR11の少なくとも1個が水素原子以外の置換基である。nは前記一般式(2)で定義されたnと同義である。)
で表されるブロック単位を有する、請求項2に記載のポリピリジン誘導体。
【請求項4】
ポリスチレン換算の数平均分子量が5×10〜1×10である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリピリジン誘導体。
【請求項5】
分子量分布が1.0〜1.8の範囲である、請求項4に記載のポリピリジン誘導体。

【公開番号】特開2010−174110(P2010−174110A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17243(P2009−17243)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】