説明

ポリフェニレンエーテル

【課題】本発明は、加熱前後の分子量変化が少なく、耐熱性に優れ、純度の高いポリフェニレンエーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリフェニレンエーテルは、分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含み、加熱前のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηAと、加熱後のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηBとが、関係式0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.1を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは、加工性及び生産性に優れ、溶融射出成型や溶融押出成型等の成型方法により所望の形状の製品や部品を効率良く生産できるという利点を有している。ポリフェニレンエーテルは、このような利点を生かし、電気・電子材料分野及び自動車分野における部品用材料、並びにその他各種工業材料分野及び食品の包装分野における部品用材料として幅広く用いられている。
【0003】
近年、ポリフェニレンエーテルの新たな工業用途として、他樹脂と組み合わせて優れた特性を得るための複合材料としての用途や、電子材料としての用途等が検討されている。これらの用途に対しては、従来公知のポリフェニレンエーテルに加え、低分子量のポリフェニレンエーテルが有効であると考えられており、さらに原料の純度の高いポリフェニレンエーテルが要求されている。
【0004】
通常、ポリフェニレンエーテルは、加熱加工時に還元粘度が上昇する現象が見られる(例えば、特許文献1及び2参照)。そのため、ポリフェニレンエーテルの重合段階での分子設計目標と、加熱加工後の分子設計目標が異なるほか、加熱条件によっても還元粘度の上昇程度が変化してしまうため、操作が煩雑となることが少なくない。したがって、加熱前後において還元粘度の変化が少なく、更に物性を維持するため狭い分子量分布を維持したポリフェニレンエーテルが求められるようになってきている。
【0005】
例えば、特許文献1には、特定の重合触媒を用いることにより、加熱溶融時に分子量低下が起こらず、強靭な物性を有するポリフェニレンエーテルが得られることが開示されている。また、特許文献2には、光安定性を改良することを目的として、ポリフェニレンエーテル粉体にモノアミンを含有させて250℃でプレス成型したPPE組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、ベンジルアミンで変性されたポリフェニレンエーテルを、ベンジルアミン存在下、280℃でプレス成型したPPE組成物が開示されている。当該PPE組成物は、機械的強度が保持され、かつ、加熱時の着色や粘度増加が抑制されている。
【0006】
一方、低分子量のポリフェニレンエーテルについては種々の提案がなされている。例えば、溶剤溶解性を高めるや変性させることを目的とした低分子量のポリフェニレンエーテル(例えば、特許文献4、5参照。)、ガスバリア性を高めることを目的とした高分子量のポリフェニレンエーテル(例えば、特許文献6参照。)等が挙げられる。
【0007】
また、低分子量のポリフェニレンエーテルと高分子量のポリフェニレンエーテルとを混合し、流動性を改善したもの等も提案されている(例えば、特許文献7〜9参照。)。
【0008】
特許文献9には、メインの重合ラインで重合させた還元粘度0.4〜3.0dl/gを有するポリフェニレンエーテルと、メインの重合ラインからバイパスさせた還元粘度0.05〜0.6dl/gを有するポリフェニレンエーテルを混合し、2峰性の分子量分布を持つポリフェニレンエーテルを連続的に製造する方法が提案されている。
【0009】
比較的低分子量のポリフェニレンエーテルの製造方法としては、ポリフェニレンエーテルの重合工程において2,4,6−トリメチルフェノールを加え、その添加量を制御することによりポリフェニレンエーテルの分子量を変化させる技術が提案されている(例えば、特許文献10参照。)。
【0010】
また、特許文献10には、溶媒としてポリフェニレンエーテルの良溶媒(例えばベンゼン、トルエン又はキシレン)とポリフェニレンエーテルの貧溶媒(例えばケトン、エーテル又はアルコール)との混合溶媒を用い、良溶媒/貧溶媒の比を変えることにより、種々の分子量のポリフェニレンエーテルを得ることが記載されている。
【0011】
また、ポリフェニレンエーテルの良溶媒である芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン又はキシレン等)と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒である脂肪族炭化水素(例えばn−ヘキサン、イソヘキサン又はn−ヘプタン等)との混合溶媒中で、ポリフェニレンエーテルの重合を実施する方法が開示されている(例えば、特許文献11参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭62−240323号公報
【特許文献2】特開平6−25525号公報
【特許文献3】特開平8−3435号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0130438号明細書
【特許文献5】特開2004−99824号公報
【特許文献6】国際公開第WO2002/12370号
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/23006号明細書
【特許文献8】英国特許第EP0401690号明細書
【特許文献9】特開平11−012354号公報
【特許文献10】米国特許第3440217号明細書
【特許文献11】特公昭50−6520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、多量の金属触媒を用いて重合し、且つ特殊なアミンを用い、さらに還元粘度ηsp/cが0.5を超えるポリフェニレンエーテルしか得られていない。また多量の金属触媒を用いているため、得られるポリフェニレンエーテルは、純度が低く、さらには耐熱性といった他の特性も充分なものではない。
【0014】
また、特許文献2及び3に記載された方法では、成型体の加熱による着色を抑える必要性から、プレス成型でシートやプレス試験片を作製する方法を選択せざるを得ない。そのため、多量・安定生産に向かない。また、プレス成型においてはポリフェニレンエーテルとアミンとが均一に混合しないため、アミンを含有することの効果が局在している可能性が否定できない。また、加熱後の還元粘度改善や分子量分布、或いはゲルの発生、更には耐薬品性については検討されていない。何れの場合もゲルの発生を起こさず、生産性よく、耐薬品性を低下させず、更にポリフェニレンエーテルのもつ狭い分子量分布を損なわないといった特性を全て満たすポリフェニレンエーテルを得ることができないのが現状である。
【0015】
また、特許文献4〜8に記載のポリフェニレンエーテルは、加熱時の分子量変化を抑制し、純度が高く、さらには耐熱性に優れるといった全ての特性を満足するものではない。
【0016】
特許文献9において開示されている方法によって得られるポリフェニレンエーテルは分子量分布が広く、近年において要求されている分子量分布の狭く、物性面で優れたポリフェニレンエーテルを得る技術として、必ずしも満足のいくものではない。
【0017】
特許文献10に開示されている方法は、要求する分子量のポリマーを得る方法としては正確性に欠けるという問題を有しているだけでなく、2,4,6−トリメチルフェノールが含まれるため純度が低いポリフェニレンエーテルとなっている。
【0018】
特許文献11において開示されている方法においては、生成水やアミン類が反応系内に存在し、かかる状態で反応を進めると、オリゴフェニレンエーテルの粒子が不均一に生じ、これが反応器等に付着しやすいという欠点を有している。また、加熱時の分子量変化に関する検討はなされていない。
【0019】
そこで、上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明においては、加熱時の分子量変化を抑制した、純度の高い低分子量のポリフェニレンエーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記従来技術の課題に対して鋭意研究を行った結果、加熱前後の分子量変化の少なさ及び耐熱性の高さには、所定の分子量以下の成分量及び所定の分子量以上の成分量が影響していることを突き止めた。さらには、重合中に用いる特定のハロゲン元素のモル比や重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が影響していることを突き止めた。
【0021】
そこで本発明においては、これらの影響因子を詳細に検討し、加熱前後の分子量変化が少なく、耐熱性が高く、さらには、純度の高いポリフェニレンエーテルを完成するに至った。
【0022】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0023】
[1]
分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含み、加熱前のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηAと、加熱後のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηBとが、関係式0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.1を満たす、ポリフェニレンエーテル。
【0024】
[2]
残留揮発分が0.01質量%以上0.5質量%未満の範囲で含有する、[1]に記載のポリフェニレンエーテル。
【0025】
[3]
重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が3.0以下である、[1]または[2]に記載のポリフェニレンエーテル。
【0026】
[4]
ηAが0.20〜0.43dl/gである、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、加熱加工時の分子量変化が少なく、純度が高く、耐熱性の高いポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの本実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0029】
本実施の形態のポリフェニレンエーテル(以下、単に「PPE」という場合がある。)は、下記式(1)で表される繰返し単位構造からなるホモ重合体及び/又は共重合体である。
【0030】
【化1】

式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される。
【0031】
前記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0032】
前記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で示される「アルキル基」は、炭素数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示すものとし、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。メチル、エチルが好ましく、メチルがより好ましい。
【0033】
前記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で示されるアルキル基は、置換可能な位置に、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
このような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、アルケニル基(例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル)、アルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)等が挙げられる。
【0035】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含み、加熱前のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηAと、加熱後のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηBとが、関係式0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.1を満たす。
【0036】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、加熱前の還元粘度ηAと、加熱後の還元粘度ηBが、関係式0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.1を満たす。
【0037】
本実施の形態において、還元粘度とは、30℃における、ポリフェニレンエーテルの0.5g/dl濃度のクロロホルム溶液の還元粘度を意味し、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0038】
また、「加熱後の還元粘度ηB」とは、加熱前のポリフェニルエーテルを、310℃、10MPaで20分間熱プレスを実施した後のポリフェニルエーテルの還元粘度を意味する。
【0039】
上記関係式(ηB−ηA)/ηA>0.1であると、加熱による分子量の増大が顕著であることを意味する。すなわち、加熱により低分子量のポリフェニレンエーテルの分子量が増大したため、加熱後のポリフェニレンエーテルは、低分子量のポリフェニレンエーテルとは言えなくなる。
【0040】
また、(ηB−ηA)/ηA<0であると、加熱によって分子が切断されるなどして分子量が低くなった事を意味する。その結果、加熱後のポリフェニレンエーテルは、充分な耐熱性が得られないおそれがある。
【0041】
良好な加工流動性を得、実用上充分な耐熱性を得、両者のバランスにおいて優れたものとし、さらには純度の高さの観点から、0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.1であり、好ましくは0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.09、最も好ましくは0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.08の範囲である。
【0042】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの分子量に関わる情報は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いた測定により得られる。具体的なゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定条件としては、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21(カラム:昭和電工(株)製K−805Lを2本直列、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:1.0ml/min、サンプル濃度:ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液)を用いて、標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550)の検量線を作成するという、測定条件とする。
【0043】
検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmを、それぞれ選択できる。
【0044】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの数平均分子量(Mn)は、7,000以上15,000以下であることが好ましい。より好ましい下限は8,000以上であり、さらに好ましい下限は9,000以上である。また、より好ましい上限は14,000以下であり、さらに好ましい上限は13,000以下である。機械的特性を発揮する観点から、数平均分子量の下限は7,000以上であることが好ましく、優れた溶剤溶解性を得る観点から、数平均分子量の上限は15,000以下であることが好ましい。
【0045】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、低分子量であり、かつ、オリゴマー成分が少ないポリフェニレンエーテルであることが好ましい。また、分子量8,000以下の成分量、50,000以上の成分量を上記特定の範囲にすることで、高い耐熱性を有し、加熱前後における分子量変化が少なくなる。具体的には、加熱前後の分子量変化を抑制する観点から、ポリフェニレンエーテル全体に対して、分子量50,000以上の成分量は、5〜20質量%であることが好ましく、5〜18質量%であることがより好ましい。耐熱性及び加熱前後の分子量変化を抑制する観点からポリフェニレンエーテル全体に対して、分子量8,000以下の成分量は、12〜30質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
【0046】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造方法において、例えば重合時間や用いる触媒量・モノマー量・溶剤組成等を制御することにより、分子量50,000以上の成分を上述の特定量に制御し、かつ、分子量8,000以下の成分を上述の特定量に制御することができる。
【0047】
ポリフェニレンエーテルを製造した後、例えば、分子量8,000以下のポリフェニレンエーテルが30質量%を超えるか、若しくは12質量%に満たない場合、又は分子量50,000以上のポリフェニレンエーテルが20質量%を超えるか、若しくは5質量%未満の場合には、下記の方法により分子量を調整できる。
【0048】
例えば、ポリフェニレンエーテルを良溶媒に溶解し貧溶媒で再沈させ単離する、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒で洗浄する等の方法が適用できる。
【0049】
これらの方法は、処理温度により分子量を調整可能なため、ポリフェニレンエーテルの分子量調整方法として使用できるが、低減された不要な成分がポリマー損失となり収率が低下する可能性が高い。そのため、分子量調整方法を使用せず、本実施の形態のポリフェニレンエーテルを重合段階で製造する方法が、効率的にポリフェニレンエーテルを製造するという観点から好ましい。
【0050】
また、分子量分布を示す指標として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分散度を使用する。この分散度は、値が小さいほど分子量分布が狭いことを示し、1が最小値である。
【0051】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの分散度は、3.0以下であることが好ましい。この範囲であることで、溶剤への溶解性に優れたポリフェニレンエーテルとなる傾向にある。本実施の形態のポリフェニレンエーテルの分散度は、より好ましくは2.8以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.6以下であることが好ましく、最も好ましくは2.5以下である。
【0052】
また、本実施の形態のポリフェニレンエーテルの分散度は1.6以上であることが好ましい。この範囲未満であると、分子量8,000以下の成分量及び50,000以上の成分量を上記特定の範囲にすることが困難となる可能性が高く、効率よくポリフェニレンエーテルを製造することが困難となる。より好ましくは1.8以上、さらに好ましくは1.9以上、最も好ましくは2.0以上である。
【0053】
特に、所定の分子量以上の成分量と、所定の分子量以下の成分量とを特定量有し、かつ、分子量分布(分散度)が狭いポリフェニレンエーテルを製造する場合、重合時に用いる特定のハロゲン元素濃度を制御することで、極めて加熱前後の還元粘度が少ない低分子量のポリフェニレンエーテルが得られ、低分子量でありがならも耐熱性の高いポリフェニレンエーテルが得られると本発明者らは考えている。重合時に用いる特定のハロゲン元素濃度については後述する。
【0054】
上記式(1)により表されるポリフェニレンエーテルは、以下のフェノール化合物を重合することにより製造できる。
【0055】
フェノール化合物としては、例えば、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール、2、5−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2−メチル−5−エチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、2−アリル−5−メチルフェノール、2、5−ジアリルフェノール、2,3−ジエチル−6−n―プロピルフェノール、2−メチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−n−ブチルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−フェニルフェノール、2,5−ジフェニルフェノール、2,5−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−5−トリルフェノール、2,5−ジトリルフェノール、2,6−ジメチル−3−アリルフェノール、2,3,6−トリアリルフェノール、2,3,6−トリブチルフェノール、2,6−ジーn−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジメチル−3−n−ブチルフェノール、2,6−ジメチル−3−t−ブチルフェノール等が挙げられる。
【0056】
特に、安価であり入手が容易であるため、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノールが好ましく、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノールがより好ましい。
【0057】
上記フェノール化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジエチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジフェニルフェノールとを組み合わせて用いる方法、2,3,6−トリメチルフェノールと2,5−ジメチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。混合比は任意に選択できる。また使用するフェノール化合物の中には、製造の際の副産物として含まれている少量のm−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール等が含まれていてもよい。
【0059】
上記フェノール化合物の他に、使用する化合物の中に下記式(2)で表される二価のフェノール化合物が含まれていてもよい。下記式(2)で表されるような二価のフェノール性化合物は対応する一価のフェノール化合物とケトン類、またはジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応や、対応する一価のフェノール化合物同士の反応等により工業的に有利に製造できる。例えばホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサン等の汎用ケトン化合物と一価のフェノール化合物の反応により得られる化合物群や、一価のフェノール化合物同士の反応により得られる化合群がある。例えば下記一般式(2−a)、(2−b)、(2−c)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【化2】

【0061】
【化2−a】

【0062】
【化2−b】

【0063】
【化2−c】

上記式で表される代表的な化合物としては、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXが両方のアリール基を直結している化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがメチレンである化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがチオである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがエチレンである化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがイソプロピリデンである化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがシクロヘキシリデンである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXが両方のアリール基を直結している化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがメチレンである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがエチレンである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがチオである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがイソプロピリデンである化合物、R5、R6、R7及びR8がメチル基でXがメチレンである化合物、R5、R6、R7及びR8がメチル基でXがエチレンである化合物、R5、R6、R7及びR8がメチル基でXがイソプロピリデンである化合物等であるが、これらの例に限定されない。
【0064】
さらに上記フェノール化合物の他に、多価フェノール化合物を共存させることが可能である。例えば、分子内に3個以上9個未満のフェノール性水酸基を有し、その内の少なくとも1個のフェノール性水酸基の2,6位にアルキル基またはアルキレン基を有する化合物が挙げられる。多価フェノール化合物の一例として、以下に列挙する。4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシ-3-エトキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルエチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(3,5,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]-ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-エチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、3,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2-ベンゼンジオール、4,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,5/3,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,3,5/3,4,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、6,6’-メチレンビス[4-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-シクロヘキシルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]フェノール]、4,4’,4”,4”’-(1,2-エタンジイリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’,4”,4”’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フェノール性水酸基の数は3個以上であれば特に制限はないが、数が多くなると加熱時の分子量変化が大きくなる可能性があるため、好ましくは3〜6個、さらに好ましくは3〜4個であり、また、2,6位のアルキル基またはアルキレン基としてはメチル基が好ましい。最も好ましい多価フェノール化合物は、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’,4”,4”’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)である。
【0065】
ポリフェニレンエーテルは、沈殿析出重合法又は溶液重合法の2種類の製造方法により製造でき、製造のし易さ、分子量の調整の容易さの観点では沈殿析出重合が、より色調の優れたものを得る場合は溶液重合法が好ましい。沈殿析出重合法とは、所定の分子量となったポリフェニレンエーテルが沈殿析出する重合形態である。沈殿析出重合法においては、ポリフェニレンエーテルの重合が進行するにつれて、溶媒組成などに応じて決まる分子量に達したものが析出し、それ以下の分子量のものは溶解した状態となる。溶媒としては、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等のポリフェニレンエーテルの良溶媒と、メタノール及びブタノール等の貧溶媒との混合溶媒が用いられる。析出したポリフェニレンエーテルは重合反応速度が遅くなるので、理論上、得られるポリフェニレンエーテルの分子量分布が狭くなっていく。さらに、重合途中でポリフェニレンエーテルが析出するため、系内の粘度は徐々に低下していくことから重合時のモノマー濃度(フェノール化合物濃度)を高くすることができる。また、析出したポリフェニレンエーテルをろ過することで容易に取り出すことができるので、極めて簡易な工程によりポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【0066】
一方、溶液重合法とは、ポリフェニレンエーテルの良溶媒中で重合が行われ、重合中に沈殿が析出しない重合方法である。全ポリフェニレンエーテル分子が溶解した状態にあり、分子量分布は広くなる傾向にある。溶液重合法においては、ポリフェニレンエーテルが溶解した重合液を、メタノール等のポリフェニレンエーテルの貧溶媒中に展開することによって粉体状のポリフェニレンエーテルが得られる。
【0067】
効率良くポリフェニレンエーテルを製造する観点及び特定の分子量分布をもつポリフェニレンエーテルを製造する観点から、モノマー濃度は、重合液の全量を基準として、10〜28質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。前記濃度が10質量%以上であると、ポリフェニレンエーテルの製造効率が高くなる。
一方、前記濃度が30質量%以上であると、特定の分子量に調整できなくなる傾向にある。この原因について本発明者らは以下のように推定している。前記濃度が30質量%以上と高くなると、重合終結時の液粘度が高くなり、均一な撹拌が困難となってくる場合がある。そのため、不均一な反応が起こり、予想外の分子量のポリフェニレンエーテルが得られる。その結果、本実施の形態の、特定の分子量をもつポリフェニレンエーテルを効率よく製造することが困難になる恐れがある。
【0068】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの重合工程においては、沈殿析出重合、溶液重合のいずれにおいても、用いるフェノール化合物を重合開始後に添加することで、より効率的に得る事ができる。
【0069】
特に分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを得るには、重合時に用いる全フェノール化合物の内、1〜100質量%を重合開始後に添加することが好ましい。より好ましくは、20〜100質量%、さらに好ましくは40〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。
【0070】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの重合工程においては、沈殿析出重合、溶液重合のいずれにおいても、酸素含有ガスを供給しながら行う。
【0071】
酸素含有ガスとしては、純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、更には空気と窒素、希ガス等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。
【0072】
重合反応中の系内圧力は、常圧でよいが、必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
【0073】
酸素含有ガスの供給速度は、除熱や重合速度等を考慮して任意に選択できるが、重合に用いるフェノール化合物1モル当たりの純酸素として5NmL/分以上が好ましく、10NmL/分以上がさらに好ましい。
【0074】
ポリフェニレンエーテルの重合反応系には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の中性塩、ゼオライト等を添加してもよい。
【0075】
また、従来から重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を重合溶媒中に添加してもよい。このような界面活性剤としては、例えば、Aliquat336やCapRiquat(株式会社 同仁化学研究所製 商品名)で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。使用量は重合反応原料の全量に対して0.1質量%を超えない範囲が好ましい。
【0076】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造に用いる触媒としては、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いられる公知の触媒系が使用できる。
【0077】
例えば、酸化還元能を有する遷移金属イオンと、この金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものがあり、具体的には、銅化合物とアミンとからなる触媒系、マンガン化合物とアミンとからなる触媒系、コバルト化合物とアミンとからなる触媒系等が挙げられる。
【0078】
重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率良く進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミンを加えてもよい。
【0079】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造工程において好適な触媒としては、構成成分として、銅化合物、ハロゲン化合物及び下記式(3)で表されるジアミン化合物を含む触媒が挙げられる。
【0080】
【化3】

上記式(3)中、R9、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群から選ばれるいずれかを示す。なお全てが同時に水素ではないものとする。R13は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。
【0081】
触媒成分を構成する銅化合物としては、第一銅化合物、第二銅化合物又はこれらの混合物を使用できる。第一銅化合物としては、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等が挙げられる。第二銅化合物としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等が挙げられる。これらの中で特に好ましい銅化合物は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。
【0082】
また、これらの銅化合物は、酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲン又は酸から合成してもよい。
【0083】
例えば、酸化第一銅とハロゲン化合物(例えばハロゲン化水素の溶液)とを混合することにより合成できる。これらの銅化合物は、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0084】
触媒成分を構成するハロゲン化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムヨーダイド等である。またこれらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として使用できる。
【0085】
これらのハロゲン化合物は、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
【0087】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルを重合する際に、2種類のハロゲン元素を共存させることで、加熱前後の分子量変化の少ないポリフェニレンエーテルを効率的に得ることができる。原料の入手のしやすさから、共存させる2種類のハロゲン元素の好ましい組み合わせとして、塩素原子と臭素原子との組み合わせ、臭素原子とヨウ素原子との組み合わせ、塩素原子とヨウ素原子との組み合わせがよく、特に好ましい組み合わせは、塩素原子と臭素原子との組み合わせである。共存させる量は任意であるが、イオン半径がより大きなハロゲン元素を、主となるハロゲン元素とし、イオン半径が小さなハロゲン元素を、副となるハロゲン元素とし、副となるハロゲン元素の量を制御することが好ましい。特に分子量変化の少ないポリフェニレンエーテルを効率的に得るには、副のハロゲン元素として塩素原子と、主のハロゲン元素として臭素原子とのモル比(塩素原子:臭素原子)が、1:50〜1:1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:100〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0088】
これらの化合物の使用量は特に限定されないが、銅原子のモル量に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、使用されるフェノール化合物の100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
【0089】
上記式(3)により示されるジアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーt−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。
【0090】
好ましいジアミン化合物は、2つの窒素原子をつなぐアルキレン基(R13)の炭素数が2又は3のものである。
【0091】
これらのジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノール化合物100モルに対して0.01モル〜10モルの範囲で用いられる。
【0092】
重合触媒を構成するその他の成分について説明する。
【0093】
重合工程で用いる重合触媒には、上述した触媒成分の他、さらに、例えば3級モノアミン化合物又は2級モノアミン化合物を、それぞれ単独で又は組み合わせて含有させてもよい。
【0094】
3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含む脂肪族3級アミンである。
【0095】
例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0096】
これらの第3級モノアミンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量は特に限定されないが、重合するフェノール化合物100モルに対して15モル以下が好ましい。
【0097】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造において、3級モノアミン化合物は通常使用される全量を全て反応系内に初期から加える必要はない。即ち、その内の一部を途中で加えてもよいし、その一部を重合開始から逐次加えてもよい。また、重合の開始と同時にフェノール化合物またはフェノール化合物の溶液に加え、これと共に加えてもよい。
【0098】
2級モノアミン化合物としては、第2級脂肪族アミンが挙げられる。
【0099】
第2級脂肪族アミンとして、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0100】
また、2級モノアミン化合物としては、芳香族を含む2級モノアミン化合物も適用できる。例えば、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。上述した2級モノアミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2級モノアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、重合するフェノール化合物100モルに対して15モル以下が好適である。
【0101】
重合反応の終了後の後処理方法については、特に限定されるものではないが、通常、塩酸や酢酸等の酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて触媒を失活させる方法が挙げられる。
【0102】
その後、重合終結時の重合溶液は、ポリフェニレンエーテルが沈殿析出した状態であるため、触媒の洗浄除去を目的として、ポリフェニレンエーテルの溶解能が低い溶媒を主成分とする溶液を用いて繰り返し洗浄処理を行うことが好ましい。
【0103】
次いで、各種乾燥機を用いて乾燥処理を施すことにより、ポリフェニレンエーテルが粉体として回収できる。
【0104】
乾燥処理は、少なくとも60℃以上の温度により行うものとし、80℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、150℃以上がさらにより好ましい。
【0105】
ポリフェニレンエーテルの乾燥を60℃未満の温度で行うと、ポリフェニレンエーテル中の残留揮発分が効率よく1.0質量%未満に抑制できないおそれがある。
【0106】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、純度の高さの観点から、残留揮発分が、好ましくは0.8質量%未満が好ましく、より好ましくは0.6質量%未満であり、さらに好ましくは0.5質量%未満であり、特に好ましくは0.4質量%未満である。ポリフェニレンエーテルにおける残留揮発分の下限は、0.01質量%以上であることが好ましい。残留揮発分が前記範囲内であると、ポリフェニレンエーテルの純度が高い傾向にある。なお、本実施の形態において、残留揮発分は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0107】
ポリフェニレンエーテルを高効率で得るためには、乾燥温度を上昇させる方法、乾燥雰囲気中の真空度を上昇させる方法、乾燥中に撹拌を行う方法等が有効であるが、特に、乾燥温度を上昇させる方法が製造効率の観点から好ましい。
【0108】
乾燥工程は混合機を併用することが好ましい。混合機としては、撹拌式、転動式の乾燥機が挙げられる。これにより処理量を多くでき、生産性を高く維持できる。
【0109】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの還元粘度(0.5dl/g クロロホルム溶液、30℃測定)は、低分子量で有りながらも高い耐熱性の観点から0.20〜0.43dl/gの範囲が好ましく、0.23〜0.40dl/gの範囲がより好ましく、0.25〜0.38dl/gの範囲がさらに好ましい。
【0110】
ポリフェニレンエーテルとしては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであってもよいが分子量分布が広くならないようブレンドすることが好ましい。例えば、還元粘度0.40dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.45dl/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物であってもよいが、それらの混合物の還元粘度は、0.20〜0.43dl/gの範囲であることが好ましい。
【0111】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、180〜300℃であることが好ましく、190〜280℃であることがより好ましく、200〜250℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が前記範囲内であると、耐熱性に優れる傾向にある。なお、本実施の形態において、ガラス転移温度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0112】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、従来既知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂と溶融混練することができる。
【0113】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、フェノール、尿素、メラミン、不飽和ポリエステル、アルキッド、エポキシ、ジアリルフタレート、ビスマレイミド等の樹脂が挙げられる。
【0114】
溶融混練時に、導電性、難燃性、耐衝撃性等の効果を付与する目的で従来既知の添加剤や熱可塑性エラストマーを加えることがより好ましい。
【0115】
また、本実施の形態のポリフェニレンエーテルを用いた樹脂組成物を製造する際には、その他の添加剤、例えば可塑剤、安定剤、変性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、離型剤及びガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、更にはガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等の充填剤を添加してもよい。
【0116】
安定剤や変性剤としては、亜リン酸エステル類、ヒンダードフェノール類、含イオウ酸化防止剤、アルカノールアミン類、酸アミド類、ジチオカルバミン酸金属塩類、無機硫化物、金属酸化物類、無水カルボン酸類、スチレンやステアリルアクリレート等のジエノフィル化合物類、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの添加剤は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0117】
樹脂組成物を構成する成分を混合する方法としては、例えば、溶液ブレンドと脱気方法、押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー等が使用できる。
【実施例】
【0118】
以下、本実施の形態について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本実施の形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
先ず、実施例及び比較例に適用した、物性及び特性等の測定方法を下記に示す。
【0120】
(1)分子量8000以下の成分、及び分子量50000以上の成分の定量、並びに重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の測定
測定装置として、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21を用い、標準ポリスチレンにより検量線を作成し、この検量線を利用して測定を行った。
【0121】
標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550のものを用いた。
【0122】
カラムは、昭和電工(株)製K−805Lを2本直列につないだものを使用した。
【0123】
溶媒は、クロロホルムを使用し、溶媒の流量は1.0mL/min、カラムの温度は40℃として測定した。
【0124】
測定用試料としては、ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。
【0125】
検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
【0126】
(2)還元粘度(ηsp/c)及び(ηB−ηA)/ηAの測定
後述する実施例1〜5及び比較例1〜7で得られたポリフェニレンエーテルをポリフェニレンエーテル(A)とし、該(A)に対して熱プレス処理(310℃×20分×10MPaの条件)したものを、加熱後のポリフェニレンエーテル(B)とした。
【0127】
ポリフェニレンエーテル(A)又はポリフェニレンエーテル(B)を、0.5g/dLのクロロホルム溶液として、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)を求めた。還元粘度の単位はdL/gである。
【0128】
ポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度をηA、ポリフェニレンエーテル(B)の還元粘度をηBとし、関係式(ηB−ηA)/ηAの値を算出した。
【0129】
(3)ガラス転移温度の測定
後述する実施例1〜5及び比較例1〜7のポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、示差走査熱量計DSC(PerkinElmer製−Pyris1)を用いて測定した。
【0130】
窒素雰囲気中、毎分20℃の昇温速度で室温から280℃まで加熱後、50℃まで毎分40℃で降温し、その後、毎分20℃の昇温速度でガラス転移温度を測定した。
【0131】
(4)ポリフェニレンエーテルの残留揮発分の定量
185℃、0.1mmHgの条件で5時間減圧乾燥させたポリフェニレンエーテルパウダーの重量を、当該乾燥前のポリフェニレンエーテルパウダーの重量から減算することで、残留揮発分を定量した。
【0132】
<実施例1>
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.01gの酸化第二銅、0.605gの47質量%臭化水素水溶液、0.242gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、1.172gのジ−n−ブチルアミン、3.567gのブチルジメチルアミン、456.3gのトルエン、18gの2,6−ジメチルフェノール、及び41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。
【0133】
次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入を始め重合を開始したと同時にトルエン60g及び2,6−ジメチルフェノール60gからなる混合液を30分かけて滴下した。乾燥空気を81分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合終結時の内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
【0134】
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を60g添加した。次いで、70℃で120分間、重合混合物を撹拌し、室温に戻しメタノールを過剰に加えてポリフェニレンエーテルが析出したスラリーを作成した。その後、前記スラリーを、ガラスフィルターによりろ過し、ろ残に過剰のメタノールを加えて再度濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを、150℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0135】
<実施例2>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、17mgのベンジルトリエチルアンモニウムクロリドとした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0136】
<実施例3>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、9.1mgの10質量%塩酸とした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0137】
<実施例4>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、12.2mgのジメチルジステアリルアンモニウムクロリドとした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0138】
<実施例5>
重合槽に予め2,6−ジメチルフェノールを入れず、重合を開始すると同時に入れる混合液における2、6−ジメチルフェノールの量を78gとし、41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、12.1mgのトリメチルオクチルメチルアンモニウムクロライドとした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0139】
<比較例1>
テトラメチルアンモニウムクロライドを入れなかった以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0140】
<比較例2>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、1.4mgの10質量%塩酸とした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0141】
<比較例3>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、1.554gの36質量%塩酸とし、47質量%臭化水素水溶液の量を0.124gとした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0142】
<比較例4>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、9.1mgの10質量%塩酸とし、乾燥空気の通気時間を119分間とした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0143】
<比較例5>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、9.1mgの10質量%塩酸とし、乾燥空気の通気時間を140分間とした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0144】
<比較例6>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、9.1mgの10質量%塩酸とし、乾燥空気の通気時間を45分間とした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0145】
<比較例7>
41mgのテトラメチルアンモニウムクロライドの代わりに、9.1mgの10質量%の塩酸とし、重合槽に予め入れるトルエンの量を125.3gとし、乾燥空気の通気時間を125分間とした以外は実施例1と同様に実施して、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。重合終結時に、目視により、一部ゲル状になっていることが確認された。結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

実施例1〜5において、加熱による分子量変化を抑制しながら、純度が高く、耐熱性の高いポリフェニレンエーテルを得ることができた。
【0148】
比較例1及び3においては、原料成分中の臭素原子と塩素原子との比(臭素原子/塩素原子)が低く、比較例2においては、原料成分中の臭素原子と塩素原子とのモル比(臭素原子/塩素原子)が高いため、加熱前後の分子量変化を効率的に抑制することができなかった。比較例4、5及び7においては、分子量50,000以上の成分、及び/又は分子量8,000以下の成分が所定の量を超えて含まれており、加熱前後の分子量変化を抑制するに至らなかった。比較例6においては、加熱前後の分子量変化を抑制できたものの、分子量50,000以上の成分が所定の量より少なく、分子量8,000以下の成分が所定の量を超えて含まれていたため、充分な耐熱性を有するポリフェニレンエーテルが得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明のポリフェニレンエーテルは、加熱前後での分子量変化が少なく、純度も高く、耐熱性も充分高いため、機械部品、自動車部品、電気電子部品、特にプリント基板、絶縁封止剤等の電気電子部品、フィルム、シート、射出成型体、ブロー成型体、ICトレー、医療機器、芸術品等として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含み、加熱前のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηAと、加熱後のポリフェニレンエーテルの還元粘度ηBとが、関係式0≦(ηB−ηA)/ηA≦0.1を満たす、ポリフェニレンエーテル。
【請求項2】
残留揮発分が0.01質量%以上0.5質量%未満の範囲で含有する、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項3】
重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が3.0以下である、請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項4】
ηAが0.20〜0.43dl/gである、請求項1〜3いずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。