説明

ポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤および該処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維

【課題】十分な電気絶縁性を有し、製糸・高次加工での工程通過性が良好なポリフェニレンサルファイド繊維用の処理剤及び該処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維を提供する。
【解決手段】脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル化物であって、分子量が600〜1000である脂肪族多価エステル(A)85〜95重量%、および全ての末端水酸基を1価の脂肪酸でエステル化した油性タイプの非イオン性活性剤であって、HLBが5〜9、分子量が2000〜3000の非イオン性活性剤(B)5〜15重量%からなる混合物を主成分として含有することを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤および該処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維に関するものであり、更に詳しくは、十分な電気絶縁性を有し、製糸・高次加工で工程通過性が良好なポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤および該処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリフェニレンサルファイド繊維を製造する方法としては、2段延伸にて製造する方法(例えば、特許文献1参照)、水系エマルジョンを付与する方法(例えば、特許文献2参照)、特殊添加剤にて改質したポリマーを使用し、処理剤として耐熱性に優れた二塩基酸エステルや芳香族エステルを付与する方法(例えば、特許文献3参照)が知られているが、これらの従来技術においては処理剤の詳細なことには触れられておらず、ましてや繊維の電気絶縁性の改良に関しては何一つ触れられていない。
【0003】
一方、繊維用の電気絶縁油剤としては、新規の電気絶縁油剤に関するもの(例えば、特許文献4参照)、公知の電気絶縁油を特殊繊維に付与する方法(例えば、特許文献5参照)、公知の電気絶縁油を潤滑油として繊維用処理剤に使用する際に特定の非イオン性界面活性剤を併用する方法(例えば、特許文献6参照)等が知られているが、これらはいずれもポリフェニレンサルファイド繊維を製造する工程で電気絶縁油剤を使用することについては何ら言及をするものではなく、ポリフェニレンサルファイド繊維を電気絶縁を有する用途向けへ提供することに関しては、公知の文献が認められないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−143518号公報
【特許文献2】特開平04−100916号公報
【特許文献3】特開平03−076812号公報
【特許文献4】特開昭61−016410号公報
【特許文献5】特開平06−200489号公報
【特許文献6】特開2000−319678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、十分な電気絶縁性を有し、ポリフェニレンサルファイド繊維の製糸・高次加工での工程通過性が良好なポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤および該処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明によれば、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル化物であって、分子量が600〜1000である脂肪族多価エステル(A)85〜95重量%、および全ての末端水酸基を1価の脂肪酸でエステル化した油性タイプの非イオン性活性剤であって、HLBが5〜9、分子量が2000〜3000の非イオン性活性剤(B)5〜15重量%からなる混合物を主成分として含有することを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤が提供される。
【0007】
また、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維は、上記本発明の繊維用処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維であって、絶縁抵抗値が5×1012Ω以上であることを特徴とし、前記繊維用処理剤の主成分付着量が繊維重量に対し0.5〜2.0重量%であることが好ましい条件である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な電気絶縁性を有し、製糸・高次加工で工程通過性が良好なポリフェニレンサルファイド繊維が得られ、このポリフェニレンサルファイド繊維は、その特性である耐熱性、耐薬品性を生かした各種産業資材用途、中でも電気絶縁性を重要な要求特性とする自動車のモーター結束紐やモータースリーブ用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、以下に詳述する。
【0010】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤は、主成分中に脂肪族多価エステル(A)を85〜95重量%、好ましくは87〜93重量%含有することが必要である。脂肪族多価エステル(A)が85重量%未満では、本発明の目的である電気絶縁性が得られなくなり、95重量%を超えると有機溶剤による希釈が必要となるためコスト的に好ましくない。
【0011】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤に使用する脂肪族多価エステル(A)は、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル化物であって、分子量が600〜1000の脂肪族多価エステルであることが必要である。脂肪族多価エステル(A)の分子量が600未満では、処理剤の油膜や耐熱性が不十分で、糸切れや発煙が多発する傾向となり、分子量が1000を超えると、処理剤の平滑性が不十分となり糸切れや毛羽が多発するため好ましくない。また、モノエステルの場合も油膜や耐熱性が不十分であり同様に好ましくない。
【0012】
本発明で使用する脂肪族多価エステル(A)の具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジラウレート、ジオレイルアジペート、ジイソステアリルアジペート、ジオレイルチオジプロピオネート、トリメチロールプロパントリラウレート、ヤシ油、ナタネ油などが挙げられる。中でもジイソステアリルアジペートやトリメチロールプロパントリラウレートが好ましい。
【0013】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤は、主成分中に非イオン性活性剤(B)を5〜15重量%、好ましくは7〜13重量%含有することが必要である。非イオン性活性剤(B)が5重量%未満では、水エマルジョン化が不可能となるためコスト的に好ましくなく、15重量%を超えると、本発明の目的である電気絶縁性が得られなくなるため好ましくない。
【0014】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤に使用する非イオン性活性剤(B)としては、全ての末端水酸基を1価の脂肪酸でエステル化した油性タイプの非イオン性活性剤であって、HLBが5〜9、分子量が2000〜3000の非イオン性活性剤であることが必要である。HLBとは、Hydrophile Lipophile Balanceの略であり、非イオン性活性剤の水と油への親和性を表す値である。非イオン性活性剤(B)のHLBが5未満では、油剤の均一付着性が不十分で、糸切れや毛羽が多発する傾向となり、HLBが9を超えると、処理剤の平滑性が不十分となり、さらに電気絶縁性が低下するため好ましくない。非イオン性活性剤(B)の分子量が2000未満では、処理剤の油膜が不十分となり、分子量が3000を超えると、摩擦が高くなることから、いずれの場合も糸切れや毛羽が多発する傾向となるため好ましくない。
【0015】
本発明で使用する非イオン性活性剤(B)の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシプロピレンジオレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレート、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレート、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサラウレート、ポリオキシエチレングリセリントリオレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリラウレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリオレートなどが挙げられる。なかでもポリオキシエチレンソルビトールヘキサラウレートやポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリラウレートが好ましい。
【0016】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤には、主成分である脂肪族多価エステル(A)と非イオン性活性剤(B)の他に、例えば酸化防止剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等を必要に応じて混合して使用することができるが、これらの添加量は油剤全体に対して2重量%未満が好ましい。
【0017】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維は、超絶縁計にて測定した絶縁抵抗値が5×1012Ω以上であることが好ましく、より好ましくは10×1012Ω以上である。
【0018】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維は、前記脂肪族多価エステル(A)と非イオン性活性剤(B)との混合物を主成分として構成された処理剤が付着していることが好ましく、処理剤の主成分付着量は、繊維重量に対して0.5〜2.0重量%が好ましく、より好ましくは0.8〜1.5重量%である。
【0019】
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤は、低粘度鉱物油で希釈した非水系油剤、水で乳化したエマルジョン油剤、ニートオイルのいずれの状態で使用しても良いが、コスト的な観点からは、水で乳化したエマルジョン油剤での使用が好ましい。原糸に付与する方法としてはローラー給油やガイド給油装置などの公知の方法を用いて紡糸工程で付与すればよい。
【0020】
次に、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の典型的な製造方法について概述する。
【0021】
まず、メルトフローレート(MFR)が50〜600の公知のポリフェニレンサルファイドペレットを、低沸点異物の除去のため140〜180℃で2〜24時間程度乾燥し、溶融紡糸する。なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)とは、設定温度316℃、荷重5kgfとしたときにASTM D1238−82法によって測定されたポリマーの溶融流れ性を示すパラメーターである。また、本発明で用いるポリフェニレンサルファイドは実質的に線状であることが好ましく、トリクロロベンゼン(TCB)を0.1重量%以下含有していてもよく、その他添加剤を少量含有していてもよい。
【0022】
本発明において、ポリフェニレンサルファイドのポリマペレットの溶融には、エクストルーダー型紡糸機を用いることが好ましい。紡糸温度は300〜320℃とし、紡糸パック中で5〜20μmのフィルターを通過させて濾過する。濾過したポリマーは口金を用い、口金細孔から紡出し、口金直下の徐冷ゾーンを通過させた後、冷風を吹き付けて冷却固化する。該口金においては、通常の千鳥配列や環状配列で口金細孔を配列させ、その孔径や孔長は口金背面圧力が70〜150kg/cmで、口金孔からの吐出線速度と引取速度の比で定義される紡糸ドラフトが20〜50なるように適宜設計すればよい。紡糸ドラフトが50を越えると繊度斑が悪化する。より好ましい口金背面圧力の範囲は90〜110kg/cmである。徐冷ゾ−ンは、長さ5〜10cmの断熱筒を取り付け、口金直下10cm下における雰囲気温度が150〜250℃となるよう温度制御する。冷却は、10〜30℃の冷風を30〜40m/分の速度で吹き付けて行うが、35m/分以上の速度で吹き付けることが好ましい。単糸太繊度糸は冷却を強化させる必要があるため、吹き付ける冷風の速度は高い方がよいが、従来の単糸細繊度糸と比較すると紡糸張力が大きく低下するため、40m/分以上の速度で冷風を吹き付けると、糸条が紡糸ダクトから飛び出しやすくなったり、紡糸ダクトと接触して繊維物性の低下や毛羽が多発したりするため好ましくない。紡出糸条に対し直角に冷風を吹き付ける横吹きだし冷却チムニーを用いてもよく、環状冷却チムニーを用いて紡出糸条束の外周から中心に、あるいは中心から外周に向けて吹き付けても良いが、横吹き出し冷却チムニーを使用することが好ましい。
次に、冷却固化した糸条に本発明の繊維用処理剤を付与し、該糸条は所定の速度で回転する引取ロールに捲回されて引き取られる。処理剤付与はローラー給油やガイド給油等、公知の方法を用いて実施することができる。引取ロールは、片掛け型、ネルソン型またはSロール型が用いられ、それらいずれを使用してもよく、その温度は通常常温であるが、該ロール内部に水を循環させて20〜40℃に温度制御する。引取速度は400〜1000m/分、好ましくは500〜800m/分である。該引き取り速度、即ち紡糸速度が400m/分未満であると、単位時間あたりの生産量が少なくなり、ポリフェニレンサルファイド繊維を生産性よく得ることができなくなり、目的とする強度範囲を満たすポリフェニレンサルファイド繊維を安定して製造するための適正な延伸倍率を設定し難くなる。一方、1000m/分を越える場合は、口金から吐出されるポリマー量が多くなりすぎ、現状の紡糸技術では充分な冷却を施し難くなるため、製糸性の悪化等を招き好ましくない。ポリフェニレンサルファイド糸条をガラス転移点以下まで一旦冷却させることが必要である。
【0023】
次いで、引取糸条は、品質・製糸性を安定化させるため一旦巻き取ることなく、フィードロールに捲回して、引取ロールとフィードロール間で糸条にプレストレッチをかけた後、ポリアミドやポリエステルと同様の多段延伸法を用いて巻取ることもできるし、特開2001−262436号公報で提案されているポリフェニレンサルファイド繊維の製造に適した独自の多段延伸法を用いて巻取ることもできるが、紡糸速度が低い場合は後者を用いることが好ましい。
【0024】
ポリアミド等と同様の多段延伸法では、引き続き以下の方法でポリフェニレンサルファイド繊維を延伸熱処理する。プレストレッチは、2〜10%、好ましくは4〜8%である。フィードロールの温度は70〜110℃に制御することが好ましい。次に、該フィードロールと第1延伸ロ−ル間で1段目の延伸を行う。第1延伸ロールは80〜120℃に加熱して行う。高強度のポリフェニレンサルファイド繊維を得るには、第1段目延伸倍率を3.3〜3.8倍と単糸切れが発生しない程度で可能な限り高くすることが好ましい。1段延伸した糸条は、第2延伸ロールとの間で2段目の延伸を行う。第2延伸ロールは180〜250℃の範囲に設定する。第2段目延伸倍率は、1.05〜1.3倍に設定することが好ましい。また、必要に応じて、更に第3延伸ロールとの間で3段目の延伸を行っても良い。この場合、第3延伸ロールの温度は前記第2延伸ロールと同じ温度範囲とし、通常は第2延伸ロールより高い温度に設定する。また、第3段目延伸倍率は、通常は前記第2段目延伸倍率を分割し、2段延伸倍率を3段延伸倍率より高く設定する。総合延伸倍率は、3.8〜4.5倍とすることが好ましく、より好ましくは3.9〜4.4倍、さらに好ましくは4.0〜4.3倍である。このような狭い範囲の総合延伸倍率を適用しなければ、毛羽や糸切れの少ないポリフェニレンサルファイドからなる単糸太繊度糸を得ることはできず、この範囲外の倍率を選択しただけで製糸不能状態へと陥る。特に第2延伸ロールの温度が200℃以上の高温である場合は、該高温ロールと接触するまでに可能な限り配向を高め、高強度化しておく必要がある。2段延伸または3段延伸された糸条は、次に張力調整ロールとの間で弛緩熱処理される。張力調整ロールは非加熱または150℃以下に設定する。弛緩率は2〜10%、好ましくは4〜8%である。上記第1延伸ロールから張力調整ロールまでの各ロールはネルソンタイプのロールを用いることが好ましい。
【0025】
かくして得られる本発明のポリフェニレンサルファイドは、十分な電気絶縁性を有し、製糸・高次加工で工程通過性が良好であることに加えて、その特性である耐熱性、耐薬品性を備えることから、それらの特性を生かした各種産業資材用途、中でも電気絶縁性を重要な要求特性とする自動車のモーター結束紐やモータースリーブ用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0027】
なお、本文および実施例に用いた物性等の測定方法は以下の通りである。
【0028】
(1)総繊度:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法により、所定荷重0.045cN/dtexで正量繊度を測定して総繊度とした。
【0029】
(2)付着油分量:JIS L1013(1999) 8.27 b)の方法で、ジエチルエ−テル抽出分を測定し、付着油分量とした。
【0030】
(3)強度・伸度:JIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0031】
(4)製糸糸切れ:製糸スタートから、繊維パッケージ重量で合計1000kg製糸した時の糸切れ回数を評価した。
【0032】
(5)絶縁抵抗値:JIS C2140(2009)に示される手法に準じて、東亜電子工業(株)社製Super Megoh Meter SM−5Eにて、気温25℃、湿度40%に24時間以上保管した糸試料30gを使用し、1000kVの電圧をかけたときの絶縁抵抗値を測定した。
【0033】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
MFRが200の東レ製ポリフェニレンサルファイドポリマーを、1.33kPa真空下の状態でエクストルーダー型紡糸機によりポリマー温度が315℃になるように溶融し、紡糸パック中で溶融ポリマーを5μmの細孔を有する金属フィルターで濾過した後、直径0.50mmの吐出孔を19個有した千鳥1列配列の紡糸口金を用いて紡出した。吐出量は得られた繊維が440dtexとなるように巻取り速度から算出し、計量ポンプを調整した。口金直下には長さ100mmの加熱筒を設け、糸条を徐冷却した後、横吹き出し冷却チムニーを使用して25℃で38m/分の冷風により冷却固化せしめ、表1記載の脂肪族多価エステル(A)および非イオン性活性剤(B)を主成分として含有する処理剤を水エマルジョン液とし25rpmで回転する給油ロールにて付与した。なお、表1に記載の油剤成分は全て竹本油脂(株)製の単成分を混合使用し、各数値は脂肪族多価エステル(A)および非イオン性活性剤(B)の部数を示す。
【0034】
給油された糸条は、引取ロールに速度500m/分で引き取り、引取ロールとフィードロールの間で6%のストレッチをかけ、次いでフィードロールと第1延伸ロールの間で第1段目の延伸、第1延伸ロールと第2延伸ロールの間で第2段目の延伸を行った。引き続き、第2延伸ロールと弛緩ロールとの間で5%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻取機にて巻き取った。各ロールの表面温度は、引取ロールが常温、フィードロールが80℃、第1延伸ロールが110℃、第2延伸ロールは235℃、弛緩ロールが150℃となるように設定した。第1延伸ロールと第2延伸ロールの回転速度は、第1段目延伸倍率が3.70倍、総合延伸倍率が4.30倍となるように設定した。
【0035】
このようにして得られたポリフェニレンサルファイド繊維の特性評価結果を表2に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜3はいずれの例も電気絶縁性が優れている結果を示したが、比較例1、5は電気絶縁性が劣るという結果であった。さらに、実施例1〜3はいずれの例も糸切れがなく良好な製糸性を示したが、比較例2〜5は糸切れ回数が多く製糸性が不十分であるという結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリフェニレンサルファイドは、十分な電気絶縁性を有し、製糸・高次加工で工程通過性が良好であることに加えて、その特性である耐熱性、耐薬品性を備えることから、それらの特性を生かした各種産業資材用途、中でも電気絶縁性を重要な要求特性とする自動車のモーター結束紐やモータースリーブ用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル化物であって、分子量が600〜1000である脂肪族多価エステル(A)85〜95重量%、および全ての末端水酸基を1価の脂肪酸でエステル化した油性タイプの非イオン性活性剤であって、HLBが5〜9、分子量が2000〜3000の非イオン性活性剤(B)5〜15重量%からなる混合物を主成分として含有することを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維用処理剤。
【請求項2】
請求項1記載の繊維用処理剤を付与したポリフェニレンサルファイド繊維であり、絶縁抵抗値が5×1012Ω以上であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維。
【請求項3】
前記繊維用処理剤の主成分付着量が繊維重量に対し0.5〜2.0重量%であることを特徴とする請求項2記載のポリフェニレンサルファイド繊維。

【公開番号】特開2011−202305(P2011−202305A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69849(P2010−69849)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】