説明

ポリブタジエン成形品の接着方法、これより得られるポリブタジエン複合成形品、医療用部材、および輸液セット

【課題】ポリブタジエン成形品と該ポリブタジエン成形品以外のその他の樹脂成形品との接合力を向上させることができ、また、これらの成形品の溶剤を選ぶ(組み合わせる)ことでさらに接合力を向上させ、さらに、表面処理後、接着までの時間が長くても接着効果が持続することが可能な接着方法を提供すること。
【解決手段】(1)ポリブタジエン成形品および/または(2)その他の樹脂成形品の表面を、シラン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎を、上記の表面に対して、全面または部分的に吹付処理したのち、上記(1)ポリブタジエン成形品を(2)その他の樹脂成形品と接着するポリブタジエン成形品の接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブタジエン成形品の接着方法、これより得られるポリブタジエン複合成形品、医療用部材および輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可塑剤を使用しないPVC(塩化ビニル系樹脂)代替材料として、水添ジエン系共重合体とポリオレフィン系樹脂に光安定剤を配合した熱可塑性エラストマー組成物を医療用品に用いることや(特許文献1:特開平6−57087号公報)、ポリブタジエンなどの熱可塑性材料と熱可塑性ポリオレフィンを共押し出しして得られる医療用チューブ(特許文献2:特開2003−102827号公報)などが提案されている。
ところで、例えば、輸液セットは、チューブとコネクターを溶剤接合(接着)し商品化されている。これまで、上記輸液セットとしては、PVCチューブ/溶剤(極性溶剤)/極性樹脂コネクターで商品化されている。しかしながら、近年、脱PVCの動きが顕著化し、PVCチューブに換え、1,2−ポリブタジエン(RB)などの共役ジエン系重合体の検討が増えている。ところが、RBなどの共役ジエン系重合体は極性に乏しく、極性溶剤/極性樹脂での接合が不十分で課題となっている。
特に、日本や米国では、輸液セットを用いて、患者に点滴するに際し、ポンプを用いる場合があり、この場合には、輸液セットに圧力がかかるため、例えばチューブとコネクターとの接合部より液洩れを生じる恐れがある。
また、本発明者らは、ポリブタジエン成形品の表面をオゾン処理などの表面処理を施し、極性樹脂成形品と接着する方法を提案したが(特願2003−433773号)、この表面処理は接着効果があるものの、表面処理後、接着までの時間が長いと接着効果が向上しないという問題点もある。
【0003】
一方、近年にいたり、シラン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎を、固体物質の表面に対して、全面または部分的に吹き付け処理し、接着、印刷、塗装などを容易にした固体物質の表面改質方法が提案されている(特許文献3:特開2003−238710号公報)。しかしながら、この技術を医療用部材に用いることは提案されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平6−57087号公報
【特許文献2】特開2003−102827号公報
【特許文献3】特開2003−238710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリブタジエン成形品と該ポリブタジエン成形品以外のその他の樹脂成形品との接合力を向上させることができ、また表面処理後、接着までの時間が長くても接着効果が持続することが可能な接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)ポリブタジエン成形品および/または(2)その他の樹脂成形品の表面を、シラン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎を、上記の表面に対して、全面または部分的に吹付処理(以下「火炎吹付処理」ともいう)したのち、上記(A)ポリブタジエン成形品を(B)その他の樹脂成形品と接着することを特徴とするポリブタジエン成形品の接着方法に関する。
ここで、本発明で用いられるポリブタジエンとしては、結晶化度5%以上であるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンが好ましい。
また、その他の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアルキルアクリレート樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、およびポリブテンの群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
さらに、上記改質剤化合物としては、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物が挙げられる。
上記接着は、有機溶剤による接着が好ましい。
ここで、有機溶剤としては、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、二硫化炭素、および酢酸の群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
次に、本発明は、上記ポリブタジエン成形品の接着方法により得られるポリブタジエン複合成形品に関する。
また、本発明は、上記ポリブタジエン複合成形品を少なくとも含む医療用部材に関する。
さらに、本発明は、上記医療用部材を構成要素とする輸液セットに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(A)ポリブタジエン成形品および/または(B)その他の樹脂成形品の表面に、本発明の火炎吹付処理を施すことにより、極性基を植え付け、あるいは、粗面化することにより、(A)ポリブタジエン成形品と(B)その他の樹脂成形品との接合(接着)力を向上させ、また、これらの成形品の溶剤を選ぶ(組み合わせる)ことで、さらに接合力を向上させることができる。また、本発明の接着方法は、表面処理後、接着までの時間が長くても接着効果を維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)ポリブタジエン成形品
本発明のチューブなどのポリブタジエン成形品を構成するポリブタジエンとしては、(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン単独で、あるいは、(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンおよび(B)その他の熱可塑性ポリマーとの組成物が用いられる。この(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、結晶化度が5%以上、好ましくは10〜40%の結晶性を有するシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンであり、その融点は、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは60〜140℃の範囲にある。結晶化度・融点がこの範囲にあることにより、引張強度、引裂強度などの力学強度と柔軟性のバランスに優れる結果となる。
【0009】
なお、結晶化度が5〜25質量%程度までのシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下「低結晶RB」ともいう)は、柔軟性に優れるので、チューブ本体として用いられる。しかしながら、この低結晶化度RBは、融点が低いので(融点=約70〜95℃)、耐蒸気滅菌性に劣る。このため、後述するように、電子線照射により、架橋させて耐熱性を付与することが望ましい。
一方、結晶化度が25〜40質量%程度のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下「高結晶RB」ともいう)は、融点が比較的高い(融点=約105〜140℃)が、一方、硬度が高く柔軟性に劣るので、コネクタとして好ましく用いることができる。
【0010】
本発明に用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、例えば、1,2−結合含有量が70%以上のものであり、例えば、コバルト化合物およびアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られるものであるが、この製造方法に限定されるものではない。
【0011】
本発明に用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンのブタジエン結合単位における1,2−結合含有量は、通常、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。1,2−結合含有量が70%以上であることにより、当該1,2−ポリブタジエンが良好な熱可塑性エラストマーとしての性質が発揮される。
【0012】
本発明に用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、ブタジエン以外の共役ジエンが少量共重合していてもよい。ブタジエン以外の共役ジエンとしては、1,3−ペンタジエン、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
このうち、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体としては、1−ペンチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシル−1,3−ブタジエン、1−ヘプチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
【0013】
ここで、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンの代表的なものは、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエンのなかで、ブタジエンと共重合される好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。重合に供される単量体成分中のブタジエンの含有量は50モル%以上、特には70モル%以上が好ましい。
【0014】
本発明で用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、上述したように、例えば、コバルト化合物およびアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られる。上記コバルト化合物としては、好ましくは炭素数4以上のコバルトの有機酸塩を挙げることができる。このコバルトの有機酸塩の具体例として、酪酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプチル酸塩、2−エチルヘキシル酸などのオクチル酸塩、デカン酸塩や、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸塩、安息香酸塩、トリル酸塩、キシリル酸塩、エチル安息香酸などのアルキル、アラルキル、アリル置換安息香酸塩やナフトエ酸塩、アルキル、アラルキルもしくはアリル置換ナフトエ酸塩を挙げることができる。これらのうち、2−エチルヘキシル酸のいわゆるオクチル酸塩や、ステアリン酸塩、安息香酸塩が、炭化水素溶媒への優れた溶解性のために好ましい。
【0015】
上記アルミノオキサンとしては、例えば下記一般式(I)または一般式(II)で表されるものを挙げることができる。








【0016】
【化1】

【0017】
この一般式(I)あるいは(II)で表されるアルミノオキサンにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、mは、2以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10〜100の整数である。アルミノオキサンの具体例としては、メチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、プロピルアルミノオキサン、ブチルアルミノオキサンなどを挙げることができ、メチルアルミノオキサンが特に好ましい。
【0018】
重合触媒は、上記コバルト化合物とアルミノオキサン以外に、ホスフィン化合物を含有することが極めて好ましい。ホスフィン化合物は、重合触媒の活性化、ビニル結合構造および結晶性の制御に有効な成分であり、好ましくは下記一般式(III)で表される有機リン化合物を挙げることができる。
【0019】
P(Ar)n(R')3-n ……(III)
一般式(III)中、Arは下記で示される基を示す。














【0020】
【化2】

【0021】
(上記基において、R1,R2,R3は、同一または異なって、水素原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルコキシ基または炭素数が好ましくは6〜12のアリール基を表す。)
また、一般式(III)中、R'はシクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基を示し、nは0〜3の整数である。
【0022】
一般式(III)で表されるホスフィン化合物としては、具体的に、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−エチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン)、トリ−(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(4−メチルフェニルホスフィン)、トリ(4−エチルフェニルホスフィン)などを挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものとしては、トリフェニルホスフィン、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンなどが挙げられる。
【0023】
また、コバルト化合物として、下記一般式(IV)で表される化合物を用いることができる。






【0024】
【化3】

【0025】
上記一般式(IV)で表される化合物は、塩化コバルトに対し上記一般式(III)においてnが3であるホスフィン化合物を配位子に持つ錯体である。このコバルト化合物の使用に際しては、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは重合系中に塩化コバルトとホスフィン化合物を接触させる方法で使用してもよい。錯体中のホスフィン化合物を種々選択することにより、得られるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの1,2−結合の量、結晶化度の制御を行なうことができる。
【0026】
上記一般式(IV)で表されるコバルト化合物の具体例としては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−イソプロピルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−t−ブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチル−5−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−フェニルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4,5−トリメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ドデシルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドなどを使用することができる。
【0027】
これらのうち、特に好ましいものとしては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドなどが挙げられる。
【0028】
触媒の使用量は、ブタジエン単独重合の場合は、ブタジエン1モル当たり、共重合する場合は、ブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとの合計量1モル当たり、コバルト化合物を、コバルト原子換算で0.001〜1ミリモル、好ましくは0.01〜0.5ミリモル程度使用する。また、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、通常、0.1〜50、好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜20である。さらに、アルミノオキサンの使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するアルミニウム原子の比(Al/Co)として、通常、4〜107、好ましくは10〜106である。なお、一般式(IV)で表される錯体を用いる場合は、ホスフィン化合物の使用量がコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)が2であるとし、アルミノオキサンの使用量は、上記の記載に従う。
【0029】
重合溶媒として用いられる不活性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
重合温度は、通常、−50〜120℃で、好ましくは−20〜100℃である。
重合反応は、回分式でも、連続式でもよい。なお、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜35質量%である。
また、重合体を製造するために、本発明の触媒および重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガスなどの失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。重合反応が所望の段階まで進行したら反応混合物をアルコール、その他の重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加し、次いで通常の方法に従って生成重合体を分離、洗浄、乾燥して本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
【0031】
本発明に用いられる(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの重量平均分子量は、好ましくは1万〜500万、さらに好ましくは1万〜150万、特に好ましくは5万〜100万である。重量平均分子量が1万未満では流動性が極端に高く、加工が非常に困難となり、また成形品(医療用部材)がべたつくため好ましくなく、一方、500万を超えると流動性が極端に低く、加工が非常に困難となり好ましくない。
【0032】
一方、(B)熱可塑性ポリマーとしては、上記(A)成分以外の熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーであり、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、これらの水素化物(SEBS、SEPS)、上記シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン以外のポリブタジエン(BR)、ABS樹脂、ポリイソプレン、各種ポリエチレン(LLDPE、ULDPE、LDPE)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸エステルコポリマー、およびエチレン−メタクリル酸コポリマーの群から選ばれた少なくとも1種である。
【0033】
(B)成分の配合量は、(A)〜(B)成分の合計量100質量部中に、40質量部以下、好ましくは0〜35質量部である。40質量部を超えると、(A)成分の使用割合が少なくなり、(A)成分本来の柔軟性が失われる。
【0034】
なお、本発明に用いられる組成物において、上記(A)〜(B)成分以外に、必要に応じて、滑剤、フィラーまたは発泡剤などの添加剤を含有してもよい。上記添加剤の具体例としては、パラフィンオイル、シリコンオイル、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミドなどの滑剤のほか、タルク、シリカ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ガラス、カーボンファイバー、ガラスバルーンなどのフィラー、および、松本油脂社製のマイクロスフェア、ADCA、OBSH、重曹、AIBNなどの発泡剤を挙げることができる。
なお、滑剤の使用量は、樹脂成分、すなわち(A)〜(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下、好ましくは0.01〜8質量部である。10質量部を超えると、滑剤が製品からブリードアウトし、使用薬剤に溶出するので、好ましくない。
【0035】
また、電子線照射による耐熱性と柔軟性とのバランスを向上させるために、その他の添加剤、例えば、トリメチルプロパントリメタクリレートなどの多官能モノマー、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの光重合開始剤、ベンゾフェノンなどの光増感剤などを、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン100質量部に対して5質量部以下含有させてもよい。
【0036】
組成物の調製と成形
本発明にポリブタジエン成形品に用いられる組成物は、上記(A)成分単独、あるいは、(A)〜(B)成分、これらにさらに必要に応じて、上記添加剤などを添加して、加熱軟化させて、混練し成形する。混練と成形は、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの軟化温度ないし溶融温度以上の成形性の良好な温度範囲で行い、均質な成形品(チューブなどの医療用部材)にする。このため、成形温度は、90〜170℃程度が良い。チューブ、コネクターなどの成形品を得るには、プレス成形、押し出し成形、射出成形、ブロー成形、異形押し出し成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形、パウダースラッシュ成形、回転成形などが利用され、チューブなどやチューブ接続部を有するコネクタに成形される。
【0037】
電子線照射
なお、本発明のポリブタジエン成形品のうち、チューブは柔軟性を必要とするため、低結晶RBが用いられるが、融点が低いため、耐蒸気滅菌性を発現させるために、次いで電子線を照射し、架橋することもできる。電子線を照射すると、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンのビニル基のラジカル重合により三次元架橋構造となり、成形品(チューブ)の耐熱性を付与させる。電子線は、合成樹脂に対して透過性があり、その透過の程度は、成形品の厚みと、電子線の運動エネルギーに依存する。
その照射厚みに従って厚み方向に均一に透過可能に電子線のエネルギーを調節すると、厚み方向で架橋度を均一にした成形品(チューブ)とすることができる。
なお、コネクタについても、電子線照射してもよい。
また、電子線照射は、チューブとコネクタとの接着前でも、接着後でもよい。
【0038】
電子線のエネルギーは、上記のチューブなどのポリブタジエン成形品(医療用部材)に対して、好ましくは50〜3,000kV、さらに好ましくは300〜2,000kVとするが、50kVより小さいと、表層部で捕獲吸収される電子の割合が相対的に多くなって、成形品を透過する電子線が少なくなり、表層部に比して内部の架橋が遅れて、架橋度に差が生じるので、好ましくない。一方、3,000kVより大きいと、架橋度が大きくなり過ぎて、硬質となるとともに弾力性や伸びが小さくなり好ましくない。
【0039】
また、この際の電子線の照射量は、好ましくは1〜100Mrad(SI単位系で、10〜1,000kGyに相当する)、さらに好ましくは1〜50Mradの範囲で照射して架橋硬化させる。1Mradより少ないと、1,2−ポリブタジエンの架橋度が小さく、一方、100Mradを超えると、架橋度が大きくなり過ぎて、硬質となるので、弾力性や伸びが小さいので好ましくない。
【0040】
電子線照射による架橋は、電子線加速電圧と照射量の積で表すことができ、本発明においては、電子線加速電圧(kV)と照射線量(Mrad)の積を、好ましくは2,000〜20,000(kV・Mrad)、さらに好ましくは5,000〜16,000(kV・Mrad)とする。2,000(kV・Mrad)より小さいと、表層部で捕獲吸収される電子の割合が相対的に多くなって、ポリブタジエン成形品(医療用部材)を透過する電子線が少なくなり、表層部に比して内部の架橋が遅れて、架橋度に差が生じるので、好ましくない。一方、20,000(kV・Mrad)より大きいと、架橋度が大きくなり過ぎて、硬質となるので、弾力性や伸びが小さいので好ましくない。
【0041】
本発明のポリブタジエン成形品(チューブなどの医療用部材)に、上記のような電子線照射を施すことにより、電子線照射後の医療用部材の50%伸びにおける弾性率(M250)を電子線照射前の50%伸びにおける弾性率(M150)の好ましくは1.1〜2.5倍、さらに好ましくは1.1〜2.0倍とすることができる。M250/M150が1.1未満では、電子線架橋が進んでおらず、耐蒸気滅菌性に劣る、一方、2.5を超えると、架橋されたポリブタジエン成形品(チューブなどの医療用部材)が硬くなりすぎ、柔軟性が失われ好ましくない。M250/M150は、上記電子線加速電圧(kV)と照射線量(Mrad)の積を、2,000〜20,000(kV・Mrad)とすることにより、容易に調整することができる。
【0042】
また、このようにして得られる電子線照射後の架橋されたチューブなどのポリブタジエン成形品(医療用部材)は、耐蒸気滅菌性を有し、例えば、本発明の架橋された輸液チューブを用いて、100〜121℃で10〜20分間程度、蒸気滅菌しても、変形することもない。
ここで、耐蒸気滅菌性とは、具体的には、輸液チューブなどの樹脂成形品(例えば、内径3mmφ、外径4.4mmφ、肉厚0.7mmのチューブ、チューブ長20cm)を高圧蒸気滅菌器に入れ、121℃で20分間、蒸気滅菌した場合、滅菌前の円形が保たれ、変形が観察されないことを意味する。
【0043】
さらに、本発明の電子線を照射されたポリブタジエン成形品(チューブなどの医療用部材)のヘイズ値は、好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。ヘイズ値は、透明性の尺度であり、その値が小さくなる程、透明性がよくなる。このヘイズ値は、ASTMD−1003に準拠して測定した。
【0044】
また、電子線照射後の本発明のポリブタジエン成形品(チューブなどの医療用部材)は、トルエン不溶分が、通常、50〜99質量%、好ましくは80〜95質量%である。トルエン不溶分は、当該ポリブタジエン成形品を電子線照射することにより、(A)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン中の二重結合がどの程度架橋しているかを示すバロメーターである。
ここで、トルエン不溶分は、本発明のポリブタジエン成形品(医療用部材)[(a)g]を100mlのトルエンに浸漬させ、30℃で48時間放置後、100メッシュ金網を用いて濾過し、濾過液の一部[(c)ml]を採取後、蒸発乾燥固化させ、得られた残存固形分[トルエン可溶分:(b)g]を秤量し、下式によりゲル含有量を算出した。
ゲル含有量(質量%)=[{a−b×(100/c)}/a]×100
トルエン不溶分が50質量%未満では、電子線照射による架橋が不充分であり、耐熱性が劣り、耐蒸気滅菌性に劣る。一方、99質量%を超えると、電子線照射による架橋が進みすぎて、医療用部材が硬くなりすぎ、柔軟性が失われ好ましくない。
上記トルエン不溶分は、上記電子線加速電圧(kV)と照射線量(Mrad)の積を、2,000〜20,000(kV・Mrad)とすることにより、容易に調整することができる。
【0045】
さらに、本発明のポリブタジエン成形品(チューブなどの医療用部材)は、ハロゲン原子の含有量が好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。このハロゲン原子の含有量は、例えば、上記のように、重合溶媒として非ハロゲン系の不活性有機溶媒を用いることにより、得られる1,2−ポリブタジエン中のハロゲン原子の含有量を好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下にすることができる。また、触媒系において、非ハロゲン系の化合物のみを用いることは、ポリブタジエン成形品(医療用部材)中のハロゲン原子の含有量をさらに低減させることができ好ましい。
【0046】
このようにして電子線照射されたポリブタジエン成形品は、柔軟性と硬度に優れ、また耐蒸気滅菌性を有するので、チューブのほか、コネクタにも有用である。
【0047】
本発明に用いられるポリブタジエン成形品とは、上記のような1,2−ポリブタジエンからなるチューブ、1,2−ポリブタジエンとスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)とのブレンドからなるチューブ、1,2−ポリブタジエンとゴムとのブレンドからなるチューブ、1,2−ポリブタジエンとオレフィン樹脂とのブレンドからなるチューブをさす。この中で、スチレン−イソプレンブロック共重合体との組み合わせについては、水素添加したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンでもよく、部分水素添加品でもよい。ゴムとの組み合わせについては種々のゴムを使用することができるが、イソプレンゴムおよび天然ゴムが好ましい。オレフィン樹脂との組み合わせについては、LDPE、L−LDPE、EVAが好ましい樹脂として挙げられる。
【0048】
(2)その他の樹脂成形品
次に、本発明のその他の樹脂成形品に用いられるその他の樹脂としては、熱可塑性プラスチックとして、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸アルキルエステル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂などのポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリロニトリル、アセタール樹脂、ポリオキシメチレン、イオノマー、塩素化ポリエチレン、クマロン・インデン樹脂、再生セルロース、石油樹脂、セルロース誘導体、アルカリセルロース、セルロースエステル、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースザンテート、セルロースニトレート、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテルエステル、フッ素樹脂、FEP、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,6、ナイロン4,6などのポリポリアミド樹脂、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリフェニレンテレフタルアミド、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリカーボネート、CR−39、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリケイ皮酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリメチルビニルエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレートなどを、また熱硬化性プラスチックとして、アミノ樹脂、アニリン樹脂、尿素樹脂、ポリスルホンアミド、メラミン樹脂、アリル樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、レゾルシノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、低収縮不飽和ポリエステル、フラン樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの極性樹脂のほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリスチレン樹脂などの非極性樹脂が挙げられる。
このうち、好ましいその他の樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などの極性樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの非極性樹脂が挙げられる。
【0049】
なお、極性樹脂の溶解度パラメーター[SP値:単位=(cal/cm31/2]は、好ましくは9〜13、さらに好ましくは9.5〜12である。
ここで、溶解度パラメーターは、John Wiley&Son社出版「ポリマーハンドブック」1999年、第4版、セクションVII第682〜685頁)に記載のグループ寄与法でSmallのグループパラメーターを用いて算出した値である。例えば、ポリメタクリル酸メチル(繰返単位分子量100g/モル、密度=1.19g/cm3として(以下、単位省略))9.25(cal/cm31/2、ポリアクリル酸ブチル(繰返単位分子量128、密度1.06として)8.97(cal/cm31/2、ポリメタクリル酸ブチル(繰返単位分子量142、密度1.06として)9.47(cal/cm31/2、ポリスチレン(繰返単位分子量104、密度1.05として)9.03(cal/cm31/2、ポリアクリロニトリル(繰返単位分子量53、密度1.18として)12.71(cal/cm31/2である。なお、各重合体の密度は、VCH社出版の「ウルマンズ エンサイクロペディア オブ インダストリアル ケミストリー(ULLMANN’S ENCYCLOPEDIA OF INDUSTRIAL CHEMISTRY)」1992年、第A21巻、第169頁記載の値を用いた。また、共重合体の溶解度パラメーターδcは、質量分率5%未満の場合は主成分の値を用い、質量分率5%以上の場合では質量分率で加成性が成立するとした。すなわち、m種類の単量体からなる共重合体を構成する個々の単量体の単独重合体の溶解度パラメーターδnとその質量分率Wnとから次の式(1)により算出できる。
【0050】
【数1】

【0051】
例えば、スチレン75%とアクリロニトリル25%からなる共重合体の溶解度パラメーターは、ポリスチレンの溶解度パラメーター 9.03(cal/cm31/2、とポリアクリロニトリルの溶解度パラメーター 12.71(cal/cm31/2を用いて式(1)に代入して9.95(cal/cm31/2の値が得られる。
【0052】
また、ビニル系単量体を2段階以上で、かつ各段階においてビニル系単量体の種類を変えて重合してえられるビニル系重合体の溶解度パラメーターδsは、最終的に得られたビニル系重合体の全質量を各段階で得られたビニル系重合体の質量で割った値、すなわち質量分率で加成性が成立するとした。すなわち、q段階で重合し、各段階で得られた重合体の溶解度パラメータδiとその質量分率Wiとから次の式(2)により算出できる。






【0053】
【数2】

【0054】
例えば、2段階で重合し、1段階目にスチレン75質量%とアクリロニトリル25質量%からなる共重合体が50質量部が得られ、2段階目にメタクリル酸メチルの重合体が50質量部得られたとすると、この2段階の重合で得られた重合体の溶解度パラメーターは、スチレン(75質量%)−アクリロニトリル(25質量%)共重合体の溶解度パラメーター 9.95とポリメタクリル酸メチルの溶解度パラメーター 9.25(cal/cm31/2を用いて式(2)に代入して9.60(cal/cm31/2の値が得られる。
【0055】
溶解度パラメーターを上記範囲内にすると、本発明の火炎吹付処理を施すことにより、成形品の表面に極性基が植え付けられ、極性溶剤などの有機溶剤にて溶剤接着する際に、高い接着強度が得られるという効果を奏する。
溶解度パラメーターが9未満では、極性溶剤による接着力が不十分となり好ましくない。一方、13を超えると薬物吸着が強くなりコネクター用途には適さない。
このような溶解度パラメーターを満足する極性樹脂としては、上記の好ましい極性樹脂が挙げられる。
【0056】
なお、本発明に用いられるその他の樹脂成形品としては、上記各種のその他の樹脂からなる、コネクター、輸液セット補助具などが挙げられる。
【0057】
火炎吹付処理
本発明のポリブタジエン成形品の接着方法は、(1)ポリブタジエン成形品および/または(2)その他の樹脂成形品の表面を、上記火炎吹付処理することにより、当該表面に極性基を植え付け、さらにには、当該表面を粗面化して、次いで(1)ポリブタジエン成形品と(2)その他の樹脂成形品とを接着するものである。
【0058】
すなわち、本発明の火炎吹付処理に用いられる改質剤化合物としては、シラン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物であって、それぞれ沸点が10℃以上100℃未満でアルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。このような改質剤化合物を使用することにより、(1)ポリブタジエン成形品や(2)その他の樹脂成形品の表面に対しても、有機溶剤により極めて強固に接着できるという効果を得ることができる。また、このような改質剤化合物を使用することにより、より長時間にわたって、表面改質効果を持続させることができる。
【0059】
改質剤化合物の沸点が10℃未満の値であっては、揮発性が激しくて、取り扱いが困難となる場合がある。一方、かかる改質剤化合物の沸点が100℃以上では、空気などの引火性ガスや助燃剤との混合性が著しく低下し、改質剤化合物が不完全燃焼しやすくなって、成形品の表面改質が不均一になったり、長時間にわたって、改質効果を持続させることが困難になったりする場合がある。上記改質剤化合物の沸点を15〜80℃の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜60℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。なお、かかる改質剤化合物の沸点は、改質剤化合物自体の構造を制限することによっても調整することができるが、その他、比較的沸点が低いアルキルシラン化合物などと、比較的沸点が高いアルコキシラン化合物などとを適宜混合使用することによっても調整することができる。
【0060】
改質剤化合物の種類についても特に制限されるものではないが、例えば、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらの化合物のうち、アルキルシラン化合物、アルキルチタン化合物、およびアルキルアルミニウム化合物は、一般に沸点が低いものが多く、加熱により容易に気化して、空気などと均一に混合できることから好ましい改質剤化合物である。このようなアルキルシラン化合物、アルキルチタン化合物およびアルキルアルミニウム化合物の好適例としては、テトラメチルシラン、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニム、テトラエチルシラン、テトラエチルチタン、テトラエチルアルミニム、1,2−ジクロロテトラメチルシラン、1,2−ジクロロテトラメチルチタン、1,2−ジクロロテトラメチルアルミニム、1,2−ジフェニルテトラメチルシラン、1,2−ジフェニルテトラメチルチタン、1,2−ジフェニルテトラメチルアルミニム、1,2−ジクロロテトラエチルシラン、1,2−ジクロロテトラエチルチタン、1,2−ジクロロテトラエチルアルミニム、1,2−ジフェニルテトラエチルシラン、1,2−ジフェニルテトラエチルチタン、1,2−ジフェニルテトラエチルアルミニム、1,2,3−トリクロロテトラメチルシラン、1,2,3−トリクロロテトラメチルチタン、1,2,3−トリクロロテトラメチルアルミニウム、1,2,3−トリフェニルテトラメチルシラン、1,2,3−トリフェニルテトラメチルチタン、1,2,3−トリフェニルテトラメチルアルミニウム、ジメチルジエチルテトラシラン、ジメチルジエチルテトラチタン、ジメチルジエチルテトラアルミニムなどの1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。さらに、このようなアルキルシラン化合物、アルキルチタン化合物およびアルキルアルミニウム化合物のうち、テトラメチルシラン、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニム、テトラエチルシラン、テトラエチルチタン、およびテトラエチルアルミニムは、特に沸点が低く、空気などと容易に混合することから好ましい改質剤化合物であり、1,2−ジクロロテトラメチルシランなどのハロゲン化シラン化合物は、表面改質効果が特に優れていることから好ましい改質剤化合物である。また、上述した化合物のうち、アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物は、そのエステル構造に起因して、一般に沸点が高いものが多いものの、その沸点が10℃以上100℃未満の範囲内である限り、成形品に対してより優れた表面改質効果を発揮できることから好ましい改質剤化合物である。
【0061】
なお、改質剤化合物の平均分子量は、マススペクトル測定において、50〜1,000の範囲内の値とすることが好ましい。上記改質剤化合物の平均分子量が50未満となると、揮発性が高くて、取り扱いが困難となる場合がある。一方、改質剤化合物の平均分子量が1,000を超えると、加熱により気化して、空気などと容易に混合することが困難となる場合がある。改質剤化合物の平均分子量を、マススペクトル測定において、60〜500の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜200の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0062】
また、改質剤化合物の液体状態での密度は、0.3〜0.9g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。上記改質剤化合物の密度が0.3g/cm3未満となると、取り扱いが困難となったり、エアゾール缶に収容したりすることが困難となる場合がある。一方、改質剤化合物の密度が0.9g/cm3を超えると、気化しづらくなるとともに、エアゾール缶に収容した場合に、空気などと完全に分離した状態となる場合がある。したがって、改質剤化合物の密度を0.4〜0.8g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜0.7g/cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
また、改質剤化合物の添加量を、燃焼ガスの全体量を100モル%としたときに、1×10-10〜10モル%の範囲内の値とすることが好ましい。上記改質剤化合物の添加量が1×10-10モル%未満の値になると、成形品に対する改質効果が発現しない場合がある。一方、上記改質剤化合物の添加量が10モル%を超えると、改質剤化合物と空気などとの混合性が低下し、それにつれて改質剤化合物が不完全燃焼する場合がある。改質剤化合物の添加量を、燃焼ガスの全体量を100モル%としたときに、1×10-9〜5モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、1×10-8〜1モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0064】
また、火炎温度の制御が容易にできることから、燃焼ガス中に、通常、引火性ガスを添加することが好ましい。このような引火性ガスとして、プロパンガスや天然ガスなどの炭化水素ガス、あるいは、水素、酸素、空気などの引火性ガスが挙げられる。なお、燃焼ガスをエアゾール缶に入れて使用する場合には、このような引火性ガスとして、プロパンガスおよび圧縮空気などを使用することが好ましい。また、このような引火性ガスの含有量を、燃焼ガスの全体量を100モル%としたときに、80〜99.9モル%の範囲内の値とすることが好ましい。上記引火性ガスの含有量が80モル%未満の値になると、改質剤化合物と空気などとの混合性が低下し、それにつれて改質剤化合物が不完全燃焼する場合がある。一方、上記改質剤化合物の添加量が99.9モル%を超えると、固体物質に対する改質効果が発現しない場合がある。改質剤化合物の添加量を、燃焼ガスの全体量を100モル%としたときに、85〜99モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、90〜99モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
また、燃焼ガス中に、改質剤化合物を均一に混合するために、キャリアガスを添加することも好ましい。すなわち、改質剤化合物と、キャリアガスとを予め混合し、次いで、空気流などの引火性ガスに混合することが好ましい。上記キャリアガスを添加することにより、比較的分子量が大きく、移動しづらい改質剤化合物を用いた場合であっても、空気流と均一に混合することができるためである。すなわち、キャリアガスを添加することにより、改質剤化合物を燃焼しやすくして、固体物質の表面改質を均一かつ十分に実施することができるためである。なお、このような好ましいキャリアガスとして、引火性ガスと同種のガスを使用することが好ましく、例えば、空気や酸素、あるいはプロパンガスや天然ガスなどの炭化水素を挙げることができる。
【0066】
また、燃焼ガス中に、沸点が100℃以上のアルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を、改質補助剤として添加することが好ましい。このように若干沸点が高い化合物であっても、アルキルシラン化合物などの改質剤化合物と極めて相溶性に優れた改質補助剤を添加することにより、改質剤化合物の沸点が低いことによる燃料ガスの取り扱いの悪さを改良することができるとともに、固体物質に対する表面改質効果をさらに高めることができるためである。
【0067】
また、改質剤化合物の全体量を100モル%としたときに、改質補助剤の添加量を0.01〜50モル%の範囲内の値とすることが好ましい。上記改質補助剤の添加量が0.01モル%未満の値になると、改質補助剤の添加効果が発現しない場合がある。一方、上記改質補助剤の添加量が50モル%を超えると、燃焼ガスの不完全燃焼が生じる場合があるためである。したがって、改質剤化合物の全体量を100モル%としたときに、改質補助剤の添加量を0.1〜30モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜20モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0068】
さらに、本発明の火炎吹付処理を実施するにあたり、火炎温度を500〜1,500℃の範囲内の値とすることが好ましい。さらに好ましくは、700〜1,000℃とする。このように実施することにより、改質剤化合物の不完全燃焼などを防止することができるとともに、(1)ポリブタジエン成形品と(2)その他の樹脂成形品とを極めて強固に接着することができる。また、このような火炎温度であれば、処理時間にも多少影響されるが、これらの成形品の変形を効果的に防止することができる。
【0069】
さらにまた、本発明の火炎吹付処理を実施するにあたり、火炎の処理時間を0.1秒〜100秒の範囲内の値とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜20秒とする。このように実施することにより、改質剤化合物の不完全燃焼などを防止することができるとともに、上記成形品に対して、極めて迅速に接着することができる。また、このような処理時間であれば、火炎温度にも多少影響されるが、上記成形品の変形を効果的に防止することができる。
【0070】
なお、ポリブタジエン自体の溶解度パラメーターは、通常、8.3〜8.5、好ましくは8.4であるが、火炎吹付処理された後のポリブタジエン成形品の溶解度パラメーターは、通常、9.0〜12.0、好ましくは9.3〜11.0と上昇し、例えば上記極性樹脂の溶解度パラメーターに近づく。したがって、当該火炎吹付処理は、ポリブタジエンと上記の極性樹脂との溶解度パラメーターを近似させることによって、接着性が向上するということもできる。
【0071】
以上の火炎吹付処理は、ポリブタジエン成形品とその他の樹脂成形品とを接着させる際に、(1)ポリブタジエン成形品および/または(2)その他の樹脂成形品に適用される。
【0072】
接着処理
本発明では、次いで、火炎吹付処理後、(1)ポリブタジエン成形品と(2)その他の樹脂成形品とを接着する。
接着方法としては接着の際に透明性を損ねない、溶剤接着、超音波接着、あるいは高周波接着、接着剤を使用した接着(UV硬化アクリルタイプ瞬間接着剤、シアノアクリレートタイプ瞬間接着剤を含む)などが挙げられるが、好ましくは溶剤接着である。
ここで、溶剤接着は、(1)ポリブタジエン成形品および/または(2)その他の樹脂成形品に溶解可能な有機溶剤を用いて、両者を接着するものである。
溶剤接着は、(1)ポリブタジエン成形品および(2)その他の樹脂成形品の共通する有機溶剤を用いてもよく、また、それぞれに可溶な有機溶剤を個別に用いてもよい。
上記接着用の有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、二硫化炭素、酢酸などの有機溶剤が挙げられる。
この接着の条件としては、(1)ポリブタジエン成形品と(2)その他の樹脂成形品の接着個所を接着用溶剤に浸漬したり、接着溶剤を吹付たり、接着溶剤を刷毛、端布などで塗布するなどの手段により、実施することができる。
なお、上記の各接着に際しては、上記接着の共通する有機溶剤または個別の有機溶剤を組み合わせて用いて、ポリブタジエン成形品およびその他の樹脂成形品を、それぞれ、あらかじめ処理することが望ましい。
【0073】
本発明によれば、火炎吹付処理されたチューブなどのポリブタジエン成形品とコネクタなどのその他の樹脂成形品とを接着することにより、接着個所が強固に接着されたポリブタジエン複合成形品が得られる。
【0074】
次に、本発明のポリブタジエン複合成形品(医療用部材:チューブおよびチューブ接続部を有するコネクタ)を用いた輸液セットについて、図1を用いてさらに具体的に説明する。
この輸液セット10は、輸液バッグ12内の輸液排出用管14との結合のための接続部材(コネクタ)15と、接続部材15と点滴筒11とを接続する第1のチューブC1と、点滴筒11と穿刺針13とを接続する第2のチューブC2と、輸液速度を調整するためのクレンメ18と、穿刺針13を被包するキャップ16とを有している。なお、符号19は、第2のチューブC2と穿刺針13とを接続するための接合部材である。
【0075】
ここで、穿刺針13としては、先端に穿刺用刃先を有する中空のステンレス鋼などからなる金属針、合成樹脂製針が使用される。また、クレンメ18としては、ローラークレンメが用いられており、このローラークレンメは、移動可能に設けられたローラ17を備え、このローラ17の穿刺針13側への移動により第2のチューブC2の流路が狭くなり、輸液速度の調整が可能である。点滴筒11内には、万一、輸液剤などに異物が含まれていた場合に備えてフィルター(図示せず)が収納されている。なお、穿刺針13としては、従来より使用されているものが用いられる。
また、本発明においては、接合部材15,点滴筒11,接合部材19は、いずれも、「チューブ接続部を有するコネクタ」に該当し、ポリカーボネート、ポリエステル、透明ABS、塩化ビニルなどのその他の樹脂が用いられる。
【0076】
また、チューブC1,C2としては、透明性を有する軟質チューブが好適であり、具体的には、従来より使用の、軟質塩化ビニル樹脂、結晶化度が5〜25%程度の低結晶化度のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、さらに、本発明の結晶化度5%以上、好ましくは結晶化度が5〜25%程度の低結晶化度のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを本発明の火炎吹付処理したものが用いられる。
【0077】
ここで、チューブC1,C2の各先端と結合部材15,点滴筒11,接合部材19(いずれも、本発明におけるコネクタに相当)におけるチューブ接続部とは、溶剤接着、超音波接着、あるいは高周波接着により、密着強固に固定されている。
本発明では、火炎吹付処理されたシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンからなるチューブが、ポリカーボネートからなるコネクタと接着されているため、両者が密着強固に固定することができ、液漏れがない。
ここで、溶剤接着としては、上記のようにテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、トルエン、二硫化炭素、酢酸などの有機溶剤が挙げられる。
【0078】
なお、本発明において、チューブとチューブ接合部を有するコネクタからなる医療用部材は、上記の輸液セットの構成要素、薬剤投与用カテーテルなどの医療用器具への構成要素としても適用することができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は特に断らない限り、質量基準である。また、実施例中の各種の測定は、以下に従った。
【0080】
実施例1
(試験片の作製)
(1)チューブ試験片は、単軸40mm押出機(L/D=28)で押出成形にて図2(a)に示したチューブ(内径2.9Φ、外径3.7Ф)を作製し、50mmに切断した。
(2)コネクタ試験片は、射出成形機にて図2(b)に示したコネクタを作製した。
(火炎吹付処理)
チューブの場合、上記(1)で得たチューブ試験片を垂直に固定させ、改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎が、チューブの表面に均一にあたるようにチューブを回転させながら、1秒間、火炎吹付処理をした。
(接着処理)
火炎吹付処理したチューブ試験片の先端(接着部=10mm)をシクロヘキサノンに1秒間浸け、ポリカーボネート製コネクタ試験片の内側に挿入して溶剤接着をした。
(接着強度)
火炎吹付処理した試験片を室温で1日間放置後、接着処理した試験片を60℃にて24時間乾燥処理し、その後、室温に2時間放置し、島津製作所社製の万能引張試験機AG2000を用いて、10mm/minの速度で引張せん断強度を測定した(状態調整1日)。
火炎吹付処理した試験片を室温で10日間放置後、上記と同様に乾燥処理後、同様に引張せん断強度を測定した(状態調整10日)。
【0081】
実施例2〜3、比較例1〜2
チューブおよびコネクタを表1記載の試験片を使用した以外は、実施例1と同様にして、状態調整1日、および10日の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
なお、コネクタを火炎処理する場合、上記(2)で得たコネクタ試験片を垂直に固定させ、改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎が、コネクタの内部表面に均一になるようにコネクタを回転させながら1秒間、火炎吹付処理を行なった。
また、オゾン処理の場合は、岩崎電気社製の低圧水銀ランプ型オゾン照射機OC2507(25W7灯)を用いて、オゾンを照射した。オゾン照射は、水銀ランプからテストピース表面までの距離を20cm、照射時間3分とした。このとき、波長が254nmの紫外線の強度は18mW/cm2、積算光量は7J/cm2である。
【0082】
【表1】

【0083】
*1)JSR社製、1,2−ポリブタジエン、RB810
*2)帝人化成社製、ポリカーボネート樹脂(パンライト K−1285J)
*3)東ソー社製、ポリプロピレン樹脂(ポリプロ J5080Q)
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、ポリブタジエン成形品と該ポリブタジエン成形品以外のその他の樹脂成形品との接合力を向上させることができる接着方法を提供することができ、特に医療用途に有用であり、接合部において液洩れがなく、また柔軟性と硬度に優れるとともに、耐蒸気滅菌性に優れ、リサイクル可能であり、さらに塩化ビニル系樹脂を含まないため環境問題にもやさしい、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを主体とする医療用部材とこれを用いた医療用器具を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のポリブタジエン複合成形品(医療用部材)を構成要素とする輸液セットの平面図である。
【図2】(a)はチューブの概略図で、(b)はコネクタの概略図である。
【符号の説明】
【0086】
10 輸液セット
11 点滴筒
12 輸液バッグ
13 穿刺針
14 輸液排出用管
15 接続部材(コネクタ)
16 キャップ
17 ローラー
18 クレンメ
19 接合部材
C1〜C2 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリブタジエン成形品および/または(2)その他の樹脂成形品の表面を、シラン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎を、上記の表面に対して、全面または部分的に吹付処理したのち、上記(1)ポリブタジエン成形品を(2)その他の樹脂成形品と接着することを特徴とするポリブタジエン成形品の接着方法。
【請求項2】
ポリブタジエンが、結晶化度5%以上であるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンである請求項1記載のポリブタジエン成形品の接着方法。
【請求項3】
その他の樹脂がポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアルキルアクリレート樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、およびポリブテンの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載のポリブタジエン成形品の接着方法。
【請求項4】
上記改質剤化合物が、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1〜3いずれかに記載のポリブタジエン成形品の接着方法。
【請求項5】
接着が有機溶剤による接着である請求項1〜4いずれかに記載のポリブタジエン成形品の接着方法。
【請求項6】
有機溶剤がシクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、二硫化炭素、および酢酸の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5いずれかに記載のポリブタジエン成形品の接着方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載のポリブタジエン成形品の接着方法により得られるポリブタジエン複合成形品。
【請求項8】
請求項7記載のポリブタジエン複合成形品を少なくとも含む医療用部材。
【請求項9】
請求項8記載の医療用部材を構成要素とする輸液セット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−77161(P2006−77161A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263960(P2004−263960)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】