説明

ポリプロピレンと水素化スチレンブロック共重合体のブレンド

本発明は、ブレンド合計の重量%を100%として、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体を少なくとも約70重量%と、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と屈折率が実質的に合致する選択的に水素化されたブロック共重合体を少なくとも1種含むブロック共重合体組成物を上限約30重量%と、および清澄剤を上限約0.70重量%で含む、成形用組成物を含む。本発明は、成形用組成物から製造された成形品でもある。このような組成物から厚さ0.125インチで形成された成形品は、−20℃から−30℃で約50%未満の濁度および少なくとも100インチ−lbsの機器搭載衝撃堅牢性を有するだろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体と、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と、および追加の清澄剤とを含む成形用組成物に関する。本発明は、成形用組成物から作られた成形品にも関する。成形用組成物およびそれから作られた成形品は、低温衝撃強度と低濁度(高透明度)という独自の組合せを有する。そうしたブレンドは低温で良好な衝撃強度と低濁度の独自のバランスを有するものの、改善された衝撃強度と低濁度という独自の性質は室温(例えば、20から30℃)でも同じように存在する。
【0002】
本明細書による出願人は、2008年12月15日出願のU.S.Provisional application 61/122,612の権益を主張する。
【背景技術】
【0003】
ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体で良好な成形品(例えば、食品保存容器など)を作ることができることは既知である。しかしながら、ポリプロピレンおよびポリプロピレンランダム共重合体は、結晶化して大きな結晶子を作る傾向があり、このような容器の濁度はかなり高くなることが多い。ランダムポリプロピレン共重合体は、ポリプロピレン同種重合体よりも若干透明度が高い傾向にあり、従って最終的な透明度に関して通常好適である。清澄剤を少量(0.18から0.22重量%)加えるとホモポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の結晶子が小さいままで数が増加し、その結果、濁度が顕著に減少することが既知である。清澄剤を加えたポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体で作ったこのような食品容器は、濁度が低いものの、堅牢性および衝撃強度が低く、特に低温では低いものである。具体的には、そうした容器は、0℃以下で非常にもろくなるため、砕けることが多い。ポリプロピレン成形品の衝撃強度を改善する目的で、弾性重合体を加えることが既知である。
【0004】
HoldenおよびHansenに交付された(および本発明の譲受人のうち1人に譲渡された)U.S.Pat.4,904,731は、ホモポリプロピレンおよびポリプロピレンランダム共重合体と、主にモノアルケニル芳香族炭化水素単量体単位からなる水素化ブロック共重合体で主に水素化共役ジオレフィン単量体単位を含む少なくとも1つのブロックを含むものと、および直鎖低密度ポリエチレンとを含む重合体組成物を開示する。実施例で用いられる水素化スチレンブロック共重合体は、スチレンを30重量%含有し、最良のエチレン共重合体は0.917g/cm程度の密度を有するものであった。このような重合体組成物は、1:1の比で1つに混合すると、改善された透明度および良好な衝撃強度を有するまたは示すと記載されている。しかしながら、この組成物は、12.5から15重量%の衝撃修飾剤(水素化スチレンブロック共重合体)のレベルで−10℃でGardner衝撃強度について試験されただけであることが強調される。そのうえ、この組成物の透明度は本発明で達成されるほどには良好ではなく、清澄剤についても清澄剤レベルの臨界についてもまったく記載はない。清澄剤は本発明によれば最良の透明度を達成するための重要な要素である。最後に、実施例で用いられる水素化スチレンブロック共重合体およびポリエチレン共重合体は、最良の透明度を達成するのに重要な、ポリプロピレンランダム共重合体との屈折率の最良の合致を達成するのに最適ではなかった。屈折率を合致させる必要性についても記述はなかった。屈折率の合致は、たとえ清澄剤を高レベルで用いるとしても、良好な透明度を達成するためには重要である。
【0005】
ポリプロピレン重合体は、低密度(典型的には0.86から0.87g/cc)のエチレン共重合体を高いレベルで加えるか、ポリエチレン共重合体をin situで重合するかした場合に、−20℃から−30℃で低温衝撃性を達成することができる(典型的にはポリプロピレン衝撃共重合体と称する。)が、屈折率の合致が悪くゴム粒子サイズが大きいため、こうした共重合体は透明度が極端に低い(0.125インチ厚さの射出成形品で90から100%濁度)。従って、十分な衝撃強度を維持して成形品(冷凍庫用食品容器など)がひび割れたり砕けたりするのを特に−20℃から−30℃で防ぎながらも十分な透明度(0.125インチ厚さの射出成形円盤または射出成形品で濁度約50%未満という濁度レベル)を提供し得る、ホモポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と弾性重合体とのブレンドを創造することが当該分野で必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,904,731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ホモポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と、選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体少なくとも1種を含むブロック共重合体組成物とのブレンドに清澄剤を最適レベルで加えたものを含む梱包用品成形用組成物に関する。詳細には、透明度を向上させるために、ポリプロピレンランダム共重合体は、ポリプロピレンランダム共重合体の総重量を基準として他のオレフィン、例えば、エチレン、ブチレン、またはオクテンを約6重量%未満の量で含有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
良好な透明度を達成するためおよび光の分散を最小にするために、選択的に水素化されたブロック共重合体はポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率と実質的に合致すべきであることが重要である。本発明において、「実質的に合致する」は、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率とブロック共重合体組成物の屈折率がお互いの0.010屈折率単位内にあることを意味する。選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体は広範にスチレンを含有し得るので、スチレン含有量を調整してポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率に合致させることが可能である。図1からわかるとおり、ブロック共重合体のジエン部分が選択的に水素化されなくてはならない。そうでないとブロック共重合体はポリプロピレンランダム共重合体の屈折率、約1.503に合致しないだろう。また、スチレンブロック共重合体の選択的に水素化されたジエンのスチレンは、清澄剤の有効性を低下させる恐れがあるので、特に、良好な低温衝撃性を達成するためにブレンドに水素化ブロック共重合体が約20重量%のレベルで用いられる場合、最適な透明度を達成するために追加の清澄剤も加えることが必要である。ブレンド中、選択的に水素化されたブロック共重合体が約20%のレベルである本発明では、組成物/化合物合計中、清澄剤が少なくとも2500ppm(百万分率)、好ましくは3000ppm、および上限約7000ppmまでで含まれることが有益である。市販の透明な、透明化ポリプロピレン共重合体は大部分が清澄剤を1800から2200ppm含有しているため、これは低濁度および高透明度を達成するために追加の500から1500ppmを加えなければならないことを意味する。最適な量は、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体および所望の濁度レベルに依存するだろう。ブレンド中の選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体のレベルが低くなると(20%未満)、清澄剤への干渉が少なくなり、従って必要となる追加の清澄剤も少なくなる。最適な選択的に水素化されたブロック共重合体の一部を、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率と実質的に合致したポリエチレン共重合体(典型的には密度約0.9g/cmのもの)と置換することは、必要な追加の清澄剤の量を減らすのに有益となり得る。ポリエチレン共重合体は清澄剤に干渉しないからである。しかしながら、このアプローチを用いる場合、低温衝撃性に何かしら妥協することになる。
【0009】
水素化ゴムブロックのガラス転移点は、−20℃から−30℃で良好な衝撃を達成するのに重要である。市販の水素化スチレンブロック共重合体は、ゴム相組成および微小構造に依存して、20℃/分の走査速度で示差走査熱量測定(DSC)により測定したガラス転移点(Tg)が約−55℃から−15℃の範囲のゴムブロックを含有することができる。最良の低温衝撃性を達成するのに、DSCガラス転移点が約−50℃から−15℃のエチレン/ブチレンまたはエチレン/プロピレンゴムブロックが好適である。ポリブタジエンまたはポリイソプレンの水素化ゴムブロック(約−40℃から−15℃のガラス転移点を有する。)を有する水素化スチレンブロック共重合体は、ポリプロピレン中でそれほど良好な低温衝撃性を達成しないが、幾つかの透明なポリプロピレンの応用について興味がもたれる。というのもこれらの共重合体はポリプロピレンにサブミクロンで分散して分散体を形成するので、光分散を防ぐために屈折率を合致させるということが必要ないからである。従って、これらの特別な選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体を低スチレン含量で用いて清澄剤への干渉を最小化しながら、それでいてポリプロピレンに屈折率を合致させていなくても依然として透明であるものにすることが可能である。
【0010】
最も広義において、本発明は、ブレンド全体の重量%を100%として、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体を少なくとも約70重量%;選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体を上限約30重量%、および清澄剤を上限約0.7重量%で含む、少なくとも3成分の組成物を含むことができる。
【0011】
最も広義において、本発明は、ブレンド全体の重量%を100%として、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体を少なくとも約70重量%;選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体を上限約30重量%、および清澄剤を上限約0.7重量%で含む、組成物から製造された、成形品でもある。好ましくは、組成物は、ブレンド全体の重量%を100%として、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体少なくとも約75重量%と、選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体上限約25重量%と、および清澄剤上限約0.5重量%を含む。より好ましくは、組成物は、ブレンド全体の重量%を100%として、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体少なくとも約80重量%;選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体上限約20重量%、および清澄剤上限約0.4重量%を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物を含む射出成形円盤は、0.125インチ厚さの円盤で測定して50%未満の濁度値を有する。また、成形用組成物およびそれから作られた成形品は、ポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体自身のものよりも顕著に改善された衝撃性を有する。詳細には、成形用組成物または成形品の衝撃強度は、約−20℃から約−30℃の温度範囲で、少なくとも約100インチ−lbsである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、様々なブロック共重合体についてスチレン含有量を関数とした屈折率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
良好な低温衝撃強度を持つポリプロピレンまたはランダムポリプロピレン共重合体を提供するため、ゴム状の相溶性成分が必要である。選択的に水素化されたスチレン−ジエンブロック共重合体(ジエンブロックのみが水素化されている。)は、ポリプロピレンと相溶性であり、通常180℃以上の温度で溶融混合するとポリプロピレン中にミクロンおよびサブミクロンで分散して分散体を形成する。
【0015】
本発明の選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体は、一般に、モノアルケニル芳香族炭化水素単量体単位が重合したブロック(S)および水素化ジエンブロック(共役化ジオレフィン単量体が重合したもの)(HD)を含有するものである。Sブロックはガラス性ブロックであり、典型的にはブロック共重合体の末端にある。Sブロックは、重合したスチレン、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、オルト−メチルスチレン、パラ−tertブチルスチレン、ジメチル(dimethy)−スチレン、およびこれらの2種以上の混合物の形のものが可能である。水素化ジエンブロックは、水素化ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエン、ポリへキサジエン、またはこれらの2種以上の混合物の形のものが可能である。HDブロックはゴムであり、典型的にはブロック共重合体の末端以外にあって、通常中間ゴムブロック(rubber midblock)と称する。より一般的な水素化ゴムブロックは、水素化ポリブタジエン、水素化ポリイソプレン、および水素化イソプレン−ブタジエン共重合体である。ポリブタジエンブロックを水素化すると、エチレン−ブチレン共重合体のブロックができるが、エチレンとブチレンの比はポリブタジエンの微小構造(またはビニル含有量)に依存する。ビニル含有量は、ブタジエン重合の間に生じる1,2−付加の量の尺度であり、注意して制御され得るものである。低弾性およびDSCで測定して約−55℃の低いガラス転移点を達成するのに好適なエチレン対ブチレンの比は、ブチレンが約40重量%である。
【0016】
一般に、重合したモノアルケニル芳香族炭化水素単量体単位を主に含有する少なくとも1つの重合体ブロックおよび重合した共役ジオレフィン単量体単位を主に含有する少なくとも1つの重合体ブロックを含み、重合体に組み込んでからこれらのブロックを水素化した、先行技術で既知の選択的に水素化されたブロック共重合体のうち、任意のものを本発明の重合体組成物の構成要素として用いることができる。適した水素化ブロック共重合体は、先行技術で既知の技法(U.S.Pat.No.3,231,635、3,265,765、3,322,856、4,426,495、および4,444,953に記載されるものなど、これらの特許の開示は参照として本明細書中援用される。)に従って調製したブロック共重合体を水素化することで調製することができる。一般に、水素化されて本発明の重合体組成物に有用な水素化ブロック共重合体を形成することができるブロック共重合体は、以下の一般式のうちの1つを有するだろう:S−HD−Sまたは(S−HD)−Z、式中、xは1から20の値が可能で、ジブロック、トリブロック、または複数腕(multiarm)の重合体を形成することができ、Zはカップリング剤である。一般に、重合体Sブロックはそれぞれ、約4,000から約50,000の範囲の同一または異なる重量平均分子量を有することができ、水素化重合体ゴムブロック、HDはそれぞれ、約10,000から約200,000の範囲の重量平均分子量を有することができる。好適な実施形態において、重合体ブロックSはそれぞれ、約5,000から約10,000の範囲のほぼ同一の重量平均分子量を有し、重合体水素化HDブロックはそれぞれ、約25,000から約100,000の範囲の重量平均分子量を有するだろう。
【0017】
本発明のブロック共重合体組成物は、ポリエチレン共重合体も含むことができる。適したポリエチレン共重合体の例は、Dow Chemical製Engage8402およびExxon Chemical製Exact0203などのポリ(エチレンオクテン)共重合体である。この実施形態において、選択的に水素化されたブロック共重合体は、ランダムポリプロピレン共重合体に実質的に合致するポリエチレン共重合体で上限50%まで置換することができる。ポリエチレン共重合体は、0.9g/cmに近い密度を有するべきであり、それによりポリエチレン共重合体は、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率に近く合致することができる。好ましくは、ポリエチレン共重合体は、ポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体の屈折率より+/−0.008屈折率単位以内の平均屈折率を有する。
【0018】
本明細書中使用される場合、「分子量」という用語は、g/mol単位での、重合体または共重合体のブロックの真の分子量を示す。本明細書および請求項で示される分子量は、ASTM3536に従って行なわれるものなど、ポリスチレン較正標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。GPCは、既知の方法であり、この方法では重合体は分子の大きさによって分離されて、最大の分子が最初に溶出してくる。クロマトグラフは、市販されているポリスチレン分子量標準を用いて較正される。このように較正されたGPCを用いて測定された重合体の分子量は、スチレン換算分子量である。スチレン換算分子量は、重合体のスチレン含有量とジエンセグメントのビニル含有量が既知の場合に、真の分子量に変換することができる。用いる検出器は、好ましくは、紫外および屈折率検出器の組合せである。本明細書中表示される分子量は、GPCのトレースのピークで測定して、真の分子量に変換したものであり、一般に「ピーク分子量」と示される。
【0019】
選択的水素化
一般に、本発明において有用なブロック共重合体は、選択的水素化に適した、先行技術で既知の方法のいずれかを用いて、選択的に水素化することができる。一般に、本発明において有用なブロック共重合体の水素化に用いられる条件は、調製後の共役ジオレフィン重合体ブロックに残存するエチレン不飽和結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、およびより好ましくは少なくとも95%が、水素化の結果として飽和結合になっていることを確実にするように選択されるだろう。水素化条件は、モノアルケニル芳香族炭化水素重合体ブロック中の芳香族不飽和結合の20%未満、好ましくは10%未満、およびより好ましくは5%未満しか水素化されないことを確実にするようにも選択されるだろう。例えば、このような水素化は、例えば、U.S.Pat.No.3,595,942、3,634,549、3,670,054、3,700,633、およびRe.27,145号に教示されるものなどの方法を用いて達成されてきた(これらの開示は本明細書中参照として援用される。)。これらの方法は、芳香族またはエチレン不飽和結合を含有する重合体を操作して水素化するもので、適した触媒の操作を基礎とする。このような触媒、または触媒前駆体は、好ましくは、適した還元剤(アルキルアルミニウム、または元素の周期表の第I−A族、第II−A族、および第III−B族から選択される金属、特にリチウム、マグネシウム、またはアルミニウムのハイブリッドなど)と組合せた第VIII属金属(ニッケルまたはコバルトなど)を含む。この調製は、適した溶媒または希釈剤中、約20℃から約80℃の温度で達成することができる。その他の有用な触媒として、チタンを主体とする触媒系が挙げられる。
【0020】
いったん水素化が完了したら、重合体溶液を比較的大量の酸水溶液(好ましくは20から30重量%)とともに、重合体溶液1部に対して酸水溶液0.5部の体積比で撹拌することにより、触媒を抽出することが好ましい。適した酸として、リン酸、硫酸、および有機酸が挙げられる。この撹拌は、酸素を窒素に加えた混合物を分散放出(sparging)しながら約50℃で約30分から約60分間続けられる。この工程では、酸素と炭化水素の爆発性混合物の形成を回避するために注意を払わなければならない。
【0021】
適したスチレンブロック共重合体は、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン(S−B−S)および水素化スチレン−イソプレン−スチレン(S−I−S)、ならびにこれらの混合物である。好ましくは、スチレンブロック共重合体は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(S−E/B−S)である。EBブロックは、ブタジエンの選択的水素化から得られる。S−I−Sのジエンブロックの水素化は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(S−E/P−S)をもたらす。スチレン量および水素化中間ゴムブロックの量を変化させることで様々な屈折率を作り出し、ほぼ全てのプロピレンまたはプロピレン組成物に合致させることができる。または、各ブロックで実質的に同一の構造および化学組成を持つが重合体全体でのスチレン含有量が異なる、2種以上の選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体を、典型的には180℃を超える温度で溶融ブレンドして1つにし、分子的に相溶性で、透明で、渾然一体となった(intimate)ブレンドを生成させることができ、このブレンドは、スチレン含有量および重量割合に依存して、ブレンドした重合体の平均である屈折率を示すだろう。溶融混合の他に、これらの重合体を適した溶媒中で溶液混合して同様な結果を達成することもできる。
【0022】
本発明に適したポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンおよびポリプロピレン共重合体の主要な製造元(Lyondell Basell、Dow、ExxonMobile、Total Petrochemicals、Flint Hills、またはMitsuiなど)のいずれかから入手することができる。最適な透明度のため、ポリプロピレンは、好ましくは、例えば、エチレン、ブチレン、ヘキセン、および/またはオクテンなどの他のオレフィン(上限6重量%までのランダムに共重合した単量体)を含むランダムポリプロピレン共重合体である。最良の透明度のため、通常は、清澄剤1800ppmから2200ppmを市販のポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体に組み込んで結晶子の大きさを小さくし、それにより分散される光を減らし、この部分をより透明にする。清澄剤はポリプロピレンに対して高価なため、清澄剤の量は、控えめに用いる。
【0023】
本発明の目的のため、清澄剤はポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体だけでなくブロック共重合体組成物とも相溶性であるものである。驚いたことに、ブロック共重合体組成物を含有することが清澄剤の有効性を減少させることが見出されている。このことは、ブロック共重合体組成物の屈折率とポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体の屈折率が合致している場合であっても成形用組成物の濁度が上昇することから明白である。理論として縛られることを望むものではないが、清澄剤がブロック共重合体組成物により「吸着される」ものと思われる。従って、ブロック共重合体と相溶性でありブロック共重合体に「吸着される」任意の清澄剤は、本発明の範囲内にあるだろう。
【0024】
上記のとおり、清澄剤としては、ポリプロピレン重合体(例えば、ポリプロピレン同種重合体またはポリプロピレン共重合体)およびブロック共重合体組成物と相溶性である任意の適した清澄剤が可能である。本発明の組成物に用いるのに特に適していると思われる清澄剤の特定のクラスの1つは、芳香族アルデヒドと多価アルコールの縮合反応の生成物として形成されるアセタール化合物である。このようなアセタール化合物を生成するのに用いるのに適した多価アルコールとして、非環式ポリオール(キシリトールおよびソルビトールなど)が挙げられる。このようなアセタール化合物を生成するのに用いるのに適した芳香族アルデヒドは、代表的には、単独のアルデヒド基を含有し、芳香環の残りの位置は不飽和または飽和のいずれかである。従って、適した芳香族アルデヒドとして、ベンズアルデヒドおよび置換ベンズアルデヒド(例えば、4−メチルベンズアルデヒドおよび3,4−ジメチルベンズアルデヒド)が挙げられる。縮合反応により生成するアセタール化合物は、モノアセタール、ジアセタール、またはトリアセタール化合物(即ち、それぞれアセタール基を1つ、2つ、または3つ含有する化合物)が可能であるが、ジアセタール化合物が好ましい。
【0025】
好適な実施形態において、清澄剤は、以下の式(I)の構造に一致するアセタール化合物である:
【0026】
【化1】

式(I)の構造において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、カルボキシル基、およびハロゲンからなる群より選択される。R11は、−CHOHおよび−CHOHCHOHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である。好適な実施形態において、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ水素であり、R、R、R、およびRは、それぞれアルキル基であり、およびR11は−CHOHCHOHである。より限定した実施形態において、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ水素であり、R、R、R、およびRは、それぞれメチル基であり、およびR11は−CHOHCHOHである。別の好適な実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ水素であり、RおよびRは、それぞれアルキル基であり、およびR11は−CHOHCHOHである。より限定した実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ水素であり、RおよびRは、それぞれメチル基であり、およびR11は−CHOHCHOHである。
【0027】
ポリプロピレンに広く用いられる清澄剤は、Milliken Chemicalから商品名Millad(登録商標)3988清澄剤として、またはMillad(登録商標)3988清澄剤をポリプロピレンに加えたマスターバッチとして入手可能なソルビトールアセタール(即ち、1,3:2,4−ビス(3’,4’−ジメチルベンジリデン)ソルビトール)である。本発明では、清澄剤は少なくとも2500ppm、より好ましくは約3000ppmで存在する。2500ppm未満では、ポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体中にブロック共重合体組成物が20重量%存在する場合に成形用組成物は許容できないほど濁る。清澄剤の量は、上限約7000ppmまで可能である。7000ppmを超えてもさらなる有益な効果は得られない。ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の場合、上記の濃度範囲は全ての清澄剤、特にソルビトールアセタール清澄剤に適しているだろうと思われる。
【0028】
一般的な前提として、スチレンブロック共重合体は、用いるポリプロピレン成分と屈折率が合致または実質的に合致していなければならない。従って、もし典型的なポリプロピレンランダム共重合体が本発明のブレンド組成物に用いられる場合、このポリプロピレンランダム共重合体は約4%のコノモマー含有量および約1.503の屈折率を有する。しかしながら、もしポリプロピレンが、例えば、もっと多いもしくは少ないコノモマーを有するか、または独自の条件下で結晶化するならば、ポリプロピレンランダム共重合体の屈折率は結晶化度に依存して変化するだろう。従って、本発明では、ポリプロピレン成分の屈折率は、製造可能またはブレンド可能な多くの様々な形のスチレンブロック共重合体によって屈折率を合致または実質的に合致させられるように、わかっているか測定することが必要である。一般に、選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体または選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体のブレンドのスチレン重量割合は、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と屈折率を適切に合致させるために、約20から30重量%の範囲、好ましくは約23から26重量%の範囲にあるはずである。
【0029】
スチレンブロック共重合体は透明である(スチレンドメインは光を分散するには小さい)ため、スチレンブロック共重合体をポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体とブレンドすることは、屈折率がポリプロピレンランダム共重合体と実質的に合致するかぎり、透明度にとって有益となり得る。こうしたゴム状スチレンブロック共重合体は堅牢性および衝撃強度を特に低温で提供するので、選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体のブレンド中の割合が高いほど、このブレンドを成形品に用いたときにひび割れおよび粉砕を防ぐことができる。ブレンドに用いるスチレンブロック共重合体を増やしても、屈折率が実質的に合致し、および追加の清澄剤が加えられているかぎり、濁度に顕著な影響は与えない。
【0030】
本発明の文脈において、および屈折率に関して、「実質的に合致する」は、ブロック共重合体組成物の屈折率とポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体(compolymer)の差が+/−0.008以下であることを意味する。本発明の透明組成物および成形品により好適であるのは、この差が+/−0.006以下である場合であり、さらにより好適であるのは、この差が+/−0.004以下である場合である。屈折率が実質的に合致する場合、組成物および成形品は低濁度を有する。詳細には、組成物および成形品は、厚さ0.125インチの円盤にして測定した場合、50%以下の濁度を有するだろう。本発明の実施形態により好適であるのは、40%以下の濁度を有する組成物および成形品である。
【0031】
清澄剤をポリプロピレンに加えたマスターバッチを用いて混合を容易にすることは有利となり得る。選択的に水素化されたブロック共重合体のブレンドを用いる場合、ブロック共重合体を前溶融して混合し、渾然一体の撹拌および透明度を確実にすることは有利となり得る。清澄剤を選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体と前混合(溶融混合)しないのが通常最良である。なぜなら清澄剤はできるだけ多くが混合物のポリプロピレン相中に存在する必要があるからである。
【0032】
ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と、選択的に水素化されたブロック共重合体と、および清澄剤のブレンドの調製は、多数の様々な方法で行なうことができる。成分は全て、二軸または単軸押出機(適切な混合能力を持つもの)に1つの導入口または複数の導入口から供給することができ、180℃から230℃の温度で混合することができる。220℃より低い温度で混合を行なう場合、清澄剤がポリプロピレン樹脂中に適切に溶解分散していることを確実にするために、ペレット化した化合物から220℃から230℃の温度で射出成形する部分が必要である。そうでなければ、ソルビトールアセタール清澄剤について既知であるとおり、次善の透明度が達成されるだろう。
【0033】
本発明は、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体を、清澄剤(または清澄剤をポリプロピレン重合体に加えたマスターバッチ)と、および選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体と乾式ブレンドすることによっても製造できる。次いでこの乾式ブレンドを直接、スクリューに適切な混合セクションを有する射出成形機械に導入することができる。乾式ブレンド法は、余計な混合工程を必要としないため、コストが低い。この組成物を、適した高温、約220℃から230℃で射出成形し、清澄剤をポリプロピレンまたはランダムポリプロピレン共重合体中に適切に溶解分散させることが重要である。このやり方では、清澄剤は最適透明度をもたらすことができる。
【0034】
本発明の成形用組成物および成形用組成物から作られた成形品は、ポリプロピレンまたはポリプロピレン共重合体自身よりも顕著に改善された衝撃耐性および粉砕耐性を有する。重要なことに、この改善された衝撃強度は、室温だけでなく、−20℃から−30℃もの低温でもこの組成物および成形品の特徴となっている。本発明の好適な実施形態は、約−20℃から約−30℃で、少なくとも100インチ−lbsの機器搭載(instrumented)衝撃強度を有する。より好適な実施形態において、同じ温度範囲における機器搭載衝撃強度は、少なくとも150インチ−lbsであり、さらにより好ましくは少なくとも200インチ−lbsである。
【0035】
本発明の応用に応じて、当該分野で既知の他の成分(染料、様々な可塑剤、ブロック防止剤、抗酸化剤、潤滑剤など)を、これらが透明度に影響しないかぎりにおいて、用いることができる。
【0036】
(実施例)
以下に列挙する成分およびブレンドを各実施例に用いて本発明を実証した:
Kraton G1657(Kraton Polymers製)、13重量%スチレン(S−EB)−Zブロック共重合体、屈折率1.490、EB(エチレン/ブチレン)ゴムブロックは約−55℃のTgを有する。
【0037】
Kraton G1652(Kraton Polymers製)、30%重量%スチレンS−EB−Sブロック共重合体、屈折率1.509、EBゴムブロックは約−55℃のTgを有する。
【0038】
Kraton G1643(Kraton Polymers製)、20%スチレンS−EB−Sブロック共重合体、屈折率1.500、EBゴムブロックは約−35℃のガラス転移温度を有する。
【0039】
GH−893、Kraton G1652/Kraton G1657(67/33)を押出機で混合したマスターバッチ、屈折率1.502。
【0040】
GH−893C、Kraton G1652/Kraton G1657/Engage 8402(67/33/50部)を押出機で混合したマスターバッチ(マスターバッチ中ポリエチレン共重合体は1/3)。
【0041】
GH−893D、Kraton G1652/Kraton G1657/Engage 8402(67/33/34部)を押出機で混合したマスターバッチ(マスターバッチ中ポリエチレン共重合体は25%)。
【0042】
Total Polypropylene 6823(からTotal Petrochemicals製)、透明化ポリプロピレンランダム共重合体、屈折率約1.500。
【0043】
Pro−fax SR549M(Lyondell Basell製)、透明化ポリプロピレンランダム共重合体、屈折率1.503。
【0044】
ポリプロピレンP5M6K−048(Flint Hills Resources製)透明化ランダムポリプロピレン共重合体、屈折率約1.500。
【0045】
Millad(登録商標)濃縮物8C41−10(Milliken Chemical製)、10%Millad(登録商標)3988清澄剤含有ポリプロピレン樹脂マスターバッチ。
【0046】
Millad(登録商標)3988清澄剤(Milliken Chemical製)、ソルビトールアセタール清澄剤(即ち、1,3:2,4−ビス(3’,4’−ジメチルベンジリデン)ソルビトール)。
【0047】
Millad(登録商標)3940清澄剤(Milliken Chemical製)、ソルビトールアセタール清澄剤(即ち、1,3:2,4−ビス(4’−メチルベンジリデン)ソルビトール)。
【0048】
Engage 8402(Dow Chemical製)、ポリエチレンオクテン共重合体、密度0.902および報告されている屈折率1.504、メルトフロー190℃/2.16kgで30グラム/10分。
【0049】
Exact 0203(Exxon Chemical製)、ポリエチレンオクテン共重合体、密度0.902、メルトフロー190℃/2.16kgで3グラム/10分、屈折率1.502。
【0050】
25mm同方向回転Berstorff二軸押出機を用いて約200℃で、選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体の溶融ブレンドを作った。透明化ランダムポリプロピレン共重合体と、水素化ブロック共重合体、ポリエチレン共重合体、および清澄剤とのブレンドも、同じ二軸押出機で同じ温度で作った。全ての試料を、よく磨いた型を用いて、24℃および50%相対湿度の条件で、試験する少なくとも24時間前に、Engle ES240射出成形機から230℃で射出成形した。
【0051】
ASTM D3763に従って、Dynatup8250機器を用いて機器搭載衝撃試験を行なった。0.125インチ厚さの円盤に約230メートル/分の衝撃を与えた。低温試験については、試験の少なくとも2時間前に試料を準備した。報告される結果は、各条件における5回の試験を平均したものである。
【0052】
ASTM D−256に従って、切り欠きをつけた0.125インチ厚さの射出成形棒で24℃で切り欠きアイゾッド衝撃試験を行なった。報告される結果は、棒の射出成形口に近い方に切り欠きをつけた棒と棒の射出成形口から遠い方の末端に切り欠きをつけた棒とで平均したものである。結果はft−lbs/in単位で示した。
【0053】
ASTM D−1003に従って、BYK Gardner Haze−guard plus装置を用いて、0.125インチ厚さの円盤で濁りの光学的性質を測定した。結果は%濁度単位で示した。円盤は、よく磨かれた型に230℃で射出成形した。
【0054】
本発明の様々な成分の屈折率を、Abbe屈折計(Atago NAR−IT)を用いて測定した。180℃から200℃でポリ(エチレンテレフタレート)(PET)のフィルムに挟んで圧縮成形することにより、屈折率測定用の試料を調製した。室温まで冷ましてから、PETフィルムを注意して剥がし、出てきた滑らかな試料表面を屈折計のプリズムに押し当てた。
【実施例1】
【0055】
ブレンド1から12(配合は各成分の重量部である。)は、表1において、2種の異なる透明化ランダムポリプロピレン共重合体について、成形した0.125インチ厚さの円盤で低濁度を達成するために、両方とも、加えた選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体と屈折率が合致すること、および追加の清澄剤を加えることが必要であったことを示した。Kraton G1657を20重量%含むブレンドは、たとえ追加の清澄剤を加えても濁っていた。Kraton G1657の屈折率がポリプロピレンランダム共重合体と0.013屈折率単位で異なっているためである。G1652 SEBSの屈折率はランダムポリプロピレン共重合体に近いため(0.006屈折率単位内)、Kraton G1652を20重量%含むブレンドは、G1657を含むブレンドよりも良好な濁度を示した(これらのブレンドは追加の清澄剤も含む。)。最良の濁度は、Kraton G1657およびKraton G1652(GH−893)のブレンドの屈折率がポリプロピレン共重合体によく合致していて、追加の清澄剤(8C41−10は10重量%ソルビトールアセタール清澄剤含有ポリプロピレンマスターバッチである。)を加えた場合に得られた。追加の清澄剤を加えなかった場合、GH−893を含むブレンドでは、たとえGH−893の屈折率がポリプロピレンランダム共重合体の屈折率によく合致していても、濁度は非常に悪かった。選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体が清澄剤の有効性に干渉し、従ってこの干渉を補填するために追加の清澄剤を加えなければならないと思われる。この特定の実施例では、2,000ppmのソルビトールアセタール清澄剤をブレンドに追加して、低濁度を達成した。
【0056】
衝撃性の結果からわかるとおり、低濁度を達成しながらも低温衝撃性は顕著に改善された。
【実施例2】
【0057】
実施例2は、透明度を有意に改善するために必要な追加の清澄剤のレベルを表2−Iに示す。用いたランダムポリプロピレン共重合体に依存するところもあるようであるが、追加の清澄剤おおよそ500から1,000ppm(即ち10%清澄剤含有ポリプロピレンマスターバッチを0.5重量%から1重量%)が必要であった。清澄剤のレベルがこれを超えても透明度(濁度)の改善はごくわずかであった。
【0058】
ブレンド19(表2−II)は、清澄剤含有ポリプロピレンマスターバッチの他にも純粋な清澄剤を追加することで改善された透明度および低濁度を達成できたことを示した。
【実施例3】
【0059】
実施例3は、選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体をポリエチレン共重合体(これもランダムポリプロピレン共重合体の屈折率によく合致する。)で希釈した場合の影響を示す(表3)。GH−893は、押出機で混合したG1652/1657マスターバッチであった。GH−893Cは、押出機で混合したG1652/G1657/Engage 8402マスターバッチであり、ポリエチレン共重合体Engage 8402はマスターバッチの33重量%であった。GH−893Dは、押出機で混合したG1652/G1657/Engage 8402マスターバッチであり、Engage 8402はマスターバッチの25重量%であった。ブレンド23からわかるとおり、ポリプロピレンと屈折率が合致するポリエチレン共重合体(Exact 0203など)では、追加の清澄剤なしに、透明化ポリプロピレンランダム共重合体で低濁度ブレンドができた。しかしながら、透明化ポリプロピレンランダム共重合体と屈折率が合致するポリエチレン共重合体(Exact 0203およびEngage 8402など)は、ポリプロピレンランダム共重合体に加えたときに非常に良好な低温衝撃性とはならない。ブレンド20およびブレンド21からわかるとおり、選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体をポリエチレン共重合体に加えてマスターバッチにすると、追加の清澄剤を加えるかぎり、良好な低濁度を維持しながらも低温衝撃性を顕著に改善した。極度の低温性が要求される場合、適切な選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体で純粋なものと追加の清澄剤というのが最良である。有用な度合いの低温衝撃性は、ポリエチレン共重合体および選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体の両方がランダムポリプロピレン共重合体の屈折率に合致していた場合のブレンドで達成された。ポリプロピレンランダム共重合体と屈折率が合致する選択的に水素化されたスチレンブロック共重合体と適切なレベルの清澄剤というのは、最良の低温衝撃性および低濁度を達成するのに独特のものであった。
【実施例4】
【0060】
実施例4は、GH−893をFlint Hills透明化ランダムポリプロピレンP5M6K−048に加えたブレンドの影響を試験する(表4)。ブレンド22およびブレンド23は、GH−893(G1652/G1657のブレンド)のレベルが上がるほど衝撃性が良くなるが、追加の清澄剤がない場合には、濁度が悪くなることを示した。ブレンド全体でのポリスチレンのレベルが高くなるほど濁度に悪影響が出るようであった。追加の清澄剤を加えると、−30℃まで下げても非常に良好な低温衝撃性を維持しながらも、濁度を劇的に改善した。
【実施例5】
【0061】
実施例5は、SEBSブロック共重合体(G1643)のブレンドについて示すもので、G1643はブチレン含有量が高く、従ってポリプロピレンランダム共重合体との相溶性がより高く、光を分散しないサブミクロンでの分散体を形成した(表5−I)。ブロック共重合体のレベルが上がるにつれて濁度も上がったが、これはスチレンの量が増加しSR−549ランダムポリプロピレン共重合体中の清澄剤に干渉したためと思われる。また、エチレン/ブチレン中間ゴムブロックのガラス転移温度は、G1652またはG1657(これらはTgが約−55℃であった)よりも高かった(DSCで測定して約−35℃)。得られる低温衝撃性は、先のGH−893(G1652/G1657の組合せ)とのブレンドと比較して、−20℃でそれほど良くはなかった。G1643は、室温で、ポリエチレン共重合体Engage 8402よりも顕著にアイゾッド衝撃性の結果をまさに顕著に改善する。−10℃まで下げた温度での機器搭載衝撃も改善された。
【0062】
ブレンド33は、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体、清澄剤、および水素化スチレンブロック共重合体を乾式ブレンドすることができ、次いでスクリューに適した混合セクションを有する射出成形機に直接導入することができることを実証した(表5−II)。結果は、二軸押出成形した試料であるブレンド12、および乾式ブレンドした試料であるブレンド33が、同様な透明度および衝撃強度を有したことを示す。
【0063】
乾式ブレンド法の方が、コストが低い。なぜなら余計な混合工程が必要ないからである。この組成物は、十分な高温、約220℃から230℃で射出成形して、清澄剤をポリプロピレンまたはランダムポリプロピレン共重合体に適切に溶解分散させることが重要である。このやり方において、清澄剤は最適な透明度をもたらした。
【0064】
好適な実施形態およびこの具体的な実施例を参照して本明細書中本発明を例示し記載してきたものの、他の実施形態および例が同様な機能を果たし得ることおよび/または似たような結果をもたらし得ることが、当業者には容易に明らかとなるであろう。このような等価な実施形態および例は全て、本発明の精神および範囲の中にあり、以下の請求項により包含されるものとする。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体を少なくとも約70重量%と、
一般式S−HD−Sまたは(S−HD)−Z(式中、Sはモノアルケニル芳香族炭化水素単量体の重合ブロックであり、HDは重合した共役ジエン単量体(単数または複数)の水素化ブロックであり、およびZはカップリング剤であり、およびxは1から20で変化し得る腕の数である。)を有する選択的に水素化されたスチレンジエンブロック共重合体を少なくとも1種含むブロック共重合体組成物を上限約30重量%と、および
式(I):
【化1】

式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、カルボキシル基、およびハロゲンからなる群より選択され;ならびにR11は、−CHOHおよび−CHOHCHOHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である、
の構造と一致する清澄剤を少なくとも2500ppm
を含む、少なくとも3成分の成形用組成物。
【請求項2】
HDブロックが、ブチレン含有量が約40重量%である重合1,3−ブタジエンの水素化ブロックであり、Sブロックはポリスチレンブロックである、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項3】
ポリプロピレンランダム共重合体が、エチレン、ブチレン、ヘキセン、およびオクテンからなる群より選択されるランダムに共重合される単量体を、ポリプロピレンランダム共重合体の重量を基準として上限6重量%まで含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項4】
ブロック共重合体組成物が、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と実質的に合致する屈折率(+/−0.008屈折率単位)を有し、およびHDブロックのガラス転移温度はDSCで測定して約−50℃から−55℃である、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項5】
ブロック共重合体組成物が、屈折率約1.503を有する、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項6】
ブロック共重合体組成物が、屈折率の異なる2種以上の選択的に水素化されたスチレンジエンブロック共重合体の混合物であり、混合物はポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率と実質的に合致する平均屈折率を有する、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項7】
混合物が、それぞれポリスチレンを約10から約35重量%含有する複数の選択的に水素化されたブロック共重合体を含み、混合物の平均スチレン含有量は、選択的に水素化されたブロック共重合体の重さを基準として約23から26重量%である、請求項6に記載の成形用組成物。
【請求項8】
清澄剤が、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体に通常組み込まれている清澄剤の量および少なくとも500ppmの追加された量を含む量で組成物中に存在し、組成物中に存在する清澄剤の合計量は、成形用組成物の2500ppmから約7000ppmである、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項9】
組成物を0.125インチ厚さで射出成形した円盤は、約−20℃から−30℃で少なくとも100インチ−lbsの機器搭載衝撃強度を有する、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項10】
組成物が、0.125インチ厚さで射出成形した円盤で50%未満の濁度を有する、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項11】
、R、R、R、R、およびR10が、それぞれ水素であり、R、R、R、およびRが、それぞれメチル基であり、ならびにR11が−CHOHCHOHである、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項12】
ブロック共重合体組成物が、ポリプロピレンまたはランダムポリプロピレン共重合体と屈折率が実質的に合致するポリエチレン共重合体で、選択的に水素化されたブロック共重合体を上限50%まで置換した混合物を含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項13】
ポリエチレン共重合体が密度約0.9g/cmを有する、請求項12に記載の成形用組成物。
【請求項14】
以下の成分:
ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体を少なくとも約80重量%と、
一般式S−HD−Sまたは(S−HD)−Z(式中、Sはモノアルケニル芳香族炭化水素単量体が重合したブロックであり、HDは重合した共役ジエン単量体(単数または複数)の水素化ブロックであり、およびZはカップリング剤であり、およびxは1から20で変化し得る腕の数である。)を有する選択的に水素化されたブロック共重合体を少なくとも1種含むブロック共重合体組成物を上限20重量%と、および
式(I)
【化2】

式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、およびR10は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、カルボキシル基、およびハロゲンからなる群より選択され;ならびにR11は、−CHOHおよび−CHOHCHOHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である、
の構造と一致する清澄剤を少なくとも2500ppm
を含む、少なくとも3成分を含有する組成物から製造された成形品。
【請求項15】
成形品が冷凍庫用食品容器である、請求項14に記載の成形品。
【請求項16】
約0.125インチの厚さの射出成形した円盤で測定して、50%未満の濁度および−20℃から−30℃で少なくとも約100インチ−lbsの機器搭載衝撃強度を有する、請求項14に記載の成形品。
【請求項17】
、R、R、R、R、およびR10が、それぞれ水素であり、R、R、R、およびRが、それぞれメチル基であり、ならびにR11が−CHOHCHOHである、請求項14に記載の成形品。
【請求項18】
選択的に水素化されたブロック共重合体が、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体と実質的に合致する屈折率(+/−0.008屈折率単位内)を有する、請求項14に記載の成形品。
【請求項19】
S−HD−Sまたは(S−HD)−Zが、このような選択的に水素化されたブロック共重合体で屈折率が異なるものの混合物が可能であるが、平均屈折率はポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体の屈折率と実質的に合致する(+/−0.008屈折率単位)ものである、請求項14に記載の成形品。
【請求項20】
清澄剤が、組成物中に存在する清澄剤の合計量が、成形用組成物の2500ppmから約7000ppmとなるように、ポリプロピレンまたはポリプロピレンランダム共重合体に通常組み込まれている清澄剤の量および追加された量を含む量で組成物中に存在する、請求項14に記載の成形品。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512277(P2012−512277A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540947(P2011−540947)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067827
【国際公開番号】WO2010/077799
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(510145211)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (10)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】