説明

ポリペプチドの分泌を検出するためのリーダー配列およびその産生のための方法

【課題】治療への応用に対する製造の必要性に応えるために、in vivoまたはin vitroでの分泌タンパク質の産生を可能にする核酸構築体および方法を提供すること。
【解決手段】分泌リーダーおよび第2ポリペプチドを含む異種ポリペプチドであって、その分泌リーダーが、その第2ポリペプチドのN末端に作動可能に連結しており、ここで、その分泌リーダーは、天然においてその第2ポリペプチドにそのように連結しておらず、そして分泌性タンパク質のリーダー配列を含む、異種ポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2005年1月27日に米国特許商標庁に出願された仮出願第60/647,013号の特典を主張するものであり(米国特許法第119条(e)項に従う)、その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、異種の分泌性ポリペプチドの産生に有用なリーダー配列;異種の分泌ポリペプチド;このようなリーダー配列をコードする核酸構築体;このような異種の分泌性ポリペプチドをコードする核酸構築体;このような核酸構築体を含有するベクター;このような核酸構築体、ベクターおよびポリペプチドを含有する組換え宿主細胞;ならびにこのような異種のリーダー配列を伴うこのような分泌性ポリペプチドを作製する方法;およびこのような分泌性ポリペプチドを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
タンパク質は、生物において最も重要な生体分子である。タンパク質は、構造成分および触媒であることに加えて、調節過程において重大な役割を果たしている。多数の細胞タンパク質および細胞外タンパク質の協力により、細胞の増殖および代謝の調節が制御され、影響を受ける。例えば、生理反応に影響を及ぼす多くのシグナル伝達経路は、タンパク質を介して分子間相互作用により作動する。
【0004】
細胞外タンパク質は、本明細書で「分泌タンパク質」または「分泌性タンパク質」と称することがあるが、細胞間のシグナル伝達物質として機能することが多い。細胞外タンパク質は、この役割においてリガンドとして働く。リガンド/受容体結合事象が細胞表面上で起こる場合、細胞外タンパク質の対応物である、細胞外、細胞内または細胞質ドメインを有する膜結合受容体が細胞外シグナルを細胞中に伝達する。
【0005】
受容体が潜在的に重要な治療標的となることが多いが、分泌性タンパク質は治療薬として特に興味深い。受容体は、シグナル伝達経路またはホルモン経路に頻繁に関与するので、分泌性タンパク質は、高く特異的な生物活性を示す傾向がある(非特許文献1)。例えば、分泌性タンパク質は、分化および増殖、血液凝固および血栓溶解、体細胞増殖および細胞死、ならびに様々な免疫応答などの生理的過程を制御または調節することが報告されている(同上)。新たな分泌性タンパク質を発見し、その調節機能を調査するために重要な資源および研究努力が費やされてきた。サイトカインおよびペプチドホルモンを含めたこうした分泌性タンパク質の一部は、治療薬として製造および使用されているが(非特許文献2)、分泌され、潜在的に治療上有効であることが期待される何千ものタンパク質の中で少数派を構成している。
【0006】
通常、分泌性タンパク質は、「タンパク質前駆体」と称されることがある完全長ポリペプチドとして発現され、次いで翻訳後段階で小胞体(ER)およびゴルジ体においてプロセシングされる。この段階で、シグナルペプチダーゼが、「シグナルペプチド」(SP)または「分泌リーダー配列」と一般に称される配列である特有の疎水性アミノ酸配列をN末端で切断する。通常のSPは、約16〜30アミノ酸残基長である。次いで、SPなしの生じたポリペプチドは細胞外に輸送される。生じたポリペプチドは、「成熟タンパク質」または「分泌ポリペプチド」と呼ばれる。また、元の分泌性タンパク質と比べて、この
成熟タンパク質はシグナルペプチド配列を欠いている。線維芽細胞増殖因子ファミリーのメンバーの一部など、SPをN末端に有していないタンパク質もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shoen,F.J.,「Robbins Pathologic Basis of Disease.」,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,PA,1994年
【非特許文献2】Zavyalovら,AP,第105巻,第3号,p.161−186,1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
天然に存在する分泌性タンパク質は、in vivoでのその生理的役割に依存して様々な量で発現される。こうした分泌性タンパク質の大部分は、商業的に使用するには、その天然の、または内因性SPの調節下で発現される量が少なすぎる。したがって、治療への応用に対する製造の必要性に応えるために、in vivoまたはin vitroでの分泌タンパク質の産生を可能にする核酸構築体および方法が発明されれば有利であるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
分泌リーダーおよび第2ポリペプチドを含む異種ポリペプチドであって、その分泌リーダーが、その第2ポリペプチドのN末端に作動可能に連結しており、ここで、その分泌リーダーは、天然においてその第2ポリペプチドにそのように連結しておらず、そして分泌性タンパク質のリーダー配列を含む、異種ポリペプチド。
(項目2)
上記第2ポリペプチドが、IX型コラーゲンα1鎖、長鎖スプライシング型、α−2−抗プラスミン前駆体(α−2−プラスミンインヒビター)、5含有トリヌクレオチドリピート、ARMETタンパク質、カルメニン、COL9A1タンパク質、NBL1、PACAPタンパク質、α−1B−糖タンパク質前駆体(α−1−B糖タンパク質)、脳特異的血管新生インヒビター2前駆体に類似、SPOCK2、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(EC5341)ER60前駆体、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼインヒビター、クレードA(α−1)、GM2ガングリオシドアクチベーター前駆体、凝固因子X前駆体、分泌リンタンパク質1(オステオポンチン、骨シアロタンパク質1)、ビタミンD結合タンパク質前駆体、インターロイキン6(インターフェロン、β2)、オロソムコイド1前駆体、ヘモペキシン、糖タンパク質ホルモン、αポリペプチド前駆体、キニノーゲン1、プロリル4−ヒドロキシラーゼ、βサブユニット、プロオピオメラノコルチン、プロスタグランジンD2合成酵素21kDa、α−2−糖タンパク質1、亜鉛、クロモグラニンA、シスタチンM前駆体、クラステリンアイソフォーム1、インターα(グロブリン)インヒビターH1、白血病抑制因子(コリン作動性分化因子)、ルミカン、セクレトグロビン、ファミリー2A、メンバー2、nov前駆体、レチクロカルビン1前駆体、レチクロカルビン2、EFハンドカルシウム結合ドメイン、胃内因子(ビタミンB合成)、ケルベロス1、リポカリン2(癌遺伝子24p3)、インターロイキン18結合タンパク質アイソフォームC前駆体、EFハンドドメインを有する細胞増殖制御因子1、白血球免疫クロブリン様受容体、サブファミリーA、スポンジン2、細胞外マトリックスタンパク質、膜貫通タンパク質4、sparc/オステオネクチン、cwcvおよびkazal様ドメインプロテオグリカン、ρGTPase活性化タンパク質25アイソフォームb、dickkopfホモログ3、アメロブラスチン前駆体、絨毛性ゴナドトロピン、βポリペプチド8前駆体、多発性凝固因子欠乏症2、共通唾液タンパク質1に類似、機能未知タンパク質FLJ32115、腫瘍性タンパク質誘導転写物3、機能未知タンパク質MGC40499、インターロイキン18結合タンパク質アイソフォームA前駆体、インターロイキン1受容体アンタゴニストアイソフォーム1前駆体、WFIKKN2タンパク質、機能未知タンパク質9330140G23に類似、ならびに配列番号2〜3、9、19、22、26、28、31、37、41、47、54、57、62、68、75、79、82、86、88、94、97、102、104、107、111、116、120、127、131、137、140、145、147、153、159、167、175、177、181、185、189、191、196、200、207、209、215、218、222、227、232、235、239、241、245、248および254から選択される分泌タンパク質である、項目1に記載の異種ポリペプチド。
(項目3)
上記分泌リーダーが、配列番号20〜21、23〜25、27、32〜36、38〜40、48〜53、76〜78、80〜81、83〜85、87、95〜96、103、108〜110、112〜115、117〜119、121〜126、128〜130、132〜136、138〜139、141〜144、154〜158、160〜166、178〜180、186〜188、197〜199、210〜214、223〜226、233〜234、240および246〜247から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の異種ポリペプチド。
(項目4)
上記第2ポリペプチドが、分泌性ポリペプチド、膜貫通タンパク質の細胞外部分、およ
び可溶性受容体から選択される、項目1に記載の異種ポリペプチド。
(項目5)
上記分泌性ポリペプチドが、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、インターフェロン、ホルモン、刺激因子、抑制因子、可溶性受容体、およびそのスプライスバリアントから選択される、項目4に記載の異種ポリペプチド。
(項目6)
表1の分泌性ポリペプチドのリーダー配列、および表2に記載の分泌リーダーから選択される、リーダーアミノ酸配列を含む分泌リーダー。
(項目7)
上記アミノ酸配列が付表Aのアミノ酸配列、配列番号1、4〜8、10〜18、20〜21、23〜25、27、29〜30、32〜36、38〜40、42〜46、48〜53、55〜56、58〜61、63〜67、69〜74、76〜78、80〜81、83〜85、87、89〜93、95〜96、98〜101、103、105〜106、109〜110、112〜115、117〜119、121〜126、128〜130、132〜136、138〜139、141〜144、146、148〜152、154〜158、160〜166、168〜174、176、178〜180、182〜184、186〜188、190、192〜195、197〜199、201〜206、208、210〜214、216〜217、219〜221、223〜226、228〜231、233〜234、236〜238、240、242〜244、246〜247、249〜253および255〜256のアミノ酸残基から選択される、項目6に記載の分泌リーダー。
(項目8)
融合パートナーをさらに含む、項目1に記載の異種ポリペプチド。
(項目9)
上記融合パートナーがポリマーである、項目8に記載の異種ポリペプチド。
(項目10)
上記ポリマーがその第3分子であり、第3分子がポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミンのすべてまたは部分、フェチュインA、フェチュインB、およびFcから選択される、項目9に記載の異種ポリペプチド。
(項目11)
(1)項目1から5および項目8から10のいずれか一項に記載の異種ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列、および(2)項目6から7のいずれか一項に記載の分泌リーダーのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
(項目12)
項目6から7のいずれか一項に記載の分泌リーダーをコードする第1ポリヌクレオチドと、第2ポリペプチドをコードする第2ポリヌクレオチドとを含む異種ポリペプチドをコードする核酸分子であって、その第1ポリヌクレオチドおよびその第2ポリヌクレオチドが、細胞からのその異種ポリペプチドの分泌を容易にするように作動可能に連結しており、ここで、その第1ポリヌクレオチドおよびその第2ポリヌクレオチドが天然においてそのように連結していない核酸分子。
(項目13)
上記第2ポリペプチドが分泌性ポリペプチド、膜貫通タンパク質の細胞外部分、および可溶性受容体から選択される、項目12に記載の核酸。
(項目14)
コザック配列またはその5’末端に位置するその断片である第3ポリヌクレオチドをさらに含む、項目12に記載の核酸分子。
(項目15)
制限酵素切断可能な配列をその3’末端に含む第4ポリヌクレオチドをさらに含む、項目14に記載の核酸分子。
(項目16)
タグをコードする第5ポリヌクレオチドをさらに含む、項目15に記載の核酸分子。
(項目17)
上記タグが精製タグである、項目16に記載の核酸分子。
(項目18)
上記タグがV5、HisX6、HisX8、アビジン分子、およびビオチン分子から選択される、項目16に記載の核酸分子。
(項目19)
第2酵素によって切断することができる酵素切断可能な第2配列をコードする第6ポリヌクレオチドをさらに含み、その切断可能な第2配列が、上記タグが異種のポリペプチドのC末端に位置している場合、そのタグの上流に位置しており、またはそのタグが異種ポリペプチドのN末端に位置している場合、そのタグの下流に位置している、項目16に記載の核酸分子。
(項目20)
上記第2酵素がトロンビンまたはタバコウイルス由来のTEVである、項目19に記載の核酸分子。
(項目21)
複製起点および選択マーカーをさらに含む、項目11から20のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目22)
上記複製起点がSV40 ori、Pol ori、EBNA ori、およびpMB1 oriから選択される、項目21に記載のベクター。
(項目23)
上記選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子である、項目21に記載のベクター。
(項目24)
上記抗生物質耐性がピューロマイシン耐性、カナマイシン耐性、およびアンピシリン耐性から選択される、項目23に記載のベクター。
(項目25)
細胞、ならびに項目1から4および項目8から10のいずれか一項に記載の異種ポリペプチド、項目11から20のいずれか一項に記載の核酸分子、または項目21から24のいずれか一項に記載のベクターを含む組換え宿主細胞。
(項目26)
真核細胞細胞である、項目25に記載の組換え宿主細胞。
(項目27)
ヒト細胞である、項目26に記載の組換え宿主細胞。
(項目28)
分泌ポリペプチドを産生する方法であって、
(a)項目11から20のいずれか一項に記載の核酸分子を提供すること、および
(b)その核酸分子を発現系において発現させること
を含む方法。
(項目29)
上記発現系が細胞発現系または無細胞発現系である、項目28に記載の方法。
(項目30)
上記発現系が細胞発現系であり、上記細胞が哺乳動物細胞である、項目28に記載の方法。
(項目31)
上記哺乳動物細胞が293細胞系、PER.C6(登録商標)細胞系、およびCHO細胞系から選択される、項目30に記載の方法。
(項目32)
上記293細胞が293−T細胞または293−6E細胞である、項目31に記載の方法。
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、タンパク質を、その内因性のシグナルペプチドを含む配列から産生する場合よりも高い収量でこのようなタンパク質を産生するための核酸およびポリペプチド構築体を提供する。本発明はまた、タンパク質を、その内因性のシグナルペプチドを伴う、または内因性のシグナルペプチドなしのタンパク質をコードするDNA配列から産生する場合よりも高い収量でこのようなタンパク質を産生するためのベクター、宿主細胞、および方法を提供し、このより高い収量は、内因性の分泌リーダー配列を本発明の異種の分泌リーダー配列に置き換えることか、または本発明の異種の分泌リーダー配列に、リーダー配列をそうでなければ含有しないタンパク質を付加することのいずれかによって達成される。したがって、本発明は、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド構築体を提供し、このポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、例えば、融合パートナーと融合分子を形成するように修飾される。本発明の融合分子は、従来の任意の技法によって調製することができる。
【0011】
したがって、本発明は、以下の実施形態を含む。
【0012】
1.分泌リーダーおよび第2ポリペプチドを含む異種ポリペプチドであって、分泌リーダーが、第2ポリペプチドのN末端に作動可能に連結しており、ここで、分泌リーダーは、天然において第2ポリペプチドにそのように連結しておらず、そして分泌性タンパク質のリーダー配列を含む異種ポリペプチド。
【0013】
2.第2ポリペプチドが、IX型コラーゲンα1鎖、長鎖スプライシング型、α−2−抗プラスミン前駆体(α−2−プラスミンインヒビター)、5含有トリヌクレオチドリピート、ARMETタンパク質、カルメニン、COL9A1タンパク質、NBL1、PACAPタンパク質、α−1B−糖タンパク質前駆体(α−1−B糖タンパク質)、脳特異的血管新生インヒビター2前駆体に類似、SPOCK2、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(EC5341)ER60前駆体、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼインヒビター、クレードA(α−1)、GM2ガングリオシドアクチベーター前駆体、凝固因子X前駆体、分泌リンタンパク質1(オステオポンチン、骨シアロタンパク質1)、ビタミンD結合タンパク質前駆体、インターロイキン6(インターフェロン、β2)、オロソムコイド1前駆体、ヘモペキシン、糖タンパク質ホルモン、αポリペプチド前駆体、キニノーゲン1、プロリル4−ヒドロキシラーゼ、βサブユニット、プロオピオメラノコルチン、プロスタグランジンD2合成酵素21kDa、α−2−糖タンパク質1、亜鉛、クロモグラニンA、シスタチンM前駆体、クラステリンアイソフォーム1、インターα(グロブリン)インヒビターH1、白血病抑制因子(コリン作動性分化因子)、ルミカン、セクレトグロビン、ファミリー2A、メンバー2、nov前駆体、レチクロカルビン1前駆体、レチクロカルビン2、EFハンドカルシウム結合ドメイン、胃内因子(ビタミンB合成)、ケルベロス1、リポカリン2(癌遺伝子24p3)、インターロイキン18結合タンパク質アイソフォームC前駆体、EFハンドドメインを有する細胞増殖制御因子1、白血球免疫クロブリン様受容体、サブファミリーA、スポンジン2、細胞外マトリックスタンパク質、膜貫通タンパク質4、sparc/オステオネクチン、cwcvおよびkazal様ドメインプロテオグリカン、ρGTPase活性化タンパク質25アイソフォームb、dickkopfホモログ3、アメロブラスチン前駆体、絨毛性ゴナドトロピン、βポリペプチド8前駆体、多発性凝固因子欠乏症2、共通唾液タンパク質1に類似、機能未知タンパク質FLJ32115、腫瘍性タンパク質誘導転写物3、機能未知タンパク質MGC40499、インターロイキン18結合タンパク質アイソフォームA前駆体、インターロイキン1受容体アンタゴニストアイソフォーム1前駆体、WFIKKN2タンパク質、機能未知タンパク質9330140G23に類似、ならびに配列番号2〜3、9、19、22、26、28、31、37、41、47、54、57、62、68、75、79、82、86、88、94、97、102、104、107、111、116、120、127、131、137、140、145、147、153、159、167、175、177、181、185、189、191、196、200、207、209、215、218、222、227、232、235、239、241、245、248および254からなる群から選択される分泌タンパク質である、項1に記載の異種ポリペプチド。
【0014】
3.分泌リーダーが、配列番号20〜21、23〜25、27、32〜36、38〜40、48〜53、76〜78、80〜81、83〜85、87、95〜96、103、108〜110、112〜115、117〜119、121〜126、128〜130、132〜136、138〜139、141〜144、154〜158、160〜166、178〜180、186〜188、197〜199、210〜214、223〜226、233〜234、240および246〜247から選択されるアミノ酸配列を含む、項1に記載の異種ポリペプチド。
【0015】
4.第2ポリペプチドが、分泌性ポリペプチド、膜貫通タンパク質の細胞外部分、および可溶性受容体から選択される、項1に記載の異種ポリペプチド。
【0016】
5.分泌性ポリペプチドが、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、インターフェロン、ホルモン、刺激因子、抑制因子、可溶性受容体、およびそのスプライスバリアントから選択される、項4に記載の異種ポリペプチド。
【0017】
6.表1の分泌性ポリペプチドのリーダー配列、および表2に記載の分泌リーダーから選択される、リーダーアミノ酸配列を含む分泌リーダー。
【0018】
7.アミノ酸配列が付表Aのアミノ酸配列、配列番号1、4〜8、10〜18、20〜21、23〜25、27、29〜30、32〜36、38〜40、42〜46、48〜53、55〜56、58〜61、63〜67、69〜74、76〜78、80〜81、83〜85、87、89〜93、95〜96、98〜101、103、105〜106、109〜110、112〜115、117〜119、121〜126、128〜130、132〜136、138〜139、141〜144、146、148〜152、154〜158、160〜166、168〜174、176、178〜180、182〜184、186〜188、190、192〜195、197〜199、201〜206、208、210〜214、216〜217、219〜221、223〜226、228〜231、233〜234、236〜238、240、242〜244、246〜247、249〜253および255〜256のアミノ酸残基から選択される、項6に記載の分泌リーダー。
【0019】
8.融合パートナーをさらに含む、項1に記載の異種ポリペプチド。
【0020】
9.融合パートナーがポリマーである、項8に記載の異種ポリペプチド。
【0021】
10.ポリマーが第3分子であり、第3分子がポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミンのすべてまたは部分、フェチュインA、フェチュインB、およびFcから選択される、項9に記載の異種ポリペプチド。
【0022】
11.(1)項1から5および項8から10のいずれか一項に記載の異種ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列、および(2)項6から7のいずれか一項に記載の分泌リーダーのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【0023】
12.項6から7のいずれか一項に記載の分泌リーダーをコードする第1ポリヌクレオチドと、第2ポリペプチドをコードする第2ポリヌクレオチドとを含む異種ポリペプチドをコードする核酸分子であって、第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドが、細胞からの異種ポリペプチドの分泌を容易にするように作動可能に連結しており、第1および第2ポリヌクレオチドが天然においてそのように連結していない核酸分子。
【0024】
13.第2ポリペプチドが分泌性ポリペプチド、膜貫通タンパク質の細胞外部分、および可溶性受容体から選択される、請求項12に記載の核酸。
【0025】
14.コザック配列またはその5’末端に位置するその断片である第3ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項12に記載の核酸分子。
【0026】
15.制限酵素切断可能な配列をその3’末端に含む第4ポリヌクレオチドをさらに含む、項14に記載の核酸分子。
【0027】
16.タグをコードする第5ポリヌクレオチドをさらに含む、項15に記載の核酸分子。
【0028】
17.タグが精製タグである、項16に記載の核酸分子。
【0029】
18.タグがV5、HisX6、HisX8、アビジン分子、およびビオチン分子から選択される、項16に記載の核酸分子。
【0030】
19.第2酵素によって切断することができる酵素切断可能な第2配列をコードする第6ポリヌクレオチドをさらに含み、この切断可能な第2配列が、タグが異種ポリペプチドのC末端に位置している場合、タグの上流に位置しており、またはタグが異種ポリペプチドのN末端に位置している場合、タグの下流に位置している、項16に記載の核酸分子。
【0031】
20.第2酵素がトロンビンまたはタバコウイルス由来のTEVである、項19に記載の核酸分子。
【0032】
21.複製起点および選択マーカーをさらに含む、請求項11から20のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【0033】
22.複製起点がSV40 ori、Pol ori、EBNA or、およびpMB
1 oriから選択される、項21に記載のベクター。
【0034】
23.選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子である、項21に記載のベクター。
【0035】
24.抗生物質耐性がピューロマイシン耐性、カナマイシン耐性、およびアンピシリン耐性から選択される、項23に記載のベクター。
【0036】
25.細胞、ならびに項1から4および項8から10のいずれかに記載の異種ポリペプチド、項11から20のいずれかに記載の核酸分子、または項21から24のいずれか一項に記載のベクターを含む組換え宿主細胞。
【0037】
26.真核細胞細胞である、項25に記載の組換え宿主細胞。
【0038】
27.ヒト細胞である、項26に記載の組換え宿主細胞。
【0039】
28.分泌ポリペプチドを産生する方法であって、
(a)項11から20のいずれかに記載の核酸分子を提供すること、および
(b)核酸分子を発現系において発現させること
を含む方法。
【0040】
29.発現系が細胞発現系または無細胞発現系である、項28に記載の方法。
【0041】
30.発現系が細胞発現系であり、この細胞が哺乳動物細胞である、項28に記載の方法。
【0042】
31.哺乳動物細胞が293細胞系、PER.C6(登録商標)細胞系、およびCHO細胞系から選択される、項30に記載の方法。
【0043】
32.293細胞が293−T細胞または293−6E細胞である、項31に記載の方法。
【0044】
表1は、本発明のリーダー配列が由来する分泌性タンパク質に関する情報を記載している。列1は、内部名称識別番号を記載し、列2は、参照識別番号を記載し、列3は、分泌性タンパク質の識別情報を記載している。
【0045】
表2は、本発明のリーダー配列に関する情報を記載している。列1は、内部名称識別番号を記載し、列2は、リーダー配列の配列番号(P1)を記載し、列3は、参照識別番号を記載し、列4は、リーダー配列のタイプ、すなわち完全長対選択的なリーダー配列を記載し、列5は、リーダー配列が由来する分泌性タンパク質を記載している。
【0046】
表3は、本発明のリーダー配列によって得られた結果を要約する。列1は、クローン名称識別番号を記載し、列2は、クーマシー染色したSDS−PAGEから検出および測定したマイクログラム/ミリリットル(μg/ml)でのタンパク質濃度を記載し、列3は、各構築体の、クーマシー染色したSDS−PAGE、銀染色したSDS−PAGE、またはV5−タグ付きの精製タンパク質標準液と比較した、抗V5抗体を使用した定量的ウェスタンブロットによって測定した発現レベルを最低の56から最高の1まで1〜56の段階でランク付けし、列4は、銀染色で発色させたSDS−PAGEを使用してバンドが検出されるかどうかを記載し、列5は、試験された分泌性タンパク質の分子量をダルトンで記載し、列6は、図8〜9に対応するゲル番号およびレーン番号を記載し、列7は、分泌性タンパク質の内部名称を記載し、列8は、タンパク質識別番号を記載し、列9は、内
部名称識別番号を記載し、列10は、ソース識別番号を記載し、列11は、分泌性タンパク質を識別している。
【0047】
付表A/配列表は、表2におけるリーダー配列のアミノ酸配列(P1)を記載している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1−1】図1は、(a)本発明のリーダー配列(「collagen_leader」)、(b)未知のタンパク質のアノテーションを有するMGC:21955としてすでに示されており、CLN00517648として本明細書で示されるcDNAクローン、および(c)IX型コラーゲンαI鎖、長鎖型(ヒト)に相当する、公にアクセス可能な配列NP_001842_NM_001851からなるアミノ酸配列のアラインメントである。こうした配列はすべて、N末端がアミノ酸残基1としてメチオニン(「M」)で開始する。このクローンCLN00517648_5pv1は、その配列を決定し、253のアミノ酸残基を含むことが判明した。
【図1−2】図1は、(a)本発明のリーダー配列(「collagen_leader」)、(b)未知のタンパク質のアノテーションを有するMGC:21955としてすでに示されており、CLN00517648として本明細書で示されるcDNAクローン、および(c)IX型コラーゲンαI鎖、長鎖型(ヒト)に相当する、公にアクセス可能な配列NP_001842_NM_001851からなるアミノ酸配列のアラインメントである。こうした配列はすべて、N末端がアミノ酸残基1としてメチオニン(「M」)で開始する。このクローンCLN00517648_5pv1は、その配列を決定し、253のアミノ酸残基を含むことが判明した。
【図2】図2は、本発明のタンパク質をコードするcDNAをトランスフェクトし、pTT5ベクター中にサブクローニングした(実施例2〜4においてさらに詳細に記載する通り)培養293−T細胞によって馴化された培地における本発明のいくつかの分泌性ポリペプチドの発現を示したウェスタンブロットである。クローンCLN00517648によってコードされる分泌性タンパク質を発現する構築体が最高のレベルで馴化培地においてタンパク質を分泌することが実証された。馴化培地中に分泌されたタンパク質の量は、2種の標準液:(1)V5−Hisx6タグ付きのδ様タンパク質1細胞外タンパク質(16、66および266ng/mlで15μl)、および(2)V5−Hisx6タグ付きのCSF−1受容体細胞外ドメイン(8、33および133ng/mlで15μl)と比較した。こうした標準液は混合し、右端の3つのレーンに示した濃度でローディングした。
【図3】図3は、Dr.Yves Durocherによって提供された始動ベクターpTT5(4398bp)(Durocher、2002)の概略図である。
【図4】図4は、本発明の目的のために「ccdb」領域を置き換えるようにpTT5ベクター中に挿入したベクターAの配列を示す。ベクターAは、左から右に、EcoRI部位、「−−−−−−」によって表した成熟ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)または対象の遺伝子、BamHI部位、トロンビン切断可能部位をコードする配列によって例示した切断可能配列、V5H8によって例示したタグ、およびリンカー配列、続いて終止コドンを含む。
【図5】図5は、ベクターBおよびベクターCの配列を示す。ベクターBは、左から右に、コザック配列、本発明のコラーゲンリーダー配列などのリーダー配列(「SP」)、EcoRI部位、「−−−−−−」によって表した成熟ポリペプチドをコードするORFまたは対象の遺伝子、BamHI部位、V5H8などのタグ、およびリンカー配列、続いて終止コドンを含む。ベクターCは、左から右に、コザック配列、本発明のコラーゲンリーダー配列によって例示したリーダー配列(「SP」)、EcoRI部位、「−−−−−−」によって表した成熟ポリペプチドをコードするORFまたは対象の遺伝子、BamHI部位、トロンビンをコードする配列によって例示した切断可能配列、V5H8などのタグ、およびリンカー配列、続いて終止コドンを含む。
【図6】図6は、ベクターDおよびベクターEの配列を示す。ベクターDは、左から右に、EcoRI部位、「−−−−−−」によって表した成熟ポリペプチドをコードするORFまたは対象の遺伝子、BamHI部位、およびFcドメイン配列、続いて終止コドンを含む。ベクターEは、左から右に、コザック配列(「GCCGCCACC」)、本発明のシグナルペプチド/リーダー配列、EcoRI部位、「−−−−−−」によって表した成熟ポリペプチドをコードするORFまたは対象の遺伝子、BamHI部位、およびFcドメイン配列、続いて終止コドンを含む。
【図7】図7は、適当なピューロマイシン耐性細系を作製するためのpTT2pベクターの一例である。具体的には、pTT2pベクターは、とりわけ、エピソーム性のpTT2−ゲートウェイベクターを作製するためのマウスポリオーマシグナルを含む。
【図8】図8は、本明細書に記載の28の分泌性タンパク質を使用したCHO SOY培地におけるタンパク質発現のSDS−PAGE分析を示す。上2つの図は、クーマシー染色によって発色させたSDS−PAGEを示し、下2つの図は、銀染色によって発色させたSDS−PAGEを示す。表3の列6〜11は、各SDS−PAGEレーンに表される特定のリーダー配列を識別する。右端の3つのレーンでは、ウシ血清アルブミン(BSA)標準液を、それぞれ8、16および32マイクログラム/リットル(mg/L)の対応する発現レベルを反映する濃度で流した。
【図9】図9は、本明細書に記載の29〜56の分泌性タンパク質を使用したCHO SOY培地におけるタンパク質発現のSDS−PAGE分析を示す。上2つの図は、クーマシー染色によって発色させたSDS−PAGEを示し、下2つの図は、銀染色によって発色させたSDS−PAGEを示す。表3の列6〜11は、各SDS−PAGEレーンに表される特定のリーダー配列を識別する。ウシ血清アルブミン(BSA)標準液を、8、16および32マイクログラム/リットル(mg/L)の対応する発現レベルを反映する濃度で流した。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(発明の詳細な説明)
対象のタンパク質を、その全長アミノ酸配列をコードし、その内因性のシグナルペプチドを含有するDNA配列から発現され分泌される場合に得られるタンパク質の量よりも多く(例えば、約10%、20%、または30%以上高い割合)発現させ分泌させるために、本発明者らは、その内因性の分泌リーダー配列を別の、すなわち異なる、または異種の分泌性タンパク質の配列で置き換えた。後者の対象の分泌性タンパク質は通常、タンパク質の発現および分泌を試験するための典型的な条件下で、高いレベルで(「高発現型タンパク質」または「高分泌型タンパク質」)、または中程度に高いレベルで(「中程度発現型タンパク質」または「中程度分泌型タンパク質」)発現および/または分泌されるものであり、このタンパク質は、それだけに限らないが、本発明の実施例で詳細に記載する。換言すれば、一団のタンパク質(それだけに限らないが、本明細書に記載のもの、付表A、表1〜3に記載のものを含む)を発現させ、すべてを同じ試験条件下で発現させれば、一部のタンパク質は、他のタンパク質よりも高いレベルで発現および/または分泌することが判明するはずである。したがって、本発明のタンパク質の中で発現および分泌レベルの差を認識し、こうした認識された差を利用して、リーダー配列から、そうしなければ低発現型であるタンパク質、または望ましいレベルで分泌されないタンパク質の分泌および/または発現を改善するのに有用なものであるとさらに同定することが本発明の態様である。
【0050】
異種の分泌リーダー配列を使用することは、分泌リーダー配列は小胞体(ER)またはゴルジ体において除去されるので、分泌性ポリペプチドの得られた成熟アミノ酸配列が分泌過程で改変されない点でさらに有利である。本発明の分泌リーダー配列は、あるタンパク質をERに導くように働く。ERは、リーダー配列を含むタンパク質の中、膜結合タンパク質をすべての他の種類のタンパク質から分離する。次いで、各群を別々にゴルジ装置に移動させる。次いで、ゴルジ装置は、タンパク質を分泌小胞などの小胞、細胞膜、リポソーム、または他の細胞小器官に分配する。
【0051】
さらに、異種の分泌リーダーを追加することにより、膜貫通タンパク質の細胞外ドメインの発現および分泌が容易になる。このような膜貫通タンパク質の一例は、II型の一回膜貫通タンパク質(STM)であり、その分泌リーダーも、タンパク質が可溶性および分泌性となる前に除去されるに違いない膜貫通ドメインである。
【0052】
したがって、タンパク質の分泌および発現を、内因性のリーダー配列によって達成されるものよりも増強または改善し、分泌性タンパク質を作製するのに場合によって、広く使用することができる、1種(複数)の強力な分泌リーダー配列を同定するために、多くの様々な分泌性タンパク質が、本明細書に記載の通り、クローニングされ、発現されている。クローニングされ、発現されたタンパク質の、哺乳動物293細胞の上清における発現および分泌レベルが測定されており、その結果は、例えば、実施例1、図8〜9、および表3に示す。いくつかの高発現型および高分泌型タンパク質が認められた。高発現型タンパク質は、本発明の目的のためには、高分泌型タンパク質と同一である場合もそうでない場合もある。
【0053】
一実施形態では、分泌性タンパク質IX型コラーゲンαI鎖、長鎖型の一部である分泌
リーダー配列を同定した。この特定のリーダー配列を、異種および/または共通の分泌リーダー配列として使用する場合、発現および分泌を促進することができるかどうかをさらに調査するために選択した。分泌性タンパク質IX型コラーゲンαI鎖、長鎖型の部分であるこの分泌リーダーのアミノ酸配列は、MKTCWKIPVFFFVCSFLEPWASA(配列番号1)であることが予測される。本明細書でさらに記載する通り、この特定の分泌リーダーを含むようにベクターを構築した。こうしたベクターを使用して、それ自体の天然に存在する分泌リーダーなしのいくつかのタンパク質をクローニングして、異種の分泌リーダー配列を伴う分泌性タンパク質を得た。こうした融合タンパク質の発現および分泌レベルは、その非融合対応物で認められる発現または分泌レベルよりも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%以上高いことが判明した。
【0054】
本発明は、以下の定義に照らしてより明確に理解することができる。一般に、本明細書で使用される用語は、その通常の意味、および以下で具体的に示される意味を有する。
【0055】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド分子」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ヌクレオチド配列」という用語は、同義的に使用して、任意の長さのヌクレオチドが重合した形を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそのアナログもしくは誘導体を含むことができる。例えば、核酸は、天然に存在するDNAもしくはRNA、または当技術分野で知られている、天然に存在するDNAもしくはRNAの合成アナログとすることができる。この用語はまた、ゲノムDNA;遺伝子;遺伝子断片;エキソン;イントロン;プロモーター、エンハンサー、開始および終結領域、他の制御領域、発現調節因子、発現制御などの制御配列または調節エレメント;単離DNA;ならびにcDNAを包含する。さらに、この用語は、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、スプライスバリアント、アンチセンスRNA、アンチセンス複合体、RNAi、siRNA、および単離RNAを包含する。この用語はまた、組換えポリヌクレオチド、異種ポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、標識ポリヌクレオチド、DNA/RNAハイブリッド、ポリヌクレオチド構築体、対象の核酸を含むベクター、核酸プローブ、プライマー、およびプライマー対を包含する。この用語は、骨格、糖、または複素環塩基が改変されているプリンおよびピリミジンのアナログなどの修飾核酸分子、例えばメチル化核酸分子;ペプチド核酸;および核酸分子アナログを含み、これらは、試験条件下で優れた安定性および/または結合親和性を示す場合、例えば、プローブとして適当であり得る。放射性標識アナログおよび蛍光アナログを含めた、プリンおよびピリミジンのアナログは、当技術分野で知られている。このポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができる。この用語はまた、DNA、RNA、またはハイブリッドDNA/RNAであり、完全長の遺伝子またはその生物活性断片をコードすることができる一本鎖分子、二本鎖分子、および三重らせん分子を包含する。ポリヌクレオチドの生物活性断片は、本明細書のポリペプチド、ならびにアンチセンス、リボザイム、またはRNAi分子をコードすることができる。したがって、例えば、本明細書の完全長ポリヌクレオチドは、ダイサーなどの酵素で処理して、短鎖のRNAi断片のライブラリーを作製することができ、これはまた、本発明の範囲内にある。
【0056】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では同義的に使用され、任意の長さのアミノ酸の重合した形を指す。このアミノ酸には、天然に存在するアミノ酸;コードアミノ酸および非コードアミノ酸;化学修飾もしくは生化学修飾されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸、またはデザイナーアミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド模倣体およびデプシペプチド;ならびに修飾、環状、二環式、デプシ環状、またはデプシ二環式ペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。この用語はまた、複合タンパク質;それだけに限らないが、GST融合タンパク質、異種アミノ酸配列
を有する融合タンパク質、異種および同種のリーダー配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有するまたは有さない融合タンパク質を含めた融合タンパク質;ペグ化タンパク質;ならびに免疫標識したタンパク質を指すことができる。また、この用語には、天然に存在するタンパク質の変異(このような変異は、同種であるか、または天然に存在するタンパク質に実質的に類似している)、ならびに異なる種に由来するその対応するホモログが含まれる。ポリペプチド配列の変異体は、元のポリペプチドと比較すると、挿入、付加、欠失、または置換を含むが、それにもかかわらず、レベルが異なる可能性があるが同様の生物活性を保持している。この用語はまた、ペプチドアプタマーが含まれる。
【0057】
「分泌リーダー」、「シグナルペプチド」、または「リーダー配列」は、それが一部であるポリペプチドの細胞内輸送を導く、アミノ酸残基を含む配列を含有する。ポリペプチドは、通常そのN末端に分泌リーダー、シグナルペプチド、またはリーダー配列を含有する。こうしたポリペプチドはまた、切断可能部位を含有し、この分泌リーダー、シグナルペプチド、またはリーダー配列は、シグナルエンドペプチダーゼによりポリペプチドの残りから切断することができる。このようなポリペプチドは、切断可能部位で切断された後、成熟ポリペプチドを生成する。切断は通常、分泌中に、または完全なポリペプチドが適切な細胞内コンパートメントに導かれた後に起こる。
【0058】
本発明によれば、「高分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー配列」は、(i)タンパク質に異種配列として作動可能に連結することができ、それによりその内因性のシグナルペプチドを置き換え、(ii)タンパク質の分泌レベルを、その内因性SPを有する場合にタンパク質が示す分泌レベルと比較して、少なくとも約5倍に増大させることができるものである。
【0059】
また、本発明によれば、「中程度分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー配列」は、(i)タンパク質に異種配列として作動可能に連結することができ、それによりその内因性のシグナルペプチドを置き換え、(ii)タンパク質の分泌レベルを、その内因性SPを有する場合にタンパク質が示す分泌レベルと比較して、約2〜5倍に増大させることができるものである。
【0060】
さらに、本発明によれば、「低分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー」は、(i)タンパク質に異種配列として作動可能に連結することができ、それによりその内因性のシグナルペプチドを置き換え、(ii)タンパク質の分泌レベルを、その内因性SPを有する場合にタンパク質が示す分泌レベルと比較して、約2倍未満に増大させることができる、または増大させないものである。
【0061】
さらに、本発明の分泌リーダーはまた、そうでなければER−ゴルジ体によって分泌されると予測されず、内因性のシグナルペプチドを有してないタンパク質に付加することができる。この場合、「高/中程度/低分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー配列」という上記の定義は、比較目的に使用することができるタンパク質のベースライン分泌レベルが存在しないので適用できない。この場合、シグナルペプチド/分泌リーダー配列の付加が、そうでなければ非分泌性であるタンパク質の分泌に対して及ぼす影響は、生じた異種タンパク質の間で比較される。
【0062】
本発明の目的のために、「高/中程度/低分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー配列」の上記の定義は、シグナルペプチド(または分泌リーダー配列)のみに関する。これは、「高分泌型タンパク質」、「中程度分泌型タンパク質」または「低分泌型タンパク質」に関するものではない。タンパク質自体は、本発明のタンパク質(表1〜3および付表A)をすべて、コムギ胚芽エキスまたは哺乳動物細胞(詳細な説明については実施例1〜3
を参照されたい)のいずれかにおけるそれ自体の発現および分泌レベルに関して互いを比較してランク付けする働きをする相対的な段階に基づいてそのようにランク付けされた。
【0063】
「分泌性」タンパク質は、分泌リーダー、シグナルペプチド、またはリーダー配列によりER、分泌小胞、または細胞外間隙に導くことができるタンパク質である。このタンパク質はまた、シグナル配列を必ずしも含むことなく細胞外間隙中に放出されるタンパク質であってもよい。分泌性タンパク質は、細胞外間隙中に放出されるタンパク質である場合、プロセシングを受けて「成熟」ポリペプチドを生成することができる。膜貫通ドメインを含有し、原形質膜中に通常挿入されたままであるタンパク質は、また、ER−ゴルジ体において合成され、このようなタンパク質の一部の断片または部分は、例えば、タンパク質分解性の切断により細胞外コンパートメント中に放出され得るので、本発明の目的のために、分泌性タンパク質と考える。したがって、細胞外間隙への放出は、例えば、エキソサイトーシスおよびタンパク質分解性の切断を含めた複数の形で起こり得る。
【0064】
「成熟タンパク質」および「分泌タンパク質」という用語は、本明細書では同義的に使用され、細胞の外部に(例えば、培養細胞によって馴化された培地中に)分泌された後の分泌性タンパク質の1種(複数)の形を指す。通常、成熟タンパク質は、シグナルペプチドなしの分泌性タンパク質のアミノ酸配列を有する。しかし、タンパク質を天然において、または組換えによって発現させる場合、シグナルペプチドの一部は除去されないことが多く、様々な長さのシグナルペプチドに結合した多数の形の成熟タンパク質を含み得る成熟タンパク質混合物が得られる。したがって、シグナルエンドペプチダーゼによって切断される特定のアミノ酸によって、1種の分泌性タンパク質に対して複数の「成熟型」が存在することができる。また、他のプロテアーゼも、その「成熟タンパク質」の異種性にさらに加えて、分泌性タンパク質からアミノ酸を切断することができる。特定のタンパク質試料からシグナルペプチドが除去される正確な場所は、N末端タンパク質のシークエンシングによって、またはそうでなければ当分野の技術者に知られている標準的な方法によって求めることができる。
【0065】
「生物活性」実体、または「生物活性」を有する実体は、天然に存在する分子の構造的、調節的もしくは生化学的機能を有するものであるか、または代謝過程もしくは生理的過程に関係または関連した機能を有するものである。本発明による生物活性ポリヌクレオチド断片またはポリペプチド断片は、この断片がその一部である対応するポリヌクレオチドまたはポリペプチドの活性と同一とは限らないがそれに類似している活性を示すものである。生物活性には、それだけに限らないが、改善された所望の活性および減少した望ましくない活性が含まれ得る。例えば、ある実体は、他の分子との分子間相互作用に関与すると生物活性を示す。このような相互作用の一例がハイブリダイゼーションである。このような相互作用の他の例は、疾患状態を軽減する上での治療効果、または分子に対する免疫応答を誘導する上での予防効果の表れであってよい。このような相互作用の他の例は、分子の存在を判定する上での診断用ツールとしての潜在的可能な使用の実証であってよく、例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの活性断片が、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに特有である場合、断片を検出することによりポリヌクレオチドまたはポリペプチドの検出を可能にする。生物活性を有するポリペプチドまたはその断片には、生物反応関与することができるもの、例えば、それだけに限らないが抗体の産生が含まれる、エピトープまたは免疫原として働いて免疫応答を刺激することができるもの;または受容体、タンパク質、もしくは核酸に結合することによりシグナル伝達経路に関与するもの;または酵素もしくは基質を活性化するものが含まれる。このような相互作用のさらに別の例は、PCRにおけるプライマーとして使用するポリヌクレオチド分子の適合性であってよい。
【0066】
「単離された」または「実質的に単離された」ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド
、あるいは「実質的に純粋」な、「実質的に精製」された、または「単離体」としてのポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、天然においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドが関連している配列、あるいは対象のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの配列または断片を含まない他の核酸配列を実質的に含んでいないものである。「実質的に含んでいない」は、組成の約10%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満、または約50%未満が所望でない物質で構成されることを意味する。
【0067】
「作動可能に連結した」は、そのように表現した成分がその所望の機能を実行するように構成されているエレメントの整列を指す。したがって、コード配列に作動可能に連結した所与のプロモーターは、適正な転写因子および転写条件が存在する場合、コード配列の発現をもたらすことができる。プロモーターは、その発現を導くように機能する限り、コード配列に隣接している必要はない。したがって、例えば、翻訳されるイントロンが存在するので、翻訳されないが転写される介在配列が、プロモーター配列とコード配列の間に存在することができ、このプロモーター配列は、やはりコード配列に「作動可能に連結している」と考えることができる。
【0068】
「組換え」は、核酸分子を表現するのに使用する場合、天然においてポリヌクレオチドが関連しているポリヌクレオチドのすべてまたは一部に、その起源または操作に基づいて関連していないゲノム、cDNA、ウイルスまたは合成由来のポリヌクレオチドを意味する。「組換え」という用語は、タンパク質またはポリペプチドを表現するのに使用する場合、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されたポリペプチドを意味する。
【0069】
「制御エレメント」は、それが連結しているコード配列の発現を助けるポリヌクレオチド配列を指す。この用語は、宿主細胞におけるコード配列の転写および翻訳を共同して提供するプロモーター、転写終結配列、上流の調節領域、ポリアデニル化シグナル、適切な場合はリーダー配列、およびエンハンサーを指すことができる。
【0070】
本明細書で使用される「プロモーター」は、哺乳動物細胞においてRNAポリメラーゼを結合させ、作動可能に連結した下流の(3’方向)コード配列の転写を開始させることができるDNA調節領域を指す。本発明の目的のために、プロモーター配列は、バックグラウンドより大きい検出可能なレベルで対象の遺伝子の転写を開始させるのに必要な最低数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列内には、転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合領域(コンセンサス配列)がある。真核生物プロモーターは、必ずしもそうとは限らないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含むことが多い。プロモーターにはさらに、核酸分子に天然に隣接しているもの、および核酸分子に天然に隣接していないものが含まれる。さらに、プロモーターには、誘導性プロモーター;cre−loxプロモーターなどの条件付きで活性なプロモーター;構成的プロモーター;および組織特異的プロモーターが含まれ得る。
【0071】
「選択マーカー」は、マーカーに関連している表現型が明白であり観察可能である適切な条件で細胞を同定できるように、マーカーを発現する細胞に1種または複数の表現型を与える遺伝子を指す。通常、選択マーカーは、必須の細胞機能を阻害する1種または複数の化学物質および/または他の作用物質の存在下または非存在下で増殖できるかどうかに基づいて形質転換細胞の選択を可能にする。したがって、適当なマーカーには、トランスフェクトした細胞が適切な選択培地中で増殖する場合に、薬物耐性または薬物感受性をそれに与える、選択マーカーをコードする分子をトランスフェクトしたこのような細胞に色を与える、またはその抗原特性を変化させる、タンパク質をコードする遺伝子を含む。例えば、選択マーカーには、細胞が、細胞毒または薬物の1種または複数を含有する培地で増殖できるかどうかによって選択される細胞傷害性マーカーおよび薬物耐性マーカー;細胞が、チミジン、ヒポキサンチンなどの特定の栄養物質または補充物質を含むまたは含ま
ない特定培地で増殖できるかどうかによって選択される栄養要求性マーカー;細胞が、唯一の炭素供給源として適切な糖を含有する特定培地で増殖できるかどうかなどの表現型に関して選択される代謝マーカー;または発色基質で着色コロニーを形成できるようにする、または蛍光発光できるようにするマーカーが含まれる。
【0072】
本明細書で使用される「形質転換」は、例えば、形質転換、トランスフェクション、感染などであってよい挿入に使用する方法にかかわらず宿主細胞へのポリヌクレオチドの挿入を指す。導入したポリヌクレオチドは、非組込み型ベクター、例えば、エピソームとして維持されるか、あるいは、宿主ゲノムに組み込むことができる。
【0073】
「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびに調節配列領域が、転写することができるまたはできないコード配列に隣接しているかどうかにかかわらず遺伝子産物の産生を調節するこのようなすべてのDNA配列領域を含む。したがって、遺伝子は、例えば、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位または内部リボソーム侵入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、バウンダリーエレメント、複製起点、マトリックス結合部位、または遺伝子座制御領域であってよい。
【0074】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれている情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他の任意の種類のRNA)またはmRNAを翻訳することによって産生されるタンパク質とすることができる。遺伝子産物は、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化、もしくはエディティングなどの過程によって修飾されたRNA、または例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質とすることもできる。
【0075】
「コード配列」または分泌ポリペプチド「をコードする」配列は、配列が、1種または複数の適切な調節配列の制御下に位置する場合、転写され(DNAの場合)、in vivoでポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列は、5’(アミノ)末端の開始コドンで始まり、3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンで終わる。コード配列は、例えば、ウイルス、原核生物、または真核生物のmRNAに由来するcDNA;ゲノムDNAウイルス配列(例えば、DNAウイルスおよびレトロウイルス);原核生物DNA;または合成DNA配列とすることができる。転写終結配列は、コード配列の3’側の位置にあってよい。
【0076】
「断片」は、完全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列および構造の一部のみを含むポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。ポリペプチド断片は、完全なポリペプチドからのC末端欠失、N末端欠失、および/または内部欠失を含むことができる。ポリヌクレオチド断片は、完全なポリヌクレオチドからの5’欠失、3’欠失、および/または内部欠失を含むことができる。タンパク質の断片は通常、完全長分子のうちの少なくとも約5〜10の隣接するアミノ酸残基、完全長分子のうちの少なくとも約15〜25の隣接するアミノ酸残基、完全長分子のうちの少なくとも約20〜50またはそれ以上の隣接するアミノ酸残基を含む。ポリヌクレオチドの断片は通常、完全長分子のうちの少なくとも約15〜30の隣接するヌクレオチド、完全長分子のうちの少なくとも約45〜75の隣接するヌクレオチド、完全長分子のうちの少なくとも約60〜150またはそれ以上の隣接するヌクレオチドを含む。ある実施形態では、断片中のアミノ酸残基の数は、5から完全長分子中のアミノ酸残基の総数までの任意の整数であってよい。別の実施形態では、ポリヌクレオチド断片中のヌクレオチドの数は、15から完全長分子中のヌクレオチドの総数までの任意の整数であってよい。
【0077】
「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」という用語は、例えば、組換えベクター、単離ポリヌクレオチド、抗体、または融合タンパク質であってよい、本発明の1種または複数のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの受容株となり得る、またはなっている個別の細胞、細胞系、細胞培養物、またはin vivo細胞を指す。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫であってよく、この子孫は、天然の、偶発の、または意図的な変異および/または変化の結果として、形態もしくは生理機能、全DNAもしくは全RNA、またはポリペプチド補体が元の受容細胞と必ずしも同一でなくてよい。宿主細胞は、それだけには限らないが、哺乳動物、昆虫、両生類、爬虫類、甲殻類、鳥類、魚類、植物、および真菌の細胞を含めた原核細胞または真核細胞とすることができる。宿主細胞は、組換えベクターなどの本発明のポリヌクレオチドでin vivoまたはin vitroで形質転換、トランスフェクト、形質導入、または感染した細胞であってよい。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」と呼ぶことができる。
【0078】
「受容体」という用語は、特定の細胞外分子に結合するポリペプチドを指し、この結合は細胞応答を開始することができる。
【0079】
「リガンド」という用語は、別の分子上の特定の部位に結合する分子を指す。
【0080】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はどちらも、例示的および説明的なものにすぎず、請求される本発明を制限するものではないことを理解されたい。さらに、本実施形態は当然変化するので、本発明は、記載した特定の実施形態に限定されないことも理解すべきである。さらに、本発明の範囲は、その特許請求の範囲によってのみ限定されるので、特定の実施形態を記載するのに使用される用語は限定的なものではない。
【0081】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語の意味は、本発明が属する分野の技術者によって通常理解されるものである。当分野の技術者であれば、本明細書に記載するものに類似または相当する任意の方法および材料を使用して本発明を実施または試験できることも理解されよう。
【0082】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「または(or)」、および「その(the)」は、文脈上他のことを明確に指示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの対象のポリペプチド」への言及は、複数のこのようなポリペプチドを含み、「その作用物質」への言及は、1種または複数の作用物質ならびに当分野の技術者に知られているその均等物を含む。
【0083】
さらに、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件、%純度、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さなどを表現するすべての数は、別段の指示がない限り、「約」という用語によって加減される。したがって、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の所望の特性によって変わり得る近似である。少なくとも、特許請求の範囲への均等物の原則の適用を限定する意図としてではなく、各数値パラメータは、通常の丸め手法を適用した報告される有効数字の数を考慮して解釈すべきである。
【0084】
それにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかし、どの数値も、その実験測定値の標準偏差からのある誤差を本質的に含む。
【0085】
引用するすべての刊行物は、その全体を参照によりさらに組み込むこのような刊行物中で引用される参考文献を含めて、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0086】
リーダー配列
本明細書に記載の通り、分泌性タンパク質から同定される分泌リーダー配列は、タンパク質を、このようなタンパク質が、そのタンパク質の内因性の分泌リーダー配列を含むDNA配列から同一の条件下で産生される場合よりも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%以上高い量で産生するのに有用であることが実証される。本明細書で同定および記載された分泌リーダー配列には、例えば、以下の分泌性タンパク質に由来するものが含まれる:インターロイキン9前駆体、T細胞増殖因子P40、P40サイトカイン、トリアシルグリセロールリパーゼ、膵臓前駆体、ソマトリベリン前駆体、バソプレシン−ニューロフィジン2−コペプチン前駆体、β−ネオエンドルフィン−ダイノルフィン前駆体、補体C2前駆体、低分子誘導性サイトカインA14前駆体、エラスターゼ2A前駆体、血漿セリンプロテアーゼインヒビター前駆体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子前駆体、インターロイキン2前駆体、インターロイキン3前駆体、α−フェトプロテイン前駆体、α−2−HS−糖タンパク質前駆体、血清アルブミン前駆体、インター−α−トリプシンインヒビター軽鎖、血清アミロイドP成分前駆体、アポリポタンパク質A−II前駆体、アポリポタンパク質D前駆体、コリパーゼ前駆体、カルボキシペプチダーゼA1前駆体、α−s1カゼイン前駆体、βカゼイン前駆体、シスタチンSA前駆体、フォリトロピンβ鎖前駆体、グルカゴン前駆体、補体因子H前駆体、ヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体、インターロイキン5前駆体、α−ラクトアルブミン前駆体、エブネル腺タンパク質前駆体、マトリックスGlaタンパク質前駆体、α−1−酸性糖タンパク質2前駆体、ホスホリパーゼA2前駆体、樹状細胞ケモカイン1、スタセリン前駆体、トランスチレチン前駆体、アポリポタンパク質A−1前駆体、アポリポタンパク質C−III前駆体、アポリポタンパク質E前駆体、補体成分C8γ鎖前駆体、セロトランスフェリン前駆体、β−2−ミクログロブリン前駆体、好中球デフェンシン1前駆体、トリアシルグリセロールリパーゼ胃前駆体、ハプトグロビン前駆体、好中球デフェンシン3前駆体、神経芽細胞、腫瘍形成能の抑制因子1前駆体、低分子誘導性サイトカインA13前駆体、CD5抗原様前駆体、リン脂質輸送タンパク質前駆体、dickkopf関連タンパク質4前駆体、エラスターゼ2B前駆体、α−1−酸性糖タンパク質1前駆体、β−2−糖タンパク質1前駆体、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆体、C反応性タンパク質前駆体、インターフェロンγ前駆体、κカゼイン前駆体、血漿レチノール結合タンパク質前駆体、インターロイキン13前駆体、および表1〜3に記載の任意の分泌性タンパク質。
【0087】
上記で同定される分泌リーダー配列は、本発明のベクターおよび方法とともに、例えば、分泌性ポリペプチド、細胞外タンパク質、膜貫通タンパク質、および可溶性受容体などの受容体を含めた多種多様なポリペプチドを発現させる上で有用である。このようなポリペプチドの例には、サイトカインおよび増殖因子、例えば、インターロイキン1〜18;インターフェロン;リンホカイン;ホルモン;RANTES;リンホトキシンβ;Fasリガンド;flt−3リガンド;NF−κBの活性化受容体リガンド(RANKL);TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);CD40リガンド;Ox40リガンド;4−1BBリガンドおよびTNFファミリーの他のメンバー;胸腺間質由来リンホポエチン;例えば、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などの刺激因子;抑制因子;肥満細胞増殖因子、幹細胞増殖因子、上皮成長因子、成長ホルモン、腫瘍壊死因子;白血病抑制因子;オンコスタチンM;スプライスバリアント;ならびにエリスロポエチン、トロンボポエチンなどの造血因子が含まれる。
【0088】
本発明によって発現させることができるタンパク質の一部に関する記述は、例えば、HUMAN CYTOKINES:HANDBOOK FOR BASIC AND CLINICAL RESEARCH, Vol. II (AggarwalおよびGutterman編、Blackwell Sciences、マサチューセッツ州ケンブリ
ッジ、1998);GROWTH FACTORS: A PRACTICAL APPROACH (McKayおよびLeigh編、Oxford University Press Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク、1993);およびTHE CYTOKINE HANDBOOK (A. W. Thompson編、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ、1991)において見出すことができる。
【0089】
前述のどのタンパク質の受容体も、本明細書に記載の分泌リーダー配列、ベクター、および方法を使用して発現させることができる。この受容体には、例えば、腫瘍壊死因子受容体の両方の型(p55およびp75と称される)、インターロイキン1受容体(1型および2型)、インターロイキン4受容体、インターロイキン15受容体、インターロイキン17受容体、インターロイキン18受容体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体、顆粒球コロニー刺激因子受容体、オンコスタチンMおよび白血病抑制因子の受容体、NF−κBの活性化受容体(RANK)、TRAIL受容体、ならびにFasまたはアポトーシス誘導受容体(AIR)などのデスドメインを含む受容体が含まれ得る。
【0090】
他のタンパク質も、本明細書に記載の分泌リーダー配列、ベクター、および方法を使用して発現させることができる。こうしたタンパク質には、例えば、分化抗原群(cluster of differentiation antigens)(「CDタンパク質」または「CD分子」と称される)、例えば、LEUKOCYTE TYPING VI(Proceedings of the VIth International Workshop and Conference; Kishimotoら編;神戸、1996)、または後のワークショップの予稿集に開示されているものが含まれる。CD分子の例には、CD27、CD30、CD39、CD40、ならびにそのリガンド、例えば、CD27リガンド、CD30リガンド、およびCD40リガンドが含まれる。これらの分子のいくつかは、4−1BBおよびOX40を含めたTNF受容体(TNFR)ファミリーのメンバーであり、4−1BBリガンドおよびOX40リガンドを含めたそのリガンドもTNFファミリーのメンバーであることが多い。したがって、TNFおよびTNFRファミリーのメンバーは、本発明の分泌リーダー配列、ベクター、および方法を使用して発現させることができる。
【0091】
酵素であるタンパク質も、本明細書に記載の分泌リーダー配列、ベクター、および方法を使用して発現させることができる。こうした酵素には、例えば、メタロプロテイナーゼ−ディスインテグリンファミリーのメンバー;ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アンキリンリピート含有細胞死関連キナーゼ、IKR1、またはIKR2などの様々なキナーゼ;TNF−α変換酵素;および多数の他の酵素が含まれ得る。酵素のリガンドも、本明細書の分泌リーダー配列、ベクター、および方法を適用することによって発現させることができる。
【0092】
本明細書に記載の分泌リーダー配列、ベクター、および方法は、他の種類の組換えタンパク質を発現させるのにも有用である。こうした組換えタンパク質には、例えば、免疫クロブリン分子またはその部分、ならびにキメラ抗体(例えば、ヒト定常領域がマウス抗原結合領域と繋がっている抗体)またはその断片が含まれ得る。免疫グロブリン分子をコードするDNAを操作して、単鎖抗体、親和性を増強した抗体、または他の抗体ベースのポリペプチドなどの組換えタンパク質をコードすることが可能なDNAを得ることができる多数の手法が知られている(例えば、Larrickら、1989;Reichmannら、1988;Robertsら、1987;Verhoeyenら、1988;Chaudharyら、1989を参照のこと)。
【0093】
ベクター、宿主細胞、およびタンパク質産生
本発明は、例えば、対象の1種または複数の分泌リーダー配列、または分泌リーダー配列であるとは限らない対象の選択された異種ポリペプチドをコードする核酸構築体を含む組換えベクター、および遺伝子操作してこの組換えベクターを取り込んだ宿主細胞を提供する。
【0094】
本発明のベクターは、宿主中で増殖させるための選択マーカーおよび分泌リーダー配列、例えば表1に記載の配列のうちの1つを含むものであってよい。このような選択マーカーは、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素;G418;真核細胞培養物用のネオマイシン耐性もしくはピューロマイシン耐性;または大腸菌(E.coli)および他の細菌培養物用のテトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、ピューロマイシン耐性、もしくはアンピシリン耐性であってよい。
【0095】
本発明のベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスのベクターであってよい。通常、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿など沈殿の形で、または荷電脂質を含む複合体として導入される。ベクターがウイルスである場合、ベクターを、適切なパッケージング用細胞系を使用してin vitroでパッケージングし、次いで、形質導入によって宿主細胞中に組み込むことができる。レトロウイルスベクターは複製可能または複製欠損性であってよい。また、このベクターが複製欠損性である場合、ウイルス増殖は通常、補完する宿主細胞でしか起こらない。
【0096】
本発明において有用なベクターの中には、pTTベクターのバックボーンを使用した本明細書に記載のベクターがある(例えば、図3〜7を参照のこと)(Durocherら、2002)。簡単に言えば、pTTベクターバックボーンは、以下の方法によって調製することができる:(1)pIRESpuro/EGFP(pEGFP)ベースのベクターおよびpSEAPベースのベクターをCLONETECH(登録商標)(カリフォルニア州パロアルト)から入手し、(2)pcDNA3.1、pCDNA3.1/Myc−(His)、およびpCEP4ベクターをINVITROGEN(登録商標)から入手し、(3)SUPERGLO(商標)GFP変異体(「sgGFP」)をQ−BIOGENE(登録商標)(カリフォルニア州カールズバッド)から入手し、(4)(a)SalIおよびXbaI制限酵素を使用した連続消化およびセルフライゲーションにより、pCEP4のCMVプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを除去して、pCEP4Δプラスミドを得るステップ、および(b)CMV5−ポリ(A)発現カセットをコードするpAdCMV5(Massieら、1998)由来のBglII断片を、BglIIによって直鎖化されたpCEP4Δにライゲートして、pCEP5ベクターを得るステップによりpCEP5を調製し、(5)ハイグロマイシンおよびEBNA1発現カセットを除去することによりpTTベクターを作製し(前者の除去は、BsmIおよびSalIによる切除、続く充填およびライゲーションによって達成され、後者の除去は、ClaIおよびNsiIによる切除、続く充填およびライゲーションによって達成される)、(6)β−ラクタマーゼORFの3’末端を含んだFspI−SalI断片を含むColEI起点を、pMBI起点およびpcDNA3.1由来のβ−ラクタマーゼORFの同じ3’末端を含むFspI−SalI断片で置き換え、(7)HindIIIおよびEcoRVで消化したpcDNA3.1/Myc−Hisにインフレームでライゲートし、(8)Myc−(His)C末端融合タグを、pSEAPベース由来のHindIII−HpaI断片であるSEAPに付加する。次いで、LB培地において増殖した大腸菌(DH5α)中でプラスミドを増幅させる。QIAGEN(商標)(カナダオンタリオ州ミシソーガ)のMAXI−PREP(商標)カラムを使用してこの培地からプラスミドを精製する。プラスミドを50mM Tris−HCl(pH7.4)に希釈し、260nmおよび280nmでの吸光度を測定することにより、このようにして作製したプラスミドの量を測定する。本発明の目的のために、A260/A280比が約1.75から約2.00までのプラスミド調製物を使用する。
【0097】
対象の核酸構築体は、適切なプロモーターに作動可能に連結したDNAであってよい。この適切なプロモーターは、例えば、ファージλPLプロモーター、大腸菌lac、trp、phoA、およびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、またはレトロウイルスLTR由来のプロモーターのうちの1つであってよい。このプロモーターは、例えば、哺乳動物細胞のゲノムに由来するメタロチオネインプロモーターであってもよい。あるいは、このプロモーターは、哺乳動物ウイルスに由来するアデノウイルス後期プロモーターまたはワクシニアウイルス7.5Kプロモーターであってもよい。他の適当なプロモーターは当分野の技術者に知られている。
【0098】
この発現構築体は、転写領域における転写開始および転写終結のための部位、およびリボソーム結合部位をさらに含む。この構築体によって発現される転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの最初に、適切に位置付けられた翻訳開始コドン、およびその最後に終止コドン(UAA、UGA、またはUAG)を含む。ポリヌクレオチドによってコードされる異種ポリペプチドには、例えば、分泌性タンパク質の細胞外断片、I型膜タンパク質、II型膜タンパク質、多重膜タンパク質、および可溶性受容体が含まれ得る。
【0099】
リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランの媒介によるトランスフェクション、カチオン性脂質の媒介によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、または当分野の技術者によって知られている任意の他の方法により、構築体を宿主細胞中に導入することができる。このような方法は、Davis et al, BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986)など、多くの標準的な実験マニュアルに記載されている。適切な宿主の代表例には、それだけには限らないが、細菌細胞、例えば、大腸菌、ストレプトミセス属(Streptomyces)、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞;昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエS2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞;動物細胞、例えば、CHO、COS、293(293−6Eおよび293−Tを含む)、およびボーズメラノーマ(Bowes melanoma)細胞;ならびに植物細胞が含まれる。こうした代表的な宿主細胞を増殖させるのに適した培地および条件は、当技術分野で知られている。
【0100】
種々の宿主発現ベクター系を使用して、本発明のポリペプチドを発現させることができる。このような宿主発現系は、対象のコード配列を産生し、続いて精製する媒体である。こうした系は、適切なヌクレオチドをコードする配列で形質転換またはトランスフェクトすると、本発明のポリペプチドを発現する細胞とすることもできる。こうした系には、例えば、ポリペプチドをコードする配列を含む、組換えバクテリオファージDNA、組換えプラスミドDNA、または組換えコスミドDNAの発現ベクターで形質転換される微生物、例えば、大腸菌または枯草菌(B.subtilis)などの細菌が含まれ得る。こうした系には、例えば、ポリペプチドをコードする配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換されるサッカロミセス属(Saccharomyces)またはピキア属(Pichia)などの酵母が含まれ得る。こうした系は、ポリペプチドをコードする配列を含む、バキュロウイルスなどの組換えウイルス発現ベクターを感染させる昆虫細胞であってもよい。こうした系は、ポリペプチドをコードする配列を含む、カリフラワーモザイクウイルス(「CaMV」)もしくはタバコモザイクウイルス(「TMV」)などの組換えウイルス発現ベクターを感染させるか、またはTiプラスミドなどの組換えプラスミド発現ベクターで形質転換される植物細胞であってもよい。こうした系にはさらに、プロモーターを含む組換え発現構築体を有する、COS、CHO、BHK、293、293−6E、PER.C6(登録商標)、293T、または3T3などの哺乳動物細胞が含まれ得る。
【0101】
宿主細胞に、対象のポリペプチドをコードするベクターまたはDNA構築体をトランスフェクトした後、次いでこの細胞を、本発明のポリペプチド産生するのに適した培地および条件で増殖させる。
【0102】
通常、異種ポリペプチドは、融合タンパク質として発現させることもできる。ポリペプチドはさらに、1種または複数の分泌シグナルだけでなく、表1で例示される1種または複数の分泌リーダー配列を含むことができる。本発明によるこのような融合タンパク質の発現については以下で詳細に記載する。
【0103】
さらに、ペプチド部分および/または精製タグをポリペプチドに付加して、精製を容易にし、安定性を改善し、分泌または排出を引き起こすことができる。この部分および/またはタグは、精製の最終段階の前に除去することができる。この技法は、当分野の技術者によく知られており、常用されている。ある実施形態では、このようなタグは、ヘキサヒスチジンペプチド、例えば、pQE(商標)ベクター(QIAGEN(商標)社、カリフォルニア州チャッツワース)において提供されるタグとすることができる。別のペプチドタグ、すなわちインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープである「HA」タグを本発明のポリペプチドと融合することもできる(Wilsonら、1984を参照のこと)。他の適当な精製タグは、例えば、V5、HISX8、アビジン、またはビオチンであってもよい。
【0104】
ある実施形態では、この融合タンパク質は、免疫グロブリン由来の異種領域を含み、この領域の存在は、精製を容易にし、精製タンパク質の安定化に寄与することができる。例えば、欧州特許出願公開第0464533号およびその対応するカナダ特許出願公開第2045869号は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の様々な部分と、ヒトタンパク質またはその部分とを含む融合タンパク質を記載している。欧州特許出願公開第0232262号によれば、融合タンパク質におけるFc領域は、薬物動態特性の改善をもたらす傾向があるので、治療および診断において使用するのに有利であると考えられる。他に使用することがなければ、融合タンパク質を発現、検出、および精製した後に、特にFc領域が、治療および診断において融合しているポリペプチドの使用を妨げる場合に、Fc領域を除去することが望ましいであろう。例えば、Fc領域の除去は、融合タンパク質を免疫化の抗原として使用する場合に必要であるはずである。
【0105】
精製タグは、創薬に使用することもできる。例えば、ヒトタンパク質hIL−5をFc領域と融合して、ハイスループットのスクリーニングアッセイを使用したhIL−5アンタゴニストの同定を容易にした(Bennettら、1995;Johansonら、1995)。
【0106】
本発明の異種ポリペプチドは、周知の方法により組換え細胞培養物から精製することができ、この方法には、例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーが含まれる。特定の実施形態では、高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製に使用される。本発明のポリペプチドには、例えば、直接に単離した、または培養した、体液、組織、および細胞などの天然の供給源から精製された産物;化学合成操作による産物;組換え技術により細菌細胞、酵母、高等植物細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞などの原核生物または真核生物宿主から産生された産物;または組換え技術により無細胞発現系から産生された産物が含まれ得る。
【0107】
修飾
本発明は、翻訳中または翻訳後に、例えば、既知の保護基/ブロック基、タンパク質分
解性の切断、または抗体分子もしくは他の細胞リガンドとの結合による、グリコシル化、アセチル化、メチル化、リン酸化、アミド化、誘導体化により示差的に修飾されたポリペプチドを包含する。こうした化学修飾はいずれも、臭化シアンによる特異的な化学切断;トリプシン、キモトリプシン、パパイン、またはV8プロテアーゼによる消化;NABHによる処理;アセチル化;ホルミル化;酸化;還元;およびツニカマイシンの存在下での代謝合成を含めた既知の技法によって実行することができる。
【0108】
組換え産生操作において使用する宿主に依存して、本発明のポリペプチドをグリコシル化してもグリコシル化しなくてもよい。本発明のポリペプチドには、通常宿主の媒介による過程の結果としての、修飾されたN末端開始メチオニン残基も含まれ得る。翻訳開始コドンによってコードされるN末端メチオニンは通常、真核生物細胞において翻訳後に高効率で除去できることが当技術分野で知られている。N末端メチオニンは、大部分の原核生物タンパク質から効率的に除去することができるが、原核生物においてはこの除去過程は効率的であるとは限らない。この効率は、N末端メチオニンが共有結合しているアミノ酸の性質および種類に依存する。
【0109】
本発明による追加の翻訳後修飾には、例えば、宿主の原核細胞における発現の結果としての、N結合型もしくはO結合型糖鎖、N末端もしくはC末端のプロセシング、アミノ酸骨格への化学的部分の結合、N結合型もしくはO結合型糖鎖の化学修飾、またはN末端メチオニンの付加もしくは除去が含まれる。タンパク質の検出および単離を容易にするために、ポリペプチドは、1種または複数の検出可能な標識で修飾することもでき、この標識は、例えば、酵素標識、蛍光標識、同位体標識、またはアフィニティー標識であってよい。
【0110】
本発明の追加の実施形態は、本発明のポリペプチドの化学修飾された誘導体であってよく、この誘導体は、ポリペプチドの溶解性、安定性、および循環時間の増大、または生物系における免疫原性の低下など、追加の利点を提供することができる(米国特許第4,179,337号)。誘導体化に使用される化学的部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーから選択することができる。ポリペプチドは、分子内の無作為の位置または所定の位置で修飾することができ、1個、2個、または3個以上の結合した化学的部分を含むことができる。反応条件は、当技術分野で知られている条件および後に開発された条件のいずれかから選択することができるが、厳しい温度、溶媒、およびpHの条件によって、修飾されるタンパク質の活性が喪失されない、または限定的にしか活性の喪失を受けないように選択すべきである。一般に、ポリペプチド複合体に対するポリマーの割合が大きくなるほど、複合産物の割合が大きくなる。反応の効率によって測定された最適の割合は、誘導体化の所望の程度(例えば、モノ−、ジ−、トリ−など)、選択されたポリマーの分子量、分岐の程度、および反応条件などの要素によって決定することができる。ポリマー対ポリペプチドの比は通常、1:1から100:1の範囲にある。1種または複数の精製された複合体は、例えば、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、および電気泳動を含めた標準的な精製技術により各混合物から調製することができる。
【0111】
ポリマーは、任意の分子量であってよく、分岐または非分岐であってよい。ある実施形態では、本発明のポリペプチドをポリエチレングリコールによって修飾する場合、ポリエチレングリコールの分子量は、約1kDaから約100kDaまでである。「約」という用語は、ポリエチレングリコールの記載で使用する場合、ポリエチレングリコールの調製中に、述べられた分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示唆するものとする。修飾に使用されるポリエチレングリコールのサイズは、例えば、所望の持続放出時間;あるとすれば生物活性に対する効果;操作の容易さ;抗原性の程度または欠如;な
らびに治療用タンパク質または類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の作用などの所望の治療プロファイルに依存する。
【0112】
いくつかの結合方法が当分野の技術者に利用可能である。例えば、欧州特許出願公開第0401384号は、G−CSFに対するPEGの結合を記載している。Malikらは、トレシルクロリド法を使用したGM−CSFのペグ化を報告した(Malikら、1992)。ポリエチレングリコールは、例えば、遊離アミノ基、カルボキシル基、またはスルフヒドリル基であってよいアミノ酸残基の反応性基に共有結合していてよい。ポリエチレングリコール部分を分子に結合することを意味するペグ化の文脈において、反応性基は、活性化されたポリエチレングリコール分子が結合することができる基として定義される。
【0113】
N末端が化学修飾されたタンパク質が特に望まれる場合がある。これは、誘導体化に利用可能な内部リジン、N末端アミノ酸などの第一級アミノ基の様々な反応性を利用した還元アルキル化によって達成することができる。例えば、反応をあるpHで実施することによりポリマーをタンパク質のN末端に選択的に結合することができ、この場合、ε−アミノ残基ではなくN末端残基のα−アミノ基だけが反応の影響を受けやすいはずであり、したがってこうした種類のアミノ基の間のpKaの違いが利用される。還元アルキル化に使用されるポリマーは通常、単一の反応性アルデヒドを有する。N末端を化学修飾したタンパク質は必要に応じて、N末端を修飾したタンパク質を、他の場所が修飾されているタンパク質分子の一団から精製することにより他のモノ誘導体化した部分から分離することができる。
【0114】
本発明の融合分子
本発明のさらなる実施形態では、異種ポリペプチドは、1種または複数の融合パートナーと組み合わせて融合分子を形成することができる。このような融合分子は、有利には、その修飾していない非融合対応物と比較して改善された薬物動態特性を提供することができる。本発明の異種ポリペプチドを含むこうした融合分子は、本明細書の開示内容を認識している当分野の技術者によって調製することができる。この点で異種ポリペプチドの誘導体化に適した化学的部分は、例えば、水溶性ポリマーなどのポリマー;ヒト血清アルブミンのすべてまたは部分;フェチュインA;フェチュインB;またはFc領域であってよい。
【0115】
具体的には、本発明の修飾された異種ポリペプチドは、1種または複数のポリアミノ酸、ペプチド部分、または分岐点アミノ酸をポリペプチドに結合することによって調製することができる。ポリアミノ酸は、市販されており、薬物送達技術および遺伝子治療などの他の新たな技術において広く使用されている。上記の融合分子で達成することができる利点に加えて、ポリアミノ酸は、ポリペプチドの血中半減期を延長する働きをする担体とすることができる。本発明の治療上の目的のために、このようなポリアミノ酸は理想的には、中和抗原反応または他の有害反応を生じないものであるべきである。本明細書に記載の通り、ポリアミノ酸がポリペプチドまたは融合ポリペプチドに結合する位置は、N末端、C末端、またはその間の任意の他の位置であってよい。ポリアミノ酸は、選択されたポリペプチドまたは融合ポリペプチドのいずれかの末端に化学的「リンカー」部分によって接続することもできる。
【0116】
水溶性ポリマーなどの1種または複数のポリマーと複合した融合分子を調製する方法はすでに記載している。
【0117】
さらに、本発明の異種ポリペプチドおよびエピトープを有するその断片は、免疫グロブリン定常ドメインの部分と組み合わせることができ、その結果キメラポリペプチドが得ら
れる。こうした特定の融合分子により、そのプレ融合対応物と比較して、精製が容易になり、延長したin vivoでの半減期を示す傾向がある。こうしたキメラポリペプチドの例には、例えば、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメイン、および哺乳動物免疫グロブリン定常領域の様々なドメインを含むキメラタンパク質が含まれる(欧州特許出願公開第394,827号;Trauneckerら、1988)。ジスルフィド結合した二量体構造を有する融合分子は、例えば、単量体ポリペプチドまたは断片よりも、他の分子を結合し中和する上で効率的である傾向がある(Fountoulakisら、1995)。
【0118】
別の実施形態では、ヒト血清アルブミン融合分子は、本明細書に記載の通り、またその全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,686,179でさらに記載されている通り調製することもできる。
【0119】
さらに、本発明のポリペプチドは、精製タグが一部であるポリペプチドの精製を容易にするはずであるペプチド領域である精製タグと融合することもできる。このタグを対象のポリペプチドと融合する方法は本明細書に記載されている。
【0120】
本明細書の前述の説明および実施例で特に記載されているもの以外の形で本発明を実施してよいことは当分野の技術者には明らかであろう。本発明の多くの変更形態および変形形態は、本明細書の教示に照らして可能であり、したがって、添付の特許請求の範囲内にある。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
無細胞系を使用する生物学的活性がある成熟分泌タンパク質の発現
組換え技術は、in vitroまたはin vivoでのタンパク質の発現を可能にする。タンパク質発現用のin vitro系の例には、ウサギ網状赤血球溶解物、コムギ胚芽エキスなどの無細胞系、および細菌、昆虫細胞、酵母菌細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、293細胞、およびヒト胚網膜細胞PER.C6(登録商標)細胞(Crucell、オランダ))などの細胞系が含まれる。例えば1種(複数)のトランス遺伝子が、例えば、緑色蛍光タンパク質およびその変異体またはβ−ガラクトシダーゼなどのマーカーをタグ付けした1種(複数)のタンパク質をコードするトランスジェニック動物の作製において、in vivoでの組換えタンパク質の発現は有用である。このようなタグは、タグ付きタンパク質が発現される細胞の視覚化、追跡および/または単離を容易にする。in vivoでの組換えタンパク質の発現の他の例は、トランスジェニックマウス、または分泌性タンパク質を発現させるために遺伝的に改変したマウスに移植した細胞の使用である。後者は例えば、腫瘍の発達を促進し、ホルモン、成長因子、および/または生存因子として働くと考えられるタンパク質であってよい。この状況では、様々なレベル(低、中程度、高)のタンパク質分泌を得て、特定の結果(例えば、腫瘍の増大)を得ることが重要である可能性がある。組換えの状況で発現される場合、多くのタンパク質は効率よく分泌されない。その場合、組換え法によって、その内因性リーダー配列をその有効な分泌を駆動することができるリーダー配列で置き換え可能であることは有用である。
【0122】
所与の単離cDNAは、cDNAを使用してそのタンパク質をin vivoで発現させる前に、そのヌクレオチド配列がコードするタンパク質のin vitroでの発現を支持できることを確認することが有用であることが多い。このプロセスは例えば、特定の宿主細胞(例えば、CHO細胞およびPER.C6(登録商標)細胞)においてタンパク質が受ける翻訳後修飾、およびタンパク質の活性に関するさらなる情報を得るのにも役立てることができる。分泌性タンパク質の場合、cDNA配列はその完全長型、その成熟型
(すなわち、リーダー配列を含まないタンパク質)、または特定のドメインなどのタンパク質の任意の他の部分のいずれかをコードする可能性がある。
【0123】
無細胞系における組換えタンパク質の発現用のプラスミド鋳型の調製
成熟型の対象の任意のタンパク質をコードするcDNAを組換えによって発現させるために、cDNAを修飾してコード配列以外に、翻訳開始部位/翻訳エンハンサー(例えば、コザック配列、オメガ配列、非オメガ配列)を含めることは、有用であることが多い。この実施例では成熟型は、シグナルペプチドを含まないタンパク質である最も典型的な分泌産物を指す。さらに、対象のタンパク質に関する抗体が存在しない場合、検出と精製プロセスの両方を容易にするタグを付加することもできる。このようなタグの例は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、およびエピトープV5、HisX6、およびHisX8(H8)である。対象のタンパク質をコードするcDNAへのこれらの特徴の付加は、様々なクローニング法によって行うことができる。対象のcDNA中に適切な制限酵素部位が存在しない場合、以下に記載した方法などのPCR増幅法をクローニングプロセス中に使用することもできる。3つのPCRステップを含み、グルタチオン−S−トランスフェラーゼでタグ付けした成熟ORFが得られる、クローニングプロセスを以下に例示する。
【0124】
最初に、対象の成熟オープンリーディングフレーム(成熟ORF)をコードするcDNA配列を含む第1プラスミドを、第1PCRに提供した。翻訳開始部位/翻訳エンハンサーを成熟ORFのコード配列の5’領域に付加するために、ヌクレオチドプライマー(フォワードプライマーFP1)を設計および合成し、これは5’GTTCTGTTCCAGGGGCCC3’、次に対象の成熟分泌性タンパク質のアミノ末端をコードすることが予測される第1の19ヌクレオチドを含んでいた。発現させるcDNAのコード配列(成熟ORF)から約1000ヌクレオチド下流のプラスミドの領域に基づいて、第2プライマー(リバースプライマーRP1)を設計および合成した。実際RP1プライマーは、RP1をPCRでFP1とともに使用して成熟ORFを増幅させることができるように、この領域中のベクター配列の逆相補配列として設計した。RP1の正確な配列は開始プラスミドに応じて変わり得るが、典型的には約55〜65℃のTmで17〜23ヌクレオチド長であった。
【0125】
次いで、成熟ORFとして発現されるcDNAを含む精製した開始プラスミド、または精製プラスミドを含む大腸菌細胞を鋳型として、すでに記載した2つのプライマー(FP1およびRP1)、標準PCR試薬、およびDNAポリメラーゼを含む標準PCRに加えた。次いで、反応混合物を、15〜30サイクルのPCR増幅にかけた。この第1PCRの産物は、本願明細書の目的のために「PCR1コード鋳型」と呼ぶ。
【0126】
別のPCRを実施して「GST−Megaプライマー」を調製し、その目的は第2PCRステップにおいて、最終的なGST成熟ORF発現鋳型のGST部分を提供することであった。この目的のために、異なる開始プラスミド鋳型、例えば非オメガ翻訳開始配列の下流にGSTコード配列を含むプラスミド鋳型を使用し、これは本明細書で「鋳型2」と称する。GST融合タンパク質が切断可能な架橋によって成熟ORFと連結していることが、有用であることが多い。この目的のために、鋳型は、トロンビン、または市販のPreScission(商標)プロテアーゼ(Amersham、NJ)に感受性がある配列などのプロテアーゼにより切断可能な配列を含むように修飾されたGSTタンパク質を有することが可能である。これによって、プロテアーゼの媒介による切断によって精製操作の最後に、2種のタンパク質、成熟ORFとGSTを分離させることができる。したがって、2つのプライマー:配列5’GGTGACACTATAGAACTCACCTATCTCCCCAACA3’のFP2;および配列5’GGGCCCCTGGAACAGAACTTC3’のRP2を使用して、「鋳型2」を増幅させるためにPCRを準備した。
鋳型2、すでに記載した2つのプライマー(FP2およびRP2)、標準PCR試薬、およびDNAポリメラーゼを含む標準的なPCR混合物において増幅を15〜30サイクル行った。PCRが終了した後、増幅産物を37℃で30分間エクソヌクレアーゼIを用いて処理し、次いで80℃で30分間熱失活させた。次いで、この産物をアガロースゲル電気泳動によって精製し、ゲル精製キット(Amersham、NJ)を使用して抽出し、「GST−Megaプライマー」を生成した。実際「GST−Megaプライマー」は、GST−融合発現鋳型を生成する第2PCRにおいて使用した2つの鋳型の1つであった。最終反応混合物の他の鋳型は、すでに記載した通り調製した「PCR1コード鋳型」であった。
【0127】
成熟ORF/GST融合発現鋳型であった最終構築体は、以下の通り調製した。2つの鋳型「GST−Megaプライマー」と「PCR1コード鋳型」を、成熟ORFを含む第2PCRによって組み合わせた。このPCR反応混合物は、(i)標準PCR試薬、(ii)DNAポリメラーゼ、(iii)「PCR1コード鋳型」の等分試料(例えば0.5μl)、(iv)「GST−Megaプライマー」の等分試料(例えば1μl)、(iv)SP6プロモーター配列の一部分を含み、(下線部の配列と比較して)その共通の3’末端を介して「GST−Megaプライマー」の5’末端とアニーリングした、第5のプライマー、配列5’GCGTAGCATTTAGGTGACACT3’のFP3、および(v)RP1と同じベクターの同じ領域であるが、RP1の3ヌクレオチド上流で始まり、完全長PCR1コード鋳型のみと特異的にアニーリングする、領域中ベクター配列の逆相補配列として設計した、第6のプライマーRP3であって、通常、17〜23ヌクレオチド長であり、Tmが約55〜65℃であり、「PCR1コード鋳型」を増幅させる際に使用することができるRP3を含んでいた。15〜30サイクルのPCR増幅の後、「成熟ORF/GST融合発現鋳型」をこのようにして作製した。
【0128】
コムギ胚芽エキスにおけるGST−融合発現鋳型の発現
無細胞系において対象の成熟タンパク質を発現させるために、mRNAを同じ反応または別々の反応において「成熟ORF/GST−融合発現鋳型」から転写および翻訳することができる。別のin vitro転写反応混合物(50μl)は、以下のバッファー:80mMのHEPES KOH pH7.8、16mMのMg(OAc)、2mMのスペルミジン、10mMのDTT、1単位のSP6(Promega、WI)および1単位のRNasin(Promega、WI)中で、5μlの「GST−融合発現鋳型」を用いて調製することができる。反応混合物は37℃で3時間インキュベートする。生成したmRNAは、200μlのRNaseフリーの水、37.5μlの5M酢酸アンモニウム、および862μlの99%エタノールを含む溶液中でエタノール沈殿に施す。エタノール沈殿は、ボルテックス攪拌によって混合するステップ、および4℃で10分間の15,000×gでの遠心分離によってペレット化するステップを含む。次いで、mRNAペレットを70%エタノールで洗浄し、4℃で5分間の15,000×gでの遠心分離によって再度ペレット状にし、そのステップの後、ペレット状のmRNAをin vitro翻訳用に調製する。
【0129】
コムギ胚芽エキスはmRNAのin vitro翻訳に使用することができ、すでに記載した通り別々に調製することができる。最初に、2×Dialysis Bufferのストック溶液を、2つの別個のアミノ酸ストックを混合させることにより調製した。第1ストックは、20mMのHEPES KOHバッファー、pH7.8、200mMのKOAc、5.4mMのMg(OAc)、0.8mMのスペルミジン、100μMのDTT、2.4mMのATP、0.5mMのGTP、32mMのクレアチンリン酸、0.02%のNaN、およびアスパラギン酸、トリプトファン、グルタミン酸、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンを含まなかった0.6mMのアミノ酸混合物を含んでいた。第2ストックは、1NのHCl中にアミノ酸アスパラギン酸、トリプトフ
ァン、グルタミン酸、イソロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンの80mM混合物を含んでいた。第2ストック中のすべてのアミノ酸が溶解した後、アミノ酸の第2ストックの最終濃度が0.6mMであるように、2つのストックを混合した。2×Dialysis Bufferのストックを、次いで5NのKOHを使用してpH7.6に調整し、濾過滅菌し、等分試料として−80℃で凍結保存した。
【0130】
in vitro転写されたmRNA(すでに記載した通り別々に調製)を再懸濁させるために、2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む1×Dialysis Buffer中で調製した60の最終OD260nmで、Wheat Germ Reagent(Promega、WI)を含む50μlの「翻訳混合物」を調製した。沈殿したmRNAから上清(エタノール)を除去した後、50μlの「翻訳混合物」を沈殿に加え、5〜10分間放置した後、mRNAを翻訳混合物に再懸濁させた。次いで、再懸濁させたmRNAを含む完全な翻訳混合物を、二層反応を設定するために96ウェルの丸底マイクロタイタープレートの1つのウェルにすでに加えた、250μlの1×Dialysis Bufferの下で層状にした。次いで、プレートをプレートシールを用いて手作業で密封し、in vitro翻訳反応混合物は26℃で20時間インキュベートした。
【0131】
in vitro翻訳反応期の最後に、かつGST融合体として発現された組換え成熟ORFタンパク質を回収するために、翻訳混合物をチューブに移し、0.25Mスクロースおよび2mMのDTTを含むリン酸緩衝生理食塩水を用いて5倍希釈した。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タンパク質が結合する、10マイクロリットルのグルタチオン(GSH)−セファロースビーズ(Amersham−Pharmacia
Biotech、NJ)を次いで混合物に加え、混合を確実にするために絶えず攪拌しながら、次いで4℃で3時間インキュベートした。結合GST−融合タンパク質を含むGSH−セファロースビーズは、0.25Mスクロースおよび2mMのDTTを含むPBS中で次いで3回洗浄した。成熟ORFとGSTを組換えにより遺伝子工学処理して、プロテアーゼ切断型架橋を介して融合させる場合、50mMのTris pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、2mMのDTT、および0.25Mスクロースを含むプロテアーゼ切断型バッファー中において、次いで4回目の洗浄を実施した。この洗浄バッファーは「最終洗浄バッファー」とも呼ばれた。洗浄バッファーをビーズ混合物から注意深く除去した後、最終ステップから回収した10μlの最終洗浄バッファーをビーズと混合させ、PreScission(商標)プロテアーゼ(Amersham、NJ)などの0.4μlの適切なプロテアーゼを混合物に加えた。次いでピペットを使用してビーズを軽く懸濁させた。このビーズ混合物/懸濁液を、次いで一晩4℃で放置した。切断した成熟ORFタンパク質産物を回収するために、20μlの最終洗浄バッファーを加え、(ビーズを沈殿させた後に)ピペッティングによって、あるいは焼結フリットを介した濾過によって、全液体分画(ビーズを含まない)を回収した。
【0132】
回収した液体分画(精製した成熟タンパク質を含む)の等分試料を、SDS−PAGEゲルのELISAおよび/またはクーマシー/銀染色によって分析して、成熟タンパク質の発現のレベルを定量した。
【0133】
回収した成熟ORFタンパク質を安定化させるために、PBSに溶かした10mg/mlの精製BSAの溶液を、BSAの最終濃度が約1mg/mlになるように精製タンパク質溶液に加えた。次いでタンパク質サンプルはPBS中で透析し、保存用に濾過滅菌した。ウェスタンブロット分析は、様々なステップおよび精製操作中に回収した等分試料から行って、例えばタンパク質の発現のレベルを評価すること、翻訳されるタンパク質がその長さとその配列の両方の点で、対象のcDNAによってコードされると予想されるタンパク質に対応するかどうか決定することができる。生物活性測定、質量分析、および翻訳後修飾アッセイなどの先の特徴付け試験において、タンパク質を使用することもできる。同
じmRNA鋳型からさらなるタンパク質を生成させるために、1つの二層反応を多数回繰り返すことができ、精製および配合はそれに応じて調節することができる。
【0134】
典型的には、16の二層反応(すでに記載した通り設定した)は、生物活性アッセイなどの大部分の典型的なアッセイにおいて試験するための、十分な生物活性を有するタンパク質を産生するはずである。これらの反応は96ウェルプレート中で行うので、多数の対象のcDNAを別のウェル中で同時に翻訳することができるハイスループットアッセイに、この発現系は適している。cDNAが、コムギ胚芽エキス中の対象の特定のタンパク質をコードすることができることが示されると、この発現系で通常得られるタンパク質よりも多い量のタンパク質を発現させることが、望ましい可能性がある。異なる細胞系において所与のタンパク質が受ける翻訳後修飾、例えばコムギ胚芽溶解物などの植物ベースの系に存在する翻訳後修飾と、哺乳動物系(例えば、CHO細胞、293細胞、PER.C6(登録商標)細胞)に存在する翻訳後修飾を比較することも、望ましい可能性がある。
【0135】
様々なシグナルペプチド−未熟タンパク質の発現レベルの評価
表3の列3(「最高発現型」)は、その内因性シグナルペプチドを含まない標準条件下での本発明の様々なタンパク質の発現のレベルの比較を目的とする、ハイスループットの発現実験の結果を要約する。表1および付録Aに挙げる完全長タンパク質をコードするcDNAを含む一組のcDNAで始めて、成熟ORF鋳型を前段落で詳細に記載した通り調製して、成熟型の各タンパク質(すなわち、その内因性シグナルペプチドを含まないタンパク質)を発現させた。精製後、精製V5タグ付きタンパク質標準に対する抗V5抗体を使用して、発現のレベルをクーマシー染色SDS−PAGE、銀染色SDS−PAGE、または定量ウェスタンブロットによって定量し、56の「最高発現型」を、互いに比較したそれらの発現レベルに基づいて1(高)から56(低)までランク付けした。これらの標準条件下、列3/表3の「最高発現型」中では、非常に高い発現型(ランク1)は成熟型のプロリル4−ヒドロキシラーゼのβ−サブユニットであり(CLN00517790);中程度発現型(ランク20)は成熟型の長鎖型のαIコラーゲンIX型であり(CLN00517648);最低の発現型(ランク56)はWFIKKN関連タンパク質(CLN00463474)であった。
【0136】
(実施例2)
哺乳動物細胞から高レベルで分泌されるリーダー配列含有タンパク質の同定
次のアッセイセットは、馴化培地から回収することができた量に基づいて(すなわち、「分泌」に基づいて)タンパク質を比較することを目指した。表1および表2の実施例1で用いたcDNAをpTT哺乳動物発現ベクターの修飾バージョンにサブクローニングして、哺乳動物細胞において、そのタンパク質をそれらの内因性のシグナルペプチド/リーダー配列で発現させた。馴化培地に存在する生成タンパク質のレベルを定量した後に、今度は「高分泌型」から「中程度分泌型」に、さらに「低分泌型」にタンパク質をランク付けした。
【0137】
後に、この情報は、そのシグナル配列/リーダー配列をリエンジニアリングすることによってタンパク質の分泌を改善することができるかどうかを判断するためのベースラインの役目を果たした。この「リエンジニアリング」は、「低分泌型」タンパク質の内因性シグナルペプチドを、「中程度」または「高分泌型」のそれで置換することによって実施された。
【0138】
上記のリエンジニアリングを進めるために、本発明の各タンパク質のシグナルペプチド/リーダー配列に対応するアミノ酸配列をまず特定する必要があった(付録A、表1および2)。定義済みの属性セットに基づき、既存のライブラリーからのcDNAは、分泌性タンパク質をコードするとバイオイニフォマティクスにより予測することができる。例え
ば、シグナルペプチドは一般にORFの最初の6〜27のアミノ酸コドン(18〜81ヌクレオチド)によってコードされ、それは通常1〜4の極性アミノ酸から開始し、その後一続きの疎水性アミノ酸が、次に、分泌関連の切断が起こる部位の直前に荷電アミノ酸の短い領域が続く。他の物理学的性質とともにこれらの属性を使って、cDNAは分泌性タンパク質をコードすると予測することができるが、タンパク質の識別情報は不明のままである。完全なcDNAライブラリーで実行されたそのような分析の1つの結果を、付録Aと表1および2で要約する。現在の限界は依然、推定上のシグナルペプチド/リーダー配列の存在が、前記リーダー配列を含むタンパク質のin vitroまたはin vivoでの分泌を可能にするかどうか、および、この方法の効率はどの程度であるかを予測することができないことである。
【0139】
リーダー配列のハイスループットスクリーニングのための発現ベクターの調製
高レベルのタンパク質分泌を生成するシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を特定するために、分泌性タンパク質をコードすると予測された(手持ちのcDNAライブラリーおよび上述の方法を用いて)cDNAセットを、実施例1で詳述したものと類似したサブクローニング手法を用いてpTT5発現ベクター(図3)のいくつかの修飾バージョンの1つにサブクローニングした。修飾ベクターのいくつかは、切断可能なタグ(ベクターAおよびC、図4および5)をC末端V5およびHisX8エピトープタグとインフレームで(ベクターA、BおよびC、図4および5)、またはFcドメイン配列とインフレームで含んでいた(ベクターDおよびE、図6)。HisX8タグ(8His残基の群からなる)の存在は、当分野の技術者に周知であり、市販されている(例えばQiagen社、CA)標準のニッケルカラムベースの技術を用いることによる、組換えで発現するタンパク質の精製を可能にする。安定したトランスフェクタントのために長期の選択が必要な場合、タンパク質は図7に示すpTT2pベクターなどのベクターでも発現させた。
【0140】
pTT5へ挿入した各cDNAクローンのためのプラスミドDNAは、96ウェルプレートでQIAGEN(商標)TURBO(商標)DNAシステムを使って精製した。各クローンのDNA濃度は260nmでの吸光度で測定して、その後、例えば適当な緩衝液で50μg/mlの濃度に調節した。生じたpTT5ベースの構築体をハイスループット96ウェルシステムを使って293T細胞(ATCC(登録商標)、VA)に一過性にトランスフェクトした後、発現/分泌アッセイを行った。これらの工程は、次に記載する。
【0141】
96ウェルプレートでのハイスループットトランスフェクション
10の96ウェルプレートの一過性のトランスフェクションのために、各cDNAプラスミドの10μlを50μlのGIBCO(登録商標)OPTI−MEM I(商標)(GIBCO、Gaithersburg、MD、カタログ番号319−85−070)と丸底96ウェルポリスチレンプレートの別々のウェル(各cDNAのために1つ)内で組み合わせた。このプレートを、「マスタートランスフェクションプレート」と命名した。その後、各OPTI−MEM I(商標)/cDNA混合物の37.5μlを、2.5μlのFUGENE(商標)6トランスフェクション試薬(Roche Applied Science、Palo Alto、CA、カタログ番号1988387)と別の丸底96ウェルポリスチレンプレートの別々のウェル(各cDNAのために1つ)内で5分間プレインキュベートした。次に混合物を室温で約30分間インキュベートして、cDNAにつき1つの「トランスフェクション複合体」を得た。
【0142】
各トランスフェクション複合体はその後100μlのOPTI−MEM I(商標)を加えて希釈し、反復ピペット操作によって数回混合し、次に、一度に20μlを10の別々のウェルに移した。トランスフェクションの後の最高10の異なるアッセイのための試料収集を促進するために、各ウェルは、別々の96ウェル平底ポリリジンコートプレート(Becton Dickinson、Rockville、MD、カタログ番号356
461)上にあった。各プレートは、最大で96の異なるcDNAを含んでいた。
【0143】
次に、DMEM培地(10%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む)中の293T細胞の2×10細胞/mlの懸濁液の200マイクロリットルを、各ウェルに加えた。細胞および希釈したトランスフェクション複合体の各種混合物は、37℃、5%COでインキュベートした。約40時間後に、培地を吸引によってウェルから取り出し、細胞を150μlのPBSで短時間洗浄して、予熱処理をした新たな培地を加えた。
【0144】
各タンパク質の発現および分泌のレベルを分析する目的のために用いるトランスフェクション細胞のセットを調製するために、新鮮なHYQ−PF(商標)CHO Liquid Soy培地(Hyclone、Logan、UT、カタログ番号SH30359.02)の150μlを各ウェルに加えた。
【0145】
分泌されたタンパク質の活性を分析する目的のために用いるトランスフェクション細胞のセットを調製するために、HYQ−PF(商標)CHO Liquid Soyの代わりに5%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む新鮮な150μlのDMEM培地をウェルに加え、生じた混合物を37℃の5%COでインキュベートした。
【0146】
様々なcDNAがそれらの分泌性タンパク質をそれぞれ発現してさらに48時間後、10枚すべての96ウェルプレートからの培養液上清を収集し、適当な場合は単一の滅菌深底ウェルプレートに混ぜ入れて、滅菌蓋で覆った。深底ウェルプレートは、遊離細胞または細胞片をペレット化するために、1,400rpmで10分間遠心分離した。馴化培地に放出されたタンパク質(すなわち分泌されたタンパク質)のレベルを測定することができるように、上清を新しい滅菌深底ウェルプレートへ移した。このことは、抗V5−HRP抗体を用いたウェスタンブロット、および、捕捉工程として抗ペンタ−His抗体を使い、発現を検出して精製されたV5His標準と比較した発現レベルを測定するために抗V5−HRPを用いたサンドイッチELISAによって達成された。プレートに結合したままの細胞の層は、0.2%SDS、0.5%NP−40を含むPBSで可溶化した。生じた細胞溶解物は、ELISAによる細胞溶解物中のタンパク質レベルの分析のために用いた。
【0147】
スクリーニングアッセイの最初のセットにおいて、それらが属するタンパク質の高い分泌レベルと相関することが示されたリーダー配列のサブセットが同定された。直前に記載した工程に従って実施したハイスループット分泌アッセイの結果は、図8および9に示す。293T細胞におけるcDNAのハイスループット発現を使って、高い分泌レベルをもたらすいくつかのcDNAを同定した。合計56のcDNA(以前、分泌性タンパク質のための我々の完全なcDNAライブラリーの中で最高発現型と評価された)を、このアッセイでスクリーニングした。それらの同一性、各レーンにおけるそれぞれの位置、および馴化培地における相対発現レベルは、表3、カラム2および4ですべて要約する。カラム2は、隣接したレーンに分離された1つまたは複数の標準の濃度と比較して、馴化培地に分泌された各タンパク質の濃度を定量した(図8および9のBSA)。一般的に、分泌レベルは発現レベルと常にではないが相関する(カラム2とカラム2とを比較する)。例えば、「最高発現型」(カラム3で1番にランクされる)は、表3によると「最高分泌型」(分泌タンパク質濃度32μg/mL)でもある。これらの結果は、完全長タンパク質ベータサブユニットプロリル4−ヒドロキシラーゼ(カラム11)に対応する。他方、いくつかのタンパク質は約4μg/mLのレベル(カラム2)で分泌されたが、発現では16および21の間にランクされた(カラム3)。αIコラーゲン型IXのロング形態(CLN00517648によってコードされる)は、後者の1つである。
【0148】
(実施例3)
高分泌型からのリーダー配列セットは、低分泌型から高分泌型への変換に役立つ
実施例2で詳述したハイスループットアッセイは、「低分泌型タンパク質」から「高分泌型タンパク質」までの異なる分泌レベルを有する「最高発現型」タンパク質からの一群のcDNAを提供した。それらの同一性および特性については、表1、2および3を参照。次の問題は、高分泌型のシグナルペプチド/リーダー配列が他のタンパク質に移動可能かどうかということであった。より重要なことは、「低分泌型タンパク質」の分泌が、それらの内因性リーダー配列を本発明の「高分泌型タンパク質」のいずれか1つからのもので置換することによって改善することができるかどうかという疑問であった。このために、基本的に実施例1および2で詳述したような標準のサブクローニング手法、トランスフェクション方法および発現方法を使って、一連の実験を実施した。これらの実験の1つを次に例示する。
【0149】
ハイスループット発現およびハイスループット分泌アッセイの初期セットにおいて、低発現タンパク質、低分泌タンパク質またはその両方であることが示された一群のタンパク質のシグナルペプチド/リーダー配列を置換するために、CLN00517648からのシグナルペプチド/リーダー配列を用いた。それら自身の内因性リーダー配列の代わりに高分泌型クローンCLN00517648の異種リーダー配列を有する、得られたリエンジニアリングによるcDNAによってコードされるタンパク質は、さもなければ低発現型/低分泌型タンパク質であったものから高分泌型タンパク質に変わったことがわかった。実際、CLN00517648のシグナルペプチド/リーダー配列は、I型TMタンパク質およびII型タンパク質の分泌を増強することができる。その分泌がこの過程によって改善されたタンパク質のいくつかの特定の例には、以下のタンパク質をコードするcDNA構築体が含まれる。ヒトCD30リガンド、SCDFR1、Ox40リガンドであり、そのすべてが、実施例1および2で記載されている方法によってそれらの内因性シグナルペプチド/リーダー配列がCLN00517648の配列で置換されるように操作された。さらに、修飾されたタンパク質の総発現レベルも、この置換によって増加した。これはどちらも、細胞溶解物および馴化培地における総タンパク質レベルの両方の定量によって決定された。したがって、CLN00517648からのシグナルペプチド/リーダー配列は、低発現型タンパク質の発現および分泌をどちらも増強することができる。
【0150】
それらの内因性リーダー配列を、CLN00517648または「最高発現型」(表3、カラム3を参照)のリストから選択された他のタンパク質の配列(異種リーダー配列)で置換することによる、低分泌型および/または低発現型の分泌および/または発現のレベルの改善を示す上記のハイスループット結果は、実施例4に記載のスケールアップ方法を使用してさらに確認された。
【0151】
(実施例4)
293−6E細胞におけるリーダー配列含有タンパク質の発現のためのスケールアップ方法
96ウェルハイスループットトランスフェクション−発現アッセイの代替手段は、トランスフェクションおよび発現の両方が、より大規模のプロトコルで行われるものである。これらは、例えば、96ウェルプレートではなく振とうフラスコ中で増殖した、Y. Durocherによって提供される293−6E細胞を使用し得る。ハイスループット方法のために、Fugene 6の代わりに振とうフラスコ中でのDNAトランスフェクションのためにPEIを使用する以外は、293−6E細胞を、293T細胞に使用するものと同じ試薬で処理し、同じ条件に供することができる。
【0152】
スケールアップ方法のために、293−6E細胞を、ベントスクリューキャップ付きポリカーボネート製エルレンマイヤーフラスコ中で増殖させ、5%CO中37℃、FREESTYLE(商標)培地(INVITROGEN(登録商標)、カリフォルニア州カー
ルズバッド)中100RPMで、卓上用シェイカーで回転させた。これらのフラスコ中の細胞密度を0.5〜3×10細胞/mlの範囲に維持した。典型的には、50mlの培養物を250mlのフラスコ中で増殖させた。トランスフェクションの前日に、293−6E細胞を、約0.6×10細胞/mlの細胞密度まで、新鮮なFREESTYLE(商標)培地中に希釈した。トランスフェクションの日に、細胞は、0.8〜1.5×10細胞/mlの細胞密度範囲によって特徴付けられる対数期にあると予想された。対数期の細胞培養物の体積を、それらの細胞密度が約10細胞/mlになるように調節した。
【0153】
各cDNAについて、異なるトランスフェクションミックスを調製した。各トランスフェクションミックスを調製するために、2.5mlの無菌PBSを、2つの15mlチューブに加えた。第1チューブはまた、50μgのDNAを含んだ。第2チューブはまた、直鎖状25kDaポリエチレンイミンの1mg/mlの無菌ストック溶液、pH7.0(Polysciences製、ウィスコンシン州ウォリントン)を含む100μlのPEI溶液を含んだ。次いで2つのチューブ中の溶液を組み合わせ、室温で15分間、ともにインキュベートし、トランスフェクション複合体を生じた。次いでトランスフェクション複合体を293−6E浮遊培養物に移し、5%CO中37℃で4〜6日間増殖させた。この方法を各cDNAについて繰り返した。
【0154】
タンパク質分泌レベルを測定するために、ウェスタンブロットによって培養物上清を解析した。試料(cDNAにつき15μl)を、26レーンのCRITERION(商標)ゲル(Bio−Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)でのSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に移した。膜をブロックし、クローニング工程で導入された特異的エピトープに対する抗体でプローブした。例えば、V5および/またはHisX8エピトープタグ付きタンパク質には、HRP(INVITROGEN(登録商標)、カリフォルニア州カールズバッド)に複合した抗V5または抗HisX8エピトープ抗体のいずれかを使用した。標準的なHRP化学発光基質(ECL Detection Kit、Amersham)を用いてHRPシグナルを発生させた。
【0155】
各分泌タンパク質について得られたシグナルの強度を、同じゲルの別々のレーンにローディングした3つの精製された質量標準液のうちの1つのもの(例えば、8、33、および133ng/mlで15μlの標準液)と比較することによって、分泌レベルを測定した。比較は、クーマシー染色ゲル、銀染色ゲル、またはウェスタンブロットのいずれかに存在するバンドの面積を測定することを含んだ。この方法は、画像スキャナ、およびScion CorporationウェブサイトからダウンロードできるNIHイメージフリーウェアで行った。様々なタンパク質標準液を使用した。例としては、V5−HisX6タグ付きのδ様タンパク質1細胞外タンパク質、V5−HisX6タグ付きのCSF−1受容体細胞外ドメイン、および/またはV5−HisX6タグを含むPOSITOPE(商標)(INVITROGEN(登録商標)、カリフォルニア州カールズバッド、カタログ番号R900−50)が挙げられる。例えばバキュロウイルス発現系を用いてこれらの標準液を別々に発現させ、90%より高い純度に精製することができる。
【0156】
図2は、20個のクローンのcDNA(V5H8エピトープを含む)をpTT5ベクターにサブクローニングした、大規模発現実験の結果を例示する(図5)。本明細書中に記載される方法を用いて、得られたクローンを293T細胞にトランスフェクトした。馴化培地中の15μlの試料中の分泌タンパク質のレベルを、ウェスタンブロットによって評価した。各標準液において2つのV5 His標準液を混合し、以下の濃度に従って、右端のレーンにローディングした。(1)16、66および266ng/mlでローディングした、高い方の分子量の、V5−Hisx5タグ付きのδ様タンパク質1細胞外タンパク質、ならびに(2)8、33、および133ng/mlでローディングした、低い方の分子量の、V5−Hisx6タグ付きのCSF−1細胞外ドメイン。抗V5抗体(Inv
itrogen、カリフォルニア州)をウェスタンブロットのために使用した。このウェスタンブロット実験から、CLN00717648によってコードされるタンパク質を発現するクローンが、馴化培地中で最高レベルの分泌タンパク質を産生した。これらの結果は、293−6E細胞における大規模発現によって確認された。
【0157】
(実施例5)
本発明のシグナルペプチド/リーダー配列の、それらが異種タンパク質の分泌および/または発現を増強できるかどうかに基づく分類
実施例1〜4で述べた実験を組み合わせた結果から、本発明のリーダー配列の、異種リーダー配列としてのそれらの役割における、それらが挿入されたタンパク質の分泌および/または発現を改善する能力に従った分類が示唆される。したがって、リーダー配列は、「高分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー」、「中程度分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー」、または「低分泌型シグナルペプチド/分泌リーダー配列」等の種類に分類される。
【0158】
分泌レベルおよび本発明の異種ポリペプチドによって引き起こされた分泌の増大は、得られたポリペプチドの発現レベルと別々であり、異なっているので、得られたポリペプチドはまた、互いに関して本発明のタンパク質をすべて(表1〜3および付表A)ランク付けするように働く相対的な段階に関して、それらの発現レベルに基づいてランク付けした。これらのランク付けは、コムギ胚芽エキス、または哺乳動物細胞のいずれかにおける、発現および分泌レベルについて行った(実施例1〜3参照)。
【0159】
さらに、上記の分類はin vitroアッセイを用いることから得られた結果に基づくが、分類は、本発明のタンパク質をin vivoで発現させながら得ることができる結果まで広がり得る。実施例1ですでに述べたように、本発明のシグナルペプチド/リーダー配列は、それらが結合している異種タンパク質のin vivoでの発現を改善するのに使用できるかどうかについてアッセイすることができる。例えば、本質的に実施例1および2に記載されるようなクローニング方法を用いて、表2に記載されるリーダー配列のいずれかを、適切に作用するように異種タンパク質に作動可能に連結することができる。次いで、得られたcDNA構築体を、胚性幹(ES)細胞(例えば、マウスまたはブタES細胞)にエレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションすることができ、次いでそれを、当業者に公知の標準的な方法に従って、トランスジェニック動物(例えばマウスまたはブタ)の作製に使用する。タンパク質、およびcDNA構築体の他の特性(例えば、組換えタンパク質の発現を駆動するのに使用する特定のプロモーター)に依存して、分泌組換えタンパク質を、例えば血液、乳汁、唾液等の体液からアッセイすることができ、その発現レベルを定量することができる。アッセイは、シグナルペプチドによってのみ異なる2つの組換えタンパク質が発現されるように行うことができる(すなわち、内因性のシグナルペプチドと本発明の異種のシグナルペプチドとを比較する)。
【0160】
本発明のシグナルペプチド/リーダー配列は、in vitroでのタンパク質発現に使用する代わりにin vivoでのタンパク質発現に使用する場合には同一の範疇に分類されない可能性がある。しかし、本明細書に記載のin vitroでのアッセイから得られた結果は、in vitroおよびin vivoの両方で所望のレベルのタンパク質発現を達成するためにどの特定のシグナルペプチド/リーダー配列を使用することができるかを選択するための指針として役立つに違いない。
【0161】
本明細書は、以下の参考文献に照らして最も徹底的に理解され、これはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、上記で引用した特許および他の参考文献の開示も参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
【数1−1】

【0163】
【数1−2】

【0164】
【数1−3】

【0165】
【数1−4】

配列表
出願人らは、付表Aとして電子フォーマットおよびペーパーフォーマットの両方で用意した配列表を添付する。
【0166】
産業上の利用可能性
リーダー配列、異種の分泌ポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、およびこれらを作製する方法により、多くの研究、診断、および治療用途における使用法が発見される。
【0167】
【表1−1】

【0168】
【表1−2】

【0169】
【表1−3】

【0170】
【表1−4】

【0171】
【表1−5】

【0172】
【表1−6】

【0173】
【表2−1】

【0174】
【表2−2】

【0175】
【表2−3】

【0176】
【表2−4】

【0177】
【表2−5】

【0178】
【表2−6】

【0179】
【表3−1】

【0180】
【表3−2】

【0181】
【表3−3】

【0182】
【表3−4】

【0183】
【数2−1】

【0184】
【数2−2】

【0185】
【数2−3】

【0186】
【数2−4】

【0187】
【数2−5】

【0188】
【数2−6】

【0189】
【数2−7】

【0190】
【数2−8】

【0191】
【数2−9】

【0192】
【数2−10】

【0193】
【数2−11】

【0194】
【数2−12】

【0195】
【数2−13】

【0196】
【数2−14】

【0197】
【数2−15】

【0198】
【数2−16】

【0199】
【数2−17】

【0200】
【数2−18】

【0201】
【数2−19】

【0202】
【数2−20】

【0203】
【数2−21】

【0204】
【数2−22】

【0205】
【数2−23】

【0206】
【数2−24】

【0207】
【数2−25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−131268(P2009−131268A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9381(P2009−9381)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【分割の表示】特願2007−553266(P2007−553266)の分割
【原出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(507150079)ファイブ プライム セラピューティクス, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】