説明

ポリペプチドを単離するための方法

本発明は、ポリペプチド含有サンプルから少なくとも1つのポリペプチドを単離および/または精製するための方法に関連し、上記方法は、炭化ホウ素支持材料への、上記ポリペプチドの結合を可能にするpHにおいて、上記サンプルが上記炭化ホウ素支持材料に接触されることを特徴とする。上記の単離は、例えば、サンプルからポリペプチドを除去するため、そうでなければ、ポリペプチドを精製および/または濃縮するために用いられ得る。ポリペプチドの精製のための炭化ホウ素支持材料を含むマトリックスが、本発明によりさらに開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ホウ素支持材料を用いることによって、ポリペプチドを精製するための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
不均一な混合物からのタンパク質の精製は、しばしば、精製されるタンパク質の物理的特性、化学的特性、および電気的特性を用いる、複数工程の処理である。
【0003】
精製と直接的に関連するタンパク質の重要な特徴は、溶解性、電荷、大きさ、および特異的結合能力である。したがって、タンパク質の単離および浄化は、それら生体分子の様々な化学的特性および物理的特性のため、特別な挑戦である。さらに、タンパク質が単離される材料、および単離されたタンパク質のその後の適用もまた、多様である。したがって、タンパク質を精製および単離するための既存の技術を、拡張することが必要である。
【0004】
ポリペプチド/タンパク質を単離するための確立された原理は、固相抽出(SPE)である。分析物(ポリペプチド/タンパク質)は固体支持体に結合され、そして洗浄後に溶出させる。既存のSPEシステムの不都合な点は、強酸性条件下(例えば、pH<1.5)での結合、およびアセトニトリル(ACN)などの有機溶媒を用いる溶出である。これらの条件は、タンパク質に対して変性効果を有し得、したがって、単離されたタンパク質の適用および分析の可能性を減じ得る。さらに、ACNは、危険物に分類される溶媒であり、その後の多くの分析技術のために除去されなくてはならない溶媒でもある。
【0005】
確立されたSPE製品(これは、例えば、C18材料などの逆相化学に基づいている)に加えて、炭化ケイ素セラミック基盤に基づいたSPEシステムもまた存在する(例えば、特許文献1を参照のこと)。この固相へのタンパク質の結合は、同様に、酸性化(すなわち、タンパク質のプロトン化)によって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/044043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、サンプルからポリペプチドを単離するため、より具体的には精製および/または除去するための、適切な方法さらに適切な固相を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、ポリペプチド含有サンプルから少なくとも1つのポリペプチドを単離および/または精製するための方法が提供され、上記方法は、炭化ホウ素支持材料への上記ポリペプチドの結合を可能にするpHにおいて、上記ポリペプチド含有サンプルが上記炭化ホウ素支持材料に接触されることを特徴とする。
【0009】
驚くべきことに、炭化ホウ素は、特に良いポリペプチド結合特性を有することが見出された。したがって、実施例において示しているように、ペプチドおよびタンパク質の両方が結合し得;さらに、リン酸化されたペプチドもまた、効率的に結合し得、したがって単離、精製、および/または濃縮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(図1aおよび1b)種々の潜在的支持材料(窒化ケイ素(α)、窒化ケイ素(β)、窒化ホウ素、および炭化ホウ素)のポリペプチド結合能力を示す。ゲル電気泳動の結果を示す。12%のLaemmliポリアクリルアミドゲルを用い;染色をCoomassie Brilliant Blueを用いて行った。図1bにおいて特に示されるように、炭化ホウ素のみが効率的にポリペプチドに結合し、したがってポリペプチド含有サンプルからポリペプチドを除去し、そして溶出に際し、再びそのポリペプチドを放出することができる。FT:フロースルーE:溶出物
【図2】(図2)炭化ホウ素支持材料による精製挙動へのカラム形状の影響を示す。炭化ホウ素カラムの長さが幅の約5倍の長さであるようなカラムの形状が達成されている、インレーを伴なう試験カラムは、インレーを伴なわないカラムよりも、明らかに良い結合結果および溶出結果を達成することが可能であった。FT:フロースルーE:溶出物
【図3】(図3)好都合な実施形態におけるカラムの形状を示す。炭化ホウ素支持材料がより容易にインレー(3)中に導入され得るように、好ましくは、カラム本体の外周(1)が、漏斗形に先細りになっている(2)ことを特色とする。約50〜60mgの炭化ホウ素が、示されている実施形態中に収まる。この炭化ホウ素は、密集した形態にするため、およびそれによって圧縮するために、スピンされる。
【図4】(図4aおよび4b)血漿および尿サンプル由来のタンパク質の、炭化ホウ素支持材料への結合結果を示す。ゲル電気泳動の結果を示す。図aは、血漿由来のポリペプチドの精製における、Coomassie染色の結果を示す。図bは、尿サンプル由来のポリペプチドの精製の結果を、銀染色を用いて示す。銀染色は、Coomassieで染色したゲルと比較して、高い感度を有する。M:マーカーP:血漿FT:フロースルーE:溶出物
【図5】(図5aおよび5b)図5aは、種々のサンプル由来の、リン酸化されたポリペプチド(100μg)の収率を示す。最初に、リン酸化されたタンパク質を、アフィニティーカラム(PhosphoProtein Purification Kit,QIAGEN)を用いて単離し、その後、その溶出物を濃縮した。炭化ホウ素を用いる本発明による方法を、先行技術(Nanosep)による方法と比較した。図5bは、ウェスタンブロットの結果を示す。レーン当たり、10μgのタンパク質を加えた。Nanosep限外濾過カラムで濃縮した、PhosphoProtein Purificationカラムの溶出物を、アウトプットに入れた。この実験を、二連で実行した。
【図6−1】(図6aおよび6b)本発明による方法を用いた、(ここでは、β−ガラクトシダーゼの)ペプチド単離の結果を示す。図6aは、炭化ホウ素カラムの溶出物における、MALDI−TOF−MSの結果を示す。図bは、上記カラムのフロースルー中に存在するペプチドを示す(有意な量ではない)。
【図6−2】(図6aおよび6b)本発明による方法を用いた、(ここでは、β−ガラクトシダーゼの)ペプチド単離の結果を示す。図6aは、炭化ホウ素カラムの溶出物における、MALDI−TOF−MSの結果を示す。図bは、上記カラムのフロースルー中に存在するペプチドを示す(有意な量ではない)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による方法は、サンプルからポリペプチドを除去するために使用され得る。ポリペプチドの標的化された除去は、例えば、ポリペプチド不純物の干渉を伴なわずに、他の生体分子(例えば、核酸など)またはより小さい有機分子(例えば、薬剤もしくは代謝産物など)をより容易に分析または調査することを可能にするため、好都合であり得る。したがって、少なくとも1つのポリペプチドを単離するための本発明による方法はまた、ポリペプチドがサンプルから除去される実施形態を含む。サンプルから除去されるポリペプチドは、炭化ホウ素支持材料に結合し、そのため、そのフロースルー(炭化ホウ素カラムを使用する場合)またはその上清(例えば、炭化ホウ素表面を有する磁気粒子を使用する場合)において、(仮にあるとしても)より少量で存在する。この場合において、所望のときは、上記ポリペプチドはまた、上記サンプルの他の画分とは別に、ポリペプチド画分をさらに処理(例えば、分析)するため、上記炭化ホウ素支持材料から溶出され得る。
【0012】
ポリペプチドを結合するための支持材料としての炭化ホウ素の使用は、本質的には、固相抽出(SPE)の方式に従って行う。ポリペプチドは、上記炭化ホウ素支持材料に、おそらくイオン的相互作用によって吸着する。
【0013】
好ましくは、ポリペプチドは、その結合するポリペプチドのpIより低いpHにおいて、上記炭化ホウ素支持材料と結合する。好ましくは、結合は、上記pIより少なくとも0.5pH単位低いpHにおいて起こる。単離されるポリペプチドの等電点(pI)は、例えば、ポリアクリルアミドゲルにおける等電点電気泳動などの、公知技術によって決定され得る。しかしながら、等電点はまた、例えば、アミノ酸組成の分析およびHenderson−Hasselbach方程式を用いる種々のpHにおけるイオン性基の電荷計算の分析などの予測技術によって、おおよそ計算され得る。
【0014】
好ましくは、結合は、酸性pHにおいて起こる。酸性pHにおいて、ことさら多くの様々なポリペプチドが、効率的に結合し得、したがって単離され得る。酸性の結合pHは、例えば、所望のpHまで酸性化するために、酸含有溶液または酸性緩衝液をポリペプチド含有サンプルに添加することによってセットされ得る。
【0015】
さらなる実施形態において、上記炭化ホウ素支持材料は、ポリペプチド含有サンプルと接触する前に酸性pHにおいて平衡化される。この平衡化を通じて、上記炭化ホウ素支持材料は、ポリペプチドとの結合のために最適であるように調製される。
【0016】
好ましくは、サンプル混合物中の結合pHは、≦6、≦5、≦4.5、≦4、またはさらに≦3.5である。しかしながら、上記pHは、ポリペプチドに対し変性効果を有し得る強すぎる酸性条件を避けるために、好ましくは1.5より高く、より好ましくは2.5より高い。
【0017】
適切な酸性条件は、ポリペプチド含有サンプル混合物における上記炭化ホウ素支持材料へのポリペプチドの結合中に好ましくはセットされ、さらに(平衡化が行われる場合)上記炭化ホウ素支持材料を平衡化するためにもセットされる。
【0018】
対照的に、上記炭化ホウ素支持材料に結合したポリペプチド(単数または複数)は、その溶出されるポリペプチドのpIより高いpHにおいて、好ましくは溶出される。好ましくは、上記pHは、上記等電点(pI)より1pH単位高い。
【0019】
好ましくは、溶出pHはアルカリ性であり、それは≧9、≧10、およびより好ましくは≧11である。pH≧11において、本発明による炭化ホウ素支持材料からの溶出における特に良い結果が達成された。
【0020】
説明されたように、pHをセットするため、酸含有溶液または塩基含有溶液が使用され得る。さらに、酸性緩衝液または塩基性緩衝液はまた、溶液として使用され得る。酸性緩衝液の例は、例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはグリシン緩衝液である。確立された塩基性緩衝液は、例えば、トリス緩衝液、ビシン(bicine)緩衝液、TAPS緩衝液、またはトリシン緩衝液である。
【0021】
用語「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸のポリマーをいう。用語「ポリペプチド」は、タンパク質(50アミノ酸を超える長さを有する)、さらにペプチド(2〜49アミノ酸の長さを有する)を含む、任意の長さのポリペプチドを含む。本発明によると、1つまたは複数のポリペプチドが、サンプルから単離、精製、濃縮および/または除去され得る。
【0022】
ポリペプチドが単離されるサンプルは、任意の種類であり得る。例えば、ポリペプチド含有溶液、体液(血漿、尿、精液、涙、唾液、および脳脊髄液など)が挙げられ得る。さらにポリペプチドはまた、細胞含有サンプル(例えば、細胞溶解物またはポリペプチド含有培地など)から単離され得る。特に問題となるのは、希釈されたサンプルおよび特に塩を含むサンプル(例えば、尿など)からのポリペプチドの単離である。そのような溶液/サンプルについて、本発明による方法は、特に良い結果をもたらしている。
【0023】
ポリペプチド含有サンプルからポリペプチドを単離するための本発明による方法に加えて、炭化ホウ素を含むことを特徴とする、ポリペプチドを結合するためのマトリックスがさらに提供される。上記マトリックスは、究極的には、種々の形態(例えば、カラム、膜、ビーズ(より具体的には、磁気ビーズ)として、そしてまたチップ表面として)で存在し得る。究極的に重要なことは、上記マトリックスが、ポリペプチドの結合のために上記サンプルから接近可能である炭化ホウ素含有表面または吸着表面を含むということである。
【0024】
本発明によるマトリックスは、例えば、カラム本体の形態において存在し得る。好ましくは、上記カラム本体は、上記炭化ホウ素支持材料を収容するためのインレーを含む。そのようなカラム本体の形状はまた、サンプルからのポリペプチド結合の効率にとって重要であり得ることが、明白になっている。これは、上記サンプルが多様性を含む場合は、ことさらであり、様々なポリペプチドを含む場合も、ことさらである。そのような場合、サンプルからポリペプチドを完全に除去するためには、上記炭化ホウ素支持材料への、ポリペプチドの非常に効率的な結合が必要である。ここで、上記炭化ホウ素支持材料の断面を可能な限り狭くすること、ならびにサンプルの上記炭化ホウ素支持材料との接触経路を可能な限り長くすることが特に好都合であることが、明白になっている。この理由から、上記カラム本体は、好ましくは、幅よりも長さが明らかに長い。上記カラムのインレー(これは、上記炭化ホウ素支持材料を収容する)は、長さが少なくとも幅の2倍の長さ、好ましくは、3、4、5、または少なくとも6倍の長さである。この構造のため、サンプルは、上記炭化ホウ素支持材料の通過に際し、長距離にわたって、上記支持材料とできる限り長い間接触を保ち、これによって、ポリペプチドが非常に効率的に結合する。実施例が証明しているように、対応するカラムの形状は、明らかに改善された結果を導く。より多くのポリペプチドがサンプルから結合するにつれて、より少ないポリペプチドがそのフロースルー中に見出される。
【0025】
本発明は、カラム本体を製造するための方法をさらに提供し、この方法は、上に記載された形状のインレーを有するカラム本体が、炭化ホウ素支持材料で充填されることを特徴とする。充填は、例えば、乾燥炭化ホウ素粉末を上記インレー中に導入することによって達成され得る。プランジャーを用いることによって、上記炭化ホウ素支持材料は、高密度に詰められ得る。
【0026】
本発明は、上に記載された、ポリペプチドを結合するための炭化ホウ素支持材料またはマトリックスの使用をさらに提供する。
【0027】
ポリペプチド含有サンプルからポリペプチドを単離するためのキットがさらに提供され、このキットは、炭化ホウ素含有マトリックスを含むことを特徴とする。上記炭化ホウ素含有マトリックスについての詳細は、上で詳細に記載している;本発明者は、自身の上記の説明を引用する。
【0028】
本発明によるキットは、以下の構成要素、
−酸性結合緩衝液および/または平衡化緩衝液
−好ましくはアルカリ性の溶出緩衝液
の1つまたは複数をさらに含み得る。
【0029】
本発明による方法は、例えば、上に記載された結合pHにおいて、ポリペプチド含有サンプル(必要な場合、溶解によって開始される)と、上記炭化ホウ素支持材料とのスラリーを作製することによって実行され得る。上記炭化ホウ素は、例えば、ポリペプチドが結合した後、上記混合物から除去され得る。または、結合していない構成要素は、遠心分離によって除去され得る。溶出は、例えば、適切な溶出溶液を用いて、上記炭化ホウ素のスラリーを産生することによって達成され得る。溶出緩衝液もまた、使用され得る。適切な溶出条件は、上で詳細に記載している。
【0030】
または、上記炭化ホウ素は、カラム本体中に導入され得、そして所望の結合pHにセットまたは平衡化され得る。所望の結合pHにセットされたポリペプチド含有サンプルは、慣習的な方法で、上記カラム全体にわたって添加される。ポリペプチド結合の後、所望の溶出溶液を用いて、または所望の溶出pHにおいて、溶出が実施される。
【0031】
さらなる実施形態において、好ましくは所望の結合pHに平衡化された上記炭化ホウ素は、スピンカラムに添加され得る。ポリペプチド含有サンプル(これは、所望の連結pHにセットされている)を、上記炭化ホウ素支持材料の表面に添加する。上記カラムは、水相を分離するためにスピンされる;上記水相は捨てられる。上記炭化ホウ素支持材料に結合したタンパク質は洗浄され、そして所望のpHにおいて溶出される。これは、その溶出pHにセットするために所望の溶出溶液を添加することと、その後の、単離されるタンパク質を含む水相を溶出するためのスピン工程によって達成される。
【0032】
炭化ホウ素は遠心力に十分耐えるため、スピンカラムの使用は、本発明による上記炭化ホウ素支持材料の使用において問題にはならない。
【実施例】
【0033】
(実施例)
本発明を、ここで、例示的な実施例によって解説する。これらの実施例は、単に、本発明をより詳細に説明するために役立つのであり;本発明を制限しない。
【0034】
(実施例1:本発明による方法を実行するためのプロトコル)
異なる明記がなされない限り、60mgの炭化ホウ素または他のセラミックを秤量し、スピンカラム中に詰めた。このカラムを、50mMのグリシン(pH3.5)で平衡化した。タンパク質溶液を、1Mのグリシン(pH1.5)でpH3.5に調整し、上記スピンカラムに添加した。その後、30分間混合することによってインキュベーションするか、または、インレーを用いる場合は直接スピンした。
【0035】
結合したポリペプチドを、50mMのグリシン(pH3.5)で洗浄した。溶出は、10mMのトリス(pH12)で行った。
【0036】
(実施例2:他のセラミックとの比較における炭化ホウ素)
4つの異なるセラミック(窒化ケイ素(α)、窒化ケイ素(β)、窒化ホウ素、および炭化ホウ素)を、それらのポリペプチド結合能力について調査した。血漿を、ポリペプチド含有サンプルとして使用し;手順は、実施例1のプロトコルに従った。炭化ホウ素のみが、良好な溶出を伴なう、血漿タンパク質の結合を示す。
【0037】
図1は、この結果を示す。
【0038】
(実施例3:(粉末が圧縮された)カラム本体の形状の影響)
この試験中、カラムの形状を変化させること(カラムの内径を低減すること)は、回収率の改善、およびそれによるタンパク質収率の改善の達成を可能にしたことを観察した(図2を参照のこと)。カラム内径の低減を実行するため、既存のカラム本体(DyeExスピンカラム)中に導入する、小さなプラスチックチューブを設計した(図3)。セラミック粉末を、この小さな内側のチューブ中に詰め、そして圧縮した。結果、この細長いカラム本体の、全体の/拡張した距離にわたってサンプルが通り、これにより、ポリペプチドの結合が明らかに改善する。
【0039】
(実施例4:種々の、ポリペプチド含有サンプル材料の使用)
本発明による方法を用いた、図4に示される適用は、タンパク質を、様々なポリペプチド含有サンプルから確実に単離し得ることを証明する。A)において、希釈した血漿を用い、;B)において、1mlの尿を用いた。
【0040】
(実施例5:リン酸化されたタンパク質の単離)
PhosphoProteinPurification Kit(QIAGEN)による、リン酸化されたタンパク質の単離後、いずれの場合においても、その溶出物の100μgを、(約60mgの粉末を有する)炭化ホウ素カラムの全域に結合させ、そして溶出させた。この収率は約60〜80%であった。これとの比較において、上記タンパク質溶液を、確立された限外濾過カラムで濃縮した。この回収率は<60%である(図5A)。
【0041】
ウェスタンブロット実験(図5B)において、上記リン酸化されたタンパク質の同一性を確認した。抗ホスホチロシン抗体(4G10)を用いた。
【0042】
ここでの場合において、ホスホタンパク質の精製における、上記方法の個々の効率を示すため、PhosphoKitを事前に用いた。類似の効率を、混合サンプル(リン酸化されたおよびリン酸化されていないタンパク質またはペプチド)からの精製においても達成している。
【0043】
(実施例6:ペプチドの単離)
本発明による方法を、ペプチドを単離するためにも使用し得るか否かを調べるため、ペプチド混合物(β−ガラクトシダーゼのトリプシン断片)を調査分析した。MALDI−TOF−MSによって、1つのペプチドを除いて、上記混合物の全てのペプチドを結合および溶出できたことを示すことができた。そのフロースルーにおいて、有意な量のペプチドを検出することはできなかった。したがって、この方法はまた、サンプルからより小さなペプチドを単離するために、極めて高度に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド含有サンプルから少なくとも1つのポリペプチドを単離および/または精製するための方法であって、該方法は、炭化ホウ素支持材料への該ポリペプチドの結合を可能にするpHにおいて、該サンプルが該炭化ホウ素支持材料に接触されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、前記サンプルから該ポリペプチドを除去するために単離されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、前記炭化ホウ素支持材料から溶出されることを特徴とする、請求項1または2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
結合する前記ポリペプチドのpIより低いpHにおいて、結合が起こることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
酸性pHにおいて結合が起こることを特徴とする、請求項1から4の1項または複数項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化ホウ素支持材料が、酸性pHにおいて平衡化されることを特徴とする、請求項1から5の1項または複数項に記載の方法。
【請求項7】
前記pHが、≦6、≦5、≦4.5、≦4または≦3.5であることを特徴とする、請求項5または6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、溶出される該ポリペプチドのpIより高いpHにおいて溶出されることを特徴とする、請求項1から7の1項または複数項に記載の方法。
【請求項9】
前記pHが、≧9、≧10、または≧11であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、塩含有溶液、体液、血漿、尿、細胞溶解物、精液、涙、汗、唾液、および脳脊髄液からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から9の1項または複数項に記載の方法。
【請求項11】
炭化ホウ素を含むことを特徴とする、ポリペプチドを結合するためのマトリックス。
【請求項12】
前記マトリックスがカラム本体であり、ここで、該カラム本体は、前記炭化ホウ素支持材料を収容するためのインレーを特徴とし、ここで、該カラム本体の該インレーは、長さが幅の少なくとも2倍の長さ、好ましくは、3倍、4倍、5倍、または6倍の長さであることを特徴とする、請求項11に記載のマトリックス。
【請求項13】
請求項12に記載のカラム本体に、炭化ホウ素支持材料が充填されることを特徴とする、請求項12に記載のカラム体を製造するため方法。
【請求項14】
ポリペプチドを結合するための、請求項11または12の何れかに記載の炭化ホウ素支持材料またはマトリックスの使用。
【請求項15】
請求項11または12の何れかに記載のマトリックスを含むことを特徴とする、ポリペプチドを精製および/または単離するためのキット。
【請求項16】
以下の構成要素、
−酸性結合緩衝液および/もしくは平衡化緩衝液、ならびに/または
−アルカリ性溶出緩衝液
の1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項15に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3a)】
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【図3b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公表番号】特表2011−521895(P2011−521895A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504356(P2011−504356)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002637
【国際公開番号】WO2009/127359
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(507214038)キアゲン ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】