ポリペプチドを含有する安定な緩衝化された製剤
本発明は、約4.0から約6.0のpHを有する緩衝液、プロリン及びポリペプチドの有効量を含む製剤を提供する。ポリペプチドは、抗体であり得る。本明細書は、製剤を調製する方法、製剤を含有するキット及び製剤を使用する方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年12月21日に出願された米国仮出願第60/876,801号(その開示の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本願は、全般的には、疾病を治療するための医薬、例えば、生物分子医薬又は生物医薬のための製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
組換えDNA技術の登場及び抗体作製における他の進歩とともに、癌から自己免疫疾患にわたる疾病の幅広い範囲を治療するために、タンパク質をベースとする治療薬は、医療従事者にとって利用可能な薬物のレパートリーに益々一般的な地位を占めるようになっている。疾病の治療において、生物分子、例えば、抗体又は組換えタンパク質を医薬として使用できるようになったことにより、四半世紀にわたって、医療看護及び生活の質が進歩を遂げた。2005年時点で、150を超える、タンパク質をベースとする承認を受けた医薬が市場に出回っており、この数は、今後劇的に上昇すると予想されている。
【0004】
現在、様々な医薬用途のために、インビボで様々な薬理学的作用を示すことが知られているタンパク質を大量に製造することができる。治療用タンパク質、例えば抗体の長期安定性は、安全で、一貫性があり、効果的な治療のために特に有益な基準である。調製物内の治療薬の機能の喪失は、ある投与に対するその有効濃度を減少させ得る。同様に、治療薬の望ましくない修飾は、調製物の活性及び/又は安全性に影響を与え得る。
【0005】
タンパク質は、一次、二次、三次構造を有し、幾つかの事例では四次構造を有する複雑な分子であり、これらの構造は全て、生物機能を付与する上で役割を果たし得る。タンパク質などの生物学的医薬の構造は複雑であるために、構造的及び機能的な不安定性並びに安全性の喪失をもたらし得る様々なプロセスに対して影響を受けやすい。これらの不安定性プロセス又は分解経路に関して、タンパク質は、溶液中で、様々な共有及び非共有反応又は修飾を受け得る。例えば、タンパク質分解経路は、一般に、(i)物理的分解経路及び(ii)化学的分解経路という2つの主要なカテゴリーに分類することができる。
【0006】
タンパク質薬は、不可逆的な凝集という物理的分解プロセスに対して感受性を有し得る。タンパク質凝集は、薬物の効力に影響を与え、患者中の免疫学的反応又は抗原性反応を惹起することもできる減弱した生物活性をしばしばもたらすので、生物医薬の製造において特に興味深い。例えば、化学的修飾による化学構造の分解を含むタンパク質治療薬の化学的分解は、生物医薬の免疫原性の可能性も増加させると推測されてきた。従って、安定なタンパク質製剤は、目的の薬物の物理的及び化学的な両分解経路を最小化させるはずである。
【0007】
タンパク質は、例えば、界面吸着及び凝集などの物理的プロセスを介して分解することができる。吸着は、タンパク質薬物の効力及び安定性に影響を与え得る。吸着は、低濃度剤形の効力の喪失を引き起こし得る。別の帰結は、界面での折り畳み解除によって媒介される吸着が、しばしば溶液中での不可逆的な凝集を開始させる工程であり得るということである。これに関して、タンパク質は、液体−固体、液体−気体及び液体−液体界面で吸着する傾向がある。疎水性表面でのタンパク質コアの十分な曝露は、撹拌、温度又はpHによって誘導されるストレスの結果、吸着をもたらし得る。さらに、タンパク質は、例えば、pH、イオン強度、熱的、剪断及び界面ストレスに対しても感受性を有し得、これらの全てが凝集を引き起こし、不安定性をもたらし得る。
【0008】
タンパク質は、様々な化学的修飾及び/又は分解反応、例えば、脱アミド化、異性化、加水分解、ジスルフィドスクランブリング、β脱離、酸化及び付加物の形成にも供され得る。分解の主な加水分解的機序には、ペプチド結合加水分解、アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化及びアスパラギン酸の異性化が含まれ得る。他の分解経路には、アルカリpH条件下で起こり、ある種のアミノ酸に対して、ラセミ化又は側鎖の一部の喪失をもたらし得るβ脱離反応が含まれ得る。メチオニン、システイン、ヒスチジン、チロシン及びトリプトファン残基の酸化も起こり得る。
【0009】
タンパク質の不安定性をもたらし得る様々な反応の数及び多様性の故に、製剤中の成分の組成がタンパク質分解の程度に対して影響を与えることができ、その結果、治療薬の安定性及び効力に対して影響を与え得る。生物医薬の形成は、投与の容易さ及び頻度並びに注射時に患者によって体験される痛みの大きさに対しても影響を与え得る。例えば、免疫原性反応は、タンパク質凝集物を原因とするのみならず、製剤中に含有される不活性成分と治療的タンパク質との混合された凝集物をも原因とする(Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1:457−62(2002);Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22:1997−2006(2005))。
【0010】
様々な条件下で、他の製剤と比較してより長期の安定性を保持する製剤は、生物医薬の有効で、安全な量を送達する効果的な手段を提供し得る。製剤中でのより長期の安定性の保持は、製造及び治療コストも低下させ得る。このような一貫して安定な製剤は、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質にとって有益であり得、これにより、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質は、より有効な臨床的結果を与えることができる。
【0011】
生物学的に活性なタンパク質を安定化させるための様々な製剤が、本分野に登場している。例えば、米国特許公開2006/0024346号は、生物学的に活性なタンパク質、多糖及びアミノ酸をベースとする化合物を含む水溶液について論述し、米国特許第6,171,586号Bは、抗体、酢酸塩緩衝液、界面活性剤及びポリオールを含むが、塩化ナトリウムの等張量を欠如する製剤について論述している。米国特許公開2005/0142139号は、CD4−IgG2キメラヘテロ四量体、ヒスチジン緩衝液、非イオン性界面活性剤及びアラニン、グリシン、プロリン又はグリシルグリシンを含み得るアミノ酸を含む医薬製剤について論述している。国際公開WO2005/063291A1号は、グルタミン酸塩緩衝液中に抗体を含む製剤について論述している。さらに、国際公開WO2005/44854号は、抗CD40抗体を含有する酢酸、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液の製剤について論述している。
【0012】
別の特許公開(2003/0138417号)では、コハク酸塩又はヒスチジン緩衝液の何れかの中に抗体の50mg/mL又はそれ以上を含む医薬製剤が提案された。しかしながら、何れの緩衝液を用いた研究の結果も、アミノ酸、グリシン、リジン、セリン、プロリン又はメチオニンが製剤中のタンパク質に対して安定化効果を持たないことを示唆した。
【0013】
本願は、様々な異なる製造及び保存条件下で生物医薬の増大した安定性を保持する新規製剤を提供する。本明細書に記載されている製剤とともに使用される生物医薬は、とりわけ、治療用抗体製剤を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許公開第2006/0024346号明細書
【特許文献2】米国特許第6,171,586号B明細書
【特許文献3】米国特許公開第2005/0142139号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/063291A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開2005/44854号パンフレット
【特許文献6】2003/0138417号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1、2002年、pp.457−62
【非特許文献2】Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22、2005年、pp.1997−2006
【発明の概要】
【0016】
緩衝溶液、プロリン及び生物医薬の有効量を含む製剤が提供される。緩衝溶液は、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液を含み得る。生物医薬は、ポリペプチド、例えば、治療用抗体などの抗体を含み得る。本明細書は、製剤を調製する方法、製剤を用いて症状を治療する方法及び製剤の成分を含有するキットも提供する。
【0017】
様々な実施形態において、製剤は、約10mMの濃度を有するグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸緩衝溶液を含む。他の実施形態において、緩衝液は、酢酸緩衝液であり得るが、但し、製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含有することはない。
【0018】
様々な実施形態において、製剤は、約3%の濃度を有するプロリン及び約3mg/mLから約50mg/mL又は約100mg/mLの濃度を有するポリペプチドを含む。ポリペプチドは、抗体又は抗原結合断片であり得る。抗体又は抗原結合断片は、成長因子、例えば、神経成長因子(NGF)に結合し得る。
【0019】
様々な実施形態において、緩衝溶液の濃度は、約1mMから約100mM、2mMから約50mM、約3mMから約30mM、約4mMから約20mM、又は約5mMから約10mM、約10mMから約40mM、約15mMから約35mM、約20mMから約30mM、約25mMから約35mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM又は約34mMであり得る。製剤中に含まれる治療用ポリペプチドは、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fc、ビス−scFv、一本鎖Fv(scFv)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ペプチボディ、VhHドメイン、V−NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、IgNAR若しくはレセプチボディ又は上記の組み合わせが含まれ得る。
【0020】
様々な実施形態において、製剤は、さらなる緩衝成分なしに、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の溶液からなり得、又は実質的にこれらからなり得る。
【0021】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する水性グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸緩衝液をプロリン及び治療用抗体と組み合わせることを含む方法が提供される。別の実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する水性酢酸緩衝液をプロリン及び治療用抗体と組み合わせることを含むが、ポリオール及び界面活性剤の両方は含有しない方法が提供される。
【0022】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び成長因子に対する抗体又は成長因子結合性抗原結合断片の有効量を含む製剤の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法が提供される。治療されている症状は、疼痛又は神経因性疼痛であり得る。
【0023】
様々な実施形態において、成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状は、神経成長因子の増加した発現から生じ得る。従って、本明細書中に記載されている製剤は、神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片を含み得る。製剤は、疼痛又は神経因性疼痛に対する治療を提供し得る。
【0024】
様々な実施形態において、緩衝液、プロリン及び抗体を含むキットが提供される。緩衝液が酢酸緩衝液である場合には、キットは、ポリオール及び界面活性剤の両者を含有することはない。
【0025】
図1から7の実験はIgG2抗体を使用するが、図8及び9の実験はIgG1抗体を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図1B】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図1C】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図1D】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図2A】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2B】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2C】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2D】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2E】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2F】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図3A】図3Aから3Bは、−30℃での凍結及び室温での融解の5サイクル後に形成された粒子の数の測定を示している。
【図3B】図3Aから3Bは、−30℃での凍結及び室温での融解の5サイクル後に形成された粒子の数の測定を示している。
【図4A】図4Aから4Cは、4℃(図4)、25℃(図4B)及び37℃(図4C)での保存後に、弱陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク(ピーク−0)のパーセントの変化を示している。
【図4B】図4Aから4Cは、4℃(図4)、25℃(図4B)及び37℃(図4C)での保存後に、弱陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク(ピーク−0)のパーセントの変化を示している。
【図4C】図4Aから4Cは、4℃(図4)、25℃(図4B)及び37℃(図4C)での保存後に、弱陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク(ピーク−0)のパーセントの変化を示している。
【図5A】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5B】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5C】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5D】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5E】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5F】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5G】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5H】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図6A】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6B】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6C】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6D】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6E】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6F】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6G】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6H】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図7A】図7Aから7B。図7Aは、−30℃で保存された抗体溶液の長期安定性を示している。図7Bは、−30℃での複数の凍結融解サイクル後の抗体の安定性を示している。
【図7B】図7Aから7B。図7Aは、−30℃で保存された抗体溶液の長期安定性を示している。図7Bは、−30℃での複数の凍結融解サイクル後の抗体の安定性を示している。
【図8A】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8B】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8C】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8D】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8E】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8F】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8G】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図9A】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【図9B】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【図9C】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【図9D】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中の様々な実施形態は、ポリペプチド又は他の生物医薬に対する安定化能を示す製剤に向けられる。製剤は、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液、プロリン及びタンパク質を含み得る。緩衝液は、約4.0から約6.0のpHを有し得る。生物医薬は、抗体であり得る。様々な実施形態において、製剤は、グルタミン酸緩衝液及び/又はアスパラギン酸緩衝液及び/又は酢酸緩衝液、プロリン及びタンパク質からなり得、又は実質的にこれらからなり得る。様々な他の実施形態において、製剤が酢酸緩衝液を含む場合には、製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない。
【0028】
製剤中に含まれる生物医薬は、幾つかの事例において、様々な温度で、例えば、約4℃、25℃又は37℃で、長期間にわたって、例えば、少なくとも1ヶ月又はそれ以上にわたって安定性を示すことにより、治療用ポリペプチド又は他の生物医薬の安全で、有効な量の投与を可能にすることができる。様々な実施形態において、約4℃で、12から18ヶ月間、抗体の安定性が示され得る。
【0029】
本明細書を通じて使用されるある種の用語の理解を容易にするために、以下の定義が与えられる。
【0030】
明細書中の様々な実施形態が、「含む」という言語を用いて表されているのに対して、様々な状況下では、関連する実施形態が、「からなる」又は「実質的にからなる」という言語を用いても記載され得る。
【0031】
値の範囲を記載する場合、記載されている特徴は範囲内に見出される個々の値であり得ることも理解すべきである。例えば、「約pH4から約pH6のpH」は、pH4、4.2、4.6、5.1、5.5などであり得るが、これらに限定されることはなく、このような値の間のあらゆる値であり得る。さらに、「約pH4から約pH6のpH」は、保存中に、問題の製剤のpHがpH4からpH6の範囲内を2pH単位変動することを意味すると解釈すべきではなく、溶液のpHに対してその範囲内で値を選択することができ、pHが概ねそのpHに緩衝化された状態を保つものと解釈すべきである。
【0032】
「1つ」という用語は、1つ又はそれ以上を意味することに注意すべきであり、例えば、「1つの免疫グロブリン分子」とは、1つ又はそれ以上の免疫グロブリン分子を表すものと理解される。従って、本明細書において、「1つ」、「1つ又はそれ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、互換的に使用され得る。
【0033】
本明細書において使用される「約」という用語は、「約」と表記される数字が表記された数字プラス表記された数字の5%又はマイナス表記された数字の5%を含むことを意味する。例えば、「約50mM」は、状況に応じて、47.5、47.6、47.7、47.8、47.9、48、49、50、51、52若しくは52.5mM又は50のプラス5%又はマイナス5%である他の値を意味し得る。
【0034】
本明細書で使用される「酢酸緩衝液」という用語は、酢酸を含む緩衝液を意味するものとする。緩衝液は、酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムから作製され得る。他の塩、例えば、酢酸のカリウム、アンモニウム、カルシウム又はマグネシウム塩を使用し得る。「酢酸緩衝液」及び「酢酸塩緩衝液」は、互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用される「アスパラギン酸緩衝液」という用語は、アスパラギン酸を含む緩衝液を意味するものとする。緩衝液は、アスパラギン酸塩、例えば、アスパラギン酸ナトリウムから作製され得る。他の塩、例えば、アスパラギン酸のカリウム、アンモニウム、カルシウム又はマグネシウム塩を使用し得る。「アスパラギン酸緩衝液」及び「アスパラギン酸塩緩衝液」は、互換的に使用される。
【0036】
本明細書において使用される「生物医薬」という用語は、医薬として使用することができる高分子又は生体ポリマー、例えば、ポリペプチド又は抗体を表す。
【0037】
本明細書において使用される「製剤」という用語は、保存、さらなる加工、販売及び/又は対象への投与(例えば、特定の疾病を治療するために、特定の経路により、特定の量で、特定の薬剤を対象に投与する)など、1つ又はそれ以上の特定の用途のために、少なくとも1つの活性成分を1つ又はそれ以上の他の成分と組み合わせることを意味する。「製剤」という用語は、ヒト又は動物に投与することができる、生物医薬と適合的な医薬として許容される溶媒を表す。
【0038】
本明細書で使用される「グルタミン酸緩衝液」という用語は、グルタミン酸を含む緩衝液を意味するものとする。緩衝液は、グルタミン酸塩、例えば、グルタミン酸ナトリウムから作製され得る。他の塩、例えば、グルタミン酸のカリウム、アンモニウム、カルシウム又はマグネシウム塩を使用し得る。「グルタミン酸緩衝液」及び「グルタミン酸塩緩衝液」は、互換的に使用される。
【0039】
様々な実施形態において、製剤が目的の生物医薬の安定性をもたらす限り、アスパラギン酸、酢酸又はグルタミン酸緩衝液以外の緩衝液をプロリンと組み合わせて使用することができる。
【0040】
治療用ポリペプチドなどの治療用生物医薬に関して使用される場合、本明細書において使用される「有効量」という用語は、標的とされる疾病又は生理的状態と関連する少なくとも1つの症候を軽減又は減弱するのに十分な治療的分子の量を表すものとする。
【0041】
様々な実施形態において、本明細書は、プロリン、治療用ポリペプチドの有効量及び約4.0から約6.0のpHを有する水溶液を含む製剤を提供する。水溶液は、水性緩衝液であり得る。製剤は、生物医薬の投与、保存及び/又は操作に対して最適な特性を示し得る。操作には、例えば、凍結乾燥、再構成、希釈、滴定、保存などが含まれ得る。水性緩衝成分、例えば、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液は、本分野で公知の様々な方法の何れかを用いて、所望の生物医薬と組み合わせることができる。さらに、緩衝成分は、目的の生物医薬の安定性を促進する多様な賦形剤及び界面活性剤と適合的であり得る。製剤のこれら及び他の属性は、生物活性分子の安定な製剤を調製し、長期間にわたって維持することを可能にする。
【0042】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、治療的に不活性な物質を意味するものとする。賦形剤は、例えば、希釈剤、ビヒクル、緩衝液、安定化剤、等張化剤、増量剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤などとして、多様な目的のために、製剤中に含めることができる。賦形剤には、例えば、ソルビトール又はマニトールなどのポリオール;スクロース、ラクトース又はデキストロースなどの糖;ポリエチレングリコールなどのポリマー、NaCl、KCl又はリン酸カルシウムなどの塩、アミノ酸、例えば、プロリン、グリシン又はメチオニン、界面活性剤、金属イオン、グルタミン酸塩、酢酸塩又はアスパラギン酸塩などの緩衝塩、防腐剤及びヒト血清アルブミンなどのポリペプチド並びに生理的食塩水及び水が含まれる。賦形剤には、糖、例えば、糖アルコール、還元糖、非還元糖及び糖酸が含まれ得る。賦形剤は本分野において周知であり、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「Wang W.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0043】
簡潔に述べれば、糖アルコール(ポリオール、多価アルコール又はポリアルコールとしても知られる。)は、一級又は二級ヒドロキシル基に還元されたカルボニル基を有する炭水化物の水素添加された形態である。ポリオールは、液体中及び凍結乾燥された製剤中の両者で、安定化賦形剤及び/又は等張化剤として使用することができる。ポリオールは、物理的及び化学的分解経路の両方から生物医薬を保護することができる。糖アルコールの例には、ソルビトール、グリセロール、マニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール及びスレイトールが含まれ得る。
【0044】
還元糖は、例えば、ケトン又はアルデヒド基を有する糖を含むことができ、糖が還元剤として作用できるようにする反応性ヘミアセタール基を含有することができる。還元糖の具体例には、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びマルトースが含まれる。非還元糖は、アセタールであり、及びアミノ酸又はポリペプチドと実質的に反応してメイラード反応を開始させないアノマー性炭素を含むことができる。非還元糖の具体例には、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、メレジトース及びラフィノースが含まれる。糖酸には、例えば、糖酸、グルコナート及び他のポリヒドロキシ糖及びこれらの塩が含まれる。
【0045】
緩衝液又は賦形剤と組み合わせた緩衝液は、製品の保存寿命を通じて、液体製剤のpHを維持し、例えば、凍結乾燥プロセスの間に、及び再構成の際に、凍結乾燥された製剤のpHを維持する。
【0046】
液体製剤中に含まれる等張化剤及び/又は安定化剤は、製剤が投与に適するように、例えば、等張性、低張性又は高張性を製剤に付与するために使用することができる。このような賦形剤は、生物医薬の構造の維持を促進するために、及び/又は、静電的な溶液タンパク質−タンパク質相互作用を最小化するために使用することもできる。等張化剤及び/又は安定化剤の例には、ポリオール、塩及び/又はアミノ酸が含まれ得る。
【0047】
抗酸化剤は、タンパク質の酸化を調節するために液体製剤において有用であり、酸化反応を遅延させるために、凍結乾燥された製剤中で使用することも可能である。
【0048】
金属イオンは、例えば、補因子として、液体製剤中に含めることができ、亜鉛及びマグネシウムなどの二価陽イオンは懸濁製剤中において使用することができる。液体製剤中に含められるキレート剤は、例えば、金属イオンによって触媒される反応を阻害するために使用することができる。凍結乾燥された製剤に関して、例えば、金属イオンは補因子として含めることもできる。一般に、キレート剤は凍結乾燥された製剤からは省略されるが、凍結乾燥プロセスの間の及び再構成の際の触媒反応を低減するために、所望に応じて、キレート剤を含めることも可能である。
【0049】
液体製剤中の防腐剤は、例えば、微生物の成長に対して保護するために使用することが可能であり、特に、複数投薬製剤において有益である。凍結乾燥された製剤において、再構成希釈剤中には、一般に、防腐剤が含められる。ベンジルアルコールは、本発明の製剤において有用な防腐剤の具体例である。
【0050】
本明細書において使用される「界面活性剤」という用語は、その中に溶解される液体の表面張力を低下させるように機能する物質を意味するものする。例えば、液体製剤中の凝集、粒子形成及び/又は表面吸着を抑制若しくは調節するため、又は凍結乾燥された製剤中の凍結乾燥及び/又は再構成プロセスの間に、これらの現象を抑制若しくは調節するためなど、様々な目的のために、界面活性剤を製剤中に含めることができる。界面活性剤には、例えば、有機溶媒及び水溶液中の両方で、部分的な溶解度を示す両親媒性有機化合物が含まれる。界面活性剤の一般的な特徴には、水の表面張力を低下させる能力、油と水の間の界面張力を低下させる能力及びミセルを形成する能力が含まれる。界面活性剤には、非イオン性及びイオン性界面活性剤が含まれ得る。界面活性剤は本分野において公知であり、例えば、「Randolph T.W.and Jones L.S.,Surfactant−protein interactions.Pharm Biotechnol.13:159−75(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0051】
非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA及びコカミドTEAが含まれ得る。非イオン性界面活性剤の具体例には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85などのポリソルベート;例えばポロキサマー188(ポロキサルコール又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)、ポロキサマー407を含むポロキサマー又はポリエチレン−ポリプロピレングリコールなど及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20は、TWEEN20、ソルビタンモノラウラート及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートと同義である。
【0052】
イオン性界面活性剤には、例えば、陰イオン性、陽イオン性及び双性イオン性界面活性剤が含まれ得る。陰イオン性界面活性剤には、例えば、石鹸など、スルホナートをベースとする又はカルボキシラートをベースとする界面活性剤、脂肪酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム及び他のアルキル硫酸塩が含まれる。陽イオン性界面活性剤には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシル化された獣脂アミン(POEA)及び塩化ベンゾアルコニウムなどの四級アンモニウムをベースとする界面活性剤が含まれる。双性イオン性又は両性界面活性剤には、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン及びココアムフォグリシナートが含まれる。
【0053】
本明細書において使用される「治療的」という用語は、ポリペプチド、例えば、抗体に関して使用される場合、当該ポリペプチドがヒト又は他の動物中の疾病の治癒、軽減、治療又は予防において使用され得ることを意味するものとする。治療は、治療的処置及び/又は予防的若しくは防止的措置の両方を表す。治療を必要とする者には、既に疾患を有する者又は疾患を予防すべき者が含まれ得る。
【0054】
従って、治療的ポリペプチドは生物医薬であり得、単一のポリペプチド又は2つ若しくはそれ以上のポリペプチドサブユニットを含むことができる。治療的ポリペプチドには、抗体(例えば、「治療用抗体」)、その機能的抗体断片、抗原結合断片、ペプチボディ又はその機能的断片、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが含まれ得る。多岐にわたる治療的ポリペプチドが本分野において公知であり、本明細書において使用される「治療用ポリペプチド」という用語の意味の中に含まれる。本明細書に記載されている製剤中で使用されるべき治療用ポリペプチドには、例えば、多様な抗原、例えば、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びTNFR、RANKL、EGFR、リガンド、サイクリン及びエリスロポエチン及び/又は成長因子に対する抗体又は抗原結合断片が含まれ得る。成長因子には、例えば、上皮成長因子、ヒト成長因子又は神経成長因子が含まれ得る。
【0055】
製剤の安定性とは、製剤内の生物医薬の構造及び/又は機能及び/又は生物活性の保持を表す。構造及び/又は機能及び/又は生物活性の保持は100%である必要はない。製剤の安定性の測定は、比較測定であり得る。従って、ある製剤が別の製剤より安定であり、又はより大きな安定性を有すると称されれば、より大きな安定性を有する製剤は、検討されている特徴が負の特徴でなければ、他の製剤より調査されている望ましい特徴のより大きなパーセントを保持している。特徴が負の特徴である場合には、より大きな安定性を有する製剤はその特徴をより少なく有する。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定した場合に、主ピークのより大きなパーセントを維持していれば(すなわち、これは、より少ない凝集を示す。)、製剤Aは製剤Bより安定である。保存後に製剤Bより少ない粒子を含有していれば、製剤Aは製剤Bより安定であると称することもできる。
【0056】
様々な実施形態において、製剤中の生物医薬は、安定性又は機能に影響を与える、変化又は崩壊に対する耐性などの属性を呈することができ、従って、一貫した機能的特徴を長期にわたって維持することができる。
【0057】
様々な実施形態において、製剤内の生物医薬の安定性には、物理的及び/又は化学的安定性の保持が含まれ得る。生物医薬の安定性は、例えば、その構造の化学的修飾を含む、物理的分解及び/又は化学的分解経路に生物医薬が供されたかどうかを測定することによって評価することができる。安定性の保持は、例えば、異なる温度での保存後又は複数の凍結融解サイクル後に残存している単量体のパーセントの観点で測定することもできる。これらの測定は、ポリペプチド凝集の量を反映し得る。
【0058】
物理的又は化学的安定性の保持は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、保存前及び保存後の単量体のパーセントを測定することによって決定することができる。様々な実施形態において、保存後又は反復する凍結融解後に残存する単量体のパーセントは、最初の時点での生物医薬と比べると、約80%と約100%の間、約85%と約95%の間又は約90%と約95%の間又は約95%と約99%の間であり得る。従って、本発明の製剤中の生物医薬の安定性には、最初の時点での生物医薬の安定性と比べて、99.5%超の安定性、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%又は80%の安定性の保持が含まれ得る。
【0059】
製剤の安定性の他の例には、溶液中の不溶性タンパク質性凝集物(粒子)の数又は当初溶液中の生物医薬と比べた化学的修飾の発生の比較測定が含まれ得る。
【0060】
さらなる実施形態において、製剤の安定性には、例えば、活性の保持が含まれる。生物医薬活性は、例えば、生物医薬の機能の指標となるインビトロ、インビボ及び/又はインシチュのアッセイを用いて評価することができる。本発明の製剤中の生物医薬の安定性の保持には、アッセイの変動性に応じて、例えば、約50と100%の間又はそれ以上の活性の保持が含まれ得る。例えば、安定性の保持には、最初の時点における生物医薬の活性に比べて、約60と約99%の間又は約70%と約80%の間の活性の保持が含まれ得る。
【0061】
様々な実施形態において、製剤中の生物医薬の安定性には、最初の時点での生物医薬の活性と比べて、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の活性の保持が含まれ得、100%を超える活性測定、例えば、105%、110%、115%、120%、125%若しくは150%又はそれ以上が含まれ得る。
【0062】
一般に、様々な実施形態において、最初の時点は、生物医薬が最初に製剤中で調製される時点、又は品質に関して最初に調べられる時点(例えば、放出規格を充足する。)であるように選択される。最初の時点には、生物医薬が製剤中に再調合される時点も含まれ得る。再調合は、例えば、最初の調製のより高い濃度、より低い濃度又は同じ濃度であり得る。
【0063】
製剤中の生物医薬の安定性は、2から8℃で、又は約4℃で保持され得る。本明細書に記載されている製剤中での生物医薬の安定性は、4℃より上の温度で、例えば、室温で、約23℃又は25℃、又はより高い温度(37℃を含む。)でも保持され得る。より高い温度での安定性のこのより大きな保持は、プロリンを含まない他の緩衝液と比べて、図1に示されているようにプロリンを含むグルタミン酸緩衝化された製剤中の、例えば抗体の主ピークのより大きな保持によって示され得る。
【0064】
様々な実施形態によれば、本明細書中に記載されている製剤は、SECによって測定された場合に、単量体ピークが合計の少なくとも99%を占めることができるように、少なくとも6ヶ月間、約4℃、約25℃又は約37℃で安定である。様々な他の実施形態において、単量体ピークは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定された場合に、合計の少なくとも99.8%、99.7%、99.6%、99.5%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%を占める。他の様々な実施形態において、製剤は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月又は約6ヶ月を超えて安定であり得る。
【0065】
製剤は、基準溶液又は液体(例えば、血液及び/又は血清)と等張であるように調製することができる。等張溶液は、浸透圧的に安定であるような濃度を有する。特定の溶液又は液体と明示的に比較されている場合を除き、本明細書において使用される等張又は等張性は、ヒト血清に対する参照を意味するものとする(例えば、280から300mOsm/kg)。従って、等張製剤は、ヒトの血液と実質的に同様の溶質の濃度を含有し、又はヒト血液と実質的に同様の浸透圧を示す。一般に、等張溶液は、ヒト及び他の多くの哺乳動物に対する正常な生理的食塩水と概ね同じ溶質の濃度(水溶液中の約0.9重量%(0.009g/mL)の塩である(例えば、0.009g/mLNaCl)。)を含有する。
【0066】
医薬の製造及び製剤化工程の多くの態様は、pH感受性であり得る。最終医薬品の正しいpHを維持することは、医薬の安定性、有効性及び保存寿命に影響を与えることができ、pHは、許容可能であり、安全で、効果的である投与のための製剤を設計する上での検討事項である。
【0067】
pHを維持するために、医薬の過程及び製剤は、1つ又はそれ以上の緩衝剤を使用することができる。様々な緩衝剤は、医薬用途のために利用可能である。所定の用途のための緩衝液は、所望されるpHにおいて効果的であるべきである。緩衝液は、必要な限り、所望されるpHを維持するのに十分な緩衝能も与えるべきである。医薬組成物のための優れた緩衝液は、他の多くの必要条件も満たすことができる。医薬組成物のための優れた緩衝液は、適切に可溶性であるべきである。医薬組成物のための優れた緩衝液は、金属イオンとの有害な錯体を形成すべきでなく、毒性であるべきでなく、又は過度に浸透し、可溶化し、又は膜若しくは他の表面上に吸収されるべきでない。医薬組成物のための優れた緩衝液は、組成物の他の成分の利用可能性又は有効性を減少させる何らかの様式で、組成物の他の成分と相互作用すべきでない。医薬組成物のための優れた緩衝液は、製剤化の間及び製品の保存の間に緩衝液が曝露される条件の範囲にわたってpHを維持するのに安定で、有効であるべきである。医薬組成物のための優れた緩衝液は、その中で緩衝液が緩衝作用を与える組成物の加工中に起こるものなど、その環境中で起こる酸化又は他の反応によって悪影響を受けるべきでない。最終製品中に持ち込まれ、又は取り込まれる場合には、緩衝剤は、投与のために安全であり、製品の保存寿命にわたって組成物の他の成分と適合的であり、及び最終使用者への投与のために許容され得るべきである。上記リストは、生物医薬を含有する製剤に関連する様々な特徴を表している。しかしながら、全ての緩衝液が所望される特徴の全てを必ずしも呈するわけではない。
【0068】
様々な実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、承認を与える権限が法律によって与えられている国内又は国際機関によって、例えば、欧州医薬品審査庁、日本の厚生労働省、中国の国家食品薬品監督管理局、米国の食品医薬品局又はこの機関の後継機関、特に好ましくは、米国の食品医薬品局又はこの機関の後継機関によって、医薬用途に対して承認され得る。
【0069】
様々な実施形態において、所望のpHを有するグルタミン酸緩衝液、プロリン及び生物医薬、例えば、抗体の有効量を有する製剤を調製することができる。抗体は、神経成長因子に結合する抗体又は抗原結合断片であり得る。様々な他の実施形態において、ポリペプチドの適切な安定化が得られれば、プロリンを含有するグルタミン酸以外の緩衝液を使用することができる。
【0070】
本明細書中の様々な実施形態において、グルタミン酸緩衝液が引用されているが、他の実施形態では、代わりに、例えば、アスパラギン酸緩衝液及び/又は酢酸緩衝液などの他の緩衝液をプロリン及び生物医薬と組み合わせることができる。しかしながら、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤は、界面活性剤及びポリオールの両者を含有することはない。しかしながら、様々な他の実施形態において、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤が塩化ナトリウムの等張量をさらに含まなければ及び/又は生物医薬(例えば、抗体)が事前の凍結乾燥に供されていなければ、製剤は界面活性剤及びポリオールの両方を含まない。
【0071】
製剤のグルタミン酸成分は、様々な異なる形態で緩衝系に供給することができる。例えば、グルタミン酸成分は、グルタミン酸、グルタミン酸塩又は入手可能な、若しくは化学合成を用いて作製することができる他のあらゆる形態として供給され得る。その塩形態のグルタミン酸は、製剤のグルタミン酸緩衝系を作製するのに有用であり得る。L−グルタミン酸などの緩衝成分は純粋な形態で市販されており、Ajinomoto AminoScience LLC,NC,USAから入手することができ、又はL−Glutamic Acid,F.C.C.,Multi−CompendialをJ.T.Baker、カタログ番号2077−06から入手することができる。
【0072】
グルタミン酸塩には、例えば、以前に記載されているもの及び本分野で公知のその他のものが含まれる。製剤成分(例えば、グルタマート)の高度に精製された形態は、安全及び無毒であるように汚染物質を欠如するように、ヒトへ投与するのに十分に純粋である薬学等級の純度レベルを表す。
【0073】
様々な実施形態において、製剤は、選択された温度で製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有するグルタミン酸又はグルタマートの濃度を含有し得る。グルタミン酸又はグルタマートの有用な濃度は、約1から150mM、約5mMから100mMの間、約10mMから50mM又は約20から約40mMの間であり得る。様々な実施形態において、グルタミン酸濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM又は約45mMであり得る。緩衝液が、保存の間、選択された温度で、製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する限り、グルタミン酸の他の濃度が適切であり得る。
【0074】
様々な他の実施形態において、緩衝溶液の濃度は、約1mMから約100mM、約2mMから約50mM、約3mMから約30mM、約4mMから約20mM、又は約5mMから約10mM、約10mMから約40mM、約15mMから約35mM、約20mMから約30mM、約25mMから約35mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM又は約34mMであり得る。
【0075】
様々な実施形態において、製剤のグルタミン酸緩衝成分は、生物医薬の所望される安定性が維持される限り、約4.0から約6.0の間のpH範囲内に見出される値で、効果的な緩衝能を示すように調製することができる。グルタミン酸緩衝液及び/又は最終製剤の典型的なpH範囲には、約3.5から6.5の間、約4.0から約6.0の間、約4.5から約5.5の間、約4.8から約5.2の間のpH範囲又は約5.0が含まれ得る。従って、グルタミン酸緩衝液及び/又は最終製剤は、約3.0又はそれ以下、約3.5、約4.0、約4.5、約4.8、約5.0、約5.2、約5.5、約5.7、約6.0、約6.5又は約7.0若しくはそれ以上のpHを有するように調製することができる。これらの値を上回る、下回る、及びこれらの値の間にあるpH値も、グルタミン酸緩衝液及び/又は最終製剤中で使用することが可能である。当業者は、約3.5のpHより下又は約6.5のpHより上のグルタミン酸緩衝液を含めることが所望される製剤において有用であるかどうかを決定することができる。
【0076】
様々な実施形態において、製剤は、グルタミン酸以外の緩衝液を含有することができる。例えば、プロリン及び生物医薬とともに、アスパラギン酸(アスパルタート)及び/又は酢酸(アセタート)を使用することができる。製剤は、選択された温度で製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する緩衝液の濃度を含有し得る。緩衝液の有用な濃度は、約1mMから150mMの間、約5mMから100mMの間又は約10mMから約50mMの間又は約20から約40mMの間であり得る。様々な実施形態において、緩衝液濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM又は約45mMであり得る。緩衝液が、保存の間、選択された温度で、製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する限り、緩衝液の他の濃度が適切であり得る。
【0077】
様々な他の実施形態において、緩衝溶液の濃度は、約1mMから約100mM、約2mMから約50mM、約3mMから約30mM、約4mMから約20mM、又は約5mMから約10mM、約10mMから約40mM、約15mMから約35mM、約20mMから約30mM、約25mMから約35mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM又は約34mMであり得る。
【0078】
様々な実施形態において、製剤は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%から約20%又は約21%から約30%の濃度でプロリンを含む。
【0079】
様々な実施形態において、製剤の緩衝液は、1つ又はそれ以上の賦形剤を含むことができる。含められる賦形剤の1つの潜在的な役割は、製造、搬送及び保存の間に起こり得るストレスに対して生物医薬の安定化を提供することである。これを達成するために、少なくとも1つの賦形剤は、緩衝液、安定化剤、等張化剤、増量剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤として機能することができる。さらに、少なくとも1つの賦形剤は、希釈剤及び/又はビヒクルとして機能し、又は製剤の送達を可能とし、及び/又は患者の利便性を強化するために、高濃度製剤中での粘度を低下させるために使用することができる。
【0080】
同様に、少なくとも1つの賦形剤は、上記機能の2以上を製剤に付与することができる。あるいは、上記機能又は他の機能の2以上を発揮するために、2つ又はそれ以上の賦形剤を製剤中に含めることができる。例えば、製剤のオスモル濃度を変化させ、調整し、又は最適化することにより、等張化剤として作用させるために、製剤中の成分として、賦形剤を含めることができる。しかしながら、製剤が酢酸緩衝液を含有する場合には、ポリオール及び界面活性剤の両方を製剤中に含めることはできない。しかしながら、様々な他の実施形態において、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤が塩化ナトリウム等張量をさらに含まなければ及び/又は生物医薬(例えば、抗体)が事前の凍結乾燥に供されていなければ、製剤は界面活性剤及びポリオールの両者を含むことはない。
【0081】
様々な実施形態において、等張化剤及び界面活性剤は何れも、オスモル濃度を調整し、及び/又は凝集を調整するために製剤中に含めることができる。賦形剤、それらの使用、製剤及び特徴は本分野において公知であり、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「Wang W.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。米国特許第6,171,586号B1において、酢酸緩衝液、ポリオール、界面活性剤及び抗体を含む製剤が論述されている。
【0082】
浸透圧調節物質と称される小さな有機分子は、様々な生理的条件で、タンパク質の安定性に影響を与えることが報告されている。この点に関して、公報が天然の浸透圧調節物質としてのプロリン並びにインビボ及びインビトロでのタンパク質凝集に対するその効果を論述している(Ignatova and Gierasch,Proc.Natl.Acad.Sci.USA103:13357−13361,Epub 2006 Aug 9)。Bolen及びBaskakov(J.Mol.Biol.310:955−963,2001)も、プロリン及び浸透圧調節物質について論述している。
【0083】
一般に、賦形剤は、様々な化学的及び物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させる機序に基づいて選択することができる。ある種の賦形剤は、特定のストレスの効果を軽減するために、又は特定の生物医薬の特定の感受性を制御するために含めるのが有益であり得る。他の賦形剤は、タンパク質の物理的及び共有的安定性に対してより一般的な効果を有し得るので、他の賦形剤を含めるのが有益であり得る。幾つかの有用な賦形剤には、製剤の安定性特性を最適化するために、水性緩衝溶液及び生物医薬と化学的に及び機能的に非侵害性であり、又は適合的であるものが含まれ得る。様々なこのような賦形剤は、製剤との化学的適合性及びこのような製剤中に含まれる生物医薬との機能的適合性を示すとして本明細書に記載されている。
【0084】
例えば、製剤内の生物医薬の安定性を強化又は付与するために選択される賦形剤には、生物医薬上の官能基と実質的に反応しないものが含まれ得る。この点に関して、還元糖及び非還元糖の両方を本発明の製剤中の賦形剤として使用することができる。
【0085】
賦形剤は、製剤に対する投与様式に関して安定化を強化し、又は提供するためにも選択され得る。例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与の非経口経路は、製剤の全ての成分が、製造、保存及び投与の間に、物理的及び化学的安定性を維持する場合により安全で、効果的であり得る。当業者は、例えば、特定の製造若しくは保存条件又は特定の投与様式が与えられれば、生物医薬の活性形態の最大の安定性を維持する1つ又はそれ以上の賦形剤をどのようにして使用するかを決定することができる。
【0086】
製剤中で使用するための賦形剤の量又は濃度は、例えば、製剤中に含まれる生物医薬の量、所望の製剤中に含まれる他の賦形剤の量、希釈剤が望まれるか若しくは必要とされるかどうか、製剤の他の成分の量若しくは容量、製剤中の成分の総量、生物医薬の比活性及び達成されるべき所望の浸透圧又はオスモル濃度に応じて変動し得る。様々な実施形態において、賦形剤の異なる種類を単一の製剤中に組み合わせることができる。従って、製剤は、単一の賦形剤、賦形剤の2つ、3つ又は4つ又はそれ以上の異なる種類を含有することができる。賦形剤の組み合わせは、2つ又はそれ以上の異なる生物医薬を含有する製剤と組み合わせると有用であり得る。賦形剤は、類似の又は異なる化学的特性を示すことができる。
【0087】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、生物医薬の安定性の保持を促進する製剤を達成するために、賦形剤のどのような量又は範囲をある製剤中に含めることができるかを決定することができる。例えば、製剤中に含められるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望される重量オスモル濃度(すなわち、等張、低張又は高張)並びに製剤中に含められるべき他の成分の量及び重量オスモル濃度に基づいて選択することができる。同様に、製剤中に含められるポリオール又は糖の種類を参照して、このような賦形剤の量はそのオスモル濃度に依存し得る。約5%のソルビトールを含めることによって、等張性を達成することができるのに対して、等張性を達成するために、スクロース賦形剤の約9%が必要とされ得る。当業者は、賦形剤に関して本明細書に記載されている考察は、例えば、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定化剤、増量剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び/又は防腐剤を含む賦形剤の全ての種類及び組み合わせに対して等しく適用され得ることを理解する。
【0088】
賦形剤は、一般に、約1から40%(w/v)の間、約5から35%(w/v)の間、約10から30%(w/v)の間、約15から25%(w/v)の間の範囲の濃度、約3%、約10%又は約20%(w/v)の濃度で、本発明の製剤中に含めることができる。ある種の事例では、約45%(w/v)、50%(w/v)又は50%(w/v)を上回る高い濃度を、本発明の製剤において使用することが可能である。例えば、幾つかの事例では、高張製剤を作製するために、最大60%(w/v)又は75%(w/v)の濃度を含むことが望ましい場合があり得る。このような高張溶液は、所望であれば、使用前に、等張製剤を作製するために希釈することができる。他の有用な濃度範囲には、約1から20%、特に約2と18%(w/v)の間、より具体的には約4と16%(w/v)の間、さらにより具体的には約6と14%(w/v)の間又は約8と12%(w/v)の間又は約10%(w/v)が含まれる。様々な実施形態において、これらの範囲より下、上又は間の賦形剤濃度及び/又は量も製剤中で使用することができる。例えば、約1%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の賦形剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約40%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の賦形剤の所望の濃度又は量を含有する製剤を作製することが可能である。
【0089】
液体製剤又は凍結乾燥された製剤の何れかにおいて有用であり得る様々な賦形剤には、フコース、セロビオース、マルトトリオース、メリビオース、オクチュロース、リボース、キシリトール、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、リジン、イミダゾール、グリシルグリシン、マンノシルグリセラート、TritonX−100、PluronicF−127、セルロース、シクロデキストリン、デキストラン(10、40及び/又は70kD)、ポリデキストロース、マルトデキストリン、フィコール、ゼラチン、ヒロドキシプロピルmeth、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ZnCl2、亜鉛、酸化亜鉛、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、トロメタミン、銅、フィブロネクチン、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、プロタミン、グリセリン、グリセロール、EDTA、メタクレゾール、ベンジルアルコール及びフェノールが含まれる。本分野において公知の様々な賦形剤は、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「WangW.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されている。
【0090】
様々な実施形態によれば、グルタミン酸によって緩衝された製剤は、1つ又はそれ以上の界面活性剤を賦形剤として含むことができる。製剤中での界面活性剤の1つの役割は、表面によって誘導される分解などの凝集及び/又は吸着を抑制又は最小化することであり得る。十分な濃度で、一般には、概ね界面活性剤のミセル濃度で、界面活性剤分子の表面層は、タンパク質分子が界面に吸着するのを防ぐ役割を果たし得る。これにより、表面によって誘導される分解は最小化することができる。界面活性剤、それらの使用、製剤及び製剤に対する特徴は本分野において公知であり、例えば、「Randolph T.W.and Jones L.S.,Surfactant−protein interactions.Pharm Biotechnol.13:159−75(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0091】
製剤中に含めるための界面活性剤は、例えば、凝集及び/又は吸着を抑制又は低下させることによって、生物医薬の安定性の保持を強化又は促進するために選択され得る。ポリソルベートなどのソルビタン脂肪酸エステルは、多岐にわたる親水性及び乳化特性を示す界面活性剤である。それらは、安定化の必要性の広い範囲をカバーするために、個別に又は他の界面活性剤と組み合わせて使用することができる。生物医薬の疎水性及び親水性特性の幅広い範囲をカバーするように特別に調整することができるので、このような特性は、生物医薬とともに使用するのに特に適切であり得る。界面活性剤を選択するための考慮事項には、賦形剤に関して一般的に前述されているもの並びに界面活性剤の疎水性特性及び臨界ミセル濃度が含まれる。本明細書に例示されている界面活性剤及び本分野において周知の他の多くの界面活性剤を、本明細書中に記載されている製剤中で使用することができる。
【0092】
製剤に対する界面活性剤の濃度範囲には、賦形剤に関して一般的に先述されているものが含まれ、例えば、有用な濃度は約1%(w/v)未満であり得る。この点に関して、界面活性剤の濃度は、約0.001と0.10%(w/v)の間、約0.002と0.05%(w/v)の間、約0.003と0.01%(w/v)の間、約0.004と0.008%(w/v)の間又は約0.005と0.006%(w/v)の間の範囲で、一般に使用することができる。これらの範囲より下、上又は間の界面活性剤濃度及び/又は量も使用することができる。例えば、約0.001%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の界面活性剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約0.10%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の界面活性剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、約0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09若しくは0.10%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の界面活性剤の実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する製剤を作製することが可能である。しかしながら、本明細書中に記載されているある種の実施形態において、製剤中で酢酸緩衝液が使用される場合には、界面活性剤及びポリオールの両方を使用することはできないことに留意すべきである。
【0093】
液体製剤又は凍結乾燥された製剤において有用な界面活性剤には、例えば、ラウリル酸(C12)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)エステル、マクロゴールセトステアリルエーテル、マクロゴールセトラウリルエーテル、マクロゴールセトオレイルエーテル、マクロゴールオレアート、マクゴロールステアラート、マクロゴールグリセロールリシノレアート、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートなどの糖エステル;オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド;セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、並びにコカミドMEA、DEA、TEAなどのコカミド、他の非イオン性界面活性剤及び他のイオン性界面活性剤が含まれ得る。
【0094】
本明細書に提供されている製剤は、製剤の成分として治療用ポリペプチドを含むことができる。治療用ポリペプチドは、抗体、抗原結合断片又は抗体の機能的断片、ペプチボディ又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0095】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、本明細書中に記載されている製剤は、例示されているもの及び本分野において周知のその他のものを含む生物医薬の多くの種類に対して等しく適用可能であることが当業者に理解される。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、1つ又はそれ以上の賦形剤、界面活性剤及び/又は場合によって使用される成分の、例えば種類及び/又は量の選択は、製剤化されるべき生物医薬との化学的及び機能的適合性及び/又は投与様式並びに本分野において周知の他の化学的、機能的、生理的及び/又は医学的要素に基づいて行い得ることも当業者に理解される。例えば、先述のように、非還元糖は、還元糖と比べて、ポリペプチド生物医薬とともに使用した場合に、好ましい賦形剤特性を示す。従って、本発明の製剤は、ポリペプチド生物医薬に関して、さらに以下で例示されている。しかしながら、適用可能性の範囲、化学的及び物理的特性、ポリペプチド生物医薬に対して適用される考慮事項及び方法は、ポリペプチド生物医薬以外の生物医薬に対しても同様に適用できる。
【0096】
様々な実施形態において、製剤中で使用するために適用可能なポリペプチド生物医薬の様々な種類には、治療的ポリペプチドの異なる種類、例えば、ポリペプチドの免疫グロブリンスーパーファミリー、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが含まれ得る。製剤中での使用に適用可能な典型的ポリペプチド生物医薬には、例えば、抗体及びその機能的断片、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びFhmを含むTNFRリガンド、サイクリン、エリスロポエチン、神経成長因子(NGF)、発達に応じて制御される神経成長因子誘導性遺伝子VGF、神経栄養因子、神経栄養因子NNT−1、Eph受容体、Eph受容体リガンド;Eph様受容体、Eph様受容体リガンド、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、Thy−1特異的タンパク質、Hekリガンド(hek−L)、Elk受容体及びElk受容体リガンド、STATs、コラーゲナーゼ阻害剤、オステオプロテジェリン(OPG)、APRIL/G70、AGP−3/BLYS、BCMA、TACI、Her−2/neu、アポリポタンパク質ポリペプチド、インテグリン、エクステンジン、インシュリン、成長ホルモン、濾胞刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、C3b/C4b補体受容体、SHC結合タンパク質、DKRポリペプチド、細胞外マトリックスポリペプチド、上記治療的ポリペプチドに対する抗体及びその抗体機能的断片、上記治療的ポリペプチドに対する受容体に対する抗体及びその抗体機能的断片、これらの機能的ポリペプチド断片、融合ポリペプチド、キメラポリペプチドなどの多くの異なる治療的ポリペプチドが含まれ得る。
【0097】
製剤の様々な実施形態中で使用することができる市販の生物医薬の例には、例えば、(Etanercept;CHOによって発現される二量体融合タンパク質(Amgen,Inc.));(Epoetinα;哺乳動物細胞によって発現される糖タンパク質(Amgen,Inc.));(インターフェロンアルファコン−1;イー・コリによって発現される組換えタンパク質(Amgen,Inc.));(アナキンラ;イー・コリによって発現される、ヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−IRa)の組換え非グリコシル化形態(Amgen,Inc.));(ダルベポエチンα;CHOによって発現された、組換えヒト赤血球新生刺激タンパク質(Amgen,Inc.));(ペグフィルグラスチム;組換えメチオニルヒトG−CSFと20kDPEGの共有連結体(Amgen,Inc.));(Filgrastim;イー・コリによって発現されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(Amgen,Inc.))、(Ancestim、幹細胞因子;イー・コリによって発現された組換えヒトタンパク質(Amgen,Inc.))、(パニツムマブ;EGF受容体に対する抗体(AmgenInc.))又はデノスマブ(RNAKLに対する抗体(AmgenInc.))が含まれ得る。これら及び他の入手可能な生物医薬は、製造の時点で、使用の前に及び/又は短期若しくは長期保存の前に、本明細書中に記載されている製剤中で使用することが可能である。
【0098】
生物医薬は、抗体であり得る。以下に記載されているのは、様々な実施形態において治療用ポリペプチドとして使用することができる抗体及びその機能的断片及び抗原結合断片である。先述されているように、抗体及びその機能的断片に対して適用可能な化学的及び物理的特性、製剤化の検討事項及び方法は、ポリペプチド生物医薬を含む生物医薬に対しても同様に適用することができる。
【0099】
抗体又は免疫グロブリンは、分子標的又は抗原に対して特異的な親和性を有するポリペプチドである。標的は、ヒト、カニクイザル、マウス、イヌ、ネコ及びウサギを含む(但し、これらに限定されない。)あらゆる種の中に天然に存在し得る。様々な実施形態において、標的は、天然に存在するタンパク質のバリアントであり得る。このようなバリアントには、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するバリアントが含まれる。ある種の実施形態において、標的は、天然に存在するタンパク質の1つ又はそれ以上のドメインの欠失を含む。
【0100】
抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。モノクローナル抗体は、単一の細胞クローン又はハイブリドーマの産物である抗体を表し得る。モノクローナル抗体は、単一分子の免疫グロブリン種を産生するために、免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖及び軽鎖から、組換え法によって作製された抗体も表し得る。モノクローナル抗体調製物内の抗体に対するアミノ酸配列は実質的に均一であり、このような調製物内の抗体の結合活性は、同一又は類似の結合アッセイにおいて比較したときに、実質的に同一の抗原結合活性を示し得る。以下でさらに記載されているように、様々な抗体及びモノクローナル抗体の特徴は、本分野において周知である。
【0101】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え、発現された骨髄腫細胞株、ファージディスプレー及びコンビナトリアル抗体ライブラリー法又はこれらの組み合わせの使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、本分野において公知であり、例えば、「Harlow and Lane.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981);Harlow et al.,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999),and Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,W.H.Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991)に教示されているものなどのハイブリドーマ技術を用いて作製することが可能である。組換え法、ファージディスプレイ法及び免疫化された動物及び未処置動物から得られたライブラリーを含むコンビナトリアル抗体ライブラリー法によってモノクローナル抗体を作製するための公知の方法の例は、「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,W.H.Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991)」に記載されているのを見出すことができる。
【0102】
生物医薬として使用するためのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。むしろ、先述のように、モノクローナル抗体とは、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一のクローンに由来する抗体を表し、必ずしもそれが産生される方法によらない。
【0103】
抗体機能的断片又は抗原結合断片は、その標的特異的結合活性の一部又は全部を保持する抗体の一部を表す。このような機能的断片には、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ペプチボディ及びミニボディなどの断片が含まれ得る。他の機能的断片には、例えば、重(H)又は軽(L)鎖ポリペプチド、可変重(VH)及び可変軽(VL)鎖領域ポリペプチド、相補性決定領域(CDR)ポリペプチド、単一ドメイン並びに標的特異的結合活性を保持するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが含まれ得る。
【0104】
「ペプチボディ」は、抗体CH1、CL、VH及びVLドメインを除外する抗体Fcドメイン(すなわち、CH2及びCH3抗体ドメイン)並びにFab及びF(ab)2を含む分子を表し、Fcドメインは、1つ又はそれ以上のペプチド、好ましくは、薬理学的に活性なペプチド、特に好ましくは、ランダムに生成された薬理学的に活性なペプチドに付着されている。ペプチボディの作製は、2000年5月4日に公開されたPCT公報WO00/24782号に一般的に記述されている。
【0105】
本明細書において、ペプチボディは抗体機能的断片としても含められる。このような抗体結合断片は、例えば、Harlow and Lane,上記;Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),NewYork:VCH Publisher,Inc.);Huston et al.,Cell Biophysics,22:189−224(1993);Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol.,178:497−515(1989)及びDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,Second Ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY(1990)に記載されているのを見出すことができる。
【0106】
標的分子への有益な結合特性を示す抗体及びその機能的抗体断片に関して、様々な形態、改変及び修飾が本分野において公知である。製剤中で使用するための標的特異的モノクローナル抗体は、このような様々なモノクローナル抗体の形態、改変及び修飾の何れをも含むことができる。本分野において公知であるこのような様々な形態及び用語の例は、以下に記載されている。
【0107】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片を表し、F(ab’)2断片は、ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含むが、Fcを欠如する二価断片であり、Fd断片はVH及びCH1ドメインからなり、Fv断片は抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなり、dAb断片(Ward et al.(1989)Nature341:544−546,(1989))はVHドメインからなる。
【0108】
抗体は、1つ又はそれ以上の結合部位を有し得る。2以上の結合部位が存在する場合には、結合部位は互いに同一であり得、又は異なり得る。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、一本鎖抗体又はFab断片は1つの結合部位を有するのに対して、「二重特異的」又は「二機能性」抗体は2つの異なる結語部位を有する。
【0109】
一本鎖抗体(scFv)は、リンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介してVL及びVH領域が連結されて、連続するポリペプチド鎖を形成する抗体を表し、リンカーは、タンパク質鎖が自身の上に折り返し、一価の抗原結語部位を形成するのに十分に長い(例えば、Bird et al.,Science242:423−26(1988)及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−83(1988)を参照。)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を表し、各ポリペプチド鎖は、同一鎖上の2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎ、従って、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合できるようにするリンカーによって連結されたVH及びVLドメインを含む(例えば、Holliger et al.Proc.Natl.Acad.Sd.USA90:6444−48(1993)及びPoljak et alStructure2:1121−23(1994)を参照)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合には、それらの対合から得られるダイアボディは2つの同じ抗原結合部位を有する。2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製するために、異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用することができる。同様に、トリボディ及びテトラボディは、それぞれ3つ及び4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ、同一又は別異であり得る3つ及び4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0110】
CDRは、免疫グロブリン(Ig又は抗体)VHβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(H1、H2又はH3)の1つを含有する領域又は抗体VLβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(L1、L2又はL3)の1つを含有する領域を表す。従って、CDRは、フレーム領域配列内に散在された可変領域配列である。CDR領域は当業者に公知であり、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域として、例えば、Kabatによって定義されている(Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1−75(1978))。CDR領域配列は、保存されたβ−シートフレームワークの一部でなく、従って、異なる立体構造を採ることができる残基としてもChothiaによって構造的に定義されている(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。両用語ともに、本分野において周知である。多数の構造の比較によって、標準的抗体可変ドメイン内のCDRの位置が決定されている(Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948(1997);Morea et al.,Methods20:267−279(2000))。異なる抗体中において、ループ内の残基の数は変動するので、標準的な位置に対する追加のループ残基には、標準的な可変ドメイン付番スキーム中の残基番号の隣に、慣用的にa、b、cなどが付番される(Al−Lazikani et al.,上記(1997))。このような命名法は、同様に、当業者に公知である。
【0111】
例えば、Kabat(超可変的)又はChothia(構造的)表記の何れかに従って定義されたCDRが、以下の表に記載されている。
【0112】
【表1】
【0113】
キメラ抗体とは、ある抗体由来の1つ又はそれ以上の領域と及び1つ又はそれ以上の別の抗体由来の1つ又はそれ以上の領域とを含有する抗体を表す。1つの例において、CDRの1つ又はそれ以上が標的分子に対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。別の例において、CDRの全てが標的分子に対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。さらに別の具体例において、2以上の非ヒト標的特異的抗体由来のCDRが、キメラ抗体中で混合され、適合される。例えば、キメラ抗体は、第一の非ヒト標的特異的抗体の軽鎖由来のCDR1、CDR2及び第二の非ヒト標的特異的抗体の軽鎖由来のCDR3及び第三の標的特異的抗体由来の重鎖由来のCDRを含むことができる。さらに、フレームワーク領域は、同一のものの1つから由来することができ、又は1つもしくはそれ以上の異なるヒト抗体若しくはヒト化抗体に由来することができる。ドナー及びレシピエント抗体の両者がヒトであるキメラ抗体を作製することができる。
【0114】
ヒト化抗体又は移植された抗体は、ヒト対象に投与された場合に、非ヒト種の抗体と比べて、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性がより少なくなるように、及び/又はより軽い免疫応答を誘導するように、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加だけ、非ヒト種抗体配列と異なる配列を有する。一つの例において、ヒト化抗体を作製するために、非ヒト種抗体の重鎖及び/又は軽鎖のフレームワーク及び定常ドメイン中のある種のアミノ酸が変化を受け得る。別の例において、ヒト抗体由来の定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合され得る。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号及び同第5,877,293号に見出され得る。ヒト化抗体には、抗体再表面化法などを用いて作製された抗体も含まれる。
【0115】
ヒト抗体とは、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ又はそれ以上の可変領域及び定常領域を有する抗体を表す。例えば、完全なヒト抗体には、可変及び定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体が含まれる。ヒト抗体は、本分野で公知の様々な方法を用いて調製することが可能である。
【0116】
分子をイムノアドヘシンにするために、共有的に又は非共有的に分子中に1つ又はそれ以上のCDRを取り込ませることも可能である。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを取り込むことができ、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合させることができ、又は非共有的にCDRを取り込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが対象の特定抗原へ特異的に結合できるようにする。
【0117】
中和抗体又は阻害抗体は、標的特異的モノクローナル抗体の過剰が標的に結合された結合対の量を低下させる場合に、標的分子の結合対への結合を阻害する標的特異的モノクローナル抗体を表す。結合阻害は、少なくとも約10%、特に、少なくとも約20%生じ得る。様々な具体例において、モノクローナル抗体は、標的に結合される結合対の量を、例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%及び99.9%低下させることができる。結合の低下は、例えば、インビトロ競合結合アッセイにおいて測定されるように、当業者に公知の何れかの手段によって測定され得る。
【0118】
拮抗性抗体は、標的分子を発現している細胞、組織又は生物に添加されたときに、標的分子の活性を阻害する抗体を表す。活性の減弱は、結合対のみの存在下での標的分子活性のレベルと比べて、少なくとも約5%、特に少なくとも約10%、より具体的には少なくとも約15%又はそれ以上であり得る。様々な具体例において、本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%又は100%だけ、標的分子活性を阻害することができる。
【0119】
上記標的特異的モノクローナル抗体と同様に、さらなる実施形態において、様々な実施形態において使用するための標的特異的モノクローナル抗体には、標的分子の拮抗活性を示すモノクローナル抗体が含まれ得る。標的分子活性のアンタゴニストは、その結合対によって結合され又は刺激された場合に、標的分子の少なくとも1つの機能又は活性を減少させる。このような機能には、例えば、細胞制御、遺伝子制御、タンパク質制御、シグナル伝達、細胞増殖、分化、遊走、細胞の生存の刺激若しくは阻害又は他のあらゆる生化学的及び/又は生理学的機能が含まれ得る。標的分子の他の機能又は活性も、本発明の生物医薬として使用するための拮抗性標的特異的モノクローナル抗体によって低減又は阻害され得る。本明細書に提供されている教示及び指針に鑑みれば、当業者は、異なる拮抗活性を示す標的特異的モノクローナル抗体の幅広い範囲を作製し、同定することができる。
【0120】
拮抗性標的特異的モノクローナル抗体は、本明細書に記載されているように作製及び同定することができる。拮抗性の標的特異的モノクローナル抗体を同定するための具体的な方法は、標的特異的モノクローナル抗体を、結合対又は他のアゴニストの存在下で、その結合対に対して応答性である標的分子発現細胞と接触させることを含む。接触は、結合及び標的分子の機能又は活性の減少又は低下を測定することができるのに十分な条件下で行われる。標的の少なくとも1つの機能又は活性を減少させ、低下させ、又は抑制する標的特異的モノクローナル抗体は、標的特異的拮抗性モノクローナル抗体として同定される。
【0121】
作動性抗体は、標的分子を発現する細胞、組織又は生物に添加されたときに、少なくとも約5%、特に少なくとも約10%又は約15%、標的分子を活性化する抗体を表し、ここで、100%の活性化とは、結合対の同じモル量によって、生理的条件下で達成される活性化のレベルである。様々な具体例において、本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、750%又は1000%、標的分子活性を活性化することができる。
【0122】
さらなる実施形態において、様々な実施形態において使用するための標的特異的モノクローナル抗体には、標的分子作動活性を示すモノクローナル抗体が含まれ得る。標的分子活性のアゴニストは、その結合対によって結合された場合に、標的分子の少なくとも1つの機能又は活性を増加させる分子を表す。増加され得る活性には、例えば、拮抗活性に関して先述されているものが含まれる。従って、標的分子アンタゴニスト活性を有する標的特異的モノクローナル抗体は、標的分子の1つ又はそれ以上の細胞機能又は活性を減少させ、低下させ又は抑制する。標的分子アゴニスト活性を有する標的特異的モノクローナル抗体は、標的分子の1つ又はそれ以上の細胞機能又は活性を増加させ、促進し又は刺激する。本明細書に提供されている教示及び指針に鑑みれば、当業者は、異なる拮抗又は作動活性を示す標的特異的モノクローナル抗体の幅広い範囲を作製し、同定することができる。
【0123】
本明細書に提供されている教示及び指針に鑑みれば、当業者は、作動性標的特異的モノクローナル抗体を作製するための本分野で周知の免疫化法、ハイブリドーマ製造、骨髄腫細胞株発現及びスクリーニング法を使用することができる。作動性の標的特異的モノクローナル抗体を同定するための方法は、標的特異的モノクローナル抗体を、結合及び標的分子の機能又は活性の刺激又は増加の測定に十分な条件下で、標的分子結合対に対して応答性である標的分子発現細胞と接触させることを含む。標的分子の少なくとも1つの機能又は活性を増加させ、刺激し、又は促進する標的特異的モノクローナル抗体は、標的特異的作動性モノクローナル抗体として同定される。
【0124】
エピトープとは、抗体の抗原結合部位内の1つ又はそれ以上の抗体に特異的に結合する分子の一部、例えば、ポリペプチドの一部を表す。エピトープ決定基は、抗体に結合する分子の連続的又は非連続的領域を含み得る。エピトープ決定基は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基も含むことができ、特異的な三次元構造的特徴及び/又は特異的な電荷特徴を有することができる。
【0125】
特異的結合は、関連するが、標的でない他の分子と比べて、又は他の非標的分子と比べて、標的分子に対して優先的な結合を示す標的特異的モノクローナル抗体を表す。優先的な結合には、その標的分子への検出可能な結合を示す一方で、関連するが、標的でない別の分子には検出可能な結合を殆ど又は全く示さない本発明の生物医薬として使用するためのモノクローナル抗体が含まれる。
【0126】
特異的結合は、例えば、親和性(Ka又はKd)、会合定数(kon)、解離定数(koff)、結合力又はこれらの組み合わせなど、当業者に公知の様々な測定の何れによっても測定することができる。本分野で周知の様々な方法又は測定の何れも使用することができ、標的特異的結合活性を測定するために適用することができる。このような方法及び測定には、例えば、標的分子と非標的分子間の見かけの結合又は相対的結合が含まれる。このような見かけの結合又は相対的結合を測定するために、定量的測定と定性的測定の両方を使用することが可能である。結合測定の具体例には、例えば、競合結合アッセイ、タンパク質又はウェスタンブロット法、ELISA,RIA、表面プラズモン共鳴、エバネセント波法、フローサイトメトリー及び/又は共焦点顕微鏡が含まれる。
【0127】
さらに、拮抗性又は作動性の標的特異的モノクローナル抗体の特異的結合は、例えば、細胞機能又は活性の変化を測定することを含む、上記又は下記方法の何れによっても測定することが可能である。増殖、分化又は他の生化学的及び/又は生理学的機能などの細胞機能又は活性の変化を測定する方法は、本分野において公知である。先述されている結合アッセイと同様、1つ又はそれ以上の細胞機能を拮抗又は作動することに関して、見かけの又は相対的測定を行うために、定量的測定と定性的測定の両方を使用することが可能である。
【0128】
本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片は、様々な抗体形態の何れかで作製することが可能であり、及び/又は先述されている様々な様式の何れかで、それらの特異的標的結合活性を維持しながら改変若しくは修飾することが可能である。標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片のこのような抗体形態、改変又は修飾(これらの組み合わせを含む。)の何れもが、生物医薬として使用され得る。生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片のこのような様々な抗体形態、改変又は修飾の何れもが、本明細書に記載されている方法、組成物及び/又は製品において同様に使用され得る。例えば、標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片には、標的特異的な移植、ヒト化、Fd、Fv、Fab、F(ab)2、scFv及びペプチボディモノクローナル抗体並び先述されている全ての他の形態、改変及び/又は修飾が含まれ、当業者に周知の他の形態が含まれ得る。
【0129】
ハイブリドーマを作製する方法及びハイブリドーマ技術を用いて標的特異的モノクローナル抗体をスクリーニングする方法は本分野において公知である。例えば、ポリペプチドなどの標的分子でマウスを免疫化することができ、一旦、免疫応答が検出されたら、例えば、標的分子に対して特異的な抗体がマウス血清中に検出されたら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで、周知の方法によって、何れかの適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞に、脾細胞を融合させる。限界希釈によって、ハイブリドーマを選択し、クローニングする。次いで、標的分子を結合することができる抗体を分泌する細胞に関して、本分野で公知の方法によって、ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することによって、一般に抗体の高いレベルを含有する腹水液が生成され得る。
【0130】
さらに、標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、原核生物又は真核生物宿主中での組換え発現を使用することができる。単一の標的特異的モノクローナル抗体種又はその機能的断片を作製するために、組換え発現を使用することができる。あるいは、重鎖及び軽鎖の多様なライブラリー又は可変重鎖及び可変軽鎖の組み合わせを作製するために、組換え発現を使用することができ、次いで、標的分子への特異的結合活性を示すモノクローナル抗体又はその機能的断片に対してスクリーニングすることができる。例えば、重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はその機能的断片は、特異的モノクローナル抗体種を作製するために、本分野で周知の方法を用いて、標的特異的モノクローナル抗体をコードする核酸から同時発現させ得る。重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はこれらの機能的断片をコードする核酸の同時発現された集団から、本分野で周知の方法を用いて、ライブラリーを作製し、標的特異的モノクローナル抗体の同定のために、標的分子への親和性結合によってスクリーニングすることができる。このような方法は、例えば、Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,上記;Huse et al.,Science246:1275−81(1989);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7978−82(1991);Kang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:4363−66(1991);Pluckthun and Skerra,上記;Felici et al.,J.Mol.Biol.222:301−310(1991);Lerner et al.,Science258:1313−14(1992)及び米国特許第5,427,908号に記載されているのを見出すことができる。
【0131】
コードする核酸のクローニングは、当業者に周知の方法を用いて達成することができる。同様に、VH及び/又はVLコード核酸を含むコードする核酸の重鎖及び/又は軽鎖レパートリーのクローニングも、当業者に周知の方法によって達成することができる。このような方法には、例えば、発現クローニング、相補的プローブを用いたハイブリッド形成スクリーニング、プライマーの相補対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は相補的プライマーを用いる利ガーゼ連鎖反応(LCR)、逆転写酵素PCR(RT−PCR)などが含まれる。このような方法は、例えば、「Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ThridEd.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)」及び「Ansubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)」中に記載されているのを見出すことができる。
【0132】
コードする核酸は、National Institutes of Health(NIH)のNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって運営されているものなどの完全なゲノムデータベースを含む様々な公共的データベースの何れかから取得することも可能である。プライマーは入手可能であり、又は抗体の可変若しくは定常領域部分の保存された一部を用いて容易に設計できるので、重鎖及び/又は軽鎖に対する単一のコード核酸又はコード核酸のレパートリー又はこれらの断片の何れかを単離する特に有用な方法は、コード領域部分の具体的な知識なしに達成することができる。例えば、コード核酸のレパートリーは、PCRと一緒にこのような領域に対する縮重プライマーの複数を用いてクローニングすることができる。このような方法は本分野において公知であり、例えば、Huse他、上記及び「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.、上記」に記載されているのを見出すことができる。本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、上記方法の何れも及び本分野で公知の他の方法(これらの組み合わせを含む。)を使用することができる。
【0133】
様々な実施形態において、抗体、抗体の機能的断片を治療的ポリペプチドとして有する製剤が提供される。治療的ポリペプチドには、モノクローナル抗体、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又はペプチボディが含まれ得る。
【0134】
抗体又は抗体の機能的断片の濃度は、例えば、生物医薬の活性、治療されるべき適応症、投与の様式、治療計画及び製剤が液体又は凍結乾燥された形態の何れかで長期保存が予定されているかどうかに応じて変動し得る。当業者は、過度の実験操作なしに、およその生物医薬濃度を決定することができる。医学的適応症、投与の様式及び治療計画の幅広い範囲に対して、米国内での治療的使用に対して承認されている80超の生物医薬が存在する。これらの承認された生物医薬及びその他の生物医薬は、様々な実施形態において使用することができる生物医薬濃度の範囲の例であり得る。
【0135】
一般に、生物医薬、例えば、治療的ポリペプチド生物医薬は、約1から200mg/mL、約10から200mg/mL、約20から180mg/mLの間、約30から160mg/mLの間、約40から120mg/mL、又は約50から100mg/mL、約60から80mg/mL又は約30から50mg/mLの間の濃度で、様々な実施形態の製剤中に含めることができる。
【0136】
様々な実施形態において、生物医薬は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの間の濃度を有する抗体又は抗原結合断片であり得る。
【0137】
これらの範囲より下、上又は間の生物医薬濃度及び/又は量も、本明細書に記載されている製剤において使用することができる。例えば、約1.0mg/mL未満で、1つ又はそれ以上の生物医薬を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、特に保存用に製剤化される場合、約200mg/mLを上回る1つ又はそれ以上の生物医薬の濃度を含有することができる。従って、例えば、約1、5、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190若しくは200mg若しくはそれ以上などの、1つ又はそれ以上の生物医薬の所望される濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。以下の例には、約3mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL又は約100mg/mLの濃度で治療用ポリペプチド(抗体)を有する製剤に対する結果が提供されている。
【0138】
様々な実施形態において、製剤は、製剤中に生物医薬の組み合わせを含むことができる。例えば、本発明の製剤は、1つ又はそれ以上の症状の治療用の単一の生物医薬を含むことができる。本発明の製剤は、単一又は複数の症状に対して、2つ又はそれ以上の異なる生物医薬を含むこともできる。本発明の製剤中での複数の生物医薬の使用は、例えば、同一又は別異の適応症に向けられ得る。同様に、例えば、病的症状及び一次的治療によって引き起こされた1つ又はそれ以上の副作用の両方を治療するために、本発明の製剤中で複数の生物医薬を使用することができる。複数の生物医薬は、例えば、病的症状の進行の同時治療及びモニタリングなどの様々な医学的目的を達成するために、本発明の製剤中に含めることもできる。一部又は全部の示唆される治療及び/又は診断に対して単一の製剤が十分であり得るので、上に例示されているもの及び本分野において周知の他の組み合わせなどの複数同時療法は、患者の服薬遵守のために特に有用である。当業者は、組み合わせ療法の幅広い範囲に対して生物医薬を混合できることを知悉する。同様に、様々な実施形態において、製剤は、小分子薬物とともに及び1つ又はそれ以上の小分子医薬との、1つ又はそれ以上の生物医薬の組み合わせとともに使用することができる。従って、様々な実施形態において、1、2、3、4、5若しくは6又はそれ以上の異なる生物医薬を含有する製剤及び1つ又はそれ以上の小分子医薬と組み合わされた1つ又はそれ以上の生物医薬を含有する本発明の製剤が提供される。
【0139】
様々な実施形態において、製剤は、本分野で公知の1つ又はそれ以上の防腐剤及び/又は添加物を含むことができる。同様に、製剤は、様々な公知の送達製剤の何れにもさらに製剤化することができる。例えば、製剤は、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味剤及び着香剤を含むことができる。このような場合によって使用される成分、それらの化学的及び機能的特徴は、本分野において公知である。投与後における生物医薬の迅速な放出、持続的放出又は遅延した放出を促進する製剤も、同様に、本分野において公知である。本発明の製剤は、本分野で公知のこれらの又はその他の製剤成分を含むように作製することができる。
【0140】
一旦、製剤が本明細書中に記載されているとおりに調製されたら、製剤中に含有される1つ又はそれ以上の生物医薬の安定性は、本分野で公知の方法を用いて評価することができる。幾つかの方法が実施例中で以下に例示されており、サイズ排除クロマトグラフィー、粒子計数及び陽イオン交換クロマトグラフィーが含まれる。他の方法は、例えば、結合活性、他の生化学的活性及び/又は生理的活性を含む様々な機能的アッセイの何れをも含むことができ、本発明の緩衝化された製剤中での生物医薬の安定性を測定するために、2つ又はそれ以上の異なる時点で評価することができる。
【0141】
製剤は、一般に、医薬の標準に従って、及び医薬等級の試薬を用いて調製することができる。同様に、製剤は、無菌製造環境中で無菌試薬を用いて調製することができ、又は調製後に無菌化することができる。無菌注射可能溶液は、例えば、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又は組み合わせとともに、グルタミン酸緩衝液又は賦形剤中に、必要とされる量の1つ又はそれ以上の生物医薬を取り込ませた後に、滅菌精密ろ過を行うなど、本分野で公知の操作を用いて調製することができる。様々な実施形態において、無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末には、例えば、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)が含まれ得る。このような乾燥法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から、何れかのさらなる所望の成分と一緒に、1つ又はそれ以上の生物医薬の粉末を与える。
【0142】
投与及び投薬治療計画は、最適な治療応答に対する有効量を与えるように調整することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与することができ、又は、治療状況の緊急性によって示されたとおりに、用量を比例的に減少若しくは増加させ得る。1つ又はそれ以上の生物医薬の有効量を投与する上で、投薬量の投与の容易さ及び均一さのために、単位投薬形態での静脈内、非経口又は皮下注射用の製剤を製剤化することが有用であり得る。単位投薬とは、治療されるべき対象に対する統一された投薬量として適合された、医薬の物理的に分離された量を表し、各単位は、所望される治療効果を生じるように計算された活性生物医薬の所定量を含有する。
【0143】
投薬は、製剤中に使用される抗体に依存する。例えば、本明細書中に記載されている製剤中で抗NGF抗体が使用される場合には、投薬頻度は、製剤中で使用されるその抗NGF抗体の薬物動態学的パラメータに依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで、組成物を投与することができる。所望される効果の例は、抗NGF抗体を含む製剤の投与後における疼痛又は神経因性疼痛の減弱であり得る。
【0144】
組成物は、従って、単回投薬として、又は経時的に2回若しくはそれ以上の投薬として(所望の分子の同じ量を含有してもよく、含有しなくてもよい。)、又はインプラント装置又はカテーテルを介した連続注入として投与され得る。適切な投薬量のさらなる精緻化は、当業者によって日常的に行われ、当業者によって日常的に行われる作業の範疇に属する。適切な投薬量は、適切な用量応答データの使用を通じて確認し得る。様々な実施形態において、本明細書に記載されている製剤中の抗体は、長期にわたる期間を通じて、患者に投与され得る。完全なヒト抗体の慢性投与は、非ヒト動物中でヒト抗原に対して産生される抗体(例えば、非ヒト種において産生される非完全ヒト抗体)と関連付けられ得る有害な免疫又はアレルギー応答を最小限に抑えることができる。
【0145】
治療的に使用されるべき抗NGF抗体含有医薬又は他のあらゆる抗体含有製剤の有効量は、例えば、治療的な文脈及び目的に依存し得る。当業者は、治療用のための適切な投薬レベルは、送達される分子、抗NGF抗体が使用されている適応症、投与の経路及びサイズ(体重、体表面又は臓器サイズ)及び/又は患者の状態(年齢及び一般的な健康)に部分的に依存して変動する。ある種の実施形態において、医師は、最適な治療効果を得るために、投薬量を滴定し、投与の経路を修飾し得る。典型的な投薬量は、上述の要因に応じて、約0.1μg/kgから最大約30mg/kg又はそれ以上の範囲であり得る。好ましい実施形態において、投薬量は、約0.1μg/kgから最大約30mg/kg、より好ましくは約1μg/kgから最大約30mg/kg又はさらに好ましくは約5μg/kgから最大約30mg/kgの範囲であり得る。当業者によって認知される適切な条件下では、より大量の投与の何らかの負の効果がこのような投薬の有益性を上回らない限り、30mg/kgより高い投薬量を投与できることも想定することができる。
【0146】
様々な実施形態において、さらなる例示のために、治療用抗体又はその機能的断片などのポリペプチド生物医薬の有効量は、例えば、ある期間にわたって、計画された間隔を置いて、2回以上投与することができる。治療用抗体は、例えば一ヶ月、二ヶ月若しくは三ヶ月又はそれ以上など、少なくとも一ヶ月又はそれ以上の期間にわたって投与され得る。慢性的な症状の治療に関しては、長期の持続的治療が一般に最も効果的である。例えば1週から6週の期間を含む急性症状を治療する場合には、投与のより短い期間が十分であり得る。一般に、選択された一又は複数の指標に関して、患者がベースラインを上回る改善の医学的に妥当な程度を呈するまで、治療用抗体又は他の生物医薬が投与される。
【0147】
選択された生物医薬及び治療されるべき適応症に応じて、治療的有効量は、標的とされる病的状態の少なくとも1つの症候を、治療されていない対象と比べて、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%若しくは60%又はそれ以上低下させるのに十分である。症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、ヒトにおいて標的とされる症状に対する効力を予測する動物モデル系において評価することができる。あるいは、症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、インビボでの治療活性の指標となる製剤のインビトロ機能又は活性を調べることによって評価することができる。
【0148】
製剤中の1つ又はそれ以上の生物医薬の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、製剤及び投与様式に対する所望の治療的応答を達成するのに有効である活性な生物医薬の量を得るために変動させることができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症候の重度並びに選択された生物医薬及び/又は投与経路などの因子に基づいて、投与される量を測定することができる。選択された投薬量レベルは、例えば、使用される生物医薬の活性、投与の経路、投与の時間、排泄の速度、治療の期間、使用される具体的な組成物と組み合わされて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び以前の病歴並びに医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存し得る。様々な実施形態は、1日当り対象のkg体重当り抗体約1ng(1ng/kg/日)から約10mg/kg/日、より具体的には、約500ng/kg/日から約5mg/kg/日、さらに具体的には、約5μg/kg/日から約2mg/kg/日の投薬量で、本発明の製剤中の抗体又はその機能的断片などの治療用ポリペプチドを対象に投与することを含み得る。適切な条件下では、より高い用量を投与することも可能である。
【0149】
本分野の技術を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬製剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、望ましい治療効果を達成するために必要とされるレベルより低いレベル本発明の製剤の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。一般に、本発明の製剤の適切な一日投薬量は、治療効果をもたらすのに効果的な最低用量である生物医薬の量である。このような有効量は、一般に、先述されている要因に依存する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であることが特に有用である。所望であれば、製剤の有効量を達成するための有効一日用量は、場合により単位投薬量で、一日を通じて、適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6又はそれ以上の副投薬として投与することができる。
【0150】
様々な実施形態において、製剤は、例えば、本分野で公知の医療用具を用いて投与することができる。製剤を投与するための医療用具には、注射器及び自動注入装置が含まれ得る。注射器は、予め充填された注射器であり得る。様々な実施形態において、米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号;又は米国特許第4,596,556号に記載されている用具など、無針皮下注射器具を用いて製剤を投与することができる。本明細書に記載されている製剤とともに有用であり得る公知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で医薬を分配するためのインプラント可能な微少注入ポンプを記載する米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて医薬を投与するための治療用具を記載する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを記載する米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための変動流量インプラント可能注入装置を記載する米国特許第4,447.224号;マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,439,196号及び浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,475,196号が含まれる。このような他の多くのインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者に公知である。さらに、様々な実施形態において、製剤は、予め充填された注射器から投与することができる。
【0151】
様々な実施形態において、製剤中で使用するための生物医薬は、インビボでの選択的な分布を促進するように製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。脳血液関門の通過を促進するために、所望であれば、製剤は、例えば、1つ又はそれ以上の生物医薬をカプセル封入するためのリポソームをさらに含むことができる。リポソームを製造する方法に関しては、例えば、米国特許第4,522,811号;米国特許第5,374,548号及び米国特許第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器中に選択的に輸送され、従って、選択された生物医薬の標的誘導された送達を強化する1つ又はそれ以上の部分をさらに含有し得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。典型的な標的誘導部分には、フォラート又はビオチン(例えば、Low他に付与された米国特許第5,416,016号);マンノシド(Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.(1995)FEBSLett.357:140;M.Owais et al.(1995)Antimicrob.AgentsChemother.39:180)又は界面活性プロテインA受容体(Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134)が含まれる。
【0152】
生物医薬、例えば、関心が持たれる抗体又は抗原結合断片の調製後、生物医薬を含む医薬製剤を調製することができる。一般に、製剤化されるべき抗体又は抗原結合断片は、凍結乾燥に供せられておらず、溶液中に存在する。溶液は、水溶液であり得る。しかしながら、様々な実施形態において、事前の凍結乾燥が行われ得る。製剤中に存在する抗体の治療的有効量は、投与の所望される投薬容量及び様式を考慮に入れることによって決定することができる。例えば、約0.1mg/mLから約60mg/mL、約10g/mLから約40g/mL又は約20mg/mLから約35mg/mL。
【0153】
様々な実施形態において、製剤を調製する方法が提供される。この方法は、緩衝溶液、例えば、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸緩衝液、プロリン及び治療的ポリペプチドの有効量を組み合わせることを含む。製剤の幅広い範囲を作製するために、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又はそれ以上を生物医薬の1つ又はそれ以上の有効量と組み合わせることができる。
【0154】
pH緩衝化された溶液中に抗体を含む水性製剤を調製することが可能である。緩衝液は、例えば、グルタミン酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液又は酢酸緩衝液であり得る。緩衝液は、約4.0から約6.0、約4.5から約5.5の範囲のpH又は約5.0のpHを有し得る。緩衝液濃度は、約1mMから約50mM、約5mMから約30mM、約10mM又は約30mMであり得る。
【0155】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する約3から約20mMの間のグルタミン酸緩衝液、約3%のL−プロリン及び治療用ポリペプチドの有効量を有する水溶液を含む製剤を含有する容器が提供される。簡潔に述べれば、本発明の組成物、キット及び/又は医薬に関して、製剤中の1つ又はそれ以上の生物医薬の合算された有効量を、単一の容器又は2以上の容器中に含めることができる。
【0156】
様々な実施形態によれば、製剤は、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール及び塩化ベンゾエトニウムなどの1つ又はそれ以上の防腐剤を実質的に含まないことができる。しかしながら、他の実施形態では、特に、製剤が複数投薬製剤である場合に、製剤中に防腐剤を含めることができる。防腐剤の濃度は、約0.1%から約2%又は約0.5%から約1%の範囲であり得る。
【0157】
製剤の所望される特徴に悪影響を与えない限り、「Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)」に記載されているものなどの、医薬として許容される、1つ又はそれ以上の他の担体、賦形剤又は安定化剤を製剤中に含めることができる。
【0158】
本明細書中に記載されている製剤は、治療されている適応症に対して所望される2以上の治療用タンパク質、好ましくは、他のタンパク質に悪影響を与えない相補的活性を有するタンパク質も含み得る。
【0159】
インビボ投与のために使用されるべき製剤は、無菌であり得る。これは、製剤を調製する前又は後に、無菌ろ過膜を通してろ過することによって達成することができる。
【0160】
造影成分を場合によって含めることが可能であり、パッケージは製剤を使用するための指示文書又はインタネットにアクセス可能な指示を含むこともできる。容器は、例えば、バイアル、瓶、注射器、予め充填された注射器又は複数分配パッケージングのための本分野で周知の様々な規格の何れをも含み得る。
【0161】
本明細書に記載されている抗体製剤は、治療用ポリペプチドの投与を必要とする様々な症状を治療するために使用することができる。例えば、患者中の症状がNGFの増加した発現又はNGFに対する増加した感受性によって引き起こされる場合には、本明細書に記載されている製剤は、NGFに対する抗体又は抗原結合断片とともに使用することができる。このような疾病も、「NGF媒介性疾患」又は「NGF媒介性症状」と称される。NGF発現又は感受性、「NGF媒介性疾患」又は「NGF媒介性症状」に関連する症状、NGFに対する抗体又は抗原結合断片に関するさらなる情報は、例えば、米国特許出願公開2005/0074821号A1に見出すことができる。他の症状を治療するための抗体製剤を調製することも可能である。
【0162】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含む製剤が提供される。グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液は、約5mMから約50mMの濃度を含む。様々な他の実施形態において、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液は約10mM、30mM又は50mMの濃度及び約5のpHを含む。幾つかの実施形態において、製剤は、等張濃度及び約5.0のpHを有することができる。
【0163】
様々な実施形態において、製剤中の抗体又は抗原結合断片は、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fc、ビス−scFv、一本鎖Fv(scFv)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ペプチボディ、VhHドメイン、V−NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、IgNAR又はレセプチボディを含む。抗体又は抗原結合断片は、成長因子を結合することができる。成長因子は、神経成長因子であり得る。NGFを含む製剤は、約10から約50mg/mLのNGFの濃度を有することができる。
【0164】
様々な実施形態において、製剤中の抗体又は抗原結合断片は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの間の濃度であり得る。
【0165】
様々な実施形態において、製剤は、約4.0から約6.0のpHを有する約1から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を含む。
【0166】
様々な実施形態において、グルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液がグルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウムから調製される。
【0167】
様々な実施形態において約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の有効量を組み合わせることを含む、製剤を調製する方法が提供される。抗体又は抗原結合断片は、成長因子に結合する。成長因子は、神経成長因子であり得る。
【0168】
様々な実施形態において、前記方法は、約4.0から約6.0のpHを有する約1から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を組み合わせることを含む。グルタミン酸又はアスパラギン酸は、グルタミン酸ナトリウムの約10mMの濃度を含む。pHは、約5.0である。
【0169】
様々な実施形態において、前記方法は抗体又は抗原結合断片を組み合わせることを含み、前記抗体又は抗原断片は、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fc、ビス−scFv、一本鎖Fv(scFv)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ペプチボディ、VhHドメイン、V−NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、IgNAR又はレセプチボディを含む。
【0170】
様々な実施形態において、前記方法は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの濃度を含む治療用ポリペプチドを組み合わせることを含む。
【0171】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する約3から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を有する水溶液を含む製剤を含有する容器が提供される。治療用ポリペプチドの濃度は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLである。様々な実施形態において、容器は、バイアル又は予め充填された注射器である。
【0172】
様々な実施形態において、患者中の、神経成長因子の増加した発現又は神経成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法が提供される。この方法は、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の有効量を含む製剤の医薬的有効量を患者に投与することを含む。症状は、疼痛又は神経因性疼痛であり得る。
【0173】
様々な実施形態において、製剤は、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝系を含む。緩衝系のグルタミン酸又はアスパラギン酸成分は、例えば、グルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウム塩又はその他の塩によって供給されることができ、約10mM(約5.0のpH)、約30mM又は約50mMの濃度で存在し、プロリンは約3.0%の濃度で存在し、抗体は約30mg/mLで存在する。製剤は、約5.0のpHを示し、治療用ポリペプチド(例えば、抗体)の存在下で、長期間にわたって緩衝能を維持する水溶液であり得る。長期間は、数週から数ヶ月であり得る。
【0174】
上記様々な実施形態の何れにおいても、製剤は、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液ではなく、酢酸緩衝液を含む。関連する実施形態において、製剤は酢酸緩衝液を含むが、但し、酢酸緩衝液を含む製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含有することはない。様々な他の実施形態において、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤が塩化ナトリウム等張量をさらに含まなければ及び/又は目的の生物医薬(例えば、抗体)が事前の凍結乾燥に供されていなければ、製剤は界面活性剤及びポリオールの両方を含むことはない。あるいは、製剤は、酢酸緩衝液、プロリン及び生物医薬(例えば、抗体)からなり得、又は実質的にこれらからなり得る。
【0175】
様々な実施形態において、プロリン及び治療用タンパク質から実質的になり、又はプロリン及び治療用タンパク質からなる製剤が提供される。このような製剤は、自己緩衝化製剤と称することができる。製剤中の治療用タンパク質は、製剤がさらなるグルタミン酸、アスパラギン酸又は酢酸緩衝液なしに、選択されたpHを維持する濃度の抗体又は抗原結合断片であり得る。抗体又は抗原結合断片は、成長因子、例えば、神経成長因子を結合し得る。
【0176】
様々な実施形態において、自己緩衝化製剤は、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片から実質的になり、又はこれらからなり、前記製剤は、保存の間、選択されたpHを維持する。
【0177】
選択されたpHを維持するとは、保存の開始時点で、pHが当初pHの10%内に維持されることを意味する。自己緩衝化製剤において、グルタミン酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液又は酢酸緩衝液などの別個の緩衝成分は、製剤の一部ではない。別個の緩衝溶液以外の製剤内の成分、例えば、医薬タンパク質(例えば、抗体)の能力は、所定の適用に対して十分なpHの変化に耐え得るので、このような製剤は「自己緩衝化」と記載することができる。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの濃度であり得る。
【0178】
様々な実施形態において、自己緩衝化製剤は、タンパク質(例えば、抗体又は抗原結合断片)、プロリン、溶媒を含むことができ、医薬として許容される1つ若しくはそれ以上の塩、浸透圧均衡剤(等張化剤)、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤、増量剤、凍結乾燥保護剤、消泡剤、キレート剤、防腐剤、色素、鎮痛剤又はさらなる薬剤をさらに含むことができる。
【0179】
ある種の実施形態に従う製剤は、タンパク質及び溶媒を含み、並びに低張、等張又は高張、好ましくは概ね等張、特に好ましくは等張である量で、医薬として許容される1つ又はそれ以上のポリオールをさらに含む自己緩衝化組成物を提供することができる。
【0180】
様々な実施形態において、1つ又はそれ以上の容器中に、抗体又は抗原結合製剤及びプロリンを含むキットが提供される。別の実施形態において、キットは、1つ又はそれ以上の容器中に、グルタミン酸、アスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片及びその使用に関する指示書を含むことができる。キットは、ヒトに使用するための医薬として許容される製剤である製剤を含むことができる。キットは、その使用のための指示書を含むこともできる。
【0181】
様々な実施形態において、キットは、生物医薬タンパク質を含むことができ、タンパク質は、ヒトの疾病を治療するために製剤化された生物医薬タンパク質、例えば、抗体又は抗原結合断片である。ある種の実施形態において、キットは、本明細書に記載されている1つ又はそれ以上の製剤を投与するための、1つ又はそれ以上の単一/又は複数チャンバーの注射器(例えば、液体注射器及びリオシリンジ(lyosryinge))を含むことができる。リオシリンジの例は、VetterGmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能な二重チャンバーの予め充填されたリオシリンジであるLyo−JectTMである。
【0182】
様々な実施形態において、キットは、注射器の中に搭載し、対象に投与する準備が整った形態で、部分的な真空下で、バイアル中に密封された、非経口、皮下、筋肉内又は静脈内投与用の製剤成分を含むことができる。これに関して、部分的真空下で、組成物をその中に配置することができる。これら及び他の実施形態の全てにおいて、キットは、先述の何れかに従って、1つ又はそれ以上のバイアルを含有することが可能であり、各バイアルは対象へ投与するための単一の単位用量を含有する。キットは、再構成時に、先述の何れかに従って、組成物を与える上記のように配置された凍結乾燥物を含むことができる。様々な実施形態において、キットは、凍結乾燥物及び凍結乾燥物を再構成するための無菌希釈剤を含有することができる。
【0183】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びその使用に関する指示書を1つまたはそれ以上の容器中に含むキットが提供される。
【0184】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液又はこのような緩衝液を調製するための適切な酢酸塩、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びこれらの使用に関する指示書を1つ又はそれ以上の容器中に含むキット(キットは、ポリオール及び界面活性剤の両方をさらに含むことはない。)が提供される。
【0185】
様々な他の実施形態において、約2%から約10%の濃度のプロリン及び保存の間、製剤が選択されたpHを維持する濃度の抗体又は抗原結合断片から実質的になり、又はこれらからなる製剤を含むキットが提供される。抗体又は抗原結合断片は、神経成長因子に結合することができる。キットは、キット中の試薬の使用に関する指示書をさらに含むことができる。
【0186】
本発明の実施形態は、本明細書に記載されている具体的な実施形態によって範囲を限定されるものではなく、本明細書に記載されている具体的な実施形態は本発明の実施形態の例示を目的とするものであり、機能的に均等である全ての組成物又は方法が、本発明の範囲に属する。本明細書に示され、及び記載されているものの他に、実際に、本発明の様々な修飾が、先述の記載及び添付の図面から当業者に明らかになるはずである。このような修飾は、添付の特許請求の範囲に属するものとする。
【0187】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示することを目的とするものに過ぎない。
【実施例1】
【0188】
製剤の安定性
抗体の安定性に対する様々な製剤の効果を測定するために、下表2に示されている幾つかの製剤を調製した。製剤化された抗体溶液約3.0mLを、様々な時間にわたって、異なる温度で含有する、ゴム製Daikyoフッ素重合体栓付きの5ccブローバック型タイプ1ガラスバイアル中に製剤を保存した。
【0189】
【表2】
【0190】
目的の抗体、例えば、NGFに対する抗体(IgG2)を含む製剤を調製した。NGFに対する抗体を調製する方法は本分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開2005/0074821号に見出すことができる。製剤は、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸又は酢酸緩衝液の水溶液を含んだ。緩衝液は10mMの濃度及び5.1のpHを有し、抗体は30mg/mLの濃度で存在した。上述のように、追加成分を各製剤に添加した。E51P30は、L−グルタミン酸、プロリン及び神経成長因子に対する抗体を含有した。
【0191】
神経成長因子に対する抗体の安定性を測定するための様々な方法を使用した。方法には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)及び粒子計数が含まれた。一般に、方法は、以下のように実施した。
【0192】
SECは、UVダイオードアレイ検出装置、冷却された自動試料回収装置、通常のフローセル及び温度制御されたカラム区画を搭載したAgilent1100キャピラリーHPLCシステム(Agilent,Palo Alto,CA,USA)上で行った。移動相は、pH6.6で、100mMリン酸ナトリウム(Amgen Spec NumberS2700R01)、330mMNaCl(AmgenSpecNumberS2706R02)を有する水を含んだ。SE分析のために、PhenomenexShodexKW−803カラム(300×8mm)(Phenomenex,Torrance,CA,USA)を使用した。カラム区画の温度は25℃に保たれ、流速は0.5mL/分であった。
【0193】
CEXは、UVダイオードアレイ検出装置、冷却された自動試料回収装置、通常のフローセル及び温度制御されたカラム区画を搭載したAgilent1100キャピラリーHPLCシステム(Agilent,Palo Alto,CA,USA)上で行った。移動相は、溶媒A中の10mMリン酸ナトリウム(Amgen Spec Number S2700R01)pH7.4及び溶媒B中の10mMリン酸ナトリウム(AmgenSpecNumberS2706R02)、250mMNaCl(AmgenSpecNumberS2706R02)pH7.4を有する水を含んだ。弱陽イオン交換カラム(Dionex ProPacWCX−10カラム−4×250mm,Dionex,Sunnyvale,CA,USA)を使用した。カラム区画の温度は25℃に保たれ、流速は0.8mL/分であった。
【0194】
肉眼で見えない粒子の光掩蔽技術を用いた分析は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)を用いて実施した。装置は、15μmEZY−CAL標準(カタログ番号6015,DukeScientific,PaloAlto,CA,USA)を用いて較正した。全ての製剤は、分析の前に、3時間脱気した。装置は、試料の間に、脱イオン水又は製剤緩衝液で清浄化した。粒子の数は、1mLの注射器を用いて、各抗体製剤の0.5mLの吸引を4回行うことによって測定した。
【0195】
本分野で公知の方法(例えば、米国特許出願公開20050074821号参照)によって、NGFに対する抗体を調製し、抗体を含む製剤を作製した。製剤中で使用されたNGF抗体は、IgG2抗体であった。様々な期間にわたって製剤を保存し、又は反復する凍結融解に供した。これらの製剤の分析は、図1Aから1D、2Aから2F及び3Aから3Cに示されており、これらの全てがNGFに結合する抗体を含有する。
【0196】
図1Aから1Dは、4℃、25℃、37℃での並びに反復する凍結(−30℃)及び室温での融解後における、表1に上記されている様々な製剤に対するSEC分析の結果を与える。幾つかの実験では、溶液は最長18ヶ月間保存され、次いで分析された。製剤は、30mg/mLの濃度のNGFに対する抗体、pH5.1の10mML−グルタミン酸緩衝液、10mML−アスパラギン酸緩衝液又は10mM酢酸緩衝液及び表中に示されている他の成分を含有した。
【0197】
保存中の抗体の凝集によって測定される抗体の安定性に関する情報を提供するために、SECを使用した。データは、主ピーク(単量体)のパーセントとして表されており、主ピークのパーセントが大きいほど、生じた凝集はより少ない。しかしながら、通常、プロリン含有製剤EP1P30は、他の製剤より、保存された抗体溶液に対してより優れた安定性を与えた。
【0198】
プロリン含有調製物である調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有した。サイズ排除クロマトグラフィーは、凝集の観点で、製剤中の生物医薬の安定性に関する情報を与えることができる。図中の各時点での主ピークのパーセントが大きいほど、生じた凝集(二量体及び他の高分子量凝集物を含む。)はより少ない。
【0199】
図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存後の結果を示している。図1Dは、反復された−30℃での凍結及び室温での融解後の結果を示している。
SECを用いて、一般に、E51P30製剤は、保存時間にわたって、主ピークのパーセントの最も少ない喪失を示すが、幾つかの製剤が特定の期間にわたって同等の結果を示し得る。4℃で12ヶ月又は18ヶ月間(図1A)、25℃で8週間、13週間又は25℃で6ヶ月(図1B)、特に37℃で6ヶ月(図1C)の保存後に、保存時間にわたっての主ピークのパーセントのより少ない低下が明瞭である。しかしながら、E51T30及びE51M30製剤も、ある温度で、増加した安定性を提供し得ることに注目すべきである。
【0200】
図1Dは、反復した凍結融解サイクル後に、様々な製剤から、一般に同等の結果が得られることを示している。
【0201】
保存された抗体及び他のポリペプチドの安定性に関する特徴は、不溶性タンパク質凝集物(以下、粒子と称される。)の発生であり得る。この文脈において、タンパク質性粒子は、例えば、不溶性ポリペプチドの断片又は凝集物を表し、可視性及び/又は非可視性であり得る。あるいは、粒子は、外来物質(すなわち、ガラス、糸くず、ゴム栓の小片の破片)から構成されることも可能であり、必ずしもポリペプチドから構成されるわけではない。これらの外来粒子は抗体及び他のポリペプチドに由来するものではなく、これらの実験に記載されている製剤中では、外来粒子は観察されなかった。可溶性タンパク質凝集物は、例えば、SECなどの方法を用いて評価することができるのに対して、不溶性のタンパク質性粒子は、例えば、液体粒子計数又は濁度測定技術(実験的光散乱アプローチ)などの方法を用いて評価することができる。
【0202】
可視性粒子は、一般に、100μmより大きなサイズを有する粒子として分類される。微粒子と考えられる非可視性粒子のサイズは、より小さい。HIAC装置を備えたLD−400レーザーシステムを用いて、2と400μmの間の粒子サイズを測定することができる。
【0203】
図2Aから2Fは、4℃、25℃及び37℃での様々な製剤の保存後における、粒子形成(>10μm又は>25μm)の分析から得られたデータを与える。図2Aから2Dに示されているデータは、mL当りの粒子の数に基づいて測定された評価を示している。多くの例で、4℃で18ヶ月を除き、プロリン含有製剤中には、mL当りのより少ない粒子が見出される。この好例は、>25℃で13週間保存した後のmL当りの10μm粒子の数である(図2C参照)。別の例は、37℃で4週間保存した後のmL当りの10μmより大きな粒子の数である(図2E参照)。
【0204】
製剤中のポリペプチドの化学製剤は、上述のように陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって測定された。この方法は、pH7.4での線形塩勾配を用いるタンパク質表面電荷の差及び弱陽イオン交換カラム(Dionex,WCX−10;Sunnyvale,CA)に基づいてイソフォームを分離した。
【0205】
図3Aから3Bは、凍結保存の5サイクル後における、粒子形成(>10μm又は>25μm)の分析から得られたデータを与える。製剤は、−30℃で保存した。幾つかの事例において、プロリンを含む製剤は、粒子形成(粒子サイズ>10μm)を欠如している点で、他の製剤と同程度に優れており、時には、他の製剤より優れていた。
【0206】
図4Aから4Cは、陽イオン交換クロマトグラフィーの結果を示している。4℃、25℃及び37℃での温置後、主ピーク(ピーク0)のパーセントの変化を分析した。主ピークの減少には、酸性ピークの増加が伴う(データは図示せず。)。これらの変化は、分子の化学的修飾(例えば、脱アミド化)によって引き起こされる。データは、3つの全温度での温置後における主ピークの最高のパーセントを維持するという点で、L−プロリンを含有する製剤(E51P30)が最も優れていることを示している。
【実施例2】
【0207】
バイアル及び予め充填された注射器中での製剤の安定性
バイアル又は予め充填された注射器中での保存中の様々な製剤の安定性を調べた。37℃で、1週、2週、1ヶ月及び2ヶ月後に、抗体を含む製剤の安定性を調べた。異なる温度で、様々な時間にわたって、バイアル又は予め充填された注射器の中に製剤を保存した。表3は、この研究で用いた幾つかの異なる製剤を列記している。
【0208】
【表3】
【0209】
実験の別の組は、製剤の異なる組を用いて行った(表3)。1つ(SBPT006 40)を除く全ての製剤は、30mM酢酸緩衝液、30mMアスパラギン酸緩衝液又は30mMグルタミン酸緩衝液pH5.2の少なくとも1つ及び40mg/mLの濃度の、神経成長因子に対する抗体を含有した。SBPT006 40は、3.32%プロリン及び40mg/mL抗体を含有し、5.2のpHを有した。
【0210】
SBPT006 40は自己緩衝化溶液であり、緩衝試薬を溶液中に含有しない。すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸又は酢酸緩衝液を含有しない。様々な実施形態が、プロリン及び抗体(例えば、神経成長因子に対する抗体)からなる又はプロリン及び抗体から実質的になる製剤に向けられる。プロリン及び抗体は、水溶液中に存在し得る。自己緩衝化製剤に関するさらなる情報は、PCT/US2006/022599号中に見出すことができる。
【0211】
図5Aから5Hは、37℃又は25℃で保存されたバイアル及び予め充填された注射器中での保存に対する比較データを示している。図5Aから5Dは、40mg/mLの抗体を使用した結果を表しているのに対して、図5Eから5Hは、3mg/mLの抗体を用いた結果を表している。ガラスバイアル及び予め充填された注射器中で研究された異なる製剤に対して得られた主ピークパーセント面積が示されている。使用される緩衝剤に関わらず、L−プロリンを含有する製剤は、25℃又は37℃で試料を2ヶ月間温置した後に、SECによって観察された主ピークの最高パーセントの観点で、より優れた安定性を示した。図5Aから5Dにおいて、製剤SBPT006 40(抗体の40mg/mLとともにプロリンを含有する自己緩衝化製剤)は、バイアル中であるか、又は予め充填された注射器中であるかを問わず、一貫して最も優れた結果を与えた。
【0212】
図5Eから5Fは、より低い抗体濃度(3mg/mL)での結果を表している。抗体のこの濃度では、幾つかのプロリン含有製剤は、非プロリン製剤と同じ程度に安定性を維持しないように見受けられる。しかしながら、プロリン含有製剤の幾つかは、非プロリン含有製剤と等しい又は非プロリン含有製剤より優れた安定性を与えることに注目すべきである。A52P 03は他の殆ど全ての製剤と比べて最も優れた安定性を与えるようであるが、この製剤はポリソルベート−20を全く含有しないので、この製剤中には目に見える粒状物が観察された。
【0213】
図6Aから6Dは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中で研究された異なる製剤に対して観察された陽イオン交換クロマトグラフィーから得られた結果を示している。37℃で、ピーク−0のパーセントの減少は、図6Aから6Bの多くの製剤で似通っているように見受けられる。しかしながら、バイアルでは、A52P 40が3ヵ月後に最も優れた結果を示すが、予め充填された注射器では、SBPT006 40は、同じ期間に最も優れた結果を示す。同様に、SBPT006 40は、バイアル中において、25℃で12ヶ月後に、最も優れた結果を示す(図6C)。
【0214】
図6Eから6Hは、3mg/mLの抗体濃度を用いたバイアル及び予め充填された注射器中での実験から得られたデータを表している。より低い抗体濃度が使用されていることを除き、製剤は、表3中に記載されているものと同様である。従って、A52P 03の製剤は、40mg/mLでなく、抗体の3mg/mLであることを除き、A52P 40と同じである。ほぼ全ての事例で、A52P 03(プロリン含有製剤)は、バイアル及び予め充填された注射器の中での2ヶ月又は3ヶ月の保存において、より大きな安定性を与えるが、この製剤は、ポリソルベート−20が存在しないために、粒状化の傾向があり得る。
【0215】
表4は、図7Aから7Bで使用される製剤の説明を与える。数字は、40mg/mLの抗体濃度を用いた、−30℃での製剤の保存から得られた結果を表している。
【0216】
【表4】
【0217】
製剤は、継続的に保存され(図7A)、又は凍結及び融解の5サイクルを経た(図7B)。12ヶ月の保存で、プロリン含有溶液がプロリンなしの製剤に比べて増加した安定性を与えたことが、図7Aから理解され得る。これは、数回の凍結−融解後についても当てはまった。
【0218】
図8Aから8G及び9Aから9Bは、IgG1インターロイキン抗体を用いて得られた結果を表している。図に示されている成分を添加した全ての製剤中で、100mg/mLの抗体を加えたpH5.2の酢酸緩衝液を使用した。これらの製剤中で使用される全ての賦形剤は、2%(w/v)の濃度であるPEG−6000を除き、270mMの濃度である。
【0219】
図8Aから8G中の全ての実験において、プロリン含有製剤は、より少ない凝集物を含有し(図8A又は8C)又は主ピークの増加したパーセントを示し(図8B、8D及び8E)、製剤中での抗体の増加した安定性を反映していた。図8Eは、0から6ヶ月の期間の図8Dの拡大図を表している。
【0220】
図9Aから9Dは、界面活性剤を加えたプロリン含有製剤を、界面活性剤を加えたソルビトール含有製剤に対して比較した、pH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液中での結果を表している。ソルビトール及びプロリンは270mMであり、両製剤は0.004%ポリソルベート20を含有する。プロリン及び界面活性剤の結果は、4℃又は29℃でのソルビトール及び界面活性剤の結果より優れていることが図から理解できる。
【0221】
上記の全ては、殆どの事例で、プロリン含有製剤が、抗体含有溶液の長期保存に対して、増加した安定性を与え、又は非プロリン含有製剤と少なくとも同様であることを示している。従って、プロリン含有溶液は、抗体含有溶液を長期保存するための新規の新しい製剤を与える。
【0222】
本願を通じて、様々な公報、特許及び特許出願が参照されている。これらの文献の開示内容全体が、参照により、本願に組み込まれる。しかしながら、このような文献の参照は、このような文献が本願の従来技術であることを認めたものと解釈すべきではない。さらに、文献は参照により組み込まれ得るに過ぎないので、このことは、出願人が文献の内容に完全に同意することを必ずしも示唆するものではない。
【0223】
様々な実施形態を参照しながら、本発明の様々な実施形態を記載してきたが、当業者は、上に詳述されている具体例及び研究が例示に過ぎないことを容易に理解する。本発明の精神を逸脱することなく、様々な修飾を施し得ることを理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年12月21日に出願された米国仮出願第60/876,801号(その開示の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本願は、全般的には、疾病を治療するための医薬、例えば、生物分子医薬又は生物医薬のための製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
組換えDNA技術の登場及び抗体作製における他の進歩とともに、癌から自己免疫疾患にわたる疾病の幅広い範囲を治療するために、タンパク質をベースとする治療薬は、医療従事者にとって利用可能な薬物のレパートリーに益々一般的な地位を占めるようになっている。疾病の治療において、生物分子、例えば、抗体又は組換えタンパク質を医薬として使用できるようになったことにより、四半世紀にわたって、医療看護及び生活の質が進歩を遂げた。2005年時点で、150を超える、タンパク質をベースとする承認を受けた医薬が市場に出回っており、この数は、今後劇的に上昇すると予想されている。
【0004】
現在、様々な医薬用途のために、インビボで様々な薬理学的作用を示すことが知られているタンパク質を大量に製造することができる。治療用タンパク質、例えば抗体の長期安定性は、安全で、一貫性があり、効果的な治療のために特に有益な基準である。調製物内の治療薬の機能の喪失は、ある投与に対するその有効濃度を減少させ得る。同様に、治療薬の望ましくない修飾は、調製物の活性及び/又は安全性に影響を与え得る。
【0005】
タンパク質は、一次、二次、三次構造を有し、幾つかの事例では四次構造を有する複雑な分子であり、これらの構造は全て、生物機能を付与する上で役割を果たし得る。タンパク質などの生物学的医薬の構造は複雑であるために、構造的及び機能的な不安定性並びに安全性の喪失をもたらし得る様々なプロセスに対して影響を受けやすい。これらの不安定性プロセス又は分解経路に関して、タンパク質は、溶液中で、様々な共有及び非共有反応又は修飾を受け得る。例えば、タンパク質分解経路は、一般に、(i)物理的分解経路及び(ii)化学的分解経路という2つの主要なカテゴリーに分類することができる。
【0006】
タンパク質薬は、不可逆的な凝集という物理的分解プロセスに対して感受性を有し得る。タンパク質凝集は、薬物の効力に影響を与え、患者中の免疫学的反応又は抗原性反応を惹起することもできる減弱した生物活性をしばしばもたらすので、生物医薬の製造において特に興味深い。例えば、化学的修飾による化学構造の分解を含むタンパク質治療薬の化学的分解は、生物医薬の免疫原性の可能性も増加させると推測されてきた。従って、安定なタンパク質製剤は、目的の薬物の物理的及び化学的な両分解経路を最小化させるはずである。
【0007】
タンパク質は、例えば、界面吸着及び凝集などの物理的プロセスを介して分解することができる。吸着は、タンパク質薬物の効力及び安定性に影響を与え得る。吸着は、低濃度剤形の効力の喪失を引き起こし得る。別の帰結は、界面での折り畳み解除によって媒介される吸着が、しばしば溶液中での不可逆的な凝集を開始させる工程であり得るということである。これに関して、タンパク質は、液体−固体、液体−気体及び液体−液体界面で吸着する傾向がある。疎水性表面でのタンパク質コアの十分な曝露は、撹拌、温度又はpHによって誘導されるストレスの結果、吸着をもたらし得る。さらに、タンパク質は、例えば、pH、イオン強度、熱的、剪断及び界面ストレスに対しても感受性を有し得、これらの全てが凝集を引き起こし、不安定性をもたらし得る。
【0008】
タンパク質は、様々な化学的修飾及び/又は分解反応、例えば、脱アミド化、異性化、加水分解、ジスルフィドスクランブリング、β脱離、酸化及び付加物の形成にも供され得る。分解の主な加水分解的機序には、ペプチド結合加水分解、アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化及びアスパラギン酸の異性化が含まれ得る。他の分解経路には、アルカリpH条件下で起こり、ある種のアミノ酸に対して、ラセミ化又は側鎖の一部の喪失をもたらし得るβ脱離反応が含まれ得る。メチオニン、システイン、ヒスチジン、チロシン及びトリプトファン残基の酸化も起こり得る。
【0009】
タンパク質の不安定性をもたらし得る様々な反応の数及び多様性の故に、製剤中の成分の組成がタンパク質分解の程度に対して影響を与えることができ、その結果、治療薬の安定性及び効力に対して影響を与え得る。生物医薬の形成は、投与の容易さ及び頻度並びに注射時に患者によって体験される痛みの大きさに対しても影響を与え得る。例えば、免疫原性反応は、タンパク質凝集物を原因とするのみならず、製剤中に含有される不活性成分と治療的タンパク質との混合された凝集物をも原因とする(Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1:457−62(2002);Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22:1997−2006(2005))。
【0010】
様々な条件下で、他の製剤と比較してより長期の安定性を保持する製剤は、生物医薬の有効で、安全な量を送達する効果的な手段を提供し得る。製剤中でのより長期の安定性の保持は、製造及び治療コストも低下させ得る。このような一貫して安定な製剤は、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質にとって有益であり得、これにより、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質は、より有効な臨床的結果を与えることができる。
【0011】
生物学的に活性なタンパク質を安定化させるための様々な製剤が、本分野に登場している。例えば、米国特許公開2006/0024346号は、生物学的に活性なタンパク質、多糖及びアミノ酸をベースとする化合物を含む水溶液について論述し、米国特許第6,171,586号Bは、抗体、酢酸塩緩衝液、界面活性剤及びポリオールを含むが、塩化ナトリウムの等張量を欠如する製剤について論述している。米国特許公開2005/0142139号は、CD4−IgG2キメラヘテロ四量体、ヒスチジン緩衝液、非イオン性界面活性剤及びアラニン、グリシン、プロリン又はグリシルグリシンを含み得るアミノ酸を含む医薬製剤について論述している。国際公開WO2005/063291A1号は、グルタミン酸塩緩衝液中に抗体を含む製剤について論述している。さらに、国際公開WO2005/44854号は、抗CD40抗体を含有する酢酸、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液の製剤について論述している。
【0012】
別の特許公開(2003/0138417号)では、コハク酸塩又はヒスチジン緩衝液の何れかの中に抗体の50mg/mL又はそれ以上を含む医薬製剤が提案された。しかしながら、何れの緩衝液を用いた研究の結果も、アミノ酸、グリシン、リジン、セリン、プロリン又はメチオニンが製剤中のタンパク質に対して安定化効果を持たないことを示唆した。
【0013】
本願は、様々な異なる製造及び保存条件下で生物医薬の増大した安定性を保持する新規製剤を提供する。本明細書に記載されている製剤とともに使用される生物医薬は、とりわけ、治療用抗体製剤を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許公開第2006/0024346号明細書
【特許文献2】米国特許第6,171,586号B明細書
【特許文献3】米国特許公開第2005/0142139号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/063291A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開2005/44854号パンフレット
【特許文献6】2003/0138417号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1、2002年、pp.457−62
【非特許文献2】Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22、2005年、pp.1997−2006
【発明の概要】
【0016】
緩衝溶液、プロリン及び生物医薬の有効量を含む製剤が提供される。緩衝溶液は、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液を含み得る。生物医薬は、ポリペプチド、例えば、治療用抗体などの抗体を含み得る。本明細書は、製剤を調製する方法、製剤を用いて症状を治療する方法及び製剤の成分を含有するキットも提供する。
【0017】
様々な実施形態において、製剤は、約10mMの濃度を有するグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸緩衝溶液を含む。他の実施形態において、緩衝液は、酢酸緩衝液であり得るが、但し、製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含有することはない。
【0018】
様々な実施形態において、製剤は、約3%の濃度を有するプロリン及び約3mg/mLから約50mg/mL又は約100mg/mLの濃度を有するポリペプチドを含む。ポリペプチドは、抗体又は抗原結合断片であり得る。抗体又は抗原結合断片は、成長因子、例えば、神経成長因子(NGF)に結合し得る。
【0019】
様々な実施形態において、緩衝溶液の濃度は、約1mMから約100mM、2mMから約50mM、約3mMから約30mM、約4mMから約20mM、又は約5mMから約10mM、約10mMから約40mM、約15mMから約35mM、約20mMから約30mM、約25mMから約35mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM又は約34mMであり得る。製剤中に含まれる治療用ポリペプチドは、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fc、ビス−scFv、一本鎖Fv(scFv)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ペプチボディ、VhHドメイン、V−NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、IgNAR若しくはレセプチボディ又は上記の組み合わせが含まれ得る。
【0020】
様々な実施形態において、製剤は、さらなる緩衝成分なしに、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の溶液からなり得、又は実質的にこれらからなり得る。
【0021】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する水性グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸緩衝液をプロリン及び治療用抗体と組み合わせることを含む方法が提供される。別の実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する水性酢酸緩衝液をプロリン及び治療用抗体と組み合わせることを含むが、ポリオール及び界面活性剤の両方は含有しない方法が提供される。
【0022】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び成長因子に対する抗体又は成長因子結合性抗原結合断片の有効量を含む製剤の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法が提供される。治療されている症状は、疼痛又は神経因性疼痛であり得る。
【0023】
様々な実施形態において、成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状は、神経成長因子の増加した発現から生じ得る。従って、本明細書中に記載されている製剤は、神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片を含み得る。製剤は、疼痛又は神経因性疼痛に対する治療を提供し得る。
【0024】
様々な実施形態において、緩衝液、プロリン及び抗体を含むキットが提供される。緩衝液が酢酸緩衝液である場合には、キットは、ポリオール及び界面活性剤の両者を含有することはない。
【0025】
図1から7の実験はIgG2抗体を使用するが、図8及び9の実験はIgG1抗体を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図1B】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図1C】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図1D】図1Aから1Dは、最長18ヶ月間、様々な保存条件下での、異なる製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験の結果を示している。調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有する。図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存した後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存した後の結果を示している。図1Dは、−30℃での凍結融解後の結果を示している。結果は、数個の異なる温度にわたって、殆どの時点で、通常、E51P30製剤の主ピークのパーセント減少が最も小さいことを示している。
【図2A】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2B】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2C】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2D】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2E】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図2F】図2Aから2Fは、様々な製剤中において、4℃、25℃又は37℃で保存した後、10μm(図2A、2C及び2E)又は25μm(図2B、2D及び2F)より大きな粒子の数の測定から得られた結果を示している。製剤は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)によって分析した。
【図3A】図3Aから3Bは、−30℃での凍結及び室温での融解の5サイクル後に形成された粒子の数の測定を示している。
【図3B】図3Aから3Bは、−30℃での凍結及び室温での融解の5サイクル後に形成された粒子の数の測定を示している。
【図4A】図4Aから4Cは、4℃(図4)、25℃(図4B)及び37℃(図4C)での保存後に、弱陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク(ピーク−0)のパーセントの変化を示している。
【図4B】図4Aから4Cは、4℃(図4)、25℃(図4B)及び37℃(図4C)での保存後に、弱陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク(ピーク−0)のパーセントの変化を示している。
【図4C】図4Aから4Cは、4℃(図4)、25℃(図4B)及び37℃(図4C)での保存後に、弱陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって観察された主ピーク(ピーク−0)のパーセントの変化を示している。
【図5A】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5B】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5C】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5D】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5E】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5F】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5G】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図5H】図5Aから5Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器(PFS)中に、40mg/mL(図5Aから5D)又は3mg/mL(図5Eから5H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって得られた主ピークのパーセント面積を示している。
【図6A】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6B】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6C】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6D】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6E】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6F】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6G】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図6H】図6Aから6Hは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中に、40mg/mL(図6Aから6D)及び3mg/mL(図6Eから6H)の抗体濃度で、25℃又は37℃で保存された様々な製剤に対して得られた陽イオン交換クロマトグラフィーを示している。
【図7A】図7Aから7B。図7Aは、−30℃で保存された抗体溶液の長期安定性を示している。図7Bは、−30℃での複数の凍結融解サイクル後の抗体の安定性を示している。
【図7B】図7Aから7B。図7Aは、−30℃で保存された抗体溶液の長期安定性を示している。図7Bは、−30℃での複数の凍結融解サイクル後の抗体の安定性を示している。
【図8A】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8B】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8C】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8D】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8E】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8F】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図8G】図8Aから8Gは、異なる製剤を用いて、異なる保存条件に対してSECを用いた結果を表している。抗体は、pH5.2で100mg/mL酢酸ナトリウムを含有する溶液中に保存した。2%であったPEG6,000を除き、全ての実験は270mMの濃度であった。図8A、8C及び8Gの結果は、HMW凝集物に関して表されているが、図8B、8D、8E及び8Fの結果は、主ピークのパーセントに関して表されている。全ての事例で、プロリンを含有する溶液が最良の結果を与えた。
【図9A】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【図9B】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【図9C】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【図9D】図9Aから9Dは、保存溶液中のポリソルベートの使用から得られた結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中の様々な実施形態は、ポリペプチド又は他の生物医薬に対する安定化能を示す製剤に向けられる。製剤は、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液、プロリン及びタンパク質を含み得る。緩衝液は、約4.0から約6.0のpHを有し得る。生物医薬は、抗体であり得る。様々な実施形態において、製剤は、グルタミン酸緩衝液及び/又はアスパラギン酸緩衝液及び/又は酢酸緩衝液、プロリン及びタンパク質からなり得、又は実質的にこれらからなり得る。様々な他の実施形態において、製剤が酢酸緩衝液を含む場合には、製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない。
【0028】
製剤中に含まれる生物医薬は、幾つかの事例において、様々な温度で、例えば、約4℃、25℃又は37℃で、長期間にわたって、例えば、少なくとも1ヶ月又はそれ以上にわたって安定性を示すことにより、治療用ポリペプチド又は他の生物医薬の安全で、有効な量の投与を可能にすることができる。様々な実施形態において、約4℃で、12から18ヶ月間、抗体の安定性が示され得る。
【0029】
本明細書を通じて使用されるある種の用語の理解を容易にするために、以下の定義が与えられる。
【0030】
明細書中の様々な実施形態が、「含む」という言語を用いて表されているのに対して、様々な状況下では、関連する実施形態が、「からなる」又は「実質的にからなる」という言語を用いても記載され得る。
【0031】
値の範囲を記載する場合、記載されている特徴は範囲内に見出される個々の値であり得ることも理解すべきである。例えば、「約pH4から約pH6のpH」は、pH4、4.2、4.6、5.1、5.5などであり得るが、これらに限定されることはなく、このような値の間のあらゆる値であり得る。さらに、「約pH4から約pH6のpH」は、保存中に、問題の製剤のpHがpH4からpH6の範囲内を2pH単位変動することを意味すると解釈すべきではなく、溶液のpHに対してその範囲内で値を選択することができ、pHが概ねそのpHに緩衝化された状態を保つものと解釈すべきである。
【0032】
「1つ」という用語は、1つ又はそれ以上を意味することに注意すべきであり、例えば、「1つの免疫グロブリン分子」とは、1つ又はそれ以上の免疫グロブリン分子を表すものと理解される。従って、本明細書において、「1つ」、「1つ又はそれ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、互換的に使用され得る。
【0033】
本明細書において使用される「約」という用語は、「約」と表記される数字が表記された数字プラス表記された数字の5%又はマイナス表記された数字の5%を含むことを意味する。例えば、「約50mM」は、状況に応じて、47.5、47.6、47.7、47.8、47.9、48、49、50、51、52若しくは52.5mM又は50のプラス5%又はマイナス5%である他の値を意味し得る。
【0034】
本明細書で使用される「酢酸緩衝液」という用語は、酢酸を含む緩衝液を意味するものとする。緩衝液は、酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムから作製され得る。他の塩、例えば、酢酸のカリウム、アンモニウム、カルシウム又はマグネシウム塩を使用し得る。「酢酸緩衝液」及び「酢酸塩緩衝液」は、互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用される「アスパラギン酸緩衝液」という用語は、アスパラギン酸を含む緩衝液を意味するものとする。緩衝液は、アスパラギン酸塩、例えば、アスパラギン酸ナトリウムから作製され得る。他の塩、例えば、アスパラギン酸のカリウム、アンモニウム、カルシウム又はマグネシウム塩を使用し得る。「アスパラギン酸緩衝液」及び「アスパラギン酸塩緩衝液」は、互換的に使用される。
【0036】
本明細書において使用される「生物医薬」という用語は、医薬として使用することができる高分子又は生体ポリマー、例えば、ポリペプチド又は抗体を表す。
【0037】
本明細書において使用される「製剤」という用語は、保存、さらなる加工、販売及び/又は対象への投与(例えば、特定の疾病を治療するために、特定の経路により、特定の量で、特定の薬剤を対象に投与する)など、1つ又はそれ以上の特定の用途のために、少なくとも1つの活性成分を1つ又はそれ以上の他の成分と組み合わせることを意味する。「製剤」という用語は、ヒト又は動物に投与することができる、生物医薬と適合的な医薬として許容される溶媒を表す。
【0038】
本明細書で使用される「グルタミン酸緩衝液」という用語は、グルタミン酸を含む緩衝液を意味するものとする。緩衝液は、グルタミン酸塩、例えば、グルタミン酸ナトリウムから作製され得る。他の塩、例えば、グルタミン酸のカリウム、アンモニウム、カルシウム又はマグネシウム塩を使用し得る。「グルタミン酸緩衝液」及び「グルタミン酸塩緩衝液」は、互換的に使用される。
【0039】
様々な実施形態において、製剤が目的の生物医薬の安定性をもたらす限り、アスパラギン酸、酢酸又はグルタミン酸緩衝液以外の緩衝液をプロリンと組み合わせて使用することができる。
【0040】
治療用ポリペプチドなどの治療用生物医薬に関して使用される場合、本明細書において使用される「有効量」という用語は、標的とされる疾病又は生理的状態と関連する少なくとも1つの症候を軽減又は減弱するのに十分な治療的分子の量を表すものとする。
【0041】
様々な実施形態において、本明細書は、プロリン、治療用ポリペプチドの有効量及び約4.0から約6.0のpHを有する水溶液を含む製剤を提供する。水溶液は、水性緩衝液であり得る。製剤は、生物医薬の投与、保存及び/又は操作に対して最適な特性を示し得る。操作には、例えば、凍結乾燥、再構成、希釈、滴定、保存などが含まれ得る。水性緩衝成分、例えば、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液は、本分野で公知の様々な方法の何れかを用いて、所望の生物医薬と組み合わせることができる。さらに、緩衝成分は、目的の生物医薬の安定性を促進する多様な賦形剤及び界面活性剤と適合的であり得る。製剤のこれら及び他の属性は、生物活性分子の安定な製剤を調製し、長期間にわたって維持することを可能にする。
【0042】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、治療的に不活性な物質を意味するものとする。賦形剤は、例えば、希釈剤、ビヒクル、緩衝液、安定化剤、等張化剤、増量剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤などとして、多様な目的のために、製剤中に含めることができる。賦形剤には、例えば、ソルビトール又はマニトールなどのポリオール;スクロース、ラクトース又はデキストロースなどの糖;ポリエチレングリコールなどのポリマー、NaCl、KCl又はリン酸カルシウムなどの塩、アミノ酸、例えば、プロリン、グリシン又はメチオニン、界面活性剤、金属イオン、グルタミン酸塩、酢酸塩又はアスパラギン酸塩などの緩衝塩、防腐剤及びヒト血清アルブミンなどのポリペプチド並びに生理的食塩水及び水が含まれる。賦形剤には、糖、例えば、糖アルコール、還元糖、非還元糖及び糖酸が含まれ得る。賦形剤は本分野において周知であり、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「Wang W.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0043】
簡潔に述べれば、糖アルコール(ポリオール、多価アルコール又はポリアルコールとしても知られる。)は、一級又は二級ヒドロキシル基に還元されたカルボニル基を有する炭水化物の水素添加された形態である。ポリオールは、液体中及び凍結乾燥された製剤中の両者で、安定化賦形剤及び/又は等張化剤として使用することができる。ポリオールは、物理的及び化学的分解経路の両方から生物医薬を保護することができる。糖アルコールの例には、ソルビトール、グリセロール、マニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール及びスレイトールが含まれ得る。
【0044】
還元糖は、例えば、ケトン又はアルデヒド基を有する糖を含むことができ、糖が還元剤として作用できるようにする反応性ヘミアセタール基を含有することができる。還元糖の具体例には、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びマルトースが含まれる。非還元糖は、アセタールであり、及びアミノ酸又はポリペプチドと実質的に反応してメイラード反応を開始させないアノマー性炭素を含むことができる。非還元糖の具体例には、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、メレジトース及びラフィノースが含まれる。糖酸には、例えば、糖酸、グルコナート及び他のポリヒドロキシ糖及びこれらの塩が含まれる。
【0045】
緩衝液又は賦形剤と組み合わせた緩衝液は、製品の保存寿命を通じて、液体製剤のpHを維持し、例えば、凍結乾燥プロセスの間に、及び再構成の際に、凍結乾燥された製剤のpHを維持する。
【0046】
液体製剤中に含まれる等張化剤及び/又は安定化剤は、製剤が投与に適するように、例えば、等張性、低張性又は高張性を製剤に付与するために使用することができる。このような賦形剤は、生物医薬の構造の維持を促進するために、及び/又は、静電的な溶液タンパク質−タンパク質相互作用を最小化するために使用することもできる。等張化剤及び/又は安定化剤の例には、ポリオール、塩及び/又はアミノ酸が含まれ得る。
【0047】
抗酸化剤は、タンパク質の酸化を調節するために液体製剤において有用であり、酸化反応を遅延させるために、凍結乾燥された製剤中で使用することも可能である。
【0048】
金属イオンは、例えば、補因子として、液体製剤中に含めることができ、亜鉛及びマグネシウムなどの二価陽イオンは懸濁製剤中において使用することができる。液体製剤中に含められるキレート剤は、例えば、金属イオンによって触媒される反応を阻害するために使用することができる。凍結乾燥された製剤に関して、例えば、金属イオンは補因子として含めることもできる。一般に、キレート剤は凍結乾燥された製剤からは省略されるが、凍結乾燥プロセスの間の及び再構成の際の触媒反応を低減するために、所望に応じて、キレート剤を含めることも可能である。
【0049】
液体製剤中の防腐剤は、例えば、微生物の成長に対して保護するために使用することが可能であり、特に、複数投薬製剤において有益である。凍結乾燥された製剤において、再構成希釈剤中には、一般に、防腐剤が含められる。ベンジルアルコールは、本発明の製剤において有用な防腐剤の具体例である。
【0050】
本明細書において使用される「界面活性剤」という用語は、その中に溶解される液体の表面張力を低下させるように機能する物質を意味するものする。例えば、液体製剤中の凝集、粒子形成及び/又は表面吸着を抑制若しくは調節するため、又は凍結乾燥された製剤中の凍結乾燥及び/又は再構成プロセスの間に、これらの現象を抑制若しくは調節するためなど、様々な目的のために、界面活性剤を製剤中に含めることができる。界面活性剤には、例えば、有機溶媒及び水溶液中の両方で、部分的な溶解度を示す両親媒性有機化合物が含まれる。界面活性剤の一般的な特徴には、水の表面張力を低下させる能力、油と水の間の界面張力を低下させる能力及びミセルを形成する能力が含まれる。界面活性剤には、非イオン性及びイオン性界面活性剤が含まれ得る。界面活性剤は本分野において公知であり、例えば、「Randolph T.W.and Jones L.S.,Surfactant−protein interactions.Pharm Biotechnol.13:159−75(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0051】
非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA及びコカミドTEAが含まれ得る。非イオン性界面活性剤の具体例には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85などのポリソルベート;例えばポロキサマー188(ポロキサルコール又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)、ポロキサマー407を含むポロキサマー又はポリエチレン−ポリプロピレングリコールなど及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20は、TWEEN20、ソルビタンモノラウラート及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートと同義である。
【0052】
イオン性界面活性剤には、例えば、陰イオン性、陽イオン性及び双性イオン性界面活性剤が含まれ得る。陰イオン性界面活性剤には、例えば、石鹸など、スルホナートをベースとする又はカルボキシラートをベースとする界面活性剤、脂肪酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム及び他のアルキル硫酸塩が含まれる。陽イオン性界面活性剤には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシル化された獣脂アミン(POEA)及び塩化ベンゾアルコニウムなどの四級アンモニウムをベースとする界面活性剤が含まれる。双性イオン性又は両性界面活性剤には、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン及びココアムフォグリシナートが含まれる。
【0053】
本明細書において使用される「治療的」という用語は、ポリペプチド、例えば、抗体に関して使用される場合、当該ポリペプチドがヒト又は他の動物中の疾病の治癒、軽減、治療又は予防において使用され得ることを意味するものとする。治療は、治療的処置及び/又は予防的若しくは防止的措置の両方を表す。治療を必要とする者には、既に疾患を有する者又は疾患を予防すべき者が含まれ得る。
【0054】
従って、治療的ポリペプチドは生物医薬であり得、単一のポリペプチド又は2つ若しくはそれ以上のポリペプチドサブユニットを含むことができる。治療的ポリペプチドには、抗体(例えば、「治療用抗体」)、その機能的抗体断片、抗原結合断片、ペプチボディ又はその機能的断片、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが含まれ得る。多岐にわたる治療的ポリペプチドが本分野において公知であり、本明細書において使用される「治療用ポリペプチド」という用語の意味の中に含まれる。本明細書に記載されている製剤中で使用されるべき治療用ポリペプチドには、例えば、多様な抗原、例えば、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びTNFR、RANKL、EGFR、リガンド、サイクリン及びエリスロポエチン及び/又は成長因子に対する抗体又は抗原結合断片が含まれ得る。成長因子には、例えば、上皮成長因子、ヒト成長因子又は神経成長因子が含まれ得る。
【0055】
製剤の安定性とは、製剤内の生物医薬の構造及び/又は機能及び/又は生物活性の保持を表す。構造及び/又は機能及び/又は生物活性の保持は100%である必要はない。製剤の安定性の測定は、比較測定であり得る。従って、ある製剤が別の製剤より安定であり、又はより大きな安定性を有すると称されれば、より大きな安定性を有する製剤は、検討されている特徴が負の特徴でなければ、他の製剤より調査されている望ましい特徴のより大きなパーセントを保持している。特徴が負の特徴である場合には、より大きな安定性を有する製剤はその特徴をより少なく有する。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定した場合に、主ピークのより大きなパーセントを維持していれば(すなわち、これは、より少ない凝集を示す。)、製剤Aは製剤Bより安定である。保存後に製剤Bより少ない粒子を含有していれば、製剤Aは製剤Bより安定であると称することもできる。
【0056】
様々な実施形態において、製剤中の生物医薬は、安定性又は機能に影響を与える、変化又は崩壊に対する耐性などの属性を呈することができ、従って、一貫した機能的特徴を長期にわたって維持することができる。
【0057】
様々な実施形態において、製剤内の生物医薬の安定性には、物理的及び/又は化学的安定性の保持が含まれ得る。生物医薬の安定性は、例えば、その構造の化学的修飾を含む、物理的分解及び/又は化学的分解経路に生物医薬が供されたかどうかを測定することによって評価することができる。安定性の保持は、例えば、異なる温度での保存後又は複数の凍結融解サイクル後に残存している単量体のパーセントの観点で測定することもできる。これらの測定は、ポリペプチド凝集の量を反映し得る。
【0058】
物理的又は化学的安定性の保持は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、保存前及び保存後の単量体のパーセントを測定することによって決定することができる。様々な実施形態において、保存後又は反復する凍結融解後に残存する単量体のパーセントは、最初の時点での生物医薬と比べると、約80%と約100%の間、約85%と約95%の間又は約90%と約95%の間又は約95%と約99%の間であり得る。従って、本発明の製剤中の生物医薬の安定性には、最初の時点での生物医薬の安定性と比べて、99.5%超の安定性、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%又は80%の安定性の保持が含まれ得る。
【0059】
製剤の安定性の他の例には、溶液中の不溶性タンパク質性凝集物(粒子)の数又は当初溶液中の生物医薬と比べた化学的修飾の発生の比較測定が含まれ得る。
【0060】
さらなる実施形態において、製剤の安定性には、例えば、活性の保持が含まれる。生物医薬活性は、例えば、生物医薬の機能の指標となるインビトロ、インビボ及び/又はインシチュのアッセイを用いて評価することができる。本発明の製剤中の生物医薬の安定性の保持には、アッセイの変動性に応じて、例えば、約50と100%の間又はそれ以上の活性の保持が含まれ得る。例えば、安定性の保持には、最初の時点における生物医薬の活性に比べて、約60と約99%の間又は約70%と約80%の間の活性の保持が含まれ得る。
【0061】
様々な実施形態において、製剤中の生物医薬の安定性には、最初の時点での生物医薬の活性と比べて、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の活性の保持が含まれ得、100%を超える活性測定、例えば、105%、110%、115%、120%、125%若しくは150%又はそれ以上が含まれ得る。
【0062】
一般に、様々な実施形態において、最初の時点は、生物医薬が最初に製剤中で調製される時点、又は品質に関して最初に調べられる時点(例えば、放出規格を充足する。)であるように選択される。最初の時点には、生物医薬が製剤中に再調合される時点も含まれ得る。再調合は、例えば、最初の調製のより高い濃度、より低い濃度又は同じ濃度であり得る。
【0063】
製剤中の生物医薬の安定性は、2から8℃で、又は約4℃で保持され得る。本明細書に記載されている製剤中での生物医薬の安定性は、4℃より上の温度で、例えば、室温で、約23℃又は25℃、又はより高い温度(37℃を含む。)でも保持され得る。より高い温度での安定性のこのより大きな保持は、プロリンを含まない他の緩衝液と比べて、図1に示されているようにプロリンを含むグルタミン酸緩衝化された製剤中の、例えば抗体の主ピークのより大きな保持によって示され得る。
【0064】
様々な実施形態によれば、本明細書中に記載されている製剤は、SECによって測定された場合に、単量体ピークが合計の少なくとも99%を占めることができるように、少なくとも6ヶ月間、約4℃、約25℃又は約37℃で安定である。様々な他の実施形態において、単量体ピークは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定された場合に、合計の少なくとも99.8%、99.7%、99.6%、99.5%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%を占める。他の様々な実施形態において、製剤は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月又は約6ヶ月を超えて安定であり得る。
【0065】
製剤は、基準溶液又は液体(例えば、血液及び/又は血清)と等張であるように調製することができる。等張溶液は、浸透圧的に安定であるような濃度を有する。特定の溶液又は液体と明示的に比較されている場合を除き、本明細書において使用される等張又は等張性は、ヒト血清に対する参照を意味するものとする(例えば、280から300mOsm/kg)。従って、等張製剤は、ヒトの血液と実質的に同様の溶質の濃度を含有し、又はヒト血液と実質的に同様の浸透圧を示す。一般に、等張溶液は、ヒト及び他の多くの哺乳動物に対する正常な生理的食塩水と概ね同じ溶質の濃度(水溶液中の約0.9重量%(0.009g/mL)の塩である(例えば、0.009g/mLNaCl)。)を含有する。
【0066】
医薬の製造及び製剤化工程の多くの態様は、pH感受性であり得る。最終医薬品の正しいpHを維持することは、医薬の安定性、有効性及び保存寿命に影響を与えることができ、pHは、許容可能であり、安全で、効果的である投与のための製剤を設計する上での検討事項である。
【0067】
pHを維持するために、医薬の過程及び製剤は、1つ又はそれ以上の緩衝剤を使用することができる。様々な緩衝剤は、医薬用途のために利用可能である。所定の用途のための緩衝液は、所望されるpHにおいて効果的であるべきである。緩衝液は、必要な限り、所望されるpHを維持するのに十分な緩衝能も与えるべきである。医薬組成物のための優れた緩衝液は、他の多くの必要条件も満たすことができる。医薬組成物のための優れた緩衝液は、適切に可溶性であるべきである。医薬組成物のための優れた緩衝液は、金属イオンとの有害な錯体を形成すべきでなく、毒性であるべきでなく、又は過度に浸透し、可溶化し、又は膜若しくは他の表面上に吸収されるべきでない。医薬組成物のための優れた緩衝液は、組成物の他の成分の利用可能性又は有効性を減少させる何らかの様式で、組成物の他の成分と相互作用すべきでない。医薬組成物のための優れた緩衝液は、製剤化の間及び製品の保存の間に緩衝液が曝露される条件の範囲にわたってpHを維持するのに安定で、有効であるべきである。医薬組成物のための優れた緩衝液は、その中で緩衝液が緩衝作用を与える組成物の加工中に起こるものなど、その環境中で起こる酸化又は他の反応によって悪影響を受けるべきでない。最終製品中に持ち込まれ、又は取り込まれる場合には、緩衝剤は、投与のために安全であり、製品の保存寿命にわたって組成物の他の成分と適合的であり、及び最終使用者への投与のために許容され得るべきである。上記リストは、生物医薬を含有する製剤に関連する様々な特徴を表している。しかしながら、全ての緩衝液が所望される特徴の全てを必ずしも呈するわけではない。
【0068】
様々な実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、承認を与える権限が法律によって与えられている国内又は国際機関によって、例えば、欧州医薬品審査庁、日本の厚生労働省、中国の国家食品薬品監督管理局、米国の食品医薬品局又はこの機関の後継機関、特に好ましくは、米国の食品医薬品局又はこの機関の後継機関によって、医薬用途に対して承認され得る。
【0069】
様々な実施形態において、所望のpHを有するグルタミン酸緩衝液、プロリン及び生物医薬、例えば、抗体の有効量を有する製剤を調製することができる。抗体は、神経成長因子に結合する抗体又は抗原結合断片であり得る。様々な他の実施形態において、ポリペプチドの適切な安定化が得られれば、プロリンを含有するグルタミン酸以外の緩衝液を使用することができる。
【0070】
本明細書中の様々な実施形態において、グルタミン酸緩衝液が引用されているが、他の実施形態では、代わりに、例えば、アスパラギン酸緩衝液及び/又は酢酸緩衝液などの他の緩衝液をプロリン及び生物医薬と組み合わせることができる。しかしながら、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤は、界面活性剤及びポリオールの両者を含有することはない。しかしながら、様々な他の実施形態において、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤が塩化ナトリウムの等張量をさらに含まなければ及び/又は生物医薬(例えば、抗体)が事前の凍結乾燥に供されていなければ、製剤は界面活性剤及びポリオールの両方を含まない。
【0071】
製剤のグルタミン酸成分は、様々な異なる形態で緩衝系に供給することができる。例えば、グルタミン酸成分は、グルタミン酸、グルタミン酸塩又は入手可能な、若しくは化学合成を用いて作製することができる他のあらゆる形態として供給され得る。その塩形態のグルタミン酸は、製剤のグルタミン酸緩衝系を作製するのに有用であり得る。L−グルタミン酸などの緩衝成分は純粋な形態で市販されており、Ajinomoto AminoScience LLC,NC,USAから入手することができ、又はL−Glutamic Acid,F.C.C.,Multi−CompendialをJ.T.Baker、カタログ番号2077−06から入手することができる。
【0072】
グルタミン酸塩には、例えば、以前に記載されているもの及び本分野で公知のその他のものが含まれる。製剤成分(例えば、グルタマート)の高度に精製された形態は、安全及び無毒であるように汚染物質を欠如するように、ヒトへ投与するのに十分に純粋である薬学等級の純度レベルを表す。
【0073】
様々な実施形態において、製剤は、選択された温度で製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有するグルタミン酸又はグルタマートの濃度を含有し得る。グルタミン酸又はグルタマートの有用な濃度は、約1から150mM、約5mMから100mMの間、約10mMから50mM又は約20から約40mMの間であり得る。様々な実施形態において、グルタミン酸濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM又は約45mMであり得る。緩衝液が、保存の間、選択された温度で、製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する限り、グルタミン酸の他の濃度が適切であり得る。
【0074】
様々な他の実施形態において、緩衝溶液の濃度は、約1mMから約100mM、約2mMから約50mM、約3mMから約30mM、約4mMから約20mM、又は約5mMから約10mM、約10mMから約40mM、約15mMから約35mM、約20mMから約30mM、約25mMから約35mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM又は約34mMであり得る。
【0075】
様々な実施形態において、製剤のグルタミン酸緩衝成分は、生物医薬の所望される安定性が維持される限り、約4.0から約6.0の間のpH範囲内に見出される値で、効果的な緩衝能を示すように調製することができる。グルタミン酸緩衝液及び/又は最終製剤の典型的なpH範囲には、約3.5から6.5の間、約4.0から約6.0の間、約4.5から約5.5の間、約4.8から約5.2の間のpH範囲又は約5.0が含まれ得る。従って、グルタミン酸緩衝液及び/又は最終製剤は、約3.0又はそれ以下、約3.5、約4.0、約4.5、約4.8、約5.0、約5.2、約5.5、約5.7、約6.0、約6.5又は約7.0若しくはそれ以上のpHを有するように調製することができる。これらの値を上回る、下回る、及びこれらの値の間にあるpH値も、グルタミン酸緩衝液及び/又は最終製剤中で使用することが可能である。当業者は、約3.5のpHより下又は約6.5のpHより上のグルタミン酸緩衝液を含めることが所望される製剤において有用であるかどうかを決定することができる。
【0076】
様々な実施形態において、製剤は、グルタミン酸以外の緩衝液を含有することができる。例えば、プロリン及び生物医薬とともに、アスパラギン酸(アスパルタート)及び/又は酢酸(アセタート)を使用することができる。製剤は、選択された温度で製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する緩衝液の濃度を含有し得る。緩衝液の有用な濃度は、約1mMから150mMの間、約5mMから100mMの間又は約10mMから約50mMの間又は約20から約40mMの間であり得る。様々な実施形態において、緩衝液濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM又は約45mMであり得る。緩衝液が、保存の間、選択された温度で、製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する限り、緩衝液の他の濃度が適切であり得る。
【0077】
様々な他の実施形態において、緩衝溶液の濃度は、約1mMから約100mM、約2mMから約50mM、約3mMから約30mM、約4mMから約20mM、又は約5mMから約10mM、約10mMから約40mM、約15mMから約35mM、約20mMから約30mM、約25mMから約35mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM又は約34mMであり得る。
【0078】
様々な実施形態において、製剤は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%から約20%又は約21%から約30%の濃度でプロリンを含む。
【0079】
様々な実施形態において、製剤の緩衝液は、1つ又はそれ以上の賦形剤を含むことができる。含められる賦形剤の1つの潜在的な役割は、製造、搬送及び保存の間に起こり得るストレスに対して生物医薬の安定化を提供することである。これを達成するために、少なくとも1つの賦形剤は、緩衝液、安定化剤、等張化剤、増量剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤として機能することができる。さらに、少なくとも1つの賦形剤は、希釈剤及び/又はビヒクルとして機能し、又は製剤の送達を可能とし、及び/又は患者の利便性を強化するために、高濃度製剤中での粘度を低下させるために使用することができる。
【0080】
同様に、少なくとも1つの賦形剤は、上記機能の2以上を製剤に付与することができる。あるいは、上記機能又は他の機能の2以上を発揮するために、2つ又はそれ以上の賦形剤を製剤中に含めることができる。例えば、製剤のオスモル濃度を変化させ、調整し、又は最適化することにより、等張化剤として作用させるために、製剤中の成分として、賦形剤を含めることができる。しかしながら、製剤が酢酸緩衝液を含有する場合には、ポリオール及び界面活性剤の両方を製剤中に含めることはできない。しかしながら、様々な他の実施形態において、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤が塩化ナトリウム等張量をさらに含まなければ及び/又は生物医薬(例えば、抗体)が事前の凍結乾燥に供されていなければ、製剤は界面活性剤及びポリオールの両者を含むことはない。
【0081】
様々な実施形態において、等張化剤及び界面活性剤は何れも、オスモル濃度を調整し、及び/又は凝集を調整するために製剤中に含めることができる。賦形剤、それらの使用、製剤及び特徴は本分野において公知であり、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「Wang W.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。米国特許第6,171,586号B1において、酢酸緩衝液、ポリオール、界面活性剤及び抗体を含む製剤が論述されている。
【0082】
浸透圧調節物質と称される小さな有機分子は、様々な生理的条件で、タンパク質の安定性に影響を与えることが報告されている。この点に関して、公報が天然の浸透圧調節物質としてのプロリン並びにインビボ及びインビトロでのタンパク質凝集に対するその効果を論述している(Ignatova and Gierasch,Proc.Natl.Acad.Sci.USA103:13357−13361,Epub 2006 Aug 9)。Bolen及びBaskakov(J.Mol.Biol.310:955−963,2001)も、プロリン及び浸透圧調節物質について論述している。
【0083】
一般に、賦形剤は、様々な化学的及び物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させる機序に基づいて選択することができる。ある種の賦形剤は、特定のストレスの効果を軽減するために、又は特定の生物医薬の特定の感受性を制御するために含めるのが有益であり得る。他の賦形剤は、タンパク質の物理的及び共有的安定性に対してより一般的な効果を有し得るので、他の賦形剤を含めるのが有益であり得る。幾つかの有用な賦形剤には、製剤の安定性特性を最適化するために、水性緩衝溶液及び生物医薬と化学的に及び機能的に非侵害性であり、又は適合的であるものが含まれ得る。様々なこのような賦形剤は、製剤との化学的適合性及びこのような製剤中に含まれる生物医薬との機能的適合性を示すとして本明細書に記載されている。
【0084】
例えば、製剤内の生物医薬の安定性を強化又は付与するために選択される賦形剤には、生物医薬上の官能基と実質的に反応しないものが含まれ得る。この点に関して、還元糖及び非還元糖の両方を本発明の製剤中の賦形剤として使用することができる。
【0085】
賦形剤は、製剤に対する投与様式に関して安定化を強化し、又は提供するためにも選択され得る。例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与の非経口経路は、製剤の全ての成分が、製造、保存及び投与の間に、物理的及び化学的安定性を維持する場合により安全で、効果的であり得る。当業者は、例えば、特定の製造若しくは保存条件又は特定の投与様式が与えられれば、生物医薬の活性形態の最大の安定性を維持する1つ又はそれ以上の賦形剤をどのようにして使用するかを決定することができる。
【0086】
製剤中で使用するための賦形剤の量又は濃度は、例えば、製剤中に含まれる生物医薬の量、所望の製剤中に含まれる他の賦形剤の量、希釈剤が望まれるか若しくは必要とされるかどうか、製剤の他の成分の量若しくは容量、製剤中の成分の総量、生物医薬の比活性及び達成されるべき所望の浸透圧又はオスモル濃度に応じて変動し得る。様々な実施形態において、賦形剤の異なる種類を単一の製剤中に組み合わせることができる。従って、製剤は、単一の賦形剤、賦形剤の2つ、3つ又は4つ又はそれ以上の異なる種類を含有することができる。賦形剤の組み合わせは、2つ又はそれ以上の異なる生物医薬を含有する製剤と組み合わせると有用であり得る。賦形剤は、類似の又は異なる化学的特性を示すことができる。
【0087】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、生物医薬の安定性の保持を促進する製剤を達成するために、賦形剤のどのような量又は範囲をある製剤中に含めることができるかを決定することができる。例えば、製剤中に含められるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望される重量オスモル濃度(すなわち、等張、低張又は高張)並びに製剤中に含められるべき他の成分の量及び重量オスモル濃度に基づいて選択することができる。同様に、製剤中に含められるポリオール又は糖の種類を参照して、このような賦形剤の量はそのオスモル濃度に依存し得る。約5%のソルビトールを含めることによって、等張性を達成することができるのに対して、等張性を達成するために、スクロース賦形剤の約9%が必要とされ得る。当業者は、賦形剤に関して本明細書に記載されている考察は、例えば、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定化剤、増量剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び/又は防腐剤を含む賦形剤の全ての種類及び組み合わせに対して等しく適用され得ることを理解する。
【0088】
賦形剤は、一般に、約1から40%(w/v)の間、約5から35%(w/v)の間、約10から30%(w/v)の間、約15から25%(w/v)の間の範囲の濃度、約3%、約10%又は約20%(w/v)の濃度で、本発明の製剤中に含めることができる。ある種の事例では、約45%(w/v)、50%(w/v)又は50%(w/v)を上回る高い濃度を、本発明の製剤において使用することが可能である。例えば、幾つかの事例では、高張製剤を作製するために、最大60%(w/v)又は75%(w/v)の濃度を含むことが望ましい場合があり得る。このような高張溶液は、所望であれば、使用前に、等張製剤を作製するために希釈することができる。他の有用な濃度範囲には、約1から20%、特に約2と18%(w/v)の間、より具体的には約4と16%(w/v)の間、さらにより具体的には約6と14%(w/v)の間又は約8と12%(w/v)の間又は約10%(w/v)が含まれる。様々な実施形態において、これらの範囲より下、上又は間の賦形剤濃度及び/又は量も製剤中で使用することができる。例えば、約1%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の賦形剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約40%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の賦形剤の所望の濃度又は量を含有する製剤を作製することが可能である。
【0089】
液体製剤又は凍結乾燥された製剤の何れかにおいて有用であり得る様々な賦形剤には、フコース、セロビオース、マルトトリオース、メリビオース、オクチュロース、リボース、キシリトール、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、リジン、イミダゾール、グリシルグリシン、マンノシルグリセラート、TritonX−100、PluronicF−127、セルロース、シクロデキストリン、デキストラン(10、40及び/又は70kD)、ポリデキストロース、マルトデキストリン、フィコール、ゼラチン、ヒロドキシプロピルmeth、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ZnCl2、亜鉛、酸化亜鉛、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、トロメタミン、銅、フィブロネクチン、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、プロタミン、グリセリン、グリセロール、EDTA、メタクレゾール、ベンジルアルコール及びフェノールが含まれる。本分野において公知の様々な賦形剤は、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「WangW.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されている。
【0090】
様々な実施形態によれば、グルタミン酸によって緩衝された製剤は、1つ又はそれ以上の界面活性剤を賦形剤として含むことができる。製剤中での界面活性剤の1つの役割は、表面によって誘導される分解などの凝集及び/又は吸着を抑制又は最小化することであり得る。十分な濃度で、一般には、概ね界面活性剤のミセル濃度で、界面活性剤分子の表面層は、タンパク質分子が界面に吸着するのを防ぐ役割を果たし得る。これにより、表面によって誘導される分解は最小化することができる。界面活性剤、それらの使用、製剤及び製剤に対する特徴は本分野において公知であり、例えば、「Randolph T.W.and Jones L.S.,Surfactant−protein interactions.Pharm Biotechnol.13:159−75(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0091】
製剤中に含めるための界面活性剤は、例えば、凝集及び/又は吸着を抑制又は低下させることによって、生物医薬の安定性の保持を強化又は促進するために選択され得る。ポリソルベートなどのソルビタン脂肪酸エステルは、多岐にわたる親水性及び乳化特性を示す界面活性剤である。それらは、安定化の必要性の広い範囲をカバーするために、個別に又は他の界面活性剤と組み合わせて使用することができる。生物医薬の疎水性及び親水性特性の幅広い範囲をカバーするように特別に調整することができるので、このような特性は、生物医薬とともに使用するのに特に適切であり得る。界面活性剤を選択するための考慮事項には、賦形剤に関して一般的に前述されているもの並びに界面活性剤の疎水性特性及び臨界ミセル濃度が含まれる。本明細書に例示されている界面活性剤及び本分野において周知の他の多くの界面活性剤を、本明細書中に記載されている製剤中で使用することができる。
【0092】
製剤に対する界面活性剤の濃度範囲には、賦形剤に関して一般的に先述されているものが含まれ、例えば、有用な濃度は約1%(w/v)未満であり得る。この点に関して、界面活性剤の濃度は、約0.001と0.10%(w/v)の間、約0.002と0.05%(w/v)の間、約0.003と0.01%(w/v)の間、約0.004と0.008%(w/v)の間又は約0.005と0.006%(w/v)の間の範囲で、一般に使用することができる。これらの範囲より下、上又は間の界面活性剤濃度及び/又は量も使用することができる。例えば、約0.001%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の界面活性剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約0.10%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の界面活性剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、約0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09若しくは0.10%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の界面活性剤の実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する製剤を作製することが可能である。しかしながら、本明細書中に記載されているある種の実施形態において、製剤中で酢酸緩衝液が使用される場合には、界面活性剤及びポリオールの両方を使用することはできないことに留意すべきである。
【0093】
液体製剤又は凍結乾燥された製剤において有用な界面活性剤には、例えば、ラウリル酸(C12)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)エステル、マクロゴールセトステアリルエーテル、マクロゴールセトラウリルエーテル、マクロゴールセトオレイルエーテル、マクロゴールオレアート、マクゴロールステアラート、マクロゴールグリセロールリシノレアート、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートなどの糖エステル;オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド;セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、並びにコカミドMEA、DEA、TEAなどのコカミド、他の非イオン性界面活性剤及び他のイオン性界面活性剤が含まれ得る。
【0094】
本明細書に提供されている製剤は、製剤の成分として治療用ポリペプチドを含むことができる。治療用ポリペプチドは、抗体、抗原結合断片又は抗体の機能的断片、ペプチボディ又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0095】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、本明細書中に記載されている製剤は、例示されているもの及び本分野において周知のその他のものを含む生物医薬の多くの種類に対して等しく適用可能であることが当業者に理解される。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、1つ又はそれ以上の賦形剤、界面活性剤及び/又は場合によって使用される成分の、例えば種類及び/又は量の選択は、製剤化されるべき生物医薬との化学的及び機能的適合性及び/又は投与様式並びに本分野において周知の他の化学的、機能的、生理的及び/又は医学的要素に基づいて行い得ることも当業者に理解される。例えば、先述のように、非還元糖は、還元糖と比べて、ポリペプチド生物医薬とともに使用した場合に、好ましい賦形剤特性を示す。従って、本発明の製剤は、ポリペプチド生物医薬に関して、さらに以下で例示されている。しかしながら、適用可能性の範囲、化学的及び物理的特性、ポリペプチド生物医薬に対して適用される考慮事項及び方法は、ポリペプチド生物医薬以外の生物医薬に対しても同様に適用できる。
【0096】
様々な実施形態において、製剤中で使用するために適用可能なポリペプチド生物医薬の様々な種類には、治療的ポリペプチドの異なる種類、例えば、ポリペプチドの免疫グロブリンスーパーファミリー、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが含まれ得る。製剤中での使用に適用可能な典型的ポリペプチド生物医薬には、例えば、抗体及びその機能的断片、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びFhmを含むTNFRリガンド、サイクリン、エリスロポエチン、神経成長因子(NGF)、発達に応じて制御される神経成長因子誘導性遺伝子VGF、神経栄養因子、神経栄養因子NNT−1、Eph受容体、Eph受容体リガンド;Eph様受容体、Eph様受容体リガンド、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、Thy−1特異的タンパク質、Hekリガンド(hek−L)、Elk受容体及びElk受容体リガンド、STATs、コラーゲナーゼ阻害剤、オステオプロテジェリン(OPG)、APRIL/G70、AGP−3/BLYS、BCMA、TACI、Her−2/neu、アポリポタンパク質ポリペプチド、インテグリン、エクステンジン、インシュリン、成長ホルモン、濾胞刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、C3b/C4b補体受容体、SHC結合タンパク質、DKRポリペプチド、細胞外マトリックスポリペプチド、上記治療的ポリペプチドに対する抗体及びその抗体機能的断片、上記治療的ポリペプチドに対する受容体に対する抗体及びその抗体機能的断片、これらの機能的ポリペプチド断片、融合ポリペプチド、キメラポリペプチドなどの多くの異なる治療的ポリペプチドが含まれ得る。
【0097】
製剤の様々な実施形態中で使用することができる市販の生物医薬の例には、例えば、(Etanercept;CHOによって発現される二量体融合タンパク質(Amgen,Inc.));(Epoetinα;哺乳動物細胞によって発現される糖タンパク質(Amgen,Inc.));(インターフェロンアルファコン−1;イー・コリによって発現される組換えタンパク質(Amgen,Inc.));(アナキンラ;イー・コリによって発現される、ヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−IRa)の組換え非グリコシル化形態(Amgen,Inc.));(ダルベポエチンα;CHOによって発現された、組換えヒト赤血球新生刺激タンパク質(Amgen,Inc.));(ペグフィルグラスチム;組換えメチオニルヒトG−CSFと20kDPEGの共有連結体(Amgen,Inc.));(Filgrastim;イー・コリによって発現されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(Amgen,Inc.))、(Ancestim、幹細胞因子;イー・コリによって発現された組換えヒトタンパク質(Amgen,Inc.))、(パニツムマブ;EGF受容体に対する抗体(AmgenInc.))又はデノスマブ(RNAKLに対する抗体(AmgenInc.))が含まれ得る。これら及び他の入手可能な生物医薬は、製造の時点で、使用の前に及び/又は短期若しくは長期保存の前に、本明細書中に記載されている製剤中で使用することが可能である。
【0098】
生物医薬は、抗体であり得る。以下に記載されているのは、様々な実施形態において治療用ポリペプチドとして使用することができる抗体及びその機能的断片及び抗原結合断片である。先述されているように、抗体及びその機能的断片に対して適用可能な化学的及び物理的特性、製剤化の検討事項及び方法は、ポリペプチド生物医薬を含む生物医薬に対しても同様に適用することができる。
【0099】
抗体又は免疫グロブリンは、分子標的又は抗原に対して特異的な親和性を有するポリペプチドである。標的は、ヒト、カニクイザル、マウス、イヌ、ネコ及びウサギを含む(但し、これらに限定されない。)あらゆる種の中に天然に存在し得る。様々な実施形態において、標的は、天然に存在するタンパク質のバリアントであり得る。このようなバリアントには、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するバリアントが含まれる。ある種の実施形態において、標的は、天然に存在するタンパク質の1つ又はそれ以上のドメインの欠失を含む。
【0100】
抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。モノクローナル抗体は、単一の細胞クローン又はハイブリドーマの産物である抗体を表し得る。モノクローナル抗体は、単一分子の免疫グロブリン種を産生するために、免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖及び軽鎖から、組換え法によって作製された抗体も表し得る。モノクローナル抗体調製物内の抗体に対するアミノ酸配列は実質的に均一であり、このような調製物内の抗体の結合活性は、同一又は類似の結合アッセイにおいて比較したときに、実質的に同一の抗原結合活性を示し得る。以下でさらに記載されているように、様々な抗体及びモノクローナル抗体の特徴は、本分野において周知である。
【0101】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え、発現された骨髄腫細胞株、ファージディスプレー及びコンビナトリアル抗体ライブラリー法又はこれらの組み合わせの使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、本分野において公知であり、例えば、「Harlow and Lane.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981);Harlow et al.,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999),and Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,W.H.Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991)に教示されているものなどのハイブリドーマ技術を用いて作製することが可能である。組換え法、ファージディスプレイ法及び免疫化された動物及び未処置動物から得られたライブラリーを含むコンビナトリアル抗体ライブラリー法によってモノクローナル抗体を作製するための公知の方法の例は、「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,W.H.Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991)」に記載されているのを見出すことができる。
【0102】
生物医薬として使用するためのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。むしろ、先述のように、モノクローナル抗体とは、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一のクローンに由来する抗体を表し、必ずしもそれが産生される方法によらない。
【0103】
抗体機能的断片又は抗原結合断片は、その標的特異的結合活性の一部又は全部を保持する抗体の一部を表す。このような機能的断片には、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ペプチボディ及びミニボディなどの断片が含まれ得る。他の機能的断片には、例えば、重(H)又は軽(L)鎖ポリペプチド、可変重(VH)及び可変軽(VL)鎖領域ポリペプチド、相補性決定領域(CDR)ポリペプチド、単一ドメイン並びに標的特異的結合活性を保持するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが含まれ得る。
【0104】
「ペプチボディ」は、抗体CH1、CL、VH及びVLドメインを除外する抗体Fcドメイン(すなわち、CH2及びCH3抗体ドメイン)並びにFab及びF(ab)2を含む分子を表し、Fcドメインは、1つ又はそれ以上のペプチド、好ましくは、薬理学的に活性なペプチド、特に好ましくは、ランダムに生成された薬理学的に活性なペプチドに付着されている。ペプチボディの作製は、2000年5月4日に公開されたPCT公報WO00/24782号に一般的に記述されている。
【0105】
本明細書において、ペプチボディは抗体機能的断片としても含められる。このような抗体結合断片は、例えば、Harlow and Lane,上記;Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),NewYork:VCH Publisher,Inc.);Huston et al.,Cell Biophysics,22:189−224(1993);Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol.,178:497−515(1989)及びDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,Second Ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY(1990)に記載されているのを見出すことができる。
【0106】
標的分子への有益な結合特性を示す抗体及びその機能的抗体断片に関して、様々な形態、改変及び修飾が本分野において公知である。製剤中で使用するための標的特異的モノクローナル抗体は、このような様々なモノクローナル抗体の形態、改変及び修飾の何れをも含むことができる。本分野において公知であるこのような様々な形態及び用語の例は、以下に記載されている。
【0107】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片を表し、F(ab’)2断片は、ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含むが、Fcを欠如する二価断片であり、Fd断片はVH及びCH1ドメインからなり、Fv断片は抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなり、dAb断片(Ward et al.(1989)Nature341:544−546,(1989))はVHドメインからなる。
【0108】
抗体は、1つ又はそれ以上の結合部位を有し得る。2以上の結合部位が存在する場合には、結合部位は互いに同一であり得、又は異なり得る。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、一本鎖抗体又はFab断片は1つの結合部位を有するのに対して、「二重特異的」又は「二機能性」抗体は2つの異なる結語部位を有する。
【0109】
一本鎖抗体(scFv)は、リンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介してVL及びVH領域が連結されて、連続するポリペプチド鎖を形成する抗体を表し、リンカーは、タンパク質鎖が自身の上に折り返し、一価の抗原結語部位を形成するのに十分に長い(例えば、Bird et al.,Science242:423−26(1988)及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−83(1988)を参照。)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を表し、各ポリペプチド鎖は、同一鎖上の2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎ、従って、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合できるようにするリンカーによって連結されたVH及びVLドメインを含む(例えば、Holliger et al.Proc.Natl.Acad.Sd.USA90:6444−48(1993)及びPoljak et alStructure2:1121−23(1994)を参照)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合には、それらの対合から得られるダイアボディは2つの同じ抗原結合部位を有する。2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製するために、異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用することができる。同様に、トリボディ及びテトラボディは、それぞれ3つ及び4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ、同一又は別異であり得る3つ及び4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0110】
CDRは、免疫グロブリン(Ig又は抗体)VHβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(H1、H2又はH3)の1つを含有する領域又は抗体VLβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(L1、L2又はL3)の1つを含有する領域を表す。従って、CDRは、フレーム領域配列内に散在された可変領域配列である。CDR領域は当業者に公知であり、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域として、例えば、Kabatによって定義されている(Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1−75(1978))。CDR領域配列は、保存されたβ−シートフレームワークの一部でなく、従って、異なる立体構造を採ることができる残基としてもChothiaによって構造的に定義されている(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。両用語ともに、本分野において周知である。多数の構造の比較によって、標準的抗体可変ドメイン内のCDRの位置が決定されている(Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948(1997);Morea et al.,Methods20:267−279(2000))。異なる抗体中において、ループ内の残基の数は変動するので、標準的な位置に対する追加のループ残基には、標準的な可変ドメイン付番スキーム中の残基番号の隣に、慣用的にa、b、cなどが付番される(Al−Lazikani et al.,上記(1997))。このような命名法は、同様に、当業者に公知である。
【0111】
例えば、Kabat(超可変的)又はChothia(構造的)表記の何れかに従って定義されたCDRが、以下の表に記載されている。
【0112】
【表1】
【0113】
キメラ抗体とは、ある抗体由来の1つ又はそれ以上の領域と及び1つ又はそれ以上の別の抗体由来の1つ又はそれ以上の領域とを含有する抗体を表す。1つの例において、CDRの1つ又はそれ以上が標的分子に対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。別の例において、CDRの全てが標的分子に対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。さらに別の具体例において、2以上の非ヒト標的特異的抗体由来のCDRが、キメラ抗体中で混合され、適合される。例えば、キメラ抗体は、第一の非ヒト標的特異的抗体の軽鎖由来のCDR1、CDR2及び第二の非ヒト標的特異的抗体の軽鎖由来のCDR3及び第三の標的特異的抗体由来の重鎖由来のCDRを含むことができる。さらに、フレームワーク領域は、同一のものの1つから由来することができ、又は1つもしくはそれ以上の異なるヒト抗体若しくはヒト化抗体に由来することができる。ドナー及びレシピエント抗体の両者がヒトであるキメラ抗体を作製することができる。
【0114】
ヒト化抗体又は移植された抗体は、ヒト対象に投与された場合に、非ヒト種の抗体と比べて、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性がより少なくなるように、及び/又はより軽い免疫応答を誘導するように、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加だけ、非ヒト種抗体配列と異なる配列を有する。一つの例において、ヒト化抗体を作製するために、非ヒト種抗体の重鎖及び/又は軽鎖のフレームワーク及び定常ドメイン中のある種のアミノ酸が変化を受け得る。別の例において、ヒト抗体由来の定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合され得る。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号及び同第5,877,293号に見出され得る。ヒト化抗体には、抗体再表面化法などを用いて作製された抗体も含まれる。
【0115】
ヒト抗体とは、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ又はそれ以上の可変領域及び定常領域を有する抗体を表す。例えば、完全なヒト抗体には、可変及び定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体が含まれる。ヒト抗体は、本分野で公知の様々な方法を用いて調製することが可能である。
【0116】
分子をイムノアドヘシンにするために、共有的に又は非共有的に分子中に1つ又はそれ以上のCDRを取り込ませることも可能である。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを取り込むことができ、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合させることができ、又は非共有的にCDRを取り込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが対象の特定抗原へ特異的に結合できるようにする。
【0117】
中和抗体又は阻害抗体は、標的特異的モノクローナル抗体の過剰が標的に結合された結合対の量を低下させる場合に、標的分子の結合対への結合を阻害する標的特異的モノクローナル抗体を表す。結合阻害は、少なくとも約10%、特に、少なくとも約20%生じ得る。様々な具体例において、モノクローナル抗体は、標的に結合される結合対の量を、例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%及び99.9%低下させることができる。結合の低下は、例えば、インビトロ競合結合アッセイにおいて測定されるように、当業者に公知の何れかの手段によって測定され得る。
【0118】
拮抗性抗体は、標的分子を発現している細胞、組織又は生物に添加されたときに、標的分子の活性を阻害する抗体を表す。活性の減弱は、結合対のみの存在下での標的分子活性のレベルと比べて、少なくとも約5%、特に少なくとも約10%、より具体的には少なくとも約15%又はそれ以上であり得る。様々な具体例において、本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%又は100%だけ、標的分子活性を阻害することができる。
【0119】
上記標的特異的モノクローナル抗体と同様に、さらなる実施形態において、様々な実施形態において使用するための標的特異的モノクローナル抗体には、標的分子の拮抗活性を示すモノクローナル抗体が含まれ得る。標的分子活性のアンタゴニストは、その結合対によって結合され又は刺激された場合に、標的分子の少なくとも1つの機能又は活性を減少させる。このような機能には、例えば、細胞制御、遺伝子制御、タンパク質制御、シグナル伝達、細胞増殖、分化、遊走、細胞の生存の刺激若しくは阻害又は他のあらゆる生化学的及び/又は生理学的機能が含まれ得る。標的分子の他の機能又は活性も、本発明の生物医薬として使用するための拮抗性標的特異的モノクローナル抗体によって低減又は阻害され得る。本明細書に提供されている教示及び指針に鑑みれば、当業者は、異なる拮抗活性を示す標的特異的モノクローナル抗体の幅広い範囲を作製し、同定することができる。
【0120】
拮抗性標的特異的モノクローナル抗体は、本明細書に記載されているように作製及び同定することができる。拮抗性の標的特異的モノクローナル抗体を同定するための具体的な方法は、標的特異的モノクローナル抗体を、結合対又は他のアゴニストの存在下で、その結合対に対して応答性である標的分子発現細胞と接触させることを含む。接触は、結合及び標的分子の機能又は活性の減少又は低下を測定することができるのに十分な条件下で行われる。標的の少なくとも1つの機能又は活性を減少させ、低下させ、又は抑制する標的特異的モノクローナル抗体は、標的特異的拮抗性モノクローナル抗体として同定される。
【0121】
作動性抗体は、標的分子を発現する細胞、組織又は生物に添加されたときに、少なくとも約5%、特に少なくとも約10%又は約15%、標的分子を活性化する抗体を表し、ここで、100%の活性化とは、結合対の同じモル量によって、生理的条件下で達成される活性化のレベルである。様々な具体例において、本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、750%又は1000%、標的分子活性を活性化することができる。
【0122】
さらなる実施形態において、様々な実施形態において使用するための標的特異的モノクローナル抗体には、標的分子作動活性を示すモノクローナル抗体が含まれ得る。標的分子活性のアゴニストは、その結合対によって結合された場合に、標的分子の少なくとも1つの機能又は活性を増加させる分子を表す。増加され得る活性には、例えば、拮抗活性に関して先述されているものが含まれる。従って、標的分子アンタゴニスト活性を有する標的特異的モノクローナル抗体は、標的分子の1つ又はそれ以上の細胞機能又は活性を減少させ、低下させ又は抑制する。標的分子アゴニスト活性を有する標的特異的モノクローナル抗体は、標的分子の1つ又はそれ以上の細胞機能又は活性を増加させ、促進し又は刺激する。本明細書に提供されている教示及び指針に鑑みれば、当業者は、異なる拮抗又は作動活性を示す標的特異的モノクローナル抗体の幅広い範囲を作製し、同定することができる。
【0123】
本明細書に提供されている教示及び指針に鑑みれば、当業者は、作動性標的特異的モノクローナル抗体を作製するための本分野で周知の免疫化法、ハイブリドーマ製造、骨髄腫細胞株発現及びスクリーニング法を使用することができる。作動性の標的特異的モノクローナル抗体を同定するための方法は、標的特異的モノクローナル抗体を、結合及び標的分子の機能又は活性の刺激又は増加の測定に十分な条件下で、標的分子結合対に対して応答性である標的分子発現細胞と接触させることを含む。標的分子の少なくとも1つの機能又は活性を増加させ、刺激し、又は促進する標的特異的モノクローナル抗体は、標的特異的作動性モノクローナル抗体として同定される。
【0124】
エピトープとは、抗体の抗原結合部位内の1つ又はそれ以上の抗体に特異的に結合する分子の一部、例えば、ポリペプチドの一部を表す。エピトープ決定基は、抗体に結合する分子の連続的又は非連続的領域を含み得る。エピトープ決定基は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基も含むことができ、特異的な三次元構造的特徴及び/又は特異的な電荷特徴を有することができる。
【0125】
特異的結合は、関連するが、標的でない他の分子と比べて、又は他の非標的分子と比べて、標的分子に対して優先的な結合を示す標的特異的モノクローナル抗体を表す。優先的な結合には、その標的分子への検出可能な結合を示す一方で、関連するが、標的でない別の分子には検出可能な結合を殆ど又は全く示さない本発明の生物医薬として使用するためのモノクローナル抗体が含まれる。
【0126】
特異的結合は、例えば、親和性(Ka又はKd)、会合定数(kon)、解離定数(koff)、結合力又はこれらの組み合わせなど、当業者に公知の様々な測定の何れによっても測定することができる。本分野で周知の様々な方法又は測定の何れも使用することができ、標的特異的結合活性を測定するために適用することができる。このような方法及び測定には、例えば、標的分子と非標的分子間の見かけの結合又は相対的結合が含まれる。このような見かけの結合又は相対的結合を測定するために、定量的測定と定性的測定の両方を使用することが可能である。結合測定の具体例には、例えば、競合結合アッセイ、タンパク質又はウェスタンブロット法、ELISA,RIA、表面プラズモン共鳴、エバネセント波法、フローサイトメトリー及び/又は共焦点顕微鏡が含まれる。
【0127】
さらに、拮抗性又は作動性の標的特異的モノクローナル抗体の特異的結合は、例えば、細胞機能又は活性の変化を測定することを含む、上記又は下記方法の何れによっても測定することが可能である。増殖、分化又は他の生化学的及び/又は生理学的機能などの細胞機能又は活性の変化を測定する方法は、本分野において公知である。先述されている結合アッセイと同様、1つ又はそれ以上の細胞機能を拮抗又は作動することに関して、見かけの又は相対的測定を行うために、定量的測定と定性的測定の両方を使用することが可能である。
【0128】
本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片は、様々な抗体形態の何れかで作製することが可能であり、及び/又は先述されている様々な様式の何れかで、それらの特異的標的結合活性を維持しながら改変若しくは修飾することが可能である。標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片のこのような抗体形態、改変又は修飾(これらの組み合わせを含む。)の何れもが、生物医薬として使用され得る。生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片のこのような様々な抗体形態、改変又は修飾の何れもが、本明細書に記載されている方法、組成物及び/又は製品において同様に使用され得る。例えば、標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片には、標的特異的な移植、ヒト化、Fd、Fv、Fab、F(ab)2、scFv及びペプチボディモノクローナル抗体並び先述されている全ての他の形態、改変及び/又は修飾が含まれ、当業者に周知の他の形態が含まれ得る。
【0129】
ハイブリドーマを作製する方法及びハイブリドーマ技術を用いて標的特異的モノクローナル抗体をスクリーニングする方法は本分野において公知である。例えば、ポリペプチドなどの標的分子でマウスを免疫化することができ、一旦、免疫応答が検出されたら、例えば、標的分子に対して特異的な抗体がマウス血清中に検出されたら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで、周知の方法によって、何れかの適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞に、脾細胞を融合させる。限界希釈によって、ハイブリドーマを選択し、クローニングする。次いで、標的分子を結合することができる抗体を分泌する細胞に関して、本分野で公知の方法によって、ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することによって、一般に抗体の高いレベルを含有する腹水液が生成され得る。
【0130】
さらに、標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、原核生物又は真核生物宿主中での組換え発現を使用することができる。単一の標的特異的モノクローナル抗体種又はその機能的断片を作製するために、組換え発現を使用することができる。あるいは、重鎖及び軽鎖の多様なライブラリー又は可変重鎖及び可変軽鎖の組み合わせを作製するために、組換え発現を使用することができ、次いで、標的分子への特異的結合活性を示すモノクローナル抗体又はその機能的断片に対してスクリーニングすることができる。例えば、重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はその機能的断片は、特異的モノクローナル抗体種を作製するために、本分野で周知の方法を用いて、標的特異的モノクローナル抗体をコードする核酸から同時発現させ得る。重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はこれらの機能的断片をコードする核酸の同時発現された集団から、本分野で周知の方法を用いて、ライブラリーを作製し、標的特異的モノクローナル抗体の同定のために、標的分子への親和性結合によってスクリーニングすることができる。このような方法は、例えば、Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,上記;Huse et al.,Science246:1275−81(1989);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7978−82(1991);Kang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:4363−66(1991);Pluckthun and Skerra,上記;Felici et al.,J.Mol.Biol.222:301−310(1991);Lerner et al.,Science258:1313−14(1992)及び米国特許第5,427,908号に記載されているのを見出すことができる。
【0131】
コードする核酸のクローニングは、当業者に周知の方法を用いて達成することができる。同様に、VH及び/又はVLコード核酸を含むコードする核酸の重鎖及び/又は軽鎖レパートリーのクローニングも、当業者に周知の方法によって達成することができる。このような方法には、例えば、発現クローニング、相補的プローブを用いたハイブリッド形成スクリーニング、プライマーの相補対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は相補的プライマーを用いる利ガーゼ連鎖反応(LCR)、逆転写酵素PCR(RT−PCR)などが含まれる。このような方法は、例えば、「Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ThridEd.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)」及び「Ansubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)」中に記載されているのを見出すことができる。
【0132】
コードする核酸は、National Institutes of Health(NIH)のNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって運営されているものなどの完全なゲノムデータベースを含む様々な公共的データベースの何れかから取得することも可能である。プライマーは入手可能であり、又は抗体の可変若しくは定常領域部分の保存された一部を用いて容易に設計できるので、重鎖及び/又は軽鎖に対する単一のコード核酸又はコード核酸のレパートリー又はこれらの断片の何れかを単離する特に有用な方法は、コード領域部分の具体的な知識なしに達成することができる。例えば、コード核酸のレパートリーは、PCRと一緒にこのような領域に対する縮重プライマーの複数を用いてクローニングすることができる。このような方法は本分野において公知であり、例えば、Huse他、上記及び「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.、上記」に記載されているのを見出すことができる。本発明の生物医薬として使用するための標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、上記方法の何れも及び本分野で公知の他の方法(これらの組み合わせを含む。)を使用することができる。
【0133】
様々な実施形態において、抗体、抗体の機能的断片を治療的ポリペプチドとして有する製剤が提供される。治療的ポリペプチドには、モノクローナル抗体、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又はペプチボディが含まれ得る。
【0134】
抗体又は抗体の機能的断片の濃度は、例えば、生物医薬の活性、治療されるべき適応症、投与の様式、治療計画及び製剤が液体又は凍結乾燥された形態の何れかで長期保存が予定されているかどうかに応じて変動し得る。当業者は、過度の実験操作なしに、およその生物医薬濃度を決定することができる。医学的適応症、投与の様式及び治療計画の幅広い範囲に対して、米国内での治療的使用に対して承認されている80超の生物医薬が存在する。これらの承認された生物医薬及びその他の生物医薬は、様々な実施形態において使用することができる生物医薬濃度の範囲の例であり得る。
【0135】
一般に、生物医薬、例えば、治療的ポリペプチド生物医薬は、約1から200mg/mL、約10から200mg/mL、約20から180mg/mLの間、約30から160mg/mLの間、約40から120mg/mL、又は約50から100mg/mL、約60から80mg/mL又は約30から50mg/mLの間の濃度で、様々な実施形態の製剤中に含めることができる。
【0136】
様々な実施形態において、生物医薬は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの間の濃度を有する抗体又は抗原結合断片であり得る。
【0137】
これらの範囲より下、上又は間の生物医薬濃度及び/又は量も、本明細書に記載されている製剤において使用することができる。例えば、約1.0mg/mL未満で、1つ又はそれ以上の生物医薬を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、特に保存用に製剤化される場合、約200mg/mLを上回る1つ又はそれ以上の生物医薬の濃度を含有することができる。従って、例えば、約1、5、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190若しくは200mg若しくはそれ以上などの、1つ又はそれ以上の生物医薬の所望される濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。以下の例には、約3mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL又は約100mg/mLの濃度で治療用ポリペプチド(抗体)を有する製剤に対する結果が提供されている。
【0138】
様々な実施形態において、製剤は、製剤中に生物医薬の組み合わせを含むことができる。例えば、本発明の製剤は、1つ又はそれ以上の症状の治療用の単一の生物医薬を含むことができる。本発明の製剤は、単一又は複数の症状に対して、2つ又はそれ以上の異なる生物医薬を含むこともできる。本発明の製剤中での複数の生物医薬の使用は、例えば、同一又は別異の適応症に向けられ得る。同様に、例えば、病的症状及び一次的治療によって引き起こされた1つ又はそれ以上の副作用の両方を治療するために、本発明の製剤中で複数の生物医薬を使用することができる。複数の生物医薬は、例えば、病的症状の進行の同時治療及びモニタリングなどの様々な医学的目的を達成するために、本発明の製剤中に含めることもできる。一部又は全部の示唆される治療及び/又は診断に対して単一の製剤が十分であり得るので、上に例示されているもの及び本分野において周知の他の組み合わせなどの複数同時療法は、患者の服薬遵守のために特に有用である。当業者は、組み合わせ療法の幅広い範囲に対して生物医薬を混合できることを知悉する。同様に、様々な実施形態において、製剤は、小分子薬物とともに及び1つ又はそれ以上の小分子医薬との、1つ又はそれ以上の生物医薬の組み合わせとともに使用することができる。従って、様々な実施形態において、1、2、3、4、5若しくは6又はそれ以上の異なる生物医薬を含有する製剤及び1つ又はそれ以上の小分子医薬と組み合わされた1つ又はそれ以上の生物医薬を含有する本発明の製剤が提供される。
【0139】
様々な実施形態において、製剤は、本分野で公知の1つ又はそれ以上の防腐剤及び/又は添加物を含むことができる。同様に、製剤は、様々な公知の送達製剤の何れにもさらに製剤化することができる。例えば、製剤は、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味剤及び着香剤を含むことができる。このような場合によって使用される成分、それらの化学的及び機能的特徴は、本分野において公知である。投与後における生物医薬の迅速な放出、持続的放出又は遅延した放出を促進する製剤も、同様に、本分野において公知である。本発明の製剤は、本分野で公知のこれらの又はその他の製剤成分を含むように作製することができる。
【0140】
一旦、製剤が本明細書中に記載されているとおりに調製されたら、製剤中に含有される1つ又はそれ以上の生物医薬の安定性は、本分野で公知の方法を用いて評価することができる。幾つかの方法が実施例中で以下に例示されており、サイズ排除クロマトグラフィー、粒子計数及び陽イオン交換クロマトグラフィーが含まれる。他の方法は、例えば、結合活性、他の生化学的活性及び/又は生理的活性を含む様々な機能的アッセイの何れをも含むことができ、本発明の緩衝化された製剤中での生物医薬の安定性を測定するために、2つ又はそれ以上の異なる時点で評価することができる。
【0141】
製剤は、一般に、医薬の標準に従って、及び医薬等級の試薬を用いて調製することができる。同様に、製剤は、無菌製造環境中で無菌試薬を用いて調製することができ、又は調製後に無菌化することができる。無菌注射可能溶液は、例えば、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又は組み合わせとともに、グルタミン酸緩衝液又は賦形剤中に、必要とされる量の1つ又はそれ以上の生物医薬を取り込ませた後に、滅菌精密ろ過を行うなど、本分野で公知の操作を用いて調製することができる。様々な実施形態において、無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末には、例えば、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)が含まれ得る。このような乾燥法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から、何れかのさらなる所望の成分と一緒に、1つ又はそれ以上の生物医薬の粉末を与える。
【0142】
投与及び投薬治療計画は、最適な治療応答に対する有効量を与えるように調整することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与することができ、又は、治療状況の緊急性によって示されたとおりに、用量を比例的に減少若しくは増加させ得る。1つ又はそれ以上の生物医薬の有効量を投与する上で、投薬量の投与の容易さ及び均一さのために、単位投薬形態での静脈内、非経口又は皮下注射用の製剤を製剤化することが有用であり得る。単位投薬とは、治療されるべき対象に対する統一された投薬量として適合された、医薬の物理的に分離された量を表し、各単位は、所望される治療効果を生じるように計算された活性生物医薬の所定量を含有する。
【0143】
投薬は、製剤中に使用される抗体に依存する。例えば、本明細書中に記載されている製剤中で抗NGF抗体が使用される場合には、投薬頻度は、製剤中で使用されるその抗NGF抗体の薬物動態学的パラメータに依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで、組成物を投与することができる。所望される効果の例は、抗NGF抗体を含む製剤の投与後における疼痛又は神経因性疼痛の減弱であり得る。
【0144】
組成物は、従って、単回投薬として、又は経時的に2回若しくはそれ以上の投薬として(所望の分子の同じ量を含有してもよく、含有しなくてもよい。)、又はインプラント装置又はカテーテルを介した連続注入として投与され得る。適切な投薬量のさらなる精緻化は、当業者によって日常的に行われ、当業者によって日常的に行われる作業の範疇に属する。適切な投薬量は、適切な用量応答データの使用を通じて確認し得る。様々な実施形態において、本明細書に記載されている製剤中の抗体は、長期にわたる期間を通じて、患者に投与され得る。完全なヒト抗体の慢性投与は、非ヒト動物中でヒト抗原に対して産生される抗体(例えば、非ヒト種において産生される非完全ヒト抗体)と関連付けられ得る有害な免疫又はアレルギー応答を最小限に抑えることができる。
【0145】
治療的に使用されるべき抗NGF抗体含有医薬又は他のあらゆる抗体含有製剤の有効量は、例えば、治療的な文脈及び目的に依存し得る。当業者は、治療用のための適切な投薬レベルは、送達される分子、抗NGF抗体が使用されている適応症、投与の経路及びサイズ(体重、体表面又は臓器サイズ)及び/又は患者の状態(年齢及び一般的な健康)に部分的に依存して変動する。ある種の実施形態において、医師は、最適な治療効果を得るために、投薬量を滴定し、投与の経路を修飾し得る。典型的な投薬量は、上述の要因に応じて、約0.1μg/kgから最大約30mg/kg又はそれ以上の範囲であり得る。好ましい実施形態において、投薬量は、約0.1μg/kgから最大約30mg/kg、より好ましくは約1μg/kgから最大約30mg/kg又はさらに好ましくは約5μg/kgから最大約30mg/kgの範囲であり得る。当業者によって認知される適切な条件下では、より大量の投与の何らかの負の効果がこのような投薬の有益性を上回らない限り、30mg/kgより高い投薬量を投与できることも想定することができる。
【0146】
様々な実施形態において、さらなる例示のために、治療用抗体又はその機能的断片などのポリペプチド生物医薬の有効量は、例えば、ある期間にわたって、計画された間隔を置いて、2回以上投与することができる。治療用抗体は、例えば一ヶ月、二ヶ月若しくは三ヶ月又はそれ以上など、少なくとも一ヶ月又はそれ以上の期間にわたって投与され得る。慢性的な症状の治療に関しては、長期の持続的治療が一般に最も効果的である。例えば1週から6週の期間を含む急性症状を治療する場合には、投与のより短い期間が十分であり得る。一般に、選択された一又は複数の指標に関して、患者がベースラインを上回る改善の医学的に妥当な程度を呈するまで、治療用抗体又は他の生物医薬が投与される。
【0147】
選択された生物医薬及び治療されるべき適応症に応じて、治療的有効量は、標的とされる病的状態の少なくとも1つの症候を、治療されていない対象と比べて、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%若しくは60%又はそれ以上低下させるのに十分である。症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、ヒトにおいて標的とされる症状に対する効力を予測する動物モデル系において評価することができる。あるいは、症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、インビボでの治療活性の指標となる製剤のインビトロ機能又は活性を調べることによって評価することができる。
【0148】
製剤中の1つ又はそれ以上の生物医薬の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、製剤及び投与様式に対する所望の治療的応答を達成するのに有効である活性な生物医薬の量を得るために変動させることができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症候の重度並びに選択された生物医薬及び/又は投与経路などの因子に基づいて、投与される量を測定することができる。選択された投薬量レベルは、例えば、使用される生物医薬の活性、投与の経路、投与の時間、排泄の速度、治療の期間、使用される具体的な組成物と組み合わされて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び以前の病歴並びに医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存し得る。様々な実施形態は、1日当り対象のkg体重当り抗体約1ng(1ng/kg/日)から約10mg/kg/日、より具体的には、約500ng/kg/日から約5mg/kg/日、さらに具体的には、約5μg/kg/日から約2mg/kg/日の投薬量で、本発明の製剤中の抗体又はその機能的断片などの治療用ポリペプチドを対象に投与することを含み得る。適切な条件下では、より高い用量を投与することも可能である。
【0149】
本分野の技術を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬製剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、望ましい治療効果を達成するために必要とされるレベルより低いレベル本発明の製剤の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。一般に、本発明の製剤の適切な一日投薬量は、治療効果をもたらすのに効果的な最低用量である生物医薬の量である。このような有効量は、一般に、先述されている要因に依存する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であることが特に有用である。所望であれば、製剤の有効量を達成するための有効一日用量は、場合により単位投薬量で、一日を通じて、適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6又はそれ以上の副投薬として投与することができる。
【0150】
様々な実施形態において、製剤は、例えば、本分野で公知の医療用具を用いて投与することができる。製剤を投与するための医療用具には、注射器及び自動注入装置が含まれ得る。注射器は、予め充填された注射器であり得る。様々な実施形態において、米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号;又は米国特許第4,596,556号に記載されている用具など、無針皮下注射器具を用いて製剤を投与することができる。本明細書に記載されている製剤とともに有用であり得る公知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で医薬を分配するためのインプラント可能な微少注入ポンプを記載する米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて医薬を投与するための治療用具を記載する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを記載する米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための変動流量インプラント可能注入装置を記載する米国特許第4,447.224号;マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,439,196号及び浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,475,196号が含まれる。このような他の多くのインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者に公知である。さらに、様々な実施形態において、製剤は、予め充填された注射器から投与することができる。
【0151】
様々な実施形態において、製剤中で使用するための生物医薬は、インビボでの選択的な分布を促進するように製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。脳血液関門の通過を促進するために、所望であれば、製剤は、例えば、1つ又はそれ以上の生物医薬をカプセル封入するためのリポソームをさらに含むことができる。リポソームを製造する方法に関しては、例えば、米国特許第4,522,811号;米国特許第5,374,548号及び米国特許第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器中に選択的に輸送され、従って、選択された生物医薬の標的誘導された送達を強化する1つ又はそれ以上の部分をさらに含有し得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。典型的な標的誘導部分には、フォラート又はビオチン(例えば、Low他に付与された米国特許第5,416,016号);マンノシド(Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.(1995)FEBSLett.357:140;M.Owais et al.(1995)Antimicrob.AgentsChemother.39:180)又は界面活性プロテインA受容体(Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134)が含まれる。
【0152】
生物医薬、例えば、関心が持たれる抗体又は抗原結合断片の調製後、生物医薬を含む医薬製剤を調製することができる。一般に、製剤化されるべき抗体又は抗原結合断片は、凍結乾燥に供せられておらず、溶液中に存在する。溶液は、水溶液であり得る。しかしながら、様々な実施形態において、事前の凍結乾燥が行われ得る。製剤中に存在する抗体の治療的有効量は、投与の所望される投薬容量及び様式を考慮に入れることによって決定することができる。例えば、約0.1mg/mLから約60mg/mL、約10g/mLから約40g/mL又は約20mg/mLから約35mg/mL。
【0153】
様々な実施形態において、製剤を調製する方法が提供される。この方法は、緩衝溶液、例えば、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸緩衝液、プロリン及び治療的ポリペプチドの有効量を組み合わせることを含む。製剤の幅広い範囲を作製するために、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又はそれ以上を生物医薬の1つ又はそれ以上の有効量と組み合わせることができる。
【0154】
pH緩衝化された溶液中に抗体を含む水性製剤を調製することが可能である。緩衝液は、例えば、グルタミン酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液又は酢酸緩衝液であり得る。緩衝液は、約4.0から約6.0、約4.5から約5.5の範囲のpH又は約5.0のpHを有し得る。緩衝液濃度は、約1mMから約50mM、約5mMから約30mM、約10mM又は約30mMであり得る。
【0155】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する約3から約20mMの間のグルタミン酸緩衝液、約3%のL−プロリン及び治療用ポリペプチドの有効量を有する水溶液を含む製剤を含有する容器が提供される。簡潔に述べれば、本発明の組成物、キット及び/又は医薬に関して、製剤中の1つ又はそれ以上の生物医薬の合算された有効量を、単一の容器又は2以上の容器中に含めることができる。
【0156】
様々な実施形態によれば、製剤は、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール及び塩化ベンゾエトニウムなどの1つ又はそれ以上の防腐剤を実質的に含まないことができる。しかしながら、他の実施形態では、特に、製剤が複数投薬製剤である場合に、製剤中に防腐剤を含めることができる。防腐剤の濃度は、約0.1%から約2%又は約0.5%から約1%の範囲であり得る。
【0157】
製剤の所望される特徴に悪影響を与えない限り、「Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)」に記載されているものなどの、医薬として許容される、1つ又はそれ以上の他の担体、賦形剤又は安定化剤を製剤中に含めることができる。
【0158】
本明細書中に記載されている製剤は、治療されている適応症に対して所望される2以上の治療用タンパク質、好ましくは、他のタンパク質に悪影響を与えない相補的活性を有するタンパク質も含み得る。
【0159】
インビボ投与のために使用されるべき製剤は、無菌であり得る。これは、製剤を調製する前又は後に、無菌ろ過膜を通してろ過することによって達成することができる。
【0160】
造影成分を場合によって含めることが可能であり、パッケージは製剤を使用するための指示文書又はインタネットにアクセス可能な指示を含むこともできる。容器は、例えば、バイアル、瓶、注射器、予め充填された注射器又は複数分配パッケージングのための本分野で周知の様々な規格の何れをも含み得る。
【0161】
本明細書に記載されている抗体製剤は、治療用ポリペプチドの投与を必要とする様々な症状を治療するために使用することができる。例えば、患者中の症状がNGFの増加した発現又はNGFに対する増加した感受性によって引き起こされる場合には、本明細書に記載されている製剤は、NGFに対する抗体又は抗原結合断片とともに使用することができる。このような疾病も、「NGF媒介性疾患」又は「NGF媒介性症状」と称される。NGF発現又は感受性、「NGF媒介性疾患」又は「NGF媒介性症状」に関連する症状、NGFに対する抗体又は抗原結合断片に関するさらなる情報は、例えば、米国特許出願公開2005/0074821号A1に見出すことができる。他の症状を治療するための抗体製剤を調製することも可能である。
【0162】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含む製剤が提供される。グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液は、約5mMから約50mMの濃度を含む。様々な他の実施形態において、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液は約10mM、30mM又は50mMの濃度及び約5のpHを含む。幾つかの実施形態において、製剤は、等張濃度及び約5.0のpHを有することができる。
【0163】
様々な実施形態において、製剤中の抗体又は抗原結合断片は、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fc、ビス−scFv、一本鎖Fv(scFv)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ペプチボディ、VhHドメイン、V−NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、IgNAR又はレセプチボディを含む。抗体又は抗原結合断片は、成長因子を結合することができる。成長因子は、神経成長因子であり得る。NGFを含む製剤は、約10から約50mg/mLのNGFの濃度を有することができる。
【0164】
様々な実施形態において、製剤中の抗体又は抗原結合断片は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの間の濃度であり得る。
【0165】
様々な実施形態において、製剤は、約4.0から約6.0のpHを有する約1から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を含む。
【0166】
様々な実施形態において、グルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液がグルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウムから調製される。
【0167】
様々な実施形態において約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の有効量を組み合わせることを含む、製剤を調製する方法が提供される。抗体又は抗原結合断片は、成長因子に結合する。成長因子は、神経成長因子であり得る。
【0168】
様々な実施形態において、前記方法は、約4.0から約6.0のpHを有する約1から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を組み合わせることを含む。グルタミン酸又はアスパラギン酸は、グルタミン酸ナトリウムの約10mMの濃度を含む。pHは、約5.0である。
【0169】
様々な実施形態において、前記方法は抗体又は抗原結合断片を組み合わせることを含み、前記抗体又は抗原断片は、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fc、ビス−scFv、一本鎖Fv(scFv)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ペプチボディ、VhHドメイン、V−NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、IgNAR又はレセプチボディを含む。
【0170】
様々な実施形態において、前記方法は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの濃度を含む治療用ポリペプチドを組み合わせることを含む。
【0171】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する約3から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を有する水溶液を含む製剤を含有する容器が提供される。治療用ポリペプチドの濃度は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLである。様々な実施形態において、容器は、バイアル又は予め充填された注射器である。
【0172】
様々な実施形態において、患者中の、神経成長因子の増加した発現又は神経成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法が提供される。この方法は、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の有効量を含む製剤の医薬的有効量を患者に投与することを含む。症状は、疼痛又は神経因性疼痛であり得る。
【0173】
様々な実施形態において、製剤は、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝系を含む。緩衝系のグルタミン酸又はアスパラギン酸成分は、例えば、グルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウム塩又はその他の塩によって供給されることができ、約10mM(約5.0のpH)、約30mM又は約50mMの濃度で存在し、プロリンは約3.0%の濃度で存在し、抗体は約30mg/mLで存在する。製剤は、約5.0のpHを示し、治療用ポリペプチド(例えば、抗体)の存在下で、長期間にわたって緩衝能を維持する水溶液であり得る。長期間は、数週から数ヶ月であり得る。
【0174】
上記様々な実施形態の何れにおいても、製剤は、グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液ではなく、酢酸緩衝液を含む。関連する実施形態において、製剤は酢酸緩衝液を含むが、但し、酢酸緩衝液を含む製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含有することはない。様々な他の実施形態において、酢酸緩衝液が使用される場合には、製剤が塩化ナトリウム等張量をさらに含まなければ及び/又は目的の生物医薬(例えば、抗体)が事前の凍結乾燥に供されていなければ、製剤は界面活性剤及びポリオールの両方を含むことはない。あるいは、製剤は、酢酸緩衝液、プロリン及び生物医薬(例えば、抗体)からなり得、又は実質的にこれらからなり得る。
【0175】
様々な実施形態において、プロリン及び治療用タンパク質から実質的になり、又はプロリン及び治療用タンパク質からなる製剤が提供される。このような製剤は、自己緩衝化製剤と称することができる。製剤中の治療用タンパク質は、製剤がさらなるグルタミン酸、アスパラギン酸又は酢酸緩衝液なしに、選択されたpHを維持する濃度の抗体又は抗原結合断片であり得る。抗体又は抗原結合断片は、成長因子、例えば、神経成長因子を結合し得る。
【0176】
様々な実施形態において、自己緩衝化製剤は、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片から実質的になり、又はこれらからなり、前記製剤は、保存の間、選択されたpHを維持する。
【0177】
選択されたpHを維持するとは、保存の開始時点で、pHが当初pHの10%内に維持されることを意味する。自己緩衝化製剤において、グルタミン酸緩衝液、アスパラギン酸緩衝液又は酢酸緩衝液などの別個の緩衝成分は、製剤の一部ではない。別個の緩衝溶液以外の製剤内の成分、例えば、医薬タンパク質(例えば、抗体)の能力は、所定の適用に対して十分なpHの変化に耐え得るので、このような製剤は「自己緩衝化」と記載することができる。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLの濃度であり得る。
【0178】
様々な実施形態において、自己緩衝化製剤は、タンパク質(例えば、抗体又は抗原結合断片)、プロリン、溶媒を含むことができ、医薬として許容される1つ若しくはそれ以上の塩、浸透圧均衡剤(等張化剤)、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤、増量剤、凍結乾燥保護剤、消泡剤、キレート剤、防腐剤、色素、鎮痛剤又はさらなる薬剤をさらに含むことができる。
【0179】
ある種の実施形態に従う製剤は、タンパク質及び溶媒を含み、並びに低張、等張又は高張、好ましくは概ね等張、特に好ましくは等張である量で、医薬として許容される1つ又はそれ以上のポリオールをさらに含む自己緩衝化組成物を提供することができる。
【0180】
様々な実施形態において、1つ又はそれ以上の容器中に、抗体又は抗原結合製剤及びプロリンを含むキットが提供される。別の実施形態において、キットは、1つ又はそれ以上の容器中に、グルタミン酸、アスパラギン酸及び/又は酢酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片及びその使用に関する指示書を含むことができる。キットは、ヒトに使用するための医薬として許容される製剤である製剤を含むことができる。キットは、その使用のための指示書を含むこともできる。
【0181】
様々な実施形態において、キットは、生物医薬タンパク質を含むことができ、タンパク質は、ヒトの疾病を治療するために製剤化された生物医薬タンパク質、例えば、抗体又は抗原結合断片である。ある種の実施形態において、キットは、本明細書に記載されている1つ又はそれ以上の製剤を投与するための、1つ又はそれ以上の単一/又は複数チャンバーの注射器(例えば、液体注射器及びリオシリンジ(lyosryinge))を含むことができる。リオシリンジの例は、VetterGmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能な二重チャンバーの予め充填されたリオシリンジであるLyo−JectTMである。
【0182】
様々な実施形態において、キットは、注射器の中に搭載し、対象に投与する準備が整った形態で、部分的な真空下で、バイアル中に密封された、非経口、皮下、筋肉内又は静脈内投与用の製剤成分を含むことができる。これに関して、部分的真空下で、組成物をその中に配置することができる。これら及び他の実施形態の全てにおいて、キットは、先述の何れかに従って、1つ又はそれ以上のバイアルを含有することが可能であり、各バイアルは対象へ投与するための単一の単位用量を含有する。キットは、再構成時に、先述の何れかに従って、組成物を与える上記のように配置された凍結乾燥物を含むことができる。様々な実施形態において、キットは、凍結乾燥物及び凍結乾燥物を再構成するための無菌希釈剤を含有することができる。
【0183】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びその使用に関する指示書を1つまたはそれ以上の容器中に含むキットが提供される。
【0184】
様々な実施形態において、約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液又はこのような緩衝液を調製するための適切な酢酸塩、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びこれらの使用に関する指示書を1つ又はそれ以上の容器中に含むキット(キットは、ポリオール及び界面活性剤の両方をさらに含むことはない。)が提供される。
【0185】
様々な他の実施形態において、約2%から約10%の濃度のプロリン及び保存の間、製剤が選択されたpHを維持する濃度の抗体又は抗原結合断片から実質的になり、又はこれらからなる製剤を含むキットが提供される。抗体又は抗原結合断片は、神経成長因子に結合することができる。キットは、キット中の試薬の使用に関する指示書をさらに含むことができる。
【0186】
本発明の実施形態は、本明細書に記載されている具体的な実施形態によって範囲を限定されるものではなく、本明細書に記載されている具体的な実施形態は本発明の実施形態の例示を目的とするものであり、機能的に均等である全ての組成物又は方法が、本発明の範囲に属する。本明細書に示され、及び記載されているものの他に、実際に、本発明の様々な修飾が、先述の記載及び添付の図面から当業者に明らかになるはずである。このような修飾は、添付の特許請求の範囲に属するものとする。
【0187】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示することを目的とするものに過ぎない。
【実施例1】
【0188】
製剤の安定性
抗体の安定性に対する様々な製剤の効果を測定するために、下表2に示されている幾つかの製剤を調製した。製剤化された抗体溶液約3.0mLを、様々な時間にわたって、異なる温度で含有する、ゴム製Daikyoフッ素重合体栓付きの5ccブローバック型タイプ1ガラスバイアル中に製剤を保存した。
【0189】
【表2】
【0190】
目的の抗体、例えば、NGFに対する抗体(IgG2)を含む製剤を調製した。NGFに対する抗体を調製する方法は本分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開2005/0074821号に見出すことができる。製剤は、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸又は酢酸緩衝液の水溶液を含んだ。緩衝液は10mMの濃度及び5.1のpHを有し、抗体は30mg/mLの濃度で存在した。上述のように、追加成分を各製剤に添加した。E51P30は、L−グルタミン酸、プロリン及び神経成長因子に対する抗体を含有した。
【0191】
神経成長因子に対する抗体の安定性を測定するための様々な方法を使用した。方法には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)及び粒子計数が含まれた。一般に、方法は、以下のように実施した。
【0192】
SECは、UVダイオードアレイ検出装置、冷却された自動試料回収装置、通常のフローセル及び温度制御されたカラム区画を搭載したAgilent1100キャピラリーHPLCシステム(Agilent,Palo Alto,CA,USA)上で行った。移動相は、pH6.6で、100mMリン酸ナトリウム(Amgen Spec NumberS2700R01)、330mMNaCl(AmgenSpecNumberS2706R02)を有する水を含んだ。SE分析のために、PhenomenexShodexKW−803カラム(300×8mm)(Phenomenex,Torrance,CA,USA)を使用した。カラム区画の温度は25℃に保たれ、流速は0.5mL/分であった。
【0193】
CEXは、UVダイオードアレイ検出装置、冷却された自動試料回収装置、通常のフローセル及び温度制御されたカラム区画を搭載したAgilent1100キャピラリーHPLCシステム(Agilent,Palo Alto,CA,USA)上で行った。移動相は、溶媒A中の10mMリン酸ナトリウム(Amgen Spec Number S2700R01)pH7.4及び溶媒B中の10mMリン酸ナトリウム(AmgenSpecNumberS2706R02)、250mMNaCl(AmgenSpecNumberS2706R02)pH7.4を有する水を含んだ。弱陽イオン交換カラム(Dionex ProPacWCX−10カラム−4×250mm,Dionex,Sunnyvale,CA,USA)を使用した。カラム区画の温度は25℃に保たれ、流速は0.8mL/分であった。
【0194】
肉眼で見えない粒子の光掩蔽技術を用いた分析は、HIACRoyco、液体粒子計数システム、モデル9703(Hach−Ultra,Grants Pass,OR,USA)を用いて実施した。装置は、15μmEZY−CAL標準(カタログ番号6015,DukeScientific,PaloAlto,CA,USA)を用いて較正した。全ての製剤は、分析の前に、3時間脱気した。装置は、試料の間に、脱イオン水又は製剤緩衝液で清浄化した。粒子の数は、1mLの注射器を用いて、各抗体製剤の0.5mLの吸引を4回行うことによって測定した。
【0195】
本分野で公知の方法(例えば、米国特許出願公開20050074821号参照)によって、NGFに対する抗体を調製し、抗体を含む製剤を作製した。製剤中で使用されたNGF抗体は、IgG2抗体であった。様々な期間にわたって製剤を保存し、又は反復する凍結融解に供した。これらの製剤の分析は、図1Aから1D、2Aから2F及び3Aから3Cに示されており、これらの全てがNGFに結合する抗体を含有する。
【0196】
図1Aから1Dは、4℃、25℃、37℃での並びに反復する凍結(−30℃)及び室温での融解後における、表1に上記されている様々な製剤に対するSEC分析の結果を与える。幾つかの実験では、溶液は最長18ヶ月間保存され、次いで分析された。製剤は、30mg/mLの濃度のNGFに対する抗体、pH5.1の10mML−グルタミン酸緩衝液、10mML−アスパラギン酸緩衝液又は10mM酢酸緩衝液及び表中に示されている他の成分を含有した。
【0197】
保存中の抗体の凝集によって測定される抗体の安定性に関する情報を提供するために、SECを使用した。データは、主ピーク(単量体)のパーセントとして表されており、主ピークのパーセントが大きいほど、生じた凝集はより少ない。しかしながら、通常、プロリン含有製剤EP1P30は、他の製剤より、保存された抗体溶液に対してより優れた安定性を与えた。
【0198】
プロリン含有調製物である調製物E51P30は、10mML−グルタミン酸緩衝液(pH5.1)、3.1%L−プロリン及び抗体の30mg/mLを含有した。サイズ排除クロマトグラフィーは、凝集の観点で、製剤中の生物医薬の安定性に関する情報を与えることができる。図中の各時点での主ピークのパーセントが大きいほど、生じた凝集(二量体及び他の高分子量凝集物を含む。)はより少ない。
【0199】
図1Aは、4℃での保存後の結果を示している。図1Bは、25℃での保存後の結果を示している。図1Cは、37℃での保存後の結果を示している。図1Dは、反復された−30℃での凍結及び室温での融解後の結果を示している。
SECを用いて、一般に、E51P30製剤は、保存時間にわたって、主ピークのパーセントの最も少ない喪失を示すが、幾つかの製剤が特定の期間にわたって同等の結果を示し得る。4℃で12ヶ月又は18ヶ月間(図1A)、25℃で8週間、13週間又は25℃で6ヶ月(図1B)、特に37℃で6ヶ月(図1C)の保存後に、保存時間にわたっての主ピークのパーセントのより少ない低下が明瞭である。しかしながら、E51T30及びE51M30製剤も、ある温度で、増加した安定性を提供し得ることに注目すべきである。
【0200】
図1Dは、反復した凍結融解サイクル後に、様々な製剤から、一般に同等の結果が得られることを示している。
【0201】
保存された抗体及び他のポリペプチドの安定性に関する特徴は、不溶性タンパク質凝集物(以下、粒子と称される。)の発生であり得る。この文脈において、タンパク質性粒子は、例えば、不溶性ポリペプチドの断片又は凝集物を表し、可視性及び/又は非可視性であり得る。あるいは、粒子は、外来物質(すなわち、ガラス、糸くず、ゴム栓の小片の破片)から構成されることも可能であり、必ずしもポリペプチドから構成されるわけではない。これらの外来粒子は抗体及び他のポリペプチドに由来するものではなく、これらの実験に記載されている製剤中では、外来粒子は観察されなかった。可溶性タンパク質凝集物は、例えば、SECなどの方法を用いて評価することができるのに対して、不溶性のタンパク質性粒子は、例えば、液体粒子計数又は濁度測定技術(実験的光散乱アプローチ)などの方法を用いて評価することができる。
【0202】
可視性粒子は、一般に、100μmより大きなサイズを有する粒子として分類される。微粒子と考えられる非可視性粒子のサイズは、より小さい。HIAC装置を備えたLD−400レーザーシステムを用いて、2と400μmの間の粒子サイズを測定することができる。
【0203】
図2Aから2Fは、4℃、25℃及び37℃での様々な製剤の保存後における、粒子形成(>10μm又は>25μm)の分析から得られたデータを与える。図2Aから2Dに示されているデータは、mL当りの粒子の数に基づいて測定された評価を示している。多くの例で、4℃で18ヶ月を除き、プロリン含有製剤中には、mL当りのより少ない粒子が見出される。この好例は、>25℃で13週間保存した後のmL当りの10μm粒子の数である(図2C参照)。別の例は、37℃で4週間保存した後のmL当りの10μmより大きな粒子の数である(図2E参照)。
【0204】
製剤中のポリペプチドの化学製剤は、上述のように陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって測定された。この方法は、pH7.4での線形塩勾配を用いるタンパク質表面電荷の差及び弱陽イオン交換カラム(Dionex,WCX−10;Sunnyvale,CA)に基づいてイソフォームを分離した。
【0205】
図3Aから3Bは、凍結保存の5サイクル後における、粒子形成(>10μm又は>25μm)の分析から得られたデータを与える。製剤は、−30℃で保存した。幾つかの事例において、プロリンを含む製剤は、粒子形成(粒子サイズ>10μm)を欠如している点で、他の製剤と同程度に優れており、時には、他の製剤より優れていた。
【0206】
図4Aから4Cは、陽イオン交換クロマトグラフィーの結果を示している。4℃、25℃及び37℃での温置後、主ピーク(ピーク0)のパーセントの変化を分析した。主ピークの減少には、酸性ピークの増加が伴う(データは図示せず。)。これらの変化は、分子の化学的修飾(例えば、脱アミド化)によって引き起こされる。データは、3つの全温度での温置後における主ピークの最高のパーセントを維持するという点で、L−プロリンを含有する製剤(E51P30)が最も優れていることを示している。
【実施例2】
【0207】
バイアル及び予め充填された注射器中での製剤の安定性
バイアル又は予め充填された注射器中での保存中の様々な製剤の安定性を調べた。37℃で、1週、2週、1ヶ月及び2ヶ月後に、抗体を含む製剤の安定性を調べた。異なる温度で、様々な時間にわたって、バイアル又は予め充填された注射器の中に製剤を保存した。表3は、この研究で用いた幾つかの異なる製剤を列記している。
【0208】
【表3】
【0209】
実験の別の組は、製剤の異なる組を用いて行った(表3)。1つ(SBPT006 40)を除く全ての製剤は、30mM酢酸緩衝液、30mMアスパラギン酸緩衝液又は30mMグルタミン酸緩衝液pH5.2の少なくとも1つ及び40mg/mLの濃度の、神経成長因子に対する抗体を含有した。SBPT006 40は、3.32%プロリン及び40mg/mL抗体を含有し、5.2のpHを有した。
【0210】
SBPT006 40は自己緩衝化溶液であり、緩衝試薬を溶液中に含有しない。すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸又は酢酸緩衝液を含有しない。様々な実施形態が、プロリン及び抗体(例えば、神経成長因子に対する抗体)からなる又はプロリン及び抗体から実質的になる製剤に向けられる。プロリン及び抗体は、水溶液中に存在し得る。自己緩衝化製剤に関するさらなる情報は、PCT/US2006/022599号中に見出すことができる。
【0211】
図5Aから5Hは、37℃又は25℃で保存されたバイアル及び予め充填された注射器中での保存に対する比較データを示している。図5Aから5Dは、40mg/mLの抗体を使用した結果を表しているのに対して、図5Eから5Hは、3mg/mLの抗体を用いた結果を表している。ガラスバイアル及び予め充填された注射器中で研究された異なる製剤に対して得られた主ピークパーセント面積が示されている。使用される緩衝剤に関わらず、L−プロリンを含有する製剤は、25℃又は37℃で試料を2ヶ月間温置した後に、SECによって観察された主ピークの最高パーセントの観点で、より優れた安定性を示した。図5Aから5Dにおいて、製剤SBPT006 40(抗体の40mg/mLとともにプロリンを含有する自己緩衝化製剤)は、バイアル中であるか、又は予め充填された注射器中であるかを問わず、一貫して最も優れた結果を与えた。
【0212】
図5Eから5Fは、より低い抗体濃度(3mg/mL)での結果を表している。抗体のこの濃度では、幾つかのプロリン含有製剤は、非プロリン製剤と同じ程度に安定性を維持しないように見受けられる。しかしながら、プロリン含有製剤の幾つかは、非プロリン含有製剤と等しい又は非プロリン含有製剤より優れた安定性を与えることに注目すべきである。A52P 03は他の殆ど全ての製剤と比べて最も優れた安定性を与えるようであるが、この製剤はポリソルベート−20を全く含有しないので、この製剤中には目に見える粒状物が観察された。
【0213】
図6Aから6Dは、ガラスバイアル及び予め充填された注射器中で研究された異なる製剤に対して観察された陽イオン交換クロマトグラフィーから得られた結果を示している。37℃で、ピーク−0のパーセントの減少は、図6Aから6Bの多くの製剤で似通っているように見受けられる。しかしながら、バイアルでは、A52P 40が3ヵ月後に最も優れた結果を示すが、予め充填された注射器では、SBPT006 40は、同じ期間に最も優れた結果を示す。同様に、SBPT006 40は、バイアル中において、25℃で12ヶ月後に、最も優れた結果を示す(図6C)。
【0214】
図6Eから6Hは、3mg/mLの抗体濃度を用いたバイアル及び予め充填された注射器中での実験から得られたデータを表している。より低い抗体濃度が使用されていることを除き、製剤は、表3中に記載されているものと同様である。従って、A52P 03の製剤は、40mg/mLでなく、抗体の3mg/mLであることを除き、A52P 40と同じである。ほぼ全ての事例で、A52P 03(プロリン含有製剤)は、バイアル及び予め充填された注射器の中での2ヶ月又は3ヶ月の保存において、より大きな安定性を与えるが、この製剤は、ポリソルベート−20が存在しないために、粒状化の傾向があり得る。
【0215】
表4は、図7Aから7Bで使用される製剤の説明を与える。数字は、40mg/mLの抗体濃度を用いた、−30℃での製剤の保存から得られた結果を表している。
【0216】
【表4】
【0217】
製剤は、継続的に保存され(図7A)、又は凍結及び融解の5サイクルを経た(図7B)。12ヶ月の保存で、プロリン含有溶液がプロリンなしの製剤に比べて増加した安定性を与えたことが、図7Aから理解され得る。これは、数回の凍結−融解後についても当てはまった。
【0218】
図8Aから8G及び9Aから9Bは、IgG1インターロイキン抗体を用いて得られた結果を表している。図に示されている成分を添加した全ての製剤中で、100mg/mLの抗体を加えたpH5.2の酢酸緩衝液を使用した。これらの製剤中で使用される全ての賦形剤は、2%(w/v)の濃度であるPEG−6000を除き、270mMの濃度である。
【0219】
図8Aから8G中の全ての実験において、プロリン含有製剤は、より少ない凝集物を含有し(図8A又は8C)又は主ピークの増加したパーセントを示し(図8B、8D及び8E)、製剤中での抗体の増加した安定性を反映していた。図8Eは、0から6ヶ月の期間の図8Dの拡大図を表している。
【0220】
図9Aから9Dは、界面活性剤を加えたプロリン含有製剤を、界面活性剤を加えたソルビトール含有製剤に対して比較した、pH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液中での結果を表している。ソルビトール及びプロリンは270mMであり、両製剤は0.004%ポリソルベート20を含有する。プロリン及び界面活性剤の結果は、4℃又は29℃でのソルビトール及び界面活性剤の結果より優れていることが図から理解できる。
【0221】
上記の全ては、殆どの事例で、プロリン含有製剤が、抗体含有溶液の長期保存に対して、増加した安定性を与え、又は非プロリン含有製剤と少なくとも同様であることを示している。従って、プロリン含有溶液は、抗体含有溶液を長期保存するための新規の新しい製剤を与える。
【0222】
本願を通じて、様々な公報、特許及び特許出願が参照されている。これらの文献の開示内容全体が、参照により、本願に組み込まれる。しかしながら、このような文献の参照は、このような文献が本願の従来技術であることを認めたものと解釈すべきではない。さらに、文献は参照により組み込まれ得るに過ぎないので、このことは、出願人が文献の内容に完全に同意することを必ずしも示唆するものではない。
【0223】
様々な実施形態を参照しながら、本発明の様々な実施形態を記載してきたが、当業者は、上に詳述されている具体例及び研究が例示に過ぎないことを容易に理解する。本発明の精神を逸脱することなく、様々な修飾を施し得ることを理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含む製剤。
【請求項2】
グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液が約5mMから約50mMの濃度を含む、請求項1の製剤。
【請求項3】
グルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液が約10mM、約30mM又は約50mMの濃度及び約5のpHを含む、請求項1の製剤。
【請求項4】
等張濃度を有する、請求項1の製剤。
【請求項5】
抗体又は抗原結合断片が成長因子を結合する、請求項1の製剤。
【請求項6】
成長因子は神経成長因子である、請求項5の製剤。
【請求項7】
抗体又は抗原結合断片が約10から約50mg/mLの濃度を有する、請求項1の製剤。
【請求項8】
製剤が約4.0から約6.0のpHを有する約1から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を含む、請求項1の製剤。
【請求項9】
グルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液がグルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウムから調製される、請求項1の製剤。
【請求項10】
pHが約5.0である、請求項1の製剤。
【請求項11】
抗体又は抗原結合断片が約10から約50mg/mLを含む、請求項5の製剤。
【請求項12】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の有効量を組み合わせることを含む、製剤を調製する方法。
【請求項13】
約4.0から約6.0のpHを有する約3から約50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を有する水溶液を含む製剤を含有する容器。
【請求項14】
抗体又は抗原結合断片濃度が約10から約50mg/mLである、請求項13の容器。
【請求項15】
容器がバイアル又は予め充填された注射器である、請求項13の容器。
【請求項16】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の有効量を含む製剤の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における神経成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法。
【請求項17】
症状が疼痛又は神経因性疼痛である、請求項16の方法。
【請求項18】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含み、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない、製剤。
【請求項19】
酢酸緩衝液が約5mMから約50mMの濃度を含む、請求項18の製剤。
【請求項20】
酢酸緩衝液が約10mM、30mM又は50mMの濃度及び約5のpHを含む、請求項18の製剤。
【請求項21】
等張濃度を有する、請求項18の製剤。
【請求項22】
抗体又は抗原結合断片が成長因子を結合する、請求項18の製剤。
【請求項23】
成長因子が神経成長因子である、請求項22の製剤。
【請求項24】
抗体又は抗原結合断片が約10mg/mLから約50mg/mLの間の濃度を有する、請求項18の製剤。
【請求項25】
製剤が約4.0から約6.0のpHを有する約1から50の間の酢酸緩衝液、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を含む、請求項18の製剤。
【請求項26】
酢酸緩衝液が酢酸ナトリウムから調製される、請求項18の製剤。
【請求項27】
pHが約5.0である、請求項18の製剤。
【請求項28】
抗体又は抗原結合断片が約10から約50mg/mLを含む、請求項22の製剤。
【請求項29】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の有効量を組み合わせることを含み、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない製剤を調製する方法。
【請求項30】
約4.0から約6.0のpHを有する約3から約50mMの間の酢酸、約2%から約10%のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を有する水溶液(該水溶液は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない。)を含む製剤を含有する容器。
【請求項31】
治療用ポリペプチド濃度が、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLである、請求項30の容器。
【請求項32】
容器がバイアル又は予め充填された注射器である、請求項30の容器。
【請求項33】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の有効量を含む製剤(該製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両方をさらに含むことはない。)の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における神経成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法。
【請求項34】
症状が疼痛又は神経因性疼痛である、請求項33の方法。
【請求項35】
保存の間、製剤が選択されたpHを維持する濃度で、プロリン及び抗体又は抗原断片から実質的になる製剤。
【請求項36】
プロリンが約2%から約10%の濃度である、請求項35の製剤。
【請求項37】
保存の間に、pHが約pH4から約pH6のpHに維持される、請求項35の製剤。
【請求項38】
pHが約pH5.0のpHに維持される、請求項37の製剤。
【請求項39】
抗体又は抗原結合断片が神経成長因子に結合する、請求項35の製剤。
【請求項40】
保存の間に、製剤が選択されたpHを維持する濃度で、プロリン及び抗体又は抗原結合断片から実質的になる製剤の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における神経成長因子の増加した発現又は神経成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法。
【請求項41】
症状が疼痛又は神経因性疼痛である、請求項40の方法。
【請求項42】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含む製剤。
【請求項43】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸若しくはアスパラギン酸緩衝液又はこのような緩衝液を調製するための適切なグルタミン酸若しくはアスパラギン酸塩、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びこれらの使用に関する指示書を1つ又はそれ以上の容器中に含むキット。
【請求項44】
約2%から約10%の濃度のプロリンと、及び一緒に混合したときに、混合物の保存の間、プロリン及び抗体又は抗原結合断片が選択されたpHを維持する濃度の抗体又は抗原結合断片と及びこれらの使用に関する指示書とを1つ又はそれ以上の容器中に含むキット。
【請求項45】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液又はこのような緩衝液を調製するための適切な酢酸塩、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びこれらの使用に関する指示書を1つ又はそれ以上の容器中に含むキット(キットは、ポリオール及び界面活性剤の両方をさらに含むことはない。)。
【請求項46】
抗体又は抗原結合断片が50mg/mLを超える濃度を有する、請求項1、18又は35の何れか一項の製剤。
【請求項47】
抗体又は抗原結合断片が約50mg/mLから約100mg/mLの濃度を有する、請求項46の製剤。
【請求項48】
抗体又は抗原結合断片の濃度が約100mg/mL超である、請求項46の製剤。
【請求項49】
抗体又は抗原結合断片の濃度が約2mg/mLから約10mg/mLである、請求項1、18又は35の何れか一項の製剤。
【請求項50】
抗体又は抗原結合断片濃度が約2mg/mLから約100mg/mL又は約50mg/mLから約100mg/mLである、請求項13の容器。
【請求項1】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含む製剤。
【請求項2】
グルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液が約5mMから約50mMの濃度を含む、請求項1の製剤。
【請求項3】
グルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液が約10mM、約30mM又は約50mMの濃度及び約5のpHを含む、請求項1の製剤。
【請求項4】
等張濃度を有する、請求項1の製剤。
【請求項5】
抗体又は抗原結合断片が成長因子を結合する、請求項1の製剤。
【請求項6】
成長因子は神経成長因子である、請求項5の製剤。
【請求項7】
抗体又は抗原結合断片が約10から約50mg/mLの濃度を有する、請求項1の製剤。
【請求項8】
製剤が約4.0から約6.0のpHを有する約1から50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を含む、請求項1の製剤。
【請求項9】
グルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液がグルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウムから調製される、請求項1の製剤。
【請求項10】
pHが約5.0である、請求項1の製剤。
【請求項11】
抗体又は抗原結合断片が約10から約50mg/mLを含む、請求項5の製剤。
【請求項12】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸又はアスパラギン酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の有効量を組み合わせることを含む、製剤を調製する方法。
【請求項13】
約4.0から約6.0のpHを有する約3から約50mMの間のグルタミン酸又はアスパラギン酸、約2%から約10%のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を有する水溶液を含む製剤を含有する容器。
【請求項14】
抗体又は抗原結合断片濃度が約10から約50mg/mLである、請求項13の容器。
【請求項15】
容器がバイアル又は予め充填された注射器である、請求項13の容器。
【請求項16】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸緩衝液又はアスパラギン酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の有効量を含む製剤の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における神経成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法。
【請求項17】
症状が疼痛又は神経因性疼痛である、請求項16の方法。
【請求項18】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含み、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない、製剤。
【請求項19】
酢酸緩衝液が約5mMから約50mMの濃度を含む、請求項18の製剤。
【請求項20】
酢酸緩衝液が約10mM、30mM又は50mMの濃度及び約5のpHを含む、請求項18の製剤。
【請求項21】
等張濃度を有する、請求項18の製剤。
【請求項22】
抗体又は抗原結合断片が成長因子を結合する、請求項18の製剤。
【請求項23】
成長因子が神経成長因子である、請求項22の製剤。
【請求項24】
抗体又は抗原結合断片が約10mg/mLから約50mg/mLの間の濃度を有する、請求項18の製剤。
【請求項25】
製剤が約4.0から約6.0のpHを有する約1から50の間の酢酸緩衝液、約2%から約10%のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の治療的有効量を含む、請求項18の製剤。
【請求項26】
酢酸緩衝液が酢酸ナトリウムから調製される、請求項18の製剤。
【請求項27】
pHが約5.0である、請求項18の製剤。
【請求項28】
抗体又は抗原結合断片が約10から約50mg/mLを含む、請求項22の製剤。
【請求項29】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、プロリン及び抗体又は抗原結合断片の有効量を組み合わせることを含み、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない製剤を調製する方法。
【請求項30】
約4.0から約6.0のpHを有する約3から約50mMの間の酢酸、約2%から約10%のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を有する水溶液(該水溶液は、ポリオール及び界面活性剤の両者をさらに含むことはない。)を含む製剤を含有する容器。
【請求項31】
治療用ポリペプチド濃度が、約3から約70mg/mL、約5から約60mg/mL、約10から約50mg/mL、約20から約40mg/mL、約30から約100mg/mL又は約40から約200mg/mLである、請求項30の容器。
【請求項32】
容器がバイアル又は予め充填された注射器である、請求項30の容器。
【請求項33】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び神経成長因子に対する抗体又は抗原結合断片の有効量を含む製剤(該製剤は、ポリオール及び界面活性剤の両方をさらに含むことはない。)の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における神経成長因子の増加した発現又は成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法。
【請求項34】
症状が疼痛又は神経因性疼痛である、請求項33の方法。
【請求項35】
保存の間、製剤が選択されたpHを維持する濃度で、プロリン及び抗体又は抗原断片から実質的になる製剤。
【請求項36】
プロリンが約2%から約10%の濃度である、請求項35の製剤。
【請求項37】
保存の間に、pHが約pH4から約pH6のpHに維持される、請求項35の製剤。
【請求項38】
pHが約pH5.0のpHに維持される、請求項37の製剤。
【請求項39】
抗体又は抗原結合断片が神経成長因子に結合する、請求項35の製剤。
【請求項40】
保存の間に、製剤が選択されたpHを維持する濃度で、プロリン及び抗体又は抗原結合断片から実質的になる製剤の医薬有効量を患者に投与することを含む、患者における神経成長因子の増加した発現又は神経成長因子に対する増加した感受性によって引き起こされる症状を治療する方法。
【請求項41】
症状が疼痛又は神経因性疼痛である、請求項40の方法。
【請求項42】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片を含む製剤。
【請求項43】
約4.0から約6.0のpHを有するグルタミン酸若しくはアスパラギン酸緩衝液又はこのような緩衝液を調製するための適切なグルタミン酸若しくはアスパラギン酸塩、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びこれらの使用に関する指示書を1つ又はそれ以上の容器中に含むキット。
【請求項44】
約2%から約10%の濃度のプロリンと、及び一緒に混合したときに、混合物の保存の間、プロリン及び抗体又は抗原結合断片が選択されたpHを維持する濃度の抗体又は抗原結合断片と及びこれらの使用に関する指示書とを1つ又はそれ以上の容器中に含むキット。
【請求項45】
約4.0から約6.0のpHを有する酢酸緩衝液又はこのような緩衝液を調製するための適切な酢酸塩、約2%から約10%の濃度のプロリン及び抗体又は抗原結合断片及びこれらの使用に関する指示書を1つ又はそれ以上の容器中に含むキット(キットは、ポリオール及び界面活性剤の両方をさらに含むことはない。)。
【請求項46】
抗体又は抗原結合断片が50mg/mLを超える濃度を有する、請求項1、18又は35の何れか一項の製剤。
【請求項47】
抗体又は抗原結合断片が約50mg/mLから約100mg/mLの濃度を有する、請求項46の製剤。
【請求項48】
抗体又は抗原結合断片の濃度が約100mg/mL超である、請求項46の製剤。
【請求項49】
抗体又は抗原結合断片の濃度が約2mg/mLから約10mg/mLである、請求項1、18又は35の何れか一項の製剤。
【請求項50】
抗体又は抗原結合断片濃度が約2mg/mLから約100mg/mL又は約50mg/mLから約100mg/mLである、請求項13の容器。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【公表番号】特表2010−513522(P2010−513522A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542922(P2009−542922)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/026060
【国際公開番号】WO2008/079290
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/026060
【国際公開番号】WO2008/079290
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】
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