説明

ポリペプチドを産生及び分泌させるための構築物及び方法

宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞、より具体的にはグラム陽性細菌により対象となるポリペプチドを産生及び分泌させるための分子、構築物及び方法を本明細書中に記載する。特に本発明は、細菌宿主細胞、好ましくはクロストリジウム細菌により対象となる異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを分泌させるための融合タンパク質をコードするポリ核酸、及びその使用に関する。本発明はさらに、このようなポリ核酸及び融合タンパク質を使用する、宿主細胞により対象となるタンパク質の異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを産生及び分泌させるための方法及び構築物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細菌宿主細胞により対象となるポリペプチドを産生及び分泌させるための分子、構築物及び方法を本明細書中に記載する。特に本発明は、細菌宿主細胞により対象となる異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを分泌させるための融合タンパク質をコードするポリ核酸、及びその使用に関する。本発明はさらに、このようなポリ核酸によってコードされた融合タンパク質又はその一部、並びに上記ポリ核酸を含有するベクター及び宿主細胞に関する。本発明はさらに、このようなポリ核酸及び融合タンパク質を使用する、細菌宿主細胞により対象となるタンパク質の異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを産生及び分泌させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種タンパク質の分泌は産業上広く使用されている技法である。細胞を対象となる異種タンパク質をコードする核酸で形質転換し、分泌させることにより、大量の所望のタンパク質を産生することができる。自然に産生される量よりも大量のタンパク質をこの技法を使用して産生することができる。対象となるタンパク質は、治療的使用及び農業的使用、並びに食品、化粧品、洗浄用組成物、動物の飼料における使用等を含む様々な産業上の用途のあるタンパク質である。このため、微生物によって産生されるタンパク質の分泌増大は一般的に興味が持たれている。
【0003】
細胞生物学及び分子生物学の進歩により、或る特定の場合において所望のタンパク質をコードする遺伝子を同定し、遺伝子を単離して、遺伝子を宿主細胞に挿入し、宿主細胞において挿入した遺伝子を発現させることにより、所望のタンパク質を産生することが可能になった。宿主細胞としては細菌が集中的に研究されている。しかしながら、この異種遺伝子発現に関して細菌が宿主細胞として使用される場合、頻繁に直面する問題はほとんどの細菌発現系がタンパク質を細胞内で産生するということであり、通常細胞を破壊し産物の回収を確実なものにする必要がある。
【0004】
この問題は、細菌に所望のタンパク質を成長培地に分泌させることにより克服することができる。タンパク質の分泌に関する特に十分に裏付けされた方法の1つとしては分泌シグナル配列の使用がある。シグナルペプチドを異種タンパク質のアミノ末端に融合させると、シグナルペプチドが異種タンパク質を細胞膜にある分泌機構へと移動させる。それから異種タンパク質が膜を通って移行する。任意で「シグナルペプチダーゼ」又は「リーダーペプチダーゼ」と称されることもある特定のプロテアーゼにより、シグナルペプチドが取り除かれ、異種タンパク質が放出される。
【0005】
タンパク質のペリプラズム空間への移行又はタンパク質の培養培地への分泌は様々なパラメータに依存する。通常、対象となるタンパク質を分泌させるためのベクターを、対象となるタンパク質をコードするDNAに対して5’側に分泌シグナル配列をコードするDNAを位置付けるように設計する。分泌を増大させるための幾つかのアプローチは以下の通りであり得る:幾つかの異なるシグナル配列を試験すること、シグナル配列を突然変異させること、又は宿主内で分泌経路を変更すること。しかしながら多くの場合、確実に分泌させるためにシグナルペプチドだけを使用する場合、異種タンパク質の分泌量は通常非常に少なく、また分泌された後にかなりの量の異種タンパク質が分解されることが多い。
【0006】
クロストリジウムは、様々な株によって表されるグラム陽性細菌属である。クロストリジウム細菌は胞子形成性の嫌気性細菌である。この属には、様々な糖類及び多糖類を酸及び溶媒へと変換することが可能なクロストリジウム・アセトブチリカム(C. acetobutylicum)等の溶媒生成(solventogenic)クロストリジウム、並びにセルロース及び関連の植物細胞壁の多糖類を効率的に分解することが可能なクロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)等のセルロース分解性クロストリジウムが含まれる。より具体的には、クロストリジウム・セルロリティカムは、セルロース及び関連の植物細胞壁の多糖類を効率的に分解するセルロソームと呼ばれる巨大なセルロース分解性の複合体を産生及び分泌する。これらの複合体は、「スカフォールディン(scaffoldin)」と呼ばれる酵素活性を欠いている巨大タンパク質と強く(tightly)結合する様々な酵素を含有する。スカフォールディン上での酵素の結合が、スカフォールディン上の凝集モジュールと酵素上の相補的なドッケリンドメインとの間の相互作用によって起こる。ドッケリンとスカフォールディンとの間のこの高親和性相互作用がバイオテクノロジー用途、例えば組換えタンパク質精製で示唆されている(非特許文献1)。
【0007】
これに対して、クロストリジウム・アセトブチリカムはそのゲノムにセルロース分解性酵素及びスカフォールディンをコードする大きな遺伝子群を含有しているが、結晶セルロース上では成長することができない。
【0008】
一生物においてセルロース分解活性と溶媒産生とを組合せるという戦略の1つは、クロストリジウム・セルロリティカム(C. cellulolyticum)のセルロソームをコードする遺伝子をクロストリジウム・アセトブチリカムに導入することであった。Mingardon et al.は、クロストリジウム・セルロリティカム由来のマンナナーゼ遺伝子Man5Kとこれもクロストリジウム・セルロリティカム由来の切断スカフォールディンをコードする遺伝子cipC1とをクロストリジウム・アセトブチリカムにおいて同時発現することによって、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)によるミニセルロソームの産生、会合及び分泌を実証している(非特許文献2)。
【0009】
幾つかのグループは、その中に存在する異なるモジュールを利用すること、及び「デザイナーセルロソーム」と称されるものにおいて様々な種類のセルラーゼを組合せることによってセルロソーム複合体のセルロース分解活性の増大又は改善の可能性を研究している。特異性が不一致である2つ又は3つのコヒーシンと、コヒーシンの1つと相補的なドッケリンをそれぞれ保有する2つ又は3つのセルラーゼとを有するキメラスカフォールディンを含む二官能性及び三官能性のデザイナーセルロソームにより、ストロー等の扱い難い基材で相乗的に活性が高まった多タンパク質複合体が得られることが実証された(非特許文献3、非特許文献4)。さらに、このようなセルロソームが細菌酵素と真菌酵素との組合せを含み得ることが分かった(非特許文献5)。これらの実験では、これらのタンパク質を自然に分泌するクロストリジウム・セルロリティカムにおけるセルロソームの異なる部分をコードするベクターの同時発現、又はin vitroで組換えによって産生及び精製したスカフォールディンと酵素とを混合することのいずれかでセルロソームが産生された。
【0010】
Mingardon et al.は、単一ポリペプチド鎖にファミリー48及びファミリー9の触媒モジュールと共にCBMを含む「共有結合セルロソーム」の産生を記載している。このタンパク質を、フレンチプレスで細胞を破壊し、c末端Hisタグを使用して組換えタンパク質を精製することにより、このタンパク質を過剰発現させた大腸菌から回収した。共有結合セルロソームは、対応するハイブリッドセルロソームよりもAvicel基質に対する活性が有意に低いことが分かった(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Craig et al. 2005, J. Biotechnol. 121:165-173
【非特許文献2】Mingardon et al.Applied Environm. Microbiol.2005, vol 71 (3): 1215-1222
【非特許文献3】Fierobe et al.2002, J. Biol. Chem. 277,49621-19630
【非特許文献4】Fierobeet al. 2005, J. Biol. Chem.280(16):16325-16334
【非特許文献5】Mingardon et al.2007, Appl. Environm.Microbiol. 73(12):3822-3832
【非特許文献6】Mingardon et al.2007, Appl. Environm.Microbiol. 73(22):7138-7149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
分泌タンパク質をコードする異種遺伝子又は同種遺伝子のクローニング、並びにクロストリジウム・セルロリティカム以外のクロストリジウム種等の細菌細胞によるこのような異種タンパク質又は同種タンパク質の(過剰)産生及び分泌が、おそらくはこれらの宿主による組換えタンパク質の分泌を確実にする上で直面する問題の結果としてこれまでにはほとんど報告されていない。
【0013】
上記を考慮すると、細菌細胞によるタンパク質分泌の改善が当該技術分野で必要とされていることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、細菌細胞、より具体的にはグラム陽性細菌細胞による対象となる異種ポリペプチドの産生及び分泌、及び/又はグラム陽性細菌細胞、特にクロストリジウム細菌による対象となる同種ポリペプチドの産生及び分泌の改善に対するアプローチを提供することを目的とする。本明細書で提供されるタンパク質分泌の方法に有用な新規の分子及び構築物、並びにこのような分子及び構築物を作製する方法も本明細書で提供される。
【0015】
本願は、上記で列挙された分泌と関連する問題を少なくとも幾らか回避する、対象となるポリペプチドの微生物産生及び輸送に関する新たな方法の発見に少なくとも一部基づく。本発明による分子、構築物及び方法により、細菌細胞による対象となるポリペプチドの(過剰)産生及び分泌が可能になる。具体的には本発明は、融合タンパク質をコードするポリ核酸であって、上記融合タンパク質が対象となる融合ポリペプチドの分泌に対して機能的効果があるキャリアドメインを有する、ポリ核酸を提供する。より具体的には、本発明者らは、融合タンパク質のキャリアドメインの機能的効果、すなわち上記融合タンパク質を産生する組換え宿主細胞による対象となる同種ポリペプチド又は異種ポリペプチドの(細胞外)分泌の制御(誘導及び/又は改善)能を示している。上記のキャリアドメインは典型的には足場タンパク質の炭水化物結合モジュール(CBM)及び親水性モジュール(Xモジュール)を含み、より具体的には分泌シグナルペプチドと組合せて、対象となるポリペプチドの分泌を確実にする(分泌が改善される)。このため本発明自体は有利には、足場タンパク質の少なくとも一部分と融合した対象となる同種ポリペプチド又は異種ポリペプチドの宿主細胞における分泌を制御するための、特にシグナルペプチドと組合せた、足場タンパク質の上記部分、特に少なくともCBMを含むモジュール、その親水性モジュールの使用も提供する。
【0016】
したがって第1の態様において、本発明は、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの親水性ドメインと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、及び
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、
をこの特定の順番で含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0017】
本発明の特定の実施の形態において、上記ポリ核酸は、コードされた融合タンパク質の分泌に関するフレーム内核酸配列をさらに含み、好ましくは上記核酸配列がセルロソーム足場タンパク質のシグナルペプチドをコードする。
【0018】
したがって本発明は、
少なくとも1つの好適なシグナルペプチド、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
を(より具体的にはこの順番で)含む、ポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0019】
本発明の特定の実施の形態において、ペプチドリンカーは残りの融合タンパク質から上記対象となるポリペプチドを切断するためのプロテアーゼ切断部位を含む。
【0020】
さらに特定の実施の形態において、ポリペプチド配列は2つ以上のXモジュール、より具体的には2つのXモジュールを含む。
【0021】
別の態様において本発明は、宿主細胞による、より具体的には対象となるポリペプチド、好ましくは本明細書で規定のようなポリペプチドの分泌を制御するためにシグナルペプチドと組合せた本明細書で規定のようなキャリアドメインの使用に関する。
【0022】
別の態様において本発明は、本発明によるポリ核酸を含むベクターに関する。好ましくはポリ核酸が細菌細胞において核酸の発現に関する調節配列の制御下にあるベクターが提供される。
【0023】
さらに別の態様において本発明は本発明によるポリ核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0024】
したがって本発明の特定の実施の形態は、(1)少なくとも1つのシグナルペプチド、(2)セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュールと融合した、セルロソーム足場タンパク質のCBMタイプの少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含む、キャリアドメイン、(3)少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び(4)キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカーを(より具体的にはこの順番で)含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を含む組換え微生物に関する。本発明の微生物は対象となるポリペプチドを分泌することを特徴とする。
【0025】
さらなる特定の実施の形態において、ポリ核酸が2つ以上のXモジュールを含むポリペプチド配列をコードする微生物が提供される。
【0026】
特定の実施の形態において、ポリペプチド配列がシグナルペプチド(これはセルロソーム足場タンパク質のシグナルペプチドである)を含む微生物が提供される。より具体的には、シグナルペプチドはクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチド、又はクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA足場タンパク質のシグナルペプチドである。
【0027】
特定の実施の形態において、ポリペプチド配列が少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(これは3a型の炭水化物結合モジュール(CBM3a)である)を含む微生物が提供される。
【0028】
特定の実施の形態において、ポリペプチド配列が少なくとも1つのXモジュール(これはクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質ののX2モジュール、又はクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA足場タンパク質のX2モジュールである)を含む微生物が提供される。
【0029】
より具体的には、本発明に従って提供される宿主細胞は、グラム陽性細菌、より具体的にはクロストリジウム綱の成員である。さらに特定の実施の形態では、本発明による微生物は、クロストリジウム・アセトブチリカム及びクロストリジウム・ベイジェリンキ(C. beijerinckii)を含む群から選択されるクロストリジウム株由来の微生物である。
【0030】
本発明による微生物は、1つ又は複数の核酸(それぞれの核酸が1つ又は複数の対象となるポリペプチドをコードする配列を含む)を含んでいてもよい。
【0031】
さらに別の態様において本発明は本発明のポリ核酸によってコードされた融合タンパク質を提供する。さらに本発明は、本明細書で規定のようなシグナルペプチドに融合した融合タンパク質も提供する。
【0032】
本発明はさらに、宿主細胞、より具体的には細菌宿主細胞、さらにより具体的にはクロストリジウム宿主細胞、最も具体的には非セルロース分解性のクロストリジウム宿主細胞により、生物学的に活性のある形態で少なくとも1つの対象となる異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを産生及び分泌させる方法であって、本発明によるポリ核酸又はベクターを、コードされた融合タンパク質の発現を引き起こすのに効果的な条件下で上記宿主細胞に導入することを含み、コードされた融合タンパク質が宿主細胞によって上記宿主細胞の環境に分泌される、方法に関する。分泌中任意で、シグナルペプチドを融合タンパク質から切断する。任意で、対象となるポリペプチドを同時に又は追加としてキャリアドメインから切断する。
【0033】
したがって特定の実施の形態において、本発明は、組換え微生物によって、少なくとも1つの対象となる異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを産生及び分泌させる方法であって、(1)少なくとも1つのシグナルペプチド、(2)セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質タイプの少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、(3)少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び(4)キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカーを(より具体的にはこの順番で)含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を、コードされた融合タンパク質の発現を引き起こすのに効果的な条件下で微生物に導入することを含み、コードされた融合タンパク質を組換え微生物によって組換え微生物の環境に分泌させる、方法を提供する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、生物学的に活性のある形態で対象となるポリペプチドを産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用を包含する。
【0035】
本発明の異なる態様の特定の実施の形態において、対象となるポリペプチドは植物細胞壁分解酵素、好ましくはセルラーゼのような酵素を含む。最も具体的には、酵素はクロストリジウム・セルロリティカムのセルラーゼ、例えばCel48F又はCel9Gである。付加的又は代替的には、対象となるポリペプチドはサッカロファゴス・デグラダンス(S. degradans)2−40株のセルラーゼCelHを含む。
【0036】
別の実施の形態において、本発明による対象となるポリペプチドは治療用タンパク質を含み得る。このような治療用タンパク質は治療用酵素、サイトカイン及び抗体を含む群から選択されるタンパク質、好ましくはIL−2又はTNFα等のサイトカインであり得るが、これらに限定されない。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、本発明によるポリ核酸、融合タンパク質、ベクター又は宿主細胞の1つと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体とを含む、癌を治療するための薬学的組成物に関する。より具体的には、薬学的組成物は本発明によるポリ核酸を発現する、宿主細胞、最も具体的にはクロストリジウム宿主細胞を含む。
【0038】
本発明はさらに、薬剤としての使用のための本発明によるポリ核酸、融合タンパク質、ベクター又は宿主細胞に関する。
【0039】
さらに本発明は、癌を治療するための本発明によるポリ核酸、融合タンパク質、ベクター又は宿主細胞に関する。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被験体において癌を治療する方法であって、上記被験体に本発明によるポリ核酸、ベクター、宿主細胞又は薬学的組成物を投与することを含み、好ましくは上記被験体の腫瘍部位に上記ポリ核酸、ベクター、宿主細胞又は薬学的組成物を注射することを含む、方法を提供する。より具体的には、本発明は、それを必要とする被験体において癌を治療する方法であって、上記被験体に本発明によるポリ核酸を発現する宿主細胞を投与することを含む、方法を提供する。任意で、上記宿主細胞を上記被験体の腫瘍部位に注射する。
【0041】
本発明のさらなる態様は以下の詳細な説明を鑑みて明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の特定の実施形態による様々な構築物の概略図である。これらの構築物はキャリアドメインと融合した対象となるポリペプチド(セルラーゼCel48F又はCel9G)とシグナルペプチドとを含む。キャリアドメインは同じ又は異なるセルロソーム足場タンパク質(複数可)を起源とする1つ又は2つの親水性ドメイン(Xc又はXa)と融合したセルロソーム足場タンパク質由来の炭水化物結合モジュール(CBM3a)を含む。図1はさらに、クロストリジウム・アセトブチリカムによるこれらの構築物の分泌を示す。図中英文の意味は以下:Constructs:構築物Secretion in C.acetobutyllicum:クロストリジウム・アセトブチリカムにおける分泌Legend:説明文Signal sequence:シグナル配列CBM3a of CipC from C.cellulolyticum:クロストリジウム・セルロリティカム由来のCipCのCBM3aX2 module of CipC from C.cellulolyticum:クロストリジウム・セルロリティカム由来のCipCのX2モジュールcohesion of CipC from C.cellulolyticum:クロストリジウム・セルロリティカム由来のCipCのコヒーシンCatalytic domains of Cel48F/Cel9G:Cel48F/Cel9Gの触媒ドメインlinker:リンカーDockerin:ドッケリンCBM3c of Cel9G:Cel9GのCMB3cX2 modules of CipA from C.acetobutyllicum:クロストリジウム・アセトブチリカム由来のCipAのX2モジュール
【図2】本発明の特定の実施形態による様々な構築物の概略図である。構築物はキャリアドメインと融合した対象となるポリペプチド(セルラーゼ「Cel5H」)とシグナル配列とを含む。キャリアドメインは1つ又は2つのXモジュール(Xa)と融合したセルロソーム足場タンパク質由来の炭水化物結合モジュール(CBM3a)を含む。セルラーゼCel5Hはグリコシドヒドロラーゼファミリー5ドメイン(「5」)、ポリセリンリンカー(「sss」)、炭水化物結合モジュールファミリー6ドメイン(「6」)、グルタミン酸−高プロリン領域(「eppv」)及び本発明者らによって推定炭水化物結合モジュールとして同定されたC末端ドメイン(「DZ」)を含む。図中英文の意味は以下:Cel5H wild-type:Cel5H野生型
【図3】対照株と比較した、野生型Cel5H及びキャリアドメインと融合したCel5Hの分泌を示す図である。キャリアドメインは、2つの親水性ドメイン(Xa)と融合したセルロソーム足場タンパク質由来の炭水化物結合モジュール(CBM3a)を包含する。培養上清の活性を可溶性基質パラ−ニトロフェニル−セロビオースに対して測定した。図中英文の意味は以下:Hydrolysed pNP-cellobiose:加水分解したpNPセロビオースTime(s):期間(秒)Cel5H wild-type:Cel5H野生型Control strain:対照株
【図4】野生型Cel9Gと比較した、セルロースに対する本発明の特定の実施形態による融合タンパク質を含む様々なタンパク質の活性:結晶セルロースAvicelに対するCel9Gを含むタンパク質の活性を示す図である。説明文は図1と同じものとする。図中英文の意味は以下:Released soluble sugars:放出された可溶性糖類time(h):期間(時間)fusion Ce19G:融合Cel9GWild-type Ce19G野生型Cel9G
【図5a】様々なセルロース(celluloic)基質に対する本発明の特定の実施形態による融合タンパク質を含む様々なタンパク質の活性:可溶性基質パラ−ニトロフェニル−セロビオースに対するCel5Hを含むタンパク質(野生型Cel5H(実線)、1つのXモジュールを有する融合タンパク質(CBM−Xa−5H、点線)、2つのXモジュールを有する融合タンパク質(CBM−Xa−Xa−5H、破線))の活性を示す図である。図中英文の意味は以下:Hydrolysed pNPcellobiose:加水分解したpNPセロビオースTime(s):期間(秒)Cel5H wild type:Cel5H野生型
【図5b】様々なセルロース基質に対する本発明の特定の実施形態による融合タンパク質を含む様々なタンパク質の活性:結晶セルロースAvicelに対するcel5Hを含むタンパク質の活性を示す図である。図中英文の意味は以下:Released soluble sugars:放出された可溶性糖類Time(h):期間(時間)Cel5H wild type:Cel5H野生型
【発明を実施するための形態】
【0043】
1.一般的定義
本明細書で使用されるように、単数形(singular forms "a",
"an", and "the")は文脈が別途はっきりと示していなければ、単数及び複数の指示対象(referents)両方を包含する。例えば、「細胞(a cell)」は1つ又は2つ以上の細胞を表す。
【0044】
本明細書で使用されるような「を含む("comprising",
"comprises")」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「を含む("including","includes")」又は「を含有する("containing","contains")」と同じ意味であり、また包括的であるか又は制約がなく、付加的な列挙されていない成員、要素又は方法工程も排除されない。
【0045】
パラメータ、量、期間(temporal duration)等の測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用されるような「約」という用語は、以下のような変動が開示された本発明において実行するのに適切であれば、特定の値の±20%以下、好ましくは±10%以下、より好ましくは±5%以下、さらにより好ましくは±1%以下、及びさらにより好ましくは±0.1%以下の変動を包含することを意味する。
【0046】
端点による数値範囲の記述は、その範囲内に含まれる全ての数字及び分数、並びに記述された端点を含む。
【0047】
本明細書で言及された文献は全て、その全体が参照により本明細書中に援用される。特に、具体的に言及される本明細書中の全ての文献の教示は参照により援用される。
【0048】
本発明は概して、宿主細胞によりポリペプチドを産生及び分泌させるためのポリ核酸、構築物、分子及び方法に関する。
【0049】
これに関して、「分泌」という用語は対象となるポリペプチドの細胞外送達、すなわち宿主細胞の外への送達を表す。特にこれは、対象となるポリペプチドが宿主細胞外、例えば上記宿主細胞が成長する又は存在する「環境」に放出されるか又は蓄積されることを意味する。同様に、移行は対象となるポリペプチドのペリプラズム空間への送達を表す。
【0050】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は本明細書で区別なく使用され、概してペプチド結合によって連結したアミノ酸残基のポリマーを表し、最小長の産物には限定されない。このため、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、(ヘテロ及びホモ)ダイマー、(ヘテロ及びホモ)マルチマー等がこの定義の中に含まれる。全長のタンパク質及びその断片の両方がこの定義に包含される。この用語は、発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等を受けたポリペプチドも含む。さらに本発明の目的のために、この用語は、天然のタンパク質又はポリペプチドの配列に対する修飾、例えば欠失、付加及び置換(例えば事実上保存的な)を含むような配列も表す。
【0051】
本明細書で使用されるような「ペプチド」という用語は好ましくは、本質的に50個以下のアミノ酸、例えば45個以下のアミノ酸、好ましくは40個以下のアミノ酸、例えば35個以下のアミノ酸、より好ましくは30個以下の保存的アミノ酸、例えば25個以下、20個以下、15個以下、10個以下又は5個以下のアミノ酸から成る、本明細書で使用されるようなポリペプチドを表す。
【0052】
本明細書で使用されるように、「異種ポリペプチド」という用語は宿主細胞では自然発生しないポリペプチドを表す。「同種ポリペプチド」という用語は宿主細胞において天然である又は自然発生するポリペプチドを表す。一実施形態では、本発明は、組換えDNA技術により同種ポリペプチドを産生する宿主細胞を含む。組換えタンパク質は宿主に導入されたポリ核酸によってコードされた任意のタンパク質を表す。
【0053】
「ポリ核酸」及び「核酸」という用語は本明細書で区別なく使用され、概して本質的にヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドから構成される任意の長さのポリマーを表す。核酸はプリン塩基及び/又はピリミジン塩基、及び/又は他の天然の化学的に若しくは生化学的に修飾された(例えばメチル化された)、非天然の又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含み得る。核酸の骨格は通常RNA又はDNAに見られるような糖及びリン酸基、及び/又は1つ若しくは複数の修飾若しくは置換された(例えば2’−O−アルキル化、例えば2’−O−メチル化若しくは2’−O−エチル化、又は2’−O,4’−C−アルキン化(alkynelated)、例えば2’−O,4’−C−エチル化された)糖又は1つ若しくは複数の修飾若しくは置換されたリン酸基を含み得る。例えば核酸における骨格類似体は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホルアミダイト、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート及びペプチド核酸(PNA)を含み得る。
【0054】
「ポリ核酸」という用語はさらに具体的に、DNA、RNA及びDNA/RNAハイブリッド分子を包含し、具体的にこれにはhnRNA、プレ−mRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、遺伝子、増幅産物、オリゴヌクレオチド、及び合成(例えば化学合成した)DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドが含まれる。本明細書で使用されるような「リボ核酸」及び「RNA」という用語はリボヌクレオチドから構成される任意の長さのポリマーを意味する。本明細書で使用されるような「デオキシリボ核酸」及び「DNA」という用語はデオキシリボヌクレオチドから構成される任意の長さのポリマーを意味する。本明細書で使用されるような「DNA/RNAハイブリッド」という用語は1つ又は複数のデオキシリボヌクレオチド及び1つ又は複数のリボヌクレオチドから構成される任意の長さのポリマーを意味する。
【0055】
核酸は自然発生し得る、例えば自然に存在するか若しくは自然から単離することができ、組換え体(recombinant)であり得る、すなわち組換えDNA技術により産生することができ、及び/又は一部又は完全に化学的に又は生化学的に合成することができる。核酸は二本鎖、部分的に二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖又はアンチセンス鎖であってもよい。さらに核酸は環状又は線状であってもよい。
【0056】
本明細書で使用されるような「オリゴヌクレオチド」という用語は2を超えるヌクレオチド長、好ましくは最大200ヌクレオチド長、より好ましくは約10ヌクレオチド長〜約100ヌクレオチド長、さらにより好ましくは約12ヌクレオチド長〜約50ヌクレオチド長の一本鎖核酸(ヌクレオチドマルチマー)を示す。オリゴヌクレオチドを、当該技術分野で既知の任意の方法により、例えば化学的若しくは生化学的な合成、例えば固相ホスホルアミダイト化学合成により、又は組換え核酸分子、例えば細菌ベクター若しくはレトロウイルスベクターからのin vitro若しくはin vivo発現により合成することができる。
【0057】
本明細書で使用されるように、「組換え核酸」は、対象となるポリペプチドをコードする核酸分子が、その配列が自然発生しないか、又は修飾されていないゲノムに位置付けするようには位置付けされていない自然発生配列に対応するように、in vitroで修飾されている分子である。
【0058】
「シグナル配列」又は「分泌シグナル配列」又は「分泌シグナルペプチド」又は「シグナルペプチド」という用語は、より大きいポリペプチドの構成要素として、該ポリペプチドが合成される宿主細胞の分泌経路を介してより大きいポリペプチドを移動させるポリペプチドを表す。より大きいポリペプチドは通常切断され、分泌経路を介する輸送中に分泌シグナルペプチドが取り除かれる。このため、シグナルペプチドが異種タンパク質のアミノ末端と融合すると、シグナルペプチドはタンパク質を宿主細胞の分泌機構へと移動させる。それから異種タンパク質を膜を通して移行させ、「シグナルペプチダーゼ」と称されることもある特定のプロテアーゼによりシグナルペプチドが取り除かれ、タンパク質、本発明では本発明による融合タンパク質が放出される。
【0059】
本明細書で使用されるような「セルロソーム足場タンパク質」又は「スカフォールディン」という用語は、セルロソームに含まれる足場タンパク質を表すように意図される。「セルロソーム」は幾つかのセルロース分解性微生物に存在する細胞外の多酵素複合体であり、炭水化物を分解するのに必要とされる複数コピーの酵素を含有する。特に、セルロソームは、相乗的に働き細胞壁分子複合体を分解する様々なセルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びぺクチナーゼに付着する足場タンパク質から構成され、この複合体により、生物が非常に効果的に植物細胞壁を分解するのが可能になる。足場タンパク質はシグナル伝達経路において他の様々なタンパク質を1つにまとめ、それらを相互作用させる。
【0060】
本明細書で規定のようなポリペプチドリンカーの配列内に含まれる「プロテアーゼ切断部位」又は「プロテアーゼ標的配列」という用語は、特定のプロテアーゼによって認識することができるアミノ酸配列を表す。この部位での切断により、対象となるポリペプチドが放出される。リンカーポリペプチドは、この部位での切断により、対象となるポリペプチド由来の残りのドメインが取り除かれれば、プロテアーゼ切断部位を含有する任意の合成ポリペプチドであってもよいことに留意されたい。本明細書に記載のような融合タンパク質をコードするポリ核酸に使用することができる好適なプロテアーゼ標的配列には、プラスミン、トロンビン、Xa因子又はトリプシン等のセリンプロテアーゼによって認識することができる配列が含まれるが、これに限定されない。
【0061】
本明細書で使用されるように、「キャリアドメイン」又は「キャリアモジュール」という用語は、機能的ドメインが本発明に従って融合することができるポリペプチド配列を表すように意図される。「機能的ドメイン」又は「機能的モジュール」という用語は、本発明に従って産生及び分泌される対象となるポリペプチドを含むポリペプチド配列を表すために本明細書で使用される。上記キャリアドメインと(or and)上記機能的ドメインとの間の融合はリンカーモジュールによって達成され得る。
【0062】
本発明に関して、「少なくとも1つ」という表現は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ等、及び最大で少なくとも10個を意味し、これには1つも含まれる。
【0063】
2.ヌクレオチド配列
第1の態様において、本発明は、宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞による対象となるポリペプチドの産生及び分泌を容易にするための融合タンパク質をコードするポリ核酸、並びにそれらの様々な使用に関する。具体的には、本明細書に規定のような融合タンパク質をコードするポリ核酸により、宿主細胞によるポリペプチドの効率的な産生及びその細胞外送達が可能になることが分かっている。
【0064】
特定の実施形態において、本発明は、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュール又は親水性モジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
を含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0065】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、
好適な分泌シグナルペプチド、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュール又は親水性モジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
を含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0066】
特定の実施形態において、本発明は、
i)少なくとも1つの好適な分泌シグナルペプチド、
ii)セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)、
iii)上記CBM(i)と融合する、セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュール又は親水性モジュール、
iv)少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
v)Xモジュール又は親水性モジュール(ii)と対象となるポリペプチド(iii)とを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
を含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0067】
このため特定の実施形態において、本明細書で記載のように融合タンパク質をコードするポリ核酸は宿主細胞の外にコードされた融合タンパク質を移動させるためのフレーム内核酸分泌配列を含む。したがって分泌により、宿主細胞を含む環境、例えば培養培地において産物、すなわち融合タンパク質全体(例えばCBM−X−酵素)の存在又は蓄積がもたらされ得る。
【0068】
このためより具体的な実施形態において、本発明は、
好適な分泌シグナルペプチド、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュール又は親水性モジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
キャリアドメインと対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
を含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0069】
最も具体的には、配列を上記で列挙した順番で配置する。
【0070】
より具体的には、本発明は、
i)セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)、
ii)上記CBM(i)と融合する、セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュール又は親水性モジュール、
iii)少なくとも1つのシグナルペプチド、例えば細菌足場タンパク質由来のシグナルペプチド、
iv)少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
v)Xモジュール又は親水性モジュール(ii)と対象となるポリペプチド(iii)とを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
を含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0071】
したがって、本発明は、ポリ核酸配列の発現により本明細書で記載のような融合タンパク質がもたらされるように、操作可能に連結した、より具体的には共有結合的に連結した、上記のモジュールをそれぞれコードする個々の配列を含むポリ核酸配列を提供する。
【0072】
本明細書に記載のような融合タンパク質をコードするポリ核酸に使用することができる分泌シグナル配列の好適な核酸配列が本明細書の他の部分で記載されており、これにはセルロソーム足場タンパク質のシグナルペプチド、例えばクロストリジウム・セルロリティカムATCC35319(遺伝子バンクU40345)のCipC足場タンパク質のシグナルペプチド、又はクロストリジウム・アセトブチリカムATCC824(遺伝子バンクAE007606又はAE001437)のCipA足場タンパク質のシグナルペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
特定の実施形態において、本明細書で規定のような融合タンパク質は、分泌により宿主細胞を含む環境、例えば培養培地において対象となるポリペプチドの存在又は蓄積がもたらされるようにこの分泌中に切断されてもよい。そのため、本発明の融合タンパク質はタンパク質回収を助けるために切断部位を含有するように設計することもできる。したがって特定の実施形態では、本発明は、プロテアーゼ切断部位を含むペプチドリンカーを有する、本明細書に記載のような融合タンパク質をコードするポリ核酸を提供する。
【0074】
3.融合タンパク質
別の態様において、本発明は本発明によるポリ核酸によってコードされた融合タンパク質に関する。
【0075】
本発明の融合タンパク質はキメラタンパク質とも表され得る。「融合」は対象となるポリペプチドをコードするポリ核酸と、1つ又は複数のモジュールを含むキャリアドメインをコードするポリ核酸とがフレーム内で一緒になることを表す。接合(joint)ポリ核酸の発現により、以下「融合タンパク質」とも呼ばれるキメラタンパク質がもたらされる。本発明の融合タンパク質は上流に、好ましくは対象となるポリペプチドのN末端に隣接して酵素的又は化学的な切断部位、及び/又は下流に、好ましくは対象となるポリペプチドの上流で与えられるドメインのC末端に隣接して酵素的又は化学的な切断部位を含んでいてもよく、それにより切断因子の使用により融合タンパク質から対象となるポリペプチドを回収する手段が与えられる。
【0076】
概して、本発明による融合タンパク質は、
好ましくはセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの親水性ドメインと融合した、セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、及び
少なくとも1つの対象となるポリペプチドを含む機能的ドメイン、
を含む、ポリペプチド配列から成る。
【0077】
より具体的には、本発明による融合タンパク質は、
好適なシグナルペプチド配列、
好ましくはセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの親水性ドメインと融合した、セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、及び
少なくとも1つの対象となるポリペプチドを含む機能的ドメイン、
を含む、ポリペプチド配列から成る。
【0078】
キャリアドメインはリンカーモジュールによって機能的ドメインと連結する。
【0079】
本発明の特定の実施形態によれば、融合タンパク質は、シグナルペプチドから切断された、そのためもはやシグナルペプチドを含まないタンパク質構築物であることにさらに留意されたい。これらの実施形態では、分泌中に、融合タンパク質と融合するシグナルペプチドを上記融合タンパク質から切断する。任意で上述のポリペプチドリンカーがプロテアーゼ切断部位を含有する場合、上記プロテアーゼ切断部位を認識すること、及びこの部位でポリペプチド配列を切断することが可能である好適なプロテアーゼ(複数可)の作用の際に融合タンパク質の残りの部分から対象となるポリペプチドをさらに切断してもよい。したがって、本明細書で使用されるような「融合タンパク質」という用語は、細胞内で合成されるようなポリペプチド配列(すなわちシグナル配列を含む)、又は分泌後に、任意でシグナル配列を細胞から放出又は切断するもののいずれかを表し得る。
【0080】
本発明による融合タンパク質の形態での対象となるポリペプチドの産生の目的は、対象となるポリペプチドの分泌を確実にする、又は分泌を増大させることである。
【0081】
特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、単離した対象となるポリペプチドと比較して特定の特性の改善、例えば活性の増大を有する。例えば特定の実施形態では、例えば対象となるポリペプチドが酵素である場合、融合タンパク質における1つ又は複数の炭水化物結合モジュール及び/又は1つ又は複数の親水性モジュールの存在により、単離酵素と比較して酵素活性が増大し得る。したがって特定の実施形態では、本発明は対象となるポリペプチドと比較して特性の改善を有する、本発明によるキャリアドメインを含む融合タンパク質に関する。
【0082】
代替的な特定の実施形態において、融合タンパク質の活性は天然ポリペプチドと比較して同程度であるか又は低減している。
【0083】
本明細書で規定のように、キャリアドメイン及び機能的ドメイン等の本発明の融合タンパク質及びその一部分に含まれる別々のモジュールを以下でより詳細に論じる。
【0084】
A.炭水化物結合モジュール
キャリアドメインにおける、又は本発明による融合タンパク質における第1のモジュールは炭水化物結合モジュールを含む。
【0085】
「炭水化物結合モジュール」、「炭水化物結合分子」、「炭水化物結合タンパク質」及び「炭水化物結合ドメイン」という用語は、本明細書で同義語として使用され、多糖類基質、例えばセルロースに結合することが可能であるタンパク質、又はその本質的部分若しくはホモログを表す。炭水化物結合モジュール(CBM)は、バイオマス分解に関与するタンパク質に関連した、自然に見られることの多い機能的に独立したモジュールである。これらのモジュールは、アミノ酸配列として規定し、炭水化物に対して作用する酵素に存在し、三次元構造と炭水化物結合能とを示す。炭水化物結合モジュールはセルロソーム足場タンパク質の炭水化物結合モジュールを含むのが好ましい。
【0086】
これに関して、「その本質的部分」という用語は、炭水化物に結合することが可能である炭水化物結合モジュール部分を表す。
【0087】
本明細書で使用されるような炭水化物結合タンパク質の「ホモログ」という用語は、炭水化物結合タンパク質のアミノ酸配列の機能部との同一性が少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%、80%又は90%、最も好ましくは少なくとも95%であるアミノ酸配列を有するタンパク質を表す。%「同一性」の代わりとして、対応する%「相同性」を、本発明によるホモログを規定するのに使用することもできることを理解されたい。
【0088】
特定の実施形態において、本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質は、上記で規定のように、セルロソーム足場タンパク質由来の炭水化物結合モジュールを含む。さらなる特定の実施形態では、キャリアドメインは、酵素由来の炭水化物結合モジュールを含むが、セルロソーム足場タンパク質由来の炭水化物結合モジュール(例えばCBM3b)に類似している。
【0089】
さらなる特定の実施形態において、本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質は、CBM3モジュール、すなわち3型炭水化物結合モジュールである炭水化物結合モジュールを含む。炭水化物結合モジュールは配列相同性に従って40を超えるファミリーに分類されている。幾つかのセルロース分解性酵素は約150個のアミノ酸残基の保存領域、CBM3ドメインを共有している。CBM3ドメインはファミリーIIIa、IIIb及びIIIcと呼ばれる3つの異なるサブタイプに分類されている。好ましい実施形態では、本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質はIIIa又はIIIbタイプのCBM3モジュールである炭水化物結合モジュールを含む。さらに特定の実施形態では、本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質はIIIaタイプのCBM3モジュールである炭水化物結合モジュールを含む。ファミリーIIIaの炭水化物結合モジュールが結晶セルロースと結合する。
【0090】
本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質に含まれる炭水化物結合モジュールの具体例は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(遺伝子バンクX67406又はX67506)のセルロソーム組込タンパク質A(CipA)、クロストリジウム・セルロリティカム(遺伝子バンクU40345)のセルロソーム組込タンパク質C(CipC)、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridum cellulovorans)(遺伝子バンクM73817)のセルロース結合タンパク質A(CbpA)及びクロストリジウム・アセトブチリカム(遺伝子バンクAE007606又はAE001437)のセルロソーム組込タンパク質A(CipA)を含む群から選択されるセルロソーム足場タンパク質の炭水化物結合モジュールを含むが、これらに限定されない。
【0091】
本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質に含まれる炭水化物結合モジュールの具体例はクロストリジウム・セルロリティカム(遺伝子バンクU40345)の足場タンパク質CipCの炭水化物結合モジュールである。クロストリジウム・セルロリティカムのセルロソームは足場タンパク質CipCの周りで組織化し、これによりドッケリン−コヒーシンドメインの相互作用を介して異なるセルロソーム酵素を結合させる。
【0092】
特定の実施形態において、炭水化物結合モジュールはクロストリジウム・セルロリティカムの足場タンパク質CipCの炭水化物結合モジュールのホモログを含む。したがってさらなる実施形態によれば、本発明は、上記のようなキャリアドメイン又は融合タンパク質であって、上記少なくとも1つの炭水化物結合モジュールが、クロストリジウム・セルロリティカムの足場タンパク質CipCの炭水化物結合モジュールとの同一性が少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%、80%又は90%、最も好ましくは少なくとも95%であるポリペプチドを含む、キャリアドメイン又は融合タンパク質にも関する。%「同一性」の代わりとして、対応する%「相同性」を、本発明によるホモログを規定するのに使用することもできることを理解されたい。
【0093】
B.Xモジュール
本発明による融合タンパク質の別のモジュールは、少なくとも1つのXモジュール、より具体的には親水性モジュール、好ましくはセルロソーム足場タンパク質の親水性モジュールを含む。
【0094】
「親水性ドメイン」、「親水性モジュール」及び「Xモジュール」という用語は、本明細書において同義語として使用され、セルロソーム足場タンパク質の親水性ドメインを表す。特定の実施形態では、Xモジュールは中温性クロストリジウムのセルロソームの足場タンパク質のXモジュールである。
【0095】
このため特定の実施形態において、本発明による融合タンパク質に含まれるXモジュールは細菌起源のもの、好ましくはクロストリジウム属の細菌、より具体的には中温性クロストリジウム由来、例えばクロストリジウム・サーモセラム、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)又はクロストリジウム・セルロボランス由来である。クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・セルロボランス(C. cellulovorans)、クロストリジウム・ジョスイ(C. josui)に見られるXモジュールは「X2」モジュールと称され得るのに対し、クロストリジウム・サーモセラムに見られるXモジュールは「X1」モジュールと呼ばれ得ることに留意されたい。
【0096】
本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質に含まれるXモジュールの具体例は、クロストリジウム・サーモセラム(遺伝子バンクX67406又はX67506)のセルロソーム組込タンパク質A(CipA)、クロストリジウム・セルロリティカム(遺伝子バンクU40345)のセルロソーム組込タンパク質C(CipC)、クロストリジウム・セルロボランス(遺伝子バンクM73817)のセルロース結合タンパク質A(CbpA)、クロストリジウム・ジョスイ(遺伝子バンクAB004845)のセルロソーム組込タンパク質A(CipA)及びクロストリジウム・アセトブチリカム(遺伝子バンクAE007606又はAE001437)のセルロソーム組込タンパク質A(CipA)を含む群から選択されるセルロソーム足場タンパク質の親水性ドメインを含むが、これらに限定されない。
【0097】
本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質に含まれるXモジュールの具体例はクロストリジウム・セルロリティカム(遺伝子バンクU40345)の足場タンパク質CipCのX2モジュールである。
【0098】
本発明による融合タンパク質に含まれるXモジュールの別の特に好ましい例はクロストリジウム・アセトブチリカム(遺伝子バンクAE007606又はAE001437)の足場タンパク質CipAのX2モジュールである。
【0099】
さらなる実施形態において、Xモジュールは本明細書に記載のXモジュールと相同的なモジュールである。
【0100】
特定の実施形態において、Xモジュールは、クロストリジウム・セルロリティカムの足場タンパク質CipC、又はクロストリジウム・アセトブチリカムの足場タンパク質CipAの親水性モジュールのホモログである。したがってさらなる実施形態によれば、本発明は、上記のような融合タンパク質、これをコードする核酸配列、及び宿主細胞、より具体的に組換え微生物であって、上記少なくとも1つのXモジュールが、クロストリジウム・セルロリティカムの足場タンパク質CipC、又はクロストリジウム・アセトブチリカムの足場タンパク質CipAの親水性モジュールとの同一性が少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%、80%又は90%、最も好ましくは少なくとも95%であるポリペプチドを含む、上記のような融合タンパク質、これをコードする核酸配列、及び宿主細胞、より具体的に組換え微生物にも関する。%「同一性」の代わりとして、対応する%「相同性」を、本発明によるホモログを規定するのに使用することもできることを理解されたい。
【0101】
本発明に従って、本発明によるキャリアドメイン又は融合タンパク質に適用されるCBMモジュール及びXモジュールは同じ又は異なるセルロソーム足場タンパク質を起源とし得ることにさらに留意されたい。
【0102】
特定の一実施形態において、本発明は、同じ又は異なるセルロソーム足場タンパク質の1つのXモジュールと融合した、セルロソーム足場タンパク質の炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメインを有する融合タンパク質をコードするポリ核酸に関する。別の特定の実施形態では、本発明は、同じ又は異なるセルロソーム足場タンパク質の2つの同じ又は2つの異なるXモジュールと融合した、セルロソーム足場タンパク質の炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメインを有する融合タンパク質をコードするポリ核酸に関する。
【0103】
特定の実施形態において、融合タンパク質は2つのXモジュール、3つのXモジュール、又は4つ以上のXモジュールを含む。これらは互いに隣接して融合タンパク質に位置していてもよく、又は融合タンパク質の1つ又は複数の他のモジュールによって分けられていてもよい。
【0104】
C.シグナルペプチド
特定の実施形態において、本発明による対象となるポリペプチドの分泌を確実にする、キャリアドメインを含む融合タンパク質は分泌シグナル配列をコードする配列をさらに含む。本発明のこれらの実施形態による構築物では、この分泌シグナル配列は、シグナル配列及び対象となるポリペプチドが操作可能に連結する、より具体的には共有結合的に連結するように、構築物の他の配列の1つ、すなわちCBMドメインをコードする配列、Xモジュール、又は対象となるポリペプチドをコードする配列のいずれかと連結する。これに関して、「操作可能に連結した」は、発現の際にシグナルペプチドがこのようにこの配列と連結したポリペプチドの分泌を容易にするように、シグナル配列をコードする配列及び分泌されるポリペプチドをコードする配列がフレーム内又はフェーズ内で接続されることを示す。
【0105】
好適なシグナルは配列が分泌が望まれる微生物の種類に依存し得ることを理解されたい。例えば、異なるシグナル配列が様々なグラム陽性細菌で必要とされ得る。例示的であり、これらに限定されないが、グラム陽性細菌、特にクロストリジウム・アセトブチリカム等のクロストリジウムにおける分泌は、クロストリジウム・セルロリティカムのCel5A前駆ポリペプチド(例示的な配列:Genbankアクセッション番号AAA51444、1994年10月31日に訂正された配列バージョン1)、又はクロストリジウム・セルロリティカムのCipC前駆足場タンパク質(例示的な配列:Genbankアクセッション番号AAC28899、2005年12月5日に訂正された配列バージョン2)、又はクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA前駆足場タンパク質(例示的な配列:Genbankアクセッション番号AAK78886、2006年1月19日に訂正された配列バージョン1)のシグナル配列を使用して達成され得る。
【0106】
本明細書で教示されるような微生物によって発現されるポリペプチドの天然(又は同種、内因性)シグナルペプチドは、上記微生物において機能的であれば利用することができることも理解されたい。したがって例えば、クロストリジウム・セルロリティカムのCel48F又はCel9Gの分泌は、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質を使用して達成され得る。同様に、異種生物におけるCel5H又は関連のポリペプチドの分泌は、Cel5H前駆ポリペプチドの内因性又は同種の分泌シグナル配列を使用して達成され得る。
【0107】
D.対象となるポリペプチド
本発明の融合タンパク質又は本発明によるその機能的ドメインは、構築物によって産生及び分泌される対象となるタンパク質、並びに本明細書で与えられるような方法をさらに含む。本明細書で規定のような好ましくは細菌の宿主によって産生及び分泌されるタンパク質は任意の対象となるタンパク質であり得る。好ましい実施形態では、このタンパク質は、異種、すなわち宿主とは種が異なる(heterologous)タンパク質である。代替的に、タンパク質は同種である。
【0108】
「対象となるポリペプチド」及び「対象となるタンパク質」という用語は、同義語として本明細書で使用され、本明細書で規定のような宿主細胞によって産生及び分泌されるタンパク質を表す。
【0109】
本発明は、本発明に従って産生及び分泌することができる対象となるポリペプチドの種類又は機能に限定されない。対象となるタンパク質の性質を、核酸及び核酸を含む宿主細胞の適用により求める。
【0110】
一実施形態において、上記対象となるポリペプチドは、好ましくはプロテアーゼ、レダクターゼ、リパーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ(phophatases)、オキシダーゼ及びカルボヒドラーゼを含む(がこれらに限定されない)群から選択される酵素である。
【0111】
例えば上記対象となるポリペプチドは、トランスフェラーゼ(EC.2)、イソメラーゼ(EC.5)、EC1.10.3の酵素群(例えばラッカーゼ)、又はペルオキシダーゼ(EC1.11.1)(例えばリグニナーゼ及びリグニンペルオキシダーゼ)を含む(がこれらに限定されない)オキシドレダクターゼ(EC.1)、及びカルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC3.1.1)(例えばヘミセルラーゼ)、及びグリコシダーゼ(EC3.2.1)(例えばエンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ぺクチナーゼ、エンド−グルコシダーゼH、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ及びエンド−プロセッシブ(endo-processive)セルラーゼ)を含む(がこれらに限定されない)ヒドロラーゼ(EC.3)を含む(がこれらに限定されない)群から選択される酵素である。
【0112】
特定の実施形態において、上記対象となるポリペプチドは植物細胞壁分解酵素である。微生物によるこのような酵素の分泌は、植物材料の分解、例えばバイオ燃料に関して対象となる。「植物細胞壁分解酵素」という用語は、セルロース材料又はリグノセルロース材料の切断を触媒する酵素を表すのに本明細書で使用され、これにはセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ラッカーゼ、セロビオヒドロラーゼ、並びにセルロース及びヘミセルロースをグルコース、キシロース、アラビノース、マンノース及びガラクトース等の単純な糖類へと分解するのに関与する他の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
特定の実施形態において、上記ポリペプチドはセルラーゼである。この用語はプロセッシブ及び非プロセッシブ(non-processive)セルラーゼを含む。プロセッシブセルラーゼは一本鎖多糖と相互作用し続け、非プロセッシブセルラーゼは一度相互作用が起こると、係合が外れ(disengage)、別の多糖鎖と係合する。明らかに、これらに限定されないが、酵素分類見出し(Enzyme Classification heading)に基づきセルロース鎖に沿ってランダムにβ−1,4−グリコシド結合を切断する、β−1,4−エンドグルカナーゼとも呼ばれるEC3.2.1.4酵素、セルロース鎖の一端からセロビオース又はグルコースを連続的に放出する、セロビオヒドロラーゼ又はエキソグルカナーゼとも呼ばれるEC3.2.1.91酵素、及び混合作用様式(エンドグルカナーゼ及びエキソグルカナーゼの両方)を示すエンド−プロセッシブセルラーゼとも呼ばれるEC3.2.1.4/EC3.2.1.91酵素に分類されるこれらの酵素もセルラーゼという用語内に含まれる。
【0114】
特定の実施形態によれば、本発明で使用される植物細胞壁分解酵素は、微生物起源、例えば真菌又は微生物起源、好ましくは細菌起源、例えばアルテロモナス属の細菌由来、例えば好熱性放線菌(Thermomonospora)属のサッカロファガス・デグラダンス2−40株由来、例えばセルロモナス属のサーモモノスポラ・フスカ(T. fusca)由来、例えばクロストリジウム属のセルロモナス・フィミ(C. fimi)由来、例えばクロストリジウム・サーモセラム、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・セルロボランス、クロストリジウム・ジョスイ由来のものである。別の実施形態では、本発明で使用される植物細胞壁分解酵素は真菌起源、例えばネオカリマスティクス属の真菌由来、例えばネオカリマスティクス・パトリシアラム(N. patriciarum)又はオルピノミセス種(Orpinomyces sp)株PC−2由来のものである。
【0115】
本発明による融合タンパク質又はその機能的ドメインにおける使用に好適なセルラーゼの具体例には、
Cel48F、Cel9G、Cel9R、Cel9P、Cel9E、Cel9H、Cel9J、Cel9M、Cel8C、Cel5N及びCel5Aを含む群から選択されるクロストリジウム・セルロリティカムのセルラーゼ、
Cel9D、Cel9J、CBH9A、Cel9H、Cel9K、Cel5E、Cel48S、Cel9F、Cel9N、Cel9Q、Cel5O、Cel5B、Cel5G、Cel8A、Cel5C及びCel9Iを含む群から選択されるクロストリジウム・サーモセラム(C. thermocellum)のセルラーゼ、
Cel48A、Cel9G、Cel9R、Cel9P、Cel9E、Cel9H、Cel9J、Cel9M及びCel5Aを含む群から選択されるクロストリジウム・アセトブチリカムのセルラーゼ、
Cel9A、Cel9B、Cel5J、Cel5I、Cel5F、Cel5H、Cel5D、Cel5B、Cel9G、Cel5E、Cel5A、Cel5C及びCel6Aを含む群から選択されるサッカロファゴス・デグラダンス2−40株のセルラーゼ、
Acla等のシュードモナス(Pseudomonas)種ND137由来の推定セルラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
さらなる具体例において、本発明による融合タンパク質又はその機能的ドメインにおける使用に好適なセルラーゼには、クロストリジウム・セルロリティカムのセルラーゼCel48F又はCel9Gが含まれる。
【0117】
さらなる具体例において、本発明による融合タンパク質又はその機能的ドメインにおける使用に好適なセルラーゼには、サッカロファゴス・デグラダンス2−40株のセルラーゼCel5Hが含まれる。
【0118】
さらなる特定の実施形態において、本発明に従って産生及び分泌される対象となるポリペプチドは治療用タンパク質である。本明細書で使用されるような「治療用タンパク質」は、疾患若しくは機能不全を治療するため、又は被験体の健康状態を改善するために被験体に投与することができる、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質又は糖ペプチドを表す。治療用タンパク質には、それ自体が治療的効果を示す分子と、別の分子に作用することで、又は別の分子と組合せることで治療的効果を示す分子、例えば複合薬物の一部分又はプロドラッグ変換酵素との両方が含まれる。特定の実施形態では、被験体は動物又はヒトである。さらに好ましい実施形態では、治療用タンパク質はヒトタンパク質、又は例えば齧歯類、例えばラット、マウス由来の動物タンパク質である。別のさらに特定の実施形態では、疾患又は機能不全には癌が含まれる。したがって特定の実施形態では、対象となるポリペプチドは抗腫瘍剤である。
【0119】
特定の実施形態において、治療用タンパク質は活性タンパク質であり、例えばリガンド又は受容体との結合活性、細胞内シグナル伝達経路を活性化する能力、又は哺乳動物、例えばヒトにおいて免疫応答を引き起こす能力のような酵素活性又は生物学的活性を有する。治療用タンパク質は1つ又は複数のグリコシルトランスフェラーゼによってin vitroでグリコシル化又はそうでなければ修飾してもよい。
【0120】
特定の実施形態において、本発明による融合タンパク質又はその機能的ドメインにおける使用のための対象となるタンパク質は、治療用酵素、サイトカイン及び抗体(既知の形態の抗原結合分子が全て含まれる)を含む群から選択される治療用タンパク質である。本発明に従って、抗体という用語には「触媒抗体」も含まれることに留意されたい。
【0121】
さらなる特定の実施形態において、治療用タンパク質はIL−2、IL−12、GM−CSF(顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子)、TNF(腫瘍壊死因子)−α等である(がこれらに限定されない)サイトカインを含む群から選択される。
【0122】
より具体的には治療用タンパク質の使用は、本明細書に記載の本発明の治療的適用に対して想定されている。
【0123】
さらなる特定の実施形態において、対象となるポリペプチドは診断用ポリペプチド、例えば抗体である。これらは、本発明の宿主細胞の診断的使用において対象となり得る。
【0124】
E.リンカーモジュール
本発明による融合タンパク質は通常、タンパク質のキャリアドメインと、対象となる機能的ドメイン又はポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカーから成る、別のモジュールを含む。
【0125】
好ましくは炭水化物結合モジュールと親水性モジュールとを連結するペプチド配列は、当該技術分野で既知であり、セルロソーム足場タンパク質で簡便に見ることのできる配列である。
【0126】
上記リンカーポリペプチドは、少なくとも3個のポリペプチド、好ましくは少なくとも4個又は5個、最も好ましくは少なくとも7個、及びより好ましくは少なくとも12個のアミノ酸を含むのが好ましい。好ましくは上記リンカーは3個〜15個のアミノ酸を含むポリペプチドである。好ましくは、上記リンカーは、グリシン、セリン、システイン、アスパラギン、チロシン、グルタミン、アラニン、バリン、プロリン、スレオニン等の非荷電アミノ酸を含むポリペプチド、好ましくはグリシン又はセリンである。
【0127】
リンカーポリペプチドの好適な例は、クロストリジウム・アセトブチリカム(AE007606)のCipA、クロストリジウム・セルロリティカム(U40345)のCipC、クロストリジウム・サーモセラム(X67406又はX67506)のCipA、クロストリジウム・セルロボランス(M73817)のCbpA、クロストリジウム・ジョスイ(AB004845)のCipAを含む(がこれらに限定されない)細菌セルロソーム足場タンパク質に見られるリンカーポリペプチドを含む。
【0128】
上述のように、本明細書に規定のようなペプチドリンカーはプロテアーゼ切断部位を含み得る。この部位での切断により、対象となるポリペプチドが放出される。
【0129】
4.ベクター
本発明のさらなる態様によれば、宿主細胞、好ましくは細菌細胞への導入、及び/又は本発明による融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の発現、及び/又は維持を容易にするために発現構築物が与えられる。発現構築物を商業的に利用可能であり得るプラスミド又はベクターに挿入してもよい。
【0130】
「ベクター」はポリヌクレオチド分子、好ましくは例えばプラスミド、バクテリオファージ又は植物ウイルスに由来し、ポリヌクレオチドを挿入又はクローニングすることができるDNA分子を意味する。ベクターは1つ又は複数の特有の制限部位を含有し、クローニング配列が再生可能であるように、規定の宿主細胞において自己複製することが可能であるか、又は規定の宿主のゲノムに組込可能(integrable)であるのが好ましい。ベクターの選択は通常、ベクターとベクターが導入される宿主細胞との相溶性に依存する。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、発現構築物は、宿主生物、好ましくは細菌への形質転換に好適であり、形質転換した宿主細胞において本発明による融合タンパク質の維持及び発現に好適である発現ベクターである。
【0132】
「発現ベクター」は選択された宿主細胞を形質転換するのに使用することができ、選択された宿主においてコード配列の発現を与える構築物である。発現ベクターは例えば、クローニングベクター、バイナリー(binary)ベクター又は組込ベクターであり得る。このため本発明は、上記の核酸のいずれかを含むベクターにも関する。上記ベクターは上記宿主細胞において核酸の発現を制御するために調節配列をさらに含んでいてもよい。本発明の実施において、細菌細胞の発現のために本明細書に規定のような融合タンパク質をコードする核酸を与える発現ベクターが特に有用である。概して発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、発現ベクターによってコードされた所望の産物(融合タンパク質)を高レベルで合成するように、宿主細胞において効果的に複製することが可能な発現ベクターの使用を伴う。
【0133】
本明細書で使用する「調節配列」及び「制御配列」という用語は広く解釈され、ライゲーション(共有結合的に連結)及び/又は操作可能に連結された配列の発現を駆動及び/又は調節することが可能な調節核酸配列を表す。制御配列は、目的とする宿主生物によって、及び発現させる配列の性質によって異なる。原核生物におけるタンパク質の発現のために、制御配列は概して、プロモータ、リボソーム結合部位及びターミネータを含む。真核細胞では、制御配列は概してプロモータ、ターミネータ、及び場合によってはエンハンサ、及び/又は5’及び3’の非翻訳配列を含む。「制御配列」という用語は最低でも発現に必要となる構成要素を全て含むことが意図され、さらに有利な構成要素を含んでいてもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、制御配列は細菌、好ましくはグラム陽性細菌で操作可能であり、好ましくは制御配列はグラム陽性細菌に由来する配列である。「制御配列」という用語は宿主細胞において核酸分子の発現を活性化する又は高めることが可能なプロモータ又は配列を包含する。
【0134】
本発明の一実施形態によれば、発現構築物は、細菌への形質転換に好適であり、形質転換した細菌細胞における本発明による融合タンパク質の維持及び発現に好適である細菌発現ベクターである。このため本発明は、上記の核酸のいずれかを含むベクターにも関する。上記ベクターは細菌細胞において核酸の発現を制御するために調節配列をさらに含んでいてもよい。
【0135】
発現ベクター及びクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、対象となるポリペプチドをコードする核酸と(共有結合的に及び)操作可能に連結するプロモータを含有する。プロモータは特定の核酸配列、例えばプロモータと操作可能に連結された本明細書に規定のような融合タンパク質をコードする配列の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子の開始コドンの上流(5’側)に(概して約100bp〜1000bp内に)位置する非翻訳配列である。このようなプロモータは通常、誘導プロモータ及び構成プロモータの2つの群に分かれる。誘導プロモータは、培養条件の幾つかの変化、例えば栄養素の有無又は温度変化に応答して、それらの制御下での核酸からの転写レベルの増大を開始させるプロモータである。現在、様々な潜在的な宿主細胞によって認識されるプロモータが数多く知られている。これらのプロモータは、制限酵素消化により供給源となる(source)核酸からプロモータを取り除くこと、及び単離プロモータ配列をベクターに挿入することによって、対象となるポリペプチドをコードする核酸と操作可能に連結する。自然発生するプロモータ配列と多くの異種プロモータとの両方を、対象となるポリペプチドを増幅及び/又は発現させるのに使用してもよい。概して、宿主細胞に適合する種に由来するプロモータ及び制御配列を含有するプラスミドベクターをこれらの宿主と共に使用する。ベクターは通常、1つ又は複数の複製部位及びマーカー配列を保有し、それにより形質転換した細胞において表現型選択が可能になる。
【0136】
原核宿主と共に使用するのに好適なプロモータには例示的に、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモータ系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモータ系、及びtacプロモータ等のハイブリッドプロモータが含まれる。しかしながら、他の機能的な細菌プロモータが好適である。それらのヌクレオチド配列が一般的に知られており、これにより当業者は、リンカー又はアダプターを使用して、それらのヌクレオチド配列と本明細書で規定のようなタンパク質分泌分子をコードする核酸とを操作可能にライゲーションし、任意の所要の制限部位を供給することが可能となる。細菌系における使用のためのプロモータ。シャイン−ダルガーノ配列も本明細書で規定のようなタンパク質分泌分子をコードする核酸と操作可能に連結するものとする。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、ベクターは構成プロモータを含む。本発明による構築物及び方法に好適な構成プロモータの例には、CaMV35Sプロモータ、GOS2、アクチンプロモータ、ユビキチンプロモータ、チオラーゼプロモータが含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明の別の実施形態によれば、ベクターは誘導プロモータを含む。本発明による構築物及び方法に好適な誘導プロモータの例には、lacプロモータ又はキシロース誘導プロモータが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
任意で、本発明の発現ベクターは転写の終結に、及びmRNAを安定化させるのに必要となる配列も含有し、このため1つ又は複数の転写終結配列を含有し得る。「転写終結配列」という用語は、3’プロセシング及び転写の終結につきシグナル伝達する、転写単位の末端にある制御配列を包含する。さらなる調節要素、例えば転写エンハンサ又は翻訳エンハンサを発現構築物に組み込んでもよい。
【0140】
本発明の発現構築物は、特定の細胞型において維持及び/又は複製に必要となる複製起点をさらに含んでいてもよい。一例としては、発現構築物をエピソーム遺伝要素として細菌細胞中で維持する必要がある場合がある(例えばプラスミド又はコスミド分子)。好ましい複製起点には、f1−ori、colE1 ori及びGram+細菌の複製起点が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
発現構築物は任意で、選択マーカー遺伝子を含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、「選択マーカー遺伝子」という用語は、本発明の発現構築物でトランスフェクト又は形質転換した細胞の同定及び/又は選択を容易にするために選択マーカー遺伝子が発現される細胞に表現型を与える任意の遺伝子を含む。好適なマーカーは抗生物質耐性若しくは除草性耐性マーカー又は視覚マーカーを与えるマーカーから選択され得る。選択マーカー遺伝子の例には、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)又はBastaをコードする遺伝子が含まれる。好適な選択マーカー遺伝子のさらなる例には、アンピシリン(AmpR)、テトラシジン(TcR)、カナマイシン(KanR)、ホスフィノトリシン及びクロラムフェニコール又はチアンフェニコール(CAT)に対する耐性遺伝子が含まれる。他の好適なマーカー遺伝子、例えばmanAは代謝特性を与える。視覚マーカー遺伝子を使用してもよく、これには例えばβ−グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ及び緑色蛍光タンパク質(GFP)が含まれる。
【0142】
上記で列挙された構成要素を1つ又は複数含有し、所望のコード配列及び制御配列を含む、好適なベクターの構築には標準的なライゲーション法が用いられる。単離プラスミド又は核酸断片を切断し、適合させて(tailored)、所望の形態で再ライゲーションし、必要とされるプラスミドを生成する。
【0143】
5.宿主細胞
一態様によれば、本発明は、本明細書で規定のようなポリ核酸又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0144】
「宿主細胞」という用語は、培養物において成長することが可能であり、本明細書で規定のようなポリ核酸を発現することが可能であり、このため本明細書で規定のような融合タンパク質を産生及び分泌することが可能であるこのような細胞を表す。本発明の宿主細胞は、in vitro細胞培養物を包含し、原核細胞が含まれる。特定の実施形態は微生物に関する。本発明に従って使用され得る宿主細胞の具体例としては細菌細胞が挙げられる。
【0145】
「宿主細胞」という用語は、胞子等の宿主細胞の生活環の全ての形態を含むように意図されることに留意されたい。
【0146】
特定の実施形態において、本発明との関連で想定される宿主細胞は細菌細胞、特にグラム陽性細菌細胞である。「グラム陽性細菌」という用語は、この用語の当該技術分野で認識される定義を含むように意図される。グラム陽性細菌には、バシラス属、ゲオバシラス属、クロストリジウム属、ストレプトコッカス属、セルロモナス属、コリネバクテリウム属、ラクトバシラス属(Lactobacillis)、ラクトコッカス属、オエノコッカス属(Oenococcus)及びユーバクテリウム属(Eubacterium)が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
本発明の特定の実施形態によれば、上記宿主細胞はクロストリジウム綱のグラム陽性細菌細胞の成員、より好ましくはクロストリジウム属の成員である。
【0148】
最も具体的には、遺伝子操作の影響を受けやすい、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・スポロゲネス(C. sporogenes)、クロストリジウム・ベイジェリンキ等である(がこれらに限定されない)クロストリジウム株が想定されている。
【0149】
宿主細胞の選択は想定される適用により求めることができる。最も具体的には、本発明は、対象となるポリペプチドの分泌に問題がある株に適用可能である。
【0150】
一実施形態において、上記宿主細胞は溶媒生成性の、すなわち溶媒を産生するクロストリジウム株を含む群の成員である。特に好ましい本発明のこの実施形態による宿主細胞は、クロストリジウム・アセトブチリカム、例えばクロストリジウム・アセトブチリカムATCC824株、及びクロストリジウム・ベイジェリンキ、例えばクロストリジウム・ベイジェリンキATCC17778株を含む群から選択される溶媒を産生するクロストリジウム株である。
【0151】
別の実施形態において、上記宿主細胞は、胞子形成(sporogenic)細菌、例えばこれらに限定されないが、バシラス属、クロストリジウム属の細菌(より具体的には胞子の投与を対象とする治療的用途のための)を含む群の成員である。特に好ましい本発明のこの実施形態による宿主細胞は、クロストリジウム・スポロゲネス、例えばクロストリジウム・スポロゲネスDSM767株、及びクロストリジウム・アセトブチリカム、例えばクロストリジウム・アセトブチリカムATCC824株を含む群から選択されるクロストリジウム株である。
【0152】
本発明によるポリ核酸分子又はベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれていても又は幾つかの形態で染色体外に維持されていてもよい。
【0153】
より具体的には、宿主細胞は本発明の発現ベクターで形質転換し、プロモータを誘導するのに、形質転換細胞を選択するのに、又は遺伝子を増幅するのに適切であるように変更した、従来の栄養培地で培養してもよい。「形質転換」は、染色体外要素として又は染色体組込により核酸が複製可能となるように、核酸を生物に導入することを意味する。宿主細胞を形質転換するのに本明細書で使用される方法は当業者にとって既知である。培養条件、例えば温度、pH等は発現のために選択された宿主細胞と共にこれまでに使用されてきたものであり、当業者にとっては明らかであろう。
【0154】
6.ポリペプチドを産生及び分泌させる方法
別の態様において、本願は、宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞により、生物学的に活性のある形態で少なくとも1つの対象となる異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを産生及び分泌させる方法であって、本発明によるポリ核酸又はベクターを、コードされた融合タンパク質の発現を引き起こすのに効果的な条件下で上記宿主細胞に導入することを含み、コードされた融合タンパク質を、宿主細胞によって上記宿主細胞の環境に分泌させる、方法に関する。
【0155】
分泌中、融合タンパク質が宿主環境(例えば培養培地)に放出されるように、シグナルペプチドを上記融合タンパク質から切断するのが好ましい。別の態様では、キャリアドメインと機能的ドメインとを接続する本明細書で規定のようなリンカーに導入したプロテアーゼ標的配列及び対象となるタンパク質をプロテアーゼ(複数可)で切断して、残りの融合タンパク質から切断された対象となるタンパク質を宿主環境に放出する。
【0156】
好ましくは上記宿主細胞は上記で規定のような細菌宿主細胞である。
【0157】
上記宿主細胞の環境は上記細菌が成長する場所を表すように意図される。一実施形態において、上記細菌の環境は上記細菌が成長する培養培地であり得る。別の実施形態では、上記細菌の環境は、特に本発明で意図される治療的適用の場合、生き物(living being)の組織、例えばヒト又は動物の組織であり得る。
【0158】
本発明は、生物学的に活性のある形態で対象となるポリペプチドを産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用にも関する。
【0159】
本発明はさらに、対象となるポリペプチド、好ましくは本明細書で規定のようなポリペプチドの分泌を制御するための本明細書で規定のようなキャリアドメインの使用に関する。これに関して、「分泌を制御する」という用語は分泌の発生、誘導及び/又は改善を包含するように意図されることに留意されたい。より具体的には、本発明は、宿主細胞による、対象となるポリペプチド、好ましくは本明細書で規定のようなポリペプチドの分泌を制御するための本明細書で規定のようなシグナルペプチドと融合した本明細書で規定のようなキャリアドメインの使用に関する。
【0160】
「分泌の改善」とは、対象となるポリペプチドの分泌量が、分泌を制御するのに本明細書で規定のようなシグナルペプチドと融合したキャリアドメインを使用しない場合に得られる量よりも多い、好ましくは少なくとも2.5%、又は5%、又は10%多いことを意味する。
【0161】
7.非治療的適用
一実施形態において、対象となるポリペプチドは本明細書で規定のような酵素である。このような実施形態では、本発明は、本発明による融合タンパク質の様々な非治療的使用に関する。
【0162】
一実施形態において、上記対象となるポリペプチドは本明細書で規定のような酵素であるのが好ましい。
【0163】
別の実施形態において、上記対象となるポリペプチドは好ましくは本明細書で規定のような植物細胞壁分解酵素、さらにより好ましくは本明細書で規定のようなセルラーゼである。
【0164】
より具体的な実施形態において、本発明は、本明細書で規定のような植物細胞壁分解酵素、さらにより好ましくは上記で規定のような微生物起源、好ましくは細菌起源、例えば、例えばアルテロモナス属の細菌由来、例えばサッカロファガス・デグラダンス2−40株由来、好熱性放線菌属の細菌由来、例えばサーモモノスポラ・フスカ由来、セルロモナス属の細菌由来、例えばセルロモナス・フィミ由来、クロストリジウム属の細菌由来、例えばクロストリジウム・サーモセラム、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・アセトブチリカム由来のセルラーゼを産生及び分泌させるための、本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用を提供する。別の実施形態では、セルラーゼは真菌起源、例えばネオカリマスティクス(Neocallimastigomycota)属の真菌由来、例えばネオカリマスティクス・パトリシアラム由来、又はオルピノミセス種PC−2由来株である。
【0165】
さらにより好ましくは、本発明は、生物学的に活性のある形態の、上記で規定のような、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・サーモセラム、クロストリジウム・アセトブチリカム又はサッカロファゴス・デグラダンスのセルラーゼを産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用に関する。
【0166】
特に好ましい実施形態において、本発明は、クロストリジウム・セルロリティカムのセルラーゼCel48Fを産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用に関する。
【0167】
特に好ましい実施形態において、本発明は、クロストリジウム・セルロリティカムのセルラーゼCel9Gを産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用に関する。
【0168】
さらに別の特に好ましい実施形態において、本発明は、サッカロファゴス・デグラダンスのセルラーゼCel5Hを産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用に関する。
【0169】
8.治療的適用
本発明のさらなる態様は、本発明によるキャリア構築物及びキャリア構築物を含む宿主細胞の治療的適用に関する。
【0170】
特定の実施形態において、対象となるポリペプチドは本明細書で規定のような治療用タンパク質である。このような実施形態では、本願は好ましくは、本発明による融合タンパク質の様々な治療的使用に関する。
【0171】
従来の治療では到達することが困難である固形腫瘍における無血低酸素/壊死領域が偏性嫌気性細菌の成長及び増殖に好適な環境を提供することが分かっている。より具体的には、静脈注射により、クロストリジウム胞子は身体全体に消散するが、固形腫瘍の低酸素環境に直面したものだけが発芽及び繁殖し続けることが明らかになった(Mose and Mose, 1964、Carey et al, 1967)。このためクロストリジウム胞子は癌における薬物送達に理想的なキャリアである。しかしながら、クロストリジウムによる薬物送達が直面する主な問題は分泌タンパク質のレベルである。本発明は、クロストリジウム等の微生物による対象となるポリペプチドを含む融合タンパク質の分泌を可能にするシステムを提供することにより、この問題に対処する方法を提供している。
【0172】
したがって本発明は、本明細書で規定のような治療用タンパク質を産生及び分泌させるための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用を提供する。特定の実施形態では、治療用タンパク質は治療用酵素、サイトカイン及び抗体を含む群から選択される。
【0173】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換え微生物により、サイトカイン、より具体的には生物学的に活性のある形態のサイトカインを産生及び分泌させるための、本発明による治療用タンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリ核酸、及びポリ核酸を含む宿主細胞の使用に関する。
【0174】
より具体的には、本発明は、組換え微生物により、IL−2、IL−12、GM−CSF及びTNF−αを含む群から選択されるサイトカインを産生及び分泌させるための、本発明による治療用タンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリ核酸、及びポリ核酸を含む宿主細胞の使用に関する。
【0175】
さらなる実施形態において、治療用タンパク質はプロドラッグ変換酵素である。
【0176】
さらなる態様において、本発明は、治療的に活性のある量の(より具体的には本発明による組換え微生物の)ポリ核酸、ベクター又は宿主細胞と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、すなわち例えば1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体物質及び/又は添加物、例えばバッファー、担体、賦形剤、安定化剤等とを含む薬学的組成物に関する。より具体的には、組換え微生物は細菌胞子、最も具体的にはクロストリジウム胞子の形態である。
【0177】
本明細書で使用されるような「治療的に効果的な量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められる、組織、システム、動物又はヒトにおける生物学的又は医薬的な応答を引き起こす、ポリ核酸、ベクター又は宿主細胞(とりわけ組換え微生物又はその胞子)の量を意味する。
【0178】
本明細書で使用されるような「薬学的に許容可能な」という用語は、当該技術分野では一致しており、薬学的組成物の他の成分に適合し、そのレシピエントにとって有害ではないことを意味する。好適な薬学的に許容可能な担体は当業者にとって既知であり、例えばコラーゲン又はゼラチン等のタンパク質、デンプン、多糖類、糖(デキストロース、グルコース及びスクロース)、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、α化(pregeletanized)デンプン、ペクチン寒天、カラギーナン、クレイ、親水性ゴム(アカシアゴム、グアーゴム、アラビアゴム及びキサンタンゴム)、アルギン酸、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、ポリグルコール酸及びポリ乳酸、デキストラン、ペクチン等の炭水化物、水溶性アクリルポリマー等の合成ポリマー、又はポリビニルピロリドン、プロテオグリカン、リン酸カルシウム等から選択され得る。
【0179】
医薬品は、添加物、例えば充填剤、崩壊剤、結合剤、滑剤、湿潤剤、安定化剤、乳化剤、分散剤、保存料、甘味料、着色剤、香味料、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒、可溶化剤、デポー効果を達成するための作用物質、浸透圧を変えるための塩、コーティング剤又は抗酸化剤を含有することもできる。
【0180】
使用される、本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の投与量又は量は、個々のケースに依存し、最適な効果を達成するために個々の状況に適合させることを常とする。このため、これは治療される障害の性質及び重症度に、また治療するヒト若しくは動物の性別、年齢、体重及び個々の応答性に、使用される化合物の有効性及び作用期間に、治療が急性的若しくは慢性的若しくは予防的であるかに、又は本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター若しくは宿主細胞に加えて、他の活性のある化合物が投与されるか否かに依存する。
【0181】
薬学的組成物の調製をそれ自体が既知の方法で行うことができる。このために、本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター又は宿主細胞を、1つ又は複数の固体又は液体の薬学的担体物質及び/又は添加物(又は補助物質)と共に、及び所望に応じて、治療作用又は予防作用を有する他の薬学的に活性のある化合物と組合せて、その後の人間医学における調合薬として使用することができる好適な投与形態又は投薬形態にする。
【0182】
本発明による薬学的組成物を、注射又は注入のための溶液形態で非経口で、例えば皮下で、筋肉内で又は静脈内で投与するのが好ましい。他の好適な投与形態は例えば、マイクロカプセル、インプラント又はロッドである。
【0183】
溶液、例えば注射溶液、例えば水、塩化ナトリウム生理溶液、エタノール、グリセロール、ポリオール等のアルコール、スクロース、転化糖、グルコース、マンニトール、植物油等の調製に好適な担体。本明細書で規定のような宿主細胞を凍結乾燥し、例えば注射用調合液を調製するのに得られた凍結乾燥物を使用することも可能である。
【0184】
マイクロカプセル、インプラント又はロッドに好適な担体は例えば、グリコール酸と乳酸とのコポリマーである。
【0185】
特に好ましい実施形態において、本発明による薬学的組成物は注射可能である。組成物を例えば腫瘍部位に投与(注射)することができる。このような適用により、薬学的組成物に含有される産物、すなわち本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター、宿主細胞を腫瘍細胞に送達することが可能になる。腫瘍細胞に送達される化合物、例えば本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター、宿主細胞を数ヶ月間又はさらには数年間、1週間に1回又は複数回注射するのが好ましい。
【0186】
別の特に好ましい実施形態において、産物、すなわち本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター、宿主細胞を癌型の細胞における腫瘍に送達するために、本発明による薬学的組成物を例えばマイクロポンプ等のリザーバを使用して送達することができる。
【0187】
また本発明は、薬剤としての使用のための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞に関する。言い換えると、本発明は、本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の薬剤としての使用にも関する。
【0188】
さらなる実施形態において、本発明は、癌を治療するための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞に関する。より具体的には、本発明は、癌を治療するための薬剤の調製のための本発明によるポリ核酸、ベクター又は宿主細胞の使用に関する。
【0189】
一例では、クロストリジウム胞子を腫瘍の近くで発芽及び発達させることが可能であるので、本明細書で開示のように設計した組換えクロストリジウム細菌を癌治療に使用することができる。
【0190】
様々な種類の癌を本発明に従って治療することができる。したがって本発明は、それを必要とする被験体において癌を治療する方法であって、本発明による宿主細胞を上記被験体に、好ましくは上記被験体の腫瘍部位に導入することを含む、方法にも関する。このため事実上、本発明は、それを必要とする被験体の腫瘍部位で本発明によるポリ核酸を発現することが可能である、このため宿主の腫瘍部位で本発明による対象となるポリペプチドを産生することが可能である、組換え宿主細胞の導入を含む。したがって本発明は、本明細書で規定のようなポリ核酸、ベクター、宿主細胞又は薬学的組成物に含有される産物、すなわち治療用タンパク質、例えばサイトカインを選択的に腫瘍細胞に送達することを提供する。固形腫瘍は幾つかの発達段階で重度の低酸素及び壊死を特徴とすることに基づき、このような運搬システムが重要な抗癌戦略であると考えられる。このような治療は、産物を腫瘍に直接送達させた結果として、正常組織の毒性を回避し、腫瘍細胞の破壊を促進する(improve)と考えられる。
【0191】
本発明は以下の非限定的な実施例を参照してさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0192】
特に他に示されていなければ、本発明の実施には、当該技術範囲内にある、組換えDNA技術、分子生物学、生物学的試験等で使用される従来の技法が用いられる。このような技法は文献において十分に説明されている。
【0193】
実施例1:異種及び毒性セルラーゼの分泌
本実施例は、本発明に従う、クロストリジウム・アセトブチリカムによる対象となるポリペプチド、特にセルラーゼの分泌を示している。様々な構築物を作製し、これらの中で最も関連のあるものを図1で概略的に示す。
【0194】
第1の構築物において、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼCel48Fをコードするポリ核酸を、キャリアドメインをコードするポリ核酸に融合した。この構築物には、クロストリジウム・セルロリティカムのCipCのCBM3aモジュール、Xモジュール(Xc)及びコヒーシン1モジュールが含まれる。構築物はクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドをさらに含有する。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0195】
第2の構築物において、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼCel48Fをコードするポリ核酸を、キャリアドメインをコードするポリ核酸に融合した。この構築物には、クロストリジウム・セルロリティカムのCipCのCBM3a及び1つのXモジュール(Xc)が含まれる。構築物はクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドをさらに含有する。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0196】
第3の構築物において、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼCel9Gをコードするポリ核酸を、キャリアドメインをコードするポリ核酸に融合した。この構築物には、クロストリジウム・セルロリティカムのCipCのCBM3a及び1つのXモジュール(Xc)が含まれる。構築物はクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドをさらに含有する。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0197】
対照として、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼCel48Fをコードするポリ核酸と、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドとを含むが、キャリアドメイン及び/又は(or and)Xモジュールを有しない構築物を作製し、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼ(celllulase)Cel9Gをコードするポリ核酸と、CBM3aモジュールをコードするポリ核酸と融合した、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドとを含むが、Xモジュールを有しない別の構築物を作製した。さらに、同様の構築物を、c末端ドッケリンドメインを用いて又は用いずに作製した。
【0198】
様々な構築物をOverlap Extension PCR法を使用して構築し、抗生物質エリスロマイシンに対する耐性を付与するシャトル発現ベクターpSOS952でクローニングして、それによりそれぞれプラスミドpSOS952−CBM−Xc−コヒーシン−48F、pSOS952−CBM−Xc−48F及びpSOS952−CBM−Xc−9Gを生成した。構築物をシークエンシングによって確認し、in vivoでメチル化した。続いて、メチル化ベクターを、クロストリジウム・アセトブチリカム株ATTC824を電気形質転換する(electrotransform)のに使用した。
【0199】
2つの第1の構築物を保有するクロストリジウム・アセトブチリカム株はそれらの成長培地においてセルラーゼCel48Fを含有する融合タンパク質を約0.5mg/Lの量で分泌したことが分かった。さらに、第3の構築物を保有するクロストリジウム・アセトブチリカム株もその成長培地においてセルラーゼCel9Gを含有する融合タンパク質を約0.5mg/Lの量で分泌した。しかしながら、キャリアドメイン(CBM+Xモジュール)の非存在下で、シグナル配列を有するセルラーゼだけを含む構築物は細胞に対して毒性であった(すなわち分泌されなかった)。c末端ドッケリンドメインの存在によってはこのことは変化しなかった。
【0200】
これらの結果は、セルラーゼCel9G又はCel48Fが遺伝子組み換えによってシグナル配列、及びクロストリジウム・セルロリティカム由来のスカフォールディンCipCの2つのモジュール(CBM及びX)又は3つのモジュール(CBM、X及びコヒーシン)と融合する場合、キメラ酵素がクロストリジウム・アセトブチリカムによって培地中に産生及び分泌されることを示している。組換えセルラーゼの分泌収率はおよそ0.3mg/L〜0.5mg/Lと推測された。これらの値はセルロース上の培養上清の活性に基づく。代替的には、培養上清における異種セルラーゼの濃度は、変性条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動分析、その後のデンシトメトリー分析(densitometricanalyses:濃度分析)でも推測した。
【0201】
CBMの存在には、対象となるタンパク質を結晶セルロースカラム上の培養物の上清から迅速に精製させることができるという利点がある。
【0202】
実施例2:複数のXモジュールを使用する、本発明による異種及び毒性セルラーゼの分泌
これは、本発明に従う、クロストリジウム・アセトブチリカムによる対象となるポリペプチド、特にセルラーゼの分泌を示す別の例である。様々な構築物を作製し、図1(下部パネル)に概略的に示す、ここでは異なる足場タンパク質から得られたモジュールを使用した。
【0203】
一構築物において、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼCel9Gをコードするポリ核酸を、クロストリジウム・セルロリティカムのCipCタンパク質から得られたCBM3a及びクロストリジウム・アセトブチリカムのCipAタンパク質から得られた1つのXモジュール(Xa)を含むキャリアドメインをコードするポリ核酸と融合した。構築物はさらに、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドを含有する。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0204】
第5の構築物において、クロストリジウム・セルロリティカムから得られたセルラーゼCel9Gをコードするポリ核酸を、キャリアドメインをコードするポリ核酸と融合した。この構築物には、クロストリジウム・セルロリティカムのCipCタンパク質から得られたCBM3a、クロストリジウム・アセトブチリカムのCipAの第1のXモジュール(Xa)、及び第2のXモジュール(Xa’)が含まれる。構築物はさらに、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドを含有する。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0205】
これらの構築物をOverlap Extension PCR法を使用して構築し、抗生物質エリスロマイシンに対する耐性を付与するシャトル発現ベクターpSOS952でクローニングして、それによりそれぞれプラスミドpSOS952−CBM−Xa−9G及びpSOS952−CBM−Xa−Xa’−9Gを生成した。構築物をシークエンシングによって確認し、in vivo及びin vitroでメチル化した。続いて、メチル化ベクターを、クロストリジウム・アセトブチリカム株ATTC824を電気形質転換するのに使用した。
【0206】
2つのこれらの構築物を保有するクロストリジウム・アセトブチリカム株はそれらの成長培地においてセルラーゼCel9Gを含有する融合タンパク質を関連量で分泌したことが分かった。これらの結果は、セルラーゼCel9Gが遺伝子組み換えによってシグナル配列、及びクロストリジウム・セルロリティカム由来のスカフォールディンCipCのCBM、及びクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA由来の1つ又は2つのXモジュールと融合する場合、キメラ酵素がクロストリジウム・アセトブチリカムによって培地中に産生及び分泌されることも示していた。これは、クロストリジウム・アセトブチリカムのCipA由来のXモジュールも、クロストリジウム・アセトブチリカムによる分泌に対してキャリア特性を有することを示している。出願人らはさらに、2つ以上のXモジュールを使用することには分泌に対して有利な効果があったことも示している。融合セルラーゼの分泌収率は、ベクターpSOS952−CBM−Xa−9G及びpSOS952−CBM−Xa−Xa’−9Gを担持する株に関してそれぞれ、1.9mg/L及び3.5mg/Lと推測された。培養上清における異種セルラーゼの濃度は、変性条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動分析、その後のデンシトメトリー分析でも推測した。
【0207】
実施例3.本発明による異種セルラーゼの分泌改善
これは、本発明に従う、クロストリジウム・アセトブチリカムによる対象となるポリペプチド、特にサッカロファゴス・デグラダンス由来のセルラーゼの分泌を示す別の例である。様々な構築物を作製し、図2に概略的に示す、ここでは異なる足場タンパク質から得られたモジュールを使用した。
【0208】
第1の構築物において、クロストリジウム・アセトブチリカムのコドンバイアスに適合し、サッカロファゴス・デグラダンス由来のセルラーゼCel5Hをコードする合成ポリ核酸を、キャリアドメインをコードするポリ核酸に融合した。この構築物には、クロストリジウム・アセトブチリカムのCipAタンパク質から得られたCBM3aモジュール、第1のXモジュール(Xa)及び第2のXモジュール(Xa’)、並びにクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドが含まれる。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0209】
天然Cel5Hポリペプチドのドメイン構造は、GH5−PSL−CBM6−EPR−DZとして概説することができ、ここでGH5はそのグリコシドヒドロラーゼのファミリー5ドメインを表し、PSLはポリセリンリンカーを表し、CBM6は炭水化物結合モジュールのファミリー6ドメインを表し、EPRはグルタミン酸−高プロリン領域を表し、(この解釈に限定されないが)DZは本発明者らによって推定炭水化物結合モジュールとして同定されたC末端ドメインを表す。
【0210】
この構築物をOverlap Extension PCR法を使用して構築し、抗生物質エリスロマイシンに対する耐性を付与するシャトル発現ベクターpSOS952でクローニングして、それによりプラスミドpSOS952−CBM−Xa−Xa’−5Hを生成した。構築物をシークエンシングによって確認し、in vivo及びin vitroでメチル化した。続いて、メチル化ベクターを、クロストリジウム・アセトブチリカム株ATTC824を電気形質転換するのに使用した。
【0211】
クロストリジウム・セルロリティカム由来のスカフォールディンCipCのシグナルペプチドに付随する野生型Cel5Hタンパク質のクロストリジウム・アセトブチリカムによる分泌は0.5mg/L〜0.9mg/Lであった(パラ−ニトロフェニル−セロビオシドに対する培養上清の活性に基づく値)。しかしながら、キャリアドメインと連結したCel5Hタンパク質を含む融合タンパク質をコードする構築物を2つ保有するクロストリジウム・アセトブチリカム株は、それらの成長培地においてセルラーゼ5Hを含有する融合タンパク質を有意により大量に、より具体的には最大6.1mg/L分泌した(パラ−ニトロフェニル−セロビオシドに対する培養上清の活性に基づく値、図3を参照されたい)。これらの結果も、異種(すなわち非クロストリジウム)セルラーゼCel5Hが遺伝子組み換えによってシグナル配列、及びクロストリジウム・セルロリティカム由来のスカフォールディンCipCのCBM、及びクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA由来の1つ又は2つのXモジュールと融合する場合、キメラ酵素がクロストリジウム・アセトブチリカムによって培地中に産生及び分泌されることを示している。
【0212】
実施例4.セルロースに対する本発明による融合タンパク質の活性の証明
分子生物学技法を使用して、実施例2及び実施例3に記載の異なるタンパク質構築物をコードするDNAを増幅し、大腸菌発現ベクターにクローニングした(pET22b(+)、Novagen)。得られたベクターを、大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)を形質転換するのに使用した。全ての場合で、6つのHisコドンを組換えタンパク質のC末端でグラフト化し(grafted)、ニッケル樹脂(Ni−NTA、Qiagen)上でのそれらの精製を容易にした。
【0213】
組換え株をLuria Bertani培地で成長させ、クローニングした遺伝子の発現を、誘導因子としてIPTGを使用して誘発した。組換えタンパク質の合成を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって検証した。培養物を遠心分離し、回収した細胞をフレンチプレスで破壊した。
【0214】
組換えタンパク質をNi−NTA(Qiagen)上に粗抽出物を充填することにより精製し、漸増濃度のイミダゾリウムを使用して対象となるタンパク質を溶出した。FPLC Q−セファロース(Hitrap Q HP樹脂、GE Healthcare)を使用して精製を達成した。
【0215】
精製酵素の活性を、標準的な条件(37℃)を使用してAvicel(微結晶セルロース)上で試験した。結果を図4及び図5bに示す。代替的には、活性をパラ−ニトロフェニル−セロビオシド上で測定し、結果を図5aに示す。
【0216】
実施例5:治療用タンパク質の分泌
これは、本発明に従う、クロストリジウム・アセトブチリカムによる対象となるポリペプチド、特にラット由来の治療用タンパク質インターロイキン2の分泌を示す別の例である。様々な構築物を作製するが、ここでは異なる足場タンパク質から得られたモジュールを使用する。
【0217】
この構築物において、ラット由来のインターロイキン2(IL2)をコードするポリ核酸を、クロストリジウム・セルロリティカムのCipCタンパク質から得られたCBM3aモジュール、並びにクロストリジウム・アセトブチリカムのCipAの第1のXモジュール(Xa)及び第2のXモジュール(Xa’)を含むキャリアドメインをコードするポリ核酸に融合した。構築物はクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチドをさらに含有する。好適なリンカー配列を、異なるモジュールを互いに連結させるのに使用する。
【0218】
この構築物をOverlap Extension PCR法を使用して構築し、抗生物質エリスロマイシンに対する耐性を付与するシャトル発現ベクターpSOS952でクローニングして、それによりプラスミドpSOS952−CBM−Xa−Xa’−IL2を生成した。構築物をシークエンシングによって確認し、in vivoでメチル化した。続いて、メチル化ベクターを、クロストリジウム・アセトブチリカム株ATTC824を電気形質転換するのに使用した。
【0219】
この構築物を保有するクロストリジウム・アセトブチリカム株はそれらの成長培地においてラットインターロイキン2を含有する融合タンパク質を関連量で分泌することが分かる。これらの結果は、ラットインターロイキン2が遺伝子組み換えによってシグナル配列、及びクロストリジウム・セルロリティカム由来のスカフォールディンCipCのCBM、及びクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA由来の2つのXモジュールと融合する場合、キメラ酵素がクロストリジウム・アセトブチリカムによって培地中に産生及び分泌されることも示している。これは、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC由来のCBM及びクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA由来のXモジュールが、哺乳動物由来の治療タンパク質のクロストリジウム・アセトブチリカムによる分泌に対してキャリア特性を有することも示している。ラットIL2を含有する融合タンパク質を、結晶セルロースAvicelのカラム上に外部培地を充填することにより培養上清から精製する。融合タンパク質を精製水(ミリQ水)を使用してAvicelから溶出し、質量分析(mass spectrometry analyses)及びN末端マイクロシークエンシングにより、精製組換えタンパク質の完全性を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシグナルペプチド、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、及び
該キャリアドメインと該対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、
をこの順番で含むポリペプチド配列から成る、融合タンパク質をコードするポリ核酸を含む組換え微生物であって、前記対象となるポリペプチドを分泌する、組換え微生物。
【請求項2】
クロストリジウム綱由来である、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
前記ポリペプチド配列が2つ以上のXモジュールを含む、請求項1又は2に記載の組換え微生物。
【請求項4】
前記セルロソーム足場タンパク質の前記シグナルペプチドが、クロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のシグナルペプチド、又はクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA足場タンパク質のシグナルペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え微生物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの炭水化物結合モジュールが3a型の炭水化物結合モジュール(CBM3a)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換え微生物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのXモジュールがクロストリジウム・セルロリティカムのCipC足場タンパク質のX2モジュール、又はクロストリジウム・アセトブチリカムのCipA足場タンパク質のX2モジュールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え微生物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの対象となるポリペプチドが細胞壁分解酵素である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換え微生物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの対象となるポリペプチドがセルラーゼである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組換え微生物。
【請求項9】
前記酵素がクロストリジウム・セルロリティカムのセルラーゼである、請求項8に記載の組換え微生物。
【請求項10】
前記酵素がCel48F又はCel9Gである、請求項8に記載の組換え微生物。
【請求項11】
前記酵素がサッカロファゴス・デグラダンス2−40株のセルラーゼCel5Hである、請求項8に記載の組換え微生物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの対象となるポリペプチドが治療用酵素、サイトカイン及び抗体を含む群から選択される治療用タンパク質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換え微生物。
【請求項13】
前記治療用タンパク質がIL−2である、請求項12に記載の組換え微生物。
【請求項14】
前記微生物がクロストリジウム・アセトブチリカム及びクロストリジウム・ベイジェリンキを含む群から選択されるクロストリジウム株由来である、請求項2に記載の組換え微生物。
【請求項15】
組換え微生物によって、少なくとも1つの対象となる異種ポリペプチド又は同種ポリペプチドを産生及び分泌させる方法であって、
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、
該キャリアドメインと該対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、及び
少なくとも1つのシグナルペプチド、
を含むポリペプチド配列から成る融合タンパク質をコードするポリ核酸を、コードされた融合タンパク質の発現を引き起こすのに効果的な条件下で前記微生物に導入することを含み、該コードされた融合タンパク質を該組換え微生物によって前記組換え微生物の環境に分泌させる、方法。
【請求項16】
前記組換え微生物がクロストリジウム綱の微生物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
セルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つのXモジュールと融合したセルロソーム足場タンパク質の少なくとも1つの炭水化物結合モジュール(CBM)を含むキャリアドメイン、
少なくとも1つの対象となるポリペプチド、
該キャリアドメインと該対象となるポリペプチドとを連結するための少なくとも1つのペプチドリンカー、及び
少なくとも1つのシグナルペプチド、
を含むポリペプチド配列から成る融合タンパク質をコードするポリ核酸。
【請求項18】
前記ポリペプチド配列が2つ以上のXモジュールを含む、請求項17に記載のポリ核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2011−529336(P2011−529336A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520518(P2011−520518)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059875
【国際公開番号】WO2010/012805
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511026946)
【出願人】(309007575)サントル・ナシオナル・ドウ・ラ・ルシエルシユ・シアンテイフイク(セー・エヌ・エール・エス) (11)
【出願人】(503285612)ユニヴェルシテ・ドゥ・ラ・メディテラネ (15)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA MEDITERRANEE
【出願人】(506243312)ユニヴェルシテ ドゥ プロヴァンス (4)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE PROVENCE
【出願人】(511026762)エル’アンスティテュ ナシオナル デ シャンス アプリケ(イーエヌエスアー) (1)
【Fターム(参考)】