ポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグ
ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドを含むポリマー複合体が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本明細書は、参照により本開示に含まれる2003年4月13日出願の米国仮特許出願第60/462,070号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は治療薬として有用なポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグに関する。そのようなプロドラッグを用いる組成物および方法もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
多細胞生物において身体的状態の大部分は、大半の疾患状態を含めて、タンパク質によってもたらされることがよく知られている。そのようなタンパク質は、直接にまたは酵素的なまたは他の機能を通じて作用し、動物またはヒトにおいて多数の疾患および調節機能に主成分として寄与する。疾患状態については、古典的な治療薬は一般的に、疾患を引き起こすかまたは疾患を増強するタンパク質の機能を抑える目的で、そのようなタンパク質との相互作用に注目してきた。より新しい治療手法では、そのようなタンパク質の実際の産生の調節が望まれる。タンパク質の産生に干渉することによって、最小の副作用で最大の治療効果を得ることができる。したがって、望ましくないタンパク質生成に繋がる遺伝子発現を干渉しまたは遺伝子発現を調節することが、そのような治療手法の一般的目的である。
【0004】
特定の遺伝子発現を阻害するための1つの方法は、オリゴヌクレオチド、特に特定の標的メッセンジャーRNA(mRNA)配列と相補的であるオリゴヌクレオチドを用いる。一般的に、遺伝子転写の産物(例えば、mRNA)と相補的である核酸配列は、「アンチセンス」と表され、および転写産物と同一の配列を有するかまたは転写産物として 作成された核酸配列は、「センス」と表される。例えば、非特許文献1を参照。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子の発現を調節するような方法で、遺伝子の全部または一部とハイブリダイズするように選択することができる。転写因子は転写の調節中に2本鎖DNAと相互作用する。オリゴヌクレオチドは、転写因子の競合阻害剤となってその作用を調節することができる。いくつかの近年の報告がそのような相互作用を説明している(非特許文献2;および非特許文献3を参照)。
【0005】
不必要な遺伝子発現をダウンレギュレートするために分子的戦略が開発されている。近年、オリゴヌクレオチド化合物の使用が、ウイルス感染症、炎症性および遺伝性疾患および注目すべきことに、癌のような疾患に対する治療の有望な方法に発展している。アンチセンスDNAは最初に、天然に存在する核酸に対する相補オリゴデオキシヌクレオチドのアルキル化として考えられた(非特許文献4)。ZamecnikおよびStephensonは、治療目的のための合成アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を最初に提案した。(非特許文献5;非特許文献6)。彼らは、ラウス肉腫ウイルスのRNAに相補的なオリゴヌクレオチド13量体の使用が、細胞培養中のウイルスの増殖を阻害したことを報告した。それ以来、例えば、水疱性口内炎ウイルス(非特許文献7)、単純ヘルペスウイルス (非特許文献8)、およびインフルエンザウイルス(非特許文献9)のように、ウイルス増殖のアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害のin vitroでの効果を明らかにする、多数の他の研究が出版されている。
【0006】
オリゴヌクレオチドはまた、中でも、診断検査、例えばPCR技術および他の実験手順におけるプライマーのような研究試薬に用途が見出されている。オリゴヌクレオチドは、目的の用途に適合するように調整された特性を有するように特注で合成することができる。このように、多数の化学修飾がオリゴマー性化合物へ導入されており、診断における、研究試薬として、および治療薬としてのその有用性が高められる。
【0007】
オリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドは治療薬として有望であるが、それらはヌクレアーゼに対して非常に感受性が高く、および標的細胞への進入の前後に速やかに分解される可能性があり、そのため、修飾されていないアンチセンスオリゴヌクレオチドはin vivo系での使用に適さない。分解を担う酵素は大部分の組織で見出されるため、その化合物を安定化しおよびこの問題を改善するための試みとして、オリゴヌクレオチドへの修飾が行われている。最も広く試されている修飾は、オリゴヌクレオチド化合物の骨格部分に行われている。一般的に非特許文献10およびその中の参考文献を参照。 作成された多数の異なる骨格の中で、ホスホロチオエートだけが顕著なアンチセンス活性を示した。例えば、非特許文献11を参照。骨格への硫黄原子の導入は酵素分解速度を遅らせる一方、それはまた同時に毒性を高める。硫黄原子を付加することの別の短所は、それが骨格をアキラルからキラルに変え、および結果として2n個のジアステレオマーを生じることである。これは別の副作用を生じ得る。現在のアンチセンスオリゴヌクレオチドのさらに別の短所は、それらがリン酸基に負電荷を有する可能性があり、そのことが親油性の細胞膜を通過するその能力を妨げる点である。その化合物が細胞外により長く留まるほど、それはより分解され、結果として標的に到達する活性な化合物はより少なくなる。現在のアンチセンス化合物の別の短所は、オリゴヌクレオチドが二次および高次溶液構造を形成しやすい点である。これらの構造が一旦形成されると、それらはさまざまな酵素、タンパク質、RNA、およびDNAの結合のための標的となる。このことは、非特異的副作用、およびmRNAに結合する活性化合物の量の減少を結果として生じる。オリゴヌクレオチド療法を改良するための他の試みは、連結部分およびポリエチレングリコールを加えることを含んでいる。例えば、非特許文献12、および特許文献1を参照。これらの例の両方で、修飾は、オリゴヌクレオチドを分解に対して安定化しおよび細胞透過性を高めるための試みとして、本質的に永続的である連結部分の使用を含む。しかし、これらの努力の両方は、有効性を提供することができない。
【特許文献1】米国特許第4,904,582号明細書
【非特許文献1】Crooke,1992,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol,32: 329-376
【非特許文献2】Bielinska,A.,et al.,1990,Science,250: 997-1000
【非特許文献3】Wu,H.,et al.,1990,Gene 89: 203-209
【非特許文献4】Belikova,et al.,Tetrahedron Lett.37: 3557-3562,1967
【非特許文献5】Zamecnik & Stephenson,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75: 285-289
【非特許文献6】Zamecnik & Stephenson,1978,Proc.Natl.Acatl.Sci.U.S.A.,75: 280-284
【非特許文献7】Leonetti et al.,1988,Gene,72: 323
【非特許文献8】Smith et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83: 2787
【非特許文献9】Seroa ;et al.,1987,Nucleic Acids Res.15: 9909
【非特許文献10】Uhlmann and Peymann,1990,Chemical Reviews 90,545-561 pages
【非特許文献11】Padmapriya and Agrawal,1993,Bioorg.& Med.Chenu.Lett.3 761
【非特許文献12】Kawaguchi,et al.,Stability,Specific Binding Activity,and Plasma Concentration in Mice of an Oligodeoxynucleotide Modified at 5'-Terminal with Poly (Ethylene glycol),Biol.Pharm.Bull.,18 (3) 474- 476 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の方法の不適当さのため、安定性およびヌクレアーゼ分解への耐性を改善し、および、毒性を低下させおよびオリゴヌクレオチド化合物のmRNAへの結合親和性を高める必要が存在する。現行のオリゴヌクレオチド両方は高価である。これは主に分解の問題のためである。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を分解から守り、高次構造の生成を防ぎ、および同時に、活性なアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物の十分な量を標的へ送ることの真の必要性がある。本発明はそのような改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、化学式(I)のオリゴヌクレオチドプロドラッグが提供される:
【化1】
【0010】
ここで、R1およびR2は独立してHまたはポリマー残基であり;
L1およびL4は独立して選択された放出可能な連結部分であり;
L2およびL3は独立して選択されたスペーサー基であり;
X1はヌクレオチド残基またはオリゴヌクレオチド残基であり;
m、n、oおよびpは独立して0または正の整数であり、ただし(o+n)または(p+m)≧2のいずれかである。
【0011】
本発明の別の一態様は、2つのオリゴヌクレオチドが、与えられたポリマーデリバリー系へ結合するように、R1および/またはR2が本明細書に記載のαおよびω末端連結基の両方を含むポリマー残基である際に生じる二官能性化合物を含む。本実施形態の例は、例えば3'−ビスオリゴヌクレオチド複合体または5'−ビスオリゴヌクレオチド複合体のように、それぞれの3'末端基、5'末端基を介してポリマー系に結合したオリゴヌクレオチド、または、第1のオリゴヌクレオチドを、3'末端を介して第2のオリゴヌクレオチドの5'末端へ結合することによって生じた複合体を含む。そのようなポリマー複合体の例を化学式(i)、(ii)、(iii)および(iv)として下記に図解する:
【化2】
【0012】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0013】
本発明の目的のためには、「残基」の語は、生物学的に活性な化合物すなわちオリゴヌクレオチド、より具体的にはアンチセンスオリゴヌクレオチドの、プロドラッグキャリヤーが付加される置換反応を受けた後に残る部分を意味すると解される。
【0014】
本発明の目的のためには、「ポリマー残基」または「PEG残基」の語はそれぞれ、ポリマーまたはPEGの、修飾オリゴヌクレオチド化合物との反応を受けた後に残る部分を意味すると解される。
【0015】
本発明の目的のためには、「アルキル」の語は、直鎖、分枝鎖、置換、例えばハロ−、アルコキシ−、ニトロ−、C1-12アルキル、C3-8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを含むと解される。
【0016】
本発明の目的のためには、「置換」の語は、官能基または化合物中に含まれる1個以上の原子に1個以上の別の原子を加えるか、または、その1個以上の原子を別の1個以上の原子で交換することを含むと解される。
【0017】
本発明の目的のためには、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルを含み;置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルを含み;置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルを含み;置換シクロアルキルは4−クロロシクロヘキシルといった部分を含み;アリールはナフチルといった部分を含み;置換アリールは3−ブロモ−フェニルといった部分を含み;アラルキルはトルイルといった部分を含み;ヘテロアルキルはエチルチオフェンといった部分を含み;置換ヘテロアルキルは3−メトキシ−チオフェンといった部分を含み;アルコキシはメトキシといった部分を含み;およびフェノキシは3−ニトロフェノキシといった部分を含む。ハロ−は、フルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むと解される。
【0018】
本発明の目的のための「十分量」または「有効量」という語は、当業者に理解される通りの治療効果を達成する量を意味するとする。
【0019】
本発明の主な長所の一部は、安定性およびヌクレアーゼ分解に対する耐性の上昇、溶解度の上昇、細胞透過性の上昇および毒性の低下を示す、新規のポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグを含む。
【0020】
本発明の化合物の別の長所は、さまざまなポリマープロドラッグ基本骨格が修飾オリゴヌクレオチド化合物と放出可能に結合している点である。この長所は、ポリマー残基と付加されたオリゴヌクレオチドとの間に、プロドラッグの加水分解の速度に影響し得るさまざまな部分を含むように操作することができる医薬複合体を当業者に設計可能にする。当業者はこのように、プロドラッグの加水分解の速度の調節を可能にする置換基を含めることができる。
【0021】
癌または悪性腫瘍の治療の方法においてといった、本化合物を 作成および使用する方法、および本明細書に記載の複合体もまた提供される。また、本発明のポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグが任意の他の抗癌剤と共に(同時におよび/または連続して)投与されることもまた考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
したがって、本発明は、診断および分析試薬として、in vitroおよびin vivoの両方での研究および調査手法として、および治療薬としての用途を含む多数の実際的用途を有する、有用なポリマー結合オリゴヌクレオチドプロドラッグを提供する。本発明の範囲をより完全に理解するために、下記の用語が定義される。当業者は、「核酸」または「ヌクレオチド」の語はデオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)、特に明記しない限り1本鎖または2本鎖、およびその任意の化学修飾に当てはまることを理解する。「オリゴヌクレオチド」は一般的に、相対的に短いポリヌクレオチド、例えば、約2ないし約200ヌクレオチドの大きさ、またはより好ましくは長さ約10ないし約30ヌクレオチドの範囲である。本発明に記載のオリゴヌクレオチドは、一般的に合成核酸、および1本鎖である。「ポリヌクレオチド」および「ポリ核酸」の語はまた本明細書では同義に用いられる。
【0023】
本発明のオリゴヌクレオチドへの修飾は、必要に応じて、例えば、望ましいポリマーへのオリゴヌクレオチドの共有結合、および/または、付加的電荷、分極率、水素結合、静電的相互作用、および機能をオリゴヌクレオチドへ組み込む機能部分の付加または置換を可能にする官能基または部分を有する選択されたヌクレオチドへの付加またはその置換を含む。そのような修飾は、2'位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨードウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、イソ塩基のイソシチジンおよびイソグアニジンといった塩基対組み合わせ、および相同組み合わせを含むがそれらに限定されない。オリゴヌクレオチド修飾はまた、キャッピングといった3'および5'修飾を含み得る。
【0024】
ここで用いられる「アンチセンス」の語は、遺伝子産物をコードするかまたは対照配列をコードする特定のDNAまたはRNA配列と相補的であるヌクレオチド配列をいう。「アンチセンス鎖」の語は、「センス」鎖と相補的である核酸鎖に関して用いられる。細胞代謝の通常の作用では、DNA分子のセンス鎖は、ポリペプチドおよび/または他の遺伝子産物をコードする鎖である。センス鎖はメッセンジャーRNA(「mRNA」)転写産物(アンチセンス鎖)の合成のための鋳型として作用し、次に転写産物は任意のコードされた遺伝子産物の産生を指示する。アンチセンス核酸分子は、目的の遺伝子を逆方向でウイルスプロモーターにライゲーションして相補鎖の合成を可能にすることによる合成を含む、本分野で公知である任意の方法によって 作成することができる。細胞へ一旦導入されると、この転写された鎖は細胞によって産生された天然の配列と組み合わされて2重鎖を形成する。これらの2重鎖はその結果、以降の転写または翻訳のどちらかを遮断する。この方法で、突然変異表現型を生じることができる。「ネガティブ」または(−)の表記はまた本分野で公知であってアンチセンス鎖をいい、および「ポジティブ」または(+)はまた本分野で公知であってセンス鎖をいう。
【0025】
例えば、1または複数の細胞におけるmRNA転写産物の発現をダウンレギュレートすることを意図する場合は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが細胞に導入される。細胞へ一旦導入されると、アンチセンスオリゴヌクレオチドは対応するmRNA配列とWatson−Crick結合によってハイブリダイズし、ヘテロ2重鎖を形成する。2重鎖が一旦形成されると、結合したmRNAの配列によってコードされるタンパク質の翻訳が阻害される。このように、アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、一般的にタグまたは標識と結合した、プローブ例えばハイブリダイゼーションプローブとして本分野で用いられ、および研究および治療目的の両方で特定の細胞産物または遺伝子調節配列の発現の正確なダウンレギュレーションを与えるために用いられる。
【0026】
本発明の目的のためには、単数形または複数形の使用は、言及される物または対象の数を限定しないことが意図される。したがって、明示的に記載されない限り、細胞、ポリマーまたは医薬をいうための単数形の使用は、単一の細胞が処理され、単一の分子が調製されまたは使用され、および/または単一の医薬が使用されることを含意せず、および、複数形の使用は、言及された単一の物の使用を除外しない。
【0027】
本発明の目的のためには、「残基」の語は、利用可能な水酸基またはアミノ基の修飾によってプロドラッグキャリヤー部分が付加されていて例えばエステルまたはアミド基をそれぞれ生じる反応を受けた後に残る、オリゴヌクレオチドといった、生物学的に活性な化合物の部分を意味すると解される。
【0028】
A.オリゴヌクレオチドの説明
本発明の性質の1つは、改良されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドポリマー複合体を提供する能力である。本明細書に記載のポリマー輸送系は、単一の種類のオリゴヌクレオチドに限定されず、代わりに、さまざまな部分と作用するように設計されており、ポリマー輸送系は1つ以上のヌクレオチドの3'または5'末端の、通常はPO4またはSO4基へ結合することができるとされている。ヌクレオチド配列は本明細書では従来の命名法を用いて表され、配列は左から右へ、5'末端から3'末端へ(5'−→3'−)進んで読まれる。
【0029】
X1-3は、本発明の目的のためにはオリゴデオキシヌクレオチド残基を含む、同一のまたは異なるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基を表す。より好ましくは、X1-3は独立して選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチド残基またはアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド残基である。
【0030】
単独でまたはオリゴヌクレオチド(10−1,000ヌクレオチド)の一部として用いることができる、可能なヌクレオチドの非限定的な一覧は下記を含む:
【化3】
【0031】
ここで、MはOまたはSであり;
B1およびB2はA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)、U(ウラシル)ならびに下記に示すものおよび当業者に公知のものを含む修飾塩基より成る群から独立して選択され;
R100およびR101は、H、R'がHであるOR'、C1-6アルキル、置換アルキル、ニトロ、ハロ、アリール、などより成る群から独立して選択される。
【0032】
本発明の方法において有用であるオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチドの一部は、下記を含むがそれらに限定されない:
天然のホスホジエステル骨格またはホスホロチオエート骨格または任意の他の修飾された骨格アナログを有する、オリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチド;
LNA(ロックされた核酸);
PNA(ペプチド骨格を有する核酸);
トリシクロDNA;
おとりODN(2本鎖オリゴヌクレオチド);
RNA(触媒RNA配列);
リボザイム;
シュピーゲルマー(L−立体配座オリゴヌクレオチド);
CpGオリゴマー、など例えば下記の文献(それらの内容は参照により本開示に含まれる)に開示されるもの:
Tides 2002,Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences,May 6-8,2002,Las Vegas,NV;および
Oligonucleotide & Peptide Technologies,18th & 19th November 2003,Hamburg,Germany。
【0033】
本発明に記載のオリゴヌクレオチドはまた、 下記の表1に列記されるものを含む、本分野で公知である任意の適当なヌクレオチドアナログおよび誘導体を含む。
【表1】
【0034】
好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、腫瘍細胞の抗癌剤に対する耐性に関与するタンパク質をダウンレギュレートするものである。例えば、タンパク質BCL−2はミトコンドリアからのチトクロムCおよびアポトーシス開始因子の放出を阻害し、およびそれによってアポトーシスの発生を妨げる。高レベルのBCL−2を有する癌細胞は、したがって、化学療法または放射線療法の両方に対して非常に抵抗性である。参照により本開示に含まれる米国特許第6,414,134号明細書は、例えば、前立腺癌細胞、骨髄腫細胞および他の腫瘍細胞を含む、いくつかの腫瘍細胞における抗癌療法に対する耐性に関連するタンパク質Bcl−2をダウンレギュレートするアンチセンスオリゴヌクレオチドを記載する。上記の米国特許によると、bcl−2遺伝子は、細胞分裂を加速することによってではなく、腫瘍細胞生存を延長することによって癌の病因に寄与すると考えられている。米国特許第6,414,134号明細書は一般的に長さ17から35塩基の、bcl−2mRNAと相補的であり、およびTACCGCGTGCGACCCTC(配列番号5)の配列を有する核酸分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを記載する。これらは好ましくは少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む。
【0035】
癌治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドによるダウンレギュレーションの標的としてさまざまな企業によって考えられている、本分野で公知である他の細胞タンパク質を下記の表に要約する。
【表2】
【0036】
bcl−2発現といった、癌細胞生存に関係するタンパク質の発現のダウンレギュレートにおける使用に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約2ないし200ヌクレオチドコドン;より好ましくは10ないし40コドン;および非常に好ましくは約17から20コドンであるオリゴヌクレオチドを含む。そのオリゴヌクレオチドは、翻訳開始部位、ドナーおよびスプライシング部位、または輸送または分解のための部位といった、bcl−2のプレmRNAに沿った戦略的な部位に相補的であるオリゴヌクレオチドから好ましくは選択される。
【0037】
そのような戦略的な部位で翻訳を阻害することは、機能するbcl−2遺伝子産物の生成を妨げる。しかし、bcl−2プレmRNAまたは細胞増殖を阻害するmRNAと相補的または実質的に相補的であるオリゴヌクレオチドを含む、アンチコードオリゴマーの任意の組み合わせまたは部分組み合わせは、本発明における用途に適していることに注意する。例えば、bcl−2RNAの連続または非連続配列の配列部分と相補的であるオリゴデオキシヌクレオチドは細胞増殖を阻害する可能性があり、およびしたがって本発明の方法における用途に適している。
【0038】
bcl−2発現をダウンレギュレートするのに適したオリゴヌクレオチドはまた、bcl−2mRNA上の戦略部位または他の部位に隣接する配列部分と相補的または実質的に相補的であるオリゴヌクレオチドを含む。隣接配列部分は好ましくはbcl−2mRNA上の上述の部位の上流または下流の、約2ないし約100塩基の範囲にわたる。
【0039】
これらの部位は好ましくは長さ約5ないし約20コドンの範囲にわたる。また、オリゴヌクレオチドは、他の遺伝子に由来するプレmRNAまたはmRNAについてのオリゴヌクレオチドのホモロジーを最小化するため、他の遺伝子のプレmRNAまたはmRNAには一般的に見出されないプレmRNAまたはmRNAの配列部分と相補的であることが好ましい。
【0040】
bcl−2発現をダウンレギュレートするために好ましいいくつかの好ましいアンチセンス、または相補、オリゴヌクレオチドを下記の通り表3に列記する。
【表3】
【0041】
上記の表3に列記されたものと相対的に、より多数またはより少数の置換ヌクレオチドを含む、および/またはbcl−2mRNA鎖に沿って3'または5'方向のどちらかへより長く伸びるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができることが理解される。
【0042】
好ましくは、本発明のプロドラックに用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Genasense(別名オブリマーセンナトリウム、Genta Inc.(Berkeley Heights,NJ)製)が有するのと同一または実質的に同様のヌクレオチド配列を有する。Genasenseは18量体ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドTCTCCCAGCGTGCGCCAT(配列番号1)であり、ヒトbcl−2mRNAの開始配列の最初の6個のコドンと相補的である(ヒトbcl−2mRNAは本分野で公知であり、および例えば、参照により本開示に含まれる米国特許第6,414,134号明細書の配列番号19として記載されている)。米国食品医薬品局(FDA)はGenasenseを2000年8月にオーファンドラッグに指定しており、および癌治療におけるGenasenseについて新薬承認申請(NDA)を承認している。そのNDAは、以前に化学療法を受けたことがない進行メラノーマの患者の治療のために、Genasenseをダカルバジンと併用して投与することを提案している。加えて、FDAはその申請を優先審査品目に指定しており、それは2004年6月8日以前の決定を目標とする。初期臨床試験での前立腺癌の併用療法におけるGenasenseの活性を確認している、参照により本開示に含まれるChi et al.,2001,Clinical Cancer Research Vol.7,3920-3927も参照。本発明のプロドラッグは、天然(未修飾)18量体について認められるのと同じ有用性を持つ。
【0043】
Genasenseは、Bcl−2タンパク質の産生をダウンレギュレートし、および腫瘍細胞の治療への感受性を高め、および最終的に、細胞死を引き起こすことが示されている。いくつかの研究は、抗癌剤と併用したGenasenseを用いたいくつかの癌の治療において有望な結果を報告している。黒色腫患者におけるダカルバジン併用Genasenseの第I/II相治験は有望な活性を示しており、および第III相多施設治験が進行中である。加えて、ホルモン治療抵抗性前立腺癌患者においてミトザントロンと併用して用いられるGenasenseは有望な結果を示している。Kim et al.,2001(同上)。
【0044】
Genasenseといったアンチセンスオリゴヌクレオチドの、ポリマーへの結合は、本発明の好ましい一実施形態の例となる。
【0045】
別の一実施形態では、追加の適当なアンチセンスオリゴヌクレオチドは:
T−C−T−C−C−C−A−G−C−G−T−G−C−G−C−C−A−T;(化合物13−配列番号1)
T−C−T−C−C−C−A−G−C−A−T−G−T−G−C−C−A−T;(化合物36−配列番号2)
A−T−C−C−T−A−A−G−C−G−T−G−C−G−C−C−T−T;(化合物37−配列番号3)および
T−C−T−C−C−C−A−G−X−G−T−G−X−G−C−C−A−T、(化合物38−配列番号4)
および実施例に見出されるものを含む。
【0046】
B.化学式(I)
本発明の好ましい一実施形態では、化学式(I)のオリゴヌクレオチドプロドラッグが提供される:
【化4】
【0047】
ここで、R1およびR2は独立してHまたはポリマー残基であり;
L1およびL4は独立して選択された放出可能な連結部分であり;
L2およびL3は独立して選択されたスペーサー基であり;
X1はヌクレオチド残基またはオリゴヌクレオチド残基であり;
m、n、oおよびpは独立して0または正の整数であり、ただし(o+n)または(p+m)≧2のいずれかである。
【0048】
本発明のポリマー輸送系は、好ましくはポリマー残基であり、Aとして表されるキャッピング基を必要に応じて有する、R1およびR2のうち少なくとも1つを部分的に基礎とする。適当なキャッピング基は、例えば、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル、および下記のようなオリゴヌクレオチドを含み
【化5】
【0049】
ここで、X2およびX3はX1と同一であるかまたは別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である。
【0050】
好ましいキャッピング基(II)および(III)は、下記の化学式(i)、(ii)、(iii)および(iv)の組成物が生成されるのを可能にする:
【化6】
【0051】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0052】
本発明の別の好ましい一実施形態では、L4は下記の化学式のうちから選択された放出可能な連結部分である:
【化7】
【0053】
ここで、Y1-25はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、およびR27-41は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
Arは多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環基を形成する部分であり;
L5-12は独立して二官能性スペーサーであり;
Zは、標的細胞中へ能動的に輸送される部分、疎水性部分、二官能性連結部分およびその組み合わせから選択され;
c、h、k、l、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は独立して選択された正の整数であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または正の整数のどちらかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【0054】
別の好ましい一実施形態では、L1は下記の化学式のうちから選択された放出可能な連結部分である:
【化8】
【0055】
ここで、Y1’-25’はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;および
L5’-12’は独立して二官能性スペーサーである。
【0056】
本発明の一部の好ましい一実施形態では、L5-12は独立して、下記のうちから選択された二官能性スペーサーであり:
【化9】
【0057】
さらに、L5’-12’は独立して、下記のうちから選択された二官能性スペーサーである:
【化10】
【0058】
ここで、R55-R59およびR55'-59'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され、および
R60およびR60'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンより成る群から独立して選択され;および
s'およびt'は正の整数である。
【0059】
本発明の別の好ましい一実施形態では、L2およびL3は、独立して約1から約60個の炭素原子および約1ないし約10個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。好ましくは、L2およびL3は、独立して約2から約10個の炭素原子および約1ないし約6個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。非常に好ましくは、L3は下記のうちから選択される:
【化11】
【0060】
さらに、最も好ましくは、L2は下記のうちから選択される:
【化12】
【0061】
ここで、QおよびQ'はO、SまたはNHから独立して選択され;
R50-53およびR50'-53'は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
R54およびR54'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンより成る群から独立して選択され;および
q'およびr'はそれぞれ正の整数である。
【0062】
本発明の化学式を構成する他の変数に関しては、下記が好ましい:
Y1-25およびY1'-25'はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、R27-41、ならびにR6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アラルキル、およびC1-6ヘテロアルキルより成る群から独立して選択され;
c、h、k、1、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は1であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または1のいずれかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【0063】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態では、化学式(Ia)の化合物が提供される:
【化13】
【0064】
ここで、L2はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基であり;
u'は正の整数であり;および
Tは、参照によりそれぞれ本開示に含まれる、同一出願人による国際公開第02/065988号パンフレットおよび国際公開第02/066066号パンフレットに記載された化合物のうちから好ましくは選択される分枝鎖ポリマーである。これらの一般化学式の中で、下記が好ましい:
【化14−1】
【化14−2】
ここで、D'は下記のうちの1つであり:
【化15】
【0065】
ここで、R61は、R61が両端に置換基を有するのが示される場合はポリマーは二官能性であり得るという了解の下で、R1について定義されたようなポリマー残基であり;および他のすべての変数は上記の通りである。
【0066】
例示の目的で、化学式(Ia)の非限定的な化合物は下記の通りである:
【化16】
【0067】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0068】
化学式(Ia)の別の一態様は、少なくとも4個のオリゴヌクレオチドが送られるようにポリマー残基(R61)がαおよびω末端連結基の両方を含む場合に生じる二官能性化合物を含む。
【0069】
そのようなポリマー複合体の例は下記に化学式(vi)および(vii)として例示される:
【化17】
【0070】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0071】
本発明の別の好ましい一実施形態では、L2およびL3は、独立して約1から約60個の炭素原子および約1ないし約10個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。好ましくは、L2およびL3は、独立して約2から約10個の炭素原子および約1ないし約6個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。非常に好ましくは、L3は下記のうちから選択される:
【化18】
【0072】
さらに、最も好ましくは、L2は下記のうちから選択される:
【化19】
【0073】
ここで、QおよびQ'はO、SまたはNHから独立して選択され;
R50-53およびR50'-53'は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
R54およびR54'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンより成る群から独立して選択され;および
q'およびr'はそれぞれ正の整数である。
【0074】
本発明の化学式を構成する他の変数に関しては、下記が好ましい:
Y1-25およびY1'-25'はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、R27-41、ならびにR6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アラルキル、およびC1-6ヘテロアルキルより成る群から独立して選択され;
c、h、k、1、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は1であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または1のいずれかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【0075】
C.Ar部分の説明
本発明の一部の態様では、Ar部分が化学式(I)に含まれる場合に多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環基を形成する部分であることがわかる。重要な性質は、そのAr部分が本質的に芳香族である点である。一般的に、芳香族であるためには、パイ電子は環分子の平面の上および下の両方の「電子雲」の中で共有されなければならない。さらに、パイ電子の数はHuckel則を満たさなければならない(4n+2)。無数の部分が化学式(I)についての部分の芳香族条件を満たしおよびしたがってここでの使用に適することを当業者は理解する。
【0076】
一部の特に好ましい芳香族基は下記を含む:
【化20】
【0077】
ここで、R62-67は、R6を定義するのと同一の群から独立して選択される。
【0078】
他の好ましい芳香族炭化水素部分は、限定はされないが下記のものを含む:
【化21】
【0079】
ここで、EおよびE'は独立してCR68またはNR69であり;およびJはO、SまたはNR70であって、R68-70はR6を定義するのと同一の群から選択されるかまたはシアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、置換アシルまたはカルボキシアルキルである。五員環および六員環の異性体もまた考えられており、および、ベンゾおよびジベンゾ系およびそれらの関連する同族体もまた考えられている。また、Huckel則が満たされる限り芳香族環は必要に応じてO、S、NR9、などといったヘテロ原子で置換され得ることが当業者に理解される。さらに、芳香族またはヘテロ環構造は必要に応じてハロゲンおよび/または側鎖で置換でき、それらの語は本分野で通常理解されている。
【0080】
D.ポリアルキレンオキサイド
化学式(I)を参照すると、R1およびR2はポリアルキレンオキサイドといったポリマー部分であることがわかる。そのようなポリマーの適当な例は、実質的に非抗原性であるポリエチレングリコールを含む。同一出願人による米国特許第5,643,575号明細書、第5,919,455号明細書および第6,113,906号明細書に記載されたもののようなポリプロピレングリコールもまた有用である。本発明の方法で有用な他のPEGは、Shearwater Polymers,Inc.のカタログ『ポリエチレングリコールおよび誘導体2001』に記載されている。それぞれの開示は参照により本開示に含まれる。R1およびR2は好ましくはPEG誘導体、例えば−O−(CH2CH2O)x−である。この態様では、R1-2は下記のうちから独立して選択される:
【化22】
【0081】
ここで、n'は重量平均分子量が少なくとも約2,000Daから約136,000Daとなるように選択された重合度であり;
R48は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から選択され;および
Jはメチル基のようなキャッピング基、または二官能性ポリマーを提供することを可能にする相補連結基である。
【0082】
PAOおよびPEGは実質的に重量平均分子量が異なり得るが、本発明の大部分の態様で、好ましくは、R1およびR2は独立して約2,000Daないし約136,000Daの重量平均分子量を有する。より好ましくは、R1およびR2は独立して約3,000Daないし約100,000Daの重量平均分子量を有し、約5,000Daないし約40,000Daの重量平均分子量が非常に好ましい
本開示に含まれるポリマー物質は好ましくは室温にて水溶性である。そのようなポリマーの非限定的な一覧は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールといったポリアルキレンオキサイドホモポリマー、その共重合体およびそのブロック共重合体を含み、ただしブロック共重合体の水への溶解度が維持されることを条件とする。
【0083】
E オリゴヌクレオチドポリマー複合体の合成
概して、プロドラッグは以下の工程によって調製される:
a)下記化学式の化合物:
R2−L4−脱離基
を、下記化学式の化合物:
H−L3−X1
と、下記の化学式のプロドラッグを生じるのに十分な条件下で反応させる:
R2−L4−L3−X1
ここで、
R2はポリマー残基であり;
L4は放出可能な連結部分であり;
L3はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である。
【0084】
本発明のこの態様では、結合した放出可能なリンカーを既に含む活性化ポリマーを用いるのが好ましい。適当な組み合わせの非限定的な一覧は、それぞれの内容が参照により本開示に含まれる、同一出願人による米国特許第6,624,142号明細書、第6,303,569号明細書、第5,965,119号明細書、第6,566,506号明細書、第5,965,119号明細書、第6,303,569号明細書、第6,624,142号明細書、および第6,180,095号明細書に記載された放出可能なPEGを基礎とする輸送系を含む。
【0085】
具体的な例は下記を含むがそれらに限定されず、もちろんポリマー部分の分子量は当業者の必要に応じて変え得ることが理解される:
【化23】
【0086】
次に、上記のポリマー放出可能なリンカーを、修飾オリゴマーと、複合体が形成されるのを可能にするのに十分な条件下で反応させる。
【0087】
上記のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのいずれかは、ホスホロアミダイト法といった常法を用いて目的のアルキル−アミノまたは他の基を末端リン酸へ付加して、5'または3'末端リン酸またはホスホロチオエートの1つで官能基化することができる。例えば、ブロック化(Fmoc)アミノアルキルが付加され、結果として得られる化合物が酸化され、脱保護されおよび精製される。
【0088】
具体的なオリゴヌクレオチドポリマー複合体またはプロドラッグの合成を実施例に示す。あるいは、プロドラッグは以下の工程によって調製される:
1)活性化PEGポリマーを二官能性の放出可能な連結基と、第1の中間体を生じる適当な条件下で反応させ;
2)工程1)の中間体を脱保護し、さらにNHSエステルといった適当な活性化基を用いて活性化する;さらに
3)工程3)の活性化された中間体をPBS緩衝系中で修飾オリゴヌクレオチドと反応させ、目的のオリゴヌクレオチドポリマープロドラッグを得る。
【0089】
活性化ポリマーの非限定的な一覧は、ビス−スクシンイミジルカルボナート活性化PEG(SC−PEG)、ビス−チアゾリジン−2−チオン活性化PEG(T−PEG)、Nヒドロキシフタルアミジルカルボナート活性化PEG(BSC−PEG)、(参照により本開示に含まれる、同一出願人による米国特許出願第09/823,296号明細書を参照)、スクシンイミジルスクシネート活性化PEG(SS−PEG)および、例えば、前出の2001Shearwaterカタログに見られるもののようなモノ活性化PEGを含む。
【0090】
活性化PEGポリマーの、保護された二官能性の放出可能な連結基への結合は、カップリング剤の存在下で実施することができる。適当なカップリング剤の非限定的な一覧は、例えばSigma−Aldrich Chemicalといった販売元から入手可能であるかまたは公知の方法を用いて合成される、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド (DIPC)、任意の適当な ジアルキル カルボジイミド、2−ハロ−1−アルキル−ピリジニウムハロゲン化物 (向山 試薬)、1− (3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル カルボジイミド (EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物 (PPACA) および フェニルジクロロリン酸などを含む。
【0091】
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(CH3CN)、塩化メチレン(DCM)、クロロホルム(CHCl3)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはその混合物といった不活性溶媒中で、および0℃ないし最大約22℃(室温)の温度にて置換基を反応させる。
【0092】
修飾オリゴヌクレオチドのPEG−放出可能リンカーへの結合は、約7.4−8.5のpH範囲にあるPBS緩衝系中で実施することができる。当業者はもちろん、本開示に記載されるプロドラッグの合成はまた、通常見られる実験条件、すなわち実施例に記載されるような溶媒、温度、カップリング剤などの使用を含むことを理解する。
【0093】
選択された合成にかかわらず、本開示に記載される合成法の結果として得られる好ましい化合物の一部は下記を含む:
【化24−1】
【化24−2】
【化24−3】
ここで、
【化25】
【0094】
は、オリゴヌクレオチドおよび末端リン酸修飾の位置を表し、およびmPEGはCH3−O−(CH2−CH2−O)X−であり;xは約10ないし約2300から選択された正の整数である。
【0095】
本発明のより好ましい化合物は下記を含む:
【化26】
【0096】
G.治療方法
本発明の別の一態様は、哺乳類におけるさまざまな医学的症状のための治療の方法を提供する。本方法は、そのような治療を必要とする哺乳類へ、本開示に記載の方法通りに調製されたオリゴヌクレオチドプロドラッグの有効寮を投与することを含む。本組成物は、哺乳類において、特に、新生物性疾患の治療、腫瘍組織量の減少、新生物の転移の防止および、腫瘍/新生物増殖、肝疾患、HIVのようなウイルス疾患の再発の防止に有用である。本発明のプロドラッグは、天然のオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドが用いられる適応のどれにでも、すなわち癌治療などに用いることができる。単に一例として、本発明のプロドラッグは、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌および多数にわたるため挙げない他の腫瘍または癌の治療に使用することが考えられている。
【0097】
投与されるプロドラッグの量は、含まれる親分子および治療される症状に依存する。一般的に、本治療法に用いられるプロドラッグの量は、哺乳類において目的の治療結果を効果的に達成する量である。必然的に、さまざまなプロドラッグ化合物の用量は、親化合物、in vivo加水分解の速度、ポリマーの分子量、などにいくらか依存して変動する。上記に示す範囲は一例であり、および当業者が、臨床経験および治療適応に基づいて選択されたプロドラッグの最適な投与を決定する。実際の用量は、必要以上の実験なしに当業者に明らかとなる。
【0098】
本発明のプロドラッグは、哺乳類への投与のための1つ以上の適当な医薬組成物に含めることができる。本医薬組成物は、本分野で既知である方法に従って調製された、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル剤などの剤形であり得る。また、そのような組成物の投与は、当業者の必要に応じて、経口および/または非経口経路によることができることが考えられている。本組成物の溶液および/または懸濁液は、例えば静脈注射、筋肉内注射、皮下注射などのような本分野で既知の任意の方法による、例えば、本組成物の注射または浸潤用のキャリヤー媒体として利用することができる。
【0099】
そのような投与はまた、体腔または空洞への注入により、および吸入および/または鼻腔内経路によることができる。本発明の好ましい態様では、しかし、本プロドラッグはそれを必要とする哺乳類へ非経口的に投与される。
【0100】
また、本発明のプロドラッグが、本分野で公知である他の抗癌剤と併用して(例えば、同時におよび/または連続して)投与されることが考えられている。適当な抗癌剤は、単に例として、そのような薬剤を少数だけ挙げると下記を含む:(パクリタキセル; Bristol Myers Squibb);Camptosar(登録商標)(イリノテカン; Pfizer.) ;Gleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ;Novartis);Rituxan(登録商標)(リツキシマブ;Genentech/IDEC);Fludara(登録商標)(フルダラビン;Berlex Labs);Cytoxan(登録商標)(シクロホスファミド; Bristol Myers Squibb);Taxotere(登録商標)(ドセタキセル;Aventis Phannaceuticals);Mylotarg(登録商標)(ゲムツズマブ・オゾガマイシン;Wyeth−Ayerst);シトシンアラビノシドおよび/またはデキサメタゾン。
【実施例】
【0101】
下記の実施例は本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、いかなる方法でも本発明の有効範囲を制限しないことが意図される。実施例中で列挙される下線および太字の数字は、図面に示される数字に対応する。各図において、糖部分およびリン酸骨格は下記のように表される:
【化27】
【0102】
塩基=A,G、CまたはT、あるいは単に―で表される:
mPEGの表記は以下を表すと解される:
【化28】
【0103】
一般的手順 PEGリンカーとオリゴヌクレオチドの間のすべての結合反応はPBS緩衝液系中で室温にて実施された。一般的に有機溶媒を用いた抽出によって未反応オリゴヌクレオチドを除去し、さらに陰イオン交換クロマトグラフィーによってPEG−オリゴ複合体を未反応の過剰のPEGリンカーから分離して純粋な産物をもたらした。
【0104】
HPLC法 反応混合物ならびに中間体および最終産物の純度は、Beckman Coulter System Gold(登録商標)HPLC装置によって、ZORBAX(登録商標)300 SB C−8逆相カラム(150x4.6mm)またはPhenomenex Jupiter(登録商標)300A C18逆相カラム(150x4.6mm)を使用し、多波長UV検出器を用いて、30−90%のアセトニトリルを含む0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)および25−35%アセトニトリルを含む4mMTBAC1含有50mMTEAA緩衝液のグラジエントを使用して流速1mL/分にて監視した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、Applied BiosystemsからのBio−Cad 700E潅流クロマトグラフィーワークステーション上で、WatersからのAP空ガラスカラムに充填したApplied BiosystemsからのPoros 50HQ強陰イオン交換樹脂またはAmersham BiosciencesからのDEAE Sepharoseファストフロー弱陰イオン交換樹脂のどちらかを用いて実施した。脱塩はApplied BiosystemsからのHiPrep26/10またはPD−10脱塩カラムを用いて達成した。
【0105】
実施例1
化合物3 化合物1(440mg、0.036mmol)および2(5mg、3.6μmol)のPBS緩衝液(10mL、pH7.4)溶液を室温にて12時間攪拌した。反応溶液を塩化メチレン(DCM、3x10mL)を用いて抽出し、および合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水に溶解し(100mgあたり1.5mL)およびHQ/10Poros強陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量−6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に0.2MNH4HCO3溶液で溶出した(〜2カラム容量)。純粋な産物を含む画分をプールしおよび凍結乾燥して純粋な3を得た(19mg、1.44mmol、40%)。
【0106】
実施例2−6
化合物5、7、9、11、および12は、3と同様の方法で作成および精製し、収率は30%ないし50%の範囲であった。
【0107】
実施例7
化合物14 化合物13(10mg、1.7μmol)を含むPBS緩衝液(5mL、pH7.4)溶液に、10(175mg、85pmol)を等量に分けて5回、毎時間加え、および室温にて12時間攪拌した。反応溶液をDCM(3x10mL)および食塩水(10mL)を用いて抽出し、さらに合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水(1.5mL)に溶解し、および20mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4で予め平衡化したDEAEファストフロー弱陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に、0から100%の1M NaClを含む20mMトリス−HCl緩衝液7.4の10分間でのグラジエントを用い、次いで100%1M NaClを10分間流速3mL/分にて溶出した。純粋な産物を含む画分をプールし、およびPD−10脱塩カラムで0.2M NH4HCO3溶液(〜2カラム容量)を用いて脱塩し、および結果として得られた溶液を凍結乾燥して純粋な14を得た(25mg、0.95μmol、57%)。
【0108】
実施例8
化合物16は、14と同様の方法で作成および精製し、収率は60%であった。
【0109】
実施例9
化合物17 AS1(5mg、0.85μmol)を含むリン酸緩衝液(2mL、pH7.8)溶液へ、10(175mg、0.085mmol)を等量に分けて5回、2時間中に加え、および結果として得られた溶液を室温にてさらに2時間攪拌した。反応溶液をDCM(3x6mL)および食塩水(5mL)を用いて抽出し、さらに合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水(5 mL) に溶解し、および20mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4で予め平衡化したDEAEファストフロー弱陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に、0から100%の1M NaClを含む20mMトリス−HCl緩衝液pH7.4の10分間でのグラジエントを用い、次いで100%1M NaClを10分間流速3mL/分にて溶出した。純粋な産物を含む画分をプールし、およびPD−10脱塩カラムで脱塩し、および結果として得られた溶液を凍結乾燥して純粋な17を得た(15mg、0.57μmol、67%)。
【0110】
実施例10−11
化合物18および19は、17と同様の方法で作成および精製し、収率はAS2およびAS3をAS1の代わりに用いて最終産物について67%であった。
【0111】
実施例12−15
化合物21は、12を20で置き換えることによって14と同様の方法で作成および精製し、収率は90%であった。
【0112】
化合物22は、12を20で置き換えることによって14と同様の方法で作成および精製し、収率は65%であった。
【0113】
化合物24は、12を23で置き換えることによって14と同様の方法で作成および精製し、さらに、脱塩では、産物を溶出するために0.2M NH4HCO3溶液の代わりに水(〜2カラム容量)を用いた。最終収率は30%であった。
【0114】
化合物26は、23を25で置き換えることによって24と同様の方法で作成および精製した。収率は30%であった。
【0115】
実施例16
化合物27 13(10mg、1.7μmol)を含むリン酸緩衝液(5mL、pH8.5)溶液に、10等分された27(180mg、0.084mmol)を加え、および結果として得られた溶液を室温にて4日間攪拌した。反応溶液をDCM(3x10mL)および食塩水(10mL)を用いて抽出し、さらに合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水(1.5mL)に溶解し、および20mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4で予め平衡化したDEAEファストフロー弱陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に、0から100%の1M NaClを含む20mMトリス−HCl緩衝液7.4の10分間でのグラジエントを用い、次いで100%1M NaClを10分間流速3mL/分にて溶出した。純粋な産物を含む画分をプールし、およびPD−10脱塩カラムで脱塩し、および結果として得られた溶液を凍結乾燥して純粋な14を得た(105mg、0.0102mmol、60%)。産物の純度はHPLCによって決定した。
【0116】
実施例17−21
化合物29、30および31は、13がそれぞれAS1、AS2およびAS3で置き換えられた点を除いて、28と同様の方法で作成および精製した。各最終産物について65%の収率が得られた。
【0117】
化合物33は、12を32で置き換えて14と同様の方法で作成および精製し、結果として76%の収率が得られた。
【0118】
化合物35は、活性化PEG34が10の代わりに用いられた点を除き、14と同様の方法で作成および精製した。最終収率は30%であった。
【0119】
生物学的データ
PEG−オリゴ複合体のin vitro特性の一部を下記の表に要約する:
【表4】
【0120】
PEG−オリゴ複合体のICRマウスにおける薬物動態
一般的手順
1)動物飼育:マウスは飼育ケージ内で、ケージ当たり6個体を飼育した。ケージは"Guide for the Care および Use of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal Resource", National Research Councilに従った大きさとした;
2)飼料:マウスは水道水を利用でき、および市販の実験用飼料を自由摂取させた;
3)化合物調製:化合物13を4.0mLの生理食塩水に溶解し、および化合物14を4.1mLの生理食塩水に溶解した;
4)投与部位:化合物13および14を単回投与(1日目)として尾静脈から投与した。
【0121】
実験計画
60個体のマウスを、下記の表5に示す以下の設計に従って群分けし、投与および採血した:
【表5】
【0122】
未処理対照血漿の採取のため、3個体の未処理マウスを心臓穿刺によってEDTA入り試験管へ採血した。
【0123】
マウスに1個体当たり100μLの天然の化合物13および14を静脈注射した。0.09%Avertinを用いて鎮静後、マウスは心臓穿刺によって〜1000μL採血し死亡させた。血液はEDTA入りバイアルに採取した。血液の遠心分離後に血漿を回収し、および直ちにドライアイス上で−80℃にて凍結させた。
【0124】
臨床検査:
マウスは被験物質の輸液後に1日1回、死亡および処置への反応の徴候に関して目視検査した。すべての死亡および臨床徴候を記録した。体重は注射当日だけ先に測定した。
【0125】
化合物28および33についての薬物動態試験を同様の方法で実施した。
【0126】
実験結果
薬物動態結果を下記の表6に要約する:
【表6】
【0127】
実施例22−25
アンチセンスPEG複合体のin vitro活性の確認
Bcl−2タンパク質は前立腺癌細胞において顕著な抗アポトーシス活性を有することが示されている。前立腺癌細胞におけるbcl−2タンパク質のダウンレギュレーションは細胞死によって確認され、およびbcl−2アンチセンスPEG複合体による細胞死の誘導を用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内送達の成功を確認した。
【0128】
実施例22−25についての材料および方法
試験した化合物を下記の表7に列挙する:
【表7】
【0129】
これら化合物は上記の通り調製した。
【0130】
細胞培養
マイコプラズマフリーPC3細胞は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から入手し、Roswell Park Memorial Institute培地(「RPMI」)(Invitrogen,Grand Island,NY) に10%ウシ胎仔血清(「FBS」)を加えた培地中で培養した。FBSは、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸、25mM HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸)緩衝液、100U/mlペニシリンGナトリウムおよび100μg/ml硫酸ストレプトマイシンを添加した10%(v/v)熱不活化(56℃)FBSを含む。ストック培養は37℃にて加湿5%CO2インキュベーター内で維持した。
【0131】
試薬
FBSおよびリポフェクチン(陽イオン性脂質の塩化N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−n,n,n−トリメチルアンモニウムのリポソーム処方)はInvitrogen (Grand Island,NY)から購入した。抗bcl−2モノクローナル抗体はDako(Carpinteria,CA)から入手した。抗αチューブリンモノクローナル抗体および臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(「MTT」)はSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、標準的な手順によって合成および精製した。
【0132】
オリゴヌクレオチドトランスフェクション
細胞は実験の前日に6ウェルプレートにウェル当たり25x104細胞の密度で播種し、実験当日に60−70%集密となるようにした。すべてのトランスフェクションはOpti−MEM培地中で、FBSおよび抗生物質の非存在下で取扱説明書に従って実施した。適当な量の試薬を100μlのOpti−MEM培地で希釈し、リポフェクチンおよびオリゴヌクレオチドの終濃度を与えるようにした。溶液は穏やかに混合し、および室温にて30分間予備インキュベートして複合体を形成させた。次いで、800μlのOpti−MEMを加え、溶液を混合し、およびOpti−MEMで予め洗浄した細胞に重層した。Opti−MEM中のオリゴヌクレオチド/リポフェクチン複合体のためのインキュベート時間は24時間であって、次いで、10%FBSを含む完全培地中でインキュベートした。細胞溶解およびタンパク質単離の前の総インキュベート時間は通常は37℃にて72時間であった。
【0133】
ウェスタンブロット分析
オリゴヌクレオチド−脂質複合体で処理した細胞をPBSで洗浄し、および次いで溶解緩衝液[50mMトリス−HCl pH 7.4、1%NP−40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EGTA、50μg/ml Pefabloc SC、15μg/mlアプロチニン、ロイペプチン、キモスタチン、ペプスタチンA、1mM Na3VO4、1mM NaF]で4℃にて1時間抽出した。細胞残渣を14000gで20分間4℃にての遠心分離によって除去した。タンパク質濃度はBio−Radプロテインアッセイシステム(Bio−Rad Laboratories,Richmond,CA)を用いて測定した。25−40μgのタンパク質を含む、細胞抽出物の部分標本をSDS−PAGEによって分離し、および次いでHybond ECL濾紙(Amersham,Arlington Heights,IL)へ転写し、および濾紙を、室温にて1−2時間、5%BSAを含み0.5%Tween−20を含むPBS中でインキュベートした。濾紙を次いで、抗bcl−2抗体の、5%BSAを含み0.5%Tween−20を含むPBSでの1:500希釈で、4℃にて一夜プロービングした。0.5%Tween−20を含むPBSで洗浄後、濾紙を1時間室温にて、5%ミルクを含み0.5%Tweenを含むPBS中で1:3,000希釈のペルオキシダーゼ結合二次抗体(Amersham)と共にインキュベートした。洗浄後(3x10分間)、電気化学発光(「ECL」)を取扱説明書に従って実施した。
【0134】
細胞増殖の測定
細胞生存に及ぼすPEG複合体の作用をMTT測定法によって測定した。要約すると、15−20x104細胞を6ウェルプレートに播種し、および一夜付着させた。細胞を次いで適当な濃度の、リポフェクチンと複合体化させたオリゴヌクレオチドを用いて24時間37℃にて処理し、次いで10%FBSを含む完全培地(100μl)中でインキュベートした。細胞生存は毎日測定した。10μlの5mg/ml MTTを含むPBSを各ウェルに加え、続いて4時間37℃にてインキュベートした。その後、100μlの10% SDS含有0.04 M HClを各ウェルに加え、次いで一夜37℃にてインキュベートしてホルマザン結晶を溶解する。吸光度を570nmにてBenchmark plusマイクロプレート分光光度計(Bio Rad,Hercules,CA)を用いて測定した。実験は6連で実施し、およびデータは平均±S.D.で示す。
【0135】
細胞内ROSレベルの定量
2',7'−ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸(H2DCF−DA)およびジヒドロエチジウム(HE)を用いて活性酸素種(「ROS」)およびスーパーオキシドレベルを測定した。両方の色素は非蛍光性であり、および自由に細胞中へ拡散し得る。HEがエチジウム(E)へ酸化される際、それは細胞DNAに挿入され、さらに蛍光を生じる。H2DCF−DAの酸化は2'−7'ジクロロフルオレセイン(DCF)を生じ、これもまた蛍光を発し、両方がフローサイトメトリーによって検出され得る。細胞はトリプシン処理によって採取し、PBSで洗浄し、さらに50μM H2DCF−DAまたは50μM HEを用いてフェノールレッドフリーDMEM中で2時間37℃にて染色した。DCFおよびEの平均蛍光チャンネル数はフローサイトメトリーによってFL−1およびFL−2チャンネルでそれぞれ分析した。最小10,000細胞が各試料について捕獲され、データはCELLQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析した。棒グラフは対数目盛でプロットした。
【0136】
実施例22 Bcl−2タンパク質発現の阻害
bcl−2発現を標的とする3種類のPEGオリゴヌクレオチド(化合物14、28および33)をPC3細胞にトランスフェクションし、およびそれらがbcl−2タンパク質発現を阻害する能力を、ウェスタンブロッティングによって評価した。
【0137】
リポフェクチンの作用
最初に、化合物14によって誘導されるPC3細胞におけるbcl−2タンパク質発現の阻害の程度を、リポフェクチンの存在下および非存在下で測定した。PC3細胞は化合物14(200、400および800nMにて)を用いてリポフェクチンの存在下または非存在下で24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg/レーン)をウェスタンブロッティングによって、チューブリンを対照タンパク質種として用いて、材料および方法の項に記載の通りに分析した。対照の未処理細胞に対する%阻害は、レーザースキャンデンシトメトリーによって測定した。ウェスタンブロット結果を図12に示す。
【0138】
α−チューブリンおよびPKC−αの発現は変化せず、リポフェクチンが化合物14のPC−3細胞への浸透を得るために有用であることが確認され、および、bcl−2タンパク質発現だけが化合物14によってダウンレギュレートされたことが確認された。
【0139】
さらなる研究は、化合物14および28は400nMで最も活性であったことを実証した。PC3細胞を、400、800および1000nMの化合物14、化合物28、および化合物23とリポフェクチンの複合体を用いて、24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg//レーン)をウェスタンブロッティングによって、チューブリンを対照タンパク質種として用いて、材料および方法の項に記載の通りに分析した。対照の未処理細胞に対する%阻害は、レーザースキャンデンシトメトリーによって測定した。
【0140】
化合物14は86%ダウンレギュレーションを生じ、および化合物28は78%ダウンレギュレーションを生じた。
【0141】
実施例23 PEGオリゴヌクレオチドによるbcl−2タンパク質発現の用量依存分析
化合物14および28のbcl−2タンパク質発現に対する阻害作用をさらに確認するために、PC3細胞をリポフェクチンと複合体化した漸増濃度(25、50、100、200および400nM)の化合物14、化合物28、および陽性対照として化合物13を用いて、24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg//レーン)をウェスタンブロッティングによって、前出の材料および方法の項に記載の通りに分析した。
【0142】
bcl−2タンパク質発現の濃度依存的阻害は、対照と相対的に、化合物14および28についてのウェスタンブロットによって観察された。約1−2%阻害が50nMで観察され、濃度400nMでは99%および75%へ上昇した。化合物24については、50nMでは本質的に阻害は観察されなかったが、阻害は濃度400nMでは77%へ上昇した。化合物13を用いたトランスフェクションを陽性対照として用いた。α−チューブリンの発現はどのオリゴヌクレオチドによっても阻害されなかった。
【0143】
上記の実験を、対照として化合物24を用いて繰り返した。PC3細胞をリポフェクチンと複合体化した化合物35および24(25、50、100、200および400nM)を用いて、24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg//レーン)をウェスタンブロッティングによって、チューブリンを対照タンパク質種として用いて、前出の材料および方法の項に記載の通りに分析した。対照の未処理細胞に対する%阻害は、レーザースキャンデンシトメトリーによって測定した。
【0144】
実施例24 PC3細胞増殖に及ぼすPEGオリゴヌクレオチドの作用
PC3前立腺癌細胞の増殖にin vitroで及ぼす化合物14および化合物28の作用もまた試験した。PC3細胞はオリゴヌクレオチド/リポフェクチン複合体を用いて処理した。図10に結果を示す(n=4)。曲線は下記の通りである:
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図10に示す通り、400および200nMでのアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物14のトランスフェクションは細胞増殖を強く阻害し、一方、化合物28は増殖速度にわずかに影響しただけであった。
【0145】
実施例25 PC3細胞における活性酸素種の産生に及ぼすPEGオリゴヌクレオチドの作用
PC3細胞における活性酸素種すなわちROSの産生をフローサイトメトリーで2つの方法によって評価した。第1はヒドロエチジウム(HE)のエチジウム(E)への酸化に基づき、これはその後DNA中へ挟み込まれ、フローサイトメトリーによって検出可能な蛍光を伴う。第2の方法は、細胞浸透性である2'、7'−ジヒドロジクロロフルオレセイン二酢酸の、蛍光性である2'、7'−ジクロロフルオレセイン(DCF)への酸化を利用した。PC3細胞では、化合物14/リポフェクチン(400nM/15μg/ml)複合体を用いた24時間のOpti−MEM中での処理は、3日後にフローサイトメトリーにより、E(対照の未処理細胞に対して1.9倍増加)およびDCF(対照の未処理細胞に対して2倍増加)蛍光の両方によって評価された通りのROSを生じた。図11に要約されたデータによって確認される通り、化合物28は、対照の未処理細胞に対するROS産生に全く増加を生じなかった。さらに、ROSの産生は細胞増殖の速度と非常に密接に関連している;細胞は400nMの化合物14を用いた処理後に増殖を停止し、およびこのオリゴヌクレオチドはまた、ROSの産生の増加を引き起こす(DCFおよびHE)。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、化合物3および5のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図2】図2は、化合物7および9のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図3】図3は、化合物11、12(配列番号1)および14(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図4】図4は、化合物16(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図5】図5は、AS1(配列番号2)、AS2(配列番号3)およびAS3(配列番号4)からの、化合物17(配列番号2)、18(配列番号3)および19(配列番号4)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図6】図6は、化合物21(配列番号1)および22(配列番号2)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図7】図7は、化合物24(配列番号1)および26(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図8】図8は、AS1(配列番号2)、AS2(配列番号3)およびAS3(配列番号4)からの、化合物28(配列番号1)、29(配列番号2)、30(配列番号3)および31(配列番号4)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図9】図9は、化合物33(配列番号1)および35(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図10】図10は、PC3細胞増殖に及ぼす化合物14および化合物28の阻害作用を説明する。0.4x104細胞を96ウェルプレートに播種し、化合物14または化合物28(400nM)とリポフェクチン(15μg/ml)の複合体のどちらかを用いて24時間Opti−MEM中で、およびその後、複合体を含まない完全培地中で処理した。細胞の生存を毎日判定し、および570nmにて吸光度を測定した。データは平均+標準偏差として示す;n=4。
【図11】図11Aは、細胞浸透性である2',7'−ジヒドロジクロロフルオレセイン2酢酸の、蛍光性である2',7'−ジクロロフルオレセイン(DCF)への酸化を検出することによる、化合物14および化合物28オリゴヌクレオチドによるROS産生(フローサイトメトリー分析より)の要約を与える。PC3細胞はオリゴヌクレオチド(400nM)/リポフェクチン(15μg/ml)複合体で24時間処理し、および3日後に、記載の通り測定した。平均蛍光チャンネルでの増加倍数は未処理細胞に対して正規化した。実験は3連で行い、およびデータは平均±標準偏差(n=3)として表す。図11Bは、後でDNAに挟み込まれフローサイトメトリーによって検出可能な蛍光を有するエチジウム(E)への、水素化エチジウム(HE)の酸化を検出することによる、化合物14および化合物28オリゴヌクレオチドによるROS産生(フローサイトメトリー分析より)の要約を与える。PC3細胞はオリゴヌクレオチド(400nM)/リポフェクチン(15μg/ml)複合体で24時間処理し、および3日後に、記載の通り測定した。平均蛍光チャンネルでの増加倍数は未処理細胞に対して正規化した。実験は3連で行い、およびデータは平均±標準偏差(n=3)として表す。
【図12】図12は、リポフェクチンの存在下での化合物14によるbcl−2タンパク質発現の阻害を確認するウェスタンブロット結果である。PC3細胞は、化合物14オリゴヌクレオチド(200、400および800nM)を用いてリポフェクチンの存在下(+Lipo)および非存在下(−Lipo)で24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg/レーン)は「材料および方法」に記載の通りウェスタンブロッティングによって分析し、チューブリンを対照タンパク質種として用いた。「C」は対照を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本明細書は、参照により本開示に含まれる2003年4月13日出願の米国仮特許出願第60/462,070号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は治療薬として有用なポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグに関する。そのようなプロドラッグを用いる組成物および方法もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
多細胞生物において身体的状態の大部分は、大半の疾患状態を含めて、タンパク質によってもたらされることがよく知られている。そのようなタンパク質は、直接にまたは酵素的なまたは他の機能を通じて作用し、動物またはヒトにおいて多数の疾患および調節機能に主成分として寄与する。疾患状態については、古典的な治療薬は一般的に、疾患を引き起こすかまたは疾患を増強するタンパク質の機能を抑える目的で、そのようなタンパク質との相互作用に注目してきた。より新しい治療手法では、そのようなタンパク質の実際の産生の調節が望まれる。タンパク質の産生に干渉することによって、最小の副作用で最大の治療効果を得ることができる。したがって、望ましくないタンパク質生成に繋がる遺伝子発現を干渉しまたは遺伝子発現を調節することが、そのような治療手法の一般的目的である。
【0004】
特定の遺伝子発現を阻害するための1つの方法は、オリゴヌクレオチド、特に特定の標的メッセンジャーRNA(mRNA)配列と相補的であるオリゴヌクレオチドを用いる。一般的に、遺伝子転写の産物(例えば、mRNA)と相補的である核酸配列は、「アンチセンス」と表され、および転写産物と同一の配列を有するかまたは転写産物として 作成された核酸配列は、「センス」と表される。例えば、非特許文献1を参照。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子の発現を調節するような方法で、遺伝子の全部または一部とハイブリダイズするように選択することができる。転写因子は転写の調節中に2本鎖DNAと相互作用する。オリゴヌクレオチドは、転写因子の競合阻害剤となってその作用を調節することができる。いくつかの近年の報告がそのような相互作用を説明している(非特許文献2;および非特許文献3を参照)。
【0005】
不必要な遺伝子発現をダウンレギュレートするために分子的戦略が開発されている。近年、オリゴヌクレオチド化合物の使用が、ウイルス感染症、炎症性および遺伝性疾患および注目すべきことに、癌のような疾患に対する治療の有望な方法に発展している。アンチセンスDNAは最初に、天然に存在する核酸に対する相補オリゴデオキシヌクレオチドのアルキル化として考えられた(非特許文献4)。ZamecnikおよびStephensonは、治療目的のための合成アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を最初に提案した。(非特許文献5;非特許文献6)。彼らは、ラウス肉腫ウイルスのRNAに相補的なオリゴヌクレオチド13量体の使用が、細胞培養中のウイルスの増殖を阻害したことを報告した。それ以来、例えば、水疱性口内炎ウイルス(非特許文献7)、単純ヘルペスウイルス (非特許文献8)、およびインフルエンザウイルス(非特許文献9)のように、ウイルス増殖のアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害のin vitroでの効果を明らかにする、多数の他の研究が出版されている。
【0006】
オリゴヌクレオチドはまた、中でも、診断検査、例えばPCR技術および他の実験手順におけるプライマーのような研究試薬に用途が見出されている。オリゴヌクレオチドは、目的の用途に適合するように調整された特性を有するように特注で合成することができる。このように、多数の化学修飾がオリゴマー性化合物へ導入されており、診断における、研究試薬として、および治療薬としてのその有用性が高められる。
【0007】
オリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドは治療薬として有望であるが、それらはヌクレアーゼに対して非常に感受性が高く、および標的細胞への進入の前後に速やかに分解される可能性があり、そのため、修飾されていないアンチセンスオリゴヌクレオチドはin vivo系での使用に適さない。分解を担う酵素は大部分の組織で見出されるため、その化合物を安定化しおよびこの問題を改善するための試みとして、オリゴヌクレオチドへの修飾が行われている。最も広く試されている修飾は、オリゴヌクレオチド化合物の骨格部分に行われている。一般的に非特許文献10およびその中の参考文献を参照。 作成された多数の異なる骨格の中で、ホスホロチオエートだけが顕著なアンチセンス活性を示した。例えば、非特許文献11を参照。骨格への硫黄原子の導入は酵素分解速度を遅らせる一方、それはまた同時に毒性を高める。硫黄原子を付加することの別の短所は、それが骨格をアキラルからキラルに変え、および結果として2n個のジアステレオマーを生じることである。これは別の副作用を生じ得る。現在のアンチセンスオリゴヌクレオチドのさらに別の短所は、それらがリン酸基に負電荷を有する可能性があり、そのことが親油性の細胞膜を通過するその能力を妨げる点である。その化合物が細胞外により長く留まるほど、それはより分解され、結果として標的に到達する活性な化合物はより少なくなる。現在のアンチセンス化合物の別の短所は、オリゴヌクレオチドが二次および高次溶液構造を形成しやすい点である。これらの構造が一旦形成されると、それらはさまざまな酵素、タンパク質、RNA、およびDNAの結合のための標的となる。このことは、非特異的副作用、およびmRNAに結合する活性化合物の量の減少を結果として生じる。オリゴヌクレオチド療法を改良するための他の試みは、連結部分およびポリエチレングリコールを加えることを含んでいる。例えば、非特許文献12、および特許文献1を参照。これらの例の両方で、修飾は、オリゴヌクレオチドを分解に対して安定化しおよび細胞透過性を高めるための試みとして、本質的に永続的である連結部分の使用を含む。しかし、これらの努力の両方は、有効性を提供することができない。
【特許文献1】米国特許第4,904,582号明細書
【非特許文献1】Crooke,1992,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol,32: 329-376
【非特許文献2】Bielinska,A.,et al.,1990,Science,250: 997-1000
【非特許文献3】Wu,H.,et al.,1990,Gene 89: 203-209
【非特許文献4】Belikova,et al.,Tetrahedron Lett.37: 3557-3562,1967
【非特許文献5】Zamecnik & Stephenson,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75: 285-289
【非特許文献6】Zamecnik & Stephenson,1978,Proc.Natl.Acatl.Sci.U.S.A.,75: 280-284
【非特許文献7】Leonetti et al.,1988,Gene,72: 323
【非特許文献8】Smith et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83: 2787
【非特許文献9】Seroa ;et al.,1987,Nucleic Acids Res.15: 9909
【非特許文献10】Uhlmann and Peymann,1990,Chemical Reviews 90,545-561 pages
【非特許文献11】Padmapriya and Agrawal,1993,Bioorg.& Med.Chenu.Lett.3 761
【非特許文献12】Kawaguchi,et al.,Stability,Specific Binding Activity,and Plasma Concentration in Mice of an Oligodeoxynucleotide Modified at 5'-Terminal with Poly (Ethylene glycol),Biol.Pharm.Bull.,18 (3) 474- 476 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の方法の不適当さのため、安定性およびヌクレアーゼ分解への耐性を改善し、および、毒性を低下させおよびオリゴヌクレオチド化合物のmRNAへの結合親和性を高める必要が存在する。現行のオリゴヌクレオチド両方は高価である。これは主に分解の問題のためである。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を分解から守り、高次構造の生成を防ぎ、および同時に、活性なアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物の十分な量を標的へ送ることの真の必要性がある。本発明はそのような改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、化学式(I)のオリゴヌクレオチドプロドラッグが提供される:
【化1】
【0010】
ここで、R1およびR2は独立してHまたはポリマー残基であり;
L1およびL4は独立して選択された放出可能な連結部分であり;
L2およびL3は独立して選択されたスペーサー基であり;
X1はヌクレオチド残基またはオリゴヌクレオチド残基であり;
m、n、oおよびpは独立して0または正の整数であり、ただし(o+n)または(p+m)≧2のいずれかである。
【0011】
本発明の別の一態様は、2つのオリゴヌクレオチドが、与えられたポリマーデリバリー系へ結合するように、R1および/またはR2が本明細書に記載のαおよびω末端連結基の両方を含むポリマー残基である際に生じる二官能性化合物を含む。本実施形態の例は、例えば3'−ビスオリゴヌクレオチド複合体または5'−ビスオリゴヌクレオチド複合体のように、それぞれの3'末端基、5'末端基を介してポリマー系に結合したオリゴヌクレオチド、または、第1のオリゴヌクレオチドを、3'末端を介して第2のオリゴヌクレオチドの5'末端へ結合することによって生じた複合体を含む。そのようなポリマー複合体の例を化学式(i)、(ii)、(iii)および(iv)として下記に図解する:
【化2】
【0012】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0013】
本発明の目的のためには、「残基」の語は、生物学的に活性な化合物すなわちオリゴヌクレオチド、より具体的にはアンチセンスオリゴヌクレオチドの、プロドラッグキャリヤーが付加される置換反応を受けた後に残る部分を意味すると解される。
【0014】
本発明の目的のためには、「ポリマー残基」または「PEG残基」の語はそれぞれ、ポリマーまたはPEGの、修飾オリゴヌクレオチド化合物との反応を受けた後に残る部分を意味すると解される。
【0015】
本発明の目的のためには、「アルキル」の語は、直鎖、分枝鎖、置換、例えばハロ−、アルコキシ−、ニトロ−、C1-12アルキル、C3-8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを含むと解される。
【0016】
本発明の目的のためには、「置換」の語は、官能基または化合物中に含まれる1個以上の原子に1個以上の別の原子を加えるか、または、その1個以上の原子を別の1個以上の原子で交換することを含むと解される。
【0017】
本発明の目的のためには、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルを含み;置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルを含み;置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルを含み;置換シクロアルキルは4−クロロシクロヘキシルといった部分を含み;アリールはナフチルといった部分を含み;置換アリールは3−ブロモ−フェニルといった部分を含み;アラルキルはトルイルといった部分を含み;ヘテロアルキルはエチルチオフェンといった部分を含み;置換ヘテロアルキルは3−メトキシ−チオフェンといった部分を含み;アルコキシはメトキシといった部分を含み;およびフェノキシは3−ニトロフェノキシといった部分を含む。ハロ−は、フルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むと解される。
【0018】
本発明の目的のための「十分量」または「有効量」という語は、当業者に理解される通りの治療効果を達成する量を意味するとする。
【0019】
本発明の主な長所の一部は、安定性およびヌクレアーゼ分解に対する耐性の上昇、溶解度の上昇、細胞透過性の上昇および毒性の低下を示す、新規のポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグを含む。
【0020】
本発明の化合物の別の長所は、さまざまなポリマープロドラッグ基本骨格が修飾オリゴヌクレオチド化合物と放出可能に結合している点である。この長所は、ポリマー残基と付加されたオリゴヌクレオチドとの間に、プロドラッグの加水分解の速度に影響し得るさまざまな部分を含むように操作することができる医薬複合体を当業者に設計可能にする。当業者はこのように、プロドラッグの加水分解の速度の調節を可能にする置換基を含めることができる。
【0021】
癌または悪性腫瘍の治療の方法においてといった、本化合物を 作成および使用する方法、および本明細書に記載の複合体もまた提供される。また、本発明のポリマーオリゴヌクレオチドプロドラッグが任意の他の抗癌剤と共に(同時におよび/または連続して)投与されることもまた考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
したがって、本発明は、診断および分析試薬として、in vitroおよびin vivoの両方での研究および調査手法として、および治療薬としての用途を含む多数の実際的用途を有する、有用なポリマー結合オリゴヌクレオチドプロドラッグを提供する。本発明の範囲をより完全に理解するために、下記の用語が定義される。当業者は、「核酸」または「ヌクレオチド」の語はデオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)、特に明記しない限り1本鎖または2本鎖、およびその任意の化学修飾に当てはまることを理解する。「オリゴヌクレオチド」は一般的に、相対的に短いポリヌクレオチド、例えば、約2ないし約200ヌクレオチドの大きさ、またはより好ましくは長さ約10ないし約30ヌクレオチドの範囲である。本発明に記載のオリゴヌクレオチドは、一般的に合成核酸、および1本鎖である。「ポリヌクレオチド」および「ポリ核酸」の語はまた本明細書では同義に用いられる。
【0023】
本発明のオリゴヌクレオチドへの修飾は、必要に応じて、例えば、望ましいポリマーへのオリゴヌクレオチドの共有結合、および/または、付加的電荷、分極率、水素結合、静電的相互作用、および機能をオリゴヌクレオチドへ組み込む機能部分の付加または置換を可能にする官能基または部分を有する選択されたヌクレオチドへの付加またはその置換を含む。そのような修飾は、2'位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨードウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、イソ塩基のイソシチジンおよびイソグアニジンといった塩基対組み合わせ、および相同組み合わせを含むがそれらに限定されない。オリゴヌクレオチド修飾はまた、キャッピングといった3'および5'修飾を含み得る。
【0024】
ここで用いられる「アンチセンス」の語は、遺伝子産物をコードするかまたは対照配列をコードする特定のDNAまたはRNA配列と相補的であるヌクレオチド配列をいう。「アンチセンス鎖」の語は、「センス」鎖と相補的である核酸鎖に関して用いられる。細胞代謝の通常の作用では、DNA分子のセンス鎖は、ポリペプチドおよび/または他の遺伝子産物をコードする鎖である。センス鎖はメッセンジャーRNA(「mRNA」)転写産物(アンチセンス鎖)の合成のための鋳型として作用し、次に転写産物は任意のコードされた遺伝子産物の産生を指示する。アンチセンス核酸分子は、目的の遺伝子を逆方向でウイルスプロモーターにライゲーションして相補鎖の合成を可能にすることによる合成を含む、本分野で公知である任意の方法によって 作成することができる。細胞へ一旦導入されると、この転写された鎖は細胞によって産生された天然の配列と組み合わされて2重鎖を形成する。これらの2重鎖はその結果、以降の転写または翻訳のどちらかを遮断する。この方法で、突然変異表現型を生じることができる。「ネガティブ」または(−)の表記はまた本分野で公知であってアンチセンス鎖をいい、および「ポジティブ」または(+)はまた本分野で公知であってセンス鎖をいう。
【0025】
例えば、1または複数の細胞におけるmRNA転写産物の発現をダウンレギュレートすることを意図する場合は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが細胞に導入される。細胞へ一旦導入されると、アンチセンスオリゴヌクレオチドは対応するmRNA配列とWatson−Crick結合によってハイブリダイズし、ヘテロ2重鎖を形成する。2重鎖が一旦形成されると、結合したmRNAの配列によってコードされるタンパク質の翻訳が阻害される。このように、アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、一般的にタグまたは標識と結合した、プローブ例えばハイブリダイゼーションプローブとして本分野で用いられ、および研究および治療目的の両方で特定の細胞産物または遺伝子調節配列の発現の正確なダウンレギュレーションを与えるために用いられる。
【0026】
本発明の目的のためには、単数形または複数形の使用は、言及される物または対象の数を限定しないことが意図される。したがって、明示的に記載されない限り、細胞、ポリマーまたは医薬をいうための単数形の使用は、単一の細胞が処理され、単一の分子が調製されまたは使用され、および/または単一の医薬が使用されることを含意せず、および、複数形の使用は、言及された単一の物の使用を除外しない。
【0027】
本発明の目的のためには、「残基」の語は、利用可能な水酸基またはアミノ基の修飾によってプロドラッグキャリヤー部分が付加されていて例えばエステルまたはアミド基をそれぞれ生じる反応を受けた後に残る、オリゴヌクレオチドといった、生物学的に活性な化合物の部分を意味すると解される。
【0028】
A.オリゴヌクレオチドの説明
本発明の性質の1つは、改良されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドポリマー複合体を提供する能力である。本明細書に記載のポリマー輸送系は、単一の種類のオリゴヌクレオチドに限定されず、代わりに、さまざまな部分と作用するように設計されており、ポリマー輸送系は1つ以上のヌクレオチドの3'または5'末端の、通常はPO4またはSO4基へ結合することができるとされている。ヌクレオチド配列は本明細書では従来の命名法を用いて表され、配列は左から右へ、5'末端から3'末端へ(5'−→3'−)進んで読まれる。
【0029】
X1-3は、本発明の目的のためにはオリゴデオキシヌクレオチド残基を含む、同一のまたは異なるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基を表す。より好ましくは、X1-3は独立して選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチド残基またはアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド残基である。
【0030】
単独でまたはオリゴヌクレオチド(10−1,000ヌクレオチド)の一部として用いることができる、可能なヌクレオチドの非限定的な一覧は下記を含む:
【化3】
【0031】
ここで、MはOまたはSであり;
B1およびB2はA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)、U(ウラシル)ならびに下記に示すものおよび当業者に公知のものを含む修飾塩基より成る群から独立して選択され;
R100およびR101は、H、R'がHであるOR'、C1-6アルキル、置換アルキル、ニトロ、ハロ、アリール、などより成る群から独立して選択される。
【0032】
本発明の方法において有用であるオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチドの一部は、下記を含むがそれらに限定されない:
天然のホスホジエステル骨格またはホスホロチオエート骨格または任意の他の修飾された骨格アナログを有する、オリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチド;
LNA(ロックされた核酸);
PNA(ペプチド骨格を有する核酸);
トリシクロDNA;
おとりODN(2本鎖オリゴヌクレオチド);
RNA(触媒RNA配列);
リボザイム;
シュピーゲルマー(L−立体配座オリゴヌクレオチド);
CpGオリゴマー、など例えば下記の文献(それらの内容は参照により本開示に含まれる)に開示されるもの:
Tides 2002,Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences,May 6-8,2002,Las Vegas,NV;および
Oligonucleotide & Peptide Technologies,18th & 19th November 2003,Hamburg,Germany。
【0033】
本発明に記載のオリゴヌクレオチドはまた、 下記の表1に列記されるものを含む、本分野で公知である任意の適当なヌクレオチドアナログおよび誘導体を含む。
【表1】
【0034】
好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、腫瘍細胞の抗癌剤に対する耐性に関与するタンパク質をダウンレギュレートするものである。例えば、タンパク質BCL−2はミトコンドリアからのチトクロムCおよびアポトーシス開始因子の放出を阻害し、およびそれによってアポトーシスの発生を妨げる。高レベルのBCL−2を有する癌細胞は、したがって、化学療法または放射線療法の両方に対して非常に抵抗性である。参照により本開示に含まれる米国特許第6,414,134号明細書は、例えば、前立腺癌細胞、骨髄腫細胞および他の腫瘍細胞を含む、いくつかの腫瘍細胞における抗癌療法に対する耐性に関連するタンパク質Bcl−2をダウンレギュレートするアンチセンスオリゴヌクレオチドを記載する。上記の米国特許によると、bcl−2遺伝子は、細胞分裂を加速することによってではなく、腫瘍細胞生存を延長することによって癌の病因に寄与すると考えられている。米国特許第6,414,134号明細書は一般的に長さ17から35塩基の、bcl−2mRNAと相補的であり、およびTACCGCGTGCGACCCTC(配列番号5)の配列を有する核酸分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを記載する。これらは好ましくは少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む。
【0035】
癌治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドによるダウンレギュレーションの標的としてさまざまな企業によって考えられている、本分野で公知である他の細胞タンパク質を下記の表に要約する。
【表2】
【0036】
bcl−2発現といった、癌細胞生存に関係するタンパク質の発現のダウンレギュレートにおける使用に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約2ないし200ヌクレオチドコドン;より好ましくは10ないし40コドン;および非常に好ましくは約17から20コドンであるオリゴヌクレオチドを含む。そのオリゴヌクレオチドは、翻訳開始部位、ドナーおよびスプライシング部位、または輸送または分解のための部位といった、bcl−2のプレmRNAに沿った戦略的な部位に相補的であるオリゴヌクレオチドから好ましくは選択される。
【0037】
そのような戦略的な部位で翻訳を阻害することは、機能するbcl−2遺伝子産物の生成を妨げる。しかし、bcl−2プレmRNAまたは細胞増殖を阻害するmRNAと相補的または実質的に相補的であるオリゴヌクレオチドを含む、アンチコードオリゴマーの任意の組み合わせまたは部分組み合わせは、本発明における用途に適していることに注意する。例えば、bcl−2RNAの連続または非連続配列の配列部分と相補的であるオリゴデオキシヌクレオチドは細胞増殖を阻害する可能性があり、およびしたがって本発明の方法における用途に適している。
【0038】
bcl−2発現をダウンレギュレートするのに適したオリゴヌクレオチドはまた、bcl−2mRNA上の戦略部位または他の部位に隣接する配列部分と相補的または実質的に相補的であるオリゴヌクレオチドを含む。隣接配列部分は好ましくはbcl−2mRNA上の上述の部位の上流または下流の、約2ないし約100塩基の範囲にわたる。
【0039】
これらの部位は好ましくは長さ約5ないし約20コドンの範囲にわたる。また、オリゴヌクレオチドは、他の遺伝子に由来するプレmRNAまたはmRNAについてのオリゴヌクレオチドのホモロジーを最小化するため、他の遺伝子のプレmRNAまたはmRNAには一般的に見出されないプレmRNAまたはmRNAの配列部分と相補的であることが好ましい。
【0040】
bcl−2発現をダウンレギュレートするために好ましいいくつかの好ましいアンチセンス、または相補、オリゴヌクレオチドを下記の通り表3に列記する。
【表3】
【0041】
上記の表3に列記されたものと相対的に、より多数またはより少数の置換ヌクレオチドを含む、および/またはbcl−2mRNA鎖に沿って3'または5'方向のどちらかへより長く伸びるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができることが理解される。
【0042】
好ましくは、本発明のプロドラックに用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Genasense(別名オブリマーセンナトリウム、Genta Inc.(Berkeley Heights,NJ)製)が有するのと同一または実質的に同様のヌクレオチド配列を有する。Genasenseは18量体ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドTCTCCCAGCGTGCGCCAT(配列番号1)であり、ヒトbcl−2mRNAの開始配列の最初の6個のコドンと相補的である(ヒトbcl−2mRNAは本分野で公知であり、および例えば、参照により本開示に含まれる米国特許第6,414,134号明細書の配列番号19として記載されている)。米国食品医薬品局(FDA)はGenasenseを2000年8月にオーファンドラッグに指定しており、および癌治療におけるGenasenseについて新薬承認申請(NDA)を承認している。そのNDAは、以前に化学療法を受けたことがない進行メラノーマの患者の治療のために、Genasenseをダカルバジンと併用して投与することを提案している。加えて、FDAはその申請を優先審査品目に指定しており、それは2004年6月8日以前の決定を目標とする。初期臨床試験での前立腺癌の併用療法におけるGenasenseの活性を確認している、参照により本開示に含まれるChi et al.,2001,Clinical Cancer Research Vol.7,3920-3927も参照。本発明のプロドラッグは、天然(未修飾)18量体について認められるのと同じ有用性を持つ。
【0043】
Genasenseは、Bcl−2タンパク質の産生をダウンレギュレートし、および腫瘍細胞の治療への感受性を高め、および最終的に、細胞死を引き起こすことが示されている。いくつかの研究は、抗癌剤と併用したGenasenseを用いたいくつかの癌の治療において有望な結果を報告している。黒色腫患者におけるダカルバジン併用Genasenseの第I/II相治験は有望な活性を示しており、および第III相多施設治験が進行中である。加えて、ホルモン治療抵抗性前立腺癌患者においてミトザントロンと併用して用いられるGenasenseは有望な結果を示している。Kim et al.,2001(同上)。
【0044】
Genasenseといったアンチセンスオリゴヌクレオチドの、ポリマーへの結合は、本発明の好ましい一実施形態の例となる。
【0045】
別の一実施形態では、追加の適当なアンチセンスオリゴヌクレオチドは:
T−C−T−C−C−C−A−G−C−G−T−G−C−G−C−C−A−T;(化合物13−配列番号1)
T−C−T−C−C−C−A−G−C−A−T−G−T−G−C−C−A−T;(化合物36−配列番号2)
A−T−C−C−T−A−A−G−C−G−T−G−C−G−C−C−T−T;(化合物37−配列番号3)および
T−C−T−C−C−C−A−G−X−G−T−G−X−G−C−C−A−T、(化合物38−配列番号4)
および実施例に見出されるものを含む。
【0046】
B.化学式(I)
本発明の好ましい一実施形態では、化学式(I)のオリゴヌクレオチドプロドラッグが提供される:
【化4】
【0047】
ここで、R1およびR2は独立してHまたはポリマー残基であり;
L1およびL4は独立して選択された放出可能な連結部分であり;
L2およびL3は独立して選択されたスペーサー基であり;
X1はヌクレオチド残基またはオリゴヌクレオチド残基であり;
m、n、oおよびpは独立して0または正の整数であり、ただし(o+n)または(p+m)≧2のいずれかである。
【0048】
本発明のポリマー輸送系は、好ましくはポリマー残基であり、Aとして表されるキャッピング基を必要に応じて有する、R1およびR2のうち少なくとも1つを部分的に基礎とする。適当なキャッピング基は、例えば、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル、および下記のようなオリゴヌクレオチドを含み
【化5】
【0049】
ここで、X2およびX3はX1と同一であるかまたは別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である。
【0050】
好ましいキャッピング基(II)および(III)は、下記の化学式(i)、(ii)、(iii)および(iv)の組成物が生成されるのを可能にする:
【化6】
【0051】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0052】
本発明の別の好ましい一実施形態では、L4は下記の化学式のうちから選択された放出可能な連結部分である:
【化7】
【0053】
ここで、Y1-25はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、およびR27-41は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
Arは多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環基を形成する部分であり;
L5-12は独立して二官能性スペーサーであり;
Zは、標的細胞中へ能動的に輸送される部分、疎水性部分、二官能性連結部分およびその組み合わせから選択され;
c、h、k、l、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は独立して選択された正の整数であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または正の整数のどちらかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【0054】
別の好ましい一実施形態では、L1は下記の化学式のうちから選択された放出可能な連結部分である:
【化8】
【0055】
ここで、Y1’-25’はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;および
L5’-12’は独立して二官能性スペーサーである。
【0056】
本発明の一部の好ましい一実施形態では、L5-12は独立して、下記のうちから選択された二官能性スペーサーであり:
【化9】
【0057】
さらに、L5’-12’は独立して、下記のうちから選択された二官能性スペーサーである:
【化10】
【0058】
ここで、R55-R59およびR55'-59'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され、および
R60およびR60'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンより成る群から独立して選択され;および
s'およびt'は正の整数である。
【0059】
本発明の別の好ましい一実施形態では、L2およびL3は、独立して約1から約60個の炭素原子および約1ないし約10個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。好ましくは、L2およびL3は、独立して約2から約10個の炭素原子および約1ないし約6個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。非常に好ましくは、L3は下記のうちから選択される:
【化11】
【0060】
さらに、最も好ましくは、L2は下記のうちから選択される:
【化12】
【0061】
ここで、QおよびQ'はO、SまたはNHから独立して選択され;
R50-53およびR50'-53'は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
R54およびR54'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンより成る群から独立して選択され;および
q'およびr'はそれぞれ正の整数である。
【0062】
本発明の化学式を構成する他の変数に関しては、下記が好ましい:
Y1-25およびY1'-25'はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、R27-41、ならびにR6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アラルキル、およびC1-6ヘテロアルキルより成る群から独立して選択され;
c、h、k、1、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は1であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または1のいずれかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【0063】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態では、化学式(Ia)の化合物が提供される:
【化13】
【0064】
ここで、L2はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基であり;
u'は正の整数であり;および
Tは、参照によりそれぞれ本開示に含まれる、同一出願人による国際公開第02/065988号パンフレットおよび国際公開第02/066066号パンフレットに記載された化合物のうちから好ましくは選択される分枝鎖ポリマーである。これらの一般化学式の中で、下記が好ましい:
【化14−1】
【化14−2】
ここで、D'は下記のうちの1つであり:
【化15】
【0065】
ここで、R61は、R61が両端に置換基を有するのが示される場合はポリマーは二官能性であり得るという了解の下で、R1について定義されたようなポリマー残基であり;および他のすべての変数は上記の通りである。
【0066】
例示の目的で、化学式(Ia)の非限定的な化合物は下記の通りである:
【化16】
【0067】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0068】
化学式(Ia)の別の一態様は、少なくとも4個のオリゴヌクレオチドが送られるようにポリマー残基(R61)がαおよびω末端連結基の両方を含む場合に生じる二官能性化合物を含む。
【0069】
そのようなポリマー複合体の例は下記に化学式(vi)および(vii)として例示される:
【化17】
【0070】
ここで、すべての変数は上記の通りである。
【0071】
本発明の別の好ましい一実施形態では、L2およびL3は、独立して約1から約60個の炭素原子および約1ないし約10個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。好ましくは、L2およびL3は、独立して約2から約10個の炭素原子および約1ないし約6個のヘテロ原子を有するスペーサー基である。非常に好ましくは、L3は下記のうちから選択される:
【化18】
【0072】
さらに、最も好ましくは、L2は下記のうちから選択される:
【化19】
【0073】
ここで、QおよびQ'はO、SまたはNHから独立して選択され;
R50-53およびR50'-53'は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
R54およびR54'は、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンより成る群から独立して選択され;および
q'およびr'はそれぞれ正の整数である。
【0074】
本発明の化学式を構成する他の変数に関しては、下記が好ましい:
Y1-25およびY1'-25'はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、R27-41、ならびにR6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アラルキル、およびC1-6ヘテロアルキルより成る群から独立して選択され;
c、h、k、1、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は1であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または1のいずれかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【0075】
C.Ar部分の説明
本発明の一部の態様では、Ar部分が化学式(I)に含まれる場合に多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環基を形成する部分であることがわかる。重要な性質は、そのAr部分が本質的に芳香族である点である。一般的に、芳香族であるためには、パイ電子は環分子の平面の上および下の両方の「電子雲」の中で共有されなければならない。さらに、パイ電子の数はHuckel則を満たさなければならない(4n+2)。無数の部分が化学式(I)についての部分の芳香族条件を満たしおよびしたがってここでの使用に適することを当業者は理解する。
【0076】
一部の特に好ましい芳香族基は下記を含む:
【化20】
【0077】
ここで、R62-67は、R6を定義するのと同一の群から独立して選択される。
【0078】
他の好ましい芳香族炭化水素部分は、限定はされないが下記のものを含む:
【化21】
【0079】
ここで、EおよびE'は独立してCR68またはNR69であり;およびJはO、SまたはNR70であって、R68-70はR6を定義するのと同一の群から選択されるかまたはシアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、置換アシルまたはカルボキシアルキルである。五員環および六員環の異性体もまた考えられており、および、ベンゾおよびジベンゾ系およびそれらの関連する同族体もまた考えられている。また、Huckel則が満たされる限り芳香族環は必要に応じてO、S、NR9、などといったヘテロ原子で置換され得ることが当業者に理解される。さらに、芳香族またはヘテロ環構造は必要に応じてハロゲンおよび/または側鎖で置換でき、それらの語は本分野で通常理解されている。
【0080】
D.ポリアルキレンオキサイド
化学式(I)を参照すると、R1およびR2はポリアルキレンオキサイドといったポリマー部分であることがわかる。そのようなポリマーの適当な例は、実質的に非抗原性であるポリエチレングリコールを含む。同一出願人による米国特許第5,643,575号明細書、第5,919,455号明細書および第6,113,906号明細書に記載されたもののようなポリプロピレングリコールもまた有用である。本発明の方法で有用な他のPEGは、Shearwater Polymers,Inc.のカタログ『ポリエチレングリコールおよび誘導体2001』に記載されている。それぞれの開示は参照により本開示に含まれる。R1およびR2は好ましくはPEG誘導体、例えば−O−(CH2CH2O)x−である。この態様では、R1-2は下記のうちから独立して選択される:
【化22】
【0081】
ここで、n'は重量平均分子量が少なくとも約2,000Daから約136,000Daとなるように選択された重合度であり;
R48は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から選択され;および
Jはメチル基のようなキャッピング基、または二官能性ポリマーを提供することを可能にする相補連結基である。
【0082】
PAOおよびPEGは実質的に重量平均分子量が異なり得るが、本発明の大部分の態様で、好ましくは、R1およびR2は独立して約2,000Daないし約136,000Daの重量平均分子量を有する。より好ましくは、R1およびR2は独立して約3,000Daないし約100,000Daの重量平均分子量を有し、約5,000Daないし約40,000Daの重量平均分子量が非常に好ましい
本開示に含まれるポリマー物質は好ましくは室温にて水溶性である。そのようなポリマーの非限定的な一覧は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールといったポリアルキレンオキサイドホモポリマー、その共重合体およびそのブロック共重合体を含み、ただしブロック共重合体の水への溶解度が維持されることを条件とする。
【0083】
E オリゴヌクレオチドポリマー複合体の合成
概して、プロドラッグは以下の工程によって調製される:
a)下記化学式の化合物:
R2−L4−脱離基
を、下記化学式の化合物:
H−L3−X1
と、下記の化学式のプロドラッグを生じるのに十分な条件下で反応させる:
R2−L4−L3−X1
ここで、
R2はポリマー残基であり;
L4は放出可能な連結部分であり;
L3はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である。
【0084】
本発明のこの態様では、結合した放出可能なリンカーを既に含む活性化ポリマーを用いるのが好ましい。適当な組み合わせの非限定的な一覧は、それぞれの内容が参照により本開示に含まれる、同一出願人による米国特許第6,624,142号明細書、第6,303,569号明細書、第5,965,119号明細書、第6,566,506号明細書、第5,965,119号明細書、第6,303,569号明細書、第6,624,142号明細書、および第6,180,095号明細書に記載された放出可能なPEGを基礎とする輸送系を含む。
【0085】
具体的な例は下記を含むがそれらに限定されず、もちろんポリマー部分の分子量は当業者の必要に応じて変え得ることが理解される:
【化23】
【0086】
次に、上記のポリマー放出可能なリンカーを、修飾オリゴマーと、複合体が形成されるのを可能にするのに十分な条件下で反応させる。
【0087】
上記のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのいずれかは、ホスホロアミダイト法といった常法を用いて目的のアルキル−アミノまたは他の基を末端リン酸へ付加して、5'または3'末端リン酸またはホスホロチオエートの1つで官能基化することができる。例えば、ブロック化(Fmoc)アミノアルキルが付加され、結果として得られる化合物が酸化され、脱保護されおよび精製される。
【0088】
具体的なオリゴヌクレオチドポリマー複合体またはプロドラッグの合成を実施例に示す。あるいは、プロドラッグは以下の工程によって調製される:
1)活性化PEGポリマーを二官能性の放出可能な連結基と、第1の中間体を生じる適当な条件下で反応させ;
2)工程1)の中間体を脱保護し、さらにNHSエステルといった適当な活性化基を用いて活性化する;さらに
3)工程3)の活性化された中間体をPBS緩衝系中で修飾オリゴヌクレオチドと反応させ、目的のオリゴヌクレオチドポリマープロドラッグを得る。
【0089】
活性化ポリマーの非限定的な一覧は、ビス−スクシンイミジルカルボナート活性化PEG(SC−PEG)、ビス−チアゾリジン−2−チオン活性化PEG(T−PEG)、Nヒドロキシフタルアミジルカルボナート活性化PEG(BSC−PEG)、(参照により本開示に含まれる、同一出願人による米国特許出願第09/823,296号明細書を参照)、スクシンイミジルスクシネート活性化PEG(SS−PEG)および、例えば、前出の2001Shearwaterカタログに見られるもののようなモノ活性化PEGを含む。
【0090】
活性化PEGポリマーの、保護された二官能性の放出可能な連結基への結合は、カップリング剤の存在下で実施することができる。適当なカップリング剤の非限定的な一覧は、例えばSigma−Aldrich Chemicalといった販売元から入手可能であるかまたは公知の方法を用いて合成される、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド (DIPC)、任意の適当な ジアルキル カルボジイミド、2−ハロ−1−アルキル−ピリジニウムハロゲン化物 (向山 試薬)、1− (3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル カルボジイミド (EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物 (PPACA) および フェニルジクロロリン酸などを含む。
【0091】
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(CH3CN)、塩化メチレン(DCM)、クロロホルム(CHCl3)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはその混合物といった不活性溶媒中で、および0℃ないし最大約22℃(室温)の温度にて置換基を反応させる。
【0092】
修飾オリゴヌクレオチドのPEG−放出可能リンカーへの結合は、約7.4−8.5のpH範囲にあるPBS緩衝系中で実施することができる。当業者はもちろん、本開示に記載されるプロドラッグの合成はまた、通常見られる実験条件、すなわち実施例に記載されるような溶媒、温度、カップリング剤などの使用を含むことを理解する。
【0093】
選択された合成にかかわらず、本開示に記載される合成法の結果として得られる好ましい化合物の一部は下記を含む:
【化24−1】
【化24−2】
【化24−3】
ここで、
【化25】
【0094】
は、オリゴヌクレオチドおよび末端リン酸修飾の位置を表し、およびmPEGはCH3−O−(CH2−CH2−O)X−であり;xは約10ないし約2300から選択された正の整数である。
【0095】
本発明のより好ましい化合物は下記を含む:
【化26】
【0096】
G.治療方法
本発明の別の一態様は、哺乳類におけるさまざまな医学的症状のための治療の方法を提供する。本方法は、そのような治療を必要とする哺乳類へ、本開示に記載の方法通りに調製されたオリゴヌクレオチドプロドラッグの有効寮を投与することを含む。本組成物は、哺乳類において、特に、新生物性疾患の治療、腫瘍組織量の減少、新生物の転移の防止および、腫瘍/新生物増殖、肝疾患、HIVのようなウイルス疾患の再発の防止に有用である。本発明のプロドラッグは、天然のオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドが用いられる適応のどれにでも、すなわち癌治療などに用いることができる。単に一例として、本発明のプロドラッグは、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌および多数にわたるため挙げない他の腫瘍または癌の治療に使用することが考えられている。
【0097】
投与されるプロドラッグの量は、含まれる親分子および治療される症状に依存する。一般的に、本治療法に用いられるプロドラッグの量は、哺乳類において目的の治療結果を効果的に達成する量である。必然的に、さまざまなプロドラッグ化合物の用量は、親化合物、in vivo加水分解の速度、ポリマーの分子量、などにいくらか依存して変動する。上記に示す範囲は一例であり、および当業者が、臨床経験および治療適応に基づいて選択されたプロドラッグの最適な投与を決定する。実際の用量は、必要以上の実験なしに当業者に明らかとなる。
【0098】
本発明のプロドラッグは、哺乳類への投与のための1つ以上の適当な医薬組成物に含めることができる。本医薬組成物は、本分野で既知である方法に従って調製された、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル剤などの剤形であり得る。また、そのような組成物の投与は、当業者の必要に応じて、経口および/または非経口経路によることができることが考えられている。本組成物の溶液および/または懸濁液は、例えば静脈注射、筋肉内注射、皮下注射などのような本分野で既知の任意の方法による、例えば、本組成物の注射または浸潤用のキャリヤー媒体として利用することができる。
【0099】
そのような投与はまた、体腔または空洞への注入により、および吸入および/または鼻腔内経路によることができる。本発明の好ましい態様では、しかし、本プロドラッグはそれを必要とする哺乳類へ非経口的に投与される。
【0100】
また、本発明のプロドラッグが、本分野で公知である他の抗癌剤と併用して(例えば、同時におよび/または連続して)投与されることが考えられている。適当な抗癌剤は、単に例として、そのような薬剤を少数だけ挙げると下記を含む:(パクリタキセル; Bristol Myers Squibb);Camptosar(登録商標)(イリノテカン; Pfizer.) ;Gleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ;Novartis);Rituxan(登録商標)(リツキシマブ;Genentech/IDEC);Fludara(登録商標)(フルダラビン;Berlex Labs);Cytoxan(登録商標)(シクロホスファミド; Bristol Myers Squibb);Taxotere(登録商標)(ドセタキセル;Aventis Phannaceuticals);Mylotarg(登録商標)(ゲムツズマブ・オゾガマイシン;Wyeth−Ayerst);シトシンアラビノシドおよび/またはデキサメタゾン。
【実施例】
【0101】
下記の実施例は本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、いかなる方法でも本発明の有効範囲を制限しないことが意図される。実施例中で列挙される下線および太字の数字は、図面に示される数字に対応する。各図において、糖部分およびリン酸骨格は下記のように表される:
【化27】
【0102】
塩基=A,G、CまたはT、あるいは単に―で表される:
mPEGの表記は以下を表すと解される:
【化28】
【0103】
一般的手順 PEGリンカーとオリゴヌクレオチドの間のすべての結合反応はPBS緩衝液系中で室温にて実施された。一般的に有機溶媒を用いた抽出によって未反応オリゴヌクレオチドを除去し、さらに陰イオン交換クロマトグラフィーによってPEG−オリゴ複合体を未反応の過剰のPEGリンカーから分離して純粋な産物をもたらした。
【0104】
HPLC法 反応混合物ならびに中間体および最終産物の純度は、Beckman Coulter System Gold(登録商標)HPLC装置によって、ZORBAX(登録商標)300 SB C−8逆相カラム(150x4.6mm)またはPhenomenex Jupiter(登録商標)300A C18逆相カラム(150x4.6mm)を使用し、多波長UV検出器を用いて、30−90%のアセトニトリルを含む0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)および25−35%アセトニトリルを含む4mMTBAC1含有50mMTEAA緩衝液のグラジエントを使用して流速1mL/分にて監視した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、Applied BiosystemsからのBio−Cad 700E潅流クロマトグラフィーワークステーション上で、WatersからのAP空ガラスカラムに充填したApplied BiosystemsからのPoros 50HQ強陰イオン交換樹脂またはAmersham BiosciencesからのDEAE Sepharoseファストフロー弱陰イオン交換樹脂のどちらかを用いて実施した。脱塩はApplied BiosystemsからのHiPrep26/10またはPD−10脱塩カラムを用いて達成した。
【0105】
実施例1
化合物3 化合物1(440mg、0.036mmol)および2(5mg、3.6μmol)のPBS緩衝液(10mL、pH7.4)溶液を室温にて12時間攪拌した。反応溶液を塩化メチレン(DCM、3x10mL)を用いて抽出し、および合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水に溶解し(100mgあたり1.5mL)およびHQ/10Poros強陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量−6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に0.2MNH4HCO3溶液で溶出した(〜2カラム容量)。純粋な産物を含む画分をプールしおよび凍結乾燥して純粋な3を得た(19mg、1.44mmol、40%)。
【0106】
実施例2−6
化合物5、7、9、11、および12は、3と同様の方法で作成および精製し、収率は30%ないし50%の範囲であった。
【0107】
実施例7
化合物14 化合物13(10mg、1.7μmol)を含むPBS緩衝液(5mL、pH7.4)溶液に、10(175mg、85pmol)を等量に分けて5回、毎時間加え、および室温にて12時間攪拌した。反応溶液をDCM(3x10mL)および食塩水(10mL)を用いて抽出し、さらに合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水(1.5mL)に溶解し、および20mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4で予め平衡化したDEAEファストフロー弱陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に、0から100%の1M NaClを含む20mMトリス−HCl緩衝液7.4の10分間でのグラジエントを用い、次いで100%1M NaClを10分間流速3mL/分にて溶出した。純粋な産物を含む画分をプールし、およびPD−10脱塩カラムで0.2M NH4HCO3溶液(〜2カラム容量)を用いて脱塩し、および結果として得られた溶液を凍結乾燥して純粋な14を得た(25mg、0.95μmol、57%)。
【0108】
実施例8
化合物16は、14と同様の方法で作成および精製し、収率は60%であった。
【0109】
実施例9
化合物17 AS1(5mg、0.85μmol)を含むリン酸緩衝液(2mL、pH7.8)溶液へ、10(175mg、0.085mmol)を等量に分けて5回、2時間中に加え、および結果として得られた溶液を室温にてさらに2時間攪拌した。反応溶液をDCM(3x6mL)および食塩水(5mL)を用いて抽出し、さらに合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水(5 mL) に溶解し、および20mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4で予め平衡化したDEAEファストフロー弱陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に、0から100%の1M NaClを含む20mMトリス−HCl緩衝液pH7.4の10分間でのグラジエントを用い、次いで100%1M NaClを10分間流速3mL/分にて溶出した。純粋な産物を含む画分をプールし、およびPD−10脱塩カラムで脱塩し、および結果として得られた溶液を凍結乾燥して純粋な17を得た(15mg、0.57μmol、67%)。
【0110】
実施例10−11
化合物18および19は、17と同様の方法で作成および精製し、収率はAS2およびAS3をAS1の代わりに用いて最終産物について67%であった。
【0111】
実施例12−15
化合物21は、12を20で置き換えることによって14と同様の方法で作成および精製し、収率は90%であった。
【0112】
化合物22は、12を20で置き換えることによって14と同様の方法で作成および精製し、収率は65%であった。
【0113】
化合物24は、12を23で置き換えることによって14と同様の方法で作成および精製し、さらに、脱塩では、産物を溶出するために0.2M NH4HCO3溶液の代わりに水(〜2カラム容量)を用いた。最終収率は30%であった。
【0114】
化合物26は、23を25で置き換えることによって24と同様の方法で作成および精製した。収率は30%であった。
【0115】
実施例16
化合物27 13(10mg、1.7μmol)を含むリン酸緩衝液(5mL、pH8.5)溶液に、10等分された27(180mg、0.084mmol)を加え、および結果として得られた溶液を室温にて4日間攪拌した。反応溶液をDCM(3x10mL)および食塩水(10mL)を用いて抽出し、さらに合わせた有機相を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、および溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を二回蒸留水(1.5mL)に溶解し、および20mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4で予め平衡化したDEAEファストフロー弱陰イオン交換カラム(10mmx60mm、ベッド容量〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは水と共に溶出し(3−4カラム容量)および産物はその後に、0から100%の1M NaClを含む20mMトリス−HCl緩衝液7.4の10分間でのグラジエントを用い、次いで100%1M NaClを10分間流速3mL/分にて溶出した。純粋な産物を含む画分をプールし、およびPD−10脱塩カラムで脱塩し、および結果として得られた溶液を凍結乾燥して純粋な14を得た(105mg、0.0102mmol、60%)。産物の純度はHPLCによって決定した。
【0116】
実施例17−21
化合物29、30および31は、13がそれぞれAS1、AS2およびAS3で置き換えられた点を除いて、28と同様の方法で作成および精製した。各最終産物について65%の収率が得られた。
【0117】
化合物33は、12を32で置き換えて14と同様の方法で作成および精製し、結果として76%の収率が得られた。
【0118】
化合物35は、活性化PEG34が10の代わりに用いられた点を除き、14と同様の方法で作成および精製した。最終収率は30%であった。
【0119】
生物学的データ
PEG−オリゴ複合体のin vitro特性の一部を下記の表に要約する:
【表4】
【0120】
PEG−オリゴ複合体のICRマウスにおける薬物動態
一般的手順
1)動物飼育:マウスは飼育ケージ内で、ケージ当たり6個体を飼育した。ケージは"Guide for the Care および Use of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal Resource", National Research Councilに従った大きさとした;
2)飼料:マウスは水道水を利用でき、および市販の実験用飼料を自由摂取させた;
3)化合物調製:化合物13を4.0mLの生理食塩水に溶解し、および化合物14を4.1mLの生理食塩水に溶解した;
4)投与部位:化合物13および14を単回投与(1日目)として尾静脈から投与した。
【0121】
実験計画
60個体のマウスを、下記の表5に示す以下の設計に従って群分けし、投与および採血した:
【表5】
【0122】
未処理対照血漿の採取のため、3個体の未処理マウスを心臓穿刺によってEDTA入り試験管へ採血した。
【0123】
マウスに1個体当たり100μLの天然の化合物13および14を静脈注射した。0.09%Avertinを用いて鎮静後、マウスは心臓穿刺によって〜1000μL採血し死亡させた。血液はEDTA入りバイアルに採取した。血液の遠心分離後に血漿を回収し、および直ちにドライアイス上で−80℃にて凍結させた。
【0124】
臨床検査:
マウスは被験物質の輸液後に1日1回、死亡および処置への反応の徴候に関して目視検査した。すべての死亡および臨床徴候を記録した。体重は注射当日だけ先に測定した。
【0125】
化合物28および33についての薬物動態試験を同様の方法で実施した。
【0126】
実験結果
薬物動態結果を下記の表6に要約する:
【表6】
【0127】
実施例22−25
アンチセンスPEG複合体のin vitro活性の確認
Bcl−2タンパク質は前立腺癌細胞において顕著な抗アポトーシス活性を有することが示されている。前立腺癌細胞におけるbcl−2タンパク質のダウンレギュレーションは細胞死によって確認され、およびbcl−2アンチセンスPEG複合体による細胞死の誘導を用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内送達の成功を確認した。
【0128】
実施例22−25についての材料および方法
試験した化合物を下記の表7に列挙する:
【表7】
【0129】
これら化合物は上記の通り調製した。
【0130】
細胞培養
マイコプラズマフリーPC3細胞は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から入手し、Roswell Park Memorial Institute培地(「RPMI」)(Invitrogen,Grand Island,NY) に10%ウシ胎仔血清(「FBS」)を加えた培地中で培養した。FBSは、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸、25mM HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸)緩衝液、100U/mlペニシリンGナトリウムおよび100μg/ml硫酸ストレプトマイシンを添加した10%(v/v)熱不活化(56℃)FBSを含む。ストック培養は37℃にて加湿5%CO2インキュベーター内で維持した。
【0131】
試薬
FBSおよびリポフェクチン(陽イオン性脂質の塩化N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−n,n,n−トリメチルアンモニウムのリポソーム処方)はInvitrogen (Grand Island,NY)から購入した。抗bcl−2モノクローナル抗体はDako(Carpinteria,CA)から入手した。抗αチューブリンモノクローナル抗体および臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(「MTT」)はSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、標準的な手順によって合成および精製した。
【0132】
オリゴヌクレオチドトランスフェクション
細胞は実験の前日に6ウェルプレートにウェル当たり25x104細胞の密度で播種し、実験当日に60−70%集密となるようにした。すべてのトランスフェクションはOpti−MEM培地中で、FBSおよび抗生物質の非存在下で取扱説明書に従って実施した。適当な量の試薬を100μlのOpti−MEM培地で希釈し、リポフェクチンおよびオリゴヌクレオチドの終濃度を与えるようにした。溶液は穏やかに混合し、および室温にて30分間予備インキュベートして複合体を形成させた。次いで、800μlのOpti−MEMを加え、溶液を混合し、およびOpti−MEMで予め洗浄した細胞に重層した。Opti−MEM中のオリゴヌクレオチド/リポフェクチン複合体のためのインキュベート時間は24時間であって、次いで、10%FBSを含む完全培地中でインキュベートした。細胞溶解およびタンパク質単離の前の総インキュベート時間は通常は37℃にて72時間であった。
【0133】
ウェスタンブロット分析
オリゴヌクレオチド−脂質複合体で処理した細胞をPBSで洗浄し、および次いで溶解緩衝液[50mMトリス−HCl pH 7.4、1%NP−40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EGTA、50μg/ml Pefabloc SC、15μg/mlアプロチニン、ロイペプチン、キモスタチン、ペプスタチンA、1mM Na3VO4、1mM NaF]で4℃にて1時間抽出した。細胞残渣を14000gで20分間4℃にての遠心分離によって除去した。タンパク質濃度はBio−Radプロテインアッセイシステム(Bio−Rad Laboratories,Richmond,CA)を用いて測定した。25−40μgのタンパク質を含む、細胞抽出物の部分標本をSDS−PAGEによって分離し、および次いでHybond ECL濾紙(Amersham,Arlington Heights,IL)へ転写し、および濾紙を、室温にて1−2時間、5%BSAを含み0.5%Tween−20を含むPBS中でインキュベートした。濾紙を次いで、抗bcl−2抗体の、5%BSAを含み0.5%Tween−20を含むPBSでの1:500希釈で、4℃にて一夜プロービングした。0.5%Tween−20を含むPBSで洗浄後、濾紙を1時間室温にて、5%ミルクを含み0.5%Tweenを含むPBS中で1:3,000希釈のペルオキシダーゼ結合二次抗体(Amersham)と共にインキュベートした。洗浄後(3x10分間)、電気化学発光(「ECL」)を取扱説明書に従って実施した。
【0134】
細胞増殖の測定
細胞生存に及ぼすPEG複合体の作用をMTT測定法によって測定した。要約すると、15−20x104細胞を6ウェルプレートに播種し、および一夜付着させた。細胞を次いで適当な濃度の、リポフェクチンと複合体化させたオリゴヌクレオチドを用いて24時間37℃にて処理し、次いで10%FBSを含む完全培地(100μl)中でインキュベートした。細胞生存は毎日測定した。10μlの5mg/ml MTTを含むPBSを各ウェルに加え、続いて4時間37℃にてインキュベートした。その後、100μlの10% SDS含有0.04 M HClを各ウェルに加え、次いで一夜37℃にてインキュベートしてホルマザン結晶を溶解する。吸光度を570nmにてBenchmark plusマイクロプレート分光光度計(Bio Rad,Hercules,CA)を用いて測定した。実験は6連で実施し、およびデータは平均±S.D.で示す。
【0135】
細胞内ROSレベルの定量
2',7'−ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸(H2DCF−DA)およびジヒドロエチジウム(HE)を用いて活性酸素種(「ROS」)およびスーパーオキシドレベルを測定した。両方の色素は非蛍光性であり、および自由に細胞中へ拡散し得る。HEがエチジウム(E)へ酸化される際、それは細胞DNAに挿入され、さらに蛍光を生じる。H2DCF−DAの酸化は2'−7'ジクロロフルオレセイン(DCF)を生じ、これもまた蛍光を発し、両方がフローサイトメトリーによって検出され得る。細胞はトリプシン処理によって採取し、PBSで洗浄し、さらに50μM H2DCF−DAまたは50μM HEを用いてフェノールレッドフリーDMEM中で2時間37℃にて染色した。DCFおよびEの平均蛍光チャンネル数はフローサイトメトリーによってFL−1およびFL−2チャンネルでそれぞれ分析した。最小10,000細胞が各試料について捕獲され、データはCELLQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析した。棒グラフは対数目盛でプロットした。
【0136】
実施例22 Bcl−2タンパク質発現の阻害
bcl−2発現を標的とする3種類のPEGオリゴヌクレオチド(化合物14、28および33)をPC3細胞にトランスフェクションし、およびそれらがbcl−2タンパク質発現を阻害する能力を、ウェスタンブロッティングによって評価した。
【0137】
リポフェクチンの作用
最初に、化合物14によって誘導されるPC3細胞におけるbcl−2タンパク質発現の阻害の程度を、リポフェクチンの存在下および非存在下で測定した。PC3細胞は化合物14(200、400および800nMにて)を用いてリポフェクチンの存在下または非存在下で24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg/レーン)をウェスタンブロッティングによって、チューブリンを対照タンパク質種として用いて、材料および方法の項に記載の通りに分析した。対照の未処理細胞に対する%阻害は、レーザースキャンデンシトメトリーによって測定した。ウェスタンブロット結果を図12に示す。
【0138】
α−チューブリンおよびPKC−αの発現は変化せず、リポフェクチンが化合物14のPC−3細胞への浸透を得るために有用であることが確認され、および、bcl−2タンパク質発現だけが化合物14によってダウンレギュレートされたことが確認された。
【0139】
さらなる研究は、化合物14および28は400nMで最も活性であったことを実証した。PC3細胞を、400、800および1000nMの化合物14、化合物28、および化合物23とリポフェクチンの複合体を用いて、24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg//レーン)をウェスタンブロッティングによって、チューブリンを対照タンパク質種として用いて、材料および方法の項に記載の通りに分析した。対照の未処理細胞に対する%阻害は、レーザースキャンデンシトメトリーによって測定した。
【0140】
化合物14は86%ダウンレギュレーションを生じ、および化合物28は78%ダウンレギュレーションを生じた。
【0141】
実施例23 PEGオリゴヌクレオチドによるbcl−2タンパク質発現の用量依存分析
化合物14および28のbcl−2タンパク質発現に対する阻害作用をさらに確認するために、PC3細胞をリポフェクチンと複合体化した漸増濃度(25、50、100、200および400nM)の化合物14、化合物28、および陽性対照として化合物13を用いて、24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg//レーン)をウェスタンブロッティングによって、前出の材料および方法の項に記載の通りに分析した。
【0142】
bcl−2タンパク質発現の濃度依存的阻害は、対照と相対的に、化合物14および28についてのウェスタンブロットによって観察された。約1−2%阻害が50nMで観察され、濃度400nMでは99%および75%へ上昇した。化合物24については、50nMでは本質的に阻害は観察されなかったが、阻害は濃度400nMでは77%へ上昇した。化合物13を用いたトランスフェクションを陽性対照として用いた。α−チューブリンの発現はどのオリゴヌクレオチドによっても阻害されなかった。
【0143】
上記の実験を、対照として化合物24を用いて繰り返した。PC3細胞をリポフェクチンと複合体化した化合物35および24(25、50、100、200および400nM)を用いて、24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg//レーン)をウェスタンブロッティングによって、チューブリンを対照タンパク質種として用いて、前出の材料および方法の項に記載の通りに分析した。対照の未処理細胞に対する%阻害は、レーザースキャンデンシトメトリーによって測定した。
【0144】
実施例24 PC3細胞増殖に及ぼすPEGオリゴヌクレオチドの作用
PC3前立腺癌細胞の増殖にin vitroで及ぼす化合物14および化合物28の作用もまた試験した。PC3細胞はオリゴヌクレオチド/リポフェクチン複合体を用いて処理した。図10に結果を示す(n=4)。曲線は下記の通りである:
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図10に示す通り、400および200nMでのアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物14のトランスフェクションは細胞増殖を強く阻害し、一方、化合物28は増殖速度にわずかに影響しただけであった。
【0145】
実施例25 PC3細胞における活性酸素種の産生に及ぼすPEGオリゴヌクレオチドの作用
PC3細胞における活性酸素種すなわちROSの産生をフローサイトメトリーで2つの方法によって評価した。第1はヒドロエチジウム(HE)のエチジウム(E)への酸化に基づき、これはその後DNA中へ挟み込まれ、フローサイトメトリーによって検出可能な蛍光を伴う。第2の方法は、細胞浸透性である2'、7'−ジヒドロジクロロフルオレセイン二酢酸の、蛍光性である2'、7'−ジクロロフルオレセイン(DCF)への酸化を利用した。PC3細胞では、化合物14/リポフェクチン(400nM/15μg/ml)複合体を用いた24時間のOpti−MEM中での処理は、3日後にフローサイトメトリーにより、E(対照の未処理細胞に対して1.9倍増加)およびDCF(対照の未処理細胞に対して2倍増加)蛍光の両方によって評価された通りのROSを生じた。図11に要約されたデータによって確認される通り、化合物28は、対照の未処理細胞に対するROS産生に全く増加を生じなかった。さらに、ROSの産生は細胞増殖の速度と非常に密接に関連している;細胞は400nMの化合物14を用いた処理後に増殖を停止し、およびこのオリゴヌクレオチドはまた、ROSの産生の増加を引き起こす(DCFおよびHE)。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、化合物3および5のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図2】図2は、化合物7および9のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図3】図3は、化合物11、12(配列番号1)および14(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図4】図4は、化合物16(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図5】図5は、AS1(配列番号2)、AS2(配列番号3)およびAS3(配列番号4)からの、化合物17(配列番号2)、18(配列番号3)および19(配列番号4)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図6】図6は、化合物21(配列番号1)および22(配列番号2)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図7】図7は、化合物24(配列番号1)および26(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図8】図8は、AS1(配列番号2)、AS2(配列番号3)およびAS3(配列番号4)からの、化合物28(配列番号1)、29(配列番号2)、30(配列番号3)および31(配列番号4)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図9】図9は、化合物33(配列番号1)および35(配列番号1)のPEG化オリゴヌクレオチドの調製の方法を図式的に説明する。
【図10】図10は、PC3細胞増殖に及ぼす化合物14および化合物28の阻害作用を説明する。0.4x104細胞を96ウェルプレートに播種し、化合物14または化合物28(400nM)とリポフェクチン(15μg/ml)の複合体のどちらかを用いて24時間Opti−MEM中で、およびその後、複合体を含まない完全培地中で処理した。細胞の生存を毎日判定し、および570nmにて吸光度を測定した。データは平均+標準偏差として示す;n=4。
【図11】図11Aは、細胞浸透性である2',7'−ジヒドロジクロロフルオレセイン2酢酸の、蛍光性である2',7'−ジクロロフルオレセイン(DCF)への酸化を検出することによる、化合物14および化合物28オリゴヌクレオチドによるROS産生(フローサイトメトリー分析より)の要約を与える。PC3細胞はオリゴヌクレオチド(400nM)/リポフェクチン(15μg/ml)複合体で24時間処理し、および3日後に、記載の通り測定した。平均蛍光チャンネルでの増加倍数は未処理細胞に対して正規化した。実験は3連で行い、およびデータは平均±標準偏差(n=3)として表す。図11Bは、後でDNAに挟み込まれフローサイトメトリーによって検出可能な蛍光を有するエチジウム(E)への、水素化エチジウム(HE)の酸化を検出することによる、化合物14および化合物28オリゴヌクレオチドによるROS産生(フローサイトメトリー分析より)の要約を与える。PC3細胞はオリゴヌクレオチド(400nM)/リポフェクチン(15μg/ml)複合体で24時間処理し、および3日後に、記載の通り測定した。平均蛍光チャンネルでの増加倍数は未処理細胞に対して正規化した。実験は3連で行い、およびデータは平均±標準偏差(n=3)として表す。
【図12】図12は、リポフェクチンの存在下での化合物14によるbcl−2タンパク質発現の阻害を確認するウェスタンブロット結果である。PC3細胞は、化合物14オリゴヌクレオチド(200、400および800nM)を用いてリポフェクチンの存在下(+Lipo)および非存在下(−Lipo)で24時間Opti−MEM中で、および次いでさらに67時間完全培地中で処理した。タンパク質試料(タンパク質30−40μg/レーン)は「材料および方法」に記載の通りウェスタンブロッティングによって分析し、チューブリンを対照タンパク質種として用いた。「C」は対照を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(I)のオリゴヌクレオチドプロドラッグ:
【化1】
ここで、R1およびR2は独立してHまたはポリマー残基であり;
L1およびL4は独立して選択された放出可能な連結部分であり;
L2およびL3は独立して選択されたスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基であり;
m、n、oおよびpは独立して0または正の整数であり、ただし(o+n)または(p+m)≧2のいずれかである。
【請求項2】
前記ヌクレオチドが下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化2】
ここで、MはOまたはSであり;
B1およびB2はA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)、U(ウラシル)および修飾塩基より成る群から独立して選択され;
R100およびR101は、H、R'がHであるOR'、C1-6アルキル、置換アルキル、ニトロ、ハロ、およびアリールより成る群から独立して選択される。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、約10ないし約1000ヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項4】
MがSであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドがホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチド残基が、アンチセンスオリゴヌクレオチド残基またはオリゴデオキシヌクレオチド残基であることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項7】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチド残基またはオリゴデオキシヌクレオチド残基が、ホスホジエステル骨格またはホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチド、LNA、PNA、トリシクロDNA、おとりODN、RNAi、リボザイム、シュピーゲルマー、およびCpGオリゴマーより成る群から選択されることを特徴とする請求項6記載のプロドラッグ。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1から4より成る群から選択される配列を有し、配列番号4のXが適合する任意のヌクレオチドであることを特徴とする請求項6記載のプロドラッグ。
【請求項9】
R1およびR2のうち少なくとも1つが、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル、
【化3】
ここでX2およびX3はX1と独立して選択されるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である
よりなる群から選択されるキャッピング基Aを有するポリマー残基であることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項10】
下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項9記載のプロドラッグ:
【化4】
【請求項11】
L4が下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化5】
ここで、Y1-25はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、およびR27-41は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
Arは多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環基を形成する部分であり;
L5-12は独立して二官能性スペーサーであり;
Zは、標的細胞中へ能動的に輸送される部分、疎水性部分、二官能性連結部分およびその組み合わせから選択され;
c、h、k、l、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は独立して選択された正の整数であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または正の整数のどちらかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【請求項12】
L1が下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化6】
ここで、Y1’-25’はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;および
L5’-12’は独立して二官能性スペーサーである。
【請求項13】
R1-2がそれぞれポリアルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項14】
R1-2がそれぞれポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項15】
R1-2が下記のものより成る群から独立して選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化7】
ここで、n'は重合度であり;
R48は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から選択され;さらに
Jはキャッピング基である。
【請求項16】
R1-2が独立して−O−(CH2CH2O)x−であり、
xが、重量平均分子量が少なくとも約2,000Daから約136,000Daとなるように選択された正の整数であることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項17】
R1-2が独立して約3,000Daないし約100,000Daの重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項18】
R1-2が独立して約5,000Daないし約40,000Daの重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項19】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがオブリマーセン(配列番号1)であることを特徴とする請求項8記載のプロドラッグ。
【請求項20】
下記の化学式のオリゴヌクレオチドプロドラッグ:
【化8】
ここで、L2はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基であり;
u'は正の整数であり;さらに
Tは下記のものより成る群から選択される:
【化9】
ここで、D'は下記のもののいずれか1つであり、さらにR61はポリマー残基である:
【化10】
【請求項21】
下記のものより成る群から選択され、それらのすべてが配列番号1のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化11】
【請求項22】
プロドラッグを作成する方法であって:
R2−L4−脱離基 の化学式で表される化合物を、
H−L3−X1 の化学式で表される化合物と、
R2−L4−L3−X1 の化学式のプロドラッグを生成するのに十分な条件下で反応させる工程を含み、
R2はポリマー残基であり;
L4は放出可能な連結部分であり;
L3はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である;ことを特徴とする方法。
【請求項23】
治療を必要とする哺乳類に、請求項1記載のプロドラッグの効果量を投与することを含む、哺乳類を治療する方法。
【請求項24】
哺乳類において癌を治療することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
X1がアンチセンスオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドプロドラッグと同時にまたは連続して第2の抗癌剤も投与して、前記哺乳類を治療することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項1】
下記の化学式(I)のオリゴヌクレオチドプロドラッグ:
【化1】
ここで、R1およびR2は独立してHまたはポリマー残基であり;
L1およびL4は独立して選択された放出可能な連結部分であり;
L2およびL3は独立して選択されたスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基であり;
m、n、oおよびpは独立して0または正の整数であり、ただし(o+n)または(p+m)≧2のいずれかである。
【請求項2】
前記ヌクレオチドが下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化2】
ここで、MはOまたはSであり;
B1およびB2はA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)、U(ウラシル)および修飾塩基より成る群から独立して選択され;
R100およびR101は、H、R'がHであるOR'、C1-6アルキル、置換アルキル、ニトロ、ハロ、およびアリールより成る群から独立して選択される。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、約10ないし約1000ヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項4】
MがSであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドがホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチド残基が、アンチセンスオリゴヌクレオチド残基またはオリゴデオキシヌクレオチド残基であることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項7】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチド残基またはオリゴデオキシヌクレオチド残基が、ホスホジエステル骨格またはホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチド、LNA、PNA、トリシクロDNA、おとりODN、RNAi、リボザイム、シュピーゲルマー、およびCpGオリゴマーより成る群から選択されることを特徴とする請求項6記載のプロドラッグ。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1から4より成る群から選択される配列を有し、配列番号4のXが適合する任意のヌクレオチドであることを特徴とする請求項6記載のプロドラッグ。
【請求項9】
R1およびR2のうち少なくとも1つが、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル、
【化3】
ここでX2およびX3はX1と独立して選択されるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である
よりなる群から選択されるキャッピング基Aを有するポリマー残基であることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項10】
下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項9記載のプロドラッグ:
【化4】
【請求項11】
L4が下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化5】
ここで、Y1-25はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6-7、R9-13、R16-25、およびR27-41は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;
Arは多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環基を形成する部分であり;
L5-12は独立して二官能性スペーサーであり;
Zは、標的細胞中へ能動的に輸送される部分、疎水性部分、二官能性連結部分およびその組み合わせから選択され;
c、h、k、l、r、s、v、w、v'、w'、c'、およびh'は独立して選択された正の整数であり;
a、e、g、j、t、z、a'、z'、e'およびg'は独立して0または正の整数のどちらかであり;および
b、d、f、i、u、q、b'、d'およびfは独立して0または1である。
【請求項12】
L1が下記のものより成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化6】
ここで、Y1’-25’はO、SまたはNR9より成る群から独立して選択され;
R6’-7’、R9’-13’、R16’-25’、およびR27’-41’は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から独立して選択され;および
L5’-12’は独立して二官能性スペーサーである。
【請求項13】
R1-2がそれぞれポリアルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項14】
R1-2がそれぞれポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項15】
R1-2が下記のものより成る群から独立して選択されることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化7】
ここで、n'は重合度であり;
R48は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシより成る群から選択され;さらに
Jはキャッピング基である。
【請求項16】
R1-2が独立して−O−(CH2CH2O)x−であり、
xが、重量平均分子量が少なくとも約2,000Daから約136,000Daとなるように選択された正の整数であることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項17】
R1-2が独立して約3,000Daないし約100,000Daの重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項18】
R1-2が独立して約5,000Daないし約40,000Daの重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項19】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがオブリマーセン(配列番号1)であることを特徴とする請求項8記載のプロドラッグ。
【請求項20】
下記の化学式のオリゴヌクレオチドプロドラッグ:
【化8】
ここで、L2はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基であり;
u'は正の整数であり;さらに
Tは下記のものより成る群から選択される:
【化9】
ここで、D'は下記のもののいずれか1つであり、さらにR61はポリマー残基である:
【化10】
【請求項21】
下記のものより成る群から選択され、それらのすべてが配列番号1のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ:
【化11】
【請求項22】
プロドラッグを作成する方法であって:
R2−L4−脱離基 の化学式で表される化合物を、
H−L3−X1 の化学式で表される化合物と、
R2−L4−L3−X1 の化学式のプロドラッグを生成するのに十分な条件下で反応させる工程を含み、
R2はポリマー残基であり;
L4は放出可能な連結部分であり;
L3はスペーサー基であり;
X1はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド残基である;ことを特徴とする方法。
【請求項23】
治療を必要とする哺乳類に、請求項1記載のプロドラッグの効果量を投与することを含む、哺乳類を治療する方法。
【請求項24】
哺乳類において癌を治療することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
X1がアンチセンスオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドプロドラッグと同時にまたは連続して第2の抗癌剤も投与して、前記哺乳類を治療することを特徴とする請求項23記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【公表番号】特表2007−524608(P2007−524608A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509819(P2006−509819)
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/010852
【国際公開番号】WO2004/092191
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/010852
【国際公開番号】WO2004/092191
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
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