説明

ポリマーコーティング試薬を含む新規な水溶性ナノ結晶、およびその調製方法

元素周期系(PSE)の主族II、亜族VIIA、亜族VIIIA、亜族IB、亜族IIB、主族IIIまたは主族IVの元素から成る群より選択される少なくとも1つの金属M1と、PSEの主族Vまたは主族VIから選択される少なくとも1つの元素Aとを含むナノ結晶コアと、ナノ結晶のコア表面に結合されたキャッピング試薬と、ナノ結晶コア上に水溶性ポリマーシェルを形成するためにキャッピング試薬と共有結合的にカップリングされた水溶性ポリマーとを含む水溶性ナノ結晶が開示される。このようなナノ結晶を含む組成物およびこのようなナノ結晶の使用も開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、新規な水溶性ナノ結晶およびその作製方法に関する。本発明は、これらに限定されるわけではないが、生物材料またはプロセスの検出および/または描出などの各種の分析および生物医学用途において、例えばin vitroまたはin vivoでの組織または細胞画像化においてを含む、このようなナノ結晶の使用に関する。本発明は、核酸、タンパク質、または他の生体分子を含む検体の検出に使用されうる、このようなナノ結晶を含有する組成物およびキットにも関する。
【0002】
[0002]半導体ナノ結晶(量子ドット)は、発光デバイス(Colvinら,Nature 370,354−357,1994;Tesslerら,Science 295,1506−1508,2002)、レーザ(Klimovら,Science 290,314−317,2000)、太陽電池(Huynhら,Science 295,2425−2427,2002)など、または細胞生物学などの生化学研究分野での蛍光生物標識などの各種の技術におけるその使用に関して大きな基礎的および技術的関心を受けてきた。例えばBruchezら,Science,vol.281,pages 2013−2015,2001;Chan & Nie,Science,vol.281,pages 2016−2018,2001;米国特許第6,207,392号,summarized in Klarreich,Nature,vol.43,pages 450−452,2001を参照;またMitchell,Nature Biotechnology,pages 1013−1017,2001,ならびに米国特許第6,423,551号,同第6,306,610号,および同第6,326,144号を参照。
【0003】
[0003]生物アッセイで使用するための高感度非同位体検出システムの開発は、多くの研究および診断分野、例えばDNA配列決定、臨床診断アッセイ、ならびに基礎細胞および分子生物学プロトコルに著しく影響を及ぼしてきた。現在の非同位体検出方法は、主に、色変化する、または蛍光性、発光性である有機レポータ分子に基づいている。分子の蛍光標識付けは、生物学において標準技法である。標識は、広範なスペクトル特徴、短い寿命、光退色および細胞に対する潜在的毒性の通常の問題を引き起こす有機染料であることが多い。量子ドットの最近出現した技術は、無機錯体または粒子を使用する蛍光標識の開発に新たな時代を開いた。これらの物質は、大きなストックス(Stocks)シフト、より長い発光半減期、狭い発光ピークおよび最小限の光退色を含む、有機染料に勝る実質的な利点を与える(上で引用した参考文献を参照)。
【0004】
[0004]過去10年間にわたって、多種多様の半導体ナノ結晶の合成およびキャラクタリゼーションで多くの前進がなされた。最近の進歩は、相対的に単分散の量子ドットの大規模調製に至っている(Murrayら,J.Am.Chem.Soc,115,8706−15,1993;Bowen Katariら,J.Phys.Chem.98,4109−17,1994;Hines,ら,J.Phys.Chem.100,468−71,1996.Dabbousi,ら,J.Phys.Chem.101,9463−9475,1997)。
【0005】
[0005]発光量子ドット技術のさらなる進歩は、量子ドットの蛍光効率および安定性の向上を引き起こしている。量子ドットの顕著な発光特性は、金属および半導体コア粒子が約1〜5nmの励起ボーア半径よりも小さいときに起こる、量子サイズ閉じ込めから生じる(Alivisatos,Science,271,933−37,1996;Alivisatos J.Phys.Chem.100,13226−39,1996;Brus,Appl.Phys,A53,465−74,1991;Wilsonら,Science,262,1242−46,1993)。最近の研究では、改善された発光がサイズ調整可能なより低いバンドギャップのコア粒子を、より高いバンドギャップの無機材料シェルによりキャッピングすることによって達成されうることが示されている。例えばZnS層によって不動態化されたCdSe量子ドットは室温にて発光性が強く、その発光波長は粒径を変更することにより青色から赤色に調整されうる。その上、ZnSキャッピング層は表面非発光性再結合部位を不動態化して、量子ドットのより高い安定性を生じる(Dabbousiら,J.Phys.Chem.B101,9463−75,1997.Kortan,ら,J.Am.Chem.Soc.112,1327−1332,1990)。
【0006】
[0006]発光量子ドット技術の前進にかかわらず、従来のキャップ発光量子ドットは、キャップ発光量子ドットが水溶性でないために生物用途には適切ではない。
【0007】
[0007]この問題を克服するために、量子ドットの有機不動態化層は水溶性部分によって置換された。しかしながら得られた量子ドットは、発光性が高くない(Zhongら,J.Am.Chem.Soc.125,8589,2003)。2−メルカプトエタノールおよび1−チオ−グリセロールなどの短鎖チオールも、水溶性CdTeナノ結晶の調製で安定剤として使用されている(Rogachら,Ber.Bunsenges.Phys.Chem.100,1772,1996;Rajhら,J.Phys.Chem.97,11999,1993)。別の手法において、Cofferらは、デオキシリボ核酸(DNA)の水溶性キャッピング化合物としての使用について記載している(Coffer,ら,Nanotechnology 3,69,1992)。このようなシステムのすべてで、コーティングナノ結晶は安定でなく、光輝性特性は時間と共に低下した。
【0008】
[0008]さらなる研究では、SpanhelらがCd(OH)2キャップCdSゾルを開示した(Spanhel,ら,J.Am.Chem.Soc.109,5649,1987)。しかしながらコロイド状ナノ結晶は非常に狭いpH範囲(pH8〜10)でのみ調製でき、10を超えるpHにて狭い蛍光バンドを呈した。このようなpH依存性は、該材料の有用性を大幅に制限し、特に生物システムでの使用に不適切である。
【0009】
[0009]PCT国際公開公報第00/17656号は、ナノ結晶を水溶性にするために、それぞれ式SH(CH2n−COOHおよびSH(CH2n−SO3Hのカルボン酸またはスルホン酸化合物によってキャップされるコアシェルナノ結晶を開示する。同様にPCT出願国際公開公報第00/29617号およびイギリス特許第2342651号は、メルカプト酢酸またはメルカプト−ウンデカン酸などの有機酸がナノ結晶を水溶性にするためにナノ結晶の表面に結合され、タンパク質または核酸などの生体分子のコンジュゲーションに適していることを記載している。GB 2342651には、ナノ結晶の水溶性を与えるとされているキャッピング材料としてトリオクチルホスフィンの使用についても記載されている。
【0010】
[0010]別の手法は、水溶化剤としてのジアミノカルボン酸の使用を報告するPCT国際公開公報第00/27365号で教示されている。このPCT公報では、ジアミノ酸は1価キャッピング化合物によってナノ結晶コアに結合される。
【0011】
[0011]PCT国際公開公報第00/17655号は、疎水性部分および親水性部分を有する可溶化剤の使用によって水溶性にされるナノ結晶を開示している。可溶化剤は疎水性基を介してナノ結晶に結合するのに対して、親水性基、例えばカルボン酸またはメタクリル酸は水溶性を供給する。
【0012】
[0012]さらなるPCT出願(国際公開公報第02/073155号)において、各種の分子、例えばトリオクチルホスフィンオキシドヒドロキサメート、ヒドロキサム酸の誘導体または多座錯化剤、例えばエチレンジアミンがナノ結晶の表面に直接結合されてそれらを水溶性にする、水溶性半導体ナノ結晶が記載されている。これらのナノ結晶は次にEDCを介してタンパク質に結合される。別の手法において、PCT出願国際公開公報第00/58731号は、血液細胞集合の分析に使用され、約3,000〜約3,000,000の分子量を有するアミノ誘導ポリサッカライドがナノ結晶に連結される、ナノ結晶を開示している。
【0013】
[0013]米国特許第6,699,723号は、ビオチンおよびストレプトアビジンなどの生体分子の発光ナノ結晶プローブへの結合を促進するための連結剤としてのシランベース化合物の使用を開示している。米国特許出願第2004/0072373 A1号は、シランベース化合物を使用する生化学標識の方法について記載している。シラン連結ナノ粒子は、分子インプリンティングによってテンプレート分子に結合され、次に重合されてマトリクスを形成する。その後、テンプレート分子はマトリクスから除去された。テンプレート分子の除去のためにマトリクス中に生成された空洞は、標識化に使用されうる特性を有する。
【0014】
[0014]最近、水溶性ナノ結晶を安定化させるための合成ポリマーの使用が報告されている。米国特許出願第2004/0115817 A1号は、両親媒性ジブロックポリマーの使用が疎水性相互作用を介して、表面がトリオクチルホスフィンまたはトリオクチルホスフィンオキシドなどの薬剤でコーティングされているナノ結晶に非共有的に結合されうることを記載している。同様にGaoら(Nature Biotechnology,vol.22,969−976,August 2004)は、両親媒性トリブロックコポリマーによって非共有結合性疎水性相互作用を介してカプセル化される水溶性半導体ナノ結晶を開示している。
【0015】
[0015]これらの開発にもかかわらず、依然として、生物アッセイでの検出目的に使用されうる発光ナノ結晶が求められている。この点について、生体分子の生物活性を保存する形で生体分子に結合されうるナノ結晶を有することが望ましい。さらに、水性媒体中において安定で頑強な(robust)懸濁物または溶液として調製または貯蔵されうる水溶性半導体ナノ結晶を有することが望ましい。最後に、これらの水溶性ナノ結晶量子ドットは、高い量子効率によるエネルギー放出が可能であるべきであり、小粒径であるべきである。
【0016】
[0016]したがって本発明の目的は、上の要求を満足するナノ結晶を提供することである。
【0017】
[0017]本目的は、ナノ結晶およびそれぞれの独立請求項の特徴を有するナノ結晶を産生するプロセスによって解決される。
【0018】
[0018]一態様において、本発明は、
元素周期系(PSE)の亜族Ib、亜族IIb、亜族IVb、亜族Vb、亜族VIb、亜族VIIb、亜族VIIIb、主族II、主族IIIまたは主族IVの元素から選択される少なくとも1つの金属M1を含むナノ金属コアと、
ナノ結晶コアを包囲する水溶性シェルであって、
ナノ結晶のコアの表面に結合されたキャッピング試薬であって、少なくとも1個のカップリング基を有するキャッピング試薬を含む第1層と、
キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に共有結合的にカップリングされた少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーを含む第2層と、
を含む水溶性シェルと、
を含む、水溶性ナノ結晶に関する。
【0019】
[0019]水溶性ナノ結晶は、
上で定義したようなナノ結晶コアをキャッピング試薬と反応させて、それによりキャッピング試薬をナノ結晶の表面に結合させ、ナノ結晶コアを包囲する第1層を形成するステップと、
キャッピング試薬を、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーとカップリングさせて、それにより第1層に共有結合的にカップリングされる第2層を形成して、ナノ結晶を包囲する水溶性シェルの形成を完了させるステップと、
を含む方法によって得られうる。
【0020】
[0020]別の態様において、本発明は、
元素周期系(PSE)の主族II、亜族VIIA、亜族VIIIA、亜族IB、亜族IIB、亜族IIIまたは主族IVの元素から選択される少なくとも1つの金属M1と、PSEの主族Vまたは主族VIから選択される少なくとも1つの元素Aとを含む、ナノ結晶コアと、
ナノ結晶コアを包囲する水溶性シェルであって、
ナノ結晶のコアの表面に結合されたキャッピング試薬であって、少なくとも1個のカップリング基を有するキャッピング試薬を含む第1層と、
キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に共有結合的にカップリングされた少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーを含む第2層と、
を含む水溶性シェルと、
を含む、水溶性ナノ結晶に関する。水溶性ナノ結晶は、
上で定義したようなナノ結晶コアをキャッピング試薬と反応させて、それによりキャッピング試薬をナノ結晶の表面に結合させ、ナノ結晶コアを包囲する第1層を形成するステップと、
キャッピング試薬を、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーとカップリングさせて、それにより第1層に共有結合的にカップリングされる第2層を形成して、ナノ結晶を包囲する水溶性シェルの形成を完了させるステップと、
を含む方法によって得られうる。
【0021】
[0021]ナノ結晶をコーティングする従来の方法は通例、ポリマー層とナノ結晶との間の界面に共有結合を含まない。本発明において、小型モノマーまたは低分子量ポリマー/オリゴマー(通例、むしろ低分子を持つポリマー)のどちらも、ナノ結晶表面をキャップして(例えば金属硫黄または金属窒素結合を形成して)第1層としても既知であるキャッピング試薬層を形成するために最初に使用される。この第1層は、ナノ結晶コアに共有結合する。本ステップに続いて、(水溶性基を持つ)ポリマーをキャッピング試薬にカップリング剤の存在下でカップリングするステップがある。カップリングステップを実施するにあたって、ポリマーはナノ結晶コアを包囲する第2層を形成する。ポリマーは、オリゴマー、ポリマー、またはその混合物を含みうる。ポリマーがいったんキャッピング試薬にカップリングされると、水溶性シェルに包囲されたナノ結晶コアを含む水溶性ナノ結晶が形成される(図1も参照)。
【0022】
[0022]別の態様において、本発明は:
上で定義したようなナノ結晶コアをキャッピング試薬と反応させて、それによりキャッピング試薬をナノ結晶の表面に結合させ、ナノ結晶コアを包囲する第1層を形成するステップと、
キャッピング試薬を、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーとカップリングさせて、それにより第1層に共有結合的にカップリングされる第2層を形成して、ナノ結晶を包囲する水溶性シェルの形成を完了させるステップと、
を含む、上で定義したようなコアを有する水溶性ナノ結晶を調製する方法に関する。
【0023】
[0023]本発明は、水溶性ナノ結晶がナノ結晶を包囲する水溶性ポリマーシェルの形成によって効果的に安定化されうるという発見に基づいている。このシェルは、ナノ結晶コアの表面に共有結合した(キャッピング試薬を含む)第1層と、第1層に共有結合的にカップリングし、それにより第1層をオーバーコートする(それゆえコーティング試薬として作用する)第2層(ポリマーを含むコーティング試薬)とを含む。このように合成されたポリマーシェルは、実質的に発光を消失させることなく、合理的に長い期間、ナノ結晶を水性環境中に留めることを可能にするということが見出される。理論に縛られたくはないが、ナノ結晶の改善された安定性はポリマーシェルの保護機能に起因しうることが考えられる。シェルは、存在しうるイオン、ラジカルまたは分子などの反応性水溶性種とナノ結晶の間の接触を減少させる密封ボックスまたは保護バリアとして挙動する。このことは、水性環境でのナノ結晶の凝集を防止するのに役立つ。凝集を防止するに当たって、ナノ結晶は相互から電気的に絶縁され、それによりその光ルミネセンスを延長させることも考えられる。さらにポリマーがナノ結晶の表面に電荷を導入することも考えられる。ナノ結晶周囲に水溶性ポリマーシェルを形成させることによって、ポリマーシェルは、従来のキャップされたナノ結晶と比較して、ナノ結晶の表面からあまり容易に脱着されない。このことによって、水性環境でのナノ結晶の安定性を改善される。これに対して小型分子は、小型分子がナノ結晶の表面からより容易に脱着されて、それによりシェルを通じて拡散しうるイオン種にナノ結晶を暴露させ、それにより水溶液中でナノ結晶の不安定性を引き起こすので、あまり適切ではない。別の利点は、そのように形成された(ポリマー)シェルも、組織および器官標的などの多様な生体物質の認識を促進しうる適切な生体分子または検体の結合を介して好都合に官能化することができることである。水溶性シェルを形成するためにキャッピング試薬とポリマーの異なる組合せを実施することによって、本発明は、多岐にわたる用途に有用である改良された化学的および物理的特性を有する水溶性ナノ結晶の新たなクラスへの的確な経路を提供する。
【0024】
[0024]本発明に従って、ナノ結晶(量子ドット)のいずれの適切な種類も、ナノ結晶の表面がキャッピング試薬と結合することができる限り、水溶性に。この文脈では、「ナノ結晶」および「量子ドット」という用語は互換的に使用される。
【0025】
[0025]一実施形態において、適切なナノ結晶は、金属のみを含むナノ結晶コアを有する。この目的のために、M1は、元素周期系(PSE)の主族II、亜族VIIA、亜族VIIIA、亜族IB、亜族IIB、主族IIIまたは主族IVの元素から成る群より選択されうる。したがってナノ結晶コアは、金属元素M1のみから成りうる。非金属元素AまたはBは、下で定義するように非存在である。本実施形態において、ナノ結晶は、PSEの上の族のいずれかからの純粋な金属、例えば金、銀、銅(亜族Ib)、チタン(亜族IVb)、テルビウム(亜族IIIb)、コバルト、プラチナ、ロジウム、ルテニウム(亜族VIIIb)、鉛(主族IV)またはその合金のみから成る。本発明は主に、対元素Aを含むナノ結晶のみに関して下で例示されるが、純粋な金属または純粋な金属の混合物より成るナノ結晶も本発明で使用されうることが理解される。
【0026】
[0026]別の実施形態において、本発明で使用されるナノ結晶コアは、2つの元素を含みうる。したがってナノ結晶コアは、2つの金属元素M1およびM2を含む二元ナノ結晶合金、例えばZn、Cd、Hg、Mg、Mn、Ga、In、Al、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、AuおよびAuなどの金属から形成された任意の周知のコアシェルナノ結晶でありうる。本発明で適切な二元ナノ結晶の別の種類は、1つの金属元素M1と、PSEの主族Vまたは主族VIから選択される少なくとも1つの元素Aとを含みうる。したがって、現在、使用に適切なナノ結晶の1つの種類は、式M1Aを有する。このようなナノ結晶の例は、II−VI族半導体ナノ結晶(すなわち主族IIまたは亜族IIBからの金属と、主族VIからの元素とを含むナノ結晶)でありえて、ここでコアおよび/またはシェル(「シェル」という用語は本明細書で使用するように、ナノ結晶を封入した有機分子から生成されたポリマー「シェル」とは異なり、区別される)は、CdS、CdSe、CdTe、MgTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、またはHgTeを含む。ナノ結晶コアは、任意のIII−V族半導体ナノ結晶(すなわち主族IIIからの金属と、主族Vからの元素とを含むナノ結晶)でもありうる。コアおよび/またはシェルは、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSbを含む。本発明で使用されうるコアシェルナノ結晶の具体例は、これに限定されるわけではないが、ZnSシェルを有する(CdSe)−ナノ結晶はもちろんのこと、ZnShシェルを有する(CdS)−ナノ結晶も含む。
【0027】
[0027]本発明は、上述のコア−シェルナノ結晶の使用に限定されない。別の実施形態において、本発明のナノ結晶は、組成M11−xM2xAを有する均質三元合金より成るコアを有することができ、式中、
a) AがPSEの主族VIの元素を表すとき、M1およびM2は、元素周期系(PSE)の亜族IIb、亜族VIIA、亜族VIIIA、亜族Ibまたは主族IIから独立して選択され、または
b) AがPSEの主族(V)の元素を表すとき、M1およびM2はどちらもPSEの主族(III)の元素から選択される。
【0028】
[0028]別の実施形態において、均質四元合金より成るナノ結晶が使用されうる。この種類の四元合金は組成M11−xM2xAyB1−yを有し、式中、
a) AおよびBの両方がPSEの主族VIの元素を表すときに、M1およびM2は、元素周期系(PSE)の亜族IIb、亜族VIIA、亜族VIIIA、亜族Ibまたは主族IIの元素から独立して選択され、または
b) AおよびBの両方がPSEの主族(V)の元素を表すとき、M1およびM2はPSEの主族(III)の元素から独立して選択される。
【0029】
[0029]均質三元または四元ナノ結晶のこの種類の例は、例えば、Zhongら,J.Am.Chem.Soc,2003 125,8598−8594,Zhongら,J.Am.Chem.Soc,2003 125,13559−13553、または国際特許出願2004/054923号に記載されている。
【0030】
[0030]上に記載した式で使用されるような名称M1及びM2は、本明細書を通じて互換的に使用されうる。例えばCdおよびHgを含む合金はそれぞれ別々に、M1またはM2によってはもちろんのこと、M2及びM1とも呼ばれうる。同様に、PSEのVまたはVI族の元素の名称AおよびBは互換的に使用される。それゆえ本発明の四元合金において、SeまたはTeはどちらも元素AまたはBと呼ぶことができる。
【0031】
[0031]このような三元ナノ結晶は:
ナノ結晶の産生に適した形の元素M1を含有する反応混合物を適切な温度T1まで加熱して、この温度においてナノ結晶の産生に適した形の元素Aを添加し、反応混合物を上記二元ナノ結晶M1Aを形成するのに適した温度で十分な期間にわたって加熱して、次に反応混合物を冷却させることによって二元ナノ結晶M1Aを形成するステップと、
形成された二元ナノ結晶M1Aを沈殿または単離することなく、反応混合物を適切な温度T2まで再加熱し、この温度の反応混合物にナノ結晶の産生に適した形の元素Mの十分な量を添加して、次に上記三元ナノ結晶M11−xM2xAを形成するのに適した温度にて十分な期間にわたって反応混合物を加熱し、次に反応混合物を室温まで冷却して、三元ナノ結晶M11−xM2xAを単離するステップと、
を含むプロセスによって得ることができる。
【0032】
[0032]これらの三元ナノ結晶において、指数xは、0.001<x<0.999の、好ましくは0.01<x<0.99、0.1<0.9の、またはさらに好ましくは0.5<x<0.95の値を有する。なおさらに好ましい実施形態において、xは約0.3または約0.3〜約0.8または約0.9の値を有しうる。ここで利用される四元ナノ結晶において、yは、0.001<y<0.999の、好ましくは0.01<y<0.99の、あるいはさらに好ましくは0.1<x<0.95または約0.2〜約0.8の値を有する。
【0033】
[0033]II−VI三元ナノ結晶において、そこに含まれる元素M1及びM2は好ましくは、Zn、CdおよびHgから成る群より独立して選択される。これらの三元合金中のPSEのVI族の元素Aは好ましくは、S、SeおよびTeから成る群より選択される。それゆえこれらの元素M1、M2及びAのすべての組合せは、本発明の範囲内である。好ましい実施形態において、使用されたナノ結晶は、組成ZnxCd1−xSe、ZnxCd1−xS、ZnxCd1−xTe、HgxCd1−xSe、HgxCd1−xTe、HgxCd1−xS、ZnxHg1−xSe、ZnxHg1−xTe、およびZnxHg1−xSを有する。
【0034】
[0034]ある好ましい実施形態において、xは上の化学式で使用されるように、0.10<x<0.90または0.15<x<0.85の値を、さらに好ましくは0.2<x<0.8の値を有する。特に好ましい実施形態において、ナノ結晶は組成ZnxC1−xSおよびZnxCd1−xSeを有する。xが0.10<x<0.95の値を、さらに好ましくは0.2<x<0.8の値を有する、このようなナノ結晶が好ましい。
【0035】
[0035]ナノ結晶コアが本発明のIII−Vナノ結晶から作製されるある実施形態において、元素M1およびM2の各々はGaおよびInから独立して選択される。元素Aは好ましくはP、AsおよびSbから選択される。これらの元素M1、M2及びAのすべての考えられる組合せは、本発明の範囲内である。いくつかの現在好ましい実施形態において、ナノ結晶は組成GaxIn1−xP、GaxIn1−xAsおよびGaxIn1−xAsを有する。
【0036】
[0036]発明において、ナノ結晶コアは、2つの主成分を含む水溶性ポリマーシェル中に覆われている。水溶性シェルの第1の成分は、ナノ結晶コアの表面に親和性を有し、ポリマーシェルの第1層を形成するキャッピング試薬である。第2の成分は、キャッピング試薬にカップリングされ、水溶性シェルの第2層を形成するポリマーである。
【0037】
[0037]ナノ材料の表面への結合親和性を有する小型分子または巨大分子のすべての種類が、第1層を形成するためのキャッピング試薬として使用することができる。好ましいキャッピング試薬は有機分子であり、第1にナノ結晶コアの表面に共有結合または固定されうる少なくとも1つの部分を、そして第2に続いてのポリマーとのカップリングに備えた少なくとも1個のカップリング基を有することができる。カップリング基はポリマーに存在するカップリング基と直接反応することができるか、またはカップリング基は、例えばカップリング反応を開始するためにカップリング剤による活性化を必要とする可能性がある。これら2つの部分の各々はキャッピング試薬内で分子の末端位置、または分子の主鎖に沿った非末端位置のどちらかに存在する可能性がある。低分子量ポリマーの例としては、アミノ−またはカルボキシル−リッチポリマーまたはその混合物が挙げられる。
【0038】
[0038]一実施形態において、キャッピング試薬はナノ結晶のコア表面への親和性を有する1つの部分を含み、該部分はキャッピング試薬分子の末端位置に位置している。ナノ結晶コアと部分との間の相互作用が、疎水性または静電相互作用から、あるいは共有または配位結合から発生することがある。適切な末端基は、遊離(未結合)電子対を有し、それによりキャッピング試薬がナノ結晶コアの表面に結合できるようにする部分を含む。例示的な末端基は、S、N、P原子またはP=O基を含有する部分を含む。これらの部分の具体的な例としては、例えばアミン、チオール、アミン−オキシドおよびホスフィンが挙げられる。
【0039】
[0039]さらなる実施形態において、キャッピング試薬はさらに、末端基から疎水性領域によって離間された少なくとも1個のカップリング基を含む。各カップリング基は、任意の適切な数の主鎖炭素原子と、水溶性シェルの第2層を形成するために使用されるポリマー上の相補的カップリング部分と反応することができる任意の適切な官能基を含んでもよい。例示的なカップリング部分は、ヒドロキシ(−OH)、アミノ(−NH2)、カルボキシル(−COOH)、カルボニル(−CHO)、シアノ基(−CN)から成る群より選択することができる。
【0040】
[0040]好ましい実施形態において、キャッピング試薬は、次の一般式(G1)で示されるように、末端基から疎水性領域によって離間された1個のカップリング基を含む:
【化1】


式中
TG−末端基
HR−疎水性領域
CM1−カップリング基
【0041】
[0041]好ましい実施形態において、キャッピング試薬は、次の一般式(G2)で示されるように、末端基から疎水性領域によって離間された2つのカップリング基を含む:
【化2】


式中
TG−末端基
HR−疎水性領域
CM1およびCM2−カップリング基
【0042】
[0042]上の式G1およびG2において、カップリング基CM1およびCM2は親水性でありうる。親水性カップリング基の例としては、−NH2、−COOHまたはOH官能基が挙げられる。他の例としては、ニトリル基、イソシアナート基およびハロゲンが挙げられる。カップリング基は疎水性でもありうる。疎水性および親水性基の組合せを有するキャッピング試薬が使用されうる。疎水性基のある例としては、アルキル部分、芳香環、またはメトキシ基が挙げられる。
【0043】
[0043]理論に縛られたくはないが、式(G1)および(G2)で定義されたようなキャッピング試薬内の疎水性領域は、ナノ結晶コアが水性環境内に存在する荷電種を遮蔽できると考えられる。水性環境からナノ結晶コアの表面への電荷移動は、疎水性領域によって阻害されるようになり、それにより合成中の中間ナノ結晶(すなわちキャッピング試薬によってキャップされているナノ結晶)の早期反応停止を最小限に抑える。それゆえキャッピング試薬内での疎水性領域の存在は、ナノ結晶の最終量子収率を改善するのに役立つ。この目的に適した疎水性部分の例としては、すべての脂肪族直鎖、環式、または芳香族炭化水素部分を含む、炭化水素部分が挙げられる。
【0044】
[0044]一実施形態において、本発明のナノ結晶で使用されるキャッピング試薬は一般式(I)を有する:
【化3】

【0045】
[0045]この式において、Xは、ナノ結晶コアの表面への親和性を有する末端基を表す。Xは、S、N、P、またはO=Pから選択されうる。部分Hn−X−の具体例としては、次の:例えばH−S−、O=P−、およびH2N−の1つが挙げられうる。Raは、少なくとも2個の主鎖炭素原子を含む部分であり、それゆえ疎水性特性を持つ。Raが主に疎水性特性、例えば炭化水素である場合、Raは次に部分Zをナノ結晶コアから隔離する疎水性領域を供給する。部分Yは、N、C、−COO−、または−CH2O−から選択される。Zは、次の重合のために少なくとも1個のカップリング部分を含み、それゆえ親水性キャッピング試薬の部分に主に親水性特性を与える部分である。例示的な極性官能基としては、これに限定されるわけではないが、−OH、−COOH、−NH2、−CHO、−CONHR、−CN、−NCO、−CORおよびハロゲン化合物を含む。式中の数字は、記号k、n、n’およびmによって表される。kは、0または1である。数字nは、0〜3の整数であり、n’は、0〜2の整数である。両方ともXおよびYの価数要件をそれぞれ満足するために選択される。数字mは、0〜2の整数である。数字kは、0または1である。kが0ならば、ZがRaに結合されるという条件が適用される。k=0の値は、カップリング部分ZがRaに直接結合される場合に対応し、ここで例えばRaは環式部分、例えば脂肪族シクロアルカン、芳香族炭化水素または複素環である。しかしながら、k=1であるときに、Raが環式部分、例えばベンゼン環に結合された3級アミノ基、または環式炭化水素であることが可能である。したがって本式において、YまたはZのどちらかがカップリング基として機能することができる。Zがカップリング基として存在する場合、次にYはカップリング基Zを結合するための構成成分として機能することができる。Zが非存在である場合、Yは次にカップリング基の一部を形成することができる。
【0046】
[0046]上の式の部分Raは、数十〜数百個の主鎖原子を含みうる。詳細な一実施形態において、RaおよびZの各々は独立して、2〜50個の主鎖原子を含む。Zは、1個以上のアミドまたはエステル結合を含みうる。Raに使用されうる適切な部分の例としては、アルキル、アルケニル、アルコキシおよびアリール部分が挙げられる。
【0047】
[0047]「アルキル」という用語は本明細書で使用するように、一般に2〜50個の炭素原子を含む分岐または非分岐直鎖または環式飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルはもちろんのこと、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基も指す。「アルケニル」という用語は本明細書で使用するように、一般に2〜50個の炭素原子を含み、少なくとも1個の二重結合を含有する、典型的には1〜6個の二重結合を、より典型的には1または2個の二重結合を含有する分岐または非分岐炭化水素基、例えばエテニル、n−プロペニル、n−ブテニル、オクテニル、デセニルはもちろんのこと、シクロアルケニル基、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニルなどを指す。「アルコキシ」という用語は本明細書で使用するように、Rが上で定義したようなアルキルである置換基−O−Rを指す。「アリール」という用語は本明細書で使用するように、そして別途規定しない限り、1個以上の芳香環を含有する芳香族部分を指す。アリール基は場合により、芳香環上で1個以上の不活性非水素置換基によって置換され、適切な置換基としては例えば、ハロ、ハロアルキル(好ましくはハロ置換低級アルキル)、アルキル(好ましくは低級アルキル)、アルケニル(好ましくは低級アルケニル)、アルキニル(好ましくは低級アルキニル)、アルコキシ(好ましくは低級アルコキシ)、アルコキシカルボニル(好ましくは低級アルコキシカルボニル)、カルボキシ、ニトロ、シアノおよびスルホニルが挙げられる。すべての実施形態において、Raは、一般に窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を含むヘテロ芳香族部分を含んでもよい。
【0048】
[0048]好ましい実施形態において、Raは、エチル、プロピル、ブチル、およびペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびベンジル部分から成る群より選択される。好ましいキャッピング試薬の1つの実施形態は、アミノエチルチオール、アミノプロピルチオール、およびアミノブチルチオールから成る群より選択される。
【0049】
[0049]ある特に適切なキャッピング試薬の例は、次のようなそれぞれの式を有する(親水性)化合物である:
【化4】

【0050】
[0050]別の実施形態において、キャッピング試薬は、重合性不飽和基、例えばC=C二重結合を介して、任意の遊離ラジカル重合機構を介してポリマーをカップリングする。このようなキャッピング試薬の具体的な例としては、これに限定されるわけではないが、ω−チオール末端メチルメタクリレート、2−ブテンチオール、(E)−2−ブテン−1−チオール、S−(E)−2−ブテニルチオアセテート、S−3−メチルブテニルチオアセテート、2−キノリンメタンチオール、およびS−2−キノリンメチルチオアセテートが挙げられる。
【0051】
[0051]ナノ結晶コアを包囲する水溶性シェルの第2の成分は、キャッピング試薬中に存在するカップリング基を活性化するためのカップリング剤の使用により、水溶性基を持つポリマーをキャッピング試薬にカップリングすることによって形成される。カップリング剤およびカップリング部分を持つポリマーは続けて添加することができる、すなわちポリマーは活性化が実施された後に添加し、またはポリマーはカップリング剤と共に同時に添加することができる。
【0052】
[0052]原則として、キャッピング試薬中のカップリング基を活性化するいずれのカップリング剤も、カップリング剤が第1層を形成するために使用されるキャッピング試薬および第2層を形成するために使用されるポリマーと化学的に適合性である限り使用可能であり、キャッピング試薬およびポリマーと反応して、カップリング剤がキャッピング試薬およびポリマーの構造を変化させないことを意味する。理想的には、未反応カップリング剤は、カップリング剤分子がポリマー分子によって完全に置換されるべきなので、ナノ結晶中に存在してはならない。しかしながら実際には、カップリング剤の未反応残基はそれにもかかわらず最終的なナノ結晶中に存在しうる。
【0053】
[0053]適切なカップリング剤の決定は、当業者の知識の範囲内である。適切なカップリング試薬の一例は、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と組合せて使用される1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)である。これに限定されるわけではないがイミドおよびアゾールを含む、カップリング試薬の他の種類が使用されうる。使用されうるイミドのある例は、カルボジイミド、スクシンイミドおよびフタルイミドである。イミドのある明示的な例としては、N−ヒドロキシスクシンイミドまたは他の任意の活性化分子と関連して使用される、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドが挙げられる。
【0054】
[0054]カップリング基が不飽和C=C結合を含むキャッピング剤の場合、カップリング剤は、tert−ブチルペルアセテート、ベンゾイルペルオキシド、過流酸カリウム、および過酢酸などの開始剤を含む。
【0055】
[0055]水溶性シェルの第2層を形成するために使用されるポリマーは、キャッピング試薬の活性化されたカップリング基と反応する可能性のあるカップリング部分を有する1個以上の適切なカップリング部分を含んでもよい。通例、適切なポリマーは、キャッピング試薬の活性化したカップリング基に対して反応性である1、2、3個の、またはある実施形態において少なくとも2個の(すなわち複数の)官能基を持つカップリング部分を有する。図3に示すように、ポリマーの少なくとも2個のカップリング部分がキャッピング試薬の分子と反応したときに、ポリマーはキャッピング試薬に共有結合的にカップリングする(「架橋される」)ようになり、それによりナノ結晶コアを包囲する水溶性ポリマーシェルを形成する。
【0056】
[0056]ポリマーのキャッピング試薬とのカップリングは、任意の適切なカップリング反応スキームによって実施することができる。適切な反応スキーム例としては、フリーラジカルカップリング、アミドカップリングまたはエステルカップリング反応が挙げられる。従来のカップリング反応を使用することから離れて、ポリマー/オリゴマーは例えば適切なカップリング反応によってキャッピング試薬にグラフトすることができる。一実施形態において、親水性キャッピング試薬にグラフトされるポリマーが最初に合成され、次にカルボジイミド媒介カップリング反応によって、ポリマーがキャッピング試薬の暴露されたカップリング部分にカップリングされる(すなわち架橋剤)。適切なポリマーとしては、親水性キャッピング試薬にカップリングすることができる官能基を持つ、ランダムコポリマーはもちろんのこと、ブロックコポリマーも挙げられる。
【0057】
[0057]1つの好ましいカップリング反応は、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドによって供給され、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドによって促進されるカルボジイミドカップリング反応であり、そこではキャッピング試薬のカップリング基内のカルボキシ官能基およびアミノ官能基およびポリマーのカップリング部分が反応して、共有結合を形成する。
【0058】
[0058]本発明の文脈では、水溶性シェルの第2層として存在する「ポリマー」という用語は、約100〜約1,000,000ダルトンの分子量の範囲の、低分子量ポリマー(例えばオリゴマー)はもちろんのこと高分子量ポリマーも含む。ポリマーの分子量の下限は、各反復単位内に存在する基のサイズおよび数に応じて、100より高くてもよい。ポリマーがポリオールまたはポリアミンなどの(例えば小さい側鎖を有する)低分子量反復単位に由来する場合、ここでポリマーの分子量の下限は低くてもよい。反復単位が高分子量を有する(例えば大きい側鎖を持つ)ポリマーの場合、ここで下限は100より高くてもよい。ある実施形態において、ポリマーの分子量の下限は、約400、または500、または600、または1000、または1200、または1500、またはより高く約2000としてもよい。「カップリング」および「共有結合的カップリング」という用語は、単一のより大きい実体を形成するために2個の分子を共に接合する任意の種類の反応、例えばエステルを形成するための酸およびアルコールのカップリング、またはアミドを形成するための酸およびアミンのカップリングを一般に指すために互換的に使用される。キャッピング試薬およびポリマーに存在するカップリング基およびカップリング部分をカップリングすることができるいずれの反応も、用語の意味の範囲内である。「カップリング」は、ポリマーをキャッピング試薬層に共有結合するために、キャッピング試薬内にカップリング基として存在する1個以上の不飽和基(例えば−C=C−二重結合)にポリマー内の対応するカップリング部分を反応させるステップも含む。
【0059】
[0059]ポリマーは親水性または疎水性部分のどちらかを含みうるか、あるいはポリマーは親水性および疎水性部分を両方含みうる、すなわちポリマーは両親媒性である。これらの部分は、本発明のナノ結晶が使用される環境内で所望の溶解度を得るために、ポリマー中に任意の適切な割合で存在しうる。例えば水溶性シェルの水溶解度を改善するために、第2層を形成するポリマーは、疎水性部分よりも多くの親水性部分を含みうる。反対にシェルが疎水性にされる場合、親水性部分よりも多数の疎水性部分を有するポリマーを使用することができる。
【0060】
[0060]一実施形態において、キャッピング試薬のカップリング基に対して反応性である少なくとも1個のカップリング部分を含むポリマーは、式(III)を有する。
【化5】


式中、Jは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性であるカップリング部分であり、mは、少なくとも1の整数である。
【0061】
[0061]本実施形態を例示するために、例えば第1層がアミノ末端基を有する場合、第2層を形成するポリマーは、第1層のアミノ基との共有結合的カップリングのためにカルボキシル基を有してもよい。実際にすべてのカップリング部分およびカップリング基が共有結合的カップリングに関与するわけでないことが考えられる。例えば50%のカルボキシル基を第1層中のアミノ基と重合することができる。
【0062】
[0062]別の例において、第1層がカルボキシル末端表面を有する場合、第2層ポリマーは、第1層のカルボキシル基と共有結合的にカップリングするアミノ基を有してもよい。また、すべてのカップリング部分およびカップリング基が共有結合的カップリングに関与するわけでないことが考えられる。例えば50%のアミノ基が第1層中のアミノ基と重合されうる。
【0063】
[0063]別の実施形態において、ポリマーは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも2個のカップリング部分を含む。この場合、ポリマーは式(IV)を有してもよい。
【化6】


式中、JおよびKは、カップリング部分であり、上記JおよびKは同じまたは異なっており、mおよびnの各々は、少なくとも1の整数である。
【0064】
[0064]一般に、キャッピング試薬がJおよびK末端基の両方も含む場合、ポリマーはキャッピング試薬との共有結合的カップリングのために一方または両方のKおよびJ基を有してもよい。例えば第1層がカルボキシル末端表面およびアミノ末端表面の両方を有する場合、第2層ポリマーは、第1層のカルボキシル基およびアミノ基との共有結合的カップリングのために、アミノ基およびカルボキシル基の一方のみまたは両方を有してもよい。カップリング部分の一部がカップリング基に共有結合的にカップリングされることが十分であり、カップリング部分がカップリング基のように正確な化学量論比で存在することは必要ない。
【0065】
[0065]さらに別の実施形態において、ポリマーは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも3個のカップリング部分を含む。本実施形態において、上記ポリマーは式(V)を有してもよい。
【化7】


式中、J、KおよびLは、カップリング部分であり、上記J、KおよびLは同じまたは異なっており、m、nおよびpの各々は、少なくとも1の整数である。さらなる実施形態において、ポリマーは、水溶性はもちろんのこと、第1層との表面カップリングを提供するために、3個以上の異なる官能基(NH2、COOH、NCO、CHOなど)を有しうる。
【0066】
[0066]第2層を形成するポリマーは、ナノ結晶が加えられる溶媒と接触する。したがってナノ結晶を、水を含みうる溶媒中に溶解性とするために、例えば上記カップリング部分J、KまたはKの少なくとも1個が好ましくは、水溶性シェルに水溶性を与える親水性基を含む。この目的で、ポリマーは、溶性シェルに水溶性を与える親水性基を有する少なくとも1個の部分も含んでもよい。該部分は、カップリング部分から離れて存在するか、またはカップリング部分自体に存在するかのいずれかでありうる。
【0067】
[0067]一実施形態において、カップリング部分J、KおよびLはそれぞれ、アミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、イソシアナートおよびハロゲン基から選択される官能基を含んでもよい。ホモ官能性ポリマーを有することが望ましい場合、ポリマーのカップリング部分は例えば、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基、またはアミノ基のみから成りうる。このような場合、ポリマーはそれぞれ、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、およびポリアミンである。
【0068】
[0068]各種の特性(例えば水への溶解性)を備えたナノ結晶を得るために、1種類を超えるモノマーを有するポリマーの他の種類を使用することができる。例えば第2層を形成するポリマーとして、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマーまたは混合ランダムポリマーを使用することが可能である。具体例としては、ポリ(アクリル酸−b−メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ナトリウムアクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−エチレンオキシド)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ナトリウムメタクリレート)、およびポリ(メチルメタクリレート−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)が挙げられる。
【0069】
[0069]式(III)のポリマー内のカップリング部分Jは、キャッピング試薬内に存在するカップリング基に対して反応性である任意の適切な官能基を含んでもよい。親水性部分Kは、ポリマーに主に親水性特性を与え、それによってポリマーを水溶性にしうる任意の官能基を含んでもよい。適切である官能基の例としては、例えばカルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、アミド、エステル、無水物およびアルデヒド部分が挙げられる。
【0070】
[0070]一実施形態において、ポリマーはポリアミン、ポリアセチル酸、またはポリオールから成る群より選択される。ポリマーの分子量は約500未満(約400)〜約1,000,000超の範囲であってよい。これらの実施形態の1つにおいて、分子量は約600〜約1,400,000の、さらに好ましくは約2000〜約750,000の範囲であってよい。in vivoでの応用では、人体への潜在的毒性を最小限に抑えるために、下限を約2000に選択することができる。
【0071】
[0071]存在するキャッピング試薬が重合性不飽和基をカップリング基として含む場合、水溶性シェルの第2層を形成するために、ポリアセチレン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン不飽和ポリマーを使用することができる。
【0072】
[0072]さらなる実施形態において、ポリマーは親和性リガンドをポリマーに結合させることによって官能化されうる。官能化するに当たって、官能化ナノ結晶が得られる。このようなナノ結晶は、親和性リガンドが結合特異性を有する基質の存在または非存在を検出しうる。サンプル中に存在する場合、官能化ナノ結晶の親和性リガンドと標的化基質との間の接触と、続いての結合は、多様な目的を果たすことができる。例えば、量子化、描出のための検出可能な信号、または検出の他の形を放出することができる、官能化ナノ結晶−基質を含む複合体を形成することができる。考慮される親和性リガンドとしては、キメラまたは遺伝子修飾モノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、ペプチド、アパタマー、核酸分子、ストレプトアビジン、アビジン、レクチンなどを含んでもよい。
【0073】
[0073]上の開示に従って、本発明の別の態様は、水溶性ナノ結晶を調製する方法に関する。
【0074】
[0074]水溶性シェルの合成は、最初にキャッピング試薬にナノ結晶を接触させて、それによりキャッピング試薬にナノ結晶を反応させることによって実施することができる。接触は直接または間接的のどちらかで実施することができる。直接接触は、いずれの配位リガンドの使用も含まない、ナノ結晶コアのキャッピング試薬を含有する溶液への浸漬を指す。間接接触は、キャッピング試薬を接触させる前に、ナノ結晶コアを初回刺激するための配位リガンドの使用を指す。間接接触は通例、2つのステップを含む。接触のどちらの方法も本発明で実行可能である。しかしながら後者の間接接触方法は、配位リガンドがキャッピング試薬のナノ結晶コア表面への結合を高速化するのを助けるので好ましい。
【0075】
[0075]間接接触は次のように詳説される。間接接触の第1のステップにおいて、配位リガンドは好ましくは有機溶媒に溶解させることによって調製される。次にナノ結晶コアは有機溶媒中に規定の期間にわたって浸漬されて、ナノ結晶コアの表面に十分に安定な不動態化層を形成させる(以下、「不動態化ナノ結晶」と呼ばれる)。不動態化層は、ナノ結晶コアに接触しうるいずれの親水性種もはじく役割を果たし、それによりナノ結晶のいずれの劣化も防止する。受動態化ナノ結晶は単離されて、所望ならばいずれの好ましい期間にわたっても、配位リガンドを含有する有機溶媒中に貯蔵しうる。所望ならば、適切な中性有機溶媒、例えばクロロホルム、メチレンクロライド、またはテトラヒドロフランを添加してもよい。
【0076】
[0076]間接接触の第2のステップにおいて、有機溶媒の存在下または水溶液中でリガンド交換が実施される。リガンド交換(置換)は、受動態化ナノ結晶とキャッピング試薬との接触を促進するために、キャッピング試薬の過剰量を受動態化ナノ結晶に添加することによって実施される。高レベルの置換を達成するために必要な接触時間は、反応混合物を必要な期間にわたって撹拌または超音波処理することによって短縮されうる。十分な長さの時間の後、キャッピング試薬は受動態化層を置換して、それ自体がナノ結晶に結合されるようになり、それゆえ続くポリマーのカップリングのためにナノ結晶コアの表面をキャッピングする。
【0077】
[0077]間接接触で使用される配位リガンドは、ナノ結晶コアの表面への親和性を有する部分を含むいずれの分子でもよい。この親和性は、例えば静電相互作用、共有結合または配位結合の形で現れることがある。適切な配位リガンドとしては、これに限定されるわけではないが、疎水性分子、または親水性部分に結合された疎水性鎖を含む両親媒性分子、例えば極性官能基を含む。このような分子の例としては、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、またはメルカプトウンデカン酸が挙げられる。使用されうる配位リガンドの他の種類としては、チオール、アミンまたはシランを挙げることができる。
【0078】
[0078]キャッピング試薬とポリマーとの間接接触経路によるカップリングを実施するためのスキームを図4に示す。最初に、ナノ結晶コアはトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)などの配位溶媒中で調製でき、ナノ結晶コア表面上に不動態化層の形成を生じさせる。次にTOPO層はキャッピング試薬によって置換される。置換は、高濃度のキャッピング試薬を含有する媒体中でのTOPO層状化ナノ結晶の分散によって起こりうる。このステップは通例、有機溶媒または水溶液のどちらかで実施されうる。好ましい有機溶媒としては、極性有機溶媒、例えばピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、DMSO、ジクロロメタン、エーテル、クロロホルム、またはテトラヒドロフランが挙げられる。その後、キャッピング試薬にカップリングされるポリマーを調製し、キャップされたナノ結晶コアに添加する。
【0079】
[0079]本発明の方法は、水溶性シェルの第1層をいったん形成し、キャッピング試薬によってキャップされたナノ結晶を、水溶性基を有するポリマーとカップリングするさらなるステップを含む。カップリングは、所望ならばカップリング剤の存在下で実施できる。カップリング剤は、キャッピング試薬を初回刺激して、キャッピング試薬をポリマーに対して反応性にするために使用できるか、またはカップリング剤は、ポリマーのカップリング部分を初回刺激して、キャッピング部分をキャッピング試薬に対して反応性にするために使用できる。好ましい実施形態において、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド)は、場合によりスルホNHS(スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド)によって補助されるカップリング剤として使用できる。架橋剤を含む、カップリング試薬の他の種類も使用できる。例としては、これに限定されるわけではないが、カルボジイミド、例えばジイソプロピルカルボジイミド、カルボジシクロヘキシルイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC;Pierce),N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、オルトフェニレンジマレイミド(o−PDM)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(スルホ−SMCC)およびアゾールが挙げられる。カップリング剤は、O−尿素誘導体を形成するためにカルボキシル基を活性化して、カルボン酸とアミンとの間のアミド結合の形成を触媒する。この誘導体は、求核性アミン基とただちに反応して、それによりカップリング反応を加速する。
【0080】
[0080]キャッピング試薬中に存在するカップリング基およびポリマー中に存在するカップリング部分の等モル量が反応しうる。例示のために、カップリング基xモルを有するキャッピング試薬xモルが、ナノ結晶コア各1モルに結合されうると仮定する。(キャッピング試薬xモルに結合された)ナノ結晶コア1モルと完全に反応するためにポリマーyモルがカップリング部分xモルを含有する場合、ここでポリマー対ナノ結晶の混合比は、ナノ結晶1モルあたり少なくともポリマーyモルである。実際にキャッピング試薬は、ナノ結晶での完全なキャッピングを確保するために、通常過剰で反応させられる。未反応キャッピング試薬は、例えば遠心分離によって除去できる。キャップされたナノ結晶とカップリングするために添加されたポリマーの量も同様に過剰に、キャップされたナノ結晶1モル当たり通例、ポリマー約10、または約20または約30〜1000モルの範囲で添加できる。
【0081】
[0081]ポリマーをナノ結晶コアの表面に含まれるキャッピング試薬にカップリングするために、ポリマーはカップリング剤の存在下でキャッピング試薬と混合される。カップリング剤およびポリマーは、第1層を含むナノ結晶を含有する溶液に同時に添加されうる(実施例1および2を参照)か、またはカップリング剤およびポリマーは連続して添加でき、ポリマーはカップリング剤の後に添加される。カップリング剤は、キャッピング試薬およびポリマー中にそれぞれ存在するカップリング基およびカップリング部分を活性化するための開始剤として作用する。その後、ポリマーはキャッピング試薬とカップリングされ、ナノ結晶コアを包囲する第2層が形成される。
【0082】
[0082]カップリング反応は、水溶液中または有機溶媒中で実施されうる。例えばカップリング反応は、水溶液中で、例えば開始剤、安定剤または重合の動態を改善するための相間移動試薬を含む、適切な添加剤を含む水中で実施されうる。カップリング反応は、緩衝溶液、例えばリン酸またはアンモニウム緩衝溶液中でも実施されうる。加えて重合は、適切な添加剤、例えばカップリング試薬および触媒を含む無水有機溶媒中で実施されうる。一般に使用される有機溶媒としては、DMF、DMSO、クロロホルム、ジクロロメタン、およびTHFが挙げられる。
【0083】
[0083]最後に、有機シェルの第2ポリマー層がいったん形成されると、最後のステップは、第2層に含まれるポリマーを、第2層中に存在する水溶性基を暴露させるのに適した試薬と反応させる工程を含みうる。例えば使用されるポリマーが(そうでなければ第2層の形成を妨害しうるカルボキシル基を防御するために)エステル結合を含む場合、エステルはナノ結晶にアルカリ性溶液(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって加水分解されうる。ナノ結晶にアルカリ性溶液を添加することは、第2層中のカルボキシル基を溶液中に放出させることができ、水溶性を付与する。
【0084】
[0084]本発明はさらに、所与の検体への結合親和性を有する分子にコンジュゲートされている、本明細書で開示するようなナノ結晶に関する。所与の検体への結合親和性を有する分子をナノ結晶へコンジュゲートすることによって、マーカー化合物またはプローブが形成される。このようなプローブでは、本発明のナノ結晶は、所与の検体の検出に使用されうる、例えば電磁スペクトルの可視または近赤外範囲の放射線を放出する標識またはタグとして作用する。
【0085】
[0085]原則として、検体に少なくとも多少特異的に結合できる特異的な結合パートナーが存在する各検体が検出されうる。検体は、薬物(例えばアスピリン(登録商標)またはリバビリン)などの化合物、あるいはタンパク質(例えばトロポニンに特異性の抗体または細胞表面タンパク質)または核酸分子などの生化学分子でありうる。興味のある検体、例えばリバビリンのための結合親和性を備えた適切な分子(検体結合パートナーとも呼ばれる)にカップリングされたとき、得られたプローブは例えば、患者の血漿中の薬物レベルを監視するための蛍光免疫測定法に使用されうる。心筋の損傷の、それゆえ一般に心臓発作のマーカータンパク質であるトロポニンの場合、抗トロポニン抗体および本発明のナノ結晶を含有するコンジュゲートは、心臓発作の診断に使用されうる。本発明のナノ結晶と腫瘍関連細胞表面タンパク質に特異性である抗体とのコンジュゲートの場合、このコンジュゲートは腫瘍診断または撮像に使用されうる。別の例は、ナノ結晶とストレプトアビジンとのコンジュゲートである。
【0086】
[0086]検体は、これに限定されるわけではないが、ウィルス粒子、染色体または全細胞を含む複合生物構造でもありうる。例えば検体結合パートナーが細胞膜に結合する脂質である場合、このような脂質に結合された本発明のナノ結晶を含むコンジュゲートが、全細胞の検出および描出に使用されうる。細胞染色または細胞撮像などの目的のために、可視光を放出するナノ結晶が好ましくは使用される。この開示に従って、検体結合パートナーにコンジュゲートされた本発明のナノ粒子を含むマーカー化合物の使用によって検出される検体は、好ましくは生体分子である。
【0087】
[0087]したがってさらに好ましい実施形態において、検体に対して結合親和性を有する分子は、タンパク質、ペプチド、免疫原性ハプテンの特徴を有する化合物、核酸、炭水化物または有機分子である。検体結合パートナーとして利用されるタンパク質は例えば、抗体、抗体断片、リガンド、アビジン、ストレプトアビジンまたは酵素でありうる。有機分子の例は、ビオチン、ジゴキシゲニン、セロトロニン、葉酸誘導体、抗原、ペプチド、タンパク質、核酸および酵素などである。核酸は、これに限定されるわけではないが、DNA、RNAまたはPNA分子、10〜50bpを持つ短オリゴヌクレオチドはもちろんのこと、より長い核酸からも選択することができる。
【0088】
[0088]生体分子の検出に使用される場合、本発明のナノ結晶は、宿主分子の表面露出基を介して結合活性を有する分子にコンジュゲートされうる。この目的では、アミン、ヒドロキシルまたはカルボキシラート基などのポリマーの表面露出官能基は、連結剤と反応されうる。連結剤は本明細書で使用するように、本発明のナノ結晶を、任意の生物標的への結合親和性を有する分子へ連結することができる任意の化合物を意味する。ナノ結晶を検体結合パートナーにコンジュゲートするために使用されうる連結剤の種類の例は、エチル−3−ジメチルアミノカルボジイミドなどの(2官能性)連結剤または当業者に既知である他の適切なカップリング化合物である。適切な連結剤の例は、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプト−ベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピル−マレイミド、および3−(トリメトキシシリル)プロピル−ヒドラジドである。ポリマーコーティングも、所期の結合親和性を有する選択された分子また検体結合パートナーに連結されている適切な連結剤とコンジュゲートされうる。例えばポリマーコーティングがシクロデキストリン部分を含む場合、そこでこれに限定されるわけではないが、そのすべてが興味のある分子との共有結合を形成するための適切な反応性基を有する、フェロセン誘導体、アダマンタン化合物、ポリオキシエチレン化合物、芳香族化合物を含む適切な連結剤が使用されうる。
【0089】
[0089]さらに本発明は、ここで定義されるようなナノ結晶の少なくとも1種類を含有する組成物にも関する。ナノ結晶はプラスチックビーズ、磁気ビーズまたはラテックスビーズに包含されうる。さらにここで定義されるようなナノ結晶を含有する検出キットも本発明の一部である。
【0090】
[0090]本発明は、次の非制限的な実施例および添付図面によってさらに説明される。
【0091】
【実施例1】
【0092】
水溶液でカップリングされたポリマーを用いた水溶性ナノ結晶の調製
[0095]TOPOキャップナノ結晶は、次の手順に従って最初に調製された。
【0093】
[0096]トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)(30g)をフラスコに入れて、真空下(〜1トール)で180℃にて1時間乾燥させた。次いでフラスコに窒素を充填して、350℃まで加熱した。不活性雰囲気(ドライボックス)中で、次の注射溶液を調製した:CdMe2(0.35ml)、1Mトリオクチルホスフィン−Se(TOPSE)溶液(4.0ml)、およびトリオクチルホスフィン(TOP)(16ml)。注射溶液は完全に混合され、注射器に装填されて、ドライボックスから取り出された。
【0094】
[0097]反応から熱を除去して、反応混合物は1回の連続注射によって激しく撹拌されているTOPO中に移された。反応フラスコに加熱が使用され、温度を260〜280℃まで徐々に上昇させた。反応後、反応フラスコは〜60℃まで冷却され、TOPOの固化を防止するためにブタノール20mlが添加された。大量のメタノールの添加は、粒子を綿状塊にさせた。綿状塊は遠心分離によって上清から分離された。得られた粉末を、各種の有機溶媒中に分散させ、視覚的に透明な溶液を生成することができる。
【0095】
[0098]TOPO 5gを含有するフラスコは190℃にて真空下で数時間加熱され、次に60℃まで冷却され、その後トリオクチルホスフィン(TOP)0.5mlが添加された。ヘキサン中に分散されたCdSeドット約0.1〜0.4μmolは注射器で反応容器に移され、溶媒はポンプで除去された。ジエチル亜鉛(ZnEt2)およびヘキサメチルジシラチアン((TMS)2S)は、ZnおよびS前駆物質としてそれぞれ使用された。前駆物質等モル量を不活性雰囲気のグローブボックス内でTOP 2〜4mlに溶解させた。前駆物質溶液は注射器に装填され、反応フラスコに取り付けられた添加漏斗に移された。添加が完了した後、混合物は90℃まで冷却され、数時間撹拌されたままであった。室温への冷却時にTOPOが固化するのを防止するために、混合物にブタノールが添加された。
【0096】
[0099]TOPOコーティング量子ドットは次に、大量のアミノエチルチオールと共にクロロホルムに溶解された(図2、ステップ1を参照)。混合物は2時間超超音波処理(ultrasonicated)され、次に沈殿の形成が完了するまで室温で放置された。得られた固体はクロロホルムによって数回洗浄され、遠心分離によって収集された。次にアミノキャップ量子ドットはpH8の緩衝溶液中に溶解され、次いでポリ(アクリル酸)ポリマー(平均分子量:GPCに基づいて2000)の溶液に、キャッピング試薬のカップリング基を活性化するためのカップリング剤として存在するEDCおよびスルホ−NHSと共に滴加されて、室温にて30分間撹拌された(図2、ステップ2および3を参照)。
【0097】
[00100]反応混合物は最初に0℃にて4時間撹拌され、次に室温にて一晩反応させた。得られた溶液は一晩透析され、窒素による脱気の後に貯蔵された。さらなる精製は、最初に反応溶液をエーテルで2回洗浄することと、酸性(約4〜5に調整されたpH)ナノ結晶溶液の遠心分離によって実施された。収集されたナノ結晶は次に、pH値の調整(7〜8へ)によって水に再溶解された。
【0098】
[00101]本発明のポリマーシェルナノ結晶の物理化学的特性は、メルカプトプロピオン酸(MCA)またはアミノエタンチオール(AET)のみでキャップされた(CdSe)−ZnSコアシェルナノ結晶の物理化学的特性と次のように比較された。ナノ結晶の水溶液に、H2O2が最終濃度0.15mol/lで添加され、化学挙動が分光写真器によって追跡された(図4)。MCAまたはAETによってのみコーティングされたナノ結晶では、ナノ結晶の酸化がただちに検出され、ナノ結晶は30分以内に沈殿した。これに対して本発明のシェル化ナノ結晶は、ごく低速で発生する化学的酸化に対して著しくより安定性であった。
【0099】
【実施例2】
【0100】
有機溶液中でのカップリングされたポリマーを用いた水溶性ナノ結晶の調製
[00102]TOPOキャップナノ結晶は、実施例1に従って調製され、過剰量の3−メルカプトプロピオン酸と共にクロロホルムに溶解された(図4、ステップ1を参照)。混合物は最初に約1時間超音波処理され、次に大量の沈殿物が溶液中に形成されるまで、室温にて一晩放置された。沈殿は遠心分離によって収集され、遊離3−メルカプトプロピオン酸はアセトンで数回洗浄することによって除去された。得られた3−メルカプトプロピオン酸キャップ量子ドットはアルゴンガスによって短時間乾燥され、次に無水DMF中へ溶解された。この溶液にEDCおよびNHSの過剰量が添加され、次に、キャッピング試薬とポリマーとの間の共有結合界面の活性化および続いての形成のために、室温にて30分間撹拌された(図4、ステップ2を参照)。添加漏斗から、無水DMFに溶解させた分子量1200(400〜60,000のMWが一般に適切である)のポリエチレンイミン(Sigma-Aldrich Pte Ltd)が、強く撹拌しながら滴加された。ポリエチレンイミン溶液全体が滴加された後、ポリマー第2層のキャッピング試薬へのカップリングのために、反応は室温にて一晩続けられた(図4、ステップ3を参照)。次にDMF溶媒は回転蒸発によって減圧下で除去され、次に水中へ溶解された。ポリマーコーティング量子ドットのさらなる精製は、エーテルで2回洗浄することによって実施された。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1A】本発明の水溶性ナノ結晶の一般化された図を示す。
【図1B】キャッピング試薬としてのアミノエチルチオール、および第2層を形成するために使用される(図3も参照)ポリアセチル酸ポリマーを含む、ナノ結晶コアの表面に結合されている第1層をより詳細に示す。図1bよりわかるように、キャッピング試薬のカップリング基とポリマーのカップリング部分との間の共有結合がキャッピング試薬分子を共に連結する橋として作用するように、ナノ結晶は、キャッピング試薬のカップリング基の少なくとも1個の(隣接する)分子とポリマーのカップリング部分の1個の分子との間の共有結合から形成された界面領域を含む。
【図2A】シェルの第2層を形成するためにポリアセチル酸ポリマーを使用したカップリングによって形成された、ポリアミドポリマーシェル内にカプセル化された水溶性ナノ結晶を合成するための方法の概略図を示す。使用されたキャッピング試薬はアミノエチルチオールである。本実施例では、ポリアミドポリマーシェルは露出されたカルボン酸基も含有する。
【図2B】シェルの第2層を形成するためにポリアセチル酸ポリマーを使用したカップリングによって形成された、ポリアミドポリマーシェル内にカプセル化された水溶性ナノ結晶を合成するための方法の概略図を示す。使用されたキャッピング試薬はアミノエチルチオールである。本実施例では、ポリアミドポリマーシェルは露出されたカルボン酸基も含有する。
【図3A】シェルの第2層を形成するためにポリアミンポリマーを使用したカップリングによって形成された、ポリアミドポリマーシェル内にカプセル化された水溶性ナノ結晶を合成するための方法の概略図を示す。使用されたキャッピング試薬はカルボキシエチルチオールである。本実施例では、ポリアミドポリマーシェルは露出されたアミノ基も含有する。
【図3B】シェルの第2層を形成するためにポリアミンポリマーを使用したカップリングによって形成された、ポリアミドポリマーシェル内にカプセル化された水溶性ナノ結晶を合成するための方法の概略図を示す。使用されたキャッピング試薬はカルボキシエチルチオールである。本実施例では、ポリアミドポリマーシェルは露出されたアミノ基も含有する。
【図4】メルカプトプロピオン酸(MCA)またはアミノエタンチオール(AET)のみでキャップされた(CdSe)−ZnSコアシェルナノ結晶の一方と比較した、本発明のポリマーシェル化ナノ結晶の化学的酸化に対する安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素周期系(PSE)の亜族Ib、亜族IIb、亜族IVb、亜族Vb、亜族VIb、亜族VIIb、亜族VIIIb、主族II、主族IIIまたは主族IVの元素から選択される少なくとも1つの金属M1を含むナノ結晶コアと、
前記ナノ結晶コアを包囲する水溶性シェルを含む水溶性ナノ結晶であって、
前記ナノ結晶コアの表面に結合したキャッピング試薬であり、少なくとも1個のカップリング基を有するキャッピング試薬を含む第1層と、
前記キャッピング試薬の前記少なくとも1個のカップリング基に共有結合的にカップリングした少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーを含む第2層と、
を含む水溶性シェルと、
を含む、水溶性ナノ結晶。
【請求項2】
元素周期系(PSE)の主族II、亜族VIIA、亜族VIIIA、亜族IB、亜族IIB、亜族IIIまたは主族IVの元素から選択される少なくとも1つの金属M1と、前記PSEの主族Vまたは主族VIから選択される少なくとも1つの元素Aとを含むナノ結晶コアと、
前記ナノ結晶コアを包囲する水溶性シェルを含む水溶性ナノ結晶であって、
前記ナノ結晶コアの表面に結合したキャッピング試薬であって、少なくとも1個のカップリング基を有するキャッピング試薬を含む第1層と、
キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に共有結合的にカップリングした少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーを含む第2層と、
を含む水溶性シェルと、
を含む、水溶性ナノ結晶。
【請求項3】
前記キャッピング試薬が前記ナノ結晶のコア表面への親和性を有する末端基を含む、請求項1または2に記載のナノ結晶。
【請求項4】
前記キャッピング試薬が疎水性領域によって前記末端基から離間された少なくとも1個のカップリング基を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ結晶。
【請求項5】
各カップリング基がアミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、イソシアナートおよびハロゲン基から選択される官能基を含む、請求項4に記載のナノ結晶。
【請求項6】
前記キャッピング試薬が式(I)
【化1】


(式中、
Xは、S、N、P、またはO=Pから選択される末端基であり、
Raは、少なくとも2個の主鎖炭素原子を含む部分であり、
Yは、N、C、−COO−、または−CH2O−から選択され、
Zは、極性官能基を含む部分であり、
kは、0または1であり、
nは、0〜3の整数であり、
n’は、0〜2の整数であり、ここでn’は、Yの価数要件を満足するように選択され、
mは、0〜2の整数である)
を有する分子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項7】
前記部分Raが2〜50個の主鎖原子を含む、請求項6に記載のナノ結晶。
【請求項8】
Raがアルキル、アルケニル、アルコキシルおよびアリール部分から成る群より選択される、請求項6または7に記載のナノ結晶。
【請求項9】
Raの各々が、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、エトキシ、およびベンジルから成る群より独立して選択される部分である、請求項8に記載のナノ結晶。
【請求項10】
Zが、アミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、イソシアナートおよびハロゲン基から選択される官能基である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のナノ結晶。
【請求項11】
Zが2〜50個の主鎖原子を含む、請求項10に記載のナノ結晶。
【請求項12】
Zがさらにアミドまたはエステル結合を含む、請求項11に記載のナノ結晶。
【請求項13】
前記キャッピング試薬が、
【化2】


HS−(CH2n−COOH、n=6〜11
【化3】


から成る群より選択される化合物である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項14】
前記キャッピング試薬の前記カップリング基が重合性不飽和炭素間結合を含む、請求項4に記載のナノ結晶。
【請求項15】
前記キャッピング試薬が、ω−チオール末端メチルメタクリレート、2−ブテンチオール、(E)−2−ブテン−1−チオール、S−(E)−2−ブテニルチオアセテート、S−3−メチルブテニルチオアセテート、2−キノリンメタンチオール、およびS−2−キノリンメチルチオアセテートから成る群より選択される、請求項14に記載のナノ結晶。
【請求項16】
前記ポリマーが式(III):
【化4】


(式中、
Jは、前記キャッピング試薬の前記少なくとも1個のカップリング基に対して反応性であるカップリング部分であり、
mは、少なくとも1の整数である)
を有する、請求項1〜13のいずれかに記載のナノ結晶。
【請求項17】
前記ポリマーが、前記キャッピング試薬の前記少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも2個のカップリング部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項18】
前記ポリマーが式(IV):
【化5】


(式中、
JおよびKは、カップリング部分であり、前記JおよびKは同じまたは異なっており、
mおよびnの各々は、少なくとも1の整数である)
を有する、請求項17に記載のナノ結晶。
【請求項19】
前記ポリマーが、前記キャッピング試薬の前記少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも3個のカップリング部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項20】
前記ポリマーが式(V):
【化6】


(式中、
J、KおよびLは、カップリング部分であり、前記J、KおよびLは同じまたは異なっており、
m、nおよびpの各々は、少なくとも1の整数である)
を有する、請求項19に記載のナノ結晶。
【請求項21】
前記カップリング部分J、KまたはLの少なくとも1つが前記水溶性シェルに水溶性を与える親水性基を含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載のナノ結晶。
【請求項22】
前記ポリマーが前記水溶性シェルに水溶性を与える親水性基を有する少なくとも1個の部分をさらに含む、請求項17〜21のいずれか一項に記載のナノ結晶。
【請求項23】
前記カップリング部分J、KおよびLが各々、アミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、イソシアナートおよびハロゲン基から選択される官能基を含む、請求項17〜22のいずれかに記載のナノ結晶。
【請求項24】
前記ポリマーの前記カップリング部分がホモ官能性である、請求項23に記載のナノ結晶。
【請求項25】
前記ポリマーが、ポリアミン、ポリカルボン酸、およびポリビニルアルコールから成る群より選択される、請求項24に記載のナノ結晶。
【請求項26】
前記ポリマーがジブロックコポリマーを含む、請求項18に記載のナノ結晶。
【請求項27】
前記ジブロックコポリマーがポリ(アクリル酸−b−メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ナトリウムアクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−エチレンオキシド)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ナトリウムメタクリレート)、およびポリ(メチルメタクリレート−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)から成る群より選択される、請求項26に記載のナノ結晶。
【請求項28】
前記ポリマーがポリ(アセチレン)、ポリアクリル酸、およびポリエチレンイミンを含む、請求項14または15に記載のナノ結晶。
【請求項29】
前記ポリマーの分子量が約2000〜約750000である、請求項1〜28のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項30】
前記ナノ結晶がコアシェルナノ結晶である、請求項2〜29のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項31】
前記金属がZn、Cd、Hg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、およびAuから成る群より選択される、請求項30に記載のナノ結晶。
【請求項32】
前記元素AがS、Se、およびTeから成る群より選択される、請求項30または31に記載のナノ結晶。
【請求項33】
前記ナノ結晶がCdS、CdSe、MgTe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、およびHgTeから成る群より選択されるコアシェルナノ結晶である、請求項32に記載のナノ結晶。
【請求項34】
前記ナノ結晶が組成M11−xM2xAを有する均質三元合金を含み、式中:
a) AがPSEの主族VIの元素を表すとき、M1およびM2は、元素周期系(PSE)の亜族IIb−VIB、IIIB−VBまたはIVB、主族IIまたは主族IIIの元素から独立して選択され、または
b) AがPSEの主族(V)の元素を表すとき、M1およびM2はどちらもPSEの主族(III)の元素から選択され、
i) ナノ結晶の産生に適した形の元素M1を含有する反応混合物を適切な温度T1まで加熱する工程と、この温度においてナノ結晶の産生に適した形の元素Aを添加する工程と、前記反応混合物を前記二元ナノ結晶M1Aを形成するのに適した温度で十分な期間にわたって加熱する工程と、次に反応混合物を冷却させる工程とによって二元ナノ結晶M1Aを形成するステップと、
ii) 前記形成された二元ナノ結晶M1Aを沈殿または単離することなく、前記反応混合物を適切な温度T2まで再加熱し、この温度の前記反応混合物にナノ結晶の産生に適した形の前記元素M2の十分な量を添加して、次に前記三元ナノ結晶M11−xM2xAを形成するのに適した温度にて十分な期間にわたって前記反応混合物を加熱し、次に前記反応混合物を室温まで冷却して、前記三元ナノ結晶M11−xM2xAを単離するステップと、
を含むプロセスによって得られうる、請求項2〜33のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項35】
0.001<x<0.999の、請求項34に記載のナノ結晶。
【請求項36】
0.01<x<0.99の、請求項34または35に記載のナノ結晶。
【請求項37】
0.5<x<0.95の、請求項34〜36のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項38】
前記元素M1およびM2がZn、Cd、Hg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、およびAuから成る群より独立して選択される、請求項34〜37のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項39】
前記元素AがS、Se、およびTeから成る群より選択される、請求項34〜38のいずれかに記載のナノ結晶。
【請求項40】
前記ナノ結晶が組成ZnxCd1−xSeまたはZnxCd1−xSを有する、請求項28または39に記載のナノ結晶。
【請求項41】
前記ポリマーシェルの前記第2層にコンジュゲートされている所与の検体に対して結合親和性を有する分子をさらに含む、請求項1〜40のいずれか1項に記載のナノ結晶。
【請求項42】
検体に対して結合親和性を有する前記分子が、タンパク質、ペプチド、免疫原性ハプテンの特徴を有する化合物、核酸、炭水化物または有機分子である、請求項41に記載のナノ結晶。
【請求項43】
前記ナノ結晶が検体に対して結合親和性を有する前記分子に共有結合連結剤によってコンジュゲートされる、請求項41に記載のナノ結晶。
【請求項44】
検体の検出のための、請求項1〜43のいずれか1項に記載のナノ結晶の使用。
【請求項45】
元素周期系(PSE)の亜族Ib、亜族IIb、亜族IVb、亜族Vb、亜族VIb、亜族VIIb、亜族VIIIb、主族II、主族IIIまたは主族IVの元素から選択される少なくとも1つの金属M1を含むナノ結晶コアを提供するステップと、
前記ナノ結晶コアをキャッピング試薬と反応させて、それにより前記キャッピング試薬を前記ナノ結晶の表面に結合させ、前記ナノ結晶コアを包囲する第1層を形成するステップと、
前記キャッピング試薬を、前記キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーとカップリングさせて、それにより前記第1層に共有結合的にカップリングされる第2層を形成して、前記ナノ結晶を包囲する水溶性シェルの形成を完了させるステップと、
を含む、水溶性ナノ結晶を調製する方法。
【請求項46】
元素周期系(PSE)の亜族IIB−VIB、IIIB−VBまたはIVB、主族IIまたは主族IIIの元素から成る群より選択される少なくとも1つの金属M1と、元素周期系の主族Vまたは主族VIの元素から選択される少なくとも1つの元素Aとを含む、ナノ結晶コアを提供するステップと、
前記ナノ結晶コアをキャッピング試薬と反応させて、それにより前記キャッピング試薬を前記ナノ結晶コアの表面に結合させ、前記ナノ結晶コアを包囲する第1層を形成するステップと、
前記キャッピング試薬を、前記キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性である少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーとカップリングさせて、それにより前記第1層に共有結合的にカップリングされる第2層を形成して、前記ナノ結晶を包囲する水溶性シェルの形成を完了させるステップと、
を含む、水溶性ナノ結晶を調製する方法。
【請求項47】
前記キャッピング試薬が親水性である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記キャッピング試薬が疎水性である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項49】
前記キャッピング試薬中に存在する各カップリング基がアミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、イソシアナートおよびハロゲン基から選択される官能基を含む、請求項45〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記キャッピング試薬が式(I)
【化7】


(式中、
Xは、S、N、P、またはO=Pから選択される末端基であり、
Raは、少なくとも2個の主鎖炭素原子を含む部分であり、
Yは、N、C、−COO−、または−CH2O−から選択され、
Zは、極性官能基を含む部分であり、
kは、0または1であり、
nは、0〜3の整数であり、
n’は、0〜2の整数であり、ここでn’は、Yの価数要件を満足するように選択され、
mは、0〜2の整数である)
を有する、請求項45〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記キャッピング試薬が、
【化8】


HS−(CH2n−COOH、n=6〜11
【化9】


から成る群より選択される化合物である、請求項45〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記キャッピング試薬を前記ポリマーにカップリングする前に、前記キャッピング試薬のカップリング基を活性化するステップをさらに備える、請求項45〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記活性化するステップがキャッピング試薬の前記第1層を含む前記ナノ結晶にカップリング剤を反応させる工程を備える、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記カップリング剤が1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド、およびN−ヒドロキシスクシンイミドから成る群より選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記キャッピング試薬に前記ポリマーをカップリングさせるステップが、前記ポリマーおよび前記カップリング剤を共に、前記第1層を含む前記ナノ結晶を含有する溶液に添加する工程を備える、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記カップリングが水性緩衝溶液中で実施される、請求項45〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記水性緩衝溶液がリン酸またはアンモニウム緩衝溶液を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記カップリングが極性有機溶媒中で実施される、請求項45〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記有機溶媒が、ピリジン、DMF、およびクロロホルムから成る群より選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記ポリマーが式(III):
【化10】


(式中、
Jは、前記キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対して反応性であるカップリング部分であり、
mは、少なくとも1の整数である)
を有する、請求項45〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ポリマーが式(IV):
【化11】


(式中、
JおよびKは、カップリング部分であり、前記JおよびKは同じまたは異なっており、
mおよびnの各々は、少なくとも1の整数である)
を有する、請求項45〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記ポリマーが式(IV):
【化12】


(式中、
J、KおよびLは、カップリング部分であり、前記J、KおよびLは同じまたは異なっており、
m、nおよびpの各々は、少なくとも1の整数である)
を有する、請求項45〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記第2層に含まれる前記ポリマーに、前記第2層中に存在する水溶性基を露出させるのに適した試薬を反応させるステップをさらに備える、請求項45〜62のいずれかに記載の方法。

【図1B】
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【図1A】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−540726(P2008−540726A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509981(P2008−509981)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000136
【国際公開番号】WO2006/118542
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】