ポリマーセメントグラウト用混和材
【課題】材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウト及びこれを得るための混和材の提供。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 粘土鉱物由来の非晶質アルミノ珪酸塩微粉末
(B) ポリカルボン酸系減水剤
(C) メラミンスルホン酸高分子
を含有するポリマーセメントグラウト用混和材、並びに、次の成分(F)、(G)、(H)及び(I)
(F) セメント
(G) 細骨材
(H) ポリマーディスパージョン
(I) 消泡剤
と共に、上記ポリマーセメントグラウト用混和材を含有するポリマーセメントグラウト。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 粘土鉱物由来の非晶質アルミノ珪酸塩微粉末
(B) ポリカルボン酸系減水剤
(C) メラミンスルホン酸高分子
を含有するポリマーセメントグラウト用混和材、並びに、次の成分(F)、(G)、(H)及び(I)
(F) セメント
(G) 細骨材
(H) ポリマーディスパージョン
(I) 消泡剤
と共に、上記ポリマーセメントグラウト用混和材を含有するポリマーセメントグラウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の劣化部位の断面修復、増厚等に用いられるポリマーセメントグラウト用の混和材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化部位の断面修復、増厚には、セメントモルタルが用いられる。このセメントモルタルは、セメントコンクリートと力学的特性、温度特性が近似しているため、通常の環境下の施工対象に使用されているが、外的要因によって劣化を受けるような環境下では、ポリマーセメントモルタルが用いられる。ポリマーセメントモルタルは、セメントコンクリートに近い力学的特性を維持しながら、硬化体組織の緻密化により炭酸ガスや塩化物イオンなどの内部鉄筋の劣化因子の浸入を効果的に抑制することができ、また、有機ポリマーの接着増強作用により、更に安定した躯体との一体性も得られる。
【0003】
近年、鉄筋コンクリート構造物の築年数が嵩み、構造物の劣化部位、補修範囲が深く、広くなるにつれ、効率性の点から、大断面の補修においてはグラウト材の型枠注入などの機械施工が増えてきている。型枠注入などにより一度の施工量、施工厚が増えると、硬化モルタルの歪みの影響が大きくなり、乾燥収縮によるひび割れなどの危険性が高くなるため、グラウト材にはより小さい乾燥収縮性能が求められる。従って、このような性能面からもポリマーセメントグラウトがより好適に使用される。
【0004】
ここで、セメントモルタル用ポリマーには、疎水性の高い有機ポリマーを水中に安定化させるため界面活性剤が多量に加えられており、流動性を得るために加えられた減水剤の作用も手伝って骨材等が沈降することにより材料分離を起こし易いという問題がある。
【0005】
材料分離を抑制するには、主として、微粉の配合により充填性を高めて沈降を抑制する方法、水溶性高分子の添加により粘性を増大させ、塑性的に沈降を抑制する方法、という2種の方策が考えられる。
【0006】
微粉の配合による方法の例として、石灰石微粉末と、スメクタイト系粘土鉱物又はシリカフュームとを配合することにより、流動性を維持しながら材料分離を抑えたポリマーセメントグラウトが提案されている(特許文献1)。しかし、スメクタイト系粘土鉱物やシリカフュームは、セメント硬化体の硬化収縮及び乾燥収縮を著しく増大させるため、ひび割れの危険性が高い。また、分級フライアッシュ又は高炉スラグの配合により材料分離を抑え、更に硬化収縮、乾燥収縮を抑えるため収縮低減剤を併用したポリマーセメントグラウトも提案されている(特許文献2)。しかし分級フライアッシュ又は高炉スラグの配合により静弾性係数が高くなるため、乾燥環境での安定した付着強度が得られない。
【0007】
一方、水溶性高分子の添加による方法としては、水溶性高分子としてメチルセルロースを用いるのが一般的であり、これにより効果的に材料分離を抑制することができるが、メチルセルロースは低温において溶解度が著しく高まり粘性が増大するため、低温時の流動性確保及びその維持が容易ではない。
【0008】
その他の方法として、短繊維を混和することにより物理的に材料分離を抑制し、更に収縮応力の分散によりひび割れを低減したポリマーセメントグラウトも提案されている(特許文献3)。しかし、短繊維混入により可塑性が低下し、また躯体へのペーストの浸透性が不足することで投錨効果が得られずに付着性が低下し、躯体との一体性に不安が残るという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平10-265251号公報
【特許文献2】特開2007-45650号公報
【特許文献3】特開2005-82416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明は、材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウトを得るための混和材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、材料分離を抑制しながら可塑性を高めることにより高い充填性を得るべく、鋭意研究を重ねた結果、ポリカルボン酸系減水剤、メラミンスルホン酸を組み合わせることにより、材料分離を低減しながら圧送性を失うことなく充填性に適する可塑性が得られ、更に非晶質アルミノ珪酸塩を配合することにより、乾燥収縮を増大させることなく、さらに材料分離低減性を高めることが出来ることを見出した。
【0012】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 粘土鉱物由来の非晶質アルミノ珪酸塩微粉末
(B) ポリカルボン酸系減水剤
(C) メラミンスルホン酸高分子
を含有するポリマーセメントグラウト用混和材を提供するものである。
【0013】
更に本発明は、次の成分(F)、(G)、(H)及び(I)
(F) セメント
(G) 細骨材
(H) ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂
(I) 消泡剤
と共に、上記のポリマーセメントグラウト用混和材を含有するポリマーセメントグラウトを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材を用いることにより、材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔(A) 非晶質アルミノ珪酸塩微粉末〕
成分(A)としては、粘土鉱物に由来し、非晶質部分を含むアルミノ珪酸塩微粉末であれば特に限定されず、いずれも用いることができる。このような粘土鉱物としては、(1)カオリン鉱物、(2)雲母粘土鉱物、(3)スメクタイト型鉱物、及びこれらが混合生成した混合層鉱物が挙げられる。成分(A)は、これら結晶性アルミノ珪酸塩粘土鉱物を、例えば焼成・脱水して非晶質化することにより得られる。これらのうち、反応性、経済性の観点から、カオリン鉱物由来のものが好ましく、特にカオリナイトを焼成して得られるメタカオリンが最も好適である。
【0016】
成分(A)の微粉末の大きさは、反応性と分離抑制性の観点から、平均粒子径10μm以下、特に5μm以下が好ましい。
【0017】
ポリマーセメントグラウト中における成分(A)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、0.5〜40重量部、特に1〜20重量部が好ましい。0.5重量部未満では材料分離低減に対する効果が得られず、40重量部を超えると短期強度発現性が悪くなり、また混練水量が増えることによる乾燥収縮の増大が問題となり、かつ経済的にも好ましくない。
【0018】
〔(B) ポリカルボン酸系減水剤〕
成分(B)のポリカルボン酸系減水剤としては、ポリアルキレングリコール等をグラフト鎖とし、3以上のカルボキシル基を有する櫛形高分子化合物を主成分とするものであって減水性を示す、通常セメントに使用されるものであれば特に限定されない。性状は粉末状、液体状の別を問わず、通常の減水剤のほか、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の高機能減水剤も使用可能である。
【0019】
ポリマーセメントグラウト中における成分(B)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、固形分として0.05〜2重量部、特に0.1〜1.5重量部が好ましい。0.05重量部未満では型枠注入に十分な流動性が得られず、2重量部を超えると材料分離を抑えることが出来ない。
【0020】
〔(C) メラミンスルホン酸高分子〕
成分(C)としては、通常セメント組成物に減水剤として使用されるものも使用することが出来、またこれ以外の減水性を示さないものも使用可能である。性状は粉末状、液体状の別を問わない。
【0021】
成分(C)のうち、減水剤として用いられている市販品の具体例としては、BASFポゾリス社のMELMENT F10M、MELMENT F245、日産化学社のアクセリート100、アクセリート180、SMF-PG等が挙げられる。また、減水性を示さない市販品の具体例としては、BASFポゾリス社のMELMENT F300、MELVIS F200等が挙げられる。
【0022】
これら成分(C)のうち、減水性を示さないものがより好ましい。なお、ここでいう「減水性を示さない」とは、JIS R 5201の「10.4.2 モルタルの配合」中、セメントに該メラミンスルホン酸高分子3.6gを加えて、「10.4.3 練混ぜ方法」に従って調整し、「11.フロー試験」に従って測定されたフロー値が、メラミンスルホン酸高分子無添加のモルタルのフロー値に対して、105%以下の値を示すものをいう。
【0023】
ポリマーセメントグラウト中における成分(C)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し固形分として0.05〜1重量部、特に0.1〜0.8重量部が好ましい。0.05重量部未満では十分な材料分離抵抗性が得られず、1重量部を超えると型枠注入に必要な流動性が確保できない。
【0024】
〔(D)膨張材〕
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材には、更に(D)膨張材を配合することができる。膨張材としては、通常セメントに用いられているものが使用でき、石灰系、アウイン系、エトリンガイト系などが挙げられる。膨張材は通常粉末状で使用されるが、水や有機溶媒に懸濁したゾル状のものも使用可能である。
【0025】
ポリマーセメントグラウト中における成分(D)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し2〜17重量部、特に4〜15重量部が好ましい。
【0026】
〔(E)収縮低減剤〕
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材には、更に(E)収縮低減剤を配合することができる。収縮低減剤としては、その界面活性作用により硬化体の微細間隙中の水分の表面張力を下げ、水分の蒸散時の収縮応力を低下せしめることによってセメント硬化体の乾燥収縮を抑制しうるものであって、通常セメント組成物に使用されるものが使用可能である。
【0027】
収縮低減剤としては、ポリエーテル系、低級アルコールアルキレンオキサイド付加物系、低分子量アルキレンオキサイド共重合体系、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体系のものなどが挙げられる。性状は液体、有効成分を担体粉末に担持させた粉末状いずれでもよい。
【0028】
ポリマーセメントグラウト中における成分(E)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、0.2〜2重量部、特に0.4〜1.7重量部が好ましい。0.2重量部未満では収縮低減効果はほとんど得られず、2重量部を超えると粘性が増加するとともに、巻込み空気量が著しく増大し、硬化体が疎となるため好ましくない。
【0029】
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材を、(F)セメント、(G)細骨材、(H)ポリマーディスパージョン及び(I)消泡剤と混合することにより、材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウトを得ることができる。
【0030】
〔(F)セメント〕
(F)セメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント;エコセメント(普通型);微粒子セメント、超微粒子セメント;アルミナセメント;高炉スラグやフライアッシュ、フライアッシュ等との混合セメント;又はこれらの混合物が挙げられる。更にこれらのセメントに石膏を添加したセメント等も使用可能である。
【0031】
〔(G)細骨材〕
(G)細骨材としては、川砂、山砂、砕砂等の珪砂;スラグ細骨材;石灰石砂等が挙げられる。その性状を安定化するためには粒度調整された細骨材を使用するのが好ましい。ポリマーセメントグラウト中における(G)細骨材の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、80〜400重量部、特に100〜300重量部が好ましい。
【0032】
〔(H)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂〕
(H)ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂としては、通常セメント組成物に用いられるものであればいずれも使用可能である。ポリマー種としては、スチレンブタジエン共重合体系、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体系、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体系、ポリクロロプレン系等の合成ゴム;オールアクリル重合体、スチレン・アクリル共重合体、アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t-デカン酸ビニルの商品名)共重合体等の各種アクリル系重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体系、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体系、酢酸ビニル・ベオバ共重合体系等の各種酢酸ビニル系重合体などが挙げられる。ポリマーディスパージョンはこれらポリマーの水中油滴型の液体エマルションであり、その液体エマルションをスプレードライなどにより再乳化性を有する粉末状としたものが再乳化形粉末樹脂である。成分(H)としてはポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂の双方とも使用可能であるが、再乳化形粉末樹脂がその利便性の面から好ましい。再乳化形粉末樹脂を使用する場合は耐久性の観点からアクリル酸系モノマーを含むポリマーが好ましい。
【0033】
ポリマーセメントグラウト中における成分(H)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、固形分として1〜25重量部、特に2〜17重量部が好ましい。1重量部未満では付着強度向上、耐久性向上等のポリマー添加による効果がほとんど得られず、25重量部を超えるとその粘性により型枠注入に必要な流動性が得られない。
【0034】
〔(I)消泡剤〕
消泡剤としては、通常セメント組成物に使用される消泡剤が広く使用可能である。例えば、鉱物油系、エーテル系、シリコーン系などが挙げられる。その性状は液体、粉末を問わない。ポリマーセメントグラウト中における成分(I)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、固形分として0.02〜1重量部、特に0.03〜0.8重量部が好ましい。0.02重量部未満では十分な消泡性が得られず、1重量部を超えると強度低下への影響が大きく、実用的でない。
【0035】
〔その他任意成分〕
以上の構成要素のほか、通常セメント組成物に対して使用される各種混和材、添加剤を含有することが可能である。例えば、各種スラグ粉末;フライアッシュ、シリカフューム等のポゾラン物質;硬化促進剤、硬化遅延剤;増粘剤、保水剤;発泡剤;撥水剤;防錆剤、防凍剤;繊維等を含有することが出来る。
【0036】
〔施工方法〕
本発明のポリマーセメントグラウトを用いた施工方法としては、水及び/又はポリマーディスパージョンと混練し、公知の方法によって施工を行えばよい。例えば、型枠内へ直接流し込み又はグラウトポンプにより注入することによって施工することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1〜6及び比較例1〜7
下記材料を用い、表1及び表2に示すポリマーセメントグラウトを調製し、各種試験を行った。この結果を表1及び表2に併せて示す。なお、比較例6は特許文献3に相当するものであり、比較例7は特許文献2に相当するものである。
【0039】
<使用材料>
・(A) 非晶質アルミノ珪酸塩:
MetaMax HRM(メタカオリン,平均粒子径2μm,Engelhard社製)
・(B) ポリカルボン酸系減水剤:
マイティ21P(花王社製)
NF-100(太平洋マテリアル社製)
・(C) メラミンスルホン酸高分子:
アクセリート100(日産化学社製;減水剤)
MELVIS F200(BASFポゾリス社製)
MELMENT F10M(BASFポゾリス社製;減水剤)
・(D) 膨張材:
太平洋エクスパン(太平洋マテリアル社製)
太平洋ジプカル(太平洋マテリアル社製)
・(E) 収縮低減剤:
テトラガードPW(太平洋マテリアル社製)
・(F) セメント:
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
・(G) 細骨材: 山形県産珪砂FM1.8
・(H) ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂:
ELOTEX AP-200(アクリル・酢酸ビニル・ベオバ共重合体系粉末,National Starch & Chemical社製)
Mowinyl-Powder LDM 7000P(オールアクリル重合体系粉末,ニチゴー・モビニール社製)
ポリトロンA-1500(アクリル・スチレン共重合体系エマルション,旭化成ケミカルズ社製)
Mowinyl-Powder DM 2072P(アクリル・酢酸ビニル・ベオバ重合体系粉末,ニチゴー・モビニール社製)
・(I) 消泡剤:
AGITAN P801(MUNZING CHEMIE GMBH社製)
アデカネートB317F(ADEKA社製)
・フライアッシュ:
常盤火力産業社製
・繊維:
RMS 182*6(ビニロン繊維,長さ6mm,クラレ社製)
・高炉スラグ:
ファインセラメント10A(デイ・シイ社製)
【0040】
<ポリマーセメントグラウトの混練方法>
ステンレス製容器に所定量の液体(水及び/又はエマルション)を量りとり、直径150 mmのディスク型回転翼を取り付けた東芝社製ハンドミキサSBM-150E1にて攪拌しながら粉体を投入し、投入終了後90秒間混練した。
【0041】
<試験方法>
・フロー試験:
水平に設置した表面の平滑なガラス板上に、JIS R 5201に規定するフローコーンを静置し、練り上がったポリマーセメントグラウトを上辺まで満たし、フローコーンを引抜いた際のポリマーセメントグラウトの広がりの長辺とその直交する短辺の平均値をフロー値とした。本フロー値を以って流動性の指標とし、200 mm未満を流動性不良、200 mm以上300 mm未満を流動性良好、300 mm以上は過剰な流動性により材料分離の危険性が高いとし、練り上がりフロー値が200 mm以上300 mm未満となるよう水量を調整した。
【0042】
・材料分離抵抗性試験:
内径50 mm、高さ300 mmの塩ビ管にポリマーセメントグラウトを満たし、硬化させた。24時間後脱型して上端50 mm及び下端50 mmを切り出し、10%塩酸中に浸漬し、水硬性組成物を溶解し、細骨材である珪砂を取り出し、乾燥して重量を測定した。上端部と下端部の細骨材重量の差が5%未満を材料分離なし(○)とし、5%以上を材料分離あり(×)として材料分離抵抗性を評価した。
【0043】
・圧縮強度試験:
JIS A 1171に準じて実施した。材齢28日の圧縮強度30 N/mm2以上を実用的な範囲(○)とし、30 N/mm2未満を圧縮強度不足(×)として評価した。
【0044】
・付着強度試験:
コンクリート歩道板(300×300×60 mm)に厚さ10 mmに流し込み、20℃相対湿度40%で養生した。材齢28日で40×40 mmの方形に、コンクリート歩道板表面に達するまでダイヤモンドカッターにて切込みを入れ、同サイズの鋼製アタッチメントをエポキシ接着剤にて貼り付け、硬化後、建研式接着力試験器にて施工面に対し垂直に引張り、付着強度を測定した。付着強度2.5 N/mm2以上を良好な範囲(○)とし、2.5 N/mm2未満を付着強度不足(×)として評価した。
【0045】
・乾燥収縮試験:
40×40×160 mm型枠中に成形し、48時間後に脱型して基長を測定し、その後20℃相対湿度60%にて養生し、基長測定時より28日後の長さ変化を測定した。測定方法はJIS A 1129に準拠して行った。長さ変化率900μ超を乾燥収縮が過大な範囲(×)とし、900μ以下を実用的な範囲(○)として、更に500μ以下を良好な範囲(◎)として評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の劣化部位の断面修復、増厚等に用いられるポリマーセメントグラウト用の混和材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化部位の断面修復、増厚には、セメントモルタルが用いられる。このセメントモルタルは、セメントコンクリートと力学的特性、温度特性が近似しているため、通常の環境下の施工対象に使用されているが、外的要因によって劣化を受けるような環境下では、ポリマーセメントモルタルが用いられる。ポリマーセメントモルタルは、セメントコンクリートに近い力学的特性を維持しながら、硬化体組織の緻密化により炭酸ガスや塩化物イオンなどの内部鉄筋の劣化因子の浸入を効果的に抑制することができ、また、有機ポリマーの接着増強作用により、更に安定した躯体との一体性も得られる。
【0003】
近年、鉄筋コンクリート構造物の築年数が嵩み、構造物の劣化部位、補修範囲が深く、広くなるにつれ、効率性の点から、大断面の補修においてはグラウト材の型枠注入などの機械施工が増えてきている。型枠注入などにより一度の施工量、施工厚が増えると、硬化モルタルの歪みの影響が大きくなり、乾燥収縮によるひび割れなどの危険性が高くなるため、グラウト材にはより小さい乾燥収縮性能が求められる。従って、このような性能面からもポリマーセメントグラウトがより好適に使用される。
【0004】
ここで、セメントモルタル用ポリマーには、疎水性の高い有機ポリマーを水中に安定化させるため界面活性剤が多量に加えられており、流動性を得るために加えられた減水剤の作用も手伝って骨材等が沈降することにより材料分離を起こし易いという問題がある。
【0005】
材料分離を抑制するには、主として、微粉の配合により充填性を高めて沈降を抑制する方法、水溶性高分子の添加により粘性を増大させ、塑性的に沈降を抑制する方法、という2種の方策が考えられる。
【0006】
微粉の配合による方法の例として、石灰石微粉末と、スメクタイト系粘土鉱物又はシリカフュームとを配合することにより、流動性を維持しながら材料分離を抑えたポリマーセメントグラウトが提案されている(特許文献1)。しかし、スメクタイト系粘土鉱物やシリカフュームは、セメント硬化体の硬化収縮及び乾燥収縮を著しく増大させるため、ひび割れの危険性が高い。また、分級フライアッシュ又は高炉スラグの配合により材料分離を抑え、更に硬化収縮、乾燥収縮を抑えるため収縮低減剤を併用したポリマーセメントグラウトも提案されている(特許文献2)。しかし分級フライアッシュ又は高炉スラグの配合により静弾性係数が高くなるため、乾燥環境での安定した付着強度が得られない。
【0007】
一方、水溶性高分子の添加による方法としては、水溶性高分子としてメチルセルロースを用いるのが一般的であり、これにより効果的に材料分離を抑制することができるが、メチルセルロースは低温において溶解度が著しく高まり粘性が増大するため、低温時の流動性確保及びその維持が容易ではない。
【0008】
その他の方法として、短繊維を混和することにより物理的に材料分離を抑制し、更に収縮応力の分散によりひび割れを低減したポリマーセメントグラウトも提案されている(特許文献3)。しかし、短繊維混入により可塑性が低下し、また躯体へのペーストの浸透性が不足することで投錨効果が得られずに付着性が低下し、躯体との一体性に不安が残るという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平10-265251号公報
【特許文献2】特開2007-45650号公報
【特許文献3】特開2005-82416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明は、材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウトを得るための混和材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、材料分離を抑制しながら可塑性を高めることにより高い充填性を得るべく、鋭意研究を重ねた結果、ポリカルボン酸系減水剤、メラミンスルホン酸を組み合わせることにより、材料分離を低減しながら圧送性を失うことなく充填性に適する可塑性が得られ、更に非晶質アルミノ珪酸塩を配合することにより、乾燥収縮を増大させることなく、さらに材料分離低減性を高めることが出来ることを見出した。
【0012】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 粘土鉱物由来の非晶質アルミノ珪酸塩微粉末
(B) ポリカルボン酸系減水剤
(C) メラミンスルホン酸高分子
を含有するポリマーセメントグラウト用混和材を提供するものである。
【0013】
更に本発明は、次の成分(F)、(G)、(H)及び(I)
(F) セメント
(G) 細骨材
(H) ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂
(I) 消泡剤
と共に、上記のポリマーセメントグラウト用混和材を含有するポリマーセメントグラウトを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材を用いることにより、材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔(A) 非晶質アルミノ珪酸塩微粉末〕
成分(A)としては、粘土鉱物に由来し、非晶質部分を含むアルミノ珪酸塩微粉末であれば特に限定されず、いずれも用いることができる。このような粘土鉱物としては、(1)カオリン鉱物、(2)雲母粘土鉱物、(3)スメクタイト型鉱物、及びこれらが混合生成した混合層鉱物が挙げられる。成分(A)は、これら結晶性アルミノ珪酸塩粘土鉱物を、例えば焼成・脱水して非晶質化することにより得られる。これらのうち、反応性、経済性の観点から、カオリン鉱物由来のものが好ましく、特にカオリナイトを焼成して得られるメタカオリンが最も好適である。
【0016】
成分(A)の微粉末の大きさは、反応性と分離抑制性の観点から、平均粒子径10μm以下、特に5μm以下が好ましい。
【0017】
ポリマーセメントグラウト中における成分(A)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、0.5〜40重量部、特に1〜20重量部が好ましい。0.5重量部未満では材料分離低減に対する効果が得られず、40重量部を超えると短期強度発現性が悪くなり、また混練水量が増えることによる乾燥収縮の増大が問題となり、かつ経済的にも好ましくない。
【0018】
〔(B) ポリカルボン酸系減水剤〕
成分(B)のポリカルボン酸系減水剤としては、ポリアルキレングリコール等をグラフト鎖とし、3以上のカルボキシル基を有する櫛形高分子化合物を主成分とするものであって減水性を示す、通常セメントに使用されるものであれば特に限定されない。性状は粉末状、液体状の別を問わず、通常の減水剤のほか、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の高機能減水剤も使用可能である。
【0019】
ポリマーセメントグラウト中における成分(B)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、固形分として0.05〜2重量部、特に0.1〜1.5重量部が好ましい。0.05重量部未満では型枠注入に十分な流動性が得られず、2重量部を超えると材料分離を抑えることが出来ない。
【0020】
〔(C) メラミンスルホン酸高分子〕
成分(C)としては、通常セメント組成物に減水剤として使用されるものも使用することが出来、またこれ以外の減水性を示さないものも使用可能である。性状は粉末状、液体状の別を問わない。
【0021】
成分(C)のうち、減水剤として用いられている市販品の具体例としては、BASFポゾリス社のMELMENT F10M、MELMENT F245、日産化学社のアクセリート100、アクセリート180、SMF-PG等が挙げられる。また、減水性を示さない市販品の具体例としては、BASFポゾリス社のMELMENT F300、MELVIS F200等が挙げられる。
【0022】
これら成分(C)のうち、減水性を示さないものがより好ましい。なお、ここでいう「減水性を示さない」とは、JIS R 5201の「10.4.2 モルタルの配合」中、セメントに該メラミンスルホン酸高分子3.6gを加えて、「10.4.3 練混ぜ方法」に従って調整し、「11.フロー試験」に従って測定されたフロー値が、メラミンスルホン酸高分子無添加のモルタルのフロー値に対して、105%以下の値を示すものをいう。
【0023】
ポリマーセメントグラウト中における成分(C)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し固形分として0.05〜1重量部、特に0.1〜0.8重量部が好ましい。0.05重量部未満では十分な材料分離抵抗性が得られず、1重量部を超えると型枠注入に必要な流動性が確保できない。
【0024】
〔(D)膨張材〕
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材には、更に(D)膨張材を配合することができる。膨張材としては、通常セメントに用いられているものが使用でき、石灰系、アウイン系、エトリンガイト系などが挙げられる。膨張材は通常粉末状で使用されるが、水や有機溶媒に懸濁したゾル状のものも使用可能である。
【0025】
ポリマーセメントグラウト中における成分(D)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し2〜17重量部、特に4〜15重量部が好ましい。
【0026】
〔(E)収縮低減剤〕
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材には、更に(E)収縮低減剤を配合することができる。収縮低減剤としては、その界面活性作用により硬化体の微細間隙中の水分の表面張力を下げ、水分の蒸散時の収縮応力を低下せしめることによってセメント硬化体の乾燥収縮を抑制しうるものであって、通常セメント組成物に使用されるものが使用可能である。
【0027】
収縮低減剤としては、ポリエーテル系、低級アルコールアルキレンオキサイド付加物系、低分子量アルキレンオキサイド共重合体系、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体系のものなどが挙げられる。性状は液体、有効成分を担体粉末に担持させた粉末状いずれでもよい。
【0028】
ポリマーセメントグラウト中における成分(E)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、0.2〜2重量部、特に0.4〜1.7重量部が好ましい。0.2重量部未満では収縮低減効果はほとんど得られず、2重量部を超えると粘性が増加するとともに、巻込み空気量が著しく増大し、硬化体が疎となるため好ましくない。
【0029】
本発明のポリマーセメントグラウト用混和材を、(F)セメント、(G)細骨材、(H)ポリマーディスパージョン及び(I)消泡剤と混合することにより、材料分離を抑制しながら高い圧送性、充填性を有し、更には耐乾燥収縮性能、躯体コンクリートとの付着性能に優れるポリマーセメントグラウトを得ることができる。
【0030】
〔(F)セメント〕
(F)セメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント;エコセメント(普通型);微粒子セメント、超微粒子セメント;アルミナセメント;高炉スラグやフライアッシュ、フライアッシュ等との混合セメント;又はこれらの混合物が挙げられる。更にこれらのセメントに石膏を添加したセメント等も使用可能である。
【0031】
〔(G)細骨材〕
(G)細骨材としては、川砂、山砂、砕砂等の珪砂;スラグ細骨材;石灰石砂等が挙げられる。その性状を安定化するためには粒度調整された細骨材を使用するのが好ましい。ポリマーセメントグラウト中における(G)細骨材の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、80〜400重量部、特に100〜300重量部が好ましい。
【0032】
〔(H)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂〕
(H)ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂としては、通常セメント組成物に用いられるものであればいずれも使用可能である。ポリマー種としては、スチレンブタジエン共重合体系、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体系、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体系、ポリクロロプレン系等の合成ゴム;オールアクリル重合体、スチレン・アクリル共重合体、アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t-デカン酸ビニルの商品名)共重合体等の各種アクリル系重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体系、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体系、酢酸ビニル・ベオバ共重合体系等の各種酢酸ビニル系重合体などが挙げられる。ポリマーディスパージョンはこれらポリマーの水中油滴型の液体エマルションであり、その液体エマルションをスプレードライなどにより再乳化性を有する粉末状としたものが再乳化形粉末樹脂である。成分(H)としてはポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂の双方とも使用可能であるが、再乳化形粉末樹脂がその利便性の面から好ましい。再乳化形粉末樹脂を使用する場合は耐久性の観点からアクリル酸系モノマーを含むポリマーが好ましい。
【0033】
ポリマーセメントグラウト中における成分(H)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、固形分として1〜25重量部、特に2〜17重量部が好ましい。1重量部未満では付着強度向上、耐久性向上等のポリマー添加による効果がほとんど得られず、25重量部を超えるとその粘性により型枠注入に必要な流動性が得られない。
【0034】
〔(I)消泡剤〕
消泡剤としては、通常セメント組成物に使用される消泡剤が広く使用可能である。例えば、鉱物油系、エーテル系、シリコーン系などが挙げられる。その性状は液体、粉末を問わない。ポリマーセメントグラウト中における成分(I)の使用量は、(F)セメント100重量部に対し、固形分として0.02〜1重量部、特に0.03〜0.8重量部が好ましい。0.02重量部未満では十分な消泡性が得られず、1重量部を超えると強度低下への影響が大きく、実用的でない。
【0035】
〔その他任意成分〕
以上の構成要素のほか、通常セメント組成物に対して使用される各種混和材、添加剤を含有することが可能である。例えば、各種スラグ粉末;フライアッシュ、シリカフューム等のポゾラン物質;硬化促進剤、硬化遅延剤;増粘剤、保水剤;発泡剤;撥水剤;防錆剤、防凍剤;繊維等を含有することが出来る。
【0036】
〔施工方法〕
本発明のポリマーセメントグラウトを用いた施工方法としては、水及び/又はポリマーディスパージョンと混練し、公知の方法によって施工を行えばよい。例えば、型枠内へ直接流し込み又はグラウトポンプにより注入することによって施工することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1〜6及び比較例1〜7
下記材料を用い、表1及び表2に示すポリマーセメントグラウトを調製し、各種試験を行った。この結果を表1及び表2に併せて示す。なお、比較例6は特許文献3に相当するものであり、比較例7は特許文献2に相当するものである。
【0039】
<使用材料>
・(A) 非晶質アルミノ珪酸塩:
MetaMax HRM(メタカオリン,平均粒子径2μm,Engelhard社製)
・(B) ポリカルボン酸系減水剤:
マイティ21P(花王社製)
NF-100(太平洋マテリアル社製)
・(C) メラミンスルホン酸高分子:
アクセリート100(日産化学社製;減水剤)
MELVIS F200(BASFポゾリス社製)
MELMENT F10M(BASFポゾリス社製;減水剤)
・(D) 膨張材:
太平洋エクスパン(太平洋マテリアル社製)
太平洋ジプカル(太平洋マテリアル社製)
・(E) 収縮低減剤:
テトラガードPW(太平洋マテリアル社製)
・(F) セメント:
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
・(G) 細骨材: 山形県産珪砂FM1.8
・(H) ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂:
ELOTEX AP-200(アクリル・酢酸ビニル・ベオバ共重合体系粉末,National Starch & Chemical社製)
Mowinyl-Powder LDM 7000P(オールアクリル重合体系粉末,ニチゴー・モビニール社製)
ポリトロンA-1500(アクリル・スチレン共重合体系エマルション,旭化成ケミカルズ社製)
Mowinyl-Powder DM 2072P(アクリル・酢酸ビニル・ベオバ重合体系粉末,ニチゴー・モビニール社製)
・(I) 消泡剤:
AGITAN P801(MUNZING CHEMIE GMBH社製)
アデカネートB317F(ADEKA社製)
・フライアッシュ:
常盤火力産業社製
・繊維:
RMS 182*6(ビニロン繊維,長さ6mm,クラレ社製)
・高炉スラグ:
ファインセラメント10A(デイ・シイ社製)
【0040】
<ポリマーセメントグラウトの混練方法>
ステンレス製容器に所定量の液体(水及び/又はエマルション)を量りとり、直径150 mmのディスク型回転翼を取り付けた東芝社製ハンドミキサSBM-150E1にて攪拌しながら粉体を投入し、投入終了後90秒間混練した。
【0041】
<試験方法>
・フロー試験:
水平に設置した表面の平滑なガラス板上に、JIS R 5201に規定するフローコーンを静置し、練り上がったポリマーセメントグラウトを上辺まで満たし、フローコーンを引抜いた際のポリマーセメントグラウトの広がりの長辺とその直交する短辺の平均値をフロー値とした。本フロー値を以って流動性の指標とし、200 mm未満を流動性不良、200 mm以上300 mm未満を流動性良好、300 mm以上は過剰な流動性により材料分離の危険性が高いとし、練り上がりフロー値が200 mm以上300 mm未満となるよう水量を調整した。
【0042】
・材料分離抵抗性試験:
内径50 mm、高さ300 mmの塩ビ管にポリマーセメントグラウトを満たし、硬化させた。24時間後脱型して上端50 mm及び下端50 mmを切り出し、10%塩酸中に浸漬し、水硬性組成物を溶解し、細骨材である珪砂を取り出し、乾燥して重量を測定した。上端部と下端部の細骨材重量の差が5%未満を材料分離なし(○)とし、5%以上を材料分離あり(×)として材料分離抵抗性を評価した。
【0043】
・圧縮強度試験:
JIS A 1171に準じて実施した。材齢28日の圧縮強度30 N/mm2以上を実用的な範囲(○)とし、30 N/mm2未満を圧縮強度不足(×)として評価した。
【0044】
・付着強度試験:
コンクリート歩道板(300×300×60 mm)に厚さ10 mmに流し込み、20℃相対湿度40%で養生した。材齢28日で40×40 mmの方形に、コンクリート歩道板表面に達するまでダイヤモンドカッターにて切込みを入れ、同サイズの鋼製アタッチメントをエポキシ接着剤にて貼り付け、硬化後、建研式接着力試験器にて施工面に対し垂直に引張り、付着強度を測定した。付着強度2.5 N/mm2以上を良好な範囲(○)とし、2.5 N/mm2未満を付着強度不足(×)として評価した。
【0045】
・乾燥収縮試験:
40×40×160 mm型枠中に成形し、48時間後に脱型して基長を測定し、その後20℃相対湿度60%にて養生し、基長測定時より28日後の長さ変化を測定した。測定方法はJIS A 1129に準拠して行った。長さ変化率900μ超を乾燥収縮が過大な範囲(×)とし、900μ以下を実用的な範囲(○)として、更に500μ以下を良好な範囲(◎)として評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 粘土鉱物由来の非晶質アルミノ珪酸塩微粉末
(B) ポリカルボン酸系減水剤
(C) メラミンスルホン酸高分子
を含有するポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項2】
更に、成分(D)
(D) 膨張材
を含有する請求項1記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項3】
更に、成分(E)
(E) 収縮低減剤
を含有する請求項1又は2記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項4】
成分(A)が、メタカオリン粉末である請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項5】
成分(C)が、減水性を示さないものである請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項6】
次の成分(F)、(G)、(H)及び(I)
(F) セメント
(G) 細骨材
(H) ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂
(I) 消泡剤
と共に、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマーセメントグラウト用混和材を含有するポリマーセメントグラウト。
【請求項7】
成分(H)が、アクリル酸系モノマーを含む粉末ポリマーである請求項6記載のポリマーセメントグラウト。
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)
(A) 粘土鉱物由来の非晶質アルミノ珪酸塩微粉末
(B) ポリカルボン酸系減水剤
(C) メラミンスルホン酸高分子
を含有するポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項2】
更に、成分(D)
(D) 膨張材
を含有する請求項1記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項3】
更に、成分(E)
(E) 収縮低減剤
を含有する請求項1又は2記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項4】
成分(A)が、メタカオリン粉末である請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項5】
成分(C)が、減水性を示さないものである請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーセメントグラウト用混和材。
【請求項6】
次の成分(F)、(G)、(H)及び(I)
(F) セメント
(G) 細骨材
(H) ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂
(I) 消泡剤
と共に、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマーセメントグラウト用混和材を含有するポリマーセメントグラウト。
【請求項7】
成分(H)が、アクリル酸系モノマーを含む粉末ポリマーである請求項6記載のポリマーセメントグラウト。
【公開番号】特開2009−132557(P2009−132557A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309565(P2007−309565)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】
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