説明

ポリマービーズおよびポリマービーズの製造方法

ポリマービーズおよびポリマービーズの製造方法について記載している。ポリマービーズは、架橋したヒドロゲルまたは乾燥したヒドロゲルである。ポリマービーズは、前駆体組成物の液滴を放射線に曝露することで形成される。液滴は全体的に気相によって囲まれている。前駆体組成物には、極性溶媒と極性溶媒中で混和性の重合性材料とが含まれる。重合性材料のモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数は、少なくとも1.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、米国特許出願第11/423048(2006年6月8日出願)および米国仮出願第60/941148(2007年5月31日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、ポリマービーズおよびポリマービーズの製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
ポリマービーズに対しては多くの商業用途がある、たとえば、生物学的用途、医療用途、および工業用途などである。ポリマービーズに対する用途は、増加し、範囲を広げ続けている。固有の物理特性、化学的な特性を有し、汎用性が付加されたポリマービーズが常に必要とされている。ポリマービーズを製造するための方法として種々のものが知られている。これら方法のほとんどにおいて、重合性材料の液滴を反応させて本質的に球状のポリマービーズを形成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、ポリマービーズを製造するためのものとしてエマルション重合方法が良く知られている。油または水エマルションの中に重合性材料が存在する液滴を反応させて、ポリマービーズを形成している。これらの方法はうまく機能するが、結果として生じるポリマービーズは多孔性であることが多い。さらに、残りの非重合性材料、たとえば油および乳化剤、を取り除くために、結果として生じるポリマービーズを十分にクリーニングする必要があることが多い。多くの場合、このクリーニングによって取り除かれるのは表面汚染物のみであることが多いが、ポリマービーズ内に同伴される可能性がある油または他の化合物が取り除かれることはない。重合反応を開始するために、重合性材料を加熱することが多いが、放射線を利用することもできる。
【0005】
別の例では、重合性材料の液滴を形成して、重力によって落下させることがきる。落下している液滴に放射線を曝露して、重合を開始することができる。液滴が落下する間に重合が起こり、その結果、ポリマービーズが形成される。あるいは、重合性材料に放射線を曝露することを、液滴が形成される前に行なうことができる。しかし液滴が落下する間に重合が続く結果、ポリマービーズが形成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリマービーズおよびポリマービーズの製造方法について説明する。ポリマービーズには、場合によりに乾燥させることができる架橋したヒドロゲルが含有される。ポリマービーズには、いくつかの実施形態において、活性剤を含有できる。すなわちポリマービーズは、種々の活性剤に対する担体として機能することができる。
【0007】
第1の態様においては、ポリマービーズを製造する方法が提供される。本方法には、前駆体組成物として、(a)前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超の極性溶媒と、(b)極性溶媒と混和する重合性材料と、を含有する前駆体組成物を形成する工程が含まれる。重合性材料は、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が、少なくとも1.2である。本方法にはさらに、液滴が全体的に気相によって囲まれている前駆体組成物の液滴を形成する工程が含まれる。液滴を、重合性材料が少なくとも部分的に重合して第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間放射線に曝露する。
【0008】
第2の態様においては、ポリマービーズを製造する別の方法が提供される。本方法には、前駆体組成物として、(a)前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超から85質量パーセントの極性溶媒と、(b)前駆体組成物の全質量を基準として15質量パーセントから90質量パーセント未満の重合性材料と、を含有する前駆体組成物を形成する工程が含まれる。重合性材料は、極性溶媒と混和するとともに、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である。重合性材料には、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が挙げられる。また重合性材料には、重合性材料の全質量を基準として0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーを含めることもできる。アニオン性モノマーには、エチレン系不飽和基に加えて、酸性基、酸性基の塩、またはそれらの混合物が含有される。本方法にはさらに、液滴が全体的に気相によって囲まれている、前駆体組成物の液滴を形成する工程が含まれる。液滴を、重合性材料が少なくとも部分的に重合して第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間放射線に曝露する。
【0009】
第3の態様においては、ポリマービーズを含む物品が提供される。ポリマービーズは、アスペクト比が3:1以下であるとともに、前駆体組成物のフリーラジカル重合反応生成物であり、前記前駆体組成物には、(a)前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超から85質量パーセントの極性溶媒と、(b)前駆体組成物の全質量を基準として15質量パーセントから90質量パーセント未満の重合性材料とが含有される。重合性材料は、極性溶媒と混和するとともに、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である。重合性材料には、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が挙げられる。また重合性材料には、重合性材料の全質量を基準として0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーを含めることもできる。アニオン性モノマーには、エチレン系不飽和基に加えて、酸性基、酸性基の塩、またはそれらの混合物が含有される。
【0010】
第4の態様においては、活性剤を含有するポリマービーズを含む物品が提供される。ポリマービーズは、アスペクト比が3:1以下であるとともに、(a)モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である重合性材料を含有する前駆体組成物の反応生成物と、(b)活性剤とを含む。重合性材料には、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシドユニットを有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が挙げられる。また重合性材料には、重合性材料の全質量を基準にして0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーを含めることもできる。アニオン性モノマーには、エチレン系不飽和基に加えて、酸性基、酸性基の塩、またはそれらの混合物が含有される。
【0011】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、開示された各実施形態または本発明の全ての実施を記載しようと意図していない。以下の「発明を実施するための最良の形態」および実施例は、これらの実施形態をより詳しく例証する。
【0012】
添付の図面と関連して本発明の様々な実施形態の以下の「発明を実施するための最良の形態」を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ポリマービーズおよびポリマービーズの製造方法について説明する。ポリマービーズは、架橋したヒドロゲルまたは乾燥したヒドロゲルである。本明細書で用いる場合、用語「ヒドロゲル」は、親水性であり、且つ膨潤しているかまたは極性溶媒によって膨潤可能な高分子材料を指す。高分子材料は通常、極性溶媒と接触すると膨潤はするが溶解はしない。すなわちヒドロゲルは、極性溶媒には溶解しない。膨潤したポリマービーズを乾燥して、極性溶媒の少なくとも一部を取り除くことができる。いくつかの実施形態においては、ポリマービーズには活性剤も含有される。
【0014】
ポリマービーズを前駆体組成物の液滴から形成する。本明細書で用いる場合、用語「前駆体組成物」は、ポリマービーズを形成するために放射線が曝露される反応混合物を指す。すなわち前駆体組成物とは、重合する前の反応混合物を述べている。前駆体組成物には、極性溶媒および極性溶媒と混和する重合性材料が含有される。また前駆体組成物には、他の任意選択の添加剤たとえば処理剤、活性剤、またはそれらの混合物を含めることもできる。前駆体組成物の液滴は通常、全体的に気相によって囲まれている。放射線に曝露されると、前駆体組成物内の重合性材料はフリーラジカル重合反応を起こして、ポリマービーズが形成される。反応生成物は、重合された材料と、極性溶媒と、何らかの任意選択の添加剤とを含有するヒドロゲルである。
【0015】
本明細書で用いる場合、用語「ビーズ」および「ポリマービーズ」は交換可能に用いられ、以下のような粒子を指す。すなわち、高分子材料を含有し、滑らかな表面を有し、アスペクト比が3:1以下、2.5:1以下、2:1以下、1.5:1以下、または1:1である粒子である.すなわちアスペク比は、3:1〜1:1の範囲である。アスペクト比とは、ポリマービーズの最長の寸法と最長の寸法に直交する寸法との比率を指す。ポリマービーズの形状は、多くの場合に球状または楕円形である。しかし球状または楕円形形状は、ポリマービーズが乾燥したときに、潰れる可能性がある。本明細書で用いる場合、用語「滑らかな」は、不連続な部分および鋭利な部分が無い表面を指す。液滴から調製されるポリマービーズの形状は、ミリングまたはグラインディングなどのプロセスによって調製される粒子の形状とは同じではない。これらのプロセスでは、不規則な表面が生じる。
【0016】
図1はポリマービーズ10の略図である。ポリマービーズ10は、外表面12および内部組成物15を有する。ポリマービーズ10は多くの場合に均質であり、外面12と内部組成物15との間には識別できる界面が、たとえば走査型電子顕微鏡または光学顕微鏡等の顕微鏡を使って観察したときであっても、何ら存在しない。乾燥したポリマービーズは多くの場合に、均質な状態を保ち、巨視的な(すなわち、100nmよりも大)孔または溝のような内部孔または溝を含有しない。このポリマービーズおよび乾燥したポリマービーズの均質性は、重合された材料および極性溶媒を含有するポリマーのマトリックスのことを指す。活性剤が存在する場合、活性剤は、ポリマービーズの全体に渡って均質に分散されていても良いし、されていなくても良い。さらに活性剤は、ポリマーのマトリックスとは別個の相内に存在していても良い。
【0017】
一般的に、ポリマービーズ(特に、活性剤を伴うもの)には、顕微鏡を使って観察したときに、識別できる多孔性も空隙もない。たとえば、ポリマービーズを環境制御型走査電子顕微鏡を用いて倍率を50倍まで上げて観察しても、識別できる孔は存在しない(図6Aの代表的な膨潤したポリマービーズを参照)。多くの場合に、ポリマービーズを電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率を50,000倍まで上げて観察しても、識別できる孔は見られない。
【0018】
ポリマービーズの形成は、(i)極性溶媒と(ii)極性溶媒と混和する重合性材料とを含有する前駆体組成物から行なう。重合性材料には、フリーラジカル重合が可能であり且つモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である少なくとも1種のモノマーが含有される。いくつかの実施形態においては、他の任意選択の添加剤たとえば処理剤、活性剤、またはそれらの混合物を、前駆体組成物中に存在させることができる。存在する場合には、これらの任意選択の添加剤は、前駆体組成物に溶解させるかまたは分散させることができる。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「極性溶媒」は、水、水混和性の有機溶媒、またはそれらの混合物を指す。極性溶媒は前駆体組成物中で反応するわけではない(すなわち、極性溶媒はモノマーではない)が、極性溶媒は通常、結果として生じるポリマービーズを膨潤させる。すなわち重合性材料は、極性溶媒の存在下で重合され、そこで結果として生じるポリマービーズは極性溶媒によって膨潤する。膨潤したポリマービーズには、前駆体組成物中に含まれている極性溶媒の少なくとも一部が含有される。
【0020】
前駆体組成物中で用いる任意の水について、水道水、井戸水、脱イオン水、湧き水、蒸留水、滅菌水、またはいかなるその他の好適タイプの水とすることもきる。水混和性の有機溶媒とは、通常、水素結合が可能であるとともに、水と混合されたときに単一相の溶液を形成する有機溶媒を指す。たとえば、水混和性の有機溶媒を以下の量の水と混合したときに、単一相の溶液で存在する。すなわち、溶液の全質量を基準として、少なくとも10質量パーセント、少なくとも20質量パーセント、少なくとも30質量パーセント、少なくとも40質量パーセント、または少なくとも50質量パーセントである。理想的には室温で液体であるが、水混和性の有機溶媒は、融解温度が約50℃未満の固体であっても良い。好適な水混和性の有機溶媒には、それにはヒドロキシル基またはオキシ基が含有されていることが多いが、アルコール、重量平均分子量が約300g/モル以下のポリオール、エーテル、および重量平均分子量が約300g/モル以下のポリエーテルが挙げられる。代表的な水混和性の有機溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムおよびブロック共重合体、ジメトキシテトラグリコール、ブトキシトリグリコール、トリメチレングリコールトリメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
極性溶媒の存在量は、前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超であることが多い。代表的な前駆体組成物では、極性溶媒は、以下の量で存在する。すなわち、前駆体組成物の全質量を基準として、少なくとも15質量パーセント、少なくとも20質量パーセント、少なくとも25質量パーセント、少なくとも30質量パーセント、少なくとも40質量パーセント、または少なくとも50質量パーセントである。前駆体組成物における極性溶媒は、以下の量で存在することができる。すなわち、前駆体組成物の全質量を基準として、最大で85質量パーセント、最大で80質量パーセント、最大で75質量パーセント、最大で70質量パーセント、または最大で60質量パーセントである。いくつかの前駆体組成物では、極性溶媒は以下の量で存在する。すなわち、前駆体組成物の全質量を基準として、10超から85質量パーセント、10超から80質量パーセント、20〜80質量パーセント、30〜80質量パーセント、または40〜80質量パーセントである。
【0022】
重合性材料は、極性溶媒と混和し、極性溶媒から相分離しない。重合性材料に関連して本明細書で用いる場合、用語「混和性である」の意味は、重合性材料が極性溶媒に支配的に溶解するかまたは極性溶媒と相溶性であるということである。しかし極性溶媒に溶解しない重合性材料が、少量だけ存在する可能性がある。たとえば重合性材料が、極性溶媒に溶解しない不純物を有する場合があ。一般的に、少なくとも95質量パーセント、少なくとも97質量パーセント、少なくとも98質量パーセント、少なくとも99質量パーセント、少なくとも99.5質量パーセント、少なくとも99.8質量パーセント、または少なくとも99.9質量パーセントの重合性材料が、極性溶媒に溶解できる。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「重合性材料」は、モノマーまたはモノマーの混合物を指すことができる。用語「モノマー」と「モノマー分子」とは交換可能に用いて、フリーラジカル重合が可能である少なくとも1種の重合性基を含有する化合物を指す。重合性基は通常、エチレン系不飽和基である。
【0024】
いくつかの実施形態においては、重合性材料には、単一の化学構造のモノマーが含まれる。他の実施形態においては、重合性材料には、複数種の異なるモノマーが含まれる(すなわち、化学構造が異なるモノマーの混合物が存在する)。重合性材料に含まれるのが1種のモノマーであろうとモノマーの混合物であろうと、重合性材料のモノマー分子当たりの重合性基(たとえば、エチレン系不飽和基)の平均数は、少なくとも1.2である。重合性材料には、たとえば、2つ以上の重合性基を有する単一種類のモノマーを含めることができる。あるいは、重合性材料に、複数の異なる種類のモノマーを、モノマー分子当たりの重合性基の平均数が少なくとも1.2に等しくなるように含めることができる。いくつかの実施形態においては、モノマー分子当たりの重合性基の平均数は、以下の値である。すなわち、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、または少なくとも3.0である。
【0025】
分子当たりの重合性基の平均数の決定は、各モノマー分子の相対モル濃度とその官能基(重合性基の数)とを決定することと、数平均官能基を決定することとによって行なう。たとえば、重合性材料が、Xモルパーセントの第1のモノマー(n個の重合性基を有する)と、(100−X)モルパーセントの第2のモノマー(m個の重合性基を有する)とを含有する場合、重合性材料のモノマー分子当たりの重合性基の平均数は、[n(X)+m(100−X)]/100であることになる。別の例では、重合性材料として、n個の重合性基を有する第1のモノマーがXモルパーセントと、m個の重合性基を有する第2のモノマーがYモルパーセントと、q個の重合性基を有する第3のモノマーが(100−X−Y)モルパーセントとが含有される場合、重合性材料の分子当たりの重合性基の平均数は、[n(X)+m(Y)+q(100−X−Y)]/100であることになる。
【0026】
重合性材料には、2つ以上の重合性基を有する少なくとも1種のモノマーが含まれる。同様に、モノマー分子当たりの重合性基の平均数が少なくとも1.2である混合物を含有するという条件で、3つ以上の重合性基を有する第1のモノマーを、1つの重合性基を有する第2のモノマー、2つの重合性基を有する第2のモノマー、またはそれらの混合物と混合することができる。多くの場合に、3つ以上の重合性基を有するモノマーには、2つの重合性基、1つの重合性基、またはそれらの混合物を有する、モノマー不純物が含有される。
【0027】
前駆体組成物には一般的に、前駆体組成物の全質量を基準として、15〜90質量パーセントの重合性材料が含有される。たとえば、前駆体組成物には、少なくとも15質量パーセント、少なくとも20質量パーセント、少なくとも25質量パーセント、少なくとも30質量パーセント、少なくとも40質量パーセント、または少なくとも50質量パーセントの重合性材料が含有される。前駆体組成物には、最大で90質量パーセント、最大で80質量パーセント、最大で75質量パーセント、最大で70質量パーセント、または最大で60質量パーセントの重合性材料を含めることができる。いくつかの前駆体組成物では、重合性材料の量は、前駆体組成物の全質量を基準として、20〜90質量パーセント、30〜90質量パーセント、40〜90質量パーセント、または40〜80質量パーセントの範囲である。
【0028】
重合性材料には多くの場合に、1つまたは複数の(メタ)アクリレートが含まれる。本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート、アクリレート、またはそれらの混合物を指す。(メタ)アクリレートには、(メタ)アクリロイル基が含有されている。用語「(メタ)アクリロイル」は、式HC=CR−(CO)−の1価基を指す。ここで、Rは水素またはメチルであり、(CO)は、炭素が酸素に二重結合によって結合していることを示す。(メタ)アクリロイル基は、フリーラジカル重合が可能である(メタ)アクリレートの重合性基(すなわち、エチレン系不飽和基)である。すべての重合性材料を(メタ)アクリレートとすることもできるし、重合性材料に1つまたは複数の(メタ)アクリレートを、エチレン系不飽和基を有する他のモノマーと組み合わせて含めることもできる。
【0029】
多くの実施形態において、重合性材料には、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が含まれる。用語ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)、ポリ(アルキレングリコール(メタ)アクリレート)、アルコキシ化(メタ)アクリレート、およびアルコキシ化ポリ(メタ)アクリレートは、交換可能に用いることができ、2つ以上のアルキレンオキシドの残基の構成単位(アルキレンオキシド単位と言うこともある)を含有する少なくとも1つの基を有する(メタ)アクリレートを指す。多くの場合に、少なくとも5つのアルキレンオキシドの残基の構成単位が存在する。アルキレンオキシド単位は、式−OR−の2価基である。式中、Rは、最大で10個の炭素原子、最大で8個の炭素原子、最大で6個の炭素原子、または最大で4個の炭素原子を有するアルキレンである。アルキレンオキシド単位は多くの場合に、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位、またはそれらの混合物から選択される。
【0030】
モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基(たとえば、(メタ)アクリロイル基)の平均数が少なくとも1.2である限り、重合性材料には、単一の(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリレートの混合物を含めることができる。モノマー分子当たりの(メタ)アクリロイル基の平均数が少なくとも1.2であるためには、重合性材料中に存在する(メタ)アクリレートの少なくとも一部が、モノマー分子当たり2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。たとえば、重合性材料には、モノマー分子当たり2つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有できるし、混合物として、モノマー分子当たり2つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートと、モノマー分子当たり1つの(メタ)アクリロイル基を有する1または複数種の(メタ)アクリレートとを組み合わせたものを含有できる。別の例では、重合性材料には、モノマー分子当たり3つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有できるし、混合物として、モノマー分子当たり3つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートと、モノマー分子当たり1つの(メタ)アクリロイル基、モノマー分子当たり2つの(メタ)アクリロイル基、またはそれらの混合物を有する1つまたは複数種の(メタ)アクリレートとを組み合わせたものを含有できる。
【0031】
モノマー分子当たり1つのエチレン系不飽和基を有する好適な重合性材料の具体例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。すなわち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)(たとえば、ポリ(エチレンオキシド(メタ)アクリレート)、ポリ(プロピレンオキシド(メタ)アクリレート)、およびポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド(メタ)アクリレート))、アルコキシポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−アルキル(メタ)アクリルアミド(たとえば、N−メチル(メタ)アクリルアミド)、およびN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(たとえば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド)である。
【0032】
モノマー分子当たり2つのエチレン系不飽和基を有する好適な重合性材料には、たとえば、アルコキシジ(メタ)アクリレートが含まれる。アルコキシジ(メタ)アクリレートの例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。すなわち、ポリ(アルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート)たとえばポリ(エチレンオキシドジ(メタ)アクリレート)およびポリ(プロピレンオキシドジ(メタ)アクリレート);アルコキシジオールジ(メタ)アクリレートたとえばエトキシ化ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびエトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;アルコキシトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートたとえばエトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートおよびプロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート;およびアルコキシペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートたとえばエトキシ化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートおよびプロポキシ化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートである。
【0033】
モノマー分子当たり3つのエチレン系不飽和基を有する好適な重合性材料の例には、たとえば、アルコキシ化トリ(メタ)アクリレートが含まれる。アルコキシ化トリ(メタ)アクリレートの例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。すなわち、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートたとえばエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;およびアルコキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートたとえばエトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートである。
【0034】
モノマー当たり少なくとも4つのエチレン系不飽和基を有する好適な重合性材料には、たとえば、アルコキシ化テトラ(メタ)アクリレートおよびアルコキシ化ペンタ(メタ)アクリレートが含まれる。アルコキシ化テトラ(メタ)アクリレートの例には、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートたとえばエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態においては、重合性材料には、モノマー分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が含まれる。モノマー分子当たり平均で少なくとも1.2のエチレン系不飽和基を得るために、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)を単独でまたは他のモノマーと組み合わせて用いることができる。アルコキシ部分(すなわち、ポリ(アルキレンオキシド)部分)は多くの場合に、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有する。すなわち、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の各モルには、少なくとも5モルのアルキレンオキシド単位が含有される。複数のアルキレンオキシド単位が存在することによって、極性溶媒中でのポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の溶解が促進される。いくつかの代表的なポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)には、少なくとも6つのアルキレンオキシド単位、少なくとも8つのアルキレンオキシド単位、少なくとも10個のアルキレンオキシド単位、少なくとも12個のアルキレンオキシド単位、少なくとも15個のアルキレンオキシド単位、少なくとも20個のアルキレンオキシド単位、または少なくとも30個のアルキレンオキシド単位が含有される。ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)にはポリ(アルキレンオキシド)鎖を含有でき、ポリ(アルキレンオキシド)鎖は、ホモポリマー鎖、ブロック共重合体鎖、ランダム共重合体鎖、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態においては、ポリ(アルキレンオキシド)鎖はポリ(エチレンオキシド)鎖である。
【0036】
少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するこのポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の任意の分子量を用いることが、ポリマービーズを前駆体組成物から形成することができる限り、可能である。このポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の重量平均分子量は多くの場合に、2000g/モル以下、1800g/モル以下、1600g/モル以下、1400g/モル以下、1200g/モル以下、または1000g/モル以下である。しかし他の用途では、重合性材料に、2000g/モル超の重量平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)を含めることが望ましい。
【0037】
複数の(メタ)アクリロイル基を有するいくつかの代表的なポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の調製が、以下の文献に記載されている。すなわち、米国特許第7,005,143(アブエリャマン(Abuelyaman)ら)、加えて、米国特許出願公開第2005/0215752 A1(ポップ(Popp)ら)、同第2006/0212011 A1(ポップら)、および同第2006/0235141 A1(リーゲル(Riegel)ら)である。モノマー分子当たりの平均の(メタ)アクリロイル官能基が少なくとも2であるとともに、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有する好適なポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)は、たとえば、サトマー(Sartomer)(ペンシルベニア州エクストン(Exton))から、商品名「SR9035」(エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート)、「SR499」(エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、「SR502」(エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート)、「SR415」(エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ならびに「CD501」(プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)および「CD9038」(エトキシ化(30)ビス−フェノールAジアクリレート)で市販されている。括弧の中の数は、モノマー分子当たりのアルキレンオキシド単位の平均数を指す。他の好適なポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)には、ポリアルコキシトリメチロールプロパントリアクリレートが含まれる。これはたとえば、バスフ(BASF)(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン(Ludwigshafen))から商品名「ラロマー(LAROMER)」で市販されているものであり、少なくとも30のアルキレンオキシド単位を有する。
【0038】
いくつかの代表的な前駆体組成物には、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)であって、モノマー分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのエチレンオキシド単位を有し、および重量平均分子量が2000g/モル未満であるものが含有される。この重合性材料を、前駆体組成物中の唯一の重合性材料とすることもできるし、極性溶媒中で混和性である他のモノマーと組み合わせることもできる。ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が、前駆体組成物中における唯一のモノマーであろうと、他のモノマーと組み合わされようと、重合性材料のモノマー分子当たりの平均官能基数は少なくとも1.2である。
【0039】
より具体的な代表的な前駆体組成物には、ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレートであって、モノマー分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有し、および重量平均分子量が2000g/モル以下であるものが含有される。さらにより具体的な代表的な前駆体組成物には、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートであって、重量平均分子量が2000g/モル以下であるものを含有できる。多くの場合に、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートには、1つの(メタ)アクリロイル基、2つの(メタ)アクリロイル基、またはそれらの混合物を有する不純物が含有される。たとえば、市販の「SR415」(エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)は多くの場合に、モノマー分子当たりの平均官能基数は3未満である(分析したら、モノマー分子当たりの平均官能基数は約2.5であった)。不純物が存在する場合であっても、前駆体組成物中におけるモノマー分子当たりの平均官能基数は少なくとも1.2である。
【0040】
モノマー分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)に加えて、前駆体組成物には、ポリマービーズに特定の特性を付与するために添加される他のモノマーを含めることができる。場合によって、前駆体組成物にはアニオン性モノマーを含有できる。本明細書で用いる場合、用語「アニオン性モノマー」とは、エチレン系不飽和基に加えて、以下のような酸性基を含有するモノマーを指す。すなわち、カルボン酸(すなわち、カルボキシ)基(−COOH)もしくはその塩、スルホン酸基(−SOH)もしくはその塩、硫酸基(−SOH)もしくはその塩、ホスホン酸基(−PO)もしくはその塩、リン酸基(−OPOH)もしくはその塩、またはそれらの混合物から選択される酸性基である。前駆体組成物のpHに応じて、アニオン性モノマーは、中性状態(酸性型)とすることもできるし、塩の形態(アニオン型)とすることもできる。アニオン型の対イオンは多くの場合に、以下のものから選択される。すなわち、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン、または種々のアルキル基を有するアンモニウムイオン、たとえばテトラアルキルアンモニウムである。
【0041】
カルボキシ基を有する好適なアニオン性モノマーには、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、アクリル酸、メタクリル酸、および種々のカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、および3−カルボキシプロピルメタクリレートである。カルボキシ基を有する他の好適なアニオン性モノマーには、たとえば米国特許第4,157,418(ハイルマン(Heilmann)に記載されるもののような(メタ)アクリロイルアミノ酸が挙げられる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸としては、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアスパラギン酸、N−アクリロイル−β−アラニンおよび2−アクリルアミドグリコール酸が挙げられるが、これらに限定されない。βスルホン酸基を有する好適なアニオン性モノマーには、以下のものが挙げられる、これらに限定されない。すなわち、種々の(メタ)アクリルアミドスルホン酸、たとえばN−アクリルアミドメタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、および2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等である。ホスホン酸基を有する好適なアニオン性モノマーには、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸、たとえば2−アクリルアミドエチルホスホン酸、および3−メタクリルアミドプロピルホスホン酸等である。リン酸基を有する好適なアニオン性モノマーには、以下のものが挙げられる。すなわち、アルキレングリコール(メタ)アクリレートのリン酸塩、たとえばエチレングリコール(メタ)アクリレートのリン酸塩、およびプロピレングリコール(メタ)アクリレートのリン酸塩等である。これらの酸モノマーのうちのいずれかの塩を用いることもできる。
【0042】
アニオン性モノマーは、もし存在するならば、ポリマービーズの膨潤の度合いを増加させることができる。すなわち、膨潤の度合いの変更は多くの場合に、前駆体組成物中の他の親水性モノマーの量だけでなくアニオン性モノマーの量を変えることによって行なうことができる。膨潤の度合いは通常、ポリマービーズが収着することができる極性溶媒の総量に比例する。アニオン性モノマーの量を、重合性材料のモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2となるように制御する。アニオン性モノマーの存在量は多くの場合に、0から20質量パーセント未満(重合性材料の全質量を基準として)の範囲である。たとえば、前駆体組成物には、20質量パーセント未満のアニオン性モノマー、15質量パーセント未満のアニオン性モノマー、10質量パーセント未満のアニオン性モノマー、5質量パーセント未満のアニオン性モノマー、3質量パーセント未満のアニオン性モノマー、2質量パーセント未満のアニオン性モノマー、1質量パーセント未満のアニオン性モノマー、0.5質量パーセント未満のアニオン性モノマー、0.2質量パーセント未満のアニオン性モノマー、または0.1質量パーセント未満のアニオン性モノマーを含有できる。いくつかの前駆体組成物にはアニオン性モノマーは含有されていない。アニオン性モノマーは低レベルであるかまたは全くないことが、特定の生物学的に活性な薬剤を伴う組成物中では好ましい場合がある。たとえば、特定のアニオン性の抗菌剤をビーズ内に必要以上に堅く拘束して溶出しないようにすることを、必要に応じて行なっても良い。
【0043】
他の実施形態においては、前駆体組成物にカチオン性モノマーを含有できる。本明細書で用いる場合、用語「カチオン性モノマー」とは、エチレン系不飽和基に加えて、アミノ基、アミノ基の塩、またはそれらの混合物を有するモノマーを指す。たとえば、カチオン性モノマーは、アミノ(メタ)アクリレートまたはアミノ(メタ)アクリルアミドとすることができる。アミノ基は、第1級アミノ基もしくはその塩、第2級アミノ基もしくはその塩、第3級アミノ基もしくはその塩、または第4級塩とすることができる。カチオン性モノマーには多くの場合に、第3級アミノ基もしくはその塩、または第4級アミノ塩が含まれる。前駆体組成物のpHに応じて、いくつかのカチオン性モノマーは、中性状態(塩基性型)とすることもできるし、塩の形態(カチオン型)とすることもできる。カチオン型の対イオンは多くの場合に、以下のものから選択される。すなわち、種々のカルボン酸塩アニオン(たとえば、酢酸塩)だけでなく、ハロゲン化物(たとえば、臭化物または塩化物)、硫酸塩、アルキル硫酸塩(たとえば、メトサルフェートまたはエトサルフェート)、である。
【0044】
代表的なアミノ(メタ)アクリレートには、以下のものが挙げられる。すなわち、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびN−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、たとえば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−アクリル酸ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルメタクリレート、およびN−tert−ブチルアミノプロピルアクリレート等である。
【0045】
代表的なアミノ(メタ)アクリルアミドには、たとえば以下のものが挙げられる。すなわち、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド、およびN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドである。
【0046】
代表的なモノマーの第4級塩には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(たとえば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドおよび3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)および(メタ)アクリロキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(たとえば、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリロキシ−2ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリロキシ−2ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、および2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩)である。
【0047】
他の代表的なモノマーの第4級アミノ塩には、ジメチルアルキルアンモニウム基として、アルキル基が2〜22個の炭素原子または2〜20個の炭素原子を有するものが挙げられる。すなわち、モノマーには、式−N(CH(C2+1の基が含まれる。ここで、nは整数であり値は2〜22である。代表的なモノマーには、以下の式のモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
【化1】

【0049】
ここで、nは整数であり範囲は2〜22である。これらのモノマーの合成は米国特許第5,437,932(アリ(Ali)ら)に記載されている。これらのモノマーの調製は、たとえば、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩、アセトン、2〜22個の炭素原子を有する1−ブロモアルカン、および場合により酸化防止剤を組み合わせることによって、行なうことができる。結果として生じる混合物を、約16時間、約35℃で攪拌した後、室温まで冷却しても良い。派生する白色固形物沈殿は次に、濾過によって分離し、冷えた酢酸エチルを用いて洗浄し、そして真空下で40℃において乾燥させても良い。
【0050】
いくつかのカチオン性モノマー(たとえば四級アミノ基を有するもの)は、抗菌剤特性をポリマービーズに付与することができる。カチオン性モノマーの存在量は多くの場合に、重合性材料の全質量を基準として0〜50質量パーセントの範囲である。たとえば、前駆体組成物は、最大で40質量パーセント、最大で30質量パーセント、最大で20質量パーセント、最大で15質量パーセント、または最大で10質量パーセントを含有できる。いくつかの例における前駆体組成物には、少なくとも0.5質量パーセント、少なくとも1質量パーセント、少なくとも2質量パーセント、または少なくとも5質量パーセントのカチオン性モノマーが含有される。いくつかの前駆体組成物にはカチオン性モノマーは含有されていない。
【0051】
いくつかの代表的な重合性材料には、非イオン性モノマーのみが含有されている。すなわち、重合性材料には実質的に、アニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーが両方とも無い。アニオン性またはカチオン性モノマーに関連して本明細書で用いる場合、「実質的に無い」の意味は、重合性材料には、重合性材料の質量を基準として、1質量パーセント未満、0.5質量パーセント未満、0.2質量パーセント未満、または0.1質量パーセント未満のアニオン性モノマーまたはカチオン性モノマーが含有されているということである。
【0052】
いくつかの実施形態においては、前駆体組成物には、(a)前駆体組成物の全質量を基準として、10質量パーセント超から85質量パーセントの極性溶媒と、(b)前駆体組成物の全質量を基準として15質量パーセントから90質量パーセント未満の重合性材料とが含有される。重合性材料は、極性溶媒中に混和性であるとともに、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である。重合性材料には、(i)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)と、(ii)前駆体組成物中の重合性材料の全質量を基準として0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーであって、エチレン系不飽和基に加えて酸性基、酸性基の塩、またはそれらの混合物を有するアニオン性モノマーとが挙げられる。
【0053】
極性溶媒および重合性材料に加えて、前駆体組成物には、1つまたは複数の任意選択の添加剤、たとえば処理剤、活性剤、またはそれらの混合物を含めることができる。これらの任意選択の添加剤のいずれかを、前駆体組成物に溶解させるか、または前駆体組成物中に分散させることができる。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「処理剤」は、主に前駆体組成物または高分子材料のどちらかの物理的または化学的な特性を変えるために添加される化合物または化合物の混合物を指す。すなわち処理剤を添加する目的は、前駆体組成物を変えることかまたは高分子材料の形成を助長することである。添加する場合、処理剤は通常、前駆体組成物に添加する。これらの処理剤は通常、活性剤であるとはみなされない。
【0055】
好適な処理剤には以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、レオロジー調整剤たとえばポリマーの増粘剤(たとえばゴム、セルロース、ペクチンなど)または無機増粘剤(たとえばクレイ、シリカゲルなど)、表面張力を変更する界面活性剤、前駆体組成物を安定させる乳化剤、極性溶媒へのモノマーの可溶性を高める可溶化剤、重合性材料の重合反応を促進する開始剤、連鎖移動または遅延剤、結合剤、分散剤、定着剤、発泡剤、流動助剤、気泡安定剤、増泡剤、ゲル化剤、艶出し剤、噴射剤、蝋、前駆体組成物の凝固点を下げておよび/または沸点を上げるための化合物、ならびに可塑剤である。
【0056】
いずれかの任意選択的処理剤の存在量は通常、前駆体組成物の全質量を基準として20質量パーセント以下、15質量パーセント以下、10質量パーセント以下、8質量パーセント以下、6質量パーセント以下、4質量パーセント以下、2質量パーセント以下、1質量パーセント以下、または0.5質量パーセント以下である。
【0057】
1つの代表的な処理剤は開始剤である。ほとんどの前駆体組成物には、フリーラジカル重合反応を起こすための開始剤が含まれる。開始剤は、光開始剤とすることもできるし、熱開始剤とすることもできるし、レドックス対とすることもできる。開始剤は、前駆体組成物に可溶とすることもできるし、前駆体組成物中に分散させることもできる。
【0058】
好適な可溶性の光開始剤の例は、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2メチル−1−プロパノンである。これは、商品名「イルガキュア(IRGACURE)2959」で、チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリタウン)から市販されている。好適な分散された光開始剤の例は、アルファ、アルファ−ジメトキシ−アルファフェニルアセトフェノンである。これは、商品名「イルガキュア651」で、チバスペシャルティケミカルズから市販されている。他の好適な光開始剤は、米国特許第5,506,279に記載されているアクリルアミドアセチル光開始剤である。この光開始剤には、開始剤として機能可能な基だけでなく重合性基も含有される。開始剤は通常、当該技術分野で知られ、いくつかの重合性組成物中で使用されるようなレドックス開始剤ではない。このようなレドックス開始剤は、もし存在するならば、生物活性剤と反応するであろう。
【0059】
好適な熱開始剤としては、たとえば、アゾ化合物、過酸化物またはヒドロペルオキシド、過硫酸塩などが挙げられる。代表的なアゾ化合物としては、2,2「−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2」−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドおよび4,4’−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)が挙げられる。市販されている熱アゾ化合物重合開始剤の例としては、「バゾ(VAZO)」44、「バゾ」56および「バゾ」68などの「バゾ」という商品名でデュポンスペシャルティケミカル(DuPont Specialty Chemical)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington, DE))から入手できる材料が挙げられる。適する過酸化物およびヒドロペルオキシドには、過酸化アセチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよびペルオキシ酢酸が挙げられる。好適な過硫酸塩としては、たとえば、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0060】
他の例において、フリーラジカル重合開始剤は、レドックス対であり、たとえば過硫酸アンモニウムまたは過硫酸ナトリウムとN,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸ナトリウムと硫酸第一鉄アンモニウム、過酸化水素と硫酸第一鉄アンモニウム、クメンヒドロペルオキシドとN,N−ジメチルアニリンなどである。
【0061】
いくつかの実施形態において、前駆体組成物には、重合性材料、極性溶媒、および開始剤(たとえば光開始剤)のみが含まれている。ほとんどの実施形態において、開始剤の存在量は、前駆体組成物の全質量を基準として4質量パーセント以下、3質量パーセント以下、2質量パーセント以下、1質量パーセント以下、または0.5質量パーセント以下である。
【0062】
前駆体組成物には、1つまたは複数の任意選択の活性剤を含めることができる。活性剤によって、何らかの付加された機能性がポリマービーズに与えられる。ポリマービーズは、活性剤に対する担体として機能する。存在する場合、活性剤の存在量は通常、前駆体組成物の全質量を基準として30質量パーセント以下、25質量パーセント以下、20質量パーセント以下、15質量パーセント以下、10質量パーセント以下、または5質量パーセント以下である。
【0063】
いくつかの実施形態においては、活性剤はポリマービーズ中に移動することおよびポリマービーズから移動することができる。他の実施形態においては、活性剤は、静止してポリマービーズ内に残る傾向がある。たとえば、活性剤の分子サイズが原因で、活性剤がビーズの外へ溶出または拡散することが防止される場合がある。別の例では、活性剤はビーズに共有結合またはイオン結合によって結合されても良い。活性剤は場合により、他のエチレン系不飽和基と反応して、高分子材料の一部になるかまたはビーズ中の高分子材料に結合されることが可能である、1つまたは複数のエチレン系不飽和基を有することができる。
【0064】
いくつかの活性剤は生物学的に活性な薬剤である。本明細書で用いる場合、用語「生物学的に活性な薬剤」および「生物活性剤」は、交換可能に用いられ、生物系(たとえば、バクテリアまたは他の微生物、植物、魚、昆虫、または哺乳動物など)に対するいくつかの知られた効果を有する化合物または化合物の混合物を指す。生物活性剤を添加するのは、生物系に影響を及ぼすため、たとえば生物系の代謝に影響を及ぼすためである。生物活性剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、医薬剤、除草剤、殺虫剤、抗菌剤、消毒剤および防腐剤、局所麻酔薬、収れん剤、抗真菌剤、抗菌物質、成長因子、ビタミン、ハーブエキス、酸化防止剤、ステロイド類または他の抗炎症剤、創傷治療を助長する化合物、血管拡張薬、剥離剤(exfoliant)たとえばアルファヒドロキシ酸またはベータヒドロキシ酸等、酵素、栄養素、タンパク質、および炭水化物である。さらに他の生物活性剤には、以下のものが含まれる。すなわち、人工的な日焼け剤、日焼け促進剤、皮膚鎮静剤、皮膚引き締め剤、抗しわ剤、皮膚修復剤、皮脂抑制剤、皮脂刺激物質、プロテアーゼ阻害剤、かゆみ止め成分、発毛抑制剤、発毛促進剤、皮膚知覚薬、にきび対策治療、除毛剤、脱毛剤、魚の目除去剤、タコ除去剤、イボ除去剤、日焼け止め用調製品剤、防虫剤、脱臭剤および制汗剤、毛着色剤、漂白剤、および抗フケ剤である。当該技術分野で知られる、いずれかの他の好適な生物活性剤も用いることができる。
【0065】
他の活性剤は生物学的に活性ではない。これらの活性剤は、ポリマービーズにいくつかの非生物学的な機能性を付与するために添加する。すなわち、これらの活性剤を添加するのは、生物系に影響を及ぼすためではない、たとえば生物系の代謝に影響を及ぼすためではない。たとえば、好適な活性剤を、ポリマービーズの臭い、電荷、色彩、密度、pH、浸透圧モル濃度、水分活性、イオン強度、または屈折率を変えるために選択することができる。また活性剤を、反応性基または化合物をもたらすために選択することもできる。生物学的活性ではない薬剤の例として、以下のものが挙げられる。すなわち、乳化剤または界面活性剤(陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせを含む)、顔料、無機酸化物(たとえば二酸化ケイ素、チタニア、アルミナ、およびジルコニア)、芳香成分たとえば芳香療法剤および芳香剤、臭い吸収剤、湿潤剤、潤滑剤、染料、漂白剤または着色剤、調味料、装飾剤たとえば光沢剤、皮膚軟化剤、酸、塩基、緩衝剤、指示薬、可溶性塩、キレート化剤などである。使用量に含まれる、室温で液体で水と混和性であるいくつかの湿潤剤(たとえば、グリコールおよび他のポリオール)は、膨潤したポリマービーズまたは乾燥したポリマービーズの組成百分率を計算する際に、極性溶媒の一部であるとみなされる。
【0066】
いくつかの実施形態においては、活性剤は指示薬である。好適であればどんな化学的性質も、指示薬に対して用いることができる。たとえば指示薬を用いて、特定のpH範囲または特定の種類の化合物の存在を検出することができる。いくつかの特定の種類の化合物が存在することによって、色変化を発生させることができる。たとえばニンヒドリンを用いて、タンパク質またはアミノ基の存在を検出することができる。または指示薬は、典型的なpH指示薬たとえばメチルブルーまたはフェノールフタレインとすることもできる。
【0067】
無機酸化物のナノ粒子をポリマービーズに付加して、ビーズの屈折率を上げることができる。たとえばポリマービーズに、ジルコニアナノ粒子またはチタニアナノ粒子をロードすることができる。ジルコニアナノ粒子の調製は、たとえば、米国特許第6,376,590(コルブ(Kolb)ら)および米国特許公開第2006/0148950A1(ダビッドソン(Davidson)ら)に記載された方法を用いて行なうことができる。
【0068】
活性剤のいずれも重合性基を有していて良い。活性剤上の重合性基を用いることを、活性剤がポリマービーズから外へ移動することを防止するために用いることができる。カチオン性モノマーは、抗菌剤として機能する場合がある四級アミノ基だけでなく、エチレン系不飽和基も有するならば、前駆体組成物の重合性材料中に含めることができる。カチオン性モノマーは、四級アミノ基を有する(メタ)アクリレートであることが多い。
【0069】
ポリマービーズは通常、未反応の重合性基を有するため、ポリマービーズを、重合性基を有する活性剤と後成形で反応させることができる。たとえば、カチオン性モノマーは、エチレン系不飽和基および四級アミノ基を有するならば、未反応のエチレン系不飽和基を有するポリマービーズと反応させることができる。ポリマービーズ、カチオン性モノマー、および光開始剤を含有する混合物を化学線に曝露して、カチオン性モノマーのエチレン系不飽和基を、ポリマービーズの未反応のエチレン系不飽和基と反応させることができる。反応生成物は、ポリマービーズに四級アミノ基が付加したものとなる。
【0070】
ポリマービーズを製造する方法には、前駆体組成物を用意する工程と、全体的に気相によって囲まれている前駆体組成物の液滴を形成する工程とが含まれる。その方法には、前駆体組成物における重合性材料を少なくとも部分的に重合させて第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間だけ液滴を放射線に曝露する工程がさらに含まれる。液滴は、重力によって放射源を通り過ぎるように落下させることもできるし、スプレーとして上方に吹き飛ばすこともできる。
【0071】
前述した前駆体組成物のいずれのものも、ポリマービーズを製造する方法において用いることができる。前駆体組成物に含まれる重合性材料は、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である。いくつかの実施形態においては、重合性材料には、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が含まれる。重合性材料には場合により、前駆体組成物中の重合性材料の全質量を基準として、0〜20質量パーセントのアニオン性モノマーを含めることができる。
【0072】
放射線に曝露すると、前駆体組成物内の重合性材料はフリーラジカル重合反応を起こす。本明細書で用いる場合、用語「放射線」は、化学線(たとえば、波長がスペクトルの紫外領域または可視領域にある放射線)、加速粒子(たとえば、電子ビーム照射)、熱線(たとえば、熱または赤外放射線)などを指す。放射線は化学線または加速粒子であることが多い。なぜならば、これらのエネルギー源は、重合の開始および速度に対して良好な制御をもたらす傾向があるからである。加えて、化学線および加速粒子を、比較的低い温度で硬化を行なうために用いることができる。この結果、重合反応を熱放射線によって開始するために必要とされ得る比較的高温の影響を受けやすい成分の劣化が回避される。電磁気スペクトルの所望の領域のエネルギーを生成することができる、いずれかの好適な化学線源を用いることができる。化学線の代表的な供給源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザ、太陽光などが挙げられる。
【0073】
図2は、ポリマービーズを製造するための1つの代表的なプロセスを示す略図である。プロセス20には、供給システム30および重合システム40が含まれている。重合性材料および極性溶媒を含有する前駆体組成物50が、供給システム30に与えられる。供給システム30によって、前駆体組成物50が重合システム40へ送られる。重合システム40内では、前駆体組成物50中の重合性材料が放射線に曝露されてフリーラジカル重合反応を起こし、高分子材料を形成する。プロセス20の供給システム30および重合システム40にはそれぞれ、種々の要素を含めることができる。
【0074】
供給システム30には、出口34を有する受け入れ部32が含まれている。受け入れ部32は、ポット、容器、ホッパー、ホース、漏斗、または他の要素など、その中に前駆体組成物50のある量を注ぐことができるか、そうでなければ加えることができるものであり得る。受け入れ部32は、金属、プラスチック、ガラス、または他の好適ないずれの材料であっても良い。好ましくは、前駆体組成物50は、受け入れ部32に付着することも受け入れ部32と反応することもなく、受け入れ部32から容易に取り除くことができる。出口34は、受け入れ部32における開口部または孔のように単純であっても良いし、別の要素、たとえば超音波アトマイザであっても良い。図2に示す実施形態においては、出口34は、単に受け入れ部32における開口部である。出口34によって、前駆体組成物50の液滴を容易に形成することができる。
【0075】
重合システム40には、放射線源42およびシールド装置44が含まれている。シールド装置44の存在は多くの場合、供給源42から出た放射線を所望の場所へ導いて、極めて接近している場合がある、人または機器をシールドするためである。この実施形態においては、重合システム40には管理要素46も含まれている。管理要素46は、前駆体組成物50(たとえば、前駆体組成物50の液滴)を、放射線源42から生じる場合がある任意の高速度の空気流から保護または隔離するものである。管理要素46によって、重合が起きる局所的な環境を制御することができる。すなわち管理要素46を用いて、液滴が放射線源42に曝露されるときに、前駆体組成物50の液滴を全体的に囲む気相の組成物を制御することができる。
【0076】
放射線源42は、単一の放射線源であっても良いし、同じかまたは異なる複数種の放射線源であっても良い。放射線源42によって、エネルギーたとえば赤外放射線、可視放射線、紫外放射線、電子ビーム放射線、マイクロ波放射線、または高周波放射線が得られる。使用する特定のエネルギー源は、特定の前駆体組成物50に依存するであろう。好適な非イオン化放射線源には、連続およびパルス状供給源が含まれ、広帯域供給源であっても良いし、たとえば単色光源の狭帯域供給源であっても良い。代表的な非イオン化放射線源としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、水銀ランプ(低圧型、中圧型、および高圧型、並びにそれらの添加物型またはドープ型等の)、蛍光灯、殺菌灯、金属ハロゲン化物ランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード、レーザ、エキシマランプ、パルス化キセノンランプ、タングステンランプ、および白熱灯である。イオン化放射線源たとえば電子ビームだけでなく、赤外放射線源およびマイクロ波放射線源を用いても良い。また放射線源を組み合わせて用いても良い。
【0077】
いくつかの代表的な方法では、100〜1000ナノメートル、100〜800ナノメートル、または100〜700ナノメートルの範囲にある波長を有する電磁放射線を用いることができる。いくつかの方法では、100〜400ナノメートルまたは200〜400ナノメートルの範囲にある波長を有する紫外放射線を用いることができる。たとえば、エキシマ源から出る波長200nm未満の紫外放射線を用いることができる。多くの実施形態において、放射線源42は高発光紫外線源であり、たとえば中圧水銀ランプ(少なくとも40W/cm(100W/インチ))である。低発光ランプ、たとえば殺菌灯を含む低圧水銀ランプ、を用いることもできる。
【0078】
シールド装置44は、供給源42からの放射線が、極めて接近している人または機器に接触することを阻止する任意の好適な形状および材料とすることができる。シールド装置44は、放射線の技術分野において周知である。
【0079】
管理要素46は、もし存在するならば、放射線源42を通り過ぎる前駆体組成物50の落下または流れを隔離または保護する任意の好適な形状および材料とすることができる。ほとんどのプロセスにおいて、管理要素46は、供給源42からの放射線に対して透明であるかまたは少なくとも部分的に透明である。要素46の例は石英管であり、これを通って前駆体組成物50の液滴が送られる。
【0080】
ビーズ10を生産する間、前駆体組成物50を、たとえばオープントップを通って受け入れ部32内へ運び(たとえば注ぎ)、そして出口34を通って放出して液滴を形成する。自然の流体の動的特性により、前駆体組成物50は液滴を形成することを、落下する前か、重合システム40を通って落下する(たとえば、自由落下する)ときに、具体的には管理要素46を通って放射線源42を通り過ぎるときに、行なう。
【0081】
液滴サイズは、直径が500〜3000マイクロメートルの範囲となるように制御されることが多い。液滴サイズの調整は、出口34、前駆体組成物50の粘度、または両方を変えることによって行なうことができる。前駆体組成物50が重合システム40を通過することは一般的に、自然力たとえば重力、および場合により気流、熱対流、表面張力等のみによって影響される。いくつかの実施形態においては、上向きのガス流を用いて、重合システム40を通って起こる前駆体組成物50の落下を減速させても良い。前駆体組成物50が重合システム40内にいる持続時間または前駆体組成物50を放射線に曝露する時間は一般的に、10秒以下、5秒以下、3秒以下、2.5秒以下、2秒以下、1秒以下、または0.5秒以下である。
【0082】
前駆体組成物50の液滴は全体的に気相によって囲まれている。通常、前駆体組成物50が落下する雰囲気は周囲空気であるが、他のガス雰囲気たとえば不活性雰囲気を用いることができる。好適な不活性雰囲気としては、たとえば、アルゴン、ヘリウム、窒素、またはそれらの混合物を挙げることができる。重合システム40から、膨潤したポリマービーズ10が得られる。組成物が、落下する液体流れから液滴を形成させるのに表面張力に依存する場合には、出口34から放射線源42までの必要な最小距離が存在する。この流れ不安定性は、当該技術分野において良く知られている。
【0083】
図3は、ポリマービーズを製造する別の代表的な方法を示す概略図である。最も基本的な形態において、プロセス120には、供給システム130および重合システム140が含まれている。前述したように、前駆体組成物50が供給システム130に与えられる。供給システム130によって、前駆体組成物50が重合システム140へ送られる。前駆体組成物50の液滴が重合システム140を通過した後に、均質の膨潤したポリマービーズが得られる。プロセス120の供給システム130および重合システム140にはそれぞれ、種々の要素が含まれている。
【0084】
供給システム130は、供給システム30に類似させることができ、出口134を有する受け入れ部132を備えている。出口134には、スプレーヘッドたとえば超音波アトマイザ136が接続されている。超音波アトマイザ136は、前駆体組成物50の小さい液滴(たとえば、約10〜500マイクロメートルの直径)を形成するものである。液滴サイズは、使用するアトマイザ、前駆体組成物の粘度、および他の因子に依存する。任意選択のポンプ135を示している。ポンプ135によって、前駆体組成物50のアトマイザ136までの動きが円滑になる。
【0085】
重合システム140は、前述したシステム40と類似させることができ、放射線源142およびシールド装置144を有している。この例示した例では、シールド装置144は、組成物50を重合システム140を通過するように方向づける管理要素としても機能する。
【0086】
ビーズ10を生産する間、前駆体組成物50が受け入れ部132から出口134を経由して与えられ、そしてポンプ135によって加圧される。組成物50は、機械的手段、たとえばアトマイザ136、によって放出される。アトマイザ136によって、重合システム140を通って周囲雰囲気中を落下する液滴のスプレーが形成される。液滴は通常、直径が10マイクロメートル〜500マイクロメートルの範囲である。ポリマービーズは前駆体組成物50の液滴から形成される。
【0087】
液滴を形成する他の任意の手段を用いることができる。他の好適な液滴形成手段としては、たとえば以下のものが挙げられる。すなわち、霧吹き器、噴霧器、大容量の低圧スプレーや、超音波アトマイザおよび圧電式液滴発生器を備えるスプレードライヤおよび多くのタイプのスプレーノズルである。
【0088】
前述したプロセスでは、前駆体組成物50が受け入れ部から重合システムを通って垂直方向に落下することを例示している。別の代替的なプロセス構成では、前駆体組成物50が受け入れ部からたとえば水平方向に放出されても良く、その結果、重合システムの前にありおよび/または重合システムを通る前駆体組成物50の経路に、水平方向のベクトルが含まれる。
【0089】
ある特定の液滴形成方法に対して、粒度分布は広くても良いし狭くても良い。狭い粒度分布は、単分散またはほぼ単分散とすることができる。一例として、超音波アトマイゼーションを用いて液滴を生成する場合、平均径としてほぼ50マイクロメートルが得られる場合があるが、ビーズ粒度分布の範囲は約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルである場合がある。他の液滴形成技術では、異なるビーズ粒度分布が実現される。狭い粒度分布のビーズが求められる用途に対しては、より制御された滴下形成方法を用いても良いし、付加的な後工程のふるい分けを行なって粒度分布を狭めることもできる。これは、当業者には知られていることである。
【0090】
ポリマービーズの形成は、前駆体組成物の液滴に放射線を施して、重合性材料のフリーラジカル重合を起こすことによって行なわれる。前駆体組成物には、重合性材料だけでなく極性溶媒が含まれているため、ポリマービーズは極性溶媒によって膨潤する。ポリマービーズは、膨潤したビーズ、ヒドロゲルビーズ、溶媒によって膨潤したポリマービーズ、または膨潤したポリマービーズと記述することができる。これらの用語はすべて、本明細書では交換可能に用いても良い。
【0091】
膨潤したポリマービーズ中の高分子材料は、架橋されるが、未反応の重合性基または反応性基を含有する可能性がある。未反応の重合性基には通常、さらなるフリーラジカル反応が可能なエチレン系不飽和基が含まれている。縮合反応または求核置換反応が可能な他の種類の重合性基たとえばヒドロキシル基またはアミノ基が存在する可能性がある。
【0092】
膨潤したポリマービーズには一般的に、膨潤したポリマービーズの質量を基準として、15質量パーセントから90質量パーセント未満の高分子材料が含まれる。膨潤したポリマービーズの15質量パーセント未満が高分子材料である場合には、形の良いビーズを形成するのに十分な高分子材料が存在していない場合がある。膨潤したポリマービーズの90質量パーセント以上が高分子材料である場合には、乾燥したポリマービーズのソルベートを収着する能力が、不適当なほどに低い場合がある。
【0093】
いくつかの代表的な膨潤したポリマービーズにおいては、膨潤したポリマービーズの少なくとも15質量パーセント、少なくとも20質量パーセント、少なくとも25質量パーセント、少なくとも30質量パーセント、少なくとも40質量パーセント、または少なくとも50質量パーセントが高分子材料である。膨潤したポリマービーズの最大で85質量パーセント、最大で80質量パーセント、または最大で70質量パーセントが高分子材料である。たとえば、膨潤したポリマービーズには、15〜85質量パーセント、20〜80質量パーセント、30〜80質量パーセント、または40〜80質量パーセントの高分子材料を含有できる。
【0094】
膨潤したポリマービーズ内の極性溶媒の量は、膨潤したポリマービーズの10質量パーセント超から85質量パーセントまでの範囲であることが多い。極性溶媒の量が85質量パーセントよりも大きい場合、形の良いビーズを形成するのに十分な高分子材料が存在していない場合がある。極性溶媒の量が、膨潤したポリマービーズの10質量パーセント以下の場合、乾燥したポリマービーズが付加的な液体を収着する能力が、不適当なほどに低い場合がある。膨潤したポリマービーズに含まれるどんな極性溶媒も通常、マトリックスには共有結合されていない。いくつかの代表的な膨潤したポリマービーズにおいては、膨潤したポリマービーズの少なくとも15質量パーセント、少なくとも20質量パーセント、少なくとも25質量パーセント、少なくとも30質量パーセント、または少なくとも40質量パーセントが極性溶媒である。膨潤したポリマービーズの最大で85質量パーセント、最大で80質量パーセント、最大で70質量パーセント、最大で60質量パーセント、または最大で50質量パーセントが極性溶媒である。
【0095】
いくつかの実施形態においては、膨潤したポリマービーズには活性剤も含有できる。これらの活性剤は、膨潤したポリマービーズを調製するために用いた前駆体組成物中に存在する可能性がある。あるいは、膨潤したポリマービーズの2回目の乾燥および膨潤を、ソルベートを用いて行なうことができる。すなわち、乾燥したポリマービーズがソルベートを収着して、第2の膨潤したポリマービーズを形成することができる。ソルベートには活性剤が含まれていることが多い。活性剤は、生物学的に活性な薬剤、生物学的に活性ではない薬剤、またはそれらの混合物とすることができる。好適な活性剤については前述している。
【0096】
前駆体組成物に含まれている場合、活性剤は、材料を重合させるために用いられる放射線に対して安定でありおよび/または耐性があることが好ましい。活性剤が放射線に対して安定でもなく耐性もない場合でも、ポリマービーズが形成された後に添加すれば、より良好に進展する場合がある(すなわちポリマービーズを乾燥させた後に、活性剤を含むソルベートに曝露することができる)。活性剤が多くの場合に、前駆体組成物に添加できるかまたはポリマービーズの形成後に添加できることとは異なり、処理剤は通常、前駆体組成物のみに含まれている。
【0097】
活性剤の量は、0〜30質量パーセント(膨潤したポリマービーズの質量を基準として)の範囲とすることができる。いくつかの代表的な膨潤したポリマービーズにおいては、活性剤の量は、膨潤したポリマービーズの20質量パーセント以下、15質量パーセント以下、10質量パーセント以下、5質量パーセント以下、3質量パーセント以下、または1質量パーセント以下である。
【0098】
いくつかの代表的な膨潤したポリマービーズには、15質量パーセントから90質量パーセント未満の高分子材料、10質量パーセント超から85質量パーセントの極性溶媒、および0から30質量パーセントの活性剤(膨潤したポリマービーズの全質量を基準として)が含有される。
【0099】
膨潤したポリマービーズは通常、均質であり、識別できる内部の孔または内部の溝は含有されていない。極性溶媒および高分子材料を含むポリマーのマトリックスは通常、膨潤したポリマービーズ内で単一の相として存在し、溶媒と高分子材料との間に識別できる境界は存在しない。しかし活性剤が存在する場合には、活性剤は、ポリマービーズの全体に渡って均質に分散されていても良いし、されていなくても良い。さらに、活性剤は、ポリマーのマトリックスとは別個の相内に存在していても良い。
【0100】
一般的に、ポリマービーズ(特に活性剤がないもの)には、顕微鏡を使って、たとえば環境制御型走査電子顕微鏡を使って倍率を50倍まで上げて観察したときでも、識別できる多孔性も空隙もない(図6Aを参照)。ポリマービーズは多くの場合に、電界放射線型走査電子顕微鏡を使って倍率を50,000倍まで上げて観察したときでも、識別できる多孔性も空隙もない。
【0101】
膨潤したポリマービーズを、光を散乱することができる不透明な成分を用いずに調製した場合、クリアまたは透明となって、不透明度またはヘイズがほとんどないか全くなくできる。いくつかの実施形態においては、膨潤したポリマービーズとしてはクリアなものが好ましい。他の実施形態においては、透明性は必要ではなく、そしてポリマービーズの外観に影響を及ぼすことがある種々の成分を添加することができる。
【0102】
ポリマービーズに関連して用いる場合、用語「透明な」の意味は、ビーズによる可視光の散乱が、視覚的に検出可能な量では行なわれないということである。いくつかの実施形態においては、空気がポリマービーズ内に巻き込まれる場合があり、その結果、相境界において不透明部分が形成される可能性がある。しかしこれは、極性溶媒中における高分子材料の相分離ではない。組成物が透明であるとみなされるのは、波長が550ナノメートルの光の少なくとも85パーセントが、厚さが1ミリメートルの硬化された前駆体組成物の膜を通って透過する場合である。これらの膜は、ガラスまたは他の非干渉性の基板上に流延することができる。いくつかの実施形態においては、波長が550ナノメートルの光の少なくとも88パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセントが、この膜を通って透過する。
【0103】
ヘイズまたは不透明度の特徴付けは、ヘイズメータ、たとえばBYKガードナー・ヘイズガード・プラス(BYK-Gardner Hazegard Plus)ヘイズメーター(広帯域光源を有する)を用いて行なうことができる。前駆体組成物から調製されるこの同じ膜を通る透過性は、少なくとも85パーセント、少なくとも88パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも95パーセントであって、ヘイズは、10パーセント未満、8パーセント未満、5パーセント未満、または3パーセント未満である。多くの実施形態において、ヘイズ成分は相分離を示している。
【0104】
ビーズは、堅くても良いしゴム弾性であっても良いし、容易に粉砕されても(たとえば、砕けやすくても)良いし、そうでなくても良い。高分子材料の含有量が高くなると、膨潤したポリマービーズの弾性率および圧潰強度が増加する傾向がある。より高い平均官能基数を有する前駆体組成物を用いることによって、より大きな量の架橋を実現した場合も、ポリマービーズの弾性率および圧潰強度が増加する傾向がある。平均官能基数とは、モノマー分子当たりの重合性基(エチレン系不飽和基)の平均数を指す。
【0105】
ポリマービーズは、幅広いサイズを有することができる。ビーズの直径は、放射線硬化の前に前駆体組成物の液滴を生成するために用いられる厳密な方法に依存し、その範囲は、1マイクロメートル未満から数千マイクロメートルであることができる。特に好適なビーズ径は、1〜約5000マイクロメートルの範囲、1〜1000マイクロメートルの範囲、10〜1000マイクロメートルの範囲、または100〜1000マイクロメートルの範囲である。
【0106】
ポリマービーズおよびポリマービーズの製造方法のいくつかの実施形態においては、第1の膨潤したポリマービーズから極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成することができる。用語「乾燥したビーズ」および「乾燥したポリマービーズ」は、本明細書において交換可能に用いられる。そして乾燥したビーズをソルベートと接触させることを、乾燥したビーズがソルベートの少なくとも一部を収着するのに十分な時間だけ行なうことができる。すなわち、第1の膨潤したポリマービーズを乾燥させて、乾燥したポリマービーズを形成することができる。そして乾燥したポリマービーズをソルベートと接触させて、第2の膨潤したポリマービーズを形成することができる。ソルベートには少なくとも1種の活性剤を含有できる。活性剤に加えて、ソルベートには、流体たとえば液体または超臨界流体を含めることができる。いくつかの代表的なソルベートには、活性剤に加えて極性溶媒が含まれる。
【0107】
本明細書で用いる場合、用語「収着する」は、吸着する、吸収する、またはそれらの組み合わせを指す。同様に、用語「収着」は、吸着、吸収、またはそれらの組み合わせを指す。収着は化学プロセスとすることもできるし(すなわち、化学反応が起こる)、物理プロセスとすることもできるし(すなわち、化学反応が起こらない)、両方とすることもできる。用語「ソルベート」とは、ポリマービーズたとえば乾燥したポリマービーズによって収着され得る組成物を指す。
【0108】
より具体的に、活性剤を含むポリマービーズを製造する方法が提供される。本方法には、前駆体組成物として、(a)極性溶媒と、(b)極性溶媒と混和する重合性材料とを含有する前駆体組成物を形成する工程が含まれる。重合性材料は、フリーラジカル重合が可能であるとともに、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が1.2よりも大きい。本方法にはさらに、前駆体組成物の液滴を形成することであって、全体的に気相によって囲まれている液滴を形成する工程が含まれる。その液滴を放射線に曝露することを、重合性材料が少なくとも部分的に重合し、第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間だけ行なう。本方法にはさらに、第1の膨潤したポリマービーズから極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成する工程が含まれる。そして乾燥したビーズをソルベートと接触させることを、乾燥したビーズがソルベートの少なくとも一部を収着して第2の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間だけ行なう。ソルベートには通常、活性剤が含有されている。活性剤は、生物学的に活性な薬剤とすることもできるし、生物学的に活性ではない薬剤とすることもできるし、それらの混合物とすることもできる。
【0109】
この方法には多くの場合に、前駆体組成物として、(a)前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超から85質量パーセントの極性溶媒と、(b)前駆体組成物の全質量を基準として15質量パーセントから90質量パーセント未満の重合性材料とを含有する前駆体組成物を形成する工程が含まれる。重合性材料は極性溶媒と混和する。重合性材料は、フリーラジカル重合が可能であるとともに、モノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である。重合性材料には、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)が含まれる。また重合性材料には、0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーを含めることもできる。アニオン性モノマーには、エチレン系不飽和基に加えて、酸性基、酸性基の塩、またはそれらの混合物が含有される。液滴を放射線に曝露することを、重合性材料を少なくとも部分的に重合させて第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間だけ行なう。本方法にはさらに、第1の膨潤したビーズから極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成する工程が含まれる。乾燥したビーズをソルベートと接触させることを、乾燥したビーズがソルベートの少なくとも一部を収着して第2の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間だけ行なう。ソルベートには通常、活性剤が含有されている。活性剤は、生物学的に活性な薬剤とすることもできるし、生物学的に活性ではない薬剤とすることもできるし、またはそれらの混合物とすることもできる。
【0110】
乾燥したビーズを形成するために第1の膨潤したポリマービーズから取り除く極性溶媒の量は、所望する任意の量とすることができる。乾燥したビーズには、高分子材料中に残る少なくとも少量の極性溶媒が含有されることが多い。さらに、乾燥したビーズをソルベートと接触させて活性剤をポリマービーズ内にまたはポリマービーズ上に収着する場合、乾燥したビーズ内に存在する極性溶媒の量は一般的に、乾燥したポリマービーズの質量を基準として25質量パーセント以下である。乾燥したビーズ中の極性溶媒の量は、乾燥したポリマービーズの質量の20質量パーセント未満、15質量パーセント未満、10質量パーセント未満、5質量パーセント未満、2質量パーセント未満、または1質量パーセント未満とすることができる。一般的に、第1の膨潤したビーズから取り除かれる溶媒が多くなると、乾燥したビーズが収着できるソルベートの量は多くなる。
【0111】
第1の膨潤したポリマービーズは、極性溶媒が取り除かれたときに収縮して、潰れたまたはしぼんだ球体または楕円体に似る場合がある。いくつかの乾燥したポリマービーズは、長円形または楕円形の断面を有することがある。乾燥したポリマービーズの断面形状は、第1の膨潤したポリマービーズの断面形状に依存する。収縮量は、第1の膨潤したポリマービーズ中に当初存在する極性溶媒の体積と、乾燥によって極性溶媒が取り除かれる度合いとに依存する。
【0112】
乾燥したポリマービーズ(特に活性剤がない場合)は一般的に、均質のままであり、巨視的な(すなわち、100nmよりも大きい)内部の孔または溝は含有されていない。一般的に、ポリマービーズには、顕微鏡を使って観察したときに識別できる多孔性も空隙もない。たとえば、ポリマービーズを、環境制御型走査電子顕微鏡を用いて倍率を50倍まで上げて観察しても、識別できる孔はない(図6Bを参照)。いくつかのポリマービーズは、電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率を50,000倍まで上げて観察しても、識別できる孔はない。乾燥したビーズは、高い弾性率を有していても良いし、高い圧潰強度を有していても良いし、それらの組み合わせを有していても良い。これらの特性は、膨潤したポリマービーズの特性に類似することもできるし、それらの特性より大きくなることもできる。
【0113】
膨潤したポリマービーズは、以下のような種々の方法のいずれかを用いて乾燥させることができる(すなわち、膨潤したビーズから極性溶媒の少なくとも一部を取り除くことができる)。たとえば、従来のオーブンたとえば対流式オーブン内で加熱すること、電子レンジ内で加熱すること、空気乾燥させること、凍結乾燥させること、または真空乾燥させることである。ある特定のビーズ組成物を乾燥させるための最適な方法は、膨潤したポリマービーズ中に存在する極性溶媒の素性および量に加えて、たとえば生物活性剤のようなビーズ中の成分の熱安定性に依存する。水が存在する場合、好ましい乾燥方法としては、従来のオーブンたとえば対流式オーブン乾燥、電子レンジ乾燥、真空オーブン乾燥、および凍結乾燥が挙げられる。水を、大気圧において乾燥させる好適な温度は、100℃に近いか100℃を超える温度であることが多い。場合によっては、乾燥したビーズをより高い温度に加熱することが望ましい場合がある。この結果、縮合または他の化学反応を介してビーズ強度が向上する場合がある。たとえばビーズの加熱を、140℃超まで、160℃超まで、または180℃超までにさえ行なうことができる。ポリマービーズは、乾燥時に合体してたとえばフィルムまたはシートを形成するようなことはない。むしろ、乾燥したビーズは、分離した粒子として残る傾向がある。
【0114】
乾燥したビーズは容易に再膨潤させることは、たとえば、ソルベートを含浸させることによって可能である。その結果、その膨潤した状態に戻して、当初のサイズに近づけることができる。通常、第2の膨潤したポリマービーズを形成するために乾燥したビーズが収着できるソルベートの体積はほぼ、乾燥プロセスの間に第1の膨潤したポリマービーズから取り除かれた極性溶媒および他の非重合性成分の体積である。前駆体組成物中に存在する極性溶媒、および結果として生じる第1の膨潤したビーズ中に存在する極性溶媒が、ビーズの2回目の膨潤を行なう(たとえば、乾燥したビーズを膨潤させる)ために用いるソルベート中の溶媒と異なる場合には、乾燥したポリマービーズはほとんど膨潤しないこともあるし、その当初の重合時の寸法を超えて膨潤することもある。
【0115】
乾燥したビーズに、特に、膨潤したポリマービーズが形成される間に生じる熱または放射線の影響を受けやすい活性剤をロードすることができ、その活性剤はたとえば、薬剤、調合薬、殺虫剤、除草剤、染料、芳香成分、またはそれらの混合物などである。ビーズに活性剤を与えるために、乾燥したビーズを、活性剤を含むソルベートに接触させる。活性剤が液体ではない場合、ソルベートには通常、流体たとえば極性溶媒または超臨界流体(たとえば、二酸化炭素)も含有される。ソルベートは、溶液、懸濁液、または分散液とすることができる。多くの実施形態において、ソルベートは溶液である。乾燥したビーズは通常、ソルベートの少なくとも一部を収着する。乾燥したビーズをソルベートに曝露する結果、ポリマービーズ中に活性剤が含浸される。
【0116】
ソルベートには、活性剤および液体たとえば極性溶媒が含まれていることが多い。液体の収着によって、ポリマービーズは膨潤することが多い。液体によって通常、活性剤をビーズ内へ移送することが促進される。液体は、活性剤をビーズの全体に渡って保有し均質のビーズを形成することが多い。しかしいくつかの実施形態においては、活性剤がビーズの表面上に残ることもあるし、表面上により高濃度を有する活性剤の勾配がポリマービーズ全体に生じることもある。たとえば、活性剤のサイズ(たとえば、分子サイズ)に加えて極性溶媒の組成物が、乾燥したビーズ内への活性剤の移動(たとえば、拡散)に影響を及ぼす場合がある。
【0117】
乾燥したポリマービーズが収着できるソルベートの量は多くの場合に、乾燥したポリマービーズの質量を基準として、少なくとも10質量パーセント、少なくとも20質量パーセント、少なくとも40質量パーセント、少なくとも50質量パーセント、少なくとも60質量パーセント、少なくとも80質量パーセント、少なくとも100質量パーセント、少なくとも120質量パーセント、少なくとも140質量パーセント、少なくとも160質量パーセント、少なくとも180質量パーセント、または少なくとも200質量パーセントである。質量の増加は通常、乾燥したポリマービーズの質量を基準として、300質量パーセント未満、275質量パーセント未満、または250質量パーセント未満である。
【0118】
ポリマービーズは、活性剤に対する担体となることができ、活性剤は、ビーズ内部の少なくとも一部内にかまたはビーズの表面の少なくとも一部上に存在することができる。活性剤を、ポリマービーズを形成するために用いる前駆体組成物中に含めることができる。あるいは活性剤を、少なくとも部分的に乾燥させたポリマービーズによって収着することができる。ポリマービーズによって、バルクとの出入りをする拡散制御された移送を実現することができる。すなわち多くの実施形態において、活性剤を、ポリマービーズ内へ拡散させることもできるし、ポリマービーズから外へ拡散させることもできるし、両方行なうこともできる。拡散速度は、たとえば以下の方法によって制御可能でなければならない。すなわち、高分子材料およびその架橋密度を変えること、極性溶媒を変えること、極性溶媒中での活性剤の溶解性を変えること、および活性剤の分子量を変えることである。拡散は、数時間に渡って、数日に渡って、数週間に渡って、または数ヶ月に渡って起こる可能性がある。
【0119】
使用目的によっては、活性剤を含有するポリマービーズが乾燥状態にあることが望ましい場合がある。乾燥したビーズをソルベートに曝露することによって活性剤を添加して、活性剤を含有する第2の膨潤したポリマービーズを形成した後で、第2の膨潤したポリマービーズを再び乾燥させることができる。この乾燥したポリマービーズを水分に曝露すると、活性剤はポリマービーズから拡散することができる。活性剤は、水分に曝露されるまで、ビーズ内で休止状態のままでいることができる。すなわち、ビーズを水分に曝露するまで活性剤を乾燥したポリマービーズ内に保存することが可能である。この結果、必要でないときに活性剤を浪費または損失することが防止でき、また多くの水分敏感な活性剤、加水分解、酸化、または他のメカニズムによって劣化する可能性がある活性剤の安定性を向上させることができる。活性剤の拡散制御された取り込みまたは送達を利用する可能性のある用途としては、たとえば、薬物送達、創傷管理、および持続放出型の抗菌および抗真菌保護、空気フレッシュニング剤、時間放出型(time-released)殺虫剤、および高等動物(たとえば魚または哺乳動物)に対する時間放出型(time-released)誘引物質が挙げられる。
【0120】
創傷包帯として、ポリマービーズに、治療機能をもたらす種々の活性剤をロードすることができる。これらの活性剤を包蔵する創傷包帯によって、創傷の感染が減るかまたはなくすることができる。加えて、これらの創傷包帯によって創傷治療の速度が速めることが、以下のようなときに起こり得る。すなわち、治療活性剤たとえば抗炎症薬、成長因子、アルファ−ヒドロキシ酸、酵素阻害物質たとえばマトリックスメタルプロティナーゼ(MMP)阻害物質、酵素活性化物質、血管拡張剤、化学走性剤(chemotactic agent)、止血剤(たとえば、トロンビン)、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、抗毒薬、麻酔薬、鎮痛剤、ビタミン、栄養素、または組み合わせを、ポリマービーズに添加したときである。創傷包帯内で用いる場合、ポリマービーズは通常、非常に滲出している創傷で用いる前は乾燥しているが、乾燥した創傷に水分を加えるために膨潤した状態で用いても良い。
【0121】
いくつかの実施形態においては、膨潤したポリマービーズを用いて抗菌剤を、哺乳類組織、またはポリマービーズ外側の他の環境のいずれかに送達することができる。ポリマービーズに添加することができるいくつかの代表的な抗菌剤としては、ヨウ素および一般的にヨードフォアと言われるヨウ素の種々の複合形態が挙げられる。ヨードフォアは、元素状態で存在するヨウ素または三ヨウ化物と特定の担体との複合体である。これらのヨードフォアの機能は、ヨウ素の可溶性を増加させることだけでなく、溶液中の自由分子ヨウ素のレベルを低減すること、およびあるタイプのヨウ素用持続放出型リザーバを用意することによって、行なわれる。ヨードフォアの形成は、以下のポリマー担体を用いて行なうことができる。すなわち、たとえばポリビニルピロリドン(PVP);N−ビニルラクタムと他の不飽和モノマーたとえば、これらに限定されないが、アクリレートおよびアクリルアミドとの共重合体;ポリエーテル含有界面活性剤たとえばノニルフェノールエトキシレートなどを含む、種々のポリエーテルグリコール(PEG);ポリビニルアルコール;ポリカルボキシ酸たとえばポリアクリル酸;ポリアクリルアミド;および多糖類たとえばデキストロースである。他の好適なヨードフォアとしては、プロトン化したアミンオキシド界面活性剤−三ヨウ化物複合体が挙げられる。これは、米国特許第4,597,975(ウッドワード(Woodward)ら)に記載されている。使用目的によっては、ヨードフォアはポピドンヨードである。これは、ポピドンヨードUSPとして市販品を入手できる。ポピドンヨードUSPは、K30ポリビニルピロリドンとヨウ化物との複合体であり、利用可能なヨウ素の存在量は、約9質量パーセント〜約12質量パーセントである。
【0122】
いくつかの実施形態においては、抗菌剤の種々の組み合わせを前駆体組成物またはソルベート中で用いることができる。他の知られている任意の抗菌剤として、前駆体組成物またはその結果として生じるヒドロゲルと共存できるものを用いることができる。これらには以下のものが含まれるが、これらに限定されない。すなわち、クロルヘキシジン塩たとえばグルコン酸クロルヘキシジン(CHG);パラクロロメタキシレノール(PCMX);トリクロサン;ヘキサクロロフェン;グリセリンおよびプロピレングリコールの脂肪酸モノエステルおよびモノエーテル、たとえばグリセロールモノラウレート、モノカプリル酸グリセロール、グリセロールモノカプレート、プロピレングリコールモノラウレート、モノカプリル酸プロピレングリコール、プロピレングリコールモノカプレート(propylene glycol moncaprate);フェノール;(C12〜C22)疎水性物質および四級アンモニウム基またはプロトン化した第3級アミノ基を含む、界面活性剤ならびにポリマー;四級シランのような四級アミノ含有化合物およびポリヘキサメチレンビグアニドのようなポリ4級アミン;銀含有化合物たとえば銀金属、銀塩たとえば塩化銀、酸化銀およびスルファジアジン銀;メチルパラベン;エチルパラベン;プロピルパラベン;ブチルパラベン;オクテニジン;2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール;またはそれらの混合物である。他の抗菌剤が、たとえば以下の文献に記載されている。米国特許出願公開第2006/0052452(ショルツ(Scholz))、第2006/0051385(ショルツ)、および第2006/0051384(ショルツ)。
【0123】
さらにポリマービーズを用いて、種々の材料、たとえば汚染物質または毒素を濃縮することができる。たとえばポリマービーズを用いて、水系または生態系から汚染物質を取り除くことができる。種々の機能性を高分子材料、たとえばキレート化剤中に取り入れることによって、重金属、放射性の汚染物質などを取り除くことができる場合がある。
【0124】
ビーズには、未反応のエチレン系不飽和基が含有されていることが多い。これらのエチレン系不飽和基は、他のモノマー、たとえばコーティング組成物中のモノマー、と反応させることができる。ビーズを重合して、最終コーティングにすることができる。さらに、一部のポリマービーズでは、さらに反応させることができる他の官能基を有するものがある。たとえば、前駆体組成物中に含まれるポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の一部は、種々の求核置換反応または縮合反応を起こす可能性があるヒドロキシ基を有している。
【0125】
ビーズ組成物を用いても良い代表的な化粧品用途およびパーソナルケア用途としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、創傷ケア製品たとえば吸収剤創傷包帯および過剰な滲出物を吸収する創傷充填物;応急処置包帯、ホット/コールドパック、ベビー用品たとえばベビーシャンプー、ローション、パウダおよびクリーム;浴剤たとえばバスオイル、錠剤および塩、バブルバス、バスフレグランスおよびバスカプセル;アイメイクアップ用調製品たとえばアイブロウペンシル、アイライナー、アイシャドウ、目薬、アイメイクアップリムーバおよびマスカラ;フレグランス調製品たとえばオーデコロンおよび化粧水、パウダおよびサッシェ;ノンカラーリングヘアー調製品たとえばヘアーコンディショナ、ヘアースプレ、ストレート・ヘア・アイロン、パーマネントウェーブ、リンス、シャンプー、トニック、包帯および他のグルーミングエイド;カラー化粧品;ヘアーカラーリング調製品たとえば毛髪染料、ヘアーティント、ヘアーシャンプ、ヘアーカラースプレー、ヘアーライトナーおよび毛髪脱色剤;メイクアップ用調製品たとえばフェースパウダ、ファンデーション、脚およびボディペイント、リップスティック、化粧下地、ルージュおよびメイクアップ定着剤;マニキュア用調製品たとえばベースコートおよびアンダーコート、キューティクルソフトナー、ネイルクリームおよびローション、ネイルエクステンダー、ネイルポリッシュおよびエナメル、およびネイルポリッシュおよびエナメルリムーバ;口腔衛生用製品たとえば歯磨剤および洗口剤;個人向け洗浄用製品たとえば浴用石鹸および洗剤、脱臭剤、膣洗浄器および女性用衛生製品;シェイビング用調製品たとえばアフターシェイブローション、髭軟化剤、男性用滑石粉、シェイビングクリーム、シェイビングソープおよびプリシェイブローション;スキンケア調製品たとえばクレンジング用調製品、皮膚消毒剤、除毛剤、顔および首化粧落とし、ボディおよびハンド化粧落とし、フットパウダおよびスプレー、保湿剤、ナイト用調製品、ペーストマスク、およびスキンフレッシュナー;ならびに日焼け止め用調製品たとえば日焼け止めクリーム、ゲルおよびローション、および室内日焼け用調製品である。
【0126】
使用目的によっては、ポリマービーズには、対象とする別の化合物の存在または不在を検出することができる指示薬が含有さている。指示薬を乾燥したポリマービーズに添加することは、指示薬および任意選択の流体たとえば極性溶媒(たとえば、水、ジメチルホルムアミドなど)を含有するソルベートを用いて行なうことができる。ビーズを、検出すべき化合物を潜在的に含有するサンプルに接触させることができる。そして指示薬は、サンプルに検出すべき化合物が含有されている場合、変色することができる。サンプルに曝露したときに指示薬がビーズの外へ移動しない場合には、ビーズが変色する場合がある。サンプルに曝露したときに指示薬がビーズの外へ移動する場合には、サンプル自体が変色する場合がある。
【0127】
具体例では、ポリマービーズに、指示薬、たとえばアミノ含有物質の存在を検出することができるニンヒドリンをロードすることができる。乾燥した、クリア且つ無色であることが多いポリマービーズに、ニンヒドリンをロードして黄色のポリマービーズを形成することができる。極性溶媒に加えてニンヒドリンを含有するソルベートを用いて、活性剤をポリマービーズに添加することができる。ニンヒドリン含有ポリマービーズがアミノ含有物質と接触すると、ニンヒドリンは黄色から鮮やかな紫色へと変化する。ニンヒドリンとアミノ含有物質との相対的な拡散速度に応じて、ビーズの色が黄色から紫色に変化するか、またはニンヒドリンがビーズの外へ移動してアミノ含有サンプルの色を変える。たとえば、少量のアミノ含有物質がニンヒドリン含有ポリマービーズ中へ移動して、ビーズの色を黄色から紫色へ変えることができる。しかし比較的多量のタンパク質がポリマービーズ中に拡散することは、ニンヒドリンがビーズの外へ移動できるほどに容易に行なえるわけではない。タンパク質を含有するサンプルの色は紫色に変化できる一方で、ビーズは紫色には変化しない場合がある。アミノ含有物質の混合物を含むいくつかの他の例では、ポリマービーズおよびアミノ含有サンプルの両方とも紫色に変化する場合がある。
【0128】
染料をロードしたポリマービーズを、飽和度指示薬として用いることができる。染料含有ポリマービーズを乾燥させることができる。乾燥したビーズを水に接触させると、染料はポリマービーズの外へ拡散して水の色を変えることができる。あるいは、染料として、水がない場合には無色であるが水がビーズ中に収着されると着色するものを、取り入れることができる。たとえば、特定のpH指示薬たとえばフェノールフタレイン(phenothalein)は、乾燥時は無色であるが、ぬれると着色する。
【0129】
前述の事項は、現在予見されない、本発明の実質的でない修正が、本発明の均等物を表しうるにもかかわらず、本発明者らによって権能付与的記載が入手できる予見された実施形態の観点から本発明を記載している。
【実施例】
【0130】
本発明について、以下の説明用実施例でさらに説明する。実施例では、すべての部およびパーセンテージは、特に断りのない限り、質量によるものである。
【0131】
試験培養を作るときに用いた生物はすべて、アメリカンタイプカルチャコレクション(American Type Culture Collection)、マナッサス(Manassas)、バージニア州から入手した。
【0132】
阻害ゾーンアッセイ法
カンジダアルビカンス試験:カンジダアルビカンス(ATCC90028)を、DIFCOサブロー(Sabouraud)デキストロース(SD)ブロス中で一晩生育させた。このブロスは、フォイトグローバルディストリビューション社(Voigt Global Distribution, Inc.)(ローレンス(Lawrence)、カンザス州)から販売されているものである。セルを希釈して、濃度を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(EMDバイオサイエンス(Biosciences)(ダルムシュタット(Darmstadt)、ドイツ)より入手)においてミリリットル(mL)当たりほぼ1×10コロニー形成単位(CFU)にすることを、0.5マックファーランド標準比濁液を用いて行なった。菌叢の調製を、滅菌綿塗布体をセル懸濁液内に浸すこと、DIFCO SD寒天プレートの乾燥表面を綿棒で3つの異なる方向に塗ることによって行なった。寒天培地は、フォイトグローバルディストリビューション社から入手した。各ビーズサンプルから得た3つのビーズを、接種されたプレート上に置いた後、無菌鉗子を用いて寒天に対してしっかりと押圧して、寒天との完全な接触を確実にした。プレートの培養を、28℃±1℃で24時間行なった。ビーズの下の領域およびビーズを囲む領域について、菌の生育がないかどうか調べた。また阻害ゾーンの直径を記録した。
【0133】
アスペルギルスニガー試験:PBS中にアスペルギルスニガー(ATCC 16404)の1×10の胞子が含まれる懸濁液を、DIFCOポテトデキストロース寒天(PDA)プレートに加えることを、殺菌した拡散器を用いて行なった。寒天プレートは、フォイトグローバルディストリビューション社から入手した。各ビーズサンプルから得た1つのビーズを、接種されたプレート上に置いた後、無菌鉗子を用いて寒天に対してしっかりと押圧して、寒天との完全な接触を確実にした。プレートの培養を、28℃±1℃で7日間行なった。次にビーズの下の領域およびビーズを囲む領域について、菌の生育がないかどうか調べた。また阻害ゾーンの直径を記録した。
【0134】
黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、グラム陽性試験:PBS中にミリリットル(mL)当たりほぼ1×10コロニー形成単位(CFU)の濃度を含有する接種材料懸濁液の調製を、0.5マックファーランド標準比濁液を用いて行なった。菌苔の調製を、滅菌綿棒塗布体を懸濁液内に浸すこと、ミューラーヒントン(Mueller Hinton)IIプレートの乾燥表面を綿棒で3つの異なる方向に塗ることによって行なった。プレートは、テクノバ(Teknova)(ホリスタ(Hollister)、カリフォルニア州)から入手した。各ビーズサンプルから得た3つのビーズを、接種されたプレート上に置いた後、無菌鉗子を用いて寒天に対してしっかりと押圧して、寒天との完全な接触を確実にした。プレートの培養を、28℃±1℃で24時間行なった。ビーズの下の領域およびビーズを囲む領域について、バクテリア生育がないかどうか調べた。また阻害ゾーンの直径を記録した。
【0135】
シュードモナス緑膿菌(ATCC 9027)、グラム陰性試験:PBS中にミリリットル(mL)当たりほぼ1×10コロニー形成単位(CFU)の濃度を含有する接種材料懸濁液の調製を、0.5マックファーランド標準比濁液を用いて行なった。菌苔の調製を、滅菌綿棒塗布体を懸濁液内に浸すこと、ミューラーヒントンIIプレートの乾燥表面を綿棒で3つの異なる方向に塗ることによって行なった。プレートは、テクノバ(Teknova)(ホリスタ(Hollister)、カリフォルニア州)から入手した。各ビーズサンプルから得た3つのビーズを、接種されたプレート上に置いた後、無菌鉗子を用いて寒天に対してしっかりと押圧して、寒天との完全な接触を確実にした。プレートの培養を、28℃±1℃で24時間行なった。ビーズの下の領域およびビーズを囲む領域について、バクテリア生育がないかどうか調べた。また阻害ゾーンの直径を記録した。
【0136】
菌の生育阻害の液体ブロス試験
試験した各抗真菌剤に対して、50mLのDIFCO麦芽エキスブイヨンを収容する複製のフラスコに、アスペルギルスニガー(ATCC 16404)のほぼ10の胞子を接種した。10個のビーズを各フラスコに加えて、サンプルの培養を、28℃±1℃で7日間、振とう器上の暗い中で行なった(目に見える生育が対照フラスコ中で観察されるまで行なった)。7日目に、サンプルフラスコを写真に撮った。フラスコの内容物を濾過することによって回収した菌バイオマスの質量を計ることを、収集直後と4時間乾燥させた後の両方において行なった。
【0137】
ASTME2149−01:動的接触状態の下で固定化した抗菌剤の抗菌活性を決定するための標準試験方法
この方法には、緩衝液にバクテリア細胞の一晩培養物を接種することが含まれていた。緩衝液は、0.3mMのKHPO4(EMサイエンス(EM Science)(ギブスタウン(Gibbstown)、ニュージャージー州)より入手)であった。バクテリア細胞は、シュードモナス緑膿菌(ATCC 9027)または黄色ブドウ球菌(ATCC6538)のどちらかであった。緩衝剤中のバクテリアの最終的な濃度は、1×10CFU/mLであった。50mLの緩衝剤ごとに、各サンプルから得た10個のヒドロゲルビーズを試験した。サンプルの培養を、24時間、28℃±1℃で一定の撹拌をしながら行なった。24時間後、生存している微生物を平板培養してカウントした。カウントは、Mペトリフィルム(PETRIFILM)エアロビックカウント(Aerobic Count)(AC)プレーツ(Plates)を用いて行なった。これは、3M(セントポール(Saint Paul)、ミネソタ州)から販売される。3MペトリフィルムACプレートの培養を、48時間、35℃±1℃で行なった。処理サンプル対未処理サンプルから得たバクテリアのパーセント減少の計算を行なった。
【0138】
(実施例1):基本的なビーズ形成プロセス
図2に例示する設備上でビーズを製造した。図2の種々の要素を参照し、参照数字を括弧の中に示す。
【0139】
均質な前駆体組成物(50)を、以下のものを混合することによって調製した。すなわち、40グラムの20モルエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(SR415、サトマー、エクセタ(Exeter)、ペンシルベニア州から販売)、60グラムの脱イオン化(DI)水、および0.8グラムの光開始剤(イルガキュア2959、チバスペシャルティケミカルズ、タリタウン、ニューヨーク州から販売)である。この実施例および以後のすべての実施例で用いるエトキシ化TMPTAの平均官能基数を、HPLCデータから決定した。HPLCデータによれば、モノマーは、53.6質量パーセントの3官能性アクリレート(52.5モルパーセント)、45.3質量パーセントの2官能性アクリレート(46.5モルパーセント)、および1.0質量パーセントの単官能性のアクリレート(1.1モルパーセント)であった。この情報を用いて、またそれぞれの種に対して20モルエトキシ化の平均値を想定して、平均官能基数は約2.5であると計算した。前駆体組成物(50)を漏斗(32)内へ注いで、前駆体組成物(50)が、2.0ミリメートル径のオリフィス(34)を通って漏斗(32)を出るようにした。前駆体組成物(50)は、0.91メートル長、51ミリメートル径の石英管(46)の垂直軸に沿って落下した。石英管(46)はUV曝露ゾーンを通って延びている。UV曝露ゾーンは、光シールド(44)と、96W/cm(240W/インチ))の照射器(ヒュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems)、ゲーサーズバーグ(Gaithersburg)、メリーランド州から販売される)とによって規定されている。照射器には、25cm長の「H」バルブ(42)が備え付けられている。バルブ(42)は、一体化された後部反射器(44)に、バルブの向きが落下中の前駆体組成物(50)と平行になるように結合されている。照射器(40)の下で、ポリマービーズ(10)が得られた。プロセス全体は、周囲条件の下で操作した。
【0140】
クリアで、自由に流動することができるポリマービーズ(10)は、光沢のある外観を示し、多孔性は目に見えては現れていなかった。ビーズの直径は、ほぼ1ミリメートル〜4ミリメートルの範囲であった。ビーズ(10)を、石英管(46)の土台に取り付けたプラスチックバッグに集めた。収率は本質的に定量的であった。ビーズには弾力性があったが、粉砕することができて、その構成の全体に渡って均質な組成物を有することが分かった。図4に典型的なビーズの光学顕微鏡写真を示す。
【0141】
(実施例2):アクリレートのブレンドを含むポリマービーズ
実施例1のプロセスを繰り返すことを、5グラムの前駆体組成物(SR415)、5グラムのテトラヒドロフルフリルアクリレート(SR285、サトマー製)、0.2グラムのイルガキュア2959、および30gの脱イオン化(DI)水を用いて行なった。計算によるモノマーの平均官能基数は1.2であった。形成されたビーズは、外観およびサイズにおいて、実施例1のものと同程度であった。
【0142】
(実施例3):ポリマービーズに水可溶性の溶質を含浸させる
実施例1に記載した通りに調製したビーズの試料(5グラム)をバイアル瓶の中に置いて、オーブンの中で100℃で2時間、乾燥させた。乾燥時、結果として生じた質量損失は60質量パーセントであった。これは、当初のビーズ中に存在する水の定量的な損失に対応するものであった。乾燥したビーズは、しぼんだ球体のように見えたが、多孔性の兆候は見られなかった。
【0143】
乾燥したビーズを、メチルレッドの水溶液で覆った。1時間以内に、溶液の大部分がポリマービーズによって吸収されていた。次に、赤く着色されたビーズを濾過して脱イオン水ですすぎ洗いした。
【0144】
(実施例4):平均径がより小さいポリマービーズの調製
実施例1のプロセスを繰り返した。ただし前駆体組成物は、漏斗から、内径は0.75ミリメートルのマイクロピペットチップを通過して出た。漏斗内の液体の高さを一定のレベルに維持して、出口オリフィスを通って流れる前駆体組成物の定常流を維持するようにした。平均のビーズ径は約700マイクロメートルであった。
【0145】
(実施例5):導電性ビーズ
実施例1のプロセスを繰り返すことを、(+)−グルコースの5質量パーセント脱イオン水溶液を含有する前駆体組成物を用いて行なった。グルコースは既知の還元糖である。結果として生じるビーズを、新鮮な脱イオン水ですすぎ洗いした後、少数のビーズ(すなわち、スパチュラを覆うような)を、硝酸銀の10質量パーセント水溶液中に置いた。硝酸銀および(+)−グルコースの両方とも、シグマアルドリッチケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Co.)(セントルイス(Saint Louis)、ミズーリ州)から入手した。銀イオンがビーズの表面上で銀金属に還元されていたために、ビーズの表面は黒ずんでいた。電気抵抗を測定したところ、ビーズは、銀処理する前のビーズよりもはるかに導電性であった。ビーズを粉砕したところ、銀は、表面付近に局在化されていて(外観がより黒ずんだ色をしていたため)、バルク内側領域内に浸透していないと分かった。図7を参照のこと。なお、この顕微鏡写真には、ポリマービーズの内部が多孔性でない性質も示されている。
【0146】
(実施例6):生理活性を有するビーズの調製
ビーズを実施例1のプロセスに従って製造した。ただし脱イオン水の代わりに、3質量パーセントのH溶液を用いた。結果として生じるビーズに対して試験は行なわなかったが、ビーズは生理活性を示すものと予想された。
【0147】
(実施例7):ポリマービーズからの種の移動
実施例3から得られた赤く着色されたビーズのスパチュラ先端量を、数グラムの脱イオン水を収容するバイアル瓶内に置いた。数分以内に、バルク水相内へと赤い着色が拡散していく兆候が現れた。
【0148】
(実施例8):超音波アトマイゼーションノズルの使用
この実施例は、図3に示す概略図に従って調製した。120kHzで動作するアトマイゼーションノズル(ソノテック社(Sono-Tek Corp)、ミルトン(Milton)、ニューヨーク州)を用いて、1質量パーセントのイルガキュア2959を含有するSR415の40質量パーセント水溶液のスプレーを生成した。モノマーの平均官能基数は2.5であった。前駆体組成物を76ミリメートル径の石英管内にスプレーした。石英管では、前駆体組成物は、15cm長の「H」バルブを有するHP−6照射器(ヒュージョンUVシステム製(ゲーサーズバーグ、メリーランド州))からの出力に曝露された。形成されたビーズを、微粉として、石英管の出口端に配置したプラスチックバッグの壁上で集めた。生成されたビーズは、最大径が約0.05ミリメートルであった。図5に、結果として生じるポリマービーズを示す。図5は、複数個の代表的なポリマービーズの倍率50,000倍でおける電界放射型走査電子顕微鏡写真である。
【0149】
(実施例9):高い屈折率を有するポリマービーズの調製
実施例1を繰り返した。ただし脱イオン水の代わりに、44.5質量パーセントのイットリウム安定化ジルコニアゾルを用いた。結果として生じるビーズは、半透明の外観であり、イットリウムがドープされた27質量パーセントのZrOを含有していた。ゾルの調製は、米国特許出願公開第2006/0148950 A1(ダビッドソン(Davidson )ら)の実施例6に記載された水熱合成法を用いて行なった。
【0150】
(実施例10):ビーズの製造および乾燥
ビーズの調製は、実施例1(大きいビーズ)および実施例8(小さいビーズ)に記載した通りに行なった。次にビーズの乾燥を1.5時間、70℃で行なった。乾燥したビーズを、後述の実施例11〜17に使用した。実施例11〜13では、大きいビーズおよび小さいビーズの両方を試験した。実施例14〜17では、大きいビーズを試験した。
【0151】
(実施例11):ポビドンヨード溶液からのヨウ素のビーズ内への吸収
ポビドンヨード溶液の調製は、10質量部のポビドンヨードを90質量部の水と混合することによって行なった。1−エテニル−2ピロリドンホモポリマー化合物にヨウ素を含めたものであるポビドンヨードは、防腐剤として用いることができる。ポビドンヨードは、プルドゥエフレデリック社(Prudue Frederick Company)(スタンフォード(Stamford)、コネチカット州)から、商品名ベタジン(BETADINE)で販売され、またシグマアルドリッチ社(セントルイス、ミズーリ州)からも販売される。実施例10から得られた1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、2質量部のポビドンヨード溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させたところ、赤い色になった。その後、ビーズを溶液から取り出して、脱イオン水ですすぎ洗いして、空気乾燥させた。次にサンプルをきれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。次にこれらのビーズを、カンジダアルビカンスに対して、阻害ゾーン法を用いて評価した。阻害ゾーンの直径は、6mm(小さいビーズ)〜16mm(大きいビーズ)の範囲であった。
【0152】
(実施例12):ビーズ内へのミコナゾールの吸収
ミコナゾールの飽和溶液の調製は、ほぼ1質量部のミコナゾール硝酸塩を99部の水に添加することによって行なった。ミコナゾール硝酸塩(1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2[(2,4−ジクロロフェニル)メトキシ]エチル]イミダゾール)は、抗真菌剤として用いることができ、シグマアルドリッチケミカル社、セントルイス、ミズーリ州から入手することができる。3日間、静かに揺らした後、余分な不溶解のミコナゾールを除去することを、溶液を15分間、重力の2900倍の力で遠心分離機にかけることによって行なった。次に上澄みを0.22ミクロンのシリンジフィルタに通した。フィルタは、ワットマン(Whatman)(ミドルセックス(Middlesex)、英国)から市販されているものである。実施例10から得た1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、2質量部のミコナゾール溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後、ビーズを溶液から取り出して、脱イオン水ですすぎ洗いして、空気乾燥させた。次にサンプルをきれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。ミコナゾールで処理したビーズを、カンジダアルビカンスに対して、阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。阻害ゾーンの直径は、9mm(小さいビーズ)〜13mm(大きいビーズ)の範囲であった。
【0153】
(実施例13):ビーズ内へのエコナゾールの吸収
エコナゾールの飽和溶液の調製は、ほぼ1質量部のエコナゾールを99質量部の水に添加することによって行なった。エコナゾール(1−[2−[(4−クロロフェニル)メトキシ]−2(2,4−ジクロロフェニル)−エチル]イミダゾール)は、抗真菌剤として用いることができ、シグマアルドリッチケミカル社(セントルイス、ミズーリ州)から市販される。3日間、静かに揺らした後、余分な不溶解のエコナゾールを除去することを、溶液を15分間、重力の2900倍の力で遠心分離機にかけることによって行なった。次に上澄みを、0.22ミクロンのシリンジフィルタに通した。実施例10から得た1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、2質量部のエコナゾール溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後に、ビーズを溶液から取り出して、脱イオン水ですすぎ洗いして、空気乾燥させた。次にサンプルをきれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。エコナゾールで処理したビーズを、カンジダアルビカンスに対して、阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。阻害ゾーンの直径は、7mm(小さいビーズ)〜16mm(大きいビーズ)の範囲であった。
【0154】
(実施例14):ビーズ内への亜鉛オマジン(ZINC OMADINE)の吸収
亜鉛オマジン溶液の調製は、5質量部の亜鉛オマジンと95質量部の水とを混合することによって行なった。亜鉛オマジンは、ピリチオンの亜鉛錯体に対する商品名であり、アーチ・バイオサイズ(Arch Biocides)(チェシャイア(Cheshire)、コネチカット州)から市販される。この材料は、通常は殺真菌剤−殺藻薬として用いられる広域スペクトル抗菌剤である。パウダは、97質量パーセントの活性な亜鉛ピリチオンである。実施例10から得た1質量部の乾燥した大きいビーズを、ガラスジャー内に、2質量部の亜鉛オマジン混合物とともに置いた。ビーズに溶液を吸収させることを、2時間室温でリストアクション振とう器(wrist action shaker)上で行なって、亜鉛オマジンが沈殿することを防止した。その後に、ビーズを溶液から取り出して、脱イオン水ですすぎ洗いして、空気乾燥させた。結果として生じるビーズは白くなって、ビーズ内部に亜鉛オマジンパウダが存在することを示していた。次にサンプルをきれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。亜鉛オマジンで処理したビーズを、阻害ゾーンおよび液体ブロス生育阻害試験を用いて評価した。カンジダアルビカンスに対する阻害ゾーンの直径およびアスペルギルスニガーに対する阻害ゾーンの直径はそれぞれ、22mmおよび35mmであった。アスペルギルスニガーに対する液体ブロス生育阻害試験では、濾過した後の質量は1.05グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は0.95グラムであった。これは、濾紙の場合に、濾過した後の質量が0.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量が0.76グラムであることと比較される。生育対照例では、濾過した後の質量は2.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は2.80グラムであった。
【0155】
(実施例15):ビーズ内へのオマサイド(OMACIDE)IPBCの吸収
オマサイドIPBC(アーチケミカルズ(Arch Chemicals)、チェシャイア、コネチカット州から販売)を含有する2種類の溶液を調製した。オマサイドはアーチケミカルズの商品名であり、IPBCはヨードプロピルブチルカルバメートを基にする殺真菌剤である。第1の溶液は、1質量部のオマサイドIPBC100(97質量パーセントの活性なIPBCを含有する)を、20質量部のイソプロパノールと混合したものである。第2の溶液は、1質量部のオマサイドIPBC40(溶液中に40質量パーセントの活性なIPBCを含有する)を、16質量部のイソプロパノールと混合したものである。実施例10から得た1質量部の乾燥した大きいビーズを、ガラスジャー内に、2質量部の各オマサイド溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後に、ビーズを溶液から取り出して、脱イオン水ですすぎ洗いして、空気乾燥させた。次にサンプルをきれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。各オマサイドで処理したビーズを、阻害ゾーンおよび液体ブロス生育阻害試験を用いて評価した。オマサイドIPBC100の場合およびオマサイドIPBC40の場合のカンジダアルビカンスに対する阻害ゾーンの直径は、それぞれ26mmおよび22mmであった。アスペルギルスニガーに対する阻害ゾーンは測定できなかった。なぜならば、寒天プレート全体を覆う生育ゾーンがなかったからである。オマサイドIPBC40で処理したビーズに対するアスペルギルスニガーの液体ブロス生育阻害試験では、濾過した後の質量は0.88グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は0.69グラムであった。これは、濾紙の場合に、濾過した後の質量が0.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量が0.76グラムであることと比較される。生育対照例では、濾過した後の質量は2.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は2.80グラムであった。
【0156】
(実施例16):ビーズ内へのトリクロサンの吸収
トリクロサン溶液の調製は、0.5質量部のトリクロサンを10質量部のIPAと混合することによって行なった。トリクロサン(Ticlosan)は、化学式が2,4、4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルであり、チバスペシャルティケミカルズ(タリタウン、ニューヨーク州)から市販される。溶液の撹拌をトリクロサンが完全に溶解するまで行なった。実施例10から得た1質量部の乾燥した大きいビーズを、ガラスジャー内に、3質量部のトリクロサン溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後、ビーズを、溶液から濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いし、ペーパータオル上で簡単に乾燥させた後に、きれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。トリクロサンで処理したビーズを、阻害ゾーンおよび液体ブロス生育阻害試験を用いて評価した。カンジダアルビカンスに対する阻害ゾーンの直径は3mmであった。アスペルギルスニガーに対する阻害ゾーンはなかった。アスペルギルスニガーに対する液体ブロス生育阻害試験では、濾過した後の質量は1.40グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は1.30グラムであった。これは、濾紙の場合に、濾過した後の質量が0.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量が0.76グラムであることと比較される。生育対照例では、濾過した後の質量は2.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は2.80グラムであった。
【0157】
(実施例17):ビーズ内へのソルビン酸の吸収
1質量部のソルビン酸を9質量部のIPAと混合した後、攪拌して溶解した。ソルビン酸は、シグマアルドリッチ社(セントルイスミズーリ州)から市販され、多くの場合に食品防腐剤として、カビ、酵母菌、および菌類の生育を抑えるために用いられる。ソルビン酸はIPA中に、磁気攪拌子を用いて1時間攪拌した後に溶解した。2質量部のソルビン酸溶液を、実施例10から得た1質量部の乾燥した大きいビーズと混合した後、2時間吸収させた。ビーズは歪んでいて、蒸留水ですすぎ洗いした。ビーズの最終的な質量は、58質量パーセントだけ増加した。ビーズをガラスバイアル瓶内に置いて蓋をした。ビーズを、阻害ゾーンおよび液体ブロス生育阻害試験を用いて評価した。カンジダアルビカンスに対する阻害ゾーンはなかった。アスペルギルスニガーに対する阻害ゾーンの直径は7mmであった。アスペルギルスニガーに対する液体ブロス生育阻害試験では、濾過した後の質量は3.11グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は2.80グラムであった。これは、濾紙の場合に、濾過した後の質量が0.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量が0.76グラムであることと比較される。生育対照例では、濾過した後の質量は2.91グラムであり、濾過および乾燥の両方を行なった後の質量は2.80グラムであった。
【0158】
(実施例18):ビーズからのミコナゾールおよびエコナゾールの持続放出
前述の実施例12および13から得たビーズを、時間依存性の活性放出について試験した。阻害ゾーンをビーズに対して測定した後、同じビーズを新しく接種された寒天プレートに移して24時間培養した。そのとき、阻害ゾーンを2日目のゾーンとして再び測定して、ビーズを新しいプレートに再び移した。このプロセスを毎日繰り返すことを、1週間の間、またはゾーンが検出されなくなるまで行なった。エコナゾールで処理した小さいビーズ(前述の実施例13)では、阻害ゾーンは1日目の7mmから5日目のゼロへと低下した。エコナゾールで処理した大きいビーズ(前述の実施例13)では、阻害ゾーンは1日目の16mmから7日目の12mmへと低下した。ミコナゾールで処理した小さいビーズ(前述の実施例12)では、阻害ゾーンは1日目の9mmから5日目のゼロへと低下した。ミコナゾールで処理した大きいビーズ(前述の実施例12)では、阻害ゾーンは1日目の13mmから7日目の11へと低下した。
【0159】
(実施例19):ビーズの製造および乾燥
ポリマービーズの調製は実施例1に記載された通りに行なった。ビーズを60℃で2時間乾燥させた。乾燥させた後、ビーズはサイズが小さくなったように見え、その当初の質量の約60パーセントの質量損失が生じていた。この値は、ビーズ中に当初存在する極性溶媒の量に対応していた。乾燥したビーズを、後述する種々の実施例において用いた。
【0160】
(実施例20):経時吸収
実施例19から得た10個の乾燥したビーズについて、質量を計った後、種々の特定の時間の間、脱イオン水中に浸した。ビーズを、指定した時間が経過した後に水から取り出して、質量を計り、その時間の間にビーズ中に吸収された水の量を決定した。質量パーセントの増加は、30分間で約175パーセント、120分間で約190パーセントであった。脱イオン水の代わりにイソプロパノールを用いて手順を繰り返した。質量パーセントの増加は、30分間で約20パーセント、120分間で約25パーセントであった。質量増加は、乾燥したビーズの質量を基準にしている。
【0161】
(実施例21):ビーズ内への酸化銀の吸収
酸化銀含有溶液の調製は、5質量部の炭酸アンモニウム(シグマアルドリッチケミカル社(セントルイス、ミズーリ州)から市販される)と95質量部の水とを混合し、塩が溶解するまで攪拌することによって行なった。1質量部の酸化銀(AgO)(アルファエイサ(Alfa Aesar)(ワードヒル(Ward Hill)、マサチューセッツ州から市販される)を、この溶液に添加した。混合物の撹拌を、60℃で1時間、酸化銀が溶解するまで行ない、その結果、銀イオンを含有するクリアで透明な溶液が得られた。
【0162】
実施例19から得られた1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、3質量部の酸化銀溶液とともに置いた。1分以内に、ビーズは、ビーズ内の銀沈殿を示すグレー色を発色し始めた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させたところ、暗いグレー色になった。その後、ビーズを、溶液から濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いし、ペーパータオル上で簡単に乾燥させた後に、きれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。酸化銀で処理したビーズを、阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンの直径は9mmであり、シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンの直径は8mmであった。
【0163】
(実施例22):ビーズ内へのブロノポール(2−ブロモ−2ニトロプロパン−1,3−ジオール)の吸収
ブロノポール溶液の調製は、1質量部のブロノポール(商品名マイアシッドアズプラス(MYACIDE AS PLUS))(BASF(ドイツ)から市販される)を5質量部のIPAと混合することによって行なった。ブロノポールは、抗菌剤として機能することができる。溶液の撹拌を、十分に溶解するまで行なった。実施例19から得られた1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、3質量部のブロノポール溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後、ビーズを、溶液から濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いして、ペーパータオル上で簡単に乾燥させた後に、きれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。ビーズを、阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンの直径は34mmであり、シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンの直径は36mmであった。
【0164】
(実施例23):ビーズ内への四級アミン殺生物剤の吸収
四級アミン殺生物剤(たとえば、農業用殺虫剤)の2種類の溶液の調製を、1質量部のバルダック(BARDAC)208Mまたはバルダック205M(両方ともロンザグループ社(Lonza Group, Ltd.)(ヴァリス(Valais)、スイス)から市販される)を2質量部のIPAと混合することによって行なった。バルダック208Mおよび205Mは、ツイン鎖の四級アンモニウム化合物およびアルキルジメチルベンジル塩化アンモニウムのブレンドであり、バルダック208Mは50%がバルダック205Mよりも活性である。溶液の撹拌を、十分に溶解するまで行なった。実施例19から得られた1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、3質量部の各溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後、ビーズを、溶液を濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いして、ペーパータオル上で簡単に乾燥させた後に、きれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。処理したビーズを、阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンの直径は、バルダック208Mでは21mmであり、バルダック205Mでは19mmであった。バルダック208Mではシュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンはなかったが、バルダック205Mでは阻害ゾーンの直径は3mmであった。
【0165】
(実施例24):ビーズ内へのPHMB(ポリヘキサメチレンビグアニド)の吸収
実施例19から得られた1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、3質量部のコスモシル(COSMOCIL)CQまたはヴァントシル(VANTOCIL)Pとともに置いた。コスモシルCQおよびヴァントシルPは両方とも、アーチケミカルズ、社(ノーウォーク、コネチカット州)から市販される。これらの材料は化学的に類似した抗菌物質である。ただし、コスモシルはFDAの認可を受けていて、通常は人間の皮膚用途に対して用いられるが、ヴァントシルはEPA登録をしていて、通常は産業用途に対して用いられる。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後、ビーズを、溶液から濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いして、ペーパータオル上で簡単に乾燥させた後に、きれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。処理したビーズを阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンの直径は、コスモシルCQでは16mmであり、ヴァントシルPでは18mmであった。シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンの直径は、コスモシルCQおよびヴァントシルPの両方に対して8mmであった。
【0166】
(実施例25):ビーズ内へのトリクロサンの吸収
トリクロサン溶液の調製は、0.5質量部のトリクロサンを10質量部のIPAと混合することによって行なった。トリクロサン(チバスペシャルティケミカルズ(タリタウン、ニューヨーク州)から販売される)は、5−クロロ−2(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノールであり、抗菌物質および抗真菌剤として用いられる。溶液の撹拌をトリクロサンが完全に溶解するまで行なった。実施例19から得られた1質量部の乾燥したビーズを、ガラスジャー内に、3質量部のトリクロサン溶液とともに置いた。ビーズに溶液を2時間室温で吸収させた。その後、ビーズを、溶液から濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いして、ペーパータオル上で簡単に乾燥させた後に、きれいなガラスバイアル瓶に移して蓋をした。処理したビーズを阻害ゾーンアッセイ法を用いて評価した。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンの直径は27mmであり、シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンはなかった。
【0167】
(実施例26):ビーズ内へのAuの吸着
金塩化物溶液の調製は、1質量部の金塩化物を99質量部の脱イオン水に溶解することによって行なった。金塩化物は、シグマアルドリッチ(セントルイス、ミズーリ州)から入手することができる。金塩化物のパウダは、水にすぐ溶解して、クリアで透明な溶液が得られた。この溶液の1グラムを、実施例19から得られた0.5グラムの乾燥したビーズに添加した。15分後、ビーズは黄色になったが、周囲の溶液はクリアで透明なままだった。これは、金がビーズ内で還元されたことを示している。2時間後、ほとんどの溶液が吸収されたので、ビーズを、溶液からを濾過し、脱イオン水ですすぎ洗いして、ペーパータオル上で簡単に乾燥させて、質量を計った。ビーズの全質量は1.28グラムであった。これは、総質量増加が156質量パーセントであることを示している。ビーズは、溶液から金属イオンを効果的に吸収して濃縮させることができる。
【0168】
(実施例27):ブロモポール(Bromopol)、バルダック205M、およびヴァントシルPの長時間遅延放出
前述の実施例22、23、および24から得られたビーズを、時間依存性の活性な拡散について試験した。阻害ゾーンを測定した後に、同じビーズを新しく接種された寒天プレートに移して、24時間培養した。そのとき、阻害ゾーンを2日目のゾーンとして再び測定して、ビーズを新しいプレートに再び移した。このプロセスを毎日繰り返すことを、ゾーンが検出されなくなるまで行なった。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンが38mmからゼロに5日間で減少し、シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンが40mmからゼロに5日間で減少することが、ブロモポールで処理したビーズに対して起きた。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンが21mmから10mmに約30日間で減少することが、バルダック205Mで処理したビーズに対して起きた。この阻害ゾーンは、かなり一定のままであることが約110日まで続いた。そしてその時点で実験を停止した。シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンが、21日間約3mmに留まった後に、22日目でゼロに減少することが、バルダック205Mに対して起きた。黄色ブドウ球菌に対する阻害ゾーンが、19mmから6mmに約30日間で減少することが、ヴァントシルPで処理したビーズに対して起こり、さらに32日間、6mmの一定値を保った後、68日間でゼロに減少した。シュードモナス緑膿菌に対する阻害ゾーンが、9mmから約3mmに5日以内で減少し、21日間、約3mmの一定値を保った後、22日目でゼロに減少することが、ヴァントシルPに対して起きた。
【0169】
(実施例28):ヨウ素の吸着
ビーズを実施例10に記載した通りに調製した後、50mLのプラスチック遠心分離管の中に入れて、3回洗浄することを、遠心分離管に水をほぼ満たして、少なくとも10分間揺らすことによって行なった。質量が4.27グラムの乾燥したビーズが、水で膨潤したときに床容積の15mLを占めた。これは、ビーズ体積として0.284グラム/mLまたは3.51mL/グラムに対応する。5mLのビーズの試料(1.42グラム)を、10mLの100mMI−3(100mMのヨウ素および200mMのKIの溶液)と混合した後に、水で希釈して40mLにした。このサンプルを、5時間ゆっくりと揺らした。そのとき、本質的にすべてのヨウ素(紫色)が、ビーズによって吸着された。計算された容量は、0.39グラムヨウ素/グラムビーズであった。
【0170】
第2の実験を行った。これは、未乾燥のビーズを3回洗浄することを、1時間水中で揺らした後に(100mLの水に対して約10mのビーズ)、100mLのメタノール中で揺らし、そして100mLの水中で揺らすことによって行なうものであった。2mLの床容積のこれらのビーズが、100mMI−3溶液中で少なくとも10mLのヨウ素を吸い上げた。これは、0.67グラムのヨウ素/グラムのビーズに対応する。
【0171】
(実施例29):香料入りビーズ
実施例19から得られた乾燥したビーズを、香料入りリンゴ油と混合することを、1質量部のポリマービーズを2質量部の香料入りオイルと混合すること、およびビーズにオイルを2時間吸収させることによって行なった。オイルは、「アップルジャックアンドピール(Applejack and Peel)」ホームフレグランスオイルとして販売され、ツムラインターナショナル(Tsumura International)、セコーカス(Secaucus)、ニュージャージー州から入手される。膨潤したビーズをガラスプレート上に置いた。ビーズの周囲の空気は、2ヶ月間、リンゴ芳香成分の臭いがした。
【0172】
(実施例30〜34):カチオン性モノマー用いて調製したビーズ
ポリマービーズの調製は実施例1に記載した通りに行なった。ただし前駆体組成物は表1に示すように変更した。前駆体組成物の種々の成分をアンバージャー内で一緒に撹拌することを、抗菌剤モノマーが溶解するまで行なった。
【0173】
DMAEMA−CBrを、機械攪拌器、温度プローブ、および凝縮器を取り付けた三つ口丸底反応フラスコの中で形成した。反応フラスコに、234部のジメチルアミノエチルメタクリレート、617部のアセトン、500部の1−ブロモオクタン、および0.5部のBHT酸化防止剤を投入した。当該混合物を、24時間、35℃で攪拌した。この時点で、反応混合物を室温まで冷却して、わずかに黄透明な溶液が得られた。溶液を丸底フラスコに移して、アセトンを、真空下で40℃において回転蒸発によって除去した。結果として生じる固形物を、冷えたエチル酢酸塩で洗浄した後、真空下で40℃において乾燥させた。DMAEMA−C10BrおよびDMAEMA−C12Brの形成を、同様の手順を用いて行なった。ただし、1−ブロモオクタンの代わりに、1−ブロモデカンおよび1−ブロモドデカンをそれぞれ用いた。
【0174】
3−(アクリロアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドは、東京化成工業社(Tokyo Kasei Kogyo Limited)(日本)から入手した。アゲフレックス(Ageflex)FA−1Q80MCは、チバスペシャルティ社(Ciba Specialty Company)から入手した。
【0175】
【表1】

【0176】
モノマーに対する平均官能基数は、2.0(実施例30および31),2.1(実施例32),1.9(実施例33)、および1.8(実施例34)であった。
【0177】
結果として生じるヒドロゲルビーズの抗菌剤性能の評価を、阻害ゾーンアッセイ法およびASTME2149−01試験法の両方を用いて行なった。結果を表2に示す。
【0178】
【表2】

【0179】
(実施例35〜45):ポリマービーズのカチオン性モノマーとの反応(プロピレングリコール溶媒)
ビーズの調製は実施例19に記載した通りに行なった。ビーズを種々のカチオン性モノマーと反応させた。実施例35〜43には、下式のカチオン性モノマーを用いることが含まれていた。
【0180】
【化2】

【0181】
ここでnは、4、6、8、10、12、16、18、または20であった。
【0182】
これらのカチオン性モノマーをそれぞれ、同様のプロセスを用いて調製した。三つ口丸底反応フラスコに、機械攪拌器、温度プローブ、および凝縮器を取り付けた。反応フラスコに、234質量部のジメチルアミノエチルメタクリレート、617質量部のアセトン、500質量部の1−ブロモアルカン、および0.5質量部のBHT酸化防止剤を投入した。当該混合物を、24時間、35℃で攪拌した。この時点で、反応混合物を室温まで冷却して、わずかに黄透明な溶液が得られた。溶液を丸底フラスコに移して、アセトンを、真空下で40℃において回転蒸発によって除去した。結果として生じる固形物を、冷えたエチル酢酸塩で洗浄した後、真空下で40℃において乾燥させた。用いた1−ブロモアルカンは、4、6、8、10、12、16、18、20、または22個の炭素原子を有していた。
【0183】
他の2種類の市販のカチオン性モノマーを用いて、実施例44および45を調製した。(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドは、東京化成工業社(日本)から市販されている。アゲフレックスFA−1Q80MCは、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライドであり、チバスペシャルティケミカルズ(タリタウン、ニューヨーク州)から市販されている。
【0184】
各実施例の調製は、表3に示すようにカチオン性モノマー溶液を形成することによって行なった。各実施例に対して表3に示す構成成分をすべて、アンバージャー内で混合した。結果として生じる混合物の撹拌を、カチオン性モノマー(通常は固体パウダでである)が溶解するまで行なった。
【0185】
【表3】

【0186】
表3に記載したモノマー溶液(各溶液は2グラム)を、乾燥したビーズの1グラムとそれぞれ混合した後、2時間ビーズと接触させた。ビーズを濾過してすすぎ洗いした後、質量を計って、ビーズ内に収着されるモノマー溶液の量を決定した。表4にビーズの質量パーセントの増加を示す。ビーズを浅いアルミニウムパン内に置いて、中圧Hgバルブの下でコンベアベルトUVプロセッサ上を2回通すことによって後硬化した。総UVAエネルギーは354mJ/cmであった。
【0187】
カチオン性モノマー溶液で処理したビーズの抗菌剤性能を評価することを、阻害ゾーン試験法およびASTME2149−01試験法の両方を用いて行なった。表4に抗菌剤性能の結果を示す。結果によれば、中間サイズのモノマーである(DMAEMA−C12およびDMAEMA−C16)が、最良の抗菌剤性能を与えることが示唆されている。
【0188】
【表4】

【0189】
(実施例46〜53):ポリマービーズのカチオン性モノマーとの反応(イソプロピルアルコール溶媒)
ビーズの調製は実施例19に記載した通りに行なった。ビーズを種々のカチオン性モノマーと反応させた。各実施例に対して表5に示す構成成分をすべて、アンバージャー内で混合した。結果として生じる混合物の撹拌を、カチオン性モノマー(通常固体パウダである)が溶解するまで行なった。種々のDMAEMA含有モノマーは、実施例35〜43に対して記載したものと同じである。実施例52に対するアゲフレックスFA−1Q80MCは、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライドであり、チバスペシャルティケミカルズ(タリタウン、ニューヨーク州)から市販されている。実施例53に対するカチオン性モノマーMP−8275は、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメトサルフェート(40%水溶液)であり、ABCR社(ABCR GmbH and Co. KG)(カールスルーエ(Karlsruhe)、ドイツ)から市販されている。これらのサンプル中にIPAはなかった。
【0190】
【表5】

【0191】
表5に記載したモノマー溶液(各溶液は4グラム)を、乾燥したビーズの2グラムとそれぞれ混合した後、暗い引き出しの中で4時間ビーズと接触させて、可視光の下で早期硬化がないようにした。ビーズを濾過してすすぎ洗いした後、質量を計って、ビーズ中に吸収されたモノマー溶液の量を決定した(表6に示す)。ビーズを浅いアルミニウムパン内に置いた後、コンベアベルトUVプロセッサを用いて2回通過させることによって後硬化させた。総UVAエネルギーは445mJ/cmであった。
【0192】
ビーズの抗菌剤性能の評価を、阻害ゾーン試験法およびASTME2149−01試験法の両方を用いて行なった。下表6に結果を示す。
【0193】
表6のデータによれば、表4のデータに比べてビーズ吸収質量が増加していることが示されている。この原因は、モノマー溶媒としてプロピレングリコールの代わりにIPAを用いたことであり得る。加えて、表6の最後の2つのサンプルは、はるかに高い吸収質量を示している。これは、溶媒として水を用いたことによる。吸収された全容量はそれほど違ってはいないが、質量増加は、IPAではなくて水を用いたときに、密度が高くなるため著しく大きい。
【0194】
中間サイズのモノマー(DMAEMA−C12およびDMAEMA−C16)に対する抗菌剤性能は、これまでの実施例に見られるように最良である。
【0195】
【表6】

【0196】
(実施例54〜63):保湿剤の添加
ヒドロゲルビーズを、実施例1に従って、表7に示す成分を含有する均質な前駆体組成物から作製した。SR415は、100パーセント固体の(エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)であり、サトマー(エクストン、ペンシルベニア州)から市販されている。モノマーの平均官能基数は2.5であった。種々の保湿剤をポリマービーズに添加することを、ポリマービーズの形成時に行なった。
【0197】
実施例54〜56には、種々のレベルのコラモイスト(COLAMOIST)200が含まれていて、実施例57〜59には、種々のレベルのコラモイスト300Pが含有されていた。コラモイスト200およびコラモイスト300Pは両方とも、コロニアルケミカル社(Colonial Chemical, Inc.)(サウスピッツバーグ(South Pittsburg)、テネシー州)から市販されている。コラモイスト200は、73.1パーセント固形分のヒドロキシプロピルビス−ヒドロキシエチルジアンモニウムクロリドであり、コラモイスト300Pは、69.4パーセント固形分の複数の四級アンモニウムイオンを含有する高分子材料である。この高分子材料は、(ポリ(ヒドロキシプロピルテトラ(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアンモニウム)クロライド)である。実施例60〜62には、種々のレベルの乳酸ナトリウムが含有されている。乳酸ナトリウムは、ピューラックアメリカ(Purac America)(リンカンシャー(Lincolnshire)、イリノイ州)から入手した。保湿剤を実施例63には添加しなかった。実施例63は対照例である。
【0198】
【表7】

【0199】
ビーズの水分活性の試験を、アクアラブ(Aqua Lab)CX−2モデル水分活性メーターを用いて行なった。このメーターは、ドラゴンデバイス社(Decagon Devices, Inc.)(プルマン(Pullman)、ワシントン州)から入手した。機器は、最初にNaCl飽和溶液を用いて校正した後に、脱イオン水サンプルを用いて動作させた。NaCl飽和溶液の活性は0.753に近い必要がある一方で、純粋な脱イオン水の活性は0.99〜1.00でなければならない。
【0200】
ほぼ1.0グラムのビーズを直接、使い捨ての活性サンプルカップ(ほぼ2.5(1”)径の円形カップ、おおよその深さは0.6cm(1/4”))に量り取った。正確な質量を記録した。サンプルをすぐに活性メーターにロードして、読み取り値が安定するまで動作させた。Aの2つの測定値の間隔が0.001を下回ったときに、装置は動作の終了を示した。温度の測定を活性メーターを用いて行なって、動作の終わりに記録した。水分活性は、保湿剤のレベルが増加すると、著しく減少した。
【0201】
【表8】

【0202】
(実施例64):ヒドロゲルビーズを含有するニンヒドリン
乾燥したビーズ(0.95グラム)を、実施例19に記載した通りに調製した後に、1質量パーセントのニンヒドリン水溶液(3mL)に室温で24時間、接触させた。ニンヒドリンは、アルドリッチケミカル社(ミルウォーキー(Milwaukee)、ウィスコンシン州)から入手した。ニンヒドリン溶液に曝露した後で、ビーズを水およびエタノールですすぎ洗いして、それから空気中で4時間、乾燥させた。乾燥ニンヒドリン含有ビーズを、閉じたバイアル瓶に保存して、将来の使用に備えた。
【0203】
ニンヒドリン含有ビーズの第1のサンプルを、ブミネート(buminate)アルブミンと接触させた。ニンヒドリン含有ビーズの第2のサンプルを、豚の肉汁溶液と接触させた。ブミネートアルブミン(25質量パーセント)は、バクスタヘルスケア社(Baxter Healthcare Co.)から入手した。豚の肉汁溶液の調製は、約16グラムの新鮮な豚の細切れ肉から20mLの水を用いて16時間かけて抽出し、生じた混合物を濾過して行った。肉汁中の総タンパク質の測定を、ピアス(Pierce)アッセイに従って行なった。タンパク質は、ほぼ17mg/mL〜37mg/mLの範囲であった。
【0204】
ニンヒドリン含有ビーズをこれら2つのサンプルに曝露するために、6つのニンヒドリン含有ビーズ(約100mg)を2つの別個のバイアル瓶(4mL)に加えた。それから、1mL豚の肉汁を第1のバイアル瓶に加えて、1mLのブミネートアルブミンタンパク質水溶液(5質量パーセント)を第2のバイアル瓶に加えた。約40分してから、両方のバイアル瓶とも青色になり始め、最終的には紫色になった。豚の肉汁の入ったバイアル瓶では、ビーズは紫色になったが、豚の肉汁の色は変化しなかった。しかしブミネートアルブミンの入ったバイアル瓶では、溶液は紫色になる一方で、ビーズは紫色を示さなかった。
【0205】
本発明を、種々の実施形態および技術について説明してきた。しかし、当技術分野の当業者にとって、本発明の精神および範囲を超えることなく、多くの変形および変更が可能であることは明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明による複数個のポリマービーズの概略の描画であり、ポリマービーズの1つを断面で例示する図。
【図2】ポリマービーズを製造するためのプロセスおよび機器の第1の実施形態の概略図。
【図3】ポリマービーズを製造するためのプロセスおよび機器の第2の実施形態の概略図。
【図4】倍率50倍における複数個の代表的なポリマービーズの光学顕微鏡写真。
【図5】倍率200倍における複数個の他の代表的なポリマービーズの光学顕微鏡写真。
【図6A】倍率50倍における代表的な膨潤したポリマービーズの環境制御型走査電子顕微鏡写真。
【図6B】倍率50倍における代表的な乾燥したポリマービーズの環境制御型走査電子顕微鏡写真。
【図7】表面上の銀コーティングを示すために粉砕された代表的なビーズの光学顕微鏡写真(倍率100倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマービーズを製造する方法であって、
前駆体組成物として、
a)該前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超の極性溶媒と、
b)フリーラジカル重合が可能であり且つモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である重合性材料であって、該極性溶媒と混和する該重合性材料と、を含む該前駆体組成物を準備する工程と、
液滴が全体的に気相によって囲まれている、該前駆体組成物の該液滴を形成する工程と、
該重合性材料を少なくとも部分的に重合させて第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間、該液滴を放射線に曝露する工程と、を含む、製造方法。
【請求項2】
該重合性材料は、モノマー分子当たりの(メタ)アクリロイル基の平均数が少なくとも2であるポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の重量平均分子量は2000g/モル以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の膨潤したビーズから前記極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体組成物は活性剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活性剤は生物活性剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体組成物は光開始剤を更に含み且つ前記放射線は化学線を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の膨潤したビーズから前記極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成する工程と、
該乾燥したビーズが、少なくとも1種の活性剤を含むソルベートの少なくとも一部分を収着し第2の膨潤したポリマービーズを形成するに十分な時間、該乾燥したビーズを該ソルベートに接触させる工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の膨潤したポリマービーズを乾燥させる工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリマービーズを含む物品の調製方法であって、
前駆体組成物として、
a)該前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超から85質量パーセントまでの極性溶媒と、
b)該前駆体組成物の全質量を基準として15質量パーセントから90質量パーセント未満の重合性材料であって、該重合性材料は、フリーラジカル重合が可能であり且つモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2であり、該極性溶媒中に混和性であり且つ、
i)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル官能基を有し且つ少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有する、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)と、
ii)該前駆体組成物中の重合性材料の全質量を基準として0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーであって、酸性基、酸性基の塩またはそれらの混合物に加えてエチレン系不飽和基を含む該アニオン性モノマーとを含む、該重合性材料と、を含む該前駆体組成物を準備する工程と、
液滴が全体的に気相によって囲まれている、該前駆体組成物の該液滴を形成する工程と、
該重合性材料を少なくとも部分的に重合させて第1の膨潤したポリマービーズを形成するのに十分な時間、該液滴を放射線に曝露する工程と、を含む、調製方法。
【請求項11】
前記第1の膨潤したビーズから前記極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆体組成物は、前記重合性材料の質量を基準として1質量パーセント未満のアニオン性モノマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)の重量平均分子量が2000g/モル未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体組成物は活性剤を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記活性剤は生物活性剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記前駆体組成物は光開始剤を更に含み且つ前記放射線は化学線を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の膨潤したビーズから前記極性溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥したビーズを形成する工程と、
該乾燥したビーズが、活性剤を含むソルベートの少なくとも一部分を収着し第2の膨潤したポリマービーズを形成するに十分な時間、該乾燥したビーズを該ソルベートに接触させる工程と、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記活性剤はエチレン系不飽和基および光開始剤を含み、前記方法は、前記第2の膨潤したポリマービーズを化学線に暴露する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の膨潤したポリマービーズを乾燥する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前駆体組成物のフリーラジカル重合反応生成物を含むポリマービーズを含む物品であって、該前駆体組成物は、
a)該前駆体組成物の全質量を基準として10質量パーセント超から85質量パーセント以下の極性溶媒と、
b)前駆体組成物の全質量を基準として15質量パーセントから90質量パーセント未満の重合性材料であって、該重合性材料は、フリーラジカル重合が可能であり且つモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2であり、該極性溶媒中に混和性であり且つ、
i)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し且つ少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有する、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)と、
ii)該前駆体組成物中の重合性材料の全質量を基準として0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーであって、酸性基、酸性基の塩またはそれらの混合物に加えてエチレン系不飽和基を含む該アニオン性モノマーとを含む、該重合性材料と、を含む、物品。
【請求項21】
ポリマービーズを含む物品であって、該ポリマービーズは、
a)フリーラジカル重合が可能であり且つモノマー分子当たりのエチレン系不飽和基の平均数が少なくとも1.2である重合性材料を含む前駆体組成物のフリーラジカル重合反応生成物であって、該重合性材料は、
i)少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し且つ少なくとも5つのアルキレンオキシド単位を有する、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート)と、
ii)該前駆体組成物中の重合性材料の全質量を基準として0から20質量パーセント未満のアニオン性モノマーであって、酸性基、酸性基の塩またはそれらの混合物に加えてエチレン系不飽和基を含む該アニオン性モノマーとを含む、該フリーラジカル重合反応生成物と、
b)活性剤と、を含む、物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6b】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−540063(P2009−540063A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514522(P2009−514522)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/070571
【国際公開番号】WO2007/146722
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】