説明

ポリマーフォーム

微小流体法の使用により、形態の標的制御によってポリマーフォームを製造する方法、そのように製造されたフォーム、およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小流体法によって、乳化剤フォーム先駆物質から秩序ポリマーフォームを製造する向上した方法、ならびにそれによって製造されたポリマーフォームおよびその使用に関する。
【0002】
ポリマーフォームは、種々の用途を有し、例えば、断熱、機械制動、吸音に使用され、包装材料として、または例えば高吸収性物質としての吸水性架橋ポリマーとして使用される。WO97/17397は吸水性架橋ポリマーフォームを開示し、該フォームは、モノエチレン性不飽和モノマーを特に含んで成る重合性混合物を発泡させ(該発泡は、不活性ガスの微細気泡を分散させることによって行なっている)、該発泡混合物を重合させてヒドロゲルフォームを形成することによって得られる。フォームは、重合とは別に製造され、製造は、例えば、尿素ホルムアルデヒドフォームの製造に関して既知の工業装置で行なうことができ、または、簡単には、泡立て器の付いた従来のフードプロセッサーで行なうこともできる。WO00/52087は、先ず、不活性ガスを重合性水性混合物中に形成し、次に、それを大気圧に減圧することによって、重合性水性混合物を発泡させることを開示している。WO99/44648は、フォームを製造するために使用されるモノエチレン性不飽和モノマーを、アルカノールアミンで中和することを開示している。
【0003】
これらの方法によって、所定の化学組成物を用いてポリマーフォームを製造することができる。しかし、フォームの形態の精密制御を向上させる必要がある。
【0004】
微小流体法を使用して微粒子を製造できることは既知である。微小流体法は、その原理について既に下記の文献に記載されている:G.M.Whiteside,The Origins and the Future of Microfluidics,Nature 442,368−372(2006);M.Hashimoto,P.GarsteckiおよびG.M.Whitesides,Synthesis of Composite Emulsions and Complex Foams with the use of Microfluidic Flow−Focusing Devices,small 3(10),1792−1802(2007);J.D.Tice,H.Song,A.D.LyonおよびR.F.Ismagilov,Formation of Droplets and Mixing in Mutiphase Microfluidics at Low Values of the Reynolds and the Capillary Numbers,Langmuir 19,9127−9133(2003);A.M.Ganan−CalvoおよびJ.M.Gordillo,Perfectly Monodisperse Microbubbling by Capillary Flow Focusing,Phys.Rev.Lett.87(27),274501−1−274051−4(2001);S.L.Anna,N.BontouxおよびH.A.Stone,Formation of dispersions using"flow focusing"in microchannels,Appl.Phys.Lett.82(3),364−366(2003)。
【0005】
微小流体法および本明細書で使用される微小規模法要素は、下記の特徴を有することが知られている:ミリメートル未満の短い特徴的長さ(数マイクロメートル〜数百マイクロメートル)、例えば10〜1000マイクロメートル、特に100〜750マイクロメートルの長さ、および生じる泡の小体積(1ナノリットル〜1フェモトリットル);これは、好ましくは少なくとも1000m2/m3の高い表面積対体積比、および1000未満、特に1〜1000、好ましくは1〜250、特に1〜100の極めて小さいレイノルズ数を生じる。これは純粋層流を生じ、それによって、化学溶液の混合は純粋な拡散操作(動力学的操作の代わりに)に限定される。微小流体装置における物質の滞留時間は、一般に極めて短い(何分の一秒)が、目的とする反応に応じて調節することができる。
【0006】
所定の大きさおよび形態の単分散粒子を、微小流体法によって製造できることは既知であり、例えば下記の文献を参照されたい:W.Jeong,J.Kim,S.Kim,S.Lee,G.MensingおよびD.J.Beebe,Hydrodynamic microfabrication via"on the fly"photopolymerization of microscale fibers and tubes,Lab Chip 4,576−580(2004);V.Hessel,C.Serra,H.LoeweおよびG.Hadziioannou,Polymerisationen in mikrostrukturierten Reaktoren:Ein Ueberblick,Chem.Ing.Tech.77(11),1693−1714(2005);S.Xu,Z.Nie,M.Seo,P.Lewis,E.Kumacheva,H.A.Stone,P.Garstecki,D.B.Weibel,I.GitlinおよびG.M.Whitesides,Generation of Monodisperse Particles by Using Microfluidics:Control over Size,Shape,and Composition,Angew.Chem.117,734−738(2005);Z.Nie,S.Xu,M.Seo,P.C.LewisおよびE.Kumacheva,Polymer Particles with Various Shapes and Morphologies Produced in Continuous Microfluidic Reactors,J.Am.Chem.Soc.127,8058−8063(2005);M.Seo,Z.Nie,S.Xu,M.Mok,P.C.Lewis,R.GrahamおよびE.Kumacheva,Continuous Microfluidic Reactors for Polymer Particles,Langmuir 21,11614−11622(2005);S.Abraham,E.H.Jeong,T.Arakawa,S.Shoji,K.C.Kim,I.KimおよびJ.S.Go,Microfluidics assisted synthesis of well−defined spherical polymeric microcapsules and their utilization as potential encapsulants,Lab Chip 6,752−756(2006);H.Zhang,E.Tumarkin,R.Peerani,Z.Nie,R.M.A.Sullan,G.C.WalkerおよびE.Kumacheva,Microfluidic Production of Biopolymer Microcapsules with Controlled Morphology,J.Am.Chem.Soc.128,12205−12210(2006);J.L.Steinbacher et al.,、Rapid Self−Assembly of Core−Shell Organosilicon Microcapsules within a Microfluidic Device,J.Am.Chem.Soc.128,9442−9447(2006);J.−W.Kim,A.S.Utada,A.Fernandez−Nieves,Z.HuおよびD.A.Weitz,Fabrication of Monodisperse Gel Shells and Functional Microgels in Microfluidic Devices,Angew.Chem.119,1851−1854(2007);C.SERRA,N.Berton,M.Bouquey,L.PratおよびG.Hadziioannou,A Predictive Approach of the Influence of the Operating Parameters on the Size of Polymer Particles Synthesized in a Simplified Microfluidic System,Langmuir 23,7745−7750(2007)。
【0007】
US2007/0054119A1は、既に金属および/またはナイロンを含んで成る単分散粒子を製造するための、微小流体系の使用および方法を開示しており、ポリマー先駆物質を微小流体通路に誘導して粒子を形成し、該通路において硬化させている。
【0008】
WO2005/103106A1も、種々の流体を微小流体通路に導入し、硬化させることによって、所定の形および形態のポリマー粒子を製造することを開示している。
【0009】
本発明の目的は、所定の構造および形態を有する向上したポリマーフォーム、および、特にその製造法を提供することである。
【0010】
本発明は、下記の工程:
1.少なくとも1つの重合性化合物および溶媒Lを含んで成る溶液L1、ならびに場合により、重合性化合物およびL1の溶媒と同じかまたは異なる溶媒を含んで成る少なくとも1つの溶液L2を、
2.使用される溶媒に不溶性の、又は部分的にのみ溶解性の、1つ又は1つより多いガスGと、接触させて(前記溶液のうち少なくとも1つは、乳化剤または他の助剤を含んで成る)、
ガスGを気泡として囲む溶液による通路および/または壁の発生の結果として、フォームを形成し、
3.次の工程段階において重合させる、
工程によってポリマーフォームを製造する方法に関し、本方法は、前記溶液およびガスGを微小流体法条件下に接触させて、ガスGの気泡を発生させることを特徴とする。
【0011】
好ましい実施形態において、通路K内で共通の流れ方向に進む溶液およびガスGをマイクロリアクターの通路Kにおいて接触させる。
【0012】
好ましい実施形態において、ガスGは、重合性化合物によって完全に囲まれ、その後少しずつ出口通路Kから出て行く。これは、混合通路MKの上流配置によってさらに確実にできる。出口通路Kは、好ましくは、数マイクロメートル〜数百マイクロメートルの直径、および選択された直径の数倍に相当する長さを有する。通路直径の選択は、発生するガスGの気泡の大きさに影響を及ぼし、一方、充分なレベルに選択された通路長さは、気泡のモノモダリティー、および付加的に、化学物質の充分な混合を確実にする。混合通路MK(存在する場合)の直径は、出口通路より数倍大きくすべきである。
【0013】
本発明に関して、重合は巨大分子を形成するのに好適な方法、特に下記の方法、
二重結合の分解および重合モノマーの長鎖の形成を伴う不飽和モノマーの重合、
ポリアダクトへのモノマーの重付加、特に、少なくとも2個の官能基を有する種々の分子の結合による、ポリウレタンおよびポリウレアの形成、
モノマーを結合させて、小分子(例えば水)を除去することによる重縮合、
を意味するものと理解される。
【0014】
ポリマーは、重合において得られる高分子量化合物を意味するものと理解され、モノマーは、対応する低分子量出発化合物を意味するものと理解される。
【0015】
微小流体法条件は、特に下記のパラメーターを特徴とする:
1.混合通路MK(存在する場合)の短い特徴的長さ、および出口通路Kの小さい直径(好ましくは10マイクロメートル〜1000マイクロメートル、特に100マイクロメートル〜750マイクロメートル)であって、それによって拡散工程が化学物質の充分な混合を生じうる;
2.小さい内容積であって、一般に1立方ミリメートル〜1立方センチメートルのオーダーである;
3.流れを収束するための反応器における出発物質の組合せであって、該反応器において、ガスGおよび溶液Lが狭い出口通路Kを通って出て行き、該通路の直径は、数マイクロメートル〜数百マイクロメートルであり、その長さは該直径の数倍である。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、該方法を、溶液LおよびガスGの分離供給ラインおよび出口通路Kを有する反応器において行なう。図1は、溶液Lの供給路2および3、およびガスGの供給路4を有するブロック1、溶液およびガスGの混合通路MK、および出口通路Kから成る対応する反応器を示している。
【0017】
そのような反応器を並列につなぐか、またはそれらを合わしてバンドルリアクターにすることによって、より多量の変換を生じうることが理解される。
【0018】
本発明はさらに、本発明の方法によって製造でき、下記パラメーターの少なくとも1つを特徴とするポリマーフォームに関する:
1.気泡の大きさが、数マイクロメートル(例えば10μm)〜数ミリメートル(例えば2mm)である。これは、極めて低い多分散性(2〜5%)を有するモノモードフォームの生成に特に好適である。
2.ポリマーフォーム密度が、ガスGおよび溶液Lの流量によって正確に調整され(装置の不正確さの範囲内)、従って、所望のように選択することができ、例えば、10-5〜102g/cm3、特に5x10-3〜1g/cm3である。
3.フォーム安定性に応じて時間を延長でき、連続相が流体であり低粘性である工程によって、重合が進められるので、気泡が物理的平衡構造で配置される。次に、特に高液体含有量を有するモノモードフォームが、秩序フォーム構造(緊密「球充填」)を形成する。次に(かつ、重合の前に)、付加的にフォーム密度を減少させるために、減圧を適用して液体を除去することができる。
【0019】
1つの実施形態において、下記の成分を含んで成る重合性水性混合物Iを使用する:
(A)モノエチレン性不飽和モノマー
(B)架橋剤
(C)開始剤
(D)乳化剤
(G)ガス
(L)溶媒。
【0020】
(I−A)重合性水性混合物用のモノマー
本発明により、重合性水性混合物を微小流体ユニットで処理して、加工安定性の、所望のように付形できるフォームを得る。重合性水性混合物は、成分(A)として、例えば、直鎖または分岐鎖カルボン酸またはそれらの無水物またはカルボキサミド、または直鎖または分解鎖アルカノールから形成されるカルボン酸エステル、またはモノエチレン性不飽和アルキル−またはアリールスルホン酸から成る、モノエチレン性不飽和モノマーを含んで成る。
【0021】
モノエチレン性不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、イタコン酸および無水イタコン酸、シトラコン酸およびアシルアミドグリコール酸を使用することができる。エチレン性不飽和アルキル−またはアリールスルホン酸、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルアクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸も好適である。
【0022】
先に列記したモノエチレン性不飽和カルボン酸の、カルボキサミドまたはカルボン酸エステルまたはニトリルも、グループ(I−A)の有用なモノマーである。特に、直鎖または分岐鎖アルカノール、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシルまたは環状C5−〜C10−シクロアルキル基、例えば、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基との、カルボン酸エステルが有用である。さらに、カルボキサミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはニトリル、例えばアクリロニトリル、およびC4〜C8共役ジエン、例えば1,3−ブタジエンおよびイソプレンも有用である。
【0023】
さらに、少なくとも1個のヒドロキシルと共に、ケトおよび/またはシラン基を側鎖に有するモノマーも有用である。特に有用なモノマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、アセトアセトキシメタクリレートおよびポリビニルアルコールである。それらの水溶性は、一般に、25℃において100g/水1000cm3より大である。グリシジル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシメタクリレート、ウレイドエチルメタクリレート、アクリルアミドエチルエチレンウレア、N,N’−ビス(アクリルアミドエチル)エチレンウレアも例として挙げられる。
【0024】
オレフィン二重結合を含んで成るシラン、例えば、ビニルシランまたはメタクリロイルオキシアルキルシランを重合させることもできる。その他に、EP−A−0640629に従って、エポキシシラン、例えばグリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの存在下に重合させるか、またはEP−A−0327376に従って、メルカプトアルキルトリスアルコキシシランの存在下に重合させることによって、シラン基を導入することもできる。N−メチロール基を有する化合物も、モノマーとして使用することができる。そのような化合物の例は、N−メチロールアクリルアミドおよびN−メチロールメタクリルアミドである。
【0025】
フォームの製造において、モノマーを、単独で、または互いに混合して、使用することができる。さらに、水が混合物に添加される。
【0026】
適切であれば、混合物を中和させる。中和のために、例えば、アルカリ金属塩基またはアンモニアまたはアミンを使用する。中和のために、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液またはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを使用するのが好ましい。しかし、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムまたは他の炭酸塩、炭酸水素塩を使用して、中和を行なうこともできる。
【0027】
(I−B)重合性水性混合物用の架橋剤
重合性水性混合物用の有用な架橋剤は、少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを包含する。そのようなモノマーの例は、下記の物質である:N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから形成されたブロックコポリマーのジアクリレートおよびジメタクリレート、ジ−またはトリアクリレート化または−メタクリレート化多価アルコール、例えばグリセロールまたはペンタエリトリトール、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、分子量106〜4000のポリエチレングリコールのポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリチルトリアリルエーテルおよび/またはジビニルエチレンウレア。下記のような水溶性架橋剤を使用するのが好ましい:例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレート(これらは、エチレンオキシド2〜400molの、ジオールまたはポリオール1molへの付加生成物から誘導される)、エチレンオキシド2〜400molのジオールまたはポリオール1molへの付加生成物のビニルエーテル、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、またはエチレンオキシド6〜20molのグリセロール1molへの付加生成物のトリアクリレートおよびトリメタクリレート、ペンタエリトリチルトリアリルエーテルおよび/またはジビニルウレア。
【0028】
有用な架橋剤は、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基および少なくとも1個の他の官能基を含んで成る化合物も包含する。これらの架橋剤の官能基は、モノマー(I−A)の官能基、基本的にカルボキシル基またはスルホン酸基と反応できなければならない。好適な官能基は、例えば、ヒドロキシル、アミノ、エポキシおよびアジリジノ基である。
【0029】
有用な架橋剤は、使用されるグループ(I−A)のモノマーのカルボキシル基およびスルホン酸基と反応できる少なくとも2個の官能基を有する化合物も包含する。好適な官能基は、先に記載した官能基、即ち、ヒドロキシル、アミノ、エポキシ、イソシアネート、エステル、アミドおよびアジリジノ基である。そのような架橋剤の例は、下記の物質である:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから形成されるブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリルジグリシジルエーテル、グリセリルポリグリシジルエーテル、ジグリセリルポリグリシジルエーテル、ポリグリセリルポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリチルポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアジリジン化合物、例えば2,2−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア、ハロエポキシ化合物、例えばエピクロロヒドリンおよびα−メチルフルオロヒドリン、ポリイソシアネート、例えば2,4−トルイレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、アルキレンカーボネート、例えば1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ポリ四級アミン、例えばジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの縮合生成物、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモ−およびコポリマー、およびジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのホモ−およびコポリマー(これは、例えば塩化メチルを用いて、四級化しうる)。
【0030】
他の好適な架橋剤は、イオン架橋を形成できる多価金属イオンである。そのような架橋剤の例は、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよびアンモニウムイオンである。これらの架橋剤は、例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の形態で、水性重合性溶液に添加される。この種の特に好ましい架橋剤は、アルミン酸ナトリウムである。
【0031】
他の好適な架橋剤は、イオン架橋を形成できる多官能性塩基、例えば、ポリアミンまたはその四級化塩である。ポリアミンの例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミン、ならびに各場合に4,000,000までのモル質量を有するポリビニルアミンである。
【0032】
(I−C)重合性水性混合物用の開始剤
使用される重合開始剤は、重合条件下に遊離基に分解するあらゆる化合物、例えば、過酸化物、ヒドロ過酸化物、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ化合物およびいわゆるレドックス触媒であってよい。水溶性開始剤を使用するのが好ましい。重合性水性混合物への電子線の作用による重合の開始も可能である。しかし、前記タイプの開始剤の不在下に、光開始剤の存在下の高エネルギー放射線の作用によって、重合を誘発することもできる。ある場合には、種々の重合開始剤の混合物、例えば、過酸化水素およびペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウムの混合物を使用するのが有利である。過酸化水素およびペルオキソ二硫酸ナトリウムの混合物は、任意の所望の比率で使用できる。好適な有機過酸化物は、例えば下記の物質である:アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−アミルペルピバレート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペルネオヘキサノエート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペル−2−エチルエキサノエート、t−ブチルペルイソノナノエート、t−ブチルペルマレエート、t−ブチルペルベンゾエート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキソジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキソジカーボネート、ジミリスチルペルオキソジカーボネート、ジアセチルペルオキソジカーボネート、アリルペルエステル、クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペル−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシドおよびt−アミルペルネオデカノエート。特に好適な重合開始剤は、水溶性アゾ開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2’−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドおよび4,4’−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)である。
【0033】
レドックス触媒も有用な開始剤である。レドックス触媒は、酸化成分として、少なくとも1つの前記ペル化合物、および還元成分として、例えば、アスコルビン酸、グルコース、ソルボース、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、次亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩または硫化物、アルカリ金属亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、次亜硫化塩、ピロ亜硫酸塩または硫化物、金属塩、例えば、鉄(II)イオンまたは銀イオン、またはヒドロキシメチルスルホキシル酸ナトリウムを含んで成る。
【0034】
重合を高エネルギー放射線の作用によって誘発する場合、使用される開始剤は、一般に、いわゆる光開始剤である。これらは、例えば、いわゆるα−スプリッター、H−分離系(H-abstrahierende Systeme)またはアジ化物であってよい。そのような開始剤の例は、ベンゾフェノン誘導体、例えばミヒラーケトン、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、アントラキノン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベンゾインエーテルおよびその誘導体、アゾ化合物、例えば前記の遊離基生成物質、置換ヘキサアリールビスイミダゾールまたはアシルホスフィンオキシドである。アジ化物の例は下記の物質である:2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル4−アジドシンナメート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル4−アジドナフチルケトン、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル4−アジドベンゾエート、5−アジド−1−ナフチル2’−(N,N−ジメチルアミノ)エチルスルホン、N−(4−スルホニルアジドフェニル)マレイミド、N−アセチル−4−スルホニルアジドアニリン、4−スルホニルアジドアニリン、4−アジドアニリン、4−アジドフェナシルブロミド、p−アジド安息香酸、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノンおよび2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン。
【0035】
(I−D)乳化剤および他の補助剤
乳化剤は、フォームの製造および安定化に極めて重要である。陰イオン、陽イオンまたは非イオン乳化剤、または相互に適合性の乳化剤の混合物を使用することができる。低分子量または高分子量乳化剤(保護コロイド)、好都合であることが分かっている異種または同種の乳化剤の組合せを使用することができる。その他に、粒子もフォームの安定化のために使用でき、特に、例えばWO2007/068127A1に記載されているポリマー粒子などを使用できる。
【0036】
乳化剤、保護コロイドまたは粒子は、それらの他の特性に関係なく、重合反応に関与してポリマーに組み込まれるために、好適な基、例えばエチレン性不飽和基を有する。
【0037】
使用できる非イオン乳化剤は、長鎖の直鎖または分岐鎖アルコールの脂肪族エトキシレート、脂肪酸アミドまたは脂肪酸アミン、およびポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドのブロックコポリマー、またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドと(I−A)のエチレン性不飽和モノマーとのブロックコポリマー、およびスチレンである。長鎖アルカノール、特に脂肪アルコールまたはオキソアルコールの、エトキシレートを使用するのが好ましい。好適なアルコールは、C8〜C36アルコール、好ましくはC10〜C22アルコール、より好ましくはC12〜C18アルコールである。平均エトキシ化度は、一般に3〜80である。さらに、使用される非イオン乳化剤はアルキルポリグルコシドであってもよい。
【0038】
他の有用な乳化剤は、好ましくは陰イオン性である。これらは、平均エトキシ化度2〜80を有するエトキシ化直鎖または分岐鎖C12〜C18アルカノールの硫酸モノエステル、C12〜C18アルキルスルホン酸、およびC8〜C18アルキルアリールスルホン酸の、中和C8〜C12アルキルスルフェート、または、スルホ琥珀酸エステルまたはモノエステルまたはエステルアミドを包含する。中和第一級または第二級アルキルホスフェートまたはホスホネート、または平均エトキシ化度2〜80およびC12〜C18アルキル基を有するエトキシ化アルキルホスフェートまたはホスホネートを使用することもできる。乳化剤は、好ましくは、ナトリウムまたはカリウムまたはアンモニウム塩の形態、または置換アンモニウム塩、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン塩の形態で存在する。
【0039】
他の好適な乳化剤は、下記の文献に見出される:Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、第XIV/1巻、Makromolekulare Stoffe[Macromolecular Substances],Georg−Thieme Verlag,Stuttgart,1961,p.192〜208)。
【0040】
陽イオン乳化剤も好適である。その例は、エチレンオキシド6.5molとオレイルアミン1molとの硫酸ジメチル−四級化反応生成物、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、および硫酸ジメチル−四級化ステアリン酸トリエタノールアミンエステル(これを陽イオン乳化剤として使用するのが好ましい)である。
【0041】
さらに、好適な保護コロイドを、単独で、または前記の乳化剤、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体またはビニルピロリドン含有コポリマーと組み合わして使用することもできる。他の好適な保護コロイドの包括的記述は、下記の文献に見出される:Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie、第14.1巻、Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme Verlag,Stuttgart,1961,p.411〜420)。
【0042】
重合性水性混合物は、適切であれば、少なくとも1つの可溶化剤を含んで成ってよい。これらは、水溶性有機溶媒を意味するものと理解され、その例は、アルコール、グリコール、ポリエチレングリコールまたはそれらから誘導されるモノエーテルであって、該モノエーテルは分子中に二重結合を有さない。好適なエーテルは、メチルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、メチルジグリコール、ブチルトリグリコール、3−エトキシ−1−プロパノールおよびグリセリルモノメチルエーテルである。
【0043】
重合性水性混合物は、適切であれば、増粘剤、気泡安定剤、重合調節剤、充填剤および気泡成核剤を含んで成ってよい。増粘剤は、例えば、フォーム構造を最適化するため、および気泡安定性を高めるために、使用される。これは、重合の間に、気泡を少しだけ収縮させる効果をもたらす。有用な増粘剤は、この目的に関して既知の、水性系の粘度を有意に増加させるあらゆる天然および合成ポリマーを包含する。それらは、水膨潤性または水溶性の合成または天然ポリマーであってよい。粉末状の高吸収性物質も好適な増粘剤である。増粘剤の包括的概要が、例えば下記の刊行物に見出される:R.Y.LochheadおよびW.R.Fron,Cosmetics & Toiletries,108,95−135(1993年5月)、およびM.T.Clarke、「Rheological Additives」、D.Laba(編集)「Rheological Properties of Cosmetics and Toiletries」、Cosmetic Science and Technology Series、第13巻、Marcel Dekker Inc.,New York 1993。増粘剤として有用な水膨潤性または水溶性合成ポリマーは、例えば、酸基を含有する前記モノエチレン性不飽和モノマーの高分子量ポリマーである。そのような増粘剤は、例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸の高分子量ホモポリマー、またはアクリル酸および/またはメタクリル酸および少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を含んで成る化合物、例えばブタンジオールジアクリレートの、低架橋コポリマーである。アクリルアミドおよびメタクリルアミドの高分子量ポリマー、または100万を超えるモル質量を有するアクリル酸とアクリルアミドとのコポリマーも好適である。そのようなコポリマーは、増粘剤として既知である。高分子量のポリエチレングリコール、またはエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、および高分子量多糖、例えば、デンプン、グアルシード粉、イナゴマメ粉、または天然物質の誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロース混合エーテルも既知の増粘剤である。増粘剤の他のグループは、水不溶性生成物、例えば、微細シリカ、ヒュームドシリカ、親水性または疎水性多形における沈降シリカ、ゼオライト、二酸化チタン、セルロース粉末、または高吸収性物質以外の架橋ポリマーの微細粉末である。
【0044】
(I−G)ガス
使用されるガスは、好ましくは、空気、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、六フッ化硫黄、特に窒素である。さらに、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロジフルオロメタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンを使用することもできる。これらのガスの混合物も当然使用できる。
【0045】
(I−L)溶媒
使用される溶媒は、好ましくは、使用される反応物に不活性の液体、特に水である。
【0046】
(I−A)で記載したエチレン性不飽和モノマーの代わりに、重付加および重縮合生成物の一般的先駆物質、即ち、例えば、ポリウレタンフォーム製造用のジイソシアネートおよびポリオールを使用することもできる。
【0047】
本発明のポリマーフォーム製造において、第一工程段階で、重合性水性混合物を微小流体法によって発泡させる。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、フォームを重合とは別に製造する。しかし、フォーム形成の間に実際に重合を開始させ、フォーム形成の終了後に、それを完了させることもできる。本発明による第一段階で充分に重合していないフォームは、ある期間にわたって、例えば1時間まで、安定であり、従って、なんらの問題なくそれらを取り扱うことができる。
【0049】
まだ重合していないフォーム混合物は、例えば、特定用途に所望される付形体を製造するために、次の重合に好適な形にすることができる。発泡重合性水性混合物の付形において生じうる廃棄フォームは、工程に直接的に再循環させることができる。発泡重合性材料を、例えば、好ましくは付着防止被膜が与えられる一時担体材料に、所望の厚さで適用することができる。例えば、フォームを基材にナイフ塗布することができる。同様に付着防止被膜を有する鋳型に、重合性水性フォーム混合物を充填し、その中でフォームの重合を完了させることもできる。
【0050】
発泡重合性水性混合物は長い寿命を有するので、この混合物は、複合材料の製造にも適している。例えば、機械的生成後に製造された重合性フォームを、永久担体材料、例えば、ポリマーのフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリアミドのフィルム)または金属、ウェブ、毛羽、ティッシュー、織物、天然または合成繊維、または他のフォームに適用することができる。複合材料の製造において、ある条件下で、重合性フォームを、特定構造物の形で、または異なる層厚さで、担体材料に適用することが有利な場合もある。しかし、重合性フォームを毛羽層に適用し、それを浸み込ませることもでき、それによって、重合後に毛羽がポリマーフォームの一体成分となる。第一工程段階で得られる発泡重合性水性混合物を、大きいブロックに付形し重合させることもできる。重合後に、ブロックを、より小さい付形体にカットするかまたはのこ引きすることができる。サンドイッチ状構造物を製造することもでき、それは下記のように行なわれる:発泡重合性水性混合物を基材に適用し、フォーム層を、フィルム、ウェブ、ティッシュー、織物、繊維または他のフォーム(適切であれば、初めに使用した基材と異なる材料から成る)で被覆し、再びフォームを適用し、必要であれば、さらにフィルム、ウェブ、ティッシュー、織物、繊維または他のフォームで被覆する。次に、第二工程段階で、複合物を重合に付す。しかし、さらなるフォーム層を有するサンドイッチ状構造物を製造することもできる。
【0051】
本発明ポリマーフォームの製造法の第二段階において、発泡重合性水性混合物を重合させる。使用される開始剤により、温度の上昇、光の作用、電子線の照射、または温度の上昇と光の作用によって、重合を行なうことができる。発泡重合性水性混合物の温度を上昇させるために、工業において一般的なあらゆる方法を使用でき、例えば、フォームを加熱可能プレートと接触させるか、重合性フォームを赤外線に暴露するか、またはマイクロ波で加熱することができる。比較的厚いポリマーフォーム層、例えば、数センチメートルの厚さを有するフォームを製造する場合、本方法によって比較的均一な加熱が得られるためマイクロ波での重合性発泡材料の加熱が特に有利である。
【0052】
重合は、例えば20〜180℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度で行なわれる。
【0053】
発泡重合性材料への光の作用によって重合を開始する場合、あらゆる通常の照射系を使用することができ、但し、それらの発光スペクトルは、使用される光開始剤に適合されるものとする。重合を照射によって開始する場合、光開始剤と熱開始剤との組合せ、および/または熱開始剤としても作用しうる光開始剤、例えばアゾ開始剤を使用するのが有利である。重合の間の高い重合熱の結果として、フォームが有意に加熱されるので、この方法によって、実質的により速くより有効な重合反応の進行が達成される。光の作用による開始の場合、重合温度は0〜150℃、好ましくは10〜100℃である。
【0054】
本発明の方法の重要な利点は、発泡重合性水性混合物の構造を実質的に保持して重合が進む、即ち、重合性フォームが重合の間にその体積を少ししか変化させないことであると考えられる。重合反応は、開始温度、開始方法または熱の除去によって影響を受ける。重合温度は、好ましくは、重合性水性混合物の沸騰を防止するように調節される。重合が進むと共に、増加するゲル形成によってポリマーフォームの凝固が生じる。重合が終了した後、ヒドロゲルフォームが存在し、これは30〜80質量%の含水量を有する。該方法によって、連続気泡または独立気泡ポリマーフォームを製造することができる。
【0055】
高吸収性物質としての重合フォームの使用のために、1〜45質量%、好ましくは15〜35質量%の残留水分含量が望ましい。従って、通常、重合で得られるヒドロゲルフォームを乾燥させる。軟質ポリマーフォームを得るために、フォームはある程度の残留水分含量を有する必要がある。含水量は、製造されたフォームの密度に有意に依存する。密度が高いほど、より高い残留水分含量を与える必要がある。従って、おそらく上限35〜45質量%の水が極めて望ましいと考えられる。極めて高い固形分を有する混合物が重合され、極めて高い密度のポリマーフォームを生じる場合、必要な可撓性を得るために、重合後に、ポリマーフォームを加湿することが必要な場合もある。
【0056】
ポリマーフォームは、あらゆる従来法、例えば、熱ガス流での加熱、減圧の適用、赤外線照射、またはマイクロ波放射での加熱によって、乾燥させることができる。ここでも、マイクロ波放射が、大体積の付形体の乾燥に有利であることが見出される。
【0057】
本発明の方法の後に、比較的硬質かつ脆性の、主にまたは少なくとも部分的に連続気泡のフォームが一般に得られる。特に極めて速い重合の場合に、反応条件を調節することによって、独立気泡フォームを製造することができる。
【0058】
しかし、多くの用途において、軟質のフォームが必要とされる。しかし、最初に得られる比較的硬質かつ脆性のポリマーフォームを、軟化させることができる。これは、外部可塑剤を使用するか、または内部軟化によって、行なうことができる。
【0059】
外部可塑剤は、ゲル生成成分の他に、発泡前に反応混合物に添加されるか、または後にポリマーフォームに適用される成分である。有用な可塑剤は、例えば、親水性および吸湿性物質である。外部軟化は、主に、特定の残留含水量の制御設定によって達成される。さらに、軟化は、例えば、ポリオール、例えばグリセロール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、または陽イオン乳化剤の使用によって、向上させることができる。好適な陽イオン乳化剤は、例えば、下記の物質である:オレイルアミン1molとエチレンオキシド5〜10molとの硫酸ジメチル−四級化反応生成物、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、ならびに長鎖脂肪酸のエタノールアミンエステル、例えば、ステアリン酸ジエタノールアミンエステル、ステアリン酸モノエタノールアミンエステル、およびステアリン酸トリエタノールアミンエステル(これを外部可塑剤として使用するのが好ましい)。
【0060】
ポリマーフォームの内部軟化は、ゲル構造に組み込まれる可塑化成分の使用を意味するものと理解される。該成分は、それ自身、不飽和基を有し、重合性水性混合物中のモノマーとして重合に存在し、ゲル構造に組み込まれるかまたはゲル生成物質と反応する物質であってよい。内部可塑剤は、ポリマーフォームを構成するポリマーのガラス転移温度の低下をもたらすことを目的とする。好適な内部可塑剤は、例えば、オレフィン、エチレン性不飽和C3〜C5カルボン酸および一価C2〜C30アルコールのエステル、またはモノエチレン性不飽和C3〜C5カルボン酸のポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールモノエステルである。内部軟化のために、好適なモノマーは、モノマー(a)と共に形成されるコポリマーのガラス転移温度を低下させるモノマー(b)であり、例えば、少なくとも4個の炭素原子を含んで成る飽和カルボン酸のビニルエステル、アルキル基に少なくとも2個の炭素原子を有するアルキルビニルエーテル、ビニルラクタム、およびアルキル置換スチレン、例えばエチルスチレンである。
【0061】
ポリマーフォームの架橋度は後に調節することが望ましい場合がある。これを行なうために、例えば、好適なモノマーの添加によって重合の間に潜在架橋部位をゲルに組み込むことができ、該好適モノマーは、ポリマーフォーム製造条件下に架橋反応を生じないが、後に使用しうる特定条件下に、例えば有意に高い温度によって、ゲル構造に付加的架橋点を形成することができる。そのようなモノマーの例は、ヒドロキシル基を含んで成り、高温、即ち150℃より高い温度で、ポリマーフォーム構造中のカルボキシル基と反応することができる化合物の導入であってよい。潜在架橋部位を有する好適な化合物は、例えば、下記の化合物である:ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールのモノアクリレート、少なくとも2個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールのモノアクリレートまたはモノメタクリレート、少なくとも2個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコールのモノアクリレートまたはモノメタクリレート、および多価アルコールのモノメタクリレート、例えば、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはグリセリルモノメタクリレート。
【0062】
均一後架橋の他の手段は、架橋試薬(即ち、好適条件下に、例えば、70℃より高い温度に加熱した場合に、ヒドロゲルフォームの酸基と反応することができる少なくとも2個の反応性基を有する化合物)の後続添加である。この場合、架橋剤の透過度によって調節して、不均一架橋密度の修正を行なうこともできる。好適な架橋剤は、ポリマーマトリックスのカルボシル基との共有結合またはイオン結合を形成する。好適な架橋剤は、同種または異種の少なくとも2個の官能基、例えば、ヒドロキシル、アミノ、第四アンモニウム、イソシアナト、エポキシ、アジリジノ、エステルまたはアミド基を有する化合物である。好ましい後架橋剤は、ポリアルコール、例えばグリセロール、またはビスエポキシドである。架橋剤は、例えば、吹付、浸漬、または気相蒸着によって、発泡材料に適用することができる。
【0063】
本発明のポリマーフォームは、例えば0.001〜1.8g/cm3、好ましくは0.005〜1g/cm3の密度を有する。ポリマーフォームの密度は、重量分析的に求められる。例えば鋭利ナイフを使用して、3〜5cmの所定の厚さを有する均一ポリマーフォーム層から、一辺5cmの正方形をカットする。これらの試料の重さを量り、得られた重さを、寸法から算出した体積で割る。
【0064】
ポリマーフォームから抽出可能な部分を測定するために、乾燥し粉砕したポリマーフォーム試料を、0.9質量%の塩化ナトリウム溶液に分散させ、分散物を1時間撹拌する。次に、フォーム物質を濾過し、抽出された部分の量を濾液中で滴定法によって求める。
【0065】
ポリマーフォーム1gのポリマーフォームの吸水力を、厚さ3mm、各1gのポリマーフォーム片について測定する。この場合、いわゆるティーバッグ試験によって保持力を試験する。この場合に使用される液体は、0.9%の塩化ナトリウム溶液である。フォーム物質1gをティーバッグに入れ、次に、封をする。次に、ティーバッグを所定時間にわたって液体に浸し、10分間したたらせた後、再び重さを量る。吸収力の算出のためにブランク試験を行ない、該試験において、ポリマーフォームを含有しないティーバッグを溶液に浸し、前記のように10分間したたらせた後に、ティーバッグの重さを測定する。次に、吸収力を下記の関係式から算出する:
吸収力=ポリマーフォーム含有ティーバッグの重さ−ブランク試験のティーバッグの重さ/ポリマーフォームの初期重さ。
【0066】
保持力は次のように算出される:
前記と同じ手順であるが、ティーバッグをしたたらす代わりに、遠心器において250gの加速度で3分間回転させる。
保持力=回転後のティーバッグの重さ−ブランク試験のティーバッグの重さ/ポリマーフォームの初期重さ。
【0067】
均一に3mmの厚さのポリマーフォーム層から1gの重さの長方形試料を鋭利ナイフでカットすることによって、吸収速度(以下にASと称す)を測定した。これらの試料を、ペトリ皿において20gの試験液で覆った。ストップウォッチを使用して、ポリマーフォームが試験液を完全に吸収するのに要した時間を測定した。吸収速度(AS)(g/g−秒)を下記のように算出した:
AS=20g/[lg*測定時間(秒)]。
【0068】
さらに、この試験において、液体吸収の均一性を、6等級の尺度で評価する。等級1〜6は下記の意味を有する:
1. ポリマーフォームが、開始時から均一に膨潤する;
2. ポリマーフォームが、数秒後に均一に膨潤する;
3. ポリマーフォームが、30秒後に均一に膨潤する;
4. ポリマーフォームが、全時間にわたって不均一に膨潤するが、小部分のみが作用を受ける;
5. ポリマーフォームが、全時間にわたって不均一に膨潤するが、有意部分が作用を受ける。
6. ポリマーフォームが、全時間にわたって表面のみで膨潤する。
【0069】
試験液の配合:
下記の塩を蒸留水1リットルに溶解させる:
2.00g KCl
2.00g Na2SO4
0.85g NH42PO4
0.15g (NH42HPO4
0.19g CaCl2
0.23g MgCl2
使用される塩は無水でなければならない。
【0070】
膨潤状態のポリマーフォームの安定性:
前記試験で得た試料を使用して、充分に膨潤した物質の安定性を、4等級の尺度で評価した。等級1〜4は下記を意味する:
1. ポリマーフォームを、ペトリ皿から非損傷で除去することができ、裂けることなく180°曲げることができる;
2. ポリマーフォームを、ペトリ皿から非損傷で除去することができる;
3. ポリマーフォームが、ペトリ皿から除去する際に裂ける。
4. ポリマーフォームが、分解して、非凝集性ゲル塊を生じる。
【0071】
前記の吸水性ポリマーフォームを、文献に記載のポリマーフォームが使用されている全ての目的に使用できる。それらは、例えば、体液の吸着および創傷を覆う包帯材料に使用される衛生物品に使用される。それらは、例えば、おむつ、生理用ナプキンおよび失禁用品における吸水成分として、好適である。それらは、複合材料の形態で使用することができる。ポリマーフォームは、シーラント材料、土壌改良剤、土壌補充物および包装材料として使用することもできる。ポリマーフォームを含んで成る物品の特定形態は、例えば、WO−A−94/22502に包括的に記載されている。ポリマーフォームは、スラッジの脱水、水性被覆剤の増粘にも好適であり、該増粘は、例えば、残留量の未使用水性被覆剤または塗料の処分のために、例えば、水性被覆剤残留物に粉末状ポリマーフォームを凝固が生じるまで添加することによって行なわれる。ポリマーフォームは、含水油を脱水するのにも使用できる。それらは、例えば、平均粒径150μm〜5mmを有する粉末形態で前記用途に使用することができる。
【0072】
前記フォームは、それらの特性により、体液の保存において、衛生物品中で下記のような種々の機能を果たすことができる:
−採取;
−分散および/または;
−保存。
【0073】
体液の保存は、フォームによって充分に行なうことができるが、付加的成分、例えば、高軟質不織布、ポリプロピレンウェブ、ポリエステルウェブまたは化学的改質パルプを、適切であれば、採取および分散機能用のフォーム上の層として支持的役割に使用しうる。
【0074】
以下の実施例におけるパーセンテージは、文脈から他に明らかでない限り、質量パーセントを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】溶液Lの供給路2および3、およびガスGの供給路4を有するブロック1、溶液およびガスGの混合通路MK、および出口通路Kから成る対応する反応器を示す。
【0076】
実施例:
下記の流れを、550μmの出口通路直径を有する図1の微小流体反応器に導入する:
L1:溶液L1:2〜3.3mL/分
L2:溶液L2:2〜3.3mL/分
G:ガス:0.4mL/分。
【0077】
使用したガスは、空気または窒素であった。
【0078】
溶液L1およびL2の組成を、下記の第1表に示す:
【表1】

【0079】
液体L1およびL2が接触するとすぐに、重合が開始した。同時に、供給されたガスGの気泡が、出口通路Kにおける流れの中に形成され、分散し、溶液L1およびL2ならびにそれらの反応生成物によって囲まれた。反応器の出口から、既に部分的に重合したフォームが出てきた。このフォームを下記の条件下に完全に重合させた:
温度:20℃
時間:30〜60秒。
【0080】
完成フォームは下記のパラメーターを有していた:
構造:気泡の密充填(六角最高密度充填)
形態:大部分が連続気泡フォーム
比表面積:1.5x1042/m3
吸収力:15g/g。
【0081】
得られるフォームは、その特性により、体液の吸収に使用できる。それは、特に、創傷を覆う包帯材料、シーラント材料、土壌改良剤、土壌補充物および包装材料として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
1.少なくとも1つの重合性化合物および溶媒Lを含んで成る溶液L1、ならびに場合により、重合性化合物およびL1の溶媒と同じかまたは異なる溶媒を含んで成る少なくとも1つの溶液L2を、
2.使用される溶媒に不溶性の、又は部分的にのみ溶解性の、1つ又は1つより多いガスGと、
接触させ、前記溶液のうち少なくとも1つは、乳化剤または他の助剤を含んで成り、
ガスGを気泡として囲む溶液による通路および/または壁の発生の結果として、フォームを形成し、
3.次の工程段階において重合させる、
工程によって行なわれるポリマーフォームの製造法において、前記溶液およびガスGを微小流体法条件下に接触させて、ガスGの気泡を発生させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
使用される重合性化合物が、モノエチレン性不飽和モノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液およびガスGを、マイクロリアクターの出口通路Kにおいて接触させ、ガスGおよび前記溶液が、出口通路K内で共通の流れ方向に進むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用されるガスGが、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、六フッ化硫黄、ハロゲン化炭化水素またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が、各場合に、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノマー、架橋剤、開始剤および乳化剤を含んで成ることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶媒が、水である、または水を含んで成ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(a)使用される重合性化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、またはそれらの混合物であり、
(b)使用される架橋剤が、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレートまたはそれらの混合物である、
ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用される架橋剤が、少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基および少なくとも1個の他の官能基を有する化合物、少なくとも2個の官能基を有する化合物、多価金属イオン、または多官能性塩基であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
重合性化合物の重合が、遊離基に分解する化合物、高エネルギー放射線、昇温またはレドックス触媒によって開始されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
出口通路Kの直径が10マイクロメートル〜1000マイクロメートルであり、出口通路K1つあたりの内容積が10-5mm3〜1cm3であり、出口通路の長さがその直径の数倍に相当することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
狭い気泡大きさ分布、および1000m2/m3より大きい表面積対体積比によって特徴付けられていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法によって得られるポリマーフォーム。
【請求項12】
体液の吸収に使用される衛生用品、創傷を覆う包帯材料、シーリング材料、土壌改質剤、土壌補充物および包装材料としての、請求項1から11までのいずれか1項により得られるポリマーフォームの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−519381(P2011−519381A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501230(P2011−501230)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053575
【国際公開番号】WO2009/118373
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(510256816)
【Fターム(参考)】