ポリマー及びパッセンジャー薬のミセル組成物
疎水性薬は、溶解度を高めるためにミセル組成物中にカプセル化されることによって、治療のためにより実際的になる。ミセル組成物は、賦形剤トコフェロール及び/又は薬物のプロドラッグ製剤を含んでよい。ミセルは、薬物循環時間、ひいては薬物送達を改善するために、薬物がミセル中に残る時間を長くする。ミセルのカプセル化のための疎水性薬は、ラパマイシン、ゲルダナマイシン、及びパクリタキセルを含んでよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年4月12日付けで出願された米国特許仮出願第60/670,460号明細書、及び2005年9月9日付けで出願された米国特許仮出願第60/716,000号明細書の優先権を主張する。これらを参考のため本明細書中に引用する。
【0002】
本発明は、許可番号AI043346で国立衛生研究所(National Institutes of Health (NIH))によって認定された合衆国政府支援とともに行われた。従って、合衆国は本発明における所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
1. 発明の分野
本発明は概ね、ミセル組成物、ミセルの製造方法、及び疾患の治療のための薬物を有するミセル組成物の使用に関する。
【0004】
2. 従来技術の説明
癌は致死率が極めて高い病気である。癌を根絶し、且つ/又は癌の広がりを防止するために、種々の細胞毒性化学療法薬が使用されている。アルキル化剤、例えばシスプラチン及びクロラムブシルは、細胞分裂を防止するためにDNAを架橋する。抗腫瘍抗生物質、例えばダクチノマイシン及びブレオマイシンは、DNAと結合し、ひいてはDNA分離及びmRNA合成を防止する。代謝拮抗物質、例えばプリン及びピリミジン拮抗薬、及び5-フルオロウラシルは、細胞栄養を模倣し、そして通常のDNA合成を防止することが可能である。植物アルカロイド、例えばパクリタキセル及びビンブラスチンは、微小管形成を阻止することにより細胞分裂を阻止する。トポイソメラーゼ阻害薬、例えばカンプトセシン、トポテカン、及びイリノテカンは、DNAスーパーコイル化を阻害し、そして転写及び複製を阻止する。癌のような疾患を治療するのに潜在的に効果的な多くの薬物の溶解度は弱く、このことはこれらの有用性を限定する。
【0005】
ラパマイシンは、化学療法、免疫抑制、抗再狭窄、真菌感染、及び神経障害における用途を有する大型の高疎水性化合物である。抗癌剤としてのラパマイシンは、一般に、素早く加水分解されて赤血球内に隔離されるエステル類似体として形成され、これにより、腫瘍部位におけるラパマイシンの効果を低減する。ラパマイシンは、腎臓移植患者のための免疫抑制剤Rapamune(Wyeth-Ayerst)として現在使用されており、そして長期臨床安全性を示している。しかしながら、ラパマイシンは難水溶性薬物であり、患者における薬物投与を難しくする。
【0006】
ゲルダナマイシンも、癌の治療を含む用途を有する疎水性化合物である。ゲルダナマイシンは抗癌用途及び神経障害疾患用途を有する熱ショックタンパク質阻害薬として知られる新しい化合物クラスの一員である。作用様式は、熱ショックタンパク質(Hsp90)を阻害し、Hsp90(Kd = 1.2 μM)に強く結合し、そして下流成分との相互作用を防止することによる。Hsp90は、数多くのクライアント・タンパク質の折り畳み、安定性、及び機能に関与する分子シャペロンである。Hsp 90の阻害は、多くの発癌性クライアント・タンパク質の不安定化、及びその結果としてのユビキチン化をもたらす。複数の発癌性タンパク質を標的にすることによって、ゲルダナマイシンは、広範囲の腫瘍に対して効果的であることが可能であり、また薬物耐性を克服するチャンスを高めることができる。加えて、Hsp 90の阻害は、Hsp 70の上方調節をもたらし、この上方調節は、アルツハイマー病及びパーキンソン病における斑状沈着物の主要成分である異常タウ種の形成を低減する。
【0007】
パクリタキセルは、癌の治療を含む用途を有する別の疎水性化合物である。パクリタキセルは、細胞の成長を阻害する抗新生物薬と呼ばれる薬群に属する。この阻害は、チューブリンのベータ・サブユニットに結合することにより微小管機能を妨害することにより達成される。妨害された微小管は、例えば細胞複製中の染色体移動に際して必要な機能である分解能力を失う。加えて、パクリタキセルは、Bcl-2と呼ばれるアポトーシス停止タンパク質に結合し、そしてその機能を停止させることにより、プログラムされた細胞の死であるアポトーシスを誘発することが、研究において示されている。
【0008】
難溶性化合物を可溶化するための種々の技術、例えばエマルジョン、リポソーム、又はミセルの形成が存在し、これらの全ては多数の相を有することができ、これらのいくつかは不安定であるおそれがあり、また分離する傾向があり得る。
【0009】
このような困難な薬物を調製するために、ブロック・コポリマーを使用した両親媒性ポリマー(ABC)に基づくミセル系が使用されている。疎水性ブロック、例えばポリ(プロピレングリコール)と親水性ブロック、例えばポリエチレングリコール(PEG)とから成るABCは、選択的な溶媒中で、ミクロ相分離型コア/シェル・アーキテクチャに集成することができる。PEG-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-PCL)及びPEG-ポリ(アミノ酸)が、これらの高分子ミセルを形成することができる。
【0010】
或いは、これらの高分子ミセルを形成するために、リン脂質、例えばPEG-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)を使用することができる。水性環境において、疎水性薬はミセルの疎水性コア内にカプセル化し、そしてポリエチレングリコール(PEG)及びコロナ(シェル)によって提供された水溶性を有することができる。ミセルは、それらのナノスケール寸法、及びPEGコロナによって付与されたステルス特性により、長期循環能力を有することができる。循環期間中、ミセルは薬物を徐々に放出し、最終的には解離し、そして循環から排除することができる。
【0011】
難溶性化合物を可溶化するために、賦形剤及び共賦形剤が使用されている。ビタミンE又は単にトコフェロールとして一般に知られているアルファ-トコフェロールが、多くの難溶性薬に共通したその環及びアルキル鎖構造により、賦形剤として使用されている。ビタミンEは生体に対して毒性ではない。加えて、トコフェロールは生体膜を安定化する。しかし、トコフェロールは水中に可溶性ではなく、従って、静脈注射用溶液における有用性が限定されている。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、疎水性賦形剤と、疎水性パッセンジャー薬とを含んでよい。1つの観点において、両親媒性ポリマーはPEG-DSPEである。別の観点において、賦形剤はトコフェロールである。さらに別の観点において、PEG-DSPEに対するトコフェロールの比は、約0.1-約3である。
【0013】
1つの観点において、ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、ラパマイシンとを含む。別の観点において、ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、ラパマイシンと、トコフェロールとを有してよい。さらに別の観点において、PEG-DSPEの濃度は約1-約10 mMであり、そしてトコフェロールの濃度は約2-約20 mMであってよく、そしてラパマイシンの濃度は約0.1-1.0 mg/mlであってよい。
【0014】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、ゲルダナマイシンとを含んでよい。ゲルダナマイシンは、疎水特性が高められたゲルダナマイシン・プロドラッグであってよい。
【0015】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、パクリタキセルとを含んでよい。パクリタキセルは、疎水特性が高められたパクリタキセル・プロドラッグであってよい。
【0016】
ミセル組成物の形成方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性薬を、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し、実質的に無溶媒の混合物を残すために、溶液から有機溶媒の実質的に全てを除去し、そして、無溶媒混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含むことができる。方法は、実質的に無溶媒の混合物を残すために前記溶液から前記有機溶媒の実質的に全てを除去する前に、前記溶液を実質的に水溶液に添加することを含むこともできる。
【0017】
疎水性薬のミセル・カプセル化効率を改善する方法、及びその結果形成されるプロドラッグ組成物が提供される。別の観点において、カプセル化のためのゲルダナマイシン・プロドラッグの形成方法が提供される。さらに別の観点において、カプセル化のためのパクリタキセル・プロドラッグの形成方法が提供される。
【0018】
ヒト又は動物における疾患又は症状の治療方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性パッセンジャー薬を含むミセル組成物の有効量を投与することを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明によれば、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性パッセンジャー薬は、ミセル組成物を形成することができる。これらの組成物の形成方法も、本発明の範囲の一部である。加えて、これらのミセルを利用する、疾患又は症状の治療方法も本発明の範囲の一部である。トコフェロールが組入れられたミセルは、ミセルの薬物ローディング能力を高め、そしてin vivo状態中のミセル安定性を高めることができる。ラマパイシンは、種々の固形腫瘍を含む多くの腫瘍異種移植片モデルに対するナノモル範囲の印象的な活性を示す薬物である。本発明の態様において、ラパマイシンの低溶解度は、標的腫瘍部位への送達のためにミセル組成物内にラパマイシンを組入れることにより克服することができる。
【0020】
1.0 ミセル
非イオン性界面活性剤、例えばCremophor EL及びTween 80は、癌治療の静脈内投与のために使用することができる。図1に示されているように、ミセルは、コア-シェル形態を有する超分子構造である。ミセルの形成は、エントロピーで駆動される。図2を参照されたい。水分子がバルク相内に排除される。ΔG0mic = RTln(CMC)がミセルの形成を特徴付ける。臨界ミセル濃度(CMC)を上回ると、両親媒性ユニマーが凝集して構造化ミセルになる。高分子ミセルは球形であり、そして、典型的には200-100 nmの範囲のナノスケールの寸法を有することができる。このことは、脾臓において内皮間細胞スリットによる濾過を回避するために、循環粒子が約200 nm未満であるべきであるため、有利である。高分子ミセルは、長期にわたって血液中を循環することが判っており、そして難水溶性化合物を、標的を定めた状態で送達することができる。解離時には、ミセルユニマーは典型的には<50,000 g/molであり、腎臓による排除を可能にする。理想的には、このことは、蓄積症をもたらすおそれのある肝臓内のミセル成分の蓄積が生じない長時間の循環を可能にする。
【0021】
1.1 両親媒性ポリマー
難水溶性薬物をカプセル化することができるポリマーは、ペギル化リン脂質及びペギル化ポリ-ε-カプロラクトンを含む。これらのポリマーは、広範囲の化合物のための高い生体適合性及び可溶化能力を示す。共賦形剤、例えばα-トコフェロールが、これらのポリマーから形成されたミセルの薬物ローディング能力を実質的に高めることができ、また、以前には既存の高分子キャリヤとは適合しないか、又は既存の高分子キャリヤによる可溶化が僅かにしか得られないと考えられていた潜在的薬物候補の可溶化を可能にする。
【0022】
両親媒性ポリマーは、典型的には親水性ドメイン、例えばポリエチレングリコール(PEG)、及び疎水性ドメイン、例えばポリ(プロピレングリコール)、ポリ(L-アミノ酸)、ポリ(エステル)、及びリン脂質から構成されている。これらのポリマーは集成して、高分子ミセル、すなわち、小さな疎水性化合物をカプセル化することができる疎水性内部と、親水性外部とを有する高次超分子コア-シェル構造になることができる。図3に示されているようにミセルコアは、低い極性を有しており、そして疎水性環境である。疎水性化合物のための高いコア・キャパシティが存在する。最大約4 :1の薬物:ポリマーのローディングが可能である。ミセルコアの溶解度は、約30,000倍まで増大することができる。ミセルコロナは親水性である。
【0023】
高分子ミセルは、長時間にわたって血液中を循環することが判っており、そして難水溶性化合物を、標的を定めた状態で送達することができる。例1は、ドキソルビシンやパクリタキセルのような薬物をミセル内にカプセル化して、腫瘍をその標的とすることを示している。
【0024】
ミセル組成物の鍵となる利点は、貯蔵及び送達のし易さを含み、組成物は凍結乾燥して、静脈内投与前に戻すことができる。このことは薬物が沈澱して塞栓症を引き起こすリスクを低くする。ミセル組成物は、長時間の血液循環、低い単核食細胞取込み量、及び低レベルの腎排泄が可能である。また、腫瘍に達する化学療法の見込みを高めるために、ミセル組成物は、高められた浸透性及び保持性(EPR)を有する。図4に示されているように、腫瘍は高い脈管密度、並びに欠陥のある脈管構造を有しているので、高い管外溢出が発生する。損なわれたリンパ・クリアランスがある場合がある。エンドサイトーシス及びこれに続く薬物放出は、腫瘍に対する化学療法の効果を高める。
【0025】
初期の研究は、薬物可溶化のためにPEG-DSPE (図5)、及びブロック・コポリマー、及びPEG-PCL(図6)に焦点を当てた。PEG-DSPEは、両化学療法薬のための安全且つ効果的なミセルキャリヤであり得る。PEG-PCLは生分解性であり、そして生体適合性を有し得る。
【0026】
中性PEG-DSPE膜と負荷電PEG-DSPE膜との主要な違いは、2つの荷電膜間の静電力である。膜電荷は、荷電膜及び中性膜上の、酸性及び塩基性のタンパク質の吸着作用に影響を及ぼす。このことは、種々のタンパク質と二層との相互作用を変化させ得る。これらの違いは、荷電リポソームに対する中性リポソームのオプソニン化及びファゴサイトーシスの違いに関連することがある。PEG-DSPEの疎水性頭部におけるリン酸基は、静電反発力に起因して、コア-水界面におけるPEG-DSPEの緊密さに影響を及ぼし得る。またこの荷電された性質は、タンパク質がPEGコロナに浸透する場合には、疎水性コアとのタンパク質相互作用に影響を与え得る。リン脂質頭部基間にトコフェロール(図7)が挟まっているのが示されており、トコフェロール頭部の環構造はさらに、タンパク質の浸透及び相互作用を防止することができる。図8を参照されたい。また、トコフェロール頭部基及びヒドロキシル基は、抗酸化剤として作用することが示されており、リン脂質層のタンパク質崩壊を防止することができる。PEG-b-PCLは生体適合性であり、また生分解性であってよい。PEG-b-PCLは、低い臨界ミセル濃度(CMC)を有することができる。PEG:PCL比が約5:6であると、約0.5 μMを下回るCMCを有することができる。PEG-PCLは、剛性コア構造を有することができ、またアルブミンの存在において安定であることができる。
【0027】
高分子ミセル組成物は、標的薬物化合物と、キャリヤの疎水性コアとの構造的な関係に強く依存して選択することができる。トコフェロールを使用することにより、さもなければ研究のミセルにおいて難溶性の薬物のより高いローディング率をもたらすように、ミセルのコア特性を改質することもできる。
【0028】
2.0 パッセンジャー化合物
本発明によれば、薬物は、ポリマーキャリヤ中のパッセンジャー化合物であってよい。このような薬物は:ラパマイシン(図9)、ゲルダナマイシン(図10)、及びパクリタキセル(図11)を含む。これらの薬物は、独自の作用標的を有する強力な小分子化学療法薬である。これらの化合物の研究、及び臨床製品の開発が、これらの極めて低い水溶性、例えばラパマイシン〜2.6 μg/ml、及びゲルダナマイシン〜1.5 μg/mlによって阻まれている。上記高分子化合物の組合わせを使用し、そしてミセル構造中へトコフェロールを一体化することによって、約5mg/mlまでのラパマイシン(1900倍の溶解度増大)、及び約500 μg/mlまでのゲルダナマイシン(300倍の溶解度増大)を組入れた、これらの化合物の安定なミセル溶液が達成された。加えて、ゲルダナマイシン及びパクリタキセルのプロドラッグを使用すると、溶解度が著しく高められる。
【0029】
化学療法薬としてのこれらの化合物に対する期待はさらに、in vitro及びin vivo腫瘍モデルを用いた更なる評価に値する。リン脂質及びポリカプロラクトン/トコフェロール系を使用したこれらの化合物の調製の成功は、他の難溶性薬物化合物への適用を調査することに値する。
【0030】
高分子ミセルキャリヤは、標的薬物化合物とキャリヤの疎水性コアとの構造的な関係に強く依存して選択することができる。3 %(w/w)未満のパクリタキセルをPEG-PCLミセル中にローディングすることができる。しかし、PEG-ポリ(D,L-ラクチド)ミセルのローディング能力は、>20%(w/w)である。従って、高分子ミセルキャリヤの条件が、所望のパッセンジャー化合物をローディングするために最適化されなければならない。
【0031】
2.1 ラパマイシン
これらの化合物、特にラパマイシンを、補助溶媒、例えばエタノール又はポリエチレングリコールの使用なしに静脈内送達するために調製すると、これらの化合物の治療上の使用が可能になる。ミセルキャリヤの使用は、化学的な改質なしに、この薬剤の治療投与量の送達を可能にする。加えて、ミセル送達は、EPR効果を介した腫瘍の標的治療を可能にし、免疫抑制の可能性、遊離ラパマイシン及びその水溶性誘導体の副作用を低減する。
【0032】
ラパマイシン(図9)は、化学療法、免疫抑制、抗再狭窄、真菌感染、及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びハンチントン病における用途を有する大型の高疎水性化合物である。ラパマイシンは独自の作用標的を有し、イムノフィリンFKBP12と結合し、そしてラパマイシン(mTOR)経路の哺乳動物標的を阻害し、これにより、細胞周期G1からS相への転移を妨げる。ラパマイシンは、リンパ性白血病、黒色癌、上衣芽細胞、及び10-8Mの典型的なIC50を有する種々の固形腫瘍を含む広範囲のヒト腫瘍異種移植片モデルに対する印象的な活性を示している。
【0033】
新規のメカニズムは、ラパマイシンがmTOR成長調節因子を阻害し、G1からS相への転移を防止し、そしてNF-kBを阻害し、そしてアポトーシスを増強する、FK506-12に結合するラパマイシンを有することができる。
【0034】
残念ながら、ラパマイシンは実際には水不溶性(〜2.6 μg/ml)であり、またイオン性基を有していない。EPR効果を用いた、腫瘍部位に対するラパマイシンの標的を定めた送達及び保持は、その効力を実質的に高める。加えて、標的を定めた送達は、免疫抑制を含むラパマイシン治療の副作用を緩和することができる。ラパマイシンの生来の疎水性質を保持することが、(水溶性を高めるための)改質が血液脳関門の交差を妨げ得る神経学的用途において重要な場合がある。
【0035】
高分子ミセルを使用して、十分に臨床的実現可能性のために必要となる範囲内で、ラパマイシンを大量に可溶化することができる。ラパマイシンは、トコフェロールの添加とともに、PEG-PCL及びPEG-DSPEミセルを使用して可溶化されている。結果を例2に要約する。
【0036】
2.2 ゲルダナマイシン
ゲルダナマイシン(図10)は、抗癌用途及び神経障害疾患用途の両方を有する熱ショック・タンパク質阻害薬として知られる新しい化合物クラスの一員である。作用様式は、熱ショック・タンパク質90(Hsp90)を阻害し、Hsp90(Kd = 1.2 μM)に強く結合し、そして下流成分との相互作用を防止することである。このことは、広範囲の発癌性クライアント・タンパク質のユビキチン化、及びこれに続く分解をもたらす。
【0037】
Hsp90阻害剤は、種々異なる経路を誘発することにより、薬物耐性癌において、例えばラパマイシン耐性腫瘍において有用であり得る。Hsp90阻害剤、例えばゲルダナマイシンに対する期待にもかからわず、これらの治療薬の臨床的進展は、好適な製剤法がないことにより停滞している。Hsp90阻害剤であるラジシコールもin vivoで不安定である。ゲルダナマイシンは著しく難水溶性であり、またin vivoで肝毒性である(MTDイヌ<100 mg/m2)。ゲルダナマイシン・プロドラッグ、例えば17-AAGは、僅かにより良好な溶解度と、より低い肝毒性(MTDイヌ500 mg/m2)を有してはいるが、しかし、調製するのがまだ難しく、毒性賦形剤、例えばCremaphor、Tween 80、及びDMSOを必要とする。ゲルダナマイシンの水溶性プロドラッグ、例えば17DMAG(MTDイヌ8 mg/m2)は、これらの調製上の問題を回避することができるが、しかしこれらのプロドラッグの広い生体内分布、及び増大する毒性が、付加的な難しさをもたらすことがある。
【0038】
臨床用の製剤のためには、少なくとも約1 mg/mlの溶解度が望ましい。I期の結果、GI毒性が17-AGGの投与量を制限することが判っており、これとともに、40 mg/m2のII期投与量が示唆されている。前臨床試験は、深刻な肝毒性が、親化合物であるゲルダナマイシンの投与量を制限すること(4 mg/kg)を見いだした。
【0039】
複数の発癌性タンパク質を標的にすることによって、ゲルダナマイシンは、広範囲の腫瘍に対して効果的である見込みがあり、そして薬物耐性を克服するチャンスを高めることができる。加えて、Hsp 90の阻害は、Hsp 70の上方調節をもたらし、この上方調節は、アルツハイマー病及びパーキンソン病における斑沈着物の主要成分である異常タウ種の形成を低減する。
【0040】
ゲルダナマイシンの水溶性が極めて低い(〜1.5 μg/ml)ことにより、製剤は、種々の可溶性類似体、例えば17-AAGを使用している。ラパマイシンと同様に、腫瘍部位へのゲルダナマイシンの標的を定めた送達、及びEPR効果は、その効力を実質的に高めることを期待されている。加えて、循環時間の長期化及び肝臓内保持作用の低減が、肝毒性を劇的に低減するはずである。最後に、神経疾患における治療薬としてのゲルダナマイシンの生じ得る進歩は、血液脳関門の通過のために、可溶性類似体において減衰される親化合物の高疎水性の性質を必要とすることになる。
【0041】
2.3 パクリタキセル
パクリタキセルは、癌の治療を含む用途を有する別の疎水性化合物である。パクリタキセルは、細胞の成長を阻害する抗新生物薬と呼ばれる薬群に属する。この阻害は、チューブリンのベータ・サブユニットに結合することにより微小管機能を妨害することにより達成される。妨害された微小管は、例えば細胞複製中の染色体移動に際して必要な機能である分解能力を失う。加えて、パクリタキセルは、Bcl-2と呼ばれるアポトーシス停止タンパク質に結合し、そしてその機能を停止させることにより、プログラムされた細胞の死であるアポトーシスを誘発することが、研究において示されている。
【0042】
3.0 賦形剤
多成分賦形剤を、第2賦形剤又は補助溶媒と一緒に添加して難水溶性成分が薬物化合物を可溶化するような薬物製剤において使用することができる。高分子ミセルの可溶化能力及び安定性は、ミセルユニマーによって形成された疎水性ミセルコア及びローディングされた薬物の両方と高適合性を有する共賦形剤を含むことによって増強することができる。
【0043】
多成分賦形剤を、第2賦形剤又は補助溶媒、例えば安息香酸、酒石酸、及び水酸化ナトリウムを含有するリスペリドン経口製剤と一緒に添加して難水溶性成分が薬物化合物を可溶化するような薬物製剤において使用することができる。高分子ミセル組成物の可溶化能力及び安定性は、ミセルユニマーによって形成された疎水性ミセルコア及びローディングされた薬物の両方と高適合性を有する共賦形剤を含むことによって増強することができる。
【0044】
賦形剤は、好ましくは約3.5超の高いPo/wと、好ましくは1000Da未満の低い分子量とを有することができる。賦形剤は、生体適合性を改善することができ、そして、薬物-キャリヤ適合性を改善し、あるいは薬物ローディング量、及びキャリヤからの放出時間を増大させることができる。
【0045】
3.1 トコフェロール
最も一般的な異性体トコフェロールであるα-トコフェロールの環及びアルキル鎖構造(図7)は、多くの難溶性薬物に共通の構成要件であり、従って、トコフェロールは、薬物を調製するのが難しい多くのもののための賦形剤として長い歴史を有している。トコフェロールは、ミセル構造に対する改質剤であってもよい。PEG-DSPEミセル及びPEG-PCLミセルの薬物ローディング能力は、トコフェロールの添加によって著しく増強される。例2を参照されたい。
【0046】
トコフェロールを含むことにより、ミセルの安定性を増強することもできる。例えば、PEG-DSPEミセルは、最大約4 mg/mlのラパマイシンで形成することができるが、しかしミセルは素早く「クラッシュ」して、溶液から薬物を流出させる(典型的には<2時間)。トコフェロールが組入れられた同じミセルは、少なくとも数日間にわたって安定している。例3及び6を参照されたい。ミセル組成物内へのトコフェロールの組入れとともに臨界ミセル濃度は増大し、これによりミセル組成物の動的安定性を高める。図13を参照されたい。
【0047】
トコフェロールのフィトール鎖は、リン脂質アシル鎖間に挟まっている。相のトコフェロール:リン脂質比が0.2:1超の場合には、その相はトコフェロール豊富相である。図8は、PEG-DSPE鎖の間にトコフェロールが組入れられた状態を示している。トコフェロールの組入れの結果、分離したトコフェロール相を形成することになる。混合されたアシル及びフィトールの鎖の可動性は、トコフェロール組入れ後に減少する。ミセル組成物安定性に対するポリマーの動的な関与が存在する。コアが高粘度又は高剛性であるのに伴って、ミセルユニマー交換速度は遅くなる。コアの粘度又は剛性を低減することにより、パッセンジャー薬の拡散速度を高めることができる。
【0048】
図13は、コア剛性データを示す。PEG-DSPEに対するトコフェロールの比が増大するにつれて、コア剛性は一般に減少する。トコフェロールの添加によって影響を与えて、疎水性コアサイズを増大させることにより、薬物拡散速度を調節することができる。コアサイズが増大すると、薬物はより長い距離を移動することになるが、しかし、コアの粘度を低くすると、薬物がより速く移動するのが可能になる。トコフェロールと薬物との相互作用が最適化されないと、拡散が低速になるおそれがある。ミセル組成物内へのトコフェロール及び薬物の組入れは、ミセルのサイズに影響を及ぼし、ひいては腫瘍部位における管外溢出に影響を及ぼし得る。例9及び図14を参照されたい。図15に示されているように、PEG-DSPEミセルは、リン酸緩衝生理食塩水中で安定であるが、しかし、in vivo条件に近似する4%ウシ血清アルブミン中では不安定である。図16は、PEG-PCLが4%アルブミン血清中で安定であることを示している。図17に示されているように、トコフェロールが組入れられたPEG-DSPEミセル組成物(トコフェロール: PEG-DSPEの比が約2:1)が、約25時間にわたって4%ウシ血清アルブミン中で約60 %可溶化されたままで留まる。実施例6を参照されたい。
【0049】
実施例3に見られるように、臨界ミセル濃度(CMC)は、ミセル組成物中にトコフェロールを組入れることにより高くなる。ミセル組成物が10-6〜10-5 MのPEG-DSPEで形成される。PEG-DSPE:トコフェロール比、及びCMCに関する効果が実施例3に記載されている。
【0050】
図18に示されているように、トコフェロールが組入れられたミセル組成物のコア極性はまた、トコフェロールの比率とともに変化する。コア極性は、トコフェロールがより多く組入れられるのに伴って減少する。
【0051】
ラパマイシン及びトコフェロールは、両方とも著しく疎水性であり、そして同様の構造成分を有している。両方とも環構造及び長アルキル鎖を有している。両方とも、ミセル組成物内部の薬物組入れ安定性を高めることができる。
【0052】
図19に示されているように、ラパマイシン・ローディング効率は、PEG-DSPEに対するラパマイシンの全ての比におけるトコフェロールの組入れに伴って増大する。PEG-DSPEに対するトコフェロールの最も効果的な比は、約2及び約4であり、両方の比が、ローディング効率約25 %をもたらす。
【0053】
4.0 ミセル及び薬物の組入れの結果
トコフェロールは、PEG-DSPE及びPEG-PCLミセルの構造及び特性に対して効果を及ぼすことができる。手短に述べるならば、Lukyanov他の溶媒膜法(図20に要約)に従って、PEG-DSPE2000ミセルを調製した。この方法では、リン脂質、添加剤、及び薬物を有機溶媒中に溶解し、乾燥膜を生成するために蒸発させ、そして水を添加することによりミセルを形成した。次いで、組入れられていない薬物凝集体を除去するためにミセルを濾過及び/又は遠心分離し、そして薬物組入れを、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって検証した。このプロセスにおいて使用されるPEG-DSPE2000の濃度は、約1 mM-約20 mM、好ましくは約1.5 mM-約10 mM、そして最も好ましくは約5 mMであってよい。このプロセスにおいて使用されるトコフェロールの濃度は、約1 mM-約20 mM、好ましくは約2 mM-約15 mM、そしてより好ましくは約10 mMであってよい。有機溶媒中に溶解されたリン脂質、添加剤、及び薬物を、約50 rpm-約200 rpm、好ましくは約70 rpm-約150 rpm、そして最も好ましくは約100 rpmで回転させることができる。約1-約500 μbar、好ましくは約5-約200 μbar、そして最も好ましくは約10-約100 μbarで真空によって、溶媒を除去することができる。
【0054】
図21に記載されているように、混和性溶媒アセトン中に溶解された薬物及びPEG-PCLを、強力に撹拌された水に滴下状に添加し、続いて、N2パージ、及び0.2 μm濾過及び/又は遠心分離によって溶媒を除去することによって、PEG-PCLミセルも調製した。水に対する最終溶媒の比率は、約0.1-約5、好ましくは約0.5-約4、そしてより好ましくは約2である。ミセル溶液は、約2秒/液滴-約60秒/液滴、好ましくは約5秒/液滴-約30秒/液滴、そしてより好ましくは約10秒/液滴-約20秒/液滴の速度で送達されるべきである。
【0055】
図22に示されているように、溶媒膜法によるラパマイシン・ローディングのローディング効率は、約2:1のラパマイシンとPEG-DSPEとの比において、約30%-約50%、好ましくは約32%-約47%、そしてより好ましくは約40%であった。2:1の比におけるラパマイシンの重量%は、約10%-約40%、好ましくは約15%-約30%、そしてより好ましくは約20%である。
【0056】
図23に示されているように、ラパマイシンは、in vivo条件下の遊離薬物と比較して、ミセル組成物中にローディングされた場合、より長時間にわたって可溶化されたまま留まる。図24に示されているように、PEG-DSPEは、ヒト血清アルブミンの存在において不安定である。
【0057】
4.1 トコフェロールが組入れられたミセル組成物特性
トコフェロールは、ペギル化されていないDSPEミセルを用いた研究に基づいて予期されるPEG-DSPEのコア構造を変える。実施例3に示されているように、トコフェロールとPEG-DSPE2000とのモル比が最大2:1のミセルを添加すると、臨界ミセル濃度(CMC)が2.1 μMから28 μMへ高められるが、しかしこのCMC範囲は極めて安定なミセルをさらに示す。同様に、PEG-PCLミセルは、10:1及び20:1のトコフェロールとPEG-PCLユニマーとの比において極めて低いCMCを維持した。図18に示されているように、トコフェロール組入れは、コア極性を減少させ、そして親油性分子のローディング率を増大させることができる。
【0058】
トコフェロールの添加は、PEG-DSPEを用いて形成されたミセルのサイズを増大させなかった。このことは、アルキル鎖内へのトコフェロールの組入れ、及び疎水性コアの最小限の膨潤に起因し得る(実施例6)。しかしながら、PEG-PCLミセルは、トコフェロールの添加とともにサイズが増大した。図25に示されているように、トコフェロール組入れは、ミセル組成物のサイズに著しく影響を与えることはない。図14に示されているように、組入れ凝集体数の増加はまた、コアのサイズ増大を反映する。トコフェロールと脂質との比が0.5の場合、凝集体数の変化は統計学的に有意となる。このことは一部においては、PEG-PCLミセル中へのトコフェロールのローディング率がより大きいことに起因し得る。
【0059】
4.2 トコフェロール及びパッセンジャー薬物が組入れられたミセル特性
種々に変化するトコフェロール量を有するPEG-DSPE及びPEG-PCLミセル中に、ラパマイシン又はゲルダナマイシンをローディングすることができる。実施例1を参照されたい。図26に示されているように、PEG-DSPEミセル中にラパマイシンをローディングすることができる。ラパマイシンのローディング量は、PEG-DSPE及びPEG-PCLミセルにトコフェロールを添加することにより、約2-約7倍、好ましくは約4-約6倍、より好ましくは3倍増大させることができる。加えて、トコフェロールの不存在において、1-4時間後に沈澱を観察することができ、このことは、トコフェロールが、薬物をローディングされたPEG-DSPEミセルの安定性を高め得ることを示した。実施例10を参照されたい。トコフェロールは、PEG-DSPEミセル中へのゲルダナマイシンのローディング量を、約1-約4倍、好ましくは約1-約3倍、より好ましくは2倍増大させ、そしてPEG-PCLミセル中へのローディング量を、約7-約15倍、好ましくは約8-約12倍、より好ましくは10倍増大させた。
【0060】
人体は完全なシンクのようなものである。図27に示されているようにフィック拡散のためのCrankの溶液は、ミセル組成物からの薬物の拡散を特徴付ける。
【0061】
ゲルダナマイシン及びPEG-PCLの事例において最も劇的であった。トコフェロールの添加なしには、PEG-PCLは可溶化剤としては効果的でない場合がある。約0.2-約0.8 mg/ml、好ましくは約0.2-約0.8 mg/ml、好ましくは約0.4-約0.6 mg/ml、そしてより好ましくは約0.5 mg/mlの最大ローディング濃度を、1:20のPEG-PCL:トコフェロールで達成することができる。実施例11及び12を参照されたい。キャリヤ及び添加剤の更なる最適化を必要とすることができる。また、ミセル組成物製剤のEPR効果は、化学療法薬の投与量要件を低減することができる。
【0062】
図28に示されているように、トコフェロールは、ラパマイシンがリン酸緩衝溶液中に放出される時間を増大させるが、しかし著しく増大させることはない。図29において、トコフェロールは、ラパマイシンが4%ウシアルブミン溶液中に放出される時間の増大に対して有意な効果を有するものとして示されている。
【0063】
PEG-PCLミセル組成物は、トコフェロールが組入れられると、より多くのラパマイシンをローディングすることができる。図30を参照されたい。さらに、図31及び32に示されているように、PEG-PCLはラパマイシンを、リン酸緩衝食塩水及び4%ウシ血清溶液の両方の中により長時間にわたって可溶化されたままにする。
【0064】
初期の結果は、化学療法化合物のためのキャリヤとしてこれらのポリマーが有する潜在能力を示す。トコフェロールを伴う結果は、構造的に類似の添加剤が、薬物ローディング能力を著しく増大させることができることを示す。
【0065】
4.3 ミセル投与量
ミセル送達系を通したラパマイシンの投与量は、ラパマイシン類似体:CCI-779、RAD-001、及びAP-23573のための臨床試験において使用された投与量と類似していてよい。CCI-779のための投与量は、約7.5-220 mg/m2/週(静脈内)、2-3週間毎に約5日間にわたり約0.75-20 mg/m2/日(静脈内)、2週間毎に約5日間にわたり約25-100 mg/日(経口)である。RAD-001のための投与量は、約5-60 mg/週(経口)である。AP-23573のための投与量は、約6.0-100 mg/週(静脈内)、2週間毎に約5日間にわたり約3-30 mg/日(静脈内)である。これらの投与量は、ラパマイシンが約1-4 mg/mlで可溶化されるものとすると、PEG-b-PCLミセルによって容易に達成されるはずである。PEG-b-PCLミセル中のラパマイシンの含有率は、ポリマー重量を基準として約10-20重量%の薬物である。PEG-b-PCLミセルは、少なくとも約40 mg/mlに達することができる。
【0066】
ゲルダナマイシン・プロドラッグの投与量は、約1-7 mg/mlで約100-1000 mg/m2、好ましくは約2-6 mg/mlで約200-700 mg/m2、さらにより好ましくは約4.6 mg/mlで約100 mg/m2であってよい。
【0067】
4.4 ミセル内へのゲルダナマイシン・プロドラッグのローディング
図42に示されているように、ゲルダナマイシンは、十分に親油性でないため、PEG-b-PCLミセル中にも、PEG-DSPEミセル中にも良好にはローディングしない。図43及び44に示されているように、ゲルダナマイシンの脂肪酸(エステル)プロドラッグが親油性を高めることができる。図14に示されているように、log Po/wが増大すると、ゲルダナマイシン・プロドラッグの重量によってローディング・パーセンテージが増大する。実施例18を参照されたい。
【0068】
ナノキャリヤの構成において、主要な関心事は、薬物-キャリヤ相互作用でなければならない。初期研究において、ゲルダナマイシンは、ナノキャリヤ、例えばペギル化されたリン脂質及びPEG-b-ポリカプロラクトン(PEG-PCL)ミセルによって十分にカプセル化できないことが見いだされた。Hsp90阻害剤のカプセル化は、薬物分子の疎水性に依存し得る。ゲルダナマイシンのオクタノール-水分配係数は、マイクロエマルジョン界面動電クロマトグラフィによって測定された。比較として、PEG-PCLミセル中に高レベル(>10% w/w)までローディングされたラパマイシンのlog Po/wは、MEEKCで測定して3.77である。
【0069】
図44に示されているように、DMAP/DCC化学反応によって、いくつかのプロドラッグが合成された。図45及び46に示されているように、脂肪酸鎖長を延長することにより、結果として生じる分子の疎水性が高められ、log Po/wの値が高くなる。エステルのカルボニルに隣接して臭素を添加すると、これは電子求引基として作用し、エステル結合を不安定化する。しかしながら、臭素(Br)は、著しく疎水性であり、分子の全体的なlog Po/w係数を高くする。Brの添加は、ナノキャリヤ内へのローディング率を高めることもできるが、しかしエステル結合へのヒドロニウム及び水酸化物イオンのアクセス可能性を低減し、カプセル化されたエステルの加水分解速度を低下させることがある。同様に、低速の加水分解は、ミセルコア内へのプロドラッグ分配が親薬物よりも著しく良好である場合には、薬物放出速度を遅くすることができる。Brの代わりに、図47に示したような、電子求引性でない疎水性基、例えばイソプロピル基が使用されると、安定なエステル結合によって高度に分配された薬物を実現することができる。
【0070】
【表1】
表1に示されているように、ゲルダナマイシン・プロドラッグは、高いlog Po/w値によって証明されるように高疎水性である。無改質ゲルダナマイシンのlog Po/wは約2.77であり、この値はPEG-b-PCLによってカプセル化されるのに十分には疎水性ではい。キャリヤの疎水性が約3.5以上である場合には、PEG-b-PCLによる効果的なカプセル化が発生し得る。化合物17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンのlog Po/wは約3.87であり、この値は分子がミセル、例えばPEG-b-PCL内に実質的にカプセル化されるのを可能にするのに十分である。化合物17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンは、log Po/wが約4.49の著しく疎水性の分子であり、ミセル、例えばPEG-b-PCL中にカプセル化されるはずである。
【0071】
図45は、表1に示されているような、17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製するプロセスを示している。17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 3及びX = Hである。17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 9及びX = Hである。17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 13及びX = Hである。17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 13及びX = Brである。
【0072】
図45は、脂肪酸鎖の延長を示している。第1のステップでは、ゲルダナマイシン(図45において1で示す)へのエタノールアミンの添加を、約10当量のエタノールアミンを有するクロロホルム中にゲルダナマイシンを約1-約4時間にわたって溶解することにより、達成することができる。反応を薄層クロマトグラフィ(TLC)によって、完了までモニタリングする。有機層を重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、次いでブラインで洗浄する。有機層を次いで硫酸ナトリウム(NaSO4)上で乾燥させ、次いで溶媒を回転蒸発によって除去する。
【0073】
図45の第2ステップにおいて、2として図示されたゲルダナマイシン・プロドラッグ構造に、DMAP/DCC反応によって脂肪酸鎖を添加する。エステルのカルボニルに隣接した疎水性体(例えばBr又はH)とともに、脂肪酸を添加する。第2ステップにおいて、2から生じたゲルダナマイシン・プロドラッグを、約1.5当量の脂肪酸、約3当量のDCC、及び約1当量のDMAPを有する約10 mlのジクロロメタン中に懸濁させる。反応をTLCによって、完了まで約2-約6時間にわたってモニタリングする。溶液を冷却して濾過する。次いで溶液を、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製する。次いで、生成物を得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0074】
図46は、17-アミノ-ヘキシルデシル-17-デメトキシゲルダナマイシンの調製プロセスを示す。図46は、図45とは異なる第1ステップを示しているが、第2ステップは同じである。第1ステップでは、ゲルダナマイシン(図45において1で示す)へのNH2(CH2)15CH3アミンの添加を、約5当量のNH2(CH2)15CH3を有するクロロホルム中にゲルダナマイシンを約1-約4時間にわたって溶解することにより、達成することができる。反応を薄層クロマトグラフィ(TLC)によって、完了までモニタリングする。有機層を重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、次いでブラインで洗浄する。有機層を次いで硫酸ナトリウム(NaSO4)上で乾燥させる。次いで溶液を、シリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして約1:9メタノール:クロロホルムで溶離する。次いで生成物を得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0075】
図47は、17-ヒドロキシエチルアミノ-(1-イソプロピル-パルミネート)-17-デメトキシゲルダナマイシンの調製プロセスを示す。このことは、エタノール中の約1当量のNaOCH2CH3中にジエチルマロネートを懸濁させ、そして約1時間にわたって還流させることにより行われる。次いで約0.95当量の2-ブロモ-イソプロパンを液滴状に添加し、そして約4時間にわたって還流する。2倍の容積の冷水を溶液に添加する。生成物をエーテルによって3回抽出し、次いで減圧蒸留する。イソプロピルマロネートジエステルをエタノール中の約1当量のNaOCH2CH3と混合し、そして約1時間にわたって還流させる。次いで約0.95当量の1-ブロモテトラデクダンを添加し、そして溶液を約4時間にわたって、又は完了までTLCによって還流させる。2倍の容積の冷水を溶液に添加する。生成物をエーテルによって3回抽出し、次いで減圧蒸留する。
【0076】
次いで、2-イソプロピル-2-テトアデクダン-マロネートジエステルを、約1:1のKOH:水中に溶解し、そして約8時間にわたって還流させることができる。次いで固形分がなくなるまで水を添加する。水性層を抽出する。濃塩酸を、固形分がもはやなくなるまで添加する。溶液をエーテルで3回抽出し、そして真空中で低減する。次いで生成物を約3時間にわたって約180℃まで加熱し、そして真空蒸留する。その結果、図2において3として示されたイソプロピルを有する脂肪酸が生じる。次いで、図1aの2におけるゲルダナマイシンプロドラッグを、図2における3と混合する。約3当量のDCCと約1当量のDMAPとを約10 mlのジクロロメタン中に有するイソプロピルを含有する約1.5当量の脂肪酸と、ゲルダナマイシン・プロドラッグとを、約2-約6時間にわたって混合する。溶液を冷却して濾過する。次いで溶液を、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製する。次いで、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチル-2-イソプロピルヘキサデカノエートを得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0077】
図48は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチロネート-Phe-Leu-Phe-アミンの調製プロセスを示す。図45において2として示されたゲルダナマイシン・プロドラッグに、疎水性ペプチドを添加する。3当量のDCC及び1当量のDMAPを、約10 mlのジクロロメタンと一緒に添加する。反応時間は約2-約6時間にわたってよい。溶液を冷却して濾過する。次いで溶液を、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、次いで回転蒸発させる。結果として得られた生成物を、約2:8のピペリジン:DMFと混合し、そして約1-約2時間にわたって反応させる。この溶液を次いで、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製する。次いで、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチロネート-Phe-Leu-Phe-アミンを得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0078】
図49は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチリデン-パルミトヒドラジドの調製プロセスを示す。DCM中の約1当量のDess-Martinを使用して、Fmoc-エタノールアミンをアルデヒドに変換することができる。約20分後、反応物を、約1容積の飽和型重炭酸ナトリウム及び約7当量の飽和型チオ硫酸ナトリウムで希釈することができる。反応物を約20分間にわたって撹拌し、そして実質的に等しい容積のジエチルエーテルで約3回抽出することができる。次いで有機物を約1MのHCl及びH2Oで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして回転蒸発によって溶媒を除去することができる。生成物をシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして約99:1のEtOac:TEAで溶離した。Fmoc-エチルアルデヒドを約1当量のパルミチン酸ヒドラジドと混合し、そしてEtOH中で一晩にわたって還流することができる。
【0079】
Fmoc-ヒドラジド生成物は、シリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして約89:10:1のクロロホルム:MeOH:TEAで溶離することができる。Fmoc-ヒドラジドは、約2:2:98のDBU:ピペリジン:DMF中で一晩室温で脱保護することができる。生成物(E)-N'-(2-アミノエチリデン)パルミトヒドラジドを濾過し、そして約89:10:1のクロロホルム:MeOH:TEAでフラッシュ・クロマトグラフィによって精製することができる。C17-メトキシにおける求核攻撃によって、ヒドラジドをDMF中のゲルダナマイシンに接合した。生成物17-(2-アミノエチリデン)パルミトヒドラジド-17-ゲルダナマイシンを、シリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして1:9のMeOH:クロロホルムで溶離した。
【0080】
図50は、PEO-b-PEGAの調製方法を示す。DMF及び2-ヒドロキシピリジン中のHOOC(CH2)5NH2でアミノ分解し、こうしてヒドロキシ部分を組入れる。次いで、生成物を、DCM中のDCC/DMAP化学反応を用いて、17-ヒドロキシエチル-アミノ-17-ゲルダナマイシンに接合する。低温濾過及びエーテル沈澱によって、生成物を精製することができる。
【0081】
ゲルダナマイシンの疎水性を高めることにより、化合物のナノカプセル化を増加させることができる。17炭素におけるゲルダナマイシンのプロドラッグは、ゲルダナマイシンの生体活性に及ぼす影響が、他の位置よりも少ないことが判っているが、しかし、誘導体化はしばしば、特に大型基において活性の減少をもたらす(Sasaki他、米国特許第4261989号(1981年))。
【0082】
Sasakiは、β-ヒドロキシエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン・プロドラッグが、in vitroの生体活性に対して最小限の影響しか及ぼさないことを示した。このプロドラッグは、エステル化を可能にするヒドロキシル基を提供する。エステルプロドラッグは加水分解して、親化合物の活性形態になることができる。
【0083】
ゲルダナマイシンに対する改質は、上記のものには限られない。脂肪酸の代わりに、疎水性ペプチド配列を使用することもでき、そして例えば、エステル結合を用いて、末端C基を介して配列を結合することができる。例えば、フェニルアラニン及びロイシンの配列が用いられてよい。配列は、広範囲の二次構造の形成を防止するために、アミノ酸間に交互に生じることができる。代表的なプロドラッグ、C17-アミノ-エステル-Phe-Leu-Pheが図48に示されている。標準的な固相ペプチド化学物質、例えばFmoc保護型アミノ酸を使用して、HATU/HOAt活性化カップリングを用いて、アミノ酸を集成することができる。結果として生じるN保護型ペプチドは、図47に示されているようなDMAP/DCC化学反応によって接合することができる。接合後、末端アミノ酸Fmoc保護基を除去することができる。
【0084】
エステル以外の他の基を疎水性基の結合のために使用することができ、例えば、中性pHにおける安定性、及び酸性条件における改善された加水分解という利点を有するヒドラゾン・リンカーを使用することができる。腫瘍は、薬物の放出を増強できる酸性環境を提供することができ、これに対して、薬物はナノキャリヤJM血漿中で安定であり、非特異的放出及びその結果としての毒性を低減することができる。1つのリンカーの例が図44に示されている。
【0085】
Hsp90薬物は、他の結合、例えばアセチル及びジスルフィド結合、切断可能なペプチド結合(例えばAla-Val)、又はこれらのリンカーの組合わせを用いて結合することもできる。例えば腫瘍選択的切断型リンカー(例えばAla-Valペプチド)は、C末端を介して脂肪酸又は疎水性ペプチドに結合することができる。N末端は、Hsp90阻害剤に直接に(例えばゲルダナマイシンのC17炭素を介して)、又はスペーサ・リンカー、例えばアミノエタノール又はアミノヘキサノールを介して結合することができる。N末端は、別の切断可能なリンカーを介して結合することもできる。結果として生じる化合物は、Hsp90に対する薬物親和性を低減する嵩高なAla-Val-(薬物リンカー)基に起因して、ナノキャリヤ放出後に、低減された非特異的毒性を示すことができる。Ala-Valの腫瘍特異的開裂後に、結果として生じる化合物は、阻害に十分なHsp90結合を示すことができる。
【0086】
Hsp90阻害剤はナノキャリヤに結合することもできる。可逆的に結合される場合には、薬物はナノキャリヤから放出し、そして生体活性になることができる。不可逆的又は可逆的に結合される場合、結合された薬物の存在は、ミセル内への遊離薬物の分配を増大させることができる。PEO-β-PEGAをキャリヤとして使用する図45に一例が示されている。
【0087】
これらの改質Hsp90阻害剤は、キャリヤからの持続放出を示すことができる。これらのキャリヤのうちのいくつかの放出動態は表2に示されている。25重量%のローディング(又は1.9 mg/mlの溶液)を達成するために、0.5 mM PEG-b-PCL(5000:10000 Da)中に薬物をローディングした。これらのデータは、37℃の完全シンク条件下における10000MWCO透析カセットからpH 7.4のリン酸緩衝剤中への放出を測定することにより得られた。Forrest及びKwon, 2005(Journal of Controlled Release)に記載されているように、薬物拡散を計算した。
【0088】
混和性溶媒中に溶解されたゲルダナマイシン・プロドラッグ及びPEG-PCLを、強力に撹拌された水に液滴状に添加し、続いてN2パージ、及び0.2 μm濾過によって溶媒を除去することによって、PEG-PCLミセルが調製される。或いは、組入れられていない凝集薬物を除去するために、溶液を遠心分離することもできる。最終的な溶媒と水との比は、約0.1-約5、好ましくは約0.5-約4、そしてより好ましくは約2である。ミセル溶液は、約2秒/液滴-約60秒/液滴、好ましくは約5秒/液滴-約30秒/液滴、そしてより好ましくは約10秒/液滴-約20秒/液滴の速度で送達されるべきである。
【0089】
【表2】
【0090】
図51は、ドデコネート、ブロモドデコネート、及びアミノヘキシルデシルを有するゲルダナマイシン・プロドラッグ、C16-アミノ-ゲルダナマイシン、及びC16-ブロモ-エステル-ゲルダナマイシンの持続放出のローディングを示すグラフである。C16-エステル-ゲルダナマイシンを含むPEG-PCLミセルは、約1.1 mg/mlの薬物を担持することができ、そして約13 wt%のキャリヤであってよい。C16-アミノ-ゲルダナマイシンを含むPEG-PCLミセルは、約1.1 mg/mlの薬物を担持することができ、そして約14 wt%のキャリヤであってよい。C16-ブロモ-エステル-ゲルダナマイシンを含むPEG-PCLミセルは、約1.1 mg/mlの薬物を担持することができ、そして約14 wt%のキャリヤであってよい。
【0091】
MDA-MB-468乳癌細胞系(ATCC)に対する薬物の細胞毒性を測定した。96ウェル・プレート(100 μl/ウェルDMEM培地)内に3000細胞/ウェルの密度で細胞を平板培養する。24時間後に、1% DMSO中に溶解した状態で薬物を添加した。4日間にわたって細胞を薬物とともにインキュベートし、そして製造業者の指示(ウィスコンシン州Madison, Promega)に従って、MTS細胞毒性アッセイを用いて毒性を測定した。
【0092】
リンカーの加水分解が低速なので、4日を上回る時間で曝露すると、毒性を増強することができる。
【0093】
【表3】
【0094】
4.5 ミセル内へのパクリタキセル・プロドラッグのローディング
ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-PCL)の両親媒性ブロックコポリマー・ミセルを使用して、Cremephor(登録商標)及び溶媒無しのパクリタキセル製剤を調製した。PEG-PCLのミセル中のパクリタキセルの不良のローディング(<1% w/w)は、パクリタキセルの加水分解可能な脂肪酸プロドラッグを形成することにより克服された。パクリタキセル・プロドラッグの溶解度は、PEG-PCLミセル中5mg/mlを超えた。補助溶媒抽出技術によって、薬物がローディングされたPEG-PCLミセルを調製した。結果として生じたPEG-PCLミセルは、17-22 % w/wのプロドラッグを含有し、そしてその直径は50 nm未満であった。PEG-PCLミセルは、数日間、t1/2>3dにわたってパクリタキセル・プロドラッグを放出した。
【0095】
5.0 発明の種々異なる観点
要約すると、ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、疎水性賦形剤と、疎水性パッセンジャー薬とを含むことができる。両親媒性ポリマーは、ペギル化リン脂質、例えばPEG-DSPE、又はブロックコポリマー、例えばPEG-b-PCL及びPEG-b-アミノ酸であってよい。疎水性賦形剤は、約3.5超のlog Po/w及び約1000 Da未満の分子量を有することができる。疎水性賦形剤はビタミンEであってよく、ビタミンEは、アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、、デルタ-トコトリエノール、を含む多くの異性体を有する。疎水性パッセンジャー薬は、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン・プロドラッグ、ラパマイシン、パクリタキセル、又はパクリタキセル・プロドラッグであってよい。
【0096】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーであってよく、そして疎水性パッセンジャー薬を、ミセルのために利用することができる。疎水性パッセンジャー薬は、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン・プロドラッグ、ラパマイシン、パクリタキセル、又はパクリタキセル・プロドラッグであってよい。両親媒性ポリマーは、PEG-DSPE、PEG-PCL、又はPEG-ポリアミノ酸であってよい。疎水性賦形剤、好ましくはビタミンEを含むことができる。ミセル組成物の濃度は、約1-約50 mMであってよく、ビタミンEの濃度は約2-約100 mMであってよく、そしてラパマイシン濃度は約0.1-約10.0 mg/mLであってよい。ミセル組成物は、濃度約3-約7 mMの両親媒性ポリマー、濃度約8-約12 mMのビタミンE、及び濃度約0.3-約0.7 mg/mlのラパマイシンを有することもできる。両親媒性ポリマーに対するビタミンEの比率は、約0.2-約50であってよく、そしてミセルの直径は、約200 nm未満であってよい。ポリマーに対するラパマイシンの比率は、約0.1-約4であってよい。
【0097】
ミセル組成物の形成方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性薬を、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し、そして実質的に無溶媒の混合物を残すために、溶液から溶媒の実質的に全てを除去することを含むことができる。この方法はさらに、実質的に無溶媒の混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含むことができる。この方法は、実質的に無溶媒の混合物を残すために溶液から溶媒の実質的に全てを除去する前に、溶液を実質的に水溶液に添加することを含むこともできる。ミセル組成物の形成方法はさらに、前記ミセル組成物中に組入れられていない薬物を除去することを含むことができる。この方法は、約50-約1000 rpmで溶液を回転させる混合工程を有することができる。
【0098】
最終水溶液の特徴として、両親媒性ポリマーの濃度は約0.1 mM-約60 mMであってよく、そして疎水性賦形剤の濃度は約0.1 mM-約600 mMであってよく、そして薬の濃度は約0.1 mg/ml-約10.0 mg/mlであってよい。ほとんどいかなる有機溶媒も、例えばMeOH、アセトン、THF、ACN(これらに限らない)が、全ての成分が可溶性である方法において働くことができる。溶媒は約50:50のクロロホルム:メタン溶液であってよい。加えて、この方法の回転工程と除去工程とは同時に行われてよく、そして再懸濁工程は、約3-約20分間にわたる超音波処理と組合わせることができる。疎水性パッセンジャー薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグであってよい。
【0099】
ラパマイシンを可溶化する方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及びラパマイシンを、溶液を形成するために有機溶媒中に溶解し;そして前記溶液を混合し;実質的に無溶媒の組成物を形成するために、前記溶液から溶媒を除去し;そして、前記実質的に無溶媒の混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含むことができる。再懸濁工程は、ミセル組成物を形成することができる。ポリマーはPEG-DSPEであってよい。PEG-DSPEに対する疎水性賦形剤の比率は、約0.1-約3であってよい。疎水性賦形剤はビタミンEであってよい。
【0100】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマー及びゲルダナマイシンを含むことができる。ミセル組成物は、疎水性賦形剤を含んでもよい。疎水性賦形剤はビタミンEであってよい。ゲルダナマイシンは、約200-約800 μl/mlであってよい。
【0101】
プロドラッグ組成物のlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。プロドラッグはゲルダナマイシン又はパクリタキセルのプロドラッグであってよい。ゲルダナマイシン・プロドラッグは、C17位置のアミノ・スペーサ基と、前記スペーサ基に隣接するR基とを有することができる。R基は、炭素数約4-約24、より好ましくは炭素数約6-約16の炭素鎖であってよい。鎖は飽和型又は部分不飽和型であってよい。R基は、エステル、ブロモエステル、アミノエチル-ヘキソネート、アミノエチル-ドデオネート、アミノエチル-パルミテート、アミノエチル-ブロモパルミネート、又はアミノ-ヘキサデシルであってよい。ミセル組成物は、両親媒性ポリマーとこれらのゲルダナマイシン・プロドラッグのうちの1つとを含んでよい。ゲルダナマイシン・プロドラッグのlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。
【0102】
パクリタキセル・プロドラッグは、アミノ・リンカー基と、前記リンカー基に隣接するR基とを有することができる。当該アミノ・リンカー基は、C7又はC2位置であってもよい。パクリタキセル・プロドラッグのlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。R基は、炭素数約4-約24、より好ましくは炭素数約6-約16の炭素鎖であってよい。鎖は飽和型又は部分不飽和型であってよい。R基は、エステル、ブロモエステル、アミノエチル-ヘキソネート、アミノエチル-ドデオネート、アミノエチル-パルミテート、アミノエチル-ブロモパルミネート、又はアミノ-ヘキサデシルであってよい。ミセル組成物は、両親媒性ポリマーとこれらのパクリタキセル・プロドラッグのうちの1つとを含んでよい。パクリタキセル・プロドラッグのlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。
【0103】
ミセル組成物は:7-パルミテート-パクリタキセル、7-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-パクリタキセル、2-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-7-パルミテート-パクリタキセルのうちの1つを含むパクリタキセル・プロドラッグを含んでよい。ミセル組成物を形成する方法が:少なくとも約3.5のlog Po/wを有するパクリタキセル・プロドラッグを調製し;両親媒性ポリマー、及び前記パクリタキセル・プロドラッグを、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し;実質的に無溶媒の混合物を残すために、前記溶液から溶媒を除去し;そして前記無溶媒混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含んでよい。ミセル組成物を形成する方法は:少なくとも約3.5のlog Po/wを有するパクリタキセル・プロドラッグを調製し;両親媒性ポリマー、及び前記パクリタキセル・プロドラッグを、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し;実質的に無溶媒の混合物を残すために、前記溶液から溶媒を除去し;そして前記無溶媒混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含んでもよい。
【0104】
ゲルダナマイシン・プロドラッグを有するミセル組成物を形成する方法は:17-ヒドロキシ-エチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-パルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ヘキシルデシル-17-デメトキシゲルダナマイシンを含み、又は生成することができる。
【0105】
パクリタキセル・プロドラッグを有するミセル組成物を形成する方法は、7-パルミテート-パクリタキセル、7-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-パクリタキセル、2-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-7-パルミテート-パクリタキセルを含み、又は生成することができる。
【0106】
ヒト又は動物における疾患又は症状の治療方法は、両親媒性ポリマーと、疎水性賦形剤と、疎水性パッセンジャー薬とを含むミセル組成物を投与することを含む。疎水性パッセンジャー薬は、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン・プロドラッグ、ラパマイシン、パクリタキセル、又はパクリタキセル・プロドラッグであってよい。両親媒性ポリマーはPEG-DSPE、PEG-PCL、又はPEG-ポリアミノ酸であってよい。疎水性賦形剤はビタミンEであってよい。ヒト又は動物の疾患又は症状は:癌、神経障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、再狭窄、真菌感染、免疫抑制を含んでよい。真菌感染はCandida albicansであってよい。
【0107】
好ましい実施態様及び実施例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲は、記載した実施態様だけに限定されるものではない。当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲によって定義され制限された本発明の本質及び範囲を逸脱することなしに、上記発明に改変及び適応を加えることができる。本発明の実施態様及び利点を示そうという意図のために、下記実施例を提供するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定しようというものではない。
【実施例】
【0108】
実施例1
ミセル及びパッセンジャー薬の形成
標的として定められた腫瘍に送達されるべきミセル組成物中に、ドキソルビシン及びパクリタキセルを組入れることができる。PEG-ポリ(アスパラギン酸)、PEG-ポリ(アスパラギン酸塩)、PEG-ポリ(ラクチド)、PEG-DSPEが、パッセンジャー薬化合物をカプセル化することができるミセルキャリヤのうちのいくつかである。表1を参照されたい。
【0109】
【表4】
【0110】
実施例2
ラパマイシン・ローディング効率
水中2.6 μg/mlの溶解度を有する、ミセル組成物中へのラパマイシンのローディング。PEG-DSPE中へのラパマイシンのローディング効率は、組入れられたトコフェロールの増大とともに比例的に増大する。PEG-PCL中へのラパマイシンのローディング効率も、組入れられたトコフェロールの増大とともに比例的に増大する。表2を参照されたい。
【0111】
【表5】
【0112】
実施例3
臨界ミセル濃度
臨界ミセル濃度は、ミセル組成物中へのトコフェロールの組入れとともに増大し、これにより、ミセル組成物の安定性を高める。図12を参照されたい。
【0113】
【表6】
【0114】
実施例4
トコフェロール及びラパマイシンが組入れられたミセル組成物の形成
ミセル組成物を形成する滴下状抽出法
図19に従って、両親媒性ポリマー、及び所望のパッセンジャー薬を、これらが優れた溶解度を有する高水混和性溶媒中に溶解する。例えば、MeOH、アセトン、EtOH、アセトニトリル、THF、ジオキサン、及びIPAを含む。
【0115】
例えば、1 mg/mlの薬物と、2.5 mMのPEG-DSPEと、1:2トコフェロールとの0.5 ml溶液を形成するために:
上記量のトコフェロール、PEG-DSPE、及びラパマイシンを、0.5 mlのアセトン中に溶解し、そしてシリンジ内に装入する。この溶液を25-50 μl/分(ほぼ1滴/10-15秒)で水溶液に供給するために、シリンジポンプを使用する。
【0116】
水の容積は、最終的な溶媒対水の比が2:1又はそれ未満となるのに十分であるべきである。典型的には少なくとも1 mlの水が使用されるべきである。
【0117】
水(又はその他の水性緩衝剤[例えばPBS])は、撹拌棒を有する小型ビーカー内に入れ、パラフィルムでカバーし、そして、強力に撹拌しながら撹拌プレート上に置く。供給を開始し、この供給は、供給速度に応じて15-45分で終わるべきである。
【0118】
著しく疎水性のポリマー(例えばPEG 5000:PCL 15000)の場合、より低速の流量(20秒/滴)を用いることができ、そして容易に形成される系(例えばPEG-DSPE)の場合には、この流量を10秒/滴に増大することができる。
【0119】
供給が行われた後、窒素又はその他の乾燥非反応性ガス(例えば精製乾燥空気、アルゴン、ヘリウム)の流れの下にバイアルを置き、そして溶媒を蒸発させる。必要な場合には、水が全てなくなる時点を過ぎても蒸発を続けることにより、溶液を濃縮することができる。共沸形成溶媒(例えばEtOH)に対してアセトンを使用する利点は、これらの条件下で溶媒のすべてを除去できることである。またDMSO又はDMFのような溶媒は、水の前には蒸発しない。加えてバイアルは、溶媒がゆっくり蒸発するのを可能にするために、一晩以上静止していることができる(場合によってはパージガスなし)。このことは、アセトンの存在において膨潤することができ、また、ミセル安定性を可能にするためにアセトンのゆっくりとした除去を必要とするPEG-PCLのような長疎水性鎖ポリマーにとって重要である場合がある。
【0120】
有機物質のすべてを除去した(そして所望の場合には溶液をさらに濃縮した)後、組入れられていない薬物及びその他のミセルではないものの凝集体、>200 nmのサイズの粒子を除去するために、(例えば0.2 μm又は0.45 μmシリンジ・フィルタを通して)溶液を滅菌濾過することができる。あるいは、薬物凝集体を取り除くために、溶液を遠心分離することもできる(例えば5分間にわたって16000 xg)。
【0121】
ミセル組成物を形成する薄膜蒸発法
ミセル組成物の例を形成するための薄膜蒸発法は下記の通りである:
1. 所望のパッセンジャー薬、トコフェロール、及び両親媒性ポリマーを、これらが可溶性である高揮発性有機溶液中に溶解する。図18を参照されたい。
【0122】
2. 5mMのPEG-DSPE、10 mMのトコフェロール、0.5 mg/mlのラパマイシンの最終的な溶液1 mlを形成するために、50:50のクロロホルム:MeOH溶液10 ml中にこれらの成分を溶解する。50-100 mlの丸底真空フラスコ内に入れる。フラスコを回転蒸発器又はrotovap上に置き、そして約100 rpmで回転し、そして溶媒を除去するために真空下に置く。溶媒が「衝突」するか又は激しく蒸発/沸騰してrotovap凝縮器内に逆流しないように、真空を制御することが重要である。
【0123】
3. 溶媒の全てが蒸発された後、全ての微量の溶媒を除去するために、極めて高い真空(10-100 μbar)下に置く。このことは、高いトコフェロール・ローディング率の場合に特に重要である。なぜならば、トコフェロールは油性粘性物質であり、そして溶媒は、トコフェロール含有膜から蒸発するのが遅い場合があるからである。
【0124】
4. 好適な容積の水又は緩衝剤を添加する。この場合には1 mlである。強力に撹拌すると、ミセルが形成される。このことは、5-15分間にわたる超音波処理によって支援することができる。
【0125】
図18によれば、薬物のローディング効率は、薬物対両親媒性ユニマーとの比が2:1に達するまで増大した。ローディング効率は、揮発性溶液中に溶解された所望のラパマイシンの約40 %であった。次いで、所望のラパマイシンのローディング効率は、薬物:ユニマー比が2:1を超えて増大した後、薬物:ユニマー比3:1及び4:1において20 %未満の薬物ローディング効率まで減少した。PEG-DSPEミセル-トコフェロールのサイズは約14±2 nmであることが可能であり、そしてミセル-トコフェロール-ラパマイシン組成物のサイズは約16±2 nmであることが可能である。従ってラパマイシンは、EPR基準を超えるようにはミセル組成物を増大させない。
【0126】
実施例5
ミセル組成物中へのラパマイシン組入れ
ミセル組成物中へのラパマイシンの組入れは、SECによって検出することができる。図24に示されているように、ミセル及びラパマイシンの両方は、カラムを同時に離れ、従ってこれらが1つの化合物中に組入れられていることを示す。組入れられていない両親媒性ユニマーはミセル化合物を形成せず、後でカラムから離れる。この例は、Shodex 804 SECカラムにおいて、0.75 ml/分及び37℃で、そしてRI及び277 nm UV検出で行われた。
【0127】
実施例6
PEG-DSPEミセル単独の不安定性
図14に示されているように、リン酸緩衝食塩水中では、PEG-DSPEミセルは極めて安定である。PEG-DSPEミセル組成物をリン酸緩衝食塩水中で、4 %ウシ血清アルブミン(BSA)と混合すると、ミセル組成物は安定性が著しく低くなり、そしてパッセンジャー化合物は、1時間以内に薬物からクラッシュして流出する。当該ミセル組成物を、7500分子量カットオフ透析から、37℃の脱イオン水中に放出した。
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
トコフェロールが組入れられたときのPEG-DSPEミセルの安定性
図28に示されているように、ミセル組成物にトコフェロールが組入れられていると、組成物は所定の時間経過後も、より安定であり、薬物はクラッシュして流出しない。4 % BSAの存在において、トコフェロールを含まない5mM PEG-DSPEは最初の20時間以内にクラッシュして流出したが、しかし10 mMトコフェロール組成物を含む5 mM PEG-DSPEミセル組成物は、ほとんど60時間にわたって溶液中に一緒に留まった。
【0133】
図16に示されているように、ミセル組成物の約60 %は、少なくとも25時間にわたって無傷のまま留まった。
【0134】
実施例7
トコフェロールを含むミセル組成物のコア剛性
図13に示されているように、トコフェロールが組入れられると、ミセル組成物のコア粘度又は剛性は、僅かに減少する。トコフェロールを含まないPEG-DSPEの相対コア粘度は、約3 Im/Ieを僅かに下回る。トコフェロールがミセル組成物に添加されると、コア粘度は減少する。コア粘度は線形に減少するのではなく、PEG-DSPE:トコフェロールの比が1:1を超えて増大すると、約1 Im/Ieで不変のままになる。ミセル組成物コア剛性が減少すると、ミセル安定性が低減し、そして薬物拡散率が高められることがある。
【0135】
【表11】
【0136】
【表12】
【0137】
実施例8
トコフェロールを有するミセル組成物のコア極性
図17に示されているように、トコフェロール分子が組入れられたミセル組成物のコア極性は、トコフェロール分子を含まないミセル組成物よりも低い。PEG-DSPE単独のコア極性は、約1.1である。PEG-DSPE:トコフェロール比が1:2のPEG-DSPEとトコフェロールとのミセル組成物のコア極性は、約0.8である。トコフェロールの組入れはコア極性を低減し、そしてこれにより疎水性分子のローディング率を増大することができる。このことは、増強された分配に起因して、放出動態に影響を与えることになる。
【0138】
実施例9
トコフェロールを含むミセル組成物のサイズ増大
腫瘍部位への管外溢出の理由から、ミセル組成物のサイズは重要である。ミセルの直径は、腫瘍部位に達するために理想的には約400 nm未満であるべきである。図24に示されているように、ミセル組成物内へのトコフェロールの組入れは、結果として生じるミセル組成物のサイズを直径400 nmを超えては増大させない。
【0139】
実施例10
組入れによる凝集体数の増大
図14に示されているように、ポリマーの凝集体数は、ミセル組成物中へのトコフェロールの組入れに伴って増大する。増大した凝集体数は、拡大されたコアを示すことができる。コアのサイズは、PEG-PCL 1:0 トコフェロールから1:20トコフェロールに対応して、半径が5 nmから6 nmに増大した。コアは、PEG-DSPE 1:0 トコフェロールから1:2トコフェロールに対応して、半径が1.5 nmから3 nmに増大した。PEG-DSPEトコフェロール比1:0.5において、ミセル組成物内部の凝集体数の差は、統計学的に有意になる。
【0140】
実施例11
拡散-蒸発によるラパマイシンのローディング
組入れられたトコフェロールがあるときには、ミセル組成物中のラパマイシンの重量パーセントは、トコフェロール組入れの有益性を示す。図18に示されているように、組入れられたトコフェロールがない場合には、ラパマイシン:ミセル・ユニマー比2:1において、ミセル組成物中のラパマイシンは約20重量%である。1:1又は1:2のいずれかのPEG-DSPE:トコフェロール比がある場合、ラパマイシンの重量%は25 %を超えて増大する。
【0141】
実施例12
ラパマイシン放出に対するトコフェロール効果
図27に示されているように、トコフェロールは、ラパマイシンが極性緩衝溶液中に放出される時間を増大させるが、しかしこの時間の増大は有意ではない。トコフェロールを含まないPEG-DSPEミセルと、トコフェロールが組入れられたPEG-DSPEとの間の薬物保持性の差は、統計学的には有意でない。
【0142】
【表13】
【0143】
【表14】
【0144】
【表15】
【0145】
実施例13
図28に示されているように、4 % BSAを含む溶液中にある場合、PEG-DSPEミセル組成物の薬物保持性に対するトコフェロールの効果は、統計学的に有意である。4 % BSAは、ヒト脊髄中のアルブミンの濃度である。トコフェロールは、改善された薬物送達のためのin vivo条件において、PEG-DSPEミセル組成物を安定に保つのを助ける。
【0146】
【表16】
【0147】
【表17】
【0148】
【表18】
【0149】
実施例14
PEG-PCLミセルの形成、及びパッセンジャー薬のローディング
図29に示されているように、トコフェロールは、PEG-PCLミセル内へローディングすることができるラパマイシン及びゲルダナマイシンの量を高める。PEG-PCL:トコフェロール比が1:10であると、0.34 mg/mlのラパマイシン・ローディング率がもたらされる。これは90%ローディング効率である。PEG-PCL:トコフェロール比が1:20であると、54 %のゲルダナマイシン・ローディング効率がもたらされる。
【0150】
【表19】
【0151】
実施例15
BSA溶液中のPEG-PCLラパマイシン放出
図30に示されているように、PEG-PCLミセル中へのトコフェロール組入れはまた、結果として得られるミセル組成物が4% BSA溶液中にラパマイシンを保持するのを助ける。このことは、in vivo条件における、PEG-PCLミセル内へのトコフェロール組入れの安定化効果を示す。
【0152】
【表20】
【0153】
【表21】
【0154】
【表22】
【0155】
【表23】
【0156】
【表24】
【0157】
実施例16
脳脊髄液中へのシミュレートされた持続放出
0.23 mg/ml BSA中に、PEG-DSPE 2000 1:2トコフェロールを放出した。
【0158】
【表25】
【0159】
実施例17
in vivoラパマイシン研究
動物及び外科的処置
Simonsen Labs(米国カリフォルニア州Gilroy)から、雄Sprague-Dawleyラット(200- 240 g)を得、そして使用前の少なくとも3日間、我々の動物施設においてラットに食餌(Purina Rat Chow 5001)及び水を適宜に与えた。12時間明/暗サイクルの温度調節された部屋内に、ラットを収容した。薬物動態試験の前日に、ハロタン麻酔下でラットの右頸動脈に、滅菌シラスティック・カニューレ(米国ミシガン州Midland, Dowcorning)をカテーテル挿入した。このことは、カニューレ挿入前に血管を露出させることを伴う。カニューレ挿入後、カニューレに接続されたIntramedic PE-50ポリエチレン・チューブ(米国ニュージャージー州Franklin Lakes, Becton, Dickinson and Company)を、背面皮膚を通して体外に出した。カニューレを0.9 %食塩水で洗い流した。動物を代謝ケージに移し、そして一晩断食させた。ワシントン州立大学の施設内動物ケア・使用委員会から動物倫理承認を得た。
【0160】
12匹の雄Sprague-Dawleyラット(平均重量: 220 g)に、前段落に記載したようにカニューレを挿入した。動物のそれぞれを別々の代謝ケージに入れ、一晩回復させておき、そして投与前の12時間にわたって絶食させた。試験当日、DMA、PEG、及びTween 80(対照製剤)、ポリ(エチレングリコール)-β-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-PCL製剤)、又はα-トコフェロールがともに組入れられたPEG-PCL(PEG-PCL + α-トコフェロール製剤)中に溶解されたラパマイシン(10 mg/kg)(各処理群N=4)を、動物に静脈内投与した。一連の血液試料(0.25 ml)を、0、1分、0.5、1、2、4、6、12、24及び48時間目に採取した。各血液試料を2つの0.1 ml画分に分け、第1の画分を、通常のポリプロピレン・マイクロ遠心管内に捕集し、そして全血試料として標識付けし、そして分析まで-70℃で保存した。第2の画分を、ヘパラン処理された管(マサチューセッツ州Mansfield, Monoject)内に捕集し、そして遠心分離に続いて、血漿及び赤血球(RBC)画分を捕集し、そして分析まで-70℃で保存した。
【0161】
Annesley及びClayton、2004 [1]によって以前に記載されたプロトコルを僅かに改変した。我々の目的上、10 ulの全血、血漿、キャリブレータ、又は対照を、通常のポリプロピレン・マイクロ遠心管内に加えた。次いで、250 ulの脱イオン水、250 ulの水性0.1 モル/L硫酸亜鉛、及び内部標準を含有する500 ulのメタノールを加えた。混合物を30秒間にわたってボルテックス処理し、そして管を室温で5-10分間にわたって放置した。次いで、管を4分間にわたって遠心分離し、そして無色の上澄みを分析した。試料の固相抽出(SPE)クリーンアップのために、60 mg、3 mlのOasis HLBカラムを利用した。カラムを、1 mlのメタノールに続いて1 mlの水で準備した。調製された上澄みを、カラムにゆっくりと通し(1-2 ml/分)、次いで、カラムを1 mlの水で洗浄し、そして約30分間にわたって空気乾燥させた。LC/MS分析をAgilent 1100システム上で行った。正イオンモードで、モニタリングされた多重反応モニタリング転移(m/z)は、ラパマイシン931.6→864.5であった。40℃で維持されたWaters Xtterra MS18 2.1 x 100 mmを用いて、分離を行った。注入容積は、0.4 ml/分の流量で25 ulであった。移動相は、(A)水中10 mMの酢酸アンモニウム及び0.1 %の蟻酸、並びに(B)メタノール中の10 mMの酢酸アンモニウム及び0.1 %の蟻酸であった。勾配プログラムは全走行(15分)に関して50 %A及び50 %Bであった。
【0162】
WinNONLIN(登録商標)ソフトウェア(Ver. 1)を使用して薬物動態分析を実施した。平均±標準誤差(S.E.M.)として要約データを表した。対数-線形最終相における血漿濃度の直線回帰によって、消失速度定数(λn)を評価した。投与時から最後の測定濃度までのデータに対応する複合対数-線形台形法則、及び、最後の測定濃度をλnで割算した商を用いて、AUC0-∞を計算した。静脈内投与後のクリアランス(CL)及び分配容積(Vd)を計算するために、非コンパートメント薬学動態法を使用した。血漿中で検出されたラパマイシン濃度を、種々異なるラパマイシン製剤の静脈内投与後の種々異なる時点においてRBC中で検出された濃度で割算することにより、ラパマイシンの血液中分布を計算した。
【0163】
ラパマイシン対照製剤の静脈内投与に続いて、ラパマイシン濃度の僅かな増大が、12時間目に明らかになった。このことは、腸肝循環の可能性を示す(図1)。ラパマイシンの総クリアランスは、1.12±0.14 L/h/kgであることが見極められた(表1)。ラパマイシンの分配容積は、20.94±3.65 L/kgであり、これは体内総水分よりも大きく、このことはラパマイシンが組織内に高分配されていることを示唆する。ラパマイシン濃度は、平均排出半減期11.52±0.57 hで急速に減少するように見えた。経時的な血液中薬物総曝露量を表す曲線下平均面積(AUC)は、8.34±0.91 μg.h/mlであった。
【0164】
ラパマイシンPEG-PCl製剤の静脈内投与(図2)に続いて、ラパマイシンの総クリアランスは、1.11±0.07 L/h/kgであることが見極められた(表1)。ラパマイシンの分配容積は、24.85±2.10 L/kgであり、これは体内総水分よりも大きく、このことはラパマイシンが組織内に高分配されていることを示唆する。ラパマイシン濃度は、平均排出半減期15.55±0.71 hでゆっくりと減少するように見えた。経時的な血漿中薬物総曝露量を表す曲線下平均面積(AUC)は、9.23±0.71 μg.h/mlであった。
【0165】
ラパマイシンPEG-PCL及びα-トコフェロールの製剤の静脈内投与(図3)に続いて、ラパマイシンの総クリアランスは、0.84±0.03 L/h/kgであることが見極められた(表1)。ラパマイシンの分配容積は17.74±1.27 L/kgであり、これは体内総水分よりも大きく、このことはラパマイシンが組織内に高分配されていることを示唆する。ラパマイシン濃度は、平均排出半減期14.63±0.81 hでゆっくりと減少するように見えた。経時的な血液中薬物総曝露量を表す曲線下平均面積(AUC)は、11.93±0.41 μg.h/mlであった。
【0166】
種々異なるラパマイシン配合物の静脈内投与から1分後(図4)及び12時間後(図5)に、血漿/RBS比を計算した。ラパマイシン対照製剤の静脈内投与から1分後及び12時間後の血漿/RBS比は、それぞれ2.21及び0.41である。ラパマイシンPEG-PCL製剤の静脈内投与後の比は、それぞれ3.44及び0.48であり、そしてラパマイシンPEG-PCL + α-トコフェロールの静脈内投与後の比は、それぞれ4.80及び0.76である。
【0167】
ラパマイシン対照製剤の静脈内投与後におけるラットの致死率は40 %であった。この致死は、薬物投与から0-2時間後に発生した。対照動物は一貫して無気力に見えた。ラパマイシン・ミセル製剤のいずれを用いた場合も致死は生じなかった。ラットを代謝ケージ内に保持し、そして24時間のインターバルで尿を採取し、そして容積を測定した。グループ間で腎臓排出量の差はなかった。
【0168】
ラット、サル、ウサギ、及びヒトを含む種々異なる種において広範囲に、ラパマイシン薬物動態を研究した。これらの研究は、ラパマイシンが、5時間超の比較的長い半減期を有する薬物であるとともに、薬物の相当の比率が血管外に滞留し、そして体内に急速に吸収されることを示す分配値容積を有する薬物であることを特徴付けている[2-5]。ラパマイシンは、分配係数(XLogP) 5.773のリン脂質化合物であり、そして高い分配値容積によって証明されるように組織中に高分配される。加えて、ラパマイシンはそのクリアランス値によって示唆されているように高抽出される。
【0169】
研究された種々異なる製剤は、ラパマイシンの薬物動態パラメータの変化を示す。対照製剤における20.94 L/kgからトコフェロール製剤におけるそれぞれ17.75 L/kgへの、ラパマイシンの分配容積(Vd)の変化がある。同様に、2種の製剤は11.52時間(対照)から、PEG-PCL及びPEG-PCL + トコフェロールの15.55及び14.63時間まで半減期を増大させる。対照と比較して2種の製剤の場合にはまた、AUC値が増大し、そしてクリアランス値が減少する。これらの薬物動態パラメータ変化の全ては、ラパマイシンのより高い最終的な体内滞留時間を示し、そして血漿中滞留時間の増大はRBC中へのより少ない分配を示唆し、RBC中へのより少ない分配は、考えられる標的部位へのより良好な分配を容易にすることができ、このことは最終的に、製剤すべてを同じ投与量(10 mg/kg)で投与したと考えて、対照製剤よりも高い薬物効果を発揮することになる。こうして、これらの製剤の薬物動態効果及び薬力学的効果の更なる研究の正当性が保証される。
【0170】
ラパマイシンの血液中分布をin vivoでも研究し、そして血漿/RBS比を、異なるラパマイシン製剤の静脈内投与後の2つの時点(1分目及び12時間目)で計算した。これらの結果は、全ての製剤において、1分目で、赤血球よりも血漿中でより高いラパマイシン分布を示す。しかし12時間後、ラパマイシンは、血漿よりも赤血球中でより高い分布を有する。時点間の血液中分布のこのような変化は、赤血球中のFKBP[FK506結合タンパク質]にラパマイシンが結合するという事実によって説明することができる[6]。このタンパク質結合は、血漿からのクリアランスよりも赤血球からのラパマイシンのクリアランスを低速にして、このような生体分布の変化をもたらすことができる。両時点(1分目及び12時間目)における2種の製剤(PEG-PCL及びPEG-PCL + トコフェロール)は、対照配合物よりも高い血漿/RBC比を示す。このことは、RBCタンパク質に結合されないラパマイシンの濃度が高ければ高いほど、その薬理学的効果を発揮するために、ラパマイシンをより利用しやすくすることを示す。
【0171】
【表26】
【0172】
実施例18
ミセルにおけるゲルダナマイシン・プロドラッグの放出データ
表4に示されているように、ミセル内にローディングされたゲルダナマイシン・プロドラッグは極めて安定である。17-アミノエチル-パルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、又は17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシンがローディングされたミセルは、約8日後にほとんど全ての薬物を放出する。17-アミノエチル-ブロモドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、又は17-アミノ-ヘキシルデシル-17-デメトキシゲルダナマイシンがローディングされたミセルは、約12日後に実質的に全ての薬物を放出する。17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、又は17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシンがローディングされたミセルは、約14日後に実質的に全ての薬物を放出する。
【0173】
実施例19
パクリタキセル・プロドラッグ製剤
【表27】
【0174】
7-パルミネート-パクリタキセル4cの合成。2-パルミネート-パクリタキセル4cの合成方法を下に説明する。適宜の無水脂肪酸を置換して、同じ手順に従って4a-bを合成した。
【0175】
2-TBS-パクリタキセル2。1.2 ml乾燥DMF中のパクリタキセル1(300 mg, 0.35 mmol)の溶液に、TBDMSCl(158.84 mg, 1.053 mmol)及びイミダゾール(59.80 mg, 0.8783 mmol)を添加した。反応混合物を12時間にわたって室温で撹拌した。その結果生じた溶液を真空中で乾燥するまで減少させ、2ml CH2Cl2中に再溶解し、飽和型NH4Cl(5 ml x 1)、続いて水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続くシリカ上の調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として2を提供した(310.42 mg, 95 %収率)。
【0176】
【化1】
【0177】
2-TBS-7-パルミネート-パクリタキセル3。1 ml乾燥トルエン中の2(50 mg, 0.053 mmol)の溶液に、無水パルミチン酸(38.3 mg, 0.0774 mmol)を添加した。反応混合物を18時間にわたって90℃で撹拌した。その結果生じた溶液を1-M HCl (5 ml x 1)、続いて水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続くシリカ上の調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として3を提供した(25 mg, 41 %収率)。
【0178】
【化2】
【0179】
7-パルミネート-パクリタキセル4c。1 mlのTHF中の3(25 mg, 0.211 mmol)の溶液に、THF中の1-MのTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)を5滴添加した。反応混合物を1時間にわたって室温で撹拌した。その結果生じた溶液を真空中で乾燥するまで減少させ、2ml CH2Cl2中に再溶解し、水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続くシリカ上の調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として4cを提供した(20 mg, 90 %収率)。
【0180】
【化3】
【0181】
2-パルミネート-パクリタキセル5cの合成
2-パルミネート-パクリタキセル5cの合成方法を下に説明する。適宜の無水脂肪酸を置換して、同じ手順に従って5a-bを合成した。
【0182】
2-パルミネート-パクリタキセル5c。1.5 ml乾燥トルエン中のパクリタキセル1(100 mg, 0.117 mmol)の溶液に、無水パルミチン酸(115.79 mg, 0.234 mmol)及びDMAP(11.435 mg, 0.0936 mmol)を添加した。反応混合物を12時間にわたって室温で撹拌した。その結果生じた溶液を1-MのHCl(5 ml x 1)、及び水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続く調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として5cを提供した(60 mg, 47 %収率)。
【0183】
【化4】
【0184】
プロドラッグがローディングされたPEG-b-PCLミセルの調製及び特徴付け。
PEG-b-PCL(5000:10500, Mw/Mn 1.11、カナダ国オンタリオ州Tronto, JCS Biopolytech Inc.)及びプロドラッグを最小容積のアセトン中に溶解し、そしてシリンジポンプを使用して、強力に撹拌されたddH2Oに液滴状に添加することにより、パクリタキセル・プロドラッグがローディングされたPEG-b-PCLミセルを調製した。次いで空気パージ下で撹拌することにより、有機溶媒を除去した。規定されている場合には、空気パージ下における長期蒸発によって、試料をさらに濃縮した。有機溶媒を除去した後、不溶性材料及び組入れられていない薬物を除去するために、PEG-b-PCLミセルを0.22 μmのポリエステルスルホン・フィルターに通した[1]。典型的な試験において、1 μMのPEG-b-PCLを0.75 mlの乾燥アセトン中に溶解し、そして、2 mlのddH2Oに液滴状に添加し、揮発性有機溶媒の除去後、0.5-mMのPEG-b-PCLミセルを産出した。
【0185】
PEG-b-PCLミセル中へのプロドラッグの組入れを、ゲル透過クロマトグラフィから得られたUV及びRIクロマトグラフにおける同等の保持時間によって検証した。OHpak SB-806M GPCカラム(20-μL注入、0.5-mM PEG-b-PCL、0.75 ml/分のddH2O、10℃)(日本国川崎Shodex)上に、PEG-b-PCLミセルを注入し、そして屈折率(RI)及びUV吸光度(232nm)によってこれを検出した。0.01 %(v/v)トリフルオロ酢酸-ACN勾配(40-100 % ACN、50℃、232-nm検出)を使用した逆相HPLC(Alltech Econosphere 3-μm 4.6 x 50 mm)によって、PEG-b-PCLミセル中へのプロドラッグのローディングを定量した。動的光散乱(DLS)(NICOMP 380 ZLS, Particle Sizing Systems, カリフォルニア州Santa Barbara)によって、PEG-b-PCLミセルの流体力学的直径を測定した。強度計量されたガウス分布のフィッティング(NICOMP version 1.76)によってデータを分析した。最小10分間、又は少なくとも100 x 105カウントでチャネル1において測定を行った。
【0186】
PEG-b-PCLミセル・プロドラッグ放出試験。放出試験はEisenberg及び共同研究者(Soo, P.L.他、2002)の方法に基づいたものであり、温度及びpH制御の改変を伴った。ミセル・プロドラッグ溶液を、上記20% w/wのプロドラッグを有する0.5 mM(PEG-b-PCLベース)で調製し、そして、各溶液0.5 mlをddH2Oで2.5 mlまで希釈し、そして10000 MWCO透析カセット(イリノイ州Rockford, Pierce)内に注入した(n=4)。十分に混合された、37℃の温度制御水浴内に透析カセットを入れ、浴容積が15-20分毎に新鮮になるように、ddH2Oでオーバフローさせた。pHを7.4±0.05に維持するために、コンピュータ制御下の蠕動ポンプが、三塩基性及び一塩基性リン酸塩の50-g/L溶液を別個に注入した(内部に組付けられた装置)。固定された時点において、透析カセット容積をddH2Oで2.5 mlまで形成し、100-μLアリコートを回収し、そして逆相HPLCによってプロドラッグ濃度を測定した(上記参照)。
【0187】
Crankの解を使用して短時間の浸透不能な球体からのフィック拡散として放出をモデリングすることにより、前述のように、拡散定数及び放出半減期を測定した[1]。Sigma Plot 9.0(Sysstat Software, Inc.)において、放出データの線形回帰を実施した。独立した試料(n ≧3)に対して拡散定数を測定し、平均±標準偏差として報告した。50%薬物放出に関して、Crankの解において計算された拡散定数を使用して、放出半減期を検出した。
【0188】
オクタノール-水分配係数。パクリタキセル・プロドラッグのオクタノール-水分配係数(log Po/w)を、Klotz他の技術に基づいて、マイクロエマルジョン界面動電クロマトグラフィ(MEEKC)によって間接的に測定した(22)。25-mMの第一リン酸ナトリウムを50-mMの四ホウ酸ナトリウムとともにpH 7.00まで滴定することにより、ランニング緩衝剤を調製し、そして、1.44 gのドデシル硫酸ナトリウム、6.49 gの1-ブタノール、及び0.82 gのヘプタンを、リン酸塩-ホウ酸塩緩衝剤とともに、最大100 mlにした。ランニング緩衝剤を、氷水中の閉じられた250-mlのフラスコ内に30分間にわたって超音波処理した(G112SP1 Special Ultrasonic Cleaner, ニューヨーク州Hicksville, Laboratory Supplies Company Inc.)。低出力の超音波処理装置を用いると、安定なエマルジョンを得るために必要となる時間が長くなることがある。閉じた管内で超音波処理(10分間)を施すことにより、化合物及び標準(n=3)を、0.5 μL/mlのニトロメタン及び0.5 μL/mlの1-フェニルドデカンとともに、ランニング緩衝剤(0.05 mg/ml)中に溶解し、そして脱ガスするために遠心分離した(16000 x g, 3分)。
【0189】
50-μm ID x 37-cmの無被覆の融解シリカ・カラム(アリゾナ州Phoenix, Polymicron Technologies LLC)を備えたBioFocus 3000毛管電気泳動システム(カリフォルニア州Hercules, Bio-Rad)を、MEEKC試験のために使用した。カラムを1-M NaOHで5分間、走行前に0.1-M NaOHで1分間、ddH2Oで1分間、そしてランニング緩衝剤で1分間、100 psi(690 kPa)で予洗浄した。ランニング条件は、20℃における10 kV(約30-35 μA、30分/走行)であり、1-psi・sの注入(6.9 kPa・s)そして210及び232 nmにおける検出を伴う。
【0190】
Log Po/w及び保持因子k'を、等式:
log Po/w = a・logk' + b
【数1】
を使用して計算した。上記式中、tr、t0、及びtmeは、それぞれプロドラッグ、ニトロメタン、及び1-フェニルドデカンの保持時間である。フィッティング・パラメータa及びbを、既知の標準:ピリジン、フェノール、安息香酸、アニソール、ベンゼン、トルエン、ドデカン酸、ベンゾピレン、及びピレンの線形回帰によって測定した(R2 = 0.996、Excel(登録商標)2003, Microsoft Corp.)。
【0191】
細胞毒性の検出
10 %ウシ胎仔血清、100 IUペニシリン、及び100 μg/mlのストレプトマイシン、2 mMのL-グルタミンを補足された90 μLのRMPI 1640(MCF-7)又はDMEM(MDA-MB-231)中に1ウェル当たり細胞数5000の初期密度で、MCF-7及びMDA-MB-231ヒト乳癌細胞(American Tissue Type Collection)を96-ウェルプレート内で平面培養し、そして5% CO2雰囲気中で37℃で維持した。24時間後、DMSO中の試験化合物を成長培地で10倍に希釈し、そして10-μLアリコート(1% v/v 最終DMSO濃度)として、ウェル(2つのウェルを3部、n=6)に添加した。細胞を化合物とともに96時間にわたってインキュベートし、そして代謝速度をXTTアッセイを用いて測定した。手短に述べるならば、調製したばかりのアッセイ溶液20 μL (PBS中の1 mg/mlのXTT、及び0.1 mg/mlのN-メチルフェナゾニウムメチルスルフェート)を各ウェルに添加し、細胞を4時間にわたってインキュベートし、そして630 nmにおけるバックグラウンド減算を伴って、550 nmにおいて吸光度を測定した。50 %だけ細胞成長を阻害する濃度(IC50)を、Sigma Plot 2004(Systat Software, Inc.)を用いて、固定されたHill勾配回帰によって測定し、そしてこれを個々の測定値の平均±標準偏差として報告した。
【0192】
【表28】
【0193】
aは、20% w/w薬物で調製された、薬物がローディングされたミセルのガウス強度計量によるDLSからの流体力学的直径である。実際には、ローディングは、下記表2:パクリタキセル・プロドラッグの溶解度パラメータ及びPEG-b-PCL溶解度において記載されている通りである。
【0194】
【表29】
【0195】
aは、0.5-mM PEG-b-PCLミセル中20% w/wのプロドラッグ・ローディングに基づく溶解度及びカプセル化である。結果に±標準偏差(n=3)が与えられる。bについて、括弧内の結果は、元の容積の25 %まで蒸発させて再濾過(0.22-μm)した後のものである。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1は、疎水性コアと親水性コロナとを含む、薬物送達のためのミセル構造を示す概略図である。
【図2】図2は、疎水性相互作用を介して臨界ミセル濃度超のユニマーによってミセルを形成する様子を示す概略図である。
【図3】図3は、ミセル濃度の関数として極性を示すグラフである。
【図4】図4は、ミセルが静脈内投与される様子、及び漏えい脈管構造に基づいて腫瘍によって取り込まれる様子を示す概略図である。
【図5】図5は、PEG-DSPEの構造を示す図である。
【図6】図6は、PEG-PCLの構造を示す図である。
【図7】図7は、PEG-DSPE中へのトコフェロールの組入れを示す概略図である。
【図8】図8は、トコフェロールの構造を示す図である。
【図9】図9は、ラパマイシンの構造を示す図である。
【図10】図10は、ゲルダナマイシンの構造を示す図である。
【図11】図11は、パクリタキセルの構造を示す図である。
【図12】図12は、PEG-DSPE対トコフェロールの種々異なる比における臨界ミセル濃度を、PEG-DSPEミセルの濃度の関数として示すグラフである。
【図13】図13は、PEG-DSPE対トコフェロールの比の関数として、相対コア粘度を示す棒グラフである。
【図14】図14は、PEG-DSPE対トコフェロールの種々の比の関数として、コア内部の増大した凝集体数を示す棒グラフである。
【図15】図15は、リン酸緩衝生理食塩水中及び4%ウシ血清アルブミン中のPEG-DSPEミセルの安定性を、時間の関数として示すグラフである。
【図16】図16は、4%ウシ血清アルブミン中のPEG-PCLミセルの安定性を、時間の関数として示すグラフである。
【図17】図17は、4%ウシ血清アルブミン中のPEG-DSPEミセルの安定性を、時間の関数として示すグラフである。
【図18】図18は、PEG-DSPE対トコフェロールの種々の比、及び種々のPEG-DSPE濃度に対応する、PEG-DSPEミセルのコア極性を示すグラフである。
【図19】図19は、PEG-DSPE対トコフェロールの比1:2、1:1、及びトコフェロール無しに対応して、拡散-蒸発によるラパマイシン・ローディング効率を、ラパマイシンと両親媒性ポリマーとの比の関数として示すグラフである。
【図20】図20は、PEG-DSPEミセルの形成方法を示す概略図である。
【図21】図21は、ポリマーミセルの液滴式形成方法を示す概略図である。
【図22】図22は、ミセル中のラパマイシン・ローディング効率を、ラパマイシンと両親媒性ポリマーとの比の関数として示すグラフである。
【図23】図23は、アルブミンの存在におけるラパマイシン放出を、種々異なるウシ血清アルブミン濃度における時間の関数として示すグラフである。
【図24】図24は、血清アルブミン、フィブリノゲン、及びウシ膵臓トリプシン阻害薬と、PEG-DSPEミセルとの相互作用を示す棒グラフである。
【図25】図25は、トコフェロール組入れが、結果として生じるミセルのサイズにどのような影響を及ぼすかを示す棒グラフである。
【図26】図26は、サイズ排除クロマトグラフィを介してミセル内のラパマイシンの組入れを示すグラフである。
【図27】図27は、短時間にわたる球体からのフィック拡散に基づく放出動態の分析を示す図である。
【図28】図28は、リン酸緩衝生理食塩水中のPEG-DSPEミセルからのラパマイシン放出に関するトコフェロールの効果を示すグラフである。
【図29】図29は、4%ウシ血清アルブミン中のPEG-DSPEミセルからのラパマイシン放出に関するトコフェロールの効果を示すグラフである。
【図30】図30は、トコフェロールの存在におけるPEG-PCLミセルの安定性を示す図である。
【図31】図31は、トコフェロールが組入れられたPEG-PCLミセルからのラパマイシンの放出を、リン酸緩衝生理食塩水中の時間の関数として示すグラフである。
【図32】図32は、トコフェロールが組入れられたPEG-PCLミセルからのラパマイシンの放出を、4%ウシ血清アルブミン中の時間の関数として示すグラフである。
【図33】図33は、静脈内投与に続く全血中のラパマイシン対照製剤の体内動態を示すグラフである。
【図34】図34は、静脈内投与に続く全血中のラパマイシンPEG-PCl製剤の体内動態を示すグラフである。
【図35】図35は、静脈内投与に続く全血中のラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤の体内動態を示すグラフである。
【図36】図36は、静脈内投与から1分後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤に対応する、血漿中又は赤血球中のラパマイシン濃度を示す棒グラフである。
【図37】図37は、静脈内投与から1分後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤の、血漿/RBC比を示す棒グラフである。
【図38】図38は、静脈内投与から12時間後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤に対応する、血漿中又は赤血球中のラパマイシン濃度を示す棒グラフである。
【図39】図39は、静脈内投与から12時間後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤の、血漿/RBC比を示す棒グラフである(N = 4平均±SEM)。
【図40】図40は、ゲルダナマイシンの標的(ボックス内)を示す概略図である。
【図41】図41は、ゲルダナマイシン及びゲルダナマイシン・プロドラッグの特性を示す図である。
【図42】図42は、ミセル中へのゲルダナマイシンのローディング・パーセンテージを示す図である。
【図43】図43は、ゲルダナマイシンの脂肪酸プロドラッグの調製を示す図である。
【図44】図44は、種々異なるゲルダナマイシン・プロドラッグの親油性及びローディング・パーセンテージを示す図である。
【図45】図45は、ゲルダナマイシンのC17位置に脂肪酸を添加するプロセスを示す概略図である。
【図46】図46は、ゲルダナマイシン-C17-アミノ-ヘキサデカンを形成するプロセスを示す概略図である。
【図47】図47は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチル-2-イソプロピルヘキサデカノエートを形成するプロセスを示す概略図である。
【図48】図48は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチロネート-Phe-Leu-Phe-アミンを形成するプロセスを示す概略図である。
【図49】図49は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチリデン-パルミトヒドラジドを形成するプロセスを示す概略図である。
【図50】図50は、PEO-β-PEGAを形成するプロセスを示す概略図である。
【図51】図51は、経時的なゲルダナマイシン・プロドラッグ放出を示すグラフである。
【図52】図52は、ミセル内のゲルダナマイシン・プロドラッグのカプセル化、及び経時的な放出を示すチャート及びグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年4月12日付けで出願された米国特許仮出願第60/670,460号明細書、及び2005年9月9日付けで出願された米国特許仮出願第60/716,000号明細書の優先権を主張する。これらを参考のため本明細書中に引用する。
【0002】
本発明は、許可番号AI043346で国立衛生研究所(National Institutes of Health (NIH))によって認定された合衆国政府支援とともに行われた。従って、合衆国は本発明における所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
1. 発明の分野
本発明は概ね、ミセル組成物、ミセルの製造方法、及び疾患の治療のための薬物を有するミセル組成物の使用に関する。
【0004】
2. 従来技術の説明
癌は致死率が極めて高い病気である。癌を根絶し、且つ/又は癌の広がりを防止するために、種々の細胞毒性化学療法薬が使用されている。アルキル化剤、例えばシスプラチン及びクロラムブシルは、細胞分裂を防止するためにDNAを架橋する。抗腫瘍抗生物質、例えばダクチノマイシン及びブレオマイシンは、DNAと結合し、ひいてはDNA分離及びmRNA合成を防止する。代謝拮抗物質、例えばプリン及びピリミジン拮抗薬、及び5-フルオロウラシルは、細胞栄養を模倣し、そして通常のDNA合成を防止することが可能である。植物アルカロイド、例えばパクリタキセル及びビンブラスチンは、微小管形成を阻止することにより細胞分裂を阻止する。トポイソメラーゼ阻害薬、例えばカンプトセシン、トポテカン、及びイリノテカンは、DNAスーパーコイル化を阻害し、そして転写及び複製を阻止する。癌のような疾患を治療するのに潜在的に効果的な多くの薬物の溶解度は弱く、このことはこれらの有用性を限定する。
【0005】
ラパマイシンは、化学療法、免疫抑制、抗再狭窄、真菌感染、及び神経障害における用途を有する大型の高疎水性化合物である。抗癌剤としてのラパマイシンは、一般に、素早く加水分解されて赤血球内に隔離されるエステル類似体として形成され、これにより、腫瘍部位におけるラパマイシンの効果を低減する。ラパマイシンは、腎臓移植患者のための免疫抑制剤Rapamune(Wyeth-Ayerst)として現在使用されており、そして長期臨床安全性を示している。しかしながら、ラパマイシンは難水溶性薬物であり、患者における薬物投与を難しくする。
【0006】
ゲルダナマイシンも、癌の治療を含む用途を有する疎水性化合物である。ゲルダナマイシンは抗癌用途及び神経障害疾患用途を有する熱ショックタンパク質阻害薬として知られる新しい化合物クラスの一員である。作用様式は、熱ショックタンパク質(Hsp90)を阻害し、Hsp90(Kd = 1.2 μM)に強く結合し、そして下流成分との相互作用を防止することによる。Hsp90は、数多くのクライアント・タンパク質の折り畳み、安定性、及び機能に関与する分子シャペロンである。Hsp 90の阻害は、多くの発癌性クライアント・タンパク質の不安定化、及びその結果としてのユビキチン化をもたらす。複数の発癌性タンパク質を標的にすることによって、ゲルダナマイシンは、広範囲の腫瘍に対して効果的であることが可能であり、また薬物耐性を克服するチャンスを高めることができる。加えて、Hsp 90の阻害は、Hsp 70の上方調節をもたらし、この上方調節は、アルツハイマー病及びパーキンソン病における斑状沈着物の主要成分である異常タウ種の形成を低減する。
【0007】
パクリタキセルは、癌の治療を含む用途を有する別の疎水性化合物である。パクリタキセルは、細胞の成長を阻害する抗新生物薬と呼ばれる薬群に属する。この阻害は、チューブリンのベータ・サブユニットに結合することにより微小管機能を妨害することにより達成される。妨害された微小管は、例えば細胞複製中の染色体移動に際して必要な機能である分解能力を失う。加えて、パクリタキセルは、Bcl-2と呼ばれるアポトーシス停止タンパク質に結合し、そしてその機能を停止させることにより、プログラムされた細胞の死であるアポトーシスを誘発することが、研究において示されている。
【0008】
難溶性化合物を可溶化するための種々の技術、例えばエマルジョン、リポソーム、又はミセルの形成が存在し、これらの全ては多数の相を有することができ、これらのいくつかは不安定であるおそれがあり、また分離する傾向があり得る。
【0009】
このような困難な薬物を調製するために、ブロック・コポリマーを使用した両親媒性ポリマー(ABC)に基づくミセル系が使用されている。疎水性ブロック、例えばポリ(プロピレングリコール)と親水性ブロック、例えばポリエチレングリコール(PEG)とから成るABCは、選択的な溶媒中で、ミクロ相分離型コア/シェル・アーキテクチャに集成することができる。PEG-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-PCL)及びPEG-ポリ(アミノ酸)が、これらの高分子ミセルを形成することができる。
【0010】
或いは、これらの高分子ミセルを形成するために、リン脂質、例えばPEG-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)を使用することができる。水性環境において、疎水性薬はミセルの疎水性コア内にカプセル化し、そしてポリエチレングリコール(PEG)及びコロナ(シェル)によって提供された水溶性を有することができる。ミセルは、それらのナノスケール寸法、及びPEGコロナによって付与されたステルス特性により、長期循環能力を有することができる。循環期間中、ミセルは薬物を徐々に放出し、最終的には解離し、そして循環から排除することができる。
【0011】
難溶性化合物を可溶化するために、賦形剤及び共賦形剤が使用されている。ビタミンE又は単にトコフェロールとして一般に知られているアルファ-トコフェロールが、多くの難溶性薬に共通したその環及びアルキル鎖構造により、賦形剤として使用されている。ビタミンEは生体に対して毒性ではない。加えて、トコフェロールは生体膜を安定化する。しかし、トコフェロールは水中に可溶性ではなく、従って、静脈注射用溶液における有用性が限定されている。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、疎水性賦形剤と、疎水性パッセンジャー薬とを含んでよい。1つの観点において、両親媒性ポリマーはPEG-DSPEである。別の観点において、賦形剤はトコフェロールである。さらに別の観点において、PEG-DSPEに対するトコフェロールの比は、約0.1-約3である。
【0013】
1つの観点において、ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、ラパマイシンとを含む。別の観点において、ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、ラパマイシンと、トコフェロールとを有してよい。さらに別の観点において、PEG-DSPEの濃度は約1-約10 mMであり、そしてトコフェロールの濃度は約2-約20 mMであってよく、そしてラパマイシンの濃度は約0.1-1.0 mg/mlであってよい。
【0014】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、ゲルダナマイシンとを含んでよい。ゲルダナマイシンは、疎水特性が高められたゲルダナマイシン・プロドラッグであってよい。
【0015】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、パクリタキセルとを含んでよい。パクリタキセルは、疎水特性が高められたパクリタキセル・プロドラッグであってよい。
【0016】
ミセル組成物の形成方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性薬を、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し、実質的に無溶媒の混合物を残すために、溶液から有機溶媒の実質的に全てを除去し、そして、無溶媒混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含むことができる。方法は、実質的に無溶媒の混合物を残すために前記溶液から前記有機溶媒の実質的に全てを除去する前に、前記溶液を実質的に水溶液に添加することを含むこともできる。
【0017】
疎水性薬のミセル・カプセル化効率を改善する方法、及びその結果形成されるプロドラッグ組成物が提供される。別の観点において、カプセル化のためのゲルダナマイシン・プロドラッグの形成方法が提供される。さらに別の観点において、カプセル化のためのパクリタキセル・プロドラッグの形成方法が提供される。
【0018】
ヒト又は動物における疾患又は症状の治療方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性パッセンジャー薬を含むミセル組成物の有効量を投与することを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明によれば、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性パッセンジャー薬は、ミセル組成物を形成することができる。これらの組成物の形成方法も、本発明の範囲の一部である。加えて、これらのミセルを利用する、疾患又は症状の治療方法も本発明の範囲の一部である。トコフェロールが組入れられたミセルは、ミセルの薬物ローディング能力を高め、そしてin vivo状態中のミセル安定性を高めることができる。ラマパイシンは、種々の固形腫瘍を含む多くの腫瘍異種移植片モデルに対するナノモル範囲の印象的な活性を示す薬物である。本発明の態様において、ラパマイシンの低溶解度は、標的腫瘍部位への送達のためにミセル組成物内にラパマイシンを組入れることにより克服することができる。
【0020】
1.0 ミセル
非イオン性界面活性剤、例えばCremophor EL及びTween 80は、癌治療の静脈内投与のために使用することができる。図1に示されているように、ミセルは、コア-シェル形態を有する超分子構造である。ミセルの形成は、エントロピーで駆動される。図2を参照されたい。水分子がバルク相内に排除される。ΔG0mic = RTln(CMC)がミセルの形成を特徴付ける。臨界ミセル濃度(CMC)を上回ると、両親媒性ユニマーが凝集して構造化ミセルになる。高分子ミセルは球形であり、そして、典型的には200-100 nmの範囲のナノスケールの寸法を有することができる。このことは、脾臓において内皮間細胞スリットによる濾過を回避するために、循環粒子が約200 nm未満であるべきであるため、有利である。高分子ミセルは、長期にわたって血液中を循環することが判っており、そして難水溶性化合物を、標的を定めた状態で送達することができる。解離時には、ミセルユニマーは典型的には<50,000 g/molであり、腎臓による排除を可能にする。理想的には、このことは、蓄積症をもたらすおそれのある肝臓内のミセル成分の蓄積が生じない長時間の循環を可能にする。
【0021】
1.1 両親媒性ポリマー
難水溶性薬物をカプセル化することができるポリマーは、ペギル化リン脂質及びペギル化ポリ-ε-カプロラクトンを含む。これらのポリマーは、広範囲の化合物のための高い生体適合性及び可溶化能力を示す。共賦形剤、例えばα-トコフェロールが、これらのポリマーから形成されたミセルの薬物ローディング能力を実質的に高めることができ、また、以前には既存の高分子キャリヤとは適合しないか、又は既存の高分子キャリヤによる可溶化が僅かにしか得られないと考えられていた潜在的薬物候補の可溶化を可能にする。
【0022】
両親媒性ポリマーは、典型的には親水性ドメイン、例えばポリエチレングリコール(PEG)、及び疎水性ドメイン、例えばポリ(プロピレングリコール)、ポリ(L-アミノ酸)、ポリ(エステル)、及びリン脂質から構成されている。これらのポリマーは集成して、高分子ミセル、すなわち、小さな疎水性化合物をカプセル化することができる疎水性内部と、親水性外部とを有する高次超分子コア-シェル構造になることができる。図3に示されているようにミセルコアは、低い極性を有しており、そして疎水性環境である。疎水性化合物のための高いコア・キャパシティが存在する。最大約4 :1の薬物:ポリマーのローディングが可能である。ミセルコアの溶解度は、約30,000倍まで増大することができる。ミセルコロナは親水性である。
【0023】
高分子ミセルは、長時間にわたって血液中を循環することが判っており、そして難水溶性化合物を、標的を定めた状態で送達することができる。例1は、ドキソルビシンやパクリタキセルのような薬物をミセル内にカプセル化して、腫瘍をその標的とすることを示している。
【0024】
ミセル組成物の鍵となる利点は、貯蔵及び送達のし易さを含み、組成物は凍結乾燥して、静脈内投与前に戻すことができる。このことは薬物が沈澱して塞栓症を引き起こすリスクを低くする。ミセル組成物は、長時間の血液循環、低い単核食細胞取込み量、及び低レベルの腎排泄が可能である。また、腫瘍に達する化学療法の見込みを高めるために、ミセル組成物は、高められた浸透性及び保持性(EPR)を有する。図4に示されているように、腫瘍は高い脈管密度、並びに欠陥のある脈管構造を有しているので、高い管外溢出が発生する。損なわれたリンパ・クリアランスがある場合がある。エンドサイトーシス及びこれに続く薬物放出は、腫瘍に対する化学療法の効果を高める。
【0025】
初期の研究は、薬物可溶化のためにPEG-DSPE (図5)、及びブロック・コポリマー、及びPEG-PCL(図6)に焦点を当てた。PEG-DSPEは、両化学療法薬のための安全且つ効果的なミセルキャリヤであり得る。PEG-PCLは生分解性であり、そして生体適合性を有し得る。
【0026】
中性PEG-DSPE膜と負荷電PEG-DSPE膜との主要な違いは、2つの荷電膜間の静電力である。膜電荷は、荷電膜及び中性膜上の、酸性及び塩基性のタンパク質の吸着作用に影響を及ぼす。このことは、種々のタンパク質と二層との相互作用を変化させ得る。これらの違いは、荷電リポソームに対する中性リポソームのオプソニン化及びファゴサイトーシスの違いに関連することがある。PEG-DSPEの疎水性頭部におけるリン酸基は、静電反発力に起因して、コア-水界面におけるPEG-DSPEの緊密さに影響を及ぼし得る。またこの荷電された性質は、タンパク質がPEGコロナに浸透する場合には、疎水性コアとのタンパク質相互作用に影響を与え得る。リン脂質頭部基間にトコフェロール(図7)が挟まっているのが示されており、トコフェロール頭部の環構造はさらに、タンパク質の浸透及び相互作用を防止することができる。図8を参照されたい。また、トコフェロール頭部基及びヒドロキシル基は、抗酸化剤として作用することが示されており、リン脂質層のタンパク質崩壊を防止することができる。PEG-b-PCLは生体適合性であり、また生分解性であってよい。PEG-b-PCLは、低い臨界ミセル濃度(CMC)を有することができる。PEG:PCL比が約5:6であると、約0.5 μMを下回るCMCを有することができる。PEG-PCLは、剛性コア構造を有することができ、またアルブミンの存在において安定であることができる。
【0027】
高分子ミセル組成物は、標的薬物化合物と、キャリヤの疎水性コアとの構造的な関係に強く依存して選択することができる。トコフェロールを使用することにより、さもなければ研究のミセルにおいて難溶性の薬物のより高いローディング率をもたらすように、ミセルのコア特性を改質することもできる。
【0028】
2.0 パッセンジャー化合物
本発明によれば、薬物は、ポリマーキャリヤ中のパッセンジャー化合物であってよい。このような薬物は:ラパマイシン(図9)、ゲルダナマイシン(図10)、及びパクリタキセル(図11)を含む。これらの薬物は、独自の作用標的を有する強力な小分子化学療法薬である。これらの化合物の研究、及び臨床製品の開発が、これらの極めて低い水溶性、例えばラパマイシン〜2.6 μg/ml、及びゲルダナマイシン〜1.5 μg/mlによって阻まれている。上記高分子化合物の組合わせを使用し、そしてミセル構造中へトコフェロールを一体化することによって、約5mg/mlまでのラパマイシン(1900倍の溶解度増大)、及び約500 μg/mlまでのゲルダナマイシン(300倍の溶解度増大)を組入れた、これらの化合物の安定なミセル溶液が達成された。加えて、ゲルダナマイシン及びパクリタキセルのプロドラッグを使用すると、溶解度が著しく高められる。
【0029】
化学療法薬としてのこれらの化合物に対する期待はさらに、in vitro及びin vivo腫瘍モデルを用いた更なる評価に値する。リン脂質及びポリカプロラクトン/トコフェロール系を使用したこれらの化合物の調製の成功は、他の難溶性薬物化合物への適用を調査することに値する。
【0030】
高分子ミセルキャリヤは、標的薬物化合物とキャリヤの疎水性コアとの構造的な関係に強く依存して選択することができる。3 %(w/w)未満のパクリタキセルをPEG-PCLミセル中にローディングすることができる。しかし、PEG-ポリ(D,L-ラクチド)ミセルのローディング能力は、>20%(w/w)である。従って、高分子ミセルキャリヤの条件が、所望のパッセンジャー化合物をローディングするために最適化されなければならない。
【0031】
2.1 ラパマイシン
これらの化合物、特にラパマイシンを、補助溶媒、例えばエタノール又はポリエチレングリコールの使用なしに静脈内送達するために調製すると、これらの化合物の治療上の使用が可能になる。ミセルキャリヤの使用は、化学的な改質なしに、この薬剤の治療投与量の送達を可能にする。加えて、ミセル送達は、EPR効果を介した腫瘍の標的治療を可能にし、免疫抑制の可能性、遊離ラパマイシン及びその水溶性誘導体の副作用を低減する。
【0032】
ラパマイシン(図9)は、化学療法、免疫抑制、抗再狭窄、真菌感染、及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びハンチントン病における用途を有する大型の高疎水性化合物である。ラパマイシンは独自の作用標的を有し、イムノフィリンFKBP12と結合し、そしてラパマイシン(mTOR)経路の哺乳動物標的を阻害し、これにより、細胞周期G1からS相への転移を妨げる。ラパマイシンは、リンパ性白血病、黒色癌、上衣芽細胞、及び10-8Mの典型的なIC50を有する種々の固形腫瘍を含む広範囲のヒト腫瘍異種移植片モデルに対する印象的な活性を示している。
【0033】
新規のメカニズムは、ラパマイシンがmTOR成長調節因子を阻害し、G1からS相への転移を防止し、そしてNF-kBを阻害し、そしてアポトーシスを増強する、FK506-12に結合するラパマイシンを有することができる。
【0034】
残念ながら、ラパマイシンは実際には水不溶性(〜2.6 μg/ml)であり、またイオン性基を有していない。EPR効果を用いた、腫瘍部位に対するラパマイシンの標的を定めた送達及び保持は、その効力を実質的に高める。加えて、標的を定めた送達は、免疫抑制を含むラパマイシン治療の副作用を緩和することができる。ラパマイシンの生来の疎水性質を保持することが、(水溶性を高めるための)改質が血液脳関門の交差を妨げ得る神経学的用途において重要な場合がある。
【0035】
高分子ミセルを使用して、十分に臨床的実現可能性のために必要となる範囲内で、ラパマイシンを大量に可溶化することができる。ラパマイシンは、トコフェロールの添加とともに、PEG-PCL及びPEG-DSPEミセルを使用して可溶化されている。結果を例2に要約する。
【0036】
2.2 ゲルダナマイシン
ゲルダナマイシン(図10)は、抗癌用途及び神経障害疾患用途の両方を有する熱ショック・タンパク質阻害薬として知られる新しい化合物クラスの一員である。作用様式は、熱ショック・タンパク質90(Hsp90)を阻害し、Hsp90(Kd = 1.2 μM)に強く結合し、そして下流成分との相互作用を防止することである。このことは、広範囲の発癌性クライアント・タンパク質のユビキチン化、及びこれに続く分解をもたらす。
【0037】
Hsp90阻害剤は、種々異なる経路を誘発することにより、薬物耐性癌において、例えばラパマイシン耐性腫瘍において有用であり得る。Hsp90阻害剤、例えばゲルダナマイシンに対する期待にもかからわず、これらの治療薬の臨床的進展は、好適な製剤法がないことにより停滞している。Hsp90阻害剤であるラジシコールもin vivoで不安定である。ゲルダナマイシンは著しく難水溶性であり、またin vivoで肝毒性である(MTDイヌ<100 mg/m2)。ゲルダナマイシン・プロドラッグ、例えば17-AAGは、僅かにより良好な溶解度と、より低い肝毒性(MTDイヌ500 mg/m2)を有してはいるが、しかし、調製するのがまだ難しく、毒性賦形剤、例えばCremaphor、Tween 80、及びDMSOを必要とする。ゲルダナマイシンの水溶性プロドラッグ、例えば17DMAG(MTDイヌ8 mg/m2)は、これらの調製上の問題を回避することができるが、しかしこれらのプロドラッグの広い生体内分布、及び増大する毒性が、付加的な難しさをもたらすことがある。
【0038】
臨床用の製剤のためには、少なくとも約1 mg/mlの溶解度が望ましい。I期の結果、GI毒性が17-AGGの投与量を制限することが判っており、これとともに、40 mg/m2のII期投与量が示唆されている。前臨床試験は、深刻な肝毒性が、親化合物であるゲルダナマイシンの投与量を制限すること(4 mg/kg)を見いだした。
【0039】
複数の発癌性タンパク質を標的にすることによって、ゲルダナマイシンは、広範囲の腫瘍に対して効果的である見込みがあり、そして薬物耐性を克服するチャンスを高めることができる。加えて、Hsp 90の阻害は、Hsp 70の上方調節をもたらし、この上方調節は、アルツハイマー病及びパーキンソン病における斑沈着物の主要成分である異常タウ種の形成を低減する。
【0040】
ゲルダナマイシンの水溶性が極めて低い(〜1.5 μg/ml)ことにより、製剤は、種々の可溶性類似体、例えば17-AAGを使用している。ラパマイシンと同様に、腫瘍部位へのゲルダナマイシンの標的を定めた送達、及びEPR効果は、その効力を実質的に高めることを期待されている。加えて、循環時間の長期化及び肝臓内保持作用の低減が、肝毒性を劇的に低減するはずである。最後に、神経疾患における治療薬としてのゲルダナマイシンの生じ得る進歩は、血液脳関門の通過のために、可溶性類似体において減衰される親化合物の高疎水性の性質を必要とすることになる。
【0041】
2.3 パクリタキセル
パクリタキセルは、癌の治療を含む用途を有する別の疎水性化合物である。パクリタキセルは、細胞の成長を阻害する抗新生物薬と呼ばれる薬群に属する。この阻害は、チューブリンのベータ・サブユニットに結合することにより微小管機能を妨害することにより達成される。妨害された微小管は、例えば細胞複製中の染色体移動に際して必要な機能である分解能力を失う。加えて、パクリタキセルは、Bcl-2と呼ばれるアポトーシス停止タンパク質に結合し、そしてその機能を停止させることにより、プログラムされた細胞の死であるアポトーシスを誘発することが、研究において示されている。
【0042】
3.0 賦形剤
多成分賦形剤を、第2賦形剤又は補助溶媒と一緒に添加して難水溶性成分が薬物化合物を可溶化するような薬物製剤において使用することができる。高分子ミセルの可溶化能力及び安定性は、ミセルユニマーによって形成された疎水性ミセルコア及びローディングされた薬物の両方と高適合性を有する共賦形剤を含むことによって増強することができる。
【0043】
多成分賦形剤を、第2賦形剤又は補助溶媒、例えば安息香酸、酒石酸、及び水酸化ナトリウムを含有するリスペリドン経口製剤と一緒に添加して難水溶性成分が薬物化合物を可溶化するような薬物製剤において使用することができる。高分子ミセル組成物の可溶化能力及び安定性は、ミセルユニマーによって形成された疎水性ミセルコア及びローディングされた薬物の両方と高適合性を有する共賦形剤を含むことによって増強することができる。
【0044】
賦形剤は、好ましくは約3.5超の高いPo/wと、好ましくは1000Da未満の低い分子量とを有することができる。賦形剤は、生体適合性を改善することができ、そして、薬物-キャリヤ適合性を改善し、あるいは薬物ローディング量、及びキャリヤからの放出時間を増大させることができる。
【0045】
3.1 トコフェロール
最も一般的な異性体トコフェロールであるα-トコフェロールの環及びアルキル鎖構造(図7)は、多くの難溶性薬物に共通の構成要件であり、従って、トコフェロールは、薬物を調製するのが難しい多くのもののための賦形剤として長い歴史を有している。トコフェロールは、ミセル構造に対する改質剤であってもよい。PEG-DSPEミセル及びPEG-PCLミセルの薬物ローディング能力は、トコフェロールの添加によって著しく増強される。例2を参照されたい。
【0046】
トコフェロールを含むことにより、ミセルの安定性を増強することもできる。例えば、PEG-DSPEミセルは、最大約4 mg/mlのラパマイシンで形成することができるが、しかしミセルは素早く「クラッシュ」して、溶液から薬物を流出させる(典型的には<2時間)。トコフェロールが組入れられた同じミセルは、少なくとも数日間にわたって安定している。例3及び6を参照されたい。ミセル組成物内へのトコフェロールの組入れとともに臨界ミセル濃度は増大し、これによりミセル組成物の動的安定性を高める。図13を参照されたい。
【0047】
トコフェロールのフィトール鎖は、リン脂質アシル鎖間に挟まっている。相のトコフェロール:リン脂質比が0.2:1超の場合には、その相はトコフェロール豊富相である。図8は、PEG-DSPE鎖の間にトコフェロールが組入れられた状態を示している。トコフェロールの組入れの結果、分離したトコフェロール相を形成することになる。混合されたアシル及びフィトールの鎖の可動性は、トコフェロール組入れ後に減少する。ミセル組成物安定性に対するポリマーの動的な関与が存在する。コアが高粘度又は高剛性であるのに伴って、ミセルユニマー交換速度は遅くなる。コアの粘度又は剛性を低減することにより、パッセンジャー薬の拡散速度を高めることができる。
【0048】
図13は、コア剛性データを示す。PEG-DSPEに対するトコフェロールの比が増大するにつれて、コア剛性は一般に減少する。トコフェロールの添加によって影響を与えて、疎水性コアサイズを増大させることにより、薬物拡散速度を調節することができる。コアサイズが増大すると、薬物はより長い距離を移動することになるが、しかし、コアの粘度を低くすると、薬物がより速く移動するのが可能になる。トコフェロールと薬物との相互作用が最適化されないと、拡散が低速になるおそれがある。ミセル組成物内へのトコフェロール及び薬物の組入れは、ミセルのサイズに影響を及ぼし、ひいては腫瘍部位における管外溢出に影響を及ぼし得る。例9及び図14を参照されたい。図15に示されているように、PEG-DSPEミセルは、リン酸緩衝生理食塩水中で安定であるが、しかし、in vivo条件に近似する4%ウシ血清アルブミン中では不安定である。図16は、PEG-PCLが4%アルブミン血清中で安定であることを示している。図17に示されているように、トコフェロールが組入れられたPEG-DSPEミセル組成物(トコフェロール: PEG-DSPEの比が約2:1)が、約25時間にわたって4%ウシ血清アルブミン中で約60 %可溶化されたままで留まる。実施例6を参照されたい。
【0049】
実施例3に見られるように、臨界ミセル濃度(CMC)は、ミセル組成物中にトコフェロールを組入れることにより高くなる。ミセル組成物が10-6〜10-5 MのPEG-DSPEで形成される。PEG-DSPE:トコフェロール比、及びCMCに関する効果が実施例3に記載されている。
【0050】
図18に示されているように、トコフェロールが組入れられたミセル組成物のコア極性はまた、トコフェロールの比率とともに変化する。コア極性は、トコフェロールがより多く組入れられるのに伴って減少する。
【0051】
ラパマイシン及びトコフェロールは、両方とも著しく疎水性であり、そして同様の構造成分を有している。両方とも環構造及び長アルキル鎖を有している。両方とも、ミセル組成物内部の薬物組入れ安定性を高めることができる。
【0052】
図19に示されているように、ラパマイシン・ローディング効率は、PEG-DSPEに対するラパマイシンの全ての比におけるトコフェロールの組入れに伴って増大する。PEG-DSPEに対するトコフェロールの最も効果的な比は、約2及び約4であり、両方の比が、ローディング効率約25 %をもたらす。
【0053】
4.0 ミセル及び薬物の組入れの結果
トコフェロールは、PEG-DSPE及びPEG-PCLミセルの構造及び特性に対して効果を及ぼすことができる。手短に述べるならば、Lukyanov他の溶媒膜法(図20に要約)に従って、PEG-DSPE2000ミセルを調製した。この方法では、リン脂質、添加剤、及び薬物を有機溶媒中に溶解し、乾燥膜を生成するために蒸発させ、そして水を添加することによりミセルを形成した。次いで、組入れられていない薬物凝集体を除去するためにミセルを濾過及び/又は遠心分離し、そして薬物組入れを、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって検証した。このプロセスにおいて使用されるPEG-DSPE2000の濃度は、約1 mM-約20 mM、好ましくは約1.5 mM-約10 mM、そして最も好ましくは約5 mMであってよい。このプロセスにおいて使用されるトコフェロールの濃度は、約1 mM-約20 mM、好ましくは約2 mM-約15 mM、そしてより好ましくは約10 mMであってよい。有機溶媒中に溶解されたリン脂質、添加剤、及び薬物を、約50 rpm-約200 rpm、好ましくは約70 rpm-約150 rpm、そして最も好ましくは約100 rpmで回転させることができる。約1-約500 μbar、好ましくは約5-約200 μbar、そして最も好ましくは約10-約100 μbarで真空によって、溶媒を除去することができる。
【0054】
図21に記載されているように、混和性溶媒アセトン中に溶解された薬物及びPEG-PCLを、強力に撹拌された水に滴下状に添加し、続いて、N2パージ、及び0.2 μm濾過及び/又は遠心分離によって溶媒を除去することによって、PEG-PCLミセルも調製した。水に対する最終溶媒の比率は、約0.1-約5、好ましくは約0.5-約4、そしてより好ましくは約2である。ミセル溶液は、約2秒/液滴-約60秒/液滴、好ましくは約5秒/液滴-約30秒/液滴、そしてより好ましくは約10秒/液滴-約20秒/液滴の速度で送達されるべきである。
【0055】
図22に示されているように、溶媒膜法によるラパマイシン・ローディングのローディング効率は、約2:1のラパマイシンとPEG-DSPEとの比において、約30%-約50%、好ましくは約32%-約47%、そしてより好ましくは約40%であった。2:1の比におけるラパマイシンの重量%は、約10%-約40%、好ましくは約15%-約30%、そしてより好ましくは約20%である。
【0056】
図23に示されているように、ラパマイシンは、in vivo条件下の遊離薬物と比較して、ミセル組成物中にローディングされた場合、より長時間にわたって可溶化されたまま留まる。図24に示されているように、PEG-DSPEは、ヒト血清アルブミンの存在において不安定である。
【0057】
4.1 トコフェロールが組入れられたミセル組成物特性
トコフェロールは、ペギル化されていないDSPEミセルを用いた研究に基づいて予期されるPEG-DSPEのコア構造を変える。実施例3に示されているように、トコフェロールとPEG-DSPE2000とのモル比が最大2:1のミセルを添加すると、臨界ミセル濃度(CMC)が2.1 μMから28 μMへ高められるが、しかしこのCMC範囲は極めて安定なミセルをさらに示す。同様に、PEG-PCLミセルは、10:1及び20:1のトコフェロールとPEG-PCLユニマーとの比において極めて低いCMCを維持した。図18に示されているように、トコフェロール組入れは、コア極性を減少させ、そして親油性分子のローディング率を増大させることができる。
【0058】
トコフェロールの添加は、PEG-DSPEを用いて形成されたミセルのサイズを増大させなかった。このことは、アルキル鎖内へのトコフェロールの組入れ、及び疎水性コアの最小限の膨潤に起因し得る(実施例6)。しかしながら、PEG-PCLミセルは、トコフェロールの添加とともにサイズが増大した。図25に示されているように、トコフェロール組入れは、ミセル組成物のサイズに著しく影響を与えることはない。図14に示されているように、組入れ凝集体数の増加はまた、コアのサイズ増大を反映する。トコフェロールと脂質との比が0.5の場合、凝集体数の変化は統計学的に有意となる。このことは一部においては、PEG-PCLミセル中へのトコフェロールのローディング率がより大きいことに起因し得る。
【0059】
4.2 トコフェロール及びパッセンジャー薬物が組入れられたミセル特性
種々に変化するトコフェロール量を有するPEG-DSPE及びPEG-PCLミセル中に、ラパマイシン又はゲルダナマイシンをローディングすることができる。実施例1を参照されたい。図26に示されているように、PEG-DSPEミセル中にラパマイシンをローディングすることができる。ラパマイシンのローディング量は、PEG-DSPE及びPEG-PCLミセルにトコフェロールを添加することにより、約2-約7倍、好ましくは約4-約6倍、より好ましくは3倍増大させることができる。加えて、トコフェロールの不存在において、1-4時間後に沈澱を観察することができ、このことは、トコフェロールが、薬物をローディングされたPEG-DSPEミセルの安定性を高め得ることを示した。実施例10を参照されたい。トコフェロールは、PEG-DSPEミセル中へのゲルダナマイシンのローディング量を、約1-約4倍、好ましくは約1-約3倍、より好ましくは2倍増大させ、そしてPEG-PCLミセル中へのローディング量を、約7-約15倍、好ましくは約8-約12倍、より好ましくは10倍増大させた。
【0060】
人体は完全なシンクのようなものである。図27に示されているようにフィック拡散のためのCrankの溶液は、ミセル組成物からの薬物の拡散を特徴付ける。
【0061】
ゲルダナマイシン及びPEG-PCLの事例において最も劇的であった。トコフェロールの添加なしには、PEG-PCLは可溶化剤としては効果的でない場合がある。約0.2-約0.8 mg/ml、好ましくは約0.2-約0.8 mg/ml、好ましくは約0.4-約0.6 mg/ml、そしてより好ましくは約0.5 mg/mlの最大ローディング濃度を、1:20のPEG-PCL:トコフェロールで達成することができる。実施例11及び12を参照されたい。キャリヤ及び添加剤の更なる最適化を必要とすることができる。また、ミセル組成物製剤のEPR効果は、化学療法薬の投与量要件を低減することができる。
【0062】
図28に示されているように、トコフェロールは、ラパマイシンがリン酸緩衝溶液中に放出される時間を増大させるが、しかし著しく増大させることはない。図29において、トコフェロールは、ラパマイシンが4%ウシアルブミン溶液中に放出される時間の増大に対して有意な効果を有するものとして示されている。
【0063】
PEG-PCLミセル組成物は、トコフェロールが組入れられると、より多くのラパマイシンをローディングすることができる。図30を参照されたい。さらに、図31及び32に示されているように、PEG-PCLはラパマイシンを、リン酸緩衝食塩水及び4%ウシ血清溶液の両方の中により長時間にわたって可溶化されたままにする。
【0064】
初期の結果は、化学療法化合物のためのキャリヤとしてこれらのポリマーが有する潜在能力を示す。トコフェロールを伴う結果は、構造的に類似の添加剤が、薬物ローディング能力を著しく増大させることができることを示す。
【0065】
4.3 ミセル投与量
ミセル送達系を通したラパマイシンの投与量は、ラパマイシン類似体:CCI-779、RAD-001、及びAP-23573のための臨床試験において使用された投与量と類似していてよい。CCI-779のための投与量は、約7.5-220 mg/m2/週(静脈内)、2-3週間毎に約5日間にわたり約0.75-20 mg/m2/日(静脈内)、2週間毎に約5日間にわたり約25-100 mg/日(経口)である。RAD-001のための投与量は、約5-60 mg/週(経口)である。AP-23573のための投与量は、約6.0-100 mg/週(静脈内)、2週間毎に約5日間にわたり約3-30 mg/日(静脈内)である。これらの投与量は、ラパマイシンが約1-4 mg/mlで可溶化されるものとすると、PEG-b-PCLミセルによって容易に達成されるはずである。PEG-b-PCLミセル中のラパマイシンの含有率は、ポリマー重量を基準として約10-20重量%の薬物である。PEG-b-PCLミセルは、少なくとも約40 mg/mlに達することができる。
【0066】
ゲルダナマイシン・プロドラッグの投与量は、約1-7 mg/mlで約100-1000 mg/m2、好ましくは約2-6 mg/mlで約200-700 mg/m2、さらにより好ましくは約4.6 mg/mlで約100 mg/m2であってよい。
【0067】
4.4 ミセル内へのゲルダナマイシン・プロドラッグのローディング
図42に示されているように、ゲルダナマイシンは、十分に親油性でないため、PEG-b-PCLミセル中にも、PEG-DSPEミセル中にも良好にはローディングしない。図43及び44に示されているように、ゲルダナマイシンの脂肪酸(エステル)プロドラッグが親油性を高めることができる。図14に示されているように、log Po/wが増大すると、ゲルダナマイシン・プロドラッグの重量によってローディング・パーセンテージが増大する。実施例18を参照されたい。
【0068】
ナノキャリヤの構成において、主要な関心事は、薬物-キャリヤ相互作用でなければならない。初期研究において、ゲルダナマイシンは、ナノキャリヤ、例えばペギル化されたリン脂質及びPEG-b-ポリカプロラクトン(PEG-PCL)ミセルによって十分にカプセル化できないことが見いだされた。Hsp90阻害剤のカプセル化は、薬物分子の疎水性に依存し得る。ゲルダナマイシンのオクタノール-水分配係数は、マイクロエマルジョン界面動電クロマトグラフィによって測定された。比較として、PEG-PCLミセル中に高レベル(>10% w/w)までローディングされたラパマイシンのlog Po/wは、MEEKCで測定して3.77である。
【0069】
図44に示されているように、DMAP/DCC化学反応によって、いくつかのプロドラッグが合成された。図45及び46に示されているように、脂肪酸鎖長を延長することにより、結果として生じる分子の疎水性が高められ、log Po/wの値が高くなる。エステルのカルボニルに隣接して臭素を添加すると、これは電子求引基として作用し、エステル結合を不安定化する。しかしながら、臭素(Br)は、著しく疎水性であり、分子の全体的なlog Po/w係数を高くする。Brの添加は、ナノキャリヤ内へのローディング率を高めることもできるが、しかしエステル結合へのヒドロニウム及び水酸化物イオンのアクセス可能性を低減し、カプセル化されたエステルの加水分解速度を低下させることがある。同様に、低速の加水分解は、ミセルコア内へのプロドラッグ分配が親薬物よりも著しく良好である場合には、薬物放出速度を遅くすることができる。Brの代わりに、図47に示したような、電子求引性でない疎水性基、例えばイソプロピル基が使用されると、安定なエステル結合によって高度に分配された薬物を実現することができる。
【0070】
【表1】
表1に示されているように、ゲルダナマイシン・プロドラッグは、高いlog Po/w値によって証明されるように高疎水性である。無改質ゲルダナマイシンのlog Po/wは約2.77であり、この値はPEG-b-PCLによってカプセル化されるのに十分には疎水性ではい。キャリヤの疎水性が約3.5以上である場合には、PEG-b-PCLによる効果的なカプセル化が発生し得る。化合物17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンのlog Po/wは約3.87であり、この値は分子がミセル、例えばPEG-b-PCL内に実質的にカプセル化されるのを可能にするのに十分である。化合物17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンは、log Po/wが約4.49の著しく疎水性の分子であり、ミセル、例えばPEG-b-PCL中にカプセル化されるはずである。
【0071】
図45は、表1に示されているような、17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製するプロセスを示している。17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 3及びX = Hである。17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 9及びX = Hである。17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 13及びX = Hである。17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシンを調製する際には、n = 13及びX = Brである。
【0072】
図45は、脂肪酸鎖の延長を示している。第1のステップでは、ゲルダナマイシン(図45において1で示す)へのエタノールアミンの添加を、約10当量のエタノールアミンを有するクロロホルム中にゲルダナマイシンを約1-約4時間にわたって溶解することにより、達成することができる。反応を薄層クロマトグラフィ(TLC)によって、完了までモニタリングする。有機層を重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、次いでブラインで洗浄する。有機層を次いで硫酸ナトリウム(NaSO4)上で乾燥させ、次いで溶媒を回転蒸発によって除去する。
【0073】
図45の第2ステップにおいて、2として図示されたゲルダナマイシン・プロドラッグ構造に、DMAP/DCC反応によって脂肪酸鎖を添加する。エステルのカルボニルに隣接した疎水性体(例えばBr又はH)とともに、脂肪酸を添加する。第2ステップにおいて、2から生じたゲルダナマイシン・プロドラッグを、約1.5当量の脂肪酸、約3当量のDCC、及び約1当量のDMAPを有する約10 mlのジクロロメタン中に懸濁させる。反応をTLCによって、完了まで約2-約6時間にわたってモニタリングする。溶液を冷却して濾過する。次いで溶液を、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製する。次いで、生成物を得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0074】
図46は、17-アミノ-ヘキシルデシル-17-デメトキシゲルダナマイシンの調製プロセスを示す。図46は、図45とは異なる第1ステップを示しているが、第2ステップは同じである。第1ステップでは、ゲルダナマイシン(図45において1で示す)へのNH2(CH2)15CH3アミンの添加を、約5当量のNH2(CH2)15CH3を有するクロロホルム中にゲルダナマイシンを約1-約4時間にわたって溶解することにより、達成することができる。反応を薄層クロマトグラフィ(TLC)によって、完了までモニタリングする。有機層を重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、次いでブラインで洗浄する。有機層を次いで硫酸ナトリウム(NaSO4)上で乾燥させる。次いで溶液を、シリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして約1:9メタノール:クロロホルムで溶離する。次いで生成物を得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0075】
図47は、17-ヒドロキシエチルアミノ-(1-イソプロピル-パルミネート)-17-デメトキシゲルダナマイシンの調製プロセスを示す。このことは、エタノール中の約1当量のNaOCH2CH3中にジエチルマロネートを懸濁させ、そして約1時間にわたって還流させることにより行われる。次いで約0.95当量の2-ブロモ-イソプロパンを液滴状に添加し、そして約4時間にわたって還流する。2倍の容積の冷水を溶液に添加する。生成物をエーテルによって3回抽出し、次いで減圧蒸留する。イソプロピルマロネートジエステルをエタノール中の約1当量のNaOCH2CH3と混合し、そして約1時間にわたって還流させる。次いで約0.95当量の1-ブロモテトラデクダンを添加し、そして溶液を約4時間にわたって、又は完了までTLCによって還流させる。2倍の容積の冷水を溶液に添加する。生成物をエーテルによって3回抽出し、次いで減圧蒸留する。
【0076】
次いで、2-イソプロピル-2-テトアデクダン-マロネートジエステルを、約1:1のKOH:水中に溶解し、そして約8時間にわたって還流させることができる。次いで固形分がなくなるまで水を添加する。水性層を抽出する。濃塩酸を、固形分がもはやなくなるまで添加する。溶液をエーテルで3回抽出し、そして真空中で低減する。次いで生成物を約3時間にわたって約180℃まで加熱し、そして真空蒸留する。その結果、図2において3として示されたイソプロピルを有する脂肪酸が生じる。次いで、図1aの2におけるゲルダナマイシンプロドラッグを、図2における3と混合する。約3当量のDCCと約1当量のDMAPとを約10 mlのジクロロメタン中に有するイソプロピルを含有する約1.5当量の脂肪酸と、ゲルダナマイシン・プロドラッグとを、約2-約6時間にわたって混合する。溶液を冷却して濾過する。次いで溶液を、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製する。次いで、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチル-2-イソプロピルヘキサデカノエートを得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0077】
図48は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチロネート-Phe-Leu-Phe-アミンの調製プロセスを示す。図45において2として示されたゲルダナマイシン・プロドラッグに、疎水性ペプチドを添加する。3当量のDCC及び1当量のDMAPを、約10 mlのジクロロメタンと一緒に添加する。反応時間は約2-約6時間にわたってよい。溶液を冷却して濾過する。次いで溶液を、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、次いで回転蒸発させる。結果として得られた生成物を、約2:8のピペリジン:DMFと混合し、そして約1-約2時間にわたって反応させる。この溶液を次いで、約1:9メタノール:クロロホルムがローディングされたシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製する。次いで、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチロネート-Phe-Leu-Phe-アミンを得るために、溶液を回転蒸発させる。
【0078】
図49は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチリデン-パルミトヒドラジドの調製プロセスを示す。DCM中の約1当量のDess-Martinを使用して、Fmoc-エタノールアミンをアルデヒドに変換することができる。約20分後、反応物を、約1容積の飽和型重炭酸ナトリウム及び約7当量の飽和型チオ硫酸ナトリウムで希釈することができる。反応物を約20分間にわたって撹拌し、そして実質的に等しい容積のジエチルエーテルで約3回抽出することができる。次いで有機物を約1MのHCl及びH2Oで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして回転蒸発によって溶媒を除去することができる。生成物をシリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして約99:1のEtOac:TEAで溶離した。Fmoc-エチルアルデヒドを約1当量のパルミチン酸ヒドラジドと混合し、そしてEtOH中で一晩にわたって還流することができる。
【0079】
Fmoc-ヒドラジド生成物は、シリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして約89:10:1のクロロホルム:MeOH:TEAで溶離することができる。Fmoc-ヒドラジドは、約2:2:98のDBU:ピペリジン:DMF中で一晩室温で脱保護することができる。生成物(E)-N'-(2-アミノエチリデン)パルミトヒドラジドを濾過し、そして約89:10:1のクロロホルム:MeOH:TEAでフラッシュ・クロマトグラフィによって精製することができる。C17-メトキシにおける求核攻撃によって、ヒドラジドをDMF中のゲルダナマイシンに接合した。生成物17-(2-アミノエチリデン)パルミトヒドラジド-17-ゲルダナマイシンを、シリカ上でフラッシュ・クロマトグラフィによって精製し、そして1:9のMeOH:クロロホルムで溶離した。
【0080】
図50は、PEO-b-PEGAの調製方法を示す。DMF及び2-ヒドロキシピリジン中のHOOC(CH2)5NH2でアミノ分解し、こうしてヒドロキシ部分を組入れる。次いで、生成物を、DCM中のDCC/DMAP化学反応を用いて、17-ヒドロキシエチル-アミノ-17-ゲルダナマイシンに接合する。低温濾過及びエーテル沈澱によって、生成物を精製することができる。
【0081】
ゲルダナマイシンの疎水性を高めることにより、化合物のナノカプセル化を増加させることができる。17炭素におけるゲルダナマイシンのプロドラッグは、ゲルダナマイシンの生体活性に及ぼす影響が、他の位置よりも少ないことが判っているが、しかし、誘導体化はしばしば、特に大型基において活性の減少をもたらす(Sasaki他、米国特許第4261989号(1981年))。
【0082】
Sasakiは、β-ヒドロキシエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン・プロドラッグが、in vitroの生体活性に対して最小限の影響しか及ぼさないことを示した。このプロドラッグは、エステル化を可能にするヒドロキシル基を提供する。エステルプロドラッグは加水分解して、親化合物の活性形態になることができる。
【0083】
ゲルダナマイシンに対する改質は、上記のものには限られない。脂肪酸の代わりに、疎水性ペプチド配列を使用することもでき、そして例えば、エステル結合を用いて、末端C基を介して配列を結合することができる。例えば、フェニルアラニン及びロイシンの配列が用いられてよい。配列は、広範囲の二次構造の形成を防止するために、アミノ酸間に交互に生じることができる。代表的なプロドラッグ、C17-アミノ-エステル-Phe-Leu-Pheが図48に示されている。標準的な固相ペプチド化学物質、例えばFmoc保護型アミノ酸を使用して、HATU/HOAt活性化カップリングを用いて、アミノ酸を集成することができる。結果として生じるN保護型ペプチドは、図47に示されているようなDMAP/DCC化学反応によって接合することができる。接合後、末端アミノ酸Fmoc保護基を除去することができる。
【0084】
エステル以外の他の基を疎水性基の結合のために使用することができ、例えば、中性pHにおける安定性、及び酸性条件における改善された加水分解という利点を有するヒドラゾン・リンカーを使用することができる。腫瘍は、薬物の放出を増強できる酸性環境を提供することができ、これに対して、薬物はナノキャリヤJM血漿中で安定であり、非特異的放出及びその結果としての毒性を低減することができる。1つのリンカーの例が図44に示されている。
【0085】
Hsp90薬物は、他の結合、例えばアセチル及びジスルフィド結合、切断可能なペプチド結合(例えばAla-Val)、又はこれらのリンカーの組合わせを用いて結合することもできる。例えば腫瘍選択的切断型リンカー(例えばAla-Valペプチド)は、C末端を介して脂肪酸又は疎水性ペプチドに結合することができる。N末端は、Hsp90阻害剤に直接に(例えばゲルダナマイシンのC17炭素を介して)、又はスペーサ・リンカー、例えばアミノエタノール又はアミノヘキサノールを介して結合することができる。N末端は、別の切断可能なリンカーを介して結合することもできる。結果として生じる化合物は、Hsp90に対する薬物親和性を低減する嵩高なAla-Val-(薬物リンカー)基に起因して、ナノキャリヤ放出後に、低減された非特異的毒性を示すことができる。Ala-Valの腫瘍特異的開裂後に、結果として生じる化合物は、阻害に十分なHsp90結合を示すことができる。
【0086】
Hsp90阻害剤はナノキャリヤに結合することもできる。可逆的に結合される場合には、薬物はナノキャリヤから放出し、そして生体活性になることができる。不可逆的又は可逆的に結合される場合、結合された薬物の存在は、ミセル内への遊離薬物の分配を増大させることができる。PEO-β-PEGAをキャリヤとして使用する図45に一例が示されている。
【0087】
これらの改質Hsp90阻害剤は、キャリヤからの持続放出を示すことができる。これらのキャリヤのうちのいくつかの放出動態は表2に示されている。25重量%のローディング(又は1.9 mg/mlの溶液)を達成するために、0.5 mM PEG-b-PCL(5000:10000 Da)中に薬物をローディングした。これらのデータは、37℃の完全シンク条件下における10000MWCO透析カセットからpH 7.4のリン酸緩衝剤中への放出を測定することにより得られた。Forrest及びKwon, 2005(Journal of Controlled Release)に記載されているように、薬物拡散を計算した。
【0088】
混和性溶媒中に溶解されたゲルダナマイシン・プロドラッグ及びPEG-PCLを、強力に撹拌された水に液滴状に添加し、続いてN2パージ、及び0.2 μm濾過によって溶媒を除去することによって、PEG-PCLミセルが調製される。或いは、組入れられていない凝集薬物を除去するために、溶液を遠心分離することもできる。最終的な溶媒と水との比は、約0.1-約5、好ましくは約0.5-約4、そしてより好ましくは約2である。ミセル溶液は、約2秒/液滴-約60秒/液滴、好ましくは約5秒/液滴-約30秒/液滴、そしてより好ましくは約10秒/液滴-約20秒/液滴の速度で送達されるべきである。
【0089】
【表2】
【0090】
図51は、ドデコネート、ブロモドデコネート、及びアミノヘキシルデシルを有するゲルダナマイシン・プロドラッグ、C16-アミノ-ゲルダナマイシン、及びC16-ブロモ-エステル-ゲルダナマイシンの持続放出のローディングを示すグラフである。C16-エステル-ゲルダナマイシンを含むPEG-PCLミセルは、約1.1 mg/mlの薬物を担持することができ、そして約13 wt%のキャリヤであってよい。C16-アミノ-ゲルダナマイシンを含むPEG-PCLミセルは、約1.1 mg/mlの薬物を担持することができ、そして約14 wt%のキャリヤであってよい。C16-ブロモ-エステル-ゲルダナマイシンを含むPEG-PCLミセルは、約1.1 mg/mlの薬物を担持することができ、そして約14 wt%のキャリヤであってよい。
【0091】
MDA-MB-468乳癌細胞系(ATCC)に対する薬物の細胞毒性を測定した。96ウェル・プレート(100 μl/ウェルDMEM培地)内に3000細胞/ウェルの密度で細胞を平板培養する。24時間後に、1% DMSO中に溶解した状態で薬物を添加した。4日間にわたって細胞を薬物とともにインキュベートし、そして製造業者の指示(ウィスコンシン州Madison, Promega)に従って、MTS細胞毒性アッセイを用いて毒性を測定した。
【0092】
リンカーの加水分解が低速なので、4日を上回る時間で曝露すると、毒性を増強することができる。
【0093】
【表3】
【0094】
4.5 ミセル内へのパクリタキセル・プロドラッグのローディング
ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-PCL)の両親媒性ブロックコポリマー・ミセルを使用して、Cremephor(登録商標)及び溶媒無しのパクリタキセル製剤を調製した。PEG-PCLのミセル中のパクリタキセルの不良のローディング(<1% w/w)は、パクリタキセルの加水分解可能な脂肪酸プロドラッグを形成することにより克服された。パクリタキセル・プロドラッグの溶解度は、PEG-PCLミセル中5mg/mlを超えた。補助溶媒抽出技術によって、薬物がローディングされたPEG-PCLミセルを調製した。結果として生じたPEG-PCLミセルは、17-22 % w/wのプロドラッグを含有し、そしてその直径は50 nm未満であった。PEG-PCLミセルは、数日間、t1/2>3dにわたってパクリタキセル・プロドラッグを放出した。
【0095】
5.0 発明の種々異なる観点
要約すると、ミセル組成物は、両親媒性ポリマーと、疎水性賦形剤と、疎水性パッセンジャー薬とを含むことができる。両親媒性ポリマーは、ペギル化リン脂質、例えばPEG-DSPE、又はブロックコポリマー、例えばPEG-b-PCL及びPEG-b-アミノ酸であってよい。疎水性賦形剤は、約3.5超のlog Po/w及び約1000 Da未満の分子量を有することができる。疎水性賦形剤はビタミンEであってよく、ビタミンEは、アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、、デルタ-トコトリエノール、を含む多くの異性体を有する。疎水性パッセンジャー薬は、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン・プロドラッグ、ラパマイシン、パクリタキセル、又はパクリタキセル・プロドラッグであってよい。
【0096】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマーであってよく、そして疎水性パッセンジャー薬を、ミセルのために利用することができる。疎水性パッセンジャー薬は、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン・プロドラッグ、ラパマイシン、パクリタキセル、又はパクリタキセル・プロドラッグであってよい。両親媒性ポリマーは、PEG-DSPE、PEG-PCL、又はPEG-ポリアミノ酸であってよい。疎水性賦形剤、好ましくはビタミンEを含むことができる。ミセル組成物の濃度は、約1-約50 mMであってよく、ビタミンEの濃度は約2-約100 mMであってよく、そしてラパマイシン濃度は約0.1-約10.0 mg/mLであってよい。ミセル組成物は、濃度約3-約7 mMの両親媒性ポリマー、濃度約8-約12 mMのビタミンE、及び濃度約0.3-約0.7 mg/mlのラパマイシンを有することもできる。両親媒性ポリマーに対するビタミンEの比率は、約0.2-約50であってよく、そしてミセルの直径は、約200 nm未満であってよい。ポリマーに対するラパマイシンの比率は、約0.1-約4であってよい。
【0097】
ミセル組成物の形成方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性薬を、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し、そして実質的に無溶媒の混合物を残すために、溶液から溶媒の実質的に全てを除去することを含むことができる。この方法はさらに、実質的に無溶媒の混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含むことができる。この方法は、実質的に無溶媒の混合物を残すために溶液から溶媒の実質的に全てを除去する前に、溶液を実質的に水溶液に添加することを含むこともできる。ミセル組成物の形成方法はさらに、前記ミセル組成物中に組入れられていない薬物を除去することを含むことができる。この方法は、約50-約1000 rpmで溶液を回転させる混合工程を有することができる。
【0098】
最終水溶液の特徴として、両親媒性ポリマーの濃度は約0.1 mM-約60 mMであってよく、そして疎水性賦形剤の濃度は約0.1 mM-約600 mMであってよく、そして薬の濃度は約0.1 mg/ml-約10.0 mg/mlであってよい。ほとんどいかなる有機溶媒も、例えばMeOH、アセトン、THF、ACN(これらに限らない)が、全ての成分が可溶性である方法において働くことができる。溶媒は約50:50のクロロホルム:メタン溶液であってよい。加えて、この方法の回転工程と除去工程とは同時に行われてよく、そして再懸濁工程は、約3-約20分間にわたる超音波処理と組合わせることができる。疎水性パッセンジャー薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグであってよい。
【0099】
ラパマイシンを可溶化する方法は、両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及びラパマイシンを、溶液を形成するために有機溶媒中に溶解し;そして前記溶液を混合し;実質的に無溶媒の組成物を形成するために、前記溶液から溶媒を除去し;そして、前記実質的に無溶媒の混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含むことができる。再懸濁工程は、ミセル組成物を形成することができる。ポリマーはPEG-DSPEであってよい。PEG-DSPEに対する疎水性賦形剤の比率は、約0.1-約3であってよい。疎水性賦形剤はビタミンEであってよい。
【0100】
ミセル組成物は、両親媒性ポリマー及びゲルダナマイシンを含むことができる。ミセル組成物は、疎水性賦形剤を含んでもよい。疎水性賦形剤はビタミンEであってよい。ゲルダナマイシンは、約200-約800 μl/mlであってよい。
【0101】
プロドラッグ組成物のlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。プロドラッグはゲルダナマイシン又はパクリタキセルのプロドラッグであってよい。ゲルダナマイシン・プロドラッグは、C17位置のアミノ・スペーサ基と、前記スペーサ基に隣接するR基とを有することができる。R基は、炭素数約4-約24、より好ましくは炭素数約6-約16の炭素鎖であってよい。鎖は飽和型又は部分不飽和型であってよい。R基は、エステル、ブロモエステル、アミノエチル-ヘキソネート、アミノエチル-ドデオネート、アミノエチル-パルミテート、アミノエチル-ブロモパルミネート、又はアミノ-ヘキサデシルであってよい。ミセル組成物は、両親媒性ポリマーとこれらのゲルダナマイシン・プロドラッグのうちの1つとを含んでよい。ゲルダナマイシン・プロドラッグのlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。
【0102】
パクリタキセル・プロドラッグは、アミノ・リンカー基と、前記リンカー基に隣接するR基とを有することができる。当該アミノ・リンカー基は、C7又はC2位置であってもよい。パクリタキセル・プロドラッグのlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。R基は、炭素数約4-約24、より好ましくは炭素数約6-約16の炭素鎖であってよい。鎖は飽和型又は部分不飽和型であってよい。R基は、エステル、ブロモエステル、アミノエチル-ヘキソネート、アミノエチル-ドデオネート、アミノエチル-パルミテート、アミノエチル-ブロモパルミネート、又はアミノ-ヘキサデシルであってよい。ミセル組成物は、両親媒性ポリマーとこれらのパクリタキセル・プロドラッグのうちの1つとを含んでよい。パクリタキセル・プロドラッグのlog Po/wは少なくとも約3.5であってよい。
【0103】
ミセル組成物は:7-パルミテート-パクリタキセル、7-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-パクリタキセル、2-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-7-パルミテート-パクリタキセルのうちの1つを含むパクリタキセル・プロドラッグを含んでよい。ミセル組成物を形成する方法が:少なくとも約3.5のlog Po/wを有するパクリタキセル・プロドラッグを調製し;両親媒性ポリマー、及び前記パクリタキセル・プロドラッグを、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し;実質的に無溶媒の混合物を残すために、前記溶液から溶媒を除去し;そして前記無溶媒混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含んでよい。ミセル組成物を形成する方法は:少なくとも約3.5のlog Po/wを有するパクリタキセル・プロドラッグを調製し;両親媒性ポリマー、及び前記パクリタキセル・プロドラッグを、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し;実質的に無溶媒の混合物を残すために、前記溶液から溶媒を除去し;そして前記無溶媒混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることを含んでもよい。
【0104】
ゲルダナマイシン・プロドラッグを有するミセル組成物を形成する方法は:17-ヒドロキシ-エチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-パルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、17-アミノエチル-ヘキシルデシル-17-デメトキシゲルダナマイシンを含み、又は生成することができる。
【0105】
パクリタキセル・プロドラッグを有するミセル組成物を形成する方法は、7-パルミテート-パクリタキセル、7-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-パクリタキセル、2-パルミテート-パクリタキセル、2-TBS-7-パルミテート-パクリタキセルを含み、又は生成することができる。
【0106】
ヒト又は動物における疾患又は症状の治療方法は、両親媒性ポリマーと、疎水性賦形剤と、疎水性パッセンジャー薬とを含むミセル組成物を投与することを含む。疎水性パッセンジャー薬は、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン・プロドラッグ、ラパマイシン、パクリタキセル、又はパクリタキセル・プロドラッグであってよい。両親媒性ポリマーはPEG-DSPE、PEG-PCL、又はPEG-ポリアミノ酸であってよい。疎水性賦形剤はビタミンEであってよい。ヒト又は動物の疾患又は症状は:癌、神経障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、再狭窄、真菌感染、免疫抑制を含んでよい。真菌感染はCandida albicansであってよい。
【0107】
好ましい実施態様及び実施例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲は、記載した実施態様だけに限定されるものではない。当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲によって定義され制限された本発明の本質及び範囲を逸脱することなしに、上記発明に改変及び適応を加えることができる。本発明の実施態様及び利点を示そうという意図のために、下記実施例を提供するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定しようというものではない。
【実施例】
【0108】
実施例1
ミセル及びパッセンジャー薬の形成
標的として定められた腫瘍に送達されるべきミセル組成物中に、ドキソルビシン及びパクリタキセルを組入れることができる。PEG-ポリ(アスパラギン酸)、PEG-ポリ(アスパラギン酸塩)、PEG-ポリ(ラクチド)、PEG-DSPEが、パッセンジャー薬化合物をカプセル化することができるミセルキャリヤのうちのいくつかである。表1を参照されたい。
【0109】
【表4】
【0110】
実施例2
ラパマイシン・ローディング効率
水中2.6 μg/mlの溶解度を有する、ミセル組成物中へのラパマイシンのローディング。PEG-DSPE中へのラパマイシンのローディング効率は、組入れられたトコフェロールの増大とともに比例的に増大する。PEG-PCL中へのラパマイシンのローディング効率も、組入れられたトコフェロールの増大とともに比例的に増大する。表2を参照されたい。
【0111】
【表5】
【0112】
実施例3
臨界ミセル濃度
臨界ミセル濃度は、ミセル組成物中へのトコフェロールの組入れとともに増大し、これにより、ミセル組成物の安定性を高める。図12を参照されたい。
【0113】
【表6】
【0114】
実施例4
トコフェロール及びラパマイシンが組入れられたミセル組成物の形成
ミセル組成物を形成する滴下状抽出法
図19に従って、両親媒性ポリマー、及び所望のパッセンジャー薬を、これらが優れた溶解度を有する高水混和性溶媒中に溶解する。例えば、MeOH、アセトン、EtOH、アセトニトリル、THF、ジオキサン、及びIPAを含む。
【0115】
例えば、1 mg/mlの薬物と、2.5 mMのPEG-DSPEと、1:2トコフェロールとの0.5 ml溶液を形成するために:
上記量のトコフェロール、PEG-DSPE、及びラパマイシンを、0.5 mlのアセトン中に溶解し、そしてシリンジ内に装入する。この溶液を25-50 μl/分(ほぼ1滴/10-15秒)で水溶液に供給するために、シリンジポンプを使用する。
【0116】
水の容積は、最終的な溶媒対水の比が2:1又はそれ未満となるのに十分であるべきである。典型的には少なくとも1 mlの水が使用されるべきである。
【0117】
水(又はその他の水性緩衝剤[例えばPBS])は、撹拌棒を有する小型ビーカー内に入れ、パラフィルムでカバーし、そして、強力に撹拌しながら撹拌プレート上に置く。供給を開始し、この供給は、供給速度に応じて15-45分で終わるべきである。
【0118】
著しく疎水性のポリマー(例えばPEG 5000:PCL 15000)の場合、より低速の流量(20秒/滴)を用いることができ、そして容易に形成される系(例えばPEG-DSPE)の場合には、この流量を10秒/滴に増大することができる。
【0119】
供給が行われた後、窒素又はその他の乾燥非反応性ガス(例えば精製乾燥空気、アルゴン、ヘリウム)の流れの下にバイアルを置き、そして溶媒を蒸発させる。必要な場合には、水が全てなくなる時点を過ぎても蒸発を続けることにより、溶液を濃縮することができる。共沸形成溶媒(例えばEtOH)に対してアセトンを使用する利点は、これらの条件下で溶媒のすべてを除去できることである。またDMSO又はDMFのような溶媒は、水の前には蒸発しない。加えてバイアルは、溶媒がゆっくり蒸発するのを可能にするために、一晩以上静止していることができる(場合によってはパージガスなし)。このことは、アセトンの存在において膨潤することができ、また、ミセル安定性を可能にするためにアセトンのゆっくりとした除去を必要とするPEG-PCLのような長疎水性鎖ポリマーにとって重要である場合がある。
【0120】
有機物質のすべてを除去した(そして所望の場合には溶液をさらに濃縮した)後、組入れられていない薬物及びその他のミセルではないものの凝集体、>200 nmのサイズの粒子を除去するために、(例えば0.2 μm又は0.45 μmシリンジ・フィルタを通して)溶液を滅菌濾過することができる。あるいは、薬物凝集体を取り除くために、溶液を遠心分離することもできる(例えば5分間にわたって16000 xg)。
【0121】
ミセル組成物を形成する薄膜蒸発法
ミセル組成物の例を形成するための薄膜蒸発法は下記の通りである:
1. 所望のパッセンジャー薬、トコフェロール、及び両親媒性ポリマーを、これらが可溶性である高揮発性有機溶液中に溶解する。図18を参照されたい。
【0122】
2. 5mMのPEG-DSPE、10 mMのトコフェロール、0.5 mg/mlのラパマイシンの最終的な溶液1 mlを形成するために、50:50のクロロホルム:MeOH溶液10 ml中にこれらの成分を溶解する。50-100 mlの丸底真空フラスコ内に入れる。フラスコを回転蒸発器又はrotovap上に置き、そして約100 rpmで回転し、そして溶媒を除去するために真空下に置く。溶媒が「衝突」するか又は激しく蒸発/沸騰してrotovap凝縮器内に逆流しないように、真空を制御することが重要である。
【0123】
3. 溶媒の全てが蒸発された後、全ての微量の溶媒を除去するために、極めて高い真空(10-100 μbar)下に置く。このことは、高いトコフェロール・ローディング率の場合に特に重要である。なぜならば、トコフェロールは油性粘性物質であり、そして溶媒は、トコフェロール含有膜から蒸発するのが遅い場合があるからである。
【0124】
4. 好適な容積の水又は緩衝剤を添加する。この場合には1 mlである。強力に撹拌すると、ミセルが形成される。このことは、5-15分間にわたる超音波処理によって支援することができる。
【0125】
図18によれば、薬物のローディング効率は、薬物対両親媒性ユニマーとの比が2:1に達するまで増大した。ローディング効率は、揮発性溶液中に溶解された所望のラパマイシンの約40 %であった。次いで、所望のラパマイシンのローディング効率は、薬物:ユニマー比が2:1を超えて増大した後、薬物:ユニマー比3:1及び4:1において20 %未満の薬物ローディング効率まで減少した。PEG-DSPEミセル-トコフェロールのサイズは約14±2 nmであることが可能であり、そしてミセル-トコフェロール-ラパマイシン組成物のサイズは約16±2 nmであることが可能である。従ってラパマイシンは、EPR基準を超えるようにはミセル組成物を増大させない。
【0126】
実施例5
ミセル組成物中へのラパマイシン組入れ
ミセル組成物中へのラパマイシンの組入れは、SECによって検出することができる。図24に示されているように、ミセル及びラパマイシンの両方は、カラムを同時に離れ、従ってこれらが1つの化合物中に組入れられていることを示す。組入れられていない両親媒性ユニマーはミセル化合物を形成せず、後でカラムから離れる。この例は、Shodex 804 SECカラムにおいて、0.75 ml/分及び37℃で、そしてRI及び277 nm UV検出で行われた。
【0127】
実施例6
PEG-DSPEミセル単独の不安定性
図14に示されているように、リン酸緩衝食塩水中では、PEG-DSPEミセルは極めて安定である。PEG-DSPEミセル組成物をリン酸緩衝食塩水中で、4 %ウシ血清アルブミン(BSA)と混合すると、ミセル組成物は安定性が著しく低くなり、そしてパッセンジャー化合物は、1時間以内に薬物からクラッシュして流出する。当該ミセル組成物を、7500分子量カットオフ透析から、37℃の脱イオン水中に放出した。
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
トコフェロールが組入れられたときのPEG-DSPEミセルの安定性
図28に示されているように、ミセル組成物にトコフェロールが組入れられていると、組成物は所定の時間経過後も、より安定であり、薬物はクラッシュして流出しない。4 % BSAの存在において、トコフェロールを含まない5mM PEG-DSPEは最初の20時間以内にクラッシュして流出したが、しかし10 mMトコフェロール組成物を含む5 mM PEG-DSPEミセル組成物は、ほとんど60時間にわたって溶液中に一緒に留まった。
【0133】
図16に示されているように、ミセル組成物の約60 %は、少なくとも25時間にわたって無傷のまま留まった。
【0134】
実施例7
トコフェロールを含むミセル組成物のコア剛性
図13に示されているように、トコフェロールが組入れられると、ミセル組成物のコア粘度又は剛性は、僅かに減少する。トコフェロールを含まないPEG-DSPEの相対コア粘度は、約3 Im/Ieを僅かに下回る。トコフェロールがミセル組成物に添加されると、コア粘度は減少する。コア粘度は線形に減少するのではなく、PEG-DSPE:トコフェロールの比が1:1を超えて増大すると、約1 Im/Ieで不変のままになる。ミセル組成物コア剛性が減少すると、ミセル安定性が低減し、そして薬物拡散率が高められることがある。
【0135】
【表11】
【0136】
【表12】
【0137】
実施例8
トコフェロールを有するミセル組成物のコア極性
図17に示されているように、トコフェロール分子が組入れられたミセル組成物のコア極性は、トコフェロール分子を含まないミセル組成物よりも低い。PEG-DSPE単独のコア極性は、約1.1である。PEG-DSPE:トコフェロール比が1:2のPEG-DSPEとトコフェロールとのミセル組成物のコア極性は、約0.8である。トコフェロールの組入れはコア極性を低減し、そしてこれにより疎水性分子のローディング率を増大することができる。このことは、増強された分配に起因して、放出動態に影響を与えることになる。
【0138】
実施例9
トコフェロールを含むミセル組成物のサイズ増大
腫瘍部位への管外溢出の理由から、ミセル組成物のサイズは重要である。ミセルの直径は、腫瘍部位に達するために理想的には約400 nm未満であるべきである。図24に示されているように、ミセル組成物内へのトコフェロールの組入れは、結果として生じるミセル組成物のサイズを直径400 nmを超えては増大させない。
【0139】
実施例10
組入れによる凝集体数の増大
図14に示されているように、ポリマーの凝集体数は、ミセル組成物中へのトコフェロールの組入れに伴って増大する。増大した凝集体数は、拡大されたコアを示すことができる。コアのサイズは、PEG-PCL 1:0 トコフェロールから1:20トコフェロールに対応して、半径が5 nmから6 nmに増大した。コアは、PEG-DSPE 1:0 トコフェロールから1:2トコフェロールに対応して、半径が1.5 nmから3 nmに増大した。PEG-DSPEトコフェロール比1:0.5において、ミセル組成物内部の凝集体数の差は、統計学的に有意になる。
【0140】
実施例11
拡散-蒸発によるラパマイシンのローディング
組入れられたトコフェロールがあるときには、ミセル組成物中のラパマイシンの重量パーセントは、トコフェロール組入れの有益性を示す。図18に示されているように、組入れられたトコフェロールがない場合には、ラパマイシン:ミセル・ユニマー比2:1において、ミセル組成物中のラパマイシンは約20重量%である。1:1又は1:2のいずれかのPEG-DSPE:トコフェロール比がある場合、ラパマイシンの重量%は25 %を超えて増大する。
【0141】
実施例12
ラパマイシン放出に対するトコフェロール効果
図27に示されているように、トコフェロールは、ラパマイシンが極性緩衝溶液中に放出される時間を増大させるが、しかしこの時間の増大は有意ではない。トコフェロールを含まないPEG-DSPEミセルと、トコフェロールが組入れられたPEG-DSPEとの間の薬物保持性の差は、統計学的には有意でない。
【0142】
【表13】
【0143】
【表14】
【0144】
【表15】
【0145】
実施例13
図28に示されているように、4 % BSAを含む溶液中にある場合、PEG-DSPEミセル組成物の薬物保持性に対するトコフェロールの効果は、統計学的に有意である。4 % BSAは、ヒト脊髄中のアルブミンの濃度である。トコフェロールは、改善された薬物送達のためのin vivo条件において、PEG-DSPEミセル組成物を安定に保つのを助ける。
【0146】
【表16】
【0147】
【表17】
【0148】
【表18】
【0149】
実施例14
PEG-PCLミセルの形成、及びパッセンジャー薬のローディング
図29に示されているように、トコフェロールは、PEG-PCLミセル内へローディングすることができるラパマイシン及びゲルダナマイシンの量を高める。PEG-PCL:トコフェロール比が1:10であると、0.34 mg/mlのラパマイシン・ローディング率がもたらされる。これは90%ローディング効率である。PEG-PCL:トコフェロール比が1:20であると、54 %のゲルダナマイシン・ローディング効率がもたらされる。
【0150】
【表19】
【0151】
実施例15
BSA溶液中のPEG-PCLラパマイシン放出
図30に示されているように、PEG-PCLミセル中へのトコフェロール組入れはまた、結果として得られるミセル組成物が4% BSA溶液中にラパマイシンを保持するのを助ける。このことは、in vivo条件における、PEG-PCLミセル内へのトコフェロール組入れの安定化効果を示す。
【0152】
【表20】
【0153】
【表21】
【0154】
【表22】
【0155】
【表23】
【0156】
【表24】
【0157】
実施例16
脳脊髄液中へのシミュレートされた持続放出
0.23 mg/ml BSA中に、PEG-DSPE 2000 1:2トコフェロールを放出した。
【0158】
【表25】
【0159】
実施例17
in vivoラパマイシン研究
動物及び外科的処置
Simonsen Labs(米国カリフォルニア州Gilroy)から、雄Sprague-Dawleyラット(200- 240 g)を得、そして使用前の少なくとも3日間、我々の動物施設においてラットに食餌(Purina Rat Chow 5001)及び水を適宜に与えた。12時間明/暗サイクルの温度調節された部屋内に、ラットを収容した。薬物動態試験の前日に、ハロタン麻酔下でラットの右頸動脈に、滅菌シラスティック・カニューレ(米国ミシガン州Midland, Dowcorning)をカテーテル挿入した。このことは、カニューレ挿入前に血管を露出させることを伴う。カニューレ挿入後、カニューレに接続されたIntramedic PE-50ポリエチレン・チューブ(米国ニュージャージー州Franklin Lakes, Becton, Dickinson and Company)を、背面皮膚を通して体外に出した。カニューレを0.9 %食塩水で洗い流した。動物を代謝ケージに移し、そして一晩断食させた。ワシントン州立大学の施設内動物ケア・使用委員会から動物倫理承認を得た。
【0160】
12匹の雄Sprague-Dawleyラット(平均重量: 220 g)に、前段落に記載したようにカニューレを挿入した。動物のそれぞれを別々の代謝ケージに入れ、一晩回復させておき、そして投与前の12時間にわたって絶食させた。試験当日、DMA、PEG、及びTween 80(対照製剤)、ポリ(エチレングリコール)-β-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-PCL製剤)、又はα-トコフェロールがともに組入れられたPEG-PCL(PEG-PCL + α-トコフェロール製剤)中に溶解されたラパマイシン(10 mg/kg)(各処理群N=4)を、動物に静脈内投与した。一連の血液試料(0.25 ml)を、0、1分、0.5、1、2、4、6、12、24及び48時間目に採取した。各血液試料を2つの0.1 ml画分に分け、第1の画分を、通常のポリプロピレン・マイクロ遠心管内に捕集し、そして全血試料として標識付けし、そして分析まで-70℃で保存した。第2の画分を、ヘパラン処理された管(マサチューセッツ州Mansfield, Monoject)内に捕集し、そして遠心分離に続いて、血漿及び赤血球(RBC)画分を捕集し、そして分析まで-70℃で保存した。
【0161】
Annesley及びClayton、2004 [1]によって以前に記載されたプロトコルを僅かに改変した。我々の目的上、10 ulの全血、血漿、キャリブレータ、又は対照を、通常のポリプロピレン・マイクロ遠心管内に加えた。次いで、250 ulの脱イオン水、250 ulの水性0.1 モル/L硫酸亜鉛、及び内部標準を含有する500 ulのメタノールを加えた。混合物を30秒間にわたってボルテックス処理し、そして管を室温で5-10分間にわたって放置した。次いで、管を4分間にわたって遠心分離し、そして無色の上澄みを分析した。試料の固相抽出(SPE)クリーンアップのために、60 mg、3 mlのOasis HLBカラムを利用した。カラムを、1 mlのメタノールに続いて1 mlの水で準備した。調製された上澄みを、カラムにゆっくりと通し(1-2 ml/分)、次いで、カラムを1 mlの水で洗浄し、そして約30分間にわたって空気乾燥させた。LC/MS分析をAgilent 1100システム上で行った。正イオンモードで、モニタリングされた多重反応モニタリング転移(m/z)は、ラパマイシン931.6→864.5であった。40℃で維持されたWaters Xtterra MS18 2.1 x 100 mmを用いて、分離を行った。注入容積は、0.4 ml/分の流量で25 ulであった。移動相は、(A)水中10 mMの酢酸アンモニウム及び0.1 %の蟻酸、並びに(B)メタノール中の10 mMの酢酸アンモニウム及び0.1 %の蟻酸であった。勾配プログラムは全走行(15分)に関して50 %A及び50 %Bであった。
【0162】
WinNONLIN(登録商標)ソフトウェア(Ver. 1)を使用して薬物動態分析を実施した。平均±標準誤差(S.E.M.)として要約データを表した。対数-線形最終相における血漿濃度の直線回帰によって、消失速度定数(λn)を評価した。投与時から最後の測定濃度までのデータに対応する複合対数-線形台形法則、及び、最後の測定濃度をλnで割算した商を用いて、AUC0-∞を計算した。静脈内投与後のクリアランス(CL)及び分配容積(Vd)を計算するために、非コンパートメント薬学動態法を使用した。血漿中で検出されたラパマイシン濃度を、種々異なるラパマイシン製剤の静脈内投与後の種々異なる時点においてRBC中で検出された濃度で割算することにより、ラパマイシンの血液中分布を計算した。
【0163】
ラパマイシン対照製剤の静脈内投与に続いて、ラパマイシン濃度の僅かな増大が、12時間目に明らかになった。このことは、腸肝循環の可能性を示す(図1)。ラパマイシンの総クリアランスは、1.12±0.14 L/h/kgであることが見極められた(表1)。ラパマイシンの分配容積は、20.94±3.65 L/kgであり、これは体内総水分よりも大きく、このことはラパマイシンが組織内に高分配されていることを示唆する。ラパマイシン濃度は、平均排出半減期11.52±0.57 hで急速に減少するように見えた。経時的な血液中薬物総曝露量を表す曲線下平均面積(AUC)は、8.34±0.91 μg.h/mlであった。
【0164】
ラパマイシンPEG-PCl製剤の静脈内投与(図2)に続いて、ラパマイシンの総クリアランスは、1.11±0.07 L/h/kgであることが見極められた(表1)。ラパマイシンの分配容積は、24.85±2.10 L/kgであり、これは体内総水分よりも大きく、このことはラパマイシンが組織内に高分配されていることを示唆する。ラパマイシン濃度は、平均排出半減期15.55±0.71 hでゆっくりと減少するように見えた。経時的な血漿中薬物総曝露量を表す曲線下平均面積(AUC)は、9.23±0.71 μg.h/mlであった。
【0165】
ラパマイシンPEG-PCL及びα-トコフェロールの製剤の静脈内投与(図3)に続いて、ラパマイシンの総クリアランスは、0.84±0.03 L/h/kgであることが見極められた(表1)。ラパマイシンの分配容積は17.74±1.27 L/kgであり、これは体内総水分よりも大きく、このことはラパマイシンが組織内に高分配されていることを示唆する。ラパマイシン濃度は、平均排出半減期14.63±0.81 hでゆっくりと減少するように見えた。経時的な血液中薬物総曝露量を表す曲線下平均面積(AUC)は、11.93±0.41 μg.h/mlであった。
【0166】
種々異なるラパマイシン配合物の静脈内投与から1分後(図4)及び12時間後(図5)に、血漿/RBS比を計算した。ラパマイシン対照製剤の静脈内投与から1分後及び12時間後の血漿/RBS比は、それぞれ2.21及び0.41である。ラパマイシンPEG-PCL製剤の静脈内投与後の比は、それぞれ3.44及び0.48であり、そしてラパマイシンPEG-PCL + α-トコフェロールの静脈内投与後の比は、それぞれ4.80及び0.76である。
【0167】
ラパマイシン対照製剤の静脈内投与後におけるラットの致死率は40 %であった。この致死は、薬物投与から0-2時間後に発生した。対照動物は一貫して無気力に見えた。ラパマイシン・ミセル製剤のいずれを用いた場合も致死は生じなかった。ラットを代謝ケージ内に保持し、そして24時間のインターバルで尿を採取し、そして容積を測定した。グループ間で腎臓排出量の差はなかった。
【0168】
ラット、サル、ウサギ、及びヒトを含む種々異なる種において広範囲に、ラパマイシン薬物動態を研究した。これらの研究は、ラパマイシンが、5時間超の比較的長い半減期を有する薬物であるとともに、薬物の相当の比率が血管外に滞留し、そして体内に急速に吸収されることを示す分配値容積を有する薬物であることを特徴付けている[2-5]。ラパマイシンは、分配係数(XLogP) 5.773のリン脂質化合物であり、そして高い分配値容積によって証明されるように組織中に高分配される。加えて、ラパマイシンはそのクリアランス値によって示唆されているように高抽出される。
【0169】
研究された種々異なる製剤は、ラパマイシンの薬物動態パラメータの変化を示す。対照製剤における20.94 L/kgからトコフェロール製剤におけるそれぞれ17.75 L/kgへの、ラパマイシンの分配容積(Vd)の変化がある。同様に、2種の製剤は11.52時間(対照)から、PEG-PCL及びPEG-PCL + トコフェロールの15.55及び14.63時間まで半減期を増大させる。対照と比較して2種の製剤の場合にはまた、AUC値が増大し、そしてクリアランス値が減少する。これらの薬物動態パラメータ変化の全ては、ラパマイシンのより高い最終的な体内滞留時間を示し、そして血漿中滞留時間の増大はRBC中へのより少ない分配を示唆し、RBC中へのより少ない分配は、考えられる標的部位へのより良好な分配を容易にすることができ、このことは最終的に、製剤すべてを同じ投与量(10 mg/kg)で投与したと考えて、対照製剤よりも高い薬物効果を発揮することになる。こうして、これらの製剤の薬物動態効果及び薬力学的効果の更なる研究の正当性が保証される。
【0170】
ラパマイシンの血液中分布をin vivoでも研究し、そして血漿/RBS比を、異なるラパマイシン製剤の静脈内投与後の2つの時点(1分目及び12時間目)で計算した。これらの結果は、全ての製剤において、1分目で、赤血球よりも血漿中でより高いラパマイシン分布を示す。しかし12時間後、ラパマイシンは、血漿よりも赤血球中でより高い分布を有する。時点間の血液中分布のこのような変化は、赤血球中のFKBP[FK506結合タンパク質]にラパマイシンが結合するという事実によって説明することができる[6]。このタンパク質結合は、血漿からのクリアランスよりも赤血球からのラパマイシンのクリアランスを低速にして、このような生体分布の変化をもたらすことができる。両時点(1分目及び12時間目)における2種の製剤(PEG-PCL及びPEG-PCL + トコフェロール)は、対照配合物よりも高い血漿/RBC比を示す。このことは、RBCタンパク質に結合されないラパマイシンの濃度が高ければ高いほど、その薬理学的効果を発揮するために、ラパマイシンをより利用しやすくすることを示す。
【0171】
【表26】
【0172】
実施例18
ミセルにおけるゲルダナマイシン・プロドラッグの放出データ
表4に示されているように、ミセル内にローディングされたゲルダナマイシン・プロドラッグは極めて安定である。17-アミノエチル-パルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシン、又は17-アミノエチル-ドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシンがローディングされたミセルは、約8日後にほとんど全ての薬物を放出する。17-アミノエチル-ブロモドデコネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、又は17-アミノ-ヘキシルデシル-17-デメトキシゲルダナマイシンがローディングされたミセルは、約12日後に実質的に全ての薬物を放出する。17-アミノエチル-ブロモヘキソネート-17-デメトキシゲルダナマイシン、又は17-アミノエチル-ブロモパルミテート-17-デメトキシゲルダナマイシンがローディングされたミセルは、約14日後に実質的に全ての薬物を放出する。
【0173】
実施例19
パクリタキセル・プロドラッグ製剤
【表27】
【0174】
7-パルミネート-パクリタキセル4cの合成。2-パルミネート-パクリタキセル4cの合成方法を下に説明する。適宜の無水脂肪酸を置換して、同じ手順に従って4a-bを合成した。
【0175】
2-TBS-パクリタキセル2。1.2 ml乾燥DMF中のパクリタキセル1(300 mg, 0.35 mmol)の溶液に、TBDMSCl(158.84 mg, 1.053 mmol)及びイミダゾール(59.80 mg, 0.8783 mmol)を添加した。反応混合物を12時間にわたって室温で撹拌した。その結果生じた溶液を真空中で乾燥するまで減少させ、2ml CH2Cl2中に再溶解し、飽和型NH4Cl(5 ml x 1)、続いて水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続くシリカ上の調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として2を提供した(310.42 mg, 95 %収率)。
【0176】
【化1】
【0177】
2-TBS-7-パルミネート-パクリタキセル3。1 ml乾燥トルエン中の2(50 mg, 0.053 mmol)の溶液に、無水パルミチン酸(38.3 mg, 0.0774 mmol)を添加した。反応混合物を18時間にわたって90℃で撹拌した。その結果生じた溶液を1-M HCl (5 ml x 1)、続いて水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続くシリカ上の調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として3を提供した(25 mg, 41 %収率)。
【0178】
【化2】
【0179】
7-パルミネート-パクリタキセル4c。1 mlのTHF中の3(25 mg, 0.211 mmol)の溶液に、THF中の1-MのTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)を5滴添加した。反応混合物を1時間にわたって室温で撹拌した。その結果生じた溶液を真空中で乾燥するまで減少させ、2ml CH2Cl2中に再溶解し、水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続くシリカ上の調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として4cを提供した(20 mg, 90 %収率)。
【0180】
【化3】
【0181】
2-パルミネート-パクリタキセル5cの合成
2-パルミネート-パクリタキセル5cの合成方法を下に説明する。適宜の無水脂肪酸を置換して、同じ手順に従って5a-bを合成した。
【0182】
2-パルミネート-パクリタキセル5c。1.5 ml乾燥トルエン中のパクリタキセル1(100 mg, 0.117 mmol)の溶液に、無水パルミチン酸(115.79 mg, 0.234 mmol)及びDMAP(11.435 mg, 0.0936 mmol)を添加した。反応混合物を12時間にわたって室温で撹拌した。その結果生じた溶液を1-MのHCl(5 ml x 1)、及び水(5 ml x 1)で洗浄し、そして有機層をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒除去、及びこれに続く調製TLC(1:1 EtOAc:ヘキサン)により、白色固形物として5cを提供した(60 mg, 47 %収率)。
【0183】
【化4】
【0184】
プロドラッグがローディングされたPEG-b-PCLミセルの調製及び特徴付け。
PEG-b-PCL(5000:10500, Mw/Mn 1.11、カナダ国オンタリオ州Tronto, JCS Biopolytech Inc.)及びプロドラッグを最小容積のアセトン中に溶解し、そしてシリンジポンプを使用して、強力に撹拌されたddH2Oに液滴状に添加することにより、パクリタキセル・プロドラッグがローディングされたPEG-b-PCLミセルを調製した。次いで空気パージ下で撹拌することにより、有機溶媒を除去した。規定されている場合には、空気パージ下における長期蒸発によって、試料をさらに濃縮した。有機溶媒を除去した後、不溶性材料及び組入れられていない薬物を除去するために、PEG-b-PCLミセルを0.22 μmのポリエステルスルホン・フィルターに通した[1]。典型的な試験において、1 μMのPEG-b-PCLを0.75 mlの乾燥アセトン中に溶解し、そして、2 mlのddH2Oに液滴状に添加し、揮発性有機溶媒の除去後、0.5-mMのPEG-b-PCLミセルを産出した。
【0185】
PEG-b-PCLミセル中へのプロドラッグの組入れを、ゲル透過クロマトグラフィから得られたUV及びRIクロマトグラフにおける同等の保持時間によって検証した。OHpak SB-806M GPCカラム(20-μL注入、0.5-mM PEG-b-PCL、0.75 ml/分のddH2O、10℃)(日本国川崎Shodex)上に、PEG-b-PCLミセルを注入し、そして屈折率(RI)及びUV吸光度(232nm)によってこれを検出した。0.01 %(v/v)トリフルオロ酢酸-ACN勾配(40-100 % ACN、50℃、232-nm検出)を使用した逆相HPLC(Alltech Econosphere 3-μm 4.6 x 50 mm)によって、PEG-b-PCLミセル中へのプロドラッグのローディングを定量した。動的光散乱(DLS)(NICOMP 380 ZLS, Particle Sizing Systems, カリフォルニア州Santa Barbara)によって、PEG-b-PCLミセルの流体力学的直径を測定した。強度計量されたガウス分布のフィッティング(NICOMP version 1.76)によってデータを分析した。最小10分間、又は少なくとも100 x 105カウントでチャネル1において測定を行った。
【0186】
PEG-b-PCLミセル・プロドラッグ放出試験。放出試験はEisenberg及び共同研究者(Soo, P.L.他、2002)の方法に基づいたものであり、温度及びpH制御の改変を伴った。ミセル・プロドラッグ溶液を、上記20% w/wのプロドラッグを有する0.5 mM(PEG-b-PCLベース)で調製し、そして、各溶液0.5 mlをddH2Oで2.5 mlまで希釈し、そして10000 MWCO透析カセット(イリノイ州Rockford, Pierce)内に注入した(n=4)。十分に混合された、37℃の温度制御水浴内に透析カセットを入れ、浴容積が15-20分毎に新鮮になるように、ddH2Oでオーバフローさせた。pHを7.4±0.05に維持するために、コンピュータ制御下の蠕動ポンプが、三塩基性及び一塩基性リン酸塩の50-g/L溶液を別個に注入した(内部に組付けられた装置)。固定された時点において、透析カセット容積をddH2Oで2.5 mlまで形成し、100-μLアリコートを回収し、そして逆相HPLCによってプロドラッグ濃度を測定した(上記参照)。
【0187】
Crankの解を使用して短時間の浸透不能な球体からのフィック拡散として放出をモデリングすることにより、前述のように、拡散定数及び放出半減期を測定した[1]。Sigma Plot 9.0(Sysstat Software, Inc.)において、放出データの線形回帰を実施した。独立した試料(n ≧3)に対して拡散定数を測定し、平均±標準偏差として報告した。50%薬物放出に関して、Crankの解において計算された拡散定数を使用して、放出半減期を検出した。
【0188】
オクタノール-水分配係数。パクリタキセル・プロドラッグのオクタノール-水分配係数(log Po/w)を、Klotz他の技術に基づいて、マイクロエマルジョン界面動電クロマトグラフィ(MEEKC)によって間接的に測定した(22)。25-mMの第一リン酸ナトリウムを50-mMの四ホウ酸ナトリウムとともにpH 7.00まで滴定することにより、ランニング緩衝剤を調製し、そして、1.44 gのドデシル硫酸ナトリウム、6.49 gの1-ブタノール、及び0.82 gのヘプタンを、リン酸塩-ホウ酸塩緩衝剤とともに、最大100 mlにした。ランニング緩衝剤を、氷水中の閉じられた250-mlのフラスコ内に30分間にわたって超音波処理した(G112SP1 Special Ultrasonic Cleaner, ニューヨーク州Hicksville, Laboratory Supplies Company Inc.)。低出力の超音波処理装置を用いると、安定なエマルジョンを得るために必要となる時間が長くなることがある。閉じた管内で超音波処理(10分間)を施すことにより、化合物及び標準(n=3)を、0.5 μL/mlのニトロメタン及び0.5 μL/mlの1-フェニルドデカンとともに、ランニング緩衝剤(0.05 mg/ml)中に溶解し、そして脱ガスするために遠心分離した(16000 x g, 3分)。
【0189】
50-μm ID x 37-cmの無被覆の融解シリカ・カラム(アリゾナ州Phoenix, Polymicron Technologies LLC)を備えたBioFocus 3000毛管電気泳動システム(カリフォルニア州Hercules, Bio-Rad)を、MEEKC試験のために使用した。カラムを1-M NaOHで5分間、走行前に0.1-M NaOHで1分間、ddH2Oで1分間、そしてランニング緩衝剤で1分間、100 psi(690 kPa)で予洗浄した。ランニング条件は、20℃における10 kV(約30-35 μA、30分/走行)であり、1-psi・sの注入(6.9 kPa・s)そして210及び232 nmにおける検出を伴う。
【0190】
Log Po/w及び保持因子k'を、等式:
log Po/w = a・logk' + b
【数1】
を使用して計算した。上記式中、tr、t0、及びtmeは、それぞれプロドラッグ、ニトロメタン、及び1-フェニルドデカンの保持時間である。フィッティング・パラメータa及びbを、既知の標準:ピリジン、フェノール、安息香酸、アニソール、ベンゼン、トルエン、ドデカン酸、ベンゾピレン、及びピレンの線形回帰によって測定した(R2 = 0.996、Excel(登録商標)2003, Microsoft Corp.)。
【0191】
細胞毒性の検出
10 %ウシ胎仔血清、100 IUペニシリン、及び100 μg/mlのストレプトマイシン、2 mMのL-グルタミンを補足された90 μLのRMPI 1640(MCF-7)又はDMEM(MDA-MB-231)中に1ウェル当たり細胞数5000の初期密度で、MCF-7及びMDA-MB-231ヒト乳癌細胞(American Tissue Type Collection)を96-ウェルプレート内で平面培養し、そして5% CO2雰囲気中で37℃で維持した。24時間後、DMSO中の試験化合物を成長培地で10倍に希釈し、そして10-μLアリコート(1% v/v 最終DMSO濃度)として、ウェル(2つのウェルを3部、n=6)に添加した。細胞を化合物とともに96時間にわたってインキュベートし、そして代謝速度をXTTアッセイを用いて測定した。手短に述べるならば、調製したばかりのアッセイ溶液20 μL (PBS中の1 mg/mlのXTT、及び0.1 mg/mlのN-メチルフェナゾニウムメチルスルフェート)を各ウェルに添加し、細胞を4時間にわたってインキュベートし、そして630 nmにおけるバックグラウンド減算を伴って、550 nmにおいて吸光度を測定した。50 %だけ細胞成長を阻害する濃度(IC50)を、Sigma Plot 2004(Systat Software, Inc.)を用いて、固定されたHill勾配回帰によって測定し、そしてこれを個々の測定値の平均±標準偏差として報告した。
【0192】
【表28】
【0193】
aは、20% w/w薬物で調製された、薬物がローディングされたミセルのガウス強度計量によるDLSからの流体力学的直径である。実際には、ローディングは、下記表2:パクリタキセル・プロドラッグの溶解度パラメータ及びPEG-b-PCL溶解度において記載されている通りである。
【0194】
【表29】
【0195】
aは、0.5-mM PEG-b-PCLミセル中20% w/wのプロドラッグ・ローディングに基づく溶解度及びカプセル化である。結果に±標準偏差(n=3)が与えられる。bについて、括弧内の結果は、元の容積の25 %まで蒸発させて再濾過(0.22-μm)した後のものである。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1は、疎水性コアと親水性コロナとを含む、薬物送達のためのミセル構造を示す概略図である。
【図2】図2は、疎水性相互作用を介して臨界ミセル濃度超のユニマーによってミセルを形成する様子を示す概略図である。
【図3】図3は、ミセル濃度の関数として極性を示すグラフである。
【図4】図4は、ミセルが静脈内投与される様子、及び漏えい脈管構造に基づいて腫瘍によって取り込まれる様子を示す概略図である。
【図5】図5は、PEG-DSPEの構造を示す図である。
【図6】図6は、PEG-PCLの構造を示す図である。
【図7】図7は、PEG-DSPE中へのトコフェロールの組入れを示す概略図である。
【図8】図8は、トコフェロールの構造を示す図である。
【図9】図9は、ラパマイシンの構造を示す図である。
【図10】図10は、ゲルダナマイシンの構造を示す図である。
【図11】図11は、パクリタキセルの構造を示す図である。
【図12】図12は、PEG-DSPE対トコフェロールの種々異なる比における臨界ミセル濃度を、PEG-DSPEミセルの濃度の関数として示すグラフである。
【図13】図13は、PEG-DSPE対トコフェロールの比の関数として、相対コア粘度を示す棒グラフである。
【図14】図14は、PEG-DSPE対トコフェロールの種々の比の関数として、コア内部の増大した凝集体数を示す棒グラフである。
【図15】図15は、リン酸緩衝生理食塩水中及び4%ウシ血清アルブミン中のPEG-DSPEミセルの安定性を、時間の関数として示すグラフである。
【図16】図16は、4%ウシ血清アルブミン中のPEG-PCLミセルの安定性を、時間の関数として示すグラフである。
【図17】図17は、4%ウシ血清アルブミン中のPEG-DSPEミセルの安定性を、時間の関数として示すグラフである。
【図18】図18は、PEG-DSPE対トコフェロールの種々の比、及び種々のPEG-DSPE濃度に対応する、PEG-DSPEミセルのコア極性を示すグラフである。
【図19】図19は、PEG-DSPE対トコフェロールの比1:2、1:1、及びトコフェロール無しに対応して、拡散-蒸発によるラパマイシン・ローディング効率を、ラパマイシンと両親媒性ポリマーとの比の関数として示すグラフである。
【図20】図20は、PEG-DSPEミセルの形成方法を示す概略図である。
【図21】図21は、ポリマーミセルの液滴式形成方法を示す概略図である。
【図22】図22は、ミセル中のラパマイシン・ローディング効率を、ラパマイシンと両親媒性ポリマーとの比の関数として示すグラフである。
【図23】図23は、アルブミンの存在におけるラパマイシン放出を、種々異なるウシ血清アルブミン濃度における時間の関数として示すグラフである。
【図24】図24は、血清アルブミン、フィブリノゲン、及びウシ膵臓トリプシン阻害薬と、PEG-DSPEミセルとの相互作用を示す棒グラフである。
【図25】図25は、トコフェロール組入れが、結果として生じるミセルのサイズにどのような影響を及ぼすかを示す棒グラフである。
【図26】図26は、サイズ排除クロマトグラフィを介してミセル内のラパマイシンの組入れを示すグラフである。
【図27】図27は、短時間にわたる球体からのフィック拡散に基づく放出動態の分析を示す図である。
【図28】図28は、リン酸緩衝生理食塩水中のPEG-DSPEミセルからのラパマイシン放出に関するトコフェロールの効果を示すグラフである。
【図29】図29は、4%ウシ血清アルブミン中のPEG-DSPEミセルからのラパマイシン放出に関するトコフェロールの効果を示すグラフである。
【図30】図30は、トコフェロールの存在におけるPEG-PCLミセルの安定性を示す図である。
【図31】図31は、トコフェロールが組入れられたPEG-PCLミセルからのラパマイシンの放出を、リン酸緩衝生理食塩水中の時間の関数として示すグラフである。
【図32】図32は、トコフェロールが組入れられたPEG-PCLミセルからのラパマイシンの放出を、4%ウシ血清アルブミン中の時間の関数として示すグラフである。
【図33】図33は、静脈内投与に続く全血中のラパマイシン対照製剤の体内動態を示すグラフである。
【図34】図34は、静脈内投与に続く全血中のラパマイシンPEG-PCl製剤の体内動態を示すグラフである。
【図35】図35は、静脈内投与に続く全血中のラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤の体内動態を示すグラフである。
【図36】図36は、静脈内投与から1分後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤に対応する、血漿中又は赤血球中のラパマイシン濃度を示す棒グラフである。
【図37】図37は、静脈内投与から1分後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤の、血漿/RBC比を示す棒グラフである。
【図38】図38は、静脈内投与から12時間後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤に対応する、血漿中又は赤血球中のラパマイシン濃度を示す棒グラフである。
【図39】図39は、静脈内投与から12時間後の、ラパマイシン対照製剤、ラパマイシンPEG-PCl、及びラパマイシンPEG-PCl + α-トコフェロール製剤の、血漿/RBC比を示す棒グラフである(N = 4平均±SEM)。
【図40】図40は、ゲルダナマイシンの標的(ボックス内)を示す概略図である。
【図41】図41は、ゲルダナマイシン及びゲルダナマイシン・プロドラッグの特性を示す図である。
【図42】図42は、ミセル中へのゲルダナマイシンのローディング・パーセンテージを示す図である。
【図43】図43は、ゲルダナマイシンの脂肪酸プロドラッグの調製を示す図である。
【図44】図44は、種々異なるゲルダナマイシン・プロドラッグの親油性及びローディング・パーセンテージを示す図である。
【図45】図45は、ゲルダナマイシンのC17位置に脂肪酸を添加するプロセスを示す概略図である。
【図46】図46は、ゲルダナマイシン-C17-アミノ-ヘキサデカンを形成するプロセスを示す概略図である。
【図47】図47は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチル-2-イソプロピルヘキサデカノエートを形成するプロセスを示す概略図である。
【図48】図48は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチロネート-Phe-Leu-Phe-アミンを形成するプロセスを示す概略図である。
【図49】図49は、ゲルダナマイシン-C17-アミノエチリデン-パルミトヒドラジドを形成するプロセスを示す概略図である。
【図50】図50は、PEO-β-PEGAを形成するプロセスを示す概略図である。
【図51】図51は、経時的なゲルダナマイシン・プロドラッグ放出を示すグラフである。
【図52】図52は、ミセル内のゲルダナマイシン・プロドラッグのカプセル化、及び経時的な放出を示すチャート及びグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性ポリマー、約3.5超のlog Po/w及び約1000 Da未満の分子量を有する疎水性賦形剤、並びに疎水性パッセンジャー薬を含む、ミセル組成物。
【請求項2】
前記両親媒性ポリマーが、ペギル化リン脂質及びペギル化ブロック・コポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載のミセル組成物。
【請求項3】
前記疎水性賦形剤がビタミンEを含む、請求項1に記載のミセル組成物。
【請求項4】
前記疎水性パッセンジャー薬が、ラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択される、請求項1に記載のミセル組成物。
【請求項5】
両親媒性ポリマー、並びにラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択された疎水性パッセンジャー薬を含む、ミセル組成物。
【請求項6】
疎水性賦形剤をさらに含む、請求項5に記載のミセル組成物。
【請求項7】
前記両親媒性ポリマーが、PEG-DSPE、PEG-PCL、及びPEG-ポリアミノ酸から成る群から選択される、請求項5に記載のミセル組成物。
【請求項8】
前記疎水性賦形剤がビタミンEである、請求項6に記載のミセル組成物。
【請求項9】
前記両親媒性ポリマーに対する前記ビタミンEの比率が、約0.2-約50である、請求項6に記載のミセル組成物。
【請求項10】
ミセル組成物の形成方法であって、以下のステップ:
両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性薬を、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し;そして
実質的に無溶媒の混合物を残すために、前記溶液から前記有機溶媒の実質的に全てを除去する、
を含む、上記方法。
【請求項11】
前記実質的に無溶媒の混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
実質的に無溶媒の混合物を残すために前記溶液から前記有機溶媒の実質的に全てを除去する前に、前記溶液を実質的に水溶液に添加することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記両親媒性ポリマーの濃度が約0.1 mM-約60 mMであり、そして前記疎水性賦形剤の濃度が約0.1 mM-約600 mMであり、そして前記薬の濃度が約0.1 mg/ml-約10.0 mg/mlである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記疎水性薬が、ラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性薬が、ラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ゲルダナマイシン及びパクリタキセルから成る群から選択された、少なくとも約3.5のlog Po/wを有するプロドラッグ組成物。
【請求項17】
前記ゲルダナマイシンが、C17位置のアミノ・スペーサ基、及び前記スペーサ基に隣接するR基を有す、請求項16に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項18】
前記R基が、炭素数約4-約24の炭素鎖を含む、請求項17に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項19】
前記パクリタキセルが、アミノ・リンカー基、及び当該アミノ・リンカー基に隣接するR基を有している、請求項16に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項20】
前記パクリタキセルが、C7位置にアミノ・リンカー基を有する、請求項19に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項21】
前記R基が、エステル、ヒドラゾン、及びジスルフィドから成る群から選択された化合物を有するR基を含む、請求項16に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項22】
前記R基が、炭素数約4-約24の炭素鎖を含む、請求項19に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項1】
両親媒性ポリマー、約3.5超のlog Po/w及び約1000 Da未満の分子量を有する疎水性賦形剤、並びに疎水性パッセンジャー薬を含む、ミセル組成物。
【請求項2】
前記両親媒性ポリマーが、ペギル化リン脂質及びペギル化ブロック・コポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載のミセル組成物。
【請求項3】
前記疎水性賦形剤がビタミンEを含む、請求項1に記載のミセル組成物。
【請求項4】
前記疎水性パッセンジャー薬が、ラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択される、請求項1に記載のミセル組成物。
【請求項5】
両親媒性ポリマー、並びにラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択された疎水性パッセンジャー薬を含む、ミセル組成物。
【請求項6】
疎水性賦形剤をさらに含む、請求項5に記載のミセル組成物。
【請求項7】
前記両親媒性ポリマーが、PEG-DSPE、PEG-PCL、及びPEG-ポリアミノ酸から成る群から選択される、請求項5に記載のミセル組成物。
【請求項8】
前記疎水性賦形剤がビタミンEである、請求項6に記載のミセル組成物。
【請求項9】
前記両親媒性ポリマーに対する前記ビタミンEの比率が、約0.2-約50である、請求項6に記載のミセル組成物。
【請求項10】
ミセル組成物の形成方法であって、以下のステップ:
両親媒性ポリマー、疎水性賦形剤、及び疎水性薬を、溶液を形成するために有機溶媒中に混合し;そして
実質的に無溶媒の混合物を残すために、前記溶液から前記有機溶媒の実質的に全てを除去する、
を含む、上記方法。
【請求項11】
前記実質的に無溶媒の混合物を水又は緩衝剤中に再懸濁させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
実質的に無溶媒の混合物を残すために前記溶液から前記有機溶媒の実質的に全てを除去する前に、前記溶液を実質的に水溶液に添加することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記両親媒性ポリマーの濃度が約0.1 mM-約60 mMであり、そして前記疎水性賦形剤の濃度が約0.1 mM-約600 mMであり、そして前記薬の濃度が約0.1 mg/ml-約10.0 mg/mlである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記疎水性薬が、ラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性薬が、ラマパイシン、パクリタキセル、パクリタキセル・プロドラッグ、ゲルダナマイシン、及びゲルダナマイシン・プロドラッグから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ゲルダナマイシン及びパクリタキセルから成る群から選択された、少なくとも約3.5のlog Po/wを有するプロドラッグ組成物。
【請求項17】
前記ゲルダナマイシンが、C17位置のアミノ・スペーサ基、及び前記スペーサ基に隣接するR基を有す、請求項16に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項18】
前記R基が、炭素数約4-約24の炭素鎖を含む、請求項17に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項19】
前記パクリタキセルが、アミノ・リンカー基、及び当該アミノ・リンカー基に隣接するR基を有している、請求項16に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項20】
前記パクリタキセルが、C7位置にアミノ・リンカー基を有する、請求項19に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項21】
前記R基が、エステル、ヒドラゾン、及びジスルフィドから成る群から選択された化合物を有するR基を含む、請求項16に記載のプロドラッグ組成物。
【請求項22】
前記R基が、炭素数約4-約24の炭素鎖を含む、請求項19に記載のプロドラッグ組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【公表番号】特表2008−535927(P2008−535927A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506677(P2008−506677)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013800
【国際公開番号】WO2006/110862
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506097988)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013800
【国際公開番号】WO2006/110862
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506097988)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション (14)
【Fターム(参考)】
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