説明

ポリマー層を含む基材およびその調製方法

本発明は、少なくとも下記の構成材:(a)少なくとも1種のセラミック構成材または少なくとも1種の天然石構成材を含む組成物から形成される基材と;(b)少なくとも1種の官能化オレフィンポリマーを含む組成物から形成されるポリマー層とを含み、このポリマー層が、基材の1つの表面上に形成されている物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2007年9月3日出願の、また参照により本明細書中に全て組み込まれている国際特許出願第PCT/ES2007/070154号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、ポリマー層を含む基材、およびその製造方法を提供する。それぞれのポリマー層は、少なくとも1種の官能化(functionalized)オレフィン系樹脂を含む組成物から形成される。それぞれの基材は、少なくとも1種のセラミック構成材または少なくとも1種の石構成材を含む組成物から形成される。
【背景技術】
【0003】
ファサード(facade)工事(例えば、裏通気型(back-ventilated)ファサード)では、仕上げ用スラブ(セラミック(陶磁器)タイル)は枠内に固定され、裏側壁部には個々に取り付けられていない。したがって、仕上げ材上への硬い物体の衝撃(例えば落下する石)が原因で、スラブの破壊が起こる可能性があり、破壊したスラブの破片もしくはスラブ全体が外れて、枠から落下する恐れがある。最悪のシナリオでは、スラブ構成物の全体が崩壊し、落下する恐れがある。C.T.Grimmは、この問題を次のように引用した:「米国のどこかで、およそ3週間ごとに、建物のファサードから組積物(masonry)が外れて落下している。過去数年にわたって米国においてこのような組積物の破壊少なくとも49件で30人が死亡し、81人が負傷している。」(Clayford T.Grimm(ASTM会員)、2003年8月)。したがって、例えばフィルムなどの安定化エレメントへの接着によるスラブ(例えば、セラミックタイル)の保全性(integrity)向上が必要とされる。
【0004】
ドイツ特許出願第DE19934451A1号は、裏通気型ファサード仕上げにおいて使用されるファサード複合パネルに関する。この複合材料は、4mm厚の天然石表面で作られ、鉱物質結合ポリスチレン粒子で作った支持スラブに接合されている。
【0005】
ドイツ特許出願第DE10342357A1号は、一緒に接合された数層から構成される天然石複合パネルに関し、この場合、支持スラブは軽量構造のものである。適切な接着層は接着性エポキシ樹脂であり、1層は繊維補強プラスチック複合層から構成されるものとし得る。天然石層は任意の薄さとすることができる。軽量支持体は中空断面の部分として組み立てられ、高弾性をもたらし、またケーブルを容易に設置可能としている。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0159900A1号は、第一ステップとして感圧ホットメルト接着剤(酢酸ビニル、ビニルコポリマーおよび/または粘着付与性樹脂、ポリエチレン系組成物)を使用し、第二により強い、より永久的な硬化性ポリウレタン樹脂を使用した芯板に接着させた硬質表面板(veneer)(例えばセラミック、磁器、大理石、御影石または石材)を開示している。この発明は、組合せ(interlockable)タイルを特徴とする積層床仕上げ材に関する。
【0007】
米国特許第3,950,202号は、支持体(合板もしくはハニカム材料)に接着剤で接合した天然石スラブ、例えば大理石もしくは御影石で作った板製品を開示している。ハニカム材のセルには、断熱もしくは防音材料、例えば発泡ポリウレタン、ポリスチレン、ガラス繊維または石綿繊維などを充填することができる。
【0008】
米国特許第3,724,152号は、建築用等級大理石、御影石などの仕上げ用シートと、硬質石材例えば大理石もしくは御影石などの支持部材と、コンクリートまたはコンクリートおよび中空ブロックの組合せからなる裏当て(backing)部材とを備える組積用積層板を開示している。仕上げ用シートは、高強度、無収縮、急速硬化性接着材(例えばセメントモルタルもしくはエポキシセメント)の薄層によって支持体に接合され、金属棒により接合部が補強される。
【0009】
米国特許第6,698,149B1号は、発泡性芯材(PS、PEもしくは類似材料)と、発泡性芯材の少なくとも1面に取り付けた薄い布マットと、タイル、れんがもしくは石などの耐久性材料とで構成された装飾用複合積層建材(非荷重支持用)を開示している。耐久性材料は、結合剤によって布マットに取り付けられる。布マット(織布もしくは不織布)は、ガラス繊維、ナイロン、ポリエステルもしくはKevlar(登録商標)繊維などの強い材料で作られることが好ましい。積層構成材は、熱硬化性ポリエステル、ポリウレタンもしくはスチレンなどの接着性樹脂を使用して互いに接合される。場合によって、このパネルは、露出された外装表面を被覆する最終仕上げ材を含むことができる。最終仕上げ層は、上記において考察した接着材またはアクリル、エポキシ、ポリウレタンもしくは粉体塗膜とすることができる。
【0010】
欧州特許EP1273432B1号は、家具部材を作るための、第一のプレートエレメントと第二のプレートエレメントを備える複合パネルを開示している。第一のプレートエレメントおよび第二のプレートエレメントは、金属材料で作った波形スペーサによって連結される。第一のプレートは、セラミック、石もしくは大理石材料で作られる。第二のプレートは、合成積層材料、ガラス−樹脂材料、ガラス布材料、プレキシグラス材料、種々のプラスチックもしくは合成樹脂から作ることができる。
【0011】
ドイツ特許出願第DE3804311A1号は、大型寸法シート、および特にファサードに仕上げ材を取り付けるのに使用する比較的薄いシートであり、セラミック、せっ器、天然石もしくは人造石で作られ、反対側にコーティングを有するシートを開示している。このコーティングまたは枠(もしくは両方)は、ガラス繊維強化したもしくはガラス繊維強化しないエポキシ樹脂製である。無機材料のシートは、ガラス繊維強化したエポキシ樹脂の平坦な裏当て材を有することができ、この裏当て材を外側に現わして、シートの枠を作ることができる。この無機材料は、いくつかの平面部分で作ることもでき、これらをその端部に沿って一緒に接合して、1つの大きい直角領域を形成し、その場合裏当て材も端部の接合を提供する。裏当て材そのものが、例えば、ガラス繊維で強化した1層と、ガラスマットで強化した次層とを有する集成構造を有することができる。製品は、破壊に耐える十分な機械的強度を有し、またそれらは寸法的に十分に正確であり、トリミングを要しない。
【0012】
欧州特許出願EP0596681A1号は、耐水性の組積物接合可能な膜であって、柔軟なシート材料、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、または、塩化ビニルモノマーと少量のコモノマー、例えばアクリル酸のエステル、酢酸ビニル、メタクリル酸のエステル、スチレン、スチレン誘導体、ジオレフィンおよびモノオレフィンなどとから作ったコポリマー、の層を含む積層体を含む膜を開示している。コモノマーの量は一般に、30重量パーセントまでである。次いで、第二の同様なポリ塩化ビニルの積層体シート(不織繊維層がそれに結合している)が、第一の積層体に接合され、これらの層が熱および圧力により一緒に溶着されて、単一の4層積層体を形成し、これを例えばモルタルもしくはセメントを使用し、コンクリート基板に接合させて、セラミックタイルなどの外装組積物品のための耐水性および耐亀裂性ベースを形成することができる。
【0013】
米国特許第5,860,255号(ドイツ特許出願第19719655A1号をも参照されたい)は、耐水性の組積物接合可能な膜であって、プラスチゾルなどの柔軟性接着剤によって一緒に接合された、少なくとも2層の柔軟性材料を含む芯部と、この芯部の少なくとも一方の側面に直接物理的に接合された不織繊維層とを有する積層体を含む膜を開示している。柔軟性ポリマーの例には、ポリ塩化ビニル;塩素化ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;または、塩化ビニルモノマーと少量のコモノマー、例えばアクリル酸のエステル、酢酸ビニル、メタクリル酸のエステル、スチレン、スチレン誘導体、ジオレフィンおよびモノオレフィンなどとから作ったコポリマーが含まれる。コモノマーの量は一般に、30重量パーセントまでである。この積層体は、例えば市場およびショッピングセンターで、またセラミックタイル、セメントスラブおよび大理石で仕上げたテラスおよび地下室壁上で、組積工事体と、セラミックタイルなどの仕上げ材の間において役立つものである。柔軟性層中に一部埋め込まれている不織繊維層は、低温および高温で、例えばモルタルまたはセメントとの良好な機械的結合をもたらす。
【0014】
ドイツ特許出願第DE19940219A1号は、亀裂および石目を有する人造石の、布補強積層体を裏当てした薄形自立パネルを含む迅速石積み仕上げシステムを開示している。このシステムは、平坦面の装飾仕上げのため有用であり、亀裂および石目が天然の、無頓着な外観をもたらす。この参考文献は、発泡ポリスチレンおよびアクリルまたは無水石膏の化学作用を含む接着性充填複合材料で構成されたタイル裏面上の積層体を開示している。
【0015】
欧州特許出願EP810085A1号は、特に内装および外装壁化粧パネル用積層材料であり、接着材層によって少なくとも1枚のガラスシートに取り付けられた岩石特に大理石などの装飾用岩石の層からなる積層材料を開示している。この積層材料は半透明であり、背面照明に適したものとなっており、また接着材は透明であり、ポリウレタン熱可塑性プラスチックを主成分とする。変形形態として、接着材は、熱可塑性材料、例えばポリウレタン、ポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテートまたはシリコーンの予備形成層とすることができる。さらなる樹脂には、エポキシ、熱可塑性ポリウレタン、オルガノシランおよびポリカーボネートが含まれる。岩石およびガラス層は組み立てる前に、例えば樹脂をコーティングし続いてガンマ線硬化させることにより、またはオルガノシラン材料例えばg−グリシドキシプロピルトリメトキシシランでプライマー処理することによって処理されて、それらに接着性向上をもたらしている。
【0016】
米国特許第5,052,161号は、剛性のベースもしくは基材(典型的には木材またはコンクリート)、外側のセラミックタイルもしくは外側の破壊可能な(fracturable)材料、ならびにベースとタイルとの間に差し込まれた衝撃強度の高い「亀裂アイソレーションシート」を備えた床仕上げ構造を開示している。「亀裂アイソレーションシート」は、耐衝撃性材料で作られ、規則正しい一連の直立した突起の列を有する(それぞれの突起は環状の窪みで囲まれている)薄い基部を備える。「亀裂アイソレーションシート」の基部部分は、接着剤でベースもしくは基材に接合される。このシートは、ABSおよびポリエチレンなどの他の熱可塑性材料も使用できるが、高衝撃用ポリスチレンなどの熱可塑性であることが好ましい。適切な接着剤は、ゴム系またはポリウレタン系である。
【0017】
米国特許第4,832,995号は、壁用もしくは床仕上げ用被覆材として使用するための積層パネルであり、繊維強化した不透水性の裏当て層に接合されたセラミックタイルの予備グラウト層を備える積層パネルを開示している。パネルの前面に取り外し可能な化粧層を接着させて、積層板を完成させる。この化粧層により、パネルは出荷、取扱いおよび取付けの間強度および剛性の増加が付与され、またセラミックタイルを破損せずに、普通の大工道具を使用してパネルを切断することが可能になる。このグラウトには、組積用モルタル、ポリウレタン、加硫シリコーンおよび他のエラストマー/プラスチックが含まれる。裏当てシートに含浸させるのに適した合成樹脂には、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂が含まれる。
【0018】
特開平1−099838(要約書)は、いくつかのセラミックプレートと、強化プレート、例えば合成樹脂シート、紙、ゴムシートまたは金属箔など、とから構成された多層強化セラミック製品を開示している。それぞれのセラミック薄シートおよびそれぞれの強化薄シートは交互に配列され、接着剤により一体化して接合される。
【0019】
カナダ特許出願第2,136,773号(欧州特許第0657281B1号をも参照されたい)は、主材料である発泡プラスチックの芯部と、場合によって、それに接続した発泡プラスチックのフロック(綿状物)と、少なくとも1層の繊維の支持体を有する被覆層とを備えた多層構造部材を開示している。これらの繊維は芯部の表面に配置され、芯部に結合している。これらの繊維は、熱可塑性合成材料の層に埋め込まれて、被覆層を形成する。熱可塑性合成材料の例には、エチレン、プロピレン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、PVCおよびポリイミドが含まれる。網目、編み布、または繊維および細糸のマットを備えた支持体が挙げられており、この材料はガラス、Kevler、金属、黒鉛、織物、プラスチック、セラミック、天然繊維または炭素から選択することができる。
【0020】
米国特許出願公開第2004/0161546A1号は、トラバーチンに類似した外観の、あばたのある一様でない表面を有する石板で被覆された、薄い基材(例えば、木材、金属、プラスチック)を有する人造石板製品を開示している。この製品を作るため、ポリマー樹脂および粒状物質の層を基材に塗布する。最初にポリマー樹脂の薄層を基板に塗り、続いて、少なくとも部分的に樹脂中に沈着させている(その樹脂は部分的に硬化させている)微粒状物質(例えば、御影石、石灰石、石英、大理石および粘板岩(スレート))の層を塗る。他のポリマー樹脂の層を、下側層を覆う不均一な形で下側層を塗り、種々の大きさおよび形状の空隙が無作為な位置にある適度に多孔性の層をもたらす。次いでポリマー層を覆って粒状物質の最終層を塗り、この樹脂を完全に硬化させる。ポリマー樹脂として、熱可塑性樹脂(例えばポリエステル)および熱硬化性樹脂(例えばエポキシ)の両方を使用することができる。
【0021】
英国特許出願第GB2392866号は、主としてレクリエーション区域で使用するため設計された複合安全タイルであり、上側摩耗性表面層と、ポリマー質弾性材料の下側層と、これらの層間に組み込んだ柔軟な補強メッシュとを備える複合安全タイルを開示している。このタイルは、触媒作用したジフェニルメタン−ジイソシアネート(MDI)系プレポリマーと混合したリサイクルSBR顆粒/細断片と、金網と、触媒作用したジフェニルメタン−ジイソシアネート(MDI)系プレポリマーと混合した着色EPDM顆粒とを加圧成形することによって製造できる。
【0022】
米国特許第4,307,140号は、そのタイルに接着されたエポキシ樹脂内にその大部分が埋め込まれている多数の薄い短繊維によって、エラストマー質ポリウレタン下地支持体に固定されている、複数の耐摩耗性セラミックタイルを含む積層物品を開示している。この物品は、未硬化の液相として樹脂の薄層をタイルに塗布し;この液体樹脂に繊維のコーティングを、それにより樹脂と接触している繊維の少部分が濡れ、残りの大部分が樹脂層から伸びるように施し;樹脂を硬化させてその中に繊維を固定し、かつ樹脂をタイルに接合し;熱硬化性ポリウレタンの層を、未重合の液相として繊維を含浸させた樹脂層に塗り;その後ポリウレタン層を硬化させることにより製作される。
【0023】
欧州特許出願EP0244993A2号は、直接に、または中間フィルム層を介して裏当て部材に接合された仕上げ部材を含む積層セラミック構造を開示している。中間層とはガラスフリットを指し、これをプレート間に施し、その後この組立て体を加熱することによって、ガラスが軟化してプレート表面を濡らす温度までガラスフリットを加熱することができる。
【0024】
天然石パネル複合材に関するさらなる特許には、次のものが含まれる:DE4218481A1(エポキシ樹脂により積層し、場合によって外装品(armoring)を組み込んだ石パネル);DE19547123A1(繊維強化接着層(セメント配合物に基づく)によって接合した天然石/木材);DE19726502C(天然石層/模造石(発泡PU−シリカダスト粒−添加材混合物));およびDE29508697U1号(粘板岩/軽量構造体(中空断面、剛性発泡体、アルミニウムまたはプラスチックで作ったハニカムもしくは格子)。
【0025】
ある者は、セラミック複合材または石複合材を使用することにより「破壊安全性」問題を解決して、樹脂により化学抵抗性に限界があるが、より軽量の、より耐衝撃性のある構造を可能にしようとしている。他の者は、この材料を、合板、ハニカム、発泡ポリウレタン樹脂、またはガラス繊維、ポリアミドもしくはポリエーテルの布マットなどの様々な支持体に接着もしくは接合することによりこの問題に取り組んでいる。いくつかのこれらの接着材は、ポリエステル樹脂の場合、産業衛生問題などの二次的問題を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
改良された衝撃吸収性を有するセラミックおよび石基材への必要性が残っている。下記を有する基材へのさらなる必要性が存在する:(1)タイル取付けの用途における接着材として通例使用されるPETメッシュ熱硬化性材料に優る、改良された安全性能;(2)産業衛生的に改良された基材;(3)現在行われているような、硬化時間を必要としない、かつ手作業によるオフラインの代わりに、1つのステップでオンライン的に適用することができる積層またはコーティング方法によって製造するための、改良された経済性を有する基材;ならびに(4)改良された全体的安全性能および特に裏通気型ファサードに取り付ける場合の改良された安全性能を有する基材。基材の生産におけるコストをより節約するため、同等の安全性能を有しながら標準寸法以下の厚さであるような基材へのさらなる必要性が存在する。下記の発明によって、いくつかのこれらおよび他の必要性が満たされている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、少なくとも下記の構成材:
A)少なくとも1種のセラミック構成材、または少なくとも1種の天然石構成材を含む組成物から形成される基材、
B)少なくとも1種の官能化オレフィン系ポリマーを含む組成物から形成されるポリマー層
を備え、かつ
このポリマー層が、基材の1つの表面を覆って形成されている物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】「ボール落下試験」用支持枠の概略図である。
【図2】接着はく離試験に使用される基材の加熱積層に用いられる組立て方の概略図である。
【図3】接着はく離試験に使用される試験用試験片の概略図である。
【図4】接着はく離試験に使用される引張試験機のつかみ具の「試験片固定デバイス」の概略図である。
【図5】接着力に及ぼすコモノマー含量の効果を示すグラフである(ポリマーのMFIはおよそ9、また基材はInstituto de Technologiaによって調製された磁器質せっ器セラミックである)。
【図6】ITCセラミックに積層されたEAAコポリマー(コモノマー含量9.7パーセント)についての接着力に及ぼすメルトインデックスの効果を示すグラフである。
【図7】(a)ポリエチレンEAAコポリマー(Primacor(商標))および(b)ポリエチレンg−MAH(無水マレイン酸グラフト)ポリマー(Amplify(商標))についての接着力に及ぼす基材の効果を示すグラフである。
【図8】ポリマー官能基の効果を示すグラフである(基材:Instituto de Technologiaによって調製された磁器質せっ器セラミック)。
【図9】種々のポリマー間での接着力の比較を示すグラフである(基材:Instituto de Technologiaによって調製された磁器質せっ器セラミック)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
総合概要
本発明は、1種または複数の官能化オレフィン系ポリマー、またはこれを含む組成物から形成される1層または複数のフィルムを積層し、もしくはこれらのフィルムをコーティングした基材を提供する。このような基材は、裏通気型ファサードにタイルを張るのに使用して、これらのファサードの安全性能を向上させることができる。このフィルムは、主としてエチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーであるポリマーの単層フィルムまたは同時押出しフィルムとすることができる。本明細書において記述する官能化オレフィン系ポリマーからのフィルム形態による積層物もしくは押出しコーティングは、基材の衝撃エネルギーを吸収することを助け、また基材の破片をフィルムに固定することを助ける。
【0030】
官能化エチレン系ポリマーなどの官能化オレフィン系ポリマーから形成された裏シートを基板に取り付けることにより、破壊片はその場で保持され、外れて落下するものが著しく減少する。上記において考察したように、この裏シートは単層フィルムまたは同時押出しフィルムとすることができる。主目的は、通気型ファサードのスラブが破壊された場合外れて落下するのを防止することである。
【0031】
特に、上記において考察したように、本発明は、少なくとも下記の構成材:
A)少なくとも1種のセラミック構成材、または少なくとも1種の天然石構成材を含む組成物から形成される基材、
B)少なくとも1種の官能化オレフィン系ポリマーを含む組成物から形成されるポリマー層
を備え、かつ
このポリマー層が、基材の1つの表面を覆って形成されている物品を提供する。
【0032】
一実施形態において、このポリマー層は、フィルムまたはコーティングまたは発泡体の形態にあり、フィルムもしくはコーティングの形態であることが好ましい。さらなる実施形態において、ポリマー層はフィルムの形態である。他の実施形態において、ポリマー層はコーティングの形態である。他の実施形態において、ポリマー層は積層フィルムの形態である。さらに他の実施形態において、ポリマー層は押出しコーティングの形態である。
【0033】
他の実施形態において、このポリマー層は多層(少なくとも2層もしくは2プライ)フィルムの形態である。
【0034】
他の実施形態において、このポリマー層は同時押出し多層フィルムである。
【0035】
他の実施形態において、物品は少なくとも2層の基材を備える。さらなる実施形態において、このポリマー層は、2層の基材の間に形成される。
【0036】
他の実施形態において、物品は少なくとも2層のポリマー層を備える。さらなる実施形態において、一方のポリマー層は、基材の1つの表面を覆って形成され、他方のポリマー層は、同一基材の他の表面を覆って形成される。
【0037】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーまたは官能化プロピレン系ポリマーから選択される。さらなる実施形態において、この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーである。
【0038】
他の実施形態において、この基材はタイルの形態にあり、このポリマー層は、このタイルの1つの表面を覆って形成される。
【0039】
他の実施形態において、この基材はタイルの形態にあり、このポリマー層は、このタイルの裏表面を覆って形成される。
【0040】
本発明の物品は、本明細書において記述した2つ以上の実施形態の組合せを含むことができる。
【0041】
基材
適切な基材には、セラミック基材および石基材が含まれる。セラミック基材には、酸化物、ケイ酸塩、ケイ素アルミン酸塩、炭化物、窒化物、ケイ素化物;酸化物および非酸化物の組合せ;および、これらのいずれかを、ガラス、金属、ポリマー、セラミックもしくはそれらの組合せのマトリックス中において含む材料;ならびに複合セラミックスが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の一実施形態において、セラミックは、Instituto de Technologia Ceramica(ITC)によって調製されたセラミック、または市販のセラミック、例えば粗面もしくは研磨された市販の磁器質せっ器など、から選択される。
【0043】
石基材には、御影石、砂岩、大理石、石灰石および粘板岩(スレート)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、この基材は御影石または大理石から選択される。
【0044】
いくつかの基材の組成を、以下の表1中に掲げている。
【0045】
【表1】

【0046】
一実施形態において、基材は、少なくとも1種の下記:酸化物およびその組合せ;アルミナ;シリカ、ジルコニア;ケイ酸塩、炭化物;窒化物;ケイ化物、酸化物および非酸化物の組合せ;またはこれらの組合せを含む組成物から形成される。
【0047】
他の実施形態において、この基材は、少なくとも1種のセラミック成分を含む組成物から形成される。さらなる実施形態において、基材は、基材の全重量に対して62〜72重量パーセントのSiOおよび15〜25重量パーセントのAlを含む。他の実施形態において、基材は、下記:Instituto de Technologia Ceramica(ITC)によって調製された標準セラミック、および市販のセラミック、例えば粗面もしくは研磨された市販セラミックからなる群から選択される。
【0048】
他の実施形態において、この基材は下記の組成:基材の全重量に対して65〜75重量パーセントのSiO、14〜21重量パーセントのAl、および2〜5重量パーセントのKOを有する。
【0049】
他の実施形態において、この基材は下記の組成:基材の全重量に対して65〜75重量パーセントのSiO、14〜21重量パーセントのAl、2〜5重量パーセントのKO、2重量パーセントのNaO、0.01重量パーセントのMnO、0.75重量パーセントのTiO、0.7重量パーセントのFe、0.5重量パーセントのCaO;0.3重量パーセントのMgOおよび0.1重量パーセントのPを有する。
【0050】
他の実施形態において、この基材は下記の組成:基材の全重量に対して65〜75重量パーセントのSiO、14〜21重量パーセントのAl、2〜5重量パーセントのKO、0.01〜0.05重量パーセントのMnO、0.2〜0.8重量パーセントのTiO、0.5〜3重量パーセントのFe、0〜2重量パーセントのFeO、0.5重量パーセントのCaO;0.1〜1重量パーセントのMgOおよび0〜0.2重量パーセントのPを有する。
【0051】
他の実施形態において、この基材は、曹長石(NaAlSi)、石英(SiO)、カオリナイト(AlSi(OH))およびイライト(HKAl(SiO)から構成される主結晶構造(焼成前)を有するセラミック基材である。さらなる実施形態において、この結晶構造は、0.1〜0.5パーセントの間の開気孔率を有する(ISO 10545−3により測定)。
【0052】
他の実施形態において、この基材は、複合セラミック基材である。
【0053】
他の実施形態において、この基材は、マトリックスを含む複合セラミック基材であり、このマトリックスはガラス、金属、ポリマー、セラミック、またはこれらの組合せを含む。
【0054】
他の実施形態において、この基材は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをさらに含む。
【0055】
他の実施形態において、この基材は、多層構造体である。
【0056】
他の実施形態において、この基材は、木材、金属、ガラスおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の材料をさらに含む。
【0057】
他の実施形態において、この基材は、ガラスを含む少なくとも1種の積層体層をさらに備える。さらなる実施形態において、この積層体層は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをさらに含む。
【0058】
他の実施形態において、この基材は、少なくとも1種の天然石基材を含む組成物から形成される。さらなる実施形態において、この天然石構成材は、御影石、石英、大理石、石灰石および粘板岩からなる群から選択される。なおさらなる実施形態において、この天然石構成材は、御影石または大理石から選択される。他の実施形態において、この基材は、天然石複合材である。他の実施形態において、この基材は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをさらに含む。
【0059】
セラミックタイルへの他の選択肢は、1種または複数のセラミック構成材に加えた1種または複数のポリマー、またはポリマーマトリックス中に埋め込まれたセラミック繊維から構成される多層タイルを製作することである。
【0060】
基材は、本明細書において記述した2つ以上の適切な実施形態の組合せを含むことができる。
【0061】
官能化オレフィン系ポリマー
本明細書において使用される用語「官能化オレフィン系ポリマー」は、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(またこの場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーまたは反応性官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーを指す:
【0062】
【化1】

【0063】
イミド、アミド、酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル、一酸化炭素、H−TEMPOもしくはH−TEMPO誘導体に由来する極性基、シランまたはシロキサン(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、R”は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。
【0064】
さらなる実施形態において、それぞれのアルキル基は、独立にメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0065】
一実施形態において、この官能化オレフィン系ポリマーは、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(この場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーまたは反応性官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーである:
【0066】
【化2】

【0067】
イミド、アミド、酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル、H−TEMPOもしくはH−TEMPO誘導体に由来する極性基、シランまたはシロキサン(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、R”は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。さらなる実施形態において、それぞれのアルキル基は、独立にメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0068】
他の実施形態において、この官能化オレフィン系ポリマーは、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(この場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーまたは反応性官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーである:
【0069】
【化3】

【0070】
イミド、アミド、酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル、H−TEMPOもしくはH−TEMPO誘導体に由来する極性基(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、R”は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。さらなる実施形態において、それぞれのアルキル基は、独立にメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0071】
さらに他の実施形態において、この官能化オレフィン系ポリマーは、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(この場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーまたは反応性官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーである:
【0072】
【化4】

【0073】
酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。さらなる実施形態において、それぞれのアルキル基は、独立にメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0074】
さらに他の実施形態において、この官能化オレフィン系ポリマーは、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(この場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーまたは反応性官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーである:
【0075】
【化5】

【0076】
酸無水物(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。さらなる実施形態において、それぞれのアルキル基は、独立にメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0077】
さらに他の実施形態において、この官能化オレフィン系ポリマーは、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(この場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーまたは反応性官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーである:
【0078】
【化6】

【0079】
酸無水物(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。さらなる実施形態において、それぞれのアルキル基は、独立にメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。この官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0080】
官能化オレフィン系ポリマーには、官能化エチレン系ポリマーおよび官能化プロピレン系ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。官能基化部分として役立ついくつかの極性基には、例えば、カルボン酸(例えばEAA);メチル、エチル、ブチルおよび他のR−カルボン酸エステル(例えばEMA、EEA、EBA)、無水マレイン酸(例えばPE−gr−MAH)、イミド、アミン、グリシジル(例えばGMA)、一酸化炭素(例えばECO)、官能基化H−Tempo、官能基化シランおよびシロキサンが含まれる。
【0081】
さらなる官能化オレフィン系ポリマーには、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA);エチレンアクリル酸エステルコポリマー(エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマーおよびエチレンアクリル酸メチルコポリマー(EBA、EEAおよびEMA)など);エチレン/アクリル酸ブチル/一酸化炭素(EnBACO);エチレンアクリル酸エチルポリマー(EEA)、ならびに官能基変性ポリオレフィン例えばシラングラフトオレフィン系ポリマーまたは無水マレイン酸グラフトオレフィン系ポリマー;エチレン/アクリル酸ブチル/メタクリル酸グリシジル(EnBAGMA);エチレンメタクリル酸(E/MAA);エチレンビニルアルコール;またはこれらのポリマーの2種以上の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
一実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、50重量パーセント未満、好ましくは40重量パーセント未満、より好ましくは30重量パーセント未満、最も好ましくは20重量パーセント未満のコモノマー含量を有する(重合可能なモノマーの全重量に対して)。20〜50重量パーセントの全ての個々の百分率およびサブ範囲が本明細書において含まれ、ここに開示される。官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0083】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、20重量パーセント未満、好ましくは15重量パーセント未満、より好ましくは10重量パーセント未満のコモノマー含量を有する(重合可能なモノマーの全重量に対して)。5〜20重量パーセントの全ての個々の百分率およびサブ範囲が本明細書において含まれ、ここに開示される。官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0084】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマーなどの、高圧フリーラジカル開始の高分岐エチレン系ポリマーである。
【0085】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、カルボン酸官能基0.1重量パーセント〜30重量パーセントを含む(重合可能なモノマーの全重量に対して)。他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、カルボン酸官能基0.1重量パーセント〜30重量パーセントを含むエチレン系ポリマーである。
【0086】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、エチレンおよびアクリル酸またはアクリル酸エステルに由来する単位を含む高分岐ポリマーである官能化エチレン系ポリマーである。さらなる実施形態において、コモノマーはアクリル酸エステルに由来し、このアクリル酸エステルは、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルまたは、アクリル酸ブチルから選択される。さらに他の実施形態において、コモノマーはアクリル酸に由来する。さらなる実施形態において、アクリル酸は、重合可能なモノマーの全重量に対して5重量パーセント以上、好ましくは6重量パーセント以上、またより好ましくは8重量パーセント以上の量で存在する。
【0087】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、高圧重合方法から形成され、アクリル酸もしくはアクリル酸エステルに由来するコモノマー単位を含むエチレン系コポリマーである。さらなる実施形態において、コモノマーはアクリル酸エステルに由来し、このアクリル酸エステルは、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルまたは、アクリル酸ブチルから選択される。さらに他の実施形態において、コモノマーはアクリル酸に由来する。さらなる実施形態において、アクリル酸は、重合可能なモノマーの全重量に対して5重量パーセント以上、好ましくは6重量パーセント以上、またより好ましくは8重量パーセント以上の量で存在する。
【0088】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、エチレンおよび酸無水物、また好ましくは無水マレイン酸に由来する単位を含む官能化エチレン系ポリマーである。さらなる実施形態において、酸無水物、好ましくは無水マレイン酸に由来する単位は、官能化ポリマーの全重量に対して0.5重量パーセント以上、好ましくは1.0重量パーセント以上の量で存在する。
【0089】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、ポリエチレンアクリル酸コポリマー、酸無水物グラフト化ポリエチレン、エチレンアクリル酸ブチル、エチレンメタクリル酸グリシジル、エチレンメタクリル酸、エチレンビニルアルコール、およびこれらの組合せからなる群から選択される官能化エチレン系ポリマーである。
【0090】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、ポリエチレンアクリル酸コポリマー、酸無水物グラフト化ポリエチレン、エチレンアクリル酸ブチル、エチレンメタクリル酸グリシジル、エチレンメタクリル酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される官能化エチレン系ポリマーである。
【0091】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、カルボン酸;カルボン酸メチル、カルボン酸エチル、カルボン酸ブチルおよび他のカルボン酸アルキル;酸無水物;ジカルボン酸;イミド、アミン、グリシジル;一酸化炭素、H−Tempoに由来する極性基;シラン;またはシロキサンなどの部分から選択される少なくとも1種の極性基を含む官能化エチレン系ポリマーである。
【0092】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、0.86〜0.95g/cc、または0.87〜0.94g/cc、または0.88〜0.93g/ccの密度を有する。官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0093】
他の実施形態において、官能化オレフィン系ポリマーは、0.5g/10分〜50g/10分、または1g/10分〜30g/10分のメルトインデックス(I2:2.16kg/190℃)を有する。官能化オレフィン系ポリマーは、官能化エチレン系ポリマーであることが好ましい。
【0094】
適切な市販オレフィン系ポリマーには、The Dow Chemical Companyから入手可能なPRIMACORおよびAMPLIFYポリマー;および他の市販ポリマー、例えば次のイオノマー質ポリマー:SURLYN(DuPont社から入手可能)、IOTEK(ExxonMobil社から入手可能)、LOTADER(Arkema社から入手可能)、NUCREL(DuPont社から入手可能)、BYNEL(DuPont社から入手可能)、PLEXAR(Lyondell社から入手可能)およびTYMOR(Rohm Haas社から入手可能)など、が含まれる。
【0095】
いくつかの適切なPRIMACORポリマーおよびAMPLIFYポリマーを以下の表2、3および4に示している。
【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
一実施形態において、エチレン系官能化ポリマーは、AMPLIFY EA100などのエチレン−アクリル酸エチル(EEA)コポリマーである。
【0100】
他の実施形態において、エチレン系官能化ポリマーは、酸無水物グラフトエチレン系ポリマーである。さらなる実施形態において、酸無水物グラフトエチレン系ポリマーは、線状低分子ポリエチレンを主成分とし、無水マレイン酸0.1〜0.5重量パーセントの濃度を有する(分析標準を使用した赤外分光法に基づき、中間値0.25〜0.5重量パーセント、高値0.5〜1.0重量パーセント、極高値>1.0重量パーセントMAH)。なおさらなる実施形態において、酸無水物グラフトエチレン系ポリマーは、0.5〜5g/10分、また好ましくは1〜3g/10分のメルトインデックスI2(190℃および2.16kg)を有する。他の実施形態において、酸無水物グラフトエチレン系ポリマー、例えば、Amplify(商標)GR207などは、0.900〜0.940、また好ましくは0.910〜0.930g/ccの密度を有する。酸無水物グラフトエチレン系ポリマーは、上記において考察した2つ以上の特徴の組合せを有することができる。
【0101】
他の実施形態において、エチレン系官能化ポリマーは酸無水物グラフトエチレン系ポリマーであり、例えば、Amplify GR 208などは、1〜4g/10分のメルトインデックスI2(190℃および2.16kg)および0.890〜0.910g/ccの密度を有する。
【0102】
他の実施形態において、エチレン系ポリマーは、例えばELVALOY 2615 AC(DuPont社から入手可能)などのエチレンとアクリル酸エチル(EEA)のコポリマーである。
【0103】
他の実施形態において、エチレン系ポリマーは、例えばPRIMACOR 3004などの、重合可能なモノマーの全重量に対して5重量パーセント〜15重量パーセントのアクリル酸を含有し、またメルトインデックスI2(190℃および2.16kg)が5〜15g/10分であるポリエチレンアクリル酸コポリマーである。
【0104】
他の実施形態において、オレフィン系ポリマーは、1種または複数のTEMPO化合物により官能基化される。TEMPO化合物は、本発明の官能化オレフィン系ポリマーにおいて使用するのに適した官能基化剤であり、一般に下記の化合物(I)により表される:
【0105】
【化7】

【0106】
構造(I)において、Rは水素、またはC〜C20ヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。好ましい実施形態において、Rは水素、またはC〜C10、好ましくはC〜Cまたより好ましくはC〜Cヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。
【0107】
は水素、またはC〜C20ヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。好ましい実施形態において、Rは水素、またはC〜C10、好ましくはC〜Cまたより好ましくはC〜Cヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。
【0108】
は水素、またはC〜C20ヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。好ましい実施形態において、Rは水素、またはC〜C10、好ましくはC〜Cまたより好ましくはCC6ヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。
【0109】
は水素、またはC〜C20ヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。好ましい実施形態において、Rは水素、またはC〜C10、好ましくはC〜Cまたより好ましくはC〜Cヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。
【0110】
構造(I)において、ZはOH、SH、NHまたはNHR(RはC〜C20ヒドロカルビル基であり、直鎖もしくは分岐鎖のものである)のいずれかである。好ましい実施形態において、Rは水素、またはC〜C10、好ましくはC〜Cまたより好ましくはC〜Cヒドロカルビル基(直鎖もしくは分岐鎖である)のいずれかである。
【0111】
適切な構造(I)の化合物には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPO)およびその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。ヒンダードアミン由来の安定な有機フリーラジカルは、ビス−TEMPO、オキソ−TEMPO、4−ヒドロキシTEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPOのエステル、ポリマー結合TEMPO、PROXYL、DOXYL、全−第三級ブチルNオキシル、ジメチルジフェニルピロリジン−1−オキシル、4−ホスホノキシTEMPO、またはTEMPOとの金属錯体がより好ましい。ヒンダードアミン由来の安定な有機フリーラジカルは、ビス−TEMPOまたは4−ヒドロキシTEMPOであることがより一層好ましい。ビス−TEMPOの一例は、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートである。
【0112】
記号C〜C(nは2、3、4などであり、R基(R、R、R、RおよびR)を参照して使用される)は、それぞれのR基について含まれる炭素原子の範囲を指す。例えば、C〜C20ヒドロカルビル基は、炭素原子1〜20個を含有する炭化水素基を指す。また、炭化水素の範囲(例えばC〜C20)には、炭素原子の合計数のうちの全ての個々の値(例えば1、2、3、4など)が含まれ、また特定の炭素原子の最も広い範囲(例えばC〜C20)内の全てのサブ範囲(例えばC〜C、C〜C12、C10〜C20など)が含まれる。全ての個々の値およびサブ範囲が本明細書に含まれ、本明細書において開示される。
【0113】
TEMPO化合物およびグラフト手順は、例えば国際公開第WO2005/066279号および第WO2005/066281号、ならびに米国仮特許出願第60/899,723号中に記載される;それぞれ参照により本明細書に全て組み込まれている。
【0114】
添加剤、例えばプロセス油、スリップ剤、粘着防止剤、AO、UV、フィラーなどを、官能化ポリマーまたはそのポリマー前駆体に添加することができる。典型的には、ポリマー樹脂は、1種または複数の安定剤、例えば酸化防止剤、例えばIrganox(商標)1010およびIrganox(商標)168(共にCiba Specialty Chemicals社により供給される)などを含有するであろう。ポリマーは、典型的には、押出しまたは他の溶融工程の前に、1種または複数の安定剤によって処理される。他のポリマー添加剤には、紫外光吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、成核剤、フィラー、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、安定剤、煙抑制剤(smoke inhibitors)、粘度調整剤および粘着防止剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
官能化オレフィン系ポリマーは、本明細書において記述した2つ以上の適切な実施形態の組合せを含むことができる。
【0116】
官能化エチレン系ポリマーは、本明細書において記述した2つ以上の適切な実施形態の組合せを含むことができる。
【0117】
官能化オレフィン系ポリマー、または官能化オレフィン系ポリマーを含む組成物は、典型的にはフィルムとして形成し、考察の対象となっている基材上に積層される。このフィルムは、基材上にコーティングして押出しすることもできる。基材上への加熱積層もしくは押出しコーティングは、官能化ポリマーの融点前後で行われるのが最良であり、基材の保全性を危険にさらすことなく、加圧下で基材とポリマー間の密接な接触が確保される。
【0118】
さらに、多層フィルム、セラミック粉末とポリマーとのブレンド、発泡体、アルミニウム箔または他の基材をフィルムと積層して、安定性を向上させることができる。高モジュラスの官能化ポリオレフィン材料の同時押出しを行って、積層材の剛性および保全性を強化する一方、ポリマーの官能基化により接着性状を保持することができる。
【0119】
基材の積層または基材の押出しコーティングを直接オンラインに組み込むには、例えば、炉内で基材を熱処理に掛けた後、基材生産ユニットに取り入れることができる。
【0120】
フィルム/積層材の厚さは、所望されるフィルムの剛性に応じて1ミクロン〜最高1000ミクロンまで、好ましくは300〜600ミクロンとすることができる。
【0121】
1つの接着材層(基材に取り付けられる)、および高剛性層例えばPRIMACOR/HDPEなどを有する同時押出しフィルムを用いることもできる。メッシュおよび熱可塑性材料の両方を組み込んで積層もしくは被覆した基材も用いることができる。
【0122】
用途
ポリマー層を含む本発明の基材は、ファサードタイル、壁タイル、床仕上げタイル、ルーフィングタイル、天井タイルなどの工事用タイルとして、また机上および卓上どの家具タイル、ならびに室内−室外窓の下枠および階段として使用することができる。
【0123】
さらなる用途には、例えば、セラミック、天然石、木材、金属、紙もしくはセルロース、ガラス、または他のプラスチックの第三層を積層した、いくつかの材料組合せ向けの基材が含まれる。
【0124】
本発明はまた、本明細書において記述された本発明の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える建造物ファサードをも提供する。
【0125】
本発明はまた、本明細書において記述された本発明の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える壁構造をも提供する。
【0126】
本発明はまた、本明細書において記述された本発明の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える床仕上げ構造をも提供する。
【0127】
本発明はまた、本明細書において記述された本発明の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える屋根構造をも提供する。
【0128】
本発明はまた、本明細書において記述された本発明の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える天井構造をも提供する。
【0129】
本発明はまた、本明細書において記述された本発明の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える家具部材をも提供する。
【0130】
定義
本明細書において列挙される任意の数値範囲には、低値から高値までの、インクリメントとしての1単位(任意の低値と任意の高値の間で少なくとも2つの単位が、分かれて存在している場合)を入れた、全ての値が含まれる。一例として、組成的、物理的もしくは機械的性状、例えば、分子量、粘度、メルトインデックスなどが100〜1000であると言う場合、本明細書では100,101、102などの全ての個々の値、および100〜144、155〜170、197〜200などのサブ範囲を明白に数え上げることを意図している。1未満である、または1を超える小数(例えば1.1、1.5など)を含有する値を含む範囲については、1単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の数(例えば1〜5)を含む範囲については、1単位は、通例0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎない。本明細書では、数え上げた最低値と最高値の間で、全ての可能な数値の組合せを、明白に挙げようとしている。数値範囲は、本明細書において考察したように、メルトインデックス、密度および他の性状を参照して列挙されている。
【0131】
本明細書において使用される用語「セラミック構成材(ceramic component)」は、少なくとも1種の金属元素と、C、N、O、PもしくはSから選択された少なくとも1種の非金属元素とから、高温(例えば500℃を超える温度)で固められて形成された、少なくとも1種の化学的化合物を含む非金属無機材料を指す。
【0132】
本明細書において使用される用語「セラミックタイル(ceramic tile)」は、粘土、シリカ、融剤、着色剤および上記において考察した他のセラミック構成材から作った薄い(例えば、厚さ50cm未満)スラブを指す。それらは一般に床、壁およびファサード用の被覆材として使用される。セラミックタイルは、施釉もしくは無釉とすることができ、不燃性かつ耐光抵抗性である。規格ISO 13006により、セラミックタイルは成形方法(圧縮、押出し、または鋳込み成形)、および吸水率(タイルの見掛け気孔率を評価する)に関して分類される。タイル表面仕上げ(施釉または無釉)により、さらなる分類を生じる。
【0133】
本明細書において使用される用語「天然石(natural stone)」は、規定寸法の石材または規定寸法の岩石、すなわち所定の寸法および仕上げを有する石材または岩石を指す。
【0134】
本明細書において使用される用語「天然石構成材」は、天然石、または天然石の切断材または部分を含む材料を指す。
【0135】
本明細書において使用される用語、磁器質せっ器(porcelain stoneware)は、吸水率として測定し1重量パーセント未満の開気孔率を有するセラミック材料を指す(上記において考察したように吸水率は、ISO 13006に従って測定される)。
【0136】
本明細書において使用される用語、せっ器は、吸水率として測定し6重量パーセント未満および1重量パーセントを超える開気孔率を有するセラミック材料を指す(上記において考察したように吸水率は、ISO 13006に従って測定される)。
【0137】
本明細書において使用される用語、陶器(earthenware)は、吸水率として測定し6重量パーセントを超える開気孔率を有するセラミック材料を指す(上記において考察したように吸水率は、ISO 13006に従って測定される)。
【0138】
本明細書において使用される用語「組成物」には、その組成物の材料から形成される組成物、ならびに反応生成物および分解生成物を含む材料の混合物が含まれる。
【0139】
本明細書において使用される用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーのブレンドを意味する。このようなブレンドは混和性(分子レベルで相分離していない)であっても、なくてもよい。このようなブレンドは相分離しても、しなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子顕微鏡、光散乱、X線散乱、および当技術分野で知られる他の方法で測定して、1か所または複数の立体配置領域を含有しても、しなくてもよい。
【0140】
本明細書において使用される用語「ポリマー」は、同一もしくは異なる型いずれかのモノマーの重合により調製されるポリマー化合物を指す。したがって、総称的な用語ポリマーは、通常1つの型だけのモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる用語ホモポリマー、および本明細書において後に定義される用語インターポリマーを包含する。用語「エチレン/α−オレフィンポリマー」および「プロピレン/α−オレフィンポリマー」は、以下に記述するインターポリマーを示すものである。
【0141】
本明細書において使用される用語「インターポリマー」は、少なくとも2種の異なる型のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称的な用語インターポリマーには、通常2種の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられるコポリマー、および3種以上の異なる型のモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0142】
本明細書において使用される用語「オレフィン系ポリマー」は、50モルパーセントを超える重合したオレフィンモノマー、例えば重合したエチレンもしくは重合したプロピレン(重合可能なモノマーの全量に対して)を含み、また場合によって少なくとも1種のコモノマーを含むことができるポリマーを指す。
【0143】
本明細書において使用される用語「エチレン系ポリマー」は、50モルパーセントを超える重合したエチレンモノマー(重合可能なモノマーの全量に対して)を含み、また場合によって少なくとも1種のコモノマーを含むことができるポリマーを指す。
【0144】
本明細書において使用される用語「プロピレン系ポリマー」は、50モルパーセントを超える重合したプロピレンモノマー(重合可能なモノマーの全量に対して)を含み、また場合によって少なくとも1種のコモノマーを含むことができるポリマーを指す。
【0145】
本明細書において使用される用語「官能化オレフィン系ポリマー」は、下記:(a)50モルパーセントを超える重合したオレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレンから由来するモノマー単位など(またこの場合、モルパーセントは重合可能なモノマーの全モル数に対するものである)と、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーもしくは1種の反応した官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーを指す:
【0146】
【化8】

【0147】
イミド、アミド、酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル、一酸化炭素、H−TEMPOもしくはH−TEMPO誘導体に由来する極性基、シランまたはシロキサン(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、R”は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。
【0148】
本明細書において使用される用語「官能化エチレン系ポリマー」は、下記:(a)重合可能なモノマーの全モル数に対して、50モルパーセントを超える重合したエチレンと、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーもしくは1種の反応した官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーを指す:
【0149】
【化9】

【0150】
イミド、アミド、酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル、一酸化炭素、H−TEMPOもしくはH−TEMPO誘導体に由来する極性基、シランまたはシロキサン(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、R”は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。
【0151】
本明細書において使用される用語「官能化プロピレン系ポリマー」は、下記:(a)重合可能なモノマーの全モル数に対して、50モルパーセントを超える重合したプロピレンと、(b)少なくとも1種の重合したコモノマーもしくは1種の反応した官能基化剤とを含み、それぞれ、下記から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリマーを指す:
【0152】
【化10】

【0153】
イミド、アミド、酸無水物、ジカルボキシレート、グリシジル、一酸化炭素、H−TEMPOもしくはH−TEMPO誘導体に由来する極性基、シランまたはシロキサン(上式において、Rは水素またはアルキルであり、R’は水素またはアルキルであり、R”は水素またはアルキルであり、またZはNa+またはK+である)。
【0154】
本明細書において使用される用語「官能基化剤」は、オレフィン系ポリマーの主鎖に沿って位置している炭素原子と反応することができる、少なくとも1種の極性基(例えば、無水マレイン酸)を含有する有機化合物を指す。
【0155】
試験方法
密度は、アメリカ材料試験協会(ASTM)手順ASTM D792−00、方法Bに従って測定している。
【0156】
g/10分におけるメルトインデックス(I2)は、ASTM D−1238−04、条件190℃/2.16kgを使用して測定している。記号「I10」は、ASTM D−1238−04、条件190℃/10.0kgを使用して測定した、g/10分におけるメルトインデックスを指す。記号「I21」は、ASTM D−1238−04、条件190℃/21.6kgを使用して測定した、g/10分におけるメルトインデックスを指す。エチレン系ポリマーは通例190℃で測定されるが、プロピレン系ポリマーは通例230℃で測定される。MFRはプロピレン系ポリマーについてのメルトフローレートを意味し、ASTM D−1238−04、条件230℃/2.16kgを使用して測定される。
【0157】
セラミック基材上に積層されたフィルムの接着力は、以下に考察されるようにASTM D903を使用して測定した。
【0158】
下記の実施例は、本発明を例証しているが、明示的にもまたは含意によっても本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0159】
以下の実施例において、下記の樹脂および基材を使用した。
【0160】
a)樹脂
PRIMACOR 1410は、Dow Chemical Companyから入手可能なエチレン−アクリル酸(EAA)コポリマーである。
【0161】
PRIMACOR 1321は、Dow Chemical Companyから入手可能なエチレン−アクリル酸(EEA)コポリマーである。
【0162】
PRIMACOR 5980iは、Dow Chemical Companyから入手可能なエチレン−アクリル酸(EEA)コポリマーである。
【0163】
AMPLIFY EA 100は、Dow Chemical Companyから入手可能なエチレン−アクリル酸エチル(EEA)コポリマーである。
【0164】
AMPLIFY GR 207は、Dow Chemical Companyから入手可能な無水マレイン酸(MAH)グラフトポリエチレンである。
【0165】
AMPLIFY GR 204は、Dow Chemical Companyから入手可能な無水マレイン酸(MAH)グラフトポリエチレンである。
【0166】
DOWLEX 2740Gは、Dow Chemical Companyから入手可能なエチレン−オクテンコポリマーである。
【0167】
LDPE 7008は、Dow Chemical Companyから入手可能な低密度ポリエチレンである。
【0168】
ELVALOY 2615 AC(DuPont社から入手可能)は、エチレンおよびアクリル酸エチル(EEA)のコポリマーである。
【0169】
LOTADER AX8900(Arkema社から入手可能)は、高圧ラジカル重合方法によって生産されるエチレン(E)と、アクリル酸メチルと、メタクリル酸グリシジル(GMA)とのランダムターポリマーである。
【0170】
PELLETHANE2355−95AEは、Dow Chemical Companyから入手可能な熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0171】
Solutia社から入手可能なSAFLEXポリビニルブチラール(PVB)。この樹脂は、現在セキュリティ向上向けのガラス積層用に好まれる材料である。
【0172】
INTEGRAL E101は、Dow Chemical Companyから入手可能な専用フィルムである。
【0173】
いくつかの樹脂のさらなる性状の特徴を、下記の表5に示している。
【0174】
【表5】

【0175】
b)基材(セラミックタイル)
寸法10cm×10cmおよび厚さ8mmを有する試験用基材として、ITCにより磁器質せっ器タイルが提供された。未焼成のセラミックの主結晶構造は、曹長石(NaAlSi)、石英(SiO)、カオリナイト(AlSi(OH))およびイライト(HKAl(SiO)から構成される。その開気孔率は、0.1〜0.5パーセントの間である(ISO 10545−3)。いくつかのタイルは、裏面が持ちあがったパターンを有し(市販のタイルでは通常である、交差したリブを有する)、またいくつかのものは裏面が平坦であった。タイルは最初、湿式微粉砕工程で原料を混合および摩砕して、懸濁液(スリップ)を形成するステップによって製造した。得られた懸濁液(スリップ)中に含有される水分の一部を除去して、水分含量5.5〜7重量パーセント(粒状物の全重量に対して)の粒状物を得た。次に、粒状物を乾式加圧成形して、タイル本体を形成し、得られたタイル本体を乾燥して水分含量を0.2〜0.5重量パーセント(タイルの全重量に対して)に減らした後、最後に焼成した。
【0176】
c)フィルム調製
全ての樹脂は、ペレットとして受け入れ、表6、7および8に示すように注型押出しまたは加圧成形のいずれかを行って、フィルムとした。それぞれのフィルムは、タイルの加熱積層のために使用した。押出しフィルムは、フィルム押出しラインを使用して調製し、それぞれのフィルムは約350μmの厚さを有していた。フィルム試料についての厚さ分布の偏差は、約15パーセントであった。
【0177】
PELLETHANE 2355−95AEペレットは、ホット成形プレス「Collin社Typ.300P」内で、190℃において加圧成形した。加圧成形の前に、オーブンを使用して顆粒を100℃で2時間乾燥した。
【0178】
INTEGRAL試料は、厚さ約88μmを有するフィルムロールとして受け入れ、またPVB試料は、厚さ約900μmを有するフィルムとして受け入れた。
【0179】
【表6】

【0180】
【表7】

【0181】
【表8】

【0182】
表9に示すように、いくつかの3層同時押出し構造体も調製した。
【0183】
【表9】

【0184】
これらのフィルムは、表10に示した下記の特性を有する注型Collin社同時押出し機で生産した。
【0185】
【表10】

【0186】
これらのフィルムは、表11および表12において概説した押出し条件を用い生産した。
【0187】
【表11】

【0188】
【表12】

【0189】
d)加熱積層
タイルの加熱積層は、ホット成形プレス「Collin社Typ.300P」内で行った。それぞれのタイルには、およそ同一の表面寸法のフィルムを積層した。加圧成形用鋼枠の内側でポリマーフィルム上にタイルを置いた。鋼枠表面へのポリマーフィルムの何らかの粘着を避けるため、枠のベース面上にマイラー(MYLAR)またはテフロン(TEFLON(登録商標))の薄いシートを挿入した。
【0190】
全ての加熱積層される試料をプレス内に置き、表13に示されるように、所与の温度で15分間加圧成形した。その後、積層されたタイルの入った枠をプレスから取り出し、アセンブリ全体を室温まで冷却した。この冷却期間の間、上部鋼プレート部品をそのまま積層したタイル上面に残しておいた。全ての加熱積層試料を、表13中に要約している。
【0191】
【表13】

【0192】
PELLETHANEを除く、加熱積層に使用した全てのポリマー銘柄品はタイルに接着した。他の時期に200℃でPELLETHANE銘柄品による加熱積層を試みたが、接着せず同一の結果であった。
【0193】
e)ペーストおよびディスパージョン−比較例
タイルを固定する工事または亀裂および孔を補修する工事に一般に使用されている、市場で入手可能な広い範囲の製品を、性能比較のため一連の試験に含めた。これらの製品を、それらの用途および利点に基づいて以下に短く要約している。これらの型の製品は一般に、ペーストまたはディスパージョンの形態で塗布され、それぞれ固有の硬化時間によって特徴付けられる。
【0194】
「Cemento cola en pasta」(Beissier,S.A.)は、アクリルコポリマーに基づくディスパージョン接着剤であり、溶媒として水を使用し、フィラーとしていくつかの型のセラミック粉末を有する。その接着力が、プラスター、古いタイル壁、木材、ペイント、ガラスおよびコンクリートにセラミックタイルおよびポリスチレンを固定するのに用いられる(通例は内装用)。耐湿性であり、柔軟であり、温度範囲5℃〜30℃で適用可能である。硬化時間は約20分である。
【0195】
アクリル充填化合物「Sellaceys(登録商標)Grietas Masilla acrilica」(Ceys,S.A.)は特に、亀裂および孔ならびにフレキシブルジョイントのシーリング用に設計され、内装および外装用の全ての種類の材料への非常に良好な接着性によって特徴付けられる。
【0196】
ケイ素酸「Sellaceys(登録商標)Silicona acida,Cocinas y banos」(Ceys,S.A.)は、湿気および−20℃と100℃の間の温度に対し抵抗性があるとして特徴付けられる。浴槽、流し台、タイルのシーリング向けに設計され、水および臭気の浸透を防ぐ。
【0197】
Prestolith特殊樹脂(Motip Dupli GmbH)は、不飽和弾性ポリエステル樹脂と硬化剤(hardener)のパッケージである。この樹脂は、ガラス繊維ティッシュおよびガラス繊維マットと組み合わせて使用して、金属、木材、およびコンクリートのより大きな孔、発錆個所および損傷された個所を修理するように、特に設計されている。硬化剤を通例2.5パーセント添加しており、硬化した製品は、120℃までの温度に耐える。この樹脂は、酸、灰汁、噴射剤、溶媒、水および着氷除去塩に耐える。
【0198】
ポリウレタン系製品「Masilla Pegamento Poliuretano」(Leroy Merlin,S.A.)は、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートを含有し、テラス、ルーフィングエレメント、軒樋および水泳プール向けの弾性および不透水性シーリング材として使用される。この製品は、種々の建設用途におけるエレメントの固定用に設計されている。
【0199】
SYNTEGRAポリウレタン水性ディスパージョン(2005年 Dow Chemical Companyから市販)。本試験で使用された製品銘柄はSYNTEGRA YM2200である。
【0200】
樹脂466は、実験用液体エポキシ樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)である。この樹脂は、良好な接着性を提供する柔軟性エポキシ樹脂とみなされる。この樹脂は、第二の成分、すなわち硬化剤(curing agent)の使用を必要とする。厚さ約100μmを有する標準的な両面接着材(Plasto SAS)も、本試験中に含まれる。
【0201】
比較用製品試料を、表8中に要約している。両面接着材は、いくつかの筋をなしてタイル上に接着させた。これらの筋は、厚さ約100μmを有していた。アクリル充填剤、ケイ素酸およびポリウレタンなどの市販製品は、通常の工事使用と同様に適用し、例えばタイル上にペーストの線を塗布し、へらでそれを平らにした。最終フィルム厚さを、積層シートのフィルム厚さと同様とした。全てのこれらの試料は、ひさしの下で、室温で約72時間硬化させた。他の試料は、ポリエステル型メッシュを取り付けている市販タイルであった。
【0202】
【表14】

【0203】
f)試験手順
本試験において、ISO 3537試験方法(路上走行自動車−安全窓ガラス材料−機械的試験(1999))を使用した。ISO 3537は「ボール落下試験(ball drop test)」を規定し、それは路上走行自動車における安全ガラスの性能を測定するために使用される。この試験構成を、裏通気型ファサードの破壊についてシミュレートするように適応させた。適応させた試験において、硬質鋼球の落下は、小さな硬質物体(例えば、石)の落下を表していた。それぞれのタイルは、枠上に置き、その端部だけで支持していた。
【0204】
試験用枠は、図1に示すように組み立てた。枠寸法は、それぞれ10×10cmのタイルを収容するように選択した。裏通気型ファサード仕上げ材では、枠内にタイルを締め付けないで、タイルの裏側を枠に固定するだけなので、安全ガラス試験用に通例使用される上部支持体は使用しなかった。
【0205】
試験を行うため、樹脂積層もしくは被覆された面を下面にしてタイルを試験用支持体上に水平に置き、タイルの露出面上に焼入れ鋼球を落下させた。鋼球は重量50グラムを有し、破壊が起こるか否かに応じて、50cm、80cmおよび100cmの間で落下高さを変化させた。種々の製品の総合的性能評価を得るため、試料当り試験体2枚を試験した。
【0206】
衝撃試験の最適条件を決定するため、ブランク対照試料を使用して、いくつかの試験高さを試行した。ブランクタイルが破壊し始める高さ50cmが、臨界的な落下高さであることが見出された。したがって全試料を最初50cmで試験し、破壊がない場合80cmで再試験した。
【0207】
第二の試験シリーズは、より薄い(6mm)平タイルで実施した。それらのタイルの機械的抵抗性は先行タイルに比べて低いが、ポリマー裏シートの存在によりそのフィルムがタイルに、良好に接着されるため、衝撃性が改良された。したがって、より薄いタイルについて同じ試験高さ、50cmおよび80cmを使用した。
【0208】
試験の間、積層もしくは樹脂被覆されたタイルの性能に影響を及ぼすものとして次の3つの主なパラメータが下記のように特定された:樹脂フィルムもしくは樹脂コーティングの剛性、樹脂フィルムもしくは樹脂コーティングのタイルへの接着力、および積層もしくは被覆されたタイルの保全性。
【0209】
用語「保全性(integrity)」は、破壊された積層もしくは被覆されたタイルが、組立て枠内にそのまま残る能力を指す。樹脂フィルムの剛性が、一旦割れた積層タイルの保全性に直接の影響を有するものと見られた。より剛性のある樹脂フィルムは、割れた積層タイルに安定性をもたらすが、より柔軟なフィルム、もしくはさらに弾性もあるフィルムは、割れた破片をその場所に保持することができなかった。タイルへの樹脂フィルムの接着力も重要であった。非常に良好な接着力により、こわれた端部が一緒にしっかり保持され、つながってはがれるのを防ぐように、割れたタイルが補強される。さらに、良好な接着力により、破片が外れて落下することが避けられる。これらのパラメータのほかに、裏当て材料によるエネルギー吸収が同様な役割を果たすであろう。
【0210】
これらの所見に基づいて、それぞれの試料について3つのパラメータ、フィルムの剛性、フィルムの接着力および積層もしくは被覆保全性を評価した。それぞれのパラメータについての0〜3の性能格付けを示した。「ゼロ」の格付けは「接着力なし」について用いられ、数字1(低い)、2(中間)および3(高い)は、それぞれのパラメータについての性能レベルを特性付ける。これらの結果を、表15および16に要約している。
【0211】
【表15】

【0212】
【表16】

【0213】
PRIMACOR銘柄品(1410および1321)およびINTEGRAL E101は共に、上述の要求条件を最も良く満たしていた。LOTADER AX8900試料およびDow社ポリウレタンディスパージョン試料は良好な接着力を示したが、これらのフィルムの剛性は、保全性を保持するには不十分であった。しかし、前者の剛性は、他の銘柄品または多層フィルム構造により改良することができた。PRIMACOR 1410は、衝撃エネルギーをより良く吸収し、80cmで破壊が起こったが、AMPLIFY GR207、AMPLIFY EA100およびLOTADER AX8900積層物は、50cmで破壊した。
【0214】
「メッシュ」試料は、タイルの裏側にメッシュを有しており、非常に良い性能であった。しかし、この試料は、異なる組成である、またより大きな厚さ(11mm)のセラミックタイルで作られているので、他の試料と比較することができない。この基材は、落下高さ「50cm」および「80cm」で破壊が起こらないので、「100cm」で試験し、そこで最後に破壊した。メッシュを含まない同一の型の対照標準試料は、80cmで(50cmではなく)最初に破壊した。さらに、このメッシュは、オフラインの後工程で施されており、このためタイルの製造にさらなるコストが加わっている。タイルの加熱積層は、加熱積層ユニットを付加することにより、セラミックタイルの生産ライン内で実施でき、したがって製造コストが押えられる。
【0215】
エポキシ樹脂を接着させたタイルについては、80および100cmで破壊が起こり、衝撃が高度に吸収されたことを意味する。タイルの保全性も良好であった。しかし、硬化したエポキシ樹脂が剛性架橋構造であるため、高衝撃力では、非弾性の架橋エポキシ網目と一緒にタイルが破壊される恐れがある。
【0216】
一般に、破壊された樹脂積層タイルの全体的保全性は、従来型の工事用接着剤の層により調製したタイルと比較すると(後者の場合に接着力がより良い可能性があるとしても)、はるかに良好である。それにしても、タイルの保全性を保持するには、従来の工事材料は、それを塗布した接着剤層がセラミックタイルと一緒に破壊されるように、柔軟すぎるかもしくは剛性すぎるものである。
【0217】
その上、接着剤層(タイルに付着される層)1層と、例えばPRIMACOR/HDPEブレンドから形成されたフィルムとを有する多層フィルムは、より良好な結果をもたらす可能性がある。熱可塑性材料に加えてメッシュを使用することも、結果を改善するはずである。
【0218】
g)接着力試験
接着力を試験するため、その可用性、単純性、低コストのために、また剛性エレメントと柔軟性エレメントとから構成される接合部の接着力測定に十分に適応しているので、180°はく離試験を選択した。この試験は、ASTM D903規格(ASTM D903−98(2004)、接着剤接合のはく離もしくはストリッピング強さの標準試験方法、ASTM International.(2004))に基づいている。
【0219】
(i)ポリマー調製−加圧成形フィルム
国際規格ISO 1872−2[ISO 1872−2:2007、プラスチック−ポリエチレン(PE)成形および押出し材料−パート2:試験用試験片の調製および性状の測定、ISO.(2007)]に従って、加熱プレス、Collin社Mod.P300、を使用し圧縮プレートを入念に仕上げた。200mm×200mm×1mmの鋼枠を、金型として使用した。その密度に基づいてポリマーの重量をはかり、プレス内の、2枚のマイラーもしくはテフロンフィルム(Primacor(商標)およびAmplify(商標)樹脂のそれぞれ)、および2枚の4mm厚鋼製プレートの間に置いた。
【0220】
(ii)ポリマー調製−押出しフィルム
表17および18に示した、下記の溶融温度および工程条件を使用して、Collin社30mm押出し機で注型フィルム(280μm)を押出した。
【0221】
【表17】

【0222】
【表18】

【0223】
(iii)基材へのポリマー接着性
積層タイルの製作に使用したものと同一のプレスを使用して、圧縮力によってポリマーおよび基材(ITC磁器質せっ器タイル(10cm×10cm×8mm))を一緒に接着させた。適用する力の均一性を改善し、力の局在性を小さくするため、所望される最終厚さの方形鋼枠内側の、鋼プレート上に基材を置いた(積層板の最終厚さ=850ミクロン)。このやり方で、圧力はポリマー/基材系上にだけでなく、枠上にも分布し、基材が損傷されなかった。さらに、一定の最終コーティング厚さが得られた。この積層のため使用した組立て方を、図2に示している。
【0224】
基材とフィルムの間の指定された界面領域での接着を避け、はく離試験用にフィルムを180°転置するのを可能にするため、ポリエステルフィルム(25μm)を基材とポリマーフィルムの間に置いた。加圧成形フィルム(厚さ1mm)の場合、単一ポリマーフィルムを使用し、また押出しフィルムの場合、300ミクロンのフィルム層3枚を使用して、最終厚さ850ミクロンを得た。
【0225】
それぞれPRIMACOR樹脂またはAMPLIFY樹脂のため、MYLARまたはTEFLONフィルムをポリマー上に置いて、プレスへのフィルム付着を防止した。最後に、全体を組み立てて、加熱プレス内に置いた。このプレスの温度および圧力プロフィルを表19に示している。
【0226】
【表19】

【0227】
試料調製に関する臨界的パラメータは、鋼枠の厚さと基材の厚さの間の差によって与えられる最終ポリマーの厚さであった。枠が厚すぎると、ポリマー上に圧力が発揮されず、またポリマー/セラミック界面に気泡が捕集されて、はく離力値が実際よりも小さく評価された。枠が薄すぎると、より薄いポリマーコーティングを生じ、はく離試験の開始前にポリマーフィルムが破れて、接着力値が得られなかった。種々の枠の厚さを試験することによって、基材の厚さと最初のポリマー厚さとの合計よりも「0.15mm」薄い枠を使用するという良好な妥協点が見出された。
【0228】
基材の寸法(140mm×140mm)により課せられた制約のため、示唆された規格寸法から試料寸法を修正した。したがって、試験用試験片は、接合長さ60mmおよび開放端部80mmと共に幅「15mm」を有していた。試験用試験片の概略図を、図3に示している。
【0229】
試験片の寸法を、試験前に測定した。およそ10mmの距離について、手により剥がしを開始した。1kNのロードセルを有し、試験軸を動かす可能性を有するつかみ部を取り付けたINSTRON 5564引張試験機を使用して、はく離強さを測定した。可動型つかみ部に基材を固定し、試験軸を接合平面上に置き、セラミックの開放端と固定型つかみ部の間の距離を15mmに設定した。試験用組み立て方の概略図を、図4に示している。ポリマーフィルムを角度180°だけ裏返して、固定型つかみ部に取り付けた。移動速度を305mm/分に設定して、152.5mm/分の分離をもたらした。
【0230】
最良の平均荷重線を引くことによって、荷重対距離のグラフからはく離力を決定した。試料当り少なくとも5点の試験片を試験し、はく離力と試験片幅との間の比率の算術平均および標準偏差を報告した。
【0231】
h)結果
図5において見ることができるように、同一の基材についてまた同一のMFIについて、コノモノマー含量が増加すると接着力が増加する。アルミニウムなどの他の基材について同様な結果が見出されている。酸含量の増加と共に表面極性、表面酸性度および表面塩基度が上昇すると、基材への化学結合の可能性が高まると考えられる。
【0232】
同一のコモノマー含量については、図6(それぞれICTセラミックに積層されたEEAコポリマーについてMFIの接着力への影響;コモノマー含量=9.7パーセント)に示したようにMFIが増加すると、接着力が増大する。これは、MFI変化によるポリマー表面性状の変性のためと考えられる。MFIがより低い材料は、より低い表面極性を示す。
【0233】
試験した種々のセラミック間の他の差異は、表面粗さであった。表面粗さがより大きいと、実際の表面積も大きくなり、ポリマーと基材の間の相互作用の可能性がより増大する。これが、接着力における結果を説明しており、より高い粗さのセラミックについてのより高い接着力、およびより低い粗さについてのより低い接着力が示される(ITC>市販>市販研磨品)。これらの結果は、図7aおよび7bにおいて示される(図7aについて、樹脂はPrimacor(商標)1460であり、また図7bについて、樹脂はAmplify(商標)GR207である)。しかし、実際の用途については、セラミックの接着面は、決して研磨面側にはならないであろう。
【0234】
同一樹脂フィルムについては、接着力は、セラミックについてよりも天然石について、特に大理石について低く、その場合接着力はゼロに近い。はく離試験を受ける試料の界面の観察から、セラミックの場合、破壊機構は接着はく離(adhesive)破壊であるが、天然石については凝集(cohesive)破壊であると見ることができる(図7を参照されたい)。
【0235】
図8において見ることができるように、基材にかかわらず、PRIMACOR 1410について、またAMPLIFY GR 207について接着力はほとんど同じである。Amplifyのコモノマー含量が「<0.25パーセント」から「>1.0パーセント」まで増加すると(それぞれAMPLIFY GR 207およびGR 205)、接着力が増大する。
【0236】
図9は、Instituto de Technologia Ceramica(ITC)により調製されたセラミックに積層して試験したポリマーの接着力を比較している。より高い接着力値は、AMPLIFY GR 205およびPRIMACOR 3460についてのものである。
【0237】
本発明は、上記の特定の実施形態によってある細部にわたって記述されているが、この細部は主として例証の目的のためのものである。下記の特許請求範囲において記述される、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更および修正が行われることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の構成材:
A)少なくとも1種のセラミック構成材、または少なくとも1種の天然石構成材を含む組成物から形成される基材、
B)少なくとも1種の官能化オレフィン系ポリマーを含む組成物から形成されるポリマー層
を備え、かつ
前記ポリマー層が、前記基材の1つの表面を覆って形成される物品。
【請求項2】
前記ポリマー層が、フィルムまたはコーティングまたは発泡体の形態である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリマー層が、積層フィルムの形態である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記ポリマー層が、押出しコーティングの形態である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
少なくとも2層の基材を備える、請求項1から4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記ポリマー層が、前記2層の基材の間に形成される、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
少なくとも2層のポリマー層を備える、請求項1から6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
一方のポリマー層が、前記基材の1つの表面を覆って形成され、また他方のポリマー層が、前記同一の基材の他の表面を覆って形成される、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記官能化オレフィン系ポリマーが、官能化エチレン系ポリマーまたは官能化プロピレン系ポリマーから選択される、請求項1から8のいずれかに記載の物品。
【請求項10】
前記官能化オレフィン系ポリマーが、官能化エチレン系ポリマーである、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記官能化エチレン系ポリマーが、エチレンおよびアクリル酸またはアクリル酸エステルに由来する単位を含む高分岐ポリマーである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記官能化エチレン系ポリマーが、高圧重合方法から形成され、かつアクリル酸またはアクリル酸エステルに由来するコモノマー単位を含むエチレン系コポリマーである、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記コモノマーが、アクリル酸エステルに由来し、前記アクリル酸エステルが、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルまたはアクリル酸ブチルから選択される、請求項11または請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記コモノマーが、アクリル酸に由来する、請求項11または請求項12に記載の物品。
【請求項15】
前記アクリル酸が、重合可能なモノマーの全重量に対して5重量パーセント以上の量で存在する、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記官能化エチレン系ポリマーが、エチレンおよび無水マレイン酸に由来する単位を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項17】
前記無水マレイン酸に由来する単位が、前記官能化ポリマーの全重量に対して0.5重量パーセント以上の量で存在する、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記官能化エチレン系ポリマーが、ポリエチレンアクリル酸コポリマー、酸無水物グラフト化ポリエチレン、エチレンアクリル酸ブチル、エチレンメタクリル酸グリシジル、エチレンメタクリル酸、エチレンビニルアルコール、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の物品。
【請求項19】
前記官能化エチレン系ポリマーが、カルボン酸;カルボン酸メチル、カルボン酸エチル、カルボン酸ブチルおよび他のカルボン酸アルキル;酸無水物;ジカルボン酸;イミド、アミン、グリシジル;一酸化炭素、H−Tempoに由来する極性基;シラン;またはシロキサンから選択される少なくとも1種の極性基を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項20】
前記官能化オレフィン系ポリマーが、0.86〜0.95g/ccの密度を有する、前記請求項のいずれかに記載の物品。
【請求項21】
前記官能化ポリマーが、0.5g/10分〜50g/10分のメルトインデックス(I2:2.16kg/190℃)を有する、前記請求項のいずれかに記載の物品。
【請求項22】
前記基材が、少なくとも1種のセラミック構成材を含む組成物から形成される、前記請求項のいずれかに記載の物品。
【請求項23】
前記基材が、下記:酸化物およびそれらの組合せ;アルミナ;シリカ、ケイ酸塩;ケイ素アルミン酸塩、ジルコニア;炭化物;窒化物;ケイ素化物;酸化物および非酸化物の組合せ;またはこれらの組合せの少なくとも1種を含む組成物から形成される、前記請求項のいずれかに記載の物品。
【請求項24】
前記基材が、セラミックである陶器、せっ器および磁器質せっ器からなる群から選択される、請求項22に記載の物品。
【請求項25】
前記基材が、前記基材の全重量に対して62〜72重量パーセントのSiOおよび15〜25重量パーセントのAlを含む、請求項22に記載の物品。
【請求項26】
前記基材が、下記の組成:前記基材の全重量に対して65〜75重量パーセントのSiO、14〜21重量パーセントのAl、および2〜5重量パーセントのKOを有する、請求項22に記載の物品。
【請求項27】
前記基材が、下記の組成:前記基材の全重量に対して65〜75重量パーセントのSiO、14〜21重量パーセントのAl、2〜5重量パーセントのKO、2重量パーセントのNaO、0.01重量パーセントのMnO、0.75重量パーセントのTiO、0.7重量パーセントのFe、0.5重量パーセントのCaO;0.3重量パーセントのMgOおよび0.1重量パーセントのPを有する、請求項22に記載の物品。
【請求項28】
前記基材が、下記の組成:前記基材の全重量に対して65〜75重量パーセントのSiO、14〜21重量パーセントのAl、2〜5重量パーセントのKO、0.01〜0.05重量パーセントのMnO、0.2〜0.8重量パーセントのTiO、0.5〜3重量パーセントのFe、0〜2重量パーセントのFeO、0.5重量パーセントのCaO;0.1〜1重量パーセントのMgOおよび0〜0.2重量パーセントのPを有する、請求項22に記載の物品。
【請求項29】
前記基材が、複合セラミック基材である、請求項1から28のいずれかに記載の物品。
【請求項30】
前記複合セラミック基材が、セラミック、金属、ガラス、ポリマーまたはこれらの組合せを含むマトリックスを含む、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記基材が、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項1から30のいずれかに記載の物品。
【請求項32】
前記基材が、多層構造体である、請求項29または請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記基材が、木材、金属、ガラスおよびこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種の材料をさらに含む、請求項1から32のいずれかに記載の物品。
【請求項34】
前記基材が、ガラスを含む少なくとも1層の積層体層をさらに備える、請求項1から33のいずれかに記載の物品。
【請求項35】
前記積層体層が、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項34に記載の物品。
【請求項36】
前記基材が、少なくとも1種の天然石構成材を含む組成物から形成される、請求項1から21のいずれかに記載の物品。
【請求項37】
前記天然石構成材が、御影石、石英、大理石、石灰石および粘板岩からなる群から選択される、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記天然石構成材が、御影石または大理石から選択される、請求項37に記載の物品。
【請求項39】
前記基材が、天然石複合材である、請求項36から38のいずれかに記載の物品。
【請求項40】
前記基材が、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項36から39のいずれかに記載の物品。
【請求項41】
前記請求項のいずれかに記載の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える建造物ファサード。
【請求項42】
請求項1から40のいずれかに記載の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える壁構造。
【請求項43】
請求項1から40のいずれかに記載の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える床仕上げ構造。
【請求項44】
請求項1から40のいずれかに記載の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える屋根構造。
【請求項45】
請求項1から40のいずれかに記載の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える天井構造。
【請求項46】
請求項1から40のいずれかに記載の物品から形成された少なくとも1種の構成材を備える家具部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−537846(P2010−537846A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522409(P2010−522409)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/ES2008/070169
【国際公開番号】WO2009/030802
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】