説明

ポリマー溶射用反応性担体

本発明は、ポリマーを、シート、フィルム、繊維、および容器のような物品に溶射する際に、副生成物を生成しない反応性担体に関する。この反応性担体は、添加物をポリマー樹脂に混ぜ合わせるために用いられる。さらに詳細には、本発明は、1種以上の環状酸無水物、または置換環状酸無水物を反応性担体として用いる用法に関する。ポリマーはポリエステルまたはポリアミドであってもよい。適当な環状酸無水物は、ポリエステルまたはポリアミドよりも低い融点を持つものであって、好ましくは約160℃未満、より好ましくは約125℃未満の融点を持つ。もっとも好ましいのは、約100℃未満の融点を持つ環状酸無水物であり、特に好適なのは、室温(25℃)で液体であるものである。環状酸無水物は、無水コハク酸、無水置換コハク酸、グルタル酸無水物、置換グルタル酸無水物、無水フタル酸、無水置換フタル酸、無水マレイン酸、置換無水マレイン酸、またはこれらの2種以上の混合物から成る群から選ばれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ポリマーを、物品、例えば、シート、フィルム、繊維、および容器に溶射する際に、副生成物を生じることのない反応性担体に関する。この反応性担体は、添加物をポリマー樹脂に混ぜ合わせるのに用いられる。さらに詳細には、本発明は、1種以上の環状酸無水物、または置換環状酸無水物を反応性担体として用いる用法に関する。ポリマーはポリエステルまたはポリアミドであってもよい。
【背景技術】
【0002】
多くの射出成形ポリマー品において、その物品の機能性を向上させるために添加物が必要とされる。典型的な添加物は、着色剤、スリップ防止剤、難燃剤、抗酸化剤、気体障壁剤、紫外(UV)照射吸収剤、アセトアルデヒド還元剤、結晶化調節剤、充填材等である。
【0003】
添加物を射出成形ポリマー品の中に混ぜ合わせるために、従来から「マスターバッチ」法が用いられている。このマスターバッチ工程では、所望の添加物は、担体ポリマーにおいて比較的高い濃度レベルで分散される。次の工程段階で、高濃度の添加物ポリマーのマスターバッチは、押出し成形機の供給管部分において、無添加のポリマーと混ぜ合わせられる。マスターバッチの乾燥および秤量に関する工程管理の質によっては、添加濃度とポリマー分子量の変動は受け容れがたい場合がある。
【0004】
別法として、押出し成形機の管部分で押し出された、添加物の液体分散を利用する方法がある。この液状担体は、有機性で、非水性で、ポリマーに可溶で、押出し温度よりも高い沸点、すなわち、一般に300℃を超える沸点を持っていなければならない。市販の液状担体は、ColorMatrix社、クリーブランド、オハイオ州から、ColorMatrix LCPY-1:82-89シリーズという名前で売られているものを入手することが可能である。ColorMatrix社の物質安全データシート(material safety data sheet, MSDS)によれば、主な名前入りの成分は精製炭化水素油である。
【0005】
液性担体使用における問題点は、それらが、物品の加工に影響を及ぼすこと、及び、物品の内部に留まる可能性のあることである。例えば、それらは、押出し成形機のスクリューのスリップを招き、金型の上へのはみ出しの原因となり得、そして、漏出する可能性がある。
【0006】
Nichols等に付与された米国特許第6,569,991、6,573,359、6,590,069、および6,599,596号は、縮合ポリマーと反応し、そうすることによってポリマー樹脂中に反応性担体を結合させ、その後の熱処理加工の際にポリマー樹脂から担体が出ることを阻止する、反応性担体の用法を開示する。これらの特許は、図において、反応性担体の分子量が、縮合ポリマーの分子量の理論的減少に及ぼす作用を、反応性担体の濃度の関数として示す(すなわち、特定の反応性担体の使用は、ポリマー分子量の減少を招く)。高分子量(10,000 g/mol未満)の反応性担体が好ましいが、特にポリオール、および最も好ましくは、分子量が約400から1000 g/molの間にあるポリエチレングリコールがあげられる。
【0007】
Huangに付与された米国特許第6,342,578号は、無水フタル酸、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、無水マレイン酸、または無水コハク酸の1種以上を、苛性ストレス割れを著明に低減させるのに十分な量として含む、ポリエステルを開示する。これらの無水物は、末端のヒドロキシル基と反応して末端カルボキシル基(carboxyl end group, CEG)を形成した。
【0008】
ポリマーの分子量を低減させない反応性担体の必要性が存在する。
【発明の開示】
【0009】
本発明者等は、環状酸無水物、特に、置換環状酸無水物は、ポリマーの分子量を低減させる副生成物を生じない反応性担体として用いることができることを見出した。
【0010】
もっとも広い意味で、本発明は、物品の中に溶融状態で押出されるポリマーに含まれる添加物の担体としての、注入時に液状である環状酸無水物の用法に関する。
【0011】
もっとも広い意味で、本発明はまた、溶融押出し工程において、添加物を含む液状の環状酸無水物を注入する方法も含む。無水物は注入時液状である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
環状酸無水物は、ヒドロキシル、カルボキシル、一級および二級アミン類およびアミド類を含む、任意の求核基と反応する。このことは、環状酸無水物は、ポリエステルおよびポリアミドにおける反応性担体としてもっとも好適であることを意味する。
【0013】
適当な環状酸無水物は、ポリエステルまたはポリアミドの融点よりも低い融点を持つ化合物である。好ましいのは、約160℃未満の融点を持つ環状酸無水物であり、もっとも好ましいのは、100℃未満の融点を持つ環状酸無水物で、そして、特に好適なのは室温(25℃)で液状のものである。
【0014】
従来、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸ジメチルまたはテレフタル酸を、エチレングリコールと、例えば、エステル化反応を介して反応させ、次に、重縮合反応させることによって製造している。PETを製造する場合、バッチ工程であれ連続工程であれ、反応をほぼ完全近くまで進行させ、ジエチレングリコールおよびその他の副生成物が最大3重量パーセントのPETを生成することが可能である。PETは、少量の副生成物を含むことが意図されている。
【0015】
PETの通例の連続生産は従来技術でよく知られているおり、テレフタル酸とエチレングリコールを約200から250℃の温度で反応させてモノマーと水を生じることを含む。反応は可逆性であるので、水は連続的に除去され、反応を、モノマーおよび幾種類かのオリゴマーの生成に向かうように仕向ける。次に、モノマーとオリゴマーとは、約250から290℃の温度において真空条件下に重縮合反応をし、約0.4から0.6のIVを持つポリエステルを形成する。エステル化反応の際、触媒は必要ない。しかしながら、重縮合反応では、アンチモン化合物またはチタン化合物のような触媒が必要である。
【0016】
PETはまた、約190から230℃の反応温度で、アルコール(メタノール)とモノマーを生じながら、エステルであるテレフタレル酸ジメチルとエチレングリコールとの反応からバッチおよび連続工程においても製造される。このエステル化反応は可逆的であり、アルコールは連続的に取り除き、反応をモノマーと幾種類かのオリゴマーの生成に傾けるようにしなければならない。テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールの反応においては、マンガン、亜鉛、コバルト、またはその他一般的な触媒、のような触媒が用いられる。次に、このモノマーおよびオリゴマーは、前述の条件下に重縮合反応をし、約0.4から0.6のIVを持つポリエステルまたはコポリエステルを生成する。PETとジカルボン酸のコポリエステルを製造するには、ただ、酸またはそのエステル等価物を、例えば、さらにエステル化(またはエステル交換)反応を起こすように、添加するだけでよい。PETとジオールのコポリエステルを製造するためには、エステル化反応(またはエステル交換反応)の際にジオールを添加するだけでよい。ボトルの樹脂として用いるためには、この溶融相反応で得られたポリエステルまたはコポリエステルを、その樹脂分子量(IV)を増すために、従来法によって固相重合させる。
【0017】
従来技術で知られているように、最大20重量%のジカルボン酸を含む樹脂は、ボトルまたはジャー容器を形成するのに有用である。適当な二酸としては、脂肪族、脂環式、または芳香族ジカルボン酸、例えば、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、二安息香酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、または、これらおよびこれらの等価物の混合物がある。官能化された酸誘導体等価物、例えば、ジカルボン酸のジメチル、ジエチル、またはジプロピルエステルの使用はしばしば好まれる。
【0018】
別法として、ポリエステル樹脂は、エチレングリコールとは別の、最大20重量%の1種以上のジオールによって要すれば任意に修飾されてもよい。このような付加ジオールとしては、好ましくは6から20個の炭素原子を持つ脂環式ジオール、または、好ましくは3から20個の炭素原子を持つ脂肪族ジオールが挙げられる。エチレングリコールと一緒に含められてもよいこのようなジオールの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、3-メチルペンタンジオール-(2,4)、2-メチルペンタンジオール-(1,4)、2,2,4-トリメチルペンタン-ジオール-(1,3)、2-エチルヘキサンジオール-(1,3)、2,2-ジエチルプロパン-ジオール-(1,3)、ヘキサンジオール-(1,3)、1,4-ジ-(ヒドロキシエトキシ)-ベンゼン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチル-シクロブタン、2,2-ビス-(3-ヒドロキシエトキシフェニル)-プロパン、および2,2-ビス-(4ヒドロキシプロポキシフェニル)-プロパンを含む。
【0019】
ポリアミドとは、脂肪族または芳香族ジアミンとジカルボン酸との縮合、あるいは、ラクタムの縮合によって製造されるポリアミドを意味する。好ましいポリアミドは、ナイロン66およびナイロン6である。
【0020】
物品とは、フィルム、熱加工用シート、繊維、および、射出成形部品であって、特に延伸ブロー成形によって容器として成形されるプリフォームを取る部品を意味する。
【0021】
好ましい実施態様では、添加物を含む環状酸無水物担体が、溶融押出し成形工程に注入される。この注入は、例えば、フィルムまたは繊維形成機のような物品形成装置に、溶融ポリマーを導く溶融配管において起こる。
【0022】
別の実施態様では、添加物を含む環状酸無水物担体は、連続重合工程の最後部、最終リアクターと、糸を形成するダイス金型の間を結ぶ転送パイプにおいて加えられる。糸は冷却され、細かく裁断される。要すれば任意に、この樹脂は、固相重合されて、高い分子量(IV)を持つようにすることも可能である。
【0023】
好ましい実施態様では、添加物を含む環状酸無水物液状担体は、プリフォーム射出成形の押出し成形機または押出しブロー成形機の、駆出器の供給管部分において、混合容器に添加される。この工程において、液状担体は、周囲の温度の近く、またはそれ以下の温度に融点を持つのが好ましい。これによって、複雑な加熱システムが不要になるので、無水物の押出し成形機への添加を単純にする。
【0024】
延伸ブロー成形容器の場合、プリフォームは、約100-120℃に加熱され、約12.5の延長比で曲線ボトルにブロー成形される。この延伸比とは、放射方向の延伸×長さ(軸)方向の延伸である。従って、プリフォームがブローされてボトルに成形される場合、長さが約2倍引き伸ばされ、直径が約6倍引き伸ばされ、12 (2 x 6)の延伸比となる。ボトルのサイズは固定されているから、様々な延伸比を実現するために、様々なプリフォームサイズを使用することが可能である。
【0025】
好ましい担体は、下記のクラスから選ばれる環状酸無水物である。
【0026】
a) 無水コハク酸

式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0027】
無水コハク酸のこのクラスに含められるのは、シクロアルカンおよびシクロアルケン置換体であって、例えば、無水ヘキサヒドロフタル酸および無水ヘキサヒドロフタル酸置換体がある。
【0028】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0029】
さらにこのクラスに含められるのは、イタコン酸無水物(無水2-メチレンコハク酸)およびイタコン酸無水物置換体である。
【0030】

式中、R1およびR2は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0031】
このクラスでは、無水モノ-アルケニル置換コハク酸が好まれる。もっとも好ましいのはC8からC20アルケニル基である。
【0032】
a) 無水マレイン酸

式中、R1およびR2は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0033】
さらにこのクラスに含められるのは、シクロアルカンおよびシクロアルケン置換体であって、例えば、無水3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、および、無水置換テトラヒドロフタル酸群のような化合物である。
【0034】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基、および置換1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物であってもよい。
【0035】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0036】
このクラスでは、無水マレイン酸、および無水2-メチルマレイン酸(シトラコン酸無水物)が好ましい。
【0037】
a)グルタル酸無水物

式中、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0038】
このクラスでは、グルタル酸無水物、および2-エチル-3-メチルグルタル酸無水物が好ましい。
【0039】
a)ジグリコール酸無水物

式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0040】
a) 無水フタル酸

式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
【0041】
a)ジフェン酸無水物

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、水素、アルキル、アルケニル、またはアリール基であってもよい。
表1は、選択された環状酸無水物の融点をまとめている。
【0042】

【0043】
環状酸無水物が、プリフォーム射出成形段階において添加される工程では、低融点、好ましくは50℃以下の融点が用いられる。好ましい環状酸無水物は、無水アルケニルコハク酸、例えば、オクタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、およびエイコソデセニルコハク酸の各無水物、またはそれらの混合物である。
【0044】
本発明による添加物は、着色剤、スリップ防止剤、難燃剤、抗酸化剤、気体(酸素および二酸化炭素)障壁剤、酸素捕捉剤、紫外(UV)照射吸収剤、アセトアルデヒド還元剤、結晶化調節剤、衝撃改質剤、触媒不活性化剤、溶融強度強化剤、静電気防止剤、潤滑剤、鎖延長化剤、核形成剤、溶剤、充填剤、および可塑剤である。
【0045】
これらの添加物は、それらが使用される機能的な目的のために必要とされる濃度において、反応性担体と混合される。注入される、またはポリマーと混合される、好ましい反応性担体の濃度は、約1重量%もしくは以下(100 ppm−10,000 ppm)である。反応性担体と共に使用される添加物はいずれも、ポリマーへの添加前に液状担体と反応してはならない。
【0046】
試験手順
融点
環状酸無水物の融点は、ホットステージ顕微鏡にて測定する。ホットステージは、最初に急激に加熱し、次に、期待される融点に先立つ最後の10℃では、2℃/分に調節する。融点は、溶融が最初に観察される温度から溶融が完了する温度までの範囲と定義される。
IV
ポリマーの固有粘度(IV)は、0.2グラムのアモルファス状ポリマー組成物を20ミリリットルのジクロロ酢酸と25℃の温度で混合し、Ubbelhode粘度計を用い相対粘度(RV)を求めて、定量した。RVは、ISO保証の式:
IV=[(RV−1)x0.6907]+0.63096
を用いてIVに変換した。
ヘーズおよび色
プリフォームおよびボトルのヘーズは、Hunter Lab ColorQuest II装置を用いて測定した。ヘーズは、全透過光の内の散乱光のパーセントとして定義される。ボトルの側壁の色は、同じ装置で測定し、L*、a*、およびb*のCIE単位で表した。
摩擦係数
ASTM D1894-01による静的摩擦係数試験を、ボトル側壁に対して室温で行った。
[実施例]
【0047】
(実施例1)
本実施例は、米国特許第6,569,991号の好ましい反応性液状担体であるポリエチレングリコール(PEG)を、本発明の担体と比較する。
【0048】
市販の標準的なポリエステルボトル樹脂(KoSa3302、Spartanburg、サウスカロライナ州、米国)を用いた。分子量400のPEGは、Union Carbide、Danbury、コネティカット州、米国から入手した。環状酸無水物は、無水アルケニルコハク酸類 (alkenyl succinic anhydride, ASA)で、Albemarle社、Richmond、バージニア州、米国から入手し、54%ヘキサデセニル、34%オクタデセニルおよび10%エイコソデセニルコハク酸無水物との混合物であった。
【0049】
3302樹脂は、真空下150℃で12時間乾燥した。乾燥樹脂は、液状担体と混ぜ合わされ、Arburgの射出成形機において射出成形されて48グラムのプリフォームを形成した。
【0050】
プリフォームIVを測定した。結果は表2に記載する通りである。
【0051】

【0052】
この結果は、ASAは、PEGと比べてIV低下をもたらさないことを示している。なぜなら、PEGは、ポリエステル樹脂とエステル交換し、副生成物として水を生じて加水分解および分子量低下(IV)を招くのに対して、ASAは開環反応をして副生成物を生ずることがないからである。
【0053】
プリフォームの色とヘーズを測定した。結果は表3に記載する通りである。
【0054】

【0055】
ASA液状担体は、4000 ppmの濃度で、黄色度(b*)およびヘーズが著明に増加したPEGとは対照的に、プリフォームの色およびヘーズにほとんど影響を及ぼさなかった。
【0056】
(実施例2)
5重量%のフュームドシリカ、Cab-O-sil(登録商標)M7D(Cabot社、ボストン、マサチューセッツ州、米国)を含むASAの混合物を、フュームドシリカとASA液とを混合することによって調製した。乾燥させた3302ポリエステル樹脂を、袋の中で混合することにより上記混合物でコートし、次に、Arburg射出成形機において射出成形し48グラムのプリフォームを形成した。ASAの濃度は4,000 ppmであった(フュームドシリカの担持濃度は200 ppmであった)。3302コントロールの摩擦係数は9.3であった。これに比べて、環状酸無水物を含む樹脂の中に取り込まれたスリップ防止剤(フュームドシリカ)では0.2であった。
【0057】
(実施例3)
実施例2の工程の後、81.2重量%のASAと18.8重量%のUV吸収剤、Tinuvin 234 (Ciba Specialty Chemicals, Charlotte、ノースカロライナ州、米国)との混合を行った。ASAの濃度は4,000 ppmであり、UV吸収剤の担持濃度は900 ppmであった。
【0058】
24グラムのプリフォームを、Cincinnati Milacronの延伸ブロー成形機において、ボトル(0.59リットル)にブロー成形した。ボトルの側壁(0.38 mm)のUV吸収を測定した。370 nmにおける%透過率は、3302コントロールでは80%であるのに対し、UV添加剤ボトルでは10%未満であった。
【0059】
(実施例4)
実施例3の工程の後、97.5重量%のASAと2.5重量%の青色染料、Polysynthren Blue RBL (Clariant社, Charlotte、ノースカロライナ州、米国)との混合物を用いた。混合物は、500 ppmの濃度で用いた。ボトルの側壁の色とヘーズを、炭化水素油担体によって同じ濃度の青色染料を添加した市販のボトルと比較した。結果は表4に記載する通りである。
【0060】

【0061】
これらの結果は、炭化水素油担体の代わりに、環状酸無水物を使用することが可能であることを示している。
【0062】
(実施例5)
ポリエステルボトル樹脂組成物において用いられる一般的な添加物の一つは、再熱剤である。これらの再熱剤は、プリフォームが、延伸ブロー成形温度まで加熱されるのに要する時間を短縮する。米国特許第5,925,710号は、再熱剤としてのグラファイトの用法を開示している。
【0063】
実施例1の工程の後、99重量%のASAと1重量%のグラファイト(Grafitbergbau Kaiserberg AG, Kaiserberg、オーストリア)の混合物を調製した。この混合物を1,000 ppmの濃度で用い、これにより樹脂中には10 ppmのグラファイトが含まれることになった。
【0064】
プリフォーム再熱工程では、プリフォームを延伸ブロー成形温度に加熱するのに、一連の赤外線ランプを用いた。これらのランプのパワーを変えることによって、プリフォームの最終温度が変化する。ランプのパワーの、プリフォームの温度に対する影響は表5に記載する通りである。
【0065】

【0066】
これらの結果は、環状酸無水物反応性担体が、ポリエステルに再熱添加剤を加えるための効果的な担体となることを示す。
【0067】
上記に示したように、本発明に従って、環状酸無水物と添加物を含むポリエステルまたはポリアミド樹脂、このような樹脂を作る工程、このような樹脂から射出成形品を作る工程、および、このような樹脂から製造される、前述した目的、意図、および利点を完全に満足する射出成形品が提供されたことは明らかである。本発明は、具体的な実施態様と結びつけて記載されてきたが、多くの代替、修飾、および改変が、前述の記載に照らして当業者には明白である。従って、本発明の精神や広範な範囲の中に含まれる、全てのこのような代替、改変、および改変は、本発明に含められることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状酸無水物を含むポリアミド、または、環状酸無水物を含むポリエステル、のいずれかの反応生成物を含む樹脂であって、前記反応生成物は添加物も含むことを特徴とする、前記樹脂。
【請求項2】
前記環状酸無水物は、無水コハク酸、無水置換コハク酸、グルタル酸無水物、置換グルタル酸無水物、無水フタル酸、無水置換フタル酸、無水マレイン酸、および、無水置換マレイン酸から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記無水置換コハク酸は、無水メチルコハク酸、無水2,2-ジメチルコハク酸、無水フェニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸、無水エイコソデセニルコハク酸、無水2-メチレンコハク酸、無水n-オクテニルコハク酸、無水ノネニルコハク酸、無水テトラプロペニルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記置換グルタル酸無水物は、3-メチルグルタル酸無水物、フェニルグルタル酸無水物、ジグリコール酸無水物、2-エチル3-メチルグルタル酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、2,2-ジメチルグルタル酸無水物、3,3-テトラメチレングルタル酸無水物、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂。
【請求項5】
前記無水置換フタル酸は、無水4-メチルフタル酸、無水4-t-ブチルフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂。
【請求項6】
前記無水置換マレイン酸は、無水2-メチルマレイン酸、無水3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水ジメチルマレイン酸、無水ジフェニルマレイン酸、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂。
【請求項7】
前記環状酸無水物の量は約100から10,000 ppmであることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂。
【請求項8】
前記ポリエステルは、ジオールと二酸の重縮合によって作られ、前記ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、または1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、前記二酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6-ナフトエ酸であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂。
【請求項9】
前記ポリエステルは、
ポリエチレンテレフタレート、
または、
ポリエチレンテレフタレート、最大20重量%のイソフタル酸または2,6-ナフトエ酸、および、最大10重量%のジエチレングリコールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノール、のコポリエステル、
であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂。
【請求項10】
前記ポリエステルは、
ポリブチレンテレフタレート、
または、
ポリブチレンテレフタレート、最大20重量%のジカルボン酸、および、最大20重量%のエチレングリコールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノール、のコポリエステル、
であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂。
【請求項11】
前記ポリエステルは、
ポリエチレンナフタレート、
または、
ポリブチレンナフタレートと、最大20重量%のイソフタル酸、および最大10重量%のエチレングリコールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールのコポリエステル、
であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂。
【請求項12】
前記ポリアミドはナイロン6またはナイロン66であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂。
【請求項13】
前記環状酸無水物は、約100℃未満の融点を有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂。
【請求項14】
前記添加物は、着色剤、スリップ防止剤、難燃剤、抗酸化剤、気体(酸素および二酸化炭素)障壁剤、酸素捕捉剤、紫外(UV)照射吸収剤、アセトアルデヒド還元剤、結晶化調節剤、衝撃改質剤、触媒不活性化剤、溶融強度強化剤、静電気防止剤、潤滑剤、鎖延長化剤、核形成剤、溶剤、充填剤、可塑剤、および、これらの内の2種以上の混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂。
【請求項15】
シート、フィルム、繊維、および容器を作るための樹脂の製造方法であって、環状酸無水物と添加物を混ぜ合わせ混合物を形成すること、および、前記混合物における前記環状酸無水物をポリエステルまたはポリアミドと反応させること、を含む方法。
【請求項16】
前記環状酸無水物は、無水コハク酸、無水置換コハク酸、グルタル酸無水物、置換グルタル酸無水物、無水フタル酸、無水置換フタル酸、無水マレイン酸、および、無水置換マレイン酸から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記無水置換コハク酸は、無水メチルコハク酸、無水2,2-ジメチルコハク酸、無水フェニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸、無水エイコソデセニルコハク酸、無水2-メチレンコハク酸、無水n-オクテニルコハク酸、無水ノネニルコハク酸、無水テトラプロペニルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記置換グルタル酸無水物は、3-メチルグルタル酸無水物、フェニルグルタル酸無水物、ジグリコール酸無水物、2-エチル3-メチルグルタル酸無水物、2,2-ジメチルグルタル酸無水物、3,3-テトラメチレングルタル酸無水物、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記無水置換フタル酸は、無水4-メチルフタル酸、無水4-t-ブチルフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記無水置換マレイン酸は、無水2-メチルマレイン酸、無水3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水ジメチルマレイン酸、無水ジフェニルマレイン酸、および、これらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記環状酸無水物の量は約100から10,000 ppmであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエステルは、ジオールと二酸の重縮合によって作られ、前記ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、または1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、前記二酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6-ナフトエ酸であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリエステルは、
ポリエチレンテレフタレート、
または、
ポリエチレンテレフタレート、最大20重量%のイソフタル酸または2,6-ナフトエ酸、および、最大10重量%のジエチレングリコールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノール、のコポリエステル、
であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリエステルは、
ポリブチレンテレフタレート、
または、
ポリブチレンテレフタレート、最大20重量%のイソフタル酸または2,6-ナフトエ酸、および、最大20重量%のエチレングリコールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノール、のコポリエステル、
であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリエステルは、
ポリエチレンナフタレート、
または、
ポリエチレンナフタレート、最大20重量%のイソフタル酸、および、最大10重量%のジエチレングリコールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノール、のコポリエステル、
であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリアミドはナイロン6またはナイロン66であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記添加物は、前記環状酸無水物とは反応しないことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記添加物は、着色剤、スリップ防止剤、難燃剤、抗酸化剤、気体(酸素および二酸化炭素)障壁剤、酸素捕捉剤、紫外(UV)照射吸収剤、アセトアルデヒド還元剤、結晶化調節剤、衝撃改質剤、触媒不活性化剤、溶融強度強化剤、静電気防止剤、潤滑剤、鎖延長化剤、核形成剤、溶剤、充填剤、可塑剤、および、これらの内の2種以上の混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記環状酸無水物は、約100℃未満の融点を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記環状酸無水物は、約25℃未満の融点を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記樹脂は、射出成形によって、シート、フィルム、繊維、容器、およびプリフォーム、および、プリフォームから形成される容器に加工されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
環状酸無水物を含むポリアミド、または、環状酸無水物を含むポリエステル、のいずれかの反応生成物を含む樹脂から作られる、シート、フィルム、繊維、容器、およびプリフォーム、および、前記プリフォームから形成される容器、のような射出成形品であって、前記反応生成物は添加物も含むことを特徴とする、成形品。
【請求項33】
環状酸無水物を含むポリアミド、または、環状酸無水物を含むポリエステル、のいずれかの反応生成物を含む樹脂から作られる、シート、フィルム、繊維、容器、およびプリフォーム、および前記プリフォームから形成される容器、のような射出成形品であって、前記反応生成物は添加物も含み、前記環状酸無水物は約100℃未満の融点を持つことを特徴とする、成形品。

【公表番号】特表2007−522295(P2007−522295A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552292(P2006−552292)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/003685
【国際公開番号】WO2005/076947
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】