説明

ポリマー物質及びモノマー化合物並びにそれらの製造方法

【解決手段】
部分式(I)の基を含む出発物質を、その出発物質の重合が生起する状態にするステップを含むポリマー物質の製造方法を提供する。


式(I)において、RはCR(Rは水素若しくはアルキル基であり、Rは水素、アルキル基若しくは式(A)である)又はRは電子求引基であり、


及びRは(CR(nは0、1又は2)又はCR基、CRCR基、若しくはCRCR基から相互に依存せず独立に選択され、R及びRは水素又はアルキル基から独立に選択され、R又はRの何れか一方が水素で他方が電子求引基であるか又はR及びRが一緒になって電子求引基を形成し、
及びRはCH又CR10(CR10は電子求引基)から独立に選択され、
点線は結合の存在又は欠如を表し、Xはそれに接する点線の結合が欠如している場合にCX基であると共にそれに接する点線の結合が存在している場合にCX基であり、Yはそれに接する点線の結合が欠如している場合にCY基であると共にそれに接する点線の結合が存在している場合にCY基であり、X、X、Y及びYの少なくとも1つ(好ましくは全て)が水素及びフッ素以外の置換基である。
ただし、RがNHR16(Zm−1/m基(R16は水素、ヒドロカルビル基(炭化水素基)又は式(A)のみから選択され、Zは電荷mの陰イオンである)である場合は、(i)出発物質の重合を陰イオンZが生成ポリマー鎖内の繰り返し単位を構成しない単独重合又は共重合とし、又は(ii)出発物質に式(B)の1つの基のみを含めることを条件とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー物質、そのポリマー物質を製造する方法、及び対応するモノマー化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜6は、単数又は複数のジエニル末端基を有する複数の化合物の重合により得られるポリマー類を開示している。それらの文献の内容は、すべて引用により本明細書の一部分に含める。このポリマー類は、例えば重合が容易であること、単数又は複数の末端基が結合するコア部の多様性によってポリマーの属性を調製又は仕立てることができることなど、様々な有用で面白い属性を有しており又は有することが期待されている。しかし本発明者らは、特許文献1に開示された型のモノマーの幾つかに重合上の困難が経験されうることを見出した。その結果として本発明者らは、少なくとも幾つかの実施例において、重合の生起が容易であって有利な改良された属性のポリマー物質が提供できる改良型重合システムを開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/06610号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/06533号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/06658号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/36510号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/40874号パンフレット
【特許文献6】国際公開第01/74919号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の側面において本発明は、部分式(I)の基を含む出発物質を、その出発物質の重合が生起する状態にするステップを含むポリマー物質の製造方法を提供するものである。

式(I)において、RはCR(Rは水素若しくはアルキル基であり、Rは水素、アルキル基若しくは式(A)である)又はRは電子求引基であり、

及びRは(CR(nは0、1又は2)又はCR基、CRCR基、若しくはCRCR基から相互に依存せず独立に選択され、R及びRは水素又はアルキル基から独立に選択され、R又はRの何れか一方が水素で他方が電子求引基であるか又はR及びRが一緒になって電子求引基を形成し、
及びRはCH又CR10(CR10は電子求引基)から独立に選択され、
点線は結合の存在又は欠如を表し、Xはそれに接する点線の結合が欠如している場合にCX基であると共にそれに接する点線の結合が存在している場合にCX基であり、Yはそれに接する点線の結合が欠如している場合にCY基であると共にそれに接する点線の結合が存在している場合にCY基であり、X、X、Y及びYの少なくとも1つ(好ましくは全て)が水素及びフッ素以外の置換基である。
ただし、RがNHR16(Zm−1/m基(R16は水素、ヒドロカルビル基(炭化水素基)又は式(A)のみから選択され、Zは電荷mの陰イオンである)である場合は、(i)出発物質の重合を陰イオンZが生成ポリマー鎖内の繰り返し単位を構成しない単独重合又は共重合とし、又は(ii)出発物質に式(B)の1つの基のみを含めることを条件とする。

【0005】
疑いが生じないように説明すると、生成ポリマー鎖は繰り返し単位からなる如何なるポリマー鎖とすることも可能であり、ポリマー物質を単独又は複数のポリマー鎖からなるものとすることができ、ポリマー物質をポリマー鎖が架橋(橋かけ)結合したものとすることもできる。
【0006】
本発明者らは、特許文献1に開示された幾つかの種類のモノマーを重合する際に困難に直面することが避けられないことを認め、更にその困難の原因が、望ましいジエン重合反応と競争して起こりうる副反応であることを認めた。とくに本発明者らは、特許文献1の開示する型のダイン重合機構では、ジエン基がラジカル重合しやすくなるために活性化される必要があることに注目した。この活性化は、ジエン基の近傍の電子求引基又は実際に隣接する電子求引基の存在により引き起こされる炭素−炭素間の二重結合内の電子密度の減少によって顕在化する。しかし、このようにジエン基が活性化される際に、ジエン結合に隣接する両炭素原子と結合した水素原子を含む他の反応機構が生起されうる。これらの水素原子はアリル水素と呼ばれ、不所望の二量体化反応に加わって役割を果たす。例えばジエニルアミドのように炭素−炭素間の二重結合に関して電子求引力の弱い(小さい)モノマーは、とくに不所望のアリル水素反応を引き起こしやすい。本発明者らは意外にも、ジエニル基の末端炭素原子に結合した置換基の性質の変化によって望ましいポリマー反応が促進されることを見出し、とくに特許文献1に開示されていない位置の置換基を用いることで改良された重合が得られることを見出した。特定の理論に拘束されるわけではないが、末端炭素に結合した置換基によって所望の重合反応に関連するラジカル中間体が安定化されたか、或いは末端炭素に結合した置換基によって不所望のアリル副反応に関連するラジカル中間体が不安定化されたか、或いはその両方によるものと考えられる。
【0007】
本発明によるポリマーは、少なくとも幾つかの実施例では開始剤が存在しなくても容易に且つ適宜に重合させることが可能であり、非常に効率的に基質に付着させることができ、それ自体を他の物質が蒸着又は付着できる基質とすることもできる。
【0008】
一般的には、X、X、Y(存在している場合)、及びY(存在している場合)の少なくとも1つ、好ましくは全てを、所望のフリーラジカル中間体を安定化するか又は不所望のフリーラジカル中間体を不安定化する基又は原子とする。
【0009】
好ましくは、X、X、Y及びYの少なくとも1つ(好ましくは全て)を、任意に置換されたヒドロカルビル基(炭化水素基)とする。更に好ましくは、X、X、Y及びYの少なくとも1つ(好ましくは全て)を任意に置換されたアルキル基とし、望ましい実施例ではC〜C(n=1〜4)のアルキル基とし、とくに望ましくはメチル基(n=1)又はエチル基(n=2)とする。X、X、Y及びYの少なくとも1つ又は全てをアルキル基とした実施例では、意外なことに開始剤が存在しなくても放射線に晒すことにより重合させうることが見出された。代替的に、X、X、Y及びYの少なくとも1つ(好ましくは全て)を、ピリジル基、ピリミジニル基又はピリジン若しくはピリミジン含有基のようなアリール基及び/又は複素環基としてもよい。
【0010】
1つの重要な実施例では、部分式(I)の基に式(A)を含め、

出発物質の重合を環化重合とし、(a)R、(b)R2及びR、又は(c)R及びRの少なくとも1つに環化重合反応を活性化しうる電子求引基を含める。
【0011】
出発物質の重合が生起する状態には、放射線(例えば紫外(UV)放射線等)を照射すること(必要に応じて光開始剤(重合開始剤)の存在下で照射すること、好ましくは開始剤の不存在下で照射することを含む)、熱(例えば赤外(IR)放射線等)を印加すること(必要に応じて(熱重合)開始剤の存在下で印加することを含む)、化学的開始剤等の他の種類の開始剤を加えること、又は電子ビームを用いて開始させることを含めることができる。本明細書において「化学的開始剤」とは、当技術分野で理解されているように重合を開始させることができる化合物を意味し、例えばフリーラジカル開始剤、陽イオン・陰イオン開始剤等のイオン系開始剤を意味する。放射線又は電子ビームによる重合の誘発は、溶媒の実質的不存在下での実施に適している。本明細書において「溶媒の実質的不存在下」とは、溶媒が存在しないか又は反応物質が流れるのを許す程度の微量の希釈剤が存在しても反応物質を完全に溶解するには不十分な溶媒しか存在しないことを意味する。
【0012】
好ましくは、紫外放射線の影響下(又は紫外放射線と開始剤との共存下)で出発物質を重合させる。重合は、自発的に又は適当な開始剤の存在下で生起させることができる。適切な開始剤の一例は、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾフェノンとくにアセトフェノンのような芳香族ケトン、ジ−又はトリ−クロロアセトフェノンのような塩素化アセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン(商品名「イルガキュア(Irgacure)651」で販売されている)のようなジアルコキシアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン(商品名「ダロキュア(Darocure)1173」で販売されている)のようなジアルキルヒドロキシアセトフェノン、式(C)の化合物のような置換されたジアルキルヒドロキシアセトフェノン−アルキルエーテル(Rはアルキル基(とくに2,2−ジメチルエチル基)、Rはヒドロキシル基(水酸基)又はクロロ(塩素)等のハロゲン基、R及びRは独立に選択されたアルキル基又はクロロ(塩素)等のハロゲン基であり、その一例は商品名「ダロキュア(Darocure)1116」及び「トリゴナル(Trigonal)P1」で販売されている)、

1−ベンゾイルシクロヘキサノール−2(商品名「イルガキュア(Irgacure)184」で販売されている)、ベンゾイン又はその誘導体(酢酸ベンゾイン、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル、ジメトキシベンゾイン等のジアルコキシベンゾイン、又はデオキシベンゾイン等)、ジベンジルケトン、アシルオキシムのメチル又はエチルエステル(商品名「クワンタキュレPDO(Quantaqure PDO)」で販売されている)のようなアシルオキシムエステル、アシルホスフィン酸化物、ジアルキルアシルホスフィン酸塩等のアシルホスフィン酸塩、式(D)のようなケトスルフィド(Rはアルキル基、Aはアリール基である)、

4,4´−ジアルキルベンゾイルジスルフィドのようなジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオ炭酸塩(カーボネート)、ベンゾフェノン、4,4´−ビス(N,N−ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、フルオレノン、チオキサントン、ベンジル、又は式(E)のような化合物(Arはフェニル等のアリール基、Rはメチル等のアルキル基であり、商品名「スピードキュアBMDS(SpeedcureBMDS」で販売されている)である。

【0013】
本明細書において「アルキル」の用語は、炭素原子の数が20個以下の適宜数、好ましくは6個以下である直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味する。「アルケニル」又は「アルキニル」の用語は、例えば炭素原子の数が2〜20個、好ましくは2〜6個である不飽和の直鎖又は分岐鎖を意味する。各鎖にはそれぞれ1個又は複数個の二重結合又は三重結合を含めることができる。「アリール」の用語は、フェニル基又はナフチル基のような芳香属基を意味する。
【0014】
「ヒドロカルビル」の用語は、炭素原子と水素原子とを含む任意の構造(炭化水素基)を意味する。例えば、これらの構造をアルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル又はナフチルのようなアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルとしてもよい。これらの構造には好適には20個以下、好ましくは10個以下の炭素原子を含める。「複素環」の用語は、例えば4〜20個、好ましくは5〜10個の環状原子を有し、そのうち少なくとも1個がヘテロ原子(酸素、硫黄、窒素等)である芳香族又は非芳香族の環状構造を含む。そのような基の一例には、フリル、チエニル、ピロリル、ピロリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンズチアゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチエニル又はベンゾフリルが含まれる。
【0015】
「官能基」の用語は、例えばハロゲン、シアノ、ニトロ、オキソ、C(O)、OR、S(O)、NR、OC(O)NR、C(O)NR、OC(O)NR、−NRC(O)、−NRCONR、−C=NOR、−N=CR、S(O)NR、C(S)、C(S)OR、C(S)NR又は−NRS(O)の反応基を意味する。ここで、R、R及びRは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基から独立に選択するか、或いはR及びRによって更にS(O)、酸素、窒素のようなヘテロ原子を任意に含む任意に置換された環を形成する。nは1又は2の整数、tは0又は1〜3の整数である。とくに官能基を、例えばハロゲン、シアノ、ニトロ、オキソ、C(O)、OR、S(O)、NR、OC(O)NR、C(O)NR、OC(O)NR、−NRC(O)、−NRCONR、−NRCSNR、−C=NOR、−N=CR、S(O)NR又は−NRS(O)の反応基とする。R、R及びR、n及びtは前述した定義の通りである。
【0016】
本明細書において「ヘテロ原子」の用語は、例えば酸素、窒素又は硫黄原子等の炭素以外の原子を意味する。窒素原子が存在する場合は、一般的にアミノ残基の一部として存在しており、例えば水素又はアルキルによって置換されているであろう。
【0017】
「アミド」の用語は、一般的にC(O)NR(R及びRは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基)の化学式の基を意味すると理解されている。同様に、用語「スルホンアミド」はS(O)NRの化学式の基を意味する。
【0018】
特定の実施例においてアミド部分に付加される単独又は複数の電子求引基の性質は何れも、化合物内の他の官能基の性質と同様に、その活性化に必要な二重結合に対する位置に依存している。「電子求引基」の用語の範囲には、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基のような原子の置換基が含まれる。
【0019】
10を電子求引基とする場合は、R10をアセチル基のようなアシル基、ニトリル基又はニトロ基とすることが適している。
【0020】
望ましくはR基に水素又はメチル基を含め、とくに望ましくはR基を水素とする。
【0021】
好ましくは、(i)RをN1216(Zm−1/m、S(O)1316、BR16、P(O)1416若しくはSi(R1516)(R12は水素、ハロゲン基、ニトロ基又はヒドロカルビル基(官能基で任意に置換又は挿入されたものを含む)であり、R13、R14及びR15は水素又はヒドロカルビル基から独立に選択され、R16は水素、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロカルビル基(官能基で任意に置換又は挿入されたものを含む)又は式(A)(R、R及びYは前述した定義の通り)から選択され、Zは電荷mの陰イオンであり、pは0、1又は2であり、qは1又は2である)とするか、

(ii)RをC(O)NR16−、S(O)NR16−、C(O)ONR16−、CHONR16−、若しくはCH=CHRNR16−(Rは電子求引基)とするか、又は
(iii)RをOC(O)CHR16−、C(O)CHR16−若しくはS(O)CHR16−とする。
【0022】
がN1216(Zm−1/mである場合は、Zをハロゲン化物イオン、ホウ化物イオン又はカルボン酸エステルとすることができる。
【0023】
がCH=CHRNR16−である場合は、Rをカルボニル基、又はオルト位置及び/若しくはパラ位置がニトロ基等の電子吸引置換基で置換されたフェニル基とすることができる。
【0024】
式(I)の基のうち、X(Yが存在している場合はX及びY)は、それぞれ点線の結合が欠如しているCX(Yが存在している場合はCX及びCY)とすることが好ましい。
【0025】
本発明の方法において用いる出発物質の好ましい化合物の一例は式(II)の化合物であり、

とくに好ましい化合物は式(IIA)の化合物である。

式(II)及び式(IIA)において、X、X、X、R、R、R及び点線の結合は前述した部分式(I)に関連して定義した通りであり、rは1以上の整数であり、R11は原子価rの架橋基(橋かけ基)、任意に置換されたヒドロカルビル基、ペルハロアルキル基、シロキサン基又はアミド基である。
【0026】
式(II)及び式(IIA)の化合物において、rを1とした場合は、化合物は容易に重合してR11基の性質に応じた様々な種類のポリマーを形成することができる。重合技術で通常見られる架橋基(橋かけ基)の一例を表1に示す。
【0027】
このような出発物質(モノマー化合物)の一例は構造式(III)で表すことができる。

式(III)において式(A)が存在する場合は

式(A)を式(F)とし

、X、Y、Y、R、R、R、R及びRは前述した定義の通りであり、R11´は任意に置換されたヒドロカルビル基、ペルハロアルキル基、シロキサン基又はアミド基である。
【0028】
とくにR11及びR11´は、ハロゲン基、ヒドロキシル基(水酸基)、カルボキシル基、それらの塩類又はアシロキシ基から選択された置換基により任意に置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基とすることができる。
【0029】
式(II)、式(IIA)、式(III)及び式(IV)の化合物において、R11及びR11´は、官能基で任意に置換又は挿入された直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビル基とすることができる。
【0030】
好ましくは、R11及びR11´を任意に置換された4個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル基とする。R11及びR11´を4個以上の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基としてもよい。
【0031】
式(III)の好ましい化合物の一例は式(IV)の化合物であり、式(IV)においてR11´は前述した定義の通りである。

【0032】
式(IV)の化合物は、式(V)の化合物としてもよい。

【0033】
代替的にR11及びR11´をペルハロアルキル基とすることができ、例えば1〜3個の炭素原子を有するペルハロメチル基、とくにペルフルオロメチル基とすることができる。
【0034】
本発明は、他の種類のポリマーに適用することも可能である。例えば、式(II)の化合物においてrが1より大きい場合は、重合によってポリマーネットワークを生成することができる。そのようなポリマーの一例は、R11を架橋基(橋かけ基)とすると共にrを2以上の整数とした前述の式(II)の化合物であり、例えばrを2〜8とし、好ましくは2〜4としたものである。
【0035】
これらの化合物を重合する際には、R11基それ自体の性質と鎖重合停止剤の存在量と使用する重合条件とに基づいて、生成するネットワークの性質を選択することができる。
【0036】
架橋基(橋かけ基)の一例は、表1に列挙されているようにポリエチレン類、ポリプロピレン類、ナイロン類のものを含む。架橋(橋かけ)基の更なる一例は、特許文献1に記載されている。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明では出発物質の重合により単独重合を形成することができる。しかし、本発明において共重合を形成することも可能であり、その場合は、重合させる前に例えば式(I)を含む化合物に式(I)以外を含む他のモノマー化合物を混合する。そのような他のモノマー化合物は当技術分野で知られている。
【0039】
本発明の特定の実施例では、出発物質を式(A)の基を含まないものする。

このような実施例の好ましい一例では、式(III)のモノマー化合物を式(VI)の化合物とする。

式(VI)において、R16は水素、ハロゲン基、ニトロ基又はヒドロカルビル基(官能基で任意に置換又は挿入されたものを含む)のみから選択されたものである。式(VI)の化合物は、式(VII)の化合物とすることもできる。

【0040】
共重合を形成する場合は、式(A)の基を含んでいない出発物質を、

式(VIII)の化合物と反応させる。

式(VIII)において、R、R、R、R11及びXは前述した部分式(I)に関連して定義した通りである。好ましくは、式(VIII)のrを2とする。
【0041】
式(VIII)の化合物は、式(IX)の化合物とすることができる。

【0042】
例えばグラファイト(黒鉛)、クラウンエーテル又はチオエーテル等のエーテル、フタロシアニン、ビピリジル、又は液晶化合物等の他の化合物の存在する条件下において式(I)を含む化合物を重合させることにより合成物を製造することも可能であり、これらの他の化合物により属性の変更されたポリマー合成物を製造することができる。
【0043】
本発明の方法を実施する際には、特定の応用用途に最上又は最適な属性(例えば高い降伏強度、大きな過分極率、高いピロ電気係数、高い伝導性等)を有する適当な有機的統一体(オーガニックシステム)を選択して採用することができ、そのような有機的統一体を重合が可能となるように構造的・組織的に変更することができる。重合する官能基を結合しておけば、母体となる有機的統一体の関連属性を有する三次元ネットワーク又は合成樹脂(プラスチック)を作り出すことも可能である。
【0044】
本発明による化合物は、塗料の形態で適用することができ、原位置において重合を生起させることが可能であるという有利な特徴を有する。この方法によれば処理又は工程の容易化が図れる。更に、架橋(橋かけ)結合の結果としてネットワーク構造を提供することにより、生成ポリマーを機械的強度が大きく耐久性のあるものとすることができる。
【0045】
本発明において出発物質は、重合に先立って基質に適用し、重合により基質上に被覆(コーティング)を生成することができる。
【0046】
第2の側面において本発明は、本発明の第1の側面の方法により得られるポリマー物質を提供するものである。
【0047】
本発明によるポリマー物質の一例は、部分式(X)により構成されたものである。

式(X)において、Aは結合又はCY基であり、R、R、R、R、R、R、CX及びCYは部分式(I)に関連して前述した定義の通りであり、yは1以上の整数であり、好ましくはyを5以上の整数とする。
【0048】
第3の側面において本発明は、本発明の第1の側面において定義された部分式(I)の基を含むモノマー化合物を提供するものである。本発明によるモノマーには、本発明の第1の側面において説明した何れの基も含めることができ、何れの化合物としてもよい。
【0049】
第4の側面において本発明は、部分式(XI)の基を有する化合物と、

部分式(XII)の基を有する化合物とを反応させるステップを含む本発明の第3の側面におけるモノマー化合物の製造方法を提供するものである。

式(XI)及び式(XII)において、X、Y、R、R、R、R、R及びRは本発明の第1の側面で定義した通りであり、LGは脱離基である。
【0050】
LGはハロゲン基とすることができ、好ましくはクロロ(塩素)基とする。代替的に、LGをメシル基(メシラート)、シリル基又はトシル基(トシレート)としてもよい。部分式(XI)の基を有する化合物と部分式(XII)の基を有する化合物との反応はアセトン等の有機溶媒中で生起させることができ、両化合物とも当技術分野で広く知られた化合物であり、従来技術に属する方法で調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
以下、添付図面を参照して本発明によるモノマー化合物、ポリマー物質、及びそれらの製造方法の実施例を説明する。
【図1】は、第1の反応機構を示す説明図である。
【図2】は、第2の反応機構を示す説明図である。
【実施例1】
【0052】
図1は、式(1)に示す目標分子(ヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド))の合成反応機構を示す。

【0053】
目標分子であるモノマー(1)の合成を以下に説明する。反応(1.1)、(1.2)、(1.3)及び(1.4)は、アルゴンの雰囲気下において予め乾燥(脱水)させた溶媒を用いて行った。すなわち、t−ブチルメチルエーテルはCaSO(硫酸カルシウム)で一晩乾燥させ、アルミナ(酸化アルミニウム)に通して分留した。ピリジンはリンデ・タイプ4Aの分子ふるいで乾燥させたのち蒸留し、テトラヒドロフラン(THF)は回収前にナトリウム−ベンゾフェノン混合物を用いて還流した。カラムクロマトグラフィーは、フラッシュグレードシリカを用いて行った。
【0054】
(1.1)1−ブロモ−3−メチルブタ−2−エン(2)の合成
メカニカル撹拌器(スターラー)と凝縮器と温度計と滴下漏斗とが装備された多首フラスコ(3リットル)内に、t−ブチルメチルエーテル(1000ミリリットル)と3−メチルブテン−3−オール(230g、280ミリリットル、2.67モル)とを入れ、ピリジン(21g、22ミリリットル、0.267モル)を添加したうえでフラスコの内容物を室温で30分間撹拌したのち、更に撹拌しながら滴下漏斗より内部温度が40℃以下(好ましくは30℃程度)に維持される流量でPBr(三臭化リン、361g、125ミリリットル、1.33モル)を添加した(本反応は発熱を伴うことに留意されたい)。添加処理完了後、TLC(薄層クロマトグラフィー)及びHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により反応完了が確認されるまで反応混合物を4時間撹拌したのち、更に撹拌しながら室温においてNaCl(塩化ナトリウム)の飽和水溶液(1リットル)を添加して混合液を冷却した。
【0055】
t−ブチルメチルエーテル(3×300ミリリットル)により水性層を抽出し、有機層を分離した。結合された有機層をNaHCO(炭酸水素ナトリウム)の飽和水溶液(2×500ミリリットル)により2回洗浄し、次いで水(2×200ミリリットル)により洗浄し、更にブライン(500ミリリットル)により洗浄した。更に、エーテル層を無水MgSO4(硫酸マグネシウム)で乾燥させ、大気圧下で溶媒を除去した。蒸留装置を真空ポンプ(水ポンプ)に接続し、40〜60度において約25mmHgの圧力下で臭化物を蒸留したところ、淡い黄色オイルが得られた(318g、収率80%)。
【0056】
(1.2)第3級アミン(3)の調製
メカニカル撹拌器(スターラー)と凝縮器と温度計と滴下漏斗とが装備されて冷却槽(氷水)内に置かれた多首フラスコ(2リットル)内に、アセトン(500ミリリットル)と濃縮アンモニア水溶液(30ミリリットル)と無水炭酸カリウム(159g、1.15モル)を入れ、混合物を室温で30分間撹拌した。そのうえで、撹拌しながら滴下漏斗より内部反応物が25℃以下に20分間維持される流量で臭化アリル(52.5g、0.35モル)を添加し、TLC(シリカと5%メタノール濃度のジクロロメタン(DCM)を用いた薄層クロマトグラフィー)により反応完了が確認されるまで反応混合物を3時間撹拌したのち、固体懸濁物をフィルタで取り出してアセトン(2×50ミリリットル)により洗浄し、溶媒を減圧下で蒸発させ、淡い黄色物として得られた第3級アミン(3)をそのまま放置して凝固させた(28g、未精製107%)。
【0057】
(1.3)第2級アミン(4)の調製
未精製の第3級アミン(9g、41ミリモル)を凝縮器が装備された丸底フラスコ(25ミリリットル)内に入れ、撹拌用ホットプレート上のアルミニウム製ヒーティングブロック(登録商標DrySyn)内でフラスコの内容物を30分以上かけて200℃(外部温度)に加熱した。約140〜150℃で固体の原料が融解し始めた。原料を200℃で2.5時間加熱し、反応の進行をTLC(シリカと、アンモニアのメタノール溶液5滴を加えた10%メタノール濃度のジクロロメタン(DCM)と用いた薄層クロマトグラフィー)によりモニタリングした。加熱時間の終了後、反応混合物を放置して室温まで冷却させた。
【0058】
(1.4)ヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド(1)の調製
前ステップにおいて冷却した反応混合物を、炭酸カリウム(6g、43ミリモル)及びアセトン(30ミリットル)を入れた丸底フラスコ(100ミリリットル)に移しかえ、室温で撹拌しながら滴下漏斗より塩化ヘキサノイル(3.8g、3ミリリットル、28ミリモル)を10分以上かけて滴下により添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し続けたところ、翌日にTLC(シリカ板と2.5%メタノール濃度のジクロロメタン(DCM)と用いた薄層クロマトグラフィー)により目標分子(1)の生成を確認することができた。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた固体を石油エーテル(40−60)30ミリリットルで洗浄してフィルタで濾過した。その濾過液に脱色炭(1g)を添加し、沸騰するまで加熱したのち、熱いうちにフィルタで濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させたところ、淡い褐色オイル(5.0g、収率49%)が得られた。HPLCで確認したところ純度94%であった。
【実施例2】
【0059】
ヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド(1)の重合
ヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド(1)は、1.5重量%程度の光開始剤イルガキュア(Irgacure)184を用いた紫外(UV)放射線の照射(水銀放電による紫外線放射(エミッター))により、容易に重合させることができた。重合を生起させる照射時間はほんの1秒で充分であった。このように製造されたポリマーは、溶媒又は溶剤に対する高い耐性を有していた。
【実施例3】
【0060】
開始剤の不存在下でのヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド(1)の重合
ヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド(1)は、光開始剤が存在しなくても紫外(UV)放射線の照射(水銀放電による紫外線放射(エミッター))により重合させることができた。ほんの1秒の照射時間で重合が生起した。LED(発光ダイオード)の紫外(UV)放射光源を用いた更なる実験においても、光開始剤の不存在下で390nmの紫外線をモノマーに照射することにより同様の容易さで重合を生起させることができた。
【実施例4】
【0061】
図2は、式(5)に示す目標分子(ヘキサン酸(3−メチルブタ−2−エニル)アミド)の合成反応機構を示す。

【0062】
(4.1)1−ブロモ−3−メチルブタ−2−エン(6)の合成
3−メチルブテン−3−オール(97%、500ミリリットル)を臭化水素酸(48%、1リットル)に室温において2時間継続的に撹拌しながら添加したのち、混合物をそのまま2時間放置し、水性/臭化水素(HBr)の底層から透明黄色の上層を静かに外へ移し出した。移し出した上層をCaSO(硫酸カルシウム)で完全に乾燥させ、63℃で蒸留したところ、濃度1.26g/ミリリットルの無色溶液が得られた。
【0063】
(4.2)第1級アミン(7)の調製
ブロモメチルブタン(6)をアセトン(50ミリリットル)に溶解し、その溶液を滴下により、炭酸カリウム(22g)が存在する−5℃に予冷却した濃縮水酸化アンモニウム水溶液(25ミリリットル)に撹拌しながら添加した。混合物はその温度で30分間撹拌したのち、放置して室温に戻し、溶媒と第1級アミン(7)とを真空内に取り出した。
【0064】
(4.3)ヘキサン酸(3−メチルブタ−2−エニル)アミド(5)の調製
第2級アミンとアセトンとの混合物に、塩化ヘキサノイル(3.8g)を室温において30分以上かけて撹拌しながら滴下により添加した。反応混合物を4時間撹拌したのち、溶媒を真空内に取り出して黄色オイルを残し、それをフラッシュシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン(DCM)を溶離液として用いた)によって精製することにより、淡い黄色オイルとして目標分子であるモノマー(5)が得られた。
【実施例5】
【0065】
ヘキサン酸(3−メチルブタ−2−エニル)アミド(5)の重合
モノマー(5)は、前述した実施例2の条件下において、紫外(UV)放射線の照射により重合した。
【実施例6】
【0066】
架橋(橋かけ)剤の存在下でのヘキサン酸(3−メチルブタ−2−エニル)アミド(5)の重合
実験例4において製造したモノマー(5)を、式(6)の架橋(橋かけ)化合物の存在下で共重合させた。

【0067】
架橋(橋かけ)化合物は、ステップ(4.3)で用いた塩化ヘキサノイルに代えて塩化オキサロイル(ClOOCCOOCl)をモル比2:1(第1級アミン(7)と塩化オキサロイルとのモル比)で用いた点以外は、実験例4の方法を用いて調製した。室温で架橋(橋かけ)剤(5%)をモノマー(5)(95%)に溶解させた溶液は、前述した実施例2の重合条件下において容易に共重合させることができた。
【符号の説明】
【0068】
1…モノマー(ヘキサン酸(ビス(3−メチルブタ−2−エニル))アミド)
2…1−ブロモ−3−メチルブタ−2−エン
3…第3級アミン
4…第2級アミン
5…モノマー(ヘキサン酸(3−メチルブタ−2−エニル)アミド)
6…1−ブロモ−3−メチルブタ−2−エン
7…第1級アミン

【特許請求の範囲】
【請求項1】

部分式(I)の基を含む出発物質(式(I)において、RはCR(Rは水素若しくはアルキル基であり、Rは水素、アルキル基若しくは式(A)である)又はRは電子求引基であり、

及びRは(CR(nは0、1又は2)又はCR基、CRCR基、若しくはCRCR基から相互に依存せず独立に選択され、R及びRは水素又はアルキル基から独立に選択され、R又はRの何れか一方が水素で他方が電子求引基であるか又はR及びRが一緒になって電子求引基を形成し、
及びRはCH又CR10(CR10は電子求引基)から独立に選択され、
点線は結合の存在又は欠如を表し、Xはそれに接する点線の結合が欠如している場合にCX基であると共にそれに接する点線の結合が存在している場合にCX基であり、Yはそれに接する点線の結合が欠如している場合にCY基であると共にそれに接する点線の結合が存在している場合にCY基であり、X、X、Y及びYの少なくとも1つ又は全てが水素及びフッ素以外の置換基である)を、
その出発物質の重合が生起する状態にするステップ(RがNHR16(Zm−1/m基(R16は水素、ヒドロカルビル基又は式(A)から選択され、Zは電荷mの陰イオンである)である場合は、(i)出発物質の重合を陰イオンZが生成ポリマー鎖内の繰り返し単位を構成しない単独重合又は共重合とし、又は(ii)出発物質に式(B)の1つの基のみを含めることを条件とする)を含むポリマー物質の製造方法。

【請求項2】
請求項1の方法において、X、X、Y及びYの少なくとも1つ又は全てを、任意に置換されたヒドロカルビル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項3】
請求項2の方法において、X、X、Y及びYの少なくとも1つ又は全てを、任意に置換されたアルキル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項4】
請求項3の方法において、X、X、Y及びYの少なくとも1つを、C〜C(n=1〜4)のアルキル基、メチル基、又はエチル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、X、X、Y及びYをそれぞれメチル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの方法において、部分式(I)の基に式(A)を含め、出発物質の重合を環化重合とし、(a)R、(b)R2及びR、又は(c)R及びRの少なくとも1つに環化重合反応を活性化しうる電子求引基を含めてなるポリマー物質の製造方法。

【請求項7】
請求項1から6の何れかの方法において、前記出発物質の重合を、重合開始剤の存在下又は不存在下で放射線を照射することにより生起させてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項8】
請求項7の方法において、前記出発物質の重合を、紫外(UV)放射線を照射することにより生起させてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れかの方法において、前記出発物質の重合を、重合開始剤の存在下又は不存在下で熱を印加することにより生起させてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8の何れかの方法において、前記出発物質の重合を、化学的開始剤又は電子ビームの存在下で生起させてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10の何れかの方法において、(i)RをN1216(Zm−1/m、S(O)1316、BR16、P(O)1416若しくはSi(R1516)(R12は水素、ハロゲン基、ニトロ基又はヒドロカルビル基(官能基で任意に置換又は挿入されたものを含む)であり、R13、R14及びR15は水素又はヒドロカルビル基から独立に選択され、R16は水素、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロカルビル基(官能基で任意に置換又は挿入されたものを含む)又は式(A)(R、R及びYは請求項1で定義した通り)から選択され、Zは電荷mの陰イオンであり、pは0、1又は2であり、qは1又は2である)とするか、

(ii)RをC(O)NR16−、S(O)NR16−、C(O)ONR16−、CHONR16−、若しくはCH=CHRNR16−(Rは電子求引基)とするか、又は(iii)RをOC(O)CHR16−、C(O)CHR16−若しくはS(O)CHR16−としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項12】
請求項11の方法において、RをN1216(Zm−1/mとし、Zをハロゲン化物イオン、ホウ化物イオン又はカルボン酸エステルとしてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項13】
請求項11の方法において、RをCH=CHRNR16−とし、Rをカルボニル基又はオルト位置及び/若しくはパラ位置がニトロ基等の電子吸引置換基で置換されたフェニル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13の何れかの方法において、式(I)の基のうちX(Yが存在している場合はX及びY)を、それぞれ点線の結合が欠如しているCX(Yが存在している場合はCX及びCY)としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14の何れかの方法において、前記出発物質を式(II)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

(式(II)において、X、R、R、R及び点線の結合は請求項1で定義した通りであり、rは1以上の整数であり、R11は原子価rの架橋基(橋かけ基)、任意に置換されたヒドロカルビル基、ペルハロアルキル基、シロキサン基又はアミド基である)
【請求項16】
請求項15の方法において、前記出発物質を式(III)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

(式(III)において、式(A)が存在する場合は

式(A)を式(F)とし

、X、Y、Y、R、R、R、R及びRは請求項1で定義した通りであり、R11´は任意に置換されたヒドロカルビル基、ペルハロアルキル基、シロキサン基又はアミド基である)
【請求項17】
請求項15又は16の方法において、R11及びR11´を、官能基で任意に置換又は挿入された直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項18】
請求項17の方法において、R11及びR11´を、任意に置換された4個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項19】
請求項18の方法において、R11及びR11´を、4個以上の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項20】
請求項16から19の何れかの方法において、式(III)の化合物を式(IV)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

【請求項21】
請求項20の方法において、式(IV)の化合物を式(V)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

【請求項22】
請求項1から19の何れかの方法において、出発物質を式(A)の基を含まないものとしてなるポリマー物質の製造方法。

【請求項23】
請求項16から19の何れかに従属する請求項22の方法において、式(III)の化合物を式(VI)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

(式(VI)において、R16は水素、ハロゲン基、ニトロ基又はヒドロカルビル基(官能基で任意に置換又は挿入されたものを含む)から選択されたものである)
【請求項24】
請求項23の方法において、式(VI)の化合物を式(VII)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

【請求項25】
請求項1から24の何れかの方法において、出発物質の重合により単独重合を形成してなるポリマー物質の製造方法。
【請求項26】
請求項1から24の何れかの方法において、異なるモノマー単位と混合した出発物質の重合により共重合を形成してなるポリマー物質の製造方法。
【請求項27】
請求項22から24の何れかに従属する請求項26の方法において、出発物質を式(VIII)の化合物と反応させてなるポリマー物質の製造方法。

(式(VIII)において、R、R、R、R11及びXは請求項1及び15で部分式(I)に関連して定義した通りである)
【請求項28】
請求項27の方法において、式(VIII)のrを2としてなるポリマー物質の製造方法。
【請求項29】
請求項27の方法において、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物としてなるポリマー物質の製造方法。

【請求項30】
請求項1から29の何れかの方法において、前記出発物質を重合に先立って基質に適用し、重合により基質上に被覆を生成してなるポリマー物質の製造方法。
【請求項31】
請求項1から30の何れかの方法により製造されたポリマー物質。
【請求項32】
請求項31のポリマーにおいて、部分式(X)により構成されたポリマー物質。

(式(X)において、Aは結合又はCY基であり、R、R、R、R、R、R、CX及びCYは部分式(I)に関連して請求項1で定義した通りであり、yは1以上の整数又は5以上の整数である)
【請求項33】
請求項1で定義された部分式(I)の基を含むモノマー化合物。
【請求項34】
請求項33のモノマー化合物を製造する方法において、部分式(XI)の基を有する化合物と、

部分式(XII)の基を有する化合物とを反応させるステップを含むモノマー化合物の製造方法。

(式(XI)及び式(XII)において、X、Y、R、R、R、R、R及びRは部分式(I)に関連して請求項1で定義した通りであり、LGは脱離基である)
【請求項35】
請求項34の方法において、LGをハロゲン基又はクロロ基としてなるモノマー化合物の製造方法。
【請求項36】
図面を参照して実質上明細書に記載され又は図面に記載された製造方法、ポリマー物質、又はモノマー化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−542832(P2009−542832A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517404(P2009−517404)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002430
【国際公開番号】WO2008/001102
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508025714)ノベル・ポリマー・ソリューションズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】