説明

ポリマー製強化材料及びタイヤコード組成物並びにこれらの製造方法

本明細書の主題は、収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料(ここで、強化材料は、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が少なくとも約10%増加するように処理される)に関する。
また、本明細書の主題は、ポリマー製キャッププライ強化材料を含んでなる製品を製造する方法であって、
a)対照収縮部材を有する対照ポリマー製キャッププライ強化材料を用意し;
b)収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料を用意し;
c)ポリマー製キャッププライ強化材料を、対照ポリマー製キャッププライ強化材料の対照収縮材料に対して、収縮材料が約10%増加するように処理すること
を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明の分野は、ポリマー製強化材料及びタイヤコード組成物である。そしてより具体的には、本発明の分野は、ポリマー製強化材料、(ポリエステル製タイヤコードを始めとする)タイヤコード、該材料及びタイヤコードの性能を向上するためのキャッププライ、並びに、関連する組成物及び開示される方法により形成される物品の物理的修飾である。
【0002】
背景
自動車全体の性能を評価する場合、一般に、タイヤ性能は、速度試験及び耐久性試験のような試験によって測定及び評価される、重要で影響力のある性能要素の一つである。一旦評価されると、分解して、タイヤの個々の部材及びこれら個々の部材がどのようにいっしょに働いて、タイヤ性能及び最終的には自動車性能に寄与するかを評価することによって、タイヤ性能を改良することができる。
【0003】
タイヤは、一般的に、いくつかの層(慣用的なスチールベルトラジアルタイヤに見られるような層)の材料の複合体を含んでなる。慣用的なスチールベルトラジアルタイヤにおいて、タイヤを構成する層をなす材料は、「タイヤファブリック(tire fabric)」による内部層と、スチールベルト又はスチールコードベルトプライによる中間層或いは外部層と、ある場合には、通常「キャッププライ」又は「オーバーレイ」と呼ばれる、一般的にナイロン又はポリエステルコードを含んでなる外部層又は第2のタイヤファブリック層とを含んでなる。
【0004】
慣用的なタイヤファブリック製造過程において、織糸は、加工ミルに送られ、ここで次の工程にかけられる:
a)織糸を生コード(未完成コード)に撚り、
b)その生コードを、一般的に細いデニールの「横糸」で横方向に安定化された一方向性の織物に織り、
c)(レゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)接着系として一般に知られる)水性浸液でその生コードを浸し、
d)浸漬したコードを乾燥し、そして
e)乾燥したコードは、高エネルギー処理工程(しばしば比較的高温(約177−249℃(350−480°F))で比較的長い滞留時間(30−120秒)が必要となる)にかける。次いで、得られたコードは、タイヤプラントに輸送され、ここでコードにより強化されたゴムシートにされる(一般的にカレンダー圧延するか又は加熱した鋼のローラーの間を通過させる)。これは、最終的に基礎カーカス又はキャッププライとしてタイヤに組込まれ、ベルト又はベルト材料をサンドイッチしたりしなかったりしてもよい。参考までに、典型的なタイヤ「ファブリック」は、インチ(2.54cm)当り少なくとも20-30本のコードを有している。
【0005】
あるタイヤの態様において、スチールベルトを、全て取除くか、或いは、ベルト特性上の要求((a)熱感受性でないこと、(b)比較的一定の物理的特性、(c)伸展性がないこと、及び(d)耐疲労性など)の基準に合致する及び/又はそれを超え得るポリマー製ベルト材料若しくは他の材料により置換えるか及び/又は強化するかのいずれかをすることができる。然しながら、多くの置換え材料及び/又は強化材料が、価格的に高すぎるか、又は作業するのが困難すぎるかのいずれかであることが一般的に分かっており、そのため、スチールが一般に好まれるベルト材料である。
【0006】
米国特許第4,284,117号;4,739,814号;6,016,857号;6,082,423号及び6,016,858号を含むいくつかの米国特許は、キャッププライ及びその各種の態様を検討している。これらの特許の大部分は、キャッププライを製造するための材料を変更するか、又はスチールベルトを置換えることを記載している。これらの特許には、キャッププライを物理的又は機械的に改変して、一旦これらが完成タイヤに組込まれた後のプライ特性を改良することは記載されていない。
【0007】
Miyazaki等の公開された米国特許出願公開2002/0088523 A1は、有機繊維コードを含んでなる空気式タイヤを開示している。Miyazakiが開示している有機コードは、引張されていても又はされていなくてもよいが、コードの引張及びモジュラスの測定値は、本明細書中により提供される主題に係るコードよりはるかに低い。
【0008】
従って、タイヤ製造工業界において、完成タイヤに組込まれた場合、速度及び耐久性試験のようなある種の性能試験に合致する及び/又はそれを超えることができる、キャッププライ及び/又はタイヤを形成或いは製造するために使用することができる製品に対する必要性がなお存在する。この製品には、コスト的に効果的で、製造が比較的容易であり、そして標準的な又は慣用的なタイヤ製造過程に組込まれ、そして完成タイヤ及び一般に好まれる自動車で使用することに関し安全である必要性が存在する。
【0009】
本発明の概要
本明細書における本発明は、収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料であって、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が少なくとも約10%増加するように処理されている強化材料に関する。更に、本明細書の本発明は、少なくとも約3.5%の自由収縮の収縮部材を有するポリエステル製強化材料に関する。
【0010】
更に、本明細書中の主題は、ポリマー製キャッププライ強化材料を含んでなる製品を製造する方法であって
a)対照収縮部材を有する対照のポリマー製キャッププライ補強材料を用意し;
b)収縮部材を有するポリマー製キャッププライ補強材料を用意し;
c)ポリマー製補強材料を、対照ポリマー製補強材料の対照収縮部材に対して、収縮部材を少なくとも約10%増加するように処理すること
を含む方法に関する。
【0011】
詳細な説明
本明細書に記載する本発明は、キャッププライの製造において使用することができ、及び/又は必要な場合、基礎となるカーカス材料として完成品であるタイヤに組込むことができる、ポリマー製強化材料及び/又はポリエステル製強化材料を含んでなる製品を製造するための方法を提供する。
【0012】
本明細書に記載の本発明によって、収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料であって、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して収縮部材が少なくとも約10%増加するように処理されている強化材料が提供される。更に、少なくとも約3.5%の自由収縮の収縮部材を有するポリマー製及び/又はポリエステル製強化材料が提供される。
【0013】
ここで、他に示さない限り、明細書及び請求項において使用される部材、構成要素、相互反応条件等の量を表現する全ての数字は、全ての場合、「約」という語によって修飾されているものと理解されることであることは理解されるべきである。従って、逆に示されない限り、明細書及び請求項に記載の数字のパラメータは、(本明細書により提供される本発明によって得られることが期待される)所望の特性によって変化し得る近似値である。最低でも、そして特許請求の範囲について均等論の適用を制限する意図はなく、それぞれのパラメータの数値は、報告された有効数字の数字に照らして、通常の丸め方の方法を適用して解釈されるべきである。本明細書で提供される主題の広範な範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。然しながら、いずれもの数値は、そのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差からの必然的結果として、本質的にある程度の誤差を含有する。
【0014】
通常タイヤファブリック並びに関連する組成物及び材料を製造するために使用されるような複数のポリマー製繊維を、本明細書中で強化材料及び/又は対照強化材料の製造のための出発点として使用することができる。ポリマー製繊維は、一般的に少なくとも約80重量%の二価アルコール及びテレフタル酸(PET)又はナフタレンジカルボン酸(PEN)のエステルから構成される長鎖の天然ポリマー又は合成ポリマーを含んでなる。例えば、適当な、意図されるポリマー製繊維及び/又は強化材料は、ポリエステル、ポリエステル基材、ナイロン基材、及び/又は、部分的にポリエステル化合物、ナイロン化合物及び/又はこれらの組合せを含む材料を含んでなる。
【0015】
ポリマー製キャッププライ強化材料(試料材料としても知られる)及び対照ポリマー製キャッププライ強化材料(対照材料としても知られる)が、試料材料に変化(variatio)を行う前に同一基材を含んでなることは、特に「対照」という語の定義の観点から一般的に意図されている。本明細書中で使用される場合、「対照」という語は、コントロールの、標準の、及び/又は、一般的な慣用的な、製品、繊維、材料、コード、キャッププライ又はタイヤを意味する。例えば、対照材料は、試料材料又は材料が比較される「対照」又は基本であるものである。対照は、同一の構成要素の試料であり、そして同一の条件下で製造されるが、全ての実験的、加工的、製造的、化学的及び/又は物理的変化は除外されている。化学的用語では、あたかも対照の特性が事実上ゼロとなるように、変化又は試料材料の特性の全てを対照に対して測定又は計算する点において、「対照」は「ブランク」と類似である。従って、対照材料と試料材料との相対的特性を比較する場合、対照材料と試料材料の両方を同一基材で始めてから、変化を試料材料に組込むことが重要である。
【0016】
加工的、製造的及び/又は物理的変化の一つがポリマー製強化材料の収縮部材の調節を含むことが意図されている。収縮部材は、自由収縮(非拘束収縮)によるようないくつかの異なった試験方法によって測定することができる。収縮部材又は収縮部材数は、百分率で与えられる。それぞれのポリマー製強化材料は、収縮部材を含んでなり、これにより、材料に与えられる収縮の程度が決まる。ある場合には、材料の収縮部材はゼロパーセントより大きくてもよく、これは、材料が、本来製造された形態であって、材料を収縮させる又は収縮を誘導するよう処理している間に、伸長も緩和もされていないことを意味する。もともと「伸長」された形態にある材料が、ある程度の測定可能な収縮部材を含んでなることは理解されるべきである。
【0017】
いくつかの意図した態様において、対照ポリマー製キャッププライ強化材料は、約ゼロより大きいか又はゼロパーセントである収縮部材であって、ポリマー製強化材料の収縮部材と対照ポリマー製強化材料の収縮部材との間の差が少なくとも10%である収縮部材を含んでなる。これは、ポリマー製強化材料の収縮部材に少なくとも10%の増加があることを意味する。もう一つの態様において、ポリマー製強化材料の収縮部材に、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して少なくとも約20%の増加がある。なおもう一つの態様において、ポリマー製強化材料の収縮部材に、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して少なくとも約25%の増加がある。なお他の態様において、ポリマー製強化材料の収縮部材に、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して少なくとも約35%の増加がある。
【0018】
他の意図する態様において、ポリマー製強化材料及び/又はポリエステル製強化材料は、少なくとも約3.5%の自由収縮の収縮部材を含んでなるものである。なお他の意図する態様において、収縮部材は、少なくとも約4%の自由収縮であるものである。
【0019】
本明細書中に記載されるようなポリマー製キャッププライ強化材料を含んでなる製品を形成する方法は:a)対照収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料を用意し;b)収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料を用意し;c)ポリマー製強化材料を、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が少なくとも約10%増加するように処理することを含んでなる。いくつかの態様において、ポリマー製強化材料は、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が、少なくとも約20%、少なくとも約25%、又は少なくとも35%増加するように処理されるものである。
【0020】
更に、本明細書中に記載されるようなポリエステル製強化材料を含んでなる製品を形成する方法は:a)対照収縮部材を有する対照ポリエステル製強化材料を用意し;b)収縮部材を有するポリエステル製強化材料を用意し;c)ポリエステル製強化材料を、対照ポリエステル製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が少なくとも約10%増加するように処理することを含んでなる。いくつかの態様において、ポリエステル製強化材料は、対照ポリエステル製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が少なくとも約20%、少なくとも約25%、又は少なくとも35%増加するように処理されるものである。
【0021】
本明細書中に記載されたような、ポリマー製キャッププライ強化材料及び/又はポリエステル製強化材料を含んでなる製品を形成するための、なおもう一つの意図する方法において、方法は:a)ポリマー製キャッププライ強化材料及び/又はポリエステル製強化材料を用意し;そしてb)ポリマー製キャッププライ強化材料及び/又はポリエステル製強化材料を、これが、少なくとも約3.5%の自由収縮の収縮部材を含んでなるように処理することを含んでなるものである。いくつかの態様において、収縮部材は、少なくとも約4%の自由収縮であるものである。
【0022】
対照ポリマー製強化材料を含む収縮部材を含んでなるポリマー製キャッププライ強化材料は:a)ポリマー製強化材料を供給業者又は紡績工場から購入する;b)ポリマー製強化材料を、自家で、他の供給源によって提供される化学薬品を使用して調製又は製造する;及び/又は、c)ポリマー製強化材料を、自家で、更に自家若しくはその場所で製造又は提供される化学薬品を使用して調製或いは製造することを含むいずれもの適した方法によって得ることができる。ポリマー製強化材料が、本明細書中で既に記載した材料のようないずれもの適した材料から製造されることは意図されている。
【0023】
材料は:(a)織糸製造工程(即ち、紡糸及び/又は引抜き中)、(b)その後の織糸取扱い(即ち、包装形成、下巻き、巻戻し等)、(c)プライ又はケーブル撚り加工、及び/又は(d)カレンダリング、押出成形、又はフィラメント巻取り前のコード被覆中にさえ適用される、仕上げ材料又は被覆剤によって改変することができる。仕上げ材料又は被覆剤は、水性、非水性溶媒基剤、或いは「非希釈物(neat)」(後の加工中に除去されなければならない溶媒又は他の分子及び/又は化合物が存在しないことを意味する)であることができる。水性乳剤は、過程中のいずれもの段階で適用することができるが、これらを、適用される熱が水を急速に除去するものである紡糸及び引抜き中に適用するか、或いは水が蒸発する時間がある貯蔵工程の前に適用することが好ましい。「非希釈物」被覆剤は、織糸又は得られたコードに適用することができる。これらの非希釈物被覆剤は、高温では流体であるため均質な被覆が容易であり、次いで、冷却によって固化して取扱い及び包装が容易であることが好ましい。
【0024】
意図する非水性溶媒は、所望する温度で蒸発し、及び/又は有機相を容易に形成するいずれもの適した純粋な有機分子又は混合物を含む。溶媒は、更にいずれもの適した純粋な極性及び非極性化合物又は混合物を含んでなることができる。いくつかの溶媒としては、制約されるものではないが、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系溶媒及び2−プロパノールが挙げられる。
【0025】
対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、収縮部材が少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%又は少なくとも35%増加したような収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料又はポリエステル製強化材料の両方を処理する工程、或いは、いずれかが少なくとも約3.5%又は少なくとも約4%の収縮部材を含んでなるように、ポリマー製強化材料及び/又はポリエステル製強化材料を処理する工程は、ポリマー製強化材料を加熱又は熱処理すること、ポリマー製強化材料を化学的に処理すること、ポリマー製強化材料を機械的又は物理的に加工すること、或いはポリマー製強化材料の収縮部材を対照収縮部材に対して増加させる他の好適なあらゆる処理工程を含んでよい。また、処理工程には、少なくとも二つの異なった処理方法の組合せが含まれていてもよいことが意図されている。
【0026】
対照収縮部材に対して、収縮部材が所定量増加するように処理された後、或いは、収縮部材が測定可能な自由収縮を有するように処理された後、ポリマー製キャッププライ強化材料を加工又は他の方法で使用して、少なくとも1本のポリマー製繊維、少なくとも1本のポリマー製コード、少なくとも1本のポリマー製織糸、少なくとも1個のポリマー製キャッププライ、及び/又は少なくとも1個のタイヤを形成させてもよい。
【0027】
ポリマー製キャッププライ強化材料が加工された後、タイヤのスチールベルト部品及び/又はタイヤのカーカスのような基礎材料との界面を形成するように接着材料とカップリングすることができることは意図されている。また、ポリマー製強化材料を、基礎となる材料と組合せ又はカップリングする場合に、特に熱処理工程又は圧力処理工程のような付加的な処理工程が存在する場合には、接着材料を必要としなくてもよいことが意図されている。ポリマー製強化材料が、強化材料の安定性を改良するために、又は適した完成タイヤを得るために、適したゴム組成物又はゴム配合物とカップリングすることができることは更に意図されている。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「界面」という語は、二つの分子、二つの骨格、一つの骨格及び一つの網目構造(network)、二つの網目構造間、等のような物体又は空間の二つの部分間の共通の境界を形成するカップリング又は結合を意味する。界面は、物体又は部材の二つの部分の物理的接続、或いは共有及びイオン結合のような結合力、並びにファンデルワールス、静電気、クーロン力、水素結合及び/又は磁気吸引のような非結合力を含む物体又は部材の二つの部分間の物理的吸引を含んでなることができる。意図する界面は、架橋による共有結合のような結合力で形成された界面を含む。然しながら、物体又は部材の二つの部分間の好適なあらゆる接着吸引又は接続が好ましいことは理解されるべきである。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「架橋」という語は、少なくとも二つの分子、或いは長い分子の二つの部分又は少なくとも一つの骨格が、化学的及び/又は接着性相互作用によっていっしょに接続される過程を指す。このような相互作用は、共有結合の形成、水素結合の形成、疎水性、親水性、イオン性又は静電性相互作用を含む多くの異なった方法で起こることができる。更に、分子の相互作用は、少なくとも一つの分子及びそれ自体間、或いは二つ又はそれより多い分子間の一時的な物理的接続によっても更に特徴付けることができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「骨格」という語は、原子又は分子のいずれかを除去すると鎖が中断されるような、共有結合した高分子の紐を形成する原子又は分子の隣接した鎖を意味する。本明細書中で使用される場合、「網目構造」は、少なくとも一つの骨格の相互作用(相互作用が化学的又は接着性であるかにはかかわらない)により得られる構造を意味する(第1の骨格と第2の骨格との架橋、又は、一つの骨格のそれ自体との架橋から得られるものである構造など)。
【0031】
本明細書中で使用されるゴム組成物又は配合物は、ゴム組成物及び配合物がタイヤファブリック及び関連する材料に使用するために適している限り、飽和、不飽和又はこれらの組合せであることができる。意図する態様において、ゴム組成物又は配合物は、その硬化以前に少なくともある程度の不飽和を含んでなる。本明細書中に記載される意図するゴム配合物は、各種の天然及び合成のゴム(ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ターポリマー、ポリブタジエン(これは、ヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又は酸無水物基によって修飾されていてもよい)、及びスチレン−ブタジエンコポリマーなどが挙げられるが、これに限定されるものではない)が、シリカ、硫黄、ゴム硬化開始剤、加硫促進剤、油、抗分解剤及び他の強化充填剤を配合して含む混合物から構成される。
【0032】
ゴム配合物又はゴム組成物は:a)ゴム配合物又はゴム組成物を供給業者から購入する;b)ゴム配合物又はゴム組成物を、自家で、もう一つの供給源によって提供される化学薬品を使用して調製又は製造する;及び/又はc)ゴム配合物又はゴム組成物を、自家で、更に自家若しくはその場所で製造又は提供される化学薬品を使用して調製或いは製造することを含むいずれもの適した方法によって得ることができる。ゴム配合物又はゴム組成物を、本明細書中で既に記載した材料のようないずれもの適した材料から製造されることが意図されている。また、ゴム配合物とタイヤの他の部材との反応を促進又は容易にするために、活性なゴム分子がゴム配合物又はゴム組成物中に存在してもよいことが意図されている。
【0033】
2002年1月17日に出願された米国特許仮出願60/439996に関連する、米国、マレーシア、関連する台湾及びPCT出願(米国10/342533;マレイシアPI20030153;並びに、関連するPCT及び台湾出願(番号不明))中に記載されているような、表面改良剤も更にポリマー製キャッププライ強化材料とカップリングすることができる。これらはすべて同一人が所有しており、本明細書中にその全体が含まれるものとする。
【0034】
実施例
実施例に記載されるようなポリマー製強化材料の構造、コードの構造及び関連するデータは、例示を目的とするのみであり、決して本発明の範囲を制約すべきものではない。
【0035】
試験法
自由収縮:自由収縮は、Testrite(商標)計器を使用して決定した。重量は、公称デニール当り0.01グラムであり、温度は、117Cであり、そして時間は、1分であった。
【0036】
タイヤの速度耐久性:速度−耐久性試験を、次のとおりに行った:タイヤの付加は、最大の85%であり、そして膨張圧力は、約2.25kg/cm(32PSI)であった。最初の試験速度は、210km/時であった。タイヤを静止状態から最初の試験速度まで、10分の時間をかけて段階的に上げ、そしてその速度を30分間維持した。次に速度を直ちに10km/時で上げ、そして30分間維持した。この最後の工程を、タイヤが破損するまで繰返した。
【0037】
実施例1及び2のための処理されたポリエステル織糸
以下の表に、実施例1及び2のタイヤを製造するために使用した処理された撚られた織糸の強化材料の代表的な特性を要約する。
【0038】
【表1】

【0039】
この場合、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであったが、他の高い引張強さ及び高いモジュラスの強化材料も同様に利益を与えることは想像される。強化材料の撚りを増加させた場合、モジュラス及び引張強さのようなある種の特性の自然の減少が起こることも更に認識される。
【0040】
実施例1:37EPIのポリエステル
この実施例では、処理されたポリエステル強化キャッププライで製造したタイヤを、従来のナイロン6.6強化キャッププライで製造したタイヤと比較する。全てのタイヤは、キャッププライをスパイラルラッピングすることによって製造し、インチ(2.54cm)当りの末端数及び公称デニール値から計算したキャッププライ材料の相対重量は、ナイロンタイヤが約9%大きかった。
【0041】
ポリエステルキャッププライの場合、強化材料は1000デニールの織糸であり、インチ当り5回撚られ、そして補強材料処理過程中に典型的な接着剤で加工された。ナイロン強化材料は、1260デニールの織糸であり、強化材料の処理過程中に典型的なナイロン接着剤で加工された。ポリエステル強化材料を、処理過程中に伸長水準を変更することによって3.4%及び4.4%の二つの収縮水準に加工した。ナイロンに対する加工は、商業生産のための典型的なものであった。ナイロンの実施例の収縮値は入手できなかったが、ナイロンがポリエステルより寸法的に安定な繊維ではないために、典型的な値は、ポリエステルの実施例のものより高い。
【0042】
スチールベルト入りのラジアルタイヤを、三つの強化材料のそれぞれから製造した。タイヤの構造は、異なった強化材料、異なったインチ当り末端数、及びタイヤ製造中の異なったリフトを除き同一であった。ポリエステルキャッププライのタイヤは、インチ当り37末端で製造され、一方ナイロン6.6キャッププライのタイヤは、インチ当り32末端で製造された。ポリエステルキャッププライのタイヤは、低い及び標準のリフト水準で製造され、一方ナイロンタイヤは、標準のリフト水準で製造された。
【0043】
速度耐久性試験は、それぞれの種類のタイヤの5本のタイヤに対して行った。「ナイロン6.6」タイヤの平均破損時間は、50.9分であった。標準のリフトで製造されたポリエステルタイヤ(表1のポリエステル5及び7)において、「3.4%収縮ポリエステルタイヤ」の平均破損時間は、63.5分であり、そして「4.4%収縮ポリエステルタイヤ」の時間は、105.8分であった。ポリエステル強化材料の収縮を増加するに伴い、破損時間は明らかに増加する。更に、同じ傾向は、低いリフトのタイヤ(表1のポリエステル6対ポリエステル8)においても観察された。
【0044】
以下の表1は、この実験の組から収集された実際のデータを示す。EPIは、材料のそれぞれのインチ中のコードの末端の数に関係する「インチ当り末端数」に基づく。
【0045】
【表2a】

【0046】
【表2b】

【0047】
実施例2:29EPIのポリエステル
実施例1のように、この実施例は、処理されたポリエステル強化キャッププライで製造されたタイヤを、従来のナイロン6.6強化キャッププライで製造されたタイヤと比較する。全てのこの実施例のパラメータは、ポリエステルキャッププライ強化材料のインチ当りの末端数以外は実施例1と同様である。この場合ポリエステルタイヤのインチ当り末端数は29である。従って、インチ当り末端数及び公称デニール値から計算されたキャッププライ材料の相対重量は、「ナイロン」タイヤが約40%大きかった。実施例1の「ポリエステル」タイヤと比較して、この実施例の「ポリエステル」タイヤは、約22%少ない強化材料を含有する。
【0048】
速度耐久性試験は、それぞれのタイヤの種類の5本のタイヤに対して行った。「ナイロン6.6」タイヤの平均破損時間は、50.9分であった。標準のリフトで製造したポリエステルタイヤ(表1のポリエステル1及び3)において、「3.4%収縮ポリエステルタイヤ」の平均破損時間は、56.1分であり、そして「4.4%収縮ポリエステルタイヤ」の平均破損時間は、102.8分であった。実施例1のように、ポリエステル強化材料の収縮を増加するに伴い、破損時間は明らかに増加する。更に同じ傾向は、低いリフトのタイヤ(表1のポリエステル2対ポリエステル4)においても観察された。
【0049】
本発明の重要性は、「ナイロン」タイヤに対する「ポリエステル」タイヤの優れた挙動が、「ナイロンタイヤ」において約40%多いキャッププライ補強材料が存在するにもかかわらず起こったことを考慮した場合、更に大きくなる。ポリエステル補強材料のモジュラスがナイロン強化材料より大きいと理解されることから、これが改良された挙動の機構であることを主張することができる。例えば、アラミド繊維のような高いモジュラスの強化材料は、キャッププライ強化材料として使用した場合、優れた挙動を有すると理解される。これは、ある程度真実であることができるが、実施例1の「ポリエステル」タイヤと実施例2のそれとの比較は、収縮がタイヤ性能を決定する重要な因子であることを示している。例えば、標準のリフトの場合、「3.4%収縮タイヤ」の破損時間は、63.5分及び56.1分であり、一方「4.4%収縮タイヤ」の破損時間は、105.8分及び102.8分である。
【0050】
このように、タイヤコード及び織物の製造、方法及びその使用の具体的な態様並びに適用が開示された。然しながら、当業者にとって、既に記載されたもののほかに多くの更なる改変が、本明細書中の本発明の概念から逸脱することなく可能であることは明白であるべきである。従って、本発明の主題は、請求項の思想を除き制約されるべきではない。更に、明細書及び請求項の両方を解釈する場合、全ての用語は、文脈に一致した可能な限り幅広い様式で解釈されなければならない。特に、「含んでなる」及び「含んでなること」という語は、要素、部材、又は工程に対して非排他的に言及し、言及された要素、部材、又は工程が、存在し、又は使用し、或いは明確に言及されていない他の要素、部材、又は工程と組合わせることができることを示しているものとして解釈されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料、ここで、該強化材料は、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、該収縮部材が少なくとも約10%増加するように処理されている、
を含んでなる製品。
【請求項2】
前記ポリマー製キャッププライ強化材料及び前記対照ポリマー製強化材料が、同一の基材を含んでなる、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記基材が、ポリエステル基材である、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記基材が、ナイロン基材である、請求項2に記載の製品。
【請求項5】
前記基材が、ナイロン及びポリエステルの両方を含んでなる、請求項2に記載の製品。
【請求項6】
前記収縮部材及び前記対照収縮部材を、自由な百分率で含んでなる、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
前記自由な収縮百分率が、平均の自由収縮百分率である、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記収縮部材が、前記対照収縮部材に対して少なくとも約20%増加する、請求項1に記載の製品。
【請求項9】
前記収縮部材が、前記対照収縮部材に対して少なくとも約25%増加する、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記収縮部材が、前記対照収縮部材に対して少なくとも約35%増加する、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
請求項1に記載のポリマー製強化材料を含んでなるキャッププライ。
【請求項12】
請求項1に記載のポリマー製強化材料を含んでなるタイヤ。
【請求項13】
少なくとも約3.3%の自由収縮の収縮部材を有するポリエステル製強化材料。
【請求項14】
前記収縮部材が、少なくとも約4%の自由収縮である、請求項13に記載のポリエステル製強化材料。
【請求項15】
請求項13に記載のポリエステル製強化材料を含んでなるキャッププライ。
【請求項16】
請求項15に記載のキャッププライを含んでなるタイヤ。
【請求項17】
対照収縮部材を有する対照ポリマー製キャッププライ強化材料を用意すること;
収縮部材を有するポリマー製キャッププライ強化材料を用意すること;そして
前記ポリマー製強化材料を、対照ポリマー製強化材料の対照収縮部材に対して、前記収縮部材を少なくとも約10%増加するように処理すること;
を含んでなるポリマー製キャッププライ強化材料を含んでなる製品を形成する方法。
【請求項18】
前記ポリマー製強化材料及び前記対照ポリマー製強化材料が、同一の基材を含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基材が、ポリエステル基材である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、ナイロン基材である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記基材が、ナイロン及びポリエステルの両方を含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記収縮部材が、前記対照収縮部材に対して少なくとも約20%増加する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記収縮部材が、前記対照収縮部材に対して少なくとも約25%増加する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記収縮部材が、前記対照収縮部材に対して少なくとも約35%増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
処理が、熱処理を含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
処理が、機械的加工を含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
処理が、熱処理、機械的加工及び化学的加工の少なくとも二つの組合せを含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
請求項17に記載の方法によって製造されるキャッププライ。
【請求項29】
請求項17に記載の方法によって製造されるタイヤ。

【公表番号】特表2006−519940(P2006−519940A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509071(P2006−509071)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006563
【国際公開番号】WO2004/081269
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505419774)パフォーマンス・ファイバーズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】