説明

ポリ塩化ビニル樹脂組成物

【課題】環境や生体への安全性や衛生性に優れ、しかも、透明性および耐熱性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、少なくとも、ポリエステル可塑剤0.01〜10重量部、エポキシ系化合物0.01〜50重量部、金属化合物0.01〜10重量部を配合して成り、ポリエステル可塑剤が、フタル酸及び/又はテレフタル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びグリセリンの群から選ばれた少なくとも一種または二種以上とを反応させて得られ、かつ、水酸基価が200〜600mgKOH/g、酸価が5mgKOH/g以下であるエステル化反応物であるポリ塩化ビニル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物に関し、詳しくは、ポリ塩化ビニル樹脂に特定のポリエステル可塑剤を添加することにより、成形加工時における樹脂の熱劣化による黄変および黒変を防止し、耐熱性を向上させたポリ塩化ビニル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂は、安価で安定性、加工性に優れ、且つ、フタル酸ジオクチル(以下DOPと称す)等の可塑剤を添加することにより樹脂の硬さを容易に制御し得るため、広範囲に使用されている。
【0003】
一方、ポリ塩化ビニル樹脂は安定性に優れているとは言え、高温で成形加工される場合はより高い耐熱性を求められる。樹脂製品を高温で長期間使用する用途においても同様である。そこで、耐熱性向上のため、微量の鉛系や錫系の化合物などの耐熱性向上剤を添加する方法が知られている。しかし、これらの耐熱性向上剤は、微量ではあっても、環境や生体への安全性や衛生性に問題があるため、その代替として、亜鉛系、カルシウム系、バリウム系の各種金属化合物が使用されている。しかし、これらの金属化合物は、耐熱性においては鉛系や錫系の化合物より劣る。そこで、更なる耐熱性向上を目的として、例えばポリビニルアルコールのような分子内に水酸基を有する化合物を併用することが行われている(特許文献1)。
【0004】
しかし、一般にポリビニルアルコールは、重合度やケン化度にもよるが、ポリ塩化ビニル樹脂に対する相溶性が小さいため、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する添加量は0.1〜0.2重量部程度が限界であり、それ以上添加するとポリ塩化ビニル樹脂に濁りが生じてしまう欠点がある。勿論、上記添加量では耐熱性の向上は不十分である。
【0005】
また、ポリ塩化ビニル樹脂との相溶性が改善された添加剤として、ステアリン酸やラウリル酸などの脂肪族カルボン酸によってペンタエリスリトールの水酸基の50%程度をエステル化したエステル化反応物も提案されている(特許文献2)。しかしながら、このエステル化反応物でもポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して0.5重量部程度の添加が限界であり、耐熱性向上には不十分である。
【0006】
さらに、多価カルボン酸と多価アルコール及び必要に応じてモノアルコールとの反応で得られるエステル化反応物(所謂ポリエステル可塑剤)も知られている(特許文献3)。このポリエステル可塑剤は、ポリ塩化ビニル樹脂との相溶性を向上させるために一価アルコールを必ず使用し、アルキル基で末端官能基をキャップした構造となっている。これにより、ポリエステル可塑剤を多量に添加してもポリ塩化ビニル樹脂の濁りを防止出来るが、耐熱性向上の効果については不十分である。
【0007】
【特許文献1】特開平6−286012号公報
【特許文献2】特開平7−97495号公報
【特許文献3】特開平9−241456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、環境や生体への安全性や衛生性に優れ、しかも、透明性および耐熱性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、エポキシ系化合物及び金属化合物と共に、特定の構造的特徴を備えたポリエステル可塑剤をポリ塩化ビニル樹脂に配合することにより、上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、少なくとも、ポリエステル可塑剤0.01〜10重量部、エポキシ系化合物0.01〜50重量部、金属化合物0.01〜10重量部を配合して成り、ポリエステル可塑剤が、フタル酸及び/又はテレフタル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びグリセリンの群から選ばれた少なくとも一種または二種以上とを反応させて得られ、かつ、水酸基価が200〜600mgKOH/g、酸価が5mgKOH/g以下であるエステル化反応物であることを特徴とするポリ塩化ビニル樹脂組成物に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境や生体への安全性や衛生性に優れ、しかも、透明性および耐熱性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用するポリ塩化ビニル樹脂とは、ポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルと共重合し得るモノマーとの共重合物が挙げられる。ここで、塩化ビニルと共重合し得るモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン類;酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸メチルエステル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類;不飽和カルボン酸アルキルエステル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;その他、マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。更に、ポリ塩化ビニルと三元ポリマー(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、メタクリル酸メチルエステル−ブタジエン−スチレン)、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合物などとのポリマーブレンド、ポリ塩化ビニルのアルコール等による後処理物、後塩素化物などが挙げられる。
【0013】
本発明で使用するポリエステル可塑剤は、多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるエステル化合物である。
【0014】
多価カルボン酸としては、フタル酸及び/又はテレフタル酸を使用するが、多価カルボン酸の全量がフタル酸であることが好ましい。なお、フタル酸は無水物(無水フタル酸)を使用してもよい、
【0015】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びグリセリンの群から選ばれた少なくとも一種または二種以上を使用するが、多価アルコールの全量がジエチレングリコールであることが好ましい。ただし、後述の水酸基価を400mgKOH/g以上とする場合はグリセリンを併用するのが好ましい。なお、エステル化反応の条件により、若干量のカルボン酸基が末端基として残る場合もある。
【0016】
上記のポリエステル可塑剤の製造には、一般的なポリエステル可塑剤の製造装置と反応方法を適用することが出来る。反応の終点は、通常、使用する多価カルボン酸の未反応カルボン酸基の量で決定する。ポリエステル可塑剤の耐加水分解性向上の観点から、未反応のカルボン酸の量、すなわち酸価は出来るだけ低い方が好ましい。従って、本発明で使用するポリエステル可塑剤の酸価は、通常5mgKOH/g以下、好ましくは3mgKOH/g以下、更に好ましくは1mgKOH/g以下である。酸価の下限は特に制限されないが、反応条件や反応時間からすれば通常0.1mgKOH/gである。
【0017】
通常、上記のポリエステル可塑剤の製造にはエステル化触媒を使用する。一般には酸触媒を使用する。ルイス酸としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のオルトチタン酸エステル、ジエチル錫オキシド、ジブチル錫オキシド等の錫系化合物、酸化亜鉛などの金属化合物が使用される。また、ルイス酸の他には、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などのブレンステッド酸を使用してもよい。これらの中ではオルトチタン酸エステルが好ましい。
【0018】
エステル化触媒の使用量は、原料に使用する多価カルボン酸と多価アルコールの合計に対する割合として、通常0.1重量%以下、好ましくは0.07重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下である。場合によってはエステル化触媒を使用しないで反応してもよい。エステル化触媒は、必要に応じ、失活処理、濾過、精製などの一般的な方法によって除去してもよい。
【0019】
本発明で使用するポリエステル可塑剤の水酸基価は200〜600mgKOH/gであり、好ましくは250〜550mgKOH/g、更に好ましくは300〜500mgKOH/gである。水酸基価が200mgKOH/g未満の場合はポリ塩化ビニル樹脂に添加した際の耐熱性向上の効果が小さくなる。一方、600mgKOH/gより大きい場合は、未反応のアルコールが多い分子量分布となり、ポリ塩化ビニル樹脂に対する相溶性が低下することから樹脂に濁りが生じる。
【0020】
ポリ塩化ビニル樹脂に対するポリエステル可塑剤の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する割合として、0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。添加量が0.01重量部未満の場合は添加効果が認められず、逆に10重量部を超える場合は、樹脂の濁りの原因となったり、場合によっては樹脂強度低下の原因となる。
【0021】
本発明で使用するエポキシ系化合物としては、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸、メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン−9,10−12,13−ジエポキシステアリン酸、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、3,4−エポキシシクロヘキシル−9,10−エポキシステアレート、エビクロルヒドリンとビスフェノールAの縮合物、エポキシステアリン酸tert−ブチルフェニル、エポキシステアリン酸2−エチルブチル、エポキシステアリン酸2−エチルヘキシル、エポキシステアリン酸アセトキシエチル、エポキシステアリン酸イソオクチル、エポキシステアリン酸イソデシル、エポキシステアリン酸シクロヘキシル、エポキシステアリン酸テトラヒドロフリル、エポキシステアリン酸フェニル、エポキシステアリン酸、エポキシステアリン酸ベンゾイル、エポキシステアリン酸メトキシエチル、エポキシ化トール油酸−2−エチルヘキシル、エポキシトール油酸オクチル、エポキシ化トール油酸イソオクチル、エポキシ化トール油酸ブチル、エポキシトリアセトモノリシノレイン酸グリセリド、エポキシヘキサヒドロフタル酸ブチルデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジブチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ビス(9,10−エポキシステアリル)、エポキシ化アマニ油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化ジアセトモノオレイン、エポキシ化トール油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化牛脂油、エポキシ化魚油、エポキシ化鯨油、エポキシ化大豆油、エポキシ化大豆油のジアセトモノグリセリド、エポキシ化豚脂油、エポキシ化綿実油、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、安息香酸エポキシステアリルエステル等が挙げられる。好ましいエポキシ系化合物は、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油である。ポリ塩化ビニル樹脂に対するエポキシ系化合物の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する割合として、0.01〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部である。
【0022】
本発明で使用する金属化合物の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、錫なとが挙げられる。金属化合物としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、多価カルボン酸、フェノール系化合物(これらは置換されていてもよい)との化合物の他、配位子となる化合物との塩、金属の無機塩などが挙げられる。
【0023】
上記の化合物の具体例としては、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジブチルジチオ亜リン酸亜鉛、ジデシル亜リン酸カリウム、ジ(オクチル亜リン酸)亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩化亜鉛、水酸化亜鉛、亜リン酸亜鉛、炭酸亜鉛、硼酸亜鉛塩、カルシウムオクトエート、カルシウムステアレート、カルシウムヒドロキシステアレート、カルシウムベヘネート、カルシウムベンゾエート、カルシウムミリステート、バリウムオクトエート、バリウムステアレート、バリウムヒドロキシステアレート、バリウムベヘネート、バリウムベンゾエート、バリウムミリステート、バリウムノニルフェネート、マグネシウムオクトエート、マグネシウムステアレート、マグネシウムヒドロキシステアレート、マグネシウムベヘネート、マグネシウムベンゾエート、マグネシウムミリステート、リチウムオクトエート、リチウムステアレート、リチウムヒドロキシステアレート、リチウムベヘネート、リチウムベンゾエート、リチウムミリステート、硫酸バリウム、デヒドロ酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、デヒドロ酢酸バリウムジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等が挙げられる。好ましい金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛および錫の化合物であり、安全性、衛生性の観点から、より好ましい金属化合物は、カルシウム、バリウム、亜鉛の化合物であり、具体的には、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、カルシウムオクトエート、カルシウムステアレート、バリウムオクトエート、バリウムステアレート等が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂に対する金属化合物の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する割合として、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0024】
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物においては、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、上記以外の各種の可塑剤や助剤などを配合することが出来る。可塑剤としては、安息香酸系、フタル酸系、テレフタル酸系、イソフタル酸系、トリメリット酸系、ピロメリット酸系、アジピン酸系、コハク酸系、セバシン酸系、アゼライン酸系、マレイン酸系、フマル酸系、クエン酸系、リンゴ酸系、リン酸系などの可塑剤が挙げられる。これらは、それぞれのカルボン酸とプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、2−プロピルヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、ベンジルアルコール等の1価アルコールとのエステル化合物である。このエステル化反応においては必要に応じて酢酸などの1価カルボン酸を併用してもよい。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと安息香酸、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のような1価カルボン酸とのエステル化合物を使用してもよい。
【0025】
助剤としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸化防止剤、防曇剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、加工助剤、難燃剤、希釈剤、安定剤、界面活性剤、減粘剤、顔料などが挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
使用したポリエステル可塑剤の原料組成と、酸価および水酸基価の分析結果を表1に示す。なお、ポリエステル可塑剤は公知の方法により合成し、酸価および水酸基価の分析は、JIS K15571970に準拠して行った。
【0028】
【表1】

【0029】
ポリエステル可塑剤合成に使用した多価カルボン酸および多価アルコールを表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例1〜4及び比較例1〜4:
表3の配合に従い、ポリ塩化ビニル樹脂のコンパウンドシートを作成した。なお、原料の配合部数はそれぞれ重量部を指す。また、後述する方法で均一性、透明性、耐熱性、耐ブリードアウト性の評価を行い、結果を表3に記した。
【0032】
【表3】

【0033】
ポリ塩化ビニル樹脂コンパウンドシート作成に使用した原料の種類を表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
コンパウンドシートの作成は以下の条件で行った。
【0036】
(1)コンパウンド作成条件:
井上製作所製の混錬用2本ロールを使用し、160℃/5分間の条件で行った。
【0037】
(2)プレス成型条件:
丸七鉄工所製の50トン油圧式成型機を使用し、175℃/(60kg/cm)/5分間の条件で行った。金型寸法は、220×220×1mmとした。
【0038】
表3において、それぞれの評価は以下の方法で行った。
【0039】
(1)耐熱性:
コンパウンドシートを約30×30mmに切り出し、160℃のオーブンに入れた後に時間を追ってシートの黒変を観察した。すなわち、オーブンに入れてから90分目より30分おきにシートを観察し、黒変が無ければ「○」、シートの約50%未満が黒変していれば「△」、シートの約50%以上が黒変していれば「×」とした。なお、比較例2のコンパウンドシートは、シート作成の段階で既に薄く黒変してしまい、それ以上の評価が出来なかった。
【0040】
(2)均一性および透明性:
目視でコンパウンドシートの均一性と透明性を評価した。均一且つ透明の場合は「○」、不均一又は透明性低下の場合は「×」とした。
【0041】
(3)耐ブリードアウト性:
コンパウンドシートを約30×30mmに切り出し、100℃のオーブンに3日間保持した後に触診で判断し、べとつきなしの場合は「○」、若干のべとつきありの場合は「△」、ベトツキありの場合は「×」とした。
【0042】
表3より主に次のことが明らかである。すなわち、本発明で使用する特定のポリエステル可塑剤と金属化合物およびエポキシ系化合物を併用した実施例の場合は、耐熱性が大変向上しており、しかも、均一性および透明性を維持していると言える。一方、ポリエステル可塑剤を使用し、金属化合物およびエポキシ系化合物を併用しなかった比較例においては、その耐熱性が著しく悪化していると言える。一方、ポリビニルアルコールを使用した比較例では、耐熱性は優れるものの、均一性および透明性が悪化している。実施例における耐ブリードアウト性は、何れも比較例と比べ遜色はなく、良好な状態を維持していると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、少なくとも、ポリエステル可塑剤0.01〜10重量部、エポキシ系化合物0.01〜50重量部、金属化合物0.01〜10重量部を配合して成り、ポリエステル可塑剤が、フタル酸及び/又はテレフタル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びグリセリンの群から選ばれた少なくとも一種または二種以上とを反応させて得られ、かつ、水酸基価が200〜600mgKOH/g、酸価が5mgKOH/g以下であるエステル化反応物であることを特徴とするポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
金属化合物が、亜鉛化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物の群から選ばれた少なくとも一種または二種以上である請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−185199(P2009−185199A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27594(P2008−27594)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】