説明

ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物及びその添加剤

【課題】無機系フィラーが配合された系において、低シェア粘度と高シェア粘度のどちらの条件においても少ない添加量で減粘効果が大きく、かつ粘度の経時変化を少なくする。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物Aを含有するか、または、該化合物Aと下記一般式(II)で表される化合物BとをA/B=70/30〜99/1のモル比で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤、及びそれを含有し、減粘効果が大きく、かつ粘度の経時変化が少ないポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、塩化ビニル等のモノマーを乳化重合やミクロ懸濁重合して得られた樹脂ラテックスを噴霧乾燥した樹脂粉体と、フタル酸ジオクチル(DOP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)等の可塑剤、希釈剤、炭酸カルシウム等の無機系フィラー、顔料、難燃剤、安定剤等を混練してゾルを調製することで得られるものである。そして、ペーストコーティングやディッピングといった方法により加工することで、最終的なポリ塩化ビニル系樹脂製品となる。
【0003】
かかるポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物においては、コスト低減、強度の向上のために炭酸カルシウム等の無機系フィラーを多量に配合することがある。しかしながら、無機系フィラーを多量に含んだポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は高粘度となり、加工時に十分な作業性、加工性が得られないといった問題が生じる。
【0004】
高粘度のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の粘度を下げるために、減粘剤としてアルキルベンゼン、ミネラルスピリット、パラフィンなどの炭化水素系化合物、高級アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどを用いることが知られている。また、下記特許文献1には、エチレングリコールモノアルキルエーテル脂肪酸エステルからなる減粘剤が、下記特許文献2には、飽和脂肪族モノカルボン酸と分岐鎖脂肪族モノアルコールとのエステルと融点0℃以下の炭化水素を併用した減粘剤が、下記特許文献3には、特定の炭素数を持つ脂肪酸エステル又はポリアルキレングリコールアルキルエーテルと、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレートとを併用した減粘剤が、それぞれ開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの減粘剤を用いた場合、低シェアでは減粘効果は見られるが、高シェアでは十分な減粘効果が見られず、また粘度の経時安定性が不十分である。あるいはまた、低シェア及び高シェアでの減粘効果が認められるものでも、その効果が未だ不十分であって、十分な性能を得るためには減粘剤の添加量が多くなり、コストアップに繋がるといった問題点が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−031664号公報
【特許文献2】特開2004−323624号公報
【特許文献3】特開2001−335696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、炭酸カルシウム等の無機系フィラーが配合された系において、低シェア粘度と高シェア粘度のどちらの条件においても少ない添加量で減粘効果が大きく、かつ粘度の経時変化が少ないポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤、及びそれを含有する低粘性のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤は、下記一般式(I)で表される化合物A(ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸ジエステル)を含有するか、または、下記一般式(I)で表される化合物Aと下記一般式(II)で表される化合物B(ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸モノエステル)とをA/B=70/30〜99/1のモル比で含有するものである。また、本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、該ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤とポリ塩化ビニル系樹脂を含有するものである。
【化1】

式(I)、(II)において、R1、R2:炭素数8〜20の飽和、不飽和、直鎖、または分岐脂肪酸残基における脂肪族鎖の部分(すなわちR1、R2の炭素数は7〜19)、R3:水素原子、メチル基またはエチル基、n:1〜50の整数である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤であると、特に炭酸カルシウム等のフィラーが配合された系において、汎用のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤に比べて、高シェア粘度及び低シェア粘度の双方の減粘効果に優れ、かつ粘度の経時変化を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。以下の説明において、特に限定しない限り「部」は重量部をあらわす。
【0011】
[ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤]
本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤は、上記一般式(I)で表される化合物A(ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸ジエステル)からなるか、または、上記一般式(I)で表される化合物Aと上記一般式(II)で表される化合物B(ポリオキシアルキレングリコールの脂肪酸モノエステル)とをA/B=70/30〜99/1のモル比で含有する。したがって、本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤は、ポリオキシアルキレングリコール(PAG)に対する脂肪酸の仕込みモル比(脂肪酸/PAG)を1.7/1.0〜2.0/1.0として、エステル化反応を完結させる(例えば酸価が1mg-KOH/g以下となるようにする)ことにより、効率的に得ることができる。なお、脂肪酸ジエステルに、上記範囲で脂肪酸モノエステルを混合しても良い。
【0012】
ここでの脂肪酸としては、カプリル酸(オクタン酸)、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、パルミトレイン酸、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、バクセン酸(11-オクタデセン酸)、リノール酸(cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸)、リノレン酸、リノレン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、アラキドン酸(5,8,11-イコサテトラエン酸)、などが上げられる。R1、R2は同一でも異なるものでもよく、上記に記載のものを2種類以上混合して用いることもできる。
【0013】
上記R3を含むオキシアルキレン基は、オキシエチレン、オキシプロピレン又はオキシブチレンを表し、これらは繰り返し単位毎に同一でも異なってもよい。また、異なる場合、それらはランダム付加でも、ブロック付加でもよい。上記nで表されるオキシアルキレン基の繰り返し単位数(付加モル数)は、平均値で1〜50である。nが50を超えると、減粘効果が低下する。n=1であること、即ち、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはブチレングリコールの脂肪酸エステルであってもよい。nは、減粘効果の面から2〜25であることが好ましく、5〜35であることがより好ましい。
【0014】
上記化合物A、またはA及びBを構成するための、好ましい脂肪酸として、炭素数14〜18のもの、またはこのような脂肪酸を主体とする混合脂肪酸を挙げることができる。また、好ましいポリアルキレングリコール(PAG)として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び、これらのブロック共重合体、並びに、これらの混合物を挙げることができる。ポリアルキレングリコール(PAG)の数平均分子量範囲としては、400〜2000を好ましい範囲として、600〜1500をより好ましい範囲として挙げることができる。
【0015】
本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤は、上記一般式(1)で表されるリン酸エステルに、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般式(1)で表される化合物を得る際の未反応物や、一般的に用いられているアルキルベンゼンやミネラルスピリット、パラフィンなどの炭化水素系化合物、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の減粘剤を含有していても良い。
【0016】
[ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物] 本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂と、上記ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤とを含有するものである。
【0017】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル、又は塩化ビニルモノマーを主体とするこれと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、特には、重合度が約600〜約4000の範囲内にあるポリ塩化ビニル又は塩化ビニル系共重合体が好ましい。塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸,(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。重合度は、JIS K 7252−1(ISO16014-1に対応)に基づき数平均分子量を測定し、モノマー分子量と数平均分子量に基づき算出される値である。
【0018】
ポリ塩化ビニル系樹脂を得る方法としては、乳化重合、ミクロ懸濁重合等が挙げられ、これらにより得られた重合体の水分散体を乾燥することにより、ポリ塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0019】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物中におけるポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤の含有量は、上記リン酸エステルの含有量として、減粘効果、経済性及び最終製品の性能面の観点より、ポリ塩化ビニル系樹脂100部に対して、0.5〜10部が好ましく、さらに好ましくは1〜5部である。
【0020】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物中には、充填剤として、無機系フィラーを配合することができる。無機系フィラーとしては、一般的に炭酸カルシウムが挙げられるが、他にもタルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウム、アルミナ、硫酸バリウム等を用いてもよい。無機系フィラーの添加量は、減粘効果や最終製品の性能面から、ポリ塩化ビニル系樹脂100部に対し、10〜400部の添加が好ましく、50〜200部の添加がさらに好ましい。
【0021】
また、本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物には、可塑剤を配合することができる。可塑剤としては、汎用可塑剤であるDOP(ジオクチルフタレート)やDINP(ジイソノニルフタレート)をはじめとするフタル酸エステル系の他、トリメリット酸エステル系、アジピン酸エステル系、アゼライン酸エステル系、セバチン酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ系、脂肪酸エステル系、ピロメリット酸エステル系可塑剤などが挙げられる。可塑剤の配合量は、最終製品の性能面から、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10部〜150部が好ましい。
【0022】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物には、上記成分以外に、従来公知の減粘剤を用いてもよい。従来公知の減粘剤としては、例えば、アルキルベンゼン、ミネラルスピリット、パラフィンなどの炭化水素系化合物、高級アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。そして、上記従来公知の減粘剤の配合量は、本発明の減粘剤効果が阻害されない範囲内であれば特に限定するものではない。本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物には、また、安定剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を配合しても良い。
【0023】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、前記ポリ塩化ビニル系樹脂に充填剤、可塑剤、減粘剤、添加剤等を添加し、通常用いられるリボンブレンダー、スーパーミキサー、ディスパー、ディゾルバーなどで攪拌することにより得られる。
【実施例】
【0024】
実施例及び比較例の各減粘剤は下記の方法により調製した。
【0025】
[減粘剤A]
攪拌機、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にカプリン酸288部とポリエチレングリコール(平均分子量200)200部、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、220℃に昇温して、酸価が1mg-KOH/g以下になるまでエステル化を行った。反応終了後、酢酸にて中和を行い、減粘剤Aを得た。
【0026】
[減粘剤B〜N]
減粘剤Aと同様の装置及び方法を用いて、表1の仕込み量で反応を行い、減粘剤B〜Nを得た。なお、表2には、各実施例の減粘剤の調製に用いた脂肪酸製品について、炭素数、不飽和結合数、及び、それらの組成比を示す。表2に示すように、減粘剤Hの調製に用いた「ステアリン酸」製品は、炭素数18の主成分の他に、炭素数16のパルミチン酸成分を多量に含み、減粘剤I及びJの調製に用いた「オレイン酸」製品は、炭素数14、16及び20の脂肪酸成分、及び、飽和脂肪酸成分及びジエン不飽和脂肪酸成分を含んでいる。
【0027】
【表1】

※1 PAG:ポリアルキレングリコール原料( )内の数字はPAGの平均分子量を示す。
※2 PEG(500)-PPG(1000):PPG(1000)にエチレンオキサイドを付加してPEG部分の分子量が500となるようにして得られた、数平均分子量1500のブロック共重合体。
※3 PEG(1000)/PPG(1000):エチレングリコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加してPEG部分とPPG部分のそれぞれの数平均分子量が1000となるようにして得られた、数平均分子量2000のランダム共重合体。
【0028】
【表2】

【0029】
[比較減粘剤O〜Q]
減粘剤Aと同様の装置及び方法を用いて、表3の仕込み量で反応を行い、比較減粘剤O〜Qを得た。比較減粘剤O〜Pでは、ポリアルキレングリコール(PAG)に対する脂肪酸の仕込みモル比が過小であり、比較減粘剤Qでは、ポリアルキレングリコール(PAG)の繰り返し単位数(付加モル数)が、約90と過大である。
【0030】
[比較減粘剤R〜T]
一方、比較減粘剤Rは、オレイン酸のメチルエステルと2-エチルヘキシルエステルとの等量(等重量)混合物、比較減粘剤Sは、エチレングリコールモノブチルエーテルエステルと2-エチルヘキシルエステルとの(等重量)等量混合物、比較減粘剤Tは、ソルビタンモノステアレートとソルビタンジステアレートとの(等重量)等量混合物である。これら比較減粘剤R〜Tは、従来一般に用いられたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用減粘剤のうち、最も典型的なものの例といえる。
【0031】
【表3】

【0032】
上記の実施例(表1)及び比較例(表3)のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤(減粘剤)を用いて、下記のようにしてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を得た。すなわち、ポリ塩化ビニル樹脂としてZEST PQ83(重合度700、新第一塩ビ(株)製)、可塑剤としてDINP(サンソサイザーDINP、新日本理化(株)製)、炭酸カルシウム(NCC−110、日東粉化(株)製)、酸化チタン(タイペークWHITE、R−680、石原産業(株)製)、Ba/Zn系安定剤(アデカタブFL−44、アデカ(株)製)、発泡剤(ビニホールAC#1C、永和化成工業(株)製)、および所定のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤(減粘剤)を、表4の配合比にて配合し、撹拌機にて5分間、1000rpmで撹拌を行った後、減圧下で脱泡して調製した。
【0033】
【表4】

【0034】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物について、下記方法で粘度及び分散状態を評価した。結果を表5に示す。
【0035】
[ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の粘度]
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を25℃の恒温室に放置して2時間放置後、および3日間放置後に粘度を測定した。粘度測定はブルックフィールドB型粘度計で、No.4ローターを用い、6rpm(低シェア)及び60rpm(高シェア)で粘度を測定した。なお、高シェアでは10000mPa・s以上の粘度は測定不能であるため、その場合は、「10000<」と表示した。
【0036】
また、6rpmにおける、2時間後の粘度に対する3日後の粘度の比率を百分率で算出し、「変化率」として表5に記載した。すなわち、変化率を下記式にて算出した。
変化率(%)=(3日後の粘度)×100/(2時間後の粘度)
【0037】
[発泡セルの分散状態]
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を成形枠(幅15cm、長さ15cm)に厚さ0.5mmとなるように流し込み、200℃、5分間加熱してシートを作成。シート表面を肉眼で観察し発泡セルの分散状態を、
◎:発泡セルが均一に分散、
○:極僅かに分散不良、
△:一部が分散不良、
×:分散不良、
の4段階で評価した。評価結果を表5の右端に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表5から分かるように、本発明品に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤(減粘剤)を添加したポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物であると、炭酸カルシウム等のフィラーが多量に配合された系でありながら、汎用の減粘剤に比べ、半分以下の添加量でも、高シェア粘度及び低シェア粘度の双方において減粘効果が大きく、かつ粘度の経時変化が少なかった。しかも、成形後の発泡セルの分散状態についても良好であった。
【0040】
表5の減粘剤E〜Nの結果から知られるように、構成脂肪酸の炭素数が12〜18のものを用いた場合に、2重量部の添加量で、十分な粘度低下が得られ、また、発泡セルの分散状態も良好であった。なお、減粘剤E〜Fで用いたヤシ脂肪酸(ヤシ油脂肪酸)は、表2に示すとおり、炭素数12〜14のものを主体とする。
【0041】
特には、減粘剤I〜L及びNでは、3日後の60rpmでの粘度が5400mPa・s以下であり、変化率が102%以下であった。これら減粘剤I〜L及びNは、構成脂肪酸が、オレイン酸(炭素数18)、牛脂脂肪酸(炭素数18が主体)、またはイソステアリン酸であり、構成ポリアルキレングリコール(PAG)が、数平均分子量600〜1000のポリエチレングリコールである。
【0042】
これに対して、比較例の減粘剤O〜Tを用いた場合、いずれも粘度低下が不充分であった。また、発泡セルの分散状態についても、比較例の減粘剤Sを5重量部添加した場合にのみ、実施例の減粘剤で得られたと同程度に良好であり、2重量部の添加では、一部に分散不良が見られた。
【0043】
また、表5の中段に示すように、実施例の減粘剤Lと比較例の減粘剤Rとを等重量で混合した場合、及び、実施例の減粘剤Nと比較例の減粘剤Sとを等重量で混合した場合、発泡セルの分散状態は良好であったが、3日後の60rpmでの粘度が6700mPa・s以上であり、粘度低下が不充分であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物用添加剤は、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物に配合することで、その高シェア及び低シェアの粘度を大きく低減させ、また粘度の経時変化を少なくすることができるので、壁紙、玩具、床材、手袋、シーリング材などの各種用途に用いられる塩化ビニル系ペースト樹脂に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物Aを含有するか、または、該化合物Aと下記一般式(II)で表される化合物BとをA/B=70/30〜99/1のモル比で含有することを特徴とするポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤。
【化1】

式(I)、(II)において、R1、R2:炭素数7〜19の飽和、不飽和、直鎖、または分岐脂肪族鎖、R3:水素原子、メチル基またはエチル基、n:1〜50の整数である。
【請求項2】
ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、無機系フィラー10〜400重量部及び請求項1に記載のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂用添加剤0.5〜10重量部を含有することを特徴とするポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−79932(P2011−79932A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232556(P2009−232556)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】