説明

ポリ(アリーレンエーテル)組成物及び製造方法

芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)と、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分とを含むポリ(アリーレンエーテル)組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。具体的には、本発明は高い熱酸化安定性を有するポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリーレンエーテル)は、広い温度域でユニークな化学的特性と物理的特性と電気的特性の組合せをもつことを特徴とする周知の広く使用されているポリマーである。ポリ(アリーレンエーテル)を含有するポリマーの多くは、ある環境下で特性が経時的に低下してしまうことがあり、ポリマーの耐用寿命を延ばすことが要望されている。
【特許文献1】米国特許第3375228号明細書
【特許文献2】米国特許第4048143号明細書
【特許文献3】米国特許第4760118号明細書
【特許文献4】米国特許第4254775号明細書
【特許文献5】米国特許第5258455号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のニーズは、芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)と、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分とを含むポリ(アリーレンエーテル)組成物によって満足される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)組成物の製造方法は、芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)と、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分とをブレンドすることを含む。
【0005】
別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)組成物の製造方法は、ポリ(アリーレンエーテル)を、サリチル酸エステル、アントラニル酸エステル及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の封鎖剤と共に、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分と溶融ブレンドすることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
熱酸化安定性に優れたポリ(アリーレンエーテル)組成物は、芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)と、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分とを含む。ヒドロキシル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)を含有するポリ(アリーレンエーテル)組成物に比して、本ポリ(アリーレンエーテル)組成物は熱酸化安定性が改善され、高温での耐用寿命が長い。理論に束縛されるものではないが、ポリ(アリーレンエーテル)の熱酸化安定性は、ポリマー末端基の種類と関係するものと考えられる。末端がヒドロキシル基であるポリ(アリーレンエーテル)鎖は、約100℃を超える温度に長時間(約60000時間)曝露されると、十分な反応性を示して酸化する。したがって、ヒドロキシル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)はガラス転移温度(Tg)が215℃であるにもかかわらず、相対温度指数(RTI)(Underwriters Laboratoriesで評価される)は100℃である。さらに、低分子量のポリ(アリーレンエーテル)は、ヒドロキシル末端基の存在量が多いため、高分子量のポリ(アリーレンエーテル)よりも熱酸化安定性に劣る。対照的に、芳香族エステルのような反応性の低い基で封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、末端基の反応性が低く、耐酸化性をもつので、ヒドロキシル末端のポリ(アリーレンエーテル)よりも熱酸化安定性に優れる。
【0007】
ポリ(アリーレンエーテル)という用語には、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)コポリマー、グラフトコポリマー、ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー、アルケニル芳香族化合物とビニル芳香族化合物とポリ(アリーレンエーテル)のブロックコポリマーなど、並びにこれらの1種以上を含む組合せが包含される。ポリ(アリーレンエーテル)自体は次の式(I)の構造単位を複数含んでなる公知のポリマーである。
【0008】
【化1】

式中、各構造単位において、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、或いはハロゲン原子と酸素原子の間に2以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシなどであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ、ハロゲン原子と酸素原子の間に2以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシなどである。好ましくは、各Qはアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qは水素である。
【0009】
ホモポリマー及びコポリマーのポリ(アリーレンエーテル)が共に包含される。好ましいホモポリマーは2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものである。適当なコポリマーには、かかる単位を例えば2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むランダムコポリマー或いは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合で得られるコポリマーがある。また、ビニルモノマー又はポリスチレンのようなポリマーをグラフトして得られる部分を含むポリ(アリーレンエーテル)、並びに低分子量ポリカーボネートやキノンや複素環式化合物やホルマールのようなカップリング剤を公知の方法で2本のポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と反応させてさらに高分子量のポリマーとしたカップリング化ポリ(アリーレンエーテル)も挙げられる。ポリ(アリーレンエーテル)には、これらの1種以上を含む組合せも包含される。
【0010】
ポリ(アリーレンエーテル)は通例2,6−キシレノールや2,3,6−トリメチルフェノールのような1種類以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造される。かかる酸化カップリングには概して触媒系が用いられるが、触媒系は通例、銅、マンガン又はコバルト化合物のような1種類以上の重金属化合物を通常はその他様々な物質と共に含んでいる。
【0011】
一実施形態では、モノヒドロキシ芳香族化合物は、純度約99重量%超、好ましくは約99.67重量%超、さらに好ましくは約99.83重量%超の2,6−ジメチルフェノールである。さらに、2,6−ジメチルフェノールに含まれるフェノールは好ましくは約0.004重量%未満、さらに好ましくは約0.003重量%未満である。2,6−ジメチルフェノールに含まれるクレゾールは好ましくは約0.12重量%未満、さらに好ましくは約0.087重量%未満である。クレゾールとしては、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール及びこれらのクレゾールの1種以上を含む組合せが挙げられる。2,6−ジメチルフェノールは約0.107重量%未満、好ましくは約0.084重量%未満の他のモノ−、ジ−及び/又はトリ−アルキルフェノールを含んでいてもよい。他のモノ−、ジ−及び/又はトリ−アルキルフェノールとしては、2,3,6−トリメチルフェノール、2,6−エチルメチルフェノール、2−エチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、並びにこれらの1種以上を含む組合せが挙げられる。最終的に、2,6−ジメチルフェノールは、2,6−ジメチルフェノール以外のジメチルフェノールを好ましくは約0.072重量%未満、さらに好ましくは約0.055重量%未満しか含まない。他のジメチルフェノールとしては、2,4−ジメチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール又はこれらのジメチルフェノールの1種以上を含む組合せがある。2,6−ジメチルフェノールモノマー中のフェノール、クレゾール、他のジメチルフェノール並びにモノ−、ジ−及び/又はトリ−アルキルフェノールの量を最小限にすると、不都合な枝分れ反応又は連鎖停止反応が低減し、得られるポリ(アリーレンエーテル)物性の完全性が保たれると思料される。
【0012】
ポリ(アリーレンエーテル)は溶液中又は溶融状態で封鎖できる。溶液封鎖法は、米国特許第3375228号及び同4048143号に記載されており、概して、ポリ(アリーレンエーテル)を溶媒に溶解させる段階と、溶解したポリ(アリーレンエーテル)を封鎖剤と反応させて封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を形成する段階と、溶媒を除去する段階とを含む。ただし、溶液法は、ポリマー主鎖の転位によって追加のヒドロキシル末端基を生じさせる。
【0013】
溶融封鎖法は米国特許第4760118号に記載されている。ポリ(アリーレンエーテル)を溶融状態で芳香族エステル又は芳香族エステル混合物と反応させる。この反応でポリ(アリーレンエーテル)末端ヒドロキシル基は芳香族エステルに転化される。本明細書では芳香族エステルとは、飽和及び不飽和芳香族エステルを包含するものとして定義され、置換芳香族エステルの置換基は封鎖反応に影響を与えず、熱酸化に安定である。好ましい封鎖剤としては、サリチル酸、アントラニル酸、並びにそれらの誘導体、例えばモノマー又はポリマー形態のエステルなどが挙げられる。本明細書では、「サリチル酸エステル」という用語には、カルボキシ基、ヒドロキシ基の一方又は両方がエステル化された化合物を包含する。
【0014】
大抵、ポリ(アリーレンエーテル)のヒドロキシル末端基がすべて封鎖されているのが望ましい。ただし、ヒドロキシル末端基の一部が封鎖されていないポリ(アリーレンエーテル)を使用することも可能である。未封鎖ヒドロキシル末端基の量は、末端基の総モル数を基準にして約20モル%以下、好ましくは約10モル%以下、さらに好ましくは約2モル%以下である。
【0015】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、一般に約2500〜約40000原子質量単位(amu)の数平均分子量及び約20000〜約80000amuの重量平均分子量を有する。ポリ(アリーレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定して、一般に約0.10〜約0.60dl/g、好ましくは約0.29〜約0.48dl/gの固有粘度を有する。固有粘度の高いポリ(アリーレンエーテル)と固有粘度の低いポリ(アリーレンエーテル)を組合せて使用することも可能である。2つの固有粘度を用いるときの正確な比率の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的物性にある程度依存する。
【0016】
本組成物は約5重量%〜約95重量%の量のポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、組成物は約10重量%以上、好ましくは約15重量%以上のポリ(アリーレンエーテル)を含む。同じくこの範囲内で、組成物は、組成物の総重量を基準にして約90重量%以下、好ましくは約85重量%以下、最も好ましくは約80重量%以下のポリ(アリーレンエーテル)を含む。
【0017】
耐衝撃性改良剤としては、ブロックコポリマー、例えば、1又は2つのアルケニル芳香族ブロックA(通例スチレンブロックである)とゴムブロックB(通例イソプレン又はブタジエンブロックである)とを有するA−B型ジブロックコポリマー及びA−B−A型トリブロックコポリマーが挙げられる。ブタジエンブロックは好ましくは部分的に水素化されている。これらのジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーの混合物が特に有用である。
【0018】
好適なA−B型コポリマー及びA−B−A型コポリマーとしては、特に限定されないが、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)、並びにこれらを選択的に水素化したものなどが挙げられる。上記ブロックコポリマーの混合物も有用である。かかるA−B型ブロックコポリマー及びA−B−A型ブロックコポリマーは数多くの供給元から市販されており、例えばPhillips Petroleum社からSOLPRENEという商品名、Shell Chemical社からKRATONという商品名、Dexco社からVECTORという商品名、又はクラレ(株)からSEPTONという商品名で市販されているものがある。
【0019】
SBSのような完全に不飽和コポリマーを用いる場合、不飽和結合の大部分の酸化を防止するのに十分な量の酸化防止剤を使用することが好ましい。別法として、SEBSのような部分的又は完全に水素化された耐衝撃性改良剤を使用することができる。エチレンとC〜C10モノオレフィンと非共役ジエンのコポリマー(本明細書ではEPDMコポリマーという)も適している。EPDMコポリマーに適したC〜C10モノオレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセンが挙げられる。好適なジエンとしては、1,4−ヘキサジエン及び単環式及び多環式ジエンが挙げられる。エチレンと他のC〜C10モノオレフィン単量体とのモル比は95:5〜5:95であればよく、ジエン単位は0.1〜10モル%の量で存在する。EDPMコポリマーは、米国特許第5258455号に開示されている通りポリ(アリーレンエーテル)にグラフトさせるためアシル基又は求電子基で官能化してもよい。
【0020】
耐衝撃性改良剤の有用な量は約20重量%以下であり、好ましくは約4重量%〜約15重量%、特に好ましくは約8重量%〜約12重量%である。重量割合は組成物の全重量を基準にしたものである。
【0021】
本発明で使用するアルケニル芳香族ポリマーは、アルケニル芳香族モノマーのホモポリマーであり、アルケニル芳香族モノマーは次式のものである。
【0022】
【化2】

式中、Rは水素、低級アルキル又はハロゲンであり、Zはビニル、ハロゲン又は低級アルキルであり、pは0〜5である。好ましいアルケニル芳香族モノマーとしては、スチレン、クロロスチレン及びビニルトルエンが挙げられる。特に好ましいアルケニル芳香族モノマーのホモポリマーはスチレンから得られるホモポリマー(ホモポリスチレン)である。ホモポリスチレンは好ましくはその重量の99%以上、さらに好ましくはその重量の100%がスチレンからなる。
【0023】
特に好ましいホモポリスチレンとしては、アタクチックホモポリスチレン及びシンジオタクチックホモポリスチレンが挙げられる。好適なアタクチックホモポリスチレンは市販されており、例えばChevron社のEB3300及びBASF社のP1800が挙げられる。好適なシンジオタクチックホモポリスチレンは、Dow Chemical社及び出光興産(株)から市販されている。
【0024】
本組成物は、アルケニル芳香族ポリマーを組成物の総重量を基準にして約1〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約70重量%の量で含む。
【0025】
ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、上記アルケニル芳香族モノマーの1種以上から得られるポリマーを含んでおり、さらにブレンド及び/又はグラフトの形態のゴム改質剤を含む。ゴム改質剤は、ブタジエン又はイソプレンのような1種以上のC〜C10非芳香族ジインモノマーの重合生成物でもよい。ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、ポリ(アルケニル芳香族)樹脂約98重量%〜約70重量%とゴム改質剤約2重量%〜約30重量%、好ましくはポリ(アルケニル芳香族)樹脂約88重量%〜約94重量%とゴム改質剤約6重量%〜約12重量%を含む。
【0026】
特に好ましいゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂としては、約88重量%〜約94重量%のスチレンと約6〜約12重量%のブタジエンを含むスチレン−ブタジエンコポリマーが挙げられる。耐衝撃性ポリスチレンとしても知られるこれらのスチレン−ブタジエンコポリマーは市販されており、例えばGeneral Electric社のGEH1897、Chevron Chemical社のBA5350が挙げられる。
【0027】
本組成物はゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂を、組成物の総重量を基準にして約1重量%〜約80重量%、好ましくは約20〜約70重量%の量で含む。ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂を使用する場合、ゴム改質剤の酸化を防止するのに十分な量の酸化防止剤も使用すべきである。
【0028】
ガラス繊維は、当業者に周知の繊維化可能なタイプのガラス組成から形成することができ、例えば「Eガラス」「Aガラス」「Cガラス」「Dガラス」「Rガラス」「Sガラス」として周知の繊維化可能なガラス組成、並びにフッ素フリー及び/又はホウ素フリーのEガラス誘導体から製造されたものが挙げられる。かかる組成及びガラスフィラメントの製造方法は当業者に周知であり、これ以上詳細な説明を要しない。
【0029】
工業的に製造されるガラス繊維は一般に約4.0〜約35.0μmの公称フィラメント径を有する。最も一般的に製造されるEガラス繊維は約9.0〜約30.0μmの公称フィラメント径を有する。ガラス繊維はサイジング処理しても、しなくてもよい。サイジング処理したガラス繊維は通常、熱可塑性ポリマーマトリックス材料との相溶性の面で選択されたサイジング組成物でその表面が少なくとも部分的にコーティングされている。サイジング組成物は、繊維ストランドでのマトリックス材料のウェットアウト及びウェットスルーを容易にし、複合材で所望の物性を得るのに役立つ。繊維長に特に制限はないが、好ましい繊維は長さ約6mm未満である。
【0030】
本組成物はガラス繊維を約1重量%〜約60重量%の量で含んでいてもよい。この範囲内で、組成物は約5重量%以上、好ましくは約10重量%以上のガラス繊維を含んでいてもよい。同じくこの範囲内で、組成物は組成物の総重量を基準にして約50重量%以下、好ましくは約40重量%以下、最も好ましくは約30重量%以下のガラス繊維を含んでいてもよい。
【0031】
難燃剤としては、有機ホスフェート、ホウ酸亜鉛と水酸化マグネシウムとの組合せ、リン酸ホウ素とアミン官能化シリコーン流体との組合せ及び融点約300℃〜約650℃の低融点ガラスが挙げられる。有機ホスフェートは好ましくは次式の芳香族ホスフェート化合物である。
【0032】
【化3】

式中、Rは同一又は異なるもので、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキル置換アリール、ハロゲン置換アリール、アリール置換アルキル、ハロゲン又はこれらいずれかの組合せであるが、1以上のRがアリールであることを条件とする。
【0033】
具体例としては、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5′−トリメチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5′−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。好ましいホスフェートは各Rがアリールであるものである。特に好ましいものは、置換又は非置換型のトリフェニルホスフェート、例えばイソプロピル化トリフェニルホスフェートである。
【0034】
或いは、有機ホスフェートは以下の式(X)、(XI)又は(XII)の二官能性若しくは多官能性化合物又はポリマーであってもよく、これらの混合物も包含される。
【0035】
【化4】

式中、R、R及びRは独立に炭化水素であり、R、R、R及びRは独立に炭化水素又は炭化水素オキシであり、X、X及びXはハロゲンであり、m及びrは0又は1〜4であり、n及びhは1〜30である。
【0036】
具体例としては、レゾルシノール、ヒドロキノン及びビスフェノール−Aの各ビスジフェニルホスフェート又はその対応ポリマーが挙げられる。
【0037】
或いは、Axelrodの米国特許第4254775号に記載されているような、ある種の環状ホスフェート、例えばジフェニルペンタエリスリトールジホスフェートの使用も開発されている。
【0038】
リン−窒素結合を含む化合物も本発明の難燃添加剤として好適であり、例えば窒化塩化リン、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシド又はテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリドが挙げられる。これらの難燃添加物は市販されている。
【0039】
好ましいホスフェート系難燃剤としては、レゾルシノール系難燃剤、例えばレゾルシノールテトラフェニルジホスフェート、及びビスフェノール系難燃剤、例えばビスフェノールAテトラフェニルジホスフェートが挙げられる。置換フェニル基を含むホスフェートも好ましい。特に好ましい実施形態では、有機ホスフェートはブチル化トリフェニルホスフェートエステル、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート、ビスフェノールAテトラフェニルジホスフェート及びこれらの1種以上を含む混合物からなる群から選択される。
【0040】
本組成物は難燃剤を約2重量%〜約40重量%の量で含んでいてもよい。この範囲内で、組成物は約5重量%以上、好ましくは約8重量%以上の難燃剤を含んでいてもよい。同じくこの範囲内で、組成物は組成物の総重量を基準にして約30重量%未満、好ましくは約20重量%以下の難燃剤を含んでいてもよい。
【0041】
本組成物は、酸化防止剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定剤、クレー、雲母及びタルクのような無機小粒子、帯電防止剤、可塑剤、滑剤並びにこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の添加剤を有効量含んでいてもよい。これらの添加剤は、それらの有効量及び配合法と併せて当技術分野で周知である。添加剤の有効量は広範に変更し得るが、通例、全組成物重量を基準にして最大約50重量%もしくはそれ以上の量で存在する。特に好ましい添加剤としてはヒンダードフェノール、チオ化合物及び各種脂肪酸由来のアミドが挙げられる。これらの添加剤の好ましい量は概して組成物の全重量を基準にして合計約2%以下である。
【0042】
本発明の組成物の成分は、均質ブレンドの形成に適した条件下でブレンドされる。成分は通例メルト中、好ましくは押出機で通常約255℃以上の温度でブレンドされる。本組成物は、芳香族エステルで封鎖されたポリ(アリーレンエーテル)の使用、又は組成物を形成する際にポリ(アリーレンエーテル)を封鎖することによって製造することができる。既に封鎖されたポリ(アリーレンエーテル)を他の成分とブレンドする場合、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と他の成分は、均質ブレンドを生じる条件下、通例押出機その他の高剪断混合装置でブレンドする。ある実施形態では、特に組成物を成形して成形品とする場合、封鎖剤は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と共に高剪断混合装置に加えられる。組成物を製造しながらポリ(アリーレンエーテル)を封鎖する場合、ポリ(アリーレンエーテル)と封鎖剤とその他の成分を、メルト中で封鎖剤がポリ(アリーレンエーテル)と反応するのに十分な時間、典型的には押出機その他の高剪断混合装置でブレンドする。ある実施形態では、封鎖剤は、ポリ(アリーレンエーテル)を高剪断混合装置に加えた後に(下流で)添加するのが好ましい。ある実施形態、特に組成物を成形品に成形する場合、過剰の封鎖剤を添加する。
【0043】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0044】
以下の実施例では、表1に示す材料を用いた。
【0045】
【表1】

実施例1〜16
成分を表2に示す量で二軸押出機でブレンドした。量は樹脂全体100重量部当たりの部で表す。得られた組成物をASTM引張試験片に成形し、ASTMD638に準拠して破断点引張り強さを試験した。各組成物を、非老化試料(室温で保存したもの)及び表2に示す温度で500時間老化した試料について試験した。結果を表2にMPa単位で示す。
【0046】
【表2】

比較例の非老化試料の降伏強さ及び熱老化試料の降伏強さと実施例との対比から明らかな通り、芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)を用いると、実施例8のようにゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂を配合した組成物を除いて、熱老化後の降伏強さが格段に向上する。芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)とゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有する組成物は熱老化での降伏強さを維持するため酸化防止剤が必要とされる。
【0047】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱することなく、様々な変更及び置換をなすことができる。よって、以上の説明は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものではない。引用した米国特許の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)と、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分とを含んでなるポリ(アリーレンエーテル)組成物。
【請求項2】
ポリ(アリーレンエーテル)組成物の製造方法であって、芳香族エステル末端基を有するポリ(アリーレンエーテル)と、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分とを含む混合物をブレンドすることを含んでなる方法。
【請求項3】
ポリ(アリーレンエーテル)組成物の製造方法であって、ポリ(アリーレンエーテル)を、サリチル酸エステル、アントラニル酸エステル及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の封鎖剤と共に、耐衝撃性改良剤、アルケニル芳香族ポリマー、ゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、補強用充填材、難燃剤及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される成分と溶融ブレンドすることを含んでなる方法。
【請求項4】
前記封鎖剤をポリ(アリーレンエーテル)の下流で加える、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が封鎖剤をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
耐衝撃性改良剤が少なくとも部分的に水素化されている、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【請求項7】
耐衝撃性改良剤が不飽和ブロックコポリマーであり、組成物がさらに酸化防止剤を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【請求項8】
成分がアルケニル芳香族ポリマーと水素化耐衝撃性改良剤の組合せである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【請求項9】
補強用充填材がガラス繊維である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【請求項10】
成分がゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂であり、組成物がさらに酸化防止剤を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物又は方法。

【公表番号】特表2007−508422(P2007−508422A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534309(P2006−534309)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/032998
【国際公開番号】WO2005/037922
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】