説明

ポリ(エステルアミド)ポリマーブレンド

ポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマーブレンド及びPEAポリマーブレンドを含む高分子コーティングが提供される。PEAポリマーブレンドはポリ(エステルアミドベンジルエステル)(PEA−Bz)のTgもしくはポリ(エステルアミドTEMPO)のTgより高いTgを有する。PEAポリマーブレンドは埋め込み型用具のコーティングを形成することが可能であり、その一例はステントである。コーティングは任意で生体有益性材料及び/もしくは任意で生体活性薬剤と共に含み得る。埋め込み型用具は、アテローム性硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開または穿孔、動脈瘤、脆弱プラーク、慢性全閉塞、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組み合わせ等の疾患の治療や予防のために使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、例えば薬剤送達ステント等のような埋め込み型用具のコーティングに有用なポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマーブレンドもしくは低いガラス転移温度(Tg)を有する共重合体及び高いTgを有するPEAポリマー又は共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エステルアミド)ポリマーは、比較的低いガラス転移温度を有することで知られる。例えば、{[N,N’−セバコイルービスー(Lロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]/[N,N’−セバコイルーLリシンベンジルエステル]}共重合体(PEA−Bz)及び{[N,N’−セバコイルービスー(Lロイシン)−1,6−へキシレンジエステル]/[N,N’−セバコイルーLリシン4−アミノーTEMPOアミド]}共重合体(PEA−TEMPO)はそれぞれ約23℃と33℃のTgを有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低いTgに関連した問題は、低いTgにより薬剤放出速度制御の低下、ポリマー劣化速度の上昇、保存安定性の低下、及び系の機械的破損の潜在的上昇が顕著化することである。Tgの低い材料は、通常高い薬剤浸透性を有し、薬剤の放出速度を制御するためにはより多くの量のポリマーの使用が要求される。さらに、低いTgは薬剤がコーティング中に拡散することを可能にする。つまり、所与のコーティングにおける薬剤の分布は平衡状態に達するまで径時変化し得、結果として放出速度が変化する。また、Tgの低い材料は軟らかい傾向があり、バルーンに対してより高い密着性を有し、圧着や拡張などの機械的作用においてより破損し易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、これらの問題を解決する方法を提供する。
【0005】
本願において、Tgの低いポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマー又はコポリマーと、Tgの高いPEAポリマー又はコポリマーとのポリマーブレンドが提供される。ここで提供されるポリマーブレンドは安定性、薬剤放出速度、及び機械的特性が向上したコーティングを形成することが可能である。ポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの実効Tgが上昇するにつれてポリマーブレンドの劣化速度が低下するという点に基づいて、異なるポリマー劣化速度を有するように微調整することが可能である。
【0006】
PEAポリマーブレンドは、PEA−BzのTgと同じもしくはこれ以上の実効Tgを有する。いくつかの実施形態において、PEAポリマーブレンドは23℃以上の実効Tgを有する。ここに開示されるPEAポリマーブレンドは埋め込み型用具をコートしたり埋め込み型用具そのものを形成したりするのに使用することが可能であり、この一例はステントである。いくつかの実施形態においては、PEAポリマーブレンドは必要に応じて生体有益性材料及び/もしくは必要に応じて生体活性な薬剤とともに埋め込み型用具をコートするのに使用することが可能である。他のいくつかの実施形態においては、PEAポリマーブレンドは生体分解性、生体吸収性、非分解性、非生体吸収性であり得る一つ以上の生体適合性ポリマーと共に使用することが可能である。
【0007】
埋め込み型用具は金属製、生体分解性、もしくは非分解性のステントであり得る。ステントは、神経血管、頚動脈、冠状動脈、肺、大動脈、腎臓、胆管、腸骨、大腿、膝窩、もしくは他の抹消脈官構造を対象としたものであり得る。ステントは、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、大量出血、血管の解剖もしくは何穿孔、動脈瘤、脆弱プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈や人工移植の接合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、及びこれらの組み合わせ等の疾病の治療もしくは予防に使用することが可能である。
【0008】
本願において、Tgの低いポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマー又はコポリマーと、Tgの高いPEAポリマー又はコポリマーとのポリマーブレンドが提供される。ここで提供されるポリマーブレンドは安定性、薬剤放出速度、及び機械的特性が向上したコーティングを形成することが可能である。ポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの実効Tgが上昇するにつれてポリマーブレンドの劣化速度が低下するという点に基づいて、異なるポリマー劣化速度を有するように微調整することが可能である。
【0009】
ここで使用されるTgは、一般に大気圧においてポリマーの非晶質領域が硬くて脆いガラス質状態からプラスチック状態へ変化する温度を指す。つまり、Tgはポリマー鎖のセグメント運動が開始される温度に対応し、ポリマーの熱容量対温度のグラフにおいて認識可能である。非晶質もしくは半結晶質ポリマーが加熱されると、膨張係数と熱容量の両方が温度の上昇に伴って増大し、分子運動の増大を示唆する。温度が上昇する一方、サンプルの実際の分子体積は一定に保たれる。従って、より高い膨張係数は系における自由体積の増加と分子の運動の自由度の増加を示すものである。「低いTg」という表現はTgの低い材料のTg(一般に約30℃未満)を指し、例えば、PEA−BzのTgである。PEA−Bzは以下の構造を有し、m及びnはそれぞれ別の整数であり、例えば1〜100000の範囲にある。
【化1】

【0010】
ブレンドを形成するPEAポリマーは実質的に互いに相溶性であり、一つのポリマーは他のポリマーに対して少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、もしくは少なくとも約99重量%の溶解性を有し、またこの逆の溶解関係を有する。いくつかの実施形態において、ブレンドを形成するPEAポリマーは実質的に熱力学的に混和性であり、例えば、ブレンドを形成するPEAポリマーはミクロ領域に相分離することはない。他のいくつかの実施形態においては、ブレンドを形成するPEAポリマーは機械的に親和性である。機械的に親和性であるブレンドは、比較的均質で均一なミクロ相分離の結果として、ブレンドの機械的物性がそのブレンドを形成する個別の成分と比較したときに劣化したり向上したりしない複合系である。これに対し、機械的に非親和性であるブレンドは、全体の相分離の結果として個別の成分と比較して劣化した機械的物性を有する。機械的に非親和性であるブレンドは、概して低い伸び率と脆性破壊を示す。
【0011】
PEAポリマーブレンドはPEA−BzのTgと同じもしくはこれ以上の実効Tgを有する。ここで使用されるように、「実効Tg」という表現は、異なるTgを有する材料のブレンドのTgを指す。いくつかの実施形態においては、PEAポリマーブレンドは23℃もしくはこれ以上の実効Tgを有する。しかしながら、実効Tgを高くしすぎると、機械的整合性の損失をもたらし、潜在的に薬剤放出速度が低くなりすぎるであろう。PEAポリマーブレンドの実効Tgの好ましい範囲は、例えば、約23℃から約75℃の範囲にある。熱力学的に親和性であるポリマーブレンドの実行Tgは次式:1/Tgmix=W/Tg+W/Tgにより求められ、ここで、Tgmixはブレンドのガラス転移温度であり、W、Tg、W、及びTgは各成分の重量分率とガラス転移温度である。2つより多い成分については、この式は次のように一般化できる:1/Tgmix=ΣWTgここで、Σはi成分の総和を表す。もしくは、上記式は次のようによく表される:Tgmix=ΦTg+ΦTgここで、Φは各成分の体積分率を表す。
【0012】
ここに開示されるPEAポリマーブレンドは埋め込み型用具をコートしたり埋め込み型用具そのものを形成したりするのに使用することが可能であり、この一例はステントである。いくつかの実施形態においては、PEAポリマーブレンドは必要に応じて生体有益性材料及び/もしくは必要に応じて生体活性な薬剤とともに埋め込み型用具をコートするのに使用することが可能である。他のいくつかの実施形態においては、PEAポリマーブレンドは生体分解性、生体吸収性、非分解性、非生体吸収性であり得る一つ以上の生体適合性ポリマーと共に使用することが可能である。
【0013】
埋め込み型用具は金属製、生体分解性、もしくは非分解性であり得る。ステントは、神経血管、頚動脈、冠状動脈、肺、大動脈、腎臓、胆管、腸骨、大腿、膝窩、もしくは他の抹消脈官構造を対象としたものであり得る。ステントは、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、大量出血、血管の解剖もしくは何穿孔、動脈瘤、脆弱プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈や人工移植の接合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、及びこれらの組み合わせ等の疾病の治療もしくは予防に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマーの改良
いくつかの実施形態においては、低いTgを有する骨格に少なくとも一つのエステル基と少なくとも一つのアミド基を有するPEAポリマーを改良することによって高いTgを有するPEAポリマーを形成することが可能である。あるある実施形態においては、低いTgのポリマーは次の三つの構成ブロックを有するPEAであり得る:アミノ酸、ジオール、及び2価酸。2価酸は、好ましくはC2〜C12の2価酸であり、脂肪族であっても不飽和結合を有していてもよい。アミノ酸は、例えば、グリシン、バリン、アラニン、、プロリン、ブルタミン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、もしくはフェニルアラニンであり得る。任意の第二のアミノ酸は、例えば、リシン、チロシン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、もしくはシステインであり得る。第二のアミノ酸は、薬理学的に活性な化合物や物性調節剤の結合可能にするための側鎖を含み得る。あらゆる熱力学的物性を有するPEAポリマーを、合成においてこれらの成分を調節することによって容易に調整され得る。
【0015】
一般的に、ジオールもしくは2価酸の構成骨格のポリメチレン鎖の長さを短くすると、Tgが上昇する。旋光性を有するアミノ酸(例えばL体)によるPEAポリマーは対応するラセミ体のアミノ酸(例えばD,L体)によるPEAポリマーより高いTgを有する。対称形の側鎖を有する光学活性L−アミノ酸(例えば、バリン、ロイシン、フェニルアラニン)から合成されたPEAポリマーは、非対称形の側鎖を有するL−アミノ酸(例えば、イソロイシン)から合成されたものより高いTgを有する。芳香族置換基を有するアミノ酸(例えばファニルアラニン)は高いTgを有する傾向がある。
【0016】
ある実施形態においては、低いTgを有するPEAポリマーはPEA−Bzであり得る。PEA−BzはポリマーのTgを上昇させるために側鎖もしくは子アックを置換するように改良することが可能である。Tgを上昇させるためのPEA−Bzの改良方針の幾つかが以下に説明される。
【0017】
(1)PEA−Bzにおいて、リシンの側鎖と結合するベンジルエステルをTEMPOで置換すると、結果として得られるPEAポリマーであるPEA−TEMPOはのTgは10℃上昇する。PEA−TEMPOは以下の構造を有する。
【化2】

【0018】
(2)任意の第二のアミノ酸(リシン)をPEA−Bz(Tg=23℃)から除き、下記を形成すると、ポリマーのTgを14℃上昇させる。
【化3】

【0019】
(3)ジオールもしくは2価酸のポリメチレン鎖の長さを短くするとTgはさらに上昇する。例えば、式3のPEAのセバシネートをアジペートで置換することにより38℃のTgを有するPEAポリマー(式4A)を形成することが可能であり、式3のヘキサンジオールをブタンジオールで置換することにより47℃のTgを有するPEAポリマー(式4B)を形成することが可能であり、式3のシバシネートとヘキサンジオールの両方をそれぞれアジペートとブタンジオールで置換することにより45℃のTgを有するPEAポリマーを形成することが可能である。
【化4】

【0020】
(4)対称形の側鎖を有する光学活性なアミノ酸、例えばL−体、による効果は、予想通りにより高いTgを有するポリマーをもたらすが、ジオール及び/もしくは2価酸のポリメチレン鎖の長さに依存する。鎖長の長いジオールや2価酸では、改良されたPEAポリマーのTgは改良されていないPEAポリマーのそれに近い。例えば、式3のL−ロイシンをL−バリンで置換することによって33℃のTgを有する式5AのPEAが得られ、もしくは、L−フェニルアラニンで置換することによって35℃のTgを有する式5BのPEAが得られる。
【化5】

【0021】
より短鎖のジオール及び/もしくは2価酸においては、より広いTgの変化が得られる。例えば、式4CのPEAを指揮中のL−ロイシンをL−バリンもしくはL−フェニルアラニンで置換することによりそれぞれ58℃および59℃のTgを有する式5C及び式5DのPEAが得られる。さらに、フェニルアラニンを基にしたPEAは半結晶質であり、104℃の融点(Tm)を有する。
【化6】

【0022】
別の実施形態においては、高いTgを有するPEAポリマーは式1もしくは式2のリシン部位を保持し、より鎖長の短い2価酸及び/もしくはジオールを使用することが可能である。このようなPEAポリマーの例を幾つか書きに示す。
【化7】

【0023】
第一のアミノ酸及び任意の第二のアミノ酸を有するPEAポリマーは、二つのアミノ酸について異なる含有比を持つことが可能であり、例えば、1/99から始まる比率を有し、この逆も可能である。例えば、式1、2、及び6A〜GのPEAポリマー中のリシンとロイシンのアミノ酸比は、1/99から99/1の範囲であり得、例えば、1/9、1/4、3/7、2/3、1/1、3/2、7/3、4/1、もしくは9/1であり得る。第一及び第二のアミノ酸はいかなる天然のアミノ酸もしくは非天然のアミノ酸であり得る。代表的なアミノ酸としては、例えば、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン酸、アラニン、リシン、チロシン、メチオニン、アスパラギン酸、アルギニン、セリン、システイン、アスパラギン、プロリン、トリプトファン、ヒスチジン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な非天然アミノ酸としては、2−シクロヒキシルグリシン、2−アミノー3,3−ジメチルブタン酸、2−フェニルグリシン、6−アミノカプロン酸、4−アミノブタン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノブタン酸、3−アミノー3−フェニルプロピオン酸、オヨビ1−アゼチジンー3−カルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。非天然アミノ酸の一覧は、ミズーリ州、セントルイスのシグマアルドリッチコーポレイションから発行されているケムファイル、非天然アミノ酸第2巻4号及びケムファイル、非天然アミノ酸第1巻5号に記載されている。
【0024】
さらなる実施形態においては、式1もしくは2のPEAポリマーはベンジルエステルやTEMPO以外の気をリシン部位に結合させる改良を行うことによりポリマーのTgを上昇させることが可能である。例えば、ベンジルアルコールの代わりにメタノール、エタノール、もしくはプロパノール等の短鎖のアルコールを使用すると、次式のPEAポリマーが得られる。
【化8】

一般的に、ベンジルエステルより小さな部位もしくは基がリシン部位に結合されると、結果として得られるPEAポリマーはPEA−Bzより高いTgを有する。従って、Rがメチル、エチル、もしくはプロピルである式7のポリマーは、PEA−Bzより高いTgを有することが予測される。
【0025】
ここに開示されるPEAポリマーは、特に、ジアミノサブユニット及びジカルボン酸を用いた縮合重合により得られる。これらのPEAの調整の一例が反応式1に示される。ここで、ジカルボン酸は活性なジーp−ニトロフェニル誘導体に変換されている。
【化9】

【0026】
PEAポリマーブレンド
いくつかの実施形態において、高いTgを有するPEAポリマーはPEA−BzもしくはPEA−TEMPOとブレンドすることが可能である。ある実施形態においては、高いTgを有するPEAポリマーはリシン部位を有さない。PEA−BzもしくはPEA−TEMPO中のリシン部位の側鎖は他の部位もしくは活性薬剤に結合もしくは取り付けることが可能である。
【0027】
別の実施形態においては、PEAブレンドはある一つのリシン対ロイシンの比を有するPEA−BzもしくはPEA−TEMPOと、異なるリシン対ロイシンの比を有する第二のPEA−BzもしくはPEA−TEMPOとのブレンドであり得る。一例としては、ロイシン部位対リシン部位の比が3/1であるPEA−BzもしくはPEA−TEMPOと、ロイシン部位対リシン部位がより高い比であるPEA−BzもしくはPEA−TEMPOとから得られるブレンドが挙げられる。
【0028】
さらに別の実施形態においては、PEAブレンドはロイシン部位リシン部位の比が3/1であり、ベンジルアルコールもしくはTEMPO以外の部位がリシンと結合しているPEAと、式1もしくは2のPEAとのブレンドであり得る。
【0029】
上記に規定したPEAポリマーブレンドはさらに、下記に規定されるような、PEAポリマーではない生体適合性ポリマーを一つ以上含み得る。
【0030】
別のいくつかの実施形態においては、改良されたPEAポリマー及び/もしくはPEA−BzまたはPEA−TEMPOはPEAポリマーではない一つ以上の生体適合性ポリマーとブレンドすることが可能である。上記に述べたように、TgをPEA−BzもしくはPEA−TEMPOのTgより高くすることが望ましいため、生体適合性ポリマーをPEA−Bz及び/もしくはPEA−TEMPOとブレンドする際には、生体適合性ポリマーはPEA−BzもしくはPEA−TEMPOより高いTgを有する必要があり、前述したように、PEA−Bz及び/もしくはPEA−TEMPOと実質的に混和性である必要がある。
【0031】
生体適合性ポリマー
ここに規定されるPEAポリマーブレンドを形成するのに役立つ生体適合性ポリマーは、本技術分野において既知であるいかなる生体適合性ポリマーであってもよく、生体分解性であっても非分解性であっても良い。
【0032】
生体適合性発明の代表的な例としては、エチレンビニルアルコール共重合体(一般名EVOHもしくは商品名EVALで広く知られる)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポりカプロラクトン、(ラクチド/グリコライド)共重合体、ポリ(ヒドロキシブチレート)、(ヒドロキシブチレート/バレレート)共重合体、ポリジオキサノン、(グリコール酸/トリメチレンカーボネート)共重合体、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、シリコン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンとエチレンーアルファオレフィンの共重合体、アクリル系ポリマーの共重合体、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーの共重合体、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、例えば、Solef(登録商標)やKynar(登録商標)の商品名を有するフッ化ビニリデン系のホモポリマーや共重合体などのポリハロゲン化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又は(ビニリデン/ヒキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF−coーHFP)およびポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、ポリビニルアセテートなどのポリビニルエステル、エチレン/メチルメタクリレート共重合体などのビニルモノマー同士やオレフィンとの共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ABS樹脂、エチレン/ビニルアセテート共重合体、ナイロン66やポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(グリセリルセバケート)、ポリ(プロピレンフマレート)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨントリアセテート、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、これらのポリマーとポリ(エチレングリコール)(PEG)との共重合体、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態においては、生体適合性ポリマーとしてはポリ(オルソエステル)、ポリ(無水物)、ポリ(D,L―乳酸)、ポリ(L―乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)とグリコール酸との共重合体、ポリ(L―ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、(D,L−ラクチド/グリコリド)共重合体、(L−ラクチド/グリコリド)共重合体、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(チロシン由来カーボネート)、これらのポリマーとポリ(エチレングリコール)との共重合体、もしくはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
別のいくつかの実施形態においては、生体適合性ポリマーは上記に記載されているいかなる一つもしくはこれ以上のポリマーを除くことが可能である。
【0035】
生体適合性ポリマーは、生体活性薬剤がコーティングに含まれる場合及び/もしくは生体活性薬剤が気質に結合される場合には、生体活性薬剤の制御された放出を提供することが可能であり、埋め込み型用具の表面もしくはこのコーティングとなり得る。高分子キャリアを使用することによる生体活性薬剤の制御された放出や送達はこの数十年の間に盛んに研究されてきた(例えば、Mathiowitz,Ed,制御された薬剤送達、C.H.I.P.S.,1999参照)。例えば、PLAをベースとした薬剤送達システムはあらゆる成功の度合いにおいておおくの治療薬の制御された放出を提供した(例えば、米国特許第5,581,387、Labrieらを参照)。生体活性薬剤の放出速度は、たとえば、所望の放出プロファイルを提供可能なある特定の生体適合性ポリマーを選択することによって制御することが可能である。生体活性薬剤の放出プロファイルは、生体適合性ポリマーの分子量の選択及び/もしくは生体適合性ポリマー対生体活性薬剤の比によってさらに制御することが可能である。当業者であれば、制御された生体活性薬剤の放出を提供するために生体適合性ポリマーを使用してたキャリアシステムを容易に選択することが可能である。
【0036】
生体適合性ポリマーは好ましくはポリエステルであり、例えばPLA、PLGA、PGA、PHA、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(PHB)、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバレレートの共重合体、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバレレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、これらの組み合わせ、及びポリカプロラクトン(PCL)が挙げられる。
【0037】
生体活性薬剤
ここに記載されるPEAポリマーブレンドは任意で一つ以上の生体活性薬剤を含んだコーティングを形成し得る。これらの生体活性薬剤は、治療用、予防用、又は診断用の薬剤のいずれであってもよい。これらの薬剤は非増殖性または非炎症性の性質を有してもよく、または、抗悪性腫瘍性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗有糸分裂性、抗生物質、抗アレルギー性、酸化防止性、及び細胞成長抑制性等の他の性質を有してもよい。治療及び予防の薬剤に適した例には、治療的、予防的、または診断的活性を有する合成された無機及び有機化合物、たんぱく質とペプチド、多糖類及び他の糖類、脂肪質、DNA及びRNA核酸配列が含まれる。核酸配列には、遺伝子、転写を阻害するために相補DNAと結合するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。他の生体活性薬剤の他の例には、抗体、レセプターリガンド、酵素、接着性ペプチド、血液凝固因子、阻害剤又はストレプトキナーゼや細胞プラスミノーゲン活性化因子等の塊溶解性薬剤、免疫のための抗原、ホルモンや成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボザイム等のオリゴヌクレオチド、遺伝子治療に用いられるレトロウイルスベクター等が含まれる。非増殖性の薬剤の例には、ラパマイシン及びこの機能的または構造的誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)及びこの機能的または構造的誘導体、パクリタキセルおよびこの機能的または構造的誘導体が含まれる。ラパマイシン誘導体の例は、メチルラパマイシン(ABT−578)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシンが含まれる。パクリタキセル誘導体の例には、ドセタキセルが含まれる。抗悪性腫瘍薬及び/又は抗有糸分裂薬の例には、メソトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(たとえば、ニュージャージー州、ピーパックのファルマシア&アップジョンのアドリアマイシン(登録商標))、及びマイトマイシン(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブのムタマイシン(Mutamycin)(登録商標))が挙げられる。そのような抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、及び抗血栓性物質の例には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗血栓剤)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗剤、抗体、組換えヒルジン、アンギオマックス(マサチューセッツ州、ケンブリッジ、バイオゲン社)のようなトロンビン阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(例えば、HMG-CoA還元酵素阻害剤であり、コレステロール低下剤である、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社のメバコール(登録商標))、モノクローン抗体(例えば、血小由来成長因子(PDFG)レセプターを特異的に対象としたもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタクランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾピリミジン(PDGF拮抗剤)、一酸化窒素又は一酸化窒素ドナー、スーパーオキシドジムスターゼ、スーパーオキシドジムスターゼ模倣体、4−アミノ2,2,6,6−テトラメチルピペリシン1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗がん剤、あらゆるビタミン等の栄養補助食品、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症性薬剤を含む抗炎症性薬剤の例には、タクロリムス、デキサメタソン、クロベタゾール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。細胞成長抑止物質の例には、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、たとえば、カプトプリル(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブのカポテン(登録商標)及びカポジド(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(たとえば、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社のプリニビル(登録商標)及びプリンジド(登録商標))、抗アレルギー薬の例には、ペルミロラスト(permirolast)カリウムが挙げられる。他の適当な治療物質又は薬剤には、アルファインターフェロン、生体活性RGD、及び遺伝子改変の類上皮細胞が含まれる。前述の物質は、これらのプロドラッグや二薬効成分ドラッグの形態で使用することも可能である。前述の物質は例として挙げられたものであり、これらに限定されるものではない。現在入手可能な活性薬剤や将来において開発される活性薬剤も同様に適用可能である。
【0038】
好ましい治療効果を発現するのに必要な生体活性薬剤の投薬量もしくは濃度は、生体活性物質が毒性を発現するレベルより少なく、非治療的な結果が得られるレベルより多くあるべきである。所望の血管の領域における細胞活動を阻害するのに必要な生体活性薬剤の投薬量もしくは濃度は、患者の特定の状態、外傷の性質、望ましい治療の性質、投与された原料が血管において残留する時間等の要因に依存し、また、他の生体活性薬剤が投与される場合には、その物質の性質と種類、又は物質の組み合わせに依存する。治療効果のある投与は経験的に決定することが可能であり、例えば、適当な動物モデルシステムの血管に注入し、免疫組織化学的な、蛍光顕微鏡もしくは電子顕微鏡の手法を用いて薬剤とその作用を検出することで決定可能である。または、適切な生体外の研究を行うことによっても決定可能である。投薬量を決定するための標準的な薬理学試験手法は、当業者に既知である。
【0039】
埋め込み型用具の例
ここで使用されているように、埋め込み型用具は、患者または患畜に埋め込み可能ないかなる適切な医用物質であってもよい。そのような埋め込み型用具の例には、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト(例えば、大動脈のグラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、及び内心膜性のリード(lead)(例えば、カリフォルニア州、サンタクララのガイダントコーポレイションによるファインライン、エンドタック等)が含まれる。用具の基礎構造は実質上いかなるデザインでもよい。用具は、コバルトクロム合金(エルギロイ)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、たとえば、バイオドゥール108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム、又はこれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない金属材料又は合金から作成することができる。「MP35N」及び「MP20N」は、ペンシルベニア州、ジェンキンタウンのスタンダードプレススチール社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金の商標名である。「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成り、「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成る。生体吸収性又は生体安定性のポリマーから作製される用具も本発明の実施態様と共に使用すればよい。例えばステント等の用具自体は、記載されている発明のポリマーやポリマーブレンドからも作成することができる。
【0040】
使用方法
本発明の実施形態によると、例えば、ステントのような埋め込み型用具又は人工補装具の上に、記載された種々の実施形態のコーティングを形成することができる。1以上の活性薬剤を含むコーティングについては、薬剤は、用具の送達中及び拡張中は、ステントのような医療用具の上に保持され、埋め込んだ部位で所望の速度及び所定の持続時間で放出される。好ましくは、前記医療用具はステントである。上述のコーティングを有するステントは、例示の目的で、胆管、食道、気管/気管支及びそのほかの生体通路において腫瘍が原因で生じる閉塞の治療を含む、多様な医療処置に有用である。上述のコーティングを有するステントは、平滑筋細胞の異常なもしくは不適切な移動又は増殖により生ずる血管の閉塞箇所、血栓症、及び再狭窄を治療するのに特に有用である。ステントは、動脈及び静脈双方の多種多様な血管に留置してもよい。部位の代表例には、腸骨動脈、腎動脈及び冠状動脈が挙げられる。
【0041】
ステントの埋め込みについては、先ず、血管造影を行ってステント療法の適当な位置取りを決定する。血管造影は通常、X線を利用しながら、動脈又は静脈に挿入されたカテーテルを介して放射線不透過の造影剤を注入することによって達成される。次いで、ガイドワイヤを病変部又は提案された治療部位に進める。送達用カテーテルをガイドワイヤの上に通し、それによって折り畳んだ構造のステントを通路に挿入することができる。経皮的に又は外科的処置によって、送達カテーテルを大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈、又は上腕静脈に挿入し、蛍光顕微鏡の案内のもと、血管系を通ってカテーテルを操縦することによって適切な血管の中に進める。次いで、治療の所望部位にて、上述のコーティングを有するステントを拡張してもよい。挿入後の血管造影を利用して適当な位置取りを確認してもよい。
【0042】
実施例
以下に述べる実施例によって本発明の実施形態を説明する。パラメータ及びデータはすべて本発明の実施態様の範囲を過度に限定するように解釈しないものとする。
【0043】
実施例1
PEA−Bzと式3のPEAとのブレンド溶液は、以下の手順により調整可能である。第一の組成は、PEA−Bzと式3のPEAを約1:3の比(重量/重量)で混合することによって調整され(「PEA−Bzブレンド」)、PEA−Bzブレンドの実効Tgは約32℃となる。続いて、2%(重量/重量)のPEA−Bzブレンドを無水エタノールに加える。第二の組成は、エベロリムスを第一の組成に加えることによって調整可能である。ここで、固体薬剤:PEA−Bzブレンドの比(重量/重量)は約1:500であり、これは薬剤:PEAポリマー固形量の比において約1:10に相当する。上記の組成は、溶解プロセスを促進するために攪拌してもよい。
【0044】
実施例2
二つの層を有するエベロリムス含有医療物品は、以下のようにして実施例1の組成から作成可能である。実施例1の第二の組成をむき出しの12mmのビジョン(VISION)(登録商標)ステント(ガイダントコーポレイション)の表面に吹きつけ、乾燥させることによりコーティングを形成する。コーティング技術の一例は、0.014ファンノズル、約0.2気圧のフィード圧と約1.3気圧の噴霧圧によりスプレーコーティングを行い、;パス毎に20μgのウェットコーティングを塗布し、各パスの間に62℃において約10秒間コーティングを乾燥させ、最終パスの後に約50℃において約1時間焼成することによって乾燥した薬剤層を得ることを含んでいる。薬剤層は、約560μgのPEA−Bzブレンドと約56μgのエベロリムスを含み得る。第二の層は、実施例1の第一の組成からコーティング技術の例を使用することにより塗布することが可能である。このトップコート層は384μgのPEA−Bzブレンドを含み得る。ステント上のコーティングの総重量は約1000μgになる。
【0045】
実施例3
PEA−TEMPOと式4BのPEAとのブレンド溶液は、以下の手順により調整可能である。第一の組成、組成1は、PEA−TEMPOと式4BのPEAを約1:1の比(重量/重量)で混合することによって調整され(「PEA−TEMPOブレンド1」)、PEA−TEMPOブレンド1の実効Tgは約39℃となる。続いて、2%(重量/重量)のPEA−TEMPOブレンド1を無水エタノールに加える。
【0046】
第二の組成、組成2は、エベロリムスを第一の組成に加えることによって調整可能である。ここで、固体薬剤:PEA−TEMPOブレンド溶液の比(重量/重量)は約1:300であり、これは薬剤:PEAポリマー固形量の比において約1:6に相当する。上記の組成は、溶解プロセスを促進するために攪拌してもよい。
【0047】
実施例4
PEA−TEMPOと式5CのPEAとのブレンド溶液は、以下の手順により調整可能である。第一の組成、組成3は、PEA−TEMPOと式5CのPEAを約2:1の比(重量/重量)で混合することによって調整され(「PEA−TEMPOブレンド2」)、PEA−TEMPOブレンド2の実効Tgは約39℃となる。続いて、2%(重量/重量)のPEA−TEMPOブレンド2を無水エタノールに加える。
【0048】
第二の組成、組成4は、エベロリムスを第一の組成に加えることによって調整可能である。ここで、固体薬剤:PEA−TEMPOブレンド溶液の比(重量/重量)は約1:300であり、これは薬剤:PEAポリマー固形量の比において約1:6に相当する。上記の組成は、溶解プロセスを促進するために攪拌してもよい。
【0049】
実施例5
二つの層を有するエベロリムス含有医療物品は、以下のようにして実施例3もしくは4の組成から作成可能である。実施例3の組成3もしくは実施例4の組成4をむき出しの12mmのビジョン(VISION)(登録商標)ステント(ガイダントコーポレイション)の表面に吹きつけ、乾燥させることによりコーティングを形成する。コーティング技術の一例は、0.014ファンノズル、約0.2気圧のフィード圧と約1.3気圧の噴霧圧によりスプレーコーティングを行い、;パス毎に20μgのウェットコーティングを塗布し、各パスの間に62℃において約10秒間コーティングを乾燥させ、最終パスの後に約50℃において約1時間焼成することによって乾燥した薬剤層を得ることを含んでいる。薬剤層は、約336μgの実施例3のPEA−TEMPOブレンド1もしくは実施例4のPEA−TEMPOブレンド2、及び約56μgのエベロリムスを含み得る。第二の層は、実施例3の組成1もしくは実施例4の組成3からコーティング技術の例を使用することにより塗布することが可能である。このトップコート層は400μgの実施例3のPEA−TEMPOブレンド1もしくは実施例4のPEA−TEMPOブレンド2もしくはこれらの組み合わせを含み得る。二つの層を有する医療物品はPEA−TEMPOブレンド1もしくはPEA−TEMPOブレンド2単独、もしくはこれらの組み合わせにより形成され得る。ステント上のコーティングの総重量は約792μgになる。
【0050】
本発明の特定の実施形態を提示し説明を行ったが、当業者にとって本発明のより広い側面から逸脱することなく変更や改良を行うことが可能であることは自明である。従って、追記の請求項の範囲には、そのような変更や改良を本発明の真の精神と範囲に相当するものであるとして含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(エステルアミドベンジルエステル)(PEA−Bz)もしくはポリ(エステルアミドーTEMPO)(PEA−TEMPO)のガラス転移温度(Tg)より高いTgをゆうするポリ(エステルアミド)ポリマーブレンドであって、
PEA−BzのTgもしくはPEA−TEMPOのTgと略同一もしくはこれより高いTgを有する第一のPEAポリマーと、
PEA−BzのTgもしくはPEA−TEMPOのTgより高いTgを有する第二のPEAポリマーと、
を有するPEAポリマー。
【請求項2】
実効Tgが約37℃もしくはこれより高い請求項1に記載のPEAポリマーブレンド。
【請求項3】
式3〜式7に示されるPEAポリマーを含む請求項1に記載のPEAポリマーブレンド。
【化1】

【請求項4】
PEAポリマーではない生体適合性ポリマーをさらに含む請求項1に記載のPEAポリマーブレンド。
【請求項5】
前記第一のPEAポリマーもしくは前記第二のPEAポリマーが二種類のアミノ酸を含む請求項1に記載のPEAポリマーブレンド。
【請求項6】
前記第一のPEAポリマーもしくは前記第二のPEAポリマーが少なくとも一種類の非天然アミノ酸を含む請求項1に記載のPEAポリマーブレンド。
【請求項7】
PEAポリマーとPEAポリマーではない生体適合性ポリマーを含み、PEA−BzのTgもしくはPEA−TEMPOのTgと略同一もしくはこれより高いTgを有するPEAポリマーブレンド。
【請求項8】
前記PEAポリマーではない生体適合性ポリマーはポリ(オルソエステル)、ポリ(無水物)、ポリ(D,L―乳酸)、ポリ(L―乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)とグリコール酸との共重合体、ポリ(L―ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、(L−ラクチド/D,L−ラクチド)共重合体、(L−ラクチド/グリコリド)共重合体、(D,L−ラクチド/グリコリド)共重合体、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(チロシン由来カーボネート)、ポリ(チロシン由来アリレート)これらのポリマーとポリ(エチレングリコール)との共重合体、もしくはこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項7に記載のPEAポリマーブレンド。
【請求項9】
請求項1に記載のポリマーブレンドを含む埋め込み型用具上の高分子コーティング。
【請求項10】
請求項2に記載のポリマーブレンドを含む埋め込み型用具上の高分子コーティング。
【請求項11】
請求項3に記載のポリマーブレンドを含む埋め込み型用具上の高分子コーティング。
【請求項12】
請求項6に記載のポリマーブレンドを含む埋め込み型用具上の高分子コーティング。
【請求項13】
請求項7に記載のポリマーブレンドを含む埋め込み型用具上の高分子コーティング。
【請求項14】
請求項8に記載のポリマーブレンドを含む埋め込み型用具上の高分子コーティング。
【請求項15】
生体適合性材料をさらに含む請求項9に記載の高分子コーティング。
【請求項16】
生体適合性材料をさらに含む請求項13に記載の高分子コーティング。
【請求項17】
生体活性薬剤をさらに含む請求項9に記載の高分子コーティング。
【請求項18】
生体活性薬剤をさらに含む請求項13に記載の高分子コーティング。
【請求項19】
前記生体活性な薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、酸化窒素供与体、スーパーオキシドジムスターゼ、スーパーオキシドジムスターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノTEMPO)、タクロリムス、デキサメタソン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、予防治療薬剤、これらのプロドラッグ、これらの二薬効成分ドラッグ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項17に記載の高分子コーティング。
【請求項20】
前記生体活性な薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、酸化窒素供与体、スーパーオキシドジムスターゼ、スーパーオキシドジムスターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノTEMPO)、タクロリムス、デキサメタソン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、予防治療薬剤、これらのプロドラッグ、これらの二薬効成分ドラッグ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項18に記載の高分子コーティング。
【請求項21】
請求項17に記載の高分子コーティングを含む埋め込み型用具を患者に埋め込むことを含む、アテローム性硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開又は穿孔、動脈瘤、脆弱プラーク、慢性全閉塞、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組み合わせから成る群から選択される疾患を治療する方法。
【請求項22】
請求項18に記載の高分子コーティングを含む埋め込み型用具を患者に埋め込むことを含む、アテローム性硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開又は穿孔、動脈瘤、脆弱プラーク、慢性全閉塞、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組み合わせから成る群から選択される疾患を治療する方法。

【公表番号】特表2008−516046(P2008−516046A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535707(P2007−535707)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/034612
【国際公開番号】WO2006/041676
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】