説明

ポンプの作動杆の係脱構造及びポンプ

【課題】 弁部材を駆動作動杆から簡単に取り外すことができること。
【解決手段】 弁部材が、外弁としての外筒体と、この外筒体に回動自在に組み込まれた内弁としての内筒体と、この内筒体に摺動部分が組み込まれかつ従動作動杆を有する押し出し作動体とを備え、一方、駆動源側が、駆動源と、該駆動源の力により、かつ、支持部材に案内されて水平移動する駆動作動杆とを備え、弁部材の従動作動杆と駆動源側の駆動作動杆との連結時、前記弁部材の係合部分が、前記駆動作動杆に取付けた連結支持具に係脱するポンプの作動杆の係脱構造に於いて、前記連結支持具は、バネ部材で常時所定方向に付勢された状態で前記駆動作動杆に片手式に軸支され、該連結支持具は、取付け用枢支板部の先端部に連設する垂直板部と、該垂直板部の前面に突出状態に連設する係止部とから成ることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を定量ずつ吐出可能なポンプの作動杆の係脱構造及びポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弁部材が、吸引孔及び吐出孔を有する外弁としての外筒体と、この外筒体に回動自在に組み込まれた内弁としての内筒体、この内筒体に摺動部分が組み込まれかつ従動作動杆を有する押し出し作動体とを備え、一方、駆動源側が、駆動源と、該駆動源の力により、かつ、支持部材に案内されて水平移動する駆動作動杆とを備え、弁部材の従動作動杆と駆動源側の駆動作動杆との連結する「作動杆の係脱構造(クランプ)」が開示されている(図7、図8)。
【0003】
この作動杆の係脱構造は、連結時に於いて、弁部材をクランプに対して水平方向に嵌め込む。一方、弁部材を取り外す場合には、弁部材をそのままクランプから水平方向に引き抜くことができないので、駆動作動杆としての固定部材を、ピストンクランプが上下一対の開放部材を介して開く位置まで前進させる。そして、ピストンクランプが開いているときに弁部材を水平方向へ引き抜く。したがって、特許文献1のクランプは、いわば「電動押し開き、かつ、手動引き抜き方式」である。
【0004】
すなわち、特許文献1の作動杆の係脱構造は、次の(a)〜(g)の構成要件から成っている。「(a)弁部材のピストンを前進・後進させる手段に固定された固定部材と、(b)上面にラックを備えた固定部材に軸支した上下一対のピストンクランプと、(c)これらのピストンクランプを前方に向けて閉じる方向に付勢する上下一対の後方弾性体と、(d)ピストンクランプ両先端に形成され、かつ、従動作動杆としてのピストンシャフト後端を着脱し得るように掴持する掴持部と、(e)掴持部先端対向面に形成されたテーパーと、(f)ピストンクランプにピストンシャフトを嵌め込んだときに、該ピストンシャフト後端が接触することができるようにピストンクランプに内装した一つの弾性体と、(g)ピストンクランプ掴持部先端テーパーを開くように上昇案内するテーパーを有する上下一対の開放部材とから成る。」。
【0005】
上記構成に於いて、弁部材を取り外す場合には、まず、駆動モータの駆動力により、駆動作動杆としての固定部材を前進させる。ラックを備えた固定部材が前進すると、当然、固定部材の先端部に設けたピストンクランプ(本発明の「連結支持具」に相当する)も前進する。
【0006】
次に、制御部からの制御信号に基づき、固定部材を弁部材の脱着ポイントまで更に前進させる。そうすると、所定位置にセットされている従動作動杆(ピストンシャフト)の係合端部は、ピストンクランプ内の弾性体を圧縮し、一方、ピストンクランプの掴持部(先端テーパー)は、開放部材テーパーに当接案内されることから、ピストンクランプ先端が開く。そこで、手で弁部材をピストンクランプから引き抜くことが可能となる。
【0007】
上記構成から明らかなように、本発明の「連結支持具」に相当する特許文献1のピストンクランプは、例えば洗濯用のピンチ形状のような挟持(掴持)片であることから、構造が複雑化し(文献図8参照)、また、弁部材を取り外す場合には、固定部材の脱着ポイント位置まで前進させ、一組の開放部材を介してピストンクランプを強制的に開く必要があった。そこで、現在、弁部材を簡単に係脱できる新規な作動杆の係脱構造の出現が要望されている。
【特許文献1】特開2004−188385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、弁部材を駆動作動杆から簡単に取り外すことができることである。第2の目的は、構成する部品点数を少なくし、製作費用を安価にすることである。第3の目的は、具入りスープ類又はこれに類似する流体に適合する新規な作動杆の係脱構造を提案することである。第4の目的は、本発明の主要部を含むポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の作動杆の係脱構造は、弁部材Vが、吸引孔及び吐出孔を有する外弁としての外筒体2と、この外筒体に回動自在に組み込まれた内弁としての内筒体11と、この内筒体に摺動部分が組み込まれかつ従動作動杆19を有する押し出し作動体18とを備え、一方、駆動源側が、駆動源21と、該駆動源の力により、かつ、支持部材に案内されて水平移動する駆動作動杆20とを備え、弁部材Vの従動作動杆19と駆動源側の駆動作動杆20との連結時、前記弁部材の係合部分19aが、前記駆動作動杆20に取付けた連結支持具41に係脱するポンプの作動杆の係脱構造に於いて、前記連結支持具41は、バネ部材43で常時所定方向に付勢された状態で前記駆動作動杆20に片手式に軸支され、該連結支持具41は、取付け用枢支板部44の先端部に連設する垂直板部45と、該垂直板部の前面に突出状態に連設する係止部46とから成ることを特徴とする。
【0010】
上記構成に於いて、連結支持具41の係止部46の上面に従動作動杆19の係合部分19aが係脱する係合凹所46aが形成されていることを特徴とする。また、弁部材Vの連結時、該弁部材を連結支持具41の係止部46のテーパー46bに対して押し込み、一方、弁部材Vを取り外す時、弁部材を持ち上げて弁部材Vと連結支持具41の係合関係を解消することを特徴とする。また、連結支持具41を枢支する横軸42は、取付け用枢支板部44の上端部に位置し、一方、連結支持具41を水平状態の位置へ付勢するバネ部材43は、連結支持具41の下部側に位置していることを特徴とする。また、内筒体11は、長筒状本体11aと、該長筒状本体と係脱可能であり、かつ、連結支持具を包む短筒状後端部11bとを有し、前記短筒状後端部11bは、駆動源側に設けられた弾発性部材4により常に長筒状本体11aの後端部に係合する方向に付勢されていることを特徴とする。さらに、駆動源は、駆動モータ、又は操作ハンドルの何れかであることを特徴とする。
【0011】
本発明のポンプは、上記主要部を含み、また、駆動源が一つであり、かつ、該駆動源を内筒体回転用と押し出し作動体の往復動用に切り換えるクラッチ機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(1)請求項1、請求項2、請求項3に記載の発明は、弁部材を駆動作動杆から簡単に取り外すことができることである。特に、両手又は片手で弁部材を持ち上げ、又は、連結支持具を手で押し下げるだけで、弁部材を駆動作動杆から簡単に取り外すことができる。
(2)請求項2に記載の発明は、連結支持具の各部の構成が合理的なので、作動杆の係脱構造を簡単にすることができる。特に、一つの連結支持具と、バネ部材との組合せで済むことから、製作、組合せ等が容易である。したがって、安価である。
(3)請求項3に記載の発明は、弁部材の係脱が極めて容易である。
(4)請求項4に記載の発明は、連結支持具がスムースに回転する。
(5)請求項5に記載の発明は、弁部材を固定側部材から容易に取り外すことができる。また、危険防止にも役立つ。さらに、意匠上の美観を向上させる。
(6)請求項7に記載の発明は、一つの駆動モータ21の駆動力を、押し出し作動体往復動用と内筒体回転用に利用したので、駆動モータの数が減り、その結果、ポンプの製作コストの低減化を図ることができる。具入りスープ類又はこれに類似する流体に適合する新規な作動杆の係脱構造を備えたポンプを提案することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、前提条件のポンプを詳細に説明し、次に、本発明の構成を詳細に説明する。図1乃至図15は、具入りスープ類又はこれに類似する流体に適合するポンプXの一例である。
【0014】
(1)基本的な構成部材
Xは流体供給用ポンプで、このポンプXの外筒体、内筒体等は、固定側部材1の上部水平板1aの上面に横方向に配設されている。また、上部水平板1aには、符号を付さない弁部材用開口、駆動歯車用開口、伝動歯車用開口など複数個の開口或いは切欠部が適宜に形成されている。また、上部水平板1aの下面側には、ポンプX用の一つの駆動源(駆動モータ)21が横方向にモータ取付け板を介して配設されている。また、上部水平板1aの上面側の後端部には、ケース状の取付け枠1cが設けられ、該取付け枠1cの貫通孔は、押し出し作動体18の作動杆(以下、「従動作動杆19」という)を係止する駆動作動杆20の後端部を案内する。本発明の従動作動杆19と駆動駆動作動杆20は、後述する作動杆の係脱構造Zにより、着脱自在に連結され得る。
【0015】
そして、取付け枠1cには、押し出し作動体18用の位置検出手段S2が所要間隔を有して複数個配設されている。また、取付け枠1c内には、押し出し作動体18用の回転防止台37が設置され、該回転防止台37の上面には、駆動作動杆20に設けた係合部20bと係合する被係合部37aが形成されている。前記駆動作動杆20の係合部20bは、駆動作動杆20と交差する垂直の係合片(例えば係合ピン)であり、一方、前記被係合部37aは、長溝状のガイト溝である。本実施例では、係合部20bの突出上端部に、検出手段S2用のインデックス或いは磁石片38が水平状態に設けられている。したがって、押し出し作動体18は、駆動作動杆20に設けた係合部20bと固定側部材1に設けた被係合部37aとで構成される回転防止手段を介して往復動可能である。
【0016】
さらに、固定側部材1は、上部水平板1aと対向する下部水平板1bを有し、この下部水平板1bの上面には、クラッチ機構Yを構成する駆動手段(ソレノイド)31が横方向に配設されている。次に、ポンプXの主な部材、該ポンプX用駆動源21、クラッチ機構Yを説明する。本発明の構成については後述する(特に、図10、図11など)。
【0017】
(2)ポンプXの外筒体2
外筒体(外弁)2は、左右の両端部がそれぞれ開口する長筒状の周胴部分2aと、この周胴部分2aの一端部側の開口に嵌合するヘッド2bとから成る。
【0018】
まず、周胴部分2aの構成について説明する。3は一端部上面に形成された吸引孔で、この吸引孔3にはホッパー5が取り外し可能に装着されている。6は一端部下面に形成された吐出孔で、この吐出孔6は、前記吸引孔3と対向すると共に、該吐出孔6には、筒状の吐出ノズルを含むシール部材7が螺着自在に取付けられる。また、ヘッド2bを有する外筒体2は、所要の長さを有し、かつ、上部水平板1aに取り外し可能に固定されている。前記吸引孔3及び吐出孔6は、本実施例では単数である。また吸引孔3と吐出孔6の形状は、例えば円形である。
【0019】
(3)ポンプXの内筒体11
内筒体(内弁)11は、本実施例では、一つの駆動源21の駆動力により回転すると共に、ホッパー5から吸引孔3を介して所定量の流体fを内部に取り込み、かつ、吐出孔6を介して外部に吐出する定量筒体である。
【0020】
したがって、内筒体11は、弁本体に相当する外筒体2に対して内弁の機能を発揮する。そこで、内筒体11の挿入先端部(図面上、左)には、外筒体2の吸引孔3及び吐出孔6に選択的に連通する一つの開口12が形成されている。
【0021】
ところで、本実施例の内筒体11は、長筒状本体11aと、該長筒状本体と係脱可能であり、かつ、後述する連結支持具を包む短筒状後端部11bとを有し、前記短筒状後端部11bは、駆動源側に設けられた弾発性部材4により長筒状本体11aの後端部に係合する方向に常に付勢されている。
【0022】
付言すれば、本実施例の弁部材Vは、吸引孔及び吐出孔を有する外弁としての外筒体2と、この外筒体に回動自在に組み込まれた内弁としての内筒体11と、この内筒体に摺動部分18aが組み込まれかつ従動作動杆19を有する押し出し作動体18とから成る。そして、弁部材Vは、作動杆同士19,20の連結時、該弁部材Vを連結支持具41の係止部46のテーパー46bに対して水平方向に押し込むと、簡単に連結状態となり、一方、弁部材Vを取り外す時、該弁部材Vを、例えば多少持ち上げすると、弁部材Vと連結支持具41の係合関係が簡単に解消するように工夫されている。
【0023】
ここで、図5を参照にして長筒状本体11aと短筒状後端部11bとの係合関係を説明する。図5は長筒状本体11aの後端部の概略縦断面である。この図5から明らかなように、長筒状本体11a後端部の接合端面には、単数又は複数個の被係合部(切欠溝)13が形成されている。したがって、短筒状後端部11bの接合端面には、前記被係合部13と係脱する単数又は複数個の係合部(突起)が形成されている。本実施例の弾発性部材4は、固定側部材1の上部水平板1aの上面に設けられた第1支持板17aと短筒状後端部11bの外壁面との間に位置するように従動歯車14の筒状軸部14aに巻装されている。
【0024】
また、図6を参照にして、従動歯車14の筒状軸部14aと短筒状後端部11bとの係合関係を説明する。図6は従動歯車14と内筒体11とが一体的に組み合っている概略説明図である。従動歯車14は、筒状軸部14aの外周壁に複数個の被係合部分(軸方向の切欠部分)15を有している。したがって、短筒状後端部11bは、その軸孔の縁部に前記被係合部分15に係合する係合する複数個の係合部(突起)16を有している。
従動歯車14は、駆動作動杆20に遊嵌合し、かつ、駆動歯車23と噛合するように第1支持板17aと第2支持板17bとの間に配設されている。第2支持板17bは、第1支持板17aと対向するように固定側部材1の上部水平板1aの上面に設けられている。駆動モータ21の駆動力により、出力軸22側の駆動歯車23が回転すると、従動歯車14及び内筒体11が同時に回転する。
【0025】
しかして、内筒体11の開口12は、上方の吸引孔3と連通している間下方の吐出孔6は閉鎖され、一方、開口12が吐出孔6と連通している間吸引孔3は閉鎖される。
【0026】
(4)内筒体11用の検出手段S1
固定側部材1の上部水平板1aの上方には、内筒体11用の検出手段S1が第2支持板17bを介して配設されている。この検出手段S1は、内筒体11の回転位置を検出する。検出手段S1は、ホールIC原理を利用したもの、発光素子と受光素子を利用してもの等が適宜に採用され得る。
【0027】
本実施例では、従動歯車14の外周壁の適宜部位に複数の磁石をそれぞれ固定し、一方、固定側部材1の検出手段S1としてホール素子を採用している。
【0028】
したがって、内筒体11が駆動源21の駆動力によって「180度」回転し、一つの磁石が検出手段S1に対面した時、検出手段S1は磁石の「N極」の磁束を拾って、図示しない制御部に内筒体11の回転位置を出力し得る。なお、前記磁石に代えてインデックスを用いても良い。後述する検出手段S2も同様である。
【0029】
(5)押し出し作動体18
押し出し作動体18は、内筒体11に組み込まれた先端部に摺動部分18aを有する。摺動部分18aは、所定位置(例えば最大吐出量の所)へ後退すると、所定容積室aを形成し、一方、所定位置へ前進すると、所定容積室a内に流入した流体fを押し出す機能を有している。
【0030】
本実施例の作動杆は、弁の洗浄、部品交換等の目的から、弁部材Vを簡単に固定側部材1に簡単にセット又は取り外すために、適当な箇所で「二分割」されている。すなわち、一方は弁部材Vを構成する押し出し作動体18の従動作動杆19であり、他方は固定側部材1にスライド自在に配設された駆動源側の駆動作動杆20である。
【0031】
ところで、前記駆動作動杆20は、固定側部材1の所定位置に配設された短筒状内筒体11b、従動歯車14、支持板17a,17b等を貫通すると共に、本実施例では「長杆状の螺杆体」である。
【0032】
そして、駆動作動杆20と一体的に連結された押し出し作動体18は、固定側部材1に設けたクラッチ機構Yのクラッチ34を介して同一の駆動モータ21の駆動力により(一例)、該駆動モータ21の軸方向に往復動するように設けられている。そこで、ポンプX用の駆動源21について説明する。
【0033】
(6)駆動源21
駆動源としての駆動モータ21は、左右一対の軸受け板24,25を介して上部水平板1aの下面側に横設されている。左側の軸受け板24は、出力軸22の基部側を支持すると共に、モータ取付け板の役割を果たしている。一方、右側の軸受け板25は出力軸22の突出端部を支持している。したがって、駆動モータ21の出力軸22は、安定状態に支持されている。駆動モータ21の出力軸22には、従動歯車14と噛合する駆動歯車23が固定されている。駆動歯車23は出力軸22と共働する。また、出力軸22には、駆動歯車23に対して所要間隔Lを有して対向する伝動歯車(第2の駆動歯車)26が固定されている。したがって、伝動歯車26も出力軸22と共働する。
【0034】
そして、伝動歯車26には、駆動作動杆20に形成した螺杆部分20aに螺合する筒状螺合体(第2の従動歯車)27が噛合する。したがって、筒状螺合体27が駆動モータ21の駆動力により正転方向・逆転方向にそれぞれ回転すると、押し出し作動体18は、駆動作動杆20を介して内筒体11内を往復動する。
【0035】
前記筒状螺合体27は、上部水平板1aの上面に所定間隔を有して固定された第2支持板17bと取付け枠1cにサンドイッチ状に支持されている。筒状螺合体27は、所定位置にて安定状態に回転する。
【0036】
(7)押し出し作動体用の検出手段S2
押し出し作動体18用の検出手段S2は、押し出し作動体18の原点(始動)位置、押し出し作動体の前進端位置等を検出するためにケース状の取付け枠1cに複数個配設されている。検出手段S2の一例としてはリミットスイッチが用いられている。なお、検出手段S2用のインデックス或いは磁石38は、駆動作動杆20の係合部20bを介して設けられている。
【0037】
(8)クラッチ機構Y
ところで、駆動歯車23及び伝動歯車26の対向面には、被係合部(小孔、小溝など)23a,26aが複数個形成されている。被係合部23a,26aにはクラッチ機構Yを構成するクラッチ34が係脱する。
【0038】
図2を参照にして、一つのクラッチ機構Yの構成部材を説明する。31は下部水平板1bの上面に横設されたクラッチ用駆動手段(例えばソレノイド)である。32はソレノイド31の作動杆、33は作動杆32の先端部に直交状態に固定された上向きの係合腕である。
【0039】
34は駆動モータ21の出力軸22に軸方向にスライド自在に設けられ、かつ、駆動歯車23又は伝動歯車26に選択的に結合するクラッチである。本実施例のクラッチ34は、段面視、外観形状がH型形状に見えるブロック体であり、一方の垂直板35には、駆動歯車23の被係合部23aと係脱する複数個の係合ピン35aが設けられている。
【0040】
一方、他方の垂直板36には、伝動歯車26の被係合部26aと係脱する複数個の係合ピン36aが設けられている。前述した係合腕33の上端部は、垂直板35,垂直板36の間に位置する。
【0041】
したがって、ソレノイド31の作動杆32が伸長した場合には、クラッチ34は駆動モータ21に接近する方向へスライドし、左側の垂直板35が駆動歯車23に結合する。
一方、ソレノイド31の作動杆32が収縮した場合には、クラッチ34は駆動モータ21から離れる方向へスライドし、右側の垂直板36が伝動歯車26に結合する。それ故に、クラッチ機構Yを介して一つの駆動モータ21の駆動力により弁部材Vの内筒体11を回転することが出来ると共に、内筒体11に組み込んだ押し出し作動体18を往復動させることができる。
【0042】
(9)ポンプの作用
今仮に、図示しない操作手段(始動スイッチ)を操作すると、例えばソレノイド31の作動杆32が収縮する。作動杆32が、図13で示すように右方向へ移動すると、クラッチ34も同方向にスライドして伝動歯車26と結合する。
【0043】
そこで、駆動モータ21が起動(正転)すると、押し出し作動体18は、伝動歯車26と噛合する筒状螺合体27を介して所定位置(200cc,300ccなど吐出量の設定値)まで後退し、この時、押し出し作動体18用検出手段S2の一つが押し出し作動体の後退位置を検出する。
【0044】
押し出し作動体18が後退すると、該押し出し作動体18が所定位置で停止することから、内筒体内に流体fを所定量しか吸い込まない。
【0045】
次に、図2で示すようにソレノイド31の作動杆32が伸長すると、クラッチ34も同方向に出力軸22をスライドして駆動歯車23に結合する。この時、クラッチ34の垂直板35の係合ピン35aが駆動歯車23の被係合部23aに係合する。
【0046】
そこで、駆動モータ21が起動すると、内筒体11は、駆動歯車23と噛合する従動歯車14を介して所定量(例えば180度)回転する。内筒体11の回転位置は、検出手段S1によって検出される。内筒体11が所定量回転すると、一つの開口12は下方へ移行して外筒体2の吐出孔6に連通する(図14参照)。
【0047】
したがって、内筒体11内の流体fは吐出孔6から落下し始める。この時、ソレノイド31の作動杆32が復帰(収縮)すると共に、駆動モータ21が逆転方向へ回転可能となる。したがって、押し出し作動体18は、伝動歯車26の伝動力により、所定位置まで前進する。これにより、押し出し作動体18の摺動部分18aにより、内筒体11内の流体fに混入する具が全て押し出される(図15参照)。
【0048】
しかる後に、ソレノイド31の作動杆32が伸長する。そうすると、駆動モータ21の駆動力は駆動歯車23に伝わるので、内筒体11は再び所定量回転する。
【0049】
以上のように、内筒体(内弁)11は、駆動源21の駆動力により回転すると共に、ホッパー5から吸引孔3を介して所定量の流体fを内部に取り込み、かつ、吐出孔6を介して外部に吐出する。一方、押し出し作動体18は、クラッチ機構Y並びに作動杆の係脱構造Zを介して、かつ、前記駆動源21の駆動力により軸方向に往復動する。そこで、作動杆の係脱構造Zについて説明する。
【0050】
(10)作動杆の係脱構造Z
図4、図7、図8乃至図12を参照にしてポンプの作動杆の係脱構造(以下、「係脱構造Z」という)を説明する。本発明の係脱構造Zは、簡単に指摘すると、固定側部材1から取り外し可能な弁部材Vの従動作動杆19と、固定側部材1に一体的に配設された駆動源21側の駆動作動杆20との連結構造である。本実施例では、弁部材Vそのものを固定側部材1から取り外すことができるように固定側部材1の駆動作動杆20に連結する。弁部材Vそのものを駆動作動杆20に連結し、及び駆動作動杆20から取り外す理由は、弁部材Vを構成する部材の分解が楽だからである。したがって、構成部材の洗浄ができる。
【0051】
さて、本発明の弁部材Vは、出願人(又は発明者)が独自に開発したスープ類の供給装置(特許文献1参照)に適合する構造なので、係脱構造Zは、次に列挙する構成要件を含んでいる。
【0052】
(a)弁部材Vは、吸引孔3及び吐出孔6を有する外弁としての外筒体2と、この外筒体2に回動自在に組み込まれた内弁としての内筒体11と、この内筒体11に摺動部分18aが組み込まれかつ従動作動杆19を有する押し出し作動体18とから成る。
【0053】
(b)一方、駆動源側は、前述した電動の駆動源21と、該駆動源21の力により、かつ、支持部材17a,17b,37に案内されて水平移動する駆動作動杆20とを備える。
【0054】
(c)弁部材Vは、その押し出し作動体18の従動作動杆19を駆動源側の駆動作動杆20との連結する時に、弁部材Vの駆動作動杆20のフランジ状の係合部分19aが、駆動作動杆20の先端部に横軸42を介して取付けた連結支持具41に係脱する。
【0055】
(d)前記連結支持具41は、バネ部材43で常時所定方向に付勢された状態で前記駆動作動杆20に「片手式」に軸支されている。
【0056】
(e)連結支持具41の具体的構成は、図10及び図11で示すように、上端部に横軸42用の左右一対の軸孔44aを有する左右の取付け用枢支板部44と、これらの枢支板部44の先端部に連設する円形状の垂直板部45と、該垂直板部45の前面下端部に突出状態に連設する受け皿状の係止部46とから成る。
【0057】
(f)そして、金属製又は硬質樹脂製の連結支持具41の各部位の構成部分について付言すると、前記垂直状態の左右の枢支板部44は、駆動作動杆20の先端部の左右の側壁にそれぞれ適合するように所要の大きさや形状に形成され、また、前記垂直板部45は、従動作動杆19の垂直先端面に対して十分な押圧機能を発揮することができるように垂直な押圧面45aを有し、また、前記係止部46の上面には、従動作動杆19の球台形状、すい台形状等の台形状に形成された係合部分19aが係脱する係合凹所46aが形成され、さらに、前記係合凹所46aの先端部には、連結時、前記係合部分19aに摺接するテーパー46bが形成されている。加えて、図9で示すように、前記垂直板部45の内面下端部には、突起状のバネ支持部47が設けられている。また、垂直板部45の内面は、駆動作動杆18の先端面上部に当接している。
【0058】
(g)敷衍すると、連結支持具41を枢支する横軸42は、取付け用枢支板部の上端部に位置し、一方、連結支持具41を水平状態の位置へ付勢するバネ部材43は、連結支持具の下部側に位置している。そして、前記バネ部材43は、一端部は連結支持具41のバネ支持部47に支持され、他端部は駆動作動杆20の先端の下面に突設したバネ端支持部20cに取付けられている。
【0059】
(11)作用
上記構成に於いて、図12で示すように、弁部材Vの連結時、該弁部材Vを連結支持具41の係止部46のテーパー46bに対して押し込むと、連結支持具41は弁部材Vの従動作動杆19の係合部分19aのテーパーに押圧され、横軸42を支点に係止部46が下がる方向へと回転する。そして、前記従動作動杆19の係合部分19aが連結支持具41のテーパー46bを滑り超えると、連結支持具41はバネ部材43のバネ力により復帰する。その結果、弁部材Vの係合部分19aは、自動的に連結支持具41の皿状係止部46に自動的に係止される。
【0060】
一方、図13で示すように、弁部材Vを取り外す時、例えば弁部材Vの先端部を持ち上げると、連結支持具41の垂直板部45の上端部は、駆動作動杆20の先端面上部に支持されていることから、或いは係止部46が皿状に形成されていることから、簡単に弁部材Vと連結支持具41の係合関係を解消させることができる。なお、この場合、弁部材Vの先端部を持ち上げないで、連結支持具41を指で押し下げても良い。
【実施例】
【0061】
本実施例に於いて、連結支持具41の係止部46の上面に従動作動杆19の係合部分19aが係脱する係合凹所46aが形成されているが、該係合凹所は、係合孔でも良い。
また、本実施例のポンプの駆動源は、一つであることを特徴とするが、駆動源は「二つ」でも良い。駆動源の数や態様(駆動モータの駆動力、操作ハンドルの操作力)は、本発明の限定要件ではない。
【0062】
そこで、図16乃至図18に示す第2実施例を説明する。なお、第2実施例の説明に当たって、前記第1実施例と同一の構成部分には、同一又は同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0063】
この第2実施例の駆動源は、弁部材Vの内筒体11を回転するための第1駆動モータ21A、押し出し作動体18を往復動させるための第2駆動モータ21Bがそれぞれ別個に配設され、かつ、独立に駆動し得る。このように駆動源を「二つ」にすることは、特許文献(特開2000−226100号公報、特開2002−112742号公報など)に記載の公知事項である。
【0064】
しかして、押し出し作動体18用の第2駆動モータ21Bの駆動力は、固定側部材1の上部水平板1aに固定された単数又は複数個のレール状の支持部材17Aに案内される駆動作動杆20Aに伝達される。この駆動作動杆20Aは、下面側に前記支持部材17Aに案内されるスライド板51を備え、一方、上面側に駆動モータ21Bの回転軸に固定したピニオン52に噛合するラック53を備えている。連結支軸具41の構成は、第1実施例と同一である。
【0065】
なお、駆動源が図示しない操作ハンドルの場合には、操作ハンドル側の回転円板と、該回転円板の周縁部から半径外方向に延び、かつ、押し出し作動体18の作動杆と係合する係合腕により、駆動手段を構成する。
【0066】
また、発明の実施の形態で示した実施例に於いて、流体fは、具入りスープ類を示したが、本発明はこれに限定するものではない。ホッパー5には、加工食品、塗料、各種材料などの流体fが投入され得る。加工食品の具体例は、豆乳、トマトケキャップ、マヨネーズ、スープ類、アイスクリームなどである。塗料の具体例はペンキなどである。材料の具体例としては化粧用クリーム、ペースト状歯磨きなどである。なお、図1に於いて、bはコップ類、cは具である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、主にポンプ業界で製造され、例えばスープ類を小分けしてお客に提供する食品サービス業の業界で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1乃至図15は本発明の適用例のポンプ及び本発明の一例を示す各説明図。図16乃至図18は、駆動源及び駆動作動杆の実施例を示す各説明図。
【図1】ポンプの概略断面説明図(例えば内筒体と押し出し作動体とが原点位置)。
【図2】要部(駆動源、クラッチ機構)の説明図(クラッチが駆動歯車に結合した場合)。
【図3】内筒体、押し出し作動体、従動歯車、螺合体等の概略説明図。
【図4】押し出し作動体の一例を示す説明図。
【図5】長筒状本体11aの後端部の概略縦断面図である。
【図6】従動歯車14と内筒体とが一体的に組み合っている概略説明図。
【図7】本発明が内筒体の後端部11bに内装された状態の斜視図。
【図8】主要部の概略説明図(正面図)。
【図9】主要部の概略説明図(平面図)。
【図10】連結支持具の斜視図。
【図11】図10の11−11線断面図。
【図12】弁部材を連結するときの概略説明図。
【図13】弁部材を取り外すときの概略説明図。
【図14】ポンプの作用の概略断面説明図(内筒体が回転して開口が吐出孔に連通)。
【図15】ポンプの作用の概略断面説明図(押し出し作動体が前進)。
【図16】図1と同様の概略断面説明図。
【図17】主要部の概略説明図(正面図)。
【図18】主要部の概略説明図(平面図)。
【符号の説明】
【0069】
X…流体供給用ポンプ、Y…クラッチ機構、1…固定側部材、V…弁部材、2…外筒体、3…吸引孔、5…ホッパー、6…吐出孔、7…シール構造、8…内周支持面、f…流体、b…コップ類、c…具、10…外筒体の内周壁、11…内筒体、12…開口、14…従動歯車、18…押し出し作動体、17A…支持部材、19…従動作動杆、19a…係合部分、20,20A…駆動作動杆、20a…螺杆部分、20b…係合部、20c…バネ端支持部、21…駆動モータ、21A…第1駆動モータ、21B…第2駆動モータ、22…出力軸、23…駆動歯車、26…伝動歯車、27…筒状螺合体、31…駆動手段(ソレノイド)、34…クラッチ、37…回転防止台、41…連結支持具、42…横軸、43…バネ部材、44…枢支板部、44a…軸孔、45…垂直板部、45a…押圧面、46…係止部、46a…係合凹所、46b…テーパー、47…バネ支持部、51…スライド板、52…ピニオン、53…ラック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁部材が、外弁としての外筒体と、この外筒体に回動自在に組み込まれた内弁としての内筒体と、この内筒体に摺動部分が組み込まれかつ従動作動杆を有する押し出し作動体とを備え、一方、駆動源側が、駆動源と、該駆動源の力により、かつ、支持部材に案内されて水平移動する駆動作動杆とを備え、弁部材の従動作動杆と駆動源側の駆動作動杆との連結時、前記弁部材の係合部分が、前記駆動作動杆に取付けた連結支持具に係脱するポンプの作動杆の係脱構造に於いて、前記連結支持具は、バネ部材で常時所定方向に付勢された状態で前記駆動作動杆に片手式に軸支され、該連結支持具は、取付け用枢支板部の先端部に連設する垂直板部と、該垂直板部の前面に突出状態に連設する係止部とから成ることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。
【請求項2】
請求項1に於いて、連結支持具の係止部の上面に従動作動杆の係合部分が係脱する係合凹所が形成されていることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。
【請求項3】
請求項1に於いて、弁部材の連結時、該弁部材を連結支持具の係止部のテーパーに対して押し込み、一方、弁部材を取り外す時、弁部材を持ち上げて弁部材と連結支持具の係合関係を解消し得ることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。
【請求項4】
請求項1に於いて、連結支持具を枢支する横軸は、取付け用枢支板部の上端部に位置し、一方、連結支持具を水平状態の位置へ付勢するバネ部材は、連結支持具の下部側に位置していることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。
【請求項5】
請求項1に於いて、内筒体は、長筒状本体と、該長筒状本体と係脱可能であり、かつ、連結支持具を包む短筒状後端部とを有し、前記短筒状後端部は、駆動源側に設けられた弾発性部材により常に長筒状本体の後端部に係合する方向に付勢されていることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。
【請求項6】
請求項1に於いて、駆動源は、駆動モータ、又は操作ハンドルの何れかであることを特徴とするポンプの作動杆の係脱構造。
【請求項7】
請求項1に於いて、駆動源が一つであり、かつ、該駆動源を内筒体回転用と押し出し作動体の往復動用に切り換えるクラッチ機構を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項8】
請求項1に於いて、駆動源は二つであり、一つは複数個の歯車を介して内筒体を回転させる内筒体回転用であり、他方はピニオンとラックを介して押し出し作動体を往復動させる押し出し作動体用であることを特徴とするポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−7505(P2007−7505A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188674(P2005−188674)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(503428817)株式会社ベイシティサービス (17)
【Fターム(参考)】