説明

ポンプ制御盤

【課題】ポンプの起動・停止を行うことができる遠方操作盤が接続されている場合であっても、十分に安全を確保すること。
【解決手段】給水ポンプユニットP1,P2の運転・停止制御を行う第1制御部21を有する主制御盤20と、給水ポンプユニットP1,P2の運転・停止制御を行う第2制御部51を有する遠方操作盤50と、主制御盤20に設けられ遠方操作盤50との通信を行う第1通信ポート27及びインバータQ1,Q2との通信を行う第2通信ポート28と、遠方操作盤50に設けられ主制御盤20との通信を行う第1通信ポート57と、主制御盤20に設けられ、手動・停止・自動のいずれかの運転モードを選択させると共に、自動運転モードが選択された場合にのみ、遠方操作盤50における給水ポンプユニットP1,P2の運転・停止制御を有効にする運転選択スイッチ部30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水ポンプユニットを制御するポンプ制御盤に関し、特に給水ポンプユニットから離れた位置に設けられた遠方制御盤を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
給水ポンプユニットは、音や振動の問題を回避するため生活エリアから離れた場所(地下室や屋外ポンプ室)に設置されることが多い。給水ポンプユニットを制御するポンプ制御盤は、給水ポンプユニットの近くに設置されるため、故障発生時以外に地下室や屋外ポンプ室に出向いてポンプ制御盤を操作することは面倒であることから、ポンプ制御盤と同じ操作が可能な遠方操作盤を生活エリアに設けることがあった(例えば、特許文献1参照)。なお、給水ポンプユニットの近くのポンプ制御盤と遠方操作盤とは通信ケーブルで接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−307183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した遠方操作盤を有するポンプ制御盤にあっては、次のような問題があった。すなわち、遠方操作盤を扱っている作業者は実際の給水ポンプユニットを見ることができないため、給水ポンプユニットを扱っている作業者が居るにも関わらず、遠方操作盤で操作をすると給水ポンプユニットが突然起動して、作業者に危険を及ぼす虞があった。このため、遠方操作盤は、ポンプの起動・停止を行うことができない状態監視のみの機能を有することが一般的であった。
【0005】
そこで本発明は、ポンプの起動・停止を行うことができる遠方操作盤が接続されている場合であっても、十分に安全を確保することができるポンプ制御盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のポンプ制御盤は次のように構成されている。
【0007】
1台又は複数台のポンプを制御するポンプ制御盤において、少なくとも前記ポンプの運転・停止制御を行う第1制御部、前記ポンプの運転に関する操作を行う基本操作部、前記ポンプの状態に関する情報を表示する表示部を有する主制御盤と、少なくとも前記ポンプの運転・停止制御を行う第2制御部、前記ポンプの運転に関する操作を行う基本操作部、前記ポンプの状態に関する情報を表示する表示部を有する遠方操作盤と、前記主制御盤に設けられ前記遠方操作盤との通信を行う第1通信制御部と、前記主制御盤に設けられ前記ポンプの駆動部との通信を行う第2通信制御部と、前記遠方操作盤に設けられ前記主制御盤との通信を行う第3通信制御部と、前記主制御盤に設けられ、手動・停止・自動のいずれかの運転モードを選択させると共に、自動運転モードが選択された場合にのみ、前記遠方操作盤における前記ポンプの運転・停止制御を有効にする運転選択スイッチ部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポンプの起動・停止を行うことができる遠方操作盤が接続されている場合であっても、十分に安全を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポンプ制御盤の構成を示すブロック図。
【図2】同ポンプ制御盤に組み込まれた主制御盤と遠方操作盤の操作パネルを示す正面図。
【図3】同主制御盤と遠隔操作盤の運転切替状態を示す説明図。
【図4】同主制御盤及び遠方操作盤の運転選択とポンプ運転との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施の形態にかかるポンプ制御盤10の構成を示すブロック図、図2はポンプ制御盤10に組み込まれた主制御盤20の操作パネル40又は遠方操作盤50の操作パネル70を示す正面図、図3は主制御盤20と遠隔操作盤50の運転切替状態を示す説明図、図4は主制御盤20及び遠方操作盤50の運転選択とポンプ運転との関係を示す説明図である。
【0011】
ポンプ制御盤10は、2台の給水ポンプユニットP1,P2にそれぞれ設けられたポンプ駆動用のインバータ(ポンプの駆動部)Q1,Q2を制御する機能を有している。ポンプ制御盤10は、給水ポンプユニットP1,P2の近傍に配置された主制御盤20と、給水ポンプユニットP1,P2から離れた位置(生活エリア等)に配置された遠方操作盤50と、主制御盤20と遠方操作盤50との間で信号の入出力を行う通信ケーブル100とを備えている。なお、主制御盤20とインバータQ1,Q2との間には信号の入出力を行う通信ケーブル200とが設けられている。
【0012】
主制御盤20は、操作表示やポンプの制御を行う第1制御部21を有している。制御部21には、数字を表示する7セグメントLED22、液晶ディスプレイ23、不揮発性メモリ24、操作・表示部25、ディップスイッチ26、第1通信制御部としての第1通信ポート(プロトコルA)27、第2通信制御部としての第2通信ポート(プロトコルB)28、運転選択スイッチ部30とが接続されている。上記した各部のうち、7セグメントLED22、液晶ディスプレイ23、操作・表示部25、運転選択スイッチ部30は操作パネル40上に配置されている。なお、7セグメントLED22、液晶ディスプレイ23、操作・表示部25は、ポンプの運転に関する操作を行う第1基本操作部、ポンプの状態に関する情報を表示する第1表示部としての機能を有している。
【0013】
7セグメントLED22は、7つのセグメントを有し、各セグメントの明滅で、ポンプの吐き出し揚程等の値を数字で表示する表示装置である。
【0014】
液晶ディスプレイ23は、バックライト付きで、ビットマップで数値や画像等各種表示内容に応じて適宜必要な表示を行う表示装置である。
【0015】
不揮発性メモリ24は、給水ポンプユニットP1,P2の操作プログラム、基本設定値、現在の設定値を記憶する機能を有している。
【0016】
操作・表示部25は、図2に示すように、電源状態を示す電源ランプ/優先状態を示す優先ランプ・リセットスイッチを有する電源表示部/リセット操作部25a、受水槽/流入弁/開閉を選択する選択スイッチ・選択表示ランプを有する受水槽流入弁操作部25b、メニュー方式で操作内容を入力するメニュー操作部25c、異常発生をランプやブザーで知らせる警報部25d、ポンプの正常/故障を表示するランプを有する運転・故障表示部25e、満水/減水/渇水をランプの点灯により水位を報知する液面表示部25fを備えている。電源表示部/リセット操作部25aの優先ランプは、後述するように遠方操作盤50が優先状態の時に点灯する。
【0017】
ディップスイッチ26は、接続されたポンプの台数等の基本的な内容を入力する機能を有している。
【0018】
第1通信ポート(プロトコルA)27は、遠方操作盤50との信号のやり取りに用いられる。プロトコルAは、高速の通信速度が要求されない場合に用いられる。なお、外部通信機器との接続にも用いられる。
【0019】
第2通信ポート(プロトコルB)28と、高速の通信速度が要求される場合、すなわちポンプ運転のためのインバータ通信用で応答性が重視される場合に用いられる。なお、第2通信ポート28は、実際にインバータQ1,Q2との間で信号のやり取りをしているかどうかを制御部21にフィードバックする機能を有している。
【0020】
第1通信ポート27と第2通信ポート28とは独立しており、それぞれ最大247台までの通信機器が接続可能である。
【0021】
運転選択スイッチ部30は、「手動」・停止・「自動」を設定する運転スイッチ31と、給水ポンプユニットP1,P2のいずれかの運転、又は、両方の運転を設定する選択スイッチ32である。なお、運転選択スイッチ部30は、第1制御部21が搭載された基板とは別体の基板であり、給水ポンプユニットの増減によって、運転選択スイッチ部30を基板と共に取り替えることが可能であり、第1制御部21が搭載された基板とはコネクタにより着脱自在に構成されている。
【0022】
遠方操作盤50は、主制御盤20を介して操作表示やポンプの制御を行う第2制御部51を有している。制御部51には、数字を表示する7セグメントLED52、液晶ディスプレイ53、不揮発性メモリ54、操作・表示部55、ディップスイッチ56、第3通信制御部としての第1通信ポート(プロトコルA)57、運転選択スイッチ部60が接続されている。上記した各部のうち、7セグメントLED52、液晶ディスプレイ53、操作・表示部55、運転選択スイッチ部50は操作パネル70上に配置されている。操作パネル70は上述した操作パネル40とほぼ同様に構成されている。なお、7セグメントLED52、液晶ディスプレイ53、操作・表示部55は、ポンプの運転に関する操作を行う第2基本操作部、ポンプの状態に関する情報を表示する第2表示部としての機能を有している。
【0023】
7セグメントLED52は、7つのセグメントを有し、各セグメントの明滅で、ポンプの吐き出し揚程等の値を数字で表示する表示装置である。
【0024】
液晶ディスプレイ53は、バックライト付きで、ビットマップで数値や画像等各種表示内容に応じて適宜必要な表示を行う表示装置である。
【0025】
不揮発性メモリ54は、給水ポンプユニットP1,P2の操作プログラム、基本設定値、現在の設定値を記憶する機能を有している。
【0026】
操作・表示部55は、図2に示すように、電源状態を示す電源ランプ/優先状態を示す優先ランプ・リセットスイッチを有する電源表示部/リセット操作部55a、受水槽/流入弁/開閉を選択する選択スイッチ・選択表示ランプを有する受水槽流入弁操作部55b、メニュー方式で操作内容を入力するメニュー操作部55c、異常発生をランプやブザーで知らせる警報部55d、ポンプの正常/故障を表示するランプを有する運転・故障表示部55e、満水/減水/渇水をランプの点灯により水位を報知する液面表示部55fを備えている。電源表示部/リセット操作部55aの優先ランプは、遠方操作盤50が優先状態の時に点灯する。
【0027】
ディップスイッチ56は、接続されたポンプの台数等の基本的な内容を入力する機能を有している。
【0028】
第1通信ポート(プロトコルA)57は、主制御盤20との信号のやり取りに用いられる。第1通信ポート57は最大247台までの通信機器が接続可能である。
【0029】
運転選択スイッチ部60は、「手動」・「停止」・「自動」を設定する運転スイッチ61と、給水ポンプユニットP1,P2のいずれかの運転、又は、両方の運転を設定する選択スイッチ62である。なお、運転選択スイッチ部60は、第2制御部51が搭載された基板とは別体の基板であり、給水ポンプユニットの増減によって、運転選択スイッチ部60を基板と共に取り替えることが可能であり、第2制御部51が搭載された基板とはコネクタにより着脱自在に構成されている。なお、給水ポンプユニットの増減によって、この部分を基板と共に取り替えることが可能である。
【0030】
このように構成されたポンプ制御盤10では、次のようにして給水ポンプユニットP1,P2の制御を行う。なお、主制御盤20の運転モード、遠方操作盤50の運転モード、ポンプの運転とは図4に示す関係となる。
【0031】
最初に、主制御盤20による優先運転を行う場合について説明する。運転選択スイッチ部30において、運転スイッチ31により運転モードを「手動」とする。これにより、遠方操作盤50での給水ポンプユニットP1,P2の起動・停止の操作は無効となり、電源表示部/リセット操作部55aの優先ランプが消灯し、液晶ディスプレイ53により操作無効の表示がなされる。なお、その他の状態表示は通常通り行われる。
【0032】
選択スイッチ32により、給水ポンプユニットP1,P2のいずれかの運転、又は、両方の運転を設定する。そして、操作・表示部55により必要な操作を行うことでポンプの運転を行う。
【0033】
次に、遠方操作盤50による優先運転を行う場合について説明する。運転選択スイッチ部30において、運転スイッチ31により運転モードを「自動」とする(図3参照)。これにより、遠方操作盤50での給水ポンプユニットP1,P2の起動・停止の操作が優先となり、電源表示部/リセット操作部55aの優先ランプが点灯する。また、7セグメントLED52、液晶ディスプレイ53、操作・表示部55の状態表示は通常通り行われる。
【0034】
選択スイッチ62により、給水ポンプユニットP1,P2のいずれかの運転、又は、両方の運転を設定する。そして、操作・表示部55により必要な操作を行うことでポンプの運転を行う。
【0035】
なお、運転選択スイッチ部30において、運転スイッチ31により運転モードを「停止」とすると、給水ポンプユニットP1,P2が完全に停止し、運転スイッチ61の状態、操作・表示部25,55の操作に関わらずポンプが起動することはない。停止モードは、メンテナンス時や不使用時に設定する。
【0036】
このように構成されたポンプ制御盤10では、ポンプの起動・停止を行うことができる遠方操作盤50が接続されている場合であっても、十分に安全を確保することが可能となる。
【0037】
上述した主制御盤20は遠方操作盤50を接続しない場合であっても、単独のポンプ制御盤として使用することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば給水ポンプユニットのポンプの数は、2台に限るものでない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10…ポンプ制御盤、20…主制御盤、21…第1制御部、22…7セグメントLED、23…液晶ディスプレイ、25…操作・表示部、27…第1通信ポート(第1通信制御部)、28…第2通信ポート(第2通信制御部)、30…運転選択スイッチ部、50…遠方操作盤、51…第2制御部、52…7セグメントLED、53…液晶ディスプレイ、55…操作・表示部、57…第1通信ポート(第3通信制御部)、60…運転選択スイッチ部、100…通信ケーブル、200…通信ケーブル、P1,P2…給水ポンプユニット、Q1,Q2…インバータ(ポンプの駆動部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台又は複数台のポンプを制御するポンプ制御盤において、
少なくとも前記ポンプの運転・停止制御を行う第1制御部、前記ポンプの運転に関する操作を行う第1基本操作部、前記ポンプの状態に関する情報を表示する第1表示部を有する主制御盤と、
少なくとも前記ポンプの運転・停止制御を行う第2制御部、前記ポンプの運転に関する操作を行う第2基本操作部、前記ポンプの状態に関する情報を表示する第2表示部を有する遠方操作盤と、
前記主制御盤に設けられ前記遠方操作盤との通信を行う第1通信制御部と、
前記主制御盤に設けられ前記ポンプの駆動部との通信を行う第2通信制御部と、
前記遠方操作盤に設けられ前記主制御盤との通信を行う第3通信制御部と、
前記主制御盤に設けられ、手動・停止・自動のいずれかの運転モードを選択させると共に、自動運転モードが選択された場合にのみ、前記遠方操作盤における前記ポンプの運転・停止制御を有効にする運転選択スイッチ部とを備えていることを特徴とするポンプ制御盤。
【請求項2】
前記運転選択スイッチ部は、前記ポンプの台数に応じて前記主制御盤に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御盤。
【請求項3】
前記主制御盤の表示部には優先ランプが設けられ、
前記主制御盤における前記運転選択スイッチ部の前記運転モードが自動運転モードで、かつ、前記第2の通信制御部において前記ポンプの駆動部との通信接続が行われた場合のみ、前記遠方操作盤における前記ポンプの運転・停止制御を有効とし、前記第2表示部の優先ランプを点灯させることを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御盤。
【請求項4】
前記主制御盤における前記運転選択スイッチ部の前記運転モードが手動又は停止の際、あるいは、前記第2の通信制御部において前記ポンプの駆動部の通信が遮断されている場合に、前記遠方操作盤の前記第2表示部の優先ランプは消灯させることを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御盤。
【請求項5】
前記遠方操作盤の第2表示部は、さらに警報ブザーを有し、
前記運転選択スイッチ部は、前記運転モードが手動又は停止の際、あるいは、前記第2の通信制御部において前記ポンプの駆動部の通信が遮断されている場合に、前記警報ブザーを鳴動させることを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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