説明

ポンプ容器およびポンプ式製品

【課題】ポンプ式製品において、環境温度の変化によって膨張した容器内部の空気が内容物を加圧し、加圧された内容物が上方弁・下方弁を開放しながら本来の放出通路を経て放出口から液垂れしてしまうのを防止する。
【解決手段】容器内部と外部空間とを常に連通させる孔部6aを容器本体の上面部分6に形成した。環境温度の変化によって膨張した容器内部の空気は当該孔部を通り外部空間へ流出するので、内容物の加圧によって放出口1bから当該内容物が液だれすることはない。製品の流通段階においては、初期閉塞用チップ状部材11によって当該孔部は塞がれており、当該孔部から内容物が漏れることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ容器の内部空間(内容物収納空間域)と外部空間とを、従来の容器内部減圧防止用の外気流入路とは別の態様で常時連通させて、特にポンプ容器が高温環境に置かれている場合などに生じる容器内部の膨張空気を外部空間へ積極的に流出させるようにしたものである。
【0002】
なお、本明細書においては「容器」の語を内容物のいわば直接の収納部分である容器本体のみではなく、その蓋などに相当する容器本体関連部分も含む意で用いる。例えば後述のシリンダ本体部材,シリンダカラー部材,カバーキャップ,環状シール部材,環状通気部材などの各構成要素も「容器」に含まれる。
【0003】
ポンプ機構は、そのピストン部材および操作ボタンが作動モードから静止モードへ弾性復帰する際に上流弁を開き、容器内容物の次回放出分を当該上流弁と(閉状態の)下流弁との間のいわばバッファ空間域に送り込んでいる。
【0004】
上流弁がこの開状態となるためには、容器内部(上流弁の上流側となる空間域)の圧力が上記バッファ空間域のそれよりも高くなければならない。
【0005】
そして従来、この圧力条件を充足するための構成要素としてピストン外周面側の空間域を介した容器内外の連通経路(=容器内部減圧防止用の外気流入路)を用いている。
【0006】
また、この連通経路は静止モードへ移行した後はその一部が、オフ状態(=容器内部と外部空間とが遮断された状態)に設定されたり、後述の背景技術で示すように微小な空気通過域に設定されたりしている。これは、静止モードの容器が倒れたときなどに内容物がこぼれてしまうのを防ぐためである。
【0007】
一方、ポンプ式製品は、それが置かれている環境の温度が高くなると(例えば使用後の風呂場や夏季の洗面室などに置かれている場合)、容器内部の空気が膨張して内容物を加圧する。そして、このときの圧力により、ピストンやシリンダなどに設定された内容物放出通路内の上流弁および下流弁が、本来ともに閉じているはずの静止モードのときに開状態となってしまう。
【0008】
そうすると、容器内部や上記バッファ空間域に閉じ込められていた内容物がその本来の放出通路を経て放出口まで移動し、当該放出口から液垂れして「つらら」状の形で固まってしまうことが多く、使い勝手も悪くなってしまう。
【0009】
本発明は、ポンプ容器の放出口におけるこのような「つらら」現象を確実に解消したいという要請に対し、静止モードでの内容物のこぼれ防止についての、これまでの固定観念とは異なるいわば発想の転換に基づく工夫により応えるものである。
【背景技術】
【0010】
静止モードのポンプ容器内で膨張した空気を容器内部減圧防止用の外気流入路から外部空間に排出することにより、上記液垂れを防止しようとする内容物放出用ポンプ機構は、すでに提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
この内容物放出用ポンプ機構の場合、押下げヘッド(=操作部)と一体になって連動するステム(=ピストン)が案内されるシリンダに設けた外気吸入孔(=減圧防止用孔部)から続く周知の外気流入路の弁作用部分に、容器内部の膨張空気を外部空間に逃がすための空気流出用通路域を確保している。
【0012】
そしてこの空気流出用通路域は「通水不能でかつ通気性を有する微小通路」である。すなわち静止モードにおいて、容器内部の膨張空気は外部空間に逃げるものの、容器が倒れた場合などでも容器内容物は外部空間に漏洩しない程度の大きさからなる「微小通路」である。
【特許文献1】特開平10−181761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本件出願人は、ポンプ式製品の静止モードにおける放出口の「つらら」発生と、容器内部減圧防止用の外気流入路の弁作用部分における空気流出用通路域での空気通過面の大きさとの関係を考察して検証したところ、上述の「微小通路」では容器内部の膨張空気を外部空間に十分に流出させることはできず、内容物通路域の放出口における「つらら」発生を防止するのが難しいことを確認した。
【0014】
そして、この「つらら」状態が発生しやすい内容物を入れたポンプ式製品は通常、浴室や洗面台などのように静止モードの容器が倒れて内容物がいくらか漏洩しても簡単に清掃できるような環境で使われることが多い。
【0015】
本発明では、ポンプ式製品におけるこれらの膨張空気流出作用や使用環境などに着目して、「容器内部と外部空間とを常に連通させる、すなわち静止モードにおいても容器内外を連通させる孔部などの空気通過域を例えば容器本体の上面部分や容器首部の下側周面部分に、容器内部減圧防止用の外気流入路とは別の態様で、設ける」といったきわめて有意な発想の転換を行うことにより、静止モードにおける容器内部の膨張空気をこの空気用通過域から外部空間へと積極的に流出させて、内容物放出口での「つらら」生成を極力なくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以上の課題を次のポンプ容器を用いて解決する。
(1)操作部(例えば後述の操作ボタン1)と連動するピストン(例えば後述のピストン3)のシリンダ内部での移動に基づく弁作用により容器内容物が外部空間に放出されるポンプ容器において、
容器内部と外部空間とを常に連通させる空気通過域(例えば後述の孔部5e,6a,7a,切欠部7b,環状通気部材9)が、前記ピストンと前記シリンダとの間の外部空間連通域(例えば後述の外気の流れrの経路)を含むことのない態様で、容器上側部分に設けられたものとする。
(2)上記(1)において、
前記空気通過域として、容器本体の上面部分(例えば後述の容器本体の上面6)に形成された孔部(例えば後述の孔部6a)を用いる。
(3)上記(1)において、
前記空気通過域として、容器首部(例えば後述の容器首部7)の下側周面部分に形成された孔部(例えば後述の孔部7a)を用いる、
(4)上記(1)〜(3)において、
前記空気通過域として、それに対する遮蔽部材(例えば後述の初期閉塞用チップ状部材11,14,初期閉塞用フィルム状部材12,初期閉塞用C型部材13,初期シール用リング状部材15)が取り外し自在な形で設けられたものを用いる。
【0017】
本発明は、以上の構成からなるポンプ容器および、これを備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、このように静止モードにおいても容器内外を連通させる孔部などの空気通過域を例えば容器本体の上面部分や容器首部の下側周面部分に、容器内部減圧防止用の外気流入路とは別の態様で、設けている。
【0019】
そのため、静止モードにおける容器内部の膨張空気はこの新たないわば膨張空気対策用の空気通路域から外部空間へと積極的に流出していくので、当該膨張空気が容器内容物を押圧して下流側の方に移動させようとする放出作用が防いで、内容物放出口側での「つらら」の発生を抑えることができる。
【0020】
また、この容器内部の膨張空気対策用の空気通路域はもっぱら容器側に設けられるので、操作ボタンおよびピストンは勿論のこと、これまでの減圧防止用経路を確保するための構成要素(減圧防止用孔部など)を備えたシリンダ本体部材などは既存のものをそのまま用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1乃至図6を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
ここで、
図1は、容器本体の上面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器(その1)を示し、
図2は、容器本体の上面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器(その2)を示し、
図3は、容器首部の下端側周面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器を示し、
図4は、シリンダカラー部材の上面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器を示し、
図5は、容器首部の上端に容器内外連通用の空気通過域としての切欠部が形成されるとともに、容器首部およびカバーキャップの各螺子部分に容器内外連通用の空気通過域としての図面上下方向に略連続する態様の螺子欠落域が形成されたポンプ容器を示し、
図6は、容器首部の上端面とシリンダ本体部材の環状鍔部の底面との間に挟持されるシール部材が通気性を備えるとともに、容器首部およびカバーキャップの各螺子部分に容器内外連通用の空気通過域としての図面上下方向に略連続する態様の螺子欠落域が形成されたポンプ容器を示している。
【0023】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば螺子部分1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0024】
図1〜図6において、
1は上下動する操作ボタン(操作部材),
1aは当該操作ボタンの筒状部の外周面に形成された螺子部分,
1bは内容物の放出口,
1cは当該放出口にいたる内容物の放出用通路,
2はボール状の上方弁(=下流弁),
3は周知のコイルスプリング(図示省略)により上方向に付勢され、上部の嵌合作用により操作ボタン1と一体化しているピストン,
3aは上方弁2に対する環状受面,
3bは後述のシリンダ本体部材4の内周面に対してのシール・案内作用を呈する上側スカート部,
3cは当該上側スカート部の内側に形成され、静止モードの際には後述のシリンダカラー部材5(筒状部5a)の下端面5bに当接して周知の容器内部減圧防止用の外気流入路rを遮断する環状凹部,
3dは後述のシリンダ本体部材4の内周面に対してのシール・案内作用を呈する下側スカート部,
4はピストン3を案内し、周知の下方弁(上流弁:図示省略)を備えて内容物の収納空間としても作用するシリンダ本体部材,
4aは容器内部の負圧化を阻止するための減圧防止用孔部,
4bは上側外周面に形成された環状鍔部,
4cは当該環状鍔部の上側に連続して形成された上端側筒状部,
5はシリンダ本体部4と強く嵌合しているシリンダカラー部材,
5aはピストン3をその上動位置(静止モード位置)を設定する筒状部,
5bは静止モード位置のピストン3の環状凹部3cと当接して容器内部減圧防止用の外気流入路rを遮断する(当該筒状部の)下端面,
5cは筒状部5aの内周面に形成されて例えば製品の出荷から購入・使用までの間、操作ボタン1(螺子部分1a)と螺合する螺子部分,
5dは内周面がシリンダ本体部材4の上端側筒状部分4cの外周面と強く凹凸結合する環状垂下部,
5eはシリンダ本体部材4の上端側筒状部4cとシリンダカラー部材5の筒状部5aとの間の天井部分に形成された容器内外連通用の空気通過域としての孔部(図4),
6は内容物が収納される容器本体の上面,
6aは当該上面に形成された容器内外連通用の空気通過域としての孔部(図1,図2),
7は容器本体の上面6の開口域から起立する筒状の容器首部,
7aは下端側周面に形成された容器内外連通用の空気通過域としての孔部(図3),
7bは上端部分に形成された容器内外連通用の空気通過域としての切欠部(図5),
7cは外周面に形成された螺子部分,
7dは当該螺子部分の螺子欠落域(図5,図6),
8はシリンダ本体部材4(環状鍔部4b)の底面と容器首部7の上端面とに挟持された環状シール部材(図1,図5),
9はシリンダ本体部材4(環状鍔部4b)の底面と容器首部7の上端面とに挟持されたシール性有りの環状通気部材(図6),
10は容器首部7の外周面と螺合して、シリンダ本体部材4および環状シール部材8,環状通気部材9を容器首部上端面との間に挟みこんだ状態で容器側に固定する筒状のカバーキャップ,
10aは内周面に形成された当該螺合用の螺子部分,
10bは当該螺子部分の螺子欠落域(図5,図6),
11は容器本体の上面6の孔部6aを塞いで利用者の使用段階などでは取り外される初期閉塞用チップ状部材(図1),
11aは孔部閉塞用の突状部,
12は容器本体の上面6の孔部6aを塞いで利用者の使用段階などでは取り外される初期閉塞用フィルム状部材(図2),
12aは上面6に貼着されている接着部分,
12bは当該接着部分の両側の非接着部分,
13は容器首部7の孔部7aを塞いで利用者の使用段階などでは取り外される初期閉塞用C型部材(図3),
13aは孔部閉塞用の突状部,
14はシリンダカラー部材5の孔部5eを塞いで利用者の使用段階などでは取り外される初期閉塞用チップ状部材(図4),
14aは孔部閉塞用の突状部,
15は組立後に容器本体の上面6と当接する態様でカバーキャップ10の下端側に形成されて、利用者の使用段階などでは当該カバーキャップから引き裂かれる初期シール用リング状部材(図5),
15aはカバーキャップ10の下端側との接続域である薄肉部分,
15bは引き裂き操作用のタブ,
rは「筒状部5aの内周面とピストン3の外周面との間の空間域−筒状部5aの外周面とシリンダ本体部材4の内周面との間の空間域−減圧防止用孔部4a」の経路に対応した容器内部減圧防止用の外気の流れ,
sは容器内部の膨張空気の概略的な流れ,
をそれぞれ示している。
【0025】
上述の操作ボタン1,ピストン3,シリンダ本体部材4,シリンダカラー部材5,容器本体の上面部分6,容器首部7,環状シール部材8,環状通気部材9,カバーキャップ10,初期閉塞用チップ状部材11,初期閉塞用フィルム状部材12,初期閉塞用C型部材13,初期閉塞用チップ状部材14および初期シール用リング状部材15はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものである。環状通気部材9はセラミック製のものでもよい。なお、上方弁2は金属製や合成樹脂製のものである。
【0026】
図1乃至図6の各ポンプ容器の基本的特徴は、
(11)容器上側部分(シリンダカラー部材5,容器本体の上面部分6,容器首部7,環状通気部材9,カバーキャップ10など)に、容器内部の膨張空気の流れsの経路を、既存の容器内部減圧防止用の外気の流れrの経路とは別に設定し、
(12)この流れsの経路を例えば製品の使用段階まで遮断してオフにするための閉塞部材やシール部材(初期閉塞用チップ状部材11,初期閉塞用フィルム状部材12,初期閉塞用C型部材13,初期閉塞用チップ状部材14,初期シール用リング状部材15など)を取り外し可能な形で備えている、
ことである。
【0027】
これにより、製品使用段階での静止モードにおける容器内部の膨張した空気の外部空間への流出動作が確実に行われ、また製品の出荷・販売段階などでの内容物のこぼれを確実に防ぐこともできる。
【0028】
なお、容器内外連通用の空気通過域としての孔部5e,6a,7a,切欠部7b,螺子欠落域7d,10bなどの大きさは、上述の閉塞部材やシール部材を取り外した状態での容器内部の膨張空気の発生の程度および、容器の倒れにともなう容器内容物のこぼれの程度を考慮して適宜設定される。それぞれの設定個数も任意である。
【0029】
例えばこれら孔部,切欠部の空気流れ方向と略直交する方向の長さは例えば0.1〜6.0mmである。また流出対象の膨張空気に対する第2ゲート(第1ゲートは切欠部7bや環状通気部材9)ともいえる螺子欠落域7d,10bなどは大きさについての自由度がこれら孔部,切欠部よりも高い。
【0030】
ここで操作ボタン1およびこれと一体になっているピストン3などの動作自体はこれまでの周知のポンプ機構と同じである。
【0031】
図示の静止モードにおける操作ボタン1およびピストン3は、周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性力により上方向に付勢され、当該ピストンの環状凹部3cの底面がシリンダカラー部材5の下端面5bに当接した状態で停止している。すなわち容器内部減圧防止用の外気の流れrはこの当接部分で遮断されている。
【0032】
そして、初期閉塞用チップ状部材11,初期閉塞用フィルム状部材12,初期閉塞用C型部材13,初期閉塞用チップ状部材14および初期シール用リング状部材15を容器側から取り外した図示の各静止モードにおける、容器内部で膨張した空気は、
・容器本体上面の孔部6a(図1,図2の場合)
・容器首部の孔部7a(図3の場合)
・シリンダカラー部材の孔部5e(図4の場合)
・容器首部の切欠部7bと、これに続く容器首部およびカバーキャップそれぞれの螺子欠落域7d,10b(図5の場合)
・環状通気部材9と、これに続く容器首部およびカバーキャップそれぞれの螺子欠落域7d,10b(図6の場合)
を通るそれぞれの流出経路(流れs)により外部空間に移動する。
【0033】
なお、容器首部7およびカバーキャップ10それぞれの螺子欠落域7d,10bはそれぞれ製品組立状態で図示上下方向の略直線状に合致するように形成されている(図5,図6)。
【0034】
上述したようにポンプ機構の動作は周知のものであり、図示の静止モードの操作ボタン1を押下げるとピストン3も下動して、上方弁2と、閉状態の周知の下方弁(図示省略)との間のいわばバッファ空間域(ピストン3およびシリンダ5の内部空間域)の容積が小さくなる。
【0035】
そのため当該バッファ空間域の内容物圧力が大きくなって上方弁2が開き、当該バッファ空間域の内容物が放出用通路1cを経て放出口1bから外部空間に放出される。
【0036】
このとき下方弁(上流弁)は周知のごとく閉じている。また、ピストン3の環状凹部3cの底面がシリンダカラー部材5の下端面5bから離れるので、外気流入路(流れr)の上記遮断状態は解除される。
【0037】
そして利用者が操作ボタン1の押下げを止めるとピストン3は周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用により上動して図示の静止モードに移行する。
【0038】
この上動にともない上記バッファ空間域の容積が増加してその中の圧力が低下するので、周知の下方弁(図示省略)は開き、容器本体の内容物がこの下方弁から当該バッファ空間域に流入する。
【0039】
この内容物流入により容器内部の(内容物が存在していない空間域の)空気圧が減じることになるが、その減少分に見合った量の外気が流れrや、流れsとは逆方向の流れの態様で容器内部に流入する。
【0040】
なお周知のことであるが、ポンプ式製品の出荷・販売段階における操作ボタン1は、利用者の通常操作による下動位置よりも押下げられた形で、その螺子部分1aがシリンダカラー部材5の螺子部分5cと螺合した状態に設定される。
【0041】
本発明が、図1〜図6で示した形のポンプ容器に限定されないことは勿論である。
【0042】
例えば図示のポンプ容器はいずれも既存のシリンダ本体部材4、すなわち減圧防止用孔部4aが形成されたシリンダ本体部材を用いることにしているが、(当該孔部の存在を前提とする容器内外連通用の孔部5eが形成された図4のポンプ容器を除いて)当該孔部を省略した形のシリンダ本体部材を用いてもよい。それは、容器内部の膨張空気の流出経路sが容器内部減圧防止用の外気流入経路としても作用するからである。
【0043】
また、
(21)図6のカバーキャップ10に図5の初期シール用リング状部材15と同様のものを設ける、
(22)シリンダ本体部材4に減圧防止用孔部4aを形成して外気の流れrの流入経路を確保した上で、空気通過域としての孔部5e,6a,7aや切欠部7bなどに一方向性の弁部材、すなわち容器内部から外部への流出のみを許容する弁部材を設ける、
ようにしてもよい。
【0044】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、シャンプー,リンス,液体ソープ,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォームなどの各種用途のものがある。
【0045】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0046】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0047】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0048】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0049】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0050】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0051】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0052】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】容器本体の上面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器(その1)を示す説明図である。
【図2】容器本体の上面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器(その2)を示す説明図である。
【図3】容器首部の下端側周面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器を示す説明図である。
【図4】シリンダカラー部材の上面に容器内外連通用の空気通過域としての孔部が形成されたポンプ容器を示す説明図である。
【図5】容器首部の上端に容器内外連通用の空気通過域としての切欠部が形成されるとともに、容器首部およびカバーキャップの各螺子部分に容器内外連通用の空気通過域としての図面上下方向に略連続する態様の螺子欠落域が形成されたポンプ容器を示す説明図である。
【図6】容器首部の上端面とシリンダ本体部材の環状鍔部の底面との間に挟持されるシール部材が通気性を備えるとともに、容器首部およびカバーキャップの各螺子部分に容器内外連通用の空気通過域としての図面上下方向に略連続する態様の螺子欠落域が形成されたポンプ容器を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1:操作ボタン(操作部材)
1a:螺子部分
1b:放出口
1c:放出用通路
2:ボール状の上方弁(=下流弁)
3:ピストン
3a:環状受面
3b:上側スカート部
3c:環状凹部
3d:下側スカート部
4:シリンダ本体部材
4a:減圧防止用孔部
4b:環状鍔部
4c:上端側筒状部
5:シリンダカラー部材
5a:筒状部
5b:下端面
5c:螺子部分
5d:環状垂下部
5e:孔部(図4)
6:容器本体の上面
6a:孔部(図1,図2)
7:筒状の容器首部
7a:孔部(図3)
7b:切欠部(図5)
7c:螺子部分
7d:螺子欠落域(図5,図6)
8:環状シール部材(図1,図5)
9:環状通気部材(図6)
10:筒状のカバーキャップ
10a:螺子部分
10b:螺子欠落域(図5,図6)
11:初期閉塞用チップ状部材(図1)
11a:孔部閉塞用の突状部
12:初期閉塞用フィルム状部材(図2)
12a:接着部分
12b:非接着部分
13:初期閉塞用C型部材(図3)
13a:孔部閉塞用の突状部
14:初期閉塞用チップ状部材(図4)
14a:孔部閉塞用の突状部
15:初期シール用リング状部材(図5)
15a:薄肉部分
15b:引き裂き操作用のタブ
r:容器内部減圧防止用の外気の流れ
s:容器内部の膨張空気の概略的な流れ,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と連動するピストンのシリンダ内部での移動に基づく弁作用により容器内容物が外部空間に放出されるポンプ容器において、
容器内部と外部空間とを常に連通させる空気通過域が、前記ピストンと前記シリンダとの間の外部空間連通域を含むことのない態様で、容器上側部分に設けられている、
ことを特徴とするポンプ容器。
【請求項2】
前記空気通過域は、容器本体の上面部分に形成された孔部である、
ことを特徴とする請求項1記載のポンプ容器。
【請求項3】
前記空気通過域は、容器首部の下側周面部分に形成された孔部である、
ことを特徴とする請求項1記載のポンプ容器。
【請求項4】
前記空気通過域に対する遮蔽部材が取り外し自在な形で設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポンプ容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のポンプ容器を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−179373(P2008−179373A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12555(P2007−12555)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】