説明

ポンプ用チューブセットの操作システム

【課題】たるんだ部分(42)を有するチューブセット(12)と共に使用するための医療用ポンプ(10)を提供する。
【解決手段】入口ライン(16)から出口ライン(22)へと流体を量り取るため、ポンプハウジング(28)およびポンピング機構(15)を備えている医療用ポンプである。チューブスナップまたはチューブスナップセット(36)が、第1および第2のチューブスナップ(38、40)の間にたるんだ部分を集めて保持するため、ポンプハウジング上かつポンピング機構から離れて配置されている。これに加え、あるいはこれに代えて、チューブハンガー(52)を、チューブハンガーとポンプハウジングとの間にたるんだ部分を挿入することができるように、ポンプハウジングに取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用または臨床用設備の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、チューブセットのラインまたは他のラインのたるんだ部分を、これらに限られるわけではないが医療用ポンプなどの医療用装置に固定するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の医療は、患者へと流体および/または液状の薬剤を届けるため、医療用ポンプまたは他の装置の使用を必要とすることがしばしばである。医療用ポンプは、典型的には、チューブセットを通して患者へと流体を量り取るために使用される。
【0003】
チューブセットは、典型的には、流体バッグから医療用ポンプへと流体を運ぶ入口ライン部と、医療用ポンプから患者へと流体を運ぶ出口ライン部とを有している。チューブセットは、多様な設計で提供されるため、入口ライン部および出口ライン部の長さは一定ではなく、用途ごとに異なることが多い。さらに、流体バッグから医療用ポンプまでの距離、および医療用ポンプから患者までの距離も、やはり変化する。これらラインの長さの変化ならびに流体バッグ、医療用ポンプ、および患者間の距離の変化によって、入口ライン部および出口ライン部のうちの1つ以上に、ラインのたるんだ部分が形成されることがしばしばである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たるんだ部分が入口ライン部または出口ライン部のどちらで生じようと、それらはよく見ても不便であり、最悪の場合には、患者への流体の適切な投与にとって有害である。流体バッグ、チューブセット、および医療用ポンプは、しばしば車輪付きの柱状スタンドに取り付けられ、新たな場所へと運ばれる。移動の際、出口ライン部のたるんだ部分によって、チューブセットのアダプタ端が床面で引きずられ、前もって殺菌しておいたチューブセットが汚染される可能性がある。例えばプログラム可能な多チャネルの医療用ポンプにおいて、2つ以上のチューブセットが使用されている場合には、たるんだ部分によって、ユーザがチューブセット/チャネルの適切な対応を見失う可能性があり、流体を患者へと誤って投与することになりうる。また、緩くたるんだ部分によって、チューブセットの周囲を移動する者が絡まったり、および/またはつまずいたりする危険が生じる。
【0005】
したがって、本発明の主たる目的は、チューブセットのラインのたるんだ部分を、医療用ポンプまたは同種の装置へと固定するための手段を提供することにある。
【0006】
本発明のさらなる目的は、チューブセットのラインのたるんだ部分を、ほぼ垂直な流れのパターンが容易に維持されるように医療用ポンプへと固定するための手段を提供することにある。
【0007】
本発明のさらなる目的は、チューブセットのラインのたるんだ部分を、流路/チャネルの対応がユーザにとって視覚的に容易に明らかであるように、医療用ポンプへと固定するための手段を提供することにある。
【0008】
本発明のさらなる目的は、ラインの折れ曲がり、よじれ、および閉塞の可能性が低減されるように、チューブセットのラインのたるんだ部分をループにして医療用ポンプへと固定するための手段を提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、チューブセットのラインのたるんだ部分を、医療用ポンプのハンドルへと固定するための手段を提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的は、チューブセットのラインのたるんだ部分を、医療用ポンプの前面に位置するクリート(cleat)またはチューブハンガーへと固定するための手段を提供することにある。
【0011】
これらの目的および他の目的は、当業者にとって明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、医療用または臨床用設備の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、チューブセットのラインまたは他の同様の細長いラインのたるんだ部分を、これに限られるわけではないが医療用ポンプなどの医療用装置に固定するための手段に関する。
【0013】
入口ライン部、出口ライン部、たるんだライン部、および作動ライン部を有するチューブセットと共に使用するための、ポンプなどの医療用の装置が開示される。ポンプは、入口ライン部から出口ライン部へと流体を量り取るため、ポンプハウジングおよびポンピング機構を有している。一実施形態においては、ポンプ上かつポンピング機構から離れて位置する少なくとも1つのチューブスナップが、チューブセットのたるんだ部分を挿入および取り外しできるように構成されている。他の実施形態においては、少なくとも1つのチューブスナップを、ポンプ上かつポンピング機構から離して位置させて備えているチューブスナップセットが、チューブセットのたるんだ部分を挿入および取り外しできるように構成されている。好ましくは、チューブスナップセットは、一対の溝によって画定される第1および第2のチューブスナップを備えている。チューブスナップ溝の少なくとも1つは、好ましくは、チューブセットとポンピング機構との対応をユーザが容易に認識できるように、ポンピング機構とほぼ平行に延びている。チューブスナップセットは、第1および第2のチューブスナップの間において、入口ライン部のたるんだ部分を集め、保持し、長さを調節できるようにする。
【0014】
チューブハンガー綱止めが、ユーザがたるんだ部分を吊り下げることができるように、ポンプハウジングに取り付けられている。好ましくは、綱止めは、チューブハンガー綱止めとポンプハウジングとの間にラインの一部を挿入することができるように、十分にポンプハウジングから離間している。さらに好ましくは、綱止めを、チューブハンガー綱止めとポンプハウジングとの間にラインのたるんだ部分を集めて保持するために、使用することができる。綱止めは、主アームに対して横方向に延びる第1および第2の横フックを有している。第1および第2の横フックを、1つのチューブセットのたるんだ部分を集めて保持するために利用することができ、あるいは2つの別個のチューブセットのたるんだ部分をチューブハンガー綱止めとポンプハウジングとの間に集めて保持するために利用することができる。
【0015】
図面においては、以下の記載ばかりでなく、同様の特徴は同じ参照符号によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による単一チャネル医療用ポンプの斜視図である。
【図2】本発明によるポンプと共に使用されるチューブセットの正面図である。
【図3】本発明による二重チャネル医療用ポンプの斜視図であり、多重チューブセットと協働するチューブスナップとチューブハンガーを示す図である。
【図4A】図1の線4−4に沿う本発明のチューブセットのスナップの部分断面図であり、チューブスナップの中に挿入またはスナップされるチューブセットのたるんだ部分を示す図である。
【図4B】図1の線4−4に沿う本発明のチューブセットのスナップの部分断面図であり、チューブスナップの中に挿入またはスナップされるチューブセットのたるんだ部分を示す図である。
【図4C】図1の線4−4に沿う本発明のチューブセットのスナップの部分断面図であり、チューブスナップの中に挿入またはスナップされるチューブセットのたるんだ部分を示す図である。
【図5】本発明のチューブハンガーとポンプハウジングの部分分解斜視図である。
【図6】本発明のチューブハンガーとポンプハウジングのもう1つの部分分解斜視図である。
【図7】図6の線7−7に沿うチューブハンガーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明による単一チャネル医療用ポンプ10が示されている。本明細書において使用される用語「医療用ポンプ」は、経腸栄養ポンプ、非経口、即ち静脈内(IV)注入ポンプ、シリンジポンプ、またはチューブ類を介して患者に流体を送出するための任意の単一もしくは多チャネルの流体ポンピング装置を含むが、これらに限定されない。
【0018】
さらに、図2を参照して、典型的には、ポンプ10は、患者に流体を送出すべく1つ以上のチューブセット12と共に使用される。当然のことながら、ポンプ10およびチューブセット12は、図1および図2に示されるものより少ない、または多い部品を含んでもよい。しかしながら、チューブセットは本発明の主眼ではなく、全てのチューブセットの部品が、本発明を実行する例示的な実施形態を開示するために示される必要はない。
【0019】
場合によっては、ポンプがカセットポンプとして知られるタイプのような場合、チューブセット12は、作動ライン部(以下、「作動部」という)としてカセット14を含む。チューブセット12は、典型的には1人の患者に対して、且つ1つの流体送出サイクルに対してのみ使用される。チューブセット12の作動部、さらに詳細には、本実施形態におけるカセット14は、ポンピング機構またはチャネル15の中に挿入、即ち受容される。
【0020】
ポンピング機構15は、ポンプのポンプハウジング28と種々の方法で協働されることができる。ポンピング機構15は、ポンプハウジング28に取り付けられ、その中に収容され、それに直接的または間接的に接続され、または、ポンプハウジング28に有線または無線により遠隔的に接続されることもできる。ポンピング機構15は、チューブセット12の作動部(カセット14)上で受容され且つ作動することにより、チューブセット12を介して流体の流れ方向に流体の流れを制御または測定する。チャネル/チューブセットの識別を最も容易にするための他の配置が可能であるが、ポンプ10、ポンピング機構15、チューブセット12、従って流体の流れの方向の通常の配置は、好ましくは、図1の矢印によって示されるようにほぼ鉛直である。本発明はまた、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、およびブレードポンプを含むがこれらに限定されない、チューブ類上で使用または作動する他のタイプの従来型ポンピング機構によって使用され得ることは、当業者には理解されるであろう。
【0021】
チューブ17を備える入口ライン部16は、カセット14の入口ポート18と流体コンテナまたはバッグ20のような流体源との間で、流体的に接続されている。非カセットタイプのポンプでは、入口ライン部16は、流体バッグ、または流体源とポンピング機構との間の部分、すなわちポンピング機構の上流部として画定される。流体源、入口部、およびポンピング機構は、注射器のような単一の装置の中に組み込まれることができる。同様に、チューブ17を備える出口ライン部22は、カセット14の出口ポート24とチューブセット12の適合端26の間に、流体連通して接続されている。非カセットタイプのポンプでは、出口ライン部22は、ポンピング機構の下流部として画定されている。もちろん、作動部は、ポンピング機構によって作動されるチューブセットの部分である。本発明は、カセット14を備える作動ライン部に接続された入口ライン部16と出口ライン部22を有するチューブセット12と共に使用されるものとして記載されているが、本発明はまた、カセットを有しておらず、入口および出口ライン部16および22が一体構造であるか、または他の手段によって接続されているチューブセットと共に使用されるように、構成されることができる。
【0022】
図1を参照すると、医療用ポンプ10は、ユーザがハンドル部30によってポンプ10をつかむことを可能にするハンドル部30を有する、ポンプハウジング28を含む。ポンプハウジング28は、前壁32、底壁34、および前壁32上のユーザインタフェース画面35を含む。チューブスナップセット36は、ポンプハウジング28上に、好ましくは、ポンピング機構15から遠く離れて、さらに好ましくはポンピング機構32の近くのハンドル部30上に位置している。チューブスナップセット36は、チューブセットのたるんだ部分の挿入または取り外しを行うように構成されている。
【0023】
チューブスナップセット36は、ユーザが第1のポンピング機構32から遠く離れた位置で、入口ライン16をポンプ10に取り外し自在に固定する、第1のチューブスナップ38を含む。第2のチューブスナップ40は、ハンドル部30の第1のチューブスナップ38から離間して、および近接して位置している。第1および第2のチューブスナップ38および40は、チューブスナップ36を形成している。チューブスナップセット36により、ユーザは、入口ライン16のたるんだ部分42を、第1のチューブスナップ38と第2のチューブスナップ40の間で、ポンプ10に集めて保持することができる。図示されているように、たるんだ部分42は、固定時にループ状に形成されてもよい。有利には、チューブスナップセット36により、たるんだ部分42のループの長さが調節される。チューブスナップセット36は、このループをポンプ10に摺動自在に固定すると共に、ループがほどけるのを防止する。ユーザは、たるんだ部分42においてまたはその近くでチューブセット12を長手方向または軸方向に引っ張ることにより、たるんだ部分42の長さを調節することができる。従って、チューブスナップセット36は、チューブセット12のたるんだ部分42を、保持されたたるんだ部分42が長さ調節自在になるように第1のチューブスナップ38と第2のチューブスナップ40の間で受容して、摺動自在に保持するように構成されている。
【0024】
図1、図4Aから図4Cを参照すると、第1および第2のチューブスナップ38および40は、それぞれ、ハンドル部30内の長尺状溝44として形成される。好ましくは、一対の溝の各溝44は、ハンドル部30を横切って、更に好ましくは、ハンドル部30の中央長手軸にほぼ垂直に延びている。従って、1つ以上の溝44は、ポンピング機構15を介して流体の流れ方向にほぼ並行に延びている。溝44は、入口ライン部16のチューブ17の挿入および取り外しを可能にする開口46を有する。対向する一対のテーパ状エッジ48は、開口46のまわりに位置しており、チューブ17が溝44に挿入されたときにたるんだ部分42をポンプ10に固定する。好ましくは、溝44の開口46は、チューブ17と直径がほぼ同じであり、チューブ17の周囲180度以上を包囲するC字状である。その結果、ユーザは、チューブセット12のたるんだ部分42を溝44に手動で挿入するか、スナップ止めし、これによってその部分は、ユーザによって引っ張られない限り保持される。チューブセット12のチューブ17は、溝の開口46に挿入されるか、またはそこから引き抜かれるときに、弾性的に変形する。溝44、開口46、テーパ状エッジ48、およびそれらの間の隙間は、必要とされる挿入および引き抜きの力が、ほとんどのユーザの能力内におさまるように、およびチューブ17が永久に変形されることなく堅く保持されるように(サイズ、形状、および半径が)形成されている。チューブ17の永久的な変形は、ポンプ10の流れ特性および作動に悪影響を与えることがある。
【0025】
図示の実施形態は、チューブスナップセット36を、入口ライン部16のたるんだ部分を保持するために使用されるものとして示しているが、必要に応じて、出口ライン部22のたるんだ部分を同様に保持できることを、当業者であれば理解できるであろう。換言すれば、たるんだ部分が、入口ライン部16において生じてもよく、あるいは出口ライン部22において生じてもよい。さらに、ただ1つのチューブスナップまたは溝を、ポンプハウジングにおいてポンピング機構から離れた位置に形成して使用してもよく、特に溝が流体の流れの方向に対してほぼ平行であるならば、本発明の利益の大部分を得ることができる。さらに好ましくは、溝は、ポンピング機構の上方でポンピング機構にほぼ垂直に整列して位置するべきである。
【0026】
図3は、第1および第2のポンプ機構15および15Aなど、複数のポンピング機構をポンプハウジング28に組み合わせることができることを示している。ポンピング機構15、15Aはそれぞれ、チューブセット12、12Aのカセット14、14A(図示せず)を受容し、カセット14、14Aに作用して、流体の流れの方向に入口ライン部16、16Aから、カセット14、14Aを通過して出口ライン部22、22Aへと、流体を量り取る。ポンプ10Aが、2つのポンピング機構15および15Aを備えて図示されているが、当業者であれば、本明細書に開示の考え方を利用することによって、さらに追加のポンピング機構を有するポンプへと、本発明を容易に構成させることができるであろう。図示の実施形態においては、第1のチューブスナップセット36および第2のチューブスナップセット36Aが、それぞれ第1および第2のポンピング機構15および15Aの上方に設けられている。第1のチューブスナップセット36と同様、第2のチューブスナップセット36Aは、少なくとも1つ、より好ましくは複数、もっとも好ましくは2つのチューブスナップ38A、40Aを備えている。図3は、チューブスナップ38、40、38A、40Aの対が、どのようにポンピング機構15、15Aの上方にほぼ整列され、ポンプハウジング28の前壁32のユーザインターフェース画面35を妨げることがないままにしておいているかを示している。さらに、図3は、チューブスナップ38、40、38A、40Aが、内側のスナップ38、38Aまたは外側のスナップ40、40Aのいずれかを、入口部16、16Aのポンピング機構15、15Aの上流に最も近い部分のために利用できるように、それぞれの対において互いに密に近接している(すなわち、並置されている)ことを示している。チューブスナップセット36および36Aが離間して、それぞれ対応するポンピング機構15および15Aの付近に位置し、さらに好ましくはポンピング機構15および15Aに対してほぼ垂直に整列しているため、一旦チューブセット12、12Aがそれぞれのチューブスナップセット36および36Aに固定されると、適切なチューブセットを適切なチャネルまたはポンピング機構15、15Aへと組み合わせる際のユーザの混乱が低減される。
【0027】
図1および図3から図7を参照すると、ハウジング凹部50、50Aが、ポンプハウジング28の一部を形成している。ハウジング凹部50、50Aは、好ましくは、ポンプハウジング28の前壁32から内向きに広がっている。さらに好ましくは、ハウジング凹部50、50Aは、ポンプハウジング28の前壁32から底壁34へと、凹部50、50Aの奥行きを底壁34に向かって次第に増加させつつ広がっている。
【0028】
チューブハンガー52が、チューブセット12のたるんだ部分42’を受容してポンプ10に取り外し自在に固定するため、ポンプハウジング28に取り付けられている。チューブハンガー52は、ポンプハウジング28から外向きに延びる主アーム54を備えるとともに、ポンプハウジング28に対して離間した関係で主アーム54から横方向に延びる、少なくとも1つのフック56、さらに好ましくは対向して延びる一対のフック56、56Aを有しており、フック56および/または56Aとポンプハウジング28との間に、たるんだ部分42’が受容され、吊り下げられ、保持される。好ましくは、ハウジング凹部50、50Aが、チューブハンガー52のフック56またはフック56、56Aの後方に位置して、フック56またはフック56、56Aに位置合わせされている。
【0029】
各フック56、56Aは、主アーム54に取り付けられた近位端58と、挿入隙間62、62Aを画定するようポンプハウジング28に対して配置された遠位端60とを有している。隙間62、62Aは、チューブセット12のたるんだ部分42’を自由に、さらに好ましくはわずかな人力で(すなわち、「スナップ式に(snappingly)」)、チューブセットを恒久的に変形させることなく通過させることができるように、構成または調節されている。好ましくは、各フック56、56Aは、挿入隙間62、62Aがフックとポンプハウジング28との間のチューブ保持スペース63へと開口するように構成される。チューブ保持スペース63の幅は、フックの遠位端60とフックの近位端58との間において、いったん増加し、次いで減少している。当然ながら、チューブ保持スペース63は、その幅がもっとも広くなる点において、好ましくはチューブの直径よりもかなり幅広い。これは、チューブの恒久的な変形を防止するとともに、複数のチューブまたはチューブのループを、フック56またはフック56、56Aから吊り下げできるようにする上で役に立つ。
【0030】
フック56、56Aは、好ましくは、ポンプ10が図示の向きにあるとき、水平方向に延びている。チューブハンガー52の主アーム54は、ポンプハウジング28の容易にアクセス可能な任意の部分へと、堅固に取り付けることができる。例えば、チューブハンガー52の主アーム54を、ポンプハウジング28の底壁34、ユーザインターフェース画面35の下方の前壁32、あるいはさらに好ましくは、前壁32および底壁34の両者へと取り付けることができる。後者の構成が、図5に示されている。チューブハンガー52は、ハウジング28上、ハンガー52上、または両者の固定手段によってポンプハウジング28に取り付けることができる。固定手段は、これらに限られるわけではないが、ねじ、リベット、熱による溶着またはステーキング(staking)、対をなす凹部とツメ、またはスナップなど、従来の任意の適切な固定具53を備えることができる。
【0031】
図5から図7に照らして最もよく理解されるとおり、チューブハンガー52は、好ましくは実質的に平滑であり、少なくとも半剛体であり、耐久性のある重合体プラスチック材料で構成されている。チューブハンガー52は、ある程度のスリップ防止摩擦表面特性を有する弾性的に可撓な材料で形成でき、成型でき、あるいは被覆することができる。もっとも好ましくは、チューブハンガーは、ゴム状弾性を有するより柔らかい材料の層66でオーバーモールドされ、被覆され、あるいはそのような材料とともに共押し出しされた、硬質熱可塑性基材64からなる。
【0032】
基材の材料としては、これらに限られるわけではないが、アクリロニトリル、ブタジエン、およびスチレンの共重合体(ABS)、またはポリカーボネート、アクリロニトリル、ブタジエン、およびスチレンの共重合体(PC/ABS)を挙げることができる。好ましくは、ポンプハウジング28が同様の材料で形成され、チューブハンガー52のポンプハウジング28への熱溶着または熱によるステーキングが容易にされる。
【0033】
オーバーモールド層66としては、これらに限られるわけではないが、ネオプレンまたはサノプレン(sanoprene)などの合成ゴムが挙げられる。オーバーモールド層66の可撓性および弾性によって、チューブセット12のたるんだ部分42’を、損傷を与えることなく隙間62または62Aを通して容易に通過させることができる。さらに、オーバーモールド層66によれば、ユーザが挿入または引き出しの際に隙間62または62Aを通ってたるんだ部分42’を強制的に押し引きしなければならないよう(すなわち、スナップ)、遠位端60における隙間62または62Aの幅Wを、チューブの直径よりもわずかに小さく設定することができる。これにより、意図せぬ外れを防止することによって、たるんだ部分42’のチューブハンガー52への保持が向上する。チューブハンガー52の形状に加え、オーバーモールド層66のスリップ防止の材料特性が、たるんだ部分42’のループを所定の位置に保持する上で役に立つ。
【0034】
チューブハンガー52は、ポンプハウジング28から外向きに広がり、ポンピング機構15から離れた位置において、たるんだ部分42’を受容し、吊り下げ、ポンプ10へと取り外し自在に固定するように構成されている。図1は、ただ1つのチューブセット12のたるんだ部分42’を、どのようにループにしてチューブハンガー52から吊り下げ、あるいはチューブハンガー52に固定できるのかを示しており、一方、図3は、2つの別個のチューブセット12のたるんだ部分42’、42A’を同時に吊り下げ、または固定するために、どのようにチューブハンガー52を使用できるのかを示している。図3においては、二重チャネルのポンプ10Aが、2つのポンピング機構15、15A、およびこれらに組み合わせられた対応するチューブセット12、12Aを有している。図示の実施形態においては、チューブセット12、12Aが同一であるが、必ずしもそのようである必要はない。
【0035】
第1の横フック56によって、ユーザは、第1のチューブセット12の出口ライン22のたるんだ部分42’を、ハウジング凹部50において第1の横フック56とポンプハウジング28との間のチューブ保持スペース63内に集め、吊り下げ、保持することができる。図示のとおり、第2のチューブセット12Aの出口ライン22のたるんだ部分42’を、固定時にループへと形成することができ、チューブハンガー52が、このループをポンプ10へと固定し、通常はループがほどけることがないようにする。第2の横フック56Aによって、ユーザは、出口ライン22Aのたるんだ部分42A’を、ハウジング凹部50Aにおいて第2の横フック56Aとポンプハウジング28との間のチューブ保持スペース63内に集めて、保持することができる。図示のとおり、たるんだ部分42A’を、固定時にループへと形成することができ、チューブハンガー56Aが、このループをポンプ10へと固定し、通常はループがほどけることがないようにする。しかしながら、適切なチューブ保持スペースが設けられているならば、ユーザは、チューブを長手方向すなわち軸方向に引っ張ることによって、たるんだ部分42’、42A’のループの長さを調節することができる。
【0036】
第1および第2の横フック56、56Aが、それぞれ対応するポンピング機構15、15Aの付近に位置しているため、一旦チューブセット12、12Aがそれぞれ対応する第1および第2の横フック56および56Aに固定されると、適切なチューブセットを適切なチャネルまたはポンピング機構へと組み合わせる際の、ユーザの混乱が低減される。
【0037】
図1および図3は、チューブハンガー52を少なくとも2つの異なる方法または配置に従って利用できる旨を示している。第1に、たるんだ部分42’を、図1に示すように両方の横フック56、56Aの周囲に巻き付けることができる。これは、たるんだ部分42’を確実に固定することができ、ポンプ10が単一チャネルまたはポンピング機構15を有する場合に、好ましい方法または配置である。第2の方法または配置は、図3に示されており、二重チャネルまたはポンピング機構15、15Aを有するポンプ10Aにおいて好ましい。たるんだ部分42’、42A’において、1つ以上のループが形成される。次いで、たるんだ部分42’、42A’のループが、チューブハンガー52の両端のそれぞれの隙間62、62Aに挿入される。これにより、チューブハンガー52は、2つの別個のチューブセット12、12Aのたるんだ部分42、42A’を、それらが容易に交差または混乱することがないように、主アーム54の幅によって自動的に離間するようなやり方で、保持することができる。
【0038】
さらに、チューブスナップおよびチューブハンガーの両者が、ラインの折れ曲がり、よじれ、および閉塞の可能性を低減するため、チューブセットのラインのたるんだ部分をループにして医療用ポンプに固定するための手段をもたらしていることが、見て取れるであろう。
【0039】
このように、本発明が、チューブセットのラインのたるんだ部分を医療用ポンプへと固定するための手段を提供し、少なくとも上述の本発明の課題の全てを達成するであろうことが、分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ライン部、出口ライン部、たるんだライン部、および作動ライン部を有するチューブセットと共に使用される、医療用ポンプであって、
ポンプハウジングと、
ポンプハウジングと協働して、チューブセットの作動ライン部を受容すると共に、チューブセットの入口ライン部から出口ライン部に流体をポンピングするように構成された、ポンピング機構と、
チューブセットのたるんだ部分の挿入および取り外しができるように構成された、チューブスナップセットとを備える、医療用ポンプ。
【請求項2】
チューブスナップセットは、ポンプハウジングのハンドル部上において、ポンピング機構から遠く離間して位置する、請求項1に記載の医療用ポンプ。
【請求項3】
チューブスナップセットは、第1のチューブスナップと、第1のチューブスナップから離間した第2のチューブスナップとを含み、チューブスナップセットは、第1のチューブスナップと第2のチューブスナップの間のチューブセットのたるんだ部分を受容すると共に摺動自在に保持して、この保持されたたるんだ部分の長さを調節可能なように構成されている、請求項1に記載の医療用ポンプ。
【請求項4】
ポンプハウジングは、第1のチューブスナップと第2のチューブスナップを画定する一対の長尺状の溝が中に形成されており、各溝は、テーパ付けられた一対の対向エッジと、それらの間に延びる開口とを有している、請求項3に記載の医療用ポンプ。
【請求項5】
溝の開口はC字形である、請求項4に記載の医療用ポンプ。
【請求項6】
チューブセットのたるんだ部分をポンプに受容すると共に取り外し自在に固定すべく、ポンプハウジングに取り付けられたチューブハンガーをさらに備える、請求項1に記載の医療用ポンプ。
【請求項7】
チューブハンガーは、ポンプハウジングから外側に延びる主アームと、フックとポンプハウジングとの間でたるんだ部分を受容すると共に保持するように、ポンプハウジングから離れて主アームから横方向に延びる少なくとも1つのフックとを含む、請求項6に記載の医療用ポンプ。
【請求項8】
チューブハンガーの主アームは、ポンプハウジングの底壁に取り付けられている、請求項7に記載の医療用ポンプ。
【請求項9】
チューブハンガーの主アームは、ハウジングの前壁に取り付けられている、請求項7に記載の医療用ポンプ。
【請求項10】
ポンプハウジングは、チューブハンガーのフックの後ろに位置するハウジング凹部を含む、請求項7に記載の医療用ポンプ。
【請求項11】
ハウジングの凹部は、ポンプハウジングの前壁からポンプハウジングの底壁に延びている、請求項10に記載の医療用ポンプ。
【請求項12】
チューブハンガーは、主アームから反対方向に延びる2つのフックを含み、各フックは、チューブセットのたるんだ部分が間をスナップ式に通過できるように構成された挿入隙間を画定するように、主アームに取り付けられた近位端と、ポンプハウジングに対して配置された遠位端とを有する、請求項7に記載の医療用ポンプ。
【請求項13】
挿入隙間は、ポンプハウジングとフックの間に画定されたチューブ保持スペースの中に開口し、フックは、フックの遠位端とフックの近位端の間でチューブ保持スペースの幅が増加し、次いで幅が減少するように構成されている、請求項12に記載の医療ポンプ。
【請求項14】
ポンピング機構は、流体の流れ方向に流体をポンピングし、溝の少なくとも1つは、流体の流れ方向にほぼ平行に延びるように構成された、請求項3に記載の医療ポンプ。
【請求項15】
双方の溝は、流体の流れ方向にほぼ平行に延びている、請求項14に記載の医療ポンプ。
【請求項16】
流体の流れ方向はほぼ鉛直である、請求項14に記載の医療ポンプ。
【請求項17】
溝は、ポンプハウジングのハンドル部に位置している、請求項14に記載の医療ポンプ。
【請求項18】
入口ライン部、出口ライン部、たるんだライン部、および作動ライン部を有するチューブセットと共に使用される、医療用ポンプであって、
ポンプハウジングと、
ポンプハウジングと協働して、チューブセットの作動ライン部を受容すると共に、入口ライン部から出口ライン部に流体をポンピングするように構成された、ポンピング機構と、
ポンプハウジングに取り付けられると共に、ポンピング機構から遠く離間した位置において、ラインのたるんだ部分をポンプに受容すると共に取り外し自在に固定するように構成された、チューブハンガーとを備える、医療用ポンプ。
【請求項19】
チューブハンガーは、ポンプハウジングから外側に延びる主アームと、フックとポンプハウジングとの間でたるんだ部分を受容すると共に保持するように、ポンプハウジングから離れて主アームから横方向に延びる少なくとも1つのフックとを含む、請求項18に記載の医療用ポンプ。
【請求項20】
チューブハンガーの主アームは、ポンプハウジングの底壁に取り付けられている、請求項19に記載の医療用ポンプ。
【請求項21】
チューブハンガーの主アームは、ハウジングの前壁に取り付けられている、請求項19に記載の医療用ポンプ。
【請求項22】
ポンプハウジングは、ユーザインタフェース画面を含む前壁を有し、チューブハンガーの主アームは、ユーザインタフェース画面の下でポンプハウジングに取り付けられている、請求項19に記載の医療用ポンプ。
【請求項23】
ポンプハウジングは、チューブハンガーのフックの後ろに位置するハウジング凹部を含む、請求項19に記載の医療用ポンプ。
【請求項24】
ハウジングの凹部は、ポンプハウジングの前壁からポンプハウジングの底壁に延びている、請求項23に記載の医療用ポンプ。
【請求項25】
チューブハンガーは、主アームから反対方向に延びる2つのフックを含み、各フックは、チューブセットのたるんだ部分が間をスナップ式に通過できるように構成された挿入隙間を画定するように、主アームに取り付けられた近位端と、ポンプハウジングに対して配置された遠位端とを有する、請求項19に記載の医療用ポンプ。
【請求項26】
挿入隙間は、ポンプハウジングとフックの間に画定されたチューブ保持スペースの中に開口し、フックは、フックの遠位端とフックの近位端の間でチューブ保持スペースの幅が増加し、次いで幅が減少するように構成されている、請求項25に記載の医療ポンプ。
【請求項27】
入口ライン部、出口ライン部、たるんだライン部、および作動ライン部を有するチューブセットと共に使用される、医療用ポンプであって、
ポンプハウジングと、
ポンプハウジングと協働して、チューブセットの作動ライン部を受容すると共に、チューブセットの入口ライン部から出口ライン部に流体をポンピングするように構成された、ポンピング機構と、
ポンピング機構から遠く離間したポンプハウジングの上に位置すると共に、チューブセットのたるんだ部分の挿入および取り外しができるように構成された、少なくとも1つのチューブスナップとを備える、医療用ポンプ。
【請求項28】
チューブスナップは、ポンピング機構の上方でポンピング機構にほぼ垂直に整列して位置する、請求項27に記載の医療用ポンプ。
【請求項29】
たるんだ部分を有するチューブセットと共に使用される、医療用ポンプであって、
ポンプハウジングと、
ポンプハウジングと協働するポンピング機構と、
ポンプハウジングに取り付けられると共に、ポンピング機構から遠く離間した位置において、たるんだ部分をポンプに受容すると共に取り外し自在に固定するように構成された、チューブハンガーとを備える、医療用ポンプ。
【請求項30】
ポンピング機構は、カセット式ポンプである、請求項29に記載の医療用ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−67668(P2011−67668A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−1247(P2011−1247)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【分割の表示】特願2006−527005(P2006−527005)の分割
【原出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(504308442)ホスピラ・インコーポレイテツド (50)
【Fターム(参考)】