説明

ポンプ装置

【課題】ポンプピットの天井に大きな穴を設ける必要なくポンプケーシングを除く水中モータポンプをバランスのとれた状態で引上げることができ、且つポンプケーシングも最も効率の良い形状とすることができるポンプ装置を提供すること。
【解決手段】ポンプピット15内に配設された着脱曲管(吐出配管)17にポンプケーシング13の吐出口が接続された水中モータポンプ10を備えたポンプ装置であって、ポンプケーシング13を除くポンプ回転体部(インペラ12等)と、該ポンプ回転体部を駆動する水中モータ11を一体の組立体として該組立体をポンプケーシング13に着脱自在に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプピット内に人が入らなくとも水中モータポンプの取付け取外しが可能なポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のポンプ装置の構成例を図1に示す。全体を符号100で示す水中モータポンプは、水中モータ101、インペラ102及びポンプケーシング103から構成されている。インペラ102は主軸104の下端に取付けられ、水中モータ101によって駆動されるようになっている。水中モータ101の運転により、インペラ102が回転し、ポンプピット105から水を吸込みベル106を通して吸い上げポンプケーシング103を通して吐出配管、即ち着脱曲管107に吐出すようになっている。
【0003】
ポンプケーシング103は、スライディングガイド108を介して着脱曲管107の支持棒109にかけどめされ、自重によるモーメントでポンプケーシング103の吐出フランジ103aが着脱曲管107のフランジ107aに押し付けられ位置決めされている。また、スライディングガイド108はガイド棒110に沿って下動し、スライディングガイド108の爪部108aが着脱曲管107の支持棒109に確実にかけどめされるので、水中モータポンプ100の取付け、取外しの際に、作業員がポンプピット105内に入りボルトの締め付けや位置の調整を行う必要がなく、便利な構成となっている。
【0004】
また、水中モータポンプ100の運転時に発生する吐出圧により水中モータポンプを押すモーメントよりも、自重によるモーメントが大きいので、運転中においてもポンプケーシング103の吐出フランジ103aが着脱曲管107のフランジ107aに押し付けられ、ポンプアップされた水が吐出フランジ103aとフランジ107aの間から漏れ出ないようになっている。
【特許文献1】特開平7−119683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成ポンプ装置において、ポンプピット105から水中モータポンプ100を引上げる場合、水中モータポンプ100の上部に取付けた吊上用チェーン111をクレーン等で吊上げることにより、ポンプケーシング103と一体となった水中モータポンプ100がスライディングガイド108により、ガイド棒110に沿って上昇する。そして吊上げポンプピット105の天井に設けた穴を通して上部へ引上げられる。このように、ポンプケーシング103と水中モータポンプ100を一体として引上げるため、ポンプピット105の天井に設ける穴の寸法をポンプケーシング103が抜け出る大きな寸法にしなければならないという問題もあった。
【0006】
また、ポンプケーシング103を水中モータポンプ100と一体に引き上げる関係上、吊上用チェーン111で吊上げた際、ポンプケーシング103と水中モータポンプ100の組立体が釣合いの取れた構成とする必要がある。そのため、ポンプケーシング103を図2に示すように、吐出フランジ103aの中心がポンプケーシング103の中心を通る径方向の直線に一致するようにポンプ吐出口を変形されていた。これによりポンプケーシング103の形状が効率の最も良い形状とはならない。即ち、ポンプケーシングを釣合いをとるためその効率を犠牲にした形状としていた。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ポンプピット105の天井に大きな穴を設ける必要なくポンプケーシングを除く水中モータポンプをバランスのとれた状態で引上げることができ、且つポンプケーシングも最も効率の良い形状とすることができるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ポンプピット内に配設された吐出配管にポンプケーシングの吐出口が接続された水中モータポンプを備えたポンプ装置であって、前記ポンプケーシングを除くポンプ回転体部と、該ポンプ回転体部を駆動するモータ部を一体の組立体として該組立体を前記ポンプケーシングに着脱自在に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポンプ装置において、前記組立体と前記ポンプケーシングの着脱部は該組立体に設けたフランジと該ポンプケーシングに設けたフランジが当接する構成であり、両フランジの当接面をテーパ又はインロー形状としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のポンプ装置において、前記組立体と前記ポンプケーシングの着脱部は該組立体に設けたフランジと該ポンプケーシングに設けたフランジが当接する構成であり、該ポンプケーシング側のフランジ上面にはガイドピンが立設し、該組立体側フランジには該ガイドピンが貫通する穴が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ポンプケーシングを除くポンプ回転体部と、該ポンプ回転体部を駆動するモータ部を一体の組立体として該組立体をポンプケーシングに着脱自在に配置したので、組立体はモータ部とポンプ回転体部から構成されるバランスのとれた構造体であるから、吊上用チャーンで釣合いのとれた状態で吊上げることが容易となる。また、従来のようにスライデングガイドとガイド棒等からなる案内装置やポンプ出口部に着脱機構を設ける必要がなく構成が簡単になりポンプ装置の設置スペースが小さくできる。また、ポンプケーシングを除くことによりモータ部とポンプ回転体部とからなる組立体はその水平方向の寸法が小さいから、ポンプピット天井に設ける穴も小さく済む。また、ポンプケーシングはポンプピット内に残るから、吊上げの釣合いを考慮することなく最もポンプ効率の良い形状に設計できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、組立体とポンプケーシングの着脱部は該組立体に設けたフランジと該ポンプケーシングに設けたフランジが当接する構成であり、両フランジの当接面をテーパ又はインロー形状としので、組立体をポンプピット天井から吊下げ下降させて、ポンプケーシングのフランジに組立体のフランジが当接して載置するだけで、組立体は位置決めされ、その自重で安定した状態となる。また、当接する部分を着脱式フック(設置時は自重により嵌まり、引き上げ時は引き上げ力により外れる)としても良い。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、組立体とポンプケーシングの着脱部は該組立体に設けたフランジと該ポンプケーシングに設けたフランジが当接する構成であり、該ポンプケーシング側のフランジ上面にはガイドピンが立設し、該組立体側フランジには該ガイドピンが貫通する穴が設けられているので、組立体側フランジの貫通穴にガイドピンを貫通させ、組立体を吊下げ下降させて、ポンプケーシングのフランジに組立体のフランジを載置するだけで、組立体は位置決めされ、その自重で安定した状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基いて説明する。図3は本発明に係るポンプ装置の構成例を示す図である。全体を符号10で示す水中モータポンプは、水中モータ11、インペラ12及びポンプケーシング13から構成されている。インペラ12は主軸14の下端に取付けられ、水中モータ11によって駆動されるようになっている。水中モータ11の運転により、インペラ12が回転し、ポンプピット15から水を吸込みベル16を通して吸い上げポンプケーシング13を通して吐出配管、即ち着脱曲管17に吐出すようになっている点は、図1の従来構成のポンプ装置と同一である。構成例は水冷式モータの場合で、18は水冷ジャケットである。23はメカニカルシール、24は浸水溜まり室、25は浸水検知器、26はライナリングである。また、モータを空冷モータにすることも可能である。
【0015】
本発明に係るポンプ装置が図1に示す従来のポンプ装置と異なる点は、ポンプケーシング13のフランジ19にポンプ回転体部と水中モータ11の組立体の中間ケーシング20に設けたフランジ21を脱着自在にし、図1のスライディングガイド108及びガイド棒110等からなる案内装置を省略した点にある。即ち、ポンプケーシング13を除く水中モータポンプ10(ポンプケーシング13を除くポンプ回転体部とモータ部の組立体)を吊上用チェーン22を介してクレーン等で吊上げることにより、図4に示すようにポンプケーシング13を除く水中モータポンプ10がポンプケーシング13から離脱するようになっている。
【0016】
このとき、ポンプケーシング13に設けたフランジ19とポンプ回転体部と水中モータ11の組立体に設けたフランジ21の着脱部は、図5に示すようにフランジ19とフランジ21の当接面が外周側から内側に向かって傾斜するテーパ又はインロー形状となっている。これにより、ポンプケーシング13に設けたフランジ19に水中モータポンプ10をフランジ21を介して載置するだけで、該水中モータポンプ10はその自重によりその中心軸がポンプケーシングの中心軸と一致するように位置決めされた状態で、安定して設置される。
【0017】
また、上記着脱部の構造は、図6に示すように、ポンプケーシング13に設けたフランジ19の上面に複数本のガイドピン27を立設すると共に、中間ケーシング20に設けたフランジ21に該ガイドピン27が貫通するガイドピン貫通穴を設けた構造としてもよい。これにより、ポンプケーシング13を除く水中モータポンプ10を吊上用チェーン22で吊上げた状態で、各ガイドピン27をフランジ21のガイドピン貫通穴に貫通され、この状態で、水中モータポンプ10を下降させ、フランジ21がフランジ19に当接した状態で、該水中モータポンプ10はその中心軸がポンプケーシングの中心軸と一致するように位置決めされた状態で、安定して設置される。なお、着脱部の構造は、図5に示すように、フランジ19とフランジ21の当接面をテーパ又はインロー形状とし、フランジ19の上面に複数本のガイドピンを設け、フランジ21に該ガイドピンが貫通する貫通穴を設けた構造としてもよい。
【0018】
上記のように水中モータポンプ10のポンプケーシング13から上部を該ポンプケーシング13から脱離できる構成とすることにより、ポンプケーシング13を除く水中モータポンプ10、即ちモータ部とポンプ回転体部等は中心軸を中心に対称な略バランスのとれた構造となっているから、図4に示すように吊上用チェーン22で水中モータポンプ10のモータ部とポンプ回転体部等からなる組立体を吊上げた際、該組立体は左右に傾くことなく、均整のとれた状態なるから、図1に示すスライディングガイド108及びガイド棒110等からなる案内装置を必要としない。また、スライディングガイド108の爪部108aが着脱曲管107の支持棒109等からなる着脱機構を設ける必要もない。このため従来のポンプ装置に比べてコンパクトに設計が可能となり、小さいスペースでも設置可能なポンプ装置となる。
【0019】
図8は本発明に係るポンプ装置の他の構成例を示す図である。図8において、図3と同一符号を付した部分は同一部分を示すのでその説明は省略する。本ポンプ装置が図3に示すポンプ装置と異なる点は、着脱曲管(吐出配管)17とポンプケーシング13を一体化したものである。即ち、図3のポンプ装置では、着脱曲管17とポンプケーシング13がポンプピット15に設置されたままとなるから、ここでは同じ設置されたままの状態となる着脱曲管17とポンプケーシング13に替えこれらを一体化したポンプケーシング兼着脱曲管28を設けたものである。このような着脱曲管とポンプケーシングを一体化したポンプケーシング兼着脱曲管28とすることにより、更にポンプ装置の省スペース化を図ることが可能となる。なお、29はポンプケーシング13の振動を防止するための振動防止サポートであり、ポンプケーシング13の振動が小さい場合は必ずしも必要でない。
【0020】
また、ポンプケーシング13がポンプピット15内に設置されたままで、水中モータ11やポンプ回転体部等と共に、吊上げることがないから、ポンプケーシング13を図7に示すように最も効率のよい形状、即ち吐出口をポンプケーシングの略接線方向に設けることができる。
【0021】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のポンプ装置の構成例を示す図である。
【図2】従来のポンプ装置のポンプケーシングの平面構成を示す図である。
【図3】本発明に係るポンプ装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るポンプ装置の構成例を示す図である。
【図5】本発明に係るポンプ装置の着脱部の構成例を示す図である。
【図6】本発明に係るポンプ装置の着脱部の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係るポンプ装置のポンプケーシングの平面構成を示す図である。
【図8】本発明に係るポンプ装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
10 水中モータポンプ
11 水中モータ
12 インペラ
13 ポンプケーシング
14 主軸
15 ポンプピット
16 吸込みベル
17 着脱曲管(吐出配管)
18 水冷ジャケット
19 フランジ
20 中間ケーシング
21 フランジ
22 吊上用チェーン
23 メカニカルシール
24 浸水溜まり室
25 浸水検知器
26 ライナリング
27 ガイドピン
28 ポンプケーシング兼着脱曲管
29 振動防止サポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプピット内に配設された吐出配管にポンプケーシングの吐出口が接続された水中モータポンプを備えたポンプ装置であって、
前記ポンプケーシングを除くポンプ回転体部と、該ポンプ回転体部を駆動するモータ部を一体の組立体として該組立体を前記ポンプケーシングに着脱自在に配置したことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ装置において、
前記組立体と前記ポンプケーシングの着脱部は該組立体に設けたフランジと該ポンプケーシングに設けたフランジが当接する構成であり、両フランジの当接面をテーパ又はインロー形状としたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプ装置において、
前記組立体と前記ポンプケーシングの着脱部は該組立体に設けたフランジと該ポンプケーシングに設けたフランジが当接する構成であり、該ポンプケーシング側のフランジ上面にはガイドピンが立設し、該組立体側フランジには該ガイドピンが貫通する穴が設けられていることを特徴とするポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−2721(P2006−2721A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182234(P2004−182234)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】