説明

ポンプ装置

【課題】電磁バルブなどによる吸引流路と吐出流路との間の流路切り替え制御を要しない簡便な構造のシリンジポンプを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、プランジャー20と、シリンダー10と、を含むポンプ装置1であって、前記プランジャーには、長手方向に連通する連通孔24が形成され、プランジャー後退時に該孔を通じて、移送媒体を吸入し、プランジャー前進時にシリンダーのプランジャー前進方向後端面に形成された吐出口11を通じて前記移送媒体を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関し、殊に、マイクロリアクタに使用されるシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学品や医薬品をはじめとする様々な合成反応を実施する分野で、従来のバッチ式で行っていた合成反応を微小空間内で連続的に行う製造設備であるマイクロリアクタが注目されている。
このマイクロリアクタは、微小空間で反応を実施することから、熱効率が高いこと、反応率が高いこと、小規模装置を実現できること、省資源合成が可能なこと、ラボスケールからプラントスケールまでの移行がリアクターの並列設置により実現できること、などが特徴として挙げられる。このような特徴から、従来のバッチ式の合成装置では実現できない、新規な機能の素材合成が可能であるのではないかということでも注目されている。
【0003】
マイクロリアクタの基本的なシステムは、原料G1,G2,・・・を供給するためのポンプP1,P2,・・・と、これらの原料を混合するマイクロミキサMM、混合した原料を所定の時間(反応時間に相当する時間)マイクロ空間内に滞留させる滞留時間ユニットRTUとから構成される。そして、実生産(スケールアップ)は、マイクロミキサMM及び滞留時間ユニット、場合によりポンプなどを、所望の生産量を賄える規模になるよう数を増やすことで対応する。これをナンバリングアップと呼ぶ。
【0004】
さて、マイクロリアクタにおいて、ミキサの構造は用途により様々なタイプのミキサが使用されるが、ポンプは、極めて高速・高圧(数百m/sec線流速で、50MPa-100MPaの超高圧)の環境下で反応を実施するなどの特殊な反応をするマイクロリアクタを除き、反応によらず通常共通のポンプを使用することが可能である。しかし、一方で、脈流(ポンプ流量の変動のこと)があると、攪拌性に影響し、その微量な攪拌状態の変動が大きく反応効率を左右してしまう場合もある。このような事情から、マイクロリアクタにおいては、脈流を抑制できるシリンジポンプが一般に好んでよく使用されている。
【0005】
シリンジポンプの一般的な形態は、詳述するまでもないから、簡便に説明すると、シリンジ(任意サイズを取り付け可能)と、このプランジャーを駆動させる駆動部と、から構成されている。
シリンジを設置する向きでタイプを分類するとすれば、横向きに据え付けるタイプと、垂直に据え付けるタイプさまざまなタイプとがある。
【0006】
また、吸引・吐出の手動・自動かの違いで分類するとすれば、移送媒体を予め手動で吸引しておき、これを据え付けるタイプ、吸入、吐出ともに自動的に行えるタイプのものがある。
【非特許文献1】ハーバード社製シリンジポンプカタログ(2005.10月販売時)
【非特許文献2】テカン社製シリンジポンプ取説(2005.10月販売時)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
後者の分類のなかの自動で吸引・吐出を行うシリンジポンプに着目すると、吸引口と、吐出口とは、シリンジの先端口で同一に設定されているものばかりである。このようなシリンジポンプでの吸引流路(原料タンクからシリンジまでの流路)と、吐出流路(シリンジからミキサまでの流路)との間の流路の切り替えは電磁バルブで実施するのが通例である。
【0008】
本発明は、このような、電磁バルブなどによる吸引流路と吐出流路との間の流路切り替え制御を要しない簡便な構造のシリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
(1) プランジャーと、シリンダーと、を含むポンプ装置であって、前記プランジャーには、長手方向に連通する連通孔が形成され、プランジャー後退時に該孔を通じて、移送媒体を吸入し、プランジャー前進時にシリンダーのプランジャー前進方向後端面に形成された吐出口を通じて前記移送媒体を吐出するポンプ装置、
(2) 前記連通孔からの吸引は、第1のチェックバルブで流通方向が規制され、前記吐出口には、第2のチェックバルブで流通方向が規制されている(1)に記載のポンプ装置、
とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、(1) プランジャーと、シリンダーと、を含むポンプ装置であって、前記プランジャーには、長手方向に連通する連通孔が形成され、プランジャー後退時に該孔を通じて、移送媒体を吸入し、プランジャー前進時にシリンダーのプランジャー前進方向後端面に形成された吐出口を通じて前記移送媒体を吐出するポンプ装置であるので、非常に簡便な構造で、電磁バルブなどにより電気的制御によって流路の切り替えをすることなく吸引・吐出のポンプ動作を実施することが可能となる。更に、プランジャーに形成された孔を通じて吸引するという形態をとるので、部品として特注品を用いる必要がなく、低コストで新規構造のポンプを製造することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、(2) 前記連通孔からの吸引は、第1のチェックバルブで流通方向が規制され、前記吐出口には、第2のチェックバルブで流通方向が規制されている(1)に記載のポンプ装置であるので、簡便な構造・構成で、吸引・吐出流路の流通方向を規制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明にかかるポンプ装置の実施形態を説明するための概念図である。
この図に示すとおり、本発明のポンプ装置1は、シリンダー部10と、プランジャー部20と、プランジャー部駆動部30と、制御部40とから構成される。
シリンダー部10の先端部には、移送媒体を吐出するための吐出口11が開設され、筒状内部空間12内に、プランジャー20がそのヘッド部21を液密状態に密接させて前後方向に駆動可能に挿入されている。なお、本明細書において、「前方向」とは、シリンダー部の先端側への駆動方向をいい、「後方向」とは、その方向と反対側への駆動方向をいう。吐出口11には、チェックバルブCB2が設置され、吐出方向にしか移送媒体が流通しないように流通方向が規制されている。
【0013】
プランジャー駆動部30は、図示しない公知のモーター(ACモーター、ステッピングモーターいずれにも限定されず、様々のモーターを使用可能)と、そのモーターの駆動力をo往復運動に変換してプランジャーに伝達する公知の駆動力伝達機構(ギア、プーリーなどで構成)で構成されている。
制御部40は、ポンプの駆動制御を実施する。図示しない、ユーザインターフェースを備え、該インターフェースから入力された各種制御情報(動作モード、流速など)に基づいて、電気信号に変換し、プランジャー駆動部30における動作を制御する。この制御は、プランジャーの単位時間当たりの移動量を所定量に制御して行う公知の手法である。
【0014】
さて、ポンプ装置1の特徴点は、プランジャー20の構造と、ポンプ吸引・吐出動作にある。以下、この点について説明する。
まず、プランジャー20は、長手方向に連通する連通孔が形成されている。この連通孔は、移送媒体の吸引通路となる。本通路の形態として、図2(該図は、シリンジポンプの要部拡大図である)に示すように、その長手方向中程部分の側面から軸部付近まで第1孔22が、その第1孔22と連通するように軸部に沿って、第2孔23が形成されて、「長手方向に連通する連通孔」24を形成することができる。この連通孔の第1孔22には、吸引配管25が接続され、図示しない移送媒体を貯留したタンクに連通し、この配管と、連通孔を通じた移送媒体の吸入が可能となっている。また、チェックバルブCB1が設置され、連通孔にて吸引方向にしか移送媒体が流通しないように流通方向が規制されている。
【0015】
次に動作である。プランジャー後退時に前記孔24を通じて、移送媒体を吸入し、プランジャー前進時にシリンダーのプランジャー前進方向後端面に形成された前記吐出口11を通じて前記移送媒体を吐出する。その動作を、図3に模式的に図示した。(a)図に示すとおり、「吐出モード」では、プランジャーが前方向に移動し、充填された移送媒体を吐出口11から制御量に対応する量(速度で)吐出する。(b)図に示すとおり、「吸引モード」では、プランジャーが後方に移動し、前記孔24から移送媒体を吸入する。なお、「吐出モード」、「吸引モード」とは、ポンプの動作可能状態を示すモードであり、前記モード設定では、吐出動作を、後者モード設定では、吸引動作を行う。ここで、この吸引、吐出動作のおりに、移送媒体が逆流しないように、前記連通孔からの吸引は、第1のチェックバルブCB1で流通方向が規制され、前記吐出口からの吐出は第2のチェックバルブCB2で流通方向が規制されることとなる。
【0016】
本発明のポンプ装置は、一連での作動のみならず、複数連での作動も可能である。図4に示すように、複数のポンプ装置1a,1b‥を並列的に1台の制御装置(PC)で同時にタイミングを揃えて(図4(a))、又は、タイミングを異ならせて(図4(b))吸引・吐出の動作を制御することが可能である。
前者のタイミングを同時に制御する場合として、ナンバリングアップしたマイクロリアクタ装置への送液動作などが挙げられる。後者のタイミングを異ならせる場合として、1つのマイクロリアクタ構造体(マイクロミキサ+滞留時間ユニットの直列接続体)への移送媒体の連続供給動作などが挙げられる。後者では、2連のポンプの動作タイミングを異ならせて制御することで、連続供給を可能とするが、この場合脈流を低減させることが制御上重要な課題となる。そのために、位相を異ならせる程度、吐出圧をモニターしこれをフィードバック制御、及び/又は、吐出圧とプランジャー移動量の関係を一定時間学習させる制御などを考慮して制御ソフトを策定することが一般的に考案され、本発明でもこのような方法を採用することは無論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、マイクロリアクタにおける連続生産用のポンプ装置として利用することができ、新産業の創出に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる実施形態を説明するための概念図である。
【図2】シリンジポンプの要部拡大図である。
【図3】本発明のポンプ装置の動作説明図である。
【図4】本発明のポンプ装置の動作説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ポンプ装置
10 シリンダー部
20 プランジャー部
24 連通孔
30 プランジャー部駆動部
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャーと、シリンダーと、を含むポンプ装置であって、
前記プランジャーには、長手方向に連通する連通孔が形成され、プランジャー後退時に該孔を通じて、移送媒体を吸入し、プランジャー前進時にシリンダーのプランジャー前進方向後端面に形成された吐出口を通じて前記移送媒体を吐出するポンプ装置。
【請求項2】
前記連通孔からの吸引は、第1のチェックバルブで流通方向が規制され、前記吐出口には、第2のチェックバルブで流通方向が規制されている請求項1に記載のポンプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−113522(P2007−113522A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307285(P2005−307285)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(398052689)株式会社京都クロマト (1)
【出願人】(390024442)株式会社ワイエムシィ (22)
【Fターム(参考)】