説明

ポンプ装置

【課題】大量の気泡が混入していた場合でも液体と気体を確実に分離できるポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプ装置は、気液分離機構7で分離した気泡を多く含む流体の量を検知する混入量検知装置21を有し、混入量検知装置21は分離された流体を通すエジェクタ22と、エジェクタ22の混合室26に発生する負圧によって作動する圧力センサ23とを有する。圧力センサ23は、負圧が予め設定された値を越えたときに近接スイッチ38がONになって燃料油の吐出配管4を開く。エジェクタ22のノズル25には、旋回止め具52が取り付けられており、分離された流体の旋回方向の流れを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプにより圧送される流体に含まれる気泡を分離して分離室に回収しつつ液体を所定の装置に圧送するためのポンプ装置、より詳細には気体の混入量を検知する混入量検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所ではガソリンや軽油等の揮発性の液体を取り扱っており、給油時に使用する給油装置は液体を圧送するポンプと、液体に混入している気泡を分離するための気液分離機構と、分離した液体を溜めるフロート室と、分離した液が所定量となったときにポンプ側に戻すフロート弁とが設けられている。
【0003】
この種の用途に用いられる気液分離機構としては、例えば、水平に配置された有底筒形状を有し、底部の中心に小孔を設けると共に、円筒体の内周面にその接線方向に流体を流入させるように構成されたものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。気液分離機構に流入した流体は渦巻き状に旋回し、遠心力により気泡が可及的に少ない成分と気泡を多く含む成分とに分離される。多量の気体を含む液体は底部の小孔からフロート室に流れ込み、気体がフロート室の上部の大気連通孔から大気に放出され、液体がフロート室の底部に設けられた戻し流路を通って再びポンプに戻される。気液分離機構で分離された気泡が可及的に少ない成分は、流出口から吐出される。
【特許文献1】特開昭61−54212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の気液分離機構は燃料油に大量の気泡が混入したときに、気泡を小孔から分離室に排出しきれなくなることがあった。このときポンプ装置から吐出される燃料油は、分離室に排出しきれなかった気泡が混入してしまうので、このような燃料油を計量すると実際よりも気泡の分だけ多く計量されてしまい、燃料油の正確な計量ができなかった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大量の気泡が混入していた場合でも液体と気体を確実に分離できるポンプ装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発明は、流入管路から吸い込んだ流体を加圧するポンプと、両端が閉塞されたパイプの一方の端部の中央に分離孔が設けられ、加圧後の流体を遠心力によって気液に分離させる気液分離機構と、前記分離孔から排出される流体から前記ポンプに回収する液体を分離させるための分離室と、前記分離室から前記ポンプの吸入口に至る流路を開閉するフロート弁とを含むポンプ装置において、前記気液分離機構に流入する流体に含まれる気体量を検知する混入量検知装置を有し、前記混入量検知装置は前記分離孔から前記分離室に排出される流体が通流するエジェクタと、前記エジェクタで発生する負圧を検知する圧力センサとを有することを特徴とするポンプ装置とした。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のポンプ装置において、前記パイプにおいて流体が流入する側の端部に第2の分離孔を設け、分離させた液体が流出する側の端部に前記分離孔を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のポンプ装置において、前記エジェクタは、前記パイプ内に配置されており、前記エジェクタのディフューザが前記分離孔に接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載のポンプ装置において、前記エジェクタの流入口に旋回止め具が軸線に平行に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載のポンプ装置において、前記エジェクタは、前記分離孔と前記分離室を接続する配管中に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のポンプ装置において、前記分離孔は、前記パイプに流入する流体の流出側の端部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載のポンプ装置において、前記分離孔は、前記パイプに流入する流体の流入側の端部に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポンプ装置において、前記圧力センサは、前記分離室に連通する第1室と、前記エジェクタに連通する第2室とをダイヤフラムによって区画し、前記ダイヤフラムの移動を検知する検出素子を有することを特徴とする。
【0013】
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポンプ装置において、前記圧力センサで検出した負圧が予め定められた値を越えたときに前記流出管路の流路面積を減少させる弁を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分離室に排出する流体をエジェクタに通して高速流を形成し、このとき発生する負圧を検知することで気体の混入量を計測するようにしたので、気体の混入量を確実に計測することができる。気体の混入量が多い状態で流体を吐出することがなくなる。また、請求項2に係る発明によれば、分離された空気を主に第2の分離孔から排出させることで、空気混入量の変動にも容易に対応できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施の形態において、同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、各実施の形態で重複する説明は省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1に本実施の形態に係るポンプ装置の断面図を示す。ポンプ装置1は、燃料油(流体)のタンク2に接続される流入管路3と、給油装置などに接続される流出管路4が設けられている。流入管路3は、ポンプ5の吸込口に接続されている。ポンプ5は、燃料油を所定の圧力に加圧する機構を有し、その吐出口は液路6を経て気液分離機構7の接続口7Aに接続されている。気液分離機構7は、水平配置されたパイプ8を有し、パイプ8の両端は閉塞されている。接続口7A側、つまり流入側である一方の端部付近には、図2に示すように液路6がパイプ21の内周面の接線方向に燃料油が流入するように接続されている。パイプ8の他方の端部の中央には、分離孔9が形成されており、遠心力を利用して気体が可及的に多く含まれる流体を分離して分離孔9から配管10を通って分離室11に導くようになっている。他方の端部近傍のパイプ8には、分離後の燃料油を多く含む流体を排出する流出口7Bが形成されており、流出口7Bは流出管路4に接続されている。
【0017】
分離室11は、気液分離機構7から排出される若干気泡が混じっている流体を一時的に滞溜させ、流体内の気体と液体とを重力もしくは浮力により分離させるための空間である。分離室11の上部には、分離した空気を放出するための管路12と、分離室11内の液位が所定値を越えたら管路12を閉弁して燃料油が外部に漏れるのを防止する弁13とが設けられている。分離室11の底部側には、フロート弁14が設けられており、フロート弁14によって分離室11から流入管路3に延びる戻り流路15の開閉が制御される。
【0018】
ここで、本実施の形態に係るポンプ装置1には、燃料油内の空気の混入量を分離室11に流出する流体の量から検知する混入量検知装置21が取り付けられている。
混入量検知装置21は、気液分離機構7内に設けられ、パイプ8の他方の端部(流出端)側に固定された負圧発生部であるエジェクタ22と、気液分離機構7の外に設けられ、エジェクタ22に配管28で接続された圧力センサ23とを有する。
エジェクタ22は、パイプ8と同軸に配置され、上流(流入)側に配置されたノズル25と、ノズル25によって形成された高速流(ジェット流)の流体が流入する混合部26と、混合部26を通過した流体の圧力を増大させるディフーザ27とを有し、ディフューザ27が分離孔9に連通している。
【0019】
圧力センサ23は、ハウジング29を有し、ハウジング29内の空間がダイヤフラム30によって上下に分割されている。下側の第1室31は、配管32によって分離室11の上部に連通させられており、第1室31の内圧P1と分離室11の内圧はほぼ同じ圧力になっている。上側の第2室33は、配管28によってエジェクタ22の混合室26に連通させられており、第2室33の内圧P2と混合室26の内圧はほぼ同じ圧力になっている。ダイヤフラム30は、外周がハウジング29に固定されると共に、コイルバネ35で下方に押圧されており、中央にロッド36が固定されている。ロッド36は上向きに延び、その上部にマグネット37が固定されている。ハウジング29の上部には、非接触式の近接スイッチ38(検知素子)が取り付けられており、マグネット37の接離によってON/OFF信号を出力するように構成されている。近接スイッチ38の信号出力は、流出管路4に設けられた制御弁39の制御装置40に電気的に接続されている。
【0020】
次に、ポンプ装置1の動作について説明する。
なお、初期段階では、圧力センサ23の第1室31の内圧P1と第2室33の内圧P2が略等しく、ダイヤフラム30は、自重とコイルバネ35から受ける力とが均衡した初期位置にある。このときのマグネット37の位置は近接スイッチ38の検知範囲より低い位置にあり、近接スイッチ38はOFF信号を出力している。この状態で制御弁39は閉じているものとする。
【0021】
燃料油は、タンク2から流入管路3を通ってポンプ装置1に供給され、ポンプ5にて加圧される。ポンプ5から吐出された燃料油は、液管6から気液分離機構7に流入する。気液分離機構7では、遠心力の作用によって燃料油と、気泡として混入されていた空気とが分離させられる。燃料油は、主に気液分離機構7のパイプ8の内周面を通って下流の端部から排出され、流出管路4から制御弁39を通過しつつ、不図示の給油ノズルなどに供給される。
【0022】
一方、気液分離機構7内で、可及的に気泡を多く含む成分はパイプ8の中央部分に分離される。この分離された流体は、エジェクタ22のノズル25に流入する。分離された流体は、ノズル25によって高速流となって混合室26に噴出され、混合室26内の流体と混合された後、ディフューザ27を通って分離孔9から分離室11に導かれる。分離室11で弁13は通常は開いており、分離室11の液面が所定のレベルを越えたときのみ作動して閉じる。一方、分離室11に貯溜される液成分である燃料油は、分離室11の底部に溜まる。分離室11の液位が上昇すると、フロート弁14が開いて溜まった燃料油が戻り流路15から流入管路3に戻され、ポンプ5で再び加圧される。
【0023】
ここで、分離された流体がエジェクタ22を通って分離室11に排出される際、混合室26では分離された流体の高速流によって負圧が生じる。これによって、混合室26に配管28を介して接続された第2室33内の流体が混合室26に吸引される。第2室33は密閉空間になっているので、第2室33の内部が減圧され、その内圧P2が第1室31の内圧P1に比べて相対的に下がる。その結果、ダイヤフラム30を初期位置に支持していた力のバランスが崩れて、ダイヤフラム30が第2室33側に凸になるように変形する。これに伴って、ロッド36及びマグネット37の位置が上昇する。
【0024】
気液分離機構7に流入する燃料油に含まれる気泡の量が少ないときは、エジェクタ22のノズル25から噴出される流体は液体がその殆どを占めるので液体量が多くなる。この場合は、混合室26に生じる負圧、即ち第2室33の減圧量が大きくなるので、第1室31と第2室33の差圧が大きくなる。その結果、図3に示すようにダイヤフラム30が第2室33側に大きく変形し、ロッド36の上端に取り付けられたマグネット37が近接スイッチ38の検知範囲まで上昇する。近接スイッチ38の出力がONになり、制御弁39が開いて、気液分離機構7から流出する燃料油がそのまま流出管路4を通って吐出される。
【0025】
これに対して、気液分離機構7に流入する燃料油に含まれる気泡の量が多くなると、エジェクタ22のノズル25から噴出される流体は気体がその殆どを占め、エジェクタ22を通る液体の量が減る。この場合は、混合室26に生じる負圧、即ち第2室33の減圧量が小さくなって、第1室31と第2室33の差圧が減少する。気泡の量が予め設定されている量を越えると、エジェクタ22の混合室26に生じる負圧、即ち第1室31と第2室33の差圧が所定値を下回る。その結果、ダイヤフラム30が自重とコイルバネ35から受ける力により第1室31、即ち初期位置に戻り、図8に示すように近接スイッチ38で検出できない範囲までマグネット37が下降し、近接スイッチ38の出力がOFFになる。これにより、制御弁39が閉じて気泡の混入量が多い燃料油の吐出が停止される。
【0026】
以上、説明したように、このポンプ装置1では、混入量検知装置21を設け、エジェクタ22の混合室26の気泡量に起因する圧力変化と分離室11の圧力の差を利用して気泡の混入量を計測するようにしたので、気泡の量を簡単な構成で確実に検出することができ、気泡の混入量が多い燃料油が吐出されないようにできる。このため、燃料油の給油量を正確に計測できるようになる。
【0027】
なお、混入量検知装置21が所定の圧力差を検知したときに、制御弁39を全閉にする代わりに、制御弁39の開度を絞って流出管路4を通って吐出される燃料油の量を減少させても良い。ポンプ装置1内の流路の内部圧力が上昇するので、気液分離機構7における燃料油と気泡の分離効率が向上して流出管路4に流れる燃料油中の気泡量が減少する。このように制御弁39の絞り制御を行うと、気泡の混入量が多い場合でも、吐出を停止することなく給油を継続することが可能になる。
圧力センサ23は、エジェクタ22の混合室26の圧力と分離室11の圧力の差を検知する代わりに、ジェクタ22の混合室26に生じる負圧を計測する公知の圧力センサであっても良い。
【0028】
ここで、この実施の形態に係るポンプ装置1の混入量検知装置21の変形例を図4及び図5に示す。
図4に示すポンプ装置1は、分離孔9と分離室11を接続する配管10中に混入量検知装置21のエジェクタ22が配置されている。エジェクタ22の混合室26に接続された配管28は図1に示す圧力センサ23の第2室33に接続されている。また、気液分離機構7のパイプ8の下流(流出)側の端部8Aには、気体と液体の分離を促進させるためのガイドとなる円筒43がパイプ8と同軸になるように固定されている。このポンプ装置1の作用と効果は前記と同様である。
【0029】
図5に示すポンプ装置1は、気液分離機構7の上流側の端部8Bに分離孔9が形成されている。さらに、混入量検知装置21のエジェクタ22は、上流側に設けられた分離孔9と分離室11を接続する配管10中に設けられている。エジェクタ22の混合室26に接続された配管28は図1に示す圧力センサ23の第2室33に接続されている。このポンプ装置1では、分離された流体がパイプ8の上流側の分離孔9から排出される。分離された流体の量は、配管10を通る流体量に応じて混入量検知装置21によって検知される。
【0030】
(第2の実施の形態)
図6に示すように、この実施の形態に係るポンプ装置1は、気液分離機構7を分離室21に収容したもので、気液分離機構7で分離された空気を多く含む流体の量を検知する混入量検知装置51を有する。なお、このポンプ装置1において気液分離機構7の分離孔9は、分離室11に直接連通している。
【0031】
混入量検知装置51は、気液分離機構7のパイプ8内で、下流側の端部に取り付けられたエジェクタ22と、気液分離機構7の外に配置された圧力センサ52とを有する。エジェクタ22のノズル25の流入口側には、旋回止め具53が取り付けられている。図7に示すように、旋回止め具53は、円筒54に十字形の仕切り板55が一体に形成されている。
【0032】
圧力センサ52は、分離室11の上壁に一体に形成された下部ハウジング61と、上部ハウジング62とを有し、これらハウジング61,62でダイヤフラム63を挟み込んでいる。2つのハウジング61,62によって形成されるハウジング65の内部空間は、ダイヤフラム63によって下側の第1室66と、上側の第2室67とに区画される。下側の第1室66は、連通孔68を介して分離室11に連通させられており、第1室66の内圧P1は分離室11の内圧に略等しい。上側の第2室67は、配管69を介してエジェクタ22の混合室26に連通させられており、第2室67の内圧P2は混合室26の内圧に略等しい。
第2室67内には、ダイヤフラム63の上面に当接するプッシャ73が配置されている。プッシャ73は、プレート71からロッド72が上向きに延びており、プレート71がコイルバネ73で下向きに付勢されることでプレート71をダイヤフラム63に常に当接させている。ロッド72は、ハウジング65の上部に凹設されたガイド62Aに挿入されており、ロッド72の上部にはマグネット37が固定されている。ガイド62Aの外側には、近接スイッチ38が固定されている。マグネット37は、第1室66及び第2室67の内圧が略等しいときは、近接スイッチ38の検知範囲より下方にあるように配置されている。
【0033】
この実施の形態の作用について説明する。
気液分離機構7では、遠心力の作用によって燃料油と空気とが分離させられる。分離された空気が可及的に多い流体は、旋回流としてエジェクタ22の旋回止め具53に流入する。旋回止め具53は、仕切り板55によって格子形状が形成されているので、旋回方向の流体の流れが制限される。その結果、ノズル25を通流する流体は、直線流に近い流れとなる。
【0034】
気液分離機構7に流入する燃料油に含まれる気泡の量が予め設定されている量を越えると、エジェクタ22の混合室26に生じる負圧が減少して第1室66と第2室67の差圧が所定値を下回る。その結果、図6に示すように、近接スイッチ38の検知できない範囲までマグネット37が下降し、近接スイッチ38の出力がOFFになる。その結果、制御弁39が閉じて、気泡の混入量が多い燃料油の吐出が防止される。
【0035】
(第3の実施の形態)
図9に示すように、この実施の形態に係るポンプ装置1は、燃料油内の空気を分離する気液分離機構81と、燃料油内の空気の混入量を検知する混入量検知装置21とを有する。
気液分離機構81は、水平配置されたパイプ8を有し、パイプ8の両端は端部で覆われている。接続口7A側、つまり流入側の一方の端部の中央には第2の分離孔82が設けられている。第2の分離孔82は、配管83で分離室11に接続されている。
混入量検知装置21は、気液分離機構7のパイプ8に同軸に配置されるエジェクタ22と、エジェクタ22に配管28で接続された圧力センサ23とを有する。エジェクタ22のディフューザ27は流出孔82に接続されている。
【0036】
次に、ポンプ装置1の動作について説明する。
ポンプ5から吐出された燃料油は、液管6から気液分離機構81に流入する。気液分離機構81では、遠心力の作用によって燃料油と、気泡として混入されていた空気とが分離させられる。燃料油は、主に気液分離機構81のパイプ8の内周面を通って下流の端部から排出され、流出管路4から制御弁39を通過しつつ、不図示の給油ノズルなどに供給される。一方、気液分離機構81内で、可及的に気泡を多く含む成分はパイプ8の中央部分に分離され、上流側、つまり流出口7Aに近い領域に設けられた第2の分離孔82から排出されて配管83を通って分離室11に導かれる。
【0037】
ここで、通常状態、即ち燃料油内の空気混入量が気液分離機構81で空気を分離して排出することができる量(許容量)以下のときは、分離された空気のほとんどが第2の分離孔82から排出され、下流側のエジェクタ22には液体である燃料油が流入する。これによって、エジェクタ22の混合室26では分離された流体の高速流によって負圧が生じる。混合室26に負圧が発生することで、圧力センサ23の第2室33の内部が減圧され、その内圧P2が第1室31の内圧P1に比べて相対的に下がる。その結果、ダイヤフラム30を初期位置に支持していた力のバランスが崩れて、ダイヤフラム30が第2室33側に凸になるように変形する。これに伴って、ロッド36及びマグネット37の位置が上昇する。近接スイッチ38の出力がONになり、制御弁39が開いて、気液分離機構81から流出する燃料油がそのまま流出管路4を通って吐出される。
【0038】
これに対し、燃料油内の空気混入量が増加すると、空気を第2の分離孔82から排出しきれなくなる。分離しきれなかった空気は液体と共にエジェクタ22に流入し、分離孔9を通って分離室11に排出される。
燃料油内の空気混入量がさらに増加し、気液分離機構81の許容量を上回ると、排出しきれなかった空気を多く含む燃料油がポンプ装置1から吐出されてしまう。このとき、エジェクタ22には空気のみが流入するようになり、混入量検知装置21が作動して空気混入量の多い燃料油の吐出を停止させる。
【0039】
即ち、第2の分離孔82から排出しきれなかった空気は、気液分離機構81内でパイプ8の中心付近を通って下流側の端部に向かって流れるので、下流側に配置されているエジェクタ22に流入する流体中の空気量が増大する。これによって、エジェクタ22の混合室26がほとんど減圧されなくなる。その結果、図10に示すようにダイヤフラム30が自重とコイルバネ35から受ける力によって第1室31側に移動し、近接スイッチ38の出力がOFFになる。これにより、制御弁39が閉じて気泡の混入量が多い燃料油の吐出が停止され、燃料油の給油量を正確に計測できるようになる。
【0040】
ここで、上流側に第2の分離孔82を設けた構成と、下流側の流出孔9のみで空気を分離室に排出させる構成とを比較する。
上流側に第2の分離孔82を設けない構成では、空気混入量が少ないときでも空気がエジェクタ22を通って分離室11に排出されるので、少ない空気混入量でも燃料油の吐出がストップしてしまう。例えば、図11のラインL1に示すように、上流側に第2の分離孔82を設けない構成では、空気混入量50%より少ない状態で、エジェクタ22で発生する負圧が圧力センサ23のON/OFFを切り替える境界値C1に到達する。つまり、空気混入量が50%より少ない段階で燃料油の吐出を停止させてしまう。
【0041】
これに対し、この実施の形態では上流側に第2の分離孔82を設け、第2の分離孔92で予め空気を排出(分離)させるので、ラインL2に示すように、空気混入量が50%になるまで圧力センサ23を作動させないようにできる。このように、第2の分離孔82の径を調整することにより、タンクやポンプによる空気混入量の変動にも容易に対応できる。
【0042】
さらに、図12から図14を参照して、この実施の形態の変形例を説明する。
図12に示すポンプ装置1は、気液分離機構81のパイプ8の上流側の端部中央に第2の分離孔82が設けられている。パイプ8の下流側の端部中央には分離孔9が設けられると共に、円筒43がパイプ8と同軸になるように固定されている。エジェクタ22は分離孔9と分離室11を接続する配管10中に設けられている。このポンプ装置1の作用と効果は前記と同様である。
図13に示すポンプ装置1は、気液分離機構81が分離室11内に設けられている。パイプ8の上流側の端部中央には、第2の分離孔82が設けられている。さらに、エジェクタ22の流入口には旋回止め具53が装着されている。旋回止め具53の仕切り板55によって旋回方向の流体の流れが制限され、ノズル25を通流する流体が直線流に近い流れになる。
【0043】
図14に示すポンプ装置1は、気液分離機構81の流入側の端部中央に装着孔91が設けられ、装着孔91にはプラグ92が装着されている。プラグ92には、パイプ8内の空気を分離室11に流出させる第2の分離孔93がパイプ8の中心軸上に形成されている。プラグ92は、ネジ嵌合などにより、装着孔91に交換自在に取り付けられている。例えば、プラグ92の孔径が気液分離機構81の許容量で圧力センサ23のON/OFFを切り替えられる大きさにすれば、図11のラインL2に示すような分離特性が得られる。また、孔径の小さいプラグ92を装着孔91に取り付けると、例えば図11のラインL1に示すように許容量より少ない空気混入量で圧力センサ23のON/OFFを切り替えることが可能になる。孔径の大きいプラグ92を装着孔83に取り付けると、許容量より多い空気混入量で圧力センサ23のON/OFFを切り替えることが可能になる。このように、プラグ92の孔径を選択することで、所望の気液分離特性が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係るポンプ装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のI−I線に沿った断面図である。
【図3】ダイヤフラムが変形して近接スイッチがONになった図である。
【図4】気液分離機構とエジェクタの配置の変形例を示す図である。
【図5】気液分離機構とエジェクタの配置の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るポンプ装置の一部の概略構成を示す断面図である。
【図7】図6のII−II線に沿った断面図である。
【図8】ダイヤフラムが変形して近接スイッチがONになった図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るポンプ装置の一部の概略構成を示す断面図である。
【図10】ダイヤフラムが変形して近接スイッチがOFFになった図である。
【図11】空気混入量とエジェクタの関係の一例を示す図である。
【図12】気液分離機構とエジェクタの配置の変形例を示す図である。
【図13】気液分離機構が分離室内にある変形例を示す図である。
【図14】分離孔をパイプに着脱自在なプラグに形成した変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ポンプ装置
3 流入管路
4 流出管路
7,81 気液分離機構
8 パイプ
9 分離孔
10 管路
11 分離室
21 分離検出装置
22 エジェクタ
23,61 圧力センサ
26 混合室
30,63 ダイヤフラム
31,66 第1室
33,67 第2室
38 近接スイッチ(検出素子)
39 制御弁
53 旋回止め具
54 仕切り板
82 流出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入管路から吸い込んだ流体を加圧するポンプと、両端が閉塞されたパイプの一方の端部の中央に分離孔が設けられ、加圧後の流体を遠心力によって気液に分離させる気液分離機構と、前記分離孔から排出される流体から前記ポンプに回収する液体を分離させるための分離室と、前記分離室から前記ポンプの吸入口に至る流路を開閉するフロート弁とを含むポンプ装置において、
前記気液分離機構に流入する流体に含まれる気体量を検知する混入量検知装置を有し、前記混入量検知装置は前記分離孔から前記分離室に排出される流体が通流するエジェクタと、前記エジェクタで発生する負圧を検知する圧力センサとを有することを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記パイプにおいて流体が流入する側の端部に第2の分離孔を設け、分離させた液体が流出する側の端部に前記分離孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記エジェクタは、前記パイプ内に配置されており、前記エジェクタのディフューザが前記分離孔に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記エジェクタの流入口に旋回止め具が軸線に平行に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記エジェクタは、前記分離孔と前記分離室を接続する配管中に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記分離孔は、前記パイプに流入する流体の流出側の端部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記分離孔は、前記パイプに流入する流体の流入側の端部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記圧力センサは、前記分離室に連通する第1室と、前記エジェクタに連通する第2室とをダイヤフラムによって区画し、前記ダイヤフラムの移動を検知する検出素子を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記圧力センサで検出した負圧が予め定められた値を越えたときに前記流出管路の流路面積を減少させる弁を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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