説明

ポンプ

本発明は、容積移送式ドライポンプであって、複数個のポンプ輸送機構体を含む複数個の真空ポンプ輸送段を有し、ポンプ輸送機構体は、ポンプ輸送段を通して流体を高真空段のところのポンプ入口から低真空段のところのポンプ出口まで連続してポンプ輸送するために1本又は2本以上の駆動シャフトによって駆動され、ポンプは、駆動シャフトを回転運動可能に支持する軸受組立体を収容した潤滑チャンバを更に有し、駆動シャフトは、潤滑チャンバのヘッドプレートの開口部を通って高真空段から潤滑チャンバまで延び、ポンプは、段間パージポートを更に有し、ガスが段間パージポートを通って高真空段の下流側の段間場所のところでポンプに流入することができ、そしてガスは段間パージポートの下流側に位置した各真空ポンプ輸送段しか流通することができず、ポンプは、潤滑チャンバに設けられた潤滑チャンバパージポートを更に有し、パージガスがパージガス源から潤滑チャンバパージポートを通って流れることができ、段間パージポートは、潤滑チャンバ内のパージガスの圧力を制御し、それにより、使用中、ヘッドプレートの開口部を介する高真空段から潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう潤滑チャンバに連結されていることを特徴とするポンプを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積移送式ドライポンプ、かかるポンプ用のパージシステム及び容積移送式ドライポンプをパージする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容積移送式ポンプ、例えばルーツ形ポンプ、流通形ポンプ、クロー(clow)形ポンプ又は回転翼形ポンプは、1本又は2本以上の駆動シャフトによって駆動されるポンプ輸送(吸込み吐出し)機構体をそれぞれ備えた複数個の真空ポンプ輸送段を有する場合がある。駆動シャフトは、これら自体、それぞれのモータによって駆動される場合があり、より一般的には、1本のシャフトが1つのモータで駆動される場合があり、他方、別の駆動シャフトは、歯車装置によって第1の駆動シャフトに連結されている。典型的には、駆動シャフトは、ポンプの高真空側及び低真空側のところに設けられた潤滑チャンバ内に収容されている軸受装置によって回転可能に支持される。
【0003】
駆動シャフトは、潤滑チャンバのヘッドプレートに設けられた開口部を貫通して延び、シャフトとヘッドプレートとの間の空間は、シャフトシールによって密閉される。シャフトシールは、全体として非常に有効であるが、流体の漏れは、ヘッドプレートの各側の相対圧力に応じて開口部を通って依然として生じる。或る特定のガスをポンプ輸送する際、潤滑チャンバ中へのガスの流入に抵抗することが望ましく、かかるガスの流入は、潤滑剤を劣化させ、ポンプの構成部品に損傷を生じさせる場合がある。パージガスを用いてポンプ輸送ガスが潤滑チャンバに入るのを阻止することが知られており、この方法は、典型的には、低真空潤滑チャンバのところで採用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポンプの高真空側のところでのパージガスの導入は、ポンプ入口のところに高真空圧力を生じさせるポンプの能力を制限する場合がある。
【0005】
本発明は、改良型装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、本発明は、容積移送式ドライポンプであって、複数個のポンプ輸送機構体を含む複数個の真空ポンプ輸送段を有し、ポンプ輸送機構体は、ポンプ輸送段を通して流体を高真空段のところのポンプ入口から低真空段のところのポンプ出口まで連続してポンプ輸送するために1本又は2本以上の駆動シャフトによって駆動され、ポンプは、駆動シャフトを回転運動可能に支持する軸受組立体を収容した潤滑チャンバを更に有し、駆動シャフトは、潤滑チャンバのヘッドプレートの開口部を通って高真空段から潤滑チャンバまで延び、ポンプは、段間パージポートを更に有し、ガスが段間パージポートを通って高真空段の下流側の段間場所のところでポンプに流入することができ、そしてガスは段間パージポートの下流側に位置した各真空ポンプ輸送段しか流通することができず、ポンプは、潤滑チャンバに設けられた潤滑チャンバパージポートを更に有し、パージガスがパージガス源から潤滑チャンバパージポートを通って流れることができ、段間パージポートは、潤滑チャンバ内のパージガスの圧力を制御し、それにより、使用中、ヘッドプレートの開口部を介する高真空段から潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう潤滑チャンバに連結されていることを特徴とするポンプを提供する。
【0007】
第2の観点では、本発明では、本明細書において実質的に説明するパージ装置を既存のポンプのパージシステムへのレトロフィットのための部品キットとして提供できることは理解されよう。
【0008】
別の観点では、本発明は又、容積移送式ドライポンプをパージする方法であって、ポンプは、複数個のポンプ輸送機構体を含む複数個の真空ポンプ輸送段を有し、ポンプ輸送機構体は、ポンプ輸送段を通して流体を高真空段から低真空段まで連続してポンプ輸送するために1本又は2本以上の駆動シャフトによって駆動され、ポンプは、駆動シャフトを回転運動可能に支持する軸受組立体を収容した潤滑チャンバを更に有し、駆動シャフトは、潤滑チャンバのヘッドプレートの開口部を通って高真空段から潤滑チャンバまで延び、この方法は、パージガスをパージガス源から潤滑チャンバに運ぶステップと、潤滑チャンバを高真空段の下流側に設けられていて、使用中、高真空段よりも高い圧力状態にある段間ポートに連結することによって潤滑チャンバ内の圧力を制御し、潤滑チャンバ内の圧力がヘッドプレートの開口部を介する高真空段から潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するようにするステップとを有することを特徴とする方法を提供する。
【0009】
本発明の他の好ましい且つ/或いはオプションとしての観点は、従属形式の請求項に記載されている。
【0010】
本発明を良好に理解できるようにするために、例示として与えられているに過ぎない本発明の実施形態について添付の図面を参照して以下において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】容積移送式ドライポンプを有するパージシステムを概略的に示す図である。
【図2】図1の容積移送式ドライポンプのヘッドプレートに設けられた開口部を詳細に示す図である。
【図3】容積移送式ドライポンプを有する第2のパージシステムを概略的に示す図である。
【図4】図3に示された容積移送式ドライポンプのヘッドプレートに設けられた開口部を詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、容積移送式ドライポンプ10を有するパージシステムが示されており、この容積移送式ドライポンプ10は、ルーツ形ポンプであるが、変形例として、例えばクロー又はスクリュー形ポンプであっても良い。ポンプ10は、複数個のポンプ輸送(吸込み吐出し)機構体20,22,24,26をそれぞれ備えた複数個の真空ポンプ輸送段12,14,16,18を有している。4つのポンプ輸送段が示されているが、選択される段の数は、例えば入口のところで必要な圧力やポンプ輸送能力のような要件で決まる。図1に示されているようなルーツ形ポンプでは、ポンプ輸送機構体のロータは、2本の駆動シャフト28,30で駆動されるが、他のポンプでは、これよりも少ない又は多いシャフトが必要な場合がある。ポンプ輸送機構体は、ポンプ輸送段を通って流体を連続的に高真空段12のところのポンプ入口(吸気口)31から低真空段16のところのポンプ出口(排気口)33までポンプ輸送するために駆動シャフトによって駆動される。
【0013】
潤滑チャンバ32,34がポンプ輸送段から成る列の互いに反対側の軸方向端部のところに配置されており、これら潤滑チャンバは、ヘッドプレート36,38によってそれぞれ隣り合うポンプ輸送段12,18から分離されている。潤滑チャンバ32は、この例では、軸受40,42を含む軸受組立体及び歯車組立体44を収容している。モータチャンバ48内に設けられたモータ46が軸受40によって支持された第1のシャフト28を駆動し、歯車組立体44が第2のシャフト30を駆動する。潤滑チャンバ34は、駆動シャフト28,30をそれぞれ支持するための軸受50,52を含む軸受組立体を収容している。歯車組立体44は、代替的に、潤滑チャンバ34内に収容されても良い。潤滑剤54、例えば油が潤滑チャンバのサンプ内に入れられており、スローイングアーム(throwing arm)(図示せず)が潤滑チャンバ内の可動部品(軸受、歯車、シャフト)を潤滑するためにハウジング内で潤滑剤を循環させるようシャフトのうちの1本に取り付けられるのが良い。
【0014】
駆動シャフト28,30は、潤滑チャンバ32,34からヘッドプレート36,38に設けられている開口部を貫通して延びている。潤滑チャンバ34と高真空段12との間でヘッドプレート38に設けられた開口部56の拡大図が図2に示されている。
【0015】
図2では、駆動シャフト28は、開口部56を貫通して延びている。シャフト封止装置がシャフトとヘッドプレート38との間を封止している。この例では、シャフト封止装置は、ヘッドプレートに設けられた環状凹部内に嵌め込まれていて、シャフト28に向かって延びる2つのリップシール60から成る。シャフトシールの製造公差及び摩耗に起因して、シャフトシールは、ヘッドプレート38とシャフト28の間を完全には封止しない。リップシール60とシャフトとの間の隙間によって図2に示された開口部56を通って少量の漏れが生じる。隙間は、この例では、説明の目的上、誇張して示されている。したがって、潤滑チャンバ34と高真空段12との間に圧力勾配が存在する場合、流体は、開口部56を通って漏れて図2において矢印で示されているように潤滑チャンバか高真空段かのいずれかに至る。高真空段12から潤滑チャンバ34内へのポンプ輸送ガス及び関連の副生物の漏れにより、以下に詳細に説明するようにポンプの損傷が生じる場合がある。
【0016】
ポンプを通って流れるプロセスガスの作用を最小限に抑えるためにポンプの行程容積部か高圧シャフトシールかのいずれかに運び込まれる流体として非反応性ガスパージ(通常、窒素)を用いることが通例である。ガスパージは、通常、ポンプの低真空段のところにのみ用いられる。というのは、プロセスガスの腐食又は凝縮が最も過酷なのはこの箇所だからである。ガスパージを高真空段のところに用いることは、通常、必要ではなく、これを用いると、ポンプが極めて低い圧力に達する能力が損なわれる場合がある。
【0017】
例えば半導体、太陽電池パネル又はフラットパネルディスプレイ製造チャンバ内でプロセスチャンバ又はツールをポンプ輸送する場合、幾分かのポンプ輸送プロセスガスは、反応性である場合があり、それにより構成部品、例えば歯車組立体(ポンプの高真空側に設けられている場合)又は軸受組立体の損傷が生じる。例えば、プロセス副生物は、低圧状態でも凝縮する場合がある。これらガスは、低圧状態の歯車組立体又は軸受組立体の内部で凝縮した場合、かかるガスは、潤滑剤と組み合わさって組立体の構成部品の表面を覆うべとべとしたペーストを形成する。潤滑剤は、ペースト中に取り込まれる場合があり、それによりサンプ内の潤滑剤のレベルが減少する。最終的には、ポンプ構成部品には潤滑剤が回らなくなり、ポンプが損傷することになる。
【0018】
潤滑チャンバ34と高真空段12との間の圧力勾配は、一定ではない。図1及び図2に示された形式のポンプの通常の作動中、ポンプは、先ず最初に作動され、そしてポンプ入口31のところの圧力を減少させる。潤滑チャンバ34から高真空段12への漏れに起因して、潤滑チャンバも又、圧力が減少し、その結果、潤滑チャンバは、一般に、高真空段と同一の圧力状態になる。ポンプは、プロセスガスを処理チャンバからポンプ輸送することが必要になるまで入口のところに高真空を維持する。ポンプがこの状態にあるとき、「極限」状態で作動していると呼ばれる。
【0019】
プロセスガスが処理チャンバから放出されると、高真空段内の圧力は、増大し、それにより高真空段から潤滑チャンバへの圧力勾配が生じる。この圧力勾配により、プロセスガスは、開口部56を通って潤滑チャンバ内に流入し、上述したように、経時的に、ポンプの構成部品の損傷を生じさせる。
【0020】
処理チャンバから放出されるプロセスガスの量及び組成は、実施される特定の処理活動及び処理活動におけるステップに応じて変化する。この後者の場合、第1のステップは、処理チャンバ内の第1の圧力状態で処理するステップを含む場合があり、第2のステップは、例えば、第2の圧力状態で処理チャンバをクリーニングするステップを含む場合がある。
【0021】
高真空段中へのプロセスガスの放出後、ポンプの作動の続行により、高真空段内に減圧状態が生じ、これに続き、潤滑チャンバ内の減圧状態が生じ、ついには、圧力は、等しくなり、潤滑チャンバ内へのプロセスガスの漏れが止まるようになる。しかしながら、処理は、典型的には周期的であり、次のステップ又はプロセスにより、再び、高真空段内の一時的な圧力増大が生じ、そして再びプロセスガスが潤滑チャンバ内に流れる。
【0022】
図1及び図2に示されている構成は、潤滑チャンバ34内の圧力を制御して高真空段から潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗し、それによりポンプの損傷を抑えると共にその有効寿命を延ばすと共に所有費を改善する。
【0023】
図1を参照すると、段間パージポート62が設けられており、ガスは、この段間パージポートを通り、パージガス源64から段間配置場所のところでポンプに流入することができ、そして高真空段の下流側に位置した各真空ポンプ輸送段だけを通って流れる。この点に関し、圧力方針に応じて、段間ポートは、段間ポートのところの圧力が使用中、開口部56のところの高真空段の圧力よりも高い位置であればどのような位置でも配置できる。段間ポートは、真空段12,14,16,18のうちの任意の段相互間又は高真空段12の下流側に位置した真空段14,16,18の任意の段相互間又は高真空段12への下流側に位置した真空段14,16,18のうちの任意の段のところに配置可能である。
【0024】
潤滑チャンバにはパージポート66も設けられ、パージガスは、パージガス源64からこのパージポートを通って流れることができる。段間ポート62は、潤滑チャンバ内のパージガスの圧力を制御し、それによりポンプ10の使用中、ヘッドプレート38の開口部56を介する高真空段12から潤滑チャンバ34へのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう潤滑チャンバ34に連結されている。
【0025】
段間ポート62の配置場所は、使用中、潤滑チャンバ34内のパージガスの圧力が一般に、高真空段又はチャンバ12内のポンプ輸送ガスの圧力よりも高く、それにより潤滑チャンバと高真空段との間に正の圧力差が生じるよう選択される。
【0026】
図1に示されている例では、パージガス源64は、導管70,72に連結された導管68を有し、導管70,72は、それぞれ、段間ポート62及び潤滑チャンバパージポート66に連結されている。したがって、段間パージポート62は、導管70,72及びパージポート66により潤滑チャンバ34に連結されている。潤滑チャンバへのパージガスの流れのコンダクタンスを減少させるために絞り部74が導管72に設けられている。導管70は、段間ポートから潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するための一方向弁76を有する。作動中、段間ポート62のところの圧力は、高真空チャンバ内の圧力よりも高く、したがって、段間ポートが潤滑チャンバに連結されると、潤滑チャンバ内の圧力は、高真空段内の圧力よりも高く、それにより潤滑チャンバから高真空段への圧力勾配が生じ、この圧力勾配は、潤滑チャンバへの高真空段内のプロセスガスの漏れに抵抗する。絞り部74は、潤滑チャンバへのパージガスのコンダクタンスを減少させるよう構成され、したがって、潤滑チャンバ内の圧力は、段間ポートのところの圧力よりも低いが、高真空段内の圧力よりも高い。
【0027】
例えば、高真空段内の圧力は、10-3mbarであり、段間ポートのところの圧力は、1mbarであるのが良い。潤滑チャンバ内の圧力は、10-2mbarのオーダーであるのが良く、それにより、潤滑チャンバ内へのプロセスガスの流れに抵抗する。
【0028】
作用を説明すると、潤滑チャンバ及び高真空段がほぼ同一の圧力状態にあるときにプロセスガスが高真空段中に放出されると、高真空段内の圧力の増大により、下流側の段間ポートのところの圧力が増大し、この圧力増大は、潤滑チャンバに伝えられ、その結果、潤滑チャンバ内の圧力が上昇するようになる。このように、段間パージポートのところの圧力は、高真空段内のポンプ輸送ガスの圧力に応答し、その結果、高真空段内の圧力変化が潤滑チャンバ内のパージガスの対応の受動的圧力変化を生じさせるようになる。高真空チャンバ内へのポンプ輸送ガスの流れの増大が存在する場合、潤滑チャンバ内のパージガスの圧力は、ヘッドプレートの開口部を介する高真空段から潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう増大する。
【0029】
図1と図2の両方を参照すると、潤滑チャンバパージポート66は、パージガスがシャフトシール60を通ってヘッドプレートの開口部内に流れることができるよう図示のようにヘッドプレート38に設けられるのが良い。この構成は、潤滑チャンバ内の他の構成部品に不必要に影響を及ぼすことなく、潤滑チャンバ内の差圧を増大させ、パージガスを関心のある正確な位置に運搬する。代替的に又は追加的に、図1に破線で示されているように、導管72′を介して源64に連結された状態でパージポート66′を潤滑チャンバ34のハウジングに設けても良く、その結果、ちょうどヘッドプレート38の開口部56内ではなく潤滑チャンバ全体内の圧力が増大する。
【0030】
本明細書において説明した本発明は、特に、シャフト周りのヘッドプレートの開口部を通るプロセスガスの漏れを阻止するようになっているが、ヘッドプレートの他の漏れ経路を設けることが必要な場合、本発明は、かかる漏れ経路に沿う漏れの阻止にも利用できる。
【0031】
別のポンプ80が図3に示されており、図3において、図1及び図2の構成の同一の特徴は、同一の参照符号で示されている。図3の構成の説明に関しては、この構成と図1及び図2に示されている構成の差についてのみ集中する。
【0032】
図3では、潤滑チャンバ34は、導管84によって段間パージポート86に連結された第2のパージポート82を有し、その結果、パージガスは、潤滑チャンバ34から段間ポートに流れることができるようになっている。第1のパージポート66は、導管88によってパージガス源64に連結されている。導管のコンダクタンスに抵抗する絞り部90が導管84に設けられている。図4は、第1及び第2のパージポート82,84の構成を詳細に示しており、これらパージポートは、パージガスを潤滑チャンバ34のヘッドプレート38に設けられた開口部56に出入りさせる。図4の構成は、図2の構成とほぼ同じである。
【0033】
破線で示されている変形構成例では、潤滑チャンバ34は、チャンバハウジングの本体に設けられた第2のパージポート82′を有し、この第2のパージポートは、導管84′によって段間パージポート86に連結されており、その結果、パージガスは、潤滑チャンバ34から段間ポートに流れることができるようになっている。第2のパージポート66′は、導管88′によってパージガス源64に連結されている。絞り部90が導管84′に設けられている。
【0034】
作用を説明すると、極限状態で作動しているとき、パージガス源64から潤滑チャンバ34に運ばれたパージガスは、段間ポート86の下流側に位置した真空ポンプ輸送段によってポンプ輸送され、かかる真空ポンプ輸送段は、図示の例では、ポンプ輸送段16,18を含む。したがって、段間ポート86のところの圧力は、高真空段12内の圧力よりも高い。潤滑チャンバ34内のパージガスが段間ポート86のところでポンプ輸送されるが、絞り部90は、潤滑チャンバからポンプ輸送可能なパージガスの量を減少させ、したがって、潤滑チャンバは、段間ポートよりも高い圧力状態にある。絞り部は、潤滑チャンバ内のパージガスの圧力が高真空段内の圧力よりも僅かに高いよう構成され、その結果、潤滑チャンバから高真空段への正の圧力勾配が生じるが、この圧力勾配は、開口部56を介する高真空段内へのパージガスの高い流量を生じさせるほど大きくはない。かかるパージガスの流れは、もし生じたままにすると、ポンプの入口31のところに高真空圧力を達成するポンプの能力を低下させる。
【0035】
ポンプ輸送ガスが入口31を通ってプロセスチャンバから放出されると、高真空段12内の圧力が増大し、これにより、1秒のオーダーである場合のある短時間の遅延後、段間ポートのところの圧力が増大する。段間ポートのところの圧力の増大により、潤滑チャンバ内の圧力が増大し、したがって、圧力が高真空段内で増大すると、潤滑チャンバ内の圧力も又増大するようになる。したがって、潤滑チャンバ内の圧力は、潤滑チャンバから高真空段への正の圧力勾配がほぼ維持され、それにより開口部56を介する潤滑チャンバ内へのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう高真空段内の圧力に応答する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積移送式ドライポンプであって、
複数個のポンプ輸送機構体を含む複数個の真空ポンプ輸送段を有し、前記ポンプ輸送機構体は、前記ポンプ輸送段を通して流体を高真空段のところのポンプ入口から低真空段のところのポンプ出口まで連続してポンプ輸送するために1本又は2本以上の駆動シャフトによって駆動され、
前記駆動シャフトを回転運動可能に支持する軸受組立体を収容した潤滑チャンバを有し、前記駆動シャフトは、前記潤滑チャンバのヘッドプレートの開口部を通って前記高真空段から前記潤滑チャンバまで延び、
段間パージポートを有し、ガスが前記段間パージポートを通って前記高真空段の下流側の段間場所のところで前記ポンプに流入することができ、そしてガスは前記段間パージポートの下流側に位置した各真空ポンプ輸送段しか流通することができず、
前記潤滑チャンバに設けられた潤滑チャンバパージポートを有し、パージガスがパージガス源から前記潤滑チャンバパージポートを通って流れることができ、
前記段間パージポートは、前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力を制御し、それにより、使用中、前記ヘッドプレートの前記開口部を介する前記高真空段から前記潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう前記潤滑チャンバに連結されている、ポンプ。
【請求項2】
前記段間ポートの配置場所は、使用中、前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力が一般に、前記高真空段内のポンプ輸送ガスの圧力よりも高いよう選択され、それにより、前記潤滑チャンバと前記高真空段との間に正の圧力差が生じる、請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
前記段間パージポートのところの圧力は、前記高真空段内の圧力の変化が前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力に対応の〔受動的な〕変化を生じさせるよう前記高真空段内の各輸送ガスの圧力に応答する、請求項1又は2記載のポンプ。
【請求項4】
前記高真空段内のポンプ輸送ガスの圧力の増加は、前記高真空段内へのポンプ輸送ガスの流量の増加中、前記潤滑チャンバ内のチャージガスの圧力を増大させて前記ヘッドプレートの前記開口部を介する前記高真空段から前記潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するよう前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力の増加を生じさせる、請求項3記載のポンプ。
【請求項5】
前記潤滑チャンバパージポートは、パージガスが前記ヘッドプレートの前記開口部内に設けられたシャフトシール中に流れることができるよう前記ヘッドプレートに設けられている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のポンプ。
【請求項6】
前記潤滑チャンバパージポートは、パージガスが前記潤滑チャンバ内に流れる際の圧力が前記段間パージポートのところの圧力によって制御されるよう1本又は2本以上の導管によって前記段間パージポートに連結されている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のポンプ。
【請求項7】
前記導管は、前記潤滑チャンバへのガス流のコンダクタンスを減少させる絞り部を有する、請求項6記載のポンプ。
【請求項8】
前記導管は、前記段間ポートから前記潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗する一方向弁を有する、請求項6又は7記載のポンプ。
【請求項9】
前記潤滑チャンバは、パージガスが前記潤滑チャンバから前記段間ポートに流れることができるよう導管によって前記段間パージポートに連結された第2のパージポートを有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のポンプ。
【請求項10】
前記導管は、前記潤滑チャンバから前記段間パージポートへのガス流のコンダクタンスを減少させる絞り部を有する、請求項9記載のポンプ。
【請求項11】
パージシステムであって、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の容積移送式ドライポンプと、第1の導管によって前記潤滑チャンバパージポートに連結されたパージガス源とを有し、使用中、前記段間パージポートのところのポンプ輸送ガスの存在により、前記源から受け取ったパージガスの圧力が制御され、その結果、前記ヘッドプレートの前記開口部を介する前記高真空段から前記潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通量が減少するようになっている、パージシステム。
【請求項12】
前記パージガス源は、前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力が前記段間ポートのところのポンプ輸送ガスの圧力に応答するよう第2の導管によって前記第1の導管に連結されている、請求項11記載のパージシステム。
【請求項13】
第2の導管が前記段間ポートを前記潤滑チャンバに設けられた第2のパージポートに連結し、その結果、パージガスが前記潤滑チャンバから前記段間ポートに流れることができるようになっている、請求項11記載のパージシステム。
【請求項14】
容積移送式ドライポンプをパージする方法であって、前記ポンプは、
複数個のポンプ輸送機構体を含む複数個の真空ポンプ輸送段を有し、前記ポンプ輸送機構体は、前記ポンプ輸送段を通して流体を高真空段から低真空段まで連続してポンプ輸送するために1本又は2本以上の駆動シャフトによって駆動され、
前記駆動シャフトを回転運動可能に支持する軸受組立体を収容した潤滑チャンバを有し、前記駆動シャフトは、前記潤滑チャンバのヘッドプレートの開口部を通って前記高真空段から前記潤滑チャンバまで延び、
前記方法は、
パージガスをパージガス源から前記潤滑チャンバに運ぶステップと、
前記潤滑チャンバを前記高真空段の下流側に設けられていて、使用中、高真空段よりも高い圧力状態にある段間ポートに連結することによって前記潤滑チャンバ内の圧力を制御し、前記潤滑チャンバ内の圧力が前記ヘッドプレートの前記開口部を介する前記高真空段から前記潤滑チャンバへのポンプ輸送ガスの流通に抵抗するようにするステップとを有する、方法。
【請求項15】
前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力を制御して該圧力が、前記高真空段内の圧力変化にもかかわらず、前記高真空段内のポンプ輸送ガスの圧力よりもほぼ高いようにするステップを有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記段間ポートのところのポンプ輸送ガスの圧力が前記高真空段内のポンプ輸送ガスの圧力に応答し、前記潤滑チャンバ内のパージガスの圧力が前記段間ポートのところのポンプ輸送ガスの圧力に応答し、その結果、前記高真空段の圧力変化が前記潤滑チャンバ内の圧力の変化を生じさせるようになっている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
添付の図面のうちの図1、図1及び図2、図3、図3及び図4を参照して明細書において説明したポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−515899(P2013−515899A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545437(P2012−545437)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051946
【国際公開番号】WO2011/077105
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(507261364)エドワーズ リミテッド (85)
【Fターム(参考)】