説明

ポーションカップ

【課題】 使用時における噴出問題、あるいは意図しない破断問題がないような注出機構を創出することを技術的課題とし、もって安心して便利に使用できるポーションカップを提供することを目的とする。
【解決手段】 ポーションカップにおいて、2ケの可撓性の小型カップ状収納室を上端で連結部を介して左右並列状に一体連結し、上端周縁にフランジを付設し、前記連結部を両収納室の底部が相衝突する方向へ折れ曲がり可能に構成したカップ本体を有し、周縁部をフランジに密着状に固着させ、中央部に両収納室に連通する注出口を形成した状態でカップ本体を被覆する第1シール蓋材を有し、注出口を密閉した状態で、剥離可能に第1シール蓋材を被覆する第2シール蓋材を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先で摘んで内容物を注出して使用するポーションカップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コーヒーゼリー等のデザート類、サラダなどを容器詰めした商品、弁当等の商品が普及しており、このような商品は消費者の様々な味覚を満足させるため、多くの場合ミルク、ガムシロップ、ドレッシング等の補助食品を充填したポーションカップを別体として備えて販売されている。
【0003】
特許文献1にはこのようなポーションカップを備えた容器についての発明が記載されており、また特許文献2にはドレッシング用の複数の室に内容物を分納したポーションカップに係る発明についての記載がある。
【0004】
図7および図8は、引用文献2に記載のある実施例であり、それぞれ引用文献2の図1および図2に相当する。このドレッシング向け容器(ポーションカップ)は図7に示すように、表面の中央部に破断域102を有する折り曲げ可能な硬質材の蓋101とその蓋101の裏面に固着した可撓性部材からなる容器体103とをもって、蓋101の破断域102に通ずる2個のポケット室A,Bを形成した複室の容器としてある。
【0005】
このような構造とした容器は、使用に際しては例えばサラダに振りかけようとする時、蓋101の両端を中央部の破断域102を中心として指でつまみ、ポケット室A,Bを互いに引き寄せるようにV字状に折り曲げると、ポケット室A,Bは互いに接触し圧接される。同時にポケット室A,B内の収容物にも大きな負荷圧力がかけられることになる。この圧力は連通部である破断域102に集中し、破断域102が破壊し、ポケット室A内の収容物108とポケット室B内の収容物110、111の混合物を外方に吐出することになり、サラダの上にポケット室A,Bの両収容物が混ざり合ってドレッシング107の完成品としてふり注がれる。
【特許文献1】特開2003−40348号公報
【特許文献2】特開2002−204667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した、特許文献2に示されるドレッシング用のポーションカップは、室を押圧して注出を容易にでき、また2種の液を分納して注出の際に混合できる等の特長を有することにより便利に使用することができるが、使用の際に指先で摘んでポケット室A,Bを互いに圧接し、ポケット室A,B内の収容物にも大きな負荷圧力をかけ、この圧力により破断域を破壊して内容物を注出する構成であり、内容液が勢いよく思わぬ方向に噴出して手を汚したり、周辺に飛び散り衣服を汚す等の問題が発生する。またたとえば、このポーションカップをバックに入れたとき等に意図しない圧力がポケット室A、Bに作用して、ミシン目等で形成された弱化部である破断域が破れてバック内を汚してしまうという問題もある。
【0007】
そこで本発明はポーションカップに係る上記した使用時における噴出問題、あるいは意図しない破断問題がないような注出機構を創出することを技術的課題とし、もって安心して便利に使用できるポーションカップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する方法のうち、請求項1記載の発明の手段は、
ポーションカップにおいて、
2ケの可撓性の小型カップ状収納室を上端で連結部を介して左右並列状に一体連結し、上端周縁にフランジを付設し、前記連結部を両収納室の底部が相衝突する方向へ折れ曲がり可能に構成したカップ本体を有すること、
周縁部をフランジに密着状に固着させ、中央部に両収納室に連通する注出口を形成した状態でカップ本体を被覆する第1シール蓋材を有すること、
注出口を密閉した状態で、剥離可能に第1シール蓋材を被覆する第2シール蓋材を有すること、
にある。
【0009】
請求項1記載の上記構成のポーションカップは、カップ本体の各収納室に同種あるいは異種の内容液を充填し、その後第1シール蓋材をフランジに密着状に固着した状態でカップ本体全体を被覆し、さらに第2シール蓋材で、注出口を密閉した状態でこの第1シール蓋材を被覆し、これら第1シール蓋材と第2シール蓋材により内容液をカップ本体を密封した状態で、使用に供される。
【0010】
そして使用の際には、まず第2シール蓋材を剥離し、第1シール蓋材に形成されている注出口を開口し、指先でフランジの左右端部近傍を摘みながら注出先の容器上で注出口が下向きになるようにカップ本体をひっくり返し、連結部で第1シール蓋材と共に折り曲げるようにする。
【0011】
カップ本体をV字状になるように連結部で折り曲げると、可撓性の両収納室が
相互に押圧され、内容液を効果的に注出口から注出することができる。ここで、この注出口は破断域を破壊して形成するものでなく、第1シール蓋材に予め適宜の形状、大きさで形成されたものであり、内容液を安定した状態で注出先に注出することができ、内容液が勢いよく思わぬ方向に噴出して手を汚したり、周辺に飛び散り衣服を汚す等の問題が解消されたものである。また、ミシン目等で形成された弱化部である破断域がない構成であるので、第2シール蓋材を剥離しない限り、意図しない圧力により内容液が外に流れ出すこともない。
【0012】
なお、連結部での折り曲げを安定して容易に達成するために、連結部に沿ってカップ本体を横断する溝状等の折れ目線を形成しておくことが好ましい。また第1シール蓋材も連結部と共に折り曲げる必要があり、折り曲げが容易なフィルム状のものを使用することが好ましい。
【0013】
また、第1シール蓋材、第2シール蓋材としては基材となるプラスチックフィルム、アルミラミネートフィルム等の下面に、例えばエチレン-酢酸ビニール共重合体等のホットメルトタイプの熱融着層を積層したものを使用することができる。ただし、第2シール蓋材は指先で容易に剥離できるように易剥離性を有した融着層を使用する。
【0014】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、第1シール蓋材と、第2シール蓋材により両収納室を密封状に分離して、各収納室に異なる内容液を収納する構成とすること、にある。
【0015】
請求項2記載の上記構成により、収納室が第1シール蓋材と、第2シール蓋材により密封状に分離して形成されるので、予め混合した状態で放置しておくと成分が変質したりする、2種の液を両収納室に非接触状態で収納することができると共に、両収納室(2)に連通する注出口から同時に混合しながら注出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記した構成であり、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、注出口は破断域を破壊して形成するものでなく、第1シール蓋材に予め適宜の形状および大きさで形成されたものであり、内容液を安定した状態で注出先に注出することができ、内容液が勢いよく思わぬ方向に噴出して手を汚したり、周辺に飛び散り衣服を汚す等の問題を解消することができる。また、第2シール蓋材を剥離しない限り、意図しない圧力により内容液が外に流れ出すこともないので安心して携帯することもできる。
【0017】
請求項2記載の発明にあっては、予め混合した状態で放置しておくと成分が変質したりする、2種の液を両収納室に非接触状態で収納することができると共に、両収納室に連通する注出口から同時に混合しながら注出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は本発明のポーションカップの第1実施例を示すものであり、本実施例のポーションカップはカップ本体1と、このカップ本体1の開口部4を覆う第1シール蓋材11と、さらにこの第1シール蓋材11を被覆する第2シール蓋材から構成されている。
【0019】
図1は第2シール蓋材を半分程度剥離した状態の斜視図であり、図2はカップ本体1単独の平面図である。そして図3は図2のX−X線に沿って示す縦断面図であり、図3(a)は内容液Lを入れた状態で第1シール蓋材11と第2シール蓋材14で被覆した状態を示し、図3(b)は第2シール蓋材14を剥離して取り除いた状態を示す。なお、図2中には第1シール蓋材11の注出口12の配置位置を2点鎖線で示した。
【0020】
カップ本体1には、一般的にはポリエチレン系樹脂製、ポリプロピレン系樹脂製、ポリスチレン系樹脂製等の熱成形(真空成形)品を使用する。このカップ本体1は2ケの半球殻の小型カップ状の収納室2、2を連結部6を介して左右並列状に一体連結すると共に、上端周縁にフランジ5を周設したものである。またフランジ5および連結部6は比較的厚肉に形成して剛性を確保すると共に、収納室2は比較的薄肉に形成して可撓性を有するようにしている。
【0021】
また、フランジ5に一対のノッチ5a、5aを形成すると共に、連結部6に溝状の折り目線7を形成することにより、両収納室2、2の底部3、3が相衝突する方向へ(図4参照)V字状に容易に折れ曲がるようにしている。
【0022】
第1シール蓋材11および第2シール蓋材14は共にフィルム状で、カップ本体1の外周縁に沿った形状であり、第1シール蓋材11中央部に円形の注出口12が開口形成されている。この第1シール蓋材11および第2シール蓋材14としては基材となるプラスチックフィルム、アルミラミネートフィルム等の下面に、例えばエチレン-酢酸ビニール共重合体等のホットメルトタイプの熱融着層を積層したものを使用することができる。ただし、第2シール蓋材14には使用時に指先で容易に剥離できるように易剥離性を有した融着層を使用する。
【0023】
本実施例のポーションカップは両収納室2、2に同種の内容液Lを収納するためのものであり、連結部6には断面がU字状の連結溝8が形成され、両収納室2、2が連通した状態であるが、カップ本体1の各収納室2、2に同種の内容液Lを充填し、その後第1シール蓋材11をフランジ部5および連結部6に熱融着により密着状に固着した状態でカップ本体1全体を被覆し、さらに第2シール蓋材14で注出口12を密閉した状態で第1シール蓋材11を被覆して提供される。
【0024】
そして使用の際には、まず第2シール蓋材14を剥離して取り除き、注出口12を開口し、指先でフランジ5の左右端部近傍を摘みながら注出先の容器上で注出口12が下向きになるようにカップ本体1をひっくり返し、連結部6で第1シール蓋材11と共に折り曲げるようにする。
【0025】
図4(a)、(b)はこの時の状態を斜視図で示したものであり、図中の矢印の方向は、指先での押圧方向を示す。またこのようにしてカップ本体1をV字状になるようにすると、可撓性の両収納室2、2の底部3、3が相衝突し(図4(a)参照)、さらに相互に押圧されて変形した状態となり(図4(b)参照)、内容液Lを注出口12から注出することができる。この際両収納室2、2間に連通溝8が形成してあるので両収納室2、2の内容液Lは一体になって流出する。
【0026】
ここで、注出口12は破断域を破壊して形成するものでなく、第1シール蓋材11に予め両収納室2、2に連通するように適宜の形状および大きさで形成されたものであり、本実施例のポーションカップは、内容液Lを安定した状態で注出先に効率的に注出することができると共に、内容液Lが勢いよく思わぬ方向に噴出して手を汚したり、周辺に飛び散り衣服を汚す等の問題を解消したものである。
【0027】
図5および図6は本発明のポーションカップの第2実施例であり、それぞれ第1実施例の図2および図3に相当する図である。本実施例のポーションカップは、たとえば野菜用のドレッシングの水層部と油層部のような異種の内容液Lをそれぞれ密封状に分離して収納し、使用の際には同時注出するためのものであり、第1実施例のポーションカップに比較して特にカップ本体1の連結部6の構造に違いがある。
【0028】
第1実施例同様に連結部6には連通溝8が形成されているが、異種の内容液L1、L2を密封状に分離して収納するため、この連通溝8の中央に堰9を設けている。そして第2シール蓋材14が、注出口12を密封すると共に、この注出口12が形成された部分で連結部6に直接密着状に固着するような構成としている。ここで注出口12を楕円状としたのは上記連結部6への第2シール蓋材14の密着面積を大きくして、両収納液L1、L2の分離を確実なものとするためである。
【0029】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。たとえば注出口の形状および大きさは内容液の安定した注出性等を考慮して適宜選択することのできる設計事項であり、また上記実施例では収納室を半球殻状としたが、使用目的、使い勝手により円筒状、矩形筒状等とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように本発明のポーションカップは、内容液を安定した状態で効率的に注出することができると共に、内容液が勢いよく思わぬ方向に噴出して手を汚したり、周辺に飛び散り衣服を汚す等の問題を解消したものであり、安心して使うことができ、より幅広い用途展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のポーションカップの第1実施例の斜視図である。
【図2】図1のポーションカップのカップ本体を示す平面図である。
【図3】図2中のX−X線に沿って示すポーションカップの縦断面図である。
【図4】図1のポーションカップの使用状態を斜視して示す説明図である。
【図5】本発明のポーションカップの第2実施例のカップ本体を示す平面図である。
【図6】図5中のY−Y線に沿って示すポーションカップの縦断面図である。
【図7】ポーションカップの従来例を示す斜視図である。
【図8】図7のポーションカップの使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ;カップ本体
2 ;収納室
3 ;底部
4 ;開口部
5 ;フランジ
5a;ノッチ
6 ;連結部
7 ;折り目線
8 ;連通溝
9 ;堰
11;第1シール蓋材
12;注出口
14;第2シール蓋材
L、L1、L2 ;内容液
101;蓋
102;破断域
103;容器体
107;ドレッシング
108;収容物
110;収容物
111;収容物
A,B;物品収容室(ポケット室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ケの可撓性の小型カップ状収納室(2)を上端で連結部(6)を介して左右並列状に一体連結し、上端周縁にフランジ(5)を付設し、前記連結部(6)を両収納室(2、2)の底部(3、3)が相衝突する方向へ折れ曲がり可能に構成したカップ本体(1)と、周縁部を前記フランジ(5)に密着状に固着させ、中央部に両収納室(2、2)に連通する注出口(12)を形成した状態で前記カップ本体(1)を被覆する第1シール蓋材(11)と、前記注出口(12)を密閉した状態で、剥離可能に第1シール蓋材(11)を被覆する第2シール蓋材(14)を有するポーションカップ。
【請求項2】
第1シール蓋材(11)と、第2シール蓋材(14)により両収納室(2、2)に密封状に分離して、各収納室(2)に異なる内容液(L)を収納する構成とした請求項1記載のポーションカップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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