説明

マイクロカプセル組成物の取得方法及びマイクロカプセル組成物

【課題】散布ノズルによって散布する場合であっても、散布ノズルのフィルターを目詰まりさせることがないマイクロカプセル組成物を取得する方法等を提供する。
【解決手段】粗マイクロカプセル組成物Lを循環槽2からポンプPで濾過器1に送り、濾過器1で粗マイクロカプセル組成物L中の非球状の樹脂固形物等を除去する。濾過器1から排出された粗マイクロカプセル組成物Lを三方弁4を介して循環槽2に再び戻し循環させる。粗マイクロカプセル組成物Lを循環させて繰り返し濾過器1を通過させることによって、濾材7の閉塞を防止しながら粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量を所定値以下まで徐々に低下させる。非球状の樹脂固形物等の含有量が所定値以下になれば、三方弁4を製品タンク3側に切り換えて製品タンク3に送り、マイクロカプセル組成物を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル組成物の取得方法及びマイクロカプセル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル組成物として、例えば、有害生物防除活性成分を含有したマイクロカプセルが液体中に分散したマイクロカプセル組成物が広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、有害生物防除活性成分を水非混和性液体中に分散した分散液に、膜材としての樹脂前駆体を加えた後、得られた分散液を水中に液滴として分散させ、界面重合により前記液滴の表面を樹脂膜で被覆し、マイクロカプセル組成物を取得する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-287510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される方法により取得されたマイクロカプセル組成物は、散布ノズルによって農作物に散布される際に散布ノズルのフィルターを目詰まりさせることがあった。
【0006】
本発明の目的は、例えば、散布ノズルによって散布する場合であっても、散布ノズルのフィルターを目詰まりさせることがないマイクロカプセル組成物を取得する方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、マイクロカプセル組成物の製造過程における界面重合の反応条件等によっては、非球状の樹脂固形物が生成することがあり、マイクロカプセル組成物を散布ノズルで散布する際、かかる非球状の樹脂固形物が散布ノズルのフィルターを目詰まりさせる大きな原因であることを突きとめ本発明に至った。すなわち、本発明に係るマイクロカプセル組成物の取得方法は、球状のマイクロカプセルと非球状の樹脂固形物と液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物を、前記非球状の樹脂固形物を捕捉し得る濾材を備えた濾過器で濾過することにより、前記非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収する工程を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記濾材としては、ウエッジワイヤースクリーン又はパンチングメタルが好ましい。
【0009】
また、濾材の閉塞を防止し高い濾過効率を維持する観点からは、前記濾過器の濾材に捕捉された前記非球状の樹脂固形物を掻き取り除去しながら、前記粗マイクロカプセル組成物を前記濾過器で濾過するのが好ましい。
【0010】
前記マイクロカプセルは有害生物防除活性成分を含有するものであることが好ましい。
【0011】
非球状の樹脂固形物の除去率を高める観点からは、前記粗マイクロカプセル組成物を循環させながら濾過するのが好ましい。また、孔径の異なる濾材を用いて前記粗マイクロカプセル組成物を多段階に分けて濾過するのが好ましい。
【0012】
また本発明によれば、前記のいずれか記載の取得方法により取得されたことを特徴とするマイクロカプセル組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るマイクロカプセル組成物の取得方法では、粗マイクロカプセル組成物に含有される非球状の樹脂固形物を捕捉し得る濾材を備えた濾過器で濾過して、当該非球状の樹脂固形物を除去するので、本発明の方法で取得したマイクロカプセル組成物を、例えば、散布ノズルで散布する場合であっても散布ノズルのフィルターが目詰まりすることがない。
【0014】
また、前記濾材として、ウエッジワイヤースクリーン又はパンチングメタルを用いると、濾材の閉塞を抑えながら非球状の樹脂固形物の除去率を高めることができる。
【0015】
さらに、前記濾材に捕捉された非球状の樹脂固形物を掻き取り除去しながら、前記粗マイクロカプセル組成物を前記濾過器で濾過すると、濾材の閉塞を防止でき高い濾過効率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る取得方法を実施可能な装置例を示す概説図である。
【図2】濾過器の一例を示す概説図である。
【図3】本発明に係る取得方法を実施可能な他の装置例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る取得方法は、球状のマイクロカプセルと非球状の樹脂固形物と液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物を、前記非球状の樹脂固形物を捕捉し得る濾材を備えた濾過器で濾過することにより、前記非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収する工程を有することを特徴とする。本発明において、非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物とは、例えば、散布ノズルで散布する場合であっても散布ノズルのフィルターが目詰まりすることがない程度まで非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物であり、より具体的には、非球状の樹脂固形物の含有量が、マイクロカプセル組成物に対して、例えば0.05重量%以下となるまで非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物であり、また例えば0.02重量%以下となるまで非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物であり、また例えば0.01重量%以下となるまで非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物である。ここで、非球状の樹脂固形物の含有量は、非球状の樹脂固形物を篩により取得し、乾燥した後の重量%で表される。
【0018】
図1に、本発明に係る取得方法を実施可能な装置例を示す概説図を示す。図1の装置は、循環槽2と、循環ポンプPと、濾過器1と、製品タンク3とを備える。循環槽2には、液滴の表面が樹脂膜で被覆されたマイクロカプセルと、非球状の樹脂固形物と、液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物Lが貯留される。球状のマイクロカプセルは、後述するように、例えば、水非混和性液体を水中に液滴として分散し、界面重合法やIn-situ重合法等によって作製される。この作製過程における重合反応で、非球状の樹脂固形物が生成し、非球状の樹脂固形物は、球状のマイクロカプセル及び液体と共に粗マイクロカプセル組成物中に含まれる。本発明の取得方法では、非球状の樹脂固形物を捕捉し得る濾材を備えた濾過器を用いて当該非球状の樹脂固形物を除去する。
【0019】
すなわち、粗マイクロカプセル組成物Lは、循環槽2から循環ポンプPに送られ、循環ポンプPから濾過器1へ所定の圧力で送られる。濾過器1に設ける濾材7(図2に図示)は、球状のマイクロカプセルの粒径より大きく非球状の樹脂固形物を捕捉し得る孔径を有する。球状のマイクロカプセルの粒径は、例えば、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する体積中位径で表すことができる。体積中位径は、例えばミー散乱理論に基づくレーザー光回折散乱法により測定される多数の粒子の画像を解析することにより算出され、具体的な測定機としてはマスターサイザー2000(マルバーン社製品名)が挙げられる。例えば、球状のマイクロカプセルの粒径が18〜24μmの場合、非球状の樹脂固形物の長さは100μmから3mm程度であり、濾材7の孔径としては、150〜450μm程度のものが好適である。
【0020】
濾材7の種類に特に限定はないが、逆三角形の断面をした異形線を等間隔に並べてスリットを形成したウエッジワイヤースクリーンや、鋼板・ステンレス板・アルミ板等の金属板複数個の孔を穿設したパンチングメタルが、閉塞しにくく耐久性も高いことなどから好ましい。
【0021】
また、濾材7の閉塞を防止し高い濾過効率を維持する観点からは、濾材7に捕捉された非球状の樹脂固形物を掻き取り除去しながら、粗マイクロカプセル組成物Lを濾過するのが好ましい。図2に、濾材7に捕捉された非球状の樹脂固形物を掻き取り除去しながら粗マイクロカプセル組成物Lを濾過する濾過器1の一例を示す概説図を示す。装置本体11の上側部に供給口12が形成され、装置本体11の下側部に排出口13が形成されている。また、装置本体11の底部にはドレイン管14が設けられている。そして、装置本体11の中央部には円筒状の濾材7が取り付けられている。装置本体11の中心には、モータMによって回転する回転軸15が設けられ、回転軸15から半径方向外方に延出した支持棒16にブラシ部材17が取り付けられている。
【0022】
粗マイクロカプセル組成物Lは装置本体11上部の供給口12から供給され、粗マイクロカプセル組成物中の球状のマイクロカプセルは濾材7の孔径よりも小さいので液体と共に濾材7を透過して排出口13から排出される。一方、粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等は濾材7で捕捉されそこに堆積する。そして、モータMが連続又は間欠的に駆動し、回転軸15と共にブラシ部材17が回転して、ブラシ部材17が濾材7の内周面を摺擦し、濾材7に捕捉されている非球状の樹脂固形物等を掻き取り除去する。濾材7から掻き取られた非球状の樹脂固形物等は、装置本体11の底部に蓄積されドレイン管14から適宜排出される。なお、装置本体11の供給側と排出側との圧力差を検出し、圧力差が所定圧以上になったときに、非球状の樹脂固形物等が濾材7に付着していると判断し、ブラシ部材17を回転させるようにしてもよい。
【0023】
濾材7に捕捉されている非球状の樹脂固形物等を掻き取り除去する部材としては、ブラシ部材17の他、スクレーパなどを用いても構わない。
【0024】
図1に示す装置において、濾過器1から排出された粗マイクロカプセル組成物Lは三方弁4を介して循環槽2に再び戻され循環される。粗マイクロカプセル組成物Lを循環させて繰り返し濾過器1を通過させることによって、濾材7の閉塞を防止しながら粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量を所定値以下まで徐々に低下させることができる。循環ポンプPの単位時間当たりの循環量と、循環時間と、循環槽2の粗マイクロカプセル組成物量とから算出される粗マイクロカプセル組成物Lの循環回数が増えるほど、粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量は低下し、本発明者が行った実験結果によれば、例えば粗マイクロカプセル組成物Lの循環回数を8回とした場合、循環回数0回の場合に比べて非球状の樹脂固形物の含有量は1/4〜1/20程度になった。
【0025】
以上のようにして粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量が所定値以下になれば、三方弁4を製品タンク3側に切り換えて製品タンク3に送り、非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収する。なお、実際には、粗マイクロカプセル組成物Lの循環時間と粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量との関係を予め調べておき、粗マイクロカプセル組成物Lの循環時間が所定時間になったところで、三方弁4を切り換えて製品タンク3に送り、非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収することが推奨される。
【0026】
図3に、本発明に係る取得方法の他の実施形態を示す概説図を示す。この図に示す装置では、孔径の異なる濾材を取り付けた第1濾過器1a及び第2濾過器1bを用いて粗マイクロカプセル組成物Lを2段階に分けて濾過する。第1濾過器1aの濾材は、第2濾過器1bの濾材よりも孔径の大きいものとする。粗マイクロカプセル組成物Lは、循環槽2から循環ポンプPに送られ、循環ポンプPから三方弁5を介して第1濾過器1aへ送られる。そして、前記実施形態と同様にして、粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量が所定値以下になるまで粗マイクロカプセル組成物Lを循環させながら濾過する。
【0027】
次に、粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量が所定値以下になると、三方弁5を第2濾過器側に切り換えて粗マイクロカプセル組成物Lを第2濾過器1bに送る。第2濾過器1bにおいて、第1濾過器1aよりも孔径の小さい濾材で粗マイクロカプセル組成物Lを濾過する。そして、第2濾過器1bから排出された粗マイクロカプセル組成物Lを三方弁6を介して循環槽2に戻し、第1濾過器1aの場合と同様に、粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量が所定値以下になるまで粗マイクロカプセル組成物Lを循環させながら濾過する。
【0028】
粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量が所定値以下になったところで、三方弁6を製品タンク3側に切り換えて製品タンク3に送り、非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収する。なお、第1濾過器1aによって、粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物等の含有量は少なくなっているので、第2濾過器1bを用いた濾過の後、循環させることなくそのまま製品タンク3に送るようにしても構わない。
【0029】
第1濾過器1a及び第2濾過器1bの構造は、図2に例示した、濾材7に捕捉された非球状の樹脂固形物を掻き取り除去しながら粗マイクロカプセル組成物Lを濾過する構造が好ましい。また、第1濾過器1a及び第2濾過器1bで用いる濾材7の種類に特に限定はなく、前記の例示がここでも例示される。さらに、第1濾過器1aの濾材がウエッジワイヤースクリーンであり、第2濾過器1bの濾材がウエッジワイヤースクリーンである場合、或いは、第1濾過器1aの濾材がパンチングメタルであり、第2濾過器1bの濾材がパンチングメタルである場合、第2濾過器1bの濾材の孔径は、第1濾過器1aの濾材の孔径に対して60%〜90%の範囲とするのが好ましい。
【0030】
この実施形態で説明した装置では、2段階に分けて粗マイクロカプセル組成物を濾過しているが、3段階以上に分けて粗マイクロカプセル組成物を濾過してももちろん構わない。
【0031】
粗マイクロカプセル組成物中に含有される球状のマイクロカプセルとしては、例えば有害生物防除活性成分を含有しているものが好ましい。このような球状のマイクロカプセル等を含有する粗マイクロカプセル組成物は例えば次のようにして作製することができる。
【0032】
水非混和性の有機溶媒に有害生物防除活性成分を懸濁させるとともに、熱重合可能な官能基を有するモノマーを添加する。そして、得られた懸濁液を脱イオン水と混合し液滴として分散させる。脱イオン水には、必要により重合開始剤と、必要により水溶性の被膜形成原料を添加しておく。次いで、分散液を例えば40℃〜80℃に加温し、所定時間程度保持することにより重合反応させて、液滴の外周に被膜を形成させてマイクロカプセル化する。得られる球状のマイクロカプセルの膜厚は、例えばモノマーの添加量により調節することができる。
【0033】
有害生物防除活性成分としては、好ましくは融点が50℃以上の固体である。具体例には、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(以下、「クロチアニジン」と記すことがある)、メトキサジアゾン{5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン}、ジニコナゾール{(E)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール}、プロシミドン{N−(3,5−ジクロロフェニル)−1,2−ジメチルシクロプロパン−1,2−ジカルボキシイミド}、オキソリン酸{5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸}、ブロモブチド{2−ブロモ−N−(α,α−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルブタンアミド}、フルミクロラック−ペンチル{ペンチル 2−クロロ−4−フルオロ−5−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド)フェノキシアセテート}、ウニコナゾール{(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール}、テトラメトリン{3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル クリサンテマート}、レスメトリン{5−ベンジル−3−フリルメチル クリサンテマート}、ジオキサベンゾホス{2−メトキシ−4H−ベンゾ−1,3,2−ジオキサホスホリン−2−スルフィド}、キシリルカルブ{3,4−キシリル メチルカーバメート}、トルクロホスメチル{O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル) O,O−ジメチルホスホロチオエート}、ジメトエート{O,O−ジメチル S−メチルカルバモイルメチル ホスホロジチオエート}、ジエトフェンカルブ{イソプロピル 3,4−ジエトキシカルバニラート}等が挙げられる。
【0034】
水非混和性の有機溶媒は、有害生物防除活性成分の種類に応じて該有害生物防除活性成分をあまり溶解せず分散させることのできるものが適宜選択される。例えば、トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素類、フェニルキシリルエタン等の芳香族炭化水素類、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール類、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸2−エチルヘキシル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル等のエステル類、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、マシン油等の鉱物油、綿実油等の植物油などおよびそれらの混合物が挙げられる。有害生物防除活性成分の水非混和性の有機溶媒への溶解度は5重量%以下であることが好ましい。
【0035】
懸濁液を脱イオン水と混合し液滴として分散させる分散機としては特に限定はなく、従来公知物のものが使用できるが、撹拌型分散機が好適である。市販品としては、例えば、「T.K.ホモミックラインフロー」(プライミクス社製)などが好適に使用できる。
【0036】
熱重合可能な官能基を有するモノマーとしては、多価イソシアナート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアナート)、多価カルボン酸クロリド(例えば、セバシン酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、アゼライン酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド、トリメシン酸ジクロリド)、多価スルホニルクロリド(例えば、ベンゼンスルホニルジクロリド)等が使用できる。
【0037】
水溶性の被膜形成原料としては、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール)、多価アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジン)等が挙げられる。
【0038】
上述のようにして粗マイクロカプセル組成物を得る際に、助剤として、脂肪酸石鹸、エーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物の塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、硫酸化油、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールのホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化油脂、ポリオキシエチレン化ロウ、多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤、無水ケイ酸、有機変性モンモリロナイト類等の増粘剤などを添加してもよい。
【0039】
一方、水相としての水には、予め分散剤を添加しておくのが好ましい。分散剤としては、ゼラチン、アラビアガム、カゼイン、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、脂肪酸石鹸、エーテルカルボン酸、エーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物の塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、硫酸化油、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、ポリアミンまたはアミノアルコール脂肪酸誘導体のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩、水酸基を有する四級アンモニウム塩、エーテル結合を有する四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールのホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化油脂、多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0041】
製造例1
クロチアニジン150重量部と、O−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザーC−101、伊藤製油社製、含量95.5%)414重量部とを混合した。そして、得られた混合物を高速せん断翼が設置された反応槽で撹拌し、混合物に含有されるクロチアニジンを、コロイドミル PUC-160型(日本ボールバルブ社製)で粉砕した。粉砕物中のクロチアニジン粒子の体積中位径は、15μmであった。
ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製、ベッセルサイズ16.5L、平均粒子径0.5mmの球状ガラス20.2kgを充填、撹拌はねの回転速度:周速12m/sec)に、前記粉砕物を220L/hrの速度で加え、クロチアニジン粒子をさらに粉砕した(以下、「粉砕物A」と記す)。粉砕物A中のクロチアニジン粒子の体積中位径は2.3μmであった。その後、配管内に残ったスラリーを50重量部のO−アセチルリシノレイン酸メチルで洗浄することにより、回収した。
614重量部の粉砕物Aに、温度20℃で、ポリイソシアネート(スミジュール L−75、住化バイエルウレタン社製)132重量部を加えた。得られた混合物を20℃で1時間撹拌し混合物Bを得た。
水(脱イオン水)2166重量部に、エチレングリコール(日本触媒製) 229重量部kg及びアラビアガム(アラビックコールSS、三栄薬品貿易社製)232重量部を加え、水相を調製した(得られた混合物を「混合物C」と記す)。そして、混合物Bと混合物Cとをそれぞれ温度25℃に温調した。その後、混合物Bを105L/hrの速度で、混合物Cを115L/hrの速度で供給し、配管中で混合した(得られた混合物を「混合物D」と記す)。
T.Kホモミックラインフロー LF-100型(PRIMIX社製;回転数;8000rpm)を3機直列に接続した分散手段に混合物Dを通液、撹拌し、水中に液滴を分散させた。混合物Cは、混合物Bを使用し終わるまで、上記速度で全体の一部を使用した。得られた分散液中の液滴の体積中位径は21μmであった。
分散液を60℃で24時間撹拌して、クロチアニジンのマイクロカプセルの水性懸濁組成物を得た。得られたマイクロカプセルは体積中位径が23μmであった。
その後、分散液Dを得る操作を2回実施し、クロチアニジンのマイクロカプセルの水性懸濁組成物を得た。この際の非球状の樹脂固形分は、0.013重量%となった。
このクロチアニジンのマイクロカプセルの水性懸濁組成物4690重量部に、水150重量部、増粘剤430重量部、プロピレングリコール(ADEKA製)286重量部を混合し、濃度と粘度を調整し、クロチアニジンを含有したマイクロカプセルと、非球状の樹脂固形物と、液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物を得た。
また、上記に記載する増粘剤とは、イオン交換水429重量部にビーガムグラニュール6重量部(アルミニウムマグネシウムシリケート、三洋化成製)とケルザンS 3重量部(キサンタンガム、三晶製)を加え、60℃で2時間攪拌した後に、冷却してプロキセルGXL(S)(1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン、アーチ・ケミカルズ・ジャパン製)12重量部を混合することで得た。
【0042】
実施例1
(第1濾過)
図3に示した製造装置を用いて、製造例1に準じて製造したクロチアニジンを含有した球状のマイクロカプセル(体積中位径23μm)7.5重量%と、非球状の樹脂固形物(長さ100μmから3mm程度)0.10重量%と、液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物2200kgを、循環槽から循環ポンプを使用して、図2に示す構造の第1濾過器に送り、粗マイクロカプセル組成物を循環させながら濾過した。循環ポンプの流量は10kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)200μmのウエッジワイヤースクリーン(濾過面積0.037m,開口率14.4%)を用いた。また、第1濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
循環回数2回に相当する時間濾過を行ったところ、濾過処理中、濾材は閉塞することはなかった。また、第1濾過後の粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.028重量%まで低減した。
(第2濾過)
次いで、第1濾過器で濾過された粗マイクロカプセル組成物を、図2に示す構造の第2濾過器に送りさらに濾過した。循環ポンプの流量は3kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)150μmのウエッジワイヤースクリーン(濾過面積0.037m,開口率11.2%)を用いた。第2濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
濾過処理中、濾過面は閉塞することはなかった。また、第2濾過後の粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.02重量%まで低減した。
(第3濾過)
次いで、第2濾過器で濾過された粗マイクロカプセル組成物を、図2に示す構造の第3濾過器に送りさらに濾過した。(第1ろ過器のフィルターを粗ろ過終了後にフィルターを交換した。) なお、粗マイクロカプセル組成物は循環させずに製品タンクに送った。循環ポンプの流量は2.5kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)250μmのパンチングメタルスクリーン(濾過面積0.037m,開口率17.8%)を用いた。第3濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
濾過処理中、濾過面は閉塞することはなかった。また、回収したマイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.007重量%であった。
【0043】
実施例2
(第1濾過)
図3に示した製造装置を用いて、製造例1に準じて製造したクロチアニジンを含有した球状のマイクロカプセル(体積中位径23μm)7.8重量%と、非球状の樹脂固形物(長さ100μmから3mm程度)0.10重量%と、液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物3400kgを、循環槽から循環ポンプを使用して、図2に示す構造の第1濾過器に送り、粗マイクロカプセル組成物を循環させながら濾過した。循環ポンプの流量は10kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)250μmのウエッジワイヤースクリーン(濾過面積0.037m,開口率17.4%)を用いた。また、第1濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
循環回数3回に相当する時間濾過を行ったところ、濾過処理中、濾材は閉塞することはなかった。また、第1濾過後の粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.012重量%まで低減した。
(第2濾過)
次いで、第1濾過器で濾過された粗マイクロカプセル組成物を、図2に示す構造の第2濾過器に送りさらに濾過した。循環ポンプの流量は9.5kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)200μmのウエッジワイヤースクリーン(濾過面積0.037m,開口率14.4%)を用いた。第2濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
循環回数2回に相当する時間濾過を行ったところ、濾過処理中、濾過面は閉塞することはなかった。また、回収したマイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.006重量%であった。
【0044】
実施例3
(第1濾過)
図3に示した製造装置を用いて、製造例1に準じて製造したクロチアニジンを含有した球状のマイクロカプセル(体積中位径23μm)7.6重量%と、非球状の樹脂固形物(長さ100μmから3mm程度)0.079重量%と、液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物の360kgを、循環槽から循環ポンプを使用して、図2に示す構造の第1濾過器に送り、粗マイクロカプセル組成物を循環させながら濾過した。循環ポンプの流量は29kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)400μmのパンチングメタルスクリーン(濾過面積0.037m,開口率8.4%)を用いた。また、第1濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
循環回数8回に相当する時間濾過を行ったところ、濾過処理中、濾材は閉塞することはなかった。また、第1濾過後の粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.010重量%まで低減した。
(第2濾過)
次いで、第1濾過器で濾過された粗マイクロカプセル組成物を、図2に示す構造の第2濾過器に送りさらに濾過した。なお、濾過後、循環させずに製品タンクに送った。循環ポンプの流量は3.4kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)250μmのパンチングメタルスクリーン(濾過面積0.037m,開口率17.8%)を用いた。第2濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
濾過処理中、濾過面は閉塞することはなかった。また、得られたマイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.006重量%であった。
【0045】
実施例4
(第1濾過)
図3に示した製造装置を用いて、製造例1に準じて製造したクロチアニジンを含有した球状のマイクロカプセル(体積中位径23μm)7.6重量%と、非球状の樹脂固形物(長さ100μmから3mm程度)0.065重量%と、液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物720kgを、循環槽から循環ポンプを使用して、図2に示す構造の第1濾過器に送り、粗マイクロカプセル組成物を循環させながら濾過した。循環ポンプの流量は29kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)200μmのウエッジワイヤースクリーン(濾過面積0.037m,開口率14.4%)を用いた。また、第1濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
循環回数8回に相当する時間濾過を行ったところ、濾過処理中、濾材は閉塞することはなかった。また、第1濾過後の粗マイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.017重量%まで低減した。
(第2濾過)
次いで、第1濾過器で濾過された粗マイクロカプセル組成物を、図2に示す構造の第2濾過器に送りさらに濾過した。循環ポンプの流量は3.5kg/minとし、濾材として、スリット幅(孔径)150μmのウエッジワイヤースクリーン(濾過面積0.037m,開口率11.2%)を用いた。第2濾過器に取り付けられたブラシ部材の回転数は4.5rpmとした。
循環回数2回に相当する時間濾過を行ったところ、濾過処理中、濾過面は閉塞することはなかった。また、回収したマイクロカプセル組成物中の非球状の樹脂固形物の含有量は0.007重量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る取得方法では、粗マイクロカプセル組成物中に含有される非球状の樹脂固形物を捕捉し得る濾材を備えた濾過器により濾過して、当該非球状の樹脂固形物を除去するので、本発明の方法で取得したマイクロカプセル組成物を、例えば、散布ノズルで散布する場合であっても散布ノズルのフィルターが目詰まりすることがなく有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 濾過器
1a 第1濾過器
1b 第2濾過器
2 循環槽
3 製品タンク
7 濾材
L 粗マイクロカプセル組成物
P 循環ポンプ
17 ブラシ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のマイクロカプセルと非球状の樹脂固形物と液体とを含有する粗マイクロカプセル組成物を、前記非球状の樹脂固形物を捕捉し得る濾材を備えた濾過器で濾過することにより、前記非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収する工程を有することを特徴とするマイクロカプセル組成物の取得方法。
【請求項2】
前記非球状の樹脂固形物の含有量がマイクロカプセル組成物に対して0.01重量%以下となるまで前記非球状の樹脂固形物を除去してなるマイクロカプセル組成物を回収する請求項1記載の取得方法。
【請求項3】
前記濾材が、ウエッジワイヤースクリーン又はパンチングメタルである請求項1又は2記載の取得方法。
【請求項4】
前記粗マイクロカプセル組成物を、前記濾材に捕捉された前記非球状の樹脂固形物を掻き取り除去しながら、前記濾過器で濾過する請求項1〜3のいずれか記載の取得方法。
【請求項5】
前記粗マイクロカプセル組成物を循環させながら濾過する請求項1〜4のいずれか記載の取得方法。
【請求項6】
孔径の異なる濾材を用いて前記粗マイクロカプセル組成物を多段階に分けて濾過する請求項1〜5のいずれか記載の取得方法。
【請求項7】
前記球状のマイクロカプセルが有害生物防除活性成分を含有するものである1〜6のいずれか記載の取得方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の取得方法により取得されたことを特徴とするマイクロカプセル組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240925(P2012−240925A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109463(P2011−109463)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】