説明

マイクロコイル磁気共鳴検出器

本発明は、マイクロコイル磁気共鳴ベースのモジュールと、検出装置と、それらを使用する方法とを提供する。特に、この方法は、サンプル流体中の標的の検出に関連し、サンプル流体中の対象標的を磁気的に標識化することと、サンプル流体にNMR分析を受けさせることとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴と標識化標的の検出とに関する。
【0002】
相互参照
本願は、2007年10月23日に出願された特許文献1および2008年9月25日に出願された特許文献2を優先権主張の基礎とするものであり、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【背景技術】
【0003】
核磁気共鳴(NMR)の種々の実験が、検出コイルの小型化から恩恵を被る可能性がある。サンプルが質量限定されているときに、検出ボリュームをサンプルサイズに釣り合うように減少させることは、強化された信号対雑音比(SNR)性能を提供する。携帯可能なマイクロコイルに基づくNMRシステムの開発にある程度の進歩があったが、改善されたSNR、スループット、能力、およびその他の利益を提供する装置は、当該技術にとって大いに価値あるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/981,948号
【特許文献2】米国仮特許出願第61/099,975号
【特許文献3】米国特許第7,405,567号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. L. Peck, R. L. Magin, and P. C. Lauterbur, "Design and Analysis of Microcoils for NMR Microscopy," J. Magn. Reson., B 108, 114-124 (1995)
【非特許文献2】DX. Olsen, T. L. Peck, A. G. Webb, R. L. Magin, and J. V. Sweedler, "High-resolution microcoil 1H-NMR for mass-limited, nano liter-volume samples," Science, 270, 1967 (1995)
【非特許文献3】A. G. Webb and S. C. Grant, "Signal-to-Noise and Magnetic Susceptibility Trade-offs in Solenoidal Microcoils for NMR," J. Magn. Reson., B 113, 83-87 (1996)
【非特許文献4】J. A. Rogers, R. J. Jackman, G. M. Whitesides, D. L. Olson, and J. V. Sweedler, "Using microcontact printing to fabricate microcoils on capillaries for high resolution proton nuclear magnetic resonance on nano liter volumes," Appl. Phys. Lett., 70, 2464-2466 (1997)
【非特許文献5】J. E. Stacker, T. L. Peck, A. G. Webb, M. Feng, R. L. Magin, "Nanoliter Volume, High-Resolution NMR Microspectroscopv Using a 60-um Planer Microcoil", IEEE Trans. Biomed. Eng., 44, 1122-1127 (1997)
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【非特許文献7】R. Subramanian, M. M. Lam, and A. G. Webb, "RF Microcoil Design for Practical NMR of Mass-Limited Samples," J. Magn. Reson., 133, 227-231 (1998)
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【非特許文献9】V. Malba, R. Maxwell, L. B. Evans, A. F. Bernhardt, M. Cosman, and K. Yan, "Laser-lathe Lithography-A Novel Method for Manufacturing Nuclear Magnetic Resonance Microcoils," Biomed. Microdev., 5, 21-27 (2003)
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【非特許文献11】N. Wu, T. L. Peck, A. G. Webb, R. L. Magin, and J. V. Sweedler, "1H-NMR Spectroscopy on the Nanoliter Scale for Static and On-Line Measurements," Anal. Chem., 66, 3849 (1994)
【非特許文献12】J. D. Trumbull, I. K. Glasgow, D. J. Beebe, and R. L. Magin, IEEE Trans. Biomed. Eng., 47, 3 (2000)
【非特許文献13】C. Massin, F. Vincent, A. Homsy, K. Ehrmann, G. Boero, P. A. Besse, A. Daridon, E. Verpoorte, N. F. de Rooij, and R. S. Popovic, "Planar microcoil-based microfluidic NMR probes," J. Magn. Reson., 164, 242-255 (2003)
【非特許文献14】B. Sorli, J. F. Chateaux, M. Pitaval, H. Chahboune, B. Favre, A. Briguet, and P. Morin, "Micro-spectrometer for NMR: analysis of small quantities in vitro," Meas. Sci. Technol,. 15, 877-880 (2004)
【非特許文献15】D. A. Seeber, J. H. Hoftiezer, W. B. Daniel, M. A. Rutgers, and C. H. Pennington, "Triaxial magnetic field gradient system for microcoil magnetic resonance imaging," Rev. Sci. Inst., 71, 4263-4272 (2000)
【非特許文献16】S. C. Grant, N. R. Aiken, H. D. Plant, S. Gibbs, T. H. Mareci, A. G. Webb, and S. J. Blackband, "NMR Spectroscopy of Single Neurons," Magn. Reson. Med., 44, 19-22 (2000)
【非特許文献17】D. A. Seeber, R. L. Cooper, L. Ciobanu, and C. H. Pennington, "Design and testing of high sensitivity microreceiver coil apparatus for nuclear magnetic resonance and imaging," Rev. Sci. Inst., 72, 2171-2179 (2001)
【非特許文献18】S. C. Grant, L. A. Murphy, R. L. Magin, and G. Friedman, "Analysis of Multilayer Radio Frequency Microcoils for Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy," IEEE Trans. Magn., 37, 2989-2998 (2001)
【非特許文献19】L. Ciobanu and C. H. Pennington, "3D micron-scale MRI of single biological cells," Solid State Nucl. Magn., Reson., 25, 138-141 (2004)
【非特許文献20】H. Wensink, D. C. Hermes, A. van den Berg, "High signal to noise ratio in low-field NMR on a chip: Simulations and experimental results," 17th IEEEMEMS, 407-410 (2004)
【非特許文献21】G. Moresi and R. L. Magin, "Miniature permanent magnet for table-top NMR," Concept. Magn. Res., 19B, 35-43 (2003)
【非特許文献22】A. G. Goloshevsky, J. H. Walton, M. V. Shutov, J. S. de Ropp, S. D. Collins, M. J. McCarthy, "Development of low field nuclear magnetic resonance microcoils," Rev. Sci. Inst., 76, 024101 (2005)
【非特許文献23】A. G. Goloshevsky, J. H. Walton, M. V. Shutov, J. S. de Ropp, "Integration of biaxial planar gradient coils and an RF microcoil for NMR flow imaging," Meas. Sci. Technol., 16, 505-512 (2005)
【非特許文献24】K. Halbach, "Design of permanent multipole magnets with oriented rare earth cobalt material," Nuclear Instrum Methods, 169, 1-10 (1980)
【非特許文献25】E. Fukushima and S. B. W. Roeder, Experimental Pulse NMR, (New York: Addison-Wesley, 1981)
【非特許文献26】L. O. Sillerud, A. F. McDowell, N. L. Adolphi, R. E. Serda, D. P. Adams, M. J. Vasile, T. M. Alam, "1H NMR Detection of superparamagnetic nanoparticles at 1T using a microcoil and novel tuning circuit," J. Magn. Reson., 181, 181-190 (2006)
【非特許文献27】D. I. Hoult and R. E. Richards, "The Signal-to-Noise Ratio of the Nuclear Magnetic Resonance experiment," J. Magn. Reson., 24, 71-85 (1976)
【非特許文献28】J. B. Johnson, "Thermal Agitation of Electricity in Conductors," Phys. Rev., 32, 97-109 (1928)
【非特許文献29】H. Nyquist, "Thermal Agitation of Electric Charge in Conductors," Phys. Rev., 32, 110-113 (1928)
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明はモジュールを提供し、このモジュールは、(a)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルと、(b)マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、(c)導管およびサンプルリザーバと流体連絡しているアフィニティカラムと、(d)モジュールを磁気共鳴検出器に結合させるためのコネクタと、を備える。
第2の態様において、本発明はモジュールを提供し、このモジュールは、(a)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有する複数のマイクロコイルと、(b)各マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、(c)モジュールを磁気共鳴検出器に結合させるためのコネクタと、を備える。
【0007】
第3の態様において、本発明は、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を含むマイクロコイルを提供し、このマイクロコイルは、実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであり、かつアフィニティカラムの中にあるかあるいはアフィニティカラムを包囲する。
第4の態様において、本発明は検出装置を提供し、この検出装置は、(a)4テスラ以下の磁場の強度を有する永久磁石と、(b)永久磁石により生成された磁場に近接して配置された、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルと、(c)マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、(d)導管およびサンプルリザーバと流体連絡しているアフィニティカラムと、を備える。
【0008】
第5の態様において、本発明は検出装置を提供し、この検出装置は、(a)4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有し、各々実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである複数のマイクロコイルと、(c)各マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、を備える。
第6の態様において、本発明は磁気共鳴検出器を提供し、この磁気共鳴検出器は、(a)導管ガイドを含むハウジングと、(b)ハウジング内にある4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、(c)本発明の任意の態様の任意の実施形態のモジュールと、を備え、コネクタはモジュールを導管ガイドを介してハウジングに結合させる。
【0009】
第7の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)本発明の任意の態様の任意の実施形態の検出装置の導管を通して、1つ以上の磁気的に標識化された標的を包含する流体を流すステップと、(b)サンプル流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(c)サンプル流体中の磁気的に標識化された標的を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
第8の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)導管と流体連絡しているサンプルリザーバの中にサンプル流体を導入するステップと、(b)導管内の、1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含むアフィニティカラムに、サンプル流体を流すステップと、(c)アフィニティカラムに磁性粒子を含む流体を流すステップであって、磁性粒子は1つ以上の捕獲薬剤を介してアフィニティカラムに結合された1つ以上の対象標的に選択的に結合することができ、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、磁性粒子を含む流体を流すステップと、(d)未結合磁性粒子数を減らすためにアフィニティカラムを洗浄するステップと、(e)結合した磁性粒子−標的複合体をアフィニティカラムから溶出させるステップと、(f)マイクロコイルに近接して配置された導管を通して磁性粒子−標的複合体を含む流体を流すステップであって、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有し、マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである、磁性粒子−標的複合体を含む流体を流すステップと、(g)サンプル流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(h)サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0010】
第9の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、導管はマイクロコイルに近接して配置され、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有し、マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである、導入するステップと、(b)導管内のアフィニティカラムにサンプル流体を流すステップであって、アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層はサンプル流体中の1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含み、アフィニティカラム内の各層は他の層とは異なる分子に結合することができ、アフィニティカラムは少なくとも部分的にマイクロコイルの中に位置する、サンプル流体を流すステップと、(c)アフィニティカラムに磁性粒子を含む流体を流すステップであって、磁性粒子は1つ以上の対象標的に選択的に結合することができ、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、磁性粒子を含む流体を流すステップと、(d)アフィニティカラムの中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(e)アフィニティカラムの1つ以上の層に存する磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
第10の態様において、本発明は標的流体中のサンプルを検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体を、サンプル流体中の1つ以上の対象標的に結合することのできる磁性粒子と混合するステップであって、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、混合するステップと、(b)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、導管はマイクロコイルに近接して配置され、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有する、導入するステップと、(c)導管内のアフィニティカラムにサンプル流体を流すステップであって、アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層は1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含み、アフィニティカラム内の各層は他の層とは異なる分子に結合することができ、アフィニティカラムはマイクロコイルの中に少なくとも部分的に位置する、流すステップと、(d)アフィニティカラムの中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(e)アフィニティカラムの1つ以上の層に存する磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0011】
第11の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、サンプル流体はサンプル流体中の1つ以上の対象標的に選択的に結合することのできる磁性粒子を含み、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、導入するステップと、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された導管を通してサンプル流体を流すステップと、(c)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(d)サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、(e)流動する流体のうち、標識化されたエンティティが検出された部分を、二次マイクロコイルに近接して配置された導管を通して流すステップと、(f)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で二次マイクロコイルを付勢するステップと、(g)磁性粒子−標的複合体のさらなる特性を判定するために二次マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
第12の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、サンプル流体はサンプル流体中の1つ以上の対象標的に選択的に結合することのできる磁性粒子を含み、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、導入するステップと、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された導管を通してサンプル流体を流すステップと、(c)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(d)サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、(e)流動する流体のうち、磁性粒子−標的複合体が検出された部分を、濃縮された標的溶液を生じさせるために隔離チャンバの中へ逸らすステップと、を含む。
【0012】
第13の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、サンプル流体は2つ以上の対象標的を含み、サンプル流体は2つ以上の対象標的に個別的に結合されて少なくとも第1の磁性粒子−標的複合体および第2の磁性粒子−標的複合体を作る磁性粒子を含む、導入するステップと、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された導管を通してサンプル流体を流すステップと、(c)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(d)流動する流体中の少なくとも第1の磁性粒子−標的複合体および第2の磁性粒子−標的複合体を個別的に検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0013】
本発明の方法の全ての態様および実施形態は、本発明の任意の態様の任意の実施形態のモジュール、マイクロコイル、および検出装置を用いて実行され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に従う検出器の一部分を描いた図である。
【図2】本発明の一実施形態に従う検出器の横断面図を描いた図である。
【図3】3つの例であるマイクロコイル構造を描いた図である。
【図4】複数の導管枝路を含む導管を含む検出器の一部分を描いた図である。
【図5】導管に結合された付加的な流体工学的コンポーネントを含む検出器の一部分を描いた図である。
【図6】流体サンプルの多重化を可能にするために配置された3つのアフィニティカラムを含む検出器の一部分を描いた図である。
【図7a】同調回路とマイクロコイルとの電気的接続の回路図を描いた図である。
【図7b】同調回路とマイクロコイルとの電気的接続の回路図を描いた図である。
【図7c】同調回路とマイクロコイルとの電気的接続の回路図を描いた図である。
【図8】モジュール例を描いた図である。
【図9】本発明の一方法に従って生成されたイメージの時系列である。
【図10】本発明の一方法に従って行なわれた検出実験の完全な時間経過を描いた輪郭プロットである。
【図11】本発明の一方法に従って生じた導管を通るエンティティの動きの図形表示である。
【図12】本発明に使用される層状アフィニティカラムの図形表示である。
【図13】本発明に使用されるマイクロコイルと統合された層状アフィニティカラムの図形表示である。
【図14】本開示による電気LC共鳴回路の基本的実施形態を描いた略図であり、ここでは同調インダクタが小型または「マイクロ」サンプルコイルと直列に接続されている。
【図14A】図14に示されている回路を描いた略図であるが、単一のサンプルコイルは、直列に接続された複数のコイルに取って代わられている。
【図14B】図14に示されている回路を描いた略図であるが、単一のサンプルコイルは、並列に接続された複数のコイルに取って代わられている。
【図15】本開示による電気回路が磁気共鳴実験においてどのように実現され得るかを示す回路図である。
【図16】本開示による電気回路の他の1つの実施形態を描いた回路図であり、ここでは小型サンプルコイルは、共鳴周波数の四分の一波長に実質的に対応する長さのワイヤまたはケーブルを介して同調インダクタと並列に接続されている。
【図17】本開示による回路の別の1つの代替の実施形態の、図16に似ている回路図であって、同調インダクタの1つの部分的セグメントに、その両端間に、接続された伝送線を示す。
【図18】本開示による回路の別の1つの代替の実施形態の、図16に似ている回路図であって、サンプルコイルと同調インダクタとの間の、インピーダンス変換器の伝送線への接続を示す。
【図19】本開示による電気LC直列共鳴回路の1つの基本的実施形態を描いた略図であり、ここでは同調インダクタが小型または「マイクロ」サンプルコイルに直列に接続されている。
【図20】図14を幾分詳しく説明した回路図である。
【図21】図16を幾分詳しく説明した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様において、本発明はモジュールを提供し、このモジュールは、(a)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルと、(b)マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、(c)導管およびサンプルリザーバと流体連絡しているアフィニティカラムと、(d)モジュールを磁気共鳴検出器に結合させるためのコネクタと、を備える。
第2の態様において、本発明はモジュールを提供し、このモジュールは、(a)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有する複数のマイクロコイルと、(b)各マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、(c)モジュールを磁気共鳴検出器に結合させるためのコネクタと、を備える。
【0016】
第3の態様において、本発明は、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を含むマイクロコイルを提供し、このマイクロコイルは、実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであり、かつアフィニティカラムの中にあるかあるいはアフィニティカラムを包囲する。
第4の態様において、本発明は検出装置を提供し、この検出装置は、(a)4テスラ以下の磁場の強度を有する永久磁石と、(b)永久磁石により生成された磁場に近接して配置された、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルと、(c)マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、(d)導管およびサンプルリザーバと流体連絡しているアフィニティカラムと、を備える。
【0017】
第5の態様において、本発明は検出装置を提供し、この検出装置は、(a)4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有し、各々実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである複数のマイクロコイルと、(c)各マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、を備える。
第6の態様において、本発明は磁気共鳴検出器を提供し、この磁気共鳴検出器は、(a)導管ガイドを含むハウジングと、(b)ハウジング内に4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、(c)本発明の任意の態様の任意の実施形態のモジュールと、を備え、コネクタはモジュールを導管ガイドを介してハウジングに結合させる。
【0018】
本発明の種々の態様および実施形態のモジュール、マイクロコイル、検出装置および磁気共鳴検出器は、例えば、増加した機能性および検出モード、改善した感度および特異性、時間およびコスト節約、ならびに以下に記載されるものを含む他の種々の利益を提供する。
本発明の第1〜第6の態様のモジュール、マイクロコイルおよび検出装置のいろいろなコンポーネントのための種々の実施形態の全ては一緒に使用することができ、従って、当業者に理解されるように、1つの態様のために開示された任意の実施形態は、他の1つの態様のための任意の実施形態と組み合わされ得る。
【0019】
本発明のモジュールは、例えば、本願明細書で論じられる導管ガイドを介してモジュールを検出器に結合させることによって、例えば、本発明の任意の実施形態の検出器の使い捨てコンポーネントを永久的な検出器のコンポーネントに結合させるために使用され得る。一例では、検出器の全ての流体工学的コンポーネントはモジュール上に置かれ、このようにして、流体サンプルの部分が永久的な検出器のコンポーネント内に漏れ込む確率を低下させる。複数の検出実験の間での汚染の確率を減少させるために単一の検出器とともに多数のモジュールが使用され得る。一実施形態では、様々のサンプル流体に、他のテストサンプルと接触しないそれら自身のモジュールが割り当てられ得る。取り外し可能なモジュールは、導管およびマイクロコイル特性を、使用されるサンプル流体に基づいてあるいは検出実験の他の態様に基づいて調整することも可能にする。例えば、一実験では長いマイクロコイルが使用され得る。他の1つの例では、大径の導管が使用され得る。
【0020】
構造上のサポートを提供するためにあるいはモジュールを扱いやすくするために、モジュールは例えばカードあるいはボードなど表面上に配置され、あるいは取り外し可能なモジュールはハウジング内に配置され得る。しかし、支えやハウジング手段は不要である。例えば、モジュールは、導管の一部分の周りに巻かれたソレノイド状マイクロコイルを伴う導管のセクションを含み得る。1つの代表的なモジュールが図8において提供されている。
【0021】
1つの例としての検出器では、モジュールは、永久磁石により生成される場一様領域に導管およびマイクロコイルを置く導管ガイド上の検出器に滑り込むことができる。マイクロコイルを導管上に直接取り付けることができ、マイクロコイルから延びる電気リード線はモジュールの縁の上の電気接点パッドまたはコネクタへ延びることができる。検出実験の過程で使用される他の任意の流体チャネルもモジュール上に含まれ得る。導管ガイドは、また、モジュールを磁場勾配コイルおよび真空流体駆動装置と選択整列させる。
検出器の一実施形態は、テストボックスと使い捨てモジュールとを含む。ボックスは、磁石、検出回路およびインターフェイス、流体駆動装置および制御装置、ユーザインターフェイス、結果出力プリンタ、臨床データベースとのインターフェイス、モジュールID読取装置、導管ガイド、マスタープロセッサシステムおよびソフトウェア、ならびに他の関連電源および支援電子装置を含むことができる。
【0022】
本願明細書で使用される「アフィニティカラム」は、抗原−抗体相互作用、酵素−基質相互作用、およびレセプタ−リガンド相互作用を含むがこれらに限定はされない、標的との特異的相互作用に基づいて生化学的混合物を分離することのできる標的エンティティを捕獲するための任意の手段を含む。本発明の装置および方法に使用されるアフィニティカラムは、導管内の「固定相」(検体を分離するために使用される特異物質または樹脂)を含むことができ、導管内に置かれた別のアフィニティカラム(固定相およびカラムハードウェア)またはそれの他の任意の適切な変形例を含むことができる。
【0023】
標的エンティティを捕獲して、磁気標識などの標識化ビーズで標的エンティティを標識化することを可能にするために、本発明のモジュールとともにアフィニティカラムが使用され得る。標的との特異的相互作用に基づいて生化学的混合物を分離することのできる任意のアフィニティカラムが使用され得る。例えば、1つ以上のアフィニティカラムは、導管の検出ゾーンを通して流体を流す前に流体を濃縮する1つの方法として、サンプル流体中の標的エンティティを固定するための捕獲薬剤を含むことができる。「捕獲薬剤」は、サンプル流体中の対象標的を選択的に結合させるか、あるいは選択的に結合させることができるように誘導体化されることのできる任意の分子である。適切な捕獲薬剤は、タンパク質、核酸、抗体、レクチン、酵素、モノサッカライド、またはポリサッカライドを含むが、これらに限定されない。捕獲薬剤は、可逆結合反応を通してカラムに結合するリンカーを用いてカラム充填剤に付着させられることができる。例えば、ヘキサヒスチジンリンカーは、Ni−またはCo−ニトリロアセテート(nitriloacetate)−アガロースカラムマトリックスに付着させられたNiまたはCoイオンに結合する。カラムへのリンカーの結合は、ヘキサ−ヒスリンカー(hexa-his linker) の場合、ヒスチジンまたはイミダゾールなどの、遊離薬剤との競争を通して逆転させられることができる。このリンカーは、標準的な化学方法を介して認識分子に共有結合で付着させられる。
【0024】
アフィニティカラムのこの使用は、検出装置のために「前置フィルタ」を提供し、標的を濃縮するとともに余分の未結合標識化ビーズを除去するために使用され得る。大きなサンプルのためあるいは低濃度の標的エンティティを有すると疑われているサンプルのために、アフィニティカラムなどの濃縮メカニズムの使用はサンプルのボリュームの減少を容易にし得る。例えば、50ミリリットルの1つの環境サンプルが低濃度の1つの標的エンティティを含んでいるのではないかと疑われ得る。検出プロセスを高速化するために、標的エンティティに選択的に結合し得る標識化された捕獲薬剤を伴うアフィニティカラムが、サンプルの残部が洗浄除去されると同時に標的エンティティを分離し保持するために使用され得る。サンプルの無関係の部分が除去された後、前もって捕獲されていた標的エンティティを検出器の感知領域に運び込むためにキャリア流体をしてアフィニティカラムを通過せしめることができる。
【0025】
代わりに、例えばアフィニティカラムあるいはクロマトグラフィから知られている他のカラムなどにおいて、固相の上の捕獲薬剤によって、標識化されていない標的エンティティが捕獲され得る。いったんアフィニティカラムに付着させられて固定されたならば、標的エンティティに対して選択的に付着した抗体を伴う標識化されたビーズの溶液が、付着した標的の全てがビーズで標識化されるように、導入され得る。どの標的も標識化しない余分のビーズは、その後、カラムの外へ洗い出され得る。それらの付着した標識を伴う標的を、その後、カラムから溶出することができ、この溶出液はその後、NMR検出器によって処理され得る。
【0026】
他の1つの実施形態では、アフィニティカラムは2つ以上の層(2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはもっと多くの層)を含み、各層は異なる捕獲薬剤を含み、カラム内の空間の異なる領域において異なる標的を捕獲するために使用することができ、以下でより詳しく記載されるように、複数のNMR検出器またはMRI技術を用いて個別的に検出され得る。一実施形態では、総合磁気共鳴信号変化がまず検出され、その後にどのアフィニティカラム層が変化の発生源であるかを特定するためにMRI技術が使用される。
【0027】
他の1つの実施形態では、マイクロコイルはアフィニティカラムに組み込まれる(すなわち、アフィニティカラムの中にあるか、あるいはアフィニティカラムを囲む)。アフィニティカラムを、非常に小さくすることができて、一般的に、NMR信号を生じさせることのできる物質を包含する。従って、マイクロコイルを、中に捕獲されている標的を直接検出し得るようにカラムの中(あるいはカラムの周り)に作ることができる。例えば、マイクロコイルを、アフィニティカラムの周りに巻くことができ、あるいはその壁の中に埋め込むことができる。静止している磁性標的は、多数回検出され、確実な検出を確かめることができる。既知の位置の標的に種々のプロトコルが適用されて、検出の精度および精密さを改善し、より決定的な検出、個別的検出などを可能にすることができる。統合されている検出器コイルは別の溶出ステップを不要にし、それにより、時間、標的のダメージ、標的からの磁気標識の剥離、より大きな溶出ボリューム中への標的の希釈、サンプルボリュームのより大きな領域への拡散プロセスを通しての標的の広がりなどを減少させる。
【0028】
カラム材料自体は、磁性標的の存在による影響を受ける信号部分を含むNMR信号に寄与するように選択され得る。例えば、材料は、ゲル、または、静止しているけれども液様NMR信号(liquid-like NMR signal)を提供する他の任意の材料であり得る。一実施形態では、材料は、検出NMR信号を生じさせるに充分な水素原子またはフッ素原子を包含することができる。材料は、例えばその四重極摂動NMRスペクトルの中央遷移からの、充分に液様のNMR信号を生じさせるアルミニウムまたは他の任意の原子を含む固体材料であってよい。カラム材料は、検出されるNMR信号に寄与するように改められる(「液化される」)ことができる。例えば、カラム材料は、初めは使えるNMR信号を生じさせない固体であってもよいけれども、化学薬品の作用または温度の変化を通して、使える液様信号を生じさせるように変換され得る。極端な場合には、カラム材料は適切な溶媒の使用を通して溶解され得る。カラム材料は、サンプル空間に加えられる磁場を変化させないように選択され得る(すなわち、カラムの固定相は流体と同じ磁化率を有するように選択され得る)。例えば、カラム材料は、材料の総合的磁気的性質が処理されるサンプル流体のものと調和するように、常磁性イオン(Cu、Mn、Gd)などの不純物の適切な添加物を包含するガラス、セラミック、あるいはゲルであり得る。混合されるべき不純物とそれらの濃度とは、カラム材料の存在がカラム内の磁場の均一性を劣化させないように、選択され得る。
【0029】
他の1つの実施形態では、アフィニティカラムの固相は、それが溶解されてカラム内容物が検出器を通過させられて、溶出を不要とするとともにカラム自体のより多くがNMR信号に寄与することを可能にし得るように、選択され得る。例えば、溶解は、固相を溶かすように選択された溶媒の使用を通して、あるいは固相を液体にするようにカラムの温度を変化させる(例えば、固相を溶かすように温度を高める)ことによって、達成され得る。溶解は完全でなくてもよく、固相は、単にNMR検出コイルを通過するのに充分に小さい破片に砕けるだけでよい。
他の1つの実施形態では、各々の別々のカラムに1つの特定の病原体タイプを付けるために複数の異なるアフィニティカラムが、並列あるいはより好ましくは直列に使用され得る。
【0030】
本発明の検出器は、永久磁石により生成された磁場に近接して配置されたマイクロコイルを備え、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有する。マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである。種々の実施形態において、マイクロコイルの内径は、25〜500、25〜450、25〜400、25〜350、25〜300、25〜250、25〜200、50〜550、50〜500、50〜450、50〜400、50〜350、50〜300、50〜250、50〜200、100〜550、100〜500、100〜450、100〜400、100〜350、100〜300、100〜250、148〜648、170〜555、および100〜200ミクロンの間にあり得る。一例である検出器において、マイクロコイルはソレノイド形状であって、検出実験中に流体のボリュームを保持する導管のセクションの周りに巻くことができる。しかし、平面コイル、矩形コイル、サドルコイル、および蛇行環状コイルを含むがこれらに限定されない他のコイル形状が使用され得る。例えば、平らなまたはソレノイド状マイクロコイル円柱軸を導管の軸に対して垂直に向けることができて、コイルの感度を高めるために、コイルを例えばフェライトに限定されない材料で満たすことができる。さらに、マイクロコイルは、コイル材料を表面上に配置することあるいはコイルをエッチングすることを含むがこれらに限定されない他の構築技術を通して、形成され得る。マイクロコイルの長さは、マイクロコイルの長さが本発明の検出装置の永久磁石により生成される磁場の一様領域と同一の広がりを持つように、選択され得る。他の長さも選択され得る。種々の実施形態において、マイクロコイルの長さは、25μm〜5cm、50μm〜5cm、75μm〜5cm、100μm〜5cm、100μm〜4cm、100μm〜3cm、100μm〜2cm、100μm〜1.5cm、100μm〜1cm、1.5mm〜1.5cm、2.0mm〜1.5cm、3mm〜1.5cm、4mm〜1.5cm、5mm〜1.5、6mm〜1.5cm、7mm〜2cm、8mm〜1.5cm、および9mm〜1cmの間にある。一般的に、マイクロコイルにより生成される信号の強さは、コイルの長さとともに増大する。ある検出器は異なるサイズの複数のマイクロコイルを含むことができる。一例である検出器において、より大きな内径を有する第1のマイクロコイルは、サンプルの初期分析を行なうために使用される。流体内のエンティティの存在が第1のマイクロコイルによって検出されたならば、その流体は、より小さな内径を有する第2のマイクロコイルによってより高い感度で分析されるように逸らされることができる。
【0031】
本願明細書で使用される、マイクロコイルが「磁場に近接して配置される」ということは、マイクロコイルの少なくとも一部分が永久磁石により生成される磁場の中に位置することを意味する。一例である検出器では、ソレノイド状マイクロコイルのコイル状セクション全体が、磁場の中に置かれ、ソレノイド状マイクロコイルのコイル状セクション上の全ての点で観察される磁場が一様であるように向けられる。しかし、磁場内のマイクロコイルの任意の方位、例えばMRI技術を採用するためにマイクロコイルを磁場の非ゼロ成分と整列させる方位が使用され得る。例えば、マイクロコイルを磁場の方向に関して曲げることができ、端部またはマイクロコイルからの電気リード線などの、マイクロコイルの部分は、磁場を越えて延びることができる。
【0032】
一実施形態では、マイクロコイルは、100μmと1500μmとの間の範囲、100μmと1100μmとの間の範囲、あるいはその中間の任意の範囲を含む本発明の任意の実施形態に従う全長を有する、密に巻かれたマイクロコイルである。他の1つの実施形態では、マイクロコイルすなわち密に巻かれたマイクロコイルは、以下で論じられる外径および/または内径を有するキャピラリの周りに巻かれる。他の1つの実施形態では、マイクロコイルは、ワイヤ材料の表皮深さの2.5倍以下の直径を有するワイヤを含む。
【0033】
マイクロコイルを、永久磁石により生成された磁場の強度に基づく導管内の1つのボリュームの流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で付勢することができる。1つのボリュームの流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数はf=γ’Bのように磁場の強度とともに変化し、ここでfは周波数であり、Bは磁場強度であり、γ’は流体の中のテストされる原子核に基づく比例定数である。例えば、水素原子の核についてのγ’は約42.6MHz/テスラである。種々の例において、導管内の1つのボリュームの流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数は、1〜100、10〜100、20〜100、30〜100、40〜100、50〜100、60〜100、70〜100、80〜100、90〜100、20〜85、30〜85、40〜85、50〜85、60〜85、70〜85、80〜85、20〜65、30〜65、40〜65、60〜65、および35〜45MHzの間にある。
【0034】
サンプル流体のスループットを増大させるために、本発明のモジュールおよび/または検出器において2つ以上のマイクロコイルセクションを並列に使用することにより付加的なスループットのために配慮することが可能である。これは、信号の特性、例えば周波数特性の周波数内容によって特定のコイルからの信号が特定され得るようにMRI技術を用いることによって最適化され得る。例えば、マイクロコイルに対して斜めの適切な角度で加えられた磁場勾配(以下で論じられる)は、各コイルからの信号をそれ自身の固有の周波数範囲に分離し、全てのコイルからの同時信号収集を可能にする。代わりにあるいは付加的に、各コイルを個々別々に電気的に接続することができ、信号を別個の電子チャネルで処理することができる。
【0035】
本発明の任意の態様の任意の実施形態において、マイクロコイルは共鳴回路の一部であることができ、(a)マイクロコイルと、(b)マイクロコイルに電気的に直列に接続された補助インダクタコイルと、(c)共鳴回路を形成するようにマイクロコイルおよび補助インダクタコイルに電気的に接続された同調キャパシタと、を備える。
種々の好ましい実施形態において、マイクロコイルは、密に巻かれたマイクロコイルであり、かつ/または、ワイヤ材料の表皮深さの2.5倍以下の直径を有するワイヤを含む。
【0036】
本発明の全ての態様および実施形態の共鳴回路は、例えば改善されたSNRおよび線幅性能および本願明細書に詳しく記載されている増大した機能性を提供し、従って検出能力を大幅に改善し、また従来の方法および装置で可能であったよりもさらにサンプルボリュームを減少させるとともにマイクロコイルNMR装置をさらに小型化することを可能にする、改良されたマイクロコイルNMR装置の設計および製造を考慮に入れている。共鳴回路の種々の実施形態において、マイクロコイルあるいは密に巻かれたマイクロコイルは、本願明細書の実施形態のうちの任意のもので開示された全長を有する。共鳴回路の他の1つの実施形態において、マイクロコイルあるいは密に巻かれたマイクロコイルは、本願明細書の実施形態のうちの任意のもので開示された外径および/または内径を有するキャピラリの周りに巻かれる。本発明の検出器の態様の1つのさらなる実施形態において、補助または同調インダクタは、マイクロコイルまたは密に巻かれたマイクロコイルワイヤの直径より大きな直径のワイヤを含む。本発明の共鳴回路の1つのさらなる実施形態において、補助または同調インダクタコイルは0.3cm〜0.6cmの半径を有する。他の1つの実施形態では、共鳴回路は機械的支持体上に取り付けられる。機械的支持体上に取り付けられたときに、共鳴回路を1つ以上の遮蔽プローブボディ内に据え付ることができる。一実施形態において、1つ以上の遮蔽プローブボディは2つの遮蔽プローブボディを含み、第1の遮蔽プローブボディは密に巻かれたマイクロコイルを遮蔽し、第2の遮蔽ボディは遮蔽プローブボディを遮蔽しかつ/または補助インダクタおよびキャパシタを遮蔽する。これらの実施形態の各々を、本発明の全ての態様の他の実施形態、および共鳴回路の使用を必要とする本発明のさらなる態様と組み合わせて使用することができる。
【0037】
キャピラリチューブを含むがこれに限定されない、流体サンプルを受け入れることのできる任意の導管が使用され得る。一実施形態では、導管は中空で円筒形であり、内径および外径は検出器の感知領域の中でピコリットル−マイクロリットルのボリュームを収容するサイズである。導管の内径は、検出実験に使用される流体の特性と、例えば流体により生成される信号の強度、流体の流量、および実験の所望の分解能などの、検出実験の他のパラメータとに基づいて選択され得る。導管は、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有する。種々の実施形態において、導管内径は、25〜500、25〜450、25〜400、25〜350、25〜300、25〜250、25〜200、50〜550、50〜500、50〜450、50〜400、50〜350、50〜300、50〜250、50〜200、100〜550、100〜500、100〜450、100〜400、100〜350、100〜300、100〜250、170〜550、および100〜200ミクロンの間にあることができる。外径は、本願明細書で開示された内径の導管に適切に使用され得る任意の外径であり得る。さらに、マイクロコイルが流体を保持するために使用される(マイクロコイルが導管を形成する)実施形態において、導管の壁厚はゼロまで減らされ得る。検出器の効率は、導管の内径と外径との差を減少させることによって改善され得る。一例である導管は、100ミクロンの内径と170ミクロンの外径とを有するキャピラリチューブである。楕円形導管を含むがこれに限定されない種々の形状に従う導管も使用され得る。さらに、導管は、複数のセクションを含むことができ、また取り外し可能なセクションを含むことができる。取り外し可能なセクションは、例えば、サンプルの汚染の確率の減少を容易にすることができ、あるいは装置をより容易に清掃あるいは修理することを可能にすることができる。導管自体を、導管ガイド上に、その上に直接置かれて、あるいは導管を導管ガイド内へ案内するのに役立つ他のコンポーネントを用いて間接的に配置することができる。一実施形態では、導管は、導管ガイドが受け入れることのできる、本願明細書でより詳しく論じられる、モジュール上に配置される。
【0038】
導管は、流体を導管に提供するためのリザーバを含むがこれに限定されない任意の適切なコンポーネントから流体を受け入れることができる。そのようなリザーバは、装置に搭載されるかあるいは本願明細書で論じられるモジュール上にあることができる。リザーバは、単に、リザーバから分析に使用される導管部分への流れを制御するためにバルブが置かれる導管のコンポーネントであり得る。
【0039】
本願明細書で使用される、導管が「マイクロコイルに近接して配置される」ことは、マイクロコイルから送られた信号がそこから導管に到達することができるとともに導管の感知領域内の流体から放出された対応するエネルギーがマイクロコイルに電流を誘導し得るところの任意の位置を意味する。一例である実施形態において、ソレノイド状マイクロコイルは、マイクロコイルの軸が導管の軸と平行であるように、導管の周りに巻かれる。他の一例において、平面コイルが導管に直接隣接して置かれて、平面コイルの中心軸が導管の中心軸に対して垂直となるように向けられる。
【0040】
さらに、導管は、1つのボリュームの流体を受け入れることのできる複数(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、あるいはそれ以上)の枝路を含むことができる。複数の枝路は複数のマイクロコイルに近接して配置され得る。一実施形態では、各枝路は別個のマイクロコイルに近接して配置され、各枝路および各マイクロコイルは、同じであるかあるいはその特定の用途に適切であると考えられる異なるサイズを持つことができる。例えば、複数の枝路は、1つの流体サンプルを複数のサブサンプルに分割することを可能にし、あるいは2つ以上の流体サンプルを一度に分析することを可能にすることができる。1つの別の実施形態では、導管の一つ以上の枝路は他の流体工学的プロセスに使用される。例えば、1つ以上の枝路が1つ以上のアフィニティカラムに流体的に結合され得る。1つの流体中のエンティティの特定を助ける標識化ビーズを使用する実験では、サブサンプルの各々に異なる標識が加えられ得る。複数の枝路は、バルブ、隔離チャンバ、および/または所与の目的に適する他の流体工学的構造にも結合され得る。そのような流体工学的コンポーネントを、検出器に「搭載」することができ、あるいは導管ガイドに結合され得るもののような取り外し可能なモジュールを介して提供し得る。
【0041】
本発明の任意の態様の任意の実施形態の検出器は、流体を受け入れるための導管を受け入れることのできる導管ガイドを含むことができ、導管ガイドは、導管をマイクロコイルに近接させてかつ永久磁石により生成される磁場に近接させて(かつ検出器が使用されているときには磁場勾配に近接させて)配置することができる。導管ガイドは、取り付けブラケット、機械的ガイド、および継手を含むがこれらに限定されない、導管の方位を定めるための任意の手段を含むことができる。導管ガイドを、導管ガイドの位置を確定し維持することのできる任意の1つまたは複数の材料から作ることができる。例えば、導管ガイドを形成するために、金属、プラスチック、複合材料、セラミック、および多層材料が個々別々にあるいは組み合わされて使用され得る。一例である検出器において、導管ガイドは、また、実験中にサンプル流体を保持する導管部分(感知領域)の軸を、磁場勾配発生器により生成される磁場勾配の方向と整列させる。他の1つの例である検出器において、磁場勾配が付勢されたときに感知領域により放射される信号の周波数シフトを最小にする磁場勾配に関しての導管の位置をオペレータが選択することを可能にするように、導管ガイドは調整可能である。磁場勾配発生器としてコイルを利用する実施形態では、導管ガイドは、円筒状導管の長軸を勾配コイルの中心と一直線に並べる。しかし、導管ガイドは、導管を、オペレータが適切と考える他の位置および方位に配置することができる。
【0042】
モジュールは、モジュールを、本願明細書で開示されるものなどの検出器に結合させるためのコネクタを含む。モジュールを検出器に結合させることのできる任意のコネクタが使用され得る。例えば、本発明の検出器の態様または方法の態様の一部として記載された導管ガイドのいずれもが使用され得る。さらに、モジュールを定位置に固定することのできる任意の機械的継手が使用され得る。例えば、モジュール上のねじ山付きスクリューまたはボルトが検出器上の対応するねじ穴に結合されたコネクタが使用され得る。他のコネクタの例は、機械的クリップ、スナップフィッティング、ほぞ穴結合、ピン、ソケットフィッティング、および圧力式フィッティングを含む。
【0043】
モジュールは、マイクロコイルまたはモジュールと本発明の任意の実施形態の検出器との電気的接続を確立することのできる電気的接点をさらに含むことができる。取り外し可能なモジュールと検出器との電気的接続は、マイクロコイルが、本願明細書で開示されるものなどの、検出器上の同調回路、信号処理装置、または他の任意の回路とインターフェイスすることを、可能にすることができる。取り外し可能なモジュール上に信号発生器、信号処理装置、同調回路などのエレクトロニクスおよび他のエレクトロニクスを包含する取り外し可能なモジュールにおいて、取り外し可能なモジュールと検出器との電気的接続は、取り外し可能なモジュール上の電子コンポーネントのいずれもが検出器内の電気的コンポーネントとインターフェイスすることを可能にすることができる。例えば、電気的接続は、取り外し可能なモジュールに電力を供給し、あるいは取り外し可能なモジュールがユーザインターフェイスに接続することを可能にするために使用され得る。電気的接続を確立するための任意の手段が使用され得る。例えば、マイクロコイルに結合されたワイヤリードはモジュールから延びることができる。マイクロコイルがモジュールに電気的に接続される実施形態では、導電性トレースがマイクロコイルとモジュール上の電気的継手との間の接続を確立することができ、検出器上のレセプタクルに挿入され得る。
【0044】
モジュールは、導管に流体的に結合される流体駆動装置をさらに含むことができる。モジュールに任意の適切な流体駆動装置が使用され得る。本発明の任意の態様の任意の実施形態のモジュールおよび検出器は、導管に流体的に結合され得る流体駆動装置をさらに備えることができる。流体駆動装置は、導管内の流体の意図的な駆動を可能にすることができる。通例、流体駆動装置は、導管の一端で圧力に変化を加えることによって動作する。例えば、導管の一部分を通して流体を引くために導管の一端に真空が取り付けられ得る。流体の流れを確立するために、シリンジポンプなどの容積式ポンプも使用され得る。流体駆動装置は、流体を駆動するために空気圧または重力を使用することもできる。導管内の流体に流れを与えることのできる任意の装置が使用され得る。流体駆動装置を、検出器に「搭載」することができ、あるいは、(本願明細書でより詳しく記載される)導管ガイドに接続され得るものなどの取り外し可能なモジュールを介して提供し得る。
【0045】
バルブ、隔離チャンバ、およびアフィニティカラムなどの、導管に流体的に結合され得る他の流体工学的コンポーネントも、取り外し可能なモジュールおよび/または検出器に含まれ得る。導管の一部分に流体的に結合することのできる任意のバルブが本発明のモジュールに使用され得る。バルブは、導管内の流体の流れを制御することを可能にする。例えば、複数の枝路を包含する導管を有するモジュールにおいて、複数の枝路を通しての流体の流れを順番付けるために1つ以上のバルブが使用され得る。隔離チャンバ(例えば、マイクロプレート上のウェル、別の導管枝路、リザーバなどであり得る)は、検出実験において使用される流体の一部分を保持するために使用され得る。例えば、流体内にエンティティが検出されたならば、流体の一部分を逸らして隔離チャンバに入れるためにバルブが使用され得る。任意ボリュームの隔離チャンバが使用され得る。例えば、標的が検出された流体のその後の顕微鏡評価を考慮に入れるには、数ナノリットルの小ボリュームで充分である。他の1つの例では、サンプル流体の数マイクロリットル、あるいはボリューム全体が隔離チャンバにおいて保持され得る。
【0046】
本発明の検出器は永久磁石を含む。永久磁石は場の強度を有し、場の強度は4テスラ以下である。種々の実施形態において、場の強度は、0.1〜4、0.1〜3.8、0.1〜3.6、0.1〜3.4、0.1〜3.2、0.1〜3.0、0.1〜2.8、0.1〜2.6、0.1〜2.4、0.1〜2.2、0.1〜2、0.1〜1.9、0.1〜1.8、0.1〜1.7、0.1〜1.6、0.1〜1.5、0.1〜1.4、0.1〜1.3、0.1〜1.2、0.1〜1.1、0.1〜1.0、0.25〜4.0、0.25〜3.5、0.25〜3.0、0.25〜2.5、0.25〜2、0.25〜1.9、0.25〜1.8、0.25〜1.7、0.25〜1.6、0.25〜1.5、0.25〜1.4、0.25〜1.3、0.25〜1.2、0.25〜1.1、0.25〜1.0、0.5〜2、0.5〜1.9、0.5〜1.8、0.5〜1.7、0.5〜1.6、0.5〜1.5、0.5〜1.4、0.5〜1.3、0.5〜1.2、0.5〜1.1、および0.5〜1.0テスラの間にあり得る。永久磁石を単一の磁石から構成することができ、あるいは複数の永久磁石を組み合わせることもできる。永久磁石の構成に使用される任意の材料が、検出器のための永久磁石を形成するために使用され得る。例えば、鉄、他の鉄系および非鉄系の合金、セラミック磁性材料、SmCoおよびNdFeBを含む希土類磁石、および他の磁性材料が使用され得る。永久磁石はいかなる形状にも形成され得る。例えば、曲線状、矩形、円柱状、あるいは他のプロフィールを有する磁石(あるいは複数の磁石の組み合わせ)が使用され得る。一例である検出器において、スチールの磁極片を有する双極子磁石が永久磁石として使用される。しかし、他の、ハルバッハ磁石などの磁石も使用され得る。一例である検出器では、永久磁石により生成される磁場は一様である。しかし、磁石を構築するときに時折遭遇する静的勾配などの勾配を有する磁場を形成する永久磁石も検出器に使用され得る。永久磁石から存在し得る勾配の傾きは0G/cmおよび1.0G/cmの間にあり得る。永久磁石が勾配を有する実施形態では、磁場勾配発生器により生成される勾配は、強度に関してタイプ(例えば、パルス対スタティック)で異なる。検出器は、多様な磁場を有する多様な永久磁石を含むこともできる。一例である検出器において、2つの永久磁石を使用することができ、その第1のものは2.0テスラの磁場強度を有し、第2のものは1.0テスラの磁場強度を有する。検出実験の過程におけるいろいろな磁場強度の使用は、流体サンプルに伴う種々様々のエンティティの検出を容易にすることができる。さらに、流体中の原子核の共鳴周波数は場の強度とともに変化するので、多様な場の強度を有する検出器の使用は、2つ以上の場の強度および周波数で流体を分析することによって偽陽性検出あるいは偽陰性検出の可能性をさらに減少させることができる。
【0047】
本発明の任意の他の実施形態の1つのさらなる実施形態において、モジュール/検出装置はNMRイメージングシステムをさらに備える。そのようなイメージングシステムは当業者に知られている。他の1つの実施形態では、モジュール/検出装置は共鳴回路に電気的に接続した整合キャパシタをさらに備え、共鳴回路を装置の検出エレクトロニクス(すなわち、NMR検出システム)に接続する。
【0048】
本発明の実施形態の全態様の1つの実施形態において、本願明細書に開示されている検出装置は、マイクロコイルNMR−MRIシステムを形成するために、磁場勾配発生器と、信号処理装置などの他のコンポーネントとをも備える。この実施形態では、その1つまたは複数のマイクロコイルは、磁場勾配に近接して配置される。この実施形態の検出器は磁場勾配発生器を含む。勾配は、1つのマイクロコイルの中の複数の信号検出ボリュームを特定するために使用される。勾配は、永久磁石により生成された磁場における勾配を補償するためにも使用され得る。永久磁石、超伝導電磁石、あるいは傾斜磁場コイルを含むがこれらに限定されない、永久磁石により生成された磁場に磁場勾配を加えることのできる任意の磁場勾配発生器が使用され得る。一例である検出器において、磁場勾配は線形であるけれども、非線形勾配を含むが、これに限定されない、任意の勾配が使用され得る。勾配発生器は、0.01G/cmおよび1.0G/cmの間の傾きを有する勾配を生成することができる。種々の実施形態において、磁場勾配発生器により生成される勾配の局所的領域の傾きは、0.01〜1.0、0.015〜1.0、0.02〜1.0、0.02〜0.9、0.02〜0.8、0.02〜0.7、0.02〜0.65、および0.02〜0.6G/cmの間にある。本願明細書で論じられるように、永久磁石が勾配を有する実施形態において、磁場勾配発生器により生成される勾配は、強度に関してタイプ(例えば、パルス対スタティック)で異なる。静的勾配は、小型化されたNMRおよびMRIプラットホームに特に適合し、かつ他の勾配と比べて割合にシンプルであるので、一例である検出器においては静的勾配が使用される。しかし、パルス勾配と、パルス勾配および静的勾配の組み合わせとを含むがこれらに限定されない、他の勾配タイプが使用され得る。検出器において使用される勾配の強さは、検出器の空間的分解能を決定する。磁場勾配の強さを高めれば、検出器はマイクロコイルのより小さなセクションにおける磁気共鳴を特定できるようになる。一例である検出器において、長さ1.1mmのマイクロコイルと関連して0.07G/mmの磁場勾配が使用される。所望の空間的分解能をなお提供する最も弱い勾配を使用することは、検出器のより狭い検出帯域幅と改善した信号対雑音特性とを容易にする。一例である検出器において、検出実験中のサンプル流体により放射されるエネルギーの中心周波数を変えずに、サンプル流体のT2*に基づいて磁場勾配が選択され、使用される。一例である検出器において、サンプルの第1の分析中に約0.14G/mmの第1の磁場勾配が適用され得る。その分析の結果が決定的でなければ、あるいは改善された信号対雑音特性が希望されるのであれば、同じサンプルの第2の分析中に0.07G/mmの第2の勾配が適用され得る。この実施形態の検出器は信号処理装置をさらに備えることができ、この信号処理装置は、マイクロコイルに電気的に結合されて、マイクロコイルから受信された信号の中の複数の周波数成分と複数の振幅成分とを特定することができるとともに、その複数の振幅成分および複数の周波数成分を導管の軸方向長さに沿う複数の位置における流体のボリュームの中のエンティティの存在または不存在と相関させることができる。信号処理装置は、信号の中の周波数成分および振幅成分を特定するための任意の方法を使用することができる。一例である検出器において、信号処理装置は、マイクロコイルからの信号の中の複数の周波数成分および複数の振幅成分を特定するために、マイクロコイルから受信された信号に対して高速フーリエ変換を実行することができる。
【0049】
本願明細書において使用される、マイクロコイルが「磁場勾配に近接して配置される」ということは、マイクロコイルの少なくとも一部分が、磁場勾配発生器により生成された磁場勾配の中に置かれることを意味する。一例である検出器において、マイクロコイルは、磁場勾配の中に置かれて、マイクロコイルの軸が線形磁場勾配の方向と平行であるように整列させられるように、向けられる。しかし、勾配に関してのマイクロコイルの、マイクロコイルを磁場勾配の非ゼロ成分と整列させる任意の方位が、使用され得る。本願明細書の教示に基づいて当業者に理解されるように、マイクロコイルを勾配に近接させて配置することと磁場に近接させて配置することとは、本発明の検出器の設計において別々の変数である。
【0050】
本発明の任意の態様の任意の実施形態のモジュールおよび検出器は、マイクロコイルに電気的に結合された同調回路をさらに備えることができる。同調回路は、マイクロコイルのインダクタンスより少なくとも2倍大きいインダクタンスを持つことのできる同調コイルと、共鳴回路を形成するように同調コイルに結合されたキャパシタとを含む。種々の実施形態において、同調コイルは、マイクロコイルのインダクタンスより3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、50、100、250、500、または1000倍大きいインダクタンスを持つことができる。同調回路は、少なくとも2nHのインダクタンスを有する同調コイルを含み、同調コイルは、共鳴回路を形成するためにキャパシタに結合される。種々の実施形態において、インダクタは、2nH〜1μH、10nH〜1μH、50nH〜1μH、100nH〜1μH、200nH〜1μHおよび500nH〜1μHの間のインダクタンスを有することができる。同調コイルは、マイクロコイルと直列または並列の接続を形成するようにマイクロコイルに結合され得る。そのような同調コイルを、検出器に「搭載」することができ、導管ガイドに結合され得るものなどの取り外し可能なモジュール、あるいはそれらの組み合わせを介して提供し得る。マイクロコイルと同調コイルとの間の伝送線を含むがこれに限定されない、マイクロコイルを同調コイルに結合させる任意の方法が使用され得る。一例である同調回路が、本願明細書において参照により援用されている特許文献3に開示されている。そのような同調コイルを、検出器に「搭載」することができ、導管ガイドに結合され得るものなどの取り外し可能なモジュール、あるいはそれらの組み合わせを介して提供し得る。
【0051】
補助インダクタまたは同調インダクタとも称され得る同調コイルを1つの方法に従って設計することができ、この方法は、(a)第1の直径のワイヤを用いてマイクロコイルを作成するステップと、(b)マイクロコイルのRF抵抗を測定するステップと、(c)第2の直径のワイヤを用いて補助インダクタコイルを巻くステップであって、第2の直径は第1の直径より大きく、補助インダクタコイルの半径は、

を用いて決定され、ここでlwireはワイヤ長さであり、dwireはワイヤ直径であり、kdwireはターン間ワイヤ間隔である、補助インダクタコイルを巻くステップと、を含む。
【0052】
本発明の任意の態様の任意の実施形態の検出器は、信号処理装置をさらに備えることができ、この信号処理装置は、マイクロコイルに電気的に結合されて、マイクロコイルから受信された信号の中の複数の周波数成分と複数の振幅成分とを特定することができるとともに、その複数の振幅成分および複数の周波数成分を導管の軸方向長さに沿う複数の位置における流体のボリュームの中のエンティティの存在または不存在と相関させることができる。信号処理装置は、信号の中の周波数成分および振幅成分を特定するための任意の方法を使用することができる。一例である検出器において、信号処理装置は、マイクロコイルからの信号の中の複数の周波数成分および複数の振幅成分を特定するために、マイクロコイルから受信された信号に対して高速フーリエ変換を実行することができる。信号処理装置は、本願明細書において開示されるコンピュータプログラムを含むことができる。
【0053】
1つのさらなる実施形態において、モジュール/検出器は、本願明細書で開示されるものなどの、本発明の方法を検出器で自動的に実行するために、物理的なコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。本願明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、磁気ディスク、光ディスク、有機メモリ、およびCPUによって読まれ得る他の任意の揮発性(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)または不揮発性(例えば、読み出し専用メモリ(「ROM」)の大容量記憶システムを含む。コンピュータ可読媒体は協動するあるいは相互に接続されたコンピュータ可読媒体を含み、それらは、もっぱら処理システム上に存在するかあるいは処理システムに対してローカルまたはリモートであり得る複数の相互に接続された処理システムに分散される。
【0054】
第7の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)本発明の任意の態様の任意の実施形態の検出装置の導管を通して、1つ以上の磁気的に標識化された標的を包含する流体を流すステップと、(b)サンプル流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(c)サンプル流体中の磁気的に標識化された標的を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0055】
本発明の方法は、所与のサンプルボリューム内の個々の細胞、分子などの直接検出を可能にする。この方法は、検出器を通してサンプル流体を移動させるステップと、対象物質が通過するかどうかを判定するステップとを含み、それは数えられる。従来技術の検出器は、最低濃度の物質に対して敏感である。在来のNMR検出技術は低感度であって、単一の細胞または分子より何倍も大きな標的数を必要とするので、個々の物質を検出するためにNMRを使用することは非常に普通ではない。
【0056】
本発明の方法は、流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢することを含む。マイクロコイルは、パルス電磁信号を選択された共鳴周波数で導管内の流体のほうへ送るために使用される。送られる信号の周波数は、検出実験で調べられる特定の原子核の特性と磁場の強度とに基づいて選択される。マイクロコイルは、また、共鳴周波数信号の送信に応答して磁場内の原子核により吸収または放出されるエネルギーを検出するためにも使用される。このエネルギーは、流れている流体中の原子核により吸収または放出されるエネルギーと対応する電流をマイクロコイルに誘導する。流体内のエンティティの存在は、マイクロコイルにより検出され得るエネルギーの変化を生じさせる。
【0057】
このような形のコントラストは、標識化されたエンティティと周囲流体との他の任意の相互作用からも生じ得る。この相互作用の一般的な形は、エンティティとキャリア溶液との間の、磁化率と称される磁気的特性のミスマッチに起因する。従って、原理的には、開示される装置は、一様な気泡を含むほとんど任意の特定可能な物質に対しても敏感であり得る。しかし、この効果は磁場の強度に比例するので、特に、磁気モーメントと称される強い磁気強度を持っているために選択される磁性粒子と比べて、比較的に弱い場の永久磁石において、それは大きな効果ではない。
【0058】
物質の近傍の一様な磁場の歪みが物質自体の強磁性または「超常磁性」の結果であるときには、物質は、その一様な磁場に対して非線形に応答し、従ってそれは磁化率を有するとは記載されない。代わりに、その物質は磁気モーメントを有すると記載され、それは物質の飽和磁化に起因するかもしれないし、そうではないかもしれない。この磁性粒子は、その近傍における場の一様性を乱し、この乱れはNMR方法によって検出され得る。
その近傍の磁場を乱す物質は、NMRによって直接検出されるには小さすぎるかもしれない。場の乱れは、物質自体より遥かに大きなボリュームにおよび得る。物質による影響を受ける材料のボリュームが充分に大きければ、その物質の存在はNMRにより検出され得る。この意味において、磁場の乱れは、物質の存在を示すNMR信号を増幅するのに役立つ。
【0059】
NMRコントラストの最も基本的な形は、なにものかがサンプル領域に存在するか否かを検出することである。標識化されたエンティティ、例えばバクテリアを含む薄い溶液がNMR検出器を通されるときに、本発明の方法を用いることにより、その標識化されたエンティティは個々別々に検出され得る。特定の標的を標識化する磁気ビーズは、周囲流体からのNMR信号に逆に影響を及ぼす。従って、磁性粒子の「勢力球」が、検査されるボリュームと同等であるならば、すなわち、その「球」が溶液が流れているチューブの相当の部分に及ぶならば、サンプルチューブの総横断面から生じるNMR信号は弱められる。サンプル流体の他の特性を目立たせるための励起および検出のためのプロトコルも考案され得る。流体には、例えば1つの励起に応答してどれだけ長く信号を生成するかという点で、違いがあり得る。「緩和時間」におけるそれらの差異は、混合物中の2つ(あるいはそれより多く)の流体の個別的検出を行なうために利用され得る。原子核を励起し検出するための特定の方法に各々適合し、異なる化学的または物理的特性(または特性の組み合わせ)に各々関連する、いくつかの異なる緩和時間がある。最も一般的に論じられる緩和時間はT1 、T2 、およびT2*と表示される。拡散テンソル、流速、弾性係数、化学環境、および温度を含む他の多くのパラメータが、NMR実験において検出された信号に符号化され得る。2つ以上の物理的パラメータの検出を同じNMR実験に組み込むことも可能である。例えば、T2検出と空間的位置検出との両方を組み合わせて「T2強調画像」とすることは一般的である。この場合、検出される信号は、空間内の全ての位置に位置する材料の量と、そこに位置する材料のT2との両方から影響を受ける。
【0060】
第8の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)導管と流体連絡しているサンプルリザーバの中にサンプル流体を導入するステップと、(b)導管内の、1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含むアフィニティカラムに、サンプル流体を流すステップと、(c)アフィニティカラムに磁性粒子を含む流体を流すステップであって、磁性粒子は1つ以上の捕獲薬剤を介してアフィニティカラムに結合された1つ以上の対象標的に選択的に結合することができ、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、磁性粒子を含む流体を流すステップと、(d)未結合磁性粒子数を減らすためにアフィニティカラムを洗浄するステップと、(e)結合した磁性粒子−標的複合体をアフィニティカラムから溶出させるステップと、(f)マイクロコイルに近接して配置された導管を通して磁性粒子−標的複合体を含む流体を流すステップであって、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有し、マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである、磁性粒子−標的複合体を含む流体を流すステップと、(g)サンプル流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(h)サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0061】
NMR検出の前のフィルタリングステップとしてのアフィニティカラムの使用は、標的を濃縮しかつ/または余分の未結合標識を除去するために使用され得る。サンプル流体は、アフィニティカラムの固定相が置かれているカラムを通してポンプ輸送される。固定相は、対象標的を優先的に捕獲するための1つ以上の捕獲薬剤で機能化される。全ての標的を捕獲するために有益であるならば、サンプル流体はいくどもカラムを通して循環させられ得る。カラムが1つ以上の標的タイプでロードされたならば、磁気標識を包含する流体がカラムに流し込まれる。これらの標識は、1つまたは複数の標的だけに選択的に結合するように選択される。標識化流体は再循環させられ得る。標的が標識化されたならば、標的に付着していない全ての磁気標識を除去するためにカラムは急激に洗浄される。その後、カラムは、標的と磁気標識との結合を妨害せずに、標的と固定相との結合を解くように、溶出させられる。従って、溶出剤は、標識化された標的と、数が減った余分の磁気標識とを包含し、総ボリュームはオリジナルのサンプルより大幅に少ない(すなわち、標的は濃縮されている)。その後、溶出剤はNMR検出器を通され、これは磁気的に標識化されている標的を数える。たとえ全ての余分のビーズが除去されなくても、それらの数の減少は非常に有益である。他の1つの実施形態では、カラムの固定相を溶解することができてNMR検出器を通過することができる。例えば、カラムの固相材料に適切な溶媒は固相を溶解する。固定相は、(カラムの出力側におけるフリットの除去または誘導故障を介して)遊離されてNMR検出器を通過することができる。例えば、固相が、検出器を通過できる非常に細かい粒子で構成されているならば、それらを機械的に拘束してカラム内に留まらせるフリットと称される格子のような構造によってカラム内の定位置に保持され得る。カラムがロードされたならば、フリットは解放され、今拘束されていない粒子はこれに結合されている標的と一緒に検出器を通って流れる。
【0062】
アフィニティカラムでの標的エンティティの濃縮は、より多くの量の生物学的な流体、あるいは他の、例えば環境水、産業廃棄物、プロセス水、または野菜などの食料を洗うのに使われる水などの、対象流体を処理することを可能にする。カラムは、検出ステップで使用されるよりも遥かに大きな流量を収容することができる。そうでなければ、大サンプル流体ボリュームを直接にマイクロコイルを通して処理することは実際的でないかもしれない。なぜならば、この方法の高感度は、ある程度は、非常に小さなボリュームのマイクロコイルの使用に由来するということが理解されているからである。コイルのボリュームは、例えば、ナノリットル(10-9リットル)を単位として測られ得る。しかし、例えば数マイクロリットル(10-6リットル)のボリュームを有するアフィニティカラムを使用すれば、マイクロコイルのボリュームを処理するために必要とされる同じ量の時間で標的を濃縮し捕獲するために一千倍の量の流体が処理され得る。これは、分析サイクルを著しく、例えばこの場合には1000倍、短くするのに役立ち得る。偽陽性結果の割合が低減され得るように、NMR検出器に導入される非特異的材料の量を減らすこともできる。アフィニティカラムの使用は、検出方法の感度を高めることができる。例えば、10-2リットルのヒトの全血の中の単一のバクテリア細胞を検出したいと希望するとすれば、流量が限られていて例えば毎分10-6リットルであれば、単一の血液サンプルを処理するために10,000秒すなわちほぼ3時間が必要である。しかし、10-5リットルのアフィニティカラムを置けば、流れを毎分10-3リットルまで増やすことができて、血液サンプルが僅か10秒でカラムにロードされ得るという結果となり得る。その後、カラムを溶出することができて、空隙容量ピークを含む(対象標的を含む)と分かっている小部分だけをNMRコイル内に送るだけでよい。カラムは、固有の標的複合体を組み立てるために必要とされる特定の生化学がそれに対して行なわれ得るところの表面を提供するのにも役立つ。遊離薬剤(イミダゾール、グルコース、pH、イオン強度など)によってカラムから特異的に溶出された材料は、その後、検出ゾーンに入って、探されている標的に特有の信号特性を提供する。
【0063】
第9の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、導管はマイクロコイルに近接して配置され、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有し、マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである、導入するステップと、(b)導管内のアフィニティカラムにサンプル流体を流すステップであって、アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層はサンプル流体中の1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含み、アフィニティカラム内の各層は他の層とは異なる分子に結合することができ、アフィニティカラムは少なくとも部分的にマイクロコイルの中に位置する、サンプル流体を流すステップと、(c)アフィニティカラムに磁性粒子を含む流体を流すステップであって、磁性粒子は1つ以上の対象標的に選択的に結合することができ、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、磁性粒子を含む流体を流すステップと、(d)アフィニティカラムの中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(e)アフィニティカラムの1つ以上の層に存する磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0064】
第10の態様において、本発明は標的流体中のサンプルを検出する方法を含み、この方法は、(a)サンプル流体を、サンプル流体中の1つ以上の対象標的に結合することのできる磁性粒子と混合するステップであって、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、混合するステップと、(b)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、導管はマイクロコイルに近接して配置され、マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有する、導入するステップと、(c)導管内のアフィニティカラムにサンプル流体を流すステップであって、アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層は1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含み、アフィニティカラム内の各層は他の層とは異なる分子に結合することができ、アフィニティカラムはマイクロコイルの中に少なくとも部分的に位置する、流すステップと、(d)アフィニティカラムの中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(e)アフィニティカラムの1つ以上の層に存する磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0065】
これらの態様において、この方法は多層アフィニティカラムの中での位置によって標的エンティティを特定する。空間の異なる領域において異なる標的を捕獲することにより、それらは、複数のNMR検出器またはMRI技術を用いて個別的に検出され得る。例えば、信号全体の中の変化を始めに検出することができ、次に、層のうちのどれがその信号変化の源であるか特定するためにMRI方法が使用される。一実施形態では、マイクロコイルはアフィニティカラムと統合される。アフィニティカラムを、非常に小さくすることができて、通例、NMR信号を生成し得る物質を包含することができる。従って、マイクロコイルは、カラムの中(あるいは周り)に組み込まれて、中に捕獲されている標的を直接検出するために使用され得る。コイルをカラムの周りに巻くかあるいはその壁の中に埋め込むことができる。
【0066】
一実施形態では、磁気的に標識化された標的を含む流体をそのようなカラムを通って流すことができ、カラムは標的を優先的に捕獲するための捕獲薬剤で機能化される。この捕獲は、本質的に化学的でありかつ/または物理的であることができる。標的の磁性は、検出されるNMR信号に影響を及ぼす。本願明細書に記載されるように多数の異なる効果が可能であり、NMR信号検出プロトコルは各々のために適宜最適化される。一実施形態では、NMR検出は流体がアフィニティカラムを通って流れている間に進行することができ、あるいはサンプルがアフィニティカラムにロードされたならば流体の流れを止めることができる。NMRプロトコル(またはデータ分析手順)は、静止している磁性標的と動いている磁性粒子とを特定するように設計され得る。例えば、その特定は標的の位置の2つの検出に基づくことができ、その位置が変化したならば標的は動いていると特定される。他の1つの例では、動いているサンプルおよび動いていないサンプルから検出される信号を特定するために流れ補償NMRパルスシーケンス(MRI血管造影法で使用されるものなど)が使用される。例えば、流れ補償磁場勾配波形を使用することにより、あるいは最適のSNRを与えるように最適化された小さなフリップ角度を伴う急速反復データ収集により、動いているサンプル流体からのNMR信号の検出を最適化するための技術が使用され得る。カラム材料自体は、磁性標的の存在による影響を受ける信号部分を含む、NMR信号に寄与するように選択され得る。カラム材料を、検出されるNMR信号に寄与するように、変更(「溶解」)することができる。カラム材料は、サンプル空間に加えられている磁場を変化させないように選択され得る(すなわち、カラムの固定相は、流体と同じ磁化率を有するように選択され得る)。他の1つの実施形態では、アフィニティカラムの固相を、カラムの内容が検出ゾーンを通過するように、溶解することができて、溶出の必要をなくすとともにカラム自体のより多くの量がNMR信号に寄与することを可能にする(カラム統合検出器について)。
【0067】
これらの方法の使用は、静止している磁性標的が多数回検出され得て、確実な検出を確かめられるので、多くの利点を提供する。既知の位置の標的に種々のプロトコルが適用されて、検出の精度および精密さを改善し、より決定的な検出、個別的検出などを可能にすることができる。統合されている検出器コイルは、あまりに多くの時間を要したり、標的を損傷させたり、標的から磁気標識を剥離させたり、標的をより大きな溶出ボリューム中に希釈したり、拡散プロセスを通して標的をより大きなサンプルボリューム領域中へ拡散させたりなどすることのある別の溶出ステップを不要にする。
【0068】
第11の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、サンプル流体はサンプル流体中の1つ以上の対象標的に選択的に結合することのできる磁性粒子を含み、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、導入するステップと、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された導管を通してサンプル流体を流すステップと、(c)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(d)サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、(e)流動する流体のうち、標識化されたエンティティが検出された部分を、二次マイクロコイルに近接して配置された導管を通して流すステップと、(f)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で二次マイクロコイルを付勢するステップと、(g)磁性粒子−標的複合体のさらなる特性を判定するために二次マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0069】
信号対雑音(S/N)を高めるために2ステップのプロセスを持つことが可能であり、この場合、病原体の存在を判定するためにより劣等なS/Nを有する高速検出プロセスが使用され、その後に、使用される磁気ビーズレベル間の良好な離散性区別を伴う信号レベルを決定するために、より良好なS/Nを有するより低速の検出プロセスが使用される。本発明のこの態様の方法は、同じ装置で二次測定をトリガするために初期検出ステップを使用する。これは、隔離を伴ってあるいは隔離を伴わずに行われ得る。「二次マイクロコイル」は、異なるマイクロコイルであるか、あるいは、磁性粒子−標的複合体の二次的特性の測定(すなわち、検出以外の何か)のためにサンプル流体が再循環させられてくる同じマイクロコイルであり得る。一実施形態では、装置は最初高スループットモードで動かされ、サンプルの割合に大きなボリュームが処理される。初期検出プロセスはサンプルのスループットのために最適化されるので、標的の単なる存在以上のものを知ることを難しくする。しかし、検出イベントが起こったならば、装置の焦点を、物を単に検出することから、それらのアイデンティティなどの、それらに関するそれ以上のことを知ることに移すことができる。これは、標的上の標識を変化させずに、ただし、より大きい分解能を与え、より高い精度を有するなどする方法でデータを取得することによって可能である。これらの他のデータ収集技術は、高スループットモードより低速である。第2の測定は、例えば、別のマイクロコイルにおいて行われ得る。この別のコイルは、コイルにおける低減した流体流速の他に、信号対雑音を最適化する特性を有することができる。別のコイルおよび検出プロセスは、初めの検出器コイルで可能なものとは異なる測定を行なうことあるいは異なる測定精度を達成することのできる異なるNMR励起および検出技術を採用することができる。
【0070】
一実施形態では、別のマイクロコイルは、初めのマイクロコイルから下流で導管流路に沿って配置される。流体流量を止めるかあるいは遅くすることができ、あるいは流れの形状寸法が、強化され減速された検出に適する仕方で変更され得る(より大きな導管直径など)。第2のステップを第1のマイクロコイルで行うこともできて、標的は、サンプルを反対方向に流すことによってそのコイルの中に戻される。第2のステップを、その中で流体がより遅く移動するかあるいは一時的に止められるところの並列流路である「副次的ライン」の中で行うことができる。第2のステップは、標的の信号の異なる態様を目立たせるように初めのプロトコルとは異なるNMR実験プロトコルを含むことができる。
【0071】
代わりに、第2の「高S/R」検出プロセスは、サンプル流体全体が初めのステップで処理された後に適用され得る。
これらの第2のステップは、緩和時間の精密測定と、装置の動作の希薄エンティティ検出フェーズ中には特定不能であった標識の特性または特徴の特定を含む物質あるいは分子の分光学的特定とを含むがこれらに限定されない、任意の有益な測定を含むことができる。
【0072】
第12の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、サンプル流体はサンプル流体中の1つ以上の対象標的に選択的に結合することのできる磁性粒子を含み、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、導入するステップと、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された導管を通してサンプル流体を流すステップと、(c)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(d)サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、(e)流動する流体のうち、磁性粒子−標的複合体が検出された部分を、濃縮された標的溶液を生じさせるために隔離チャンバの中へ逸らすステップと、を含む。
【0073】
本発明の方法は標的が空間内のどこにあるかを判定するので、その後、特定された標的はさらなる分析のために隔離され得る。検出ボリュームは非常に小さくあることができ(通例、数ナノリットル)、このボリュームを非常に狭い導管の中に収容することができ、測定されるサンプル流体をこの導管を通して流すことができる。例えば、流れているサンプルの非常に小さな、分離されたセクションを隔離チャンバに集めるミクロ流体バルブをトリガするために検出イベントを使用することができるので、集められたセクションは、NMR検出器により発見された物質を包含する。バックグラウンド流体のほとんど全ては、隔離されずに導管を通って流れる。最終結果は、対象物の、非常に小さな総ボリューム中への隔離である。すなわち、標的の濃度の劇的向上であり、さらなる処理(NMR装置での、あるいはその後の装置または手続きでの)を遥かに高速に、容易に、かつより効率的にする。標的を個別的に特定し、偽陽性(特に、例えば、局所的に高いバックグラウンドビーズ濃度によるもの)を抑えるなどするためにさらなる装置内処理が使用され得る。一実施形態では、隔離を初めの検出ランの間に完了することを許し、隔離されたサンプルの爾後の処理あるいは隔離された材料の処理を直ぐに始めることができる。1つのさらなる実施形態では、隔離されたサンプルを再び検出ゾーン(同じまたは異なるマイクロコイル)を通して流すことによって、高いバックグラウンド濃度からの偽陽性を減少させるために隔離が使用され得る。
【0074】
第13の態様において、本発明はサンプル流体中の標的を検出する方法を提供し、この方法は、(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、サンプルリザーバは導管と流体連絡し、サンプル流体は2つ以上の対象標的を含み、サンプル流体は2つ以上の対象標的に個別的に結合されて少なくとも第1の磁性粒子−標的複合体および第2の磁性粒子−標的複合体を作る磁性粒子を含む、導入するステップと、(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された導管を通してサンプル流体を流すステップと、(c)サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数でマイクロコイルを付勢するステップと、(d)流動流体中の少なくとも第1の磁性粒子−標的複合体および第2の磁性粒子−標的複合体を個別的に検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、を含む。
【0075】
この態様では、この方法は単一のデータ収集ステップでの検出および分類/特定を可能にする。異なる量の磁性材料を各々に付着させることができるならば、2つ以上の固有の標的を個別的に検出することができる。全てのそのような標識化された標的は、全て、検出されるNMR信号の減少を引き起こすので、本発明の検出装置で検出される。より多くの磁性標的は、信号のより大きな減少を引き起こす。信号減少(または信号の他の変更)の程度を判定して、どの種類の標的が検出されたのかを判定するためにこの情報を使用することができる。
【0076】
この方法は、区別されるべき標的に対する異なるレベルの磁気標識化を必要とする。標識化のこれらのレベルは、以下を含むがこれらに限定されない種々の方法で達成され得る。すなわち、
(a)固有の標的に同サイズのビーズを(平均で)同数付着させる。この場合、標的Aのためのビーズは、標的Bのためのビーズより高い磁気強度を有する。異強度ビーズを、異なる磁性材料から作ることができ、あるいは異なる量の同じ材料を包含することができる(例えば、60%Fe34 対90%Fe34 )。
(b)異なるサイズのビーズを異なる固有の標的に付着させる。これは個別的標識化という結果をもたらす。なぜならば、単位標的表面積あたりに異なる数のビーズが付着し、異なるサイズのビーズについてビーズあたりの磁気モーメントが異なるからである(例えば、同じ磁性材料の同じ分数量を包含するビーズは総磁性含有量に起因して磁気強度が異なる)。
(c)固有の標的の全てに最大限の数の同じビーズを付着させる。この場合、標的自体は総表面積が異なる。固有の標的は総磁気モーメントが異なる、なぜならば、収容され得るビーズの総数が、
(d)全ての標的のために同じビーズを使用する。この場合、抗体などの、選択される特定の捕獲薬剤は、異なる固有の標的について異なるアフィニティを有し、異なる(平均)数のビーズが各タイプの標的に付着するという結果をもたらす。
【0077】
一実施形態では、標識化のレベルは、初めの検出とは別のステップで測定される。この第2のステップは、同じ流体ストリームにおいて(例えば、レベル検出のために最適化された第2のマイクロコイルおよび検出ボリュームにおいて、あるいはレベル精度を改善するために流れを一時的に遅くすることにより、など)生じることができ、あるいは並列のストリームまたは並列の流れ停止実験の中にあり得る。標識化のレベル判定を、初めの検出器で隔離技術を用いて、完全に別の装置で行うことができる。異なるタイプまたは程度の標識化を区別するために異なる実験磁気共鳴プロトコルが採用され得る。
少数のビーズのクラスタの異なる検出を示すデータを生成した。このデータは、本発明の方法および装置を用いる信号強度差の抽出と、「標識化」の複数のレベルを特定する能力とを証明する。
【0078】
次のさらなる実施形態は、本発明の任意の実施形態/態様とともにも使用され得る。
より強力な、より敏感な、より速い、あるいは別様に改善された検出を達成するために、マイクロコイル検出器は、コイルを巻くために使用される金属の磁化率と調和する材料に浸漬されることができる。その代わりにあるいはそれに加えて、コイルのワイヤを、その磁化率がその周囲と調和するように選択あるいは処理することができる。コイルがその上に巻かれ、あるいはコイルがその中に巻かれて流体サンプルを収容するチューブを形成する材料を、流体のあるいはワイヤの磁化率と調和するように、あるいは検出を最も容易にする他の任意の仕方で、選択することができる。
【0079】
一実施形態では、処理は、時間が経過するに連れて(すなわち、2つ以上の時点で)マイクロコイルから受信された複数の信号を処理することを含み、その処理は、マイクロコイルから受信された各信号の中の複数の周波数成分および複数の振幅成分を特定することと、各信号の中のその複数の振幅成分および複数の周波数成分を、マイクロコイルの軸方向長さに沿う複数の位置における流れている流体の中の標識化されているエンティティの存在または不存在に相関させることとを含む。この実施形態では、2つ以上の(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいはもっと多くの)時点からの信号が処理されて、信号がバックグラウンドまたは他の電気的外乱により引き起こされているのではないことを確かめ、信号間の適切な相関を特定するために2つ以上の異なる時点からの信号データを相関させることを可能にする。例えば、第1の信号が1つの位置で検出され、第2の信号が、流体速度および他のファクタに基づいて、第1の信号から適切な距離を置いて第2の時点で検出される。時点間の適切な間隔が、マイクロコイルのサイズ、流体速度および粘度、導管サイズなどを含むがこれらに限定されないいろいろなファクタに依存するということを、当業者であれば本願明細書の教示に基づいて理解できるはずである。
【0080】
本発明の方法を、例えば、流体中の1つ以上の標識化された分子(「エンティティ」)のMRIおよび/またはNMR検出に使用することができ、本願明細書で開示されている方法は、偽陽性検出および偽陰性検出に対する感受性を劇的に低下させる。この方法は、流れている流体中の標識化されているエンティティの検出を可能にするとともに、検出プロセスの多重化を提供することを可能にして、単一の実験において反復される1つのNMR実験の信頼性を提供する。この方法は、また、サンプルボリュームの中の標識化されているエンティティの存在および移動を観察し記録することも可能にする。本発明の装置および方法を用いて検出され得るエンティティは、細胞(バクテリア、菌類、他の寄生生物、がん細胞など)、ウィルス、タンパク質(抗体を含む)、プリオン、核酸、炭水化物、脂質、小分子、抗生物質、毒素などを含むが、これらに限定されない。
【0081】
種々の実施形態において、本発明の方法を介しての検出は、サンプル流体中のエンティティの検出、特定、および/または定量化を含むことができる。体液サンプル(血液、尿、唾液、精液、膣分泌液、涙、羊水、脳脊髄液など)、皮膚、創傷、あるいは他の身体部位からのスワブサンプル、糞便サンプル(液体中での適切なサンプル希釈により処理された)などの半固体サンプル、環境水、産業排水、プロセス水、液体食料(ミルク、ジュース、飲料水、ソーダなどを含むがこれらに限定されない)あるいは野菜および果物などの食料を洗うために使用される水を含むがこれらに限定されない、任意の対象サンプル流体が使用され得る。サンプルボリュームのサイズは、分析される流体の特性、感知領域を通る所望の流量、および導管のサイズに応じて異なり得る。導管の感知領域(すなわち、分析されるボリューム)は、サンプルボリュームのサイズ、導管のサイズ、流量、マイクロコイルのサイズ、およびユーザにより決められる他のファクタに応じて異なり得る。種々の実施形態において、感知領域は100ピコリットルから50マイクロリットルまでの範囲にわたる。他の種々の実施形態では、感知領域は、4〜7、2〜10、1〜15、0.5〜20、0.4〜50、0.3〜75、0.2〜100、0.1〜150、0.05〜300、0.04〜500、0.03〜1000、0.02〜2000、0.01〜5000ナノリットルの範囲である。1つの例である検出器において、任意の所与の時点で1ナノリットル未満の流体が検出器の感知領域に包含される。しかし、検出器の総容量に応じてナノリットル、マイクロリットル、およびミリリットルのサイズのサンプルさえも使用され得る。より大きなサンプル、あるいは低濃度の標的エンティティを有すると疑われているサンプルについては、アフィニティカラムなどの濃縮メカニズムの使用によりサンプルボリュームの減少を促進することができる。例えば、50ミリリットルの環境サンプルが低濃度の標的エンティティを含むと疑われるかもしれない。検出プロセスをスピードアップするために、サンプルの残部が洗い流されている間に標的エンティティを分離し保持するために、標的エンティティに選択的に結合することのできる部分を有するアフィニティカラムが使用され得る。サンプルの無関係の部分が除去された後、前もって捕獲されていた標的エンティティを検出器の感知領域の中に移すために分散媒をアフィニティカラムに通すことができる。
【0082】
標的エンティティを標識化するための任意の適切な方法が使用され得る。本発明の方法の種々の実施形態において、サンプル流体の磁気共鳴特性に影響を及ぼすために特異的な付着化学を用いる検出促進標識で標的エンティティを標識化することを含むことができる。ある対象エンティティを特に標的とするために使用され得る任意の標識が使用され得る。これには、対象エンティティに結合するように誘導体化された磁気ビーズを含むがこれに限定されない。標識の使用の一例において、磁気ビーズが、病原体上の標的抗原に対して選択的である磁気ビーズに結合された抗体を用いることにより病原体を標識化する。磁気ビーズはビーズの周囲流体の磁気共鳴を変化させ、ビーズの周囲流体をして、磁気ビーズが存在しないときの流体とは異なるように振る舞わせる。標的エンティティまたは標的エンティティの周囲流体をしてサンプル中の残りの流体とは異なる磁気共鳴挙動を示させる任意のビーズが標識として使用され得る。例えば、磁気ビーズおよび非磁気ビーズが使用され得る。標識の使用の他の一例において、既知の磁気共鳴プロフィールと特定の標的エンティティに付着する能力とを有する複数の異なるビーズが流体サンプルに付加される。実験中に、それらの既知の磁気共鳴プロフィールのうちの1つが検出されたならば、対応するエンティティが流体の中に存在する。単一の実験中に多数の異なるビーズを使用することにより、単一の実験によって流体の中の多数のエンティティを検出することができる。例えば真核細胞により、ビーズは単独であるいは多数で、標的エンティティにより吸収されてもよい。
【0083】
多層のビーズの使用は増大した磁気モーメントという結果をもたらす。ビーズ(または単一ビーズ)の第1の層または分子の第1の層を付着させることによって標的細胞または分子の有効面積を増大させ、この第1の層に磁気標識を付着させることによって、標的対象物は実際上より大きくなってより大きな表面積を持つ。従って、検出のために使用する磁気標識をより多く結合させることができる。第1の層は磁性でなくてもよい。標的と第1のビーズとの間の付着、および第1のビーズと磁気標識との間の付着のための方法は、標識化の感度および特異性を高めるように選択され得る。
【0084】
他の1つの実施形態では、異なるカイ(chi)を有する2つ(あるいはそれ以上)の磁性材料が、標的を個別的に標識化するために使用され、低い場では、一方は、より高度に磁化されているので、他方より高い磁気モーメントを有する。常磁性材料は、印加される場の印加に対して線形に応答する。特に、印加された場の強度に正比例して磁化され、比例定数はしばしば「カイ(chi)」、磁化率と称される。この線形応答はいつまでも続くことはできなくて、場のどこかの高い値において材料の磁気はもはや増大しなくなる。材料は飽和したと言われ、それがこの状態で有する磁気モーメント(Msat)は、それが有し得る最大のものである。ここで対象となるのは異なるカイ(chi)を有する2つの材料である。低い場では、一方は、より高度に磁化されているので他方より高い磁気モーメントを有する。しかし、より高いカイ(chi)値を有するこの材料がより低いMsat値を有するならば、印加される磁場が増加されてゆくと(例えば、異なるまたは次の磁石の選択により)ついには第2の材料がより高い磁気モーメントを有することになる。磁気モーメントの強さを本発明の検出プロセスで評価することができ、任意の所与の磁場中でどれがより強いかを特定できる。そのとき、1つの場の強度ではビーズAがより大きなモーメントを有し、他の1つの強度ではビーズBがより大きなモーメントを有する。
【0085】
標識は、例えばガラスまたはプラスチックのビーズを取り付けるなどして、1つまたは複数の対象物の周囲の媒体を排除することによって信号を改変するものであってもよい。あるいは、媒体からの信号とは対照的に、その特性が直接測定される材料の付着などによって、信号を強めるかあるいは変化させる標識が使用され得る。ビーズは、例えばガラスまたはプラスチックにカプセル封入されるなど、何らかの仕方でカプセル封入された鉄、酸化鉄(Fe23 、Fe34 )、Fe:Pt、ガドリニウム金属または酸化ガドリニウム、窒化鉄(Fe4 N)、または他の強磁性、常磁性、または超常磁性材料から成ることができる。コーティングされたかあるいはコーティングされていない磁性材料からほぼ完全にビーズを構成することもできる。対象流体の中での不活性を保証するために、使用中あるいは保管中に劣化しないように磁性粒子を安定させるために、あるいは標的エンティティへの付着を容易にするための抗体の付着などの、何らかの挙動を最適化するための他の材料またはコーティングの付着を可能にするために、コーティングが付けられ得る。
【0086】
磁性材料は、最善の可能な磁気モーメントを提供するかあるいは最善の全体的な信号性能を提供するように選択され得る。いくつかの材料は印加された場の中で飽和するので、より低い磁気モーメントを有する他の1つの材料のほうが、飽和がないために、全体的により良好な信号を得ることができるかもしれない。磁性材料は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性、あるいは反磁性であり得る。強磁性であれば、ビーズは、装置内で使用される前に磁化されてもよいし、始めに消磁され、磁石を通過するときに永久的に磁化されてもよい。
酸化鉄ビーズは、超常磁性であるように特定のサイズのもの、すなわちナノ粒子とすることもできる。その場合、強い場が印加されていないときにはビーズは磁化されていないが、磁場にさらされたときには非常に大きな磁気モーメントを現わすという長所を有する。永久磁気モーメントの欠如は、磁場が印加されていないときにビーズを凝集させないでおくことができる。
【0087】
ビーズからの影響を受ける周囲流体のボリュームのサイズはビーズの磁気モーメントにおおよそ比例するので、より小さな磁気モーメントを有するビーズの、周囲媒体に対する効果は、より大きな磁気モーメントを有するビーズの効果とは異なり得る。これは、ビーズが優先的に付着する標的の区別を容易にするために使用され得る。ビーズ標識の磁気モーメントの差異を達成するために、さまざまな濃度の磁性材料を包含するビーズ、さまざまなサイズのビーズ、様々な材料を包含するビーズ、あるいは、これらのまたは他のファクタの任意の組み合わせが採用され得る。区別は、例えば、より多くのビーズをその表面上に担持するより大きな標的など、標識化の多重性の変化によっても達成され得る。
【0088】
一実施形態の一例において、2種のバクテリアが流体中に存在し、各々が、特定の種のバクテリアを標的とする関連抗体を有するビーズで特異的に標識化されている。一例では、バクテリア2(B2)のための標識のビーズ中の酸化鉄の量は、バクテリア1(B1)のための標識のものより多い。標的バクテリアに対するビーズ標識の平均結合濃度の効果を含めて、正味の磁気モーメントの差異、従って、標的とされたバクテリアが検出コイルを通って流れるときにそれが影響を及ぼす流体媒体の量の差異に基づいて、2種のバクテリアからの信号を区別することが可能である。検出イベントは、媒体からの信号が減少する中で、より大きな正味磁気モーメントを有する標的がより大きな信号減少を生じたときに現れる。
【0089】
例えば、検出イベントに関連する信号を増大させるように、付加的な標識を提供することは有益である。その場合、初めの標識ビーズ自体が後に付加的ビーズにより標識化される。これらの二次的なビーズは、付加的な信号またはエンティティの区別を生じさせるために適切とすればよい。例えば、1つの特定のエンティティを認識する主ビーズに結合するようにより大きな割合の磁性材料を包含する二次ビーズを構成することができ、別の1つのエンティティを認識する主ビーズに結合するようにより小さな割合の磁性材料を包含する他の二次ビーズを構成することもできる。1つの標識化されたエンティティの他方からの区別は、媒体からの結果信号の分析により成し遂げられる。二次ビーズを用いれば、他の何らかの仕方で、例えば、1つの特定のバクテリア種のための初期ビーズに強磁性二次ビーズを付加し、他の1つのバクテリア種のための初期ビーズに常磁性二次ビーズを付加するなどして、信号を変化させ、このようにして2つ以上のバクテリア種を区別することができる。
【0090】
この方法は、希少エンティティ検出のためあるいはエンティティ濃度測定装置のために使用され得る。希少エンティティモードでは、検出器は、一般に、任意の時点でその感知領域中に唯一の標的エンティティを有する。このモードでは、装置の目標は、検出器ボリュームを通って流れている流体の比較的大きなボリュームの中にその希少標的を発見することである。濃度モードでは、検出器は感知領域中に多数の標的を有し、この方法は相対的または絶対的表現で濃度を特徴付けるために使用され得る。
【0091】
信号区別を、特定の標的に付けられるビーズの磁気モーメントの制御を通して成し遂げることもできる。1つのビーズ中の磁性材料の量、所与の濃度でのビーズのサイズ、様々な磁気モーメントを生成するために使われる磁性材料のタイプ、付けられるビーズの数などの制御を通して成し遂げることができる。従って、例えば複合的に標識化された病原体の種または系統を提供し、それらを例えば振幅などの、NMR信号の特性によって、一意に特定させることが可能である。
【0092】
標的の区別を、検出される信号に対する標識の二次的効果の測定を介して成し遂げることができる。例えば、標的の存在の検出を例えばT2*などの1種類の測定を行なうことによって成し遂げることができ、そのようにして検出された様々な標的の区別は第2の、例えばT1 などのNMR特性の測定を介して成し遂げることができる。何らかの検出特性の同じ(またはほぼ同じ)値を共有するけれども他の特性に関しては異なる2種類以上のビーズを使用すれば、区別を向上させることができる。これらの異なるビーズは別々の標的を標識化することもできるし、ビーズの何らかの組み合わせが各標的を標識化することもできる。その組み合わせは標的ごとに異なる。
【0093】
磁気標識のほかに、蛍光、光吸収、あるいは音響標識などの他の材料の標的への付着を通じて、さらなるエンティティ区別が成し遂げられ得る。音響標識の一例は、特有の超音波特性を有する構造である。蛍光標識は、蛍光団(フルオレセイン、ローダミン)および量子ドットを含む。この付加的な標識化は、本発明の方法による検出の前または後に、合同してあるいは別のステップとして、例えばサンプル検出および特定を行うために、提供されるとよい。例えば検出イベントは検出されたバクテリアの、別の流路中への分離または隔離をトリガすることができ、その中で例えば蛍光または吸収を用いて光学的に、さらに調べることができる。付加的な標識は、検出ステップの前または後に付けられてもよいし「マルチモード」標識として単一の物質に統合されてもよい。
【0094】
標識化された標的がサンプル流体中で処理されるが、このサンプル流体を信号を強めるために変更あるいは改変することができる。有益な変更は、流体の水素濃度、粘度、または他の化学的あるいは物理的な特性に対して行なえばよい。1つの流体を他の1つの流体に置換すること、マトリックス流体に固体または流体成分類を付加すること、流体の温度または圧力を変更することなどによって、変更を成し遂げることができる。これらの変更は、例えばより高い検出信号を生じさせてより早い処理を可能にするなどにより、流体のT1 、T2 、またはT2*に有益な仕方で影響を及ぼすことができる。流体のT1 を、マグネビストまたは他の任意のT1 コントラスト剤の導入を通じて減じることができる。より短いT1sは、検出測定をより迅速に実行することができるとともにより高速で反復し得るので、有益である。
【0095】
個々の標的エンティティの標識化は、抗体ベースの技術を含むがこれらに限定されない任意の適切な標識化技術によることができる。抗体は、他の分子上の、エピトープと呼ばれる特定の化学部位を認識するタンパク質分子である。主または二次の磁気ビーズの表面に化学的あるいは生化学的に抗体を付けることができる。生化学的な一例は、ビオチンに非常に堅く結合するタンパク質であるストレプトアビジンでコーティングされたビーズである。このあと、特定のエンティティに対するビオチン化された抗体が、ストレプトアビジン−コーティングされたビーズに結合する。次に、抗体標識化されたビーズの溶液が、例えば血液中のバクテリアなど、標的エンティティ(病原体など)が中に存在するかもしれないサンプル流体と混合される。ビーズの抗体コーティングのタイプに基づいて、1つのビーズ、あるいは複数のビーズが標的バクテリアに付着する。その後、その標識化されたバクテリアを包含する血液は検出コイルを通って流れ、その標識化されたバクテリアの存在を確かめることが可能になる。
【0096】
代わりに、固相に、例えばアフィニティカラムまたは他のクロマトグラフィカラムなどに標的エンティティを捕獲することができる。アフィニティカラムに付着して固定されたならば、付着した抗体を伴う標識ビーズの溶液が導入されるとよい。その結果、付着した標的の全てがビーズで標識化される。次に、標的を標識化していない余分のビーズは、カラム外へ洗い出される。その後、標的は、付着したそれ自身の標識とともに、カラムから溶出され、この溶出剤をNMR検出器により処理することができる。
【0097】
多数のビーズが単一のバクテリアに付着するならば、標識化されているバクテリアが媒体からの信号に及ぼす効果を、分離された個々のビーズの存在下に媒体のバックグラウンド信号と対照して容易に観察することができる。あるいは、1つのバクテリアに単一のビーズが付着するときには、結合していないビーズは好ましくは除去される。余分のビーズの除去は、任意の適切な手段により成し遂げることができる。一例では、抗体−ビーズは臨床サンプルとともに温置される。その後、付着していない抗体−ビーズは、nmスケールの細孔寸法(すなわち、どんな標的病原体にも小さすぎる)を有するシリコンなどの一方向バルブを通して洗浄される。その後、第2のバルブが開いて、第2の洗浄がビーズ−抗体複合体および血液成分だけを検出器の中へ送る。あるいは、余分のビーズの除去をフィルタカラムによって成し遂げることもできる。
【0098】
検出中は流体の流れを止めてもよいし、あるいは流れを連続的な流れにしてもよい。例えば、この方法は流体流動中に標的エンティティの存在を検出することを含むことができ、その次に、検出された標的エンティティの正体を判断するために、流体を流動させながらあるいは流体流動を止めて、第2の検出が行なわれる。流れの制御(標的をコイル内へ戻すために流れを逆にすることを含む)を伴う単一のマイクロコイルを使用することができ、または二次コイル(主コイルの下流側あるいは標的が向けられる枝路の中に置かれる)を使用することもできる。検出されるべき標的エンティティは、実質的に改変されることなく検出器を通って隔離チャンバの中に入ることができる。生きている生物または細胞は生活力を維持する。隔離チャンバ内に出された流体は、装置、異なる測定のために最適化されている類似装置、または他の任意の装置またはプロセスでのさらなるテストまたは繰り返しテストのために利用可能である。隔離された標的エンティティを、顕微鏡スライド上での標的の迅速な位置決めあるいは次のプロセスまたは装置における小ボリュームだけの迅速な処理を可能にするために、非常に小さなボリュームに隔離することができる。集められ濃縮された標的を、検出器において、初めにそれらを検出するために使用されたコイルあるいは別の検出回路または方法でさらに分析することができる。
【0099】
磁場は、本発明の検出器の態様の一部として記載された永久磁石などの永久磁石によって生成され得る。本発明の検出器の態様に使用され得る磁場勾配発生器のうちのいずれも、この態様の方法に従って磁場に磁場勾配を印加するために使用され得る。本願明細書に開示されたマイクロコイル、導管、モジュール、検出器、およびそれらの組み合わせのいずれも、本発明の方法に従って使用され得る。この方法のさらなる多重化を複数の枝路を含む導管の使用により達成することができ、多様な検出ゾーンを提供するために複数のマイクロコイルの使用と合わせることができるとともに、例えば(i)別々の検出アッセイ(すなわち、様々な流体流動、様々な磁場強度、様々な磁場勾配、それらの組み合わせなど)のための複数の検出ゾーンへの、対象流体サンプルの選択的流動と、(ii)サンプル多重化のための別々の検出ゾーンへの、複数の対象流体サンプルの選択的流動とを可能にするためにマイクロフルイディクスとさらに合わせることができる。当業者にとって本願明細書の教示に基づいて他の変形例があることは明らかである。
【0100】
流体を流動させる任意の方法が使用され得る。例えば、本願明細書において開示される流体工学的駆動装置のいずれもが、流体に流れを与えるために使用され得る。使用される流量は、所与のアプリケーションのために望ましい任意の量とすることができる。本願明細書で使用される「流量」は、時間が経過するに連れて検出器の感知領域を通って移動する流体の量を指す。一実施形態では、流体の流量は毎分0.01マイクロリットルと毎分2.0マイクロリットルとの間にあり得る。他の種々の実施形態において、流体の特性と、本発明の方法を使用する特定の実験とに応じて、流量は、毎分0.01〜500、0.01〜450、0.01〜400、0.01〜350、0.01〜300、0.01〜250、0.01〜200、0.01〜150、0.01〜100、0.01〜50、0.01〜10、0.01〜8、0.01〜6、0.01〜4、0.01〜3、0.01〜2、0.01〜1.75、0.01〜1.50、0.01〜1.25、0.01〜1.0、0.01〜0.9、0.01〜0.8、0.01〜0.7、0.01〜0.6、0.01〜0.5、0.5〜2.5、0.5〜2.25、0.5〜2.0、0.5〜1.9、0.5〜1.8、0.5〜1.7、0.5〜1.6、0.5〜1.5、0.5〜1.4、0.5〜1.3、0.5〜1.2、0.5〜1.0、150〜250、175〜225、180〜220、185〜215、190〜210、195〜205、198〜202、および199〜201マイクロリットルの間にあることができる。より低い流量および静止流体も使用され得る。流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする任意の流量が使用され得る。検出器の感知領域の外側での流量も変動し得る。例えば、隔離チャンバ内に保持されているかあるいはバルブの背後に保持されている流体は静止してもよい。アフィニティカラムを通って、あるいは他の導管枝路に流体サンプルを分配する導管部分を通って流れている流体については、流量をより高くしてもよい。さらに、検出器の感知領域を通る流量を変化させてもよい。例えば、検出実験の過程において流量を増減するために、感知領域の前に置かれたバルブが使用され得る。一例である方法において、検出実験は主として毎分2マイクロリットルで行なわれる。しかし、マイクロコイルから受信された信号が、1つのエンティティが流体中に存在するかもしれないことを示したならば、感知領域を通る流量を毎分1.0マイクロリットルまで減速させるためにバルブが作動させられ得る。他の一例である方法において、検出実験は毎分0.5マイクロリットルの流量で始まることができる。所定時間後にエンティティが検出されていなければ、検出実験をもっと速やかに完了させるために検出器の感知領域を通る流量を増やすようにバルブが作動させられ得る。
【0101】
流れている流体が磁場に入ったときに、磁場は流体中の原子核のいくつかを磁場と整列させる。磁場勾配は、流体中の原子核を、それらの、磁場および磁場勾配に対する相対的位置に依存して異なる周波数で共鳴させる。流体中の原子核が共鳴する周波数を変化させることにより、磁場勾配は検出器の空間的分解能を確定し、マイクロコイルの特定可能なセクションの中のエンティティの検出を可能にする。本発明の方法の実施の一例において、導管の長軸が勾配の方向と平行になるように導管が配置される。しかし、導管に沿って磁気共鳴イベントを空間的に分解するために充分な勾配成分が導管に沿って存在するならば、導管を磁場勾配発生器の磁場の中の他の場所に配置することができる。
【0102】
この方法は、流体中のエンティティを検出するためにマイクロコイルから受信された信号を処理することも含む。磁場勾配(存在するならば)と磁場との組み合わせは磁場の強度を導管の長さに沿って変化させ、流体内の原子核を流体の位置に依存して異なる周波数で共鳴させ、マイクロコイルに沿う多数の連続する信号生成ボリュームエレメントの特定を可能にする。従って、マイクロコイルは、流体から、流体の位置に各々対応する複数の周波数の信号を受信する。マイクロコイルにより受信された信号の周波数成分および振幅成分を導管内の対応する位置に相関させることにより、導管の一部分の長さにわたる流体の磁気共鳴挙動を特定する測定値が得られ得る。
【0103】
これらの測定値を、流体を通しての1つのエンティティの移動を表す、時間対周波数および位置のデータアレイを含むがこれに限定されない、種々の異なる表現に変換することができる。マイクロコイルから受信された信号からのデータアレイの構築を、フーリエ変換を含むがこれに限定されないいろいろな手法を用いて成し遂げることができる。この方法の実施の一例において、高速フーリエ変換手法が用いられる。信号処理を強化するために、ベースライン補正手法および位相調整も使用され得る。信号処理装置は、マイクロコイルから受信された信号を処理されたまたは未処理の形でモニタまたはスクリーンなどのユーザインターフェイス上に表示することができる。
【0104】
偽陽性検出および偽陰性検出の発生度を低下させるために、他のデータ操作も特に有益である。マイクロコイルにより検出された信号の部分集合を導管内のいろいろな位置に帰することを可能にする仕方でデータが取得されるならば、この方法を実行する装置は自己較正となることができる。さらに、導管の一部分におけるあるエンティティの有無の判断は、1つの振幅成分の、複数の他の振幅成分に対する変化を検出することに基づくことができる。相対振幅を比較すれば、処理された信号が流体中のエンティティの有無とは無関係に全体的に増大あるいは減少することによって検出イベントをトリガしていた確率を減少させることができる。
【0105】
信号の処理は、連続する信号取得からのデータを比較することも含むことができる。一方向の流れを流体に課す実施形態では、流体中のエンティティは検出器を通って導管の一端から他端へ進むことができる。連続するデータ取得を比較することによって、導管を通しての1つのエンティティの通過が追跡され得る。さらに、電気的ノイズまたは他のランダムな揺らぎが、複数のデータ取得において流体を通って移動する1つのエンティティの状況に似るということはありそうもないので、連続するデータ取得を比較する実施形態においては電気的ノイズまたは他のランダムな揺らぎによる偽検出を排除するために相関分析などのデータ分析手法が使用され得る。
【0106】
信号の処理は、マイクロコイルから受信された信号のデータアレイ表示の、信号ピークあるいは標的に関連する信号極小値を含むがこれに限定されない関連する信号特徴を、蓄積することも含むことができる。信号ピークを蓄積すれば、複数のスキャンを相関させ組み合わせて、流体を通してのあるエンティティの移動を示すことを可能にすることができる。あるエンティティの導管内での半径方向位置に関連する1つの信号ピークの特性速度は、連続するスキャンにおける信号ピークを蓄積するために使用され得る。
【0107】
取得されたデータの精度をさらに高めるために、運動補正方法も利用され得る。流体流動が比較的遅いかあるいは静止している実施形態において、スピンエコー画像またはグラジエント・リコールド・エコー画像(gradient-recalled echo images) が形成され得る。パルス磁場勾配を用いる実施形態において、画像の信号対雑音比および精度がさらに改善され得る。低速のあるいは静止している流れを使用する実施形態であれば、多次元作像も実行され得る。エコーに基づく手法を実行する実施形態は、流体中の標識化されたエンティティの存在の複数の効果を測定し作像することを可能にすることができる。
【0108】
複数の枝路と複数のマイクロコイルとを有する実施形態において、所与のマイクロコイルの中の磁気共鳴挙動を特定するために種々の方法が使用され得る。例えば、各マイクロコイルの各々の空間的エレメントが異なる周波数範囲で共鳴するように、マイクロコイルは磁場勾配に対して角度をなすようにすればよい。他の一例では、マイクロコイルをある期間にわたって選択的に監視するために電気的スイッチングが使用され得る。他の一例では、各マイクロコイルは1つの専用信号処理装置に結合され得る。
共鳴回路が使用される本発明の方法の任意の態様の任意の実施形態において、この方法は、共鳴回路を低い周波数で共鳴させることと、サンプルからの共鳴信号を検出することとを含むことができる。「低い」周波数は、装置のために選択された磁石の磁場の中の所望の共鳴を検出するのに適する周波数である。
【0109】
本発明の方法はマイクロコイルを同調回路に電気的に結合させることをさらに含むことができ、同調回路は、マイクロコイルのインダクタンスの少なくとも2倍であるインダクタンスを有する同調コイルと、共鳴回路を形成するために同調コイルに結合されたキャパシタとを含む。本願明細書において開示される同調回路のいずれもが同調回路として使用され得る。
さらに、本発明の方法のいずれもが、本願明細書に開示されているものなどの検出器で使用されるコンピュータプログラムにより実行され得る。コンピュータプログラムはソフトウェアまたはハードウェアで、あるいはハードウェアおよびソフトウェアの両方の組み合わせで、実現され得る。
【0110】
1つのさらなる態様において、本発明は、本願明細書に開示されているものなどの検出器で本発明の方法を自動的に実行するために、物理的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。本願明細書で使用される用語「コンピュータ可読媒体」は、磁気ディスク、光ディスク、有機メモリ、およびCPUによって読まれ得る他の任意の揮発性(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)または不揮発性(例えば、読み出し専用メモリ(「ROM」)の大容量記憶システムを含む。コンピュータ可読媒体は協動するかあるいは相互に接続されたコンピュータ可読媒体を含み、それらは、もっぱら処理システム上に存在し、あるいは処理システムに対してローカルまたはリモートであり得る複数の相互に接続された処理システムに分散される。
【実施例1】
【0111】
ここで図を参照すると、図1は、代表的なマイクロコイルMRI検出器100の一部分を描いた図である。マイクロコイル102はソレノイド状であって、導管104の周りに巻かれている。マイクロコイル102の中にある導管104の部分は検出器100の感知領域である。導管104の軸は磁場勾配106と整列している。検出実験中、方向108に流れる流体が導管104およびマイクロコイル102を通って進む。マイクロコイル102は同調回路110と信号処理装置112の両方に電気的に結合される。
図2は、代表的なMRI検出器100の一部分の横断面を描いた図である。マイクロコイル102は、導管104の周りに巻かれ、磁石206内のギャップの中に配置されている。磁極面208および210は反対の極性を有し、一様な磁場212が磁石206内のギャップを横断して確立される。 図3は、3つの異なる例であるマイクロコイル構造302、304、および306を描いた図である。第1のマイクロコイル302は、導管308の周りに巻かれたソレノイドコイルである。第2のマイクロコイル304は、平らなコイルであって、導管に隣接して位置して、第2のマイクロコイル304の軸を導管308の軸に垂直に置くように向けられる。第3のマイクロコイル306は、導管308に隣接して置かれる蛇行線コイルである。
【0112】
図4は、一例である検出器400の一部分を描いた図である。導管402は3つの導管枝路404a〜404cを包含している。マイクロコイル406a〜406cは、ソレノイドの形状であって導管枝路404a〜404cの周りに巻かれている。流体は、流体流入口408において導管に流入し、流体流出口410において導管から流出することができる。例である検出器400において、導管枝路404a〜404cおよびマイクロコイル406a〜406cの各々は独立していればよい。例えば、マイクロコイル406a〜406cの各々は異なる周波数または周波数範囲で付勢されればよく、導管枝路406a〜406cの各々における異なるエンティティの検出を可能にすることができる。一方、マイクロコイル406a〜406cは各々同一の検出実験に使用されてもよく、導管の感知領域を通る減少される流量を考慮することによって、検出器の偽陽性検出および偽陰性検出に対する発生度をさらに低下させることができる。
【0113】
図5は、導管502に流体的に結合された付加的な流体コンポーネントを含む例である検出器500の一部分を描いた図である。アフィニティカラム504は、検出実験が行われ得るようになるまで病原体または他のエンティティを捕獲し保持しておくために使用され得る。検出実験中、除去剤506を包含する流体は、アフィニティカラム504を通過して流れ、病原体または他のエンティティを流体中に入らせることができる。その後、流体は、マイクロコイル508により包まれている導管502のセクションを通って流れることができる。エンティティがマイクロコイル508により検出されたならば、貯蔵あるいはさらなる分析のために流体を逸らして隔離チャンバ512の中に入れるためにバルブ510を作動させることができる。エンティティが検出されなければ、バルブ510によって流体を流体流出口514に通し導管から出せばよい。
【0114】
図6は、複数のアフィニティカラム602a〜602cを含む例である検出器600の一部分を描いた図である。アフィニティカラムの各々の流出口端部において、ソレノイドマイクロコイル604a〜604cが導管606a〜606cの周りに巻かれている。バルブ608は、アフィニティカラム602a〜602cを通過する除去剤610の流れを制御する。複数のアフィニティカラム602a〜602cの使用は、付加的な判別を可能にするとともに検出器のスループットを増大させることができる。例えば、1つの検出方法は、10レベルの特定可能な信号判別を提供し、アフィニティカラム602a〜602cの各々において10の特異的ビーズを使用することができる。各アフィニティカラム602a〜602cを別々に処理することにより、マイクロコイル604a〜604cを通る流れは多重化され、僅か10のビーズ特性レベルを用いて30の別々の特定を可能にすることが見込まれる。さらに、3つのアフィニティカラム602a〜602cが使用されるので、1つのサンプルを3つの部分に分割することができて、そのサンプルを、単一カラムの場合より3倍速く分析することを可能にする。
【0115】
図7a〜7cは、同調回路110およびマイクロコイル102の3つの例である概略構成を描いた図である。図7aでは、同調コイル120とマイクロコイル102とは直列に接続され、同調キャパシタ122を用いて共鳴回路が形成される。図7bでは、同調コイル120とマイクロコイル102とは並列に接続されている。図7cでは、同調コイル120とマイクロコイル102とは再び並列に接続されているけれども、マイクロコイル102は伝送線124を介して同調回路110から遠く離れて置かれている。一例である検出器において、伝送線は、共鳴中にマイクロコイルに誘導される交流電流の波長の四分の一の奇数倍(すなわち、1×、3×、5×)である長さを有する。
【0116】
図8は、流体がサンプルチャンバ1112に収容される、モジュール1110の一例を描いた図である。サンプルチャンバ1112は、流体中の標的エンティティに付けることのできるビーズを収容するビーズチャンバ1114に流体的に結合されている。導管1116は、ビーズチャンバ1114に流体的に結合され、マイクロコイル1118を通過し、マイクロコイル1118を通過した後にバルブ1120に流体的に結合されている。バルブ1120は隔離チャンバ1122および出口リザーバ1124に流体的に結合されている。検出実験中に標的エンティティの存在を示す流体内の磁気共鳴をマイクロコイル1118が検出したならば、流体を隔離チャンバ1122の中へ向かわせるためにバルブ1120を作動することができる。標的エンティティが検出されなければ、流体を出口リザーバ1124の中へ向けるようにバルブ1120を作動することができる。モジュール1100のコンポーネントの全ては基板1126に機械的に結合され、構造支持を提供するとともにモジュール1100上のコンポーネントの相対位置を維持する。
【0117】
1つの例である実施形態では、170ミクロンの内径と約1.1mmの長さとを有するマイクロコイルが導管の周りに巻かれる。導管およびマイクロコイルは、永久磁石により生成された約1テスラの強度を有する磁場の中に配置され、0.07G/mmの磁場勾配がマイクロコイルの長軸に沿って印加される。流体が導管を通ると、流体中の標識化されているエンティティの存在を検出するために、本願明細書で開示されたデータ取得手法が適用される。
この例の装置を使用したところ、この方法の実施が成功した。マグネビスト(Magnevist)ドープされた水(T1 〜430ms)と希釈磁気ビーズ(5ミクロンのバングス(Bangs) ビーズ)とから成る流体が導管内に置かれ、本発明の方法に従ってあるビーズが明確に特定された。図9は、明瞭性を得るためにオフセットされた画像の時系列を含み、ここでビーズは、矢印で示されたプロフィール中のくぼみとして現れている。
【0118】
図10は、検出実験の完全な時間経過を等高線プロットとして描いた図である。図9において、明確に特定されたビーズは、中央に位置するバンドを横断して左斜め上に移動する線状のフィーチャとして現れている。中央に位置するバンドは、サンプルボリュームの位置を描いている。
図11は、例である装置と本発明の方法とを使用する類似の検出実験からのデータセットを描いた図である。明確に検出されたビーズは、明るいバンドの中で右下に傾いている暗いバンドとして見える。
【実施例2】
【0119】
バクテリアに多くの種があり、各種の中に多くの系統がある。毒性のバクテリアのうち、いくつかの系統は他よりも毒性が強い。さらに、例えばMRSA(メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(staph. aureus) )およびGBSなど、特定の種のいくつかの系統は、抗生物質に対して抵抗性であり得る。細菌性病原体の系統特異的標識化を提供する抗体が利用可能であるかあるいは生産され得る。この種の情報は、バクテリアの種または系統の特定に基づく臨床用の適切な抗生物質の特定のために有益である。
【0120】
「全細菌性(pan-bacterial) 」であり、また、例えばある種の中の全系統、あるいはある共通の抗原特性を共有するある特定のグループのうちの全てなどの、バクテリアの何らかの部分集合、あるいは例えば全てのグラム陽性(G+)またはグラム陰性(G−)のバクテリアなどを表すある特定の抗原について特異的である抗体も存在する。このようにして、本発明の方法を使用するテストは、どんなグラム陽性またはグラム陰性のバクテリアの存在も検出されるように血液のスクリーニングに備えている。さらなる変形例は、[グラム陽性、グラム陰性、菌類]、または[グラム陽性、グラム陰性、菌類、マイコバクテリア]、またはこれらの何らかの集合に加えて、ある特定の疾病状態または他の重要な臨床情報を表す1つの特定のタンパク質または複数のタンパク質を含むけれどもこれらに限定されない。
【0121】
ある信号特性を有する特定の標識を、特定の抗生物質に対して敏感である全てのバクテリアまたは他の病原体に対して用いることができ、従って患者が1つの特定の抗生物質の使用から利益を受けるであろう人であることが、その患者からのテストサンプルにおける特徴的信号からわかる。特定の性質または特性を有する一連の病原体を標識化するこの標識化アプローチを、そのいくつかの抗体を全てのビーズに付けることによって、あるいは単一のタイプの抗体を1つのビーズに付けてから単一標的ビーズをいくつか混合して混合ビーズ溶液とすることによって、成し遂げることができる。例えば全[G+](pan−[G+])および全[G−](pan−[G−])など、2つ以上の抗体を1つの標識ビーズに、例えば全ての一般的[G+]バクテリア、あるいは1つの特定の抗生物質に対して敏感な全てのバクテリアなど、所望のセットを構成する抗体の何らかの特異的セット、あるいは最も一般的な菌類の各々ための1つの抗体を付けることが可能である。これは、各々の特定の標的とされた生物についてのビーズの濃度と比べて、バックグラウンドのビーズ濃度を減少させるために望ましいかもしれない。
【0122】
1つの別の実施形態では、G+標識溶液は、例えば各ビーズに10種類の異なる抗体が付けられるかあるいはビーズの各サブセットにその10種類の抗体のうちの1つだけが付けられている10タイプのビーズなど、複数の抗体が付けられているビーズを包含する。あるいは、特定の標的の標識化を容易にするために、ある全細菌性抗体で標識化されたビーズを、他の抗体で標識化された別のビーズと混合することができる。この実施形態は、例えば、全細菌性標識が全バクテリアのセットの何らかのサブセットに充分に付着しない場合に、使用され得る。
使用され得る代表的なサンプル流体は、血液、尿、CSF、または他の流体などの生体試料を含むがこれらに限定されなくて、皮膚、創傷または他の身体部位からのスワブサンプルを、サンプルを捕集剤から流体中へ同伴させるように洗うことによってテストすることができ、糞便サンプルなどの半固体サンプルも、液体での適切なサンプル希釈により処理することができる。
【0123】
本発明の方法を用いれば、特定のバクテリア系統について特異的な抗体を、特定の信号特性を有するビーズに付けることによって、特定のバクテリアがサンプル流体中に存在するかどうかを判定することが可能である。例えば、特定の量の鉄を有するビーズを使用することができ、それは特定の信号レベルを生成する。このようにして、1つのサンプルにおける多数の異なるタイプのバクテリアの存在を判定することができ、1つの特定のバクテリアタイプまたは複数のタイプの存在を単一の測定サイクルで行うことができる。例えば測定の信号対雑音比およびダイナミックレンジにより規定される、検出プロセスの信号判別を前提にすれば、検出され得るバクテリアの異なるタイプの数は、判定され得る離散的な検出レベルの数に依存する。例えば、10のビーズタイプ(あるいは10の別々の多重度のビーズ標識)が特定され得るように、そしてそれにより10の異なるタイプのバクテリアが特定され得るように、10の個々別々の信号レベルが検出され得る。異なるエンティティの標識化も、特異的結合を介して成し遂げられる選択よりはむしろ、各々に付けられる標識の数によって区別され得る。
【0124】
検出されるレベルの数を増やすために、例えば10mlのテストサンプルを例えばそれぞれ2mlのいくつかのサブサンプルに分割し、5つの別々の標識化ステージを持つことが可能である。この特定の例では50のそれぞれ異なるバクテリアを特定できるようになる。各サブセットの別々のテストは、各サブセットのために独自の検出コイルを持つか、あるいは検出コイルを通るサブサンプルを順番付けるバルブを持つことによって行われ得る。
サイズの異なる多様なNMRコイル、あるいは異なる流量、あるいはいろいろな磁気標識を検出するように最適化されたいろいろな磁場を使用することも可能である。テストを受ける流体は、多様な異なるエンティティが検出され得るように、各検出器をシーケンシャルに通過させることができる。
【0125】
人の血液に対するテストシナリオの一例は次のとおりである。
1)G+、G−、菌類のためのスクリーンモジュールを動作させる。
2)テスト結果の例:G+、4CFU/ml;菌類、8CFU/ml
3)G+特定モジュールを動作させる。
4)結果の例:MRSA、4CFU/ml
5)菌類特定モジュールを動作させる。
6)テスト結果の例:口そうカンジダ、8CFU/ml
他の一例では、全てのテストが単一のモジュールから行われ、その場合、行われるサブテストは先行する結果に依存する。
1)サンプル10mlをロードする。
2)G+、G−、菌類サブセクションを通して2mlを流す。
3)テスト結果の例:G+、4CFU/ml;菌類、8CFU/ml
4)G+サブセクションを通して2mlを流す。
5)結果の例:MRSA、4CFU/ml
6)菌類サブセクションを通して2mlを流す。
7)テスト結果の例:口そうカンジダ、8CFU/ml
【0126】
このように、可能な特定される種または病原体の数はサブセクションテストの数と、生成され得る離散的な検出レベルの数とに依存する。モジュールは、2つ以上の検出プロトコルを並行して実行するようにも設計され得る。例えば、装置は、高濃度の標的の存在について、おそらくシーケンシャルにサンプルを迅速にテストすると同時に、同じまたは異なる性質の非常に稀な標的についてのより長い探索を開始することもできる。この並行処理は、多重化された仕方で操作される、複数のコイルまたは単一の検出器コイルの使用を通じて進行することができる。
検出プロセスの1つの付加的特徴は、一人の所与の患者からいろいろな時点で得られたテストサンプルを用いて感染の性質、状態および進行度が判定され監視され得るように例えばバクテリアなどの病原体の濃度を測定することである。
【0127】
病原体を検出することに加えて、タンパク質などの分子状標的が装置で検出され得る。個々の分子にビーズが付着されているならば、その分子は検出され得る。なぜならば、分子のための検出増幅プロセスは、細胞または生物のものと同一だからである。たんぱく質濃度も、検出の濃度モードで測定され得る。例えばウィルス(HIV、HepA、B、C)またはプリオン病(vCJD、TSE)など、抗体が作られ得るところの他の任意のエンティティも標的とされ得る。この装置は、哺乳動物の細胞、例えばがん細胞を希少エンティティモードまたは濃度モードで検出するために使用され得る。従って、この技術は、例えば尿中の膀胱がん細胞、血液中の循環がん細胞、あるいは母体血または羊水中の胎児細胞を検出するために使用され得る。
【0128】
希少エンティティ検出モードで動作している間、装置は、検出された標的を非常に小さなボリューム(数nL〜100nLあるいは1μLなど)の中に隔離することができる。これによって標的のこのコレクションは濃縮されることになる。コレクションボリュームは、顕微鏡スライド上での標的の迅速な位置特定、あるいは爾後のプロセスまたは装置での小ボリュームだけの迅速な処理が可能な程度に充分に小さくすることができる。捕集され、濃縮された標的は、装置において、始めにそれらを検出するために使用されたコイルで、または別の検出回路または方法で、さらに分析され得る。あるいは、コレクションボリュームは、そのボリュームを静止NMRサンプルとして研究するように最適化されている第2の磁石および検出器のシステムの中にそのボリュームを導入することを容易にする仕方でモジュール上に置かれることができる。これらのさらなるNMR研究は、緩和時間の精密な測定、装置の動作の希少エンティティ検出フェーズ中には特定不能であった標識の特性または特徴の特定を含む、対象物または分子の分光学的同定であり得る。
【0129】
本発明の方法および装置の臨床応用は、血液中に病原体があるかどうかを判断するために現在使用されている方法である血液培養に代わることであり得る。血液培養は結果を生じさせるために相当の時間を要するが、変動性が高く、相当の割合で偽陰性を有し、病原体の正体ではなくて病原体の存在を判断するだけである。現実の病原体タイプを判断するためには、人により実行されるステップを含むさらなる特定ステップが採用されなければならない。例えば、専門技術者は、陽性の血液培養ボトルからサンプルを取り、そのサンプルの調製および染色を行い、病原体の予備的定性分析(すなわち、「グラム−桿菌(Gram-rod)」、または「グラム+球菌(Gram+cocci)」)を行なう。抗生物質感受性についてのさらなる特定およびテストが、追加の処理ステップおよび器具で実行されなければならない。プロセスが1〜2日を要することは普通であり、ある場合にはプロセスが5日超を要することもあり得る。
開示された技術に基づく装置は、病原体の検出に、また病原体の特定にも備えることができる。抗生物質耐性を示す系統に対して特異的な抗体が存在するので、開示された技術は、例えばバクテリアなどの病原体の検出、特定、および感受性判断(系統特定を通して)を行なうことができる。従って、技術は、サンプル中に存在する病原体について最適の抗生物質の適時特定を可能にする結果を臨床医に提供することができる。
【0130】
感染症の進行は、しばしば、血液培養あるいは他のサンプルの培養に関連する期間より遥かに速いので、そのような装置は臨床的に非常に有益である。例えば、細菌性髄膜炎はCSFからのサンプルの検査を通して特定される。これらのサンプルは培養され得るけれども、細菌性髄膜炎は、致死までの期間(mortality period)が非常に短く検出および特定のために培養が使用され得ない。サンプルの染色および顕微鏡検査が実行されなければならず、しかもバクテリアを検出し特定する最上の方法ではない。臨床的使用で必要となる前にスワブサンプルの培養結果が得られない他の一例として、出産間近の女性のGBSテストがある。
開示された装置は、前述した場合および他の多くの場合において、臨床的使用に適する時間のうちに検出および特定をもたらすことができる。
【0131】
開示された技術は、病原体に、あるいは病原体に対する宿主の反応に、または病気もしくは感染に関連する炎症性反応に、または病気もしくは健康の状態一般についての他の何らかの指標に、関連するタンパク質を検出することもできる。例えば、敗血症の発生および進行を示す可能性のある宿主反応タンパク質が多くある。これらのタンパク質の関連性については現在検討されつつあるけれども、開示された技術は、磁気標識化および検出を通して、これらのタンパク質を検出することができ、従ってテストされている流体の中のタンパク質を特定し定量することができる。従って、タンパク質の特定の組み合わせ、またはそれらの濃度が特定の病気の状態または進行を示すように相関関係が決定されるかもしれない。あるいは、検出された病原体とともに取られたタンパク質の濃度が特定の病気の状態または進行を示すかもしれない。あるいは、タンパク質の濃度とともにおよび/または特定された病原体とともに取られた他の臨床情報および診断アッセイまたは測定などのパラメータの何らかのセットがある病気の状態または進行を示すかもしれない。これは、前述した測定の時間ダイナミックスを含み得る。
装置は、他の技術よりかなり低い濃度でタンパク質を検出することができる。原理的には、10mL中の1分子が可能である。2以上のビーズがタンパク質分子に付着され得るならば、タンパク質検出のための均質アッセイアプローチが可能である。
【0132】
この技術の一実施形態は、標的を認識する捕獲薬剤を包含するように改変されたカラム上で標的エンティティを、それがバクテリアであれ、細胞であれ、ウィルスであれ、タンパク質であれ、原生動物であれ、プリオンであれ、核酸であれ、あるいは他の対象生物学的物質であれ、濃縮するためのアフィニティクロマトグラフィの使用を含む。例えば、あるタンパク質(BSA:ウシ血清アルブミン)はヘキサヒスチジンペプチドタグで改変される。このタンパク質を、その後、ヒスチジン残基がニッケルまたはコバルトのイオンを認識してタンパク質をカラムに結合させる、ニッケル−アガロースまたはコバルト−アガロースのカラムに結合することができる。カラムは、その後、抗BSA抗体が付けられている磁性粒子で調べられる。粒子は、固定されているBSAに結合する。結合した粒子を遊離するために、カラムはイミダゾールで溶出させられ、金属イオンに結合しているヒスチジンに競合的に干渉する。その結果として、ビーズ−Ab−BSA複合体が非常に小さなボリュームでカラムから遊離される。この遊離された物質を、NMRマイクロコイルに入り、サンプル中のバックグラウンド水の横(T2*)緩和時間に対する磁気ビーズの効果によって検出することができる。例えば、コンカナバリンAがプロトタイプであるところのレクチンなど糖類を認識する結合した標的タンパク質をカラムが包含するならば、同様の性能が達成され得る。カラム結合材料は、その後、レクチンが結合した糖でカラムを溶出させることによって遊離されることができ、コンカナバリンAの場合には、この遊離薬剤はグルコースである。この目的のために使用され得る多くのレクチン/糖の組み合わせがある。他のアフィニティ媒体は、1つの種由来の抗体を含み、この抗体は、異なる種由来の抗体に対するものである。例えば、ヤギにおいて作られる抗体はウサギの抗ヤギ抗体により認識され得る。他のアフィニティ媒体は、ストレプトアビジン/ビオチン、プロテインA/抗体、およびデキストラン/グルコースを含むが、これらに限定されない。
【0133】
カラムは、例えば1つのタンパク質、菌類もしくはバクテリアまたはより広い種類の標的、例えば全てのG+またはG−バクテリア、などのある特定の標的などの、対象標的のための抗体が付けられている材料マトリックスであり得る。一例として、標的がカラムに付けられたならば、サンプルの流れを止めることができ、カラムから余分の材料が洗い除かれ、その後に磁気標識ビーズを包含する流体をカラムを通して流すことができる。これらのビーズは、カラムと同じ抗体を持つことができ、あるいは他の何らかの抗体を持つことができる。例えば、カラムがG+抗体を持っているならば、標識はMRSAのための抗体を持つことができて、従ってMRSAバクテリアにだけ、存在するならば、付着する。あるいはいくつかの異なるタイプのビーズがあり得る。例えば各特定タイプは異なる特性信号と異なる標的G+バクテリアに対する抗体とを有する。このようにして全てのG+バクテリアが収集されて、その後、1つの検出可能な特性信号を有する1つの特定のビーズタイプの特異的付着を引き起こす特定の標識抗体を通してG+バクテリアのタイプの判断が行われる。
【0134】
各々の別々のカラムにそれぞれ特定の病原体タイプを付着させるために、サンプル流体を、並列の、あるいはより好ましくは直列の、いくつかの異なるアフィニティカラムを通って流すことができる。例えば、G+、G−、および菌類のために1つずつ、3つのアフィニティカラムが直列に使用され得る。例えば血液であるサンプルは、連続して各々を通って、またループをなして数回、付着の確率が容認できる程度になるまで、流される。G+、G−、あるいは菌類がサンプル中に別々にまたは一緒に存在するならば、病原体は関連するカラムに付着される。カラムへの付着の後、サンプルの流れはオフにされ、結合していない物質を除去するために洗浄ステップを使用することができ、その後、標識を伴う溶液をカラムを通して流すことができる。カラムを通ってビーズ溶液が流れると、ビーズは、自身の持っている抗体に合った病原体に付着することができる。標識化の確率について容認できるレベルを得るのに充分な程度に、例えばループをなして、ビーズ溶液がカラムを流れたならば、ビーズ溶液の流れは止められる。次に、カラムは洗われ、その後に、付着した病原体を標識とともにカラムから遊離させて検出回路を通過させる薬剤で溶出させられる。
【0135】
磁気ビーズを包含する標識溶液を、直列または並列の複数のカラムを通って流すことができる。磁気ビーズは、本願明細書に記載されているように、特定のバクテリアを標的とするためにある特定の抗体を付けられている。例えば、G+、G−、および菌類のタイプの各々に10ずつ、30の異なるレベルがあり得る。このようにして、ビーズを包含する溶液を直列のアフィニティフィルタを通って流すことができ、標識は、ビーズが自身の持っている抗体に合う特定の病原体に付着する。
【0136】
他の1つの実施形態において、特定可能な信号区別のレベルが10だけあるとしてもよい(例えば、検出方法の信号対雑音に基いて)。この場合には3つのアフィニティフィルタの各々において10の特異的ビーズが使用され得る。病原体のタイプの判断がビーズからの信号レベル、例えばレベル7、およびその溶液がそれから生じたところのカラム、例えば菌類カラムを含むように、各カラムのための溶液は別々に処理され、検出回路を通る流れは多重化される。これは、僅か10のビーズ特性レベルを用いて、30の別々の特定を提供する。
【0137】
標的病原体が特定の領域に付着するようにアフィニティカラムにおいて別々の層を持つことも可能である。例えば、1つのカラムに10の層があり、各層に1つの特定の抗体が関連付けられ得る(図12)。そのとき、バクテリアは関連領域に付着して、標識化される。その後、遊離洗浄は検出コイルを通る液体の流れを生じさせ、やがては、カラム上の位置に関連する一定のプロフィールを有することになる。特定のレベルに関連する流体からの検出イベントは、あるバクテリアを示す。従って、洗浄流動開始から検出イベントまでの時間は、流体をカラム上の特定の領域に関連付けることになる。
【0138】
層は一般的タイプの病原体に対するものとすることができ、ビーズ標識はさらなる特異性を提供する。例えば、G+、G−、および菌類のために1つずつ、3つの層があり、各々1つの特異的信号特性および抗体を有する10の磁気標識化されたビーズがあり得る。1レベルが3つの抗体、G+、G−、および菌類の1つの特定の種または系統に関連付けられる。病原体が層に付着したならば、ビーズ溶液がカラムを通して流され、特定のビーズを標的病原体に標識化する。遊離されたときに、信号レベルと、ビーズが出てきた層に関連する遊離からの時間とによって特定の病原体についての特定が成し遂げられる。
【0139】
さらに、層状カラムを検出コイルの中に保持することができ、従って、特定は検出された信号に関連する層によって行われ得る(図13)。MRIに基づく技術を用いて、信号の位置が判断され、これにより関連する層が判断され得る。前述したように、多層アフィニティカラムが構築され得る。この場合には各層の病原体が検出のために充分に標識化される限りは、標識ビーズは特定の抗体または一般的抗体を有することができる。特異性は、ある層に関連する特定の抗体と、あるいはカラム上の位置と、特定の病原体に対する抗体を有する特定の標識に関連する信号強度とによって達成される。例えば、アフィニティカラム層が任意のG+バクテリアを局在化させるために全G+抗体を有することができ、そのときには種々のG+バクテリアについて特性信号強度を有する特異的標識ビーズが個々の標的を標識化する。特定は、カラム上の位置と、特定のG+標的バクテリアのための標識に関連する信号強度とにより判断される。
アフィニティカラムステップが使用されないのであれば、磁気ビーズが標的を架橋結合するように磁気ビーズが多価であるか、あるいは複数のビーズが単一の標的エンティティに付着させられ、NMR信号が、周囲の水に対する塊状対分散状の磁気ビーズの差動的効果から生じることが好ましい。
【0140】
血液安全性
血液銀行における献血された血液のスクリーニングは、少量の、いくつかの潜在的病原体の検出を必要とする。バクテリア汚染は、全血液成分の最も良くある輸血伝染感染として知られている。しかし、寄生虫性、ウィルス性、宿主−白血球、およびプリオン汚染も、輸血を介する病気の伝染において重要な存在である。本発明の開示された方法および装置は、続く血液供給に及ぶ脅威一つ一つに対して超高感度検出を提供することができる。
バクテリア:現在、人間の輸血用血液はいくつかの保障措置に従っているけれども、病原体についての一連のテストがあるにも拘らず、たった一つのバクテリア株、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、すなわち梅毒を引き起こすバクテリアだけが歴史的にルーチンスクリーニングのために選択されている。バクテリアの監視がないために、輸血関連のバクテリアによる敗血症は輸血された6つの汚染されたユニットあたりに1つのケースで発生すると見積もられ、死亡はこれらのケースのうちの最大25%で発生する。英国では、1996〜2001年の輸血関連有害事象の報告制度(SHOT:Serious Hazards of Transfusion)の研究からのデータは、輸血伝染される感染症の全ての報告された症例のうちの60%がバクテリア汚染のせいにされたことを指摘した。フランスでは、ヘモビジランスネットワーク(Haemovigilance Network)からのデータが、1996〜1997年の間の輸血関連死亡の15%がバクテリア性汚染によると報告した。いろいろなクラスのバクテリアの存在を検出するための自動化された培養方法が利用可能であるけれども、これらのシステムは、サンプリングエラー、偽陽性および偽陰性の結果、および報告のための48時間以上に及ぶ長いリードタイムを含む欠点がある。
血小板濃縮物において、それらが急速なバクテリア成長に有利な室温で保管されるために、バクテリアが特に問題となる。さらに、バクテリアは、血小板輸液においては十分に報告されていない問題である。バクテリア汚染の見積もられている発生率は、2,000ランダムドナーまたはアフェレーシス血小板ユニットにつき1つである。
【0141】
寄生生物:バクテリアに加えて、血液供給の他の脅威は寄生生物を含む。献血された血液中の認識されているどの寄生生物の存在のための検出テストもまだ開発されていない。この20年間に世界的な旅行および人口移動が増えて、マラリア、シャーガス病およびリーシュマニア症などの血液で運ばれる寄生虫症は輸血においてより一般的になっている。寄生生物スクリーニングテストは日常の業務としては使用されていなくて、悪評のとおりに当てにならないドナー面接が依然としてそのような感染に対する主要な防御手段である。
地球規模では、マラリアは熱帯地域において毎年4億以上の人に感染すると推定されている。輸血を通して伝染したこの病気は米国で1963年から1999年までの間に91症例発生した。現在、マラリアが風土病となっている地域を訪れた供血者に対して6ヶ月にわたって献血を延期させることができる。
シャーガス病の原因因子であるトリパノソーマクルジ(Trypanosoma cruzi)は南米の多くで風土病である。この病気は輸血を通して伝染する可能性があり、米国およびカナダで確認されているが、トリパノソーマクルジのための血液のルーチンスクリーニングは行なわれていない。カリフォルニア州ロサンゼルスでの研究は、ある地域では7,500の供血者のうちの1人もの人が感染の証拠を示したと指摘している。
リーシュマニア種(Leishmania Sp.)により引き起こされるリーシュマニア症は、亜熱帯地域に特有の重い病気である。リーシュマニア/HIV重感染についての最近の研究は、スペインおよび南欧におけるリーシュマニアの真の患者数は充分には報告されていないかもしれず、寄生生物が免疫無防備の患者に健康上の深刻な危険性をもたらす可能性があるということを明らかにしている。
【0142】
ウィルス:バクテリアおよび寄生生物だけではなくて、ウィルスおよびプリオンも人間の輸血用血液を汚染する。生物薬剤製品の製造業者にはウィルス安全性も重要な関心事である。25もの既知ウィルス性病原体が血液中に存在する可能性があるけれども、HIV、HCV、およびHBVを含む少数のウィルスだけが収集後のスクリーニングを要している。検査の必要性は感染発生率に遅れをとっている。例えば、表1は、過去20年以上にわたって、輸血用血液に対して特定された新しいウィルス脅威を示している。

これらのうちの1つである西ナイルウィルス(WNV)は、大陸を横断して移動して新しい地域で脅威として現れる病原体の能力の顕著な例を示している。過去40年にわたって、WNVはヨーロッパで人間の病気として散発的に発生している。ヨーロッパで人間に発生した一番最近の例は、1996〜7年にルーマニアのブカレストで起きた。500以上の報告症例が含まれ、死亡率は約10%であった。さらに、2002年以降、このウィルスの1つの新型株が米国中に急速に広まり、2003年2月18日までに12,375症例のWNV感染と466例の関連死亡とが報告されている。さらに、2003年4月現在で、輸血または臓器移植からの感染の結果として患者23症例にWNV病が現れたと確認された。
【0143】
一般的に使用されているルーチンスクリーニングテストの大部分はウィルス性病原体に対するものであるが、輸血用血液は依然として多くの既知ウィルス性疾病に対して脆弱である。サイトメガロウィルス(CMV)は、その罹患率が高いために(西側成人人口の40〜100%)日常業務的にはスクリーニングされない一般的感染症である。しかし、CMVは、免疫無防備の人に対しては深刻な脅威となり得る。そのような限られた在庫からCMV−血清陰性の血液ユニットを受け取る。CMV−血清陰性のユニットの使用に代わるものとして白血球除去(leukoreduction)が提案されているけれども、いくつかの研究は、CMVの伝染を防ぐ上で白血球ろ過(leuko-filtration)は完全には有効でないことを指摘している。パルボウィルスB19は、広範囲に存在し(成人では最大70〜90%に及ぶ推定血清有病率)、血液銀行スクリーニングテストのパネルには含まれていない別のウィルスである。B19感染は、免疫無防備の人、鎌型赤血球/サラセミア患者、および妊婦などのある人々にとっては危険であり得る。
【0144】
プリオン:伝染性海綿状脳症(TSE:Transmissable Spongiform Encephalopathy)および変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)などのプリオン病は、誤って折り畳まれたプリオンタンパク質(PrPSc)により引き起こされる。プリオン病は、食物供給、臓器移植、汚染された医療器具、血液供給、あるいは動物由来製品から作られた医薬品を通して広がる可能性がある。近ごろ、無症状の感染者から血液伝染した変異型クロイツフェルト−ヤコブ病で2人の患者が死亡した。プリオン病用の迅速な血液スクリーニングが必要である。脳ホモジネートからのヒトPrPScを効率的に捕獲して濃縮するために、病原体プリオンタンパク質アイソフォームPrPScを結びつけるプリオンペプチド試薬が磁気ビーズにコーティングされている。血清からのPrPScの迅速な血液スクリーニングテストは、プリオン特異的抗体15B3を使用することができる。この磁気プリオンアッセイは、ヒトの血液サンプルをスクリーニングするために必要な感度およびスループットを達成することができる。
【0145】
ドナー白血球:献血された血液中に生存可能なドナー白血球が存在していることは、長い間、レシピエントにとって危険の源であるとして認識されてきた。レシピエントにおけるドナーT細胞の増殖によって引き起こされる輸血後移植片対宿主病(TA−GVHD)は、84%もの高さの死亡率を保持するかもしれない。さらに、ユニット保管中に白血球により放出されるサイトカインは、発熱性非溶血性輸血反応を引き起こす可能性がある。白血球は、また、CMVおよびHTLVなどの潜伏性ウィルスをかくまっている可能性がある。白血球を検出したならば、白血球に対する現在の安全措置を利用することができる。これらは、しばしばガンマ照射の形をとり、これはドナー白血球を不活化するために使用される。白血球除去は、レシピエントに対する危険を減少させるための別の標準的ツールであり、白血球ろ過された(leukofiltered) ユニットは、遥かに少なくなった白血球を包含する。
【実施例3】
【0146】
構築方法
巻線コイル:目標は小型の携帯可能なNMRシステムを程よいコストで構築することであるので、最初の実験のためのコイルを構築するために使われた集束イオンビーム技術よりかなり簡単なマイクロコイルを製造する方法を得ようとしている。古典的なコイル構築方法は、標準的な(普通はエナメルが付された)ワイヤを用いて「手巻き」することである。引かれたピペット先端上に非常に小さなコイルを正確に巻くための簡単なギア同期式装置が以前に説明された(非特許文献17)。任意のそのような装置の主要な要求条件は、サンプルチューブを保持してそれを回転させ、また、非常に細いワイヤの位置を、それがチューブに巻きつけられるときに、制御するための方法である。マイクロ−キャピラリチューブ[Vitrocom]を保持するサイズに適宜作られた光ファイバチャック[Newport]と関連させて小型旋盤[Taig Tools,Chandler,AZ]を用いることによってこれらの要求条件が容易に満たされることを知っている。チューブは、ファイバチャックを用いて旋盤の主軸台に取り付けられる。ワイヤの一端はファイバチャックにテープ付けされ、同時に他端はその位置が旋盤のサドルおよび前後送りによって制御される支持体にテープ付けされる。主軸台を徐々に回転させ、旋盤の前後送りを手で再位置決めすることによってコイルが巻かれてゆくときにコイルを視覚的に監視するために7×−30×解剖顕微鏡が使用される。キャピラリチューブは非常にしなやかであり、巻きつけ中のその撓みはワイヤ上の適切な引張り力を維持するのに役立つ[通例、50ゲージのエナメル線、California Fine Wire]。仕上がったときに、コイルは、標準的5分エポキシを用いてチューブに固定される。最小のプラクティスでは、コイルを約15分で巻くことができる。
【0147】
この急速コイル構築に対する1つの鍵は、本発明のコイルを密巻きする選択にある。一般的に、NMR実務家は、コイル巻線の高周波抵抗を増大させて過度の電気的ノイズをもたらす可能性のある強い近接効果を避けるためにコイルはターン間にある程度のスペースを伴って巻かれるべきであると考える(非特許文献25、27)。しかし、本発明のワイヤの直径が無線周波数(RF)表皮深さより約2.5倍大きいだけに過ぎないように充分に低い、幾分低い周波数で本発明のコイルを使っている。さらに、本発明のワイヤ上のエナメル層は約6μmの厚さで、測定された約37μmのターン間間隔をもたらす。(50ゲージ裸銅線の直径は25μmである。)これらの条件下で、RF抵抗は、DC抵抗より、表皮効果により4%、また近接効果によりさらに4〜11%だけ高められる(非特許文献1)。一方、密に巻かれたコイルは最高の可能なピッチを、従って最高の信号検出感度を有する。密に巻かれたマイクロコイルの高い性能は実験的に証明され(非特許文献17)、SNRは最小ターン間隔に対して最大になると知られている。しかし、本願明細書で論じられているように、このような実施は、結局は過剰なノイズをもたらす強い近接効果をもたらすものとしてNMR実務家からは否定されている(非特許文献25、27)。密巻きの1つの実際的な利益は、それがコイル構築中にワイヤを精密に制御する必要を大幅に減少させることである。
【0148】
プローブ回路の設計:マイクロコイルについての初期研究において、プローブの共鳴回路に大きな、固定値補助インダクタを用いるという反直感的なアイデアを導入した。初期研究において「大きな」(550μm直径)コイルのために厳密には必要でないけれども、そのような補助インダクタは低周波数で動作する小さなコイルのためには実際上必需品である。補助インダクタには少なくとも2つの利益がある。非常に高いキャパシタンスを用いなければ永久磁石ベースのNMR装置に特有な低い動作周波数では非常に小さなサンプルコイルを共鳴させることはできない。物理的に大きな可変キャパシタ(小型化という目標に反する)または可変キャパシタと並列の大量の固定キャパシタンス(これは同調レンジを減少させ、永久磁石の磁場ドリフトがあるとすれば扱いにくい)が必要とされる。さらに、マイクロコイルのための共鳴回路を構築することは、そのインダクタンスがマイクロコイルを包含する回路の枝路より大きい、電流を循環させるための経路を導入しなければ、困難である。並列の2つ以上の同調キャパシタを包含する回路では、特にそうである。このような条件下では、全体としての回路は所望の周波数で共鳴し得るけれども、この共鳴モードでの電流経路は、回路のサンプルコイルを包含する枝路を大きく避ける。マイクロコイルと直列に置かれた補助インダクタは、サンプルコイルを通して共鳴電流を流れさせるとともに、多数のキャパシタとそれらの多数の競合する電流経路とを含める必要性を低下させる。
【0149】
補助インダクタは、プローブ回路のQを高める。高抵抗マイクロコイルについて、結果として生じるQは依然としてあまり大きくなくて(約10〜20)、プローブの安定性あるいは過度のリングダウンに関して困難をもたらすことなく電気的共鳴を検出しやすくする。
補助インダクタの適切な設計は、それがプローブのSNR性能を補助インダクタなしで理論的に達成され得るものより悪くしないことを保証する。1つの重要なアイデアは、補助インダクタが共鳴回路の抵抗に寄与するべきでないということである。NMR回路の性能を悪くするのは漂遊抵抗であって、漂遊インダクタンスではない。非特許文献27のマイクロコイルが巻かれたならば、そのRF抵抗を測定または計算することができ、この値は補助インダクタ設計のための出発点として役立つ。理想的には、補助インダクタのRF抵抗は、マイクロコイルのものより遥かに小さくあるべきである。インダクタが回路のRF抵抗に10%を追加するならば、SNRは5%だけ下げられる。その抵抗を最小にするために、補助インダクタは大直径ワイヤを用いて巻かれる。本発明のプローブのために、一般的に14ゲージ銅ワイヤ(直径=1.63mm)を選ぶ。電流がワイヤの外表面においてのみ伝導されるとすれば、低抵抗という目標と矛盾しない最長のそのようなワイヤ片を計算することができる。長さlwireのワイヤから構築され得る最大インダクタンスは、半径、

のコイルで達成されるということを証明することができ、ここでdwireはワイヤ直径であり、kdwireはターン間間隔(一般的にはk=1.3)である。本発明のマイクロコイルは本発明の動作周波数(44MHz)で一般的には0.2〜1.0ΩであるRF抵抗を有し、計算された補助インダクタは好都合なサイズにされる(半径0.3〜0.6cm、2〜4ターン)。
【0150】
適切に構築された補助インダクタを用いて、NMRプローブ回路の残りを造る。例えば、小さな長方形のアクリルシート(およそ4cm×3cm×0.7cm)を機械的支持体として役立てることができる。サンプルコイル、補助インダクタ、および同調および整合キャパシタが全てブロック上に取り付けられ得るように、接着剤を裏に付けられた銅箔の小片が切られて、アクリルブロック上に置かれる。サンプルコイルが巻かれているキャピラリチューブは、標準的な5分エポキシを用いて2本の可撓性チュービング(PEEKおよびRadelを用いた)内に接着される。この構造物は、次に、壊れやすいキャピラリチューブが可撓性チュービングに沿って伝わる機械的ショックから絶縁されるように、アクリルブロックに接着される。補助インダクタおよびキャパシタは銅箔にはんだ付けされ、アクリルブロック搭載モジュールは遮蔽されたプローブボディ内に据え付けられる(鋳造アルミニウム箱または銅箔で覆われたプラスチック箱を用いた)。本願明細書で示すように、これらの非常に簡単で簡素なプローブ構築技術は、最適の性能を達成するNMR検出器をもたらす。
【0151】
結果
本願明細書に記載されている方法を用いて、表1に詳述されているように、サイズの異なる一系列のマイクロコイルを巻いた。

【0152】
キャピラリのサイズを2つの数、マイクロメータ数で表したチューブの外径および内径で示す。コイルの長さは、ターン数と、測定された37μmの総ワイヤ直径とから計算される。インダクタンスは、標準公式を用いて計算されている。非特許文献25の最も小さいほうの3つのコイルは1つの補助インダクタ、直径14.5mmを有する3ターンの14ゲージ裸銅ワイヤ(計算されたインダクタンスは150nH)を包含するプローブ回路に組み込まれた。最大のコイルのためのプローブ回路は補助インダクタを採用しなかった。
【0153】
SNRを判定するために、シングルパルス実験を行なって単一の2チャネル自由誘導緩和(FID)信号を得た。実験の全てについて、線形勾配/シムコイルを備えた5cmクリアギャップを有する1.04テスラ永久磁石を使った。これは、とても携帯可能な磁石ではないけれども、0.6kg1テスラ磁石と同じ磁場を持っていて、遥かに大きなギャップが迅速な検出器プロトタイピングを容易にする。NMRコンソールはMRTechnology(日本)からのコンパクトなイメージングシステムであった。サンプル流体は、キャピラリに付けられたチュービングを通して注射器により加えられたマグネビスト(Gd)−ドープされた水(T1 〜430ms)であった。SNRを判定するために、検出された信号はベースラインオフセットのために訂正され、その後、チャネルのうちの1つの信号電力の全部で共鳴するように数学的に調整された。

【0154】
ノイズ値は、ベースライン領域(データセットの終わりの50%ほど)におけるデータの標準偏差であると考えられた。信号は、FIDをゼロ時間まで戻って外挿することにより判定された。狭帯域幅フィルタはRFパルス後に有意な時間にわたってリンギングするので外挿が必要であった。(イメージングのために設計されたコンソールは、狭い帯域幅での動作のために最適化されてはいなくて、調整可能なレシーバミューティング回路を備えていない。)測定されたSNR値は表2に与えられていて10%の見積もり不確定性を有し、外挿とベースラインデータの標準偏差における不確定性との両方から生じる。
【0155】
最小の達成された線幅(FIDデータのフーリエ変換へのローレンツフィット(Lorentzian fit)のFWHM)も表2に与えられている。プローブは磁石内の最も均質な位置に位置決めされ、線形シムはFIDの寿命を最大にするように(そして、その形状を最適化するように)調整された。シムは一般的には線幅の2〜5倍の減少を提供した。表2で報告されている線幅は、達成した最も狭いものである。一般的に、磁石内の同じ位置に各プローブを慎重に置くことは、線幅が20%以内に再現されることを可能にした。最小線幅を判定するために使用されたFIDデータは最大SNRを判定するために使用されたものと同じではなかったということに留意するべきである。

【0156】
表2に与えられているマイクロコイルのDC抵抗は、2ワイヤモードで動作するベンチトップDMM(Fluke8840A/AF)で測定された。マイクロコイルをプローブ回路の残りに接続するリード線を伴うマイクロコイルの抵抗が測定された。0.040±0.005ΩのDMMリード線抵抗が測定値から引かれ、約0.01Ωの総合的不確定性を有する。表2の右端の列は、実験で100μsπ/2パルスを作るために必要とされたRF電力を与えている。この電力は、プローブ回路により見られるパルスのピーク間電圧を、このパルスを50Ω終端オシロスコープへ送ることによって、測定することにより判定された。測定における不確定性は、オシロスコープのスクリーンからの読み取りのおよそ±10%の不確定性から生じる。
【0157】
検討
オリジナルのマイクロコイルの結果との比較:±250Hzの検出帯域幅を用いて50ゲージワイヤ巻き550/400マイクロコイルで485±50のSNRを達成した。前の集束イオンビーム(FIB)コイル結果との比較を容易にするために、本願明細書に記載された方法を用いて前のデータを再分析した。(今後、このコイルを「FIBコイル」と称する。)FIBコイルについての再分析されたSNR値は、±5,000Hzの検出帯域幅で38±2であった。この帯域幅では、ワイヤ巻きコイルは108±12のSNRを与えるはずである。異なる長さのサンプルボリュームについて説明するために、ワイヤ巻きコイルを2.1mm長のFIBコイルまで伸ばせば、3.24倍大きなボリュームを囲み、同時に同じ倍率で抵抗を増やすことになるということに留意するべきである。従って、SNRを√3.24(sqrt(3.24))でスケーリングし、FIBコイルと同じサイズのワイヤ巻きコイルは194±20のSNRをもたらすはずであると推定する。従って、ワイヤ巻きコイルはSNR性能に関してFIBコイルと比べて5倍(5.1±0.8)の改善を成し遂げた。FIBコイルと同じ長さであるワイヤ巻きコイルのDC抵抗は、FIBコイルの5.42Ωと比べて、5.22Ωである。ワイヤ巻きコイルのピッチはFIBコイルより2倍細かい。これら2つの差異は、SNRにおける2倍の改善の原因である。FIBコイルのプローブ回路は、45cmの四分の一波長ケーブルと、2つの遮蔽された箱の中のコンポーネント間の長い(10cm)リード線とを含む、他の抵抗性損失の発生源を包含していた。これらの抵抗は現在の設計では除去され、観察されたSNRにおける5倍の改善を説明するのに役立っている。
【0158】
ワイヤ巻き550/400プローブで達成された線幅は115ppbで、FIBコイルの結果より2倍悪かった。非特許文献26で、狭い線はFIBコイルの高い円柱対称性によって達成されたと推測した。次の実験により、今では、主な理由がそのコイルに存在する金属の相対的欠如であったと考えている。
表1に記載されている550/400コイルを巻く前に、40ゲージのエナメル銅ワイヤを用いて550/400チューブに20ターンのコイルを巻いた。このコイルは、1.5mmの長さで、約190nLのサンプルボリュームを包含した。ターン間間隔は約80ミクロンで、FIBコイルとほとんど同じであるが、ボリュームはFIBコイルのサンプルボリュームの約3/4であった。しかし、この40ゲージのプローブで達成された最も狭い線は1ppmであって、FIBコイルよりほとんど20倍悪かった。FIBコイルではより大きなサンプルボリュームに比べてより狭い線が達成されたので、バックグラウンド磁場の均質性を、線幅を制限する因子としては無視することができた。過度の線広幅化の発生源を確かめるために、この40ゲージのプローブに対して一連の改変が行なわれた。プローブ回路あるいは支持構造のどの部分もサンプルボリュームから3mm以内にはなかったオリジナルのFIBコイルプローブに案内されて、支持構造、電気回路、および流体処理チュービングが全てサンプルボリュームから適切に遠ざけられている新バージョンの40ゲージのプローブが構築された。線幅の改善は観察されなかった。最後の改変は、40ゲージのワイヤを50ゲージのワイヤと交換することであった。この50ゲージのコイルは、表2に与えられている遥かに小さな線幅を達成した。
【0159】
50ゲージのワイヤで巻かれた550/400コイルは、オリジナルFIBコイルの結果より2倍悪い線幅をもたらし、40ゲージのコイルは50ゲージのコイルより10倍悪かった。これらの線幅差は、これらのコイルの各々におけるワイヤの横断面積、すなわち40ゲージ、50ゲージ、およびFIBコイルについてそれぞれ4900μm2 、490μm2 、および235μm2 と非常に良く関連している。(ワイヤ巻きコイルは銅であった。FIBコイルは、金をある程度補う非常に薄いクロム層の上の、銅より3倍反磁性である金であった。)表皮深さ効果により、40ゲージのワイヤの外表面(250μm2 の実効面積)だけが電流を伝導するので、そのワイヤ内の銅の大部分は「浪費」される。この余分の銅は、コイルのSNR性能に影響を及ぼさないけれども[Peck1995](非特許文献1)、サンプルボリュームにおける場の均質性に影響を及ぼす。最高の解像度を達成するためにはサンプルボリュームの近くの銅の存在は最小にされるべきであり、表皮深さより遥かに大きなワイヤは回避されるべきであるということを示していると思われる。もちろん、ワイヤによる場の歪みを克服するために磁化率整合技術(非特許文献3、6)が使用され得るけれども、それは本発明の装置を複雑にする。
【0160】
より小さなコイルの性能:表2に示されているように、3つの最小のコイルで達成された解像度は極めて良好であり、線形シムだけを使用する30ppbに近い。さらに、SNRは、最小のコイルの約1nLボリュームにおいても、単一のショットでFIDが見えるほど充分に高い。本発明のプローブ回路の設計と、簡単で、速くて安価な構築方法が使用に耐えるNMR検出器を作り出すということは明らかである。しかし、これらの検出器が最適に動作するかどうか尋ねることができる。
【0161】
これらのコイルおよびプローブ回路から予期するSNR値を、(非特許文献1)の

を用いて計算することができ、ここでk0 は、有限のソレノイドにより生成されるB1 場の不規則性と、サンプルボリューム中のスピンの不均一な励起とに関連する幾何学的効果の原因となる定数である。(B1 /i)はB1 の生成に関してのコイルの効率であって、ソレノイドについてはμ0 nの値を有し、ここでμ0 =4π×10-7Tm/Aであり、nは単位長さあたりのターン数である。νs はサンプルボリュームであり、N=6.7×1028/m3 は水サンプル中の水素原子核の数密度であり、γ=2.675×108 ラジアン/秒であり、Tは水素原子核についての磁気回転比であり、Iは水素については1/2であり、場の中の水素原子核についてはω0 =2.78×108 ラジアン/sであり、T=297Kであり、RはLC共鳴回路の高周波抵抗であり、Δfは検出帯域幅である。k0 は、容易には測定も計算もできない唯一のパラメータである。それは、1.0に近いけれども僅かに小さい値を持つべきであり、またプローブのためには、それらが皆同様のコイルおよびサンプル形状寸法を有するので、大幅に異なるべきではない。計算において、k0 =1.0とする。検出器は、主として、それらのサンプルボリュームおよび抵抗に関して異なる。
【0162】
期待されるSNRを計算するためには、LC共鳴回路の各エレメントのRF抵抗を知らなければならない。整合キャパシタ、グランドへの結線などを含む、プローブの他の部品は、プローブのこれらのセクションを流れる電流が共鳴ループ自体におけるものよりも遥かに小さいので、回路での損失への寄与に関しては遥かに小さな役割を果たす。共鳴回路の各エレメントについての抵抗を、それらの物理的寸法を測定することによって、また、電流が表面から表皮深さ(周波数では銅において10μm)以内の領域において流れるだけであるということを考慮することにより、計算することができる。50ゲージのワイヤについて、マイクロコイルおよびそのリード線のDC抵抗を測っている。この値は表2に与えられるとともに、便宜上、表3の第2列において再掲されている。Peckらの非特許文献1の表2および表4を用いることによって、このDC抵抗を、計算されたRF抵抗に変換する。リード線のRF抵抗は表皮深さ効果により高められ、その強さをPeckらの表2を用いて見出すことができる。本発明の表3の第3列に示されているように、DC抵抗へのフラクショナルエンハンスメントは本発明のコイルについては約4%である。コイル内のワイヤについて、近接効果も1つの役割を果たす。近接効果の強さは、ターンの数とコイルのアスペクト比とに依存し、Peckらの図2および図4を用いて計算することができる。本発明の表3の第4列は、本発明のコイルの各々における近接効果によるDC抵抗へのフラクショナルエンハンスメントを与える。表の第5列は、測定されたDC抵抗にエンハンスメント係数を適用することにより計算された総RF抵抗であり、近接効果はワイヤ長さのマイクロコイル内の小部分だけに適用されている。補助インダクタの計算されたRF抵抗は第6列に与えられ、LC回路の合計のRF抵抗は第7列に与えられている。銅箔と同調キャパシタとが抵抗性損失に無視できる程度に寄与するということを見出す。
【0163】
絶対SNRの測定値を理論に関連付けることに関して人はいくつかの定義上の疑問に直面する(非特許文献28、29)。Johnson の測定値は、サブメガヘルツ電圧信号の単チャネルのインコヒーレントな測定値であった。本発明のNMR分光計は、NMR電圧信号と局部発振器とのコヒーレントな結合から各々導出される2チャネルの電圧データを生成するべくNMRコイルからの信号を処理する。より古い測定値と最も直接的に関連付けるために、信号全体がチャネルのうちの1つにおいて現れるように本発明の2チャネル信号を、それらを周波数および位相シフトさせることによって、処理する。今後、この単一信号チャネルを全体信号として扱い、信号レベルをゼロ時間におけるその振幅から測定するとともに、前述したようにノイズをベースラインにおける値の標準偏差として計算する。
【0164】
第2の考慮は帯域幅Δfの定義に当てはまる。ナイキストの処理では、rms電圧ノイズは白色である(すなわち、全ての周波数間隔Δfにおいて等しい電力を有する)。方程式2の分母の数4は、帯域幅Δfの中の周波数だけを(いかなる重み付けもなしで)通過させて他の全てを遮断する理想的フィルタにふさわしい。そのローレンツ伝達関数を伴う単一極フィルタはより多くのノイズを通し、係数4は、Δfがローレンツ伝達関数のFWHMを表すと仮定して、π/2を乗じられるべきである。本発明のフィルタは8次であるので、理想的フィルタを厳密に近似する。
表3の計算されたSNR値は、表2の測定された値と非常に良く一致し、プローブ回路における損失を正確に説明したことを示す。
【0165】
システムのSNR性能を、送信モードにおけるその特性に関連付けることも可能である。非特許文献27のB1 を生じさせる電流iが損失の原因である抵抗Rを通って流れれば、散逸する電力はP=iR2 であって、方程式(2)を、

の形に書き直すことができ、ここで

である。1つの100μsπ/2パルスはB1 =0.59G=5.9×10-5Tに対応する。方程式(3)、表1からのサンプルボリュームνs 、および表2からの測定されたSNR値を用いて、4つのプローブについて9.1μW、14μW、23μW、および52μWの期待されるRF電力必要条件を計算する。表2に与えられている測定された値との一致は、3つの最小コイルについて不確定性の範囲内にある。従って、SNR測定はプローブの送信性能と矛盾しなくて、SNR値が本発明のレシーバにおいて過度のノイズで損なわれないということを示す。最大のコイルについて、測定されたSNRおよび電力の不確定性が考慮されたときにも、一致は同じようによくはない。このことについて、最大のコイルが他よりかなり大きくて、それに相当してより高いSNRを有することに留意する以外は、今のところは詳しい説明を持っていない。
【0166】
表3は、本発明の補助インダクタがSNR性能を容認できないほど低下させないことを示している。テストされたプローブにおいて、補助インダクタが抵抗性損失の約10%を生じさせ、それなしで達成され得るSNRの5%低下をもたらすということを知る。従って、インダクタを除去しても、これらのプローブのSNR性能はあまり大きくは改善しない。しかし、補助インダクタなしでは、プローブ回路は遥かに造りにくくかつ操作しにくい。
【0167】
より良いプローブをつくりテストすること:第1のセットのプローブにおける観察されたSNRと計算されたSNRとの一致は、SNR性能に寄与するファクタについての的確な量的理解を持っていることを示している。今、SNRを改善できるかどうかを問う。
これは、除去し得る漂遊抵抗があるかどうかを問うことと同等である。第1のセットのコイルは、サンプルに近すぎる大きな導体の均質性劣化効果を避けるために、マイクロコイル自体とプローブ回路の残りとの間にかなり長い結線を持っていた。これらの結線は、細ゲージ(narrow gauge)のワイヤで作られているので、寄与信号なしで、本発明の検出器における抵抗(従って、ノイズ)にかなり寄与する。本発明のコイルのリード線長さを測定し、次にPeckらの非特許文献1の結果を使ってマイクロコイルおよびリード線のLC回路の抵抗への別々の寄与を計算した。値は表4の第2および第3列に与えられている。第4列はコイルおよびその導線の計算された合計RF抵抗を与え、第5列はこの同じ量の、測定されたDC抵抗(表3を参照)に基づいて計算した値を与える。最後の列は、同様に表3からの、補助インダクタの計算されたRF抵抗を与える。

【0168】
表4は、より短いリード線を有するプローブがより高いSNR性能を達成し得ることを示している。リード線を短くするには、より大きな導体をサンプルボリュームに近寄せることを必要とする。40ゲージのワイヤおよび550/400コイルに関しての経験を考慮して、より多量の銅がサンプルボリュームにより近づけられて置かれるので、解像度は結局悪くなるだろうと予測する。行なわれるべき測定の必要条件により教えられる、解像度とSNRとの妥協が、プローブ回路デザインの最適化を決定する。
【0169】
結論
非常に小さなマイクロコイルが永久磁石の低磁場においてNMR検出器として容易に動かされ得ること、小型化されたNMR検出器のための1つの新しいサイズおよび周波数体制を示した。測定されたSNRと、NMRプローブにおける抵抗性損失の発生源についての詳細な分析に基づいて計算された値との密接な一致は、採用する簡単な構築方法が傑出したプローブをもたらすということを示す。特に、SNR性能は、補助「同調」インダクタがSNR性能を悪くしないことを確認する。抵抗性損失についての詳細な分析は、また、SNR性能の利用可能な改善への道、マイクロコイルをプローブ回路の残りに接続するリード線の減少を指し示す。しかし、これらのリード線長さの減少は、より多くの金属をサンプルボリュームに近寄せれば場の均質性が直ぐに悪くなる可能性があるという事実を尊重しなければならない。
【実施例4】
【0170】
同調コイル
例は、他にも有益な目的がある中で、特に磁気共鳴実験を実行するという目的のために適切なLC共鳴回路を含んでいる。回路は、マイクロコイル、調整可能な同調キャパシタンス、および同調インダクタを有する。25nH以下のインダクタンスを有するマイクロコイルは、しばしば、同調インダクタより遥かに小さい。回路エレメントはワイヤにより接続され、「リード線」としてエレメントに取り付けることができ、あるいは当業者に知られている接続技術を用いて構築中に別々に付け加えることもできる。新機軸は、マイクロコイルに加えて同調インダクタを含めたことを特徴とする。
【0171】
本発明の回路の1つの実施形態が図14に描かれている。この回路は、他にもある中で、特に磁気共鳴実験に適する。図1の回路は、他のMR/NMRシステムコンポーネントがそれにどのように結合されるかにより、並列共鳴または直列共鳴と解釈され得る。直ぐ次の検討のためには、図14は並列共鳴回路と考えられてよい。回路は、マイクロコイル10と、調整可能な同調キャパシタ12と、同調インダクタとして機能する第2のコイル14とを有する。好ましくはほぼ25nH以下のインダクタンスを有するマイクロコイル10は、一般的には同調インダクタより遥かに小さい。同調キャパシタンス12と同調インダクタンス14とは連携して共鳴回路の主要エレメントを構成する。回路エレメントはワイヤにより接続され、「リード線」としてエレメントに取り付けることができ、あるいは当業者に知られている接続技術を用いて構築中に別々に付け加えることもできる。同調インダクタ14およびマイクロコイル10の両方が回路中に存在することは、本願明細書の開示の基本的な一面である。
【0172】
マイクロコイル10は、研究対象の材料の位置に磁場を生じさせるべく意図された任意の電子伝導性構造であり得る。マイクロコイル10は、当業者に知られている技術を用いて、任意の仕方で設計され構築され得る。例えば、マイクロコイル10は、螺旋状コイルを形成するべく銅、銀、金または他のワイヤを巻くことによって構築され得る。ワイヤの横断面は円形、長方形、あるいは楕円形であり得る。マイクロコイル10は、非伝導性支持材料上の金属層を、金属層が螺旋の形状を有するように、パターニングすることによっても構築され得る。そのようなコイルを使用する実験では、研究対象の材料は螺旋の内部に置かれる。あるいは、マイクロコイル10の形状は平ら(あるいは平面状)であってもよくて、研究対象の材料はコイルの平面の非常に近くに置かれる。マイクロコイル10は、凹凸コイルが研究対象の材料の周りにあるいは内側にうまく嵌るように、1つのカーブを確定するべく曲げられた平らな平面コイルの形を持つこともできる。マイクロコイル10は、前述した形状から合成される構造でもあり得る。マイクロコイル10を、その特定の実験に必要とされる特許あるいは公有の技術を用いて、任意の仕方で設計し構築することができる。開示された装置の第1の実施形態では、マイクロコイル10は、好ましくは、補助同調インダクタが使用されなければ不都合に大きな同調キャパシタが必要とされることになるように充分に低いインダクタンスを有する。
【0173】
マイクロコイル10は、必ずしも単一のコイルでなくてもよい。特定の適用法が示唆するように、代わりの回路実施形態は、単一のコイル10の代わりに電気的に直列に(図14A)または並列に(図14B)接続された複数のマイクロコイル10’を使用することができる。組み立てられた複数のマイクロコイル10’は、共鳴回路内の同調インダクタンス14と直列または並列に接続される。
同様に、調整可能な同調キャパシタ12を1つ以上のキャパシタから構築することができて、それらは各々固定されているかあるいは調整可能であり得る。任意のキャパシタ技術および複数のキャパシタの任意の配列が使用され得る。
【0174】
同調インダクタ14は、当該技術分野で知られている技術のうちの任意のものを用いて構築される。例えば、螺旋をなしてあるいは平らな渦巻きをなして巻かれたワイヤから形成することができたり、あるいはインダクタであり続ける限りは他のどのような形をとることもできる。ワイヤは銅、銀、金、または他の任意の電導性材料であり得る。ワイヤは、単線、撚り線、編み線、「リッツ」線などの特殊ワイヤであることができ、あるいはキャピラリ上に蒸着されることができる。ワイヤを、低温(a reduced temperature) で使用することができ、また超伝導状態で使用することもできる。同調インダクタ14を、各々同じまたは異なる構造または形を有する別々のインダクタから合成することができる。
【0175】
同調インダクタ14は、非常に好ましくは、実用上好都合なサイズの同調キャパシタで共鳴させられ得るように充分に大きなインダクタンスを有する。多くの場合に、同調インダクタ14のインダクタンスは、好ましくは、マイクロコイル10のインダクタンスより少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍大きい。従って、同調コイル14はマイクロコイル10のインダクタンスよりかなり大きなインダクタンスを有するので、マイクロコイルは、実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであって、依然として、共鳴に必要とされる実質的インダクタンスを与えない。
【0176】
図14の閉じた直列共鳴LC回路が使用されているときに、その電気信号はNMRまたはMRI装置の残りに伝えられる。このことは多様な仕方で行うことができる。図15に示されている一例は、同調キャパシタンス12と同調インダクタ14との間の接合部を接続する同調または「結合」キャパシタ16を使用する。1つの付加的な結線が、通例、同調キャパシタンス12の他方の端子に与えられるので、共鳴回路全体はNMR/MRIエレクトロニクスの残りに2つの端子を与える。容量結合または誘導結合を利用するほとんど無限に多様な結合回路が当業者に知られていて、この方法での使用に適合するようになされ得る。そのような結合/通信方式の全てが、図14に示されているマイクロコイル同調回路に適合する。
【0177】
この装置および方法は、非常に小さなサンプルコイル(「マイクロコイル」)の使用が望ましいけれども、そうでなければ(すなわち、在来の共鳴回路が採用されたならば)不都合に大きな物理的サイズのキャパシタが必要となるような低い周波数でサンプルコイルが電気的共鳴状態に至らせられなければならないような環境において、最も有益である。本発明の作用を記述するときには、オペレータがマイクロコイルを既に持っていてマイクロコイルを不都合に低い周波数で共鳴させようとしているということが想定されている。
【0178】
公知の回路理論は、LC共鳴回路においては総インダクタンスLおよび総キャパシタンスCが電気エネルギーを蓄積するのに役立つということを教えている。蓄積されたエネルギーはキャパシタンスに、またインダクタンスに、交互に蓄積される。エネルギーが行ったり来たりする速さを、電気的共鳴周波数であって、

を用いて計算することができる。従って、総インダクタンスLが非常に低い値を有するならば、周波数fの低い値を達成するためにキャパシタンスCの非常に大きな値が必要である。例えば、回路中の唯一のインダクタンスがマイクロコイルのインダクタンス10nHであって、実験が僅か1テスラの場(これはプロトン核磁気共鳴周波数を42.6MHzにセットする)で行なわれるならば、必要なキャパシタンスは1400pFである。
【0179】
図14の回路では、総インダクタンスLは、マイクロコイル10のインダクタンスと同調インダクタ14のインダクタンスとの合計である。同調インダクタ14を導入することによって、総インダクタンスの値を、適切な電気的共鳴周波数を達成するために必要なキャパシタンスが便利な値となるポイントまで高めることができる。実際、この便利さを達成する同調インダクタ14は、同じ所要の周波数での動作のための標準サイズのサンプルコイルと非常に類似している。NMR/MRI回路構成の技術分野の知識を有する人は、必要とされる同調インダクタ14を容易に構築できるようにする。
【0180】
同調インダクタの無線周波数抵抗はマイクロコイル10の無線周波数抵抗より遥かに小さいことが好ましい。そうでなければ、同調インダクタ14は共鳴回路の電気ノイズを高めるかもしれなくて、回路の信号検出性能は悪くなる。例えば、同調インダクタ14がマイクロコイル10と同じワイヤで構築されるときに、そうなる。好ましくは、同調インダクタ14は、マイクロコイル10のRF抵抗のおよそ十分の一未満を有する。例えば、同調インダクタ14を非常に太いワイヤから作ることにより、撚り線を使用することにより、リッツ線を使用することにより、同調インダクタを冷却することにより、あるいは超伝導線を使用することにより、達成することができる。
マイクロコイル10は、大幅に大きな(例えば、少なくとも2倍、あるいは10倍以上の)インダクタンスを有し得るが必ずしも有しなくてもよい第2のコイル14と直列となっている。接続されているコイル10および14はキャパシタ12と協動して共鳴回路を形成し、マイクロコイル10は実効磁気共鳴トランスミッタ/レシーバコイルとして機能する。
【0181】
マイクロコイル10とともに別の同調インダクタ14を使用することは、直列共鳴回路においても実行され得る。このことに関して、図19に注意するべきである。それ故に、低い周波数でマイクロコイル10から磁気共鳴信号を得るための方法および装置が開示され、ここでマイクロコイルはマイクロコイルのインダクタンスより大幅に大きいインダクタンスを有する同調コイル14と直列に電気的に接続され、マイクロコイルは、共鳴に必要な実質的インダクタンスを与えずに実効的に磁気共鳴トランスミッタコイルまたは磁気共鳴レシーバコイルとして機能し、キャパシタを伴うコイル10、14の共鳴回路は直列共鳴回路または並列共鳴回路であり得る。
【0182】
図16に注意するべきである。開示された装置の1つの代替の実施形態を示し、マイクロコイル10は同調キャパシタンス12および同調インダクタンス14からある距離を置いて置かれている。このような実施形態は、受信/送信「センサ」マイクロコイル10が、例えば一定の場または実験室条件(例えば、評価されるサンプルの特性または形状が、低温バス中に置かれるなどの極端な条件の中にマイクロコイルを隔離することを必要とするなど)のもとで必要とされることがあるように、システムの残りから物理的に遠くなければならないという環境において本発明を実施することを可能にする。遠くに置かれたマイクロコイル10は、2つの別々の導体を包含するケーブルまたは伝送線18によって共鳴回路の残りに接続される。マイクロコイル10の端部は、伝送線18の中の2つの導体の末端に接続される。伝送線18の近端において、その導体は、マイクロコイル10が同調キャパシタンス12、同調インダクタンス14、あるいは同調インダクタンスまたはキャパシタンスの何らかの部分と電気的に並列に配置されるように、同調回路エレメントに接続される。
【0183】
伝送線18は、その長さに沿って信号を伝えることのできる任意の電気伝導構造であることができる。たいていの磁気共鳴実験の周波数では、伝送線18は通例同軸ケーブルであるけれども、マイクロウェーブ型導波路、ツイストペア線、および当業者に知られているその他の技術が使用され得る。伝送線18の長さは、(線18が同調エレメント12、14に接続するポイントでマイクロコイル10のインピーダンスが異なるインピーダンスに変換されるように)その近端および末端の間でインピーダンス変換を達成するような長さである。これは、共鳴時の交流電流の波長の四分の一の長さの奇数倍(すなわち、1×、3×、5×)である長さを有する伝送線18を提供することによって最も簡単に成し遂げられる。伝送線18を利用するこの実施形態では、マイクロコイル10は同調/整合コンポーネントから実際上任意の距離で運用され得る。しかし、遠隔運用されるマイクロコイルは、共鳴波長の少なくとも四分の一の長さを有する伝送線18を利用する。従って、伝送線18の存在にも関わらず、もしかすると、マイクロコイルが同調/整合コンポーネントから実際上任意の物理的分離直線距離を置いて運用が実行され得るということが明確に理解される。しかし、遠隔運用の利点は、マイクロコイルが相当の分離距離を置いて機能するときに実現される。従って、本願明細書および特許請求の範囲において、「遠隔(remote)」および「遠く(remotely)」とは、共鳴回路の残りのエレメントから相当の距離を置いているけれども伝送線によってそれと通信しているマイクロコイルの運用に関連している。言及されたように、伝送線18は好ましくは共鳴波長の少なくとも四分の一に対応する長さを有するので、マイクロコイル18は、他の回路コンポーネントから少なくともそのような物理的分離距離を置いて機能することができる。同調キャパシタンス12および同調インダクタンス14の便利な選択を可能にするインピーダンス変換を達成するために伝送線長さをどのように選ぶかを当業者は容易に理解するはずである。
【0184】
この代替の実施形態を用いるために、図16の回路の電気信号は、NMR/MRIエレクトロニクスの残りに伝えられる。このタスクを、好ましい実施形態について前に論じられたのと同じであって、そこで説明された方法のどれでも、あるいは当業者に知られている他の方法により、成し遂げることができる。代替の実施形態のマイクロコイル10、同調キャパシタンス12、および同調インダクタンス14は、図14の好ましい実施形態に関して説明された対応するエレメントと実質的に同じく作用する。しかし、伝送線18は、マイクロコイル回路の抵抗を明らかに増大させないように構築あるいは選択されなければならない。
【0185】
図17は、図16に示されている実施形態の変形例を示す。この代替の実施形態でも、マイクロコイル10は同調/整合エレメント12、14から遠くに置かれている。伝送線18は、好ましくは、共鳴時の交流電流の波長の四分の一の長さの奇数倍に対応する長さを有する。マイクロコイル10は同調インダクタンス14との並列接続を有するけれども、伝送線18は、同調インダクタに、その一部セクションを渡って、接続されている。従って、同調コイルの全長の1つの選択されたセグメントだけがマイクロコイル10と電気的に並列に配置されている。
【0186】
図18を参照すると、装置の「遠隔マイクロコイル」の変形例の他の1つの実施形態が開示され、これはマイクロコイル10と同調インダクタンス14との間にインピーダンス変換器20を配置している。この実施形態は、マイクロコイルが伝送線18および別のインピーダンス変換器20によって同調インダクタンスと並列に接続されていることを除いて、図16の実施形態と実質的に同様である。インピーダンス変換器20の組み込みは、マイクロコイル10が同調インダクタンス14に対して1つの大きなキャパシタとして与えられることを可能にするので、遠くに置かれたマイクロコイル10は同調インダクタンスと並列の大きなインピーダンスとして共鳴回路に与えられる。その結果として、マイクロコイル10は、共鳴に必要とされるインダクタンスに著しく寄与することなく実効磁気共鳴トランスミッタ/レシーバコイルとして役立つ。
【0187】
前述した開示の可能な応用において、図20および21を参照すると、回路は、インダクタンスと共鳴する可変同調キャパシタンスCT と、共鳴回路をNMR分光計(図示せず)の50Ωトランスミッタおよびレシーバに適切に結合させるために使用される可変結合(または整合)キャパシタンスCM とを包含する。キャパシタンスCT 、CM は、単一の、または直列または並列に結合された複数の、可変キャパシタから成ることができ、固定キャパシタと並列または直列に追加的に取り付けることができる。インダクタンスは、(通例より大きな)同調コイルLを伴う非常に小さいサンプルマイクロコイルである。
【0188】
サンプルマイクロコイルと「同調」コイルとを結合させるための2つの例が考えられる。図14において提供されている情報の精緻化である図20の回路は、直列の2つのコイルを付け加える。図16の開示を拡張している図21の回路は、サンプルコイルを、共鳴周波数における四分の一波長にほぼ等しい長さのケーブルの末端に置いている。ケーブルの他端すなわち近端は、より大きなコイルに並列に接続されている。その効果は、サンプルコイルのリアクタンスを(ケーブルを介して)遥かに大きな値に変換し、そのリアクタンスをより大きなコイルと並列に置くことである。(サンプルコイルの小さなインダクタンスは、このケーブルによってより大きな容量性リアクタンスに変換される。)大きなインダクタンスの値Lを、キャパシタンスについて不便に大きな値を必要とすることなく回路が所望の周波数で電気的共鳴を達成するように、選択することができる。
【0189】
この例の回路は、磁気共鳴信号をマイクロコイルから低周波数で得るときに使用され得る。最も基本的な手順では、マイクロコイルを通例大幅に大きなインダクタンスを有する第2の、同調、コイルに直列に接続するステップと、それらの結合されたコイルとキャパシタとから、キャパシタのキャパシタンスが主として同調コイルのインダクタンスにより決定されるようにマイクロコイルが並列共鳴に必要なインダクタンスに著しくは寄与せずに実効磁気共鳴トランスミッタ/レシーバコイルとして機能するように、共鳴回路を形成するステップとを含む。マイクロコイルを第2の、同調、コイルと直列に接続するということは、単一のマイクロコイルの代わりに複数のコイルのアセンブリを使用できるように複数のマイクロコイルを電気的に相互に直列に接続するステップであり得るということを認識するべきである。あるいは、そのような複数のマイクロコイルを、単一のマイクロコイルに代わって使用されるコイルのアセンブリを構成するように相互に並列に接続することができ、その後にその複数のアセンブリを第2のあるいは「同調」コイルと直列に接続する。
【0190】
この開示に従う方法は、同調/整合エレメントから遠くに置かれたマイクロコイルから、低周波数で、磁気共鳴信号を得ることを可能にする。この利益は、マイクロコイルおよび第2のあるいは同調コイルを、共鳴時の交流電流の波長の四分の一の長さの奇数倍である伝送線と並列に接続することによって、実現される。第2のコイルは、大幅に大きなインダクタンスを提供するように構築され、並列共鳴回路の一部を形成するようにキャパシタに電気的に接続される。遠くに置かれるマイクロコイルは、並列共鳴に必要なインダクタンスに著しく寄与することなく、実効磁気共鳴トランスミッタ/レシーバコイルとして動作するように同じ大きさのインピーダンスを第2のコイルに並列に与える。基本的な好ましいプロセスの場合と同様に、マイクロコイルを第2のあるいは「同調」コイルと並列に接続することは、単一のマイクロコイルの代わりにマイクロコイルのアセンブリが使用され得るように複数のマイクロコイルを相互に直列にまたは並列に接続するステップであり得る。
【0191】
同調/整合エレメントから遠く離れて置かれたマイクロコイルから低周波数で磁気共鳴信号を得るための方法において、プロセスステップは、共鳴時の交流電流の波長の四分の一の長さの奇数倍であるケーブルを伴うマイクロコイルを、大きなインダクタンスの第2コイルの一部セクションだけに並列に接続することを含むことができる。共鳴回路を提供するべくこれらをキャパシタと接続することにより装置が提供され、ここで、遠くに置かれたマイクロコイルは、並列共鳴に必要とされるインダクタンスに著しくは寄与せずに、実効磁気共鳴トランスミッタ/レシーバコイルとして動作するように第2のコイルに並列のインピーダンスとして機能する。
【0192】
代わりの方法のステップは、伝送線と、マイクロコイルを大きなキャパシタとして与えるインピーダンス変換器とを伴うマイクロコイルを、大幅に大きなインダクタンスを有する第2のコイルに並列に接続することと、これらを、共鳴回路の一部を確定するキャパシタに接続することとを含み、ここで、共鳴回路から距離を置いているマイクロコイルは、共鳴に必要なインダクタンスに著しくは寄与せずに実効磁気共鳴トランスミッタ/レシーバコイルとなるべく、マイクロコイルを第2のコイルに並列の大きなインピーダンスとして与える。
【0193】
要約すれば、大きなコイルの形の「余分の」インダクタンスは、この例の回路に故意に含まれている。このような漂遊インダクタンスは、漂遊インダクタンスが信号検出の効率を低下させるであろうという想定のために、一般的に、また以前は、NMR共鳴回路の設計においては弱点と見なされている。しかし、余分のインダクタンスが回路の電気抵抗を明らかには増やさないとすれば、公知の回路設計原理の適用は検出効率の低下を回避すると判定した。余分のインダクタンスを許さない、NMR共鳴回路のための在来の回路設計アプローチは、例えば100MHzより低い低共鳴周波数で動作する小さなサンプルコイルのための実用的で同調させやすい回路をもたらすことができない。実際、非常に小さなサンプルコイル(<25nHインピーダンス)のための共鳴回路が100MHzより低い共鳴周波数で動作し得るとは知られていない。この例によれば、キャパシタンスと同調インダクタンスとを、「マイクロ」サンプルコイルから遠い位置に取り付けることができる。容易に操作されるノブまたは他の調整器具をキャパシタンスに取り付けることができる。なぜならば、それらにはスペース制約がないからである。サンプルコイルを主共鳴回路に接続するために伝送ケーブルを使用することができて、NMRプローブの遠隔運用と小型化とを容易にする。
【0194】
本発明に従う種々のアレンジメントおよび実施形態が本願明細書に記載された。本発明の各態様の全ての実施形態は、本発明の他の態様の実施形態とともに使用され得る。しかし、これらのアレンジメントおよび実施形態にも、また種々の実施形態の組み合わせにも、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく変更および改変がなされ得るということを当業者は理解するであろうということが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールであって、
(a)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルと、
(b)前記マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、
(c)前記導管および前記サンプルリザーバと流体連絡しているアフィニティカラムと、
(d)前記モジュールを磁気共鳴検出器に結合させるためのコネクタと、
を備えるモジュール。
【請求項2】
請求項1記載のモジュールにおいて、
前記アフィニティカラムは、前記導管の上流側に置かれるモジュール。
【請求項3】
請求項1または2記載のモジュールにおいて、
前記マイクロコイルは、前記導管の周りに巻かれているモジュール。
【請求項4】
請求項3記載のモジュールにおいて、
前記アフィニティカラムは、少なくとも部分的に前記導管の中に置かれているモジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載のモジュールにおいて、
流体システムと流体連絡している隔離チャンバをさらに備え、前記隔離チャンバは前記導管から下流側に位置するモジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のモジュールにおいて、
前記アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層は異なる捕獲薬剤を含むモジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のモジュールにおいて、
前記モジュールは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有する複数のマイクロコイルを備え、各マイクロコイルに近接して導管が配置され、流体システムは各導管と流体連絡し、かつ前記流体システムは複数の枝路を含むモジュール。
【請求項8】
モジュールであって、
(a)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有する複数のマイクロコイルと、
(b)各マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、
(c)前記モジュールを磁気共鳴検出器に結合させるためのコネクタと、
を備えるモジュール。
【請求項9】
請求項8記載のモジュールにおいて、
前記複数のマイクロコイルは、流体システムにおいて単一の流路に沿って配置されているモジュール。
【請求項10】
請求項8記載のモジュールにおいて、
前記複数のマイクロコイルは、独立した複数の流体流路に沿っているモジュール。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか記載のモジュールにおいて、
前記複数のマイクロコイルは、マルチコイル検出回路を形成するように電気的に接続されているモジュール。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか記載のモジュールにおいて、
前記マイクロコイルから下流側に位置する1つ以上の隔離チャンバをさらに備えるモジュール。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか記載のモジュールにおいて、
少なくとも1つの導管と流体連絡している少なくとも1つのアフィニティカラムをさらに備えるモジュール。
【請求項14】
請求項13記載のモジュールにおいて、
前記少なくとも1つのアフィニティカラムは、前記少なくとも1つの導管の上流側に位置するモジュール。
【請求項15】
請求項13または14記載のモジュールにおいて、
各々の個々のマイクロコイルは、その個々のマイクロコイルに近接して配置された前記導管の周りに巻かれているモジュール。
【請求項16】
請求項15記載のモジュールにおいて、
前記少なくとも1つのアフィニティカラムは、少なくとも1つのマイクロコイルの中に少なくとも部分的に位置するモジュール。
【請求項17】
25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を含むマイクロコイルであって、前記マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであり、かつアフィニティカラムの中にあるかあるいはアフィニティカラムを包囲するマイクロコイル。
【請求項18】
請求項17記載のマイクロコイルにおいて、
前記アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層は異なる捕獲薬剤を含むマイクロコイル。
【請求項19】
検出装置であって、
(a)4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、
(b)前記永久磁石により生成された磁場に近接して配置された、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルと、
(c)前記マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、
(d)前記導管および前記サンプルリザーバと流体連絡しているアフィニティカラムと、
を備える検出装置。
【請求項20】
検出装置であって、
(a)4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、
(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有し、各々実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである複数のマイクロコイルと、
(c)各マイクロコイルに近接して配置され、サンプルリザーバと流体連絡している導管と、
を備える検出装置。
【請求項21】
磁気共鳴検出装置であって、
(a)導管ガイドを含むハウジングと、
(b)前記ハウジング内にある4テスラ以下の磁場強度を有する永久磁石と、
(c)請求項1〜16のいずれか記載のモジュールであって、前記コネクタは前記モジュールを前記導管ガイドを介して前記ハウジングに結合させる請求項1〜16のいずれか記載のモジュールと、
を備える磁気共鳴検出装置。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか記載の検出装置において、
前記永久磁石により生成された磁場に磁場勾配を加えることのできる磁場勾配発生器をさらに備える検出装置。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか記載の検出装置において、
前記マイクロコイルは共鳴回路の一部を形成し、前記共鳴回路は、
(a)前記マイクロコイルに直列に電気的に接続された補助インダクタコイルと、
(b)共鳴回路を形成するように前記マイクロコイルおよび前記補助インダクタコイルに電気的に接続された同調キャパシタと、をさらに備え、
前記共鳴回路は前記永久磁石に近接して配置され、かつ磁場勾配発生器が存在するならばその磁場勾配発生器に近接して配置される検出装置。
【請求項24】
請求項1〜16のいずれか記載のモジュールにおいて、
前記マイクロコイルまたは複数のマイクロコイルは、密に巻かれているモジュール。
【請求項25】
請求項1〜16のいずれか記載のモジュールにおいて、
前記導管は、100μmと400μmとの間の内径を有するモジュール。
【請求項26】
サンプル流体中の標的を検出する方法であって、
(a)請求項19〜23のいずれか記載の検出装置の前記導管を通して、1つ以上の磁気的に標識化された標的を包含する流体を流すステップと、
(b)前記サンプル流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(c)前記サンプル流体中の前記磁気的に標識化された標的を検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項27】
サンプル流体中の標的を検出する方法であって、
(a)導管と流体連絡しているサンプルリザーバの中にサンプル流体を導入するステップと、
(b)前記導管内の、1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含むアフィニティカラムに、前記サンプル流体を流すステップと、
(c)前記アフィニティカラムに磁性粒子を含む流体を流すステップであって、前記磁性粒子は前記1つ以上の捕獲薬剤を介して前記アフィニティカラムに結合された前記1つ以上の対象標的に選択的に結合することができ、前記磁性粒子の前記標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、磁性粒子を含む流体を流すステップと、
(d)未結合磁性粒子数を減らすために前記アフィニティカラムを洗浄するステップと、
(e)結合した磁性粒子−標的複合体を前記アフィニティカラムから溶出させるステップと、
(f)マイクロコイルに近接して配置された導管を通して前記磁性粒子−標的複合体を含む流体を流すステップであって、前記マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有し、かつ実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであり、磁性粒子−標的複合体を含む流体を流すステップと、
(g)前記サンプル流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(h)前記サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、
ステップ(f)は、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を各々有する複数のマイクロコイルに近接して配置された複数の導管を通して流体を流すステップを含み、各マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであり、各導管はサンプルリザーバと流体連絡している流体システムの一部であり、
ステップ(g)は、流動する前記流体内の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で各マイクロコイルを付勢するステップを含み、
ステップ(h)は、流動する前記流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するために各マイクロコイルから受信された信号を処理するステップを含む方法。
【請求項29】
サンプル流体中の標的を検出する方法であって、
(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、前記サンプルリザーバは導管と流体連絡し、前記導管はマイクロコイルに近接して配置され、前記マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有し、かつ実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルである、導入するステップと、
(b)前記導管内のアフィニティカラムに前記サンプル流体を流すステップであって、前記アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層は前記サンプル流体中の1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含み、前記アフィニティカラム内の各層は他の層とは異なる分子に結合することができ、前記アフィニティカラムは少なくとも部分的に前記マイクロコイルの中に位置する、サンプル流体を流すステップと、
(c)前記アフィニティカラムに磁性粒子を含む流体を流すステップであって、前記磁性粒子は前記1つ以上の対象標的に選択的に結合することができ、前記磁性粒子の前記標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、磁性粒子を含む流体を流すステップと、
(d)前記アフィニティカラムの中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(e)前記アフィニティカラムの1つ以上の層に存する磁性粒子−標的複合体を検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項30】
標的流体中のサンプルを検出する方法であって、
(a)サンプル流体を、前記サンプル流体中の1つ以上の対象標的に結合することのできる磁性粒子と混合するステップであって、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、混合するステップと、
(b)前記サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、前記サンプルリザーバは導管と流体連絡し、前記導管はマイクロコイルに近接して配置され、前記マイクロコイルは25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有する、導入するステップと、
(c)前記導管内のアフィニティカラムに前記サンプル流体を流すステップであって、前記アフィニティカラムは2つ以上の層を含み、各層は1つ以上の対象標的に結合する1つ以上の捕獲薬剤を含み、前記アフィニティカラム内の各層は他の層とは異なる分子に結合することができ、前記アフィニティカラムは前記マイクロコイルの中に少なくとも部分的に位置する、流すステップと、
(d)前記アフィニティカラムの中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(e)前記アフィニティカラムの1つ以上の層に存する磁性粒子−標的複合体を検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項31】
請求項29または30記載の方法において、
流体システムは、25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有する別々のマイクロコイルに近接して各々配置された複数の導管を含み、各マイクロコイルは実効磁気共鳴トランスミッタコイルまたは実効磁気共鳴レシーバコイルであり、各導管はサンプルリザーバと流体連絡している流体システムの一部であり、
各マイクロコイルは、前記サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で付勢され、
各マイクロコイルから受信された信号は、流動する前記流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するために処理される方法。
【請求項32】
サンプル流体中の標的を検出する方法であって
(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、前記サンプルリザーバは導管と流体連絡し、前記サンプル流体は前記サンプル流体中の1つ以上の対象標的に選択的に結合することのできる磁性粒子を含み、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、導入するステップと、
(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された前記導管を通して前記サンプル流体を流すステップと、
(c)前記サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(d)前記サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
(e)流動する前記流体のうち、標識化されたエンティティが検出された部分を、二次マイクロコイルに近接して配置された導管を通して流すステップと、
(f)前記サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記二次マイクロコイルを付勢するステップと、
(g)前記磁性粒子−標的複合体のさらなる特性を判定するために前記二次マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項33】
サンプル流体中の標的を検出する方法であって、
(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、前記サンプルリザーバは導管と流体連絡し、前記サンプル流体は前記サンプル流体中の1つ以上の対象標的に選択的に結合することのできる磁性粒子を含み、磁性粒子の標的への結合は磁性粒子−標的複合体を生じさせる、導入するステップと、
(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された前記導管を通して前記サンプル流体を流すステップと、
(c)前記サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(d)前記サンプル流体中の磁性粒子−標的複合体を検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
(e)流動する前記流体のうち、前記磁性粒子−標的複合体が検出された部分を、濃縮された標的溶液を生じさせるために隔離チャンバの中へ逸らすステップと、
を含む方法。
【請求項34】
サンプル流体中の標的を検出する方法であって、
(a)サンプル流体をサンプルリザーバの中に導入するステップであって、前記サンプルリザーバは導管と流体連絡し、前記サンプル流体は2つ以上の対象標的を含み、前記サンプル流体は前記2つ以上の対象標的に個別的に結合されて少なくとも第1の磁性粒子−標的複合体および第2の磁性粒子−標的複合体を作る磁性粒子を含む、導入するステップと、
(b)25ミクロンと550ミクロンとの間の内径を有するマイクロコイルに近接して配置された前記導管を通して前記サンプル流体を流すステップと、
(c)前記サンプル流体の中の磁気共鳴の検出を可能にする周波数で前記マイクロコイルを付勢するステップと、
(d)流動する前記流体中の前記少なくとも第1の磁性粒子−標的複合体および第2の磁性粒子−標的複合体を個別的に検出するために前記マイクロコイルから受信された信号を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項35】
請求項26〜34のいずれか記載の方法において、
前記信号処理は、前記マイクロコイルから受信された前記信号の中の複数の周波数成分および複数の振幅成分を特定することと、前記複数の振幅成分および複数の周波数成分を前記マイクロコイルの軸方向長さに沿う複数の位置における流動する前記流体中の標識化されているエンティティの存在または不存在と相関させることとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−501196(P2011−501196A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531245(P2010−531245)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/080983
【国際公開番号】WO2009/055587
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(509268406)アブクマー インコーポレイテッド (2)
【出願人】(509317863)ナノエムアール インコーポレイテッド (1)