説明

マイクロチップおよびマイクロ総合分析システム

【課題】2以上の液体を効率よく混合し、反応を促進させることが可能なマイクロ総合分析システムおよびそれに用いられるマイクロチップを提供することを目的とする。
【解決手段】反応試薬を含む2以上の液体をマイクロポンプにより送液して合流させる合流部と、該合流部の下流に設けられ上記の液体同士の反応が行われる反応部と、該反応部のさらに下流にある大気連通口とを少なくとも備えたマイクロチップにおいて、上記の2以上の液体を合流させた後、上記大気連通口を閉じ、上記マイクロポンプの少なくとも1つの作動開始および作動停止を繰り返すことにより、流路中の液体が前後動し、上記の液体同士の反応が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査などに用いられるマイクロ総合分析システムにおいて、2以上の液体を良好に混合し、反応を効率化することが可能なマイクロチップおよびそれを機能的に支援するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、セ
ンサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(特許文献
1)。これは、μ−TAS(Micro Total Analysis System:マイクロ総合分析システム
)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab-on-chips)、バイオチップなどと呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野などで、その応用が期待されている。このような、自動化、高速化および簡便化された分析チップの使用は、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされてきた遺伝子検査に対して、コスト、必要試料量、所要時間を抑えるのみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とするなど、多大な恩恵をもたらすと言える。
【0003】
各種の分析、検査ではこれらの分析用チップにおける分析の定量性、解析の精度、経済性などが重要視される。そのためシンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立することが課題である。精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子が求められており、好適なマイクロポンプシステムおよびその制御方法を本発明者らはすでに提案している(特許文献2〜4)。
【0004】
上記の分析に用いられるマイクロチップにおいては、必要とされる試料量および試薬量が少なくてすむよう、分析の微量化を図ることが大きな課題である。これを実現するには、混合流路もしくは反応室で液体同士(例えば検体および試薬)を効率よく混合する必要がある。そのための混合手段を別途に付設することも可能であるが、チップのサイズ、形態からの制約を受けやすい。微細流路内での混合および反応は、反応物質の拡散が律速となり、長い流路にしても反応に至るまでの物質の拡散距離が長くなる。特に濃度が大幅に異なる2以上の液体を混合する場合には、混合の巧拙は反応効率にも影響する。
【特許文献1】特開2004-28589号公報
【特許文献2】特開2001-322099号公報
【特許文献3】特開2004-108285号公報
【特許文献4】特開2004-270537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこれらの実状に鑑みてなされたものであり、2以上の液体を効率よく混合し、反応を促進させることが可能なマイクロ総合分析システムおよびそれに用いられるマイクロチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロ流体システムは、
反応試薬を含む2以上の液体をマイクロポンプにより送液して合流させる合流部と、該合流部の下流に設けられ上記の液体同士の反応が行われる反応部と、該反応部のさらに下流にある大気連通口とを少なくとも備えており、
上記の2以上の液体を合流させた後、上記大気連通口を閉じ、上記マイクロポンプの少
なくとも1つの作動開始および作動停止を繰り返すことにより、流路中の液体が前後動し、上記の液体同士の反応が促進されるマイクロチップと、
システム本体と
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、該マイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
大気連通口を開閉する装置と、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能と大気連通口を開閉する装置とを制御する制御装置と、
を備え、
該マイクロポンプが、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプであることを特徴としている。
【0007】
上記の前後動の後、閉じていた大気連通口を開けることにより、流路中の液体をさらに下流に送液することが可能である。
上記の2以上の液体とは、例えば、検体もしくは検体から抽出したDNAの溶液または検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAの溶液と、反応試薬を含む試薬溶液とであり、これらの液体により微細流路において遺伝子増幅反応が行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、2種類以上の液体を高い効率で混合し、効率よく反応を行うことが可能なマイクロチップが提供される。また、例えば、検体もしくは検体から抽出したDNA、または検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAを含む検体と、反応試薬を含む試薬液体との混合による遺伝子増幅反応を行う遺伝子検査のために好適に用いることができるマイクロ総合分析システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書において、「マイクロチップ」は、合成や検査など様々な用途に用いられるマイクロ総合分析システムにおけるチップのことであるが、特に生体物質を対象とした検査に用いられるものについては「マイクロチップ」と呼ぶこともある。「流路エレメント」とは、マイクロチップに設置される機能部品をいう。「微細流路」は、本発明のマイクロチップに形成された微小な溝状の流路のことであるが、この流路と連通している試薬類などの収容部、反応部もしくは検出部が、容量の大きい広幅の液溜め状に形成されている場合も、これらの部位を含めて「微細流路」ということがある。微細流路内を流れる流体は、実際は液体であることが多く、具体的には、各種の試薬類、試料液、変性剤液、洗浄液、駆動液などが該当する。「遺伝子」とは、何らかの機能を発現する遺伝情報を担うDNAまたはRNAをいうが、単に化学的実体であるDNA、RNAの形でいうこともある。分析対象である標的物質を「アナライト」ということもある。
【0010】
本発明は、種々の実施の形態において、本発明の趣旨に沿って任意の変形、変更が可能であり、それらは本発明に含まれる。すなわち、本発明のマイクロ総合分析システムの全体または一部について、構造、構成、配置、形状形態、寸法、材質、方式、方法などを本発明の趣旨に合致する限り、種々のものにすることができる。
【0011】
マイクロ総合分析システム
図1は、本発明のマイクロ総合分析システムの一実施形態における構成を示した概念図である。図示したように、かかる実施形態では、マイクロチップ2とともに、このチップ
を収容する装置として、システム装置本体1がある。この装置は、反応のために用いられ
るペルチェ3(冷却装置)と、ヒーター4(加熱装置)と、送液用のマイクロポンプ11、駆動液タンク10およびチップ接続部を有するマイクロポンプユニットと、それらの送液、温度、反応の各制御に関わる制御装置(図示せず)と、光学検出系(ホトダイオード5、L
ED6など)を含み、測定データの収集および処理をも受け持つ検出処理装置(図示せず
)とを備えている。マイクロ総合分析システムは、マイクロチップ2以外の構成要素を一
体化してシステム装置本体1とし、マイクロチップ2をこのシステム装置本体1に着脱する
ように構成することが望ましい。
【0012】
マイクロチップ2は、一般に検査チップ、分析チップ、マイクロリアクタ・チップなど
とも称されるものと同等である。通常、このチップの縦横のサイズは数十mm、高さは数mm程度である。そこには、微細加工技術により微細流路が形成されている。微細流路に連通している試薬収容部内、検体収容部内にある各種の液体は、マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部12を介して各収容部に連通された上記マイクロポンプ11によって送液される。
【0013】
マイクロポンプは、マイクロチップ2に設けることも可能であるが、通常、複数のマイ
クロポンプがシステム装置本体1に組み込まれる。これら複数のマイクロポンプと、マイ
クロチップ2に連通させるための流路開口を有するチップ接続部とを含むマイクロポンプ
ユニットが、システム装置本体1のベース本体内に配置されている。図示したように、マ
イクロチップ2をシステム装置本体1に装着し、面同士で重ね合わせることにより、該チップのポンプ接続部をマイクロポンプユニットにあるチップ接続部に接続するようになっている。
【0014】
マイクロポンプ11を制御する電気制御系統の装置は、流量の目標値を設定し、それに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給している。後述するように、そうした制御を受け持つ制御装置についても、本発明システムの装置本体に組み込んで、マイクロチップ2のポ
ンプ接続部をマイクロポンプユニットのチップ接続部に接続させた場合に作動制御させるようにしてもよい。
【0015】
光学的検出、データの収集および処理を受け持つユニットである検出処理装置(図示せず)は、例えば可視分光法、蛍光測光法などの手法が適用される場合、その光学的測定の手段として特に限定されないが、LED、光電子増倍菅、フォトダイオード、CCDカメラなどがその構成要素としてシステム装置本体内に適宜設置されることが望ましい。
【0016】
ペルチェ3およびヒーター4は、マイクロチップの特定の部位に当接するよう配置され、これらの部位の冷却または加熱を行う。
少なくとも前記のマイクロポンプユニットの機能を制御する制御装置(図示せず)が、本発明システムの装置本体に組み込まれている。この制御装置は、さらに、加熱装置および/または冷却装置による温度調節を管理する機能、検出処理装置における測定データの記録および処理機能などを統合して担い、システムを統括的に制御支配するようにしてもよい。マイクロポンプ11による送液の順序、容量、タイミングの制御、あるいは加熱装置および/または冷却装置による温度制御などの諸条件は、あらかじめプログラムの内容として設定しておき、マイクロ総合分析システムに搭載されたマイクロコンピュータ等のソフトウェアに従ってそれらの制御を行うことができる。
【0017】
測定試料である検体の前処理、反応および検出の一連の分析工程は、前記のマイクロポ
ンプ11、検出処理装置および制御装置とが一体化されたシステム装置本体1にチップを装着した状態で行なわれる。装着したチップに試料を注入してから、あるいは試料を注入したチップを装置本体に装着してから分析を開始してもよい。試料および試薬類の送液、前処理、混合に基づく所定の反応および光学的測定が、一連の連続的工程として自動的に実施され、測定データが、必要な条件、記録事項とともにファイル内に格納される形態が望ましい。
【0018】
従来の分析チップでは、異なる分析または合成などを行う場合には、変更される内容に対応するマイクロ流体デバイスをその都度構成する必要があった。これとは異なり、本発明のマイクロ総合分析システムでは脱着可能な上記チップのみ交換すればよい。各流路エレメントの制御変更も必要となる場合には、装置本体に格納された制御プログラムを適宜変更すればよい。
【0019】
マイクロポンプユニット
本発明のシステム装置本体は、ベース本体とともに、そのベース本体内に配置され、マイクロチップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、複数のマイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットを構成単位として有している。マイクロポンプは、例えば複数のマイクロポンプがフォトリソグラフィー技術などにより形成されたチップ状のポンプユニットとして、システム装置本体に組み込まれていてもよい。
【0020】
マイクロポンプとしては、アクチュエータを設けた弁室の流出入孔に逆止弁を設けた逆止弁型のポンプなど各種のものが使用できるが、ピエゾポンプを用いることが好適である。このピエゾポンプは、概略すると、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、該アクチュエータを駆動する駆動装置とを備えており、ポンプの駆動電圧波形、電圧値、および周波数を変えることによって、液体の送液方向、送液速度を制御できるようになっている。このようなマイクロポンプおよびそれを用いたシステムを本発明者らはすでに提案しており、その詳細は特開2001-322099号公報、特開2004-108285号公報、特開2004-270537号公報などを参照することができる。
【0021】
図6(a)は、ピエゾポンプの一例を示した断面図、図6(b)は、その上面図である。このマイクロポンプには、第1液室48、第1流路46、加圧室45、第2流路47、および第2液室49が形成された基板42と、基板42上に積層された上側基板41と、上側基板41上に積層された振動板43と、振動板43の加圧室45と対向する側に積層された圧電素子44と、圧電素子44を駆動するための駆動部(図示せず)とが設けられている。この駆動部と、圧電素子44表面上の2つの電極とは、フレキシブルケーブルなどによる配線で接続されており、かかる接続を通じて当該駆動部の駆動回路によって圧電素子44に特定波形の電圧を印加する構成となっている。図6の(a)(b)には図示されていないが、第1液室48には、駆動液タンク10につながるポート72が設けられており、その第1液室は、「リザーバ」の役割を演じ、ポート72で駆動液タンク10から駆動液の供給を受けている。第2液室49はマイクロポンプユニットの流路を形成し、その流路の先にチップ接続部のポート73があり、マイクロチップの「ポンプ接続部」12とつながる。
【0022】
図6(c)に、このポンプの他の例を示した。この例では、ポンプをシリコン基板71、圧電素子44、および図示しないフレキシブル配線から構成している。加圧室45、ダイヤフラム43、第1流路46、第1液室48、第2流路47、および第2液室49が形成されている。第1液室48にはポート72が、第2液室49にはチップ接続部のポート73がそれぞれ設けられており、例えばこのピエゾポンプを図1のチップ2とは別体とする場合には、このポート73を介してマイクロチップ2のポンプ接続部12と連通する。例えば、ポート72、73が穿孔さ
れた基板74と、マイクロチップのポンプ接続部近傍とを上下に重ね合わせることによって、ポンプをマイクロチップ2に接続することができる。また、前述したように、1枚のシリコン基板に複数のポンプを形成することも可能である。この場合、チップ2と接続したポートの反対側のポートには、駆動液タンク10が接続されていることが望ましい。ポンプが複数個ある場合、それらのポートは共通の駆動液タンクに接続されてもよい。
【0023】
上記のマイクロポンプと、図1に示した本発明のマイクロ総合分析システムとの関係を説明する。図1の例では、マイクロポンプ11は、マイクロチップ2とは別の装置としてシ
ステム装置本体1に属し、駆動液タンク10と連通している。マイクロポンプ11は、マイク
ロチップ2とは、両者が互いに所定の形態で接合したときに、マイクロポンプユニットに
あるチップ接続部のポート73と、マイクロチップにあってマイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部12とが連結してマイクロチップの流路と連通するようになる。
【0024】
なお、別の態様として、マイクロポンプそのものもマイクロチップ上に組み込むことも可能である。特にチップ上の流路が比較的単純であり、繰り返し使用を前提とするような目的または用途、例えば化学合成反応用のチップとする場合にはこの形態を採り得る。
【0025】
マイクロチップ
本発明のマイクロチップは、化学分析、各種検査、試料の処理・分離、化学合成などに利用されるように、各流路エレメントまたは構造部が、機能的に適当な位置に微細加工技術により配設されている。このチップには、流体収容部として検体液を収容する検体収容部のほか、各試薬を収容するための複数の試薬収容部が設けられ、この試薬収容部には所定の反応に用いる試薬類、洗浄液、変性処理液などが収容される。これは、場所や時間を問わず迅速に検査ができるように、予め試薬が収容されていることが望ましいためである。チップ内に内蔵される試薬類は、蒸発、漏失、気泡の混入、汚染、変性などを防止するため、その収容部の表面が密封処理されている。
【0026】
上記のチップにおける好ましい態様は、溝形成基板および被覆基板からなる基本的基板を構造として有する。少なくとも溝形成基板には、ポンプ接続部、弁基部および液溜部(試薬収容部、検体収容部などの各収容部、廃液貯留部)、送液制御部、逆流防止部、試薬定量部、混合部などの構造部を含む、微細流路が形成されている。被覆基板は、少なくとも溝形成基板における上記の構造部、流路および検出部を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていてもよい。
【0027】
・素材
マイクロチップは、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐熱性、廉価性などに優れていることが望まれており、チップの構造、用途、検出方法などを考慮して、チップの材料を適切に選択することが求められる。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0028】
例えば、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップはディスポーサブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラスチック樹脂、なかでも、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレン、ポリプロピレンが好ましく用いられる。
【0029】
分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝
導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域にこれらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0030】
また、微細流路の検出部では、蛍光物質または呈色反応の生成物などの光学的な検出が行われるため、この部位の基板には光透過性の材料を用いる必要がある。このような材料としては、アルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類が使用可能である。
【0031】
・微細流路
マイクロチップの微細流路は、基板上に目的に応じて予め設計された流路配置に従って形成される。流体が流れる流路は、例えば幅数十〜数百μm、好ましくは50〜100μm、深さ25〜200μm程度、好ましくは50〜100μmに形成されるマイクロメーターオーダー幅の微細流路である。流路幅が50μm未満であると、流路抵抗が増大し、流体の送出および検出上不都合である。幅500μmを超える流路ではマイクロスケール空間の利点が薄まる。
【0032】
微細流路の形成方法は、従来の微細加工技術を用いることができるが、典型的にはフォトリソグラフィ技術が好適である。この技術により、感光性樹脂への微細構造の転写および不要部分の除去などが行われ、微細流路が形成される。この際の溝成形基板の材料となる感光性樹脂としては、サブミクロンの構造も正確に転写でき、機械的特性の良好なプラスチックが好ましく用いられる。ポリスチレン、ポリジメチルシロキサンなどは形状転写性に優れる。また、必要であれば射出成形、押し出し成形などによる加工も使用してもよい。
【0033】
本発明のマイクロチップは、少なくとも反応試薬を含む2以上の液体をマイクロポンプにより送液して合流させる合流部と、該合流部の下流に設けられ上記の液体同士の反応が行われる反応部と、該反応部のさらに下流にある大気連通口とを備えている。
【0034】
図2は、本発明のマイクロチップの一実施態様における、検体と試薬との混合および反応を行う流路構成の概略を示した図である。検体収容部31および試薬収容部32の上流にポンプ接続口(図示せず)が存在しており、このポンプ接続口にはマイクロポンプ(図示せず)が接続されている。検体収容部31からマイクロポンプにより送液される検体と、試薬収容部32からマイクロポンプにより送液される試薬液体は、Y字流路の合流部33で合流し、後続する微細流路34に送液される。微細流路34は、例えば、幅が0.2mm、深さが0.2mmである。この微細流路における反応部35(図中点線で囲った領域の流路)内では、例えばICAN(Isothermal chimera primer initiated nucleic acid amplification)法による遺伝子増幅反応が行われる。図示されていないが、一般的にはこの反応部35の下流に、増幅された遺伝子を検出するための検出部が配置されている。
【0035】
微細流路の最下流には、開閉の対象とする大気連通口36がある。大気連通口36は、微細流路中の気体を逃がす役目を果たす開口部である。水などの水性液体が漏出することを防止する点から、例えば大気連通口36の手前の流路の一定区間が液体を通しにくい構造であったり、廃液貯留部が設けられていることもある。本発明のマイクロチップにおいて、反応部から開閉の対象とする大気連通口36にいたるまでの微細流路は、大気連通口以外の方面に液体が流下していくことのないよう、実質的に分岐していないことが求められる。
【0036】
大気連通口開閉装置
前述のように、本発明のマイクロチップは、典型的には、別途のシステム本体に装着するようにして使用するため、マイクロチップの大気連通口を開閉する装置(大気連通口開閉装置)も、このシステム本体に備えられていることが望ましい。
【0037】
図3(a)、(b)および(c)は、大気連通口開閉装置により大気連通口が閉じられた状態の概略を示した図である。マイクロチップ2にある大気連通口36を閉じる場合、大
気連通口開閉装置56がマイクロチップの大気連通口36の開口部を覆うよう作動し、大気連通口36を開ける場合は、この装置が外れるように作動する。図3(b)に示すように、部材の一部が大気連通口の中に入り込む態様も取りうる。また、図3(c)に示すように、Oリング等の密着部材を用いることも可能である。
【0038】
チップに当接する部材は、チップの素材に応じて、これと密着しやすい素材を用いることが好ましい。また、この部材の形状も、装置の態様に応じた適切なものであればよい。
【0039】
往復運動
マイクロチップにおける通常の送液を行う際には、大気連通口は開かれている。流路内に存在する空気などの気体は液体に押され、下流にある大気連通口から抜けてゆくため、液体は前進することが可能である。
【0040】
ここで、大気連通口を閉じた状態でマイクロポンプを作動させると、流路内の液体は気体を圧縮しながら前進する。その後、マイクロポンプを停止すると、圧縮されていた気体が液体を押し戻し、液体は元の位置まで後退する。
【0041】
ただし、液体の下流に複数の大気連通口が存在する場合は、それら全ての大気連通口を閉じる必要がある。また、液体の下流に撥水バルブや試薬収容部などが存在する場合も、同様に前後動を行うことは可能である。
【0042】
液体の前後動は、上述したような原理に基づき、マイクロポンプを作動させて前進送液を一定時間行った後、作動を停止させ、この作動および停止を繰り返すことにより行われる。送液時間および作動と停止の間隔は、目的とする反応の種類、流路の大きさや液量、ポンプの性質などに応じて好ましいように、適宜調節することが可能である。例えば、幅が0.2mm、深さが0.2mmの微細流路において、液量が25μlの混合液によるICAN反応(タカラバイオ(株)、登録商標)を行う際には、前後動の振幅を25mm、周期を5秒程度とし、所望の回数行わせることができる。
【0043】
なお、大気連通口を閉じた後、上記とは逆に液体が後退するようマイクロポンプを作動させ、その後マイクロポンプを停止するようにしても、同じように前後動を行わせることが可能である。
【0044】
上記のようにして反応部で液体の前後動を繰り返した後、液体をさらに前進させて下流にある検出部に送液するためには、閉じていた大気連通口を開ければよい。
液体を前後動させることが可能なマイクロポンプを用いて、流路内の液体の前進および後退を繰り返した場合、ポンプ特性のバラツキ(例えば前進用および後退用の送液量の違い)や流路の濡れ具合のバラツキなどにより、液体は徐々に前進または後退してゆき、所定外の場所に流れる不具合が発生することがある。しかし、上述のような大気連通口の開閉を用いた方法では、ポンプ特性や流路の濡れ具合による影響を受けず、液体がほとんど同じ位置で前進および後退を繰り返す。
【0045】
また、マイクロポンプだけによる前後動を行うためには、前進用および後退用の2種類の駆動波形を用意しなくてはならないが、上述のような方法ならば、前進用の駆動波形のみで行うことも可能であり、より簡易な構成のマイクロポンプを使用することもできる。
【0046】
・反応促進効果
マイクロチップにおいて、一例としてICAN法による遺伝子増幅反応を行う場合を考
える。合流部からの各液体が層流の形で微細流路内を流れると、微細流路の幅が狭いために拡散により迅速に混合される一方、増幅対象のDNAへの反応試薬の供給が、流路に沿った1次元方向に限定される。このため、合流液が静的な状態では、両液の界面付近でお互いに近接しているDNAおよび試薬同士が反応したのちの進行が遅くなりがちであり、増幅に寄与しない反応試薬を多数残すこととなる。
【0047】
本発明による混合液の前後動により、微細流路内の試薬液体と検体とがアクティブに拡散混合されるとともに、流路の中心部分と壁面近傍との液体の流速勾配によって(流路中央部の液体の流れは壁面近傍の液体の流れよりも速い)、検体への試薬の供給、あるいは反応が起こっている部分への試薬の供給を促進することができる。したがって、例えばDNAと試薬とが出会う確率が高くなり、遺伝子増幅反応の速度を向上させることができる。
【0048】
制御システム
図4は、本発明におけるマイクロポンプおよび大気連通口開閉装置の制御系統を示した図である。図示したように、マイクロポンプ51は増幅器52、D/A変換器53を介してマイクロコンピュータ54に接続されている。大気連通口開閉装置56も同様に、D/A変換器53を介してマイクロコンピュータ54に接続されている。
【0049】
マイクロコンピュータ54はタイマー55を搭載しており、予めプログラムされたタイミングでマイクロポンプ51の作動と停止、大気連通口開閉装置56による開閉動作を制御する。これらの動作のパターンは、液体の前後動の所望の態様に応じて適宜調整することができる。
【0050】
本発明においては、検体および試薬を混合させた混合液を前後動させる場合、収容部および試薬収容部それぞれの上流に位置するマイクロポンプを同調させて、作動開始および作動停止させればよい。また、例えば試薬収容部と合流部の間に弁(例えば疎水性バルブ、能動弁など)が設置されており、合流部から試薬収容部側への逆流を防止することが可能なマイクロチップにおいては、検体収容部側のマイクロポンプだけを用いて液体を前後動させることも可能である。
【0051】
以上の説明においては、検体と試薬とを混合させ、ICAN法による遺伝子増幅反応を行う例をしばしば挙げたが、これに限らず、マイクロチップにおいて混合および反応させることが可能な様々な液体同士についても同様のことがいえる。また、3以上の液体における場合でも、適切な微細流路や制御システム等を用いることにより、やはり同様に行うことが可能である。
【0052】
分析の実施態様
本発明のマイクロ総合分析システムは、特に遺伝子または核酸(DNA、RNA)の検査に好適に用いることができる。その場合、マイクロ流体チップの微細流路は、PCR法またはICAN(Isothermal chimera primer initiated nucleic acid amplification)法による遺伝子増幅に適した構成とされるが、遺伝子検査以外の生体物質についても基本的な流路構成はほぼ同一になるといえる。通常は検体前処理部、試薬類、プローブ類を変更すればよく、その場合、送液エレメントの配置、数などは変化するであろう。当業者であれば、例えばイムノアッセイ法のために必要な試薬類などをマイクロ流体チップに搭載し、若干の流路エレメントの変更、仕様の変更を含む修正を施すことにより、分析の種類を容易に変更することができる。ここにいう遺伝子以外の生体物質とは、各種の代謝物質、ホルモン、タンパク質(酵素、抗原なども含む)などをいう。
【0053】
本発明のマイクロ流体チップの好ましい一態様では、一つのチップ内において、
検体もしくは検体から抽出したアナライト(例えば、DNA、RNA、遺伝子)が注入される検体収容部と、
検体の前処理を行う検体前処理部と、
プローブ結合反応、検出反応(遺伝子増幅反応または抗原抗体反応なども含む)などに用いる試薬が収容される試薬収容部と、
ポジティブコントロールが収容されるポジティブコントロール収容部と、
ネガティブコントロールが収容されるネガティブコントロール収容部と、
プローブ(例えば、遺伝子増幅反応により増幅された検出対象の遺伝子にハイブリダイズさせるプローブ)が収容されるプローブ収容部と、
これらの各収容部に連通する微細流路と、
前記各収容部および流路内の液体を送液する別途のマイクロポンプに接続可能なポンプ接続部と、が設けられている。
【0054】
図5は、このようなマイクロ流体チップにおける微細流路の構成の一実施態様を示す。マイクロ流体チップのポンプ接続部12を介して接続されたマイクロポンプ11は、検体収容部20に収容された検体もしくは検体から抽出した生体物質(例えばDNAまたはそれ以外の生体物質)と、試薬収容部18に収容された試薬とを流路15へ送液する。これらを微細流路の反応部位、例えば遺伝子増幅反応(タンパク質の場合、抗原抗体反応など)の部位で混合して反応させた後、その下流側流路にある検出部22aへ、この反応液を処理した処理
液と、プローブ収容部21fに収容されたプローブとを送液し、流路内で混合してプローブ
と結合(またはハイブリダイゼーション)させ、この反応生成物に基づいて生体物質の検出を行う。また、ポジティブコントロール収容部21hに収容されたポジティブコントロー
ルおよびネガティブコントロール収容部21iに収容されたネガティブコントロールについ
ても、上記と同様にして反応および検出を行う。
【0055】
・検体
マイクロ流体チップの検体収容部は、検体注入部に連通し、検体の一時収容および混合部への検体供給を行う。検体の注入は、例えば検体収容部の上面に設けられた検体注入部から行う。この検体注入部は、ゴム状材質などの弾性体からなる栓が形成されているか、あるいはポリジメチルシロキサン(PDMS)などの樹脂、強化フィルムで覆われていることが望ましい。例えば、当該ゴム材質の栓を突き刺したニードルまたは蓋付き細孔を通したニードルでシリンジ内の検体を注入する。
【0056】
遺伝子検査において対象となる検体は、DNAまたはRNAを含有する試料であり、例えば、全血、血漿、血清、バフィーコート、尿、糞便、唾液、喀痰などの生体由来の試料、ウィルス、細菌、カビ、酵母、動植物の細胞などが挙げられる。また、これらの試料から従来技術により単離したDNAまたはRNAを用いてもよい。
【0057】
必要とされる検体の量は、従来の装置を使用して行う手作業の場合に比べて極めて少なくてすむ。例えば、縦横の長さが数cmのチップに対しては、2〜3μL程度の血液検体を注入するだけでよい。DNAとしては、0.001〜100ngである。
【0058】
また、検体収容部に注入された検体については、必要に応じて、試薬との混合前に、予め流路に設けられた検体前処理部にて、前処理を行ってもよい。好ましい検体前処理として、アナライトの分離または濃縮、除タンパクなどが含まれる。例えば、1%SDS混合液などの溶菌剤を用いて溶菌を行い、放出されたDNAをビーズ、吸着用樹脂またはフィルターの膜面に吸着させる、DNA抽出処理が挙げられる。
【0059】
・試薬
マイクロチップの試薬収容部には、目的とする反応方法や検出方法に応じた必要な試薬
類が予め所定の量だけ封入されている。したがって使用時にその都度、試薬を必要量充填する必要はなく、即使用可能の状態になっている。検体中の生体物質を分析する場合に必要な試薬類は、従来と同じものである。例えば、検体に存在する抗原を分析する場合、それに対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を含有する試薬が使用される。抗体は、好ましくはビオチンおよびFITCで標識されている。遺伝子検査用の試薬類としては、遺伝子増幅に用いられる各種試薬、検出に使用されるプローブ類、発色試薬などが挙げられ、必要であれば、前記の検体前処理に使用する前処理試薬も含まれる。
【0060】
・混合
マイクロポンプから駆動液を供給することにより各収容部から検体液および試薬液を押し出してこれらを合流させることによって、遺伝子増幅反応、アナライトのトラップまたは抗原抗体反応といった分析に必要な反応が開始される。
【0061】
試薬と試薬との混合、および検体と試薬との混合は、単一の混合部で所望の比率で混合してもよく、あるいは何れかもしくは両方を分割して複数の合流部を設け、最終的に所望の混合比率となるように混合してもよい。
【0062】
そうした反応部位の態様は特に限定されるものではなく、様々な形態および様式が考えられる。一例としては、試薬を含む2以上の液体を合流させる合流部(流路分岐点)から先に、各液が拡散混合される微細流路が設けられ、この微細流路の下流側端部から先に設けられた、該微細流路よりも広幅の空間からなる液溜めにおいて反応が行われる。
【0063】
・反応
DNA増幅方法としては、改良点も含めて各種文献などに記載され、多方面で盛んに利用されているPCR法を使用することができる。PCR法においては、3つの温度間で昇降させる温度管理が必要になるが、適切な装置を使用してマイクロ流体チップの温度制御を行えばよい。マイクロ流体チップにおいては、微細流路において熱サイクルを高速に切り替えることが可能であり、DNAの増幅を手作業で行うよりもはるかに短時間で行うことができる。また、近年開発されたICAN法(タカラバイオ(株)、登録商標)は、50〜65℃における任意の一定温度の下にDNA増幅を短時間で実施できるため(特許第3433929号)、本発明システムにおいても好適な増幅技術である。
【0064】
・検出
マイクロ流体チップの微細流路における反応部位よりも下流側には、アナライト、例えば増幅された遺伝子を検出するための検出部が設けられている。少なくともその検出部の基板は、光学的測定を可能とするために透明な材質、好ましくは透明なプラスチックとなっている。
【0065】
さらに微細流路上の検出部位に吸着させ固定化したビオチン親和性タンパク質(アビジン、ストレプトアビジン)は、プローブ物質に標識されたビオチン、または遺伝子増幅反応に使用されるプライマーの5’末端に標識されたビオチンと特異的に結合する。これにより、ビオチンで標識されたプローブまたは増幅された遺伝子が本検出部位でトラップされる。
アナライトまたは目的遺伝子のDNAを分析する方法は特に限定されないが、好ましい態様として基本的には以下の工程で行われる。
【0066】
(1a) 検体もしくは検体から抽出したDNA、あるいは検体もしくは検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAと、5’位置でビオチン修飾したプライマーとを、これらの収容部から下流の微細流路へ送液する。
【0067】
反応部位の微細流路内で、遺伝子を増幅する工程、微細流路内で増幅された遺伝子を含む増幅反応液と変性液とを混合して、増幅された遺伝子を変性処理により一本鎖にし、これと末端をFITC(fluorescein isothiocyanate)で蛍光標識したプローブDNAとをハイブリダイズさせる。
【0068】
次いで、ビオチン親和性タンパク質を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、前記増幅遺伝子を微細流路内の検出部位にトラップする(増幅遺伝子を検出部位でトラップした後に蛍光標識したプローブDNAとをハイブリダイズさせてもよい。)。
【0069】
(1b) 検体に存在する抗原、代謝物質、ホルモンなどのアナライトに対する特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬を検体と混合する。その場合、抗体は、ビオチンおよびFITCで標識されている。したがって抗原抗体反応により得られる生成物は、ビオチンおよびFITCを有する。これをビオチン親和性タンパク質(好ましくはストレプトアビジン)を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、ビオチン親和性タンパク質とビオチンとの結合を介して該検出部位に固定化する。
【0070】
(2) 上記微細流路内にFITCに特異的に結合する抗FITC抗体で表面を修飾した金コロイド液を流し、これにより固定化したアナライト・抗体反応物のFITCに、あるいは遺伝子にハイブリダイズしたFITC修飾プローブに、その金コロイドを吸着させる。
(3) 上記微細流路の金コロイドの濃度を光学的に測定する。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、マイクロ総合分析システムの一実施形態における概略構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明のマイクロチップの一実施態様における、検体と試薬との混合および反応を行う流路構成の概略を示した図である。
【図3】図3(a)、(b)および(c)は、大気連通口開閉装置により大気連通口が閉じられた状態の概略を示した図である。
【図4】図4は、本発明におけるマイクロポンプおよび大気連通口開閉装置の制御系統を示した図である。
【図5】図5は、マイクロチップにおける微細流路の構成の一実施態様を示す図である。
【図6】図6(a)は、ピエゾポンプの一例を示した断面図、図6(b)は、その上面図である。図6(c)は、ピエゾポンプの他の例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 本体
2 マイクロチップ
3 ペルチェ(冷却装置)
4 ヒーター(加熱装置)
5 ホトダイオード
6 LED
10 駆動液タンク
11 マイクロポンプ
12 ポンプ接続部
13 送液制御部
15 微細流路
15a〜15d 微細流路
16 逆止弁
17a 試薬貯留部
17b 検体貯留部
18 試薬収容部
18a〜18c 試薬収容部
20 検体収容部
21a 反応停止液収容部
21b 変性液収容部
21c ハイブリダイゼーションバッファー収容部
21d 洗浄液収容部
21e 金コロイド収容部
21f プローブDNA収容部
21g インターナルコントロール用プローブDNA収容部
21h ポジティブコントロール収容部
21i ネガティブコントロール収容部
21jバッファー収容部
22 検出部
23 廃液貯留部
31 検体収容部
32 試薬収容部
33 合流部
34 微細流路
35 反応部
36 大気連通口
41 上側基板
42 基板
43 振動板
44 圧電素子
45 加圧室
46 第1流路
47 第2流路
48 第1液室
49 第2液室
51 マイクロポンプ
52 増幅器
53 D/A変換器
54 マイクロコンピュータ
55 タイマー
56 大気連通口開閉装置
57 Oリング
71 シリコン基板
72 ポート
73 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応試薬を含む2以上の液体をマイクロポンプにより送液して合流させる合流部と、該合流部の下流に設けられ上記の液体同士の反応が行われる反応部と、該反応部のさらに下流にある大気連通口とを少なくとも備えたマイクロチップであって、
上記の2以上の液体を合流させた後、上記大気連通口を閉じ、上記マイクロポンプの少なくとも1つの作動開始および作動停止を繰り返すことにより、流路中の液体が前後動し、上記の液体同士の反応が促進されることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項2】
上記の前後動の後、閉じていた大気連通口を開け、流路中の液体をさらに下流に送液することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
上記の2以上の液体が、検体もしくは検体から抽出したDNAの溶液または検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAの溶液と、遺伝子増幅反応に用いられる試薬を含有する溶液とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロチップと、
システム本体と
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、該マイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
大気連通口を開閉する装置と、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能と大気連通口を開閉する装置とを制御する制御装置と、
を備え、
該マイクロポンプが、
流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプであることを特徴とするマイクロ総合分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139500(P2007−139500A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331500(P2005−331500)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】