説明

マイクロチップ及びマイクロチップを用いた細胞評価方法

【課題】 細胞分泌物質を介した多様な細胞間相互作用を生体外において正確且つ簡便に再現し、評価することができるマイクロチップ及び当該マイクロチップを用いた細胞評価方法を提供する。
【解決手段】 細胞を保持するための第一細胞保持部と、当該第一細胞保持部に溶液を流通させるための第一流路と、が形成された第一基板を有する第一ユニットチップと、細胞を保持するための第二細胞保持部と、当該第二細胞保持部に溶液を流通させるための第二流路と、が形成された第二基板を有する第二ユニットチップと、を含み、前記第一ユニットチップと前記第二ユニットチップとが、前記第一流路と前記第二流路とを連通させるように、互いに着脱可能に連結されている、マイクロチップとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を評価するためのマイクロチップ及びマイクロチップを用いた細胞評価方法に関し、特に、細胞分泌物質を介した細胞間相互作用の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトや動物の生体は様々な種類の細胞から構成されており、これら種々の細胞は生体内において互いに複雑な相互作用を行いながら多様な機能を発揮している。
【0003】
例えば、生体が細菌やウイルスに感染した場合には、血液中に存在するある種の免疫系細胞(例えば、リンパ球等)が当該感染を感知して特定の物質(例えば、サイトカイン等)を血液中に分泌する。そして、この分泌物質に接触した他の種類の免疫系細胞が活性化することにより、細菌やウイルスの排除が行われる。
【0004】
また、例えば、創傷治癒の過程においては、創傷の発生を感知した細胞が特定の物質(例えば、増殖因子等)を分泌する。そして、この分泌物質に接触した創傷部位周辺の細胞の増殖等が促進されることにより、当該創傷部位の修復、再生が行われる。
【0005】
このように生体内においては、種々の細胞が分泌する様々な物質を介した複雑且つ巧妙な細胞間相互作用が行われている。
【0006】
したがって、このような細胞分泌物質を介した細胞間相互作用のメカニズムを生体外で再現することができれば、そのメカニズムを解明し、新たな医薬品の開発や、いわゆる再生医療に用いる細胞の生産等を効率的に行うことができると期待される。
【0007】
このような細胞分泌物質を介した細胞間相互作用を評価する方法としては、従来、例えば、所定の培養容器内において、微細孔が多数形成されたPTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)等からなる膜を介して2種類の細胞を培養する方法等があった(例えば、非特許文献1等)。
【非特許文献1】S.Murakami,H.Ijima,T.Ono,K.Kawakami;The International Journal of Artificial Organs,Vol.27,No.2,118−126(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の評価方法においては、2種類の細胞が所定厚みの膜によって物理的に隔離されているため、当該膜の片側で培養される細胞が分泌した物質を、当該膜の反対側で培養されている細胞に効率的に接触させることが難しかった。
【0009】
また、上記従来の評価方法においては、膜を介して一度に培養することができる細胞は2種類に限られてしまうため、生体内で実際に行われているような多様な細胞の組み合わせによる複雑な細胞間相互作用を再現し、評価することは困難であった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、細胞分泌物質を介した多様な細胞間相互作用を生体外において正確且つ簡便に再現し、評価することができるマイクロチップ及び当該マイクロチップを用いた細胞評価方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するため、本発明の一実施形態に係るマイクロチップは、細胞を保持するための第一細胞保持部と、当該第一細胞保持部に溶液を流通させるための第一流路と、が形成された第一基板を有する第一ユニットチップと、細胞を保持するための第二細胞保持部と、当該第二細胞保持部に溶液を流通させるための第二流路と、が形成された第二基板を有する第二ユニットチップと、を含み、前記第一ユニットチップと前記第二ユニットチップとが、前記第一流路と前記第二流路とを連通させるように、互いに着脱可能に連結されている、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記第一細胞保持部と前記第二細胞保持部とは、細胞接着性表面を有する、こととしてもよい。
【0013】
また、前記第一ユニットチップは、前記第一流路に連通する流路が形成された第一連結部を有し、前記第二ユニットチップは、前記第二流路に連通する流路が形成された第二連結部を有し、前記第一連結部と前記第二連結部とは、前記第一流路と前記第二流路とを連通させるように、直接連結されている、こととしてもよい。
【0014】
また、流路を有する針形状の連結部材を含み、前記連結部材の一端が前記第一基板に穿刺されると共に、当該連結部材の他端が前記第二基板に穿刺されることにより、当該連結部材の流路を介して前記第一流路と前記第二流路とが連通している、こととしてもよい。
【0015】
また、前記第一ユニットチップと前記第二ユニットチップとを含むユニットチップセットを複数有する、こととしてもよい。
【0016】
また、前記第一基板と前記第二基板とは、互いに同一の外形状である、こととしてもよい。
【0017】
また、前記第一細胞保持部と前記第二細胞保持部とに細胞が保持されている、こととしてもよい。この場合、前記第一細胞保持部に保持されている細胞と、前記第二細胞保持部に保持されている細胞と、は互いに異なる属性の細胞である、こととしてもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る細胞評価方法は、前記マイクロチップを準備する準備工程と、前記準備工程で準備された前記マイクロチップの前記第一細胞保持部から前記第二細胞保持部へ溶液を流通させて、前記第一細胞保持部に保持されている細胞が分泌した物質を、前記第二細胞保持部に保持されている細胞に接触させる接触工程と、前記接触工程において前記第一細胞保持部に保持されている細胞が分泌した物質を接触させた、前記第二細胞保持部に保持されている細胞の応答を評価する評価工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、前記評価工程において、前記第二細胞保持部に保持されている細胞の応答として、当該細胞の形態、当該細胞の数、又は当該細胞が分泌した所定物質の量、のうち少なくとも一つを評価する、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生体内で行われているような複雑な細胞間相互作用を生体外で正確且つ簡便に再現するシミュレーションや、当該細胞間相互作用を引き起こす細胞分泌物質の迅速且つ簡便なスクリーニング等を可能とするマイクロチップ及び細胞評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態に係るマイクロチップ及び当該マイクロチップを用いた細胞間相互作用の評価方法について説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係るマイクロチップ(以下、本マイクロチップと呼ぶ。)の概要について説明する。
【0023】
本マイクロチップに特長的なことの1つは、細胞を保持するための細胞保持部と、当該細胞保持部に溶液を流通させるための流路と、が形成された基板を有する細胞ユニットチップを複数含むことである。本マイクロチップに含まれる複数の細胞ユニットチップは、その流路を互いに連通させ、細胞保持部間で互いに溶液を流通させることができる。
【0024】
このため、本マイクロチップにおいては、例えば、第一の細胞を細胞保持部内に保持する細胞ユニットチップから、第二の細胞を細胞保持部内に保持する他の細胞ユニットチップへ溶液を流通させることにより、当該第一細胞が当該溶液中に分泌した物質を、当該第二細胞に、直接、接触させることができる。
【0025】
すなわち、本マイクロチップにおいては、複数の細胞ユニットチップのうち、1つの細胞ユニットチップに保持された細胞が分泌した物質を、他の細胞ユニットチップに保持された細胞に、効率的に接触させることができるため、例えば、生体内で実際に行われているような、微量の細胞分泌物質を介した細胞間相互作用を正確且つ簡便に再現することができる。
【0026】
また、さらに本マイクロチップに特長的なことの1つは、複数の細胞ユニットチップが互いに着脱可能に連結されていることである。
【0027】
すなわち、本マイクロチップは、互いに別体として準備された複数の細胞ユニットチップを連結することにより構成することができると共に、必要に応じて、当該複数の細胞ユニットチップの連結を解除し、再び互いに別体の単一の細胞ユニットチップに分離することができる。
【0028】
このため、例えば、本マイクロチップに含まれる複数の細胞ユニットチップ間で溶液を互いに流通させることにより所定の細胞間相互作用を評価した後、当該複数の細胞ユニットチップのうち所望の細胞間相互作用が観察された一部の細胞ユニットチップを選択的に分離し、又は本マイクロチップにさらに他の細胞ユニットチップを追加的に連結することにより、当該さらなる細胞間相互作用の評価を行うことができる。
【0029】
すなわち、本マイクロチップに含まれる複数の細胞ユニットチップは、任意に、互いに連結し又は分離することができるため、本マイクロチップを用いた細胞評価方法において、例えば、順次、細胞ユニットチップの組み換えを行うことにより、複数の細胞を多様に組み合わせた連鎖的な細胞間相互作用等を迅速且つ簡便に評価することができる。
【0030】
また、例えば、本マイクロチップは、複数の細胞ユニットチップを直列的に連結したユニットチップセットを複数有し、当該複数のユニットチップセットを互いに並列に配置してなるものとすることもできる。
【0031】
この場合、例えば、本マイクロチップに含まれる各ユニットチップセットにおいて、互いに異なる条件下で細胞間相互作用を行わせることにより、所望の細胞間相互作用を再現するための条件や、所望の細胞間相互作用に関与する細胞分泌物質を特定するといった、細胞間相互作用に係るスクリーニングを迅速且つ簡便に行うことができる。
【0032】
次に、本マイクロチップの具体的内容について、図面を参照しつつ説明する。図1に、本マイクロチップに含まれる細胞ユニットチップの一例(以下、タイプI細胞ユニットチップ1と呼ぶ。)と、当該タイプI細胞ユニットチップ1と他の細胞ユニットチップとを連結するための連結部材の一例(以下、タイプI連結部材20と呼ぶ。)と、をそれぞれ示す。
【0033】
このタイプI細胞ユニットチップ1は、板状体として成形された基板10の上面10aに有底の窪みとして形成された細胞保持部11と、一端が当該細胞保持部11に開口し、他端が基板10の側面10bの一部に開口する有底の溝として形成された流入路12及び流出路13と、当該流入路12の基板側面10b側の開口部及び当該流出路13の基板側面10b側の開口部にそれぞれ有底の窪みとして形成された流入側連結部14及び流出側連結部15と、を有する。
【0034】
このタイプI細胞ユニットチップ1の細胞保持部11は、細胞を培養する培養基材として用いられる細胞保持部底面11aと、当該細胞保持部底面11aを囲む側面11bと、を有する。
【0035】
タイプI連結部材20は、タイプI細胞ユニットチップ1とは別体に成形され、タイプI細胞ユニットチップ1の流入側連結部14又は流出側連結部15と嵌合可能な外形状の筐体21と、当該筐体21の内部を貫通する連通路22と、を有する。
【0036】
このタイプI連結部材20の連通路22は、当該タイプI連結部材20がタイプI細胞ユニットチップ1の流入側連結部14又は流出側連結部15に嵌合した状態において、当該流入側連結部14又は流出側連結部15に開口する流入路12又は流出路13と連通するよう形成されている。なお、図1には、直方体形状のタイプI連結部材20を示しているが、これに限られず、例えば、円筒形状等に形成されたものであってもよく、流入側連結部14及び流出側連結部15は、このタイプI連結部材20と嵌合可能に形成される。
【0037】
タイプI細胞ユニットチップ1の基板10及びタイプI連結部材20の筐体21は、目的に応じて任意の材質で成形することができるが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル等の合成樹脂、PDMS(poly(Dimethylsiloxane))等のシリコン系樹脂、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)等の合成ゴム、天然ゴム、ガラス、セラミック、ステンレス鋼等の金属材料、等を好適に用いることができる。
【0038】
また、基板10又は筐体21のうち少なくとも一方は、互いに嵌合したときに高い密着性を実現できるよう、適度な弾性を有することが好ましく、例えば、PDMS等のシリコン系樹脂等により成形されたものを好適に用いることができる。
【0039】
また、基板10又は筐体21の透明度は、透明、半透明又は不透明のいずれであってもよいが、例えば、基板10の少なくとも一部、特に、細胞を保持する細胞保持部底面11a等は、当該細胞を光学的に観察するために、透明又は半透明であることが好ましい。
【0040】
また、細胞保持部11、流入路12、流出路13、流入側連結部14、流出側連結部15、連通路22等は、当該基板10又は筐体21の材質等に応じて選択される任意の加工方法を用いて形成することができ、例えば、マシニングセンタ等を用いた穿孔加工、レーザー等を用いた光微細加工、エッチング加工、エンボス加工等を用いて当該基板10上又は当該筐体21内に形成し、又は射出成形、プレス成形、ステレオリソグラフィー等を用いて当該基板10又は当該筐体21の成形時に形成することができる。
【0041】
また、細胞保持部11、流入路12、流出路13、流入側連結部14、流出側連結部15等は、上述の成形方法を用いて、例えば、所定厚さの基板10表面に、当該所定厚さより小さい深さの有底の窪みや溝等として形成することができ、又は基板10上に当該細胞保持部11、流入路12、流出路13、流入側連結部14、流出側連結部15に対応する形状の貫通穴を形成した後に、当該基板10の片面に、当該基板10と別体の他の部材を貼り合わせて底面とすることにより形成することができる。なお、この底面部材としては、基板10と同じ又は異なる任意の材質で成形された所定厚さの板状体やフィルム等を用いることができる。
【0042】
細胞保持部底面11aは、その少なくとも一部が細胞を培養する基材として用いられるため、細胞の保持に適した表面特性や表面形状を有して形成され、例えば、細胞接着性を示す表面として形成される。ここで、細胞接着性を示す表面とは、例えば、所定の溶液中において、細胞が接着するために好適な荷電状態や親水性・疎水性を示し、又は細胞が接着できる物質が固定化された表面である。細胞は、溶液中において、この細胞接着性表面上に沈降し、所定時間に亘って当該表面との接触状態を維持した場合には、例えば、経時的に、その形状を球形から比較的扁平な形状に変化させ、いわゆる伸展した状態で当該表面に接着することとなる。
【0043】
具体的に、この細胞接着性の細胞保持部底面11aは、例えば、上述したような成形方法を用いて細胞保持部11を窪みとして形成することにより、当該窪みの底面として露出した基板10の表面そのもの(すなわち、基板10の材質そのものの表面)として、又は当該露出した表面上に、生体から取得され若しくは人工的に合成された細胞接着性物質又はこれらの誘導体を固定化した表面として形成することができる。
【0044】
ここで、細胞接着性表面を形成するため細胞保持部底面11aに固定化される細胞接着性物質としては、例えば、当該細胞保持部底面11a上に保持する細胞の細胞膜に存するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子(例えば、インテグリンや糖鎖受容体等)のうち特定のものに対して可逆的又は非可逆的に結合し得る物質を好適に用いることができる。
【0045】
すなわち、生体から取得された細胞接着性物質としては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン等のいわゆる細胞外マトリックスや、細胞表面分子を抗原として認識する抗体等を用いることができ、またその誘導体としては、例えば、当該細胞接着性物質に任意の官能基や分子鎖等を所定の方法により結合させた(例えば、縮合反応等を用いて共有結合させた)ものを用いることができる。
【0046】
また、合成された細胞接着性物質としては、例えば、細胞接着性を示す特定のアミノ酸配列(例えば、アルギニン・グリシン・アスパラギン酸(いわゆるRGD)配列等)や特定の糖鎖配列(例えば、ガラクトース側鎖等)を含む化合物等を用いることができ、またその誘導体としては、当該細胞接着性物質に任意の官能基や分子鎖等を所定の方法により結合させたものを用いることができる。
【0047】
これら細胞接着性物質又はその誘導体を細胞保持部底面11a上に固定する方法としては、当該細胞保持部底面11aや当該細胞接着性物質等の化学的特性等に応じて任意の方法を用いることができ、例えば、細胞接着性物質等の水溶液を細胞保持部底面11a上で乾燥させることにより、又は細胞接着性物質等の水溶液中において、当該細胞接着性物質等が有する官能基と当該細胞保持部底面11a上の官能基との間で化学反応(例えば、カルボキシル基とアミノ基との間の縮合反応等)を起こさせて共有結合を形成させること等により、細胞接着性物質等を細胞保持部底面11a上に物理的又は化学的に固定化することができる。
【0048】
また、この細胞保持部底面11aは、例えば、当該細胞保持部底面11a上に保持する細胞に対して酸素等を効率よく供給する必要がある場合には、比較的ガス透過性の高い材質により形成することが好ましい。
【0049】
すなわち、例えば、基板10自体、又は細胞保持部底面11aとして基板10に貼り合わせる底面部材を、PDMS等のシリコン系樹脂等を用いて形成することにより、当該細胞保持部底面11a上に保持された細胞に外気中の酸素等を供給することができる。
【0050】
なお、本マイクロチップの細胞保持部11に保持する細胞は、特に制限されず、由来する動物、臓器、組織、疾患の種類や、分化段階、増殖能力、特定の遺伝子の発現レベル、培養基材に対する接着性等、その属性を問わず、任意のものを選択して用いることができるが、例えば、ヒトやブタ、イヌ、ラット、マウス等の動物の肝臓、膵臓、腎臓、神経、皮膚、血液等の臓器や組織から採取される初代細胞(未分化ないわゆる幹細胞を含む。)、胚由来のES細胞(Embryonic Stem Cell)、樹立された株化細胞、又はこれらに遺伝子改変等の人為的操作を施した細胞等を用いることができる。
【0051】
また、各細胞保持部11内には、これらの細胞のうち、単一の属性の細胞を保持し、又は互いに属性の異なる2種類以上の細胞を任意の比率で混合して保持することができる。
【0052】
また、細胞保持部底面11a上には、細胞を二次元的(いわゆる単層状)に接着させて保持し、又は細胞同士が互いに三次元的に集合して形成された球状、棒状、チューブ状等の組織体を保持することができる。このような二次元又は三次元の細胞の形態は、例えば、細胞保持部底面11aの表面特性(細胞接着性の程度、細胞接着性領域の規則的なパターン配置等)や立体形状等(所定形状の窪みの規則的なパターン配置等)により任意に制御することができる。
【0053】
また、基板10の形状や大きさは、本マイクロチップの用途や操作性に応じて任意に設定することができるが、例えば、図1に示すように矩形の板状体として成形する場合には、数mm角〜十数cm角程度の範囲とすることが好ましい。また、細胞保持部底面11a又は当該細胞保持部底面11aに形成される細胞接着性表面についても、1つ以上の細胞を保持することができれば任意の大きさに設定することができるが、例えば、数十μm〜数十cm程度の範囲とすることが好ましい。また、この細胞保持部11の深さ(すなわち、細胞保持部側面11bの高さ)は、数十μm〜数mmの範囲であることが好ましい。また、流入路12と流出路13の幅及び深さは、連通する細胞保持部11内に溶液を流通させることができれば特に限られないが、例えば、数十μm〜数mmの範囲であることが好ましい。これらの寸法が上記の好適な範囲より大きい場合には、例えば、本マイクロチップのサイズが大きくなりすぎるために操作性が落ち、また、細胞保持部11内における細胞の分布や流体の流れ等に偏りが生じるために、安定した細胞間相互作用が行われない等の問題が生じる場合がある。一方、これらの寸法が上記の好適な範囲より小さい場合には、例えば、本マイクロチップのサイズが小さすぎるために操作性が落ち、基板10等の加工が難しくなり、また、流入路12や流出路13等における流体の流れ抵抗が大きくなる等の問題が生じる場合がある。
【0054】
図2には、タイプI連結部材20を介して、2つのタイプI細胞ユニットチップ(以下、それぞれ第一ユニットチップ1A、第二ユニットチップ1Bと呼ぶ。)が互いに連結して構成される本マイクロチップの一例を示す。なお、以下の説明において、同様の部分を複数示す場合には、例えば、1A,1Bのように同一の数字に異なる大文字のアルファベットを付して区別するが、これらを特に区別する必要がない場合には数字のみを示す。
【0055】
また、図3には、図2に示すタイプI細胞ユニットチップ1の細胞保持部11、流入路12、流出路13及びタイプI連結部材20を切断するS−S線に沿った本マイクロチップの断面図を示す。
【0056】
図2、図3に示す本マイクロチップにおいては、タイプI連結部材20が、第一ユニットチップ1Aの基板10Aと第二ユニットチップ1Bの基板10Bとに跨って、第一ユニットチップ1Aの流出側連結部15Aと第二ユニットチップ1Bの流入側連結部14Bとに圧入されることにより、当該第一ユニットチップ1Aと当該第二ユニットチップ1Bとが互いに着脱可能に連結されている。また、このタイプI連結部材20の連通路22を介して、第一ユニットチップ1Aの流出路13Aと第二ユニットチップ1Bの流入路12Bとが連通している。
【0057】
また、図3に示すように、細胞保持部底面11aA,11aBは、流入路底面12aA,12aB及び流出路底面13aA,13aBより下方に位置するように段差をもって形成されている。すなわち、細胞保持部11は、流入路12及び流出路13からさらに窪んだ有底窪みとして形成されている。
【0058】
また、図3に示すように、本マイクロチップは、基板上面10a(図1参照)とタイプI連結部材20とを覆う天蓋16を有している。この天蓋16は、基板10、タイプI連結部材20とは別体に成形され、当該タイプI連結部材20の一部に嵌合して、細胞保持部11、流入路12、流出路13を覆っている。
【0059】
この天蓋16は、目的に応じて任意の材質で成形することができるが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル等の合成樹脂、PDMS等のシリコン系合成樹脂、EPDM等の合成ゴム、天然ゴム、ガラス、セラミック、ステンレス鋼等の金属材料、等を用いて成形された、板状体やフィルム等を用いることができる。なお、この天蓋16は、断面図を除き、図示を省略している。
【0060】
また、図4及び図5には、本マイクロチップに含まれるタイプI連結部材20の他の例を示す。図4に示すタイプI連結部材20は、第一ユニットチップ1Aの基板10Aと第二ユニットチップ1Bの基板10Bとに跨って、第一ユニットチップ1Aの流出側連結部15Aと第二ユニットチップ1Bの流入側連結部14Bとに嵌合しつつ、さらに第一ユニットチップ1Aの天蓋16A及び第二ユニットチップ1Bの天蓋16Bの上面に接して当該2つの天蓋16A,16Bと嵌合している。また、図5に示すタイプI連結部材20は、図4に示す例と同様に2つの天蓋16A,16Bに上方から嵌合しているが、第一ユニットチップ1Aと第二ユニットチップ1Bとは嵌合していない。
【0061】
また、図6には、本マイクロチップに含まれる細胞ユニットチップの他の一例(以下、タイプII細胞ユニットチップ3と呼ぶ。)を示す。図6に示すように、このタイプII細胞ユニットチップ3は、1つの細胞保持部31に連通する3以上の流路32,33,36を有する細胞ユニットチップの一例である。すなわち、このタイプII細胞ユニットチップ3は、細胞保持部31に連通する流入路32、流入側連結部34、流出路33、流出側連結部35、に加えて、一端が当該細胞保持部31に連通し、他端が基板側面30bの一部に開口する第三の流路として基板上面30aに形成された有底溝の回収流路36を有し、さらに当該回収流路36の基板側面30b側の開口部には、流入側連結部34及び流出側連結部35と同様の形状で形成された回収側連結部37を有する。
【0062】
このタイプII細胞ユニットチップ3においては、例えば、流入路32から細胞保持部31に溶液を流入させ、当該溶液を流出路33から流出させると共に、必要に応じて、第三の流路である回収流路36から溶液を流出させることにより、又は流入路34と流出路35の双方から細胞保持部31に溶液を流入させ、当該溶液を回収流路36から流出させることにより、当該細胞保持部31内の溶液又は細胞を回収することができる。
【0063】
次に、本マイクロチップを用いた細胞評価方法(以下、本評価方法と呼ぶ。)の一例について説明する。ここでは、互いに属性の異なる2種類の細胞(以下、それぞれ第一細胞X、第二細胞Yと呼ぶ。)を用い、第一細胞Xが分泌する物質(以下、刺激物質Pと呼ぶ。)によって第二細胞Yが活性化される培養条件をスクリーニングすると共に、当該刺激物質Pによって活性化された第二細胞Yのみを選択的に回収する場合を例として説明する。
【0064】
図7に、本評価方法において用いる本マイクロチップの一例を示す。すなわち、図7に示すように、本マイクロチップは、タイプI細胞ユニットチップ1(以下、本例において第一ユニットチップ1と呼ぶ。)と、タイプII細胞ユニットチップ3(以下、本例において第二ユニットチップ3と呼ぶ)とが、タイプI連結部材20を介して、互いの流路を連通させ、且つ着脱可能に、直列に連結されたユニットチップセットを3つ有し、これら3つのユニットチップセットが互いに並列に配置されて構成されている。なお、各第二ユニットチップ3の回収側連結部37(図6参照)には、回収流路36からの溶液の流出を防止するため、当該回収流路36の開口部分を塞ぐストッパー23が圧入されている。
【0065】
本評価方法は、ユニットチップ準備工程と、前培養工程と、ユニットチップ連結工程と、細胞刺激工程と、細胞評価工程と、ユニットチップ分離工程と、分離後処理工程と、を含む。
【0066】
ユニットチップ準備工程においては、本マイクロチップを構成するために用いる、互いに別体として成形された複数の細胞ユニットチップを準備する。すなわち、このユニットチップ準備工程においては、図7に示す本マイクロチップを構成する、3つの第一ユニットチップ1と、3つの第二ユニットチップ3と、をそれぞれ準備する。
【0067】
ここで、各第一ユニットチップ1の第一細胞保持部底面11a(図1参照)及び各第二ユニットチップ3の第二細胞保持部底面31a(図6参照)は、保持すべき細胞の接着に適した表面を有している。すなわち、各第一細胞保持部底面11aの少なくとも一部は第一細胞Xの接着に適した細胞接着性を有し、各第二細胞保持部底面31aの少なくとも一部は第二細胞Yの接着に適した細胞接着性を有している。なお、これら第一細胞保持部底面11aの細胞接着性と、第二細胞保持部底面31aの細胞接着性と、は同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
【0068】
前培養工程においては、ユニットチップ準備工程で準備した各細胞ユニットチップに細胞を保持させる。すなわち、この前培養工程においては、例えば、第一細胞Xを所定の密度で分散した所定量の溶液を各第一細胞保持部11に入れると共に、第二細胞Yを所定の密度で分散した所定の溶液を各第二細胞保持部31に入れて、当該第一細胞Xと第二細胞Yとを所定の条件下(例えば、5%二酸化炭素/95%空気、湿度100%の雰囲気下、37℃)、所定時間保持する前培養を行う。この前培養において、第一細胞Xは第一細胞保持部底面11aの細胞接着性表面に接着し、また第二細胞Yは第二細胞保持部底面31aの細胞接着性表面に接着する。
【0069】
なお、本マイクロチップにおいて、細胞を分散させ、又は細胞保持部11,31内を流通させる溶液としては、当該細胞の生存状態や機能等を維持するために必要な塩類や栄養成分等を適切な濃度で含む水溶液等、任意のものを適宜選択して用いることができるが、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)等の基礎培地に抗生物質等を添加した培養液や、いわゆる生理食塩水等を用いることができる。また、この溶液には、任意の増殖因子(例えば、上皮成長因子や神経成長因子等)やサイトカイン(例えば、インターロイキンやインターフェロン等)等を添加して用いることもできる。
【0070】
また、この前培養は、個々の細胞ユニットチップ1,3について、細胞を保持した細胞保持部11,31内に流入路12,32及び流出路13,33を介して溶液を流通させながら行うことができ、又は、溶液を流通させずに、いわゆるバッチ方式により行うこともできる。なお、バッチ方式で前培養を行う場合には、例えば、各細胞ユニットチップ1,3の流入側連結部34、流出側連結部35、回収流路36には、図7に示すようなストッパー23を嵌合させる等により、流入路12,32、流出路13,33、及び回収流路36から溶液が当該細胞ユニットチップ1,3外に漏洩することを防止できる。
【0071】
また、この前培養は、複数の細胞ユニットチップを含むユニットチップセットごとに行い、又は複数のユニットチップセットを互いに連結した本マイクロチップを構成した後に行うこともできる。すなわち、この前培養は、例えば、後述のユニットチップ連結工程において第一ユニットチップ1と第二ユニットチップ3とを1つずつ連結した3つのユニットチップセットを構成した後に、当該ユニットチップセットごと、又は図7に示すように3つのユニットチップセットを並列に配置した本マイクロチップにおいて、行うことができる。
【0072】
また、この前培養において、培養時間、溶液の流通の有無、溶液の組成等の操作条件や、保持する細胞の種類、密度、培養形態(二次元単層状、三次元組織体等)等の細胞保持条件等の培養条件は、全ての細胞ユニットチップ1,3又はユニットチップセットについて同一としてもよいし、少なくとも一部の細胞ユニットチップ1,3又はユニットチップセット間で互いに異なることとしてもよい。
【0073】
ユニットチップ連結工程においては、ユニットチップ準備工程において準備した複数の細胞ユニットチップを互いに着脱可能に連結し、本マイクロチップを構成する。すなわち、このユニットチップ連結工程においては、例えば、前培養工程で第一細胞Xを前培養した1つの第一ユニットチップ1と、第二細胞Yを前培養した1つの第二ユニットチップ3と、をタイプI連結部材20を介して、互いに着脱可能に直列に連結したユニットチップセットを3つ作製し、さらに当該3つのユニットチップセットを並列に配置して、図7に示す本マイクロチップを作製する。
【0074】
この複数のユニットチップセット同士の並列的な連結は、例えば、本マイクロチップ全体の外形状(図7に示す例においては、互いに並列に配置された複数のユニットチップ全体の外形状)に沿った矩形の枠を有する構造体を用意しておき、当該枠状構造体内に当該複数のユニットチップセットを互いに並列に載置することにより行うことができる。
【0075】
また、例えば、各細胞ユニットチップ1,3の基板10,30に、互いに連結可能な連結部(例えば、互いに係合し又は嵌合するフック形状等)等を設け、並列に配置された複数の細胞ユニットチップ1,3間で当該連結部を互いに連結させることによって、本マイクロチップを構成することもできる。この場合、本マイクロチップは、例えば、まず3つの第一ユニットチップ1同士、3つの第二ユニットチップ3同士をそれぞれ互いに並列に連結し、当該並列に連結された3つの第一ユニットチップ1と、当該並列に連結された3つの第二ユニットチップ3と、を直列に連結することにより、又は3つのユニットチップセットを構成した後、当該3つのユニットチップセットを互いに並列に連結することにより構成することができる。
【0076】
なお、このユニットチップ連結工程においては、例えば、図3に示すタイプI連結部材20を用いる場合には、第一ユニットチップ1と第二ユニットチップ3とに当該タイプI連結部材20を嵌合させた後に、その上から天蓋16を被せる。また、例えば、図4に示す場合には、第一ユニットチップ1と第二ユニットチップ3とを直列に配置し、さらに天蓋16を設置した後に、その上からタイプI連結部材20を被せ、当該タイプI連結部材20を当該第一ユニットチップ1、第二ユニットチップ3、及び天蓋16に嵌合させる。また、例えば、図5に示す場合には、第一ユニットチップ1と第二ユニットチップ3とを直列に配置し、さらに天蓋16を設置した後に、その上からタイプI連結部材20を被せ、当該タイプI連結部材20を天蓋16に嵌合させる。
【0077】
また、このユニットチップ連結工程においては、本マイクロチップに含まれるユニットチップセットごとに溶液を流通させるため、本マイクロチップを含む流通システムを構成する。すなわち、例えば、図7に示す本マイクロチップに含まれる各第一ユニットチップ1の流入側連結部14に、一端が所定量の溶液を保持したリザーバーに接続され、且つその一部がポンプ装置に接続されたチューブ等を連結すると共に、各第二ユニットチップ3の流出側連結部35には、当該溶液を本マイクロチップから流出させるためのチューブを連結する。
【0078】
細胞刺激工程においては、ユニットチップ連結工程において作製した本マイクロチップに溶液を流通させて、細胞間相互作用を起こさせる。すなわち、この細胞刺激工程においては、本マイクロチップに含まれるユニットチップセットごとに、当該各ユニットチップセットに含まれる複数の細胞ユニットチップのうち1つの上流側の細胞ユニットチップから他の下流側の細胞ユニットチップに溶液を流通させることにより、当該上流側の細胞ユニットチップに保持されている細胞が当該溶液中に分泌した物質を、当該下流側の細胞ユニットチップに保持されている細胞に接触させる。
【0079】
具体的に、例えば、図7に示す本マイクロチップにおいて、各第一ユニットチップ1の流入側連結部14に連結されたチューブが接続されているポンプ装置を駆動させて、図7に矢印で示すように、当該チューブが接続されているリザーバー内の溶液を、当該第一ユニットチップ1の第一流入路12から、第一細胞Xを保持している第一細胞保持部11内に所定の流量で流入させる。
【0080】
この本マイクロチップの外部から第一流入路12に流入された溶液によって、第一細胞Xが分泌した刺激物質Pを含み、第一細胞保持部11に保持されていた溶液の少なくとも一部が、第一流出路13から、タイプI連結部材20を介して、第二ユニットチップ3へと押し出される。そして、この刺激物質Pを含む溶液が、第二ユニットチップ3の第二流入路32から第二細胞保持部31に流入することにより、当該刺激物質Pは当該第二細胞保持部31に保持されている第二細胞Yに接触することとなる。なお、第二細胞保持部31内に保持されていた溶液は、上記第一ユニットチップ1へ溶液を流入させた所定の流量で、第二ユニットチップ3の第二流出路33から、第二ユニットチップ3外(すなわち、yニットチップセット外)に流出する。
【0081】
また、この細胞刺激工程においては、第一ユニットチップ1又は第二ユニットチップ3に保持されている細胞の種類、密度、培養形態(二次元単層、三次元組織体の別等)等の細胞保持条件や、流通させる溶液の組成(栄養成分等の濃度、溶存酸素濃度等)や流量、又は溶液を流通させる時間等の流通条件等の刺激条件を、複数のユニットチップセット間で同一又は異なるように、任意に設定することができる。
【0082】
すなわち、例えば、図7に示す本マイクロチップにおいては、3つの第一ユニットチップ1の各々に保持されている第一細胞Xの密度(細胞保持部11の接着性表面の単位面積あたりに接着している第一細胞Xの数)は互いに異なり、3つの第二ユニットチップ3に保持されている第二細胞Yの密度は互いに同一となるように設定し、その他の刺激条件は互いに同一とする。この場合、本マイクロチップにおいては、第一ユニットチップ1に保持する第一細胞Xの密度に応じた互いに異なる細胞間相互作用を実現することができる。
【0083】
細胞評価工程においては、細胞刺激工程で細胞分泌物質を接触させた細胞のうち少なくとも一部について、当該細胞の当該細胞分泌物質に対する応答を評価する。この細胞の応答としては、任意の指標を選択することができるが、例えば、細胞や細胞組織体の外形状、大きさ、数等の形態、細胞内で発現している物質(酵素等のたんぱく質、脂質類、DNA(DeoxyRiboNucleic Acid)、RNA(RiboNucleic Acid)等)、細胞が分泌する物質の種類や量等を評価することができる。
【0084】
具体的に、この細胞評価工程においては、例えば、図7に示す本マイクロチップに含まれるユニットチップセットごとに、第二ユニットチップ3に保持され、細胞刺激工程で第一細胞Xが分泌した刺激物質Pを接触させた第二細胞Yについて、その形態を評価する。すなわち、例えば、本マイクロチップを位相差顕微鏡や蛍光顕微鏡等の顕微鏡装置の試料ステージ上に載置して、当該第二ユニットチップ3の第二細胞保持部31内に保持されている第二細胞Yの形態を光学的に観察する。
【0085】
そして、この細胞評価工程においては、例えば、評価対象とする細胞が所定の応答を示すか否かを評価する。すなわち、例えば、第二細胞Yが活性化すると、その形状がいびつになるという所定の形態的変化を示すことが知られている場合には、ユニットチップセットごとに、第二細胞ユニットチップ3に保持されている第二細胞Yが当該所定の形態変化を示しているか否かを観察し、当該第二細胞Yが活性化しているか否かを評価する。
【0086】
また、例えば、活性化した第二細胞Yが所定の物質(以下、応答物質Qと呼ぶ。)を分泌することが知られている場合には、第二細胞Yを保持していた第二細胞保持部31内の溶液を第二ユニットチップ3の第二流出路33から本マイクロチップ外に流出させて採取し、当該採取した溶液中に含まれる当該応答物質Qの有無や濃度等を評価することにより、当該第二細胞Yが活性化されているか否かを判断することができる。
【0087】
ユニットチップ分離工程においては、細胞評価工程において得られた評価結果に基づいて、本マイクロチップに含まれる複数のユニットチップセット又は各ユニットチップセットに含まれる細胞ユニットチップ1,3の一部を分離対象として決定し、本マイクロチップから切り離す。
【0088】
すなわち、例えば、細胞評価工程において、図7に示す本マイクロチップを構成する3つの第二ユニットチップ3A,3B,3Cに保持されている第二細胞Yのうち、第二ユニットチップ3Aの第二細胞保持部31Aに保持されている第二細胞Yと、第二ユニットチップ3Bの第二細胞保持部31Bに保持されている第二細胞Yと、に活性化状態を示す所定の形態変化が観察された場合には、当該所定の形態変化を示す活性化された第二細胞Yが保持されている2つの第二ユニットチップ3A,3B、又は当該2つの第二ユニットチップ3A,3Bを含む2つのユニットチップセットを、本マイクロチップから切り離す。
【0089】
分離後処理工程においては、ユニットチップ分離工程において分離された細胞ユニットチップ1,3又はユニットチップセットについて所定の処理を行う。すなわち、この分離後処理工程においては、例えば、ユニットチップ分離工程で選択的に分離した、活性化された第二細胞Yが保持されている2つの第二ユニットチップ3A,3Bから、当該活性化された第二細胞Yを回収する。
【0090】
この場合、例えば、図8に示すように、図7に示す本マイクロチップから単一の細胞ユニットチップとして分離された第二ユニットチップ3の回収側連結部37からストッパー23(図7参照)を取り外して、図8において矢印で示すように、第二流入路32と第二流出路33の双方から、第二細胞保持部31内に、第二細胞Yを第二細胞保持部底面31aから脱着させるための回収用溶液(例えば、トリプシン等のタンパク質分解酵素を含む溶液等)を流入させると共に、当該回収用溶液を回収流路36から流出させることにより、当該回収用溶液中に分散された当該第二細胞Yを回収する。
【0091】
また、この分離後処理工程においては、例えば、細胞評価工程で用いた本マイクロチップ、又はユニットチップ分離工程で分離された細胞ユニットチップ1,3若しくはユニットチップセットのうち少なくとも一部に、さらに他のユニットチップを追加的に連結することにより、本マイクロチップを再構成し、当該再構成した本マイクロチップを用いてさらなる細胞評価を行うこともできる。
【0092】
すなわち、例えば、細胞評価工程において活性化されていると評価された第二細胞Yのうち、第三の細胞Z(第一細胞X、第二細胞Yとは異なる属性の細胞)を活性化する物質(以下、刺激物質Rと呼ぶ。)を分泌しているものを特定すると共に、当該特定された第二細胞Yを選択的に回収する。
【0093】
この場合、例えば、ユニットチップ分離工程において分離され、活性化された第二細胞Yを保持する2つの第二ユニットチップ3A,3Bのそれぞれに、第三細胞Zを保持した第三ユニットチップ(図示せず)を連結してなる、第二ユニットチップ3と第三ユニットチップとを1つずつ互いに直列に連結してなる2つのユニットチップセットを、互いに並列に連結し、本マイクロチップを再構成する。
【0094】
そして、例えば、この再構成した本マイクロチップに含まれる各ユニットチップセットにおいて、上述の細胞刺激工程と同様に、第二ユニットチップ3から第三ユニットチップに溶液を流通させ、第二細胞Yが分泌した刺激物質Rを第三細胞Zに接触させた後、上述の細胞評価工程と同様に、当該第三細胞Zが活性化されるか否かを評価する。
【0095】
この結果、例えば、再構成した本マイクロチップに含まれる2つの第三ユニットチップのうち、一方の第三ユニットチップのみにおいて第三細胞Zに所定の活性化状態が観察された場合には、当該活性化された第三細胞Zが保持されている第三ユニットチップに連結されている第二ユニットチップ3を本マイクロチップから分離し、当該分離した第二ユニットチップ3に保持されている第二細胞Yを回収することができる。
【0096】
すなわち、この場合、本マイクロチップにおいて第一細胞X、第二細胞Y、及び第三細胞Zの間での連鎖的な細胞間相互作用を実現することにより、第一細胞Xによって分泌された刺激物質Pによって活性化され、且つ、第三細胞Zを活性化する刺激物質Rを分泌する能力を有する第二細胞Yを選択的に回収することができる。
【0097】
このように、本マイクロチップを用いた細胞評価方法においては、互いに異なる属性の細胞を保持した複数の細胞ユニットチップを、適宜互いに連結し、また分離することができるため、任意の細胞の組み合わせによる、多様な細胞間相互作用の評価を、迅速、正確且つ簡便に行うことができる。
【0098】
なお、図7に示す本マイクロチップにおいては、当該本マイクロチップを構成する細胞ユニットチップ1,3の外形状(この場合、基板10,30の外形状)が全て同一であるため、互いの組み替えを簡便に行うことができる。
【0099】
また、図9には、本マイクロチップに含まれる細胞ユニットチップのさらに他の例(以下、タイプIII細胞ユニットチップ4と呼ぶ)を示す。図9に示すタイプIII細胞ユニットチップ4は、流入部42及び流出部43の細胞保持部41に連通する側と反対側の端部(すなわち、基板40の側面の一部に開口する部分)に、それぞれ流入側連結部44と流出側連結部47とを有する。
【0100】
この流入側連結部44及び流出側連結部47は、それぞれ流入路42に連通する連通路46及び流出路43に連通する連通路47を有し、基板40と一体的に形成されている。
【0101】
また、流入側連結部44と流出側連結部47とは、互いに連結可能な形状で成形されている。すなわち、図9に示す例において、流入側連結部44は、その先端に突起状の凸部48を有し、流出側連結部45は、その先端に当該凸部46と嵌合できる形状の窪みとして受容穴49が形成されている。
【0102】
図10には、複数のタイプIII細胞ユニットチップ4同士が流入側連結部44と流出側連結部45とを互いに直接連結することにより構成される本マイクロチップの一例を示す。図10に示す本マイクロチップにおいては、一方のタイプIII細胞ユニットチップ4Aの流出側連結部45Aの受容穴49(図9参照)に、他方のタイプIII細胞ユニットチップ4Bの流入側連結部44Bの凸部48(図9参照)が圧入されることにより、当該2つのタイプIII細胞ユニットチップ4A,4Bが、互いに溶液を流通可能に、且つ着脱可能に連結されている。なお、このタイプIII細胞ユニットチップ4の流入側連結部44及び流出側連結部45は、基板40と一体に成形されてもよいし、又は基板40と別体に成形された後、当該基板40に固定されたものであってもよい。
【0103】
また、この流入側連結部44及び流出側連結部45は、複数のタイプIII細胞ユニットチップ4が互いに連結された状態において、本マイクロチップを一体的に取り扱うことができるように、すなわち、例えば、本マイクロチップを1枚の基板のように持ち運びできるように、基板40と同様、比較的剛性の高い材質により成形されることが好ましい。
【0104】
このタイプIII細胞ユニットチップ4を含む本マイクロチップは、流入側連結部44及び流出側連結部45が基板40と一体的に設けられているため、タイプI連結部20のように別体で成形された連結部材を用いる場合に比べて、当該タイプIII細胞ユニットチップ4間の着脱等の操作を簡便に行うことができる。
【0105】
また、図11には、本マイクロチップに含まれる細胞ユニットチップのさらに他の例(以下、タイプIV細胞ユニットチップ5と呼ぶ。)と、当該タイプIV細胞ユニットチップ5と他の細胞ユニットチップとを連結するため針形状に成形された連結部材(以下、タイプII連結部材60と呼ぶ。)の一例と、を示す。
【0106】
図11に示すタイプIV細胞ユニットチップ5においては、流入路52及び流出路53の細胞保持部51に開口している側と反対側の端部は、基板50の側面に開口しておらず、塞がっており、細胞保持部51、流入路52、流出路53は互いに連通する1つの閉じられた窪みとして形成されている。
【0107】
そして、このタイプIV細胞ユニットチップ5は、流入路52と基板50の側面との間に所定厚さの流入側被穿刺部54を有すると共に、流出路53と基板50の他の側面との間に所定厚さの流出側被穿刺部55を有する。
【0108】
一方、図11に示すタイプII連結部材60は、タイプIV細胞ユニットチップ5とは別体に成形され、両端が尖った針形状の筐体61の内部に、当該筐体61を貫通する連通路62が形成されてなる。
【0109】
図12には、図11に示すタイプIV細胞ユニットチップ5と他の細胞ユニットチップを連結するため、当該タイプIV細胞ユニットチップ5とタイプII連結部材60とを連結した場合の一例を示す。すなわち、図12に示すように、タイプII連結部材60の一方の針形状の先端を、タイプIV細胞ユニットチップ5の流出側被穿刺部55(図11参照)に穿刺し、貫通させることにより、当該穿刺されたタイプII連結部材60の連通路62と、当該流出側被穿刺部55により一端を塞がれていた流出路53と、が互いに溶液を流通可能に連通する。この結果、タイプIV細胞ユニットチップ5の流出路53は、穿刺されたタイプII連結部材60の連通路62を介して、基板50の側面の一部に開口することとなる。
【0110】
図13には、2つのタイプIV細胞ユニットチップ5が、タイプII連結部材60を介して、互いに着脱可能に直列に連結して構成される本マイクロチップの一例を示す。図13に示す本マイクロチップにおいては、タイプII連結部材60の一端が、一方のタイプIV細胞ユニットチップ5Aの流出側被穿刺部55(図11参照)に刺し込まれると共に、当該タイプII連結部材60の他端が、他方のタイプIV細胞ユニットチップ5Bの流入側被穿刺部54(図11参照)に刺し込まれることにより、当該一方のタイプIV細胞ユニットチップ5Aの流出路53Aと、当該他方のタイプIV細胞ユニットチップ5Bの流入路52Bと、が当該タイプII連結部材60の連通路62(図12参照)を介して、互いに溶液を流通可能に連通している。
【0111】
また、図13に示す本マイクロチップにおいては、一方のタイプIV細胞ユニットチップ5Aの流入側被穿刺部54(図11参照)と、他方のタイプIV細胞ユニットチップ5Bの流出側被穿刺部55(図11参照)と、に一端のみが針形状に成形されたタイプII連結部材63A,63Bが刺し込まれており、当該タイプII連結部材63A,63Bを介して、本マイクロチップに溶液を流入させ、又は流出させることができる。
【0112】
また、このタイプIV細胞ユニットチップ5においては、タイプIV細胞ユニットチップ5の被穿刺部54,55に刺し込まれたタイプII連結部材60を、当該被穿刺部54,55から抜去した場合には、再び、図11に示すように、当該流入路52及び流出路53が当該被穿刺部54,55により塞がれた(すなわち、基板50の側面に開口していない)状態に戻る。
【0113】
すなわち、このタイプIV細胞ユニットチップ5の被穿刺部54,55は、タイプII連結部材60を刺し込むことが可能であって、且つ、当該いったん刺し込んだタイプII連結部材60を引き抜いた後は、再び、当該流入路52及び流出路53の先端が塞がることとなるよう、適度な弾性をもった材質により形成される。具体的に、この被穿刺部54,55は、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の架橋体からなるエラストマーにより形成することができる。なお、この場合、基板50(図11参照)の全体を上述のような弾性材料により形成することができ、また、被穿刺部54,55のみを当該弾性材料により形成することもできる。すなわち、例えば、基板50と別体に成形した弾性部材を、基板50の被穿刺部54,55の位置に嵌め込むことにより、当該基板50のうち、被穿刺部54,55のみを弾性材料により形成することができる。
【0114】
なお、被穿刺部54,55は、基板50の一部として当該基板50と同じ材質で形成されたものでもよく、又は基板50と別体に、当該基板50と同一又は異なる材質で成形された後、流入路52及び流出路53の先端を塞ぐように当該基板50に固定されるものであってもよい。
【0115】
このように、針形状のタイプII連結部材60で連結された複数のタイプIV細胞ユニットチップ5を含む本マイクロチップにおいては、当該複数のタイプIV細胞ユニットチップ5同士の連結や分離を、細胞保持部51等に保持している溶液や細胞を漏洩させることなく、且つ無菌的な状態を維持しつつ、簡便に繰り返し行うことができる。
【0116】
また、図14には、本マイクロチップに含まれる細胞ユニットチップのさらに他の例(以下、タイプV細胞ユニットチップ7と呼ぶ。)を示す。図14に示すタイプV細胞ユニットチップ7は、正方形状の基板70と、当該基板70の中央付近に形成された1つの細胞保持部71と、当該細胞保持部71から、当該基板70の4つの側面のそれぞれに向かって伸びる4つの流路72,73,74,75と、を有する。この4つの流路72,73,74,75は、上述のタイプIV細胞ユニットチップ5の流入部52及び流出部53と同様、細胞保持部71に開口する側と反対側の先端は閉じられている。
【0117】
図15には、3つのタイプV細胞ユニットチップ7A,7B,7Cを、タイプII連結部材60A,60Bを介して直列に連結してなるユニットチップセットを3つ有し、当該3つのユニットチップセットが互いに並列に配置されて構成される本マイクロチップの一例を示す。この本マイクロチップにおいては、ユニットチップセットごとに、図15に矢印で示すように、最上流のタイプV細胞ユニットチップ7A、中央のタイプV細胞ユニットチップ7B、さらに最下流のタイプV細胞ユニットチップ7Cへと溶液を流通させることにより、各タイプV細胞ユニットチップ7に保持されている細胞同士の連鎖的な細胞間相互作用を行わせることができる。
【0118】
また、この本マイクロチップを構成する複数のタイプV細胞ユニットチップ7の外形状(この場合、基板70の形状)は全て正方形であり、且つ各タイプV細胞ユニットチップ7の細胞保持部71からは3つ以上(この場合、4つ)の流路が伸び出しているため、本マイクロチップに含まれる複数のタイプV細胞ユニットチップ7のうちの一部を分離し、又は本マイクロチップにさらに他のタイプV細胞ユニット7を追加的に連結する等、本マイクロチップの再構成は多様且つ簡便に行うことができる。
【0119】
また、図16に示すように、本マイクロチップを構成する一部のタイプV細胞ユニットチップ7Bの基板70Bに針形状のタイプII連結部材63Bを穿刺して、図15に示す流通状態においては閉じられていた1つの流路74Bを当該基板70Bの側面の一部に開口させることにより、図16に矢印で示すように、当該タイプV細胞ユニットチップ7Bのみから選択的に、溶液や細胞等を回収することができる。
【0120】
なお、この場合、刺し込んだタイプII連結部材63BをタイプV細胞ユニットチップ7Bから抜き去ることにより、当該タイプII連結部材63Bに連通していた流出路74Bは再び塞がれることとなるため、その後、再び図15に示すような流通を行う等、さらなる細胞間相互作用の評価を行うことができる。
【0121】
また、図17には、複数のタイプI細胞ユニットチップ1を互いに並列に連結することができる連結部材(以下、タイプIII連結部材80と呼ぶ。)を含む本マイクロチップの一例を示す。図17に示す本マイクロチップにおいては、2つのタイプI細胞ユニットチップ1A,1Bが、タイプIII連結部材80の上流側に互いに並列に連結されると共に、当該タイプIII連結部材80を介して、当該2つの上流側タイプI細胞ユニットチップ1A,1Bのそれぞれに対向するように、2つの下流側タイプI細胞ユニットチップ1C,1Dが当該タイプIII連結部材80の下流側に互いに並列に連結されている。なお、タイプIII連結部材80を介して直列に連結されている上流側タイプI細胞ユニットチップ1A,1Bと、下流側タイプI細胞ユニットチップ1C,1Dと、は当該タイプIII連結部材80が有する連通路(図示せず)を介して互いに溶液を流通可能に連通している。このようなタイプIII連結部材80を用いることにより、本マイクロチップの全体を、より一体的に取り扱うことができるため、操作性が向上する。
【0122】
また、図18には、細胞保持部を有しないユニットチップ(以下、流路ユニットチップ9と呼ぶ。)を含む本マイクロチップの一例を示す。図18に示す本マイクロチップは、溶液を流通させる流路のみを有し、一方に連結された2つの上流側タイプI細胞ユニットチップ1A,1Bから溶液を受け入れると共に、当該溶液を混合して、他方に連結された1つの下流側タイプI細胞ユニットチップ1Cに流出させるための分岐した流路を有している。
【0123】
すなわち、この流路ユニットチップ9は、基板90上に、一方の上流側タイプI細胞ユニットチップ1Aの流出路13Aと連通するよう形成された第一流入路91と、当該一方の上流側タイプI細胞ユニットチップ1Aと並列に連結されている他方の上流側タイプI細胞ユニットチップ1Bの流出路13Bと連通するよう形成された第二流入路92と、当該第一流入路91と第二流入路92との双方が合流し、下流側タイプI細胞ユニットチップ1Cの流入路12Cに連通するよう形成された合流流路93と、を有する。
【0124】
このため、図18に示す本マイクロチップにおいては、例えば、図18に矢印で示すように、第一細胞を保持する第一の上流側タイプI細胞ユニットチップ1Aから、当該第一細胞が分泌した第一物質を含む溶液を第一流入路91に流入させると共に、第二細胞を保持する第二の上流側タイプI細胞ユニットチップ1Bから、当該第二細胞が分泌した第二物質を含む溶液を第二流入路92に流入させ、当該溶液を、合流流路93で混合した後に、当該第一物質と当該第二物質とを含む混合溶液を、第三細胞を保持する下流側タイプI細胞ユニットチップ1Cに流入させることにより、当該第一物質と当該第二物質とを同時に、直接、当該第三細胞に接触させることができる。
【0125】
なお、本発明に係るマイクロチップ及び当該マイクロチップを用いた細胞評価方法は、上述の例に示したものに限られない。すなわち、例えば、細胞ユニットチップや流路ユニットチップの基板、細胞保持部、流路等の形状、数、配置等や、ユニットチップ間を連結する連結部材や連結部の形状、数、取り付け位置等は、任意に設定することができる。すなわち、例えば、上述の例では、正方形状の基板70を有するタイプV細胞ユニットチップ7が、針形状のタイプII連結部材60A,60Bにより連結される場合について説明したが、例えば、図1等に示したタイプI連結部材20、図9等に示した流入側連結部44及び流出側連結部45、図17に示したタイプIII連結部材80等、ユニットチップ間を着脱可能に連結可能なその他の形状の連結部材により連結されてもよい。また、本マイクロチップを構成するユニットチップ同士を連結する部材としては、例えば、チューブ等の溶液を輸送可能な部材を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の一実施形態に係るマイクロチップを構成するタイプI細胞ユニットチップとタイプI連結部材の一例についての斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタイプI細胞ユニットチップを含むマイクロチップの一例についての上面図である。
【図3】図2に示すマイクロチップのS−S線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るタイプI細胞ユニットチップを含むマイクロチップの他の例についての断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るタイプI細胞ユニットチップを含むマイクロチップのさらに他の例についての断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るマイクロチップを構成するタイプII細胞ユニットチップの一例についての斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るタイプI細胞ユニットチップとタイプII細胞ユニットチップとを含むマイクロチップの一例についての上面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るタイプII細胞ユニットチップの一例についての上面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るタイプIII細胞ユニットチップの一例についての上面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るタイプIII細胞ユニットチップを含むマイクロチップ一例についての上面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るマイクロチップを構成するタイプIV細胞ユニットチップとタイプII連結部材の一例についての上面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るタイプIV細胞ユニットチップとタイプII連結部材とを連結した場合の一例についての上面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るタイプIV細胞ユニットチップを含むマイクロチップの一例についての上面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るマイクロチップを構成するタイプV細胞ユニットチップの一例についての上面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係るタイプV細胞ユニットチップを含むマイクロチップの一例についての上面図である。
【図16】図15に示すマイクロチップに含まれる一部のタイプV細胞ユニットチップから溶液又は細胞を回収する場合を示す上面図である。
【図17】本発明の一実施形態に係るタイプIII連結部材を含むマイクロチップの一例についての上面図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る流路ユニットチップを含むマイクロチップの一例についての上面図である。
【符号の説明】
【0127】
1,3,4,5,7 細胞ユニットチップ、9 流路ユニットチップ、10,30,40,50,70,90 基板、11,31,41,51,71 細胞保持部、20,60,80 連結部材、44,45 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を保持するための第一細胞保持部と、当該第一細胞保持部に溶液を流通させるための第一流路と、が形成された第一基板を有する第一ユニットチップと、
細胞を保持するための第二細胞保持部と、当該第二細胞保持部に溶液を流通させるための第二流路と、が形成された第二基板を有する第二ユニットチップと、
を含み、
前記第一ユニットチップと前記第二ユニットチップとが、前記第一流路と前記第二流路とを連通させるように、互いに着脱可能に連結されている、
ことを特徴とするマイクロチップ。
【請求項2】
前記第一細胞保持部と前記第二細胞保持部とは、細胞接着性表面を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記第一ユニットチップは、前記第一流路に連通する流路が形成された第一連結部を有し、
前記第二ユニットチップは、前記第二流路に連通する流路が形成された第二連結部を有し、
前記第一連結部と前記第二連結部とは、前記第一流路と前記第二流路とを連通させるように、直接連結されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
流路を有する針形状の連結部材を含み、
前記連結部材の一端が前記第一基板に穿刺されると共に、当該連結部材の他端が前記第二基板に穿刺されることにより、当該連結部材の流路を介して前記第一流路と前記第二流路とが連通している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記第一ユニットチップと前記第二ユニットチップとを含むユニットチップセットを複数有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記第一基板と前記第二基板とは、互いに同一の外形状である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマイクロチップ。
【請求項7】
前記第一細胞保持部と前記第二細胞保持部とに細胞が保持されている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマイクロチップ。
【請求項8】
前記第一細胞保持部に保持されている細胞と、前記第二細胞保持部に保持されている細胞と、は互いに異なる属性の細胞である、
ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロチップ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のマイクロチップを準備する準備工程と、
前記準備工程で準備された前記マイクロチップの前記第一細胞保持部から前記第二細胞保持部へ溶液を流通させて、前記第一細胞保持部に保持されている細胞が分泌した物質を、前記第二細胞保持部に保持されている細胞に接触させる接触工程と、
前記接触工程において前記第一細胞保持部に保持されている細胞が分泌した物質を接触させた、前記第二細胞保持部に保持されている細胞の応答を評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする細胞評価方法。
【請求項10】
前記評価工程において、前記第二細胞保持部に保持されている細胞の応答として、当該細胞の形態、当該細胞の数、又は当該細胞が分泌した所定物質の量、のうち少なくとも一つを評価する、
ことを特徴とする請求項9に記載の細胞評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−20486(P2007−20486A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208469(P2005−208469)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】