マイクロニードルの製造方法
【課題】穿刺性が優れた剣山型マイクロニードルの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂製の剣山型マイクロニードルの素材を射出成形法やプレス法で作製し、シリコン製平板や金属製平板を加熱して、素材となるマイクロニードルの先端部に密着させて樹脂を軟化、熔解させる。その後、上記平板を引き上げることにより、より鋭利になった突起部を持つマイクロニードルが構築できる。この製造方法により、鋭利な微小針を持つ剣山型マイクロニードルを作製することができる。この結果、指で押圧するだけで、容易に皮膚に穿刺できる剣山型マイクロニードルを作製することができるようになった。
【解決手段】樹脂製の剣山型マイクロニードルの素材を射出成形法やプレス法で作製し、シリコン製平板や金属製平板を加熱して、素材となるマイクロニードルの先端部に密着させて樹脂を軟化、熔解させる。その後、上記平板を引き上げることにより、より鋭利になった突起部を持つマイクロニードルが構築できる。この製造方法により、鋭利な微小針を持つ剣山型マイクロニードルを作製することができる。この結果、指で押圧するだけで、容易に皮膚に穿刺できる剣山型マイクロニードルを作製することができるようになった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルの先端が鋭利であり、皮膚を良好に穿刺できる剣山型のマイクロニードルの製造方法に関するものである。特に本発明は、樹脂製のマイクロニードルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルの製造方法としては、これまで色々な製造方法が試みられ報告されている。まず、材質が金属製か、樹脂製かで、大きく製造方法は異なってくる。樹脂製のマイクロニードルは、加工が容易であり、色々な形状のマイクロニードルが作製できるため、多くの検討が進められている。例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、樹脂製の平板を加熱溶融して、微小針を引き出す方法が開示されている。更に、特許文献3と特許文献4では、ヒアルロン酸やコラーゲン、水溶性ポリマー樹脂を用いて、鋳型に注入し、微小針を作製する方法が開示されている。
【0003】
最近ではマイクロニードルについての検討が進み、マイクロニードルの穿刺性は、マイクロニードルの微小針の先端が鋭利であれば、穿刺し易くなることが知られている。例えば、四角錐においては、先端部の交角が15〜20°であれば良好な結果が得られると報告されている(特許文献5)。更に、製造方法が種々検討され、先端角が20°、先端径が100nmの四角錐状のマイクロニードルや、先端の曲率半径が約2μmである四角錐状のマイクロニードルが作成されている(特許文献6、特許文献7)。
しかし、従来の技術では、金属製のマイクロニードルを作製する場合には、先端径をミクロン単位以下に製造することは可能であるが、樹脂製のマイクロニードルを作製する場合には、先端径をミクロン単位以下にコントロールして量産的に製造することは難しい状況である。何故なら、先端の尖った金型を作るのが難しいこと、また尖った金型ができたとしても樹脂を金型の先端まで充填することが難しいこと、また離型時には摩擦応力の影響で樹脂製の針の先端が脱落し易いこと等のことから、樹脂製マイクロニードルの先端部をミクロン単位でコントロールして製造することは非常に難しいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/093679号公報
【特許文献2】WO2010/016218号公報
【特許文献3】特開2008−142183号公報
【特許文献4】特開2010−82401号公報
【特許文献5】再公表2008−020633号公報
【特許文献6】特開2009−254876号公報
【特許文献7】特開2009−241357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皮膚穿刺性が良好な剣山型マイクロニードルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、加熱した剣山型のシリコン製治具を用いて、樹脂性プレートを部分的に溶解し、シリコン製治具を引き離すことにより、樹脂性プレートから剣山型マイクロニードルを引き出すことに成功している(特許文献1と2)。更に、本研究者らは、各種の方法で得られたマイクロニードルの先端部の形状を検討し、皮膚への穿刺性を高めるためには、マイクロニードルの微小針の先端部分の鋭利さが穿刺性に大きな影響を与えることを確認した。例えば、微小針の先端部の直径が20μm以下であり、且つ微小針の先端部の角度(交角)が40°以下であると、指で押圧するだけで容易に剣山型マイクロニードルが皮膚に穿刺できることを見出している。
【0007】
本発明者らは、上記の条件(微小針の先端部の直径が20μm以下であり、且つ微小針の先端部の角度(交角)が40°以下である)を満足する樹脂製の剣山型マイクロニードルの工業的な製造方法を検討した。即ち、図1に示される工程を用いることにより、工業的な剣山型マイクロニードルの製造が可能となることを見出した。即ち、本発明の製造方法の特徴は、まず、素材となる剣山型マイクロニードルを最初に作製する。その後、上記マイクロニードル素材の微小針の先端部を加熱溶解させて樹脂を引き出し、鋭利な先端部を持った微小針を形成させる方法である。素材となる剣山型マイクロニードルは、微小針の先端部が鋭利でないため、作り易くなっている。
例えば、射出成形法又はプレス法等の公知汎用手段で、樹脂製の剣山型マイクロニードルの素材(図1の(a))を作製する。次いで、得られたマイクロニードル素材の微小針の先端部を鋭利にするため、樹脂の融点以上に加熱したシリコン製平板又は金属製平板を上記微小針の先端部に接触させて、先端部の樹脂を溶解させる(図1の(b))。シリコン製平板又は金属製平板の温度を樹脂のガラス転移点から融点の間になるように冷却し、上記平板をマイクロニードルから引き離す。上記平板に付着した樹脂が引き伸ばされて切断され、鋭利な先端部を形成する(図1の(c))。以上の工程により、最初に得られた剣山型マイクロニードル素材の微小針の先端部を鋭利にすることができるようになった。本発明は、以上の知見に基づいて研究を重ねることによって、鋭利な先端部を持った剣山型マイクロニードルの製造方法を完成させたものである。
【0008】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)先端部が鋭利になった樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法であって、射出成形あるいはプレス法により作られた微小針ベース部分と微小針ベース部分の頂部を熔融し引き伸ばすことで形成することを特徴とする、先端が鋭利な部分と微小針ベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
(2)上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、その数が1cm2当たりに10〜100個である、上記(1)記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
(3)以下の工程を含むことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法、
a)熱板を加熱し、マイクロニードルに使用された樹脂の融点以上の温度に設定する、
b)剣山型マイクロニードル素材の微小針の先端部に、上記熱板を接触させて、微小針の先端部を熔融させる、
c)上記熱板を樹脂のガラス転移温度から融点の間の温度に冷却する、
d)上記熱板と剣山型マイクロニードルとを引き離し、
e)上記微小針の先端部に鋭利な突起を形成する。
(4)上記樹脂が、ポリグリコール酸樹脂またはグリコール酸−乳酸の共重合体樹脂である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)上記熱板が、シリコン、セラミック、ガラス、金属の中から選択されるものである、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
(6)上記剣山型マイクロニードル素材に接触させ熔解させる部分の上記熱板表面が水平面である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
(7)上記熱板が、樹脂に親和性が低い(樹脂濡れ性が悪い)金属製である、請求項5記載の製造方法。
(8)上記樹脂製剣山型マイクロニードル素材の微小針の形状が、円柱状、角錐状、円錐状、角錐台状または円錐台状であることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の製造方法。
(9)上記角錐状が、四角錐状または扁平な四角錐状である、上記(8)記載の製造方法。
(10)上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の製造方法。
(11)上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の製造方法で得られる、
微小針の先端部が鋭利になった部分とベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードル。
(12)上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、微小針の数が1cm2当たりに10〜100個であることを特徴とする、上記(11)記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
(13)上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、上記(11)または(12)に記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、指で押圧するだけで、容易に皮膚を穿刺できる鋭利な微小針先端部を持った剣山型マイクロニードルの製造方法に関するものである。本発明の製造方法は、各種の方法で得られた剣山型マイクロニードルを素材として用いて、その微小針の先端部を鋭利化する方法である。本発明の製造方法では、まず、作製しやすい方法で、素材となる剣山型マイクロニードルを作製し、その素材の微小針を熱板に接触させ、その先端部を軟化、溶解させる。次に、熱板を引き上げ、素材の微小針の先端部から樹脂を引き出し、鋭利な突起部を持った先端部を再構築する。以上のような方法であるため、製造方法としては簡便であるため、本発明の製造方法は汎用性が高いものである。
また、素材として使用する剣山型マイクロニードルは、射出成形などによって、容易に大量に合成できることから、コストの点や生産効率の点で非常に有利である。以上のように、本発明の製造方法は、鋭利な先端部を持つ剣山型マイクロニードルの製造方法として、非常に有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法の概略を表わした図である。
【図2】先端部の直径の測定方法を表わした図である。
【図3】先端部の交角の測定方法を表わした図である。
【図4】実施例2で製造された剣山型マイクロニードルの微小針の先端部の拡大写真である。この写真に基づき、先端の直径、先端の交角を測定したことを表わした図である。
【図5】実施例1で用いられる、射出成形法で剣山型マイクロニードル(素材)を作製するための鋳型の一部を表わした拡大写真である。
【図6】実施例1で製造された剣山型マイクロニードルの全体的な外観を表わした図(拡大写真)である。
【図7】実施例1で製造された、射出成形法によるマイクロニードルの微小針の先端部の拡大写真である。この写真の基づき、突起の直径を算出したことを表わした図である。
【図8】実施例2で製造された剣山型マイクロニードルの一部の拡大写真である。
【図9】実施例3で製造された剣山型マイクロニードルの微小針の先端部の拡大写真である。
【図10】本発明の製造方法で作製された剣山型マイクロニードルの穿刺性の評価試験方法を表わした概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
【0012】
本発明の「剣山型マイクロニードル」とは、樹脂製の複数の微小針が一定の間隔(ピッチ)を持って樹脂プレートに配設されているマイクロニードルのことである。前記微小針は、前記樹脂プレートに接する微小針の底部から頂部(先端部)までの高さが150μm〜1mmであり、前記微小針の前記底部の外径が100〜450μmであり、前記微小針の間隔が100μm〜2mmであるようなマイクロニードルのことを言う。好ましい微小針の高さとしては、約500μm〜1mmであり、好ましい微小針の間隔としては、500μm〜1mmを挙げることができる。剣山型マイクロニードルとしては、微小針の本数は特に限定されるものではないが、直径10mmの生分解性樹脂の基板当り、あるいは1cm2の基板当りに50〜200本存在することが望ましい。特に好ましいものとしては、80〜120本を挙げることができる。
【0013】
本発明の「樹脂製」とは、公知汎用の樹脂材料で形成されていると言うことであり、ここで使用される樹脂とは、特に限定されるものではない。本発明に使用可能な樹脂としては、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体等の脂肪族ポリエステル樹脂、例えばコラーゲン、ゼラチン等のポリペプチド類、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、マルトース、アルギネイト、アミロース、アガロース、デキストラン等の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性合成樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。好ましいものとしては、射出成型によるマイクロニードルの作製が可能な樹脂を挙げることができる。更に好ましいものとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体等の脂肪族ポリエステル樹脂に代表される生体内分解性樹脂を挙げることができる。なかでも、ポリグリコール酸樹脂は、強度が強く、衝撃にも強く折れ難いため、好ましいものの一つである。
【0014】
本発明の「剣山型マイクロニードル素材」とは、マイクロニードルの微小針の先端部が鋭利でなく、その分だけ製造が容易である剣山型マイクロニードルのことを言う。この素材となる剣山型マイクロニードルは、一般的な公知汎用手段で製造することができる。例えば、射出成形法やプレス方法によって製造することができる。
本発明の「射出成形法」とは、公知の汎用手段であり、例えば熱可塑性樹脂を高温にして熔融させ、低温の金型に高圧注入して固化させる方法を言う。例えば、熱可塑性樹脂として、ポリグリコール酸樹脂を使用することもできる(特開平10−72529)。
本発明の「プレス法」とは、熱可塑性樹脂を加熱して軟化させ、鋳型に圧着させてマイクロニードルを形成させる方法である(PCT/JP2010/055291)。
本発明の「微小針ベース部分」とは、上記剣山型マイクロニードル素材の微小針部分のことを言う。この素材に熱板を接着させることにより、微小針の先端部分(頂部)が熔解して鋭利になる部分と、溶解せずに残存する下部の微小針(微小針ベース部分)の部分に分かれることになる。
【0015】
本発明の「鋭利な突起」とは、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、上記微小針の先端部(鋭利な突起)の直径が、1〜20μmであり、上記先端部(鋭利な突起)の交角が、1〜40°であるものを言う。
本発明の「鋭利な突起の先端の直径」とは、図2に示されるように鋭利な突起の先端に形成される頂点部分を円形または球形で近似した場合の直径を表わす。上記先端の直径としては、1〜40μmであり、穿刺性を考慮すれば、20μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下を挙げることができる。先端の直径が小さければ、その分、鋭利な先端となるので、特に下限を限定することはないが、マイクロニードルの製造的な要請から、1〜20μmの範囲が好ましいものとして挙げることができる。より好ましいものとして、1〜10μmの範囲を挙げることができる。
本発明の「鋭利な突起の先端の交角」とは、図3に示されるように、頂点付近の接線で構成される(先端の頂点を含むマイクロニードルの断面に形成される)、頂点を含む角度(先端角)のことを言う。本発明の先端の交角は、1〜40°であり、先端の交角が小さいほど鋭利な先端となる。好ましい範囲としては、1〜25°の範囲が好ましいものとして挙げることができる。より好ましいものとして、1〜20°の範囲のものを挙げることができる。
なお、本発明の鋭利な突起を持つ微小針は、突起部分とその下部に別れ、突起部分は円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示す。鋭利な突起部分の土台となる下部は、どのような形状であってもよい。例えば、下部の微小針の形状は、円柱状、四角柱状等の多角柱状、四角柱の表面が凹部になっている糸車状断面の四角柱状、円錐台状、四角錐台状、三角錐台等の多角錐台状を挙げることができる。
【0016】
本発明の「熱板」とは、樹脂に接着して熱を伝え、樹脂を軟化、熔融させるための平板状の部材のことを言う。この部材としては、シリコン、セラミックス、ガラス、金属の中から、適宜選択して使用することができる。シリコンとしては、例えばシリコン平板を挙げることができる。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができ、セラミックス平板を挙げることができる。ガラスとしては、例えばソーダ石灰ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、強化ガラス等を挙げることができる。ガラス平板を使用することが挙げられる。金属としては、例えば鉄やステンレス、銅等の汎用の金属や合金等を挙げることができる。更に、被膜処理を施した汎用金属を用いることができる。被膜処理としては、例えばフッソ、チタン、テフロン(登録商標)等が有ります。汎用金属としては、ステンレス鋼、耐熱鋼、超合金、合金工具鋼、工具鋼、炭素鋼、合金鋼、高速度工具鋼、超硬合金、銅合金、アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0017】
本発明の熱板には、加熱手段と冷却手段を備えている。加熱手段としては、電気抵抗を利用した通常の加熱法や電磁誘導や超音波による加熱法を用いることができる。コストの面からは電気抵抗を利用する方法が好ましい。冷却手段としては、冷媒を吹き付ける方法や平板を加熱する熱源の内の空隙に冷媒液を循環させる方法や当該熱源を分割し加熱後分離して隙間を作りその隙間に冷媒を流すなどの方法を用いることができる。ここで冷媒とは空気などの気体を用いる場合と水やエチレングリコールなどの液体を用いる場合とがある。最も好ましい方法は熱源を分離し空気で冷やす方法である。
加熱温度や冷却温度としては使用する剣山型マイクロニードルの樹脂の材質の融点とガラス転移温度の間に設定することが望ましい。好ましくは、融点から15℃〜35℃以下の範囲を挙げることができる。例えば、ポリグリコール酸樹脂を使用する場合には、235℃〜245℃の範囲にシリコン製平板を加熱し、マイクロニードルの微小針の先端部分に接着してポリグリコール酸を溶解する。ポリグリコール酸を熔解後、シリコン製平板の温度を200℃〜220℃の範囲に冷却することが望ましい。
【0018】
なお、シリコン製の剣山型マイクロニードルを使用して樹脂製プレートから針状突起を引き出す方法(特許文献1)と本発明方法を対比すると、何回もの操作を行なうと、本発明方法(シリコン平板)でも、特許文献1(シリコン製剣山型マイクロニードル)でも、樹脂が付着することによって、均一性のある鋭利な突起が作製困難になる。しかし、付着した樹脂を除去、清掃する場合には、本発明の場合(シリコン平板)の方が、付着残存樹脂の除去が容易である。一方、特許文献1(シリコン製剣山型マイクロニードル)の場合には、微小針の間に詰まった樹脂残存物を除去するのは極めて困難である。その意味で、本発明の方法は、特許文献1の方法より、工程管理が非常に容易であり、実生産タイプである。また、熱板として、シリコン製平板の代わりに、セラミック平板を用いても同様に実施可能である。
【0019】
本発明の熱板として金属平板を用いる場合、シリコン製平板と同様の平面性を持つ平板が好ましい。好ましい金属としては、溶解した樹脂に対する濡れ性が悪いものを挙げることができる。例えば、ステンレス鋼、被膜処理を施した汎用金属等を挙げることができる。
金属平板を使用することにより、剣山型マイクロニードルの素材を用いて、マイクロニードルの中心部と周辺部に関して温度差を作らず、それぞれの個所の微小針の先端部を溶解させ、また冷却して、マイクロニードル全体として均一性の取れた鋭利な突起を作製することができる。金属平板の加熱温度や冷却温度は、シリコン平板と同じであり、いずれも用いるマイクロニードルの樹脂の材質に依存するものである。
金属平板についても、シリコン平板と同様に、剣山型マイクロニードル素材の樹脂
が残存し、何回も実施すれば、雪だるま式に残存量が増加し、均一性のある鋭利な突起を作製するのが困難になってくる。しかし、熔解した樹脂に対して濡れ性の悪い金属を使用する場合には、樹脂の付着量が抑制できることになる。従って、メンテナンスの点から、好ましい金属としては、例えばステンレス鋼、被膜処理を施した汎用金属等の、熔解した樹脂に対する濡れ性の悪い金属材料を挙げることができる。
【0020】
本発明で得られた鋭利な突起部分の形状(直径、交角)の評価方法としては、図4に示されるように、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−1000を使用して、作製された剣山型マイクロニードルの先端部分の拡大写真を撮り、先端部を円で近似し、接線を引いて、直径と角度の値を測定する。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)剣山型マイクロニードル素材の製造
図5に示されるように、金属平板(縦400μm、横が12000μm、長さが15000μmの直方体)に三角錐状の切り込み(長さ600μm、下部の切り込みの深さ80μm、下部の切り込みの幅200μm)を作製した。この金属平板を重ねて2枚一組とし、切り込み部分同士を合わせ、扁平な四角錐の凹部(穴)を形成させた。凹部の数は1cm当たり5〜11である。金属平板2枚一組を一つの鋳型として、この鋳型を11枚重ねて剣山型マイクロニードルの金型とした。この金型には、凹部(穴)の数が98個存在する。この金型を用いて、ポリグリコール酸樹脂の射出成形を行なった。
得られたポリグリコール酸樹脂の剣山型マイクロニードルの拡大写真を図6に示す。このマイクロニードルの微小針の先端部は、図7の部分拡大写真に示されるように先端の直径が約51μmであり、先端部分の交角が21°の扁平な四角錐であった。このような微小針を98本持ち、微小針の高さが約650μmの剣山型マイクロニードルが作製できた。
【0023】
(実施例2)鋭利な突起を持つ剣山型マイクロニードルの製造
実施例1で作製された剣山型マイクロニードルを素材として用いて、図1に示すように、シリコン製平板を240℃に加熱して、上記マイクロニードルの先端部に接触させ、先端部の樹脂を軟化、熔解させる。206℃に上記平板を冷却した後に、上記平板を引き上げる。この操作により、鋭利な突起のある剣山型マイクロニードルが得られた。得られた剣山型マイクロニードルの微小針の高さは約520μmであり、そのマイクロニードルの一部を図8に示す。このマイクロニードルの先端部の拡大写真が図4であり、先端の直径は16.4μm、先端の交角は41°であった。
以上のように、材料となった実施例1のマイクロニードル素材では、先端部の直径が約51μmであったが、本発明の製造方法を適用することにより、先端部の直径を約1/3の16.4μmにすることができ、先端部をより鋭利なものにできた。しかし、先端部の交角は、21°から41°に拡大していた。
なお、剣山型マイクロニードルとしては、図8に示されるように、均一性のある鋭利な突起を持つマイクロニードルに変化させることができた。
【0024】
(実施例3)鋭利な突起を持つ剣山型マイクロニードルの製造
実施例2と同様に剣山型マイクロニードルを作製したが、シリコン製平板でなく、ステンレス製平板を使用した。金属平板を使用する場合、樹脂との親和性(濡れ性)が高ければ、平板に付着した樹脂が、玉状にまとまらず、樹脂が流れるため、何回も操作を行なうと、製造される微小針の高さにバラツキが出てくることになる。従って、樹脂の濡れ性の悪い(樹脂が流れ難い)ステンレス製平板を用いた。その結果、図9に示されるような先端部を持った剣山型マイクロニードルが得られた。
図9の拡大写真で示されるように、先端部の突起の直径は22.8μmであり、先端部の突起の交角は29°であった。
以上のように、実施例1のマイクロニードルの素材から、本発明の製造方法を使用することにより、先端部の交角をあまり拡大せず、先端部の直径を約51μmから約23μmに半減させ、先端部を鋭利化することができた。
【0025】
(試験例1)マイクロニードルの皮膚穿刺性の評価試験
(1)ヒト皮膚モデル
SIS30%と流動パラフィン70%を加熱溶解させて成形した6mm厚のシートを設置し、更にSIS15%と流動パラフィン85%を加熱溶解させて成形した9mm厚のシートを重ねて2層とする。この基盤の上に、ウィスターラット(雄性、5週)の腹部皮膚を設置して、ヒト皮膚モデルとする。
(2)機材
島津製作所製小型卓上試験機(Eztest)を使用し、そのロードセルにプランジャー(φ5mm)を設置し、更にその先端にφ12mmのポリプロピレン(PP)板(0.8mm厚)を取り付けた。そのPP板の先端にマイクロニードルを設置した。
(3)剣山型マイクロニードル
上記実施例1〜3で得られたポリグリコール酸(PGA)製の剣山型マイクロニードル(φ10mm、98本の微小針)を使用した。
(4)評価方法
図10に示すように、島津製作所製小型卓上試験機(Eztest)のロードセルにプランジャー(φ5mm)を設置し、その先端にφ12mmPP板(0.8mm厚)を取り付ける。更にその先に本発明のPGA製マイクロニードルを設置した。上記ヒト皮膚モデルの皮膚表面に上記マイクロニードルの微小針先端部を接触させる。小型卓上試験機で10mmの距離だけ上記マイクロニードルを押し込み穿刺する。その際の上記マイクロニードルに掛かる応力を測定した。
また、穿刺後、ヒト皮膚モデル表面のラット皮膚(wister 5w ♂ 腹部)を取り出し、2%ゲンチアナバイオレットEt−OH液で染色した。Et−OHで洗浄すると、穿刺されている個所は紫色で着色されるので、着色の個数を計算し、マイクロニードルの穿刺率を評価した。
(5)評価結果
実施例1及び実施例2と3の剣山型マイクロニードルを評価した結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
上記表1の結果から、本願発明で得られた剣山型マイクロニードルは、実施例1の剣山型マイクロニードル(射出成形後の剣山型マイクロニードル)と対比して、数倍となる良好な穿刺性を示すことが分かった。
また、実施例2と3の剣山型マイクロニードルで穿刺された個所は、全て色濃く染色されており、皮膚を充分に穿刺していたことが示されている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法で得られたマイクロニードルは、微小針の先端部分が鋭利になっており、しかも微小針の先端部の欠損等が少なく品質的にも均一である。そのため、射出成形等で得られたままの剣山型マイクロニードルと比較して、皮膚への穿刺性が大きく改善されている。このため、本発明の製造方法は、穿刺性の良好なマイクロニードルの製造方法として、実用的であり、かつ工業的なスケールで実施可能なものである。本発明の製造方法により剣山型マイクロニードルが大量に製造可能となっているため、インフルエンザワクチン等の皮下接種等の大量使用にこれらのマイクロニードルを使用することができるようになった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルの先端が鋭利であり、皮膚を良好に穿刺できる剣山型のマイクロニードルの製造方法に関するものである。特に本発明は、樹脂製のマイクロニードルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルの製造方法としては、これまで色々な製造方法が試みられ報告されている。まず、材質が金属製か、樹脂製かで、大きく製造方法は異なってくる。樹脂製のマイクロニードルは、加工が容易であり、色々な形状のマイクロニードルが作製できるため、多くの検討が進められている。例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、樹脂製の平板を加熱溶融して、微小針を引き出す方法が開示されている。更に、特許文献3と特許文献4では、ヒアルロン酸やコラーゲン、水溶性ポリマー樹脂を用いて、鋳型に注入し、微小針を作製する方法が開示されている。
【0003】
最近ではマイクロニードルについての検討が進み、マイクロニードルの穿刺性は、マイクロニードルの微小針の先端が鋭利であれば、穿刺し易くなることが知られている。例えば、四角錐においては、先端部の交角が15〜20°であれば良好な結果が得られると報告されている(特許文献5)。更に、製造方法が種々検討され、先端角が20°、先端径が100nmの四角錐状のマイクロニードルや、先端の曲率半径が約2μmである四角錐状のマイクロニードルが作成されている(特許文献6、特許文献7)。
しかし、従来の技術では、金属製のマイクロニードルを作製する場合には、先端径をミクロン単位以下に製造することは可能であるが、樹脂製のマイクロニードルを作製する場合には、先端径をミクロン単位以下にコントロールして量産的に製造することは難しい状況である。何故なら、先端の尖った金型を作るのが難しいこと、また尖った金型ができたとしても樹脂を金型の先端まで充填することが難しいこと、また離型時には摩擦応力の影響で樹脂製の針の先端が脱落し易いこと等のことから、樹脂製マイクロニードルの先端部をミクロン単位でコントロールして製造することは非常に難しいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/093679号公報
【特許文献2】WO2010/016218号公報
【特許文献3】特開2008−142183号公報
【特許文献4】特開2010−82401号公報
【特許文献5】再公表2008−020633号公報
【特許文献6】特開2009−254876号公報
【特許文献7】特開2009−241357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皮膚穿刺性が良好な剣山型マイクロニードルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、加熱した剣山型のシリコン製治具を用いて、樹脂性プレートを部分的に溶解し、シリコン製治具を引き離すことにより、樹脂性プレートから剣山型マイクロニードルを引き出すことに成功している(特許文献1と2)。更に、本研究者らは、各種の方法で得られたマイクロニードルの先端部の形状を検討し、皮膚への穿刺性を高めるためには、マイクロニードルの微小針の先端部分の鋭利さが穿刺性に大きな影響を与えることを確認した。例えば、微小針の先端部の直径が20μm以下であり、且つ微小針の先端部の角度(交角)が40°以下であると、指で押圧するだけで容易に剣山型マイクロニードルが皮膚に穿刺できることを見出している。
【0007】
本発明者らは、上記の条件(微小針の先端部の直径が20μm以下であり、且つ微小針の先端部の角度(交角)が40°以下である)を満足する樹脂製の剣山型マイクロニードルの工業的な製造方法を検討した。即ち、図1に示される工程を用いることにより、工業的な剣山型マイクロニードルの製造が可能となることを見出した。即ち、本発明の製造方法の特徴は、まず、素材となる剣山型マイクロニードルを最初に作製する。その後、上記マイクロニードル素材の微小針の先端部を加熱溶解させて樹脂を引き出し、鋭利な先端部を持った微小針を形成させる方法である。素材となる剣山型マイクロニードルは、微小針の先端部が鋭利でないため、作り易くなっている。
例えば、射出成形法又はプレス法等の公知汎用手段で、樹脂製の剣山型マイクロニードルの素材(図1の(a))を作製する。次いで、得られたマイクロニードル素材の微小針の先端部を鋭利にするため、樹脂の融点以上に加熱したシリコン製平板又は金属製平板を上記微小針の先端部に接触させて、先端部の樹脂を溶解させる(図1の(b))。シリコン製平板又は金属製平板の温度を樹脂のガラス転移点から融点の間になるように冷却し、上記平板をマイクロニードルから引き離す。上記平板に付着した樹脂が引き伸ばされて切断され、鋭利な先端部を形成する(図1の(c))。以上の工程により、最初に得られた剣山型マイクロニードル素材の微小針の先端部を鋭利にすることができるようになった。本発明は、以上の知見に基づいて研究を重ねることによって、鋭利な先端部を持った剣山型マイクロニードルの製造方法を完成させたものである。
【0008】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)先端部が鋭利になった樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法であって、射出成形あるいはプレス法により作られた微小針ベース部分と微小針ベース部分の頂部を熔融し引き伸ばすことで形成することを特徴とする、先端が鋭利な部分と微小針ベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
(2)上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、その数が1cm2当たりに10〜100個である、上記(1)記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
(3)以下の工程を含むことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法、
a)熱板を加熱し、マイクロニードルに使用された樹脂の融点以上の温度に設定する、
b)剣山型マイクロニードル素材の微小針の先端部に、上記熱板を接触させて、微小針の先端部を熔融させる、
c)上記熱板を樹脂のガラス転移温度から融点の間の温度に冷却する、
d)上記熱板と剣山型マイクロニードルとを引き離し、
e)上記微小針の先端部に鋭利な突起を形成する。
(4)上記樹脂が、ポリグリコール酸樹脂またはグリコール酸−乳酸の共重合体樹脂である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)上記熱板が、シリコン、セラミック、ガラス、金属の中から選択されるものである、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
(6)上記剣山型マイクロニードル素材に接触させ熔解させる部分の上記熱板表面が水平面である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
(7)上記熱板が、樹脂に親和性が低い(樹脂濡れ性が悪い)金属製である、請求項5記載の製造方法。
(8)上記樹脂製剣山型マイクロニードル素材の微小針の形状が、円柱状、角錐状、円錐状、角錐台状または円錐台状であることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の製造方法。
(9)上記角錐状が、四角錐状または扁平な四角錐状である、上記(8)記載の製造方法。
(10)上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の製造方法。
(11)上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の製造方法で得られる、
微小針の先端部が鋭利になった部分とベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードル。
(12)上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、微小針の数が1cm2当たりに10〜100個であることを特徴とする、上記(11)記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
(13)上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、上記(11)または(12)に記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、指で押圧するだけで、容易に皮膚を穿刺できる鋭利な微小針先端部を持った剣山型マイクロニードルの製造方法に関するものである。本発明の製造方法は、各種の方法で得られた剣山型マイクロニードルを素材として用いて、その微小針の先端部を鋭利化する方法である。本発明の製造方法では、まず、作製しやすい方法で、素材となる剣山型マイクロニードルを作製し、その素材の微小針を熱板に接触させ、その先端部を軟化、溶解させる。次に、熱板を引き上げ、素材の微小針の先端部から樹脂を引き出し、鋭利な突起部を持った先端部を再構築する。以上のような方法であるため、製造方法としては簡便であるため、本発明の製造方法は汎用性が高いものである。
また、素材として使用する剣山型マイクロニードルは、射出成形などによって、容易に大量に合成できることから、コストの点や生産効率の点で非常に有利である。以上のように、本発明の製造方法は、鋭利な先端部を持つ剣山型マイクロニードルの製造方法として、非常に有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法の概略を表わした図である。
【図2】先端部の直径の測定方法を表わした図である。
【図3】先端部の交角の測定方法を表わした図である。
【図4】実施例2で製造された剣山型マイクロニードルの微小針の先端部の拡大写真である。この写真に基づき、先端の直径、先端の交角を測定したことを表わした図である。
【図5】実施例1で用いられる、射出成形法で剣山型マイクロニードル(素材)を作製するための鋳型の一部を表わした拡大写真である。
【図6】実施例1で製造された剣山型マイクロニードルの全体的な外観を表わした図(拡大写真)である。
【図7】実施例1で製造された、射出成形法によるマイクロニードルの微小針の先端部の拡大写真である。この写真の基づき、突起の直径を算出したことを表わした図である。
【図8】実施例2で製造された剣山型マイクロニードルの一部の拡大写真である。
【図9】実施例3で製造された剣山型マイクロニードルの微小針の先端部の拡大写真である。
【図10】本発明の製造方法で作製された剣山型マイクロニードルの穿刺性の評価試験方法を表わした概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
【0012】
本発明の「剣山型マイクロニードル」とは、樹脂製の複数の微小針が一定の間隔(ピッチ)を持って樹脂プレートに配設されているマイクロニードルのことである。前記微小針は、前記樹脂プレートに接する微小針の底部から頂部(先端部)までの高さが150μm〜1mmであり、前記微小針の前記底部の外径が100〜450μmであり、前記微小針の間隔が100μm〜2mmであるようなマイクロニードルのことを言う。好ましい微小針の高さとしては、約500μm〜1mmであり、好ましい微小針の間隔としては、500μm〜1mmを挙げることができる。剣山型マイクロニードルとしては、微小針の本数は特に限定されるものではないが、直径10mmの生分解性樹脂の基板当り、あるいは1cm2の基板当りに50〜200本存在することが望ましい。特に好ましいものとしては、80〜120本を挙げることができる。
【0013】
本発明の「樹脂製」とは、公知汎用の樹脂材料で形成されていると言うことであり、ここで使用される樹脂とは、特に限定されるものではない。本発明に使用可能な樹脂としては、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体等の脂肪族ポリエステル樹脂、例えばコラーゲン、ゼラチン等のポリペプチド類、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、マルトース、アルギネイト、アミロース、アガロース、デキストラン等の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性合成樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。好ましいものとしては、射出成型によるマイクロニードルの作製が可能な樹脂を挙げることができる。更に好ましいものとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体等の脂肪族ポリエステル樹脂に代表される生体内分解性樹脂を挙げることができる。なかでも、ポリグリコール酸樹脂は、強度が強く、衝撃にも強く折れ難いため、好ましいものの一つである。
【0014】
本発明の「剣山型マイクロニードル素材」とは、マイクロニードルの微小針の先端部が鋭利でなく、その分だけ製造が容易である剣山型マイクロニードルのことを言う。この素材となる剣山型マイクロニードルは、一般的な公知汎用手段で製造することができる。例えば、射出成形法やプレス方法によって製造することができる。
本発明の「射出成形法」とは、公知の汎用手段であり、例えば熱可塑性樹脂を高温にして熔融させ、低温の金型に高圧注入して固化させる方法を言う。例えば、熱可塑性樹脂として、ポリグリコール酸樹脂を使用することもできる(特開平10−72529)。
本発明の「プレス法」とは、熱可塑性樹脂を加熱して軟化させ、鋳型に圧着させてマイクロニードルを形成させる方法である(PCT/JP2010/055291)。
本発明の「微小針ベース部分」とは、上記剣山型マイクロニードル素材の微小針部分のことを言う。この素材に熱板を接着させることにより、微小針の先端部分(頂部)が熔解して鋭利になる部分と、溶解せずに残存する下部の微小針(微小針ベース部分)の部分に分かれることになる。
【0015】
本発明の「鋭利な突起」とは、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、上記微小針の先端部(鋭利な突起)の直径が、1〜20μmであり、上記先端部(鋭利な突起)の交角が、1〜40°であるものを言う。
本発明の「鋭利な突起の先端の直径」とは、図2に示されるように鋭利な突起の先端に形成される頂点部分を円形または球形で近似した場合の直径を表わす。上記先端の直径としては、1〜40μmであり、穿刺性を考慮すれば、20μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下を挙げることができる。先端の直径が小さければ、その分、鋭利な先端となるので、特に下限を限定することはないが、マイクロニードルの製造的な要請から、1〜20μmの範囲が好ましいものとして挙げることができる。より好ましいものとして、1〜10μmの範囲を挙げることができる。
本発明の「鋭利な突起の先端の交角」とは、図3に示されるように、頂点付近の接線で構成される(先端の頂点を含むマイクロニードルの断面に形成される)、頂点を含む角度(先端角)のことを言う。本発明の先端の交角は、1〜40°であり、先端の交角が小さいほど鋭利な先端となる。好ましい範囲としては、1〜25°の範囲が好ましいものとして挙げることができる。より好ましいものとして、1〜20°の範囲のものを挙げることができる。
なお、本発明の鋭利な突起を持つ微小針は、突起部分とその下部に別れ、突起部分は円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示す。鋭利な突起部分の土台となる下部は、どのような形状であってもよい。例えば、下部の微小針の形状は、円柱状、四角柱状等の多角柱状、四角柱の表面が凹部になっている糸車状断面の四角柱状、円錐台状、四角錐台状、三角錐台等の多角錐台状を挙げることができる。
【0016】
本発明の「熱板」とは、樹脂に接着して熱を伝え、樹脂を軟化、熔融させるための平板状の部材のことを言う。この部材としては、シリコン、セラミックス、ガラス、金属の中から、適宜選択して使用することができる。シリコンとしては、例えばシリコン平板を挙げることができる。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができ、セラミックス平板を挙げることができる。ガラスとしては、例えばソーダ石灰ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、強化ガラス等を挙げることができる。ガラス平板を使用することが挙げられる。金属としては、例えば鉄やステンレス、銅等の汎用の金属や合金等を挙げることができる。更に、被膜処理を施した汎用金属を用いることができる。被膜処理としては、例えばフッソ、チタン、テフロン(登録商標)等が有ります。汎用金属としては、ステンレス鋼、耐熱鋼、超合金、合金工具鋼、工具鋼、炭素鋼、合金鋼、高速度工具鋼、超硬合金、銅合金、アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0017】
本発明の熱板には、加熱手段と冷却手段を備えている。加熱手段としては、電気抵抗を利用した通常の加熱法や電磁誘導や超音波による加熱法を用いることができる。コストの面からは電気抵抗を利用する方法が好ましい。冷却手段としては、冷媒を吹き付ける方法や平板を加熱する熱源の内の空隙に冷媒液を循環させる方法や当該熱源を分割し加熱後分離して隙間を作りその隙間に冷媒を流すなどの方法を用いることができる。ここで冷媒とは空気などの気体を用いる場合と水やエチレングリコールなどの液体を用いる場合とがある。最も好ましい方法は熱源を分離し空気で冷やす方法である。
加熱温度や冷却温度としては使用する剣山型マイクロニードルの樹脂の材質の融点とガラス転移温度の間に設定することが望ましい。好ましくは、融点から15℃〜35℃以下の範囲を挙げることができる。例えば、ポリグリコール酸樹脂を使用する場合には、235℃〜245℃の範囲にシリコン製平板を加熱し、マイクロニードルの微小針の先端部分に接着してポリグリコール酸を溶解する。ポリグリコール酸を熔解後、シリコン製平板の温度を200℃〜220℃の範囲に冷却することが望ましい。
【0018】
なお、シリコン製の剣山型マイクロニードルを使用して樹脂製プレートから針状突起を引き出す方法(特許文献1)と本発明方法を対比すると、何回もの操作を行なうと、本発明方法(シリコン平板)でも、特許文献1(シリコン製剣山型マイクロニードル)でも、樹脂が付着することによって、均一性のある鋭利な突起が作製困難になる。しかし、付着した樹脂を除去、清掃する場合には、本発明の場合(シリコン平板)の方が、付着残存樹脂の除去が容易である。一方、特許文献1(シリコン製剣山型マイクロニードル)の場合には、微小針の間に詰まった樹脂残存物を除去するのは極めて困難である。その意味で、本発明の方法は、特許文献1の方法より、工程管理が非常に容易であり、実生産タイプである。また、熱板として、シリコン製平板の代わりに、セラミック平板を用いても同様に実施可能である。
【0019】
本発明の熱板として金属平板を用いる場合、シリコン製平板と同様の平面性を持つ平板が好ましい。好ましい金属としては、溶解した樹脂に対する濡れ性が悪いものを挙げることができる。例えば、ステンレス鋼、被膜処理を施した汎用金属等を挙げることができる。
金属平板を使用することにより、剣山型マイクロニードルの素材を用いて、マイクロニードルの中心部と周辺部に関して温度差を作らず、それぞれの個所の微小針の先端部を溶解させ、また冷却して、マイクロニードル全体として均一性の取れた鋭利な突起を作製することができる。金属平板の加熱温度や冷却温度は、シリコン平板と同じであり、いずれも用いるマイクロニードルの樹脂の材質に依存するものである。
金属平板についても、シリコン平板と同様に、剣山型マイクロニードル素材の樹脂
が残存し、何回も実施すれば、雪だるま式に残存量が増加し、均一性のある鋭利な突起を作製するのが困難になってくる。しかし、熔解した樹脂に対して濡れ性の悪い金属を使用する場合には、樹脂の付着量が抑制できることになる。従って、メンテナンスの点から、好ましい金属としては、例えばステンレス鋼、被膜処理を施した汎用金属等の、熔解した樹脂に対する濡れ性の悪い金属材料を挙げることができる。
【0020】
本発明で得られた鋭利な突起部分の形状(直径、交角)の評価方法としては、図4に示されるように、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−1000を使用して、作製された剣山型マイクロニードルの先端部分の拡大写真を撮り、先端部を円で近似し、接線を引いて、直径と角度の値を測定する。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)剣山型マイクロニードル素材の製造
図5に示されるように、金属平板(縦400μm、横が12000μm、長さが15000μmの直方体)に三角錐状の切り込み(長さ600μm、下部の切り込みの深さ80μm、下部の切り込みの幅200μm)を作製した。この金属平板を重ねて2枚一組とし、切り込み部分同士を合わせ、扁平な四角錐の凹部(穴)を形成させた。凹部の数は1cm当たり5〜11である。金属平板2枚一組を一つの鋳型として、この鋳型を11枚重ねて剣山型マイクロニードルの金型とした。この金型には、凹部(穴)の数が98個存在する。この金型を用いて、ポリグリコール酸樹脂の射出成形を行なった。
得られたポリグリコール酸樹脂の剣山型マイクロニードルの拡大写真を図6に示す。このマイクロニードルの微小針の先端部は、図7の部分拡大写真に示されるように先端の直径が約51μmであり、先端部分の交角が21°の扁平な四角錐であった。このような微小針を98本持ち、微小針の高さが約650μmの剣山型マイクロニードルが作製できた。
【0023】
(実施例2)鋭利な突起を持つ剣山型マイクロニードルの製造
実施例1で作製された剣山型マイクロニードルを素材として用いて、図1に示すように、シリコン製平板を240℃に加熱して、上記マイクロニードルの先端部に接触させ、先端部の樹脂を軟化、熔解させる。206℃に上記平板を冷却した後に、上記平板を引き上げる。この操作により、鋭利な突起のある剣山型マイクロニードルが得られた。得られた剣山型マイクロニードルの微小針の高さは約520μmであり、そのマイクロニードルの一部を図8に示す。このマイクロニードルの先端部の拡大写真が図4であり、先端の直径は16.4μm、先端の交角は41°であった。
以上のように、材料となった実施例1のマイクロニードル素材では、先端部の直径が約51μmであったが、本発明の製造方法を適用することにより、先端部の直径を約1/3の16.4μmにすることができ、先端部をより鋭利なものにできた。しかし、先端部の交角は、21°から41°に拡大していた。
なお、剣山型マイクロニードルとしては、図8に示されるように、均一性のある鋭利な突起を持つマイクロニードルに変化させることができた。
【0024】
(実施例3)鋭利な突起を持つ剣山型マイクロニードルの製造
実施例2と同様に剣山型マイクロニードルを作製したが、シリコン製平板でなく、ステンレス製平板を使用した。金属平板を使用する場合、樹脂との親和性(濡れ性)が高ければ、平板に付着した樹脂が、玉状にまとまらず、樹脂が流れるため、何回も操作を行なうと、製造される微小針の高さにバラツキが出てくることになる。従って、樹脂の濡れ性の悪い(樹脂が流れ難い)ステンレス製平板を用いた。その結果、図9に示されるような先端部を持った剣山型マイクロニードルが得られた。
図9の拡大写真で示されるように、先端部の突起の直径は22.8μmであり、先端部の突起の交角は29°であった。
以上のように、実施例1のマイクロニードルの素材から、本発明の製造方法を使用することにより、先端部の交角をあまり拡大せず、先端部の直径を約51μmから約23μmに半減させ、先端部を鋭利化することができた。
【0025】
(試験例1)マイクロニードルの皮膚穿刺性の評価試験
(1)ヒト皮膚モデル
SIS30%と流動パラフィン70%を加熱溶解させて成形した6mm厚のシートを設置し、更にSIS15%と流動パラフィン85%を加熱溶解させて成形した9mm厚のシートを重ねて2層とする。この基盤の上に、ウィスターラット(雄性、5週)の腹部皮膚を設置して、ヒト皮膚モデルとする。
(2)機材
島津製作所製小型卓上試験機(Eztest)を使用し、そのロードセルにプランジャー(φ5mm)を設置し、更にその先端にφ12mmのポリプロピレン(PP)板(0.8mm厚)を取り付けた。そのPP板の先端にマイクロニードルを設置した。
(3)剣山型マイクロニードル
上記実施例1〜3で得られたポリグリコール酸(PGA)製の剣山型マイクロニードル(φ10mm、98本の微小針)を使用した。
(4)評価方法
図10に示すように、島津製作所製小型卓上試験機(Eztest)のロードセルにプランジャー(φ5mm)を設置し、その先端にφ12mmPP板(0.8mm厚)を取り付ける。更にその先に本発明のPGA製マイクロニードルを設置した。上記ヒト皮膚モデルの皮膚表面に上記マイクロニードルの微小針先端部を接触させる。小型卓上試験機で10mmの距離だけ上記マイクロニードルを押し込み穿刺する。その際の上記マイクロニードルに掛かる応力を測定した。
また、穿刺後、ヒト皮膚モデル表面のラット皮膚(wister 5w ♂ 腹部)を取り出し、2%ゲンチアナバイオレットEt−OH液で染色した。Et−OHで洗浄すると、穿刺されている個所は紫色で着色されるので、着色の個数を計算し、マイクロニードルの穿刺率を評価した。
(5)評価結果
実施例1及び実施例2と3の剣山型マイクロニードルを評価した結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
上記表1の結果から、本願発明で得られた剣山型マイクロニードルは、実施例1の剣山型マイクロニードル(射出成形後の剣山型マイクロニードル)と対比して、数倍となる良好な穿刺性を示すことが分かった。
また、実施例2と3の剣山型マイクロニードルで穿刺された個所は、全て色濃く染色されており、皮膚を充分に穿刺していたことが示されている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法で得られたマイクロニードルは、微小針の先端部分が鋭利になっており、しかも微小針の先端部の欠損等が少なく品質的にも均一である。そのため、射出成形等で得られたままの剣山型マイクロニードルと比較して、皮膚への穿刺性が大きく改善されている。このため、本発明の製造方法は、穿刺性の良好なマイクロニードルの製造方法として、実用的であり、かつ工業的なスケールで実施可能なものである。本発明の製造方法により剣山型マイクロニードルが大量に製造可能となっているため、インフルエンザワクチン等の皮下接種等の大量使用にこれらのマイクロニードルを使用することができるようになった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が鋭利になった樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法であって、射出成形あるいはプレス法により作られた微小針ベース部分と微小針ベース部分の頂部を熔融し引き伸ばすことで形成することを特徴とする、先端が鋭利な部分と微小針ベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
【請求項2】
上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、その数が1cm2当たりに10〜100個である、請求項1記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
【請求項3】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法、
a)熱板を加熱し、マイクロニードルに使用された樹脂の融点以上の温度に設定する、
b)剣山型マイクロニードル素材の微小針の先端部に、上記熱板を接触させて、微小針の先端部を熔融させる、
c)上記熱板を樹脂のガラス転移温度から融点の間の温度に冷却する、
d)上記熱板と剣山型マイクロニードルとを引き離し、
e)上記微小針の先端部に鋭利な突起を形成する。
【請求項4】
上記樹脂が、ポリグリコール酸樹脂またはグリコール酸−乳酸の共重合体樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記熱板が、シリコン、セラミック、ガラス、金属の中から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記剣山型マイクロニードル素材に接触させ熔解させる部分の上記熱板表面が水平面である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記熱板が、樹脂に親和性が低い(樹脂濡れ性が悪い)金属製である、請求項5記載の製造方法。
【請求項8】
上記樹脂製剣山型マイクロニードル素材の微小針の形状が、円柱状、角錐状、円錐状、角錐台状または円錐台状であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記角錐状が、四角錐状または扁平な四角錐状である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法で得られる、
微小針の先端部が鋭利になった部分とベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードル。
【請求項12】
上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、微小針の数が1cm2当たりに10〜100個であることを特徴とする、請求項11記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
【請求項13】
上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
【請求項1】
先端部が鋭利になった樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法であって、射出成形あるいはプレス法により作られた微小針ベース部分と微小針ベース部分の頂部を熔融し引き伸ばすことで形成することを特徴とする、先端が鋭利な部分と微小針ベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
【請求項2】
上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、その数が1cm2当たりに10〜100個である、請求項1記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法。
【請求項3】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂製剣山型マイクロニードルの製造方法、
a)熱板を加熱し、マイクロニードルに使用された樹脂の融点以上の温度に設定する、
b)剣山型マイクロニードル素材の微小針の先端部に、上記熱板を接触させて、微小針の先端部を熔融させる、
c)上記熱板を樹脂のガラス転移温度から融点の間の温度に冷却する、
d)上記熱板と剣山型マイクロニードルとを引き離し、
e)上記微小針の先端部に鋭利な突起を形成する。
【請求項4】
上記樹脂が、ポリグリコール酸樹脂またはグリコール酸−乳酸の共重合体樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記熱板が、シリコン、セラミック、ガラス、金属の中から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記剣山型マイクロニードル素材に接触させ熔解させる部分の上記熱板表面が水平面である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記熱板が、樹脂に親和性が低い(樹脂濡れ性が悪い)金属製である、請求項5記載の製造方法。
【請求項8】
上記樹脂製剣山型マイクロニードル素材の微小針の形状が、円柱状、角錐状、円錐状、角錐台状または円錐台状であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記角錐状が、四角錐状または扁平な四角錐状である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法で得られる、
微小針の先端部が鋭利になった部分とベース部分で構成される樹脂製剣山型マイクロニードル。
【請求項12】
上記マイクロニードルの微小針の高さが150μm以上、2mm以下で、微小針の数が1cm2当たりに10〜100個であることを特徴とする、請求項11記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
【請求項13】
上記鋭利な突起の形状が、円錐形、多段階円錐形、コニーデ形の形状を示し、
上記鋭利な突起の先端の直径が、1〜20μmであり、
上記鋭利な突起の先端の交角が、1〜40°である
ことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の樹脂製剣山型マイクロニードル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−143423(P2012−143423A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4586(P2011−4586)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506174979)株式会社ニート (4)
【出願人】(302005628)株式会社 メドレックス (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506174979)株式会社ニート (4)
【出願人】(302005628)株式会社 メドレックス (35)
【Fターム(参考)】
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